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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064443
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】プローブ
(51)【国際特許分類】
   G01R 1/067 20060101AFI20240507BHJP
   C25D 7/00 20060101ALI20240507BHJP
   C25D 5/10 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
G01R1/067 C
C25D7/00 H
C25D5/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173031
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006758
【氏名又は名称】株式会社ヨコオ
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【弁理士】
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 賢一
【テーマコード(参考)】
2G011
4K024
【Fターム(参考)】
2G011AA04
2G011AB01
2G011AB03
2G011AB07
2G011AC31
2G011AE22
4K024AA09
4K024AA12
4K024AB02
4K024AB03
4K024BA01
4K024BA09
4K024BB10
4K024DA01
4K024DA09
4K024GA16
(57)【要約】
【課題】プローブ及びプローブの接触対象の接触抵抗を抑制する。
【解決手段】母材と、前記母材を覆う銅層と、前記銅層を覆う白金族層と、を備えるプローブ。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
母材と、
前記母材を覆う銅層と、
前記銅層を覆う白金族層と、
を備えるプローブ。
【請求項2】
前記白金族層がルテニウム層である、請求項1に記載のプローブ。
【請求項3】
接触対象に接触する接触面を備え、
前記接触面の算術平均粗さが0.020μm以下であり、
前記接触面の最大高さ粗さが0.100μm以下である、プローブ。
【請求項4】
前記接触面が略平面である、請求項3に記載のプローブ。
【請求項5】
母材と、
前記母材を覆う銅層と、
前記銅層を覆う白金族層と、
を備え、
前記白金族層が接触対象に接触する接触面を有し、
前記接触面の算術平均粗さが0.050μm以下であり、
前記接触面の最大高さ粗さが0.200μm以下である、プローブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プローブに関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路等の検査対象物の検査においては、ソケットに設けられたプローブを介して、検査対象物及び検査基板を電気的に互いに接続させることがある。検査対象物の検査において、プローブの上端は、検査対象物のはんだ等の接触対象に接触する。
【0003】
特許文献1には、プローブの一例について記載されている。このプローブは、先端がはんだに接触する第1プランジャを備えている。第1プランジャは、20~30wt%の銀、35~55wt%のパラジウム及び20~40wt%の銅を含むAg-Pd-Cu合金と、0.5~2.5wt%のスズと、0.1~1.0wt%のコバルト、クロム及び亜鉛の少なくとも1つと、0.01~0.1wt%のイリジウム及びルテニウムの少なくとも1つと、を含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2016/159315号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プローブと、はんだ等のプローブの接触対象と、の接触抵抗は比較的低いことが望ましい。例えば、プローブ及び接触対象の間での金属の拡散による母材の摩耗を抑制するため、プローブの母材を白金族層によって覆うことがある。しかしながら、母材が白金族層によって覆われる場合、プローブ及び接触対象の接触抵抗が比較的高くなることがある。
【0006】
本発明の目的の一例は、プローブ及びプローブの接触対象の接触抵抗を抑制することにある。本発明の他の目的は、本明細書の記載から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、
母材と、
前記母材を覆う銅層と、
前記銅層を覆う白金族層と、
を備えるプローブである。
【0008】
本発明の一態様は、
接触対象に接触する接触面を備え、
前記接触面の算術平均粗さが0.020μm以下であり、
前記接触面の最大高さ粗さが0.100μm以下である、プローブである。
【0009】
本発明の一態様は、
母材と、
前記母材を覆う銅層と、
前記銅層を覆う白金族層と、
を備え、
前記白金族層が接触対象に接触する接触面を有し、
前記接触面の算術平均粗さが0.050μm以下であり、
前記接触面の最大高さ粗さが0.200μm以下である、プローブである。
【0010】
本発明の上記態様によれば、プローブ及びプローブの接触対象の接触抵抗を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係るソケットの断面図である。
図2】第1プランジャの上端部の拡大斜視図である。
図3】実施形態に係る錐体の断面模式図である。
図4】第1の変形例に係るソケットの断面図である。
図5】第2の変形例に係るプローブの断面図である。
図6】第1試験ピンの走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す図である。
図7】第2試験ピンのSEM画像を示す図である。
図8】第3試験ピンの通電耐久試験の測定結果を示すグラフである。
図9】第4試験ピンの通電耐久試験の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態及び変形例について、図面を用いて説明する。すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0013】
本明細書において、「第1」、「第2」、「第3」等の序数詞は、特に断りのない限り、同様の名称が付された構成を単に区別するために付されたものであり、構成の特定の特徴(例えば、順番又は重要度)を意味するものではない。
【0014】
図1は、実施形態に係るソケット10の断面図である。図2は、第1プランジャ110の上端部の拡大斜視図である。
【0015】
図1及び図2において、「+Z」によって示される矢印は、鉛直方向の上方向を示しており、「-Z」によって示される矢印は、鉛直方向の下方向を示している。以下、必要に応じて、鉛直方向に直交する方向を水平方向という。
【0016】
ソケット10は、プローブ100及び絶縁支持体200を備えている。プローブ100は、絶縁支持体200に形成された貫通孔に設けられている。プローブ100は、第1プランジャ110、第2プランジャ120、チューブ130及びスプリング140を有している。図1では、プローブ100を用いて、検査対象物20が検査基板30によって検査されている状態が示されている。具体的には、図1に示す状態では、プローブ100を介して、検査対象物20のはんだボール22と、検査基板30のパッド32と、が電気的に接続されている。
【0017】
チューブ130は、鉛直方向に延伸している。スプリング140は、チューブ130の内部に位置している。プローブ100は、チューブ130を有していなくてもよい。スプリング140は、チューブ130の中心を鉛直方向に通過する仮想軸の周りにスパイラル状に巻かれている。
【0018】
第1プランジャ110は、スプリング140の上端側に位置している。第1プランジャ110は、スプリング140によって、上方に向けて、すなわち、第2プランジャ120から離れる方向に向けて付勢されている。検査対象物20が検査基板30によって検査されている状態において、第1プランジャ110は、プローブ100の上方に位置する検査対象物20に接続されている。
【0019】
図1及び図2に示すように、第1プランジャ110は、柱部112及び接触部114を有している。
【0020】
柱部112は、鉛直方向に延伸する円柱形状となっている。一例において、柱部112の水平方向の直径は、0.03mm以上1.0mm以下である。
【0021】
接触部114は、柱部112の先端、すなわち上端に設けられている。図2に示すように、接触部114は、4つの外側面114aを含んでいる。各外側面114aは、はんだボール22に接触する接触面となっている。はんだボール22は、接触部114の接触対象となっている。鉛直方向から見て、4つの外側面114aは、接触部114の中心の周りに略等間隔に並んでいる。各外側面114aは、接触部114の下端から上端に向かうにつれて接触部114の中心に向けて傾いた略平面となっている。接触部114の上端部には4つの凹部114bが設けられている。鉛直方向から見て、4つの凹部114bは、接触部114の中心の周りに略等間隔に並んでいる。鉛直方向から見て、各凹部114bは、4つの外側面114aの各々に設けられている。各凹部114bは、上方に向けて開口されている。各外側面114aの法線方向から見て、各凹部114bの水平方向の幅は、凹部114bの開口から底に向かうにつれて減少している。各凹部114bの両内側面は、各凹部114bの開口から底に向かうにつれて各凹部114bの中心に向けて傾いた略平面となっている。言い換えると、各外側面114aの法線方向から見て、各凹部114bは、略V字形状となっている。
【0022】
図2に示すように、接触部114は、4つの錐体116を含んでいる。4つの錐体116は、接触部114の上端部に設けられている。実施形態において、各錐体116は、略四角錐体である。4つの錐体116は、4つの外側面114a及び4つの凹部114bによって画定されている。具体的には、各錐体116は、鉛直方向から見て接触部114の中心の周りに隣り合う2つの外側面114aの上端部によって画定された2つの側面と、鉛直方向から見て接触部114の中心の周りに隣り合う2つの凹部114bの内側面によって画定された2つの側面と、を含んでいる。鉛直方向から見て、4つの錐体116は、接触部114の中心の周りに略等間隔に並んでいる。
【0023】
一例において、鉛直方向に対する各外側面114aの傾きは30°以下であり、鉛直方向に対する各凹部114bの内側面の傾きは30°以下である。この例においては、鉛直方向に対する外側面114aの傾き及び各凹部114bの内側面の傾きが上述した値より大きい場合と比較して、各錐体116の先端を尖鋭化させることができる。よって、上述した場合と比較して、錐体116の先端をはんだボール22に押し込めやすくすることができる。したがって、上述した場合と比較して、錐体116及びはんだボール22の接触面積を大きくすることができる。ただし、鉛直方向に対する各外側面114aの傾き及び各凹部114bの内側面の傾きは、上述した例に限定されない。
【0024】
接触部114の形状は、実施形態に係る形状に限定されない。例えば、鉛直方向から見て、2つ、3つ又は5つ以上の外側面114aが接触部114の中心の周りに略等間隔に並んでいてもよい。この例においても、接触部114の上端部に複数の錐体116が設けられていてもよい。この例において、各錐体116は、略四角錐体と異なる多角錐体、例えば、略三角錐体、略五角錐体等であってもよい。
【0025】
図1に示すように、第2プランジャ120は、スプリング140の下端側に位置している。第2プランジャ120は、スプリング140によって、下方に向けて、すなわち、第1プランジャ110から離れる方向に向けて付勢されている。検査対象物20が検査基板30によって検査されている状態において、第2プランジャ120は、プローブ100の下方に位置する検査基板30に接続されている。この状態において、第2プランジャ120の先端、すなわち下端は、検査基板30のパッド32に接触している。第2プランジャ120の先端は、半球形状となっている。第2プランジャ120の先端の形状は図1に示す例に限定されない。
【0026】
図3は、実施形態に係る錐体116の断面模式図である。図3に示す断面は、錐体116の水平方向の中心を鉛直方向に平行に通過する断面である。
【0027】
第1プランジャ110は、母材110a、銅層110b、被覆層110c及び白金族層110dを含んでいる。
【0028】
母材110aは、合金を主成分として含有している。母材110aは導体である。例えば、母材110aは、母材110aの全質量100質量部に対して95質量部以上の合金を含有している。母材110aの合金としては、パラジウム合金及び銅合金が例示される。これらの合金は、単独で用いられてもよいし、又は組み合わされてもよい。
【0029】
銅層110bは、母材110aの表面を覆っている。銅層110bは、純銅を主成分として含有している。例えば、銅層110bは、銅層110bの全質量100質量部に対して95質量部以上の純銅を含有している。母材110aの表面の法線方向における銅層110bの厚さは、例えば、0.25μm以上1.0μm以下である。
【0030】
被覆層110cは、銅層110bの表面を覆っている。被覆層110cは、金属を主成分として含有している。例えば、被覆層110cは、被覆層110cの全質量100質量部に対して95質量部以上の金属を含有している。被覆層110cの金属としては、金及びパラジウムが例示される。これらの金属は、単独で用いられてもよいし、又は組み合わされてもよい。母材110aの表面の法線方向における被覆層110cの厚さは、例えば、おおよそ、0.095μm~0.15μmである。被覆層110cは、ストライクめっき層である。したがって、被覆層110cが設けられている場合、被覆層110cが設けられていない場合と比較して、銅層110b及び白金族層110dの密着性を向上させることができる。なお、銅層110bの表面に白金族層110dを直接形成することが可能な場合、被覆層110cは設けられていなくてもよい。
【0031】
白金族層110dは、被覆層110cの表面を覆っている。白金族層110dは、白金族を主成分として含有している。例えば、白金族層110dは、白金族層110dの全質量100質量部に対して95質量部以上の白金族を含有している。実施形態において、白金族層110dの白金族としては、ルテニウムが例示される。ただし、白金族層110dの白金族は、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム又は白金であってもよい。これらの白金族は、単独で用いられてもよいし、又は組み合わされてもよい。母材110aの表面の法線方向における白金族層110dの厚さは、例えば、0.2μm以上1.0μm以下である。
【0032】
母材110aが白金族層110dによって覆われている場合、母材110aが白金族層110dによって覆われていない場合と比較して、母材110a及びはんだボール22の間の金属の拡散を抑制することができる。言い換えると、白金族層110dは、母材110a及びはんだボール22の間の金属の拡散を抑制するバリア層として機能することができる。しかしながら、銅層110bが設けられずに白金族層110dが母材110aを覆う場合、白金族層110dの特性から、第1プランジャ110及びはんだボール22の接触抵抗が比較的高くなることがある。これに対して、実施形態では、母材110a及び白金族層110dの間に銅層110bが設けられている。この場合、銅層110bが設けられていない場合と比較して、第1プランジャ110及びはんだボール22の接触抵抗を抑制することができる。
【0033】
実施形態において、各錐体116の外側面114aにおける白金族層110dの表面の算術平均粗さRaは、0.050μm以下、好ましくは0.020μm以下、より好ましくは0.015μm以下である。算術平均粗さRaは、各錐体116の外側面114aの傾斜に略平行な方向の所定の基準長さの区間における表面粗さプロファイルから算出される。表面粗さプロファイルは、例えば、レーザ顕微鏡等の共焦点方式や白色干渉方式等の非接触の光学的方法によって測定される。実施形態では、算術平均粗さRaが上述した値より大きい場合と比較して、各錐体116の先端がはんだボール22に押し込まれた場合における各錐体116の外側面114a及びはんだボール22の表面の接触面積を大きくすることができる。よって、実施形態では、算術平均粗さRaが上述した値より大きい場合と比較して、第1プランジャ110及びはんだボール22の接触抵抗を抑制することができる。
【0034】
実施形態において、各錐体116の外側面114aにおける白金族層110dの最大高さ粗さRzは、0.200μm以下、好ましくは0.100μm以下、より好ましくは0.075μm以下である。最大高さ粗さRzは、算術平均粗さRaと同様にして、各錐体116の外側面114aの傾斜に略平行な方向の所定の基準長さの区間における表面粗さプロファイルから算出される。実施形態では、最大高さ粗さRzが上述した値より大きい場合と比較して、各錐体116の先端がはんだボール22に押し込まれた場合における各錐体116の外側面114a及びはんだボール22の表面の接触面積を大きくすることができる。よって、実施形態では、最大高さ粗さRzが上述した値より大きい場合と比較して、第1プランジャ110及びはんだボール22の接触抵抗を抑制することができる。
【0035】
次に、第1プランジャ110の製造方法の一例について説明する。
【0036】
まず、略円柱形状の母材110aを準備する。以下、必要に応じて、母材110aの中心を母材110aの高さに平行に通過する仮想線を、母材110aの中心線という。
【0037】
次いで、不図示の切削刃を母材110aの中心線に対して斜めに母材110aの先端部に当てて母材110aの先端部を略四角錐形状に切削する。この切削によって、母材110aの先端部には4つの外側面114aが形成される。この切削によって形成される外側面114aは略平面となる。この切削では、母材110aの先端部を旋盤加工によって円錐形状に形成する場合と比較して、母材110aの母材の先端部の外側面114aの表面粗さを小さくすることができる。これは、母材110aの先端部を旋盤加工によって円錐形状に形成した場合、母材110aの先端部の外側面に挽き目が比較的残りやすいのに対して、上述した切削ではこのような挽き目が外側面114aに比較的形成されにくいためである。
【0038】
次いで、切削加工によって母材110aの先端部に複数の凹部114bを形成する。この切削加工によって、母材110aの先端部に複数の錐体116が形成される。
【0039】
次いで、めっきによって母材110aの表面に銅層110bを形成する。銅層110bのめっきとしては、例えば、電解めっきが用いられる。
【0040】
次いで、めっきによって銅層110bの表面に被覆層110cを形成する。
【0041】
次いで、めっきによって被覆層110cの表面に白金族層110dを形成する。
【0042】
白金族層110dの表面粗さは、母材110aの表面粗さとほぼ同一となる。或いは、白金族層110dの表面粗さが母材110aの表面粗さより大きくても、白金族層110dの表面粗さと、母材110aの表面粗さと、の差は比較的小さくすることができる。よって、母材110aの表面粗さを上述した方法によって抑制することで、白金族層110dの表面粗さも抑制することができる。各錐体116の外側面114aにおける母材110aの表面の算術平均粗さRaは、例えば、0.020μm以下、好ましくは0.015μm以下である。各錐体116の外側面114aにおける母材110aの表面の最大高さ粗さRzは、例えば、0.100μm以下、好ましくは0.075μm以下である。
【0043】
このようにして、第1プランジャ110が製造される。
【0044】
図4は、第1の変形例に係るソケット10Aの断面図である。本変形例に係るソケット10Aは、以下の点を除いて、実施形態に係るプローブ100と同様である。
【0045】
第1プランジャ110Aの下端には、第1プランジャ110Aの下方に向けて延伸する延伸部118Aが設けられている。第1プランジャ110A及び延伸部118Aは、一体となっている。延伸部118Aの下端には、先端ヘッド118aAが設けられている。
【0046】
第2プランジャ120Aの上端には、基端部122Aが設けられている。基端部122Aの上面には、基端部122Aの上方に向けて開口した穴124Aが形成されている。基端部122Aにおける穴124Aを画定する内壁の一部分には、係止部126Aが設けられている。穴124Aの係止部126Aにおける水平方向の直径は、穴124Aの係止部126Aより下方に位置する部分における水平方向の直径より狭くなっている。先端ヘッド118aAは、穴124Aの係止部126Aよりも下方に入り込んでいる。また、先端ヘッド118aAは、穴124Aの係止部126Aよりも下方において鉛直方向に可動になっている。先端ヘッド118aAの水平方向の直径は、穴124Aの係止部126Aにおける水平方向の直径より大きくなっている。したがって、先端ヘッド118aAが穴124Aの上方に向けて抜けることが係止部126Aによって防止されている。
【0047】
本変形例に係るプローブ100Aは、実施形態に係るプローブ100のチューブ130に対応するチューブを有していない。スプリング140Aは、第1プランジャ110Aの下端と、基端部122Aの上端と、の間に位置している。また、スプリング140Aは、延伸部118Aの周りにスパイラル状に巻かれている。第1プランジャ110A、延伸部118A及び先端ヘッド118aAは、スプリング140Aによって上方に向けて付勢されている。第2プランジャ120A及び基端部122Aは、スプリング140Aによって下方に向けて付勢されている。
【0048】
本変形例に係る第1プランジャ110Aは、実施形態に係る第1プランジャ110と同様にして、柱部112A、接触部114A及び複数の錐体116Aを有している。本変形例に係る柱部112A、接触部114A及び複数の錐体116Aは、実施形態に係る柱部112、接触部114及び複数の錐体116と同様にすることができる。よって、本変形例においても、実施形態と同様にして、接触部114A及び接触部114Aの接触対象の接触抵抗を抑制することができる。
【0049】
図5は、第2の変形例に係るプローブ100Bの断面図である。本変形例に係るプローブ100Bは、以下の点を除いて、実施形態に係るプローブ100と同様である。
【0050】
図5に示す例では、第1プランジャ110B及びチューブ130Bが一体となっている。また、第1プランジャ110B及びチューブ130Bは、スプリング140Bによって、上方に向けて、すなわち、第2プランジャ120Bから離れる方向に向けて付勢されている。第2プランジャ120Bは、スプリング140Bによって、下方に向けて、すなわち、第1プランジャ110Bから離れる方向に向けて付勢されている。
【0051】
本変形例に係る第1プランジャ110Bは、実施形態に係る第1プランジャ110と同様にして、複数の錐体116Bを有している。本変形例に係る錐体116Bは、実施形態に係る錐体116と同様にすることができる。よって、本変形例においても、実施形態と同様にして、錐体116B及び錐体116Bの接触対象の接触抵抗を抑制することができる。
【0052】
以上、図面を参照して本発明の実施形態及び変形例について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例0053】
本発明の一態様を第1試験ピン~第4試験ピンに基づいて説明する。本発明は、以下の各試験ピンに限定されるものではない。
【0054】
図6は、第1試験ピンの走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す図である。
【0055】
第1試験ピンは、以下のようにして作製した。
【0056】
まず、Pd合金からなる1.0mm以下の所定の半径の円柱形状の母材を準備した。以下、必要に応じて、母材の中心を母材の高さに平行に通過する仮想線を、母材の中心線という。
【0057】
次いで、切削刃を母材の中心線に対して斜めに母材の先端部に当てて母材の先端部を四角錐形状に切削した。この切削によって、母材の先端部には、母材の中心線の周りに等間隔に並ぶ4つの外側面が形成される。各外側面は、母材の基端から先端に向かうにつれて母材の中心線に向けて傾いた平面となっている。母材の中心線に対する各外側面の傾きは、30°である。
【0058】
次いで、切削加工によって母材の先端部に4つの凹部を形成した。4つの凹部は、母材の中心線の周りに等間隔に並んでいる。母材の中心線に平行な方向から見て、各凹部は、母材の先端部の4つの外側面の各々に設けられている。各凹部の両内側面は、各凹部の開口から底に向かうにつれて各凹部の中心に向けて傾いた平面となっている。母材の中心線に対する各凹部の内側面の傾きは、30°である。
【0059】
図6に示すように、母材の先端部の4つの外側面及び4つの凹部によって、母材の先端部には、4つの錐体が画定されている。4つの錐体は、母材の中心線の周りに等間隔に並んでいる。各錐体は、母材の先端部の隣り合う2つの外側面の上端部によって画定された2つの側面と、母材の先端部の隣り合う2つの凹部の内側面によって画定された2つの側面と、を含んでいる。
【0060】
第1試験ピンの母材の表面には、めっき層を形成しなかった。
【0061】
図7は、第2試験ピンのSEM画像を示す図である。
【0062】
第2試験ピンの作製方法は、以下の点を除いて、第1試験ピンの作製方法と同様である。
【0063】
まず、Pd合金からなる1.0mm以下の所定の半径の円柱形状の母材を準備した。
【0064】
次いで、母材の先端部を旋盤加工によって円錐形状に形成した。この旋盤加工では、母材の中心線の周りに母材を回転させた状態で母材の先端部に切削刃を当てた。母材の先端部の外側面は、母材の中心線の周りに円状に湾曲した曲面となっている。外側面は、母材の基端から先端に向かうにつれて母材の中心線に向けて傾いている。母材の中心線に対する外側面の傾きは、27°である。
【0065】
次いで、切削加工によって母材の先端部に4つの凹部を形成した。4つの凹部は、母材の中心線の周りに等間隔に並んでいる。各凹部の両内側面は、各凹部の開口から底に向かうにつれて各凹部の中心に向けて傾いた平面となっている。母材の中心線に対する各凹部の内側面の傾きは、30°である。
【0066】
図7に示すように、母材の先端部の外側面及び4つの凹部によって、母材の先端部には、4つの錐体が画定されている。4つの錐体は、母材の中心線の周りに等間隔に並んでいる。各錐体は、母材の先端部の外側面の上端部によって画定された側面と、母材の先端部の隣り合う2つの凹部の内側面によって画定された2つの側面と、を含んでいる。
【0067】
第2試験ピンの母材の表面には、めっき層を形成しなかった。
【0068】
第3試験ピンの作製方法は、以下の点を除いて、第1試験ピンの作製方法と同様である。
【0069】
第1試験ピンの母材の加工と同様の加工によって、母材の先端部の形状を図6に示す第1試験ピンの母材の先端部の形状と同様の形状に形成した。
【0070】
次いで、電解めっきによって母材に銅層を形成した。銅層は、純銅を主成分として含有している。母材の表面の法線方向における銅層の厚さは0.6μmである。
【0071】
次いで、めっきによって銅層の表面にパラジウム層を被覆層として形成した。パラジウム層は、パラジウムを主成分として含有している。母材の表面の法線方向におけるパラジウム層の厚さの実測値は、おおよそ、0.095μm~0.15μmであった。
【0072】
次いで、めっきによって被覆層の表面にルテニウム層を白金族層として形成した。ルテニウム層は、ルテニウムを主成分として含有している。母材の表面の法線方向におけるルテニウム層の厚さは0.3μmである。
【0073】
第4試験ピンの作製方法は、以下の点を除いて、第1試験ピンの作製方法と同様である。
【0074】
第1試験ピンの母材の加工と同様の加工によって、母材の先端部の形状を図6に示す第1試験ピンの母材の先端部の形状と同様の形状に形成した。
【0075】
次いで、銅層を形成することなく、母材にパラジウム層を被覆層として形成した。パラジウム層は、パラジウムを主成分として含有している。母材の表面の法線方向におけるパラジウム層の厚さの実測値は、おおよそ、0.095μm~0.15μmであった。
【0076】
次いで、めっきによって被覆層の表面にルテニウム層を白金族層として形成した。ルテニウム層は、ルテニウムを主成分として含有している。母材の表面の法線方向におけるルテニウム層の厚さは0.3μmである。
【0077】
図6に示す第1試験ピンのSEM画像と、図7に示す第2試験ピンのSEM画像と、を比較する。
【0078】
図7に示す第2試験ピンのSEM画像では、母材の中心線に平行な方向から見て母材の先端部の外側面に同心円状に延在する挽き目が観察される。この挽き目は、第2試験ピンの母材の先端部を旋盤加工によって円錐形状に形成した際に形成されたと推定される。これに対して、図6に示す第1試験ピンのSEM画像では、このような挽き目が母材の先端部の外側面に観察されない。よって、第1試験ピンの先端部の外側面の表面粗さは、この挽き目が存在しない分、第2試験ピンの先端部の外側面の表面粗さより小さくなっているといえる。
【0079】
第1試験ピン及び第2試験ピンの各々の先端部の錐体の外側面の表面粗さを以下のようにして測定した。
【0080】
3つの第1試験ピンを作製した。各第1試験ピンの先端部の錐体の外側面の傾斜に平行な方向の所定の基準長さの区間における表面粗さプロファイルをレーザ顕微鏡によって測定した。測定された表面粗さプロファイルから算術平均粗さRa及び最大高さ粗さRzを算出した。3つの第1試験ピンの算術平均粗さRaは、0.013μm、0.014μm及び0.013μmであった。これらの算術平均粗さRaの平均は、0.013μmである。3つの第1試験ピンの最大高さ粗さRzは、0.056μm、0.065μm及び0.067μmであった。これらの最大高さ粗さRzの平均は、0.063μmである。
【0081】
3つの第2試験ピンを作製した。各第2試験ピンの先端部の錐体の外側面の傾斜に平行な方向の所定の基準長さの区間における表面粗さプロファイルをレーザ顕微鏡によって測定した。測定された表面粗さプロファイルから算術平均粗さRa及び最大高さ粗さRzを算出した。3つの第2試験ピンの算術平均粗さRaは、0.057μm、0.069μm及び0.069μmであった。これらの算術平均粗さRaの平均は、0.065μmである。3つの第2試験ピンの最大高さ粗さRzは、0.298μm、0.329μm及び0.363μmであった。これらの最大高さ粗さRzの平均は、0.330μmである。
【0082】
上述の測定結果より、切削刃を母材の中心線に対して斜めに母材の先端部に当てて形成された外側面の表面粗さは、旋盤加工によって形成された外側面の表面粗さより小さくすることができるといえる。
【0083】
表1は、第1試験ピン~第4試験ピンの各々の通電耐久試験の測定結果を示す表である。図8は、第3試験ピンの通電耐久試験の測定結果を示すグラフである。図9は、第4試験ピンの通電耐久試験の測定結果を示すグラフである。図8及び図9に示すグラフの横軸は、通電耐久試験の繰り返し回数を示している。図8及び図9に示すグラフの縦軸は、接触抵抗(単位:mΩ)を示している。
【表1】
【0084】
通電耐久試験は以下のようにして行った。フライングプローブテスタを用いて125℃の温度下において各試験ピンの接触部の先端をSn-40Biはんだに接触させて200mAの電流を20ms流すことを3,000回繰り返した。この通電耐久試験における各試験ピンの電気抵抗の平均及び標準偏差は、表1に示すようになった。表1において、「平均(mΩ)」の列の数値は、通電耐久試験における各試験ピンの電気抵抗の平均(単位:mΩ)を示している。表1において、「標準偏差(mΩ)」の列の数値は、通電耐久試験における各試験ピンの電気抵抗の標準偏差(単位:mΩ)を示している。
【0085】
第1試験ピンの通電耐久試験の結果と、第2試験ピンの通電耐久試験の結果と、を比較する。
【0086】
第1試験ピンの電気抵抗の平均及び標準偏差は、それぞれ、第2試験ピンの電気抵抗の平均及び標準偏差より低くなっている。よって、第1試験ピンの接触抵抗は、第2試験ピンの接触抵抗より安定に低く抑えられているといえる。この結果は、試験ピンの接触部の外側面の表面粗さが小さくなるほど試験ピンの接触抵抗が小さくなる傾向があることを示唆している。第1試験ピン及び第2試験ピンの比較より、試験ピンの先端部の錐体の外側面の算術平均粗さRa及び最大高さ粗さRzは、実施形態において説明した範囲にすることができる。
【0087】
第3試験ピンの通電耐久試験の結果と、第1試験ピンの通電耐久試験の結果と、を比較する。
【0088】
第3試験ピンの電気抵抗の平均及び標準偏差は、それぞれ、第1試験ピンの電気抵抗の平均及び標準偏差に近い値になっている。この結果は、母材が白金族層によって覆われても、母材及び白金族層の間に設けられた銅層によって、白金族層による接触抵抗の増加を抑制することができることを示唆している。
【0089】
第3試験ピンの通電耐久試験の結果と、第4試験ピンの通電耐久試験の結果と、を比較する。
【0090】
第3試験ピンの電気抵抗の平均及び標準偏差は、それぞれ、第4試験ピンの電気抵抗の平均及び標準偏差より低くなっている。よって、第3試験ピンの接触抵抗は、第4試験ピンの接触抵抗より安定に低く抑えられているといえる。この結果は、母材が白金族層によって覆われても、母材及び白金族層の間に設けられた銅層によって、白金族層による接触抵抗の増加を抑制することができることを示唆している。
【0091】
本明細書によれば、以下の態様のプローブが提供される。
(態様1)
態様1では、プローブが、母材と、前記母材を覆う銅層と、前記銅層を覆う白金族層と、を備えている。
【0092】
上述の態様によれば、母材及び白金族層の間に銅層が設けられていない場合と比較して、プローブ及びプローブの接触対象の接触抵抗を抑制することができる。
【0093】
(態様2)
態様2では、前記白金族層がルテニウム層である。
【0094】
(態様3)
態様3では、プローブが、接触対象に接触する接触面を備え、前記接触面の算術平均粗さが0.020μm以下であり、前記接触面の最大高さ粗さが0.100μm以下である。
【0095】
上述の態様によれば、接触面の算術平均粗さ及び最大高さ粗さが上述した値より大きい場合と比較して、プローブ及びプローブの接触対象の接触面積を大きくすることができる。よって、上述の態様によれば、上述の場合と比較して、プローブ及び接触対象の接触抵抗を抑制することができる。
【0096】
(態様4)
態様4では、前記接触面が略平面である。
【0097】
上述の態様によれば、接触面が旋盤加工によって形成された曲面である場合と比較して、接触面の表面粗さを小さくすることができる。よって、上述の態様によれば、接触面が曲面である場合と比較して、プローブ及び接触対象の接触抵抗を抑制することができる。
【0098】
(態様5)
態様5では、プローブが、母材と、前記母材を覆う銅層と、前記銅層を覆う白金族層と、を備え、前記白金族層が接触対象に接触する接触面を有し、前記接触面の算術平均粗さが0.050μm以下であり、前記接触面の最大高さ粗さが0.200μm以下である。
【0099】
上述の態様によれば、母材及び白金族層の間に銅層が設けられていない場合や接触面の算術平均粗さ及び最大高さ粗さが上述した値より大きい場合と比較して、プローブ及びプローブの接触対象の接触抵抗を抑制することができる。
【符号の説明】
【0100】
10,10A ソケット
20 検査対象物
22 ボール
30 検査基板
32 パッド
100,100A,100B プローブ
110,110A,110B 第1プランジャ
110a 母材
110b 銅層
110c 被覆層
110d 白金族層
112,112A 柱部
114,114A 接触部
114a 外側面
114b 凹部
116,116A,116B 錐体
118A 延伸部
118aA 先端ヘッド
120,120A,120B 第2プランジャ
122A 基端部
124A 穴
126A 係止部
130,130B チューブ
140,140A,140B スプリング
200 絶縁支持体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9