(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064444
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】レンジフード
(51)【国際特許分類】
F24F 7/06 20060101AFI20240507BHJP
F24F 11/77 20180101ALI20240507BHJP
F04D 29/28 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
F24F7/06 101A
F24F11/77
F04D29/28 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173032
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】301071893
【氏名又は名称】株式会社ハーマン
(72)【発明者】
【氏名】寺西 貫
(72)【発明者】
【氏名】田中 克司
【テーマコード(参考)】
3H130
3L058
3L260
【Fターム(参考)】
3H130AA13
3H130AB02
3H130AB13
3H130AB26
3H130AB42
3H130AC26
3H130BA21C
3H130BA21D
3H130CB07
3H130DA02X
3H130DD01Z
3H130EA01C
3H130EA01D
3L058BH10
3L058BK09
3L058BK10
3L260AA03
3L260AB16
3L260BA15
3L260BA32
3L260BA49
3L260CB51
3L260CB62
3L260FA02
3L260FC03
(57)【要約】
【課題】排気ファンの運転モードを、排気ファンの回転数が高い高回転運転モードから、排気ファンの回転数が低い低回転運転モードに切り替える際にも、衝撃(異音)が発生することを抑制、防止することが可能で、故障リスクや製品寿命への悪影響が少なく、製造コストを抑制することが可能なレンジフードを提供する。
【解決手段】排気ファン101の運転モードを、排気ファンの回転数が高い高回転運転モードから、排気ファンの回転数が低い低回転運転モードに切り替えるにあたって、高回転運転モードと低回転運転モードの間に、ACモーター107への駆動電力の供給が行われない無負荷状態を所定時間介在させた後、低回転運転モードへの切り替えを行う。
【選択図】
図5A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ACモーターにより排気ファンを回転させて排気を行うとともに、前記ACモーターへの駆動電力を切り替えて前記排気ファンの回転数を制御することにより、前記排気ファンの送風量を所定の複数段階に切り替えるように構成されたレンジフードであって、
前記排気ファンの運転モードを、前記排気ファンの回転数が高い高回転運転モードから、前記排気ファンの回転数が低い低回転運転モードに切り替えるにあたって、前記高回転運転モードと前記低回転運転モードの間に、前記ACモーターへの駆動電力の供給が行われない無負荷状態を所定時間介在させた後、前記低回転運転モードへの切り替えが行われるように構成されていること
を特徴とするレンジフード。
【請求項2】
前記ACモーターの回転軸には雄ネジ部が設けられ、
前記排気ファンを前記回転軸に取り付けるための取り付け治具には雌ネジ部が設けられ、
前記回転軸の雄ネジ部に、前記取り付け治具の前記雌ネジ部を螺合させて締め付けることにより、前記ACモーターの前記回転軸に前記排気ファンが取り付けられており、かつ、
前記取り付け治具の雌ネジ部の締め付け方向が、前記ACモーターにより駆動される前記排気ファンの回転方向とは逆向きとなるように構成されていること
を特徴とする、請求項1に記載のレンジフード。
【請求項3】
前記排気ファンの回転数を検出する回転数検出手段を備え、前記回転数検出手段が検出した前記回転数が所定の上限値を超えている場合に、前記所定時間の無負荷状態を経由して、前記高回転運転モードから前記低回転運転モードへの切り替えが行われるように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載のレンジフード。
【請求項4】
前記排気ファンにより排気される気体の経路である排気経路の閉塞状態を検出する閉塞状態検出手段を備え、前記閉塞状態検出手段が検出した閉塞状態が所定の閉塞度合いを超えている場合に、前記所定時間の無負荷状態を経由して、前記高回転運転モードから前記低回転運転モードへの切り替えが行われるように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載のレンジフード。
【請求項5】
前記所定時間の無負荷状態が、1.0秒以上3.0秒以下の無負荷状態であることを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載のレンジフード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、調理機器などとともに用いられるレンジフードに関し、詳しくは、排気風量を切り替えることができるように構成されたレンジフードに関する。
【背景技術】
【0002】
レンジフードには、ACモーターにより排気ファン(送風機)を回転させて排気を行うとともに、ACモーターへの駆動電力を切り替えて排気ファンの回転数を調節することにより排気風量の切り替えを行うように構成されたレンジフードがある。
【0003】
ところが、上述のような従来のレンジフードにおいては、ACモーターの回転速度を切り替え、排気ファンの回転速度を変えることで、レンジフードの運転状態を変更した場合(特に急激にACモーターの回転速度を切り替えた場合)に、排気ファンの慣性モーメントによる回転速度と排気ファンの電源切り替えによる軸速度のずれに起因する衝撃で異音(衝撃音)が発生するという問題点がある。また、上述の衝撃は、部品の耐久性に悪影響を与えるという点でも好ましくない。特に排気ファンをモータ軸にワンタッチで着脱できるようにした簡易脱着構造を採用したレンジフードにおいては、その傾向が大きい。
【0004】
また、上述のような排気風量の切り替えが可能なレンジフードおよびその制御方法として、特許文献1には、スイッチから送られる運転信号によって電動モーターの巻き線への通電を変えて回転速度を切り替えることで、レンジフードの運転状態を変更するときに、前記回転速度を切り替える前の通電を維持したまま通電を変え、その後所定時間経過したら前記切り替え前の通電を中止する(すなわち、通電状態をオーバーラップさせて切り替える)ようにして、電動モーターの回転速度を切り替えるときに無通電時間が生じることがなく、大きなトルク変化が生じないようにして送風機(排気ファン)から異音が発生しないようにしたレンジフードおよびその制御方法の発明が開示されている。
【0005】
そして、特許文献1の発明によれば、電動モーターの回転速度を切り替えてファンの回転速度を変えることで、レンジフードの運転状態を変更した場合(特に急激に電動モーターの回転速度を切り替えた場合)に、排気ファンからの異音の発生を抑制することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の特許文献1のレンジフードおよびその制御方法の場合、通電状態をオーバーラップさせて切り替えを行っているため、一時的ではあっても過電流になり、排気ファンの電源に過負荷がかかることから、より出力の大きい電源が必要になり、製造コスト(原材料費)の増大を招いたり、故障リスクや製品寿命に対して好ましくない影響を与えたりするという問題点がある。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するものであり、排気ファンの運転モードを、排気ファンの回転数が高い高回転運転モードから、排気ファンの回転数が低い低回転運転モードに切り替える際にも、衝撃(異音)が発生することを抑制、防止することが可能で、故障リスクや製品寿命への悪影響が少なく、製造コストを抑制することが可能なレンジフードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明のレンジフードは、
ACモーターにより排気ファンを回転させて排気を行うとともに、前記ACモーターへの駆動電力を切り替えて前記排気ファンの回転数を制御することにより、前記排気ファンの送風量を所定の複数段階に切り替えるように構成されたレンジフードであって、
前記排気ファンの運転モードを、前記排気ファンの回転数が高い高回転運転モードから、前記排気ファンの回転数が低い低回転運転モードに切り替えるにあたって、前記高回転運転モードと前記低回転運転モードの間に、前記ACモーターへの駆動電力の供給が行われない無負荷状態を所定時間介在させた後、前記低回転運転モードへの切り替えが行われるように構成されていること
を特徴としている。
【0010】
本発明のレンジフードにおいては、
前記ACモーターの回転軸には雄ネジ部が設けられ、
前記排気ファンを前記回転軸に取り付けるための取り付け治具には雌ネジ部が設けられ、
前記回転軸の雄ネジ部に、前記取り付け治具の前記雌ネジ部を螺合させて締め付けることにより、前記ACモーターの前記回転軸に前記排気ファンが取り付けられており、かつ、
前記取り付け治具の雌ネジ部の締め付け方向が、前記ACモーターにより駆動される前記排気ファンの回転方向とは逆向きとなるような構成とすることができる。
【0011】
また、前記排気ファンの回転数を検出する回転数検出手段を備え、前記回転数検出手段が検出した前記回転数が所定の上限値を超えている場合に、前記所定時間の無負荷状態を経由して、前記高回転運転モードから前記低回転運転モードへの切り替えが行われるように構成してもよい。
【0012】
また、前記排気ファンにより排気される気体の経路である排気経路の閉塞状態を検出する閉塞状態検出手段を備え、前記閉塞状態検出手段が検出した閉塞状態が所定の閉塞度合いを超えている場合に、前記所定時間の無負荷状態を経由して、前記高回転運転モードから前記低回転運転モードへの切り替えが行われるように構成することも可能である。
【0013】
また、前記所定時間の無負荷状態が、1.0秒以上3.0秒以下の無負荷状態であるように構成することも可能である。
【発明の効果】
【0014】
本発明のレンジフードは、排気ファンの運転モードを、排気ファンの回転数が高い高回転運転モードから、排気ファンの回転数が低い低回転運転モードに切り替えるにあたって、高回転運転モードと低回転運転モードの間に、ACモーターへの駆動電力の供給が行われない無負荷状態を所定時間介在させた後、低回転運転モードへの切り替えが行われるように構成されているので、高回転運転モードから低回転運転モードへの切り替えが行われる際の、排気ファンの慣性モーメントと排気ファンの軸速度のずれに起因する衝撃により、異音が発生することを抑制、防止することができる。
【0015】
また、排気ファンの慣性モーメントと排気ファンの軸速度のズレにより、排気ファンなどの機材に衝撃が加わることによる、故障リスクの増大や製品寿命の短縮などの悪影響を抑えることが可能になる。すなわち、ACモーターで行われるタップ切替(駆動電力の切替)により回転数が変化する場合における、ACモーターの回転軸と排気ファンとの嵌合部にかかる負荷を抑えることが可能になり、故障リスクの増大や製品寿命の短縮などの問題を抑制、防止することが可能になる。
【0016】
さらに、ACモーターへの通電状態をオーバーラップさせて切り替えるようにした上記特許文献1のレンジフードの場合のように、一時的ではあっても過電流になるというような事態を回避して、電源への過負荷を抑えたり、大出力の電源が必要になることを防止したりすることが可能になり、故障リスクの増大や製品寿命の短縮、製造コスト(原材料費)の増大などへの懸念を軽減することが可能になる。
【0017】
また、取り付け治具の雌ネジ部の締め付け方向が、ACモーターにより駆動される排気ファンの回転方向とは逆向きとなるように構成されている場合、慣性モーメントにより高速で回転している高回転運転モードから、低回転運転モードへの切り替えが行われた場合、排気ファンの軸速度のずれ(排気ファンの回転速度>軸速度)に起因する衝撃により、取り付け治具のねじ止め部が緩むことが起こりうるが、本発明では、高回転運転モードから低回転運転モードに切り替える際に、所定時間の無負荷状態を介在させた後、低回転運転モードに切り替えるようにしているので、排気ファンの回転数の急激な低下を抑制して、取り付け治具のねじ止め部が緩むことを防止することが可能になる。
【0018】
すなわち、ねじ止め部において緩みが生じるのは、排気ファンの慣性モーメントと排気ファンの軸速度のずれに起因する衝撃が、ねじ止め部の摩擦抵抗より大きくなる場合であるといえるが、高回転運転モードと低回転運転モードの間に、無負荷状態を所定時間介在させた後、低回転運転モードへの切り替えを行うことにより、排気ファンの過度に急激な回転数の低下を抑制することが可能になる。その結果、排気ファンの慣性モーメントと排気ファンの軸速度のずれに起因する衝撃が、ねじ止め部の摩擦抵抗より大きくなることを防止して、ねじ止め部が緩むことを阻止することが可能になり、信頼性を向上させることができる。
【0019】
また、排気ファンの回転数を検出する回転数検出手段を備え、回転数検出手段が検出した回転数が所定の上限値を超えている場合に、高回転運転モードから直ちに低回転運転モードに切り替えると、高回転運転モードにおける慣性モーメントと、低回転運転モードにおけるACモーターのトルクの差が大きくなり、それに起因して大きな衝撃が発生し、異音の発生や、機器へのダメージなどが生じやすくなるが、所定時間の無負荷状態を経由して、高回転運転モードから低回転運転モードへの切り替えが行われるようにした場合、切り替えの際の衝撃を確実に抑制することが可能になり、本発明をより実効あらしめることができる。
【0020】
また、排気ファンにより排気される気体の経路である排気経路の閉塞状態を検出する閉塞状態検出手段を備え、閉塞状態検出手段が検出した閉塞状態が所定の閉塞度合いを超えている場合にも、高回転運転モードから直ちに低回転運転モードに切り替えると、高回転運転モードにおける慣性モーメントと、低回転運転モードにおけるACモーターのトルクの差が大きくなり、それに起因して大きな衝撃が発生し、異音の発生や、機器へのダメージなどが生じやすくなるが、所定時間の無負荷状態を経由して、高回転運転モードから低回転運転モードへの切り替えが行われるようにした場合、切り替えの際の衝撃を確実に抑制することが可能になり、本発明をより実効あらしめることができる。
【0021】
高回転運転モードから低回転運転モードへの切り替えの前に確保すべき無負荷状態の時間は、高回転運転モードおよび低回転運転モードにおける排気ファンの回転数などの条件に影響されるが、通常は、無負荷状態の時間が1.0秒未満の場合に衝撃抑制の効果が不十分になり、また、3.0秒を越えても、効果に大きな改善は見られなくなることから、通常は、1.0秒以上3.0秒以下の時間を確保することが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態にかかるレンジフードの切欠き正面図である。
【
図2】本発明の一実施形態にかかるレンジフードの操作部の構成を示す正面図である。
【
図3】本発明の一実施形態にかかるレンジフードの、運転・風量スイッチによる風量の切り替わりの態様を説明する図である。
【
図4】本発明の一実施形態にかかるレンジフードの、タイマースイッチによるタイマー設定時間の切り替わりの態様を説明する図である。
【
図5A】(a)および(b)は、本発明の一実施形態にかかるレンジフードの動作を説明するための図である。
【
図5B】(a)および(b)は、従来のレンジフードの動作を説明するための図である。
【
図6】本発明の他の実施形態にかかるレンジフードの切欠き正面図である。
【
図7】本発明のさらに他の実施形態にかかるレンジフードの要部構成を示す図であり、(a)は排気経路が閉塞している状態を示す図、(b)は排気経路が閉塞していない状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を示して、その特徴とするところをさらに詳しく説明する。
【0024】
[実施形態]
この実施形態では、ACモーターへの駆動電力を切り替えて排気ファンの回転数を制御することにより、排気ファンの送風量を所定の複数段階(本実施形態では4段階)に切り替えることができるように構成されたレンジフードを例にとって説明する。
【0025】
本発明の実施形態にかかるレンジフード110は、
図1に示すように、ガスコンロ(図示せず)とともに、台所に設置されて用いられるものであり、レンジフード110を作動させるための電源としては、商用電源(AC100V)が使用されている。
【0026】
レンジフード110は、排気ファン101、排気ファン101を駆動するACモーター107、台所内の空気の吸い込み口であるフード部103、および、排気ダクト106を備えている。
【0027】
そして、排気ファン101を駆動するACモーター107に通電して、排気ファン101を駆動することにより、フード部103から吸い込んだ台所内の空気が、排気経路を経由して、台所の外部(屋外)に排出されるように構成されている。
【0028】
なお、この実施形態にかかるレンジフードでは、レンジフード110の排気ダクト106に延長用排気筒(図示せず)が接続され、レンジフード110のフード部103から吸引された台所内の空気は、排気ダクト106から上記延長用排気筒を経て、台所の外部に排出される。したがって、上記の排気ダクト106およびそれに接続された延長用排気筒などが本発明における排気経路を構成する。
【0029】
<特徴的構成>
次に、本発明の実施形態にかかるレンジフード110の特徴的な構成について説明する。
【0030】
本実施形態にかかるレンジフード110は、排気風量の制御モードとして、「強運転」、「中運転」、「弱運転」、および「常時換気運転」の4つのモードを有している。なお、「常時換気回転」は「弱運転」よりも風量が少ない(排気ファンの回転数が低い)「最弱運転」の制御モードである。
【0031】
本発明のレンジフード110では、排気ファン101を回転させるACモーター107への駆動電力を切り替えて排気ファン101の回転数を制御することにより、排気ファン101の送風量を所定の複数段階(本実施形態のレンジフード110では、上述の「強運転」、「中運転」、「弱運転」、および「常時換気運転(最弱運転)」の4段階)に切り替えることができるように構成されている。
また、レンジフード110の一般的な運転状態の制御は、制御部20によって行われるように構成されている。
【0032】
本実施形態にかかるレンジフード110では、排気ファン101の回転数(送風量)を、複数段階に切り替える方法として、排気ファン101を回転させるためのACモーター107を構成するモーター巻線の、所定の複数位置から取り出した端子(タップ)をスイッチにより切り替える方法、すなわち、排気ファン101の回転数に対応したモーター巻線数となるようにタップをスイッチで切り替える方法により、排気ファン101の回転数(送風量)を、複数段階に切り替えることができるように構成されている。
【0033】
また、
図2は、本実施形態にかかるレンジフード110の操作部50の構成を示す図である。
図2に示すように、操作部50は、切スイッチ・ロック51、運転・風量スイッチ52、タイマースイッチ53、照明スイッチ54、お手入れスイッチ55、および、常時換気スイッチ56を備えている。
【0034】
切スイッチ・ロック51は、電源のON/OFFの切り替えと、3秒長押しによりチャイルドロックのON/OFFの切り替えを行う。チャイルドロック状態では、照明スイッチ54以外のスイッチは反応しない(指令を受け付けない)ように構成されている。なお、照明スイッチ54は、押す毎にON/OFFが切り替わるように構成されている。
【0035】
運転・風量スイッチ52は、電源ONの状態で、運転・風量スイッチ52を押す毎に、風量が切り替わるように構成されている。具体的には、
図3に示すように、例えば、運転・風量スイッチ52を押す毎に「弱」、「中」、「強」の順に風量が切り替わるように構成されている。
【0036】
また、本実施形態にかかるレンジフード110は、常時換気スイッチ56を備えている。そして、常時換気スイッチ56を押すとON(表示部が点灯)となり、3秒押しでOFF(表示部が消灯)となるように構成されている。
なお、本実施形態では、運転・風量スイッチ52により、「強運転」、「中運転」、「弱運転」のいずれかが選択され、その条件でレンジフード110が作動している場合にも、常時換気スイッチ56が押されると常時換気がONになり、運転・風量スイッチ52により選択された「強運転」、「中運転」、「弱運転」はリセット(中止)されるように構成されている。
また、常時換気スイッチ56のON時には、切スイッチ51を押してレンジフード110の運転を終了した後も、常時換気運転は継続して行われる。すなわち、常時換気用低回転数(例えば、300rpm)で排気ファン101が作動し続ける。
【0037】
また、レンジフード110の運転中に、操作部50が備えるタイマースイッチ53を押す毎に、タイマー設定時間が、
図4に示すように、5分→10分→15分→消の順に切り替わるように構成されている。なお、
図4には、数字のみが示されているが、それぞれ単位は「分」である。
【0038】
レンジフード110の運転は、タイマースイッチ53で設定した時間のタイムアップで停止するか、あるいは、常時換気スイッチがONの場合には常時換気モードでの換気が継続して行われる(照明は消灯する)。
【0039】
また、お手入れスイッチ55は、延べ運転時間が所定時間(例えば、1000時間)に達すると表示部が点灯し、手入れの終了後にお手入れスイッチ55を押すことでリセットされ、表示部が消灯するように構成されている。
【0040】
そして、本実施形態にかかるレンジフード110においては、高回転運転モード(本実施形態では、排気ファン101の回転数が最も大きい(1000rpm)「強運転」モード)から、低回転運転モード(本実施形態では、排気ファン101の回転数が最も小さい(300rpm)「常時換気運転」モード、または回転数がその次に小さい(400rpm)「弱運転」モードのいずれか)に切り替えるにあたって、高回転運転モードと低回転運転モードの間に、ACモーター107への駆動電力の供給を行わない無負荷状態を所定時間(本実施形態では1秒間)介在させた後、高回転運転モードから低回転運転モードへの切り替えが行われるように構成されている。
【0041】
ところで、ACモーターで排気ファンを作動させるようにした、従来の一般的なレンジフードにおいては、「強運転」のような高回転運転モードから、「弱運転」あるいは「常時換気」のような低回転運転モードに切り替える際に、高回転運転モードにおける慣性モーメントと、低回転運転モードへの切り替えにより急激に回転数が低下した排気ファンの軸速度の差が大きくなる。
すなわち、慣性モーメントにより高速で回転していた排気ファンの回転速度と、電源切り替えにより急激に回転数が低下した排気ファンの軸速度にずれ(排気ファンの回転速度>軸速度)が発生し、それに起因する衝撃により異音(衝撃音)が発生したり、排気ファンなどの機材がダメージを受けたりする場合がある。特に排気ファンをモータ軸にワンタッチで着脱できるようにした簡易脱着構造を採用したレンジフードにおいては、その傾向が大きい。
【0042】
これに対し、本実施形態にかかるレンジフード110では、上述のように、高回転運転モードと低回転運転モードの間に、ACモーター107への駆動電力の供給が行われない無負荷状態を所定時間(本実施形態では1秒間)介在させた後、高回転運転モードから低回転運転モードへの切り替えを行うようにしているので、高回転運転モード(本実施形態では「強運転」モード)から、低回転運転モード(「常時換気運転」モード、または「弱運転」モードのいずれか)に切り替えた場合にも、衝撃による異音が発生したり、排気ファンなどの機材がダメージを受けたりすることを抑制、防止することが可能になる。
【0043】
なお、本実施形態にかかるレンジフード110に特有の動作(作用)を、
図5Aの(a),(b)を参照しつつ説明する。
図5Aの(a)は、強運転から常時換気運転に切り替える際の、モータータップの切り替え(ON/OFF)や、無負荷状態の介在の態様などを示す図、
図5Aの(b)は、1秒間の無負荷状態を介在させた後、運転モードを強運転から常時換気運転に切り替えるようにした場合の、排気ファンの回転数の低下の態様を示す図である。
【0044】
本実施形態にかかるレンジフード110を強運転モードで運転する場合、運転・風量スイッチ52で「強運転」が選択されると、強運転用モータータップへのスイッチ切り替えが行われ、排気ファン101は1000rpmで回転して、レンジフード110は、強運転モードで運転される。
【0045】
その後、レンジフード110を常時換気運転モードに切り替える場合、常時換気スイッチ56を押すことにより、常時換気運転用モータータップへのスイッチ切り替えが行われ、排気ファン101は300rpmで回転して、レンジフード110は、常時換気運転モードで運転される。なお、常時換気スイッチ56を押すことにより、運転・風量スイッチ52により選択されていた「強運転」はリセット(中止)される。
【0046】
そして、本実施形態にかかるレンジフード110では、運転モードを強運転から常時換気運転に切り替える際に、ACモーター107への駆動電力の供給が行われない無負荷状態を1秒間介在させた後、運転モードを常時換気運転に切り替えるようにしている。
【0047】
このように、強運転から常時換気運転に切り替えるにあたって、1秒間の無負荷状態を介在させることにより、
図5Aの(b)に示すように、排気ファン101の回転数は1000rpmから300rpmに徐々に低下する。
【0048】
なお、
図5Aの(b)において、実線L1は、本実施形態における排気ファン101の回転数の低下の態様を示している。また、排気ファンの回転数の低下を示す実線L1に沿って、さらにはその延長上に記載されている点線L2は、ACモーター107への駆動電力の供給を停止した場合における、排気ファンの回転数の低下の態様を示している。
【0049】
一方、
図5Bの(a)は、無負荷状態を介在させずに、強運転から常時換気運転に切り替える際のモータータップの切り替え(ON/OFF)の態様などを示す図、
図5Bの(b)は、無負荷状態を介在させずに、運転モードを強運転から常時換気運転に切り替えた場合の、排気ファンの回転数の低下の態様を示す図である。なお、
図5Bの(b)において、実線L1aは排気ファンの回転数の低下の態様を示す線であり、点線L2は、ACモーター107への駆動電力の供給を0にした場合(電源切の場合)の排気ファンの回転数の低下の態様を示す線である。
【0050】
図5Bの(a),(b)に示すように、運転モードを強運転から常時換気運転に切り替える際に、無負荷状態を介在させることなく、運転モードを強運転から常時換気運転に直ちに切り替えるように構成された従来のレンジフードの場合、切り替えによって急激な回転数の低下が生じ、慣性モーメントによる排気ファンの回転速度と、電源切り替えによる軸速度のずれ(排気ファンの回転数>軸速度)が大きくなる。すなわち、
図5Bの(b)に示すように、運転モードを強運転から常時換気運転に切り替えた後の1秒以内において、Sで示す領域において急激な回転数の低下が生じる。そして、この急激な回転数の低下が生じる際の衝撃により、異音(衝撃音)の発生や、排気ファンなどの機材へのダメージを引き起こすことになる。
【0051】
これに対し、本実施形態にかかるレンジフード110の場合、上述のように、運転モードを強運転から常時換気運転に切り替える際に、無負荷状態を1秒間介在させた後、運転モードを常時換気運転に切り替えるようにしているので、無負荷状態においては、排気ファンの回転数の低下の傾向が、ACモーター107への駆動電力の供給を停止した場合(電源切の場合)と同様の傾向となり、急激な回転数の低下を引き起こすことがないため、高回転運転モード(例えば「強運転」モード)から、低回転運転モード(例えば、「常時換気運転」モード)への切り替えを行った場合にも、衝撃による異音が発生したり、排気ファンなどの機材がダメージを受けたりすることを抑制、防止することが可能になる。
【0052】
なお、本発明のレンジフードにおいては、運転モードを強運転から弱運転(排気ファン101の回転数が「常時換気運転」のときよりも少し大きい運転モード)に切り替える際にも、無負荷状態を1秒間介在させた後、弱運転に切り替えるように構成されており、その場合にも、運転モードを強運転から常時換気運転に切り替える場合に得られる効果に準じる効果を得ることができる。
【0053】
また、本実施形態にかかるレンジフード110においては、特に図示しないが、ACモーター107の回転軸には雄ネジ部が設けられ、排気ファン101をACモーター107の回転軸に取り付けるための取り付け治具には雌ネジ部が設けられ、回転軸の雄ネジ部に、取り付け治具の雌ネジ部を螺合させて締め付けることにより、ACモーター107の回転軸に排気ファン101が保持されるように構成されている。そして、取り付け治具の雌ネジ部の締め付け方向が、ACモーターにより駆動される排気ファンの回転方向とは逆向きとなるように構成されている。
【0054】
そのため、慣性モーメントにより高速で回転していた高回転運転モード(例えば「強運転」モード)から、低回転運転モード(例えば、「常時換気運転」モード)への切り替えが行われた場合、排気ファンの軸速度のずれ(排気ファンの回転速度>軸速度)に起因する衝撃により、取り付け治具のねじ止め部が緩むことが起こりうるが、本実施形態にかかるレンジフード110は、上述のように、運転モードを強運転から常時換気運転に切り替える際に、無負荷状態を1秒間介在させた後、運転モードを常時換気運転に切り替えるようにしているので、排気ファンの急激な回転数の低下を引き起こすことがないため、取り付け治具のねじ止め部が緩むことを防止することが可能で、信頼性の高いレンジフードを実現することができる。
【0055】
なお、上記実施形態にかかるレンジフード110においては、高回転運転モードから低回転運転モードへの切り替えを行うにあたって、確保すべき無負荷状態の時間を1秒としているが、無負荷状態を確保すべき時間(所定時間)は、高回転運転モードおよび低回転運転モードにおける排気ファンの回転数などの条件に影響されるものの、通常は、1.0秒以上3.0秒以下の時間とすることが好ましい。これは、無負荷状態の時間が1.0秒未満になると衝撃抑制の効果が不十分になり、3.0秒を越えても、効果に大きな改善が見られなくなることによるが、たとえば、使用感に特に問題がでない場合においては、3.0秒を越える時間(たとえば5秒)とすることも可能である。
【0056】
また、
図6は、本発明の他の実施形態にかかるレンジフード110Aの切欠き正面図である。
【0057】
このレンジフード110Aは、
図6に示すように、排気ファン101の回転数を検出する回転数検出手段121を備えており、回転数検出手段121が検出した回転数が所定の上限値を超えている場合に、所定時間(この実施形態では1秒間)の無負荷状態を経由して、高回転運転モードから低回転運転モードへの切り替えが行われるように構成されている。なお、その他の構成は上記実施形態にかかるレンジフード110の場合と同様である。
【0058】
回転数検出手段121としては、排気ファン101に取り付けられている永久磁石(図示せず)と、ホールIC回路(磁気センサ)121aとを備えた構成の検出手段が用いられており、排気ファン101が回転するときに、排気ファン101に取り付けられた永久磁石が、ホールIC回路(磁気センサ)121aの近くを通過することを検出し、排気ファン101の回転数を検出するように構成されている。
【0059】
そして、検出した排気ファン101の回転数が所定値以上である場合に、上述の実施形態のレンジフード110の場合と同様に、1秒間の無負荷状態を経由して、高回転運転モードから低回転運転モードへの切り替えが行われるように構成されている。
【0060】
このように構成されたレンジフード110Aの場合、低回転運転モードへの切り替えの際の衝撃を確実に抑制することが可能になるので、製品寿命への悪影響(故障リスク)をよりよく抑えることが可能になる。
【0061】
また、
図7(a)、(b)は、本発明のさらに他の実施形態にかかるレンジフード110Bの要部構成を示す図であり、(a)は排気経路が閉塞状態にある場合を示し、(b)は排気経路が閉塞していない状態を示す図である。
なお、この実施形態にかかるレンジフード110Bの基本構成は、
図1に示すレンジフード110と同様である。
【0062】
このレンジフード110Bは、排気ファン101により排気される気体の経路である排気経路の閉塞状態を検出する閉塞状態検出手段を備えている。なお、この実施形態のレンジフード110Bにおいては、排気ダクト106およびそれに接続された延長用排気筒(図示せず)が排気経路を形成している。
【0063】
この実施形態のレンジフード110Bが備える閉塞状態検出手段は、逆風止め閉塞板131と、逆風止め閉塞板131の回転支軸132と、回転式エンコーダ(図示せず)と、回転式エンコーダが検出した回転支軸132の回転角度θについての情報と排気ファンの運転情報とから、排気ファンにより排気される気体の経路である排気経路の閉塞状態を判断する制御部20などから構成されている。
なお、その他の構成は上記実施形態にかかるレンジフード110(
図1)の場合と同様である。
【0064】
そして、閉塞状態検出手段においては、排気ファン101が強運転時において、逆風止め閉塞板131の回転角度θが所定角度以下(例えば、θ=30°以下)である場合には、制御部20が、排気経路が閉塞していると判断する。なお、排気経路を通過する風量が少なくなると、逆風止め閉塞板131の回転角度θは小さくなる。
【0065】
そして、排気経路が閉塞していると判断されると、上述の実施形態のレンジフード110の場合と同様に、1秒間の無負荷状態を経由して、高回転運転モードから低回転運転モードへの切り替えが行われるように構成されている。
【0066】
このように構成されたレンジフード110Bの場合も、低回転運転モードへの切り替えの際の衝撃を確実に抑制することが可能になるので、製品寿命への悪影響(故障リスク)をよりよく抑えることが可能になる。
【0067】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲内において種々の変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0068】
20 制御部
50 操作部
51 切スイッチ・ロック
52 運転・風量スイッチ
53 タイマースイッチ
54 照明スイッチ
55 お手入れスイッチ
56 常時換気スイッチ
101 排気ファン
103 フード部
106 排気ダクト
107 ACモーター
110 レンジフード
110A 他の実施形態にかかるレンジフード
110B さらに他の実施形態にかかるレンジフード
121 回転数検出手段
121a 回転数検出手段を構成するホールIC回路(磁気センサ)
131 閉塞状態検出手段を構成する逆風止め閉塞板
132 逆風止め閉塞板の回転支軸
θ 回転支軸の回転角度