(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064452
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】魚釣用スピニングリール及び釣竿
(51)【国際特許分類】
A01K 89/01 20060101AFI20240507BHJP
【FI】
A01K89/01 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173050
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140822
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 光広
(72)【発明者】
【氏名】松田 和之
(72)【発明者】
【氏名】永井 諒
(72)【発明者】
【氏名】弘田 悠将
(72)【発明者】
【氏名】藤本 利矢
(72)【発明者】
【氏名】太良 享平
【テーマコード(参考)】
2B108
【Fターム(参考)】
2B108BA01
2B108BE00
(57)【要約】 (修正有)
【課題】糸巻き取り前、糸巻き取り動作中、糸巻き取り停止後のいずれの状態においても、ピニオンギアをその軸下方向に押し下げることでピニオンギアの浮き上がりを防止し、バックラッシの発生を低減させることが可能な魚釣用スピニングリール、及びこれを備えた釣竿を提供する。
【解決手段】魚釣用スピニングリール6は、操作部16と、リール本体12aと、ころがり軸受を介してリール本体の前部に回転自在に支持され、操作部と連動して回転する駆動軸22と、駆動軸に取付けられ、駆動軸と共に回転するロータ28と、操作部の回転により釣糸を巻回可能なスプール14と、を備える魚釣用スピニングリールであって、駆動軸にピニオンギア22aが設けられ、ピニオンギアの駆動軸の軸方向前方側に弾性部材が設けられるように構成される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作部と、リール本体と、ころがり軸受を介して該リール本体の前部に回転自在に支持され、該操作部と連動して回転する駆動軸と、該駆動軸に取付けられ、該駆動軸と共に回転するロータと、該操作部の回転により釣糸を巻回可能なスプールと、を備える魚釣用スピニングリールであって、
前記駆動軸にピニオンギアが設けられ、該ピニオンギアの該駆動軸の軸方向前方側に弾性部材が設けられることを特徴とする魚釣用スピニングリール。
【請求項2】
前記ころがり軸受の外輪の、前記駆動軸の軸方向でみて後方側は、前記リール本体に接触していない請求項1に記載の魚釣用スピニングリール。
【請求項3】
前記ころがり軸受は、前記ピニオンギアと前記駆動軸の前方側への軸方向移動を規制し、前記ころがり軸受とワッシャとの間に弾性部材が設けられ、
前記ころがり軸受の外輪は前記リール本体に取付けられ、該ころがり軸受の外輪の、前記駆動軸の軸方向でみて後方側は、該リール本体に接触していない請求項1に記載の魚釣用スピニングリール。
【請求項4】
前記ころがり軸受は、前記ピニオンギアと前記駆動軸の前方側への軸方向移動を規制し、一方向クラッチの外輪とワッシャとの間に弾性部材が設けられ、
前記ころがり軸受の外輪は前記リール本体に取付けられ、該ころがり軸受の外輪の、前記駆動軸の軸方向でみて後方側は、該リール本体に接触していない請求項1に記載の魚釣用スピニングリール。
【請求項5】
前記ころがり軸受は、前記ピニオンギアと前記駆動軸の前方側への軸方向移動を規制し、一方向クラッチと第2の保持板との間に弾性部材が設けられ、
前記ころがり軸受の外輪は前記リール本体に取付けられ、該ころがり軸受の外輪の、前記駆動軸の軸方向でみて後方側は、該リール本体に接触していない請求項1に記載の魚釣用スピニングリール。
【請求項6】
前記ころがり軸受は、前記ピニオンギアと前記駆動軸の前方側への軸方向移動を規制し、
前記リール本体には、第2の保持板を介して一方向クラッチが設けられ、該一方向クラッチの外輪は、ワッシャを介して前記ころがり軸受の外輪に接続され、
前記ころがり軸受と前記ワッシャとの間、前記一方向クラッチの外輪と前記ワッシャとの間、前記一方向クラッチと前記第2の保持板との間のいずれかに弾性部材が設けられる、請求項1に記載の魚釣用スピニングリール。
【請求項7】
前記弾性部材は、前記ころがり軸受の外輪を前記駆動軸の軸方向後方側に付勢する、請求項1に記載の魚釣用スピニングリール。
【請求項8】
前記弾性部材は、ウェーブワッシャ、スプリングワッシャ―、皿バネワッシャ又はOリングのいずれかである、請求項1に記載の魚釣用スピニングリール。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項に記載の魚釣用スピニングリールと、竿体とを備えた釣竿。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は、ハンドルを回転することにより、ロータを回転し、このロータに設けた釣糸案内部を通じてスプールに釣糸巻回する魚釣用スピニングリール、及びこれを備えた釣竿に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、魚釣用スピニングリールは、リール本体から延出する脚部の端部に形成した竿取付部を介して釣竿に取付固定される。このリール本体には、ハンドルが固定されるハンドル軸が回転可能に支持されている。また、ハンドル軸にはドライブギアが固定されており、このドライブギアには、ハンドル軸に対して直交する方向に延び且つリール本体に回転自在に支持された駆動軸の基端部外周に形成された歯部が噛合する。この駆動軸は、軸方向移動を規制するころがり軸受を介して支持されており、先端部にはロータが一体的に取り付けられ、この駆動軸内をハンドル軸と直交する方向に延在するスプール軸が貫通している。また、スプール軸の先端部には釣糸が巻回されるスプールが取り付けられている。スプール軸は、ハンドルからの回転力をスプール軸の前後動に変換するスプール往復動機構(オシレーティング機構)により、ハンドル軸と直交する方向に沿って往復動される。
【0003】
このように、魚釣用スピニングリールは、ハンドルを回転することにより、ロータを回転しながらスプール軸を前後動し、ロータの釣糸案内部を介してスプールに釣糸が巻き取る構成であるため、この巻取り操作時には、スプールに巻回される釣糸からロータを介して駆動軸に負荷が加わる。通常、この駆動軸を回転自在に支えるころがり軸受は、外輪をリール本体に固定部材を介して固定され、内輪を駆動軸とロータとで挟着することで、駆動軸の軸方向移動を規制し、この駆動軸にロータを固定することで、ロータを所定位置に支持する。
【0004】
このような魚釣用スピニングリールとして、例えば、特許文献1では、釣竿に装着されるスピニングリールであって、ハンドルを有し、釣竿に装着可能なリール本体と、前記リール本体の前部に回転自在に支持された円筒部と、前記円筒部の側方に回転軸芯を挟んで対向配置され前記円筒部と一体成形された第1アーム部及び第2アーム部と、前記第1アーム部の先端に装着され先端に糸案内部を有する第1ベール支持部材と、前記第2アーム部の先端に装着された第2ベール支持部材と、前記第1ベール支持部材から第2ベール支持部材にわたって設けられたベールとを有し、前記ハンドルによって回転させられるロータと、前記第1アーム部と第2アーム部との間に配置されたスプールとを備え、前記ロータの回転軸芯から前記第2ベール支持部材の重心までの距離は、前記ロータの回転軸芯から前記糸案内部を含む第1ベール支持部材の重心までの距離より長いスピニングリールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ピニオンギア歯面とドライブギア歯面が糸巻き取り正転方向に接触した際、ピニオンギアが逆方向の力を受けることで、ピニオン軸方向のガタが存在しても、ピニオンギアは押し下げ方向に押し付けられることとなるが、糸巻き取り方向の入力が不連続であったり、糸巻き取りが停止していると、ピニオンギアを押し下げる力が働かないため、その分浮き上がってしまう。この移動量はバックラッシガタとして、ハンドルを通して巻き取り側に伝達され、操作者には不快な思いを誘発することとなるという問題があった。他方で、このようなバックラッシに起因するガタを低減するため、ピニオンギア軸方向にワッシャを詰めてガタをなくすようにすると、糸巻き取り時の回転が重くなり、スムーズな回転が損なわれてしまうという問題もあった。
【0007】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、糸巻き取り前、糸巻き取り動作中、糸巻き取り停止後のいずれの状態においても、ピニオンギアをその軸下方向に押し下げることでピニオンギアの浮き上がりを防止し、バックラッシの発生を低減させることが可能な魚釣用スピニングリール、及びこれを備えた釣竿を提供することにある。本発明のこれら以外の目的は、本明細書全体を参照することにより明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態に係る魚釣用スピニングリールは、操作部と、リール本体と、ころがり軸受を介して該リール本体の前部に回転自在に支持され、該操作部と連動して回転する駆動軸と、該駆動軸に取付けられ、該駆動軸と共に回転するロータと、該操作部の回転により釣糸を巻回可能なスプールと、を備える魚釣用スピニングリールであって、前記駆動軸にピニオンギアが設けられ、該ピニオンギアの該駆動軸の軸方向前方側に弾性部材が設けられるように構成される。また、本発明の一実施形態に係る魚釣用スピニングリールにおいて、前記ころがり軸受の外輪の、前記駆動軸の軸方向でみて後方側は、該リール本体に接触していない。
【0009】
本発明の一実施形態に係る魚釣用スピニングリールにおいて、前記ころがり軸受は、前記ピニオンギアと前記駆動軸の前方側への軸方向移動を規制し、前記ころがり軸受と前記ワッシャとの間に弾性部材が設けられ、前記ころがり軸受の外輪は前記リール本体に取付けられ、該ころがり軸受の外輪の、前記駆動軸の軸方向でみて後方側は、該リール本体に接触していない。また、本発明の一実施形態に係る魚釣用スピニングリールにおいて、前記ころがり軸受は、前記ピニオンギアと前記駆動軸の前方側への軸方向移動を規制し、前記一方向クラッチの外輪と前記ワッシャとの間に弾性部材が設けられ、前記ころがり軸受の外輪は前記リール本体に取付けられ、該ころがり軸受の外輪の、前記駆動軸の軸方向でみて後方側は、該リール本体に接触していない。また、本発明の一実施形態に係る魚釣用スピニングリールにおいて、前記ころがり軸受は、前記ピニオンギアと前記駆動軸の前方側への軸方向移動を規制し、前記一方向クラッチと前記第2の保持板との間に弾性部材が設けられ、前記ころがり軸受の外輪は前記リール本体に取付けられ、該ころがり軸受の外輪の、前記駆動軸の軸方向でみて後方側は、該リール本体に接触していない。
【0010】
本発明の一実施形態に係る魚釣用スピニングリールにおいて、前記ころがり軸受は、前記ピニオンギアと前記駆動軸の前方側への軸方向移動を規制し、前記リール本体には、第2の保持板を介して一方向クラッチが設けられ、該一方向クラッチの外輪は、ワッシャを介して前記ころがり軸受の外輪に接続され、前記ころがり軸受と前記ワッシャとの間、前記一方向クラッチの外輪と前記ワッシャとの間、前記一方向クラッチと前記第2の保持板との間のいずれかに弾性部材が設けられるように構成される。
【0011】
本発明の一実施形態に係る魚釣用スピニングリールにおいて、前記弾性部材は、前記ころがり軸受の外輪を前記駆動軸の軸方向後方側に付勢する。
【0012】
本発明の一実施形態に係る魚釣用スピニングリールにおいて、前記弾性部材は、ウェーブワッシャ、スプリングワッシャ―、皿バネワッシャ又はOリングのいずれかである。
【0013】
本発明の一実施形態に係る釣竿は、上記いずれかの魚釣用スピニングリールと、竿体とを備えるように構成される。
【発明の効果】
【0014】
上記実施形態によれば、糸巻き取り前、糸巻き取り動作中、糸巻き取り停止後のいずれの状態においても、ピニオンギアをその軸下方向に押し下げることでピニオンギアの浮き上がりを防止し、バックラッシの発生を低減させることが可能な魚釣用スピニングリール、及びこれを備えた釣竿を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る釣竿を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る魚釣用スピニングリールを示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る魚釣用スピニングリールの一部拡大図を示すものである。
【
図4】本発明の一実施形態に係る魚釣用スピニングリールの一部の更なる拡大図を示すものである。
【
図5】本発明の一実施形態に係る魚釣用スピニングリールの一部拡大図を示すものである。
【
図6】本発明の一実施形態に係る魚釣用スピニングリールの一部拡大図を示すものである。
【
図7】本発明の一実施形態に係る魚釣用スピニングリールの弾性部材の例を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る魚釣用スピニングリール及び釣竿の実施形態について、添付図面を参照しながら具体的に説明する。複数の図面において共通する構成要素には当該複数の図面を通じて同一の参照符号が付されている。各図面は、説明の便宜上、必ずしも正確な縮尺で記載されているとは限らない点に留意されたい。
【0017】
図1は、本発明に係る釣竿の一実施形態を示す図である。図示のように、本発明の一実施形態による釣竿1は、後述する魚釣用スピニングリール6を備えるように構成される。
【0018】
次に、
図2乃至4を参照して、本発明に係る魚釣用スピニングリール6の基本的構成につき説明する。
【0019】
本発明の一実施形態に係る魚釣用スピニングリールは、リール本体12aと、リール本体12aから延出する脚部12bと、脚部12bの端部に形成され且つ釣竿に取り付けられる竿取付部12cとを有する。リール本体12a内には、スプール14に釣糸を巻回するための巻取駆動機構が設けられている。具体的には、ハンドル16が固定されるハンドル軸18がリール本体12a内に回転可能に支持されている。ハンドル軸18にはドライブギア20が固定されており、このドライブギア20にはピニオンギア22aが噛合している。
【0020】
ピニオンギア22aは、ハンドル軸18に対して直交する方向に延び且つリール本体12aに後述する軸受24a,24bを介して回転可能に支持された駆動軸22に設けられている。この駆動軸(駆動筒軸)22の先端部には、ベール26および釣糸案内部27を備えたロータ28が一体的に取り付けられている。
【0021】
ハンドル軸18と直交する方向に延在するスプール軸30が駆動軸22を貫通する。このスプール軸30は、駆動軸22と同心的に配されており、ハンドル軸18と直交する方向に沿って駆動軸22内を前後動できる。このスプール軸30の先端部に、釣糸を巻回する上述のスプール14が取り付けられる。
【0022】
また、ハンドル軸18には、オシレーティング機構(往復動機構)32の連動歯車34と噛合する歯車36が形成されている。本実施形態のオシレーティング機構32は、いわゆるギヤ方式のものであり、歯車36に噛み合ってこれと連動回転する連動歯車34と、連動歯車34に突設され且つ連動歯車34の回転中心軸から偏心して位置する係合突起34aと、スプール軸30の後端部にビス31を介して取り付けられ且つ係合突起34aと係合するカム溝38aを有する摺動子38と、摺動子38と係合して摺動子38の往復動を案内するガイドレール40とを備えている。このようなオシレーティング機構32は、ハンドル軸18がハンドル16の回転操作によって回転されると、ハンドル軸18上の歯車36と噛み合う連動歯車34が回転し、それに伴って、連動歯車34の係合突起34aが回転するとともに、係合突起34aと係合するカム溝38aの案内によって摺動子38が前後に往復動する。したがって、摺動子38に取り付けられたスプール軸30が軸方向に沿って往復駆動(前後動)する。
【0023】
操作部(ハンドル)16を回転操作してハンドル軸18を回転させると、オシレーティング機構32を介してスプール軸30に取り付けられたスプール14が前後に往復動するとともに、ドライブギア3、ピニオンギア22a、駆動軸22を介してロータ28が回転駆動する。このようにして、スプール14には、釣糸案内部27を介して、釣糸が均等に巻回される。
【0024】
また、リール本体12aの後端壁部13には、ロータ28の逆回転(釣糸繰り出し方向の回転)を防止する周知の一方向クラッチ40を備えた逆転防止機構の切換ロッド42の端部が貫通しており、後端壁部13から外部に突出する切換ロッド42の端部には、切換レバー42aが取り付けられている。この切換レバー42aを通じて、ロータ28を正逆転可能な状態と、正転可能でかつ逆転不能の状態とに切換えることができる。また、一方向クラッチ40は、駆動軸22に対して回り止め嵌合された内輪40aと、内輪40aの外側に配され且つ複数の転動部材Rを保持する保持器40bと、保持器40bの外側に配された外輪40cとを有している。
【0025】
ロータ28は、例えば、駆動軸22の先端に螺合される六角ナット44と、一方向クラッチ40の内輪40aとの間で挟持されて固定されている。この六角ナット44の軸部の内周面には雌ネジ44aが形成されており、この雌ネジ44aを駆動軸22の先端部外周面に形成された雄ネジに螺合させることより、ナット44が駆動軸22に締結される。この六角ナット44の頭部の外周面は、ロータ28に螺合したネジ部材45の頭部と係合しており、このネジ部材45により、六角ナット44の回転が防止される。
【0026】
また、
図3に示すように、六角ナット44の頭部の内周側には、凹環状の収容溝44bが形成されている。この収容溝44b内には、樹脂製のカラー46aを介してスプール軸30を回転可能に支持するころがり軸受48が収容されている。本実施形態では、ころがり軸受48が収容溝44bから抜け出るのを防止するため、皿小ネジ49が六角ナット44の端面に螺合してあり、この皿小ネジ49の頭部を介して、ころがり軸受48を係止する。なお、駆動軸22の後部において、スプール軸30は、樹脂製カラー46bを介して、この駆動軸22及びリール本体12aに支えられており、駆動軸22の前後に配置された2つの樹脂製カラー46a,46bにより、駆動軸22の内周面とスプール軸30の外周面との間に、極めて僅かな間隙Sを形成される。これにより、駆動軸22とスプール軸30との間の摩擦が軽減され、ハンドル16の回転に連動して、駆動軸22およびロータ28が滑らかにかつ一体的に回転する。
【0027】
また、
図3及び
図4に示すように、駆動軸22は、第1のころがり軸受241、第2のころがり軸受242により、軸方向移動を規制された状態でリール本体12aの前部に支持されている。
【0028】
より詳細には、駆動軸22(駆動筒軸とも言うが本明細書を通じて駆動軸と呼ぶ)は、ピニオンギア22aの外径を筒部22bおよび後端支持部22cよりも大径に形成し、リール本体12aに形成した段付き構造の収容凹部15に嵌合されかつ後方への移動を阻止された第1のころがり軸受241が、ピニオンギア22aとの間にワッシャ50を介してこのピニオンギア22aの前方側で筒部22bを支える。この第1のころがり軸受241の前方側(ころがり軸受24bがある側とは反対側)すなわち竿先側では、一方向クラッチ40をリール本体12a内に保持する第2の保持板54が、固定ネジでこのリール本体12aに固定してある。これにより、第1のころがり軸受241の前方側および後方側への移動が阻止され、駆動軸22は、ピニオンギア22aおよびワッシャ50を介して係合する第1のころがり軸受241により、前方側への軸方向移動が規制される。なお、本実施形態では、ピニオンギア22aとの間に介挿するワッシャ50を第1のころがり軸受241の内輪241bに係合させ、第1のころがり軸受241をリール本体12a内に保持するため、一方向クラッチ40の外輪40cとの間に介挿する第1の保持板52を、第1のころがり軸受241の外輪241aに係合させてあるが、これとは逆にすることも可能である。なお、第1の保持板52に代えて、ワッシャを用いることもできるが、本明細書では、第1の保持板52を用いる場合を前提として説明する。また、本発明の一実施形態に係る魚釣用スピニングリール6において、第1のころがり軸受241の外輪241aの、該駆動軸22の軸方向でみて後方側(第2のころがり軸受242の側)には、間隙29が設けられており、該第1のころがり軸受241の外輪241aの後方側が該リール本体12aに接触しないように構成される。さらに、詳細は後述する弾性部材が、例えば、第1の保持板52と第1のころがり軸受241の外輪241aとの間に設けられる。その他の態様として、該一方向クラッチ40の外輪40cと該第1の保持板52との間、該一方向クラッチ40と該第2の保持板54との間に設けられるようにしてもよい。いずれの態様についても詳細は後述する。
【0029】
また、駆動軸22の後端支持部22cを支持する第2のころがり軸受242は、リール本体12aに一体に形成された支持部17に収容される。この支持部17は、第2のころがり軸受242の外輪242aを嵌合する凹部17aと、この凹部17aの後端側外周部から半径方向内方に突出するフランジ部17bとを有し、このフランジ部17bと第2のころがり軸受242の外輪242aとの間で、上述の樹脂製カラー46bを挟持する。これにより、第2のころがり軸受242の後方側への移動が阻止され、駆動軸22はピニオンギア22aを介して係合する第2のころがり軸受242により、後方側への軸方向移動が規制される。
【0030】
この支持部17に収容された第2のころがり軸受242の内輪242bとピニオンギア22aとの間は直接接続される。第2のころがり軸受242は、スプール軸30の軸方向に沿って駆動軸22を前方側(第1のころがり軸受241がある側)すなわち竿先側に付勢する。ピニオンギアより前方に設けた第1の保持板52が、ピニオンギア22の軸方向での上方(前方)への浮き上がりを抑制する。また、第1のころがり軸受241の外輪241aとリール本体12aとの間に隙間29があることにより、第1の保持板52が第1のころがり軸受241の外輪241aを付勢する力は第1のころがり軸受241の内輪241bを介してピニオンギア22a、第2のころがり軸受242へと逃げる。つまり、前方に配置された第1のころがり軸受241の外輪241aはリール本体12aと接触せず、ピニオンギア軸方向に裕度を持たせることができる。第1のころがり軸受241の内輪241bは後方側に付勢され、一方、後方に配置された第2のころがり軸受242は、外輪242aをリール本体12aに係止されつつ内輪242bを前方側に付勢される。
【0031】
このように形成された魚釣用スピニングリール6は、駆動軸22をスプール軸30の軸方向に沿って第1の保持板52、第1のころがり軸受241、ピニオンギア22、第2のころがり軸受242が一体的に配置されて力を受け、また、第1のころがり軸受241の外輪241aとリール本体12aとの間に隙間があることにより弾性部材の付勢力がボディに吸収されず、転がり軸受の与圧として効果的に作用する。よって駆動軸22の軸方向移動を規制している第1のころがり軸受241、第2のころがり軸受242の内外輪間のガタ付きで生じる駆動軸22の微小前後動が吸収される。更に、駆動軸22に結合されたロータ28が回転する際の僅かなアンバランスに起因するロータの振動も、軸方向に沿って一体的に吸収される。したがって、例えば巻取り操作時に、第1のころがり軸受241、第2のころがり軸受242やロータ28に起因する振動が、リール本体12aを通じて釣り人の手に伝わるのを防ぎ、釣り人に不快感を与えるのを防止すると共に、ころがり軸受のガタ付きの抑制により、ころがり軸受の使用寿命を延長することができる。
【0032】
本発明の一実施形態に係る魚釣用スピニングリール6は、操作部16と、リール本体12aと、第1のころがり軸受241を介して該リール本体12aの前部に回転自在に支持され、該操作部16と連動して回転する駆動軸22と、該駆動軸22に取付けられ、該駆動軸と共に回転するロータ28と、該操作部16の回転により釣糸を巻回可能なスプール14と、を備える魚釣用スピニングリール6であって、該駆動軸22にピニオンギア22aが設けられ、該ピニオンギア22aの該駆動軸22の軸方向前方側に弾性部材8が設けられるように構成される。
【0033】
このようにして、糸巻き取り前、糸巻き取り動作中、糸巻き取り停止後のいずれの状態においても、ピニオンギアをその軸下方向に押し下げることでピニオンギアの浮き上がりを防止し、バックラッシの発生を低減させることが可能な魚釣用スピニングリールを提供することが可能となる。既述のように、ピニオンギア歯面とドライブギア歯面が糸巻き取り正転方向に接触した際、ピニオンギアが逆方向の力を受けることで、ピニオン軸方向のガタが存在しても、ピニオンギアは押し下げ方向に押し付けられることとなるが、糸巻き取り方向の入力が不連続であったり、糸巻き取りが停止していると、ピニオンギアを押し下げる力が働かないため、その分浮き上がってしまう。仮に第2のころがり軸受242の内輪242bとピニオンギア22aとの間にスプリングワッシャを設けた場合、更にそのような状態となってしまう。しかしながら、上述の弾性部材を設け、第1のころがり軸受241の外輪241aとリール本体12aとの間に隙間29を設けることで、ピニオンギアをその軸下方向に一体的に押し下げることができ、このようなピニオンギアの浮き上がりを防止ないし低減することができることで、バックラッシガタの発生を防止ないし低減することができるため、ハンドルを通して巻き取り側に伝達され、操作者に不快な思いを誘発することを防止ないし低減することが可能となる。
【0034】
次に、
図3、4、5及び6を参照して、本発明の一実施形態に係る魚釣用スピニングリール6について説明する。本発明の一実施形態に係る魚釣用スピニングリール6において、該第1のころがり軸受241は、該ピニオンギア22aと該駆動軸22の前方側への軸方向移動を規制し、該リール本体12aには、第2の保持板54を介して一方向クラッチ40が設けられ、該一方向クラッチ40の外輪40cは、第1の保持板52を介して該第1のころがり軸受241の外輪241aに接続され、該第1のころがり軸受241と該第1の保持板52との間(
図3,4に示す例)、該一方向クラッチ40の外輪40cと該第1の保持板52との間(
図6に示す例)、該一方向クラッチ40と該第2の保持板54との間(
図5に示す例)のいずれかに弾性部材8が設けられるように構成される。なお、図示しないが、該一方向クラッチ40と、該第2の保持板54との間にころがり軸受を設ける構成も考えられ、その場合には、弾性部材8を該第2の保持板54と該ころがり軸受の外輪との間に設けるようにしてもよい。
【0035】
本発明の一実施形態に係る魚釣用スピニングリール6によれば、糸巻き取り前、糸巻き取り動作中、糸巻き取り停止後のいずれの状態においても、ピニオンギアをその軸下方向に押し下げることでピニオンギアの浮き上がりを防止し、バックラッシの発生を低減させることが可能な魚釣用スピニングリールを提供することが可能となる。既述のように、ピニオンギア歯面とドライブギア歯面が糸巻き取り正転方向に接触した際、ピニオンギアが逆方向の力を受けることで、ピニオン軸方向のガタが存在しても、ピニオンギアは押し下げ方向に押し付けられることとなるが、糸巻き取り方向の入力が不連続であったり、糸巻き取りが停止していると、ピニオンギアを押し下げる力が働かないため、その分浮き上がってしまう。仮に、第2のころがり軸受242の内輪とピニオンギア22aとの間にスプリングワッシャを設けた場合、更にそのような状態となってしまう。しかしながら、上述の弾性部材を設けることで、ピニオンギアをその軸下方向に押し下げることができ、このようなピニオンギアの浮き上がりを防止ないし低減することができることで、バックラッシガタの発生を防止ないし低減することができるため、ハンドルを通して巻き取り側に伝達され、操作者に不快な思いを誘発することを防止ないし低減することが可能となる。
【0036】
本発明の一実施形態に係る魚釣用スピニングリール6において、該弾性部材8は、該第1のころがり軸受241の外輪241aを該駆動軸22の軸方向後方側に付勢する。このようにして、弾性部材8がピニオンギア24aを該軸方向後方側(第1のころがり軸受241がある側とは反対の第2のころがり軸受242の側)に付勢することで、ピニオンギアをその軸下方向に押し下げることができ、このようなピニオンギアの浮き上がりを防止ないし低減することができることで、バックラッシガタの発生を防止ないし低減することができる。
【0037】
次に、
図7に示すように、本発明の一実施形態に係る魚釣用スピニングリール6において、該弾性部材8は、ウェーブワッシャ、スプリングワッシャ―、皿バネワッシャ又はOリングのいずれかである。
【0038】
本発明の一実施形態に係る釣竿1は、上記いずれかの魚釣用スピニングリールと、竿体2とを備えるように構成される。このようにして、糸巻き取り前、糸巻き取り動作中、糸巻き取り停止後のいずれの状態においても、ピニオンギアをその軸下方向に押し下げることでピニオンギアの浮き上がりを防止し、バックラッシの発生を低減させることが可能な魚釣用スピニングリールを備えた釣竿を提供することが可能となる。
【0039】
本明細書で説明された各構成要素の寸法、材料、及び配置は、実施形態中で明示的に説明されたものに限定されず、この各構成要素は、本発明の範囲に含まれうる任意の寸法、材料、及び配置を有するように変形することができる。また、本明細書において明示的に説明していない構成要素を、説明した実施形態に付加することもできるし、各実施形態において説明した構成要素の一部を省略することもできる。
【符号の説明】
【0040】
1 釣竿
6 リール
8 弾性部材
12a リール本体
12b 脚部
14 スプール
16 操作部(ハンドル)
18 ハンドル軸
20 ドライブギア
22a ピニオンギア
22 駆動軸
241 第1のころがり軸受
241a 第1のころがり軸受の外輪
242b 第1のころがり軸受の内輪
242 第2のころがり軸受
242a 第2のころがり軸受の外輪
242b 第2のころがり軸受の内輪
26 ベール
27 釣糸案内部
28 ロータ
29 間隙
30 スプール軸
40 一方向クラッチ
40a 内輪
40b 保持器
40c 外輪
50 ワッシャ
52 第1の保持板
54 第2の保持板