IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 豊田合成株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-車両用リッド装置 図1
  • 特開-車両用リッド装置 図2
  • 特開-車両用リッド装置 図3
  • 特開-車両用リッド装置 図4
  • 特開-車両用リッド装置 図5
  • 特開-車両用リッド装置 図6
  • 特開-車両用リッド装置 図7
  • 特開-車両用リッド装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064454
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】車両用リッド装置
(51)【国際特許分類】
   F21S 43/40 20180101AFI20240507BHJP
   F21S 43/50 20180101ALI20240507BHJP
   F21S 43/14 20180101ALI20240507BHJP
   F21S 43/13 20180101ALI20240507BHJP
   F21S 43/20 20180101ALI20240507BHJP
   F21Y 101/00 20160101ALN20240507BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240507BHJP
   F21W 104/00 20180101ALN20240507BHJP
【FI】
F21S43/40
F21S43/50
F21S43/14
F21S43/13
F21S43/20
F21Y101:00 100
F21Y115:10
F21W104:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173053
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】徳留 尚希
(72)【発明者】
【氏名】金子 健一郎
(57)【要約】      (修正有)
【課題】簡単な構造からなり、かつ、周縁隙間の全体を光源により明るく照明することのできる車両用リッド装置を提供する。
【解決手段】車両側部材に設けられた開口を閉じる閉位置と、前記開口を開放する開位置と、の間で位置変化するリッド部材2と、開口よりも奥側に配置され可視光線を発する光源6と、開口に向けた可視光線の経路を形成する経路形成要素と、を具備し、経路形成要素は、開口の奥側から入射した前記可視光線を透過させ、車両側部材における開口周縁部と閉位置にあるリッド部材2との隙間95を通じて、開口の外側に向けて出射するレンズ4を有し、隙間95は、第1隙間領域95fと、第1隙間領域95fと異なる第2隙間領域95sとを有し、レンズ4は、第1隙間領域95fに向けて可視光線を出射する第1レンズ領域4fと、第2隙間領域95sに向けて可視光線を出射する第2レンズ領域4sと、を有する、車両用リッド装置1
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両側部材に設けられた開口を閉じる閉位置と、前記開口を開放する開位置と、の間で位置変化するリッド部材と、
前記開口よりも奥側に配置され可視光線を発する光源と、
前記開口に向けた前記可視光線の経路を形成する経路形成要素と、を具備し、
前記経路形成要素は、前記開口の奥側から入射した前記可視光線を透過させ、前記車両側部材における開口周縁部と前記閉位置にある前記リッド部材との隙間を通じて、前記開口の外側に向けて出射するレンズを有し、
前記隙間は、第1隙間領域と、前記第1隙間領域と異なる第2隙間領域とを有し、
前記レンズは、前記第1隙間領域に向けて前記可視光線を出射する第1レンズ領域と、前記第2隙間領域に向けて前記可視光線を出射する第2レンズ領域と、を有する、車両用リッド装置。
【請求項2】
前記レンズにおける奥側面の形状は、前記第1レンズ領域と前記第2レンズ領域とで異なる、請求項1に記載の車両用リッド装置。
【請求項3】
一つの前記光源が発する前記可視光線が、前記第1レンズ領域および前記第2レンズ領域を透過し、
前記第1レンズ領域と前記光源との距離は、前記第2レンズ領域と前記光源との距離よりも大きく、
前記第1レンズ領域における奥側面は凸面状をなす、請求項1または請求項2に記載の車両用リッド装置。
【請求項4】
前記第1レンズ領域は前記第1隙間領域に対面しつつ前記第1隙間領域に沿って延び、
前記第2レンズ領域における奥側面は凹面状をなし、
前記第2レンズ領域と前記第2隙間領域との距離は、前記第1レンズ領域と前記第1隙間領域との距離よりも大きい、請求項3に記載の車両用リッド装置。
【請求項5】
前記光源として、互いに異なる位置にある第1光源及び第2光源を有し、
前記第1光源が発する前記可視光線が前記第1レンズ領域を透過し、
前記第2光源が発する前記可視光線が前記第2レンズ領域を透過する、請求項1または請求項2に記載の車両用リッド装置。
【請求項6】
前記経路形成要素は、
前記レンズよりも奥側に配置され、前記光源が発した前記可視光線を前記第1レンズ領域および/または前記第2レンズ領域に向けて反射する反射体を有する、請求項1または請求項2に記載の車両用リッド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用リッド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載され、車両側部材に設けられた開口をリッド部材により開閉する車両用リッド装置として、従来から種々のものが知られている。
【0003】
当該車両用リッド装置の一種として、例えば、車体に設けられたエネルギ供給口、例えば車両へのエネルギ供給のための給油口や給電口等をリッドにより外側から覆いまたは開くものが知られている。また、当該車両用リッド装置の一種として、例えば、車両ドアのラッチを解除するドアハンドル(ラッチ解除ハンドルとも称される)を、使用しない際には車両ドアの外部から遮断し、使用する際には車両ドアの外部からアクセス可能にするための装置も知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
上記した車両用リッド装置において、エネルギ供給口やドアハンドルは、例えば車両ドアやボデー、ボンネット等の車両側部材に設けられた開口の奥側に配置される。リッド部材は、開口を閉じる閉位置と開口を開放する開位置との間を位置変化することで、当該開口を開閉する。
【0005】
近年、車体や車両外装品、路面等を明るく照らしたり、これらに各種の意匠を表示したりする目的で、車両に光源を搭載することが提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0006】
詳しくは、特許文献1に紹介されている車両用リッド装置では、車両側部材である車両ドアの内部、すなわち開口の奥側に光源を搭載している。そして、特許文献1には、当該光源が発する光によって開口の内部を照明する旨が説明されている。さらに、当該特許文献1には、リッド部材が閉位置にあるときに、当該光源が発した光を、車両側部材の開口周縁部と閉位置にあるリッド部材との隙間から、車両用リッド装置の外方に向けて漏れ光らせる旨も説明されている([0060]~[0063]段落)。以下、必要に応じて、「車両側部材の開口周縁部と閉位置にあるリッド部材との隙間」を、単に、周縁隙間と称する場合がある。
【0007】
特許文献2に紹介されている車両用リッド装置では、車両ドアにおけるドアハンドルの内部に照明部を設けている。当該照明部は、光源に加えて導光部材を有し、当該導光部材を通じて、光源が発する光をドアハンドルの外側に照射することで、車両ドアの内部(ドアハンドル収容部)を照明している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2019-512623号公報
【特許文献2】特開2020-93732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特許文献1の車両用リッド装置のように、光源の発する光を、リッド部材が閉位置にあるときに開口の周縁部とリッド部材との隙間から外部に向けて漏れ光らせるためには、既述した周縁隙間が必須となる。
【0010】
しかし乍ら、上記の周縁隙間が過大であれば、当該周縁隙間を経て開口の奥側(例えば車両ドアの内部等)に雨水や塵芥等が多量に入り込む等の不具合が生じる虞がある。当該周縁隙間を最小限に設計すると、リッド部材や開口周縁部の寸法がばらついた場合に、当該周縁隙間が過小になる虞がある。当該周縁隙間が過小であれば、光源が発する光を車両外部から視認し難くなり、車両用リッド装置に優れた機能性や意匠性を付与し難い問題が生じる。
【0011】
上記した特許文献1のように開口の奥側に光源を搭載した上で、さらに、リッド部材自体にも光源を搭載すれば、上記した周縁隙間を設けることなく、当該光源が発する光を、車両用リッド装置の外部に向けて表示することができると考えられる。具体的には、光源をリッド部材の表面に露出させたり、可視光線を透過可能なレンズをリッド部材に設けるとともに光源を当該レンズの奥側に配置したりすることが考えられる。
【0012】
しかし上記のようにリッド部材自体にも光源を搭載する場合には、各々異なる光源を含む異なる二種の照明機構を必要とするために、車両用リッド装置が複雑化し、その結果、当該車両用リッド装置に要するコストが高騰する問題がある。
【0013】
また、上記したようにリッド部材は開位置と閉位置との間を位置変化するものであるところ、リッド部材に光源を搭載する場合には、当該光源と電源とを連絡するワイヤハーネスとして、リッド部材の位置変化に伴い変形するものを用いる必要がある。この場合、リッド部材と電源との位置関係や、リッド部材が位置変化する軌跡等よっては、当該ワイヤハーネスがリッド部材の位置変化に干渉する虞もある。
特許文献2に紹介されている車両用リッド装置においても、リッド部材であるドアハンドルの内部に照明部が設けられているために、同様の問題が生じる。
【0014】
さらに、特許文献2の車両用リッド装置によると、導光部材を透過した光は、上記の周縁隙間の一部に向かうだけであり、当該光は周縁隙間の多くの部分にはあたらない。したがって、周縁隙間の多くの部分には、反射し、拡散された光が到達するだけであり、当該多くの部分は暗く光るだけである(図4(b)、〔0035〕段落参照)。これにより、特許文献2の車両用リッド装置には、周縁隙間の全体を明るく照明することができないという問題もある。
【0015】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、簡単な構造からなり、かつ、周縁隙間の全体を光源により明るく照明することのできる車両用リッド装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決する本発明の車両用リッド装置は、
車両側部材に設けられた開口を閉じる閉位置と、前記開口を開放する開位置と、の間で位置変化するリッド部材と、
前記開口よりも奥側に配置され可視光線を発する光源と、
前記開口に向けた前記可視光線の経路を形成する経路形成要素と、を具備し、
前記経路形成要素は、前記開口の奥側から入射した前記可視光線を透過させ、前記車両側部材における開口周縁部と前記閉位置にある前記リッド部材との隙間を通じて、前記開口の外側に向けて出射するレンズを有し、
前記隙間は、第1隙間領域と、前記第1隙間領域と異なる第2隙間領域とを有し、
前記レンズは、前記第1隙間領域に向けて前記可視光線を出射する第1レンズ領域と、前記第2隙間領域に向けて前記可視光線を出射する第2レンズ領域と、を有する、車両用リッド装置である。
【0017】
本発明の車両用リッド装置は、簡単な構造からなり、かつ、周縁隙間の全体を光源により明るく照明することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】車両側部材に取り付けられた実施例1の車両用リッド装置を車両側部材の表側から見た様子を模式的に表す説明図である。
図2】実施例1の車両用リッド装置の外観を模式的に表す説明図である。
図3】実施例1の車両用リッド装置の外観を模式的に表す説明図である。
図4】実施例1の車両用リッド装置の断面を模式的に表す説明図である。
図5】実施例1の車両用リッド装置における可視光線の経路を模式的に表す説明図である。
図6】実施例2の車両用リッド装置における可視光線の経路を模式的に表す説明図である。
図7】実施例3の車両用リッド装置における可視光線の経路を模式的に表す説明図である。
図8】実施例4の車両用リッド装置における可視光線の経路を模式的に表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の車両用リッド装置は、開口よりも奥側に配置され可視光線を発する光源と、開口に向けた可視光線の経路を形成する経路形成要素と、を具備する。したがって本発明の車両用リッド装置によると、開口よりも奥側にある光源が発した可視光線は、経路形成要素により形成される経路上を開口に向けて進む。
【0020】
経路形成要素はレンズを有する。当該レンズは可視光線を透過させるものであり、開口の奥側から周縁隙間を通じ開口の外側に向けた可視光線の経路を形成する。このように本発明の車両用リッド装置は、レンズを透過し出射した可視光線によって周縁隙間を照明するために、開口の奥側、すなわち、車両用リッド装置におけるリッド部材以外の部分に光源を配置することが可能である。つまり、本発明の車両用リッド装置は、例えば特許文献2の車両用リッド装置のようにリッド部材に光源を搭載したものに比べて、簡単な構造からなる。
【0021】
また、上記したレンズは、第1レンズ領域と第2レンズ領域とを有する。第1レンズ領域は、周縁隙間の一部である第1隙間領域に向けて、可視光線を出射する。また第2レンズ領域は、周縁隙間のうち第1隙間領域とは異なる領域である第2隙間領域に向けて、可視光線を出射する。
【0022】
このように、本発明の車両用リッド装置によると、周縁隙間を第1隙間領域と第2隙間領域とに分け、その各々をレンズにおける異なる領域、すなわち、第1レンズ領域および第2レンズ領域を介して照明する。換言すると、本発明の車両用リッド装置によると、第1レンズ領域における奥側面の形状を第1隙間領域に適した形状にでき、かつ、第2レンズ領域における奥側面の形状を第2隙間領域に適した形状にできる。これにより、本発明の車両用リッド装置によると、第1隙間領域と第2隙間領域との両方に充分な量の可視光線を供給でき、これにより、第1隙間領域と第2隙間領域との両方を明るく照明することが可能になり、ひいては、周縁隙間を全体として明るく照明することが可能になる。
【0023】
このため本発明の車両用リッド装置は、簡単な構造からなり、かつ、周縁隙間の全体を光源により明るく照明することのできる車両用リッド装置ということが可能である。
【0024】
以下、本発明の車両用リッド装置をその構成要素毎に説明する。
なお、特に断らない限り、本明細書に記載された数値範囲「x~y」は、下限x及び上限yをその範囲に含む。そして、これらの上限値及び下限値、並びに実施例中に列記した数値も含めてそれらを任意に組み合わせることで新たな数値範囲を構成し得る。更に、上記の何れかの数値範囲内から任意に選択した数値を新たな数値範囲の上限、下限の数値とすることができる。
【0025】
本発明の車両用リッド装置は、車両側部材に設けられた開口をリッド部材により開閉するものであれば良く、開口の種類は特に限定されない。例えば、本発明の車両用リッド装置は、既述したエネルギ供給口を収容する筐体の開口を、リッド部材により開閉するものであってもよい。または、本発明の車両用リッド装置は、ドアハンドルがその奥側に配置される開口を、リッド部材により開閉するものであってもよい。本発明の車両用リッド装置は、エネルギ供給口やドアハンドルを含んでも良いし含まなくても良い。
【0026】
本発明の車両用リッド装置は、リッド部材、経路形成要素および光源を有する。
【0027】
このうち光源は可視光線を発するものであれば良く、その種類、数、光色等は特に限定しない。光源の一例として、LEDランプやハロゲンランプ、白熱灯を例示できる。
【0028】
本発明の車両用リッド装置における光源の数は特に限定されない。また、光源は開口の奥側に配置されれば良い。したがって、当該光源の位置や数は特に限定されず、開口が設けられている車両側部材の形状、当該車両側部材と開口との位置関係、後述する第1隙間領域、第2隙間領域、第1レンズ領域および第2レンズ領域の形状や位置関係等に応じて、適宜適切な数、適宜適切な位置に設ければ良い。
【0029】
なお、本発明の車両用リッド装置において、光源は、リッド部材が開位置にあるときにも、開口の手前側つまり本発明の車両用リッド装置の外部から視認され難い位置にあるのが好適である。光源が直接視認されると、車両用リッド装置の意匠性が損なわれる虞があるためである。
したがって光源は、開口よりもさらに当該開口の径方向外側に配置されるのが好適といい得る。
【0030】
リッド部材は、車両側部材に設けられた開口を開閉可能であり、当該開口を閉じる閉位置と当該開口を開放する開位置との間で位置変化する。本発明では、リッド部材の位置変化様式やリッド部材を駆動する機構等については特に限定しない。例えば、リッド部材は、閉位置から開位置に位置変化する際に開口の奥側に入り込む所謂ダイブ型のものであっても良いし、開口の手前側に飛び出す所謂ポップアップ型のものであっても良い。
【0031】
なお既述したように、本発明の車両用リッド装置においては、周縁隙間を通じて、開口の奥側から開口の外側に向けて可視光線を進行させる。したがって、閉位置において開口を閉じるリッド部材は、可視光線の進行を阻む部分といい得る。
【0032】
経路形成要素は、開口に向けた可視光線の経路を形成する。当該経路形成要素はレンズを有し、その他、後述する反射体を有するのも好適である。
【0033】
レンズは、開口の奥側から開口の外側に向けて可視光線を透過させかつ上記した周縁隙間に向けて出射するものであり、可視光線透過性を有する。
当該レンズは、光源が発した可視光線を入射させ、かつ、周縁隙間に可視光線を出射し得る位置にあれば良く、例えば、リッド部材の裏側に一体化されても良いし、場合によっては車両側部材における開口の周縁部に一体化されても良い。
【0034】
リッド部材の裏側に一体化される場合、レンズは、リッド部材よりもやや大径であるのが好適である。そしてこの場合、レンズの外周端部はリッド部材の外縁部よりも径方向外側に僅かにはみ出すのが好適である。ここでいうリッド部材の外縁部とは、リッド部材のうち開口を覆う部分、換言すると、リッド部材のうち閉位置において外部から視認される部分の外縁部を意味する。
【0035】
車両側部材における開口の周縁部に一体化される場合、レンズは、外径が開口よりも大径でありかつ内径が開口よりも小径であるリング状をなすのが好適である。そしてこの場合、レンズの外周端部は開口の径方向外側に僅かにはみ出し、かつ、レンズの内周端部は開口の径方向内側に僅かにはみ出すのが好適である。
【0036】
レンズは、波長380~800nmの可視光線を少しでも透過可能であれば良いが、本発明の車両用リッド装置に優れた機能性や意匠性を付与することを考慮すると、可視光線透過率がある程度大きいものであることが好適である。具体的には、本発明の車両用リッド装置におけるレンズの可視光線透過率は、30%以上、50%以上、または70%以上であるのが好適である。
【0037】
具体的には、レンズの材料としては、ポリカーボネートやアクリル等の透明樹脂を用いるのが好適である。レンズの表側面には、ブラスト加工等の可視光線を拡散させる加工を施しても良い。
【0038】
レンズをリッド部材の裏側に一体化する場合、レンズとリッド部材との一体品を製造する方法としては、一般的な方法を採用すれば良い。
【0039】
例えば、上記の一体品の製造方法として、透明樹脂と有色樹脂とを材料とした二色成型法や、インサート成形法を例示できる。このうち透明樹脂がレンズの材料であり、有色樹脂がリッド部材の材料である。その他、別体で成形したリッド部材とレンズとを、爪嵌合や接着テープ、接着剤等を用いて一体化しても良い。
【0040】
また、例えばリッド部材とレンズとの一体品を透明樹脂製としても良い。この場合、当該一体品の表側面をめっきしたり、可視光線透過率の低い塗料を用いて塗装したりすることで、当該一体品のうちリッド部材として機能する部分を形成することができる。
【0041】
レンズは、第1レンズ領域と第2レンズ領域を有する。第1レンズ領域は、レンズのうち、周縁隙間の第1隙間領域に対応する部分ということができる。また、第2レンズ領域は、レンズのうち、周縁隙間の第2隙間領域に対応する部分ということができる。
本明細書においては、必要に応じて、第1レンズ領域および第2レンズ領域を総称して単にレンズ領域と称する場合がある。また、第1隙間領域と第2隙間領域とを総称して単に隙間領域と称する場合がある。
【0042】
ここで、周縁隙間における第1隙間領域および第2隙間領域の位置や大きさは、開口に対する光源の位置や、必要に応じて後述する反射体の位置等に応じて、適宜設定することができる。そして、レンズにおける第1レンズ領域および第2レンズ領域の位置や大きさ、形状等もまた、開口に対する光源の位置や反射体の位置等に応じて、適宜設定すれば良い。
【0043】
なお、周縁隙間は、第1隙間領域および第2隙間領域以外のその他の隙間領域(第3隙間領域、第4隙間領域・・・)を有しても良い。この場合、レンズは、当該その他の隙間領域に対応するレンズ領域(第3レンズ領域、第4レンズ領域・・・)を有すれば良い。
【0044】
既述したように、本発明の車両用リッド装置における経路形成要素は、反射体を有し得る。反射体は、レンズよりもさらに奥側に配置され、光源が発した可視光線を、第1レンズ領域および/または第2レンズ領域に向けて反射するものである。
【0045】
経路形成要素が反射体を有することで、本発明の車両用リッド装置は、光源が発した可視光線を効率よく第1レンズ領域や第2レンズ領域に供給することができ、更には当該可視光線を効率よく第1隙間領域や第2隙間領域に供給することができる。そしてその結果、例えば少ない光量である等、周縁隙間の全体を明るく照明することが比較的困難な条件下であっても、第1隙間領域や第2隙間領域を充分な明るさで照明することが可能である。
【0046】
反射体は、可視光線を反射できれば良く、その形状や材料は特に限定されないが、可視光線を全反射するものであるのが好適である。例えば反射体は、平滑な反射面を有する金属板であっても良いし、樹脂等を基体とし当該基体の反射面にメッキや塗装等による反射層を形成したものであっても良い。
【0047】
また反射体は、可視光線を単に反射するだけでなく、当該可視光線をレンズ領域に向けて集光する集光体であるのが特に好ましい。集光体としての反射体は、例えば、集光レンズや集光ミラー等と称される凹面鏡構造を有するのが特に好適である。この場合には、光の損失を抑制でき、少ない光量で周縁隙間を照明できる利点がある。
【0048】
反射体は、開口の手前側から視認されても良いし、視認されなくても良い。反射体が開口の手前側から視認される場合、リッド部材が開位置にあるときには開口から反射光で光る反射体が見える。
なお、反射体の反射面は単なる平滑面であっても良いが、所定の文字や図形等を表示する凹凸面であっても良い。また、反射体の反射面は単色であっても良いが、塗装や印刷等により所定の文字や図形を表示しても良い。これらの場合には、本発明の車両用リッド装置により多様な意匠を表示することが可能になる。
【0049】
ところで、第1レンズ領域や第2レンズ領域の形状として、特にその奥側面の形状が重要である。例えば、第1レンズ領域や第2レンズ領域における奥側面の形状を凹面状や凸面状とすることで、該当するレンズ領域に入射した可視光線を集めるまたは散らすことができ、これにより、レンズ領域に到達した可視光線の経路を調整して、当該可視光線を当該レンズ領域に対応する第1隙間領域または第2隙間領域に向けて透過させ出射することができる。
【0050】
第1レンズ領域や第2レンズ領域における奥側面の形状としては、多様な形状とその組み合わせを採用することができる。
例えば、第1レンズ領域や第2レンズ領域における奥側面は、凸面状や凹面状であっても良いし、平面状であっても良い。本明細書では、必要に応じて、その奥側面が凸面状である第1レンズ領域を凸面状の第1レンズ領域と称し、その奥側面が凹面状である第1レンズ領域を凹面状の第1レンズ領域と称し、その奥側面が平面状である第1レンズ領域を平面状の第1レンズ領域と称する場合がある。同様に、その奥側面が凸面状である第2レンズ領域を凸面状の第2レンズ領域と称し、その奥側面が凹面状である第2レンズ領域を凹面状の第2レンズ領域と称し、その奥側面が平面状である第2レンズ領域を平面状の第2レンズ領域と称する場合がある。
【0051】
凸面状または凹面状の第1レンズ領域において、その奥側面の全体が同じ曲率であっても良いし、その奥側面の一部が他の一部とは異なる曲率であっても良い。同様に、凸面状または凹面状をなす第2レンズ領域において、その奥側面の全体が同じ曲率であっても良いし、その奥側面の一部が他の一部とは異なる曲率であっても良い。
【0052】
本発明の車両用リッド装置において、例えば、2つのレンズ領域の一方を凸面状の第1レンズ領域とし、他方を凹面状の第2レンズ領域としても良い。こうすることで、光源に対して多様な位置にある第1隙間領域および第2隙間領域に対して、各々対応する第1レンズ領域および第2レンズ領域から充分な量の可視光線を供給することができ、第1隙間領域および第2隙間領域をともに明るく照明することが可能である。
【0053】
また、詳細は実施例の欄で説明するが、特に光源が一つである場合、2つのレンズ領域のうち光源から遠い側を凸面状の第1レンズ領域とするのが好適である。こうすることで、第1隙間領域に対して、効率よく、充分な量の可視光線を供給できる利点がある。
【0054】
この場合、2つのレンズ領域のうち光源から近い側を凹面状の第2レンズ領域とするのがより好適である。こうすることで、第1隙間領域および第2隙間領域に対して、効率よく、充分な量の可視光線を供給することが可能である。
【0055】
本発明の車両用リッド装置は、互いに異なる位置にある2つの光源を有しても良い。この場合、一方の光源である第1光源が発する可視光線が第1レンズ領域を透過し、他方の光源である第2光源が発する可視光線が第2レンズ領域を透過するようにすれば、光源とレンズ領域との組み合わせの自由度が高まる。これにより、第1レンズ領域および第2レンズ領域に対して効率よく充分な量の可視光線を供給することができ、ひいては、第1隙間領域および第2隙間領域に対して効率よく充分な量の可視光線を供給することができる。
なお、本明細書でいう「可視光線がレンズ領域を透過する」とは、可視光線がレンズ領域に入射し、当該レンズ領域を透過し、さらに、当該レンズ領域から出射することを意味する。
【0056】
また、上記した「第1光源が発する可視光線が第1レンズ領域を透過し、第2光源が発する可視光線が第2レンズ領域を透過する」とは、第1光源が発する可視光線が主として第1レンズ領域を透過し、第2光源が発する可視光線が主として第2レンズ領域を透過することを意味する。つまり、第1光源が発する可視光線の一部が第2レンズ領域を透過しても良いし、第2光源が発する可視光線の一部が第1レンズ領域を透過しても良い。つまりこの場合、第1光源が発し第1レンズ領域を透過する可視光線の量が、第1光源が発し第2レンズ領域を透過する可視光線の量よりも多ければ良い。同様に、第2光源が発し第2レンズ領域を透過する可視光線の量が、第2光源が発し第1レンズ領域を透過する量よりも多ければ良い。
【0057】
本発明の車両用リッド装置が上記の第1光源および第2光源を有し、第1光源が発する可視光線が第1レンズ領域を透過し、第2光源が発する可視光線が第2レンズ領域を透過する場合、第1レンズ領域における奥側面の形状と第2レンズ領域における奥側面の形状とが同じ形状であっても良い。
【0058】
さらに、本発明の車両用リッド装置において、レンズが凸面状の第1レンズ領域を有する場合には、第1レンズ領域は第1隙間領域に対面しつつ当該第1隙間領域に沿って延びるのが好適である。第1レンズ領域および第2レンズ領域の両方においてその奥側面が凸面状をなす場合には、凸面状をなす第1レンズ領域は第1隙間領域に対面しつつ当該第1隙間領域に沿って延び、かつ、凸面状をなす第2レンズ領域は第2隙間領域に対面しつつ当該第2隙間領域に沿って延びるのが好適である。
【0059】
一方、レンズが樹脂製であり凹面状をなす第2レンズ領域を有する場合には、レンズの成形精度を考慮して第2レンズ領域を望み通りの形状に成形するためには、当該第2レンズ領域は第2隙間領域からやや離れた位置にあるのが好適である。換言すると、この場合、第2レンズ領域と第2隙間領域との距離は、第1レンズ領域と第1隙間領域との距離よりも大きいのが好適である。
【0060】
以下、具体例を挙げて、本発明の車両用リッド装置を説明する。
【0061】
(実施例1)
実施例1の車両用リッド装置は、車両側部材としてのボデーに設けられその奥側に給電口が配置された開口を開閉するためのものである。
図1は車両側部材に取り付けられた実施例1の車両用リッド装置を車両側部材の表側すなわち車両の外部側から見た様子を模式的に表す説明図である。図2および図3は実施例1の車両用リッド装置の外観を模式的に表す説明図である。図4は実施例1の車両用リッド装置の断面を模式的に表す説明図である。図5は実施例1の車両用リッド装置における可視光線の経路を模式的に表す説明図である。図6は実施例2の車両用リッド装置における可視光線の経路を模式的に表す説明図である。図7は実施例3の車両用リッド装置における可視光線の経路を模式的に表す説明図である。図8は実施例4の車両用リッド装置における可視光線の経路を模式的に表す説明図である。
以下、上、下、前、後、奥、表とは各図に示す上、下、前、後、奥、表を意味するものとする。なお、前後方向は実施例1の車両用リッド装置を搭載した車両の進行方向に一致する。表側は車両の外部側に一致し、奥側は車両の内部側に一致する。
【0062】
図1に示すように、実施例1の車両用リッド装置1は、車両側部材であるボデー90(より詳しくはフェンダー)に取り付けられ、当該ボデー90に設けられた開口91の奥側に搭載されるものである。
【0063】
図2図3および図4に示すように、実施例1の車両用リッド装置1は、リッド部材2、経路形成要素3、光源6、リッド部材駆動機構8、及びケース体7を有する。
リッド部材2、経路形成要素3、光源6およびリッド部材駆動機構8は、ケース体7の内部に収容保持されている。ケース体7は車両側部材であるボデー90に対し、開口91に奥側から対面する位置に取り付けられている。
実施例1の車両用リッド装置1は、その全体が、ボデー90の奥側に配置される。
【0064】
実施例1の車両用リッド装置1が搭載される車両は電気自動車であり、図略の駆動用バッテリを搭載している。図4に示すように、ボデー90に設けられた開口91の奥側には、当該駆動用バッテリに充電するための給電口93が配置されている。当該給電口93はケース体7の奥側にあり、当該ケース体7に設けられたケース開口71の内側に露出する。
【0065】
図4に示すように、実施例1の車両用リッド装置1における経路形成要素3は、レンズ4および反射体5を有する。このうち反射体5はケース体7に一体化され、レンズ4はリッド部材2に一体化されている。
【0066】
リッド部材2は、リッド20、リッドインナ25、およびシール部材26を有する。
リッド20は有色樹脂製であり略板状をなし、その外形は開口91よりも僅かに小さい。
経路形成要素3のレンズ4は、リッド20の奥側面に一体化されている。レンズ4は透明樹脂製であり略板状をなし、その外形はリッド20および開口91よりもやや大きい。レンズ4の周縁部40は、リッド20の周方向全周にわたって、リッド20の外縁よりもさらに径方向外側にはみ出している。レンズ4の周縁部40はリッド20の外縁を周方向全周にわたって帯状に縁取っているともいい得る。
【0067】
図2および図3に示すように、リッドインナ25は略環状をなす。リッドインナ25はレンズ4の周縁部40に対して奥側から取り付けられ、レンズ4の周縁部40を奥側から覆っている。
図4に示すように、リッドインナ25の外径はレンズ4の外径よりも大きい。したがってリッドインナ25の周縁部はレンズ4の外縁よりもさらに径方向外側にはみ出している。
【0068】
図3に示すように、リッドインナ25にはガイドピン27が設けられている。当該ガイドピン27は、リッド部材駆動機構8の一部である図略のガイドレールに保持されている。これによりリッド部材2は、当該ガイドレールに沿って位置変化する。ガイドピン27はリッド部材駆動機構8の一部といい得る。
【0069】
さらに、リッド部材駆動機構8は図略のラックアンドピニオン構造を有する。当該ラックアンドピニオン構造のうちラックはリッドインナ25に一体化され、ピニオンはケース体7に軸支されている。ピニオンには図略の電動モータが取り付けられている。電動モータによりピニオンが回転駆動されると、当該ピニオンに噛合するラックがピニオンに対してスライドする。
【0070】
上記のリッド部材駆動機構8により、リッド部材2は、ケース体7に対して位置変化し、ひいては、当該ケース体7が取り付けられているボデー90の開口91に対して、当該開口91を閉じる閉位置と開口91を開く開位置との間で位置変化する。
【0071】
なおリッド部材2は、図4に示す閉位置から図略の開位置に位置変化する際に、図4中のA方向にスライドする。またリッド部材2は、開位置から閉位置に位置変化する際に、同じく図4中のB方向にスライドする。開位置において、リッド部材2は開口91の奥側かつ上側に入り込む。これにより開口91が露出し、そのさらに奥側にある給電口93もまた露出する。
【0072】
シール部材26もまた略環状をなし、リッドインナ25の周縁部に一体化されている。シール部材26は、リッド部材2が閉位置にある時に、当該リッド部材とボデー90の開口周縁部との間をシールする。シール部材26は、リッドインナ25の表面からさらに表側に突起している。
【0073】
ケース体7は、表側に開口する略箱状をなし、その底壁73にはケース開口71が設けられている。ケース開口71はケース体7の底壁73を奥側-表側方向に貫通している。底壁73のうち当該ケース開口71の径方向外側には、経路形成要素3の反射体5が一体化されている。反射体5は、光反射性の樹脂材料からなる。
【0074】
既述したように、リッド20は、開口91よりもやや小径である。図1に示すように、リッド部材2のリッド20は、閉位置において開口91の内部に填まり込む。したがって、このとき開口周縁部94とリッド20との間には周縁隙間95が形成される。
【0075】
実施例1の車両用リッド装置1において、当該周縁隙間95のうち上側の領域が第1隙間領域95fであり、下側の領域が第2隙間領域95sである。
【0076】
実施例1の車両用リッド装置1における第1レンズ領域4fは、図1に示すように、レンズ4のうち、第1隙間領域95fの奥側において当該第1隙間領域95fに対面しつつ第1隙間領域95fに沿って延びる領域であり、図1において破線で囲まれた領域である。図4に示すように、第1レンズ領域4fの奥側面は凸面状をなしている。
【0077】
一方、実施例1の車両用リッド装置1における第2レンズ領域4sは、図1に示すように、レンズ4のうち、第1レンズ領域4fよりも下側にある破線で囲まれた円形の領域である。図4に示すように当該第2レンズ領域4sの奥側面は凹面状をなしている。
図1に示すように、第2隙間領域95sと第2レンズ領域4sとの距離は、第1隙間領域95fと第1レンズ領域4fとの距離よりも大きい。
【0078】
図4に示すように、光源6は、LEDランプであり、図略の電源に接続されている。図4に示すように、実施例1の車両用リッド装置1における光源6は、奥側-表側方向において、車両側部材すなわちボデー90とケース体7の底壁73とのほぼ中間位置であって、開口91の径方向外側かつ下側に配置されている。
【0079】
リッド部材駆動機構8は、既述したラックアンドピニオン構造、電動モータ、ガイドレール(以上図略)およびガイドピン27以外にも、電動モータの駆動制御および光源6のオン/オフ制御のための制御部(図略)を有する。実施例1の車両用リッド装置1では、当該制御部として、車両のECUを用いているが、制御部として車両用リッド装置1専用のものを設けても良い。また、実施例の車両用リッド装置1では、電動モータや光源6の電源として車両の駆動用バッテリを用いているが、車両用リッド装置1専用の電源を別途設けても良い。
【0080】
以下、実施例の車両用リッド装置1の動作を説明する。
【0081】
実施例の車両用リッド装置1では、先ず、スマートキーを有するユーザーが給電口93付近に近づくと、車両に搭載されているセンサがそれを検知し、制御部が光源6への給電を開始する。
【0082】
このときリッド部材2は図1図4に示す閉位置に配置されており、開口91を閉じている。つまり開口91の内部にはリッド部材2のリッド20及びレンズ4が露出し、図1に示すように、周縁隙間95はその周方向全周にわたって、奥側からレンズ4で覆われている。
【0083】
給電を受けた光源6は、図5に示すように、反射体5に向けて光を発する。光源6が発した可視光線の一部は、反射体5の第1反射領域5fで反射し、第1レンズ領域4fに向けて進む。光源6が発した可視光線の他の一部は、反射体5の第2反射領域5sで反射し、第2レンズ領域4sに向けて進む。
【0084】
ここで、図5に示すように、第1隙間領域95fが、第1反射領域5fの反射する可視光線の経路上からやや外れている場合にも、当該可視光線は凸面状をなす第1レンズ領域4fに入射して屈折する。このために、第1レンズ領域4fを透過し当該第1レンズ領域4fから出射した可視光線は第1隙間領域95fに向かい、当該第1隙間領域95fを照明する。
【0085】
また、第2隙間領域95sが、第2反射面の反射する可視光線の経路上から大きく外れている場合にも、当該可視光線は凹面状をなす第2レンズ領域4sに入射して大きく屈折する。このために、第2レンズ領域4sを透過し当該第2レンズ領域4sから出射した可視光線は第2隙間領域95sに向かい、当該第2隙間領域95sを照明する。
【0086】
したがって、周縁隙間95はその周方向全周にわたって明るく照明される。
【0087】
ユーザーがリッド20に触れるか、又は、図略のスイッチを操作すると、制御部が電動モータへの給電を開始し、ラックアンドピニオン構造により、リッド部材2が閉位置から開位置に位置変化する。このときリッド部材2が奥側に引き込まれることで、開口91の奥側にある反射体5が視認できるようになる。反射体5は光源6に照らされて明るく光る。また、反射体5の反射光は開口91に向けて進む。したがって、このとき開口91の内部は反射光により一様に明るく光る。これにより、ユーザーは給電口93を容易に視認できる。
【0088】
以上のように、実施例1の車両用リッド装置1によると、開口91よりも奥側に配置された光源6が発しレンズ4を透過し当該レンズ4が出射した可視光線によって周縁隙間95を照明する。このため実施例1の車両用リッド装置1では、リッド部材2に光源6を搭載する必要はなく、リッド部材2の構造を単純化できる。したがって、実施例1の車両用リッド装置1は、周縁隙間95を照明する光源6を有するにも拘わらず、簡単な構造からなるものといい得る。
【0089】
また、実施例1の車両用リッド装置1によると、レンズ4における異なる2つの領域(第1レンズ領域4f、第2レンズ領域4s)によって、周縁隙間95における異なる2つの領域(第1隙間領域95f、第2隙間領域95s)を各々照明する。このため実施例1の車両用リッド装置1においては、第1レンズ領域4fを第1周縁隙間95に対応した最適化した形状や配置にし、かつ、第2レンズ領域4sを第2周縁隙間95に対応した最適化して最適化した形状や配置にすることができる。これにより、実施例1の車両用リッド装置1では第1周縁隙間95と第2周縁隙間95との両方を明るく照明することが可能である。つまり実施例1の車両用リッド装置1によると、周縁隙間95の全体を光源6によって明るく照明することが可能である。
【0090】
さらに、第1レンズ領域4fは、第1隙間領域95fの奥側において当該第1隙間領域95fに対面しつつ第1隙間領域95fに沿って延びる。このため、第1レンズ領域4fは第1隙間領域95fに効率よく可視光線を供給することができ、例えば、光源6が発する可視光線の光量が比較的少ない場合等にも、第1隙間領域95fを充分な明るさで照明することが可能である。
【0091】
実施例1の車両用リッド装置1では、第1レンズ領域4fの奥側面を凸面状にし、第2レンズ領域4sにおける奥側面を凹面状にしたが、第1レンズ領域4fおよび第2レンズ領域4sの形状はこれに限定されない。第1レンズ領域4fにおける奥側面の形状やその曲率は、例えば、第1レンズ領域4fへの可視光線の入射角や、当該可視光線の進路と第1隙間領域95fとの位置関係に応じて適宜適切に設計すれば良い。同様に、第2レンズ領域4sにおける奥側面の形状やその曲率は、例えば、第2レンズ領域4sへの可視光線の入射角や、当該可視光線の進路と第2隙間領域95sとの位置関係に応じて適宜適切に設計すれば良い。
【0092】
なお、実施例1の車両用リッド装置1のように光源6が1つである場合、当該光源6から遠い側のレンズ領域である第1レンズ領域4fにおいて、その奥側面は凸面状をなすのが好適である。また、この場合、当該光源6から近い側のレンズ領域である第2レンズ領域4sにおいて、その奥側面は凹面状をなすのが好適である。この場合、凸面状の第1レンズ領域4fと凹面状の第2レンズ領域4sとを採用することにより、光源6の位置の自由度が高まる利点がある。
【0093】
(実施例2)
実施例2の車両用リッド装置は、第2レンズ領域の形状以外は、実施例1の車両用リッド装置と概略同じものである。以下、実施例1との相違点を中心に実施例2の車両用リッド装置を説明する。図6は実施例2の車両用リッド装置における可視光線の経路を模式的に表す説明図である。
【0094】
図6に示すように、実施例2の車両用リッド装置1におけるレンズ4は、凸面状をなす第1レンズ領域4fと、凹面状をなす第2レンズ領域4sとを有する。このうち第1レンズ領域4fは、実施例1の車両用リッド装置1における第1レンズ領域4fと同様に、第1隙間領域95fの奥側において当該第1隙間領域95fに対面しつつ第1隙間領域95fに沿って延びている。
【0095】
実施例2の車両用リッド装置1における第2レンズ領域4sは、実施例1の車両用リッド装置1における第2レンズ領域4sとは異なり、第2隙間領域95sの奥側において当該第2隙間領域95sに対面しつつ第2隙間領域95sに沿って延びている。
【0096】
実施例2の車両用リッド装置1において、光源6が発した可視光線の一部は、反射体5の第1反射領域5fで反射し、第1レンズ領域4fに向けて進む。そして、当該可視光線は凸面状をなす第1レンズ領域4fを透過することでその経路を調整されて第1隙間領域95fに向かい、当該第1隙間領域95fを照明する。
【0097】
一方、光源6が発した可視光線の他の一部は、反射体5の第2反射領域5sで反射し、第2レンズ領域4sに向けて進む。そして当該可視光線は凹面状をなす第2レンズ領域4sを透過することでその経路を調整されて第2隙間領域95sに向かい、当該第2隙間領域95sを照明する。
【0098】
実施例2の車両用リッド装置1では、第2レンズ領域4sが、第2隙間領域95sの奥側において当該第2隙間領域95sに対面しつつ第2隙間領域95sに沿って延びている。このため、第2レンズ領域4sと第2隙間領域95sとの距離が近く、第2レンズ領域4sから第2隙間領域95sへの可視光線の経路もまた短い。このため、実施例2の車両用リッド装置1によると、第1レンズ領域4fに入射した可視光線を効率よく第2隙間領域95sに供給できる利点がある。
【0099】
このような実施例2の車両用リッド装置1もまた実施例1の車両用リッド装置1と同様に簡単な構造からなり、かつ、実施例2の車両用リッド装置1によっても周縁隙間95の全体を光源6により明るく照明することが可能である。
【0100】
(実施例3)
実施例3の車両用リッド装置は、第2レンズ領域の形状と光源の位置以外は、実施例1の車両用リッド装置と概略同じものである。以下、実施例1との相違点を中心に実施例3の車両用リッド装置を説明する。図7は実施例3の車両用リッド装置における可視光線の経路を模式的に表す説明図である。
【0101】
図7に示すように、実施例3の車両用リッド装置1におけるレンズ4は、凸面状をなす第1レンズ領域4fと、凸面状をなす第2レンズ領域4sとを有する。
【0102】
第1レンズ領域4fは、実施例1の車両用リッド装置1における第1レンズ領域4fと同様に、第1隙間領域95fの奥側において当該第1隙間領域95fに対面しつつ第1隙間領域95fに沿って延びている。
【0103】
第2レンズ領域4sにおける奥側面は、凸面状をなし、第2隙間領域95sの奥側において当該第2隙間領域95sに対面しつつ第2隙間領域95sに沿って延びている。なお、第2レンズ領域4sにおける奥側面の曲率は、第1レンズ領域4fにおける奥側面の曲率に比べてやや大きい。
【0104】
光源6は、奥側-表側方向において、開口91とケース体7の底壁73との中間位置よりも奥側に配置され、ケース体7の底壁73と略同位置に配置されている。また、光源6の位置は、開口91の径方向外側かつ下側でもある。
【0105】
実施例3の車両用リッド装置1において、光源6が発した可視光線の一部は、第1レンズ領域4fに向けて直接進む。そして、当該可視光線は凸面状をなす第1レンズ領域4fを透過することでその経路を調整されて第1隙間領域95fに向かい、当該第1隙間領域95fを照明する。
【0106】
また、光源6が発した可視光線の他の一部は、反射体5の第2反射領域5sで反射し、凸状をなす第2レンズ領域4sに向けて進む。光源6が発した可視光線のさらに他の一部は凸状をなす第2レンズ領域4sに向けて直接進む。そしてこれらの可視光線は第2レンズ領域4sを透過することでその経路を調整されて第2隙間領域95sに向かい、当該第2隙間領域95sを照明する。
【0107】
実施例3の車両用リッド装置1では、車両側部材すなわちボデー90から遠くケース体7の底壁73に近い位置(または、反射体5に近い位置)に光源6を配置している。このため、光源6の直接光を第1レンズ領域4fおよび第2レンズ領域4sに入射させることができ、かつ、第2レンズ領域4sを凸面状にすることができる。
【0108】
このような実施例3の車両用リッド装置1もまた実施例1の車両用リッド装置1と同様に簡単な構造からなり、かつ、実施例3の車両用リッド装置1によっても周縁隙間95の全体を光源6により明るく照明することが可能である。
【0109】
(実施例4)
実施例4の車両用リッド装置は、第2レンズ領域の形状と光源の数およびその位置以外は、実施例1の車両用リッド装置と概略同じものである。以下、実施例1との相違点を中心に実施例4の車両用リッド装置を説明する。図8は実施例4の車両用リッド装置における可視光線の経路を模式的に表す説明図である。
【0110】
図8に示すように、実施例4の車両用リッド装置1におけるレンズ4は、凸面状をなす第1レンズ領域4fと、凸面状をなす第2レンズ領域4sとを有する。
【0111】
第1レンズ領域4fは、実施例1の車両用リッド装置1における第1レンズ領域4fと同様に、第1隙間領域95fの奥側において当該第1隙間領域95fに対面しつつ第1隙間領域95fに沿って延びている。
【0112】
第2レンズ領域4sにおける奥側面は、凸面状をなし、第2隙間領域95sの奥側において当該第2隙間領域95sに対面しつつ第2隙間領域95sに沿って延びている。実施例4の車両用リッド装置1において、第2レンズ領域4sにおける奥側面の曲率は、第1レンズ領域4fにおける奥側面の曲率と概略同じである。
【0113】
実施例4の車両用リッド装置1は2つの光源6を有する。
2つの光源6の一方である第1光源6fは、奥側-表側方向において、車両側部材すなわちボデー90とケース体7の底壁73との中間位置よりも奥側に配置され、ケース体7の底壁73と略同位置に配置されている。また、第1光源6fの位置は、開口91の径方向外側かつ下側でもある。
2つの光源6の他方である第2光源6sもまた、奥側-表側方向において、車両側部材すなわちボデー90とケース体7の底壁73との中間位置よりも奥側に配置され、ケース体7の底壁73と略同位置に配置されている。第2光源6sの位置は、開口91の径方向外側かつ上側でもある。
【0114】
実施例4の車両用リッド装置1において、第1光源6fが発した可視光線の一部は、凸状をなす第1レンズ領域4fに向けて直接進む。また、第2光源6sが発した可視光線の一部は、反射体5の第1反射領域5fで反射し、第1レンズ領域4fに向けて進む。そして、当該可視光線は第1レンズ領域4fを透過することでその経路を調整されて第1隙間領域95fに向かい、当該第1隙間領域95fを照明する。
【0115】
第2光源6sが発した可視光線の他の一部は、凸状をなす第2レンズ領域4sに向けて直接進む。第1光源6fが発した可視光線の他の一部は、反射体5の第2反射領域5sで反射し、第2レンズ領域4sに向けて進む。そして、当該可視光線は第2レンズ領域4sを透過することでその経路を調整されて第2隙間領域95sに向かい、当該第2隙間領域95sを照明する。
【0116】
実施例4の車両用リッド装置1においては、2つの光源6(第1光源6f、第2光源6s)を設けることにより、第1レンズ領域4fおよび第2レンズ領域4sを、概略同じ曲率の凸面状とすることができる。
【0117】
このような実施例4の車両用リッド装置1もまた実施例1の車両用リッド装置1と同様に簡単な構造からなり、かつ、実施例4の車両用リッド装置1によっても周縁隙間95の全体を光源6により明るく照明することが可能である。
【0118】
本発明は、上述した実施形態等に限定されるものではなく、当該実施形態等に記載した要素を適宜抽出し組み合わせて実施することや、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を施すことが可能である。
また、本発明の明細書は、出願当初における各請求項の引用関係に止まらず各請求項に記載された事項を適宜組み合わせた技術思想を開示するものである。
【符号の説明】
【0119】
1:車両用リッド装置 2:リッド部材
3:経路形成要素 4:レンズ
4f:第1レンズ領域 4s:第2レンズ領域
5:反射体 6:光源
6f:第1光源 6s:第2光源
90:ボデー(車両側部材) 91:開口
94:開口周縁部 95:隙間(周縁隙間)
95f:第1隙間領域 95s:第2隙間領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8