(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006446
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】動物罠用トリガー装置及び動物罠
(51)【国際特許分類】
A01M 23/34 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
A01M23/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107314
(22)【出願日】2022-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】504237061
【氏名又は名称】株式会社三生
(74)【代理人】
【識別番号】100114627
【弁理士】
【氏名又は名称】有吉 修一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100182501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100175271
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 宣圭
(74)【代理人】
【識別番号】100190975
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 聡子
(72)【発明者】
【氏名】和田 三生
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121AA02
2B121BA32
2B121EA21
2B121FA11
(57)【要約】
【課題】動物の足の踏力が作用したときのトリガー部の感度を安定させて、罠の空作動や錯誤捕獲を抑制できるようにした動物罠用トリガー装置を提供する。
【解決手段】動物罠用トリガー装置T1は、括り罠本体6の固定アーム61と跳上げアーム62を閉じた状態で維持する係合部1と、係合部1と一体的に設けられ、土を下方へ落とすための落とし孔24が形成されている受け部2と、受け部2の下面側に位置し、先端部が受け部2から突出するように設けてあり、罠仕掛け時に先端部が仕掛け補助具5の縁部の掛止受部50に渡して掛止されるバネ板部材30と、バネ板部材30に設けられ、落とし孔24を上下動可能に貫通するペダル部材33を有するトリガー部3とを備え、ペダル部材33が木製のブロック形状であり、側面がバネ板部材30に対して略直角な平面であり、踏み面はバネ板部材30と略平行に形成され、滑り止め加工が施されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
付勢体で固定アームと跳上げアームを開く方向に付勢し、固定アームと跳上げアームが開くことにより括り輪が絞られるワイヤロープを有する括り罠本体の固定アームと跳上げアームを閉じた状態で維持するよう両アーム先端に係合可能な係合部と、
該係合部と一体的に設けられ、上下面を貫通した所要の大きさの、土や草を下方へ落とすための落とし孔が形成されている受け部と、
該受け部の下面側に位置し、可撓性材料で形成されると共に、長手方向の先端部が前記受け部から突出するように設けてあり、罠仕掛け時に先端部が仕掛け穴の縁部の掛止受部に渡して掛止されるバネ板部材と、該バネ板部材に設けられ、前記落とし孔を、下から上方向へ、かつ上下動可能に貫通したペダル部を有するトリガー部とを備え、
前記ペダル部がブロック形状であり、その側面が前記バネ板部材に対して略直角な平面となるように、かつ動物が踏む踏み面は前記バネ板部材と略平行に形成され、前記踏み面には滑り止め加工が施されている
動物罠用トリガー装置。
【請求項2】
前記ペダル部が木製である
請求項1記載の動物罠用トリガー装置。
【請求項3】
前記バネ板部材が前記掛止受部の幅と略同じ幅に形成されている
請求項1又は2記載の動物罠用トリガー装置。
【請求項4】
前記ペダル部の、前記バネ板部材に対し取り付けるペダル脚の取付面が、前記バネ板部材の長手方向に短い横長形状に形成されている
請求項3記載の動物罠用トリガー装置。
【請求項5】
前記バネ板部材の先部において前記掛止受部を越える位置に通し孔が設けられ、該通し孔に抜け止めピンが前記掛止受部の外側に位置するように挿脱可能に差し込まれている
請求項3記載の動物罠用トリガー装置。
【請求項6】
付勢体で固定アームと跳上げアームを開く方向に付勢し、固定アームと跳上げアームが開くことにより括り輪が絞られるワイヤロープを有する括り罠本体と、
該括り罠本体の前記固定アームと前記跳上げアームを閉じた状態で維持するよう両アーム先端に係合可能な係合部と、該係合部と一体的に設けられ、上下面を貫通した所要の大きさの、土や草を下方へ落とすための落とし孔が形成されている受け部と、該受け部の下面側に位置し、可撓性材料で形成されると共に、長手方向の先端部が前記受け部から突出するように設けてあり、罠仕掛け時に先端部が仕掛け穴の縁部の掛止受部に渡して掛止されるバネ板部材と、該バネ板部材に設けられ、前記落とし孔を、下から上方向へ、かつ上下動可能に貫通したペダル部を有するトリガー部とを有し、前記ペダル部がブロック形状であり、その側面が前記バネ板部材に対して略直角な平面となるように、かつ動物が踏む踏み面は前記バネ板部材と略平行に形成され、前記踏み面には滑り止め加工が施されている動物罠用トリガー装置とを備える
動物罠。
【請求項7】
上部に開口部を有する箱型で、前記括り罠本体を設置する設置部と、前記開口部側に前記括り輪を内掛けするワイヤ掛けを有し、前記掛止受部は前記設置部と反対側に設けられている仕掛け補助具を備える
請求項6記載の動物罠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物罠用トリガー装置及び動物罠に関するものである。更に詳しくは、足括り罠と組み合わせて仕掛けたときに、トリガー部のペダル部の周りに土や草等が入り込んでも、その土や草がトリガー部の作動の邪魔になることがないようにし、動物の足の踏力が作用したときのトリガー部の感度を安定させて罠の空作動や錯誤捕獲を抑制できるようにしたものに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、イノシシ等の野生の動物による農作物の被害は、ますます増加の傾向にあり、自治体等では、これらの動物を人と共存できる適正な頭数に維持するため、一定数を捕獲して処分するようにしている。しかし、例えば動物罠を使用した狩猟を行うには、ある程度の熟練が必要になるが、狩猟に従事する人(猟師)は、高齢化と共に、年々減少している。このため、練度の低い猟師、或いは一般の人でも狩猟対象の動物を効率よく捕獲できるようにすることが望まれている。
【0003】
動物罠の中で、例えば足括り罠による捕獲率を良くするには、罠が作動したにも関わらず動物の捕獲には失敗する、いわゆる「空作動」を抑制する必要がある。足括り罠の空作動は、そのほとんどが、イノシシ等の動物の足がワイヤロープの括り輪で括ることができない位置にあるときに、又は足がワイヤロープの括り輪で括ることができる位置にあっても踏力が充分でないときに、罠が作動してしまうことにより起こる。このような罠の空作動を抑制するものとしては、例えば本願発明者が提案した特許文献1に記載の動物罠用トリガー装置がある。
【0004】
この従来の動物罠用トリガー装置は、括り罠本体の固定アームと跳上げアームを閉じた状態で両アーム先端に掛止する掛止部と、掛止部と一体的に設けられ、中央または略中央に貫通穴を有する踏み部材と、踏み部材の下面側に位置し、中央または略中央に貫通穴を下から上へ上下動自在に貫通するトリガー部材を有し、先端部が踏み部材の先端から突出するよう設けられ、罠仕掛け時に長さ方向の先端部が仕掛け穴の縁部の掛止受部に渡された状態で、トリガー部材を介し上方から作用する荷重で変形(撓み変形)することにより、掛止受部に対する先端部の掛止が外れるようにした止め部材を備えており、動物の足がワイヤロープの括り輪で括ることができる位置にあり、かつ充分な踏力を以て踏んだときにのみ、足括り罠を作動させることができるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の動物罠用トリガー装置は、空作動を抑制する点において、充分に有用である。しかしながら、狩猟の現場における実際の使用に伴い、次のような課題があることもわかってきた。
【0007】
つまり、従来の動物罠用トリガー装置は、例えば従来公報の
図1~
図7に示している動物罠用トリガー装置においては、後述するカバー筒を使用しないと、仕掛けたときに、トリガー部の接触体と踏み部材との間に、土や草等が入り込んでしまう可能性が高い。こうなると、動物の足がトリガー部の接触体を踏み込んだときに、土や草等が邪魔になって、トリガー部の感度が安定せず、接触体を充分に下降させることができなくなって、踏み部材が落ちにくくなり、結果的に足括り罠が作動しないことが起こり得る。
【0008】
この問題の解消のため、上記動物罠用トリガー装置においては、トリガー部の接触体を囲むように、縮小変形が可能なカバー筒を嵌め込むようにしている。これによれば、カバー筒の内部、すなわちトリガー部の接触体と踏み部材との間に、土や草が入らないようにすることができる。
【0009】
しかし、実際の使用では、カバー筒自体が、周りの土や草の圧力で内方へ変形することがあり、動物の踏力で上から押し潰される際には、間に入り込んだ土や草と同じように邪魔になる可能性があることがわかった。このように、トリガー部の感度が安定しないと、作動しても目的の動物が捕獲できない空作動や、保護獣等、目的の動物以外の動物を捕獲する錯誤捕獲をしてしまう可能性が高かった。
【0010】
本発明は、以上の点を鑑みて創案されたものであり、足括り罠と組み合わせて仕掛けたときに、トリガー部のペダル部の周りに土や草等が入り込んでも、その土や草がトリガー部の作動の邪魔になりにくいようにし、動物の足の踏力が作用したときのトリガー部の感度を安定させて、罠の空作動や錯誤捕獲を抑制できるようにした動物罠用トリガー装置、及びそれを使用した動物罠を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)上記の目的を達成するために本発明の動物罠用トリガー装置は、付勢体で固定アームと跳上げアームを開く方向に付勢し、固定アームと跳上げアームが開くことにより括り輪が絞られるワイヤロープを有する括り罠本体の固定アームと跳上げアームを閉じた状態で維持するよう両アーム先端に係合可能な係合部と、該係合部と一体的に設けられ、上下面を貫通した所要の大きさの、土や草を下方へ落とすための落とし孔が形成されている受け部と、該受け部の下面側に位置し、可撓性材料で形成されると共に、長手方向の先端部が前記受け部から突出するように設けてあり、罠仕掛け時に先端部が仕掛け穴の縁部の掛止受部に渡して掛止されるバネ板部材と、該バネ板部材に設けられ、前記落とし孔を、下から上方向へ、かつ上下動可能に貫通したペダル部を有するトリガー部とを備え、前記ペダル部がブロック形状であり、その側面が前記バネ板部材に対して略直角な平面となるように、かつ動物が踏む踏み面は前記バネ板部材と略平行に形成され、前記踏み面には滑り止め加工が施されている。
【0012】
本発明の動物罠用トリガー装置は、係合部で括り罠本体の固定アームと跳上げアームの先端を係合して閉じた状態を維持できるようにして、獣道等に掘った穴にセットされ、上記両アームが開くことにより絞られるワイヤロープの括り輪を、先端部が仕掛け穴の縁部の受け部に渡されたバネ板部材を囲むようにして仕掛けられる。この際、受け部の上には、罠のカムフラージュのために、或いは動物の金属臭に対する警戒心をやわらげるために、土や草が被せられる。
【0013】
そして、獣道を移動する動物の足がワイヤロープの括り輪の内側の動物罠用トリガー装置のペダル部を充分な踏力を以て踏んだときは、上方から足の踏力が作用することでバネ板部材が撓むように変形し、バネ板部材の先端部が後退して掛止受部に対する掛止が外れて、トリガー部は下に落ちる。
【0014】
バネ板部材が撓むように変形するとき、仕掛け時においては、落とし孔の大きさを占めるように落とし孔を通してバネ板部材に乗っていた土や草は、その多くが、バネ板部材が下方へ移動するのに伴って、開口する落とし孔から下方へ落ちる。
【0015】
また、ペダル部がブロック形状であり、ペダル部の側面がバネ板部材に対して略直角な平面となるようにしてあるので、周りに土や草が多少あっても、これに引っ掛かって大きな抵抗が生じることもない。これにより、上記土や草がペダル部が動物の踏力によって下降する際の邪魔にはなりにくく、トリガー部の感度と作動は安定する。
【0016】
更に、動物が踏む踏み面には滑り止め加工が施され、踏み面がバネ板部材と略平行な平面となるように形成してあるので、足が踏み面に対して滑りにくく、足が踏み面の中から大きくずれることを抑制することができ、踏力が踏み面により確実に伝わり、トリガー部の感度を安定させることができる。
【0017】
そして、上記のようにトリガー部が下に落ちることに伴い、動物罠用トリガー装置の受け部が係合部と共に下方へ移動し、係合部の両アーム先端に対する係合が解除されて括り罠本体が作動する。このとき、動物の足が、括り輪で括ることができる位置(トリガー部近傍位置)で、充分な踏力を以て踏んでいるので、足が仕掛け穴に深く入り、ワイヤロープの括り輪で脚の元部が括られるため、動物をより確実に捕獲することができる。
【0018】
また、動物の足が括り輪の内側を充分でない踏力を以て踏んだときには、上方から荷重が作用してもバネ板部材が充分に変形しないので、掛止受部に対するバネ板部材の先端部の掛止が外れないので、括り罠本体は作動しない。
【0019】
更には、動物の足が動物罠用トリガー装置のペダル部を踏まず、受け部の部分を強い踏力で踏んだときには、トリガー部に変形等の影響がほとんど生じないため、トリガー部が落ちることもなく、掛止受部に対するバネ板部材の先端部の掛止が外れないので、この場合も括り罠本体は作動しない。
【0020】
このように、動物の足が、括り輪で括ることができる位置で、なおかつバネ板部材が撓み変形することでバネ板部材の先端部が掛止受部から外れるだけの充分な踏力を以て踏まないと、括り罠本体の固定アームと跳上げアームの先端に対する係合部の係合を解除することができないため、結果的に動物罠は作動しない。
【0021】
したがって、動物罠用トリガー装置によれば、動物の捕獲に成功する可能性が高い条件下、すなわち動物の足が括り輪で括ることができる位置にあり、かつバネ板部材が撓み変形することでバネ板部材の先端部が掛止受部から外れるだけの充分な踏力を以て踏まれた場合にだけ、括り罠本体を作動させることができるので、動物罠を空作動させることなく動物を捕獲できると共に、捕獲対象以外の動物を捕獲してしまう錯誤捕獲の可能性を低く抑えることができる。
【0022】
また、一方で、動物の捕獲に失敗する可能性が高い条件下、すなわち動物の足が括り輪で括ることができない位置にある場合、又は足が括り輪で括ることができる位置にあっても、バネ板部材が撓み変形することでバネ板部材の先端部が掛止受部から外れるだけの充分な踏力を以て踏まなかった場合は、動物罠の作動を止めることができる。
【0023】
このように、本発明によれば、トリガー部の感度を安定させることで動物罠の空作動が起こりにくくなり、捕獲率の向上を図ることができる。特に、クマは生息数が減ってきており、保護対象獣となっているので、その錯誤捕獲を防止しなければならない。クマの前足(掌部)は、比較的大きく、例えば爪先でトリガー部のペダル部を踏んだとしても、掌部の他の部分が、容易に変形しない受け部で直接又は土等を介して間接的に受け止められるので、荷重が分散して、ペダル部が殆ど落ちない。これにより、バネ板部材が変形しにくく、罠が作動しないので、クマの錯誤捕獲を防止できる。
【0024】
(2)本発明の動物罠用トリガー装置は、前記ペダル部が木製である構成とすることもできる。
【0025】
この場合は、ペダル部が、動物が森の自然の中で嗅ぎ慣れた樹木で形成されていることで、金属臭に敏感な動物の警戒心をやわらげることができるので、更に捕獲率が向上することが期待できる。
【0026】
(3)本発明の動物罠用トリガー装置は、前記バネ板部材が前記掛止受部の幅と略同じ幅に形成されている構成とすることもできる。
【0027】
この場合は、バネ板部材が、掛止受部の幅の略全体で受け止められる。これにより、バネ板部材に対し、ペダル部からの動物の足による踏力が作用しても撓み変形しにくく、特に幅方向の捻れに対する強度に優れている。したがって、例えばペダル部の踏み面の端部に踏力がかかって足が括り輪で括ることができる位置から外れた場合も、バネ板部材が大きく捻れて掛止受部から外れて、括り罠本体を作動させてしまうような、空作動が起こることを抑制できる。
【0028】
(4)本発明の動物罠用トリガー装置は、前記ペダル部の、前記バネ板部材に対し取り付けるペダル脚の取付面が、前記バネ板部材の長手方向に短い横長形状に形成されている構成とすることもできる。
【0029】
この場合は、取付面がバネ板部材の長手方向に短いことにより、バネ板部材が動物の足の踏力により長手方向において撓もうとするときに、取付面を構成するペダル脚が抵抗となりにくい。これにより、バネ板部材は比較的小さな力で撓むので、バネ板部材の可撓性を活かしたトリガー部の感度の細かな調整を行うことができ、トリガー部の感度の安定に寄与できる。
【0030】
(5)本発明の動物罠用トリガー装置は、前記バネ板部材の先部において前記掛止受部を越える位置に通し孔が設けられ、該通し孔に抜け止めピンが前記掛止受部の外側に位置するように挿脱可能に差し込まれている構成とすることもできる。
【0031】
この場合は、通し孔に抜け止めピンが掛止受部の外側に位置するように挿脱可能に差し込まれていることにより、トリガー部に動物の足の踏力が掛かってバネ板部材が下方へ撓もうとするときの先端部の後方への移動を止めることができる。これにより、トリガー部と括り罠本体の作動を、安定的に止めておくことができる。また、抜け止めピンを抜き取ることにより、その状態を解除して、トリガー部と括り罠本体を作動可能な状態とすることができる。
【0032】
(6)上記の目的を達成するために本発明の動物罠は、付勢体で固定アームと跳上げアームを開く方向に付勢し、固定アームと跳上げアームが開くことにより括り輪が絞られるワイヤロープを有する括り罠本体と、該括り罠本体の前記固定アームと前記跳上げアームを閉じた状態で維持するよう両アーム先端に係合可能な係合部と、該係合部と一体的に設けられ、上下面を貫通した所要の大きさの、土や草を下方へ落とすための落とし孔が形成されている受け部と、該受け部の下面側に位置し、可撓性材料で形成されると共に、長手方向の先端部が前記受け部から突出するように設けてあり、罠仕掛け時に先端部が仕掛け穴の縁部の掛止受部に渡して掛止されるバネ板部材と、該バネ板部材に設けられ、前記落とし孔を、下から上方向へ、かつ上下動可能に貫通したペダル部を有するトリガー部とを有し、前記ペダル部がブロック形状であり、その側面が前記バネ板部材に対して略直角な平面となるように、かつ動物が踏む踏み面は前記バネ板部材と略平行に形成され、前記踏み面には滑り止め加工が施されている動物罠用トリガー装置とを備えている。
【0033】
本発明の動物罠は、括り罠本体と上記動物罠用トリガー装置の組み合わせであり、ここで、動物罠用トリガー装置の作用をあらためて詳しく説明することは省略する。
【0034】
動物罠は、動物罠用トリガー装置と組み合わせる。その際、まず、括り罠本体の固定アームと跳上げアームを付勢力に抗して閉じ、係合部で固定アームと跳上げアームの先端を係合して閉じた状態を維持できるようにする。
【0035】
次に、獣道等に掘った穴にセットし、固定アームと跳上げアームが開くことにより絞られるワイヤロープの括り輪を、先端部が仕掛け穴の縁部の掛止受部に渡されたバネ板部材及びトリガー部のペダル部を囲むようにして仕掛ける。この際、受け部の上には、罠のカムフラージュのために、或いは動物の金属臭に対する警戒心をやわらげるために、土や草が被せられる。
【0036】
そして、獣道を移動する動物の足がワイヤロープの括り輪の内側の動物罠用トリガー装置のペダル部を充分な踏力を以て踏んだときは、動物の足が、括り輪で括ることができる位置にあるので、足がワイヤロープの括り輪の中で仕掛け穴に深く入って脚の元部が括られるため、動物を捕獲することができる。
【0037】
また、動物の足が括り輪の中で、充分でない踏力を以てトリガー部を踏んだときには、踏力が作用してもバネ板部材が充分に変形しないので、掛止受部に対するバネ板部材の先端部の掛止が外れない。更には、動物の足が動物罠用トリガー装置のトリガー部のペダル部を踏まず、受け部の部分を強い踏力で踏んだときには、トリガー部に変形等の影響がほとんど生じないため、トリガー部が落ちることもなく、掛止受部に対するバネ板部材の先端部の掛止が外れない。
【0038】
このように、動物の足が、括り輪で括ることができる位置で、なおかつバネ板部材が撓み変形することでバネ板部材の先端部が掛止受部から外れるだけの充分な踏力を以て踏まないと、括り罠本体の固定アームと跳上げアームの先端に対する係合部の係合を解除することができないため、結果的に動物罠は作動しない。このように、本発明によれば、動物罠の空作動を抑制しながら狩猟対象動物を捕獲でき、捕獲率の向上を図ることができる。
【0039】
(7)本発明の動物罠は、上部に開口部を有する箱型で、前記括り罠本体を設置する設置部と、前記開口部側に前記括り輪を内掛けするワイヤ掛けを有し、前記掛止受部は前記設置部と反対側に設けられている仕掛け補助具を備える構成とすることもできる。
【0040】
この場合は、仕掛け補助具が箱型であり、括り罠本体の設置部に対する掛止受部の位置も決まっているので、括り罠本体と動物罠用トリガー装置及び仕掛け補助具を組み合わせて罠を仕掛けたときに、掛止受部に渡されたバネ板部材の先端部の掛止受部に対する掛かり具合に変化やズレが生じにくく、動物罠は、当初設定の通りに安定して作動する。
【0041】
また、獣道等に設ける仕掛け穴は、仕掛け補助具が安定よく収まればよいので、それほど正確に形成する必要はなく、動物罠の仕掛け作業を短時間で行うことができる。これにより、罠を仕掛ける現場に人間の臭いを極力残さないようにすることができ、この点でも捕獲率の向上に寄与できる。
【0042】
本明細書及び特許請求の範囲にいう「仕掛け穴の縁部の掛止受部」の文言は、例えば地面に掘った仕掛け穴の開口縁等に埋設等により固定された木板や金属板等の掛止受部の上面縁、或いは地面に掘った仕掛け穴に収容するようにして埋設される金属製やプラスチック製のボックス状の仕掛け補助具の開口縁等を含む意味で使用している。
【0043】
落とし孔の開口部の形状は、特に限定するものでなく、例えば円形、楕円形、四角形等の各種多角形であるが、異形のものであってもよい。また、ペダル部の先端部に、例えば板状の踏受部を有するものでは、動物の足の踏み込みによるペダル部の下方への移動を円滑にする上では、踏受部の大きさを落とし孔と同じか、より小さくするのが好ましい。
【発明の効果】
【0044】
本発明は、足括り罠と組み合わせて仕掛けたときに、トリガー部のペダル部の周りに土や草等が入り込んでも、その土や草がトリガー部の作動の邪魔になることがないようにし、動物の足の踏力が作用したときのトリガー部の感度を安定させて罠の空作動や錯誤捕獲を抑制できるようにした動物罠用トリガー装置、及びそれを使用した動物罠を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】本発明の動物罠用トリガー装置の第1実施の形態を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す動物罠用トリガー装置の平面図である。
【
図3】
図1に示す動物罠用トリガー装置の側面視説明図であり、(a)は左側面図、(b)は
図2のA-A断面図である。
【
図4】本発明の動物罠の一実施の形態を示すと共に、仕掛け補助具を使用して仕掛けた状態を示す縦断面説明図である。
【
図5】
図4に示す動物罠を仕掛けた状態を示す平面視説明図である。
【
図6】動物罠用トリガー装置の動きを示し、(a)は仕掛けた状態の縦断面説明図、(b)はペダル部が動物に踏まれてバネ板部材が落ちた状態の縦断面説明図である。
【
図7】本発明の動物罠用トリガー装置と、バネ板部材の幅が狭い動物罠用トリガー装置との作動の違いを示し、(a)は本発明の動物罠用トリガー装置、(b)はバネ板部材の幅が狭い動物罠用トリガー装置の説明図である。
【
図8】本発明の動物罠用トリガー装置の第2実施の形態を示す断面説明図である。
【
図9】本発明の動物罠用トリガー装置の第3実施の形態を示す断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1乃至
図10を参照して、本発明の実施の形態を更に詳細に説明する。なお、以下の説明において、場所又は方向を表す説明において、「前後」、「左右」の用語を使用する場合があるが、これについては
図2を基準とし、
図2において下側が「前」、上側が「後」、右側が「右」、左側が「左」に対応する。
【0047】
動物罠用トリガー装置T1は、後述するペダル部材33を除いてステンレススチール製であり、係合部1と受け部2及びトリガー部3を備えている。係合部1は、後述する足括り罠6の固定アーム61と跳上げアーム62を閉じた状態で両アーム先端に係合し、固定アーム61と跳上げアーム62が閉じた状態を維持することができるものである。
【0048】
係合部1は、固定アーム61の先端に掛ける掛部11と、跳上げアーム62の先端に掛ける掛部12を有する本体10と、本体10に角度調節自在に取り付けられている取付台具13を有している(
図1乃至
図3参照)。なお、上記掛部12は、本体10の上部に螺子着された四角形の掛止板14の一辺部に設けられている。
【0049】
取付台具13には、主体部が断面L状の板体である取付具15が螺子着されている。取付具15の横板(符号省略)には、外形が四角形で板状の受け部2が、後述するバネ板部材30の上に重ねられて、螺子着されている。受け部2は、イノシシやシカ、或いはクマ等、動物の足で踏まれても変形しにくい充分な剛性と強度を有している。
【0050】
また、取付具15は、左右方向に所定の長さ(受け部2の左右幅とほぼ同じ長さ)を有し、縦板(符号省略)の両端部には上方へ突出した掛け爪150を有している。各掛け爪150には、動物罠を仕掛ける際に、後述するワイヤロープ69の括り輪690が外掛けされる。
【0051】
受け部2の左右方向の両端辺部は、全長にわたり同幅で上方へやや傾斜させてあり、これにより受け部2の剛性が更に高められている。受け部2の前後方向の長さは、後述する仕掛け補助具5の開口部の前後方向の差し渡しの長さよりもやや短くなるように形成してある(
図4乃至
図6参照)。
【0052】
受け部2の略中央部には、四角形の落とし孔24が表裏面を貫通して形成されている。落とし孔24の左右の各辺は、受け部2の外形の左右辺と平行に形成され、前後の各辺は、受け部2の外形の前後辺と平行に形成されている。
【0053】
なお、落とし孔24の大きさは、特に限定されないが、受け部2が上記のように充分な剛性を有し、少なくとも後述するペダル部材33が、上下に通り抜けることができる範囲内であれば、適宜設定が可能である。
【0054】
また、取付具15には、受け部2の下面側に、バネ板部材30が前後方向に一定の範囲で進退調節可能に螺子着されている。この構造は、バネ板部材30の左右両端部の後部寄りに設けた長孔(符号省略)に、螺子(符号省略)を通して取付具15に螺着し、バネ板部材30をスライド調節した所定の位置で螺子を締め付けて固定するものである。
【0055】
バネ板部材30は、所定の可撓性を有しており、受け部2の幅と略同じ幅(詳しくは受け部2の幅より若干広い幅)、かつ後述する仕掛け補助具5の掛止受部50の幅より若干狭い幅を有している。バネ板部材30の左右側の先端部近傍には、下方へ直角に曲げられた振れ止め片31が設けられている。また、バネ板部材30の先端部には、各振れ止め片31の中間部に通し孔300が形成されている。
【0056】
振れ止め片31は、後述する仕掛け補助具5の開口部にセットしたときに、左右の内側面に当接して、バネ板部材30の横振れによる、作動時(落ちる時)の仕掛け補助具5に対する引っ掛かりによる作動不良を防止するもので、罠作動の前後に外部から動物による大きな力が作用したときにも、バネ板部材30の作動時の動きが安定する。
【0057】
この構造により、バネ板部材30は、所定の範囲内において、前後方向の位置の調節が可能である。この調節により、後述するように、バネ板部材30の先端の仕掛け補助具5の開口部の前端部に設けてある掛止受部50に対する掛かりの長さが調節でき、動物罠が作動する感度を調整することができる。
【0058】
トリガー部3は、可撓性を有する金属板で形成された長方形状の上記バネ板部材30と、木製のブロック形状のペダル部材33とを有している。なお、ペダル部材33は、木製を採用するのが望ましいが、限定するものではなく、他の材料、例えば合成樹脂、ゴム、プラスチック、アルミニウム等の金属を採用することもできる。また、本発明にいうブロック形状の用語は、表面が平面又は曲面で構成される固い物質の塊の意味で使用している。
【0059】
バネ板部材30は、上記したように、基端側が受け部2と共に、取付台具13に固定されており、受け部2の裏面側に配されている。バネ板部材30は、左右方向の幅が、後述する仕掛け補助具5の掛止受部50より若干狭く形成され、落とし孔24の幅よりかなり広く形成されている。
【0060】
ペダル部材33は、
図1乃至
図9に示すように、上部がほぼ直方体形状で、下部の前後方向ほぼ中央には、上部と同じ幅で前後に狭いペダル脚330が設けてある。ペダル部材33の底面(符号省略)は、前部側と後部側は、ペダル脚330へ向けて所定の角度(本実施の形態では約20°)で下り傾斜している。
【0061】
そして、ペダル部材33は、その位置を、ペダル部材33が踏まれたときに、落とし孔24を通ることができる位置で、バネ板部材30の下面側からペダル脚330を二箇所で螺子着してある。なお、ペダル脚330の取付面(符号省略)は、バネ板部材30の長手方向に短いことにより、バネ板部材30が下方へ撓もうとするときに、ペダル脚330が抵抗となりにくい。
【0062】
ペダル部材33の各側面(符号省略)は、取り付けた状態においてバネ板部材30に対して略直角な平面となっている。ペダル部材33の上面の踏み面(符号省略)は、バネ板部材30とほぼ平行であり、そのほぼ全面に、格子形状に溝を設けて滑り止め331の加工が施されている(
図1等参照)。
【0063】
また、ペダル部材33の取り付け位置は、例えば括り輪690の直径の規制に合わせて調整ができるように、螺子着用の螺子孔を適宜箇所に複数設けるようにしてもよい。なお、バネ板部材30の前後方向の長さは、後述する仕掛け補助具5と組み合わせてセットしたときに、掛止受部50の位置よりやや長くなるように形成され、先端部を仕掛け補助具5の開口部の縁にある掛止受部50に載せて掛止することができる(
図6参照)。
【0064】
(作用)
図1乃至
図9を参照して、動物罠用トリガー装置T1及び動物罠Wの作用を説明する。
動物罠Wは、動物罠用トリガー装置T1と、括り罠本体6及び仕掛け補助具5により構成されている。括り罠本体6は、基部側を回動可能に軸支された固定アーム61と跳上げアーム62を有し、両アーム61、62は、ねじりコイルバネ63を介し開く方向に付勢されている。
【0065】
固定アーム61の先端部には滑車64と掛かり部65を有し、跳上げアーム62の先端部には滑車66と掛かり部67を有している。また、固定アーム61の先部寄りには、杭を固定する杭固定具68が取り付けてある。そして、ワイヤロープ69が滑車64と滑車66に通され、ワイヤロープ69の先部にはペダル部材33を囲むように、括り輪690が形成されている。
【0066】
仕掛け補助具5は、ステンレススチール製で、上下が開口したほぼ四角筒形状である。仕掛け補助具5の後部側(
図5において左側)の側板(符号省略)には、括り罠本体6を取り付けるための取付台部材51が固定されている。取付台部材51より上方の開口部の左右側には、括り輪690を内掛けするワイヤ掛け52が設けられている。そして、取付台部材51とは反対側の側板53上端が掛止受部50となっている。
【0067】
そして、動物罠Wは、次のようにして獣道に仕掛けられる。
図4、
図5を参照する。
獣道7の適当な箇所に仕掛け穴70が形成され、仕掛け穴70に仕掛け補助具5を収容して安定させる。次に、動物罠用トリガー装置T1の係合部1の本体10に対する取付台具13の角度を調節して、受け部2とバネ板部材30が水平になるようにして固定し、バネ板部材30の先端部を仕掛け補具5の掛止受部50に渡すようにして掛止する。
【0068】
そして、動物罠用トリガー装置T1は、括り罠本体6の固定アーム61と跳上げアーム62をねじりコイルバネ63の付勢力に抗して閉じ、係合部1の本体10の掛部11と固定アーム61の掛かり部65を係合させ、本体10の掛部12と跳上げアーム62の掛かり部67を係合させてセットしてある(
図6(a)参照)。
【0069】
なお、括り罠本体6の杭固定具68には、杭680が差し込まれ、仕掛け補助具5の取付台部材51に杭固定具68を載せるようにして杭680が土に立て込まれている。また、括り罠本体6の角度を、仕掛け穴70に続く斜部の傾斜に合うように調節されている。
【0070】
また、括り罠本体6のワイヤロープ69の括り輪690は、各掛け爪150に外掛けし、ワイヤ掛け52には内掛けする。この状態では、トリガー部3のペダル部材33の上端は、セットされた括り輪690とほぼ同じ高さにある。最後に、カムフラージュのために、或いはワイヤロープ69等の金属臭をやわらげるために、土や草、或いは木の葉等を全体に被せて、動物罠Wを仕掛け状態とする(
図4、
図5、
図6(a)参照)。
【0071】
そして、獣道7を移動するイノシシ等の動物の足8aがワイヤロープ69の括り輪690のほぼ中心部にあるペダル部材33を上方から踏むことにより、ペダル部材33に荷重がかかる。バネ板部材30は、当初はペダル部材33のペダル脚330の取り付け部を中心に、そのまま15~20mm程度下降するように撓むが、ペダル脚330の取り付け部は前後方向(
図6で左右方向)に短いので、ペダル脚330がバネ板部材30の撓み変形の抵抗になりにくく、感度よく変形する。そして、バネ板部材30の先端部が掛止受部50から外れたところで、動物罠用トリガー装置T1は一気に落ちる(
図6(b)参照)。
【0072】
このとき、例えばイノシシ等の重量のある動物ではなく、小さい動物がペダル部材33を踏んだ場合等は、ペダル部材33前面と、仕込んでいる土等との接触圧力が作用し、充分な荷重制御がかかる。これにより、動物罠用トリガー装置T1のトリガー部3が落ちないため、動物罠Wは作動せず、狩猟対象外の小さい動物を捕獲してしまうという、いわゆる錯誤捕獲が生じることを抑制できる。
【0073】
また、特に、クマは生息数が減ってきており、保護対象獣となっているのは、上記した通りである。したがって、その錯誤捕獲を防止しなければならないが、その際は、動物罠用トリガー装置T1は、次のように作用する。
【0074】
すなわち、クマの前足8の掌部は、
図4、
図5に示すように比較的大きく、例えば爪先でトリガー部3のペダル部材33を踏んだとしても、掌部の他の部分が、容易に変形しない受け部2で直接又は土等を介して間接的に受け止められる。或いは、掌部の一部が仕掛け補助具5のワイヤ掛け52等に当たって、荷重の部分的に受け止められることもある。
【0075】
これにより、荷重が分散して、ペダル部材33が殆ど落ちないため、バネ板部材30が変形しにくく、その先端部が掛止受部50から外れないので、括り罠本体6も作動することはない。クマについては、このようにして、錯誤捕獲を防止できる(
図6(a)参照)。
【0076】
なお、動物がイノシシ等の捕獲対象動物であれば、バネ板部材30は、先端部が掛止受部50に対し自由に動けるように載せて掛止された状態で上記のように撓み変形し、ペダル部材33が動物の足8aで更に充分な踏力を以て踏まれることにより、ペダル部材33の下部側が一部、落とし孔24に入り、ついには先端部の掛止受部50に対する掛止が外れ、動物罠用トリガー装置T1は落ちる(
図6(b)参照)。
【0077】
このとき、まず、ペダル部材33の下部側が一部、落とし孔24に入ると、落とし孔24の大きさをほぼ占めるように落とし孔24を通してバネ板部材30に乗っていた土や草は、ペダル部材33とバネ板部材30の間に挟まれることはなく、ペダル部材33の前後部の底面がペダル脚330へ向けて下り傾斜していることもあって、ペダル部材33の下降の抵抗とはなりにくいので、落とし孔24を通って落ちる。これにより、動物罠用トリガー装置T1の係合部1による両アーム61、62先端の係合が解除されて括り罠本体6が作動する。
【0078】
なお、括り罠本体6の作動時には、動物の足8aが、括り輪690で括ることができる位置であるペダル部材33を充分な踏力を以て踏んでおり、つまり、動物の足8aは、当然にバネ板部材30を囲むようにセットされているワイヤロープ69の括り輪690の中央近辺に位置していることになる。したがって、動物の足8aは、動物罠用トリガー装置T1が落ちるのに伴い、仕掛け補助具5の内部に深く入り、ワイヤロープ69の括り輪690で脚の元部(付け根の部分)が括られることとも相まって、動物をより確実に捕獲することができる。
【0079】
さらに、仕掛け補助具5がステンレススチール製の箱体であり、取付台部材51に対する掛止受部50の位置も決まっているので、括り罠本体6と動物罠用トリガー装置T1及び仕掛け補助具5を組み合わせて罠を仕掛けたときに、掛止受部50に渡されたバネ板部材30の先端部の掛止受部50に対する掛かり具合に変化やズレが生じにくく、動物罠Wは当初設定の通りに安定して作動する。
【0080】
また、動物の足8aがペダル部材33に触れないところ、例えば受け部2を踏んだとき、或いはペダル部材33の踏み面の端を、充分でない踏力を以て踏んだときには、バネ板部材30の変形(撓み)が大きくならないので、掛止受部50に対するバネ板部材30の先端部の掛止が外れにくく、括り罠本体6が作動することはない。
【0081】
ここで、
図7を参照して、本実施の形態における動物罠用トリガー装置T1のバネ板部材30と、比較例とするバネ板部材30aとの作用の違いを比較検討する。
図7の(a)は本発明の動物罠用トリガー装置を示し、(b)はバネ板部材の幅がより狭い動物罠用トリガー装置を示す正面視説明図である。
【0082】
図7(a)に示すバネ板部材30に固定されたペダル部材33の踏み面の端を、動物の足8aが充分でない踏力を以て踏んだときは上記のようにほぼ確実に、しかも充分な踏力を以て踏んだときにも、罠の空作動や錯誤捕獲を充分に抑制することができる。すなわち、動物罠用トリガー装置T1で使用するバネ板部材30は、その幅が掛止受部50より若干狭い程度に充分広く形成されているので、剛性が比較的高く、捻れ等の変形に強い。
【0083】
これにより、
図7(a)に示すように、ペダル部材33の踏み面の端に比較的強い踏力がかかったときも、バネ板部材30が大きく捻れて撓み変形する等して掛止受部50に対する掛止が外れにくく、括り罠本体6が作動して空作動や錯誤捕獲となってしまうことを抑制することができる。
【0084】
ここで、仮にバネ板部材を、本実施の形態におけるバネ板部材30より幅狭に形成した場合に、どのようになるかを比較例として考察する。まず、
図7(b)に示すように、バネ板部材30aは、相当に幅狭に形成され、落とし孔24より若干広い程度に形成されている。
【0085】
そして、動物の足8aがペダル部材33の踏み面の中心部でなく、端部を踏んだにも関わらず、バネ板部材30aが容易に所定方向へ捻れて、ペダル部材33aが傾斜し、例えば足8aが滑って側方へ大きく流れたときにも、ペダル部材33aが固定されているバネ板部材30aが落ちてしまう。これにより括り罠本体が作動するが、この場合、足は踏み部材の中心部から大きくずれた位置にあるので、足8aをワイヤロープ69の括り輪690で捕捉することができず、空作動になってしまう。
【0086】
このように、
図7(b)に示した動物罠用トリガー装置では、足括り罠と組み合わせて仕掛けたときに、ペダル部材33aにおいて、特にその踏み面の中心部でなく端部に動物の足8aの踏力が作用したときのトリガー部3の感度の安定性にやや劣り、足が踏み部材の中心からずれた位置を踏んだときにもトリガー部3が落ちて、罠を作動させてしまうことが多くあった。本発明の動物罠用トリガー装置T1は、この課題を解消するものである。
【0087】
以下、本発明の他の実施の形態を説明する。
図8を参照する。
本実施の形態の動物罠用トリガー装置T2のペダル部材33bは、踏み面に滑り止め331を有する上部材334と、下部にペダル脚330を有する下部材332から成る。下部材332の上面の中心部には差し込み孔333が設けてあり、上部材334の下面の中心部には、差し込み孔333に挿脱可能な差し込みロッド335が設けてある。
【0088】
上部材334は、差し込みロッド335を差し込み孔333に挿入してスライドさせることにより、下部材332に対して高さの調整が可能である。
図8に示すように、現地での使用では、下部材332と上部材334の間の隙間に土を詰めて、高さの微調整が可能である。この高さ調整は、ワイヤロープ69の括り輪690を基準に行われ、捕獲対象動物の種類や土の質の違い等によって適宜設定される。
【0089】
図9を参照する。
本実施の形態の動物罠用トリガー装置T3は、バネ板部材30の先端部の幅方向中央部の受け部2の先端辺から突出した部分に、貫通した通し孔300が設けてある。通し孔300には、ストッパーピン34がワイヤ掛け52と側板53に外接した状態で差し込むことができるようになっている。なお、ストッパーピン34は、通し孔300の穴縁に引っ掛かる掛かり部(符号省略)で所定の高さに保たれるようになっている。
【0090】
これにより、ペダル部材33に動物の踏力等の外力が作用して、バネ板部材30が下方へ撓み変形しようとしても、ストッパーピン34で止められて動物罠用トリガー装置T3は落ちない。すなわち、ストッパーピン34を差し込む構造が安全装置となり、必要に応じて罠が作動しない状態に設定することが可能になる。
【0091】
このように、動物の捕獲に失敗する可能性が高い条件下では、括り罠本体6が作動しないため、動物罠Wの空作動を抑制できると共に、捕獲対象以外の動物を捕獲してしまう錯誤捕獲の可能性も低く抑えることができる。
【0092】
本明細書及び特許請求の範囲で使用している用語と表現は、あくまでも説明上のものであって、なんら限定的なものではなく、本明細書及び特許請求の範囲に記述された特徴およびその一部と等価の用語や表現を除外する意図はない。また、本発明の技術思想の範囲内で、種々の変形態様が可能であるということは言うまでもない。
【符号の説明】
【0093】
W 動物罠
T1 動物罠用トリガー装置
1 係合部
10 本体
11 掛部
12 掛部
13 取付台具
14 掛止板
15 取付具
150 掛け爪
2 受け部
24 落とし孔
3 トリガー部
30 バネ板部材
31 振れ止め片
33 ペダル部材
330 ペダル脚
331 滑り止め
5 仕掛け補助具
50 掛止受部
51 取付台部材
52 ワイヤ掛け
53 側板
6 足括り罠
61 固定アーム
62 跳上げアーム
63 ねじりコイルバネ
64 滑車
65 掛かり部
66 滑車
67 掛かり部
68 杭固定具
680 杭
69 ワイヤロープ
690 括り輪
7 獣道
70 仕掛け穴
8 クマの前足
8a 動物の足
30a バネ板部材
33a ペダル部材
T2 動物罠用トリガー装置
33b ペダル部材
332 下部材
333 差し込み孔
334 上部材
335 差し込みロッド
T3 動物罠用トリガー装置
300 通し孔
34 ストッパーピン