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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064465
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】トリガー式液体噴射装置
(51)【国際特許分類】
   B05B 11/00 20230101AFI20240507BHJP
   F04B 9/14 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
B05B11/00 102J
F04B9/14 B
B05B11/00 102B
B05B11/00 102E
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173074
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】勝田 治
(72)【発明者】
【氏名】松崎 尚洋
(72)【発明者】
【氏名】関野 博一
【テーマコード(参考)】
3H075
【Fターム(参考)】
3H075AA01
3H075BB03
3H075CC26
3H075DA04
3H075DB12
3H075DB22
(57)【要約】
【課題】トリガー式液体噴射装置において、噴射量を抑制しつつ液滴の着弾制度を高くする。
【解決手段】ノズルNから液体Lを噴射するヘッド部22と、トリガー19が設けられる本体部21と、ヘッド部22に一端が接続される液体の流路13と、流路13と繋がるシリンダー17と、トリガー19の変位に応じてシリンダー17に対して摺動して流路13において液体Lを圧送するピストン18と、を備え、ヘッド部22は、液体Lを連続流Laで噴射するとともに連続流Laを液滴Lb化させて液滴Lb状で対象物に衝突させることが可能に構成され、ピストン18の受圧面積をSp(mm)とし、トリガー19の変位量をl(mm)とし、ノズルNの最狭部の断面積をSn(mm)とし、トリガー19の変位量に対するピストン18の変位量の比をkとした場合に、(Sp・l)/(Sn・k)が60000(mm)以上となるトリガー式液体噴射装置1。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのノズルを有し、前記ノズルから液体を噴射するヘッド部と、
変位可能なトリガーが設けられる本体部と、
前記ヘッド部に一端が接続され、前記本体部の内部に配置される前記液体の流路と、
前記流路と繋がり、前記本体部の内部に配置されるシリンダーと、
前記トリガーの変位に応じて前記シリンダーに対して摺動し、前記流路において前記液体を圧送するピストンと、
を備え、
前記ヘッド部は、前記液体を連続流で噴射するとともに前記連続流を液滴化させて液滴状で対象物に衝突させることが可能に構成され、
前記ピストンの受圧面積をSp(mm)とし、前記トリガーの変位量をl(mm)とし、前記ノズルの最狭部の断面積をSn(mm)とし、前記トリガーの変位量に対する前記ピストンの変位量の比をkとした場合に、(Sp・l)/(Sn・k)が60000(mm)以上となるように構成されていることを特徴とするトリガー式液体噴射装置。
【請求項2】
請求項1に記載のトリガー式液体噴射装置において、
前記ノズルでの前記液体の流速は、20(m/s)以上となるように構成されていることを特徴とするトリガー式液体噴射装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のトリガー式液体噴射装置において、
前記トリガーの1回の変位に伴って、前記液体が3秒以上連続して噴射されるように構成されていることを特徴とするトリガー式液体噴射装置。
【請求項4】
請求項1に記載のトリガー式液体噴射装置において、
前記流路の圧力を調整する圧力調整部を備えることを特徴とするトリガー式液体噴射装置。
【請求項5】
請求項4に記載のトリガー式液体噴射装置において、
前記圧力調整部の圧力の値を変更可能な調整圧力変更部を備えることを特徴とするトリガー式液体噴射装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載のトリガー式液体噴射装置において、
前記圧力調整部として、前記流路から分岐流路に前記液体を逃がすことで前記流路の圧力を調整可能な圧力逃し弁を有することを特徴とするトリガー式液体噴射装置。
【請求項7】
請求項4または5に記載のトリガー式液体噴射装置において、
前記圧力調整部として、外部に連通可能であり外部に連通することで前記流路の圧力を調整可能な減圧弁を有することを特徴とするトリガー式液体噴射装置。
【請求項8】
請求項4または5に記載のトリガー式液体噴射装置において、
前記圧力調整部として、前記流路から前記液体を導入可能であり、前記液体を溜めること、並びに、溜められた前記液体を前記流路に戻すことで、前記流路の圧力を調整可能な蓄圧部を有することを特徴とするトリガー式液体噴射装置。
【請求項9】
請求項1または2に記載のトリガー式液体噴射装置において、
前記ヘッド部は、前記ノズルを複数有することを特徴とするトリガー式液体噴射装置。
【請求項10】
請求項9に記載のトリガー式液体噴射装置において、
前記ヘッド部は、複数の前記ノズルが第1方向に沿って並べられるノズル列を有することを特徴とするトリガー式液体噴射装置。
【請求項11】
請求項9に記載のトリガー式液体噴射装置において、
前記ヘッド部は、複数の前記ノズルが円形に配置されていることを特徴とするトリガー式液体噴射装置。
【請求項12】
請求項1または2に記載のトリガー式液体噴射装置において、
前記本体部と接続され、前記液体を貯留する液体貯留部を備えることを特徴とするトリガー式液体噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリガー式液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、対象物に対して液体を噴射させる様々な液体噴射装置が使用されている。このような液体噴射装置のうち、ユーザーによる操作部としてのトリガーを有し、トリガーの変位に応じてシリンダーに対してピストンを摺動させて液体を圧送することにより該液体を噴射するトリガー式液体噴射装置がある。例えば、特許文献1には、トリガーを変位させることによりボディに設けられたシリンダーに対してピストンを摺動させてノズルから液体を噴射するトリガー式の液体噴射器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-95360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液体噴射装置には、噴射する液体を微小化した液滴で対象物に衝突させることが望まれる場合がある。しかしながら、特許文献1に記載されるような従来のトリガー式液体噴射装置においては、噴射する液体を微小化した液滴で噴射するために、広い範囲に液滴を拡散させる拡散ノズルを有していた。拡散ノズルを介して液体を噴射すると、対象物が狭い範囲である場合に、対象物以外の領域にも多くの液体を噴射することとなり液体の無駄を生じさせることとなる。すなわち、従来のトリガー式液体噴射装置においては、噴射量を抑制しつつ液滴の着弾制度を高くすることが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本発明のトリガー式液体噴射装置は、少なくとも1つのノズルを有し、前記ノズルから液体を噴射するヘッド部と、変位可能なトリガーが設けられる本体部と、前記ヘッド部に一端が接続され、前記本体部の内部に配置される前記液体の流路と、前記流路と繋がり、前記本体部の内部に配置されるシリンダーと、前記トリガーの変位に応じて前記シリンダーに対して摺動し、前記流路において前記液体を圧送するピストンと、を備え、前記ヘッド部は、前記液体を連続流で噴射するとともに前記連続流を液滴化させて液滴状で対象物に衝突させることが可能に構成され、前記ピストンの受圧面積をSp(mm)とし、前記トリガーの変位量をl(mm)とし、前記ノズルの最狭部の断面積をSn(mm)とし、前記トリガーの変位量に対する前記ピストンの変位量の比をkとした場合に、(Sp・l)/(Sn・k)が60000(mm)以上となるように構成されていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施例1のトリガー式液体噴射装置を表す概略図。
図2】実施例1のトリガー式液体噴射装置で使用可能なヘッド部の例を表す概略図。
図3】実施例1のトリガー式液体噴射装置で使用可能なヘッド部の例を表す概略図。
図4】実施例1のトリガー式液体噴射装置で使用可能なヘッド部の例を表す概略図。
図5】実施例1のトリガー式液体噴射装置で使用可能なヘッド部の例を表す概略図。
図6】実施例1のトリガー式液体噴射装置で使用可能なヘッド部の例を表す概略図。
図7】実施例1のトリガー式液体噴射装置で使用可能なヘッド部の例を表す概略図。
図8】実施例1のトリガー式液体噴射装置で使用可能なヘッド部の例を表す概略図。
図9】実施例1のトリガー式液体噴射装置で使用可能なヘッド部の例を表す概略図。
図10】実施例2のトリガー式液体噴射装置を表す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
最初に、本発明について概略的に説明する。
上記課題を解決するための本発明の第1の態様のトリガー式液体噴射装置は、少なくとも1つのノズルを有し、前記ノズルから液体を噴射するヘッド部と、変位可能なトリガーが設けられる本体部と、前記ヘッド部に一端が接続され、前記本体部の内部に配置される前記液体の流路と、前記流路と繋がり、前記本体部の内部に配置されるシリンダーと、前記トリガーの変位に応じて前記シリンダーに対して摺動し、前記流路において前記液体を圧送するピストンと、を備え、前記ヘッド部は、前記液体を連続流で噴射するとともに前記連続流を液滴化させて液滴状で対象物に衝突させることが可能に構成され、前記ピストンの受圧面積をSp(mm)とし、前記トリガーの変位量をl(mm)とし、前記ノズルの最狭部の断面積をSn(mm)とし、前記トリガーの変位量に対する前記ピストンの変位量の比をkとした場合に、(Sp・l)/(Sn・k)が60000(mm)以上となるように構成されていることを特徴とする。
【0008】
本態様によれば、ヘッド部は、前記液体を連続流で噴射するとともに前記連続流を液滴化させて液滴状で対象物に衝突させることが可能に構成されている。このような構成のヘッド部を有することで、高いエネルギーで液滴を対象物に衝突させることができるとともに、液滴を正確に狭い範囲に噴射することができる。特に、(Sp・l)/(Sn・k)が60000(mm)以上となるように構成されていることで、効果的に、噴射量を抑制しつつ液滴の着弾制度を高くすることが可能になる。
【0009】
本発明の第2の態様のトリガー式液体噴射装置は、前記第1の態様において、前記ノズルでの前記液体の流速は、20(m/s)以上となるように構成されていることを特徴とする。
【0010】
本態様によれば、ノズルでの液体の流速は20(m/s)以上となるように構成されている。このような構成とすることで、連続流で噴射した液滴を安定して液滴化させることができ、特に高いエネルギーで液滴を対象物に衝突させることができる。
【0011】
本発明の第3の態様のトリガー式液体噴射装置は、前記第1または第2の態様において、前記トリガーの1回の変位に伴って、前記液体が3秒以上連続して噴射されるように構成されていることを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、トリガーの1回の変位に伴って液体が3秒以上連続して噴射される。このような構成とすることで、液滴の着弾位置を好適に対象物に合わせることができる。
【0013】
本発明の第4の態様のトリガー式液体噴射装置は、前記第1の態様において、前記流路の圧力を調整する圧力調整部を備えることを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、圧力調整部を備える。このため、適切な圧力で液体を噴射することができる。
【0015】
本発明の第5の態様のトリガー式液体噴射装置は、前記第4の態様において、前記圧力調整部の圧力の値を変更可能な調整圧力変更部を備えることを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、圧力調整部の圧力の値を変更可能な調整圧力変更部を備える。このため、流路の圧力を適切な値に調整することができる。
【0017】
本発明の第6の態様のトリガー式液体噴射装置は、前記第4または第5の態様において、前記圧力調整部として、前記流路から分岐流路に前記液体を逃がすことで前記流路の圧力を調整可能な圧力逃し弁を有することを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、圧力調整部として、流路から分岐流路に液体を逃がすことで流路の圧力を調整可能な圧力逃し弁を有する。このような構成とすることで、流路の圧力を適切な値に調整することができる。
【0019】
本発明の第7の態様のトリガー式液体噴射装置は、前記第4または第5の態様において、前記圧力調整部として、外部に連通可能であり外部に連通することで前記流路の圧力を調整可能な減圧弁を有することを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、圧力調整部として、外部に連通可能であり外部に連通することで流路の圧力を調整可能な減圧弁を有する。このような構成とすることで、流路の圧力を適切な値に調整することができる。
【0021】
本発明の第8の態様のトリガー式液体噴射装置は、前記第4または第5の態様において、前記圧力調整部として、前記流路から前記液体を導入可能であり、前記液体を溜めること、並びに、溜められた前記液体を前記流路に戻すことで、前記流路の圧力を調整可能な蓄圧部を有することを特徴とする。
【0022】
本態様によれば、圧力調整部として、流路から液体を導入可能であり、液体を溜めること、並びに、溜められた液体を流路に戻すことで、流路の圧力を調整可能な蓄圧部を有する。このような構成とすることで、流路の圧力を適切な値に調整することができる。
【0023】
本発明の第9の態様のトリガー式液体噴射装置は、前記第1または第2の態様において、前記ヘッド部は、前記ノズルを複数有することを特徴とする。
【0024】
本態様によれば、ヘッド部はノズルを複数有する。このため、液滴を噴射する対象物の面積が大きい場合などにおいて、効果的に、噴射量を抑制しつつ液滴の着弾制度を高くすることができる。
【0025】
本発明の第10の態様のトリガー式液体噴射装置は、前記第9の態様において、前記ヘッド部は、複数の前記ノズルが第1方向に沿って並べられるノズル列を有することを特徴とする。
【0026】
本態様によれば、ヘッド部は複数のノズルが第1方向に沿って並べられるノズル列を有する。このため、液滴を噴射する対象物の面積が大きい場合などにおいて、特に効果的に、噴射量を抑制しつつ液滴の着弾制度を高くすることができる。
【0027】
本発明の第11の態様のトリガー式液体噴射装置は、前記第9の態様において、前記ヘッド部は、複数の前記ノズルが円形に配置されていることを特徴とする。
【0028】
本態様によれば、ヘッド部は複数のノズルが円形に配置されている。このため、液滴を噴射する対象物の面積が大きい場合などにおいて、特に効果的に、噴射量を抑制しつつ液滴の着弾制度を高くすることができる。
【0029】
本発明の第12の態様のトリガー式液体噴射装置は、前記第1または第2の態様において、前記本体部と接続され、前記液体を貯留する液体貯留部を備えることを特徴とする。
【0030】
本態様によれば、本体部と接続され、液体を貯留する液体貯留部を備える。このため、液体を供給するチューブなどを接続する必要がないので、ユーザーは容易にトリガー式液体噴射装置を持ち運びすることができる。
【0031】
[実施例1]
以下、添付図面を参照して、本発明に係る実施形態を説明する。最初に、図1を参照して本発明のトリガー式液体噴射装置1における実施例1に係るトリガー式液体噴射装置1Aの概要について説明する。図1に示すトリガー式液体噴射装置1Aは、少なくとも1つのノズルNが設けられた噴射部16を有し、ノズルNから液体Lを噴射することが可能なヘッド部22を備えている。また、回動軸19aを基準に回動することで変位可能なトリガー19が設けられる本体部21を備えている。さらに、本体部21と接続され、液体Lを貯留する液体貯留部11を備えている。
【0032】
液体貯留部11には、吸入チューブ12が設けられており、液体貯留部11に貯留される液体Lを吸入チューブ12から吸入することが可能に構成されている。また、吸入チューブ12は、液体Lの流路13と接続されている。なお、流路13は、内部が高圧になっても膨張などしにくい耐高圧性の素材で構成されている。
【0033】
流路13は、ヘッド部22及び本体部21の内部に配置され、ヘッド部22に一端が接続されているとともに吸入チューブ12と他端が接続されている。そして、さらに別の端部がシリンダー17に接続されている。
【0034】
上記のように、シリンダー17は、流路13と繋がっており、また、本体部21の内部に配置されている。そして、本体部21には、トリガー19の変位に応じてシリンダー17に対して摺動し、流路13において液体Lを圧送するピストン18が設けられている。すなわち、ユーザーが回動軸19aを基準にトリガー19を回動させることでピストン18がシリンダー17に対して摺動し、液体貯留部11に貯留される液体Lが流路13においてヘッド部22側に圧送される構成となっている。
【0035】
なお、流路13における液体貯留部11側からヘッド部22側へと向かう分岐部13Dの両側には、逆止弁14及び逆止弁15が設けられている。このため、流路13中の液体Lがヘッド部22側から液体貯留部11側へ逆流することが抑制される。
【0036】
流路13は、ヘッド部22の内部において逆止弁15から噴射部16のノズルNまで繋がっている。そして、ヘッド部22は、噴射部16のノズルNを介して、液体Lを連続流Laで噴射するとともに連続流Laを液滴Lb化させて液滴Lb状で対象物に衝突させることが可能に構成されている。以下、本実施例のトリガー式液体噴射装置1Aについてさらに詳細に説明する。
【0037】
ここで、ピストン18の受圧面積をSp(mm)とし、トリガー19の変位量をl(mm)とし、ノズルNの最狭部の断面積をSn(mm)とし、トリガー19の作動時間をt(s)とし、トリガー19の変位量に対するピストン18の変位量の比をkとする。なお、トリガー19の作動時間tとは、ユーザーがトリガー19を1ストロークぶん引くことにかかる時間である。また、トリガー19の変位量l(mm)は、ユーザーがトリガー19を1ストロークぶん引いたことに伴うトリガーの移動量であり、図1においては、距離L2に対応する。また、ユーザーがトリガー19を1ストロークぶん引いたことに伴うピストン18の変位量は、図1においては、距離L1に対応する。また、kはL1とL2の比で表される。
【0038】
上記のように定義づけした場合、トリガーの動作速度Vt(mm/s)は、l/t(mm/s)となる。また、ノズルNにおける液体Lの流速Vn(m/s)は、(Vt・Sp)/(Sn・k・1000)(m/s)となり、これを整理すると、(Sp・l)/(Sn・k・t)となる。したがって、ノズルNにおける液体Lの流速Vn(m/s)とトリガー19の作動時間t(s)との積、すなわち、トリガー19を作動させることでノズルNにおいて液体Lが流れる距離は、(Sp・l)/(Sn・k・1000)(m)、すなわち、(Sp・l)/(Sn・k)(mm)となる。
【0039】
ここで、本実施例のトリガー式液体噴射装置1Aにおいては、(Sp・l)/(Sn・k)が60000(mm)以上となるように構成されている。上記のように、本実施例のヘッド部22は、液体Lを連続流Laで噴射するとともに連続流Laを液滴Lb化させて液滴Lb状で対象物に衝突させることが可能に構成されているが、このような構成とすることで、高いエネルギーで液滴Lを対象物に衝突させることができるとともに、液滴Lを正確に狭い範囲に噴射することができる。そして、特に、本実施例のトリガー式液体噴射装置1Aのように、(Sp・l)/(Sn・k)が60000(mm)以上となるように構成されていることで、効果的に、噴射量を抑制しつつ液滴Lの着弾制度を高くすることが可能になる。
【0040】
なお、トリガー19の変位量に対するピストン18の変位量の比とは、ユーザーがトリガー19を変位させることに伴うユーザーのトリガー19における接触部分のトリガー19の移動量に対するピストン18の移動量の比を表す。なお、本実施例においては、トリガー19は回動軸19aを基準に回動する回動式のトリガー19なので、ピストン18のトリガーに対する接触位置P1と、ユーザーのトリガー19における接触部分の位置P2と、の回動軸19aに対する距離が異なることでkは1ではないが、該接触位置P1と位置P2との回動軸に対する距離が同じ場合ではkは1となる。また、本実施例のような回動式ではなく例えば直線的に移動するプッシュ式のトリガーであって、ユーザーがトリガーを変位させることに伴うトリガーの移動量がシリンダーの移動量と同じ構成である場合もkは1となる。
【0041】
ここで、本実施例のトリガー式液体噴射装置1Aにおいては、ユーザーのトリガー19における接触部分の位置P2に対応する位置に外側に向けて力が加わる弾性部材20が設けられている。また、本実施例のノズルNはSUSプレートに形成されているが、このような構成に限定は無く、他にも、例えばシリコン基板にエッチングプロセスでノズルNを形成してもよい。
【0042】
ここで、本実施例のトリガー式液体噴射装置1Aにおいては、ピストン18の受圧面積Sp(mm)、トリガー19の変位量l(mm)、ノズルNの最狭部の断面積Sn(mm)、トリガー19の変位量に対するピストン18の変位量の比kを上記のような関係にすることで、ノズルNでの液体Lの流速が20(m/s)以上となるように構成している。本実施例のトリガー式液体噴射装置1Aは、このような構成としていることで、連続流Laで噴射した液滴Lbを安定して液滴Lb化させることができ、特に高いエネルギーで液滴Lbを対象物に衝突させることができる。
【0043】
また、本実施例のトリガー式液体噴射装置1Aにおいては、ピストン18の受圧面積Sp(mm)、トリガー19の変位量l(mm)、ノズルNの最狭部の断面積Sn(mm)、トリガー19の変位量に対するピストン18の変位量の比kを上記のような関係にすることで、トリガー19の1回の変位に伴って、液体Lが3秒以上連続して噴射されるように構成している。本実施例のトリガー式液体噴射装置1Aは、このような構成としていることで、例えば、ユーザーが着弾位置を判断するまでに1秒、対象物とのずれを調整するのに1秒、着弾時間を1秒などとすることができ、ユーザーは液滴Lbの着弾位置を好適に対象物に合わせることができる。
【0044】
なお、本実施例のトリガー式液体噴射装置1Aは、噴射部16として様々な構成のものを付け替えて使用可能な構成となっている。本実施例のトリガー式液体噴射装置1Aで使用可能な噴射部16の例について図2から図9を参照して説明する。
【0045】
最初に、図2で表される噴射部16は、1つのノズルNのみを有する構成である。このように、噴射部16は1つのノズルNのみを有していてもよい。ただし、噴射部16は複数のノズルNを有していてもよい。図3で表される噴射部16は、往復移動方向Bに沿って並ぶ2つのノズルNを有する構成である。ただし、往復移動方向Bに沿って3つ以上のノズルNを有する構成としてもよい。
【0046】
このように、ヘッド部22は、ノズルNを複数有していてもよい。ヘッド部22がノズルNを複数有することで、液滴Lbを噴射する対象物の面積が大きい場合などにおいて、効果的に、噴射量を抑制しつつ液滴Lbの着弾制度を高くすることができる。
【0047】
図4で表される噴射部16は、第1方向としての図中の上下方向に沿って並ぶ4つのノズルNを有する構成である。ただし、第1方向に沿って並ぶ2つ、3つ、或いは、5つ以上のノズルNを有する構成としてもよい。図5及び図6で表される噴射部16は、第1方向に沿って並ぶ複数のノズルNからなるノズル列を3本有する構成である。図5で表される噴射部16のように第1方向と交差する第2方向における各ノズル列のノズルNの位置が揃っていてもよいし、図6で表される噴射部16のように第2方向における各ノズル列のノズルNの位置が揃っていないものを含んでいてもよい。
【0048】
このように、ヘッド部2は、第1方向に沿って複数のノズルNが並ぶノズル列を有することが好ましい形態の1つである。このような構成となっていることで、液滴Lbを噴射する対象物の面積が大きい場合などにおいて、特に効果的に、噴射量を抑制しつつ液滴Lbの着弾制度を高くすることができるためである。
【0049】
図7図8及び図9で表される噴射部16は、複数のノズルNが円形に配置されている。このような構成となっていることでも、液滴Lbを噴射する対象物の面積が大きい場合などにおいて、特に効果的に、噴射量を抑制しつつ液滴Lbの着弾制度を高くすることができる。ここで、図7で表される噴射部16は1重の円状に複数のノズルNが配置され、図8で表される噴射部16は同心円状に2重の円状に複数のノズルNが配置されている。また、図9で表される噴射部16は、同心円状ではなく3つの円状に複数のノズルNが配置されている。このように、特にノズルNの配置に限定は無い。また、図8で表される噴射部16は、外側の円を構成するノズルNのほうが内側の円を構成するノズルNよりも内径が大きくなっている。このように、ノズルNの内径も特に限定は無い。また、複数のノズルNが円形ではなく例えば多角形に配置されていてもよい。
【0050】
なお、上記のように、本実施例のトリガー式液体噴射装置1Aは、本体部21と接続され、液体Lを貯留する液体貯留部11を備えている。このため、液体Lを供給するチューブなどを接続する必要がないので、ユーザーは容易にトリガー式液体噴射装置1を持ち運びすることができる。ただし、このような構成に限定されない。チューブなどを本体部21に接続することを前提とした構成としてもよい。
【0051】
[実施例2]
以下に、実施例2のトリガー式液体噴射装置1Bについて図10を参照して説明する。図10は、実施例1のトリガー式液体噴射装置1における図1に対応する図である。本実施例のトリガー式液体噴射装置1Bは、以下で説明する構成以外については、実施例1のトリガー式液体噴射装置1Aと同様である。このため、本実施例のトリガー式液体噴射装置1Bは、下記の説明箇所以外については実施例1のトリガー式液体噴射装置1Aと同様の特徴を有している。そこで、図10では上記実施例1と共通する構成部材は同じ符号で示し、詳細な説明は省略する。
【0052】
ここで、図10で表されるように、本実施例のトリガー式液体噴射装置1Bは、流路13の圧力を調整する圧力調整部30を備えている。このため、本実施例のトリガー式液体噴射装置1Bは、適切な圧力で液体Lを噴射することができる。なお、圧力調整部30を備えることで、従来のトリガー式液体噴射装置1においてありがちであった液体Lを噴射する際の圧力変動を抑制することもできる。
【0053】
また、図10で表されるように、本実施例のトリガー式液体噴射装置1Bは、圧力調整部30として、流路13から分岐流路13aに液体Lを逃がすことで流路13の圧力を調整可能な圧力逃し弁24を有する。このような構成とすることで、流路13の圧力を適切な値に調整することができる。なお、圧力逃し弁24を有する構成とすることで、後述する減圧弁26のみを有する構成と比べてユーザーがトリガー19を変位させた際に流路13内が急激に増圧することを抑制でき、装置の破損などを抑制することができる。
【0054】
また、図10で表されるように、本実施例のトリガー式液体噴射装置1Bは、圧力調整部30として、外部に連通可能であり外部に連通することで流路13の圧力を調整可能な減圧弁26を有する。このような構成とすることで、流路13の圧力を適切な値に調整することができる。なお、減圧弁26を有する構成とすることで、圧力逃し弁24のみを有する構成と比べてユーザーがトリガー19を変位させた際に流路13の液体貯留部11に戻りすぎることを抑制でき、ユーザーのトリガー19を変位させることによる加圧の無駄、すなわち、ユーザーの負荷の無駄などを抑制することができる。
【0055】
また、図10で表されるように、本実施例のトリガー式液体噴射装置1Bは、圧力調整部30として、流路13から液体Lを導入可能であり、液体Lを溜めること、並びに、溜められた液体Lを流路13に戻すことで、流路13の圧力を調整可能な蓄圧部23を有する。このような構成とすることで、流路13の圧力を適切な値に調整することができる。なお、蓄圧部23を有する構成とすることで、減圧弁26や圧力逃し弁24のみを有する構成と比べて、流路13の圧力を特に正確な値に調整することができる。
【0056】
また、図10で表されるように、本実施例のトリガー式液体噴射装置1Bにおいては、圧力逃し弁24は分岐流路13aに液体Lを逃がす圧力をユーザーが任意の値に調整可能な調整圧力変更部25を備え、減圧弁26は流路13内の圧力を逃がすこととなる圧力の値をユーザーが任意の値に調整可能な調整圧力変更部27を備えている。別の表現をすると、本実施例のトリガー式液体噴射装置1Bは、圧力調整部30の圧力の値を変更可能な調整圧力変更部25及び調整圧力変更部27を備えている。このため、本実施例のトリガー式液体噴射装置1Bは、流路13の圧力をユーザーが任意に設定した適切な値に調整することができる。なお、調整圧力変更部25及び調整圧力変更部27における圧力を逃がすこととなる圧力の値の調整は、本実施例のようにユーザーが任意の値に調整できる構成でもよいが、所定の値に設定されており、流路13の圧力が所定の圧力以上にならないように所定の圧力を超えそうな場合には自動的に減圧する構成などとしてもよい。
【0057】
なお、図10で表されるように、本実施例のトリガー式液体噴射装置1Bにおいては、トリガー19は、ピストン18の移動方向に沿って全体的に移動する構成となっている。このため、ユーザーがトリガー19を引くことによる、ピストン18のトリガー19に対する接触位置P1の移動距離L1と、ユーザーのトリガー19における接触部分の位置P2の移動距離L2と、が同じとなり、トリガー19の変位量に対するピストン18の変位量の比kは1となる。
【0058】
ここで、圧力逃し弁24、減圧弁26及び蓄圧部23の構成に特に限定は無く、既知の構成のものを使用することができる。例えば、本実施例の蓄圧部23は、内部に液体Lを収容可能な収容パックと該収容パックを圧縮する板バネを有しているがこのような構成に限定されない。また、調整圧力変更部25及び調整圧力変更部27の構成にも特に限定は無い。ユーザーが任意の値に設定できる構成でもよいが、予め定められた値に設定されている構成であってもよい。
【0059】
本発明は、上述の実施例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。例えば、レーザーポインターや照射位置を認識するためのファインダーなどを設け、噴射位置をわかりやすくしてもよい。また、トリガー19の移動を容易にするための移動補助機構などを設けてもよい。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0060】
1…トリガー式液体噴射装置、1A…トリガー式液体噴射装置、1B…トリガー式液体噴射装置、11…液体貯留部、12…吸入チューブ、13…流路、13a…分岐流路、13D…分岐部、14…逆止弁、15…逆止弁、16…噴射部、17…シリンダー、18…ピストン、19…トリガー、19a…回動軸、20…弾性部材、21…本体部、22…ヘッド部、23…蓄圧部、24…圧力逃し弁、25…調整圧力変更部、26…減圧弁、27…調整圧力変更部、30…圧力調整部、L…液体、La…連続流、Lb…液滴、N…ノズル、P1…接触位置、P2…位置
図1
図2
図3
図4
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図6
図7
図8
図9
図10