(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006447
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】種子の形質推定装置、種子の形質推定モデルの生成装置、種子の形質推定方法、種子の形質推定モデルの生成方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
C12M 1/34 20060101AFI20240110BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240110BHJP
C12Q 1/04 20060101ALI20240110BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
C12M1/34 B
G06T7/00 600
C12Q1/04
C12M1/00 A
C12M1/34 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107315
(22)【出願日】2022-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】505026686
【氏名又は名称】国立大学法人滋賀大学
(71)【出願人】
【識別番号】390028130
【氏名又は名称】タキイ種苗株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003557
【氏名又は名称】弁理士法人レクシード・テック
(74)【代理人】
【識別番号】100194515
【弁理士】
【氏名又は名称】南野 研人
(72)【発明者】
【氏名】飯山 将晃
(72)【発明者】
【氏名】山口 翔
(72)【発明者】
【氏名】浅見 美貴
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
5L096
【Fターム(参考)】
4B029BB12
4B029FA02
4B029FA03
4B063QA05
4B063QQ04
4B063QQ09
4B063QR73
4B063QR78
4B063QS39
4B063QX01
5L096AA06
5L096BA03
5L096CA02
5L096DA02
5L096GA51
5L096HA09
5L096KA04
5L096KA15
(57)【要約】 (修正有)
【課題】種子の形質の推定に使用可能な種子の形質推定装置および種子の形質推定方法を提供する。
【解決手段】本開示の種子の形質推定装置3は、1以上の種子が撮像された多波長画像を取得する第1の取得部31と、第1の種子の形質推定モデルを用いて、前記多波長画像中の種子を構成する1以上の画素の形質を推定することにより、前記種子の形質を推定する推定部32とを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上の種子が撮像された多波長画像を取得する第1の画像取得部と、
第1の種子の形質推定モデルを用いて、前記多波長画像中の種子を構成する1以上の画素の形質を推定することにより、前記種子の形質を推定する推定部とを含む、種子の形質推定装置。
【請求項2】
前記推定部では、
前記種子を構成する1以上の画素の形質の推定結果において、所定の形質であるとの推定結果の画素の数および/または割合が閾値以上である場合、および/または
前記種子を構成する1以上の画素の形質の推定結果において、所定の形質でないとの推定結果の画素の数および/または割合が閾値未満である場合、
前記種子が、所望の形質を有すると推定する、請求項1に記載の種子の形質推定装置。
【請求項3】
前記多波長画像中の1以上の種子を検出する検出部を含み、
前記推定部では、検出された種子について、前記種子の形質を推定する、請求項1または2に記載の種子の形質推定装置。
【請求項4】
前記第1の種子の形質推定モデルは、種子の形質推定モデルの学習データを用いて機械学習により学習させた学習モデルであり、
前記学習データは、
1以上の種子を撮像した多波長画像と種子の形質データとを含み、
前記多波長画像中の種子を構成する1以上の画素に前記形質データが紐付けられている、
請求項1または2に記載の種子の形質推定装置。
【請求項5】
前記第1の種子の形質推定モデルを用いて、前記多波長画像において、前記形質の推定に寄与している波長を評価する評価部と、
得られた評価結果を用いて、1以上の種子を撮像した多波長画像から、2以上の所定の波長のスペクトルデータを学習用データとして抽出する抽出部と、
前記学習用データ中の種子を構成する1以上の画素に、種子の形質データと紐付けて、第2の学習データを生成する第2のデータ生成部と、
前記第2の学習データを用いて、機械学習により第2の種子の形質推定モデルを生成する第2の学習部を含む、請求項1または2に記載の種子の形質推定装置。
【請求項6】
前記推定部では、前記第1の種子の形質推定モデルに代えて、前記第2の種子の形質推定モデルを用いる、請求項5に記載の種子の形質推定装置。
【請求項7】
前記種子の形質は、種子の発芽または種子の発芽の有無、種子の純度または種子の純度の正否、および/または、種子の病害または種子の病害の有無である、請求項1または2に記載の種子の形質推定装置。
【請求項8】
種子の形質推定モデルの第1の学習データを用いて、機械学習により前記種子の形質推定モデルを生成する第1の学習部を含み、
前記第1の学習データは、
1以上の種子を撮像した多波長画像と、種子の形質データとを含み、
前記多波長画像中の種子を構成する1以上の画素に前記形質データが紐付けられている、種子の形質推定モデルの生成装置。
【請求項9】
コンピュータ上で実行される種子の形質推定方法であって、
1以上の種子が撮像された多波長画像を取得する第1の取得工程と、
第1の種子の形質推定モデルを用いて、前記多波長画像中の種子を構成する1以上の画素の形質を推定することにより、前記種子の形質を推定する推定工程とを含む、種子の形質推定方法。
【請求項10】
コンピュータ上で実行される種子の形質推定モデルの生成方法であって、
種子の形質推定モデルの第1の学習データを用いて、機械学習により前記種子の形質推定モデルを生成する第1の学習工程を含み、
前記第1の学習データは、
1以上の種子を撮像した多波長画像と種子の形質データとを含み、
前記多波長画像中の種子を構成する1以上の画素に前記形質データが紐付けられている、種子の形質推定モデルの生成方法。
【請求項11】
コンピュータに、
1以上の種子が撮像された多波長画像を取得する第1の取得処理と、
第1の種子の形質推定モデルを用いて、前記多波長画像中の種子を構成する1以上の画素の形質を推定することにより、前記種子の形質を推定する推定処理とを実行させる、プログラム。
【請求項12】
コンピュータに、
種子の形質推定モデルの第1の学習データを用いて、機械学習により種子の形質推定モデルを生成する第1の学習処理を実行させる、プログラムであり、
前記第1の学習データは、
1以上の種子を撮像した多波長画像と種子の形質データとを含み、
前記多波長画像中の種子を構成する1以上の画素に前記形質データが紐付けられている、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種子の形質推定装置、種子の形質推定モデルの生成装置、種子の形質推定方法、種子の形質推定モデルの生成方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
種子の発芽、種子の遺伝的純度、および種子汚染は、発芽検査、生化学検査、栽培検査、または病理学検査で確認できる。前記発芽検査では、検査対象の種子に水分を吸収させ、根、胚軸、または葉を確認することにより、発芽の有無等の種子の形質を検査する。前記生化学検査では、検査対象の種子からDNAを抽出し、遺伝的形質を検査する。また、前記栽培検査では、栽培後の苗および青果物を観察することで検査する。前記病理検査では、検査対象の種子の培養、または検査対象の種子からDNAまたはRNAを抽出し、PCR検査等の実施により病原体を検出する。また、前記病理検査では、栽培後の発病の有無で検査する。ただし、各検査方法では、前記検査対象の種子の播種または破壊を行なうため、前記検査対象の種子は、種子として販売できない。このため、前記種子の形質に関する検査は、サンプリング検査が基本となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
工業製品等では、品質検査用の学習済モデルを用いて、品質検査を効率化することが試みられている。具体的には、検査対象の工業製品を含む画像と、検査対象の品質とを組合せて教師データとし、機械学習させることにより、学習済モデルを生成する。そして、得られた学習済モデルと、前記検査対象の工業製品を含む画像とを用いて、前記検査対象の品質を推定し、品質検査に活用することが試みられている。
【0004】
そこで、本発明者らは、一般的なカメラ(RGB画像)で撮像した種子の画像データと、前記種子を発芽検査に供し、得られる発芽の有無等の種子の形質に関するデータとを組合せて教師データ(学習データ)とし、種子の形質推定モデルを作成した。すなわち、種子単位で、種子の画像に種子の形質データを紐付けたデータを、教師データとし、種子の形質推定モデルを作成した。しかしながら、得られた種子の形質推定モデルと種子の画像とを用いて、種子の形質を推定した場合、対象の種子の形質を推定できないという問題が生じることを見出した。
【0005】
そこで、本開示は、種子の形質の推定に使用可能な種子の形質推定装置および種子の形質推定方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本開示の種子の形質推定装置(以下、「推定装置」という。)は、1以上の種子が撮像された多波長画像を取得する第1の画像取得部と、
第1の種子の形質推定モデルを用いて、前記多波長画像中の種子を構成する1以上の画素の形質を推定することにより、前記種子の形質を推定する推定部とを含む。
【0007】
本開示の種子の形質推定モデルの生成装置(以下、「生成装置」ともいう。)は、種子の形質推定モデルの第1の学習データを用いて、機械学習により前記種子の形質推定モデルを生成する第1の学習部を含み、
前記第1の学習データは、
1以上の種子を撮像した多波長画像と、種子の形質データとを含み、
前記多波長画像中の種子を構成する1以上の画素に前記形質データが紐付けられている。
【0008】
本開示の種子の形質推定方法(以下、「推定方法」という。)は、コンピュータ上で実行される種子の形質推定方法であって、
1以上の種子が撮像された多波長画像を取得する第1の取得工程と、
第1の種子の形質推定モデルを用いて、前記多波長画像中の種子を構成する1以上の画素の形質を推定することにより、前記種子の形質を推定する推定工程とを含む。
【0009】
本開示の種子の形質推定モデルの生成方法(以下、「生成方法」という。)は、コンピュータ上で実行される種子の形質推定モデルの生成方法であって、
種子の形質推定モデルの第1の学習データを用いて、機械学習により前記種子の形質推定モデルを生成する第1の学習工程を含み、
前記第1の学習データは、
1以上の種子を撮像した多波長画像と種子の形質データとを含み、
前記多波長画像中の種子を構成する1以上の画素に前記形質データが紐付けられている。
【0010】
本開示のプログラム(以下、「第1のプログラム」という。)は、コンピュータに、
1以上の種子が撮像された多波長画像を取得する第1の取得処理と、
第1の種子の形質推定モデルを用いて、前記多波長画像中の種子を構成する1以上の画素の形質を推定することにより、前記種子の形質を推定する推定処理とを実行させる。
【0011】
本開示のプログラム(以下、「第3のプログラム」という。)は、コンピュータに、
種子の形質推定モデルの第1の学習データを用いて、機械学習により種子の形質推定モデルを生成する第1の学習処理を実行させる、プログラムであり、
前記第1の学習データは、
1以上の種子を撮像した多波長画像と種子の形質データとを含み、
前記多波長画像中の種子を構成する1以上の画素に前記形質データが紐付けられている。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、種子の形質の推定に使用可能な種子の形質推定装置および種子の形質推定方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施形態1における撮像装置、生成装置、および推定装置を含む推定システムの一例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施形態1の生成装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施形態1の推定装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、実施形態1の生成方法、推定方法およびプログラムの一例を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、実施形態1における推定装置の処理と、種子画像に種子の形質を紐付けて生成した形質推定モデルを用いた処置を比較した模式図である。
【
図6】
図6は、実施形態2における撮像装置、生成装置、および推定装置を含む推定システムの一例を示すブロック図である。
【
図7】
図7は、実施形態2の生成方法、推定方法およびプログラムの一例を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、実施形態3における撮像装置、生成装置、推定装置、および選別装置を含む選別システムの一例を示すブロック図である。
【
図9】
図9は、実施形態3の生成方法、推定方法、選別方法、およびプログラムの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<定義>
本明細書において、「多波長画像」は、2以上の波長帯成分を含む画像を意味する。前記波長帯成分は、例えば、色数またはバンドということもできる。前記多波長画像が含む波長帯成分の数は、2以上であればよく、その上限は、特に制限されない。前記多波長画像が含む波長帯成分の数は、種子の形質推定モデルの生成に必要な数を含めばよく、例えば、1~500、1~300、3~500、3~300、4~500、4~300、5~500、または5~300である。前記波長帯成分の波長領域は、紫外光(例えば、400nm未満)、可視光(例えば、400~750nm)、および/または赤外光(例えば、750nmを超える)である。前記多波長画像は、例えば、波長分解能(波長帯成分の分解能)が10.5nm以下、10nm以下、8nm以下、6nm以下、5nm以下、2.5nm以下、または2nm以下の撮像装置により取得された画像である。前記撮像装置の波長分解能の下限は、例えば、1nm以上または2nm以上である。前記撮像装置の波長分解能は、例えば、1~10.5nm、1~10nm、2~8nm、2~6nm、2~5nm、2~2.5nm、または2~2.3nmである。前記10.5nm以下の波長分解能を有する撮像装置は、例えば、後述のハイパースペクトルカメラ、マルチスペクトルカメラ等があげられる。このため、前記多波長画像は、例えば、マルチスペクトル画像でもよいし、ハイパースペクトル画像でもよい。前記多波長画像は、RGB画像を除いてもよい。なお、一般的なRGB画像を取得するカメラでは、前記波長分解能が30nm程度である。
【0015】
本明細書において、「種子」は、種子植物の胚珠が受精後に成熟したもの、および単為生殖により、胚珠がそのまま発育したものを意味する。前記種子は、果実またはそれ以外の部分と一体となっているものであってもよい。前記種子は、例えば、野菜種子、草花種子、および穀物種子等が含まれる。前記植物は、例えば、キャベツ、ハクサイ等のアブラナ科植物;メロン、キュウリ、カボチャ等のウリ科植物;トマト、ナス、ピーマン等のナス科植物;ニンジン等のセリ科植物;ネギ、タマネギ等のヒガンバナ科植物;ユーストマ等のリンドウ科植物等があげられる。
【0016】
本明細書において、「種子の形質」は、発芽検査、生化学検査、または病理学検査により形質の検査が可能となる、種子が有する形質を意味する。前記種子の形質は、例えば、種子の状態で判別できない形質ということもできる。前記「種子の形質」は、例えば、種子の内在性の形質ということもできる。前記種子の形質は、例えば、種子の発芽または種子の発芽の有無、種子の純度または種子の純度の正否、種子の病害(例えば、ウイルス、細菌、真菌等)または種子の病害の有無等があげられる。
【0017】
以下、本開示について、例を挙げ、図面を参照して詳細に説明する。ただし、本開示は、以下の説明により限定されない。なお、以下の
図1~
図9において、同一部分には、同一符号を付し、その説明を省略する場合がある。また、図面においては、説明の便宜上、各部の構造は適宜簡略化して示す場合があり、各部の寸法比等は、実際とは異なり、模式的に示す場合がある。また、各実施形態および説明は、特に言及しない限り、互いにその説明を援用できる。なお、本明細書において、「~」という表現を用いた場合、その前後の数値または物理値を含む意味で用いる。また、本明細書において、「Aおよび/またはB」という表現には、「Aのみ」、「Bのみ」、「AおよびBの双方」が含まれる。
【0018】
(実施形態1)
本実施形態は、本開示の撮像装置、生成装置、および推定装置を含む推定システムの一例である。
図1は、本実施形態の撮像装置1、生成装置2、および推定装置3を備える推定システム100を示すブロック図である。
図1に示すように、本実施形態の推定システム100は、撮像装置1、生成装置2、および推定装置3を備える。生成装置2は、第2の取得部21および第1の学習部22を備える。推定装置3は、第1の取得部31および推定部32を備える。
図1に示すように、撮像装置1、生成装置2、および推定装置3は、推定システム100外の通信回線網4を介して一方または両方向に接続可能(通信可能)である。
【0019】
本実施形態の生成装置2および推定装置3は、本開示のプログラムがインストールされたパーソナルコンピュータ(PC)またはシステムとしてサーバ等に組込まれてもよい。また、本実施形態の生成装置2および推定装置3は、本開示のプログラムを実行可能な1以上のコンピュータまたはサーバから構成されるシステム、すなわち、クラウド・コンピューティングシステムであってもよい。前記パーソナルコンピュータは、コンピュータクラスタを構成してもよい。図示していないが、生成装置2および推定装置3は、通信回線網4を介して、システム管理者の外部端末とも接続可能な構成とし、システム管理者が、外部端末から生成装置2および推定装置3の管理を実施できるように構成してもよい。なお、本実施形態において、推定システム100に含まれる生成装置2および推定装置3は、それぞれ、1つであるが、いずれも複数であってもよい。
【0020】
通信回線網4は、特に制限されず、公知のネットワークを使用でき、例えば、有線でもよいし、無線でもよい。通信回線網4は、例えば、インターネット回線、WWW(World Wide Web)、電話回線、LAN(Local Area Network)、WiFi(Wireless Fidelity)等があげられる。
【0021】
図2に、生成装置2のハードウェア構成のブロック図を例示する。生成装置2は、例えば、演算要素であるCPU(中央処理装置)201、メモリ202、バス203、記憶装置204、入力装置206、ディスプレイ207、通信デバイス(通信部)208等を有する。生成装置2の各部は、それぞれのインタフェース(I/F)により、バス203を介して接続されている。
【0022】
CPU201は、コントローラ(システムコントローラ、I/Oコントローラ等)等により、他の構成と連携動作し、生成装置2の全体の制御を担う。生成装置2において、CPU201により、本開示のプログラム(第3のプログラム)205およびその他のプログラムが実行され、また、各種情報の読み込みや書き込みが行われる。具体的には、本実施形態では、CPU201が、第2の取得部21および第1の学習部として機能する。生成装置2は、演算装置(演算要素)として、CPUを備えるが、GPU(Graphics Processing Unit)、APU(Accelerated Processing Unit)等の他の演算装置を備えてもよいし、CPUとこれらとの組合せを備えてもよい。なお、CPU201は、例えば、他の実施形態における記憶部以外の各部として機能する。
【0023】
メモリ202は、メインメモリを含む。前記メインメモリは、主記憶装置ともいう。CPU201が処理を行う際には、例えば、後述する記憶装置204(補助記憶装置)に記憶されている本開示のプログラム205等の種々の動作プログラムを、メモリ202が読み込む。そして、CPU201は、メモリ202からデータを読み出し、解読し、前記プログラムを実行する。前記メインメモリは、RAM(ランダムアクセスメモリ)である。メモリ202は、さらに、ROM(読み出し専用メモリ)を含んでもよい。
【0024】
バス203は、外部機器とも接続できる。前記外部機器は、例えば、外部記憶装置(外部データベース等)、プリンター等があげられる。推定装置3は、例えば、バスに接続された通信デバイス208により、通信回線網4に接続でき、通信回線網4を介して、前記外部機器と接続することもできる。また、推定装置3は、通信デバイス208および通信回線網4を介して、推定端末2にも接続できる。
【0025】
記憶装置204は、例えば、前記メインメモリ(主記憶装置)に対して、いわゆる補助記憶装置ともいう。前述のように、記憶装置204には、本開示のプログラム205を含む動作プログラムが格納されている。記憶装置204は、例えば、記憶媒体と、前記記憶媒体に読み書きするドライブとを含む。前記記憶媒体は、特に制限されず、例えば、内蔵型でも外付け型でもよく、HD(ハードディスク)、FD(フロッピー(登録商標)ディスク)、CD-ROM、CD-R、CD-RW、MO、DVD、フラッシュメモリー、メモリーカード等があげられ、前記ドライブは、特に制限されない。記憶装置204は、例えば、前記記憶媒体と前記ドライブとが一体化されたハードディスクドライブ(HDD)であってもよい。
【0026】
生成装置2は、さらに、入力装置206、出力装置であるディスプレイ207を有する。入力装置206は、例えば、タッチパネル、トラックパッド、マウス等のポインティングデバイス;キーボード;カメラ、スキャナ等の撮像手段;ICカードリーダ、磁気カードリーダ等のカードリーダ;マイク等の音声入力手段;等があげられる。ディスプレイ207は、例えば、LED(light emitting diode)ディスプレイ、液晶ディスプレイ等の表示装置があげられる。本実施形態において、入力装置206とディスプレイ207とは、別個に構成されているが、入力装置206とディスプレイ207とは、タッチパネルディスプレイのように、一体として構成されてもよい。また、生成装置2において、入力装置206およびディスプレイ207は、任意の構成であり、無くてもよいし、いずれか1つ以上を含んでもよい。
【0027】
つぎに、
図3に、推定装置3のハードウェア構成のブロック図を例示する。推定装置3は、CPU301、メモリ302、バス303、記憶装置304、入力装置(入力部)306、および通信デバイス(通信部)308を有する。推定装置3の各構成は、それぞれのインタフェース(I/F)により、バス203を介して接続されている。推定装置3において、CPU301は、第1の取得部31および推定部32として機能し、記憶装置304には、本開示のプログラム(第1のプログラム)305が格納されている。これらの点を除き、推定装置3の各構成の説明は、生成装置2の各構成の説明を援用できる。推定装置3では、記憶装置304に、後述の第1の推定モデルを格納してもよい。
【0028】
つぎに、本実施形態の推定システム100における処理の一例について、撮像装置1により撮像された多波長画像データに基づき、生成装置2において、第1の種子の形質推定モデル(「識別器」または「学習モデル」ともいう)を生成し、ついで、撮像装置1により撮像された多波長画像データと、生成装置2で生成された前記第1の種子の形質推定モデル(第1の推定モデル)とを用いて、推定装置3において、多波長画像データ中の種子の形質を推定する処理を実施する場合を例にとり、
図4のフローチャートに用いて説明する。なお、
図4において、撮像装置1は、S1~S2の処理を実施し、生成装置2は、S3~S7の処理を実施し、推定装置3は、S8~S11の処理を実施する。
【0029】
生成装置2の処理に先立ち、まず、S1では、推定システム100の撮像装置1を用いて、第1の推定モデルの生成に用いる多波長画像(画像データ)を取得する。具体的には、S1では、配置された1以上対象の種子について、撮像装置1により撮像することで、画像データを取得できる。撮像装置1は、2以上の波長帯成分を取得可能な撮像装置を使用でき、具体例として、マルチスペクトルカメラ、ハイパースペクトルカメラ等が使用できる。前記マルチスペクトルカメラおよびハイパースペクトルカメラとしては、例えば、以下のカメラが使用できる。
(マルチスペクトルカメラ)
・msCAM:Spectral社製
・VideometerLab4:Videometer社製
・商品名なし:富士フィルム社製
・SNAPSHOT SWIR:imec社製
・Color IR Monarch II:Unispectral社製
(ハイパースペクトルカメラ)
・PECIM FXシリーズ:Spectral Imaging社製
・ULTRIS、FireflEYE:cubert社製
・4250VNIR 、4400SWIR、4200M:HinaLea社製
・Pika NUV2、Pika L、Pika XC2、Pika NIR-320、Pika NIR-640:RESONON社製
・Hyspex Classic、Hyspex Baldur、Hyspex Mjolnir:Hyspex社製
・AHS-003VIR:アバールデータ社製
【0030】
前記多波長画像は、前記第1の推定モデルの精度を向上できることから、前記波長領域として可視光領域を含むことが好ましい。前記多波長画像が含む波長領域は、例えば、450~800nm、450~1700nm、400~950nm、400~1000nm、350~1000nm、350~1700nm、330~800、330~2350nm、または330~2500nmである。前記多波長画像の波長領域は、単独または複数の撮像装置の波長領域の総和の領域(全体の領域)ということもできる。
【0031】
S1において、撮像される画像データの数は、前記第1の推定モデルを生成可能な数であればよく、具体例として、複数であり、その上限は、特に制限されない。前記画像データの数は、例えば、50個以上、100個以上、200個以上、300個以上、400個以上、500個以上の対象の種子を含む画像データの数と設定できる。前記画像データを構成する画素の数は、1以上であればよく、例えば、撮像装置1によって決定され、具体例として、7万~1億200万画素、30万~3450万画素、または90万~1200万画素である。
【0032】
前記画像データでは、例えば、波長帯成分毎に、座標成分と各座標における波長帯成分のシグナル強度とが紐付けられている。このため、前記画像データでは、1以上の画素(ピクセル)について、各画素の二次元平面(XY平面)における座標データ(座標:X、Y)に、前記座標(X、Y)の画素における波長データ、すなわち、波長帯成分(A)およびそのシグナル強度値(B)が紐付けられている。このため、前記画像データは、X、Y、A、およびBから構成される。なお、前記画像データが二次元平面(XY平面)の画像である場合を例にあげて説明したが、前記画像データは、三次元平面(XYZ平面)の立体画像等であってもよい。この場合、前記画像データは、例えば、X、Y、Z、A、およびBから構成される。
【0033】
なお、以下では、前記画像データを取得する空間が2次元平面であり、前記種子の形質が発芽または不発芽である場合を例にあげて説明するが、前記画像データを取得する空間が3次元以上の空間である、および前記種子の形質が発芽/不発芽以外の種子の形質である場合も同様に実施できる。
【0034】
そして、S2では、撮像装置1は、通信デバイス(図示せず)により、得られた画像データを、通信回線網4を介して、生成装置2に対して送信する。撮像装置1は、S1で得られた画像データの全部を送信してもよいし、一部を送信してもよい。撮像装置1が送信する画像データの数は、前記第1の推定モデルを生成可能な数以上であればよい。
【0035】
つぎに、生成装置2での処理を開始する。生成装置2では、撮像装置1で得られた画像データと、各画像データの種子に対して発芽検査等を実施することで得られた前記種子の形質(発芽または不発芽)のデータとを紐付けた学習データ(教師データ)を用い、機械学習により第1の推定モデルを生成する。本実施形態において、生成装置2は、前記画像データの1以上の画素のデータ、すなわち、座標データと、波長データと、種子の形質データとが紐付けられたデータを学習データとして用いて、機械学習により第1の推定モデルを生成する。
【0036】
まず、S3では、第2の取得部21は、撮像装置1から送信された画像データを、通信デバイス208を介して取得する(第2の画像取得)。つぎに、S4では、第2の取得部21は、各画像データの種子の形質のデータ(発芽または不発芽のデータ)を取得する(第2のデータ取得)。前記種子の形質のデータは、例えば、推定対象の形質を判定する際に通常行なわれる検査を画像データの撮像で使用した種子に対して実施し、得られた検査結果から生成できる。具体例として、前記種子の形質が種子の発芽または不発芽である場合、前記撮像で使用した各種子について、通常の条件で発芽検査を実施する。そして、各種子について、前記発芽検査の結果、すなわち、発芽または不発芽の評価結果を、各種子の形質のデータとして使用できる。
【0037】
S5では、第2の取得部21は、各画像データに、対応する種子の形質データを紐付けることにより、学習データを取得(生成)する(第1のデータ生成)。具体的には、第2の取得部21は、前記画像データの1以上の画素について、各画素の保持するデータ(X、Y、A、B)に対して、対応する画素の形質のデータ(C)を紐(タグ)付けすることにより、種子の形質データが紐付けられた学習データ(X、Y、A、B、C)を生成する。前記紐付けは、前記画像データの1以上の画素のうち、一部または全部に対して実施し、好ましくは、全部に対して実施する。前記紐付け(アノテーション)は、自動で行なってもよいし、手動で行なってもよい。前記紐付けを自動で行なう場合、前記種子の形質データは、形質のデータ(C)に加えて、紐付けを行なう座標データ(X、Y)を保持し、前記紐付けは、例えば、前記座標のデータに基づき、対応する画素に対して形質のデータ(C)を紐付けることにより実施できる。他方、前記紐付けを手動で行なう場合、前記紐付けは、例えば、前記検査の評価者が、入力装置206等を用いて前記画像データについて前記形質の評価を入力し、1以上の画素に対して形質のデータ(C)を紐付けることで実施できる。なお、本実施形態では、第2の取得部21が、前記画像データと前記種子の形質のデータとを取得し、これらを紐付けることにより、前記学習データを生成しているが、第2の取得部21は、予め生成された学習データを取得してもよい。この場合、前記学習データは、例えば、撮像装置1または推定システム100外のコンピュータにより、前記画像データに前記形質のデータの紐付けが行なわれることで生成できる。
【0038】
つぎに、S6では、第1の学習部22は、前記学習データを用いて機械学習により第1の推定モデルを生成(学習)する(第1の学習)。前記機械学習は、例えば、クラス分類に使用可能な機械学習方法が利用でき、具体例として、ランダムフォレスト、ニューラルネットワーク、サポートベクターマシン、主成分分析、決定木等により実施できる。具体例として、ニューラルネットワークを用いて機械学習を行なう場合、第1の学習部22は、入力された学習データの1以上の画素に対して種子の形質の推定を行なう。すなわち、第1の学習部22は、前記第1の推定モデルのパラメータを用いて、入力された学習データの1以上の画素の種子の形質の推定を行なう。そして、第1の学習部22は、得られた推定結果と、前記入力された学習データに紐付けられた形質のデータ(C)との誤差を用いて、この誤差が最小限となるように、前記第1の推定モデルのパラメータを調整(更新)する。前記パラメータの更新は、前記機械学習の方法に応じて、適宜実施できる。第1の学習部22は、前記学習データにおける未入力の画素がなくなるまで、前記推定および更新を繰り返し実施する。これにより、第1の学習部22は、1以上の種子が含まれる多波長画像について、各種子を構成する画素の種子の形質を推定可能なパラメータを備えた第1の推定モデルを生成できる。第1の学習部22は、前記学習データの1以上の画素のうち、一部の画素を用いて前記第1の推定モデルのパラメータを調整してもよいし、全部の画素を用いて前記第1の推定モデルのパラメータを調整してもよい。
【0039】
なお、第1の学習部22は、1以上の画素をそれぞれ入力して、すなわち、画素単位(1×1画素)で入力して機械学習により第1の推定モデルを生成したが、本開示はこれに限定されず、1以上の画素から複数画素をまとめて入力して、機械学習により第1の推定モデルを生成してもよい。この場合、第1の学習部22は、例えば、前記画像データ(多波長画像)について、複数の画分に分画する。つぎに、第1の学習部22は、各画分の画素のデータから、各データについて平均値を算出し、複数画素のデータとする。そして、第1の学習部22は、前記複数画素のデータを入力して機械学習により第1の推定モデルを生成する。各画分の大きさは、例えば、2×2画素、3×3画素、4×4画素、5×5画素、10×10画素、50×50画素、または100×100画素があげられ、より精度のよい第1の推定モデルを生成できることから、好ましくは、2×2画素、3×3画素、4×4画素、または5×5画素である。
【0040】
第1の学習部22は、前記第1の推定モデルの生成において、前記学習データの波長データのうち、全てを学習に用いてもよいし、一部を学習に用いてもよい。前記波長データのうち一部を学習に用いる場合、第1の学習部22は、例えば、前記波長データのうち一部の波長帯成分およびそのシグナル強度を前記学習に用いる。前記一部の波長帯成分を用いる場合、前記波長帯成分の数の下限は、2以上であり、より推定の精度を向上できることから、好ましくは、3以上、4以上、または5以上であり、より推定の精度を向上でき、かつ偽陰性を抑制できることから、より好ましくは6以上である。前記波長帯成分の数の上限は、特に制限されず、撮像装置1の撮像可能な波長範囲および測定波長の間隔に応じて決定される。前記波長帯成分の上限は、例えば、2048以下、1024以下、512以下、256以下、128以下、64以下、50以下、32以下、21以下、20以下、または19以下である。前記波長帯成分の数は、例えば、2~2048、2~1024、2~512、3~256、3~128、3~128、3~64、4~50、4~40、4~30、4~21、4~20、4~19、5~21、5~20、5~19、6~21、6~20、または6~19である。前記波長帯成分の数が3の場合、前記波長帯成分は、例えば、RGB画像の波長帯成分の組合せ、すなわち、435.5nm、546.1nm、および700.0nmの組合せを除いてもよい。
【0041】
前記第1の推定モデルの生成において、前記一部の波長帯成分を用いる場合、第1の学習部22は、前記学習データの波長帯成分のうち一部を抽出する。前記波長帯成分の抽出は、ランダムに行なってもよいし、前記種子の形質の推定に寄与していると考えられる波長帯成分を考慮して行なってもよい。具体例として、前記一部の波長成分は、例えば、前記第1の推定モデルにおいて、特徴量の重要度のランキングの上位から順番に所定の順位(例えば、2~6位、2~5位、または3位)までの波長帯成分を抽出することにより実施できる。
【0042】
そして、S7では、生成装置2は、通信デバイス208により、第1の学習部22により生成された第1の推定モデルを、通信回線網4を介して推定装置3に送信する。
【0043】
つぎに、推定装置3での処理を開始する。推定装置3では、生成装置2で生成された第1の推定モデルを用いて、撮像装置1から送信された画像データにおける種子について、種子の形質を推定する。本実施形態において、推定装置3は、前記画像データの1以上の画素について、種子の形質を推定し、得られた推定結果に基づき、前記画像データに含まれる各種子の形質を推定する。
【0044】
まず、S8では、第1の取得部31は、生成装置2から送信された第1の推定モデルを、通信デバイス308を介して取得する。つぎに、S9では、第1の取得部31は、種子の形質の推定を行なう画像データを取得する(第1の画像取得)。本実施形態では、前記画像データとして、前記第1の推定モデルの生成に用いた画像データとは異なる画像データを用いて種子の形質の推定を行なっているが、本開示はこれに制限されない。本開示において、前記画像データは、前記第1の推定モデルの生成に用いた画像データでもよいし、前記第1の推定モデルの生成に用いた画像データとその一部または全部が異なる画像データでもよい。また、撮像装置1において撮像された画像データのうち、一部を用いて、前記第1の推定モデルを生成した場合、推定装置3では、前記画像データの残部を種子の形質の推定を行なう画像データとして取得してもよい。また、前記第1の推定モデルの生成に用いた画像データと異なる画像データを用いる場合、撮像装置1は、種子を含む多波長画像を新たに撮像し、得られた画像データを、通信回線網4を介して推定装置3に送信する。
【0045】
つぎに、S10では、推定部32は、前記第1の推定モデルを用いて、前記画像データ中の種子を構成する1以上の画素の形質を推定する。具体的には、推定部32は、前記画像データ中の種子を構成する1以上の画素に紐付けられた波長データを前記第1のモデルに入力する、すなわち、各画素に紐付けられた波長データを前記第1のモデルに入力する。つぎに、推定部32は、前記第1の推定モデルのパラメータを用いて、入力された画素が該当する種子の形質(例えば、発芽または不発芽)を推定する。そして、推定部32は、前記第1の推定モデルから出力された推定結果、すなわち、種子の形質を前記画素の形質と推定する。前記推定は、推論ということもできる。推定部32は、前記画像データ中の種子を構成する1以上の画素のうち、一部の画素の形質を推定してもよいし、全部の画素の形質を推定してもよい。
【0046】
つぎに、S11では、推定部32は、各種子を構成する画素の推定結果から、各種子の形質を推定する。推定部32は、前記画素の推定結果に基づき、前記所定の形質である、または前記所定の形質ではない、との推定結果が紐付けられた画素の数から、各種子の形質を推定してもよいし、前記画素の推定結果に基づき、前記所定の形質である、または前記所定の形質ではない、との推定結果が紐付けられた画素の割合から、各種子の形質を推定してもよい。前記画素の割合は、例えば、推定対象の種子の総画素数(P0)に対する、前記所定の形質である、または前記所定の形質ではない、との推定結果が紐付けられた画素の数(Pt)の割合(Pt/P0)として算出できる。
【0047】
推定部32が、前記画素の数を用いて、各種子の形質を推定する場合、推定部32は、一例として以下のように各種子の形質を推定する。推定部32は、推定対象の種子を構成する画素の推定結果において、所定の形質との推定結果の画素の数が、1以上、2以上、または閾値以上である場合、前記推定対象の種子は、所定の形質であると推定する。具体的には、推定部32は、推定対象の種子を構成する画素の推定結果において、「発芽」または「不発芽」との推定結果の画素の数が、1以上、2以上、または閾値以上である場合、前記推定対象の種子は、それぞれ、「発芽」または「不発芽」の形質を有する種子であると推定する。推定部32は、前記推定に加えて、または代えて、推定対象の種子を構成する画素の推定結果において、「発芽」または「不発芽」との推定結果の画素の数が、0、1以下、または閾値未満である場合、前記推定対象の種子は、それぞれ、「不発芽」または「発芽」の形質を有する種子であると推定してもよい。
【0048】
また、推定部32が、前記画素の割合を用いて、各種子の形質を推定する場合、推定部32は、一例として以下のように各種子の形質を推定する。推定部32は、推定対象の種子を構成する画素の推定結果において、所定の形質との推定結果の画素の割合が、閾値以上である場合、前記推定対象の種子は、所定の形質であると推定する。具体的には、推定部32は、推定対象の種子を構成する画素の推定結果において、「発芽」または「不発芽」との推定結果の画素の割合が、閾値以上である場合、前記推定対象の種子は、それぞれ、「発芽」または「不発芽」の形質を有する種子であると推定する。推定部32は、前記推定に加えて、または代えて、推定対象の種子を構成する画素の推定結果において、「発芽」または「不発芽」との推定結果の画素の割合が、閾値未満である場合、前記推定対象の種子は、それぞれ、「不発芽」または「発芽」の形質を有する種子であると推定してもよい。
【0049】
前記閾値は、推定部32による各種子の形質の推定結果と、各種子の発芽検査等による評価結果とから、真陽性、真陰性、偽陽性、および/または偽陰性の割合を評価し、所望の真陽性、真陰性、偽陽性、および/または偽陰性の割合となるように、設定できる。前記閾値は、ROC曲線(Receiver Operating Characteristic curve、受信者動作特性曲線)を用いて設定してもよい。この場合、前記閾値は、例えば、偽陽性の割合および真陽性の割合を二軸にとり、真陽性の割合が100%、偽陽性の割合が0%の座標との距離が最短となるROC曲線上の座標を達成する値として設定できる。また、前記ROC曲線を用いて閾値を設定する場合、前記閾値は、Youden indexを用いた方法により設定してもよい。さらに、前記閾値は、AIC(赤池情報量基準)または分類木を用いて設定してもよい。前記閾値は、例えば、40%、50%、60%、70%、80%、または90%等の推定システム100のユーザが指定する値に設定してもよい。
【0050】
つぎに、推定部32は、未推定の種子がなくなるまで、同様の推定を繰り返し実施する。そして、前記画像データにおいて、推定部32による推定対象の種子が無くなった場合、推定システム100は、処理を終了する。
【0051】
本実施形態の撮像装置1、生成装置2、および推定装置3を備える推定システム100では、
図5(A)に示すように、多波長画像を用い、かつ前記多波長画像中の種子を構成する1以上の画素について、前記波長データに種子の形質を紐付けて、学習データを生成する。そして、推定システム100では、1以上の画素の紐付けられた波長データおよび種子の形質データを画素毎に入力し、機械学習により、第1の推定モデルを生成する。また、本実施形態の推定システム100では、画素単位の学習データを用いて得られた第1の推定モデルを用いて、推定対象の種子を含む多波長画像について、画素単位で種子の形質を推定することにより、各種子の形質を推定する。このため、本実施形態の撮像装置1、生成装置2、および推定装置3を備える推定システム100によれば、
図5(B)に示すように、種子単位で、種子の画像に種子の形質を紐付けた学習データを用いて得られた推定モデルとは異なり、種子の形質をより正確に推定できる。
【0052】
本実施形態において、前記第1の推定モデルを生成する生成装置2および前記第1の推定モデルを用いて種子の形質を推定する推定装置3を異なる装置として構成したが、本開示は、これに限定されず、生成装置2および推定装置3は、1つの装置として構成されてもよい。この場合、本開示は、例えば、生成装置2および推定装置3の各部の機能を備える装置を提供する。また、生成装置2の第1の取得部31および推定装置3の第2の取得部21は、いずれか一方で構成し、他方の機能を発揮するように構成してもよい。
【0053】
本実施形態において、推定部32は、前記第1の推定モデルを用いて、前記画像データ中の種子を構成する1以上の画素の形質を、画素単位で推定したが、本開示はこれに限定されず、前記1以上の画素における複数画素の形質をまとめて推定してもよい。この場合、推定部32は、例えば、前記多波長画像について、複数の画分に分画する。つぎに、推定部32は、各画分の画素のデータから、各データについて平均値を算出し、複数画素のデータとする。そして、推定部32は、前記第1の推定モデルと前記複数画素のデータとを用いて、前記複数画素の形質を推定する。つぎに、推定部32は、各種子を構成する複数画素の推定結果から、各種子の形質を推定する。この場合、推定部32は、画素単位の形質の推定結果に代えて、前記複数画素の形質の推定結果を用いて、各種子の形質を推定できる。各画分の大きさは、例えば、2×2画素、3×3画素、4×4画素、5×5画素、10×10画素、50×50画素、または100×100画素があげられ、より精度よく推定できることから、好ましくは、2×2画素、3×3画素、4×4画素、または5×5画素である。
【0054】
本実施形態の推定装置3は、前記画像データの内、種子を構成する画素のデータを入力して、種子の形質を推定したが、本開示はこれに限定されず、前記多波長画像の画像データにおいて、種子を構成しない画素のデータ、すなわち、種子を構成する画素データと種子を構成しない画素データとの両方を入力し、各画素の種子の形質を推定してもよいし、前記画像データの全ての画素について画素データを入力して、各画素の種子の形質を推定してもよい。
【0055】
本実施形態の推定装置3は、前記画像データ中の1以上の種子を検出する検出部を備えてもよい。この場合、推定装置3では、推定部32による推定処理(S10~S11)に先立ち、前記検出部により、前記画像データ中の1以上の種子を検出し、推定部32では、検出された種子、すなわち、種子として検出された領域の画素について、前記種子の形質を推定してもよい。前記種子の検出は、例えば、二値化処理による境界抽出、背景との色差による抽出、エッジ検出等により実施できる。推定装置3は、前記検出部を備えることにより、種子の誤検出を防止でき、かつ推定部32による推定処理を実施する画素数を低減できるため、処理時間を短縮でき、かつ種子の形質の推定精度を向上できる。
【0056】
本実施形態の推定装置3は、前記種子の形質の推定結果を出力してもよい。この場合、推定装置3は、例えば、前記出力装置であるディスプレイ307、推定装置3外、または推定システム100外の出力装置に出力してもよい。推定装置3がディスプレイ307に出力する場合、ディスプレイ307は、前記種子の形質の推定結果を表示する。さらに、推定装置3は、例えば、前記種子の形質の推定結果を、対応する種子を含む多波長画像上に重畳して、出力または表示可能に構成してもよい。
【0057】
本実施形態では、種子の発芽・不発芽を推定可能な構成を例にあげて説明したが、推定システム100では、他の種子の形質を推定してもよい。また、種子の由来する植物と、推定する種子の形質との組合せは、任意に設定できる。具体例として、前記種子がナス科植物またはウリ科植物の場合、前記推定する種子の形質は、例えば、種子の発芽の有無、病害の有無等とできる。また、前記種子がアブラナ科植物の場合、前記推定する種子の形質は、例えば、遺伝的純度の正否等があげられる。
【0058】
本実施形態では、推定部32は、前記第1の推定モデルのみを用いて、前記1以上の画素の形質を推定したが、推定部32は、前記第1の推定モデルに加えて、他の推論方法または統計学的手法と組合せて、前記1以上の画素の形質を推定してもよい。ただし、推定装置3の処理を早くできることから、前記1以上の画素の形質の推定手法として、前記第1の推定モデルを単独で用いることが好ましい。
【0059】
(実施形態2)
本実施形態は、本開示の撮像装置、生成装置、および推定装置を含む推定システムの他の例である。
図6は、本実施形態の撮像装置1、生成装置2A、および推定装置3Aを備える推定システム100Aを示すブロック図である。
図6に示すように、本実施形態の生成装置2Aは、実施形態1の生成装置2の構成に加えて、評価部23、抽出部24、および第2のデータ生成部25、および第2の学習部26を備える。また、本実施形態の推定装置3Aは、実施形態1の生成装置2で生成された第1の推定モデルに代えて、実施形態2の生成装置2Aで生成された第2の種子の形質推定モデル(第2の推定モデル)を用いる。生成装置2Aのハードウェア構成は、
図2の生成装置2のハードウェア構成において、CPU201が、
図2の生成装置2の構成に変えて、
図6の生成装置2Aの構成を備える以外は同様である。また、推定装置3Aのハードウェア構成は、
図3の推定装置3のハードウェア構成において、CPU301が、
図3の推定装置3の構成に変えて、
図6の推定装置3Aの構成を備える以外は同様である。これらの点を除き、実施形態2の生成装置2Aおよび推定装置3Aの構成は、実施形態1の生成装置2および推定装置3の構成と同様であり、その説明を援用できる。
【0060】
つぎに、本実施形態の撮像装置1、生成装置2A、および推定装置3Aを備える推定システム100Aの処理の一例について、
図7のフローチャートを用いて説明する。
【0061】
まず、本実施形態の推定システム100Aは、実施形態1の推定システム100と同様にして、撮像装置1により画像データを取得する(S1)。そして、撮像装置1は、得られた画像データを、通信回線網4を介して、生成装置2に対して送信する(S2)。
【0062】
つぎに、生成装置2Aでの処理を開始する。生成装置2Aでは、生成装置2と同様にして、撮像装置1で得られた画像データと、前記種子の形質(発芽または不発芽)のデータとを紐付けた学習データを用い、機械学習により第1の推定モデルを生成する。そして、生成装置2Aは、得られた前記第1の推定モデルにおいて、各波長帯成分の前記種子の形質の推定への寄与度合を評価し、得られた評価結果を利用して、前記画像データにおける一部の波長帯成分およびそのシグナル強度と前記種子の形質のデータとを紐付けた第2の学習データを用い、機械学習により第2の推定モデルを生成する。すなわち、本実施形態において、生成装置2Aは、前記第1の推定モデルを用いて、目的とする種子の形質の推定に寄与する波長帯成分を特定し、特定された波長帯成分を用いて、第2の推定モデルを生成する。
【0063】
まず、S3工程では、第2の取得部21は、実施形態1の生成装置2と同様に、撮像装置1から送信された画像データを、通信デバイス208を介して取得する(第2の画像取得)。つぎに、S4工程では、第2の取得部21は、各画像データの種子の形質のデータ(発芽または不発芽のデータ)を取得する(第2のデータ取得)。そして、S5工程では、第2の取得部21は、各画像データに、対応する種子の形質データを紐付けることにより、学習データを取得(生成)する(第1のデータ生成)。
【0064】
つぎに、S6工程では、実施形態1の生成装置2と同様に、第1の学習部22は、前記学習データを用いて機械学習により第1の推定モデルを生成(学習)する(第1の学習)。
【0065】
つぎに、S12工程では、評価部23は、前記第1の推定モデルを用いて、前記画像データにおいて、前記形質の推定に寄与している波長、すなわち、波長帯成分を評価する。具体的には、評価部23は、前記第1の推定モデルが、種子の形質を推定する際に形質の推定に貢献している波長帯成分を特定する。前記特定は、例えば、前記機械学習の種類に応じて決定できる。前記機械学習として、ランダムフォレストを用いて第1の推定モデルを生成した場合、前記特定は、ランダムフォレストにおける特徴量の重要度に基づき実施できる。すなわち、前記特定は、前記ランダムフォレストにおいて、重要度の高い波長帯成分を相対的に形質の推定に貢献している波長帯成分として特定できる。前記特定では、特徴量の重要度に応じて、すなわち、波長帯成分の重要度に応じてランキングしてもよい。
【0066】
一例として、前記特徴量の重要度は、下記参考文献を参照して、推定モデルの識別精度の低下度合いを用いて評価してもよい。まず、学習データを用いて、下記(1)および(2)の推定モデルを生成する。つぎに、下記(1)および(2)を用いて、前記画像データを推定させ、下記(1)および(2)の識別精度を算出する。そして、前記(1)および(2)の識別精度の差を、特徴量の重要度とし、前記識別精度の差が、相対的に大きい特徴量(波長帯成分)を、より重要度の高い特徴量として評価できる。
(1)学習データの特徴量をそのまま用いて学習した推定モデル
(2)学習データの特徴量のうち、1つの数値について、学習データの中でシャッフルし、残りの値はそのままとした、改変学習データを生成し、前記改変学習データを教師データとして用いて学習した推定モデル
参考文献:L. Breiman, “Random Forests”, Machine Learning, 45(1), 5-32, 2001.
【0067】
前記特徴量の重要度は、前記参考文献に記載のGini impurity(ジニ不純度)を用いて評価してもよい。
【0068】
S13では、抽出部24は、評価部23による評価結果を用いて、第2の取得部21が取得した画像データから、2以上の所定の波長(波長帯成分)のスペクトルデータを学習用データとして抽出する。抽出部24により抽出される波長帯成分の数の下限は、2以上であり、より推定の精度を向上できることから、好ましくは、3以上、4以上、または5以上であり、より推定の精度を向上でき、かつ偽陰性を抑制できることから、より好ましくは6以上である。前記波長帯成分の数の上限は、特に制限されず、撮像装置1の撮像可能な波長範囲および波長分解能に応じて決定される。前記波長帯成分の数の上限は、例えば、2048以下、1024以下、512以下、256以下、128以下、64以下、50以下、32以下、21以下、20以下、または19以下である。前記波長帯成分の数は、例えば、2~2048、2~1024、2~512、3~256、3~128、3~128、3~64、4~50、4~40、4~30、4~21、4~20、4~19、5~21、5~20、5~19、6~21、6~20、または6~19である。前記抽出される波長帯成分は、前記第1の推定モデルにおいて、特徴量の重要度のランキングにおいて上位から順番に選抜された波長帯成分であることが好ましい。なお、本実施形態では、抽出部24は、前記第1の推定モデルの生成に用いた画像データから抽出を実施しているが、本開示はこれに限定されず、抽出部24は、前記第1の推定モデルの生成に用いた画像データと、一部または全部が異なる画像データから抽出を実施してもよい。
【0069】
S14では、第2のデータ生成部25は、抽出部24により抽出された学習用データ中の種子を構成する1以上の画素に、種子の形質データを紐付けて、第2の学習データを生成する。第2のデータ生成部25による第2の学習データの生成は、実施形態1の推定システム100における第1のデータ生成と同様にして実施でき、その説明を援用できる。
【0070】
S15では、第2の学習部26は、前記第2の学習データを用いて、機械学習により第2の種子の形質判定モデル(第2の推定モデル)を生成する(第2の学習)。第2の学習部26における機械学習は、S6における機械学習と同様に実施できる。S15における機械学習は、前記第1の推定モデルの生成に用いた機械学習と同じである。また、第2の学習部26は、前記第2の学習データに含まれる全ての波長帯成分を用いて第2の推定モデルを生成することが好ましい。これにより、第2の学習部26は、1以上の種子が含まれる多波長画像について、各種子を構成する画素の種子の形質を推定可能なパラメータを備えた第2の推定モデルを生成できる。なお、本実施形態において、S6およびS15における機械学習は、同じであるが異なってもよい。
【0071】
そして、S16では、生成装置2Aは、通信デバイス208により、第2の学習部26により生成された第2の推定モデルを、通信回線網4を介して推定装置3Aに送信する。
【0072】
つぎに、推定装置3Aでの処理を開始する。推定装置3Aでは、生成装置2Aで生成された第2の推定モデルを用いて、撮像装置1から送信された画像データにおける種子について、種子の形質を推定する。本実施形態において、推定装置3Aは、実施形態1の推定装置3において、前記第1の推定モデルに代えて、前記第2の推定モデルを用いて、前記画像データの1以上の画素について、種子の形質を推定し、得られた推定結果に基づき、前記画像データに含まれる各種子の形質を推定する。この点を除き、実施形態2の推定装置3Aは、実施形態1の推定装置3と同様にして、推定対象の種子の形質を推定する。
【0073】
まず、S17では、第1の取得部31は、生成装置2Aから送信された第2の推定モデルを、通信デバイス308を介して取得する。つぎに、S9では、第1の取得部31は、種子の形質の推定を行なう画像データを取得する(第1の画像取得)。本実施形態では、前記画像データとして、前記第1の推定モデルおよび前記第2の推定モデルの生成に用いた画像データとは異なる画像データを用いて種子の形質の推定を行なっているが、本開示はこれに制限されない。本開示において、前記画像データは、前記第1の推定モデルおよび前記第2の推定モデルの生成に用いた画像データでもよいし、前記第1の推定モデルおよび前記第2の推定モデルの生成に用いた画像データとその一部または全部が異なる画像データでもよい。また、撮像装置1において撮像された画像データのうち、一部を用いて、前記第1の推定モデルおよび前記第2の推定モデルを生成した場合、推定装置3Aでは、前記画像データの残部を種子の形質の推定を行なう画像データとして取得してもよい。また、前記第1の推定モデルおよび前記第2の推定モデルの生成に用いた画像データと異なる画像データを用いる場合、撮像装置1は、種子を含む多波長画像を新たに撮像し、得られた画像データを、通信回線網4を介して推定装置3に送信する。
【0074】
つぎに、S10Aでは、推定部32は、前記第2の推定モデルを用いて、前記画像データ中の種子を構成する1以上の画素の形質を推定する。そして、S11Aでは、推定部32は、各種子を構成する画素の推定結果から、各種子の形質を推定する。S10AおよびS11Aは、実施形態1のS10およびS11において、前記第1の推定モデルに代えて、前記第2の推定モデルを用いる以外は同様にして実施できる。なお、推定部32は、前記画像データの全ての波長帯成分を入力し、前記1以上の画素の形質を推定しているが、本開示はこれに制限されず、前記画像データの一部の波長帯成分を入力し、前記1以上の画素の形質を推定してもよい。この場合、前記一部の波長帯成分は、前記第2の推定モデルの生成に用いた波長帯成分の一部または全部を含み、好ましくは、全部を含む。
【0075】
つぎに、推定部32は、未推定の種子がなくなるまで、同様の推定を繰り返し実施する。そして、前記画像データにおいて、推定部32による推定対象の種子が無くなった場合、推定システム100Aは、処理を終了する。
【0076】
本実施形態の撮像装置1、生成装置2A、および推定装置3Aを備える推定システム100Aでは、前記第1の推定モデルにおいて、種子の形質の推定に貢献している波長帯成分を特定し、前記波長帯成分を利用して第2の推定モデルを生成する。そして、推定システム100Aでは、得られた第2の推定モデルを用いて、種子の形質を推定する。本実施形態の推定システム100では、形質の推定において、全ての波長帯成分のデータが不要であり、入力するデータの量を低減できるため、推定の精度を維持しつつ、処理速度を向上できる。
【0077】
本実施形態は、前記第2の推定モデルを生成する生成装置2Aおよび前記第2の推定モデルを用いて種子の形質を推定する推定装置3Aを異なる装置として構成したが、本開示は、これに限定されず、生成装置2Aおよび推定装置3Aは、1つの装置として構成されてもよい。この場合、本開示は、例えば、生成装置2Aおよび推定装置3Aの各部の機能を備える装置を提供する。また、生成装置2Aの第1の取得部31および推定装置3Aの第2の取得部21は、いずれか一方から構成し、他方の機能を発揮するように構成してもよい。
【0078】
(実施形態3)
本実施形態は、本開示の撮像装置、生成装置、推定装置、および選別装置を含む選別システムの一例である。
図8は、本実施形態の撮像装置1、生成装置2、推定装置3、および選別装置5を備える選別システム200を示すブロック図である。
図8に示すように、本実施形態の選別システム200は、実施形態1の推定システム100の構成に加えて、選別装置(選別部)5を含む。また、選別装置5は、選別システム200外の通信回線網4を介して、撮像装置1、生成装置2、および推定装置3を介して一方または両方向に接続可能(通信可能)である。
【0079】
つぎに、本実施形態の撮像装置1、生成装置2、推定装置3、および選別装置5を備える選別システム200の処理の一例について、
図9のフローチャートを用いて説明する。
【0080】
まず、実施形態1の撮像装置1、生成装置2、および推定装置3と同様にして、S1~S11を実施する。つぎに、S18では、推定装置3は、得られた種子の形質の推定結果を通信回線網4を介して、選別装置5に対して送信する。前記推定結果は、推定対象の種子の座標データを含むことが好ましい。
【0081】
つぎに、選別装置5による処理を開始する。選別装置5では、推定装置3で得られた種子の形質の推定結果を用い、所望の形質を有する種子を選別する。
【0082】
S19では、選別装置5は、生成装置2から送信された推定結果を、通信デバイス(図示せず)を介して取得する。つぎに、S20では、選別装置5は、前記種子の形質、すなわち、種子の形質の推定結果に基づき、種子を選別する。具体的には、選別装置5は、前記推定結果に基づき、所望の形質を有する推定される種子を回収する、または所望の形質を有さないと推定される種子を回収または除去することにより、所望の形質を有する種子を選別できる。選別装置5は、種子の選別に使用可能な選別機を使用でき、具体例として、Sorter(Seed-X Technologies社製)等があげられる。
【0083】
選別装置5は、前記推定結果がなくなるまで、同様の種子の選別を繰り返し実施する。そして、前記画像データにおいて、推定部32による推定対象の種子が無くなった場合、選別システム200は、処理を終了する。
【0084】
本実施形態の撮像装置1、生成装置2、推定装置3、および選別装置5を備える選別システム200では、推定装置3で得られた種子の形質の推定結果を用いて、選別装置5で所望の形質を有すると推定される種子を選別できる。このため、本実施形態の選別システム200によれば、種子の形質について、発芽検査等を実施せずに、所定の形質を有する種子の選別を実施できる。
【0085】
(実施形態4)
本実施形態のプログラムは、コンピュータに、前記本開示の推定方法、生成方法、および/または選別方法を実行させるプログラムである。本実施形態のプログラムにおいて、「手順」は、例えば、「処理」または「命令」と言うこともできる。また、本実施形態のプログラムは、例えば、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。前記記録媒体は、例えば、非一時的なコンピュータ可読記録媒体(non-transitory computer-readable storage medium)である。前記記録媒体は、特に制限されず、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、ハードディスク(HD)、光ディスク、フロッピー(登録商標)ディスク(FD)等があげられる。
【実施例0086】
つぎに、本開示の実施例について説明する。ただし、本開示は、以下の実施例により制限されない。
【0087】
[実施例1]
本開示の推定装置により、トマト種子の発芽/不発芽を推定できることを確認した。
【0088】
(1)第1の推定モデルの生成
トマト種子の発芽に関する形質を推定する推定モデルを、実施形態1の推定システム100の生成装置2を用いて、以下の手順で生成した。まず、ナス科植物のトマト種子(中玉トマト1品種(フルティカ)、大玉トマト2品種(桃太郎ピース、桃太郎ヨーク)、タキイ種苗社製)を準備した。準備した種子を多波長カメラPika L(RESONON社製、波長領域:400~1000nm、波長分解能3.7nm、測定波長の間隔:約2nm)およびPika NIR-640(RESONON社製、波長領域:900~1700nm、波長分解能5.3nm、測定波長の間隔:約2.5nm)で撮像し、1回の撮像につき、輝度情報(波長帯成分(約400~1700nmについて計約600波長分)およびそのシグナル強度値)を含む画像データを取得した。前記画像データを取得した種子の数は、500個以上とした。つぎに、前記撮像に用いたトマト種子を発芽検査に供し、各種子の発芽・不発芽を評価した。そして、前記画像データの各画素に、発芽(0)または不発芽(1)のラベル、種子の有無および種子の番号のラベルを紐付けし、機械学習に用いる第1の学習データを生成した。前記第1の学習データを用い、機械学習(ランダムフォレスト、以下、同様)により、発芽・不発芽の分類を推定可能な第1の推定モデルを生成した。
【0089】
(2)トマト種子の発芽推定
前記実施例1(1)で使用していないトマト種子(中玉トマト1品種(フルティカ)、大玉トマト2品種(桃太郎ピース、桃太郎ヨーク))について、前記実施例1(1)と同様にして、画像データを取得した。そして、各種子の発芽・不発芽の形質について、前記画像データおよび前記実施例1(1)で生成した第1の推定モデルを用いて、各画素の形質を推定後、各画素の形質から種子の形質を推定した。前記種子の形質の推定においては、総画素数に占める発芽と推定される形質の画素の割合に基づく閾値を予め設定し、閾値以上の場合、推定対象の種子は、発芽すると推定される種子とした。前記推定後、発芽の形質を有すると推定された種子(各群n=100)を選別し、発芽検査を実施し、一定期間における発芽率(発芽勢)を算出した。また、同一ロットの未選別の種子(n=100)について、発芽検査を実施して発芽率を算出した。これらの結果を、下記表1に示す。
【0090】
【0091】
前記表1は、発芽率の結果を示す表である。前記表1に示すように、選別後のトマト種子は、未選別のトマト種子と比較して、発芽率が向上していた。これらの結果から、前記第1の推定モデルにより、トマト種子の発芽・不発芽が推定できることが分かった。
【0092】
(3)第2の推定モデルの生成
前記実施例1(1)で生成した第1の推定モデルによれば、トマト種子の発芽・不発芽の形質を推定できる。そこで、実施形態2の推定システム100Aにおける生成装置2Aを用いて、前記第1の推定モデルにおいて形質の推定に重要な波長帯成分を抽出して用い、第2の推定モデルを生成し、前記第2の推定モデルにより、トマト種子の発芽・不発芽を推定できるかを確認した。
【0093】
前記第1の推定モデルにおいて、特徴量の重要度が高い波長帯成分順に上位からランキングを行なった。そして、上位2、3、4、5、または6波長帯成分を特定した。つぎに、トマト種子(中玉トマト1品種(フルティカ)、大玉トマト2品種(桃太郎ピース、桃太郎ヨーク))を準備した。準備した種子のうち、多波長カメラで撮像し、画像データを取得した。前記画像データから上位2、3、4、5、または6波長帯成分を抽出して学習用データを生成後、前記学習用データに、種子の形質のラベル付けし、学習データ(第2の学習データ)を生成した。前記第1の学習データに代えて、前記第2の学習データを用いた以外は、前記実施例1(1)と同様にして、機械学習により推定モデル(第2の推定モデル)を生成した。
【0094】
(4)トマト種子の発芽推定
前記実施例1(3)で使用していないトマト種子(中玉トマト1品種(フルティカ)、大玉トマト2品種(桃太郎ピース、桃太郎ヨーク))の画像データを取得した。そして、各種子の発芽・不発芽の形質について、前記画像データおよび実施例1(3)で生成した第2の推定モデルを用いて、各画素の形質を推定後、各画素の形質から種子の形質を推定した。前記第2の推定モデルには、前記画像データのうち、前記第2の推定モデルの生成に用いた波長帯成分のデータを抽出し、入力した。前記種子の形質の推定においては、総画素数に占める発芽と推定される形質の画素の割合に基づく閾値を予め設定し、閾値以上の場合、推定対象の種子は、発芽すると推定される種子とした。前記推定後、発芽・不発芽の形質を有すると推定された種子(各群n=100)をそれぞれ選別し、発芽検査を実施して発芽率を算出した。また、同一ロットの未選別の種子(n=100)について、発芽検査を実施し、一定期間における発芽率(発芽勢)算出した。これらの結果を、下記表2に示す。
【0095】
【0096】
前記表2は、発芽率の結果を示す表である。前記表2に示すように、選別後のトマト種子は、未選別のトマト種子と比較して、発芽率が向上していた。学習時に用いる波長帯成分を3波長以上とすると、発芽率を高い精度で担保できることから少なくとも上位3波長を用いれば、前記第1の推定モデルと同等の効率で、第2の推定モデルにより種子の選別ができることが分かった。また、上位4波長以上を用いることで、より精度よく発芽・不発芽を推定できることが分かった。また、桃太郎ピースおよび桃太郎ヨークを含む8品種を用いた場合も、フルティカと同様の傾向を示す結果が得られた。これらの結果から、前記第2の推定モデルにより、トマト種子の発芽・不発芽が推定できることが分かった。また、前記第2の推定モデルを用いた各画素の種子の形質の推定において、各画像データについて、2×2画素、3×3画素、4×4画素、5×5画素、10×10画素、50×50画素、または100×100画素単位に区分し、各画分(複数画素のデータ)の種子の形質を推定した。そして、複数画素の種子の形質から、トマト種子の発芽・不発芽を推定した。この結果、いずれの複数の画素を種子の形質の推定に用いても、良好に種子の形質が推定された。また、複数画素の種子の形質を推定する際に、画分の大きさを小さくすると、特に、5×5画素以下とすることで、より精度よく発芽・不発芽を推定できることがわかった。
【0097】
なお、データは示していないが、Pika Lのみを用いて得られた輝度情報を用いて前記第1の推定モデルおよび前記第2の推定モデルを生成した場合も同様にトマト種子の発芽・不発芽が推定された。また、ハイパースペクトルカメラとして、AHS-003VIR(アバールデータ社製、波長領域:450~1700nm、波長分解能10.5nm)を用いて得られた輝度情報を用いて前記第1の推定モデルおよび前記第2の推定モデルを生成した場合も同様にトマト種子の発芽・不発芽が推定できた。これらの結果から、いずれのカメラにおいても、取得される可視光領域の輝度情報が、種子の発芽・不発芽の推定に重要であると考えられた。
【0098】
また、前記第1の推定モデルおよび前記第2の推定モデルの生成において、1×1画素単位での入力に代えて、各画像データについて、2×2画素、3×3画素、4×4画素、5×5画素、10×10画素、50×50画素、または100×100画素単位に区分し、各画分の複数画素の平均値を入力した以外は同様にして、前記第2の推定モデルを生成した。そして、得られた第2の推定モデルに、前記画像データの1以上の画素について画素単位でデータを入力して、各画素の種子の形質を推定した。この結果、いずれの大きさの複数画素のデータを用いて第1の推定モデルおよび第2の推定モデルを生成しても、良好に種子の形質が推定された。また、前記複数画素のデータを用いて、第1の推定モデルおよび前記第2の推定モデルの生成する際に、画分の大きさを小さくすると、特に、5×5画素以下とすることで、より精度よく発芽・不発芽を推定できる第1の推定モデルおよび第2の推定モデルが得られることがわかった。
【0099】
[実施例2]
本開示の推定装置により、トマト種子の発芽/不発芽を推定できることを確認した。
【0100】
市販のトマト種子の選別機との比較検討を行なった。実施例2の推定装置3では、実施例1(3)における3波長帯成分を用いて生成した第2の推定モデルを用いた。未選別のトマト種子(フルティカ、試験群C)について、3波長帯成分を用いて生成した第2の推定モデルを用いた以外は、前記実施例1(4)と同様にして、種子の発芽・不発芽を推定し、それぞれを回収した(試験群A:発芽と推定、試験群B:不発芽と推定)。また、市販の種子の色彩選別機を用いて、トマト種子の発芽・不発芽の選定を行なった。なお、前記選別機では、種皮の色(RGB)の濃さに基づき、選別を行なっている(試験群D:濃い色調を対象とした群、試験群E:薄い色調を対象とした群)。そして、試験群A~E(各群n=100)について、一定期間内の発芽率(発芽勢)、最終発芽率(発芽率)、最終不発芽率(不発芽)を算出した。これらの結果を表3に示す。
【0101】
【0102】
前記表3は、発芽率(発芽勢)、最終発芽率(発芽率)、および最終不発芽率(不発芽)の結果を示す表である。前記表3に示すように、市販の色彩選別機を用いた場合、色彩選別機で濃い色調を対象とした種子(試験群D)は、未選別の種子(試験群C)と比較して、発芽率が若干向上したが、色彩選別機で薄い色調を対象とした種子(試験群E)は未選別の種子(試験群C)と比較して、殆ど差がなかった。また、前記第2の推定モデルにより、発芽すると推定された種子(試験群A)では、殆どが発芽し、未選別の種子(試験群C)および色彩選別機を用いて選別された種子(試験群DおよびE)と比較して、発芽率が格段に向上した。他方、発芽しないと推定された種子(試験群B)では、未選別の種子(試験群C)と比較して、発芽率が低下し、不発芽率が向上した。
【0103】
つぎに、実施例2の第2の推定モデルと、8品種のトマト植物の種子の多波長画像(画像データ)を用いて、それぞれ種子の発芽・不発芽を推定できるかを検討した。具体的には、品種Aの多波長画像(画像データ)に代えて、それぞれの品種の多波長画像(画像データ)を用いた以外は同様にして、各種子の発芽・不発芽を推定し、それぞれを回収した(各群n=100)。そして、各群について発芽検査を実施し、最終発芽率(発芽率)および最終不発芽率(不発芽)を算出した。この結果、発芽と推定された種子では、前記表3と同様に、発芽率が格段に向上し、不発芽率が低下した。また、不発芽と推定された種子では、前記表3と同様に、不発芽率が向上した。
【0104】
これらの結果から、本開示の推定装置で得られた推定結果を用いて選別を実施することにより、市販の色彩選別機を用いた選別と比較して、優れた精度で選別が可能であることが分かった。また、同じ植物間では、異なる品種の種子を用いて生成した推定モデルについても、形質の推定に利用できると推定された。
【0105】
[実施例3]
本開示の推定装置により、メロン種子、タマネギ種子、およびユーストマ種子の発芽/不発芽を推定できることを確認した。
【0106】
前記トマト種子に代えて、ウリ科植物のメロン種子(レノンスター、タキイ種苗社製)を用いた以外は、前記実施例1(1)と同様にして、第1の推定モデルを生成した。つぎに、前記トマト種子に代えて、前記メロン種子を用いた以外は、前記実施例1(2)および(3)と同様にして、学習データとして使用する波長帯成分を3波長として、第2の推定モデルを生成し、これを用いてメロン種子の発芽・不発芽を推定した。そして、発芽・不発芽の形質を有すると推定された種子と、未選別の種子(各群n=50)とについて、発芽検査を実施し、一定期間内の発芽率(発芽勢)を算出した。この結果、未選別の種子では、発芽率66%および不発芽率34%であったのに対し、発芽と推定された種子では、発芽率100%および不発芽率0%であった。また、不発芽と推定された種子では、発芽率52%および不発芽率48%であった。これらの結果から、本開示の推定装置によれば、メロン種子の発芽・不発芽も推定できることがわかった。
【0107】
また、前記トマト種子に代えて、ヒガンバナ科のタマネギ種子(ネオアース、タキイ種苗社製)を用いた以外は、前記実施例1(1)と同様にして、第1の推定モデルを生成した。つぎに、前記トマト種子に代えて、前記タマネギ種子を用いた以外は、前記実施例1(2)および(3)と同様にして、学習データとして使用する波長帯成分を3波長として、第2の推定モデルを生成し、これを用いてタマネギ種子の発芽・不発芽を推定した。そして、発芽・不発芽の形質を有すると推定された種子と、未選別の種子(各群n=100)とについて、発芽検査を実施し、一定期間内の発芽率(発芽勢)を算出した。この結果、未選別の種子では、発芽率69%および不発芽率31%であったのに対し、発芽と推定された種子では、発芽率90%および不発芽率10%であった。また、不発芽と推定された種子では、発芽率61%および不発芽率39%であった。これらの結果から、本開示の推定装置によれば、タマネギ種子の発芽・不発芽も推定できることがわかった。
【0108】
さらに、前記トマト種子に代えて、リンドウ科植物のユーストマ種子(F1フォルダチェリー、タキイ種苗社製)を用いた以外は、前記実施例1(1)と同様にして、第1の推定モデルを生成した。つぎに、前記トマト種子に代えて、前記ユーストマ種子を用いた以外は、前記実施例1(2)および(3)と同様にして、学習データとして使用する波長帯成分を3波長として、第2の推定モデルを生成し、これを用いてユーストマ種子の発芽・不発芽を推定した。そして、発芽・不発芽の形質を有すると推定された種子と、未選別の種子(各群n=50)とについて、発芽検査を実施し、一定期間内の発芽率(発芽勢)を算出した。この結果、未選別の種子では、発芽率86%および不発芽率14%であったのに対し、発芽と推定された種子では、発芽率93%および不発芽率7%であった。また、不発芽と推定された種子では、発芽率66%および不発芽率34%であった。これらの結果から、本開示の推定装置によれば、ユーストマ種子の発芽・不発芽も推定できることがわかった。
【0109】
また、前記メロン種子、前記タマネギ種子、および前記ユーストマ種子について、前記第2の推定モデルを用いた各画素の種子の形質の推定において、前記画像データについて、2×2画素、3×3画素、4×4画素、5×5画素、10×10画素、50×50画素、または100×100画素単位に区分し、各画分(複数画素のデータ)の種子の形質を推定した。そして、複数画素の種子の形質から、前記メロン種子、前記タマネギ種子、および前記ユーストマ種子の発芽・不発芽を推定した。この結果、いずれの複数の画素を種子の形質の推定に用いても、良好に種子の形質が推定された。また、複数画素の種子の形質を推定する際に、画分の大きさを小さくすると、特に、5×5画素以下とすることで、より精度よく発芽・不発芽を推定できることがわかった。
【0110】
さらに、前記第1の推定モデルおよび前記第2の推定モデルの生成において、1×1画素単位での入力に代えて、各画像データについて、2×2画素、3×3画素、4×4画素、5×5画素、10×10画素、50×50画素、または100×100画素単位に区分し、各画分の複数画素の平均値を入力した以外は同様にして、前記第2の推定モデルを生成した。そして、得られた第2の推定モデルに、前記画像データの1以上の画素について画素単位でデータを入力して、各画素の種子の形質を推定した。この結果、いずれの大きさの複数画素のデータを用いて第1の推定モデルおよび第2の推定モデルを生成しても、良好に種子の形質が推定された。また、前記複数画素のデータを用いて、第1の推定モデルおよび前記第2の推定モデルの生成する際に、画分の大きさを小さくすると、特に、5×5画素以下とすることで、より精度よく発芽・不発芽を推定できる第1の推定モデルおよび第2の推定モデルが得られることがわかった。
【0111】
[実施例4]
本開示の推定装置により、キャベツ種子の遺伝的純度を推定できることを確認した。
【0112】
(1)第1の推定モデルの生成
キャベツ種子の遺伝的純度に関する形質を推定する推定モデルを、実施形態1の推定システム100の生成装置2を用いて、以下の手順で生成した。まず、アブラナ科植物のキャベツ種子(YR春空、タキイ種苗社製)を準備した。前記トマト種子に代えて、前記キャベツ種子を用いたこと、推定対象を発芽の有無に代えて、遺伝的純度を推定した以外は、前記実施例1(1)と同様にして、第1の推定モデルを生成した。そして、前記トマト種子に代えて、前記キャベツ種子を用いたこと、推定対象を発芽の有無に代えて、遺伝的純度を推定した以外は、前記実施例1(2)および(3)と同様にして、学習データとして使用する波長帯成分を3波長として、第2の推定モデルを生成し、これを用いて前記キャベツ種子の遺伝的純度を推定した。前記画像データを取得した種子の数は、500個以上とした。つぎに、前記撮像に用いたキャベツ種子を生化学検査に供し、各種子の遺伝的純度(F1純度)を評価した。具体的には、前記キャベツ種子からゲノムDNAを抽出後、特定の品種であることを識別可能である領域を特異的に増幅可能なプライマーセットと、前記ゲノムDNAとを用いてPCR反応を行ない、増幅断片を得た。そして、得られた増幅断片の長さの差異(遺伝子型)により、遺伝的純度を評価した。そして、前記画像データの各画素に、遺伝的純度の正否のラベルを紐付けし、機械学習に用いる第1の学習データを生成した。前記第1の学習データを用い、機械学習(ランダムフォレスト)により、遺伝的純度の正否の分類を推定可能な第1の推定モデルを生成した。
【0113】
(2)キャベツ種子の遺伝的純度の推定
前記実施例4(1)で使用していないキャベツ種子について、前記実施例4(1)と同様にして、画像データを取得した。そして、各種子の遺伝的純度の形質について、前記画像データおよび実施例4(1)で生成した第1の推定モデルを用いて、各画素の形質を推定後、各画素の形質から種子の形質を推定した。前記種子の形質の推定においては、総画素数に占める遺伝的純度が正しいと推定される形質の画素の割合に基づく閾値を予め設定し、閾値以上の場合、推定対象の種子は、遺伝的純度が正しい形質を有すると推定される種子とした。前記推定後、遺伝的純度が正しい形質を有すると推定された種子(n=100)を選別し、前記生化学検査を実施し、遺伝的純度が正しい形質を有する種子の割合を算出した。また、同一ロットの未選別の種子(n=100)について、前記生化学検査を実施し、遺伝的純度が正しい形質を有する種子の割合を算出した。この結果、未選別の種子では、93%の種子は、遺伝的純度が正しい形質を有するのに対して、選別後の種子では、97%の種子は、遺伝的純度が正しい形質を有し、遺伝的純度が正しい形質を有する種子の割合が増加した。これらの結果から、第1の推定モデルにより、キャベツ種子の遺伝的純度を推定できることが分かった。また、前記キャベツ種子について、前記第1の推定モデルを用いた各画素の種子の形質の推定において、前記画像データについて、2×2画素、3×3画素、4×4画素、5×5画素、10×10画素、50×50画素、または100×100画素単位に区分し、各画分(複数画素のデータ)の種子の形質を推定した。そして、複数画素の種子の形質から、前記キャベツ種子の遺伝的純度を推定した。この結果、いずれの大きさの複数画素を種子の形質の推定に用いても、良好に種子の形質が推定された。また、複数画素の種子の形質を推定する際に、画分の大きさを小さくすると、特に、5×5画素以下とすることで、より精度よく遺伝的純度を推定できることがわかった。
【0114】
さらに前記第1の推定モデルの生成において、1×1画素単位での入力に代えて、各画像データについて、2×2画素、3×3画素、4×4画素、5×5画素、10×10画素、50×50画素、または100×100画素単位に区分し、各画分の複数画素の平均値を入力した以外は同様にして、前記第1の推定モデルを生成した。そして、得られた第1の推定モデルに、前記画像データの1以上の画素について画素単位でデータを入力して、各画素の種子の形質を推定した。この結果、いずれの大きさの複数画素のデータを用いて第1の推定モデルを生成しても、良好に種子の形質が推定された。また、前記複数画素のデータを用いて、第1の推定モデルの生成する際に、画分の大きさを小さくすると、特に、5×5画素以下とすることで、より精度よくキャベツ種子の遺伝的純度を推定できる第1の推定モデルが得られることがわかった。
【0115】
[実施例5]
本開示の推定装置により、トマト種子の病害の有無を推定できることを確認した。
【0116】
(1)第1の推定モデルの生成
トマト種子の病害の有無に関する形質を推定する推定モデルを、実施形態1の推定システム100の生成装置2を用いて、以下の手順で生成した。まず、トマト種子(TTM-171、タキイ種苗社製)を準備した。前記トマト種子として、TTM-171のトマト種子を用い、推定対象を発芽の有無に代えて、病害の有無を推定した以外は、前記実施例1(1)と同様にして、第1の推定モデルを生成した。そして、前記トマト種子として、TTM-171のトマト種子を用い、推定対象を発芽の有無に代えて、病害の有無を推定した以外は、前記実施例1(2)および(3)と同様にして、学習データとして使用する波長帯成分を3波長として、第2の推定モデルを生成し、これを用いてトマト種子の病害の有無を推定した。前記画像データを取得した種子の数は、500個以上とした。つぎに、前記撮像に用いたトマト種子を病理検査に供し、各種子のカビの発生の有無を評価した。そして、前記画像データの各画素に、カビの発生の有無のラベルを紐付けし、機械学習に用いる第1の学習データを生成した。前記第1の学習データを用い、機械学習(ランダムフォレスト)により、カビの発生の有無の分類を推定可能な第1の推定モデルを生成した。
【0117】
(2)トマト種子の病害の有無の推定
前記実施例5(1)で使用していないトマト種子について、前記実施例5(1)と同様にして、画像データを取得した。そして、各種子のカビの発生の有無について、前記画像データおよび実施例5(1)で生成した第1の推定モデルを用いて、各画素の形質を推定後、各画素の形質から種子の形質を推定した。前記種子の形質の推定においては、総画素数に占めるカビの発生有りと推定される形質の画素の割合に基づく閾値を予め設定し、閾値以上の場合、推定対象の種子は、カビが発生すると推定される種子とした。前記推定後、カビが発生すると推定された種子(n=100)を選別し、前記病理検査を実施し、カビが発生する種子の割合を算出した。また、カビ発生無しと推定した際のカビが発生する種子の割合を算出した。前記閾値について、総画素数に占めるカビの発生無しと推定される形質の画素の割合に基づく閾値を予め設定し、閾値以上の場合、推定対象の種子は、カビが発生しないと推定される種子とし、閾値未満の場合、推定対象の種子は、カビが発生すると推定される種子とした。そして、前記推定後、カビが発生すると推定された種子(n=100)を選別し、前記病理検査を実施し、カビが発生する種子の割合を算出した。さらに、同一ロットの未選別の種子(n=100)について、前記病理検査を実施し、カビが発生する種子の割合を算出した。同様の実験を、異なる4ロットのトマト種子に対して実施した。これらの結果を下記表4に示す。
【0118】
【0119】
前記表4に示すように、カビの発生無しと推定した種子では、カビの発生割合が、未選別の種子群と比較して減少した。カビの発生有りと推定した種子では、カビの発生割合が、未選別の種子群と比較して増加した。これらの結果から、第1の推定モデルにより、トマト種子のカビの発生の有無を推定できることが分かった。また、前記トマト種子について、前記第1の推定モデルを用いた各画素の種子の形質の推定において、前記画像データについて、2×2画素、3×3画素、4×4画素、5×5画素、10×10画素、50×50画素、または100×100画素単位に区分し、各画分(複数画素のデータ)の種子の形質を推定した。そして、複数画素の種子の形質から、前記トマト種子のカビの発生の有無を推定した。この結果、いずれの大きさの複数画素を種子の形質の推定に用いても、良好に種子の形質が推定された。また、複数画素の種子の形質を推定する際に、画分の大きさを小さくすると、特に、5×5画素以下とすることで、より精度よくカビの発生の有無を推定できることがわかった。
【0120】
さらに、前記第1の推定モデルの生成において、1×1画素単位での入力に代えて、各画像データについて、2×2画素、3×3画素、4×4画素、5×5画素、10×10画素、50×50画素、または100×100画素単位に区分し、各画分の複数画素の平均値を入力した以外は同様にして、前記第1の推定モデルを生成した。そして、得られた第1の推定モデルに、前記画像データの1以上の画素について画素単位でデータを入力して、各画素の種子の形質を推定した。この結果、いずれの大きさの複数画素のデータを用いて第1の推定モデルを生成しても、良好に種子の形質が推定された。また、前記複数画素のデータを用いて、第1の推定モデルの生成する際に、画分の大きさを小さくすると、特に、5×5画素以下とすることで、より精度よくトマト種子のカビの発生の有無を推定できる第1の推定モデルが得られることがわかった。
【0121】
以上、実施形態および実施例を参照して本開示を説明したが、本開示は、上記実施形態および実施例に限定されるものではない。本開示の構成および詳細には、本開示のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をできる。
【0122】
<付記>
上記の実施形態および実施例の一部または全部は、以下の付記のように記載されうるが、以下には限られない。
<種子の形質推定装置>
(付記1)
1以上の種子が撮像された多波長画像を取得する第1の画像取得部と、
第1の種子の形質推定モデルを用いて、前記多波長画像中の種子を構成する1以上の画素の形質を推定することにより、前記種子の形質を推定する推定部とを含む、種子の形質推定装置。
(付記2)
前記推定部では、前記多波長画像中の種子を構成する1以上の画素に紐付けられた波長データを、前記第1の種子の形質推定モデルに入力して出力された形質を、前記画素の形質と推定する、付記1に記載の種子の形質推定装置。
(付記3)
前記推定部では、
前記種子を構成する1以上の画素の形質の推定結果において、所定の形質であるとの推定結果の画素の数および/または割合が閾値以上である場合、および/または
前記種子を構成する1以上の画素の形質の推定結果において、所定の形質でないとの推定結果の画素の数および/または割合が閾値未満である場合、
前記種子が、所望の形質を有すると推定する、付記1または2に記載の種子の形質推定装置。
(付記4)
前記多波長画像中の1以上の種子を検出する検出部を含み、
前記推定部では、検出された種子について、前記種子の形質を推定する、付記1から3のいずれかに記載の種子の形質推定装置。
(付記5)
前記第1の種子の形質推定モデルは、種子の形質推定モデルの学習データを用いて機械学習により学習させた学習モデルであり、
前記学習データは、
1以上の種子を撮像した多波長画像と種子の形質データとを含み、
前記多波長画像中の種子を構成する1以上の画素に前記形質データが紐付けられている、
付記1から4のいずれかに記載の種子の形質推定装置。
(付記6)
種子の形質推定モデルの第1の学習データを用いて、機械学習により前記種子の形質推定モデルを生成する第1の学習部を含み、
前記第1の学習データは、
1以上の種子を撮像した多波長画像と種子の形質データとを含み、
前記多波長画像中の種子を構成する1以上の画素に前記形質データが紐付けられている、付記1から5のいずれかに記載の種子の形質推定装置。
(付記7)
1以上の種子を撮像した多波長画像を取得する第2の画像取得部と、
前記多波長画像中の種子の形質データを取得する第2のデータ取得部と、
前記多波長画像中の種子を構成する1以上の画素に、前記形質データを紐付けて、学習データを生成する第1のデータ生成部とを含む、付記6に記載の種子の形質推定装置。
(付記8)
前記第1の種子の形質推定モデルを用いて、前記多波長画像において、前記形質の推定に寄与している波長を評価する評価部と、
得られた評価結果を用いて、1以上の種子を撮像した多波長画像から、2以上の所定の波長のスペクトルデータを学習用データとして抽出する抽出部と、
前記学習用データ中の種子を構成する1以上の画素に、種子の形質データと紐付けて、第2の学習データを生成する第2のデータ生成部と、
前記第2の学習データを用いて、機械学習により第2の種子の形質推定モデルを生成する第2の学習部を含む、付記1から7のいずれかに記載の種子の形質推定装置。
(付記9)
前記推定部では、前記第1の種子の形質推定モデルに代えて、前記第2の種子の形質推定モデルを用いる、付記8に記載の種子の形質推定装置。
(付記10)
前記種子の形質は、種子の発芽または種子の発芽の有無、種子の純度または種子の純度の正否、および/または、種子の病害または種子の病害の有無である、付記1から9のいずれかに記載の種子の形質推定装置。
(付記11)
前記形質推定装置は、サーバである、付記1から10のいずれかに記載の種子の形質推定装置。
<種子の選別装置>
(付記12)
1以上の種子が撮像された多波長画像から前記種子の形質を推定する形質推定部と、
前記形質に基づき、前記種子を選別する選別部とを含み、
前記形質推定部は、付記1から11のいずれかに記載の種子の形質推定装置を含む、種子の選別装置。
<種子の形質推定モデルの生成装置>
(付記13)
種子の形質推定モデルの第1の学習データを用いて、機械学習により前記種子の形質推定モデルを生成する第1の学習部を含み、
前記第1の学習データは、
1以上の種子を撮像した多波長画像と、種子の形質データとを含み、
前記多波長画像中の種子を構成する1以上の画素に前記形質データが紐付けられている、種子の形質推定モデルの生成装置。
(付記14)
1以上の種子を撮像した多波長画像を取得する第2の画像取得部と、
前記多波長画像中の種子の形質データを取得する第2のデータ取得部と、
前記多波長画像中の種子を構成する1以上の画素に、前記形質データを紐付けて、学習データを生成する第1のデータ生成部とを含む、付記13に記載の種子の形質推定モデルの生成装置。
(付記15)
前記第1の種子の形質推定モデルを用いて、前記多波長画像において、前記形質の推定に寄与している波長を評価する評価部と、
得られた評価結果を用いて、1以上の種子を撮像した多波長画像から、2以上の所定の波長のスペクトルデータを学習用データとして抽出する抽出部と、
前記学習用データ中の種子を構成する1以上の画素に、種子の形質データと紐付けて、第2の学習データを生成する第2のデータ生成部と、
前記第2の学習データを用いて、機械学習により第2の種子の形質推定モデルを生成する第2の学習部を含む、付記13または14に記載の種子の形質推定モデルの生成装置。
<種子の形質推定方法>
(付記16)
コンピュータ上で実行される種子の形質推定方法であって、
1以上の種子が撮像された多波長画像を取得する第1の取得工程と、
第1の種子の形質推定モデルを用いて、前記多波長画像中の種子を構成する1以上の画素の形質を推定することにより、前記種子の形質を推定する推定工程とを含む、種子の形質推定方法。
(付記17)
前記推定工程では、前記推定部では、前記多波長画像中の種子を構成する1以上の画素に紐付けられた波長データを、前記第1の種子の形質推定モデルに入力して出力された形質を、前記画素の形質と推定する、付記16に記載の種子の形質推定方法。
(付記18)
前記推定工程では、
前記種子を構成する1以上の画素の形質の推定結果において、所定の形質との推定結果の画素の数および/または割合が閾値以上である場合、および/または
前記種子を構成する1以上の画素の形質の推定結果において、所定の形質でないとの推定結果の画素の数および/または割合が閾値未満である場合、
前記種子が、所望の形質を有すると推定する、付記16または17に記載の種子の形質推定方法。
(付記19)
前記多波長画像中の1以上の種子を検出する検出工程を含み、
前記推定工程では、検出された種子について、前記種子の形質を推定する、付記16から18のいずれかに記載の種子の形質推定方法。
(付記20)
前記第1の種子の形質推定モデルは、種子の形質推定モデルの学習データを用いて機械学習により学習された学習モデルであり、
前記学習データは、
1以上の種子を撮像した多波長画像と種子の形質データとを含み、
前記多波長画像中の種子を構成する1以上の画素に前記形質データが紐付けられている、
付記16から19のいずれかに記載の種子の形質推定方法。
(付記21)
種子の形質推定モデルの第1の学習データを用いて、機械学習により前記種子の形質推定モデルを生成する第1の学習工程を含み、
前記第1の学習データは、
1以上の種子を撮像した多波長画像と種子の形質データとを含み、
前記多波長画像中の種子を構成する1以上の画素に前記形質データが紐付けられている、付記16から20のいずれかに記載の種子の形質推定方法。
(付記22)
1以上の種子を撮像した多波長画像を取得する第2の画像取得工程と、
前記多波長画像中の種子の形質データを取得する第2のデータ取得工程と、
前記多波長画像中の種子を構成する1以上の画素に、前記形質データを紐付けて、学習データを生成する第1のデータ生成工程とを含む、付記21に記載の種子の形質推定方法。
(付記23)
前記第1の種子の形質推定モデルを用いて、前記多波長画像において、前記形質の推定に寄与している波長を評価する評価工程と、
得られた評価結果を用いて、1以上の種子を撮像した多波長画像から、2以上の所定の波長のスペクトルデータを学習用データとして抽出する抽出工程と、
前記学習用データ中の種子を構成する1以上の画素に、種子の形質データと紐付けて、第2の学習データを生成する第2のデータ生成工程と、
前記第2の学習データを用いて、機械学習により第2の種子の形質推定モデルを生成する第2の学習工程を含む、付記16から22のいずれかに記載の種子の形質推定方法。
(付記24)
前記推定工程では、前記第1の種子の形質推定モデルに代えて、前記第2の種子の形質推定モデルを用いる、付記23に記載の種子の形質推定方法。
(付記25)
前記種子の形質は、種子の発芽または種子の発芽の有無、種子の純度または種子の純度の正否、および/または、種子の病害または種子の病害の有無である、付記16から24のいずれかに記載の種子の形質推定方法。
<種子の選別方法>
(付記26)
コンピュータ上で実行される種子の選別方法であって、
1以上の種子が撮像された多波長画像から前記種子の形質を推定する形質推定工程と、
前記形質に基づき、前記種子を選別する選別工程とを含み、
前記形質推定工程は、付記16から25のいずれかに記載の種子の形質推定方法により実行される、方法。
<種子の形質推定モデルの生成方法>
(付記27)
コンピュータ上で実行される種子の形質推定モデルの生成方法であって、
種子の形質推定モデルの第1の学習データを用いて、機械学習により前記種子の形質推定モデルを生成する第1の学習工程を含み、
前記第1の学習データは、
1以上の種子を撮像した多波長画像と種子の形質データとを含み、
前記多波長画像中の種子を構成する1以上の画素に前記形質データが紐付けられている、種子の形質推定モデルの生成方法。
(付記28)
1以上の種子を撮像した多波長画像を取得する第2の画像取得工程と、
前記多波長画像中の種子の形質データを取得する第2のデータ取得工程と、
前記多波長画像中の種子を構成する1以上の画素に、前記形質データを紐付けて、学習データを生成する第1のデータ生成工程とを含む、付記27に記載の種子の形質推定モデルの生成方法。
(付記29)
前記第1の種子の形質推定モデルを用いて、前記多波長画像において、前記形質の推定に寄与している波長を評価する評価工程と、
得られた評価結果を用いて、1以上の種子を撮像した多波長画像から、2以上の所定の波長のスペクトルデータを学習用データとして抽出する抽出工程と、
前記学習用データ中の種子を構成する1以上の画素に、種子の形質データと紐付けて、第2の学習データを生成する第2のデータ生成工程と、
前記第2の学習データを用いて、機械学習により第2の種子の形質推定モデルを生成する第2の学習工程を含む、付記27または28に記載の種子の形質推定モデルの生成方法。
<第1のプログラム>
(付記30)
コンピュータに、
1以上の種子が撮像された多波長画像を取得する第1の取得処理と、
第1の種子の形質推定モデルを用いて、前記多波長画像中の種子を構成する1以上の画素の形質を推定することにより、前記種子の形質を推定する推定処理とを実行させる、プログラム。
(付記31)
前記推定処理では、前記推定部では、前記多波長画像中の種子を構成する1以上の画素に紐付けられた波長データを、前記第1の種子の形質推定モデルに入力して出力された形質を、前記画素の形質と推定する、付記30に記載のプログラム。
(付記32)
前記推定処理では、
前記種子を構成する1以上の画素の形質の推定結果において、所定の形質との推定結果の画素の数および/または割合が閾値以上である場合、および/または
前記種子を構成する1以上の画素の形質の推定結果において、所定の形質でないとの推定結果の画素の数および/または割合が閾値未満である場合、
前記種子が、所望の形質を有すると推定する、付記30または31に記載のプログラム。
(付記33)
前記多波長画像中の1以上の種子を検出する検出処理を含み、
前記推定処理では、検出された種子について、前記種子の形質を推定する、付記30から32のいずれかに記載のプログラム。
(付記34)
前記第1の種子の形質推定モデルは、種子の形質推定モデルの学習データを用いて機械学習により学習された学習モデルであり、
前記学習データは、
1以上の種子を撮像した多波長画像と種子の形質データとを含み、
前記多波長画像中の種子を構成する1以上の画素に前記形質データが紐付けられている、
付記30から33のいずれかに記載のプログラム。
(付記35)
種子の形質推定モデルの第1の学習データを用いて、機械学習により前記種子の形質推定モデルを生成する第1の学習処理を含み、
前記第1の学習データは、
1以上の種子を撮像した多波長画像と種子の形質データとを含み、
前記多波長画像中の種子を構成する1以上の画素に前記形質データが紐付けられている、付記30から34のいずれかに記載のプログラム。
(付記36)
1以上の種子を撮像した多波長画像を取得する第2の画像取得処理と、
前記多波長画像中の種子の形質データを取得する第2のデータ取得処理と、
前記多波長画像中の種子を構成する1以上の画素に、前記形質データを紐付けて、学習データを生成する第1のデータ生成処理とを含む、付記35に記載のプログラム。
(付記37)
前記第1の種子の形質推定モデルを用いて、前記多波長画像において、前記形質の推定に寄与している波長を評価する評価処理と、
得られた評価結果を用いて、1以上の種子を撮像した多波長画像から、2以上の所定の波長のスペクトルデータを学習用データとして抽出する抽出処理と、
前記学習用データ中の種子を構成する1以上の画素に、種子の形質データと紐付けて、第2の学習データを生成する第2のデータ生成処理と、
前記第2の学習データを用いて、機械学習により第2の種子の形質推定モデルを生成する第2の学習処理を含む、付記30から36のいずれかに記載のプログラム。
(付記38)
前記推定処理では、前記第1の種子の形質推定モデルに代えて、前記第2の種子の形質推定モデルを用いる、付記37に記載のプログラム。
(付記39)
前記種子の形質は、種子の発芽または種子の発芽の有無、種子の純度または種子の純度の正否、および/または、種子の病害または種子の病害の有無である、付記30から38のいずれかに記載のプログラム。
<第2のプログラム>
(付記40)
コンピュータに、
1以上の種子が撮像された多波長画像から前記種子の形質を推定する形質推定処理と、
前記形質に基づき、前記種子を選別する選別処理とを含み、
前記形質推定処理は、付記30から39のいずれかに記載のプログラムの各処理により実行される、プログラム。
<第3のプログラム>
(付記41)
コンピュータに、
種子の形質推定モデルの第1の学習データを用いて、機械学習により種子の形質推定モデルを生成する第1の学習処理を実行させる、プログラムであり、
前記第1の学習データは、
1以上の種子を撮像した多波長画像と種子の形質データとを含み、
前記多波長画像中の種子を構成する1以上の画素に前記形質データが紐付けられている、プログラム。
(付記42)
1以上の種子を撮像した多波長画像を取得する第2の画像取得処理と、
前記多波長画像中の種子の形質データを取得する第2のデータ取得処理と、
前記多波長画像中の種子を構成する1以上の画素に、前記形質データを紐付けて、学習データを生成する第1のデータ生成処理とを含む、付記41に記載のプログラム。
(付記43)
前記第1の種子の形質推定モデルを用いて、前記多波長画像において、前記形質の推定に寄与している波長を評価する評価処理と、
得られた評価結果を用いて、1以上の種子を撮像した多波長画像から、2以上の所定の波長のスペクトルデータを学習用データとして抽出する抽出処理と、
前記学習用データ中の種子を構成する1以上の画素に、種子の形質データと紐付けて、第2の学習データを生成する第2のデータ生成処理と、
前記第2の学習データを用いて、機械学習により第2の種子の形質推定モデルを生成する第2の学習処理を含む、付記41または42に記載のプログラム。
<記録媒体>
(付記44)
付記30から43のいずれかに記載のプログラムを記録している、コンピュータ読み取り可能な記録媒体。
以上のように、本開示によれば、種子の形質の推定に使用可能な種子の形質推定装置および種子の形質推定方法を提供できる。また、本開示によれば、得られた判定結果を用いて種子の選別を好適に実施できる。このため、本開示は、例えば、種苗分野、品質管理等において極めて有用である。