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特開2024-64472三次元造形装置、及び、三次元造形物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064472
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】三次元造形装置、及び、三次元造形物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/321 20170101AFI20240507BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20240507BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240507BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20240507BHJP
   B29C 64/393 20170101ALI20240507BHJP
   B33Y 40/00 20200101ALI20240507BHJP
   B29C 64/209 20170101ALI20240507BHJP
   B29C 64/106 20170101ALI20240507BHJP
   B29C 48/475 20190101ALI20240507BHJP
   B29C 48/30 20190101ALI20240507BHJP
   B29C 48/505 20190101ALI20240507BHJP
   B29C 48/92 20190101ALI20240507BHJP
   B29C 48/25 20190101ALI20240507BHJP
【FI】
B29C64/321
B33Y30/00
B33Y10/00
B33Y50/02
B29C64/393
B33Y40/00
B29C64/209
B29C64/106
B29C48/475
B29C48/30
B29C48/505
B29C48/92
B29C48/25
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173081
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】荻原 正章
【テーマコード(参考)】
4F207
4F213
【Fターム(参考)】
4F207AG03
4F207AJ08
4F207AP02
4F207AR02
4F207KA01
4F207KA17
4F207KK12
4F207KK36
4F207KL25
4F207KM04
4F207KM14
4F213AP02
4F213AR02
4F213AR07
4F213AR14
4F213WA25
4F213WB01
4F213WK03
4F213WL02
4F213WL32
4F213WL74
4F213WL85
(57)【要約】
【課題】模様を有する造形物を三次元造形装置によって造形する場合において、造形時間を短縮でき、かつ、装置にかかる負担を抑制できる技術を提供する。
【解決手段】三次元造形装置は、材料を可塑化して造形材料を生成する可塑化部と、ノズル開口を有し、造形材料をステージに向けて吐出するノズルと、ノズル開口に連通し造形材料が流れる流路に設けられ、流路内の造形材料に振動を付与する振動付与部と、可塑化部及び振動付与部を制御して三次元造形物を造形する制御部と、を備え、制御部は、振動付与部を制御して流路内の造形材料に振動を付与しながら三次元造形物の外郭領域の少なくとも一部を造形する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料を可塑化して造形材料を生成する可塑化部と、
ノズル開口を有し、前記造形材料をステージに向けて吐出するノズルと、
前記ノズル開口に連通し前記造形材料が流れる流路に設けられ、前記流路内の前記造形材料に振動を付与する振動付与部と、
前記可塑化部及び前記振動付与部を制御して三次元造形物を造形する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記振動付与部を制御して前記流路内の前記造形材料に前記振動を付与しながら前記三次元造形物の外郭領域の少なくとも一部を造形する、
三次元造形装置。
【請求項2】
請求項1に記載の三次元造形装置であって、
前記振動付与部は、前記流路に接続されたシリンダー及び前記シリンダー内を移動するプランジャーを備える吸引送出部を有し、
前記制御部は、前記プランジャーの位置を連続的又は段階的に変化させることで前記流路内の前記造形材料に前記振動を付与する、三次元造形装置。
【請求項3】
請求項2に記載の三次元造形装置であって、
前記制御部は、前記プランジャーの前進及び後退を含むパターンを繰り返すことで前記振動を付与する、三次元造形装置。
【請求項4】
請求項2に記載の三次元造形装置であって、
前記制御部は、前記振動を付与している期間中に前記ノズルからの前記造形材料の吐出を停止する場合、前記吸引送出部を制御して前記シリンダー内に前記造形材料を吸引する動作を行いながら、前記振動を付与する、三次元造形装置。
【請求項5】
請求項2に記載の三次元造形装置であって、
前記制御部は、前記造形材料の吐出が停止されている状態から前記外郭領域において前記造形材料の吐出を再開する場合、前記吸引送出部を制御して前記シリンダーから前記流路に前記造形材料を送出する動作を行いながら、前記振動を付与する、三次元造形装置。
【請求項6】
請求項5に記載の三次元造形装置であって、
前記流路に設けられ、前記流路の開口面積を調整することによって前記ノズル開口からの前記造形材料の吐出量を調整する吐出調整部を備え、
前記制御部は、前記吐出調整部を制御して前記造形材料の前記流路への流通を再開させた後に、前記吸引送出部を制御して前記シリンダーから前記流路への前記造形材料の送出を行うことで、前記造形材料の吐出を再開する、三次元造形装置。
【請求項7】
請求項1に記載の三次元造形装置であって、
前記流路内の圧力を検出する圧力センサーを備え、
前記可塑化部は、前記材料を可塑化するためのスクリューを有し、
前記制御部は、前記圧力センサーによる前記圧力の検出値が予め定められた範囲内に収まるように前記スクリューの回転を制御する圧力調節処理を実行し、
前記制御部は、前記圧力調節処理の実行中に、前記振動付与部を制御して前記流路内の前記造形材料に前記振動を付与しながら前記三次元造形物の外郭の少なくとも一部を造形する、三次元造形装置。
【請求項8】
請求項1に記載の三次元造形装置であって、
造形中の前記三次元造形物を加熱する加熱部を備え、
前記制御部は、前記造形材料に前記振動を付与する場合と付与しない場合とで、異なる温度で前記三次元造形物を加熱するように前記加熱部を制御する、三次元造形装置。
【請求項9】
請求項1に記載の三次元造形装置であって、
前記振動付与部は、前記流路の開口面積を調整することによって前記ノズル開口からの前記造形材料の吐出量を調整する吐出調整部を有し、
前記制御部は、前記開口面積を連続的又は段階的に変化させることで前記流路内の前記造形材料に前記振動を付与する、三次元造形装置。
【請求項10】
材料を可塑化して造形材料を生成する第1工程と、
ノズルに設けられたノズル開口から前記造形材料をステージに向けて吐出することにより、三次元造形物を造形する第2工程と、
を備え、
前記第2工程は、前記ノズル開口に連通し前記造形材料が流れる流路に設けられ、前記流路内の前記造形材料に振動を付与する振動付与部を制御して、前記流路内の前記造形材料に前記振動を付与しながら前記三次元造形物の外郭領域の少なくとも一部を造形する工程を含む、
三次元造形物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、三次元造形装置、及び、三次元造形物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、下地となるシート上に、3Dプリンターを用いて立体模様を造形する造形工程と、立体模様が造形されたシートを、接着剤を介して物品の所定の面に貼着する貼着工程とを備える立体模様製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-38975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
模様を有する造形物を三次元造形装置によって造形する場合、模様部分の造形に時間がかかり、全体の造形が完了するまでの造形時間が長期化する可能性があった。また、模様部分を造形するための細かなノズルの位置制御が必要となって、装置の負担が増大する可能性があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1の形態によれば、三次元造形装置が提供される。この三次元造形装置は、材料を可塑化して造形材料を生成する可塑化部と、ノズル開口を有し、前記造形材料をステージに向けて吐出するノズルと、前記ノズル開口に連通し前記造形材料が流れる流路に設けられ、前記流路内の前記造形材料に振動を付与する振動付与部と、前記可塑化部及び前記振動付与部を制御して三次元造形物を造形する制御部と、を備え、前記制御部は、前記振動付与部を制御して前記流路内の前記造形材料に前記振動を付与しながら前記三次元造形物の外郭領域の少なくとも一部を造形する。
【0006】
本開示の第2の形態によれば、三次元造形物の製造方法が提供される。この製造方法は、材料を可塑化して造形材料を生成する第1工程と、ノズルに設けられたノズル開口から前記造形材料をステージに向けて吐出することにより、三次元造形物を造形する第2工程と、を備え、前記第2工程は、前記ノズル開口に連通し前記造形材料が流れる流路に設けられ、前記流路内の前記造形材料に振動を付与する振動付与部を制御して、前記流路内の前記造形材料に前記振動を付与しながら前記三次元造形物の外郭領域の少なくとも一部を造形する工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】三次元造形装置の概略構成を示す説明図。
図2】フラットスクリューの構成を示す概略斜視図。
図3】バレルの構成を示す上面図。
図4】吐出調整部の構成を示す斜視図。
図5】吐出調整部及び吸引送出部の構成を示す説明図。
図6】バタフライバルブの動作を示す第1の説明図。
図7】バタフライバルブの動作を示す第2の説明図。
図8】プランジャーの動作を示す説明図。
図9】三次元造形処理のフローチャート。
図10】三次元造形物が造形される様子を模式的に示す説明図。
図11】外郭領域を造形するためのノズルの移動経路の一部を示す図。
図12】造形材料に振動を付与した実験の結果を示す図。
図13】圧力調節処理のフローチャート。
図14】ノズルの移動によって模様を形成するためのノズルの移動経路を示す図。
図15】造形材料の圧力変化の例を示す図。
図16】圧力変化を打ち消す逆位相の波形の例を示す図。
図17】振動を付与するための波形の例を示す図。
図18】制御波形の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
図1は、第1実施形態における三次元造形装置100の概略構成を示す説明図である。図1には、互いに直交するX,Y,Z方向に沿った矢印が表されている。X方向及びY方向は、水平方向に沿った方向であり、Z方向は、鉛直方向に沿った方向である。他の図においても、X,Y,Z方向に沿った矢印が、適宜、表されている。図1におけるX,Y,Z方向と、他の図におけるX,Y,Z方向とは、同じ方向を表している。
【0009】
本実施形態における三次元造形装置100は、造形ユニット200と、ステージ300と、移動機構400と、制御部500とを備えている。三次元造形装置100は、制御部500の制御下で、造形ユニット200に設けられたノズル開口69からステージ300の造形面310に向かって造形材料を吐出しつつ、移動機構400を駆動させてノズル開口69と造形面310との相対的な位置を変化させることによって、造形面310上に造形材料の層が積層された三次元造形物を造形する。尚、造形材料のことを可塑化材料と呼ぶこともある。造形ユニット200の詳細な構成については後述する。
【0010】
移動機構400は、上述したとおり、ノズル開口69と造形面310との相対的な位置を変化させる。本実施形態では、移動機構400は、ステージ300を支持しており、造形ユニット200に対してステージ300を移動させることによって、ノズル開口69と造形面310との相対的な位置を変化させる。本実施形態における移動機構400は、3つのモーターの駆動力によって、ステージ300をX,Y,Z方向の3軸方向に移動させる3軸ポジショナーによって構成される。各モーターは、制御部500の制御下にて駆動する。尚、移動機構400は、ステージ300を移動させる構成ではなく、ステージ300を移動させずに造形ユニット200を移動させることによって、ノズル開口69と造形面310との相対的な位置を変化させる構成であってもよい。また、移動機構400は、ステージ300と造形ユニット200との両方を移動させることによって、ノズル開口69と造形面310との相対的な位置を変化させる構成であってもよい。
【0011】
制御部500は、1以上のプロセッサーと、記憶装置と、外部との信号の入出力を行う入出力インターフェースとを備えるコンピューターによって構成されている。本実施形態では、制御部500は、記憶装置に読み込んだプログラムをプロセッサーが実行することによって、造形ユニット200と移動機構400との動作を制御して、三次元造形物を造形するための三次元造形処理を実行する。尚、制御部500は、コンピューターではなく、複数の回路の組み合わせによって構成されてもよい。
【0012】
造形ユニット200は、材料の供給源である材料供給部20と、駆動部35と、材料供給部20から供給された材料を可塑化して造形材料にする可塑化部30と、可塑化部30から供給された造形材料を吐出するノズル開口69を有するノズル61と、ノズル61に供給される造形材料の流量を調節する吐出調整部70と、造形材料の圧力を測定する圧力センサー80と、造形材料を吸引及び送出する吸引送出部90とを備えている。ここで、「可塑化」とは、溶融を含む概念であり、固体から流動性を有する状態に変化させることである。具体的には、ガラス転移が起こる材料の場合、可塑化とは、材料の温度をガラス転移点以上にすることである。ガラス転移が起こらない材料の場合、可塑化とは、材料の温度を融点以上にすることである。
【0013】
材料供給部20には、ペレットや粉末等の状態の材料が収容されている。材料としては、例えば、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)やPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PP(ポリプロピレン)などの樹脂材料が用いられる。本実施形態における材料供給部20は、ホッパーによって構成されている。材料供給部20の下方には、材料供給部20と可塑化部30との間を接続する供給路22が設けられている。材料供給部20は、供給路22を介して、可塑化部30に材料を供給する。
【0014】
本実施形態では、駆動部35は、駆動モーター36を備えている。駆動モーター36は、後述するスクリューケース31の上面に固定されている。駆動モーター36の回転軸は、後述するフラットスクリュー40の上面41に接続されている。駆動モーター36は、制御部500の制御下で駆動されて、フラットスクリュー40を回転させる。尚、駆動部35は、駆動モーター36の回転数を減速させる減速機を備えてもよく、駆動モーター36は、減速機を介してフラットスクリュー40に接続されてもよい。
【0015】
可塑化部30は、スクリューケース31と、フラットスクリュー40と、バレル50とを備えている。可塑化部30は、材料供給部20から供給された固体状態の材料の少なくとも一部を可塑化させて流動性を有するペースト状の造形材料にして、ノズル61に供給する。
【0016】
スクリューケース31は、フラットスクリュー40を収容するための筐体である。スクリューケース31の下面には、バレル50が固定されており、スクリューケース31とバレル50とによって囲まれた空間に、フラットスクリュー40が収容されている。
【0017】
フラットスクリュー40は、中心軸RXに沿った方向の長さが、中心軸RXに垂直な方向における長さよりも小さい略円柱形状を有している。フラットスクリュー40は、中心軸RXがZ方向に平行になるように、スクリューケース31内に配置されている。駆動モーター36が発生させるトルクによって、フラットスクリュー40は、スクリューケース31内にて、中心軸RXを中心に回転する。フラットスクリュー40は、中心軸RXに沿った方向における上面41とは反対側に、溝部45が形成された溝形成面42を有している。フラットスクリュー40の具体的な構成については後述する。
【0018】
バレル50は、フラットスクリュー40の下方に配置されている。バレル50は、フラットスクリュー40の溝形成面42に対向するスクリュー対向面52を有している。バレル50には、スクリュー対向面52の中央に開口部を有し、Z方向に沿ってバレル50を貫通する流路56と、流路56に交差するようにY方向に沿って延びる交差穴57とが設けられている。流路56は、ノズル開口69に連通し、その内部に造形材料が流れる。流路56のことを、貫通孔ともいう。バレル50の具体的な構成については後述する。
【0019】
バレル50には、フラットスクリュー40の溝部45に供給された材料を加熱するヒーター58が埋設されている。本実施形態では、4本の棒状のヒーター58がY方向に沿って配置されている。各ヒーター58は、スクリュー対向面52の下方に配置されている。各ヒーター58の温度は、制御部500によって制御される。
【0020】
バレル50には、ヒーター58よりも流路56から離れた位置に、冷媒が流れる冷媒配管59が埋設されている。冷媒配管59は、スクリュー対向面52の外周縁の近傍を通るように配置されている。冷媒配管59は、冷媒ポンプ103に接続されている。冷媒ポンプ103は、冷媒配管59に冷媒を供給する。冷媒ポンプ103は、制御部500の制御下で駆動される。冷媒として、例えば、水や油等の液体や、二酸化炭素等の気体を用いることができる。冷媒配管59に冷媒が流れることによって、フラットスクリュー40やバレル50の温度が高くなりすぎることを抑制できる。尚、冷媒配管59と冷媒ポンプ103のことを冷却部と呼ぶこともある。
【0021】
吐出調整部70は、流路56に設けられている。吐出調整部70は、流路56の開口面積を調整することによってノズル開口69からの造形材料の吐出量を調整する。吐出調整部70は、バタフライバルブ75と、バタフライバルブ75を回転させる弁駆動部101とを備えている。バタフライバルブ75は、流路56内で回転することによって、ノズル61に供給される造形材料の流量を調節する。弁駆動部101は、ステッピングモーター等のアクチュエーターによって構成されており、制御部500の制御下でバタフライバルブ75を回転させる。バレル50に形成された造形材料の流路56のうち、バタフライバルブ75よりもスクリュー対向面52に近い部分のことを第1流路151と呼び、バタフライバルブ75よりもスクリュー対向面52から離れた部分のことを第2流路152と呼ぶ。以下において、第1流路151と第2流路152とを区別なく呼ぶときは、単に、流路56と呼ぶ。吐出調整部70の具体的な構成については後述する。
【0022】
圧力センサー80は、第1流路151に設けられている。圧力センサー80は、第1流路151内の造形材料の圧力を測定する。圧力センサー80によって測定された造形材料の圧力の値は、制御部500に送信される。
【0023】
吸引送出部90は、第2流路152に接続されている。吸引送出部90は、第2流路152から造形材料を吸引し、吸引した造形材料を第2流路152に対して送出する。吸引送出部90の具体的な構成については後述する。
【0024】
ノズル61は、バレル50の下面に接続されている。ノズル61には、ノズル流路68と、ノズル開口69とが設けられている。ノズル流路68は、ノズル61内に設けられた流路である。ノズル流路68は、第2流路152に接続されている。ノズル開口69は、ノズル流路68の大気に連通する側の端部に設けられた流路断面が縮小された部分である。第2流路152からノズル流路68に流入した造形材料は、ノズル開口69から吐出される。ノズル開口69から吐出される造形材料の流量は、吐出調整部70によって調節される。ノズル61から吐出される造形材料の流量のことを吐出量とも呼ぶ。
【0025】
ノズル61には、板状の上部ヒーター60が取り付けられている。上部ヒーター60は、ノズル開口69よりも上方に配置されている。上部ヒーター60は、ステージ300の造形面310に向けて吐出された造形材料を加熱する。より具体的には、上部ヒーター60は、ノズル開口69から造形材料が吐出されることによってステージ300の造形面310上に積層された層のうちの上部の層を加熱する。上部の層を上部ヒーター60によって加熱することで、層間の密着度を高めることができる。上部ヒーター60による加熱温度は、制御部500によって制御される。本実施形態では、ユーザーが指定した加熱温度となるように、制御部500によって上部ヒーター60が制御される。尚、上部ヒーター60のことを、加熱部ともいう。図1以降の図面では、上部ヒーター60の図示を省略している。
【0026】
図2は、フラットスクリュー40の構成を示す概略斜視図である。図2には、フラットスクリュー40の中心軸RXの位置が一点鎖線で示されている。図1を参照して説明したように、溝形成面42には、溝部45が設けられている。
【0027】
フラットスクリュー40の溝形成面42の中央部47は、溝部45の一端が接続されている窪みとして構成されている。中央部47は、図1に示されているバレル50の流路56に対向する。中央部47は、中心軸RXと交差する。
【0028】
フラットスクリュー40の溝部45は、いわゆるスクロール溝を構成する。溝部45は、中央部47から、フラットスクリュー40の外周に向かって渦状に延びている。溝部45は、渦状に限らず、螺旋状あるいはインボリュート曲線状であってもよいし、中央部から外周に向かって弧を描くように延びる形状であってもよい。溝形成面42には、溝部45の側壁部を構成し、各溝部45に沿って延びている凸条部46が設けられている。
【0029】
溝部45は、フラットスクリュー40の側面43に形成された材料導入口44まで連続している。この材料導入口44は、材料供給部20の供給路22を介して供給された材料を受け入れる部分である。
【0030】
図2には、3つの溝部45と、3つの凸条部46と、を有するフラットスクリュー40の例が示されている。フラットスクリュー40に設けられる溝部45や凸条部46の数は、3つには限定されない。フラットスクリュー40には、1つの溝部45のみが設けられていてもよいし、2以上の複数の溝部45が設けられていてもよい。また、溝部45の数に合わせて任意の数の凸条部46が設けられてもよい。
【0031】
図2には、材料導入口44が3箇所に形成されているフラットスクリュー40の例が図示されている。フラットスクリュー40に設けられる材料導入口44の数は、3箇所に限定されない。フラットスクリュー40には、材料導入口44が1箇所にのみ設けられていてもよいし、2箇所以上の複数の箇所に設けられていてもよい。
【0032】
図3は、バレル50の構成を示す上面図である。上述したとおり、スクリュー対向面52の中央には、ノズル61に連通する流路56が形成されている。スクリュー対向面52における流路56の周りには、複数の案内溝54が形成されている。それぞれの案内溝54は、一端が流路56に接続され、流路56からスクリュー対向面52の外周に向かって渦状に延びている。それぞれの案内溝54は、造形材料を流路56に導く機能を有している。尚、案内溝54の一端は、流路56に接続されていなくてもよい。また、案内溝54は省略することも可能である。
【0033】
図4は、本実施形態における吐出調整部70の構成を示す斜視図である。図5は、本実施形態における吐出調整部70及び吸引送出部90の構成を示す説明図である。吐出調整部70は、交差穴57内に配置される円柱状の駆動軸73を有している。駆動軸73は、中心軸AX1を中心として回転可能である。駆動軸73の一部、具体的には、駆動軸73のうちの流路56内に位置する部分には、バタフライバルブ75が形成されている。バタフライバルブ75は、駆動軸73の一部が凹状に加工されることにより形成されている。バタフライバルブ75は、流路56内において回転可能に配される。駆動軸73は、バタフライバルブ75の位置が、駆動軸73と流路56とが交わる位置になるように、備えられている。バタフライバルブ75は、第1流路151と第2流路152との間に配置される。駆動軸73の-Y方向側の端部には、カップリング部77が設けられている。カップリング部77には、弁駆動部101が接続されている。弁駆動部101によるトルクがカップリング部77に加えられることによって、駆動軸73に形成されたバタフライバルブ75が回転する。バタフライバルブ75の形状は、流路56内で回転することによって流路56の開口面積を調整するものであればよく、例えば、板形状、又は、半球の形状であってもよい。バタフライバルブ75は、単にバルブとも呼ばれる。
【0034】
図6は、吐出調整部70のバタフライバルブ75の動作を示す第1の説明図である。図7は、吐出調整部70のバタフライバルブ75の動作を示す第2の説明図である。図6に示すように、バタフライバルブ75を形成する凹状部分の開放部が上方に位置するようにバタフライバルブ75が回転すると、第2流路152の開口部がバタフライバルブ75によって閉塞されて、第1流路151から第2流路152への造形材料の流入が遮断される。一方、図7に示すようにバタフライバルブ75の凹状部分が-X方向あるいは+X方向を向くようにバタフライバルブ75が回転すると、第1流路151と第2流路152との間が連通し、第1流路151から第2流路152に最大の流量で造形材料が流入する。バタフライバルブ75は、Y方向に沿った中心軸AX1を中心として回転して凹状部分の位置を変更することによって、第1流路151と第2流路152との間の流路断面積を変更して第1流路151から第2流路152に流入する造形材料の流量を調節する。尚、吐出調整部70は、バルブとして上述したバタフライバルブ75を備えた形態ではなく、例えば、ゲートバルブ、グローブバルブ、ボールバルブを備える形態でもよい。
【0035】
図5に示すように、本実施形態における吸引送出部90は、バレル50に埋設された円筒状のシリンダー92と、シリンダー92内に収容された円柱状のプランジャー93と、プランジャー93をシリンダー92内で移動させるプランジャー駆動部102とを備えている。シリンダー92は、第2流路152に接続されている。プランジャー駆動部102は、制御部500の制御下で駆動されるステッピングモーターと、ステッピングモーターの回転をシリンダー92の中心軸AX2に沿った並進運動に変換するラックアンドピニオン機構によって構成されている。尚、プランジャー駆動部102は、制御部500の制御下で駆動されるステッピングモーターと、ステッピングモーターの回転をシリンダー92の中心軸AX2に沿った並進運動に変換するボール螺子機構によって構成されてもよいし、ソレノイド機構やピエゾ素子等のアクチュエーターによって構成されてもよい。
【0036】
図8は、吸引送出部90のプランジャー93の動作を示す説明図である。プランジャー93が第2流路152から遠ざかる方向に移動した場合には、シリンダー92内に負圧が生じるため、図8に矢印で表されたように、第2流路152内の造形材料がシリンダー92内に引き込まれる。第2流路152内の造形材料がシリンダー92内に引き込まれることによって、ノズル61内の造形材料は、第2流路152内に引き込まれる。そのため、ノズル開口69からの造形材料の吐出を停止する際に、第2流路152内の造形材料をシリンダー92内に吸引することによって、ノズル開口69から吐出された造形材料の尾切りを行うことができる。一方、プランジャー93が第2流路152に近付く方向に移動した場合には、シリンダー92内の造形材料は、プランジャー93によって第2流路152内に押し出される。そのため、ノズル開口69からの造形材料の吐出を再開する際に、シリンダー92内の造形材料を第2流路152内へと押し出すことによって、ノズル開口69からの造形材料の吐出の応答性を高めることができる。尚、シリンダー92内から造形材料が押し出される方向にプランジャー93を移動させることを、プランジャー93を前進させる、或いは、押すと呼ぶこともある。シリンダー92内に造形材料が引き込まれる方向にプランジャー93を移動させることを、プランジャー93を後退させる、或いは、引くと呼ぶこともある。
【0037】
本実施形態では、吸引送出部90は振動付与部としても機能する。後述する三次元造形処理において、制御部500は、三次元造形物の外郭領域の造形時に、吸引送出部90を制御して、プランジャー93の位置を連続的又は段階的に変化させることで、流路56内の造形材料に振動を付与する。例えば、制御部500は、プランジャーの前進及び後退を交互に繰り返すことで、造形材料に振動を付与することができる。これにより、ノズル開口69から吐出される造形材料の線幅が連続的に変化し、例えば、三次元造形物の外郭領域にローレット状あるいはリブレット状の規則的な模様を形成できる。振動の態様は、前進と後退とを交互に繰り替えることに限らない。例えば、造形する模様に応じて、前進を複数回行った後に、後退を複数回行ってもよい。また、その他、2回前進、1回後退、2回前進、3回後退、のようなパターンを繰り返し実行してもよい。また、前進と停止、或いは、後退と停止、を繰り返すことにより、段階的にプランジャー93の位置を変化させることで振動を付与してもよい。
【0038】
図9は、三次元造形処理のフローチャートである。この処理は、三次元造形装置100に設けられた操作パネルや、三次元造形装置100に接続されたコンピューターに対して、所定の開始操作がユーザーによって行われた場合に、制御部500によって実行される。制御部500によって三次元造形処理が実行されることにより、三次元造形物の製造方法が実現される。
【0039】
制御部500は、ステップS110にて、三次元造形物を造形するための造形データを取得する。造形データとは、ステージ300に対するノズル61の移動経路や、ノズル61から吐出される造形材料の量、フラットスクリュー40を回転させる駆動モーター36の目標回転数、バレル50に内蔵されたヒーター58の目標温度、等に関する情報が表されたデータである。造形データは、例えば、三次元造形装置100に接続されたコンピューターにインストールされたスライサーソフトによって生成される。スライサーソフトは、三次元CADソフトや三次元CGソフトを用いて作成された三次元造形物の形状を表す形状データを読み込み、三次元造形物の形状を所定の厚みの層に分割して、造形データを生成する。スライサーソフトに読み込まれる形状データには、STL形式やAMF形式等のデータが用いられる。スライサーソフトによって作成された造形データは、GコードやMコード等によって表されている。制御部500は、三次元造形装置100に接続されたコンピューターや、USBメモリー等の記録媒体から造形データを取得する。
【0040】
ステップS120にて、制御部500は、造形材料の生成を開始する。制御部500は、フラットスクリュー40の回転、及び、バレル50に内蔵されたヒーター58の温度を制御することによって、材料を可塑化させて造形材料を生成する。フラットスクリュー40の回転によって、材料供給部20から供給された材料が、フラットスクリュー40の材料導入口44から溝部45内に導入される。溝部45内に導入された材料は、溝部45に沿って中央部47へと搬送される。溝部45内を搬送される材料は、フラットスクリュー40とバレル50との相対的な回転によるせん断、及び、ヒーター58による加熱によって、その少なくとも一部が可塑化されて、流動性を有するペースト状の造形材料になる。中央部47に集められた造形材料は、中央部47で生じる内圧によって第1流路151に供給される。尚、造形材料は、三次元造形処理が行われる間、生成され続ける。材料を可塑化して造形材料を生成する工程のことを、第1工程ともいう。
【0041】
ステップS120にて造形材料の生成が開始された後、制御部500は、ステップS125にて、第1流路151内の造形材料の圧力を安定化させる圧力調節処理の実行を開始する。圧力調節処理は、フラットスクリュー40が回転して、造形材料が生成されている間、造形処理と並行して実行される。圧力調節処理の具体的な内容については後述する。
【0042】
ステップS130にて、制御部500は、三次元造形物の造形を開始する。制御部500は、造形データに従って、移動機構400を制御して、ノズル開口69とステージ300との相対的な位置を変化させつつ、ノズル開口69からステージ300に向かって造形材料を吐出することによって、三次元造形物を造形する。三次元造形物の造形にあたり、制御部500は、弁駆動部101を制御してバタフライバルブ75を回転させることによって、第1流路151と第2流路152との間を連通させる。第1流路151と第2流路152との間が連通することによって、ノズル開口69からの造形材料の吐出が開始される。ノズル61に設けられたノズル開口69から造形材料をステージ300に向けて吐出することによって、三次元造形物を造形する工程のことを、第2工程ともいう。
【0043】
図10は、三次元造形物OBが造形される様子を模式的に示す説明図である。制御部500は、ステージ300の造形面310とノズル61との距離を保持したまま、ステージ300の造形面310に沿った方向に、ステージ300に対するノズル61の位置を変えながら、ノズル61から可塑化材料を吐出させる。ノズル61から吐出された可塑化材料は、ノズル61の移動方向に連続して堆積されていく。
【0044】
制御部500は、ノズル61の移動を繰り返して層Lを形成する。制御部500は、1つの層Lを形成した後、ステージ300に対するノズル61の位置を、Z方向に相対移動させる。そして、これまでに形成された層Lの上に、更に層Lを積み重ねることによって造形物を造形していく。
【0045】
各層Lは、外郭領域AR1と内部領域AR2とによって構成される。外郭領域AR1は、三次元造形物の外観に影響を与える領域である。内部領域AR2は、外郭領域AR1に囲われた領域である。内部領域AR2のことを、インフィル領域ともいう。本実施形態において、制御部500は、各層Lの造形にあたり、外郭領域AR1を造形した後に、その内側に位置する内部領域AR2を造形する。
【0046】
図9のステップS140において、制御部500は、現在造形中の三次元造形物の造形箇所が、外郭領域AR1か内部領域AR2かを判断する。そして、制御部500は、外郭領域AR1を形成していると判断した場合に、吸引送出部90を制御して、流路56中の造形材料に振動を付与する。
【0047】
図11は、外郭領域を造形するためのノズル61の移動経路の一部を示す図である。図11には、円柱状の三次元造形物の外郭領域AR1を造形するためのノズル61の移動経路の一部のX-Y座標を示している。本実施形態では、制御部500は、各層Lの外郭領域AR1を、最外周とその内側1周の2周分の経路によって造形する。外郭領域AR1を造形するための周数は、任意に設定可能である。各経路は、直線状の複数の部分的な経路が連続して接続されることで構成される。制御部500は、外郭領域AR1を造形するための各周の造形時に、造形材料に振動を付与する。制御部500は、造形材料に振動を付与しつつ、最外周の内側の周を先に造形し、その後に最外周を造形してもよい。こうすることにより、三次元造形物の外表面に形成される模様を際立たせることができる。尚、他の実施形態では、最外周の造形時のみに造形材料に振動を付与し、その内側の周の造形時には、造形材料に振動を付与しなくてもよい。
【0048】
図9のステップS150にて、制御部500は、ノズル開口69からの造形材料の吐出を停止するか否かを判定する。制御部500は、造形データを用いて、ノズル開口69からの造形材料の吐出を停止するか否かを判断する。例えば、現在造形を行っている領域から、同一の層Lの離れた領域にノズル61の目標位置が設定されている場合、或いは、新たな層Lの造形のためにノズル61をステージ300に対してZ方向に移動させる場合に、制御部500は、ノズル61からの造形材料の吐出を停止すると判断する。ステップS150において、ノズル61から造形材料の吐出を停止すると判断されなかった場合、制御部500は、ステップS140に処理を戻して、三次元造形物の造形を継続する。
【0049】
ステップS150にてノズル61からの造形材料の吐出を停止すると判断された場合、制御部500は、ステップS160にて、弁駆動部101を制御してバタフライバルブ75を回転させ、流路56の開口面積をゼロにすることによって、第1流路151から第2流路152への造形材料の流入を遮断する。第1流路151から第2流路152への造形材料の流入が遮断されることによって、ノズル61からの造形材料の吐出が停止される。ノズル61からの造形材料の吐出を停止する際に、制御部500は、ステップS165にて、プランジャー駆動部102を制御してプランジャー93を後退させることによって、第2流路152内の造形材料をシリンダー92内に吸引する。そのため、ノズル開口69からの造形材料の吐出が速やかに停止される。ノズル開口69からの造形材料の吐出が停止されている間、三次元造形物の造形は停止される。
【0050】
上記ステップS150において、外郭領域AR1の造形中に造形材料の吐出を停止すると判断された場合、すなわち、造形材料に振動を付与している期間中にノズル61からの造形材料の吐出を停止する場合、制御部500は、ステップS165において、吸引送出部90を制御して、シリンダー92内に造形材料を吸引する動作を行いながら、造形材料に振動を付与する。制御部500は、プランジャー93を前後方向に振動させつつ、プランジャー93を後退させることで、造形材料の吸引と造形材料に対する振動の付与とを同時に行う。
【0051】
ステップS170にて、制御部500は、ノズル61からの造形材料の吐出を再開するか否かを判定する。ステップS170にてノズル61からの造形材料の吐出を再開すると判断された場合、制御部500は、ステップS180にて、弁駆動部101を制御してバタフライバルブ75を回転させ、流路56の開口面積を大きくすることによって、第1流路151と第2流路152との間を連通させて、流路56に造形材料を流通させる。そして、その後、制御部500は、ステップS185にて、プランジャー駆動部102を制御してプランジャー93を前進させることによって、シリンダー92内の造形材料を第2流路152内へ送出する。こうすることで、ノズル開口69からの造形材料の吐出が速やかに再開される。その後、制御部500は、ステップS140に処理を戻して、三次元造形物の造形を再開する。
【0052】
上記ステップS170において、造形材料の吐出が停止されている状態から外郭領域AR1において造形材料の吐出を再開すると判断された場合、制御部500は、ステップS185において、吸引送出部90を制御して、シリンダー92から流路56に造形材料を送出する動作を行いながら、造形材料に振動を付与する。制御部500は、プランジャー93を前後方向に振動させつつ、プランジャー93を前進させることで、シリンダー92内の造形材料の送出と、流路56の造形材料に対する振動の付与とを同時に行う。
【0053】
図12は、シリンダー92から流路56に造形材料を送出する動作を行いながら、造形材料に振動を付与した実験の結果を示す図である。図12には、シリンダー92内でプランジャー93を段階的に前進させて、造形材料を振動させた場合おける、シリンダー92内の圧力変化を示している。図12に示した例では、圧力が連続的に上下に変化しつつ徐々に上昇している。そのため、プランジャー93を振動させつつ前進させることで、シリンダー92内の造形材料を送出しつつ、造形材料に対して振動を付与することができる。
【0054】
図9のステップS170にてノズル61からの造形材料の吐出を再開すると判断されなかった場合、制御部500は、ステップS190にて、三次元造形物の造形を終了するか否かを判定する。制御部500は、三次元造形物を構成する全ての層Lの造形が完了した場合に、三次元造形物の造形を終了すると判断する。ステップS190にて三次元造形物の造形を終了すると判断されなかった場合、制御部500は、ステップS170に処理を戻して、ノズル61からの造形材料の吐出を再開するか否かを再度判定する。一方、ステップS190にて三次元造形物の造形を終了すると判断された場合、制御部500は、三次元造形処理を終了する。
【0055】
図13は、図9に示した三次元造形処理のステップS125で開始される圧力調節処理のフローチャートである。
【0056】
ステップS205にて、制御部500は、三次元造形物OBの造形に用いられる材料の種類と、収集時間Tと、目標圧力値Pbと、圧力許容差ΔPとを、圧力調節条件として設定する。収集時間Tとは、圧力センサー80によって第1流路151内の造形材料の圧力の値を収集するための時間のことを意味する。目標圧力値Pbとは、第1流路151内の造形材料の圧力の目標値のことを意味する。圧力許容差ΔPとは、第1流路151内の造形材料の圧力の、目標圧力値Pbからのずれの許容範囲のことを意味する。本実施形態では、ユーザーが三次元造形装置100に接続されたコンピューターを用いて、材料の種類と、収集時間Tと、目標圧力値Pbと、圧力許容差ΔPとを予め指定することによって、材料の種類と、収集時間Tと、目標圧力値Pbと、圧力許容差ΔPとが造形データに表されている。制御部500は、三次元造形装置100に接続されたコンピューターから造形データを取得することによって、材料の種類と、収集時間Tと、目標圧力値Pbと、圧力許容差ΔPとを取得する。
【0057】
ステップS210にて、制御部500は、バタフライバルブ75が開いているか否かを判定する。制御部500は、例えば、造形データに規定された吐出量を表す情報を用いて、バタフライバルブ75が開いているか否かを判断できる。ステップS210にてバタフライバルブ75が開いていると判断されなかった場合、制御部500は、ステップS255に処理を進めて、圧力調節処理を終了するか否かを判定する。本実施形態では、制御部500は、フラットスクリュー40の回転を停止させる指令があった場合に、圧力調節処理を終了すると判断する。圧力調節処理を終了すると判断された場合、制御部500は、圧力調節処理を終了する。一方、圧力調節処理を終了すると判断されなかった場合には、制御部500は、ステップS210に処理を戻して、再度、バタフライバルブ75が開いているか否かを判定する。
【0058】
ステップS210にてバタフライバルブ75が開いていると判断された場合、制御部500は、ステップS215にて、圧力センサー80を用いて、第1流路151内の造形材料の圧力の値である圧力値Pを取得する。取得された圧力値Pは、制御部500の記憶装置に記憶される。その後、ステップS220にて、制御部500は、圧力値Pの取得を開始してからの時間tが収集時間T以上になったか否かを判定する。ステップS220にて時間tが収集時間T以上になったと判断されなかった場合、制御部500は、ステップS220にて時間tが収集時間T以上になったと判断されるまでステップS210からステップS220までの処理を繰り返して、予め設定された時間間隔で複数の圧力値Pのサンプルを取得する。この時間間隔は、例えば、1秒間に設定される。収集時間Tは、例えば、10秒間に設定される。この場合、制御部500は、1秒間に1回の頻度で10秒間、圧力値Pのサンプルを取得する。つまり、制御部500は、収集時間T内に、10個の圧力値Pのサンプルを取得する。尚、制御部500は、ステップS210にて、時間tが収集時間T以上になったか否かではなく、所定個数の圧力値Pのサンプルが取得されたか否かを判定してもよい。
【0059】
ステップS220にて時間tが収集時間T以上になったと判断された場合、制御部500は、ステップS225にて、収集時間T内に取得した複数の圧力値Pの平均値を算出する。本実施形態では、制御部500は、1番目に取得した圧力値Pからn番目に取得した圧力値Pまでの合計値である合計圧力値ΣPと、収集時間T内に取得した圧力値Pのサンプル個数Nとを用いて、下式(1)で表される平均圧力値Paveを算出する。
【0060】
Pave=ΣP/N ・・・(1)
【0061】
本実施形態では、ステップS225にて、制御部500は、取得した複数の圧力値Pの移動平均を算出することによって、平均圧力値Paveを算出する。例えば、制御部500は、1番目の圧力値Pからn番目の圧力値Pまでを取得した場合には、PからPまでの合計値(P+P+P+・・・+P)をPからPまでのサンプル個数Nで割ることによって平均圧力値Paveを算出する。その後、制御部500は、n+1番目の圧力値Pn+1を取得した場合には、2番目の圧力値Pからn+1番目の圧力値Pn+1までの合計値(P+P+P+・・・+P+Pn+1)をサンプル個数Nで割ることによって平均圧力値Paveを算出する。
【0062】
ステップS230にて、制御部500は、平均圧力値Paveが所定の許容範囲内であるか否かを判定する。制御部500は、平均圧力値Paveが目標圧力値Pbに圧力許容差ΔPを足し合わせた第1閾値以下であり、かつ、平均圧力値Paveが目標圧力値Pbから圧力許容差ΔPを差し引いた第2閾値以上である場合には、平均圧力値Paveが許容範囲内であると判断する。ステップS230にて平均圧力値Paveが許容範囲内であると判断された場合、制御部500は、ステップS255に処理を進めて、圧力調節処理を終了するか否かを判定する。一方、ステップS230にて平均圧力値Paveが許容範囲内であると判断されなかった場合、制御部500は、ステップS235にて、平均圧力値Paveと目標圧力値Pbとを用いて、下式(2)で表される圧力差Pdを算出する。
【0063】
Pd=Pave-Pb ・・・(2)
【0064】
ステップS240にて、制御部500は、圧力差Pdが正の値であるか否かを判定する。ステップS240にて圧力差Pdが正の値であると判断された場合、換言すれば、平均圧力値Paveが目標圧力値Pbよりも大きな値であると判断された場合、制御部500は、ステップS245にて、圧力差Pdが0に近付くように、フラットスクリュー40の回転数を遅くする。フラットスクリュー40の回転数のことをスクリュー回転数と呼ぶ。回転数とは、単位時間当たりに物体が回転する回数のことを意味する。本実施形態では、制御部500は、ステップS240にて、スクリュー回転数と圧力との関係が表されたテーブルを参照することによって、スクリュー回転数の補正値を算出し、現状のスクリュー回転数から補正値を差し引いた新たなスクリュー回転数を算出する。スクリュー回転数と圧力との関係が表されたテーブルは、予め行われる実験やシミュレーションによって設定できる。制御部500は、新たなスクリュー回転数となるように駆動モーター36を制御することによって、スクリュー回転数を遅くする。尚、制御部500は、テーブルを参照するのではなく、予め設定された関数を用いて新たなスクリュー回転数を算出してもよい。
【0065】
ステップS240にて圧力差Pdが正の値であると判断されなかった場合、換言すれば、平均圧力値Paveが目標圧力値Pbよりも小さな値であると判断された場合、制御部500は、ステップS250にて、圧力差Pdが0に近付くように、フラットスクリュー40の回転数を速くする。本実施形態では、制御部500は、ステップS245にて、スクリュー回転数と圧力との関係が表されたテーブルを参照することによって、スクリュー回転数の補正値を算出し、現状のスクリュー回転数に補正値を足し合わせた新たなスクリュー回転数を算出する。制御部500は、新たなスクリュー回転数となるように駆動モーター36を制御することによって、スクリュー回転数を速くする。
【0066】
吐出調整部70によってノズル61からの造形材料の吐出が停止されていない期間に制御部500によって行われる制御のことを第1制御と呼ぶこともあり、吐出調整部70によってノズル61からの造形材料の吐出が停止されている期間に制御部500によって行われる制御のことを第2制御と呼ぶこともある。本実施形態では、第1制御におけるフラットスクリュー40の回転の調節度合いよりも、第2制御におけるフラットスクリュー40の回転の調節度合いの方が小さい。フラットスクリュー40の回転の調節度合いとは、調節によるフラットスクリュー40の回転数の変化の大きさのことを意味する。フラットスクリュー40の回転の調節度合いが小さいとは、調節によるフラットスクリュー40の回転数の変化が小さいことのみならず、フラットスクリュー40の回転が調節されないことをも意味する。
【0067】
ステップS255にて、制御部500は、圧力調節処理を終了するか否かを判定する。上記のように、本実施形態では、制御部500は、フラットスクリュー40の回転を停止させる指令があった場合に、圧力調節処理を終了すると判断する。ステップS255にて圧力調節処理を終了すると判断された場合、制御部500は、当該圧力調節処理を終了する。一方、ステップS255にて圧力調節処理を終了すると判断されなかった場合、制御部500は、ステップS210に処理を戻して、再度、ステップS210からの処理を繰り返す。その際に、上述したとおり、制御部500は、取得した複数の圧力値Pの移動平均を算出することによって、平均圧力値Paveを算出する。そのため、例えば、ステップS215にて、n+1番目の圧力値Pn+1を取得した場合には、ステップS225にて、2番目の圧力値Pからn+1番目の圧力値Pn+1までの合計値(P+P+P+・・・+P+Pn+1)をサンプル個数Nで割ることによって平均圧力値Paveを算出する。
【0068】
図14は、振動によって外郭領域AR1に模様を形成するのではなく、ノズル61の移動によって模様を形成する場合におけるノズル61の移動経路を示す図である。ノズル61の移動によって模様を形成する場合には、図14に示すように、模様の形状に合わせてノズル61の位置調整を細かく行う必要がある。そのため、模様部分の造形に時間がかかり、三次元造形物全体の造形が完了するまでの造形時間が長期化する可能性がある。また、模様部分を造形するための細かなノズル61の位置制御が必要となって、移動機構400に備えられたモーター等に負担がかかる。これに対して、上述した本実施形態の三次元造形装置100によれば、造形材料に振動を付与しながら三次元造形物の外郭領域を造形するので、ノズル61を細かく移動することなく模様を形成できる。そのため、外表面に模様を有する三次元造形物を、短時間に造形することができる。また、本実施形態によれば、模様部分を造形するためにノズル61の位置を細かく制御する必要がないので、移動機構400に備えられたモーター等に負担がかかることを抑制できる。
【0069】
また、本実施形態の三次元造形装置100は、振動付与部として、流路56に接続された吸引送出部90を利用し、吸引送出部90に備えられたプランジャー93の位置を連続的或いは段階的に変化させることで流路56内の造形材料に振動を付与する。そのため、振動を付与するための新たな装置を追加することなく、造形材料に振動を付与して、三次元造形物に模様を形成することができる。
【0070】
また、本実施形態では、制御部500は、造形材料に振動を付与している期間中にノズル61からの造形材料の吐出を停止する場合、吸引送出部90を制御してシリンダー92内に造形材料を吸引する動作を行いながら、振動を付与する。そのため、ノズル61からの吐出停止時に、模様の形成が途切れることを抑制できる。
【0071】
また、本実施形態では、制御部500は、造形材料の吐出が停止されている状態から再開する場合に、吸引送出部90を制御してシリンダー92から流路56に造形材料を送出する動作を行いながら、造形材料に振動を付与する。そのため、ノズル61からの造形材料の吐出を再開する際に、模様が形成されない可能性を低減できる。特に、本実施形態では、造形材料の吐出が停止されている状態から再開する場合、制御部500は、吐出調整部70を制御して、造形材料の流路56への流通を再開させた後に、吸引送出部90を制御して、シリンダー92から流路56への造形材料の送出を行って、造形材料の吐出を再開させる。そのため、ノズル61から造形材料の吐出を再開する際に、流路56内の造形材料に振動を付与しやすくなる。
【0072】
また、本実施形態では、制御部500は、圧力センサー80による造形材料の圧力の検出値が予め定められた範囲内に収まるようにフラットスクリュー40の回転を制御する圧力調節処理を実行し、その圧力調整津処理が実行されている間に、流路56内の造形材料に振動を付与しながら三次元造形物の外郭を造形する。そのため、流路56に供給される造形材料の圧力を安定させつつ振動を付与することができ、これにより、外郭領域に模様を精度よく形成できる。
【0073】
B.他の実施形態:
(B1)上記実施形態において、上部ヒーター60による加熱温度は、ユーザーが指定した温度となるように、制御部500によって制御される。これに対して、制御部500は、造形材料に振動を付与する場合と付与しない場合とで、異なる温度で、加熱するように上部ヒーター60を制御してもよい。
【0074】
振動を付与する場合に、振動を付与しない場合よりも温度を高めるか低めるかは、材料の種類に応じて決定することができる。例えば、PEEKなどの結晶性樹脂の場合、結晶化度を高めるためにゆっくりと温度を低下させることが好ましい場合がある。そのため、例えば、材料が結晶性樹脂の場合には、振動を付与する場合の加熱温度を、振動を付与しない場合の加熱温度よりも高くする。これに対して、非晶性樹脂の場合、速やかに温度を低下させることにより、模様の形状を早期に固定できる。そのため、例えば、材料が非晶性樹脂の場合には、振動を付与する場合の加熱温度を、振動を付与しない場合の加熱温度よりも低くする。このように上部ヒーター60を制御することで、振動の付与によって形成された模様が三次元造形物から剥がれたり、形状が崩れたりすることを抑制できる。
【0075】
尚、造形中の三次元造形物を加熱する加熱部は、上部ヒーター60に限らず、例えば、ステージ300内に備えられてもよい。
【0076】
(B2)上記実施形態において、三次元造形装置100は、流路56内の造形材料に振動を付与する振動付与部として吸引送出部90を用いている。これに対して、三次元造形装置100は、振動付与部として、吐出調整部70を用いてもよい。例えば、制御部500は、吐出調整部70に備えられたバタフライバルブ75の回転を制御して、流路56の開口面積を連続的或いは段階的に変化させることで、流路56内の造形材料に振動を付与することができる。
【0077】
(B3)上記実施形態において、三次元造形装置100は、流路56内の造形材料に振動を付与する振動付与部として吸引送出部90を用いている。これに対して、三次元造形装置100は、振動付与部として、流路56の一部に、圧電素子やダイヤフラムを備えてもよい。制御部500は、圧電素子やダイヤフラムが振動するようにこれらに加える電圧や圧縮空気を制御することで、造形材料に振動を付与することができる。
【0078】
(B4)上記実施形態において、三次元造形装置100は、流路56内の造形材料に振動を付与する振動付与部として吸引送出部90を用いている。これに対して、三次元造形装置100は、振動付与部として、フラットスクリュー40を用いてもよい。例えば、制御部500は、フラットスクリュー40の回転速度を連続的又は段階的に変化させることで、流路56内の造形材料に振動を付与することが可能である。
【0079】
フラットスクリュー40の回転速度を変化させることにより造形材料に振動を付与する制御において、制御部500は、第1実施形態で説明した圧力調節処理を実行せず、以下に説明する波形生成処理を実行することで、造形材料の圧力の安定化と造形材料に対する振動の付与との両方を実現してもよい。
【0080】
以下、図15図18を用いて、波形生成処理について説明する。まず、制御部500は、三次元造形処理の実行に先立ち、バタフライバルブ75を開いた状態で、フラットスクリュー40を回転させて造形材料を生成し、圧力センサー80を用いて、生成された造形材料の圧力変化を測定する。図15は、測定された造形材料の圧力変化の例を示す図である。尚、制御部500は、造形材料の圧力変化とフラットスクリュー40の回転角度との関係を予め測定しておくことにより、フラットスクリュー40の回転角度を測定することによって造形材料の圧力変化を推定してもよい。
【0081】
続いて、制御部500は、測定された圧力変化を周波数解析し、その圧力変化を打ち消す逆位相の波形を生成する。図16は、圧力変化を打ち消す逆位相の波形の例を示す図である。制御部500は、こうして生成された逆位相の波形を制御部500内の記憶装置に記憶させる。更に、制御部500は、造形材料に振動を付与するための波形を生成し、記憶装置に記憶させる。図17は、振動を付与するための波形の例を示す図である。
【0082】
制御部500は、図16に示した逆位相波形と、図17に示した振動波形とを合成し、フラットスクリュー40の回転を制御するための制御波形を生成する。図18は、こうして生成された制御波形の例を示す図である。尚、図16図18に示した波形は、制御部500ではなく、三次元造形装置100と通信可能な他のコンピューターによって生成されてもよい。
【0083】
制御部500は、図9に示した三次元造形処理のステップS120以降において、フラットスクリュー40の回転の加減速を、図16に示した逆位相波形に基づいて制御する。こうすることで、フラットスクリュー40の回転に伴って生じる造形材料の圧力変化を打ち消すことができる。また、制御部500は、ステップS125の処理をスキップする。制御部500は、ステップS140において、外郭領域AR1の造形時において、フラットスクリュー40の回転の加減速を、図18に示した制御波形に基づいて制御することで、外郭領域AR1に模様を付与する。
【0084】
以上で説明したように、図16に示した逆位相波形、及び、図18に示した制御波形を用いることにより、三次元造形装置100は、フラットスクリュー40の回転を制御することで、造形材料の圧力変化を抑制しつつ振動を付与することができる。この結果、三次元造形物に形成される模様を精度よく形成することが可能になる。
【0085】
尚、造形材料に対する振動の付与は、吸引送出部90による振動の付与、吐出調整部70による振動の付与、フラットスクリュー40の回転による振動の付与、うちの2以上を組み合わせて行ってもよい。
【0086】
(B5)上述した実施形態では、図9のステップS140において、制御部500は、現在造形中の三次元造形物の造形箇所が、外郭領域AR1か内部領域AR2かを判断し、外郭領域AR1を形成していると判断した場合に、吸引送出部90を制御して、流路中の造形材料に振動を付与している。これに対して、制御部500は、造形データを解析し、スライサーソフトによって記録された振動付与コマンドが対応付けられている移動経路の造形時に振動を付与してもよい。例えば、振動付与コマンドは、外郭領域AR1の全てではなく、一部の移動経路に対応付けられてもよい。こうすることで、外郭領域AR1のうちの一部の領域に対して、模様を形成できる。
【0087】
(B6)上述した実施形態の三次元造形装置100において、可塑化部30は、端面に溝形成面42を有するフラットスクリュー40と、端面にスクリュー対向面52を有するバレル50とを備えている。これに対して、可塑化部30は、長尺な軸状の外形を有し、軸の側面に螺旋状の溝が形成されたインラインスクリューと、円筒状のスクリュー対向面を有するバレルとを備えてもよい。
【0088】
(B7)上述した実施形態の三次元造形装置100において、圧力センサー80は、第2流路152に設けられてもよい。この場合、制御部500は、圧力センサー80によって測定した第2流路152内の造形材料の圧力を用いてフラットスクリュー40の回転数を調節してもよい。
【0089】
(B8)上述した実施形態では、図9に示した三次元造形処理のステップS165及びステップS185において、制御部500は、外郭領域AR1の造形時における吐出停止時、あるいは、外郭領域AR1における吐出再開時において、造形材料に振動を付与している。これに対して、外郭領域AR1の造形時における吐出停止時、及び、外郭領域AR1における吐出再開時の両方又は一方において、制御部500は、造形材料に振動を付与しなくてもよい。
【0090】
(B9)上述した実施形態では、図9に示した三次元造形処理のステップS125において、圧力調節処理を開始している。これに対して、圧力調節処理の実行は必須ではなく、ステップS125の処理は省略してもよい。
【0091】
C.他の形態:
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、以下に記載する各形態中の技術的特徴に対応する実施形態の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0092】
(1)本開示の第1の形態によれば、三次元造形装置が提供される。この三次元造形装置は、材料を可塑化して造形材料を生成する可塑化部と、ノズル開口を有し、前記造形材料をステージに向けて吐出するノズルと、前記ノズル開口に連通し前記造形材料が流れる流路に設けられ、前記流路内の前記造形材料に振動を付与する振動付与部と、前記可塑化部及び前記振動付与部を制御して三次元造形物を造形する制御部と、を備え、前記制御部は、前記振動付与部を制御して前記流路内の前記造形材料に前記振動を付与しながら前記三次元造形物の外郭領域の少なくとも一部を造形する。
このような形態によれば、造形材料に振動を付与しながら三次元造形物の外郭領域の少なくとも一部を造形するので、外表面に模様を有する三次元造形物を、短時間に造形することができる。また、模様部分を描画するためにノズルの位置を細かく制御する必要がないので、模様の形成のために装置の負担が増大することを抑制できる。
【0093】
(2)上記形態の三次元造形装置において、前記振動付与部は、前記流路に接続されたシリンダー及び前記シリンダー内を移動するプランジャーを備える吸引送出部を有し、前記制御部は、前記プランジャーの位置を連続的又は段階的に変化させることで前記流路内の前記造形材料に前記振動を付与してもよい。このような形態によれば、造形材料を吸引或いは送出するためのプランジャーを利用して造形材料に振動を付与できる。
【0094】
(3)上記形態の三次元造形装置において、前記制御部は、前記プランジャーの前進及び後退を含むパターンを繰り返すことで前記振動を付与してもよい。このような形態によれば、三次元造形物の外郭領域に規則的な模様を形成できる。
【0095】
(4)上記形態の三次元造形装置において、前記制御部は、前記振動を付与している期間中に前記ノズルからの前記造形材料の吐出を停止する場合、前記吸引送出部を制御して前記シリンダー内に前記造形材料を吸引する動作を行いながら、前記振動を付与してもよい。このような形態によれば、ノズルからの吐出停止時において、模様の形成が途切れることを抑制できる。
【0096】
(5)上記形態の三次元造形装置において、前記制御部は、前記造形材料の吐出が停止されている状態から前記外郭領域において前記造形材料の吐出を再開する場合、前記吸引送出部を制御して前記シリンダーから前記流路に前記造形材料を送出する動作を行いながら、前記振動を付与してもよい。このような形態によれば、ノズルからの造形材料の吐出を再開する際に、模様が形成されない可能性を低減できる。
【0097】
(6)上記形態の三次元造形装置において、前記流路に設けられ、前記流路の開口面積を調整することによって前記ノズル開口からの前記造形材料の吐出量を調整する吐出調整部を備え、前記制御部は、前記吐出調整部を制御して前記造形材料の前記流路への流通を再開させた後に、前記吸引送出部を制御して前記シリンダーから前記流路への前記造形材料の送出を行うことで、前記造形材料の吐出を再開してもよい。このような形態によれば、ノズルからの造形材料の吐出を再開する際に、流路内の造形材料に振動を付与しやすい。
【0098】
(7)上記形態の三次元造形装置において、前記流路内の圧力を検出する圧力センサーを備え、前記可塑化部は、前記材料を可塑化するためのスクリューを有し、前記制御部は、前記圧力センサーによる前記圧力の検出値が予め定められた範囲内に収まるように前記スクリューの回転を制御する圧力調節処理を実行し、前記制御部は、前記圧力調節処理の実行中に、前記振動付与部を制御して前記流路内の前記造形材料に前記振動を付与しながら前記三次元造形物の外郭の少なくとも一部を造形してもよい。このような形態によれば、造形材料の圧力を安定させることができるので、外郭領域に模様を精度よく形成できる。
【0099】
(8)上記形態の三次元造形装置において、造形中の前記三次元造形物を加熱する加熱部を備え、前記制御部は、前記造形材料に前記振動を付与する場合と付与しない場合とで、異なる温度で前記三次元造形物を加熱するように前記加熱部を制御してもよい。このような形態によれば、造形材料に振動を付与して形成する模様の強度を高めることが可能になる。
【0100】
(9)上記形態の三次元造形装置において、前記振動付与部は、前記流路の開口面積を調整することによって前記ノズル開口からの前記造形材料の吐出量を調整する吐出調整部を有し、前記制御部は、前記開口面積を連続的又は段階的に変化させることで前記流路内の前記造形材料に前記振動を付与してもよい。このような形態によれば、造形材料の吐出量を調整する吐出調整部を利用して造形材料に振動を付与できる。
【0101】
(10)本開示の第2の形態によれば、三次元造形物の製造方法が提供される。この製造方法は、材料を可塑化して造形材料を生成する第1工程と、ノズルに設けられたノズル開口から前記造形材料をステージに向けて吐出することにより、三次元造形物を造形する第2工程と、を備え、前記第2工程は、前記ノズル開口に連通し前記造形材料が流れる流路に設けられ、前記流路内の前記造形材料に振動を付与する振動付与部を制御して、前記流路内の前記造形材料に前記振動を付与しながら前記三次元造形物の外郭領域の少なくとも一部を造形する工程を含む。
【0102】
本開示は、上述した三次元造形装置や三次元造形物の製造方法に限らず、三次元造形システムや、コンピュータープログラム、コンピュータープログラムをコンピューターが読み取り可能に記録した一時的でない有形な記録媒体など、種々の態様によって実現することが可能である。
【符号の説明】
【0103】
20…材料供給部、22…供給路、30…可塑化部、31…スクリューケース、35…駆動部、36…駆動モーター、40…フラットスクリュー、41…上面、42…溝形成面、43…側面、44…材料導入口、45…溝部、46…凸条部、47…中央部、50…バレル、52…スクリュー対向面、54…案内溝、56…流路、57…交差穴、58…ヒーター、59…冷媒配管、60…上部ヒーター、61…ノズル、68…ノズル流路、69…ノズル開口、70…吐出調整部、73…駆動軸、75…バタフライバルブ、77…カップリング部、80…圧力センサー、90…吸引送出部、92…シリンダー、93…プランジャー、100…三次元造形装置、101…弁駆動部、102…プランジャー駆動部、103…冷媒ポンプ、151…第1流路、152…第2流路、200…造形ユニット、300…ステージ、310…造形面、400…移動機構、500…制御部
図1
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