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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064474
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】液体噴射ヘッドおよび液体噴射装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20240507BHJP
   B41J 2/16 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
B41J2/14
B41J2/14 613
B41J2/16 503
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173083
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】山岸 健
(72)【発明者】
【氏名】北村 健一
【テーマコード(参考)】
2C057
【Fターム(参考)】
2C057AF93
2C057AG14
2C057AN01
2C057AP25
2C057AP90
(57)【要約】
【課題】信頼性を向上した液体噴射ヘッドおよび液体噴射装置を提供する。
【解決手段】複数の部材を積層方向に積層することで構成された液体噴射ヘッド1であって、液体を噴射する複数のヘッドチップ10と、前記複数のヘッドチップ10が固定され、前記複数のヘッドチップ10の夫々を露出する複数の露出開口部31を有する固定板30と、前記固定板30との間で前記複数のヘッドチップ10を保持するホルダー20と、を備え、前記ホルダー20は、前記複数のヘッドチップ10内の流路11と連通する流路212を有する第1部材21と、前記積層方向に見て前記第1部材21の外形よりも大きい第2部材22と、を有し、前記第1部材21は、線膨張係数が前記固定板30の線膨張係数と略等しい熱硬化性樹脂で構成されており、前記第2部材22は、線膨張係数が前記固定板30の線膨張係数よりも高い熱可塑性樹脂で構成されている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の部材を積層方向に積層することで構成された液体噴射ヘッドであって、
液体を噴射する複数のヘッドチップと、
前記複数のヘッドチップが固定され、前記複数のヘッドチップの夫々を露出する複数の露出開口部を有する固定板と、
前記固定板との間で前記複数のヘッドチップを保持するホルダーと、
を備え、
前記ホルダーは、
前記複数のヘッドチップ内の流路と連通する流路を有する第1部材と、
前記積層方向に見て前記第1部材の外形よりも大きい第2部材と、を有し、
前記第1部材は、線膨張係数が前記固定板の線膨張係数と略等しい熱硬化性樹脂で構成されており、
前記第2部材は、線膨張係数が前記固定板の線膨張係数よりも高い熱可塑性樹脂で構成されている、
ことを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項2】
前記ヘッドチップの前記流路と前記第1部材の前記流路とは、熱硬化型の接着剤である第1接着剤によって液密に接続される、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項3】
前記積層方向に見て前記第1接着剤を囲むようにして配置された、常温硬化型の接着剤である第2接着剤を備え、
前記第2接着剤は、前記固定板と前記第1部材とを接着する、
ことを特徴とする請求項2に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項4】
前記第1接着剤と前記第2接着剤との間の隙間は、大気に連通している、
ことを特徴とする請求項3に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項5】
前記第1部材に締結される第3部材と、
熱可塑性樹脂で形成されたインサートナットと、を更に備え、
前記第1部材は、前記インサートナットを収容するための凹部を有し、
前記凹部に収容された前記インサートナットと前記第3部材との間に前記第1部材を挟んだ状態でタッピングネジを前記インサートナットに螺合させることで、前記第1部材と前記第3部材とが固定される、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項6】
前記積層方向に見て、前記凹部の内周面と前記インサートナットの外周面との少なくとも一部に形成された隙間に配置された接着剤によって、前記第1部材と前記インサートナットとが固定される、
ことを特徴とする請求項5に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項7】
前記インサートナットの外周面および前記第1部材の前記凹部の内周面の一方には、係合部が設けられ、
前記インサートナットの外周面および前記第1部材の前記凹部の内周面の他方には、前記係合部と係合することによって前記積層方向に沿う回転軸を中心に前記インサートナットが前記凹部に対して回転するのを規制する被係合部が設けられる、
ことを特徴とする請求項5に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項8】
前記第3部材に積層される流路部材を更に備え、
前記第3部材と前記第1部材とを固定する前記タッピングネジと同じ種類のタッピングネジを前記第3部材のネジ孔に螺合させることで、前記第3部材と前記流路部材とが固定される、
ことを特徴とする請求項5に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項9】
請求項1~8の何れか一項に記載の液体噴射ヘッドを具備する、
ことを特徴とする液体噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから液体を噴射する液体噴射ヘッドおよび液体噴射ヘッドを具備する液体噴射装置に関し、特に液体としてインクを噴射するインクジェット式記録ヘッドおよびインクジェット式記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、圧電アクチュエーターや発熱素子等の圧力発生手段によって液体に圧力変化を生じさせることで、ノズルから液体を噴射する液体噴射ヘッドが知られている。
【0003】
液体噴射ヘッドは、液体を噴射するヘッドチップ、ヘッドチップを保持するホルダー、および、ヘッドチップにインクを供給する流路部材などの複数の部材を積層することで構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-188887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように複数の部材を積層して構成された液体噴射ヘッドにおいて、信頼性の向上が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明の態様は、複数の部材を積層方向に積層することで構成された液体噴射ヘッドであって、液体を噴射する複数のヘッドチップと、前記複数のヘッドチップが固定され、前記複数のヘッドチップの夫々を露出する複数の露出開口部を有する固定板と、前記固定板との間で前記複数のヘッドチップを保持するホルダーと、を備え、前記ホルダーは、前記複数のヘッドチップ内の流路と連通する流路を有する第1部材と、前記積層方向に見て前記第1部材の外形よりも大きい第2部材と、を有し、前記第1部材は、線膨張係数が前記固定板の線膨張係数と略等しい熱硬化性樹脂で構成されており、前記第2部材は、線膨張係数が前記固定板の線膨張係数よりも高い熱可塑性樹脂で構成されている、ことを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
【0007】
また、本発明の他の態様は、上記態様に記載の液体噴射ヘッドを具備する、ことを特徴とする液体噴射装置にある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態の液体噴射ヘッドの分解斜視図である。
図2】一実施形態の液体噴射ヘッドの要部の分解斜視図である。
図3】一実施形態の液体噴射ヘッドの要部の分解斜視図である。
図4】一実施形態の液体噴射ヘッドの平面図である。
図5】一実施形態の液体噴射ヘッドの断面図である。
図6】一実施形態の液体噴射ヘッドの断面図である。
図7】一実施形態の液体噴射ヘッドの断面図である。
図8】一実施形態の液体噴射ヘッドの要部を拡大した断面図である。
図9】一実施形態の液体噴射ヘッドの組立工程を説明する図である。
図10】一実施形態の液体噴射ヘッドの組立工程を説明する図である。
図11】一実施形態の液体噴射ヘッドの組立工程を説明する図である。
図12】比較例の液体噴射ヘッドの組立工程を説明する図である。
図13】比較例の液体噴射ヘッドの組立工程を説明する図である。
図14】比較例の液体噴射ヘッドの組立工程を説明する図である。
図15】変形例1の液体噴射ヘッドの断面図である。
図16】変形例1の液体噴射ヘッドの断面図である。
図17】変形例1の液体噴射ヘッドの断面図である。
図18】変形例1の液体噴射ヘッドの断面図である。
図19】変形例2の液体噴射ヘッドの要部斜視図である。
図20】変形例2の液体噴射ヘッドの断面図である。
図21】変形例2の液体噴射ヘッドの断面図である。
図22】変形例3の液体噴射ヘッドの断面図である。
図23】変形例4の液体噴射ヘッドの要部平面図である。
図24】変形例4の液体噴射ヘッドの要部平面図である。
図25】他の実施形態の液体噴射装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。ただし、以下の説明は、本発明の一態様を示すものであって、本発明の範囲内で任意に変更可能である。各図において同じ符号を付したものは、同一の部材を示しており、適宜説明が省略されている。また、各図においてX、Y、Zは、互いに直交する3つの空間軸を表している。本明細書では、これらの軸に沿った方向をX方向、Y方向、及びZ方向とする。各図の矢印が向かう方向を正(+)方向、矢印の反対方向を負(-)方向として説明する。また、正方向及び負方向を限定しない3つの空間軸の方向については、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向として説明する。
【0010】
(実施形態)
図1は、本発明の一実施形態に係る液体噴射ヘッド1の分解斜視図である。図2および図3は、液体噴射ヘッド1の要部の分解斜視図である。図4は、液体噴射ヘッド1を-Z方向に見た平面図である。図5は、図4のA-A′線断面図である。図6は、図4のB-B′線断面図である。図7は、図6のC-C′線断面図である。図8は、図5の要部を拡大した図である。
【0011】
図示するように、本実施形態のインクジェット式記録ヘッドに代表される液体噴射ヘッド1は、複数、本実施形態では、4個のヘッドチップ10と、ホルダー20と、固定板30と、流路部材40と、中継基板50と、第1カバー60と、シール部材70と、フィルターユニット80と、第2カバー90と、の複数の部材を具備し、これら複数の部材が「積層方向」である+Z方向に積層して構成されている。
【0012】
ヘッドチップ10は、+Z方向の面に複数のノズルNが開口して設けられている。ヘッドチップ10には、複数のノズルNがX軸方向に沿って並設された列が、Y軸方向に2列設けられている。ヘッドチップ10の図示しない内部には、ノズルNに連通する第1流路11、第1流路11内のインクに圧力変化を生じさせる圧力発生手段と、が設けられている。圧力発生手段としては、例えば、電気機械変換機能を呈する圧電材料を有する圧電アクチュエーターの変形によって流路の容積を変化させて第1流路11内のインクに圧力変化を生じさせてノズルNからインク滴を吐出させるものを使用することができる。また、その他の圧力発生手段としては、流路内に発熱素子を配置して、発熱素子の発熱で発生するバブルによってノズルNからインク滴を吐出させるものや、振動板と電極との間に静電気力を発生させて、静電気力によって振動板を変形させてノズルNからインク滴を吐出させるいわゆる静電式アクチュエーターなどを使用することができる。なお、ヘッドチップ10のノズルNが開口する面をノズル面NSと称する。
【0013】
また、ヘッドチップ10の-Z方向を向く面には、内部の第1流路11が開口して設けられている。この第1流路11の開口は、ヘッドチップ10の-Z方向を向く平面に開口して設けられている。なお、第1流路11の開口は、-Z方向に突出する凸部の先端面に設けられていてもよい。
【0014】
さらにヘッドチップ10の-Z方向を向く面には、内部の圧力発生手段と電気的に接続された配線基板12が導出されている。配線基板12は、本実施形態では、フレキシブルフラットケーブルやフレキシブルプリント基板等のフレキシブル基板からなる。配線基板12は、+Z方向に見て、2つの第1流路11の開口のY軸方向の間に配置されている。また、配線基板12には、ヘッドチップ10の圧力発生手段を駆動するためのスイッチング素子を有する駆動IC等の駆動回路が実装されている。
【0015】
固定板30は、-Z方向を向く面に複数のヘッドチップ10が固定される板状部材からなる。固定板30は、各ヘッドチップ10のノズルNをヘッドチップ10毎に開口する複数の露出開口部31を有する。本実施形態では、固定板30に4個のヘッドチップ10が固定されるため、露出開口部31は、ヘッドチップ10と同じ数である4個設けられている。
【0016】
このような固定板30の-Z方向を向く面に、ヘッドチップ10の+Z方向を向く面が不図示の接着剤によって接着される。また、複数のヘッドチップ10は、ノズルN同士がX軸方向とY軸方向とで規定されるXY平面における相対位置が位置決めされた状態で、固定板30に接着される。
【0017】
固定板30は、例えば、ステンレス鋼等の金属、または、シリコン等のセラミックで形成される。
【0018】
なお、本実施形態では、固定板30を1枚の板状部材で構成したが、特にこれに限定されず、2枚以上の板状部材で構成されていてもよい。また、固定板30と詳しくは後述するホルダー20との間に補強板を設けるようにしてもよい。補強板は、ヘッドチップ10とは接合されずに、固定板30とホルダー20との双方に接合されていればよい。
【0019】
ホルダー20は、第1ホルダー部材21と、第2ホルダー部材22と、を具備する。
【0020】
第1ホルダー部材21は、複数、本実施形態では、4個のヘッドチップ10を保持する。具体的には、第1ホルダー部材21は、+Z方向を向く面に開口する凹形状の保持部211を有する。この保持部211内にヘッドチップ10が接着されている。本実施形態では、保持部211は、ヘッドチップ10毎に独立して設けられている。なお、保持部211は、複数のヘッドチップ10に亘って連続して設けられていてもよい。
【0021】
保持部211に保持された4個のヘッドチップ10は、X軸方向に関して同じ位置で、Y軸方向に並んで配置されている。もちろん、複数のヘッドチップ10の配置は、これに限定されず、例えば、複数のヘッドチップ10は、X軸方向およびY軸方向の両方向において異なる位置に配置されていてもよい。また、複数のヘッドチップ10は、X軸方向に沿って千鳥状に配置されていてもよい。ここで複数のヘッドチップ10が千鳥状に配置されているとは、X軸方向に並設されたヘッドチップ10を交互にY軸方向にずらして配置することである。つまり、X軸方向に並設されたヘッドチップ10の列が、Y軸方向に2列並設され、2列のヘッドチップ10の一方の列をX軸方向に半ピッチずらして配置することである。このように複数のヘッドチップ10をX軸方向に沿って千鳥状に配置することで、2つのヘッドチップ10のノズルNをX軸方向で部分的に重複させて、X軸方向に亘って連続したノズルNの列を形成することができる。また、ホルダー20に固定するヘッドチップ10の数は、特にこれに限定されず、2個以上の複数であればよい。
【0022】
また、第1ホルダー部材21には、ヘッドチップ10の第1流路11に連通する第2流路212が設けられている。第2流路212は、一端が第1ホルダー部材21の-Z方向を向く面に開口し、他端が保持部211の+Z方向を向く底面に開口して設けられている。このような第2流路212は、特に図示していないが、Z軸方向に延びる流路や、Z軸方向に対して交差する方向に延びる流路などで構成されていていてもよい。以降、Z軸方向に延びる流路を垂直流路と称し、X軸方向およびY軸方向を含むXY平面に沿って延びる流路を水平流路と称する。また、水平流路は、延設方向に、水平面に向かう成分(別称、ベクトル)が存在することを言う。つまり、水平流路は、XY平面に沿った流路だけではなく、Z軸方向およびXY平面に沿った方向の双方に対して傾斜した流路も含まれる。なお、流路の延設方向とは、インクが流れる方向を言う。
【0023】
図8に示すように、ヘッドチップ10と第1ホルダー部材21とは、Z軸方向で対向する面同士が第1接着剤101および第2接着剤102の2種類の異なる接着剤によって接着されている。つまり、ヘッドチップ10の-Z方向を向く面と、第1ホルダー部材21の保持部211の+Z方向を向く底面と、が第1接着剤101および第2接着剤102によって接着されている。第1接着剤101は、インクに接液する部分、つまり、ヘッドチップ10の-Z方向を向く面の第1流路11の開口の周囲と、第1ホルダー部材21の+Z方向を向く保持部211の底面の第2流路212の開口の周囲と、に亘って連続して設けられている。この第1接着剤101は、ヘッドチップ10の第1流路11と第1ホルダー部材21の第2流路212とを液密に接続するシールとしても機能する。
【0024】
ヘッドチップ10と第1ホルダー部材21とを接着する第1接着剤101は、熱硬化型接着剤を用いるのが好ましい。熱硬化型の接着剤とは、常温よりも高い高温、例えば、80℃以上の環境下で硬化し、耐インク性を備える接着剤であり、例えば、エポキシ系、もしくは、フッ素化ポリエーテル骨格を含む接着剤が挙げられる。このように第1接着剤101として熱硬化型接着剤を用いることで、溶剤系インク、紫外線硬化型インク、水系インク、油系インクに対して耐インク性、すなわち、インクに対して高い耐浸食性を有する。このため、第1接着剤101を、第1流路11および第2流路212同士を液密に接続するシールとして用いることで、第1流路11および第2流路212の接続部分からインクが外部に漏出するのを抑制することができる。また、熱硬化型接着剤は、常温硬化型接着剤に比べて接着強度が高いため、第1接着剤101に熱硬化型接着剤を用いることで、ヘッドチップ10と第1ホルダー部材21とを強固に接着することができる。
【0025】
第2接着剤102は、+Z方向に見て、第1接着剤101を囲むように配置されている。つまり、第2接着剤102は、+Z方向に見て、第1接着剤101の外側で第1接着剤101の外周に亘って連続して設けられている。本実施形態では、第1接着剤101と第2接着剤102とは互いに接している。このような第2接着剤102は、常温硬化型接着剤である。常温硬化型接着剤とは、常温環境下、例えば、常温以上、60℃以下の環境下で硬化することが可能な接着剤であり、例えば、紫外線硬化型接着剤、水分ないし溶剤の揮発により硬化する合成ゴム系の接着剤、空気中の水分と反応して硬化する湿気硬化型接着剤、本剤と硬化剤とを混合することで化学反応により硬化する反応型接着剤などが挙げられる。常温硬化型接着剤は、熱硬化型接着剤に比べて耐インク性は低いが、第2接着剤102は、第1流路11と第2流路212とを液密に接続するシールとして用いていないため特に問題はない。
【0026】
また、第1ホルダー部材21は、保持部211が開口する+Z方向を向く面が、固定板30と第3接着剤103によって接着されている。第1ホルダー部材21と固定板30とを接着する第3接着剤103としては、第2接着剤102と同じ常温硬化型接着剤を用いるのが好ましい。このように第1ホルダー部材21と固定板30とを常温硬化型接着剤である第3接着剤103で接着することで、第1ホルダー部材21とヘッドチップ10とを加熱して接着する必要がなく、加熱することによる第1ホルダー部材21と固定板30との線膨張係数の違いによる反りの発生を抑制することができる。つまり、第1接着剤101を硬化させるために加熱した場合に、第1ホルダー部材21と固定板30との第3接着剤103による接着面にズレが生じ難く、常温に戻した際に固定板30の反りを抑制することができる。ちなみに、詳しくは後述するが、第1ホルダー部材21の線膨張係数は、熱可塑性樹脂で構成する場合に比べて固定板30を構成するステンレス鋼や単結晶シリコンなどの線膨張係数に近い。しかしながら、2つの部材の線膨張係数の差が小さい場合であっても、熱によって膨張した状態で接着剤を硬化させて常温に戻すと反りが発生するため、第3接着剤103として常温硬化型接着剤を用いるのが有効である。
【0027】
ここで、第1接着剤101および第2接着剤102を用いた第1ホルダー部材21とヘッドチップ10および固定板30との接着は、例えば図9図11に示す工程によって行うことができる。なお、図9図11では、ヘッドチップ10と第1ホルダー部材21とのみを図示している。また、第1ホルダー部材21は、予め第2ホルダー部材22と接着されていてもよく、第1ホルダー部材21とヘッドチップ10とを接着した後で、第1ホルダー部材21と第2ホルダー部材22とを接着するようにしてもよい。
【0028】
最初に、ヘッドチップ10と第1ホルダー部材21との少なくとも一方に、第1接着剤101と第2接着剤102とを塗布する。第1接着剤101と第2接着剤102とは、それぞれ異なる部材に塗布してもよく、同じ部材に塗布してもよい。また、図示していないが、固定板30と第1ホルダー部材21との少なくとも一方に、第3接着剤103を塗布する。
【0029】
次に、図9に示すように、常温環境下でヘッドチップ10および固定板30と第1ホルダー部材21とをXY平面で互いに位置合わせした状態で、両者をZ軸方向で押し当てて第2接着剤102および第3接着剤103を硬化させる。これによりヘッドチップ10および固定板30と第1ホルダー部材21とを第2接着剤102および第3接着剤103で仮接着する。この仮接着では、加熱していないため第1接着剤101は硬化していない。
【0030】
次に、図10に示すように、加熱することで第1接着剤101を硬化させてヘッドチップ10と第1ホルダー部材21とを本接着する。第1接着剤101の加熱は、例えば、高温環境下となる加熱炉内にヘッドチップ10および固定板30と第1ホルダー部材21とを配置することで行う。このとき、ヘッドチップ10および固定板30と第1ホルダー部材21とは第2接着剤102および第3接着剤103で仮接着しているため、ヘッドチップ10および固定板30と第1ホルダー部材21との線膨張係数が違う場合、接着面のズレが略生じずに反りが発生する。しかしながら、本接着した後、図11に示すように、常温に戻してヘッドチップ10および固定板30と第1ホルダー部材21とが縮む際に、ヘッドチップ10および固定板30と第1ホルダー部材21との縮む量が異なっていても、加熱して膨張した際に接着面にズレが略生じていないため、常温に戻した際に発生する反りを抑制することができる。ちなみに、ヘッドチップ10のノズルプレートや固定板30等に反りが生じると、ヘッドチップ10からインクが噴射される方向がZ軸方向に対して傾斜した方向となってしまうため、インクの媒体Sへの着弾位置ズレが生じる。
【0031】
これに対して、第1ホルダー部材21とヘッドチップ10とを熱硬化型接着剤である第1接着剤101のみで接着する場合、図12に示すように第1接着剤101の硬化前に比べて、図13に示すように、加熱することで第1ホルダー部材21およびヘッドチップ10が膨張した状態で第1接着剤101が硬化する。第1接着剤101の硬化時には第1ホルダー部材21およびヘッドチップ10は膨張状態であるため、図14に示すように常温に戻すことで第1ホルダー部材21およびヘッドチップ10が縮んだ際に、第1ホルダー部材21およびヘッドチップ10のそれぞれの縮む量が異なるため、反りが発生してしまう。図14に示す例では、第1ホルダー部材21に対してヘッドチップ10のみが反っている図を示しているが、第1ホルダー部材21およびヘッドチップ10の全体が反る場合もある。
【0032】
このような第1ホルダー部材21は、固定板30と線膨張係数が略等しい熱硬化樹脂で構成されている。このように第1ホルダー部材21を、固定板30の線膨張係数と略等しい熱硬化樹脂で構成することで、第1ホルダー部材21と固定板30とを熱硬化型接着剤で接着する際に反りの発生を抑制することができる。もちろん、第1ホルダー部材21と固定板30とを上述のように常温硬化型接着剤である第3接着剤103で接着した場合であっても、第1ホルダー部材21と固定板30との熱による膨張量を揃えることで、反りの発生を抑制することができる。
【0033】
ここで、本願において「線膨張係数が略等しい」とは、部材Aの線膨張係数aと部材Bの線膨張係数bとの差|a-b|は、線膨張係数aまたは線膨張係数bの25%以内とする。この範囲内にある場合を「略等しい」とする。なお、線膨張係数aと線膨張係数bとの差|a-b|は、線膨張係数aまたは線膨張係数bの15%以内がより好ましい。また、線膨張係数aと線膨張係数bとの差|a-b|は、線膨張係数aおよび線膨張係数bのうち、小さい方の線膨張係数の25%以内がより好ましく、15%以内であることがさらに好ましい。
【0034】
例えば、第1ホルダー部材21として、熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂複合材(商品名:エポクラスターJ106S、クラスターテクノロジー株式会社製)を用いた場合、線膨張係数aは、9.0×10-6/Kであり、固定板30としてSUS430を用いた場合には、線膨張係数bは、10.4×10-6/Kである。このため、|a-b|/(a または b)=|(10.4-9)/(10.4または9)=0.14または0.16となる。このため、線膨張係数の差|a-b|は、0.25以内、すなわち、25%以内となる。
【0035】
このように第1ホルダー部材21を固定板30と線膨張係数が略同じ熱硬化性樹脂で構成することで、第1接着剤101を硬化させるために加熱した際の変形、および、常温に戻した際の反りを抑制することができる。
【0036】
なお、固定板30は、ヘッドチップ10の固定板30が接合される面を構成する部材、例えば、ノズルNが形成された不図示のノズルプレートや、その他の流路部材等と線膨張係数が近い材料で形成するのが好ましい。このようにヘッドチップ10の固定板30が接合される面を構成する部材と、固定板30と、を線膨張係数が近い材料で形成することで、熱による反りを抑制することができる。
【0037】
また、第1ホルダー部材21には、Z軸方向に亘って貫通して、一端が保持部211の底面に開口し、他端が第1ホルダー部材21の-Z方向を向く面に開口する第1配線挿通孔213が設けられている。第1配線挿通孔213は、内部をヘッドチップ10の配線基板12が挿通されるものであり、各ヘッドチップ10に対して1個、合計4個設けられている。
【0038】
図1図3図6に示すように、第2ホルダー部材22は、Z軸方向に見て、第1ホルダー部材21よりも大きな外形を有する。第2ホルダー部材22は、+Z方向を向く面に、第1ホルダー部材21の-Z方向を向く面が固定されている。また、第2ホルダー部材22には、第1ホルダー部材21の-Z方向を向く面を-Z方向に露出するための開口部221を有する。本実施形態では、第1ホルダー部材21の-Z方向を向く面の外周縁部と、第2ホルダー部材22の+Z方向を向く面の開口部221の内周縁部と、が第4接着剤104によって接着される。なお、第1ホルダー部材21と第2ホルダー部材22との固定方法は、接着剤による接着に限定されない。第1ホルダー部材21と第2ホルダー部材22とは、例えば、ネジによる締結や、バネによる弾性力等によって互いに固定されていてもよい。
【0039】
つまり、複数のヘッドチップ10の第1流路11は、第1ホルダー部材21の第2流路212と連通し、第2ホルダー部材22には、複数のヘッドチップ10の第1流路11と連通する流路が設けられていない。
【0040】
このような第2ホルダー部材22は、線膨張係数が固定板30の線膨張係数よりも高い熱可塑性樹脂で構成されている。熱可塑性樹脂は、所定の温度に加熱されると樹脂が軟化または溶融し、温度が下がると固化する特性を有する。
【0041】
ここで、一例として熱硬化性樹脂として上述したエポキシ樹脂複合材(商品名:エポクラスターJ106S、クラスターテクノロジー株式会社製)と、熱可塑性樹脂として変性ポリフェニレンエーテル樹脂(商品名:DG040、旭化成株式会社製)と、のヤング率、線膨張係数、膨張率を下記表1に示す。さらに、表1には、一例としてヘッドチップ10のノズルNが形成された不図示のノズルプレートに用いられるシリコン基板と、固定板30に用いられるステンレス鋼(SUS430)と、のヤング率、線膨張係数、膨張率を示す。
【0042】
【表1】
【0043】
表1に示すように、熱硬化性樹脂は、熱可塑性樹脂に比べて線膨張係数が小さく、熱硬化性樹脂の線膨張係数は、熱可塑性樹脂に比べてノズルプレートや固定板30の線膨張係数との差が小さい。このため、第1ホルダー部材21を熱硬化性樹脂で構成することで、液体噴射ヘッド1を組み立てる際に第1接着剤101を硬化させるために加熱した後、常温に戻した際のノズル面NSの反りを抑制することができる。また、印刷時の熱によって加熱された際にも、第1ホルダー部材21を熱硬化性樹脂で構成することで、反りを抑制することができる。ちなみに、ホルダー20全体を熱可塑性樹脂で構成すると、熱可塑性樹脂は熱硬化性樹脂に比べて線膨張係数が大きいことから、ヘッドチップ10との線膨張係数の差が大きくなり、液体噴射ヘッド1に反りが生じてしまう。液体噴射ヘッド1に反りが生じると、ヘッドチップ10間でのノズルNの相対的な位置精度が低下すると共に、ホルダー20に対するヘッドチップ10のノズルNの位置精度が低下する。本実施形態では、第1ホルダー部材21を熱硬化性樹脂で構成することで、ヘッドチップ10間のノズルNの相対的な位置精度およびホルダー20に対するノズルNの位置精度が低下するのを抑制することができる。
【0044】
また、熱硬化性樹脂は、熱可塑性樹脂に比べて剛性が高い。このため、第1ホルダー部材21を熱硬化性樹脂で形成することで、液体噴射ヘッド1の剛性、特に、ヘッドチップ10を保持する第1ホルダー部材21の剛性を向上し、各ヘッドチップ10間でのノズルNの相対的な位置精度を向上することができる。
【0045】
また、熱硬化性樹脂は、熱可塑性樹脂に比べて耐インク性が高い。このため第2流路212を有する第1ホルダー部材21を熱硬化性樹脂で形成することで、第1ホルダー部材21の耐インク性を向上して、耐久性および信頼性を向上することができる。
【0046】
ちなみに、熱硬化性樹脂は、熱可塑性樹脂に比べて吸湿による膨潤が大きい。なお、単結晶シリコン、ステンレス鋼および熱可塑性樹脂の膨潤率は略ゼロである。このため、第2ホルダー部材22などの比較的大きな部材を熱硬化性樹脂で形成すると、吸湿による膨潤によって、寸法変化の変化が生じ、各ヘッドチップ10の間の相対的な位置精度およびホルダー20に対する位置精度が低下してしまう。本実施形態では、ヘッドチップ10を保持する第1ホルダー部材21のみを熱硬化性樹脂で構成し、比較的大きな部分である第2ホルダー部材22を熱可塑性樹脂で構成することで、ホルダー20全体を熱硬化性樹脂で構成する場合に比べて、吸湿による膨潤を抑制し、寸法変化を低減して、各ヘッドチップ10のノズルNの相対的な位置精度や、ホルダー20に対するヘッドチップ10のノズルNの位置精度を向上することができる。
【0047】
また、第1ホルダー部材21に熱可塑性樹脂を用いる場合、反りを抑制するために、熱硬化型接着剤に比べて低い温度、例えば、常温で硬化する接着剤で第1ホルダー部材21とヘッドチップ10とを接着する必要があるが、比較的低温で硬化する接着剤は、熱硬化型接着剤に比べて耐インク性が低く、流路の接続部分に用いた場合、インクの漏出などが生じる虞がある。本実施形態では、第1ホルダー部材21を熱硬化性樹脂で構成することで、ヘッドチップ10と第1ホルダー部材21とを熱硬化型接着剤の第1接着剤101で接着しても接着後の反りを抑制することができる。したがって、第1ホルダー部材21とヘッドチップ10とを反りを抑制した状態で、両者を熱硬化型接着剤で接着して耐インク性を向上することができる。
【0048】
なお、硬化した後の第2接着剤102は、硬化した後の第1接着剤に比べて柔らかいことが好ましい。熱硬化性樹脂で構成される第1ホルダー部材21が膨潤したとしても、その応力を第2接着剤102で緩和することができ、各ヘッドチップ10のノズルNの相対的な位置決め精度や、ホルダー20に対するノズルNの位置精度が膨潤により低下するのを抑制することができる。このような第2接着剤102としては、シリコーン系の接着剤を用いることが好ましい。
【0049】
流路部材40は、ホルダー20の-Z方向を向く面に固定される。流路部材40は、第1ホルダー部材21の第2流路212に連通する接続流路41を有する。接続流路41の一端は、流路部材40の+Z方向を向く面に開口して設けられている。また、流路部材40は、-Z方向を向く面に、-Z方向に向かって突出する第1突起部42が設けられている。第1突起部42は、接続流路41毎に設けられており、第1突起部42の-Z方向を向くそれぞれの先端面に接続流路41の他端が開口している。なお、接続流路41は、垂直流路だけで構成されるものに限定されず、途中で水平流路を有するものであってもよい。また、第1ホルダー部材21と流路部材40との接合界面で水平流路を有するものであってもよい。
【0050】
また、流路部材40には、Z軸方向に亘って貫通する第2配線挿通孔43が設けられている。第2配線挿通孔43は、第1ホルダー部材21の第1配線挿通孔213に連通して、ヘッドチップ10の配線基板12が挿通される。
【0051】
中継基板50は、流路部材40の-Z方向を向く面側に配置されている。つまり、中継基板50は、第1カバー60と流路部材40との間に配置されている。中継基板50は、Z軸方向に亘って貫通する第3配線挿通孔51と第1突起部挿通孔52とが設けられている。第3配線挿通孔51は、第2配線挿通孔43と連通して内部を配線基板12が挿通される。第1突起部挿通孔52は、流路部材40の第1突起部42が挿通されるものであり、各ヘッドチップ10に対して2個、合計8個設けられている。
【0052】
中継基板50はリジッド基板からなり、4個のヘッドチップ10に共通して1個設けられている。もちろん、中継基板50は、ヘッドチップ10毎または複数のヘッドチップ10で構成される群毎に分割して設けてもよく、分割した中継基板50同士をフレキシブル基板で接続した、所謂、リジットフレキシブル基板であってもよい。
【0053】
中継基板50の+Z方向を向く面および-Z方向を向く面の何れか一方または両方には、図示しない電子部品や配線が設けられている。
【0054】
また、中継基板50は、液体噴射ヘッド1を制御するための印刷信号等を送信するための外部配線が接続されるコネクター53を有する。コネクター53は、本実施形態では、中継基板50の-Z方向を向く面において、Y軸方向の両端部のそれぞれに設けられている。
【0055】
第1カバー60は、ホルダー20との間で流路部材40と中継基板50とを挟んだ状態で、ホルダー20の-Z方向を向く面に固定される。第1カバー60によって、ホルダー20の-Z方向を向く面は覆われる。
【0056】
第1カバー60には、中継基板50の各コネクター53を-Z方向に向かって露出する配線接続口61が設けられている。配線接続口61は、コネクター53毎に独立して設けられているため、本実施形態では、合計2個の配線接続口61を有する。
【0057】
第1カバー60は、ホルダー20の第1ホルダー部材21に固定されている。第1カバー60と第1ホルダー部材21との固定については詳しくは後述する。
【0058】
フィルターユニット80は、第1流路部材81と第2流路部材82と第3流路部材83とを具備する。第1流路部材81、第2流路部材82および第3流路部材83は、インクを噴射する+Z方向にこの順番で積層されている。なお、フィルターユニット80は、特にこれに限定されるものではなく、単一の部材であってもよく、2つ以上の複数の部材で構成されていてもよい。また、フィルターユニット80を構成する複数の部材の積層方向も特に限定されず、例えば、X軸方向、Y軸方向であってもよい。
【0059】
フィルターユニット80は、不図示の液体であるインクを貯留する液体貯留部と、ヘッドチップ10と、の間でインクを流通させる供給流路110を有する。本実施形態では、1つのフィルターユニット80に、4個の独立した供給流路110が設けられている。また、本実施形態では、液体噴射ヘッド1は、2個のフィルターユニット80を有する。もちろん、1つのフィルターユニット80に設ける供給流路110の数は特に限定されず、1個であってもよく、2個以上の複数であってもよい。また、1つの液体噴射ヘッド1に設けるフィルターユニット80の数も特に限定されるものではなく、1個であってもよく、2個以上の複数であってもよい。
【0060】
フィルターユニット80の各供給流路110は、第1流路部材81に設けられた第1供給流路111と、第2流路部材82に設けられた第2供給流路112と、第3流路部材83に設けられた第3供給流路113と、を有する。
【0061】
第1流路部材81は、-Z方向を向く面に図示しない液体貯留部に接続される接続部84を有する。本実施形態の接続部84は、-Z方向に向かって針状に突出したものである。なお、接続部84には、インクカートリッジなどの液体貯留部が直接、接続されてもよく、また、インクパック、インクタンクなどの液体貯留部がチューブ等の供給管などを介して接続されてもよい。第1流路部材81は、一端が接続部84の-Z方向の端部に開口し、他端が第1流路部材81の+Z方向を向く面に開口する第1供給流路111を有する。この第1供給流路111に液体貯留部からのインクが供給される。第1供給流路111の他端側には、一端部側よりも内径が広く拡幅された第1液体溜まり部111aが設けられている。なお、第1供給流路111は、後述する第2供給流路112の位置に応じて、垂直流路や水平流路等で構成されている。
【0062】
第2流路部材82は、第1流路部材81の+Z方向を向く面に固定される。第2流路部材82は、第1供給流路111に連通する第2供給流路112を有する。第2供給流路112は、一端が第2流路部材82の-Z方向を向く面に開口し、他端が、第2流路部材82の+Z方向を向く面に開口して設けられている。また、第2供給流路112の一端側には、第1液体溜まり部111aに応じて拡幅された第2液体溜まり部112aとなっている。そして、第1流路部材81と第2流路部材82との間、すなわち、第1液体溜まり部111aと第2液体溜まり部112aとの間には、インクに含まれるゴミや気泡などの異物を除去するためのフィルター85が設けられている。このため、第1供給流路111から供給されたインクは、フィルター85によってゴミや気泡などの異物が除去された状態で第2供給流路112に供給される。
【0063】
第3流路部材83は、第2流路部材82の+Z方向を向く面に固定される。また、第3流路部材83は、第2供給流路112に連通する第3供給流路113を有する。第3供給流路113は、一端が第3流路部材83の-Z方向を向く面に開口し、他端が、第3流路部材83の+Z方向を向く面に開口して設けられている。
【0064】
なお、供給流路110は、垂直流路だけではなく、水平流路を有するものであってもよい。また、供給流路110は途中で2つ以上に分岐していてもよい。
【0065】
また、フィルターユニット80には、供給流路110以外に、液体噴射ヘッド1から噴射されなかったインクが液体噴射ヘッド1の外部に排出するための排出流路が設けられていてもよい。
【0066】
また、第3流路部材83の+Z方向を向く面には、+Z方向に向かって突出する第2突起部86が設けられている。第2突起部86は、供給流路110毎に設けられており、第2突起部86の+Z方向を向くそれぞれの先端面に供給流路110の第3供給流路113が開口する。
【0067】
このような供給流路110が設けられた第1流路部材81、第2流路部材82および第3流路部材83は、例えば、接着剤や、溶着等によって一体的に接合されている。なお、第1流路部材81、第2流路部材82及び第3流路部材83をネジやクランプ等で固定することもできるが、接着剤や溶着等によって接合することで第1供給流路111から第3供給流路113に至るまでの接続部分からインクが漏出するのを抑制することができる。
【0068】
また、フィルターユニット80は、第1カバー60の-Z方向を向く面にシール部材70を介して固定される。フィルターユニット80の第1カバー60への固定は、第1ネジ部材201によって行われる。具体的には、図6および図7に示すように、第1カバー60には、-Z方向を向く面に-Z方向に向かって突出する第1固定部62が設けられている。第1固定部62の-Z方向を向く面には、第1固定孔63が開口して設けられている。第1固定孔63は、第1カバー60をZ軸方向に貫通することなく、-Z方向のみに開口して設けられている。
【0069】
一方、フィルターユニット80の第3流路部材83には、-Z方向に向かって突出する第2固定部831が設けられている。第2固定部831は、第3流路部材83からZ軸方向に沿って設けられた第1部分831aと、第1部分831aの-Z方向の先端からXY平面に沿って設けられた第2部分831bと、を有する。第2部分831bには、Z軸方向に亘って貫通する第2固定孔832が設けられている。第2固定孔832は、第1固定部62よりも小さい面積で設けられており、第1固定部62の-Z方向の先端は、第2部分831bの+Z方向を向く面に当接する。第1ネジ部材201は、第2固定孔832に挿入され、先端が第1固定孔63に螺合することで、第1固定部62と第1ネジ部材201との間で第2固定部831の第2部分831bを挟み込む。これにより、フィルターユニット80は、第1カバー60に第1ネジ部材201によって締結される。
【0070】
第1ネジ部材201はタッピングネジからなる。タッピングネジとは、雌ネジがなくても自身のネジ山にあった溝を相手の部材に切り込み、締結できるネジのことであり、別称、タッピンネジまたはセルフタッピングスクリューとも言う。このように第1ネジ部材201としてタッピングネジを用いることで、第1固定孔63の内周面に予めネジ溝を形成しておくことや、第1固定孔63をZ軸方向に貫通する貫通孔として、第1カバー60の+Z方向を向く面側に第1固定孔63を挿通した第1ネジ部材201に螺合するナット等を設ける必要がない。したがって第1ネジ部材201としてタッピングネジを用いることで、液体噴射ヘッド1の各部材の製造や組立工程を簡略化することができる。なお、タッピングネジは、比較的柔らかい部材に溝を切り込むことができるものであるため、第1カバー60の少なくとも第1固定部62は、熱可塑性樹脂で構成するのが好ましい。また、本実施形態では、第1固定孔63は、第1カバー60をZ軸方向に貫通して設けられていないものとしたため、第1ネジ部材201が第1固定孔63の内周面に溝を切り込んだ際に発生する切りくずが第1固定孔63から第1カバー60の+Z方向を向く面側に落ちるのを抑制することができる。
【0071】
シール部材70は、フィルターユニット80と第1カバー60との間に配置される。シール部材70は、フィルターユニット80の供給流路110と流路部材40の接続流路41とを接続する継手として機能する。
【0072】
シール部材70は、液体噴射ヘッド1に用いられるインクに対して耐インク性を有し、且つ弾性変形可能な材料を用いることができる。シール部材70は、供給流路110毎に管状部分71を有する。管状部分71は、内部に連通流路72が設けられている。そして、管状部分71の連通流路72を介してフィルターユニット80の供給流路110と流路部材40の接続流路41とが連通される。具体的には、連通流路72内に流路部材40の第1突起部42とフィルターユニット80の第2突起部86とが挿入されて、第1突起部42および第2突起部86と管状部分71との間で径方向、つまりZ軸に直交する方向に所定の圧力が付与された状態で保持される。このように供給流路110と連通流路72とはシール部材70にZ軸方向に直交する方向に圧力が付与された状態で接続され、連通流路72と接続流路41とはシール部材70にZ軸方向に直交する方向に圧力が付与された状態で接続される。したがって、供給流路110と接続流路41とは連通流路72を介して液密な状態で連通される。
【0073】
なお、第1カバー60には、流路部材40の第1突起部42およびシール部材70の管状部分71が挿入されるZ軸方向に貫通した貫通孔65が設けられている。貫通孔は、管状部分のそれぞれに対して独立して、合計8個設けられている。
【0074】
なお、本実施形態の管状部分71は、1つのフィルターユニット80に対して複数個が一体的になるように、フィルターユニット80側で板状部分によって連結されている。また、液体噴射ヘッドにフィルターユニットが2個設けられているため、シール部材70は合計2個設けられている。
【0075】
第2カバー90は、第1カバーの-Z方向を向く面に固定されて、第1カバー60の-Z方向の面の一部を覆うものである。
【0076】
第2カバー90は、フィルターユニット80を外部に露出するための開口部であるフィルターユニット露出部91を有する。フィルターユニット露出部91は、第2カバー90をZ軸方向に亘って貫通して設けられている。
【0077】
この第2カバー90は、第1カバー60に第2ネジ部材202によって固定されている。詳しくは、第2カバー90にはZ軸方向に貫通する第3固定孔92が設けられている。また、第1カバー60には、Z軸方向に亘って貫通することなく-Z方向を向く面のみに開口する第4固定孔66が設けられている。第2ネジ部材202は、第3固定孔92に挿入され、先端が第4固定孔66に螺合することで、第1カバー60と第2ネジ部材202との間で第2カバー90を挟み込む。これにより、第2カバー90は、第1カバー60に第2ネジ部材202によって締結される。
【0078】
第2ネジ部材202はタッピングネジからなる。また、第2ネジ部材202として、第1ネジ部材201と同じ種類で同じサイズのタッピングネジを用いることで、種類やサイズの異なる複数のネジを用いる必要がなく、コストを低減することができる。また、第1ネジ部材201と第2ネジ部材202とを同じ種類で同じサイズのネジを用いることで、組み立て時にネジの取り間違えを抑制して、締結が不十分になる組み立て不良を抑制することができる。
【0079】
ここで、第1カバー60と第1ホルダー部材21との固定構造について説明する。図6に示すように、第1カバー60は、第1ホルダー部材21に4つの第3ネジ部材203によって固定されている。具体的には、第1ホルダー部材21は、各第3ネジ部材203に対応して+Z方向に開口する凹部214を有する。凹部214の内部には、インサートナット120が収容されている。凹部214の+Z方向の底面には、第3ネジ部材203が挿通される第5固定孔215が設けられている。第5固定孔215は、インサートナット120よりも小さい面積を有し、凹部214内に収容されたインサートナット120は、凹部214の+Z方向を向く底面に当接することで+Z方向への移動が規制される。
【0080】
インサートナット120は、熱可塑性樹脂で形成されている。インサートナット120は、第6固定孔121を有する。第6固定孔121は、インサートナット120をZ軸方向に貫通することなく、-Z方向を向く面のみに開口して設けられている。
【0081】
流路部材40には、第5固定孔215に連通する第7固定孔44が設けられている。また、中継基板50には、第7固定孔44に連通する第8固定孔54が設けられている。また、第1カバー60には、第8固定孔54に連通する第9固定孔67が設けられている。これら第7固定孔44、第8固定孔54および第9固定孔67は、それぞれの部材をZ軸方向に亘って貫通して設けられている。
【0082】
第3ネジ部材203は、第9固定孔67、第8固定孔54、第7固定孔44および第5固定孔215に挿入され、先端がインサートナット120の第6固定孔121に螺合することで、インサートナット120と第3ネジ部材203との間で、第1ホルダー部材21、流路部材40、中継基板50および第1カバー60を挟み込む。これにより、第1ホルダー部材21と第1カバー60とは締結される。
【0083】
第3ネジ部材203はタッピングネジからなる。本実施形態では、熱可塑性樹脂で形成されたインサートナット120を用いることで、第1ホルダー部材21が熱硬化性樹脂で形成されていても、第3ネジ部材203としてタッピングネジを用いることができる。つまり、タッピングネジは比較的硬度が高い熱硬化性樹脂にネジ溝を切りながら螺合するのは困難である。このため、第1ホルダー部材21が熱硬化性樹脂で形成されている場合、タッピングネジを直接、第1ホルダー部材21に螺合させるのは困難である。本実施形態では、第1ホルダー部材21が熱硬化性樹脂で構成されていても、熱可塑性樹脂で構成されるインサートナット120を用いることで、第3ネジ部材203としてタッピングネジを用いることができる。
【0084】
このように第3ネジ部材203としてタッピングネジを用いることで、第1ホルダー部材21に雌ネジとなるネジ溝を形成しておくことや、第3ネジ部材203に螺合するナット等を設ける必要がない。したがって、第3ネジ部材203としてタッピングネジを用いることで、液体噴射ヘッド1の各部材の製造や組立工程を簡略化することができる。また、第3ネジ部材203として、第1ネジ部材201や第2ネジ部材202と同じ種類で同じサイズのネジを用いることで、種類やサイズの異なる複数のネジを用いる必要がなく、コストを低減することができる。また、第1ネジ部材201と第2ネジ部材202と第3ネジ部材203とを同じ種類で同じサイズのネジを用いることで、組み立て時にネジの取り間違えを抑制して、締結が不十分になる組み立て不良を抑制することができる。
【0085】
また、本実施形態では、第6固定孔121は、インサートナット120をZ軸方向に貫通して設けられていないものとしたため、第3ネジ部材203が第6固定孔121の内周面に溝を切り込んだ際に発生する切りくずが第6固定孔121から第1ホルダー部材21の+Z方向を向く面側に落ちるのを抑制することができる。したがって切りくずが媒体S側に落ちるのを抑制することができる。
【0086】
本実施形態の液体噴射ヘッド1では、第1ホルダー部材21が「第1部材」に相当する。また、第2ホルダー部材22が「第2部材」に相当する。また、第1流路11が「ヘッドチップの流路」に相当し、第2流路212が「第1部材の流路」に相当する。また、第1接着剤101が、「第1接着剤」に相当し、第2接着剤102および第3接着剤103が「第2接着剤」に相当する。また、第1カバー60が「第3部材」に相当する。また、フィルターユニット80が「第3部材に積層される流路部材」に相当する。また、Z軸方向が「積層方向」に相当する。
【0087】
(変形例1)
図15図18は、一実施形態に係る液体噴射ヘッドの変形例を示す第1ホルダー部材21およびヘッドチップ10の要部断面図である。
【0088】
図15に示すように、第1接着剤101と第2接着剤102との間は大気開放している。
【0089】
具体的には、第1ホルダー部材21には、Z軸方向に亘って貫通する大気開放孔216が設けられている。大気開放孔216は、一端が第1ホルダー部材21の保持部211の底面において、第1接着剤101と第2接着剤102との間に開口し、他端が、第1ホルダー部材21の-Z方向を向く面に開口する。このため、第2接着剤102を常温で硬化させた後、第1接着剤101を加熱して硬化させた際に、第1接着剤101と第2接着剤102との間の空間内の気体を、大気開放孔216を介して外部に排出することができる。ちなみに、第1接着剤101と第2接着剤102との間の空間が閉空間の場合、この閉空間に保持された気体が加熱されることにより膨張し、第1接着剤101を第1流路11および第2流路212側に向かって押し出すことや、第1流路11および第2流路212と、第1接着剤101と第2接着剤102との間の閉空間と、の間に空気の通り道が形成されるなどの不具合が発生する虞がある。本実施形態では、第1接着剤101と第2接着剤102との間の空間を大気開放孔216によって大気開放することで、第1接着剤101と第2接着剤102との間の空間内の気体を、大気開放孔216を介して外部に排出することができ、第1接着剤101と第2接着剤102との間の空間内の空気が膨張するのを抑制することができる。したがって、第1接着剤101を第1流路11および第2流路212の内側に向かって押し出すことや、第1流路11および第2流路212と、第1接着剤101と第2接着剤102との間の空間と、の間に空気の通り道が形成されるなどの不具合を抑制することができる。
【0090】
なお、図15に示す例では、ヘッドチップ10の-Z方向を向く面に、第2流路212側で-Z方向に突出する第1凸部13と、第2接着剤102側で-Z方向に突出する第2凸部14と、が設けられている。第1凸部13と第2凸部14とは、第2流路212の開口の周囲に亘って連続して設けられている。また、大気開放孔216は、Z軸方向に見て、第1凸部13と第2凸部14との間に開口する位置に設けられている。このため、第1凸部13と第2凸部14との間で、第1接着剤101を貯留することができ、第1接着剤101が第2流路212側に流出するのを抑制することができる。つまり、第1凸部13と第2凸部14との間は、第1接着剤101を溜める接着剤溜まりとなっている。また、第1ホルダー部材21の+Z方向を向く面には、第1凸部13と第2凸部14との間で、且つ大気開放孔216よりも第1流路11側において、+Z方向に突出する第3凸部217が設けられている。第3凸部217を設けることで、第1接着剤101が大気開放孔216内に入り込むのを抑制して、第1接着剤101が大気開放孔216を閉塞するのを抑制することができる。
【0091】
このように第1凸部13と第2凸部14と第3凸部217とを設けることで、第1接着剤101が第2流路212の内側に流出するのを抑制することができると共に、大気開放孔216が第1接着剤101によって閉塞するのを抑制して、第1接着剤101と第2接着剤102との間を大気開放孔216によってより確実に大気開放することができる。
【0092】
また、図16に示すように、第1凸部13と第2凸部14との間には、さらに-Z方向を向く面に開口する溝部15を設けるようにしてもよい。溝部15は、第2流路212の周方向に亘って連続して設けるのが好ましい。また、溝部15は、Z軸方向に見て大気開放孔216に対向する位置に設けることが好ましい。このように溝部15を設けることで、さらに溝部15内に第1接着剤101を溜めることができ、第1接着剤101の第2流路212内への流れ出しや大気開放孔216が第1接着剤101によって閉塞するのを抑制することができる。
【0093】
また、図17に示すように、ヘッドチップ10の第2接着剤102の第2接着面16を、第1接着剤101の第1接着面17よりも+Z方向に高くするようにしてもよい。第2接着面16を第1接着面17よりも+Z方向に高くすることで、第1接着剤101が、大気開放孔216に入り込むのを抑制して、第1接着剤101が大気開放孔216を閉塞するのを抑制することができる。また、第1ホルダー部材21には、大気開放孔216よりも外側、つまり、第1流路11とは反対側で、+Z方向に向かって突出する第4凸部218が設けられている。第4凸部218設けることで、第2接着剤102が大気開放孔216内に入り込むのを抑制して、第2接着剤102が大気開放孔216を閉塞するのを抑制することができる。
【0094】
また、図18に示すように、大気開放孔216と同様の接着剤導入孔216Aから第1接着剤101を供給するようにしてもよい。つまり、第1ホルダー部材21とヘッドチップ10とを第2接着剤102によって接着した後、接着剤導入孔216Aから第1接着剤101を導入し、加熱することで第1接着剤101を硬化させてもよい。また、このような構成では、第1ホルダー部材21とヘッドチップ10とのZ軸方向の間隔を、第1流路11および第2流路212に開口する側が、第2接着剤102の設けられる部分よりも狭くする。第1ホルダー部材21とヘッドチップ10とのZ軸方向の第1流路11および第2流路212に開口する側の間隔は、第1接着剤101の表面張力で耐えられる寸法とする。これにより、接着剤導入孔216Aから導入された第1接着剤101が、第1流路11および第2流路212内に流れ込むのを抑制することができる。また、図18に示す構成では、第2接着剤102を硬化した後から第1接着剤101を塗布するため、第1接着剤101と第2接着剤102との間に隙間が生じ難い。これによっても、第1接着剤101と第2接着剤102との間に空気が保持された閉空間を形成するのを抑制して、第1接着剤101の流路側への流れ込みを抑制することができる。
【0095】
(変形例2)
図19は、一実施形態の液体噴射ヘッド1の変形例の第1ホルダー部材21およびインサートナットの斜視図である。図20は、図19のD-D′線断面図である。図21は、図19のE-E′線断面図である。
【0096】
図示するように、凹部214の内周面には、第1係合凹部214aと第2係合凹部214bとを有する。すなわち、凹部214は、-Z方向に見て円形状を基本として、半径方向に拡幅する第1係合凹部214aと第2係合凹部214bとを有する。
【0097】
インサートナット120の外周面には、第1係合凹部214a内に挿入される第1係合凸部122と、第2係合凹部214b内に挿入される第2係合凸部123と、を有する。つまり、インサートナット120は、-Z方向に見て円形状を基本として、一部が半径方向に突出する第1係合凸部122と第2係合凸部123とを有する。
【0098】
インサートナット120の第1係合凸部122が第1係合凹部214aの内面に当接すること、および、第2係合凸部123が第2係合凹部214bの内面に当接すること、によってインサートナット120は、Z軸方向に沿った回転軸を中心に回転するのが規制される。つまり、第1係合凸部122が第1係合凹部214aの内面に当接すること、および、第2係合凸部123が第2係合凹部214bの内面に当接すること、によって第3ネジ部材203をインサートナット120に螺合させる際に、インサートナット120が凹部214に対して第3ネジ部材203の回転方向に回転するのを規制する。なお、第3ネジ部材203をインサートナット120から取り外す際にもインサートナット120の回転が規制される。このため、第3ネジ部材203をインサートナット120に螺合させた際に、インサートナット120が第3ネジ部材203と一緒に共回りするのを抑制して、第3ネジ部材203による締結不良が発生するのを抑制することができる。
【0099】
本実施形態では、第1係合凹部214aおよび第2係合凹部214bと、第1係合凸部122および第2係合凸部123と、の一方が「係合部」に相当し、他方が「被係合部」に相当する。また、第1係合凹部214aおよび第2係合凹部214bをインサートナット120の外周面に設け、第1係合凸部122と第2係合凸部123とを凹部214の内周面に設けるようにしてもよい。また、第1係合凹部214aと第2係合凹部214bとの一方を凹部214の内周面に設け、他方をインサートナット120の外周面に設けるようにしてもよい。これに合わせて、第1係合凸部122と第2係合凸部123との一方を凹部214の内周面に設け、他方をインサートナット120の外周面に設けるようにしてもよい。
【0100】
また、本実施形態では、インサートナット120を-Z方向に見て、第2係合凸部123の基本とする円形状からの突出量は、第1係合凸部122の突出量よりも小さい。このため、第2係合凸部123の外周面と第2係合凹部214bの内周面との間には、隙間が形成されている。この隙間には第5接着剤105が配置されており、第5接着剤105によって第1ホルダー部材21とインサートナット120とが固定されている。このようにインサートナット120を第1ホルダー部材21に第5接着剤105によって固定することで、インサートナット120が凹部214から+Z方向に脱落するのを抑制することができる。特に、第3ネジ部材203は、インサートナット120に+Z方向に圧力を付与しながら螺合させるため、インサートナット120が第1ホルダー部材21に固定されることで、インサートナット120が凹部214から+Z方向に脱落するのを抑制することができる。また、第3ネジ部材203をインサートナット120に螺合する前や、取り外した後にも、インサートナット120が凹部214から+Z方向に脱落するのを抑制することができ、組み立て性を向上することができる。なお、第4接着剤104としては、例えば、エポキシ系の接着剤が挙げられる。また、インサートナット120は、第1ホルダー部材21と第1カバー60とを締結する前に、予め第1ホルダー部材21に接着しておく。
【0101】
なお、本実施形態では、第1係合凸部122および第1係合凹部214aと、第2係合凸部123および第2係合凹部214bと、の2組を設けるようにしたが、何れか一方のみを設けるようにしてもよい。
【0102】
また、第2係合凸部123と第2係合凹部214bとを第4接着剤104で接着するようにしたが、特にこれに限定されず、-Z方向に見て円形状の凹部214の内周面と、円形状のインサートナット120の外周面とを第4接着剤104で接着するようにしてもよい。
【0103】
なお、変形例2の液体噴射ヘッド1では、第4接着剤104が「凹部の内周面とインサートナットの外周面との少なくとも一部に形成された隙間に配置された接着剤」に相当する。また、第1係合凸部122および第2係合凸部123が「係合部」に相当し、第1係合凹部214aおよび第2係合凹部214bが「被係合部」に相当する。
【0104】
(変形例3)
図22は、本発明の一実施形態に係る液体噴射ヘッド1の変形例3を示す断面図である。
【0105】
図22に示すように、ホルダー20は、第1ホルダー部材21と第2ホルダー部材22とを有する。第1ホルダー部材21は、ホルダー本体23と、ホルダー流路部材24と、を具備する。
【0106】
ホルダー流路部材24は、一実施形態に係る第1ホルダー部材21の第2流路212が形成された部分を構成する。つまり、ホルダー流路部材24は、内部に第2流路212が設けられた環状の流路部241を有する。流路部241は、第2流路212毎に設けられている。また、複数の流路部241は、板状の連結部242によって連結されている。
【0107】
ホルダー本体23は、一実施形態に係る第1ホルダー部材21のヘッドチップ10を収容する保持部211が形成された部分を構成する。また、ホルダー本体23には、ホルダー流路部材24の流路部241が挿入される流路部保持孔231が設けられている。流路部保持孔231は、ホルダー本体23をZ軸方向に貫通し、一端が保持部211の底面に開口し、他端がホルダー本体23の-Z方向を向く面に開口して設けられている。このような流路部保持孔231にホルダー流路部材24の流路部241が挿入されて固定されることで、第1ホルダー部材21が構成されている。ホルダー流路部材24とホルダー本体23との固定は、例えば、不図示の接着剤によって行われる。
【0108】
また、ホルダー流路部材24の流路部241の+Z方向の先端面は、保持部211内に露出されており、流路部241の先端面が、保持部211内でヘッドチップ10と第1接着剤101および第2接着剤102によって接着されている。なお、第1接着剤101は、ヘッドチップ10と流路部241およびホルダー本体23とを接着し、第2接着剤102は、ヘッドチップ10とホルダー本体23とを接着するようにしてもよい。
【0109】
なお、第1ホルダー部材21には、一実施形態と同様に、第1配線挿通孔213、凹部214、第5固定孔215、大気開放孔216、第3凸部217、第4凸部218等が形成されている。
【0110】
ホルダー本体23は、熱硬化性樹脂で構成されている。このため、ホルダー本体23の線膨張係数を小さくすると共に、ヘッドチップ10を構成する材料との線膨張係数の差を小さくして、熱膨張による反りの発生を抑制することができる。また、ホルダー流路部材24は、熱可塑性樹脂で構成されている。このように第2流路212が形成されたホルダー流路部材24を熱可塑性樹脂とすることで、吸湿による膨潤を抑制することができる。また、ホルダー流路部材24は、流路を形成するために複雑な形状を有するため、熱硬化性樹脂よりも成型時の充填性がよい熱可塑性樹脂で形成することが好ましい。また、熱硬化性樹脂はフィラーを多く含むため、ホルダー流路部材24を熱硬化性樹脂とした場合、ホルダー流路部材24内の流路にフィラーが異物として発生しやすい。その点でも、ホルダー流路部材24を熱可塑性樹脂で形成することが好ましい。
【0111】
(変形例4)
図23および図24は、一実施形態に係る液体噴射ヘッド1の変形例4を示す第1ホルダー部材21を-Z方向に見た平面図である。
【0112】
図23に示すように、不図示のヘッドチップ10は、第1接着剤101と第2接着剤102とによって第1ホルダー部材21に接着されている。
【0113】
第1接着剤101は、保持部211の+Z方向を向く底面において、第2流路212の周囲に亘って連続して設けられている。
【0114】
第2接着剤102は、保持部211の外周に沿って周方向に亘って連続して設けられた外周部102aと、第1配線挿通孔213の間にX軸方向に沿って延設された第1補強部102bと、を有する。
【0115】
このような構成であっても、第2接着剤102は、Z軸方向に見て、第1接着剤101を囲むようにして配置されていることに含まれる。
【0116】
また、図24に示すように、第2接着剤102は、外周部102aおよび第1補強部102bに加えて、第1接着剤101の周囲に点在して設けられる第2補強部102cを有する。このように第2補強部102cを設けることで、第1接着剤101を硬化させるために加熱することで膨張しても、接着面にずれが生じるのを抑制して、常温に戻した際のヘッドチップ10や固定板30の反りを抑制することができる。
【0117】
(変形例5)
前述の実施形態では、第1ホルダー部材21を固定板30と線膨張係数が略等しい熱硬化性樹脂で形成していたが、第1ホルダー部材21を固定板30と線膨張係数が略等しいステンレス鋼やセラミックスで形成しても構わない。このような構成であっても、前述の実施形態と同様の効果を奏することができる。なお、第1ホルダー部材21及び第2ホルダー部材22を一体としてホルダー20を、固定板30と線膨張係数が略等しいステンレス鋼又はセラミックスで形成することも考えられるが、ステンレス鋼やセラミックスは、樹脂材料よりも重く且つコストも高いため、第1ホルダー部材21を固定板30と線膨張係数が略等しいステンレス鋼やセラミックスで形成し、第2ホルダー部材22を熱可塑性樹脂で形成することが好ましい。
【0118】
(他の変形例)
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明の基本的な構成は上述したものに限定されるものではない。
【0119】
また、上述した各実施形態および変形例では、インサートナット120として、熱可塑性樹脂で構成されるインサートナット120を用いたが、特にこれに限定されず、インサートナット120は、第6固定孔121の内周面にネジ溝が予め設けられた金属材料で構成されるものであってもよい。つまり、第3ネジ部材203は、インサートナット120のネジ溝に螺合する通常のネジであってもよい。
【0120】
もちろん、他の第1ネジ部材201および第2ネジ部材202は、タッピングネジに限定されず、通常のネジ溝が切られた雌ネジに螺合する通常のネジであってもよい。また、第1ネジ部材201および第2ネジ部材202が螺合する相手が熱可塑性樹脂で構成される場合には、第3ネジ部材203と同様に熱可塑性樹脂または金属材料で構成されるインサートナット120等を設けるようにすればよい。
【0121】
また、上述した各実施形態および変形例では、第1ネジ部材201は、第1カバー60に螺合するようにしたが、特にこれに限定されず、第1ネジ部材201が螺合する部材は、他の部材であってもよい。第2ネジ部材202においても同様に、第1カバー60以外の部材に螺合するようにしてもよい。さらに、第3ネジ部材203は、ヘッドチップ10と第1カバー60とを締結するものであるが、ヘッドチップ10と第1カバー60以外の部材とを締結するものであってもよい。
【0122】
(他の実施形態)
上述した一実施形態の液体噴射ヘッド1は、インクジェット式記録装置に代表される液体噴射装置に搭載される。図25は、液体噴射装置Iの一例を示す概略図である。
【0123】
図25に示す液体噴射装置Iは、液体噴射ヘッド1と、液体貯留部3と、制御部4と、媒体Sを送り出す搬送機構5と、移動機構6と、を具備する。
【0124】
液体噴射ヘッド1は、液体貯留部3から供給されるインクを複数のノズルNから媒体Sに噴射する。
【0125】
液体貯留部3は、液体噴射ヘッド1から噴射される複数種類、例えば、複数色のインクを個別に貯留する。液体貯留部3としては、例えば、液体噴射装置Iに着脱可能なカートリッジ、可撓性のフィルムで形成された袋状のインクパック、インクを補充可能なインクタンクなどが挙げられる。
【0126】
制御部4は、特に図示していないが、例えば、CPU(Central Processing Unit)またはFPGA(Field Programmable Gate Array)等の制御装置と、半導体メモリー等の記憶装置と、を備えている。制御部4は、記憶装置に記憶されたプログラムを制御装置が実行することで液体噴射装置Iの各要素、すなわち、液体噴射ヘッド1、搬送機構5、移動機構6等を統括的に制御する。
【0127】
搬送機構5は、媒体SをX方向に搬送するものであり、搬送ローラー5aを有する。すなわち搬送機構5は、搬送ローラー5aが回転することで媒体SをX軸方向に搬送する。なお媒体Sを搬送する搬送機構5は、搬送ローラー5aを備えるものに限られず、例えば、ベルトやドラムによって媒体Sを搬送するものであってもよい。
【0128】
移動機構6は、液体噴射ヘッド1をY軸方向に沿って往復させるための機構であり、搬送体7と搬送ベルト8とを具備する。搬送体7は、液体噴射ヘッド1を収容する略箱形の構造体、いわゆるキャリッジであり、搬送ベルト8に固定される。搬送ベルト8は、Y方向に沿って架設された無端ベルトである。制御部4による制御のもとで搬送ベルト8が回転することで液体噴射ヘッド1が搬送体7と共にY軸方向に往復移動する。なお搬送体7は、液体噴射ヘッド1と共に液体貯留部3を搭載する構成であってもよい。
【0129】
液体噴射ヘッド1は、制御部4による制御のもとで、液体貯留部3から供給されたインクを複数のノズルNのそれぞれからインク滴として+Z方向に噴射する噴射動作を実行する。この液体噴射ヘッド1による噴射動作が、搬送機構5による媒体Sの搬送や移動機構6による液体噴射ヘッド1の往復移動と並行して行われることにより、媒体Sの表面にインクによる画像が形成される、いわゆる印刷が行われる。
【0130】
なお、上述した液体噴射装置Iでは、液体噴射ヘッド1が搬送体7に搭載されて主走査方向であるY軸方向に移動するものを例示したが、特にこれに限定されない。例えば、液体噴射ヘッド1が移動しないように固定して、媒体Sを搬送方向に移動させるだけで印刷を行う、所謂、ライン式記録装置にも本発明を適用することができる。
【0131】
なお、上記実施の形態においては、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッドを挙げて説明したが、本発明は、広く液体噴射ヘッド全般を対象としたものであり、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドにも勿論適用することができる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられ、かかる液体噴射ヘッドを備えた液体噴射装置にも適用できる。
【0132】
(付記)
以上に例示した形態から、例えば以下の構成が把握される。
【0133】
好適な態様である態様1に係る液体噴射ヘッドは、複数の部材を積層方向に積層することで構成された液体噴射ヘッドであって、液体を噴射する複数のヘッドチップと、前記複数のヘッドチップが固定され、前記複数のヘッドチップの夫々を露出する複数の露出開口部を有する固定板と、前記固定板との間で前記複数のヘッドチップを保持するホルダーと、を備え、前記ホルダーは、前記複数のヘッドチップ内の流路と連通する流路を有する第1部材と、前記積層方向に見て前記第1部材の外形よりも大きい第2部材と、を有し、前記第1部材は、線膨張係数が前記固定板の線膨張係数と略等しい熱硬化性樹脂で構成されており、前記第2部材は、線膨張係数が前記固定板の線膨張係数よりも高い熱可塑性樹脂で構成されている。
【0134】
これにより、第1部材を固定板の線膨張係数と略等しい熱硬化性樹脂で構成することで、接着剤を硬化させるために加熱した際の液体噴射ヘッドに反りが発生するのを抑制することができる。また、液体噴射ヘッドを加熱しても反りの発生を抑制することができるため、ヘッドチップと第1部材との流路接続部分の接着剤として、加熱することで硬化する熱硬化型の接着剤を使用することができ、流路接続部分の接着剤の耐液性が低下するのを抑制することができる。また、印刷時の熱によって液体噴射ヘッドが加熱された際にも、第1部材を固定板の線膨張係数と略等しい熱硬化性樹脂で構成することで、反りの発生を抑制して、液滴の媒体への着弾位置ズレを抑制することができる。
【0135】
また、熱硬化性樹脂は、熱可塑性樹脂に比べて吸湿による膨潤が生じ易いため、第1部材に比べて大きい第2部材を熱可塑性樹脂で構成することで、大きな第2部材の膨潤を抑止して、膨潤による各ヘッドチップ間のノズルの相対的な位置決め精度や、ホルダーに対するノズルの位置決め精度が低下するのを抑制することができる。
【0136】
態様1の具体例である態様2において、前記ヘッドチップの前記流路と前記第1部材の前記流路とは、熱硬化型の接着剤である第1接着剤によって液密に接続される。これによれば、耐液体性を備える熱硬化型の接着剤である第1接着剤を用いて、流路の接続部分を液密に接着することで、第1接着剤の耐久性を向上し、接着強度の低下や液体の漏出などを抑制することができる。
【0137】
態様2の具体例である態様3において、前記積層方向に見て前記第1接着剤を囲むようにして配置された、常温硬化型の接着剤である第2接着剤を備え、前記第2接着剤は、前記固定板と前記第1部材とを接着する。これによれば、第1部材とヘッドチップとを常温硬化型の接着剤である第2接着剤によって接着することで、第1接着剤を硬化させるために加熱しても接着面の位置ズレが生じ難く、常温に戻した際の液体噴射ヘッドの反りを抑制することができる。また、固定板と第1部材とを常温型の接着剤である第2接着剤で接着することで、第1接着剤を硬化させるために加熱しても、固定板と第1部材との接着面にズレが生じ難く、常温に戻した際に固定板の反りを抑制することができる。このため、固定板の反りによるノズル面の位置ズレを抑制して、液滴の媒体への着弾位置ズレを抑制することができる。
【0138】
態様3の具体例である態様4において、前記第1接着剤と前記第2接着剤との間の隙間は、大気に連通している。これによれば、第1接着剤を硬化させるために加熱した際に、第1接着剤と第2接着剤との間の隙間の空気が加熱されることで膨張し、膨張した空気によって第1接着剤を流路側に押し込むのを抑制することができる。
【0139】
態様1の具体例である態様5において、前記第1部材に締結される第3部材と、熱可塑性樹脂で形成されたインサートナットと、を更に備え、前記第1部材は、前記インサートナットを収容するための凹部を有し、前記凹部に収容された前記インサートナットと前記第3部材との間に前記第1部材を挟んだ状態でタッピングネジを前記インサートナットに螺合させることで、前記第1部材と前記第3部材とが固定される。これによれば、第1部材を熱硬化性樹脂で構成しても、熱可塑性樹脂で形成されたインサートナットを用いることで、第3部材と第1部材とをタッピングネジで締結することができる。
【0140】
態様5の具体例である態様6において、前記積層方向に見て、前記凹部の内周面と前記インサートナットの外周面との少なくとも一部に形成された隙間に配置された接着剤によって、前記第1部材と前記インサートナットとが固定される。これによれば、タッピングネジをインサートナットに螺合させる際に、凹部からインサートナットが脱落するのを抑制することができる。
【0141】
態様5の具体例である態様7において、前記インサートナットの外周面および前記第1部材の前記凹部の内周面の一方には、係合部が設けられ、前記インサートナットの外周面および前記第1部材の前記凹部の内周面の他方には、前記係合部と係合することによって前記積層方向に沿う回転軸を中心に前記インサートナットが前記凹部に対して回転するのを規制する被係合部が設けられる。これによれば、タッピングネジをインサートナットに螺合させる際に、インサートナットがタッピングネジと共に供回りするのを抑制して、確実に締結することができる。
【0142】
態様5の具体例である態様8において、前記第3部材に積層される流路部材を更に備え、前記第3部材と前記第1部材とを固定する前記タッピングネジと同じ種類のタッピングネジを前記第3部材のネジ孔に螺合させることで、前記第3部材と前記流路部材とが固定される。これによれば、ネジを共通化することでコストを低減することができる。また、ネジの取り間違いによる締結不良を抑制することができる。
【0143】
好適な態様である態様9に係る液体噴射装置は、態様1~8の何れかに記載の液体噴射ヘッドを具備する。液体の媒体への着弾位置ズレを抑制した液体噴射装置を実現できる。
【符号の説明】
【0144】
I…液体噴射装置、1…液体噴射ヘッド、3…液体貯留部、4…制御部、5…搬送機構、5a…搬送ローラー、6…移動機構、7…搬送体、8…搬送ベルト、10…ヘッドチップ、11…第1流路、12…配線基板、13…第1凸部、14…第2凸部、15…溝部、16…第2接着面、17…第1接着面、20…ホルダー、21…第1ホルダー部材、211…保持部、212…第2流路、213…第1配線挿通孔、214…凹部、214a…第1係合凹部、214b…第2係合凹部、215…第5固定孔、216…大気開放孔、216A…接着剤導入孔、217…第3凸部、218…第4凸部、22…第2ホルダー部材、221…開口部、23…ホルダー本体、231…流路部保持孔、24…ホルダー流路部材、241…流路部、242…連結部、30…固定板、31…露出開口部、40…流路部材、41…接続流路、42…第1突起部、43…第2配線挿通孔、44…第7固定孔、50…中継基板、51…第3配線挿通孔、52…第1突起部挿通孔、53…コネクター、54…第8固定孔、60…第1カバー、61…配線接続口、62…第1固定部、63…第1固定孔、65…貫通孔、66…第4固定孔、67…第9固定孔、70…シール部材、71…管状部分、72…連通流路、80…フィルターユニット、81…第1流路部材、82…第2流路部材、83…第3流路部材、831…第2固定部、831a…第1部分、831b…第2部分、832…第2固定孔、84…接続部、85…フィルター、86…第2突起部、90…第2カバー、91…フィルターユニット露出部、92…第3固定孔、101…第1接着剤、102…第2接着剤、102a…外周部、102b…第1補強部、102c…第2補強部、103…第3接着剤、104…第4接着剤、105…第5接着剤、110…供給流路、111…第1供給流路、111a…第1液体溜まり部、112…第2供給流路、112a…第2液体溜まり部、113…第3供給流路、120…インサートナット、121…第6固定孔、122…第1係合凸部、123…第2係合凸部、201…第1ネジ部材、202…第2ネジ部材、203…第3ネジ部材、N…ノズル、NS…ノズル面、S…媒体
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