(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064481
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】磁石付きサポータ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61N 2/02 20060101AFI20240507BHJP
A61F 5/02 20060101ALI20240507BHJP
A61F 5/01 20060101ALI20240507BHJP
A41C 1/08 20060101ALI20240507BHJP
A41D 13/00 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
A61N2/02 H
A61F5/02 K
A61F5/01 K
A41C1/08
A41D13/00 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173092
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000114606
【氏名又は名称】モリト株式会社
(74)【復代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100087815
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 昭二
(72)【発明者】
【氏名】國澤 大輝
(72)【発明者】
【氏名】清水 寛之
【テーマコード(参考)】
3B011
3B131
3B211
4C098
4C106
【Fターム(参考)】
3B011AB18
3B131AA02
3B131AA29
3B131CA46
3B211AB18
4C098BB05
4C098BC02
4C098BC13
4C106AA01
4C106BB03
4C106CC03
4C106CC14
4C106DD07
4C106FF02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】改良された磁石付きサポータを提供すると共に、このサポータに対して磁石を効果的に配置し、配列する方法を提供する。
【解決手段】サポータ(1)の本体ベルト(2)は着用者の着用箇所に当接する少なくとも1枚の板状ステイ(41)を有する。前記ステイ(41)には複数の貫通孔があり、前記各貫通孔に磁石(5)が埋め込まれている。前記ステイ(41)と前記磁石(5)は厚みがほぼ等しく、前記磁石(5)の埋め込み箇所は表面の起伏がほとんどないものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有端ベルト又は無端ベルトからなる少なくとも1本の本体ベルト(2)を有し、前記本体ベルト(2)は、着用者の着用箇所に取り付け可能であるサポータ(1)において、
前記本体ベルト(2)は着用者の着用箇所に当接する少なくとも1枚の板状ステイ(41)を有し、
前記ステイ(41)は複数の貫通孔(43)を有し、前記各貫通孔(43)には磁石(5)が埋め込まれており、前記ステイ(41)と前記磁石(5)は厚みがほぼ等しいものである
ことを特徴とするサポータ(1)。
【請求項2】
前記ステイ(41)に埋め込まれた磁石(5)は、隣り合うもの同士のN極とS極が交互配列となるように設定されている請求項1記載のサポータ(1)。
【請求項3】
ステイ(41)に磁石(5)を埋め込んだサポータ(1)の製造方法であって、この方法は次の各工程を有することを特徴とする。
(a)一定間隔ごとに穴(61)をあけた型板(6)を用意する。
(b)伸縮性の高い第1生地(63)を前記型板(6)の上に置き、前記穴(61)の上に自由状態の磁石(5)を置く。
(c)前記第1生地(63)上の磁石(5)を穴(61)の中にしっかりと押し込み、前記第1生地(63)により前記磁石(5)の側部と下部を包囲させる。
(d)前記磁石(5)の上側から第2生地(65)を当てて前記第1生地(63)と前記第2生地(65)を直接的または間接的に強固に接着させる。
(e)最後に、前記第1生地(63)、前記第2生地(65)により封入された前記磁石(5)を前記ステイ(41)の中に挿入する。
【請求項4】
前記(a)工程において使用する型板(6)は、一定間隔ごとに穴(61)をあけ、その穴の底部に固定磁石(62)を設定したものであって、前記固定磁石(62)は隣接する穴(61)ごとにN極とS極を交互配列 されているものである請求項3記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サポータ(首・肩・膝・肘・腰・手首・足首用のサポータを含む。)及びその製造方法に関する。このサポータは、主として人体各部の保温、けがの防止や治療、痛みの緩和のために用いられるが、他にも体型・姿勢の矯正のためにも用いられる。以下、腰部サポータを例にとって説明する。
【背景技術】
【0002】
さまざまな原因により、腰痛や背中痛で悩んでいる現代人は驚くほど多い。厚生労働省の調査によると、体の痛み等何らかの自覚症状がある人(有訴者)の、およそ3人に1人(約30%)が腰痛を自覚しているという。
【0003】
この問題に対処するため手軽に利用されているのは、腰部サポータを腰部に装着することであり、多種多様な発明・考案が公知となっている。その中で腰部サポータに磁石(いわゆる磁気治療器)を組み込む提案が知られている(下記特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-191850
【特許文献2】実用新案登録3118146
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この特許文献1、2の実物を見たことはないが、実施例の図面を見ると、磁石は腰部サポータから内側に突出しており、使用者に不快な触覚を与えるかもしれない。
【0006】
本発明はこの問題点を解消した磁石付きサポータを提供すると共に、このサポータに対して磁石を効果的に配置し、配列する製造方法をも提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明のサポータは、少なくとも1本の有端ベルト又は無端ベルトからなる本体ベルトを有し、前記本体ベルトは、着用者の着用箇所に取り付け可能であるものにおいて、前記本体ベルトは着用者の前記着用箇所に当接する少なくとも1枚の板状ステイを有し、前記ステイは複数の貫通孔を有し、前記各貫通孔に磁石が埋め込まれており、前記ステイと前記磁石は厚みがほぼ等しいものであることを特徴とする。上記において、「有端ベルト」はベルトの左右端部を互いにつないだり離したりすることにより着用者の着用箇所を包囲したり開放したりできるものである。後記する実施例の腰部ベルトは「有端ベルト」の一例である。「無端ベルト」は筒状であって、ベルト生地の弾力性により着用者の着用箇所を締め付けるものである。
【0008】
好ましくは、前記ステイに埋め込まれた磁石は隣接するもの同士のN極とS極が交互配列となるように設定されていることである。
【0009】
本発明は、ステイに前記磁石を埋め込んだサポータの製造方法でもあって、この方法は次の各工程を有することを特徴とする。
【0010】
(a)一定間隔ごとに穴61をあけた型板6を用意する。
(b)伸縮性の高い第1生地63を前記型板6の上に置き、前記穴61の上に自由状態の磁石5を置く。
(c)前記第1生地63上の磁石5を穴61の中にしっかりと押し込み、前記第1生地63により前記磁石5の側部と下部を包囲させる。
(d)前記磁石5の上側から第2生地65を当てて前記第1生地63と前記第2生地65を直接的又は間接的に強固に接着させる。
(e)最後に、前記第1生地、第2生地63,65により封入された前記磁石5を前記ステイ41の中に挿入する。
【0011】
好ましくは、前記(a)工程で使用する型板6は、一定間隔ごとに穴61をあけ、その穴の底部に固定磁石62を設定したものであって、前記固定磁石62は隣接する穴61ごとにN極とS極を交互配列 されているものである。このようにすることにより、前記(b)工程で接着させる磁石5も隣接するもの同士のN極とS極が交互配列 されたものとなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ステイに埋め込まれた磁石はステイと厚みがほぼ等しく、前記磁石の埋め込み箇所は表面の起伏がほとんどないものであるので、着用者に不快な感触を与えることはほとんどない。
【0013】
さらに本発明の方法によれば、ステイに埋め込まれた磁石は隣接するもの同士のN極とS極が交互配列となるように設定されるので、磁石の磁力が広範囲に及ぶ。
【0014】
本発明の方法では、磁石5を型板6に置く際、予め型板6の固定磁石62には、S極、N極を交互に配列をしているため、磁石5のS極、N極の向きを間違えると反転され正しい向きに修正されることで、配列の誤配置を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施例の腰部ベルトの、(a)平面図、(b)左側面図、(c)正面図、(d)右側面図、(e)底面図、(f)背面図である。
【
図2】
図1のA-A線とB-B線で囲まれた部分の拡大図である。
【
図4】ステイの、(a)正面図、(b)背面図、(c)右側面図、(d)左側面図である。
【
図5】(a)~(g)は、ステイの中に磁石を封入する方法を示す各段階を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付の図面に基づき、本発明の1実施例を説明する。
【実施例0017】
図1は本発明の実施例である腰ベルトである。
図1(a)~(f)に示すように、本実施例の腰ベルト1は、本体ベルト2と補助ベルト3からなる。この実施例では、本体ベルト2は長さ約75~110cm、高さは最も高い部分で約10~20cmである。
【0018】
本体ベルト2は、中央の第1部分20と、その両隣に位置して、第1部分よりも伸縮性が大である第2部分21、22と、この第2部分それぞれ外方に設けられた面ファスナ雌部材23、24と、本体ベルトの末端に設けられた面ファスナ雄部材25を有する。各部分の長さは、第1部分20が20~30cm、第2部分21、22がそれぞれ5~10cm、面ファスナ雌部材23、24がそれぞれ20~30cm、面ファスナ雄部材25は4~6cmである。面ファスナ雌部材24と面ファスナ雄部材25は表裏の位置関係にある。
【0019】
本体ベルト2の第1部分20と第2部分21,22は全周がフリーカットのポリエステル、ナイロンなどの生地で形成されている。しかし、第1部分20は非伸縮性の生地(第3部分26)を接合することによりその伸縮性をなくしている。接合は、縫製ではなく、ホットメルトで貼り付け加工により行っている。ホットメルトによる全面貼り付けのため、第2部分21,22に使用した非伸縮性生地がフリーカットでなくても端面の解れが発生しにくい。また、縫製をしないことにより、装着したときのごわごわ感をなくすことができる。
【0020】
面ファスナ雌部材23、24は、裏側の非伸縮性の生地と表側の面ファスナ付着性のパイル生地を貼りあわせて形成したものである。
【0021】
面ファスナ雄部材25は、例えば次のようなものを使用することができる。
【0022】
(1)ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン系繊維、塩化ビニル系繊維などから選ばれた合成繊維を編織して得た編織製基材の一面に鈎状、きのこ状、ループ状の係合素子群を有する織製または編製面ファスナ。
(2)ポリエステル、ナイロン、ポリアミド、ポリオレフィン、塩化ビニル系重合体、ポリウレタンなどの熱可塑性樹脂、あるいは熱硬化性樹脂を成形して得たシート状基材の一面に鈎状、きのこ状、膨頭状、角状、棒状などの係合素子群を有する成形面ファスナ。
【0023】
本体ベルト2の第1部分の中心付近には、縦方向に延びる一対のほぼ等しい長さの板状ステイ41,42(「ボーン」とも呼ばれることがある)が取り付けられている。ステイは例えば縦約14~16cm、幅約4~6cm、厚み約1~3mmである。
【0024】
各ステイ41,42の素材は、金属製(アルミ、スチール等)又は非金属製(PET、PP、PE等)のどちらでもよい。通常、金属製は身体の曲線に合わせて手で折り曲げて使用するが、非金属製であれば装着時の伸度によって屈曲させることが可能であり、本実施例では非金属製のボーンの使用が望ましい。
【0025】
本体ベルト2の上面に補助ベルト3が設けられている。補助ベルト3は装着時に引っ張ることで硬度のある各ステイ41,42を体幹に押し当てるだけの力がなければならない。
【0026】
本発明実施例にとって特徴的なのは、各ステイ41,42に複数の磁石5が埋め込まれていることである。使用されている磁石5はいわゆる「磁気治療器」として市販されている周知の円板状磁石である。たとえば、鋼鉄、タングステン鋼、MK鋼、KS鋼等よりなる永久磁石、またはこれらの遠赤外線セラミックを混合して得られる永久磁石を用いることができる。形状も市販のものは薄型円板状のものが多く、これを用いるのが便利であるが、その他の形状であってもよい。埋め込む磁石5の数はステイ41,42の広さにもよるが、ステイ1枚当たり3~10個程度が好ましい。
【0027】
この磁石をステイ41,42に取り付けるため、ステイ41,42にあらかじめ貫通孔43を開けておき、その中に磁石5を入れ、その磁石5の上下を生地で封止する。その際、ステイ41,42の厚みと磁石5の厚みをほぼ等しくしておき、起伏がほとんどない、いわゆるツライチ状態とする。そうすることにより、人体に装着したとき、凹凸がないので不快な感触がなくなる。
【0028】
ステイ41,42の中に磁石5を配列するときに好ましいのは隣接する磁石のN極とS極を交互配列することである。そのように磁石5を配置することにより、磁力が点ではなく、面として作用し、磁力の影響が広範囲に及ぶことが知られている。
【0029】
磁石5のN極とS極を交互配列するための方法について、
図5に基づいて説明する。ステイ41,42は2本あるが、同じものなので、ステイ41で代表させて説明する。
【0030】
まず(a)に示すような型板6を用意する。この型板6には一定間隔ごとに円柱状の穴61をあけ、その穴の底部に固定磁石62を設定する。その際、固定磁石62は隣接する穴61ごとにN極とS極を交互配列する。続いて、伸縮性の高い、例えばニットの第1生地63をその型板6の上に置き、その各穴61の上に自由状態の磁石5を置く。磁石5のN極とS極を意識せずに置いても、型板底部の固定磁石62に付着するように第1生地63上で位置決めされる。同極同士が向かい合っていた場合には、磁石5は第1生地63上で反転する。
【0031】
このとき、型板6の固定磁石62は穴61の中でN極とS極が交互配列となるように設定されていたのであるから、第1生地63上の磁石5も必然的にN極とS極が交互配列する。
【0032】
次に(b)に示すように、第1生地63上の磁石5を穴61の中にしっかりと押し込むと、第1生地63は伸長して磁石5の側部と下部を包囲する。その時点で、磁石5を上側からもホットメルトシート64で覆う。第1生地63とホットメルトシート64は強固に接着する。同時に
図5(c)に示すように、ホットメルトシート64を第2生地65に付着させる。第2生地65は、
図4(a)(b)において、長方形の生地として描かれていたものである。
【0033】
最後に、第1、第2生地63,65に封入された磁石5はステイ41の中に挿入される。
図5(e)(f)に示すように、型板6の孔61同士の間隔はステイ41の穴61同士の間隔と同じであり、型板6の穴61の直径は磁石5の直径とほぼ同じであり、型板6の厚みは磁石5の厚みとほぼ同じであることは言うまでもない。
【0034】
図5(g)が磁石5付きのステイ41の完成状態である。完成した磁石5付きのステイ41にホットメルトシートを挟み、第1部分20と第2部分21,22の間に接着することで、サポータ内でしっかりとステイが本体ベルト2に固定される。
【0035】
再び
図1に戻ると、補助ベルト3は、当て布31により第1部分20に固着された非伸縮性の菱形部分32と、この菱形部分32のそれぞれ外方に位置する伸縮性のある紐部分33,34を有する。
【0036】
紐部分33,34は一端が左右の面ファスナ雌部材23,24により固定され、他端が自由端となっている。自由端の末端には面ファスナ雄部材37,38が取り付けられている。この紐部分33,34の自由端の面ファスナ雄部材37,38は面ファスナ雌部材23、24に付着可能である。
【0037】
この腰ベルト1の取付方法は、この種の従来のものと同じである。本体ベルト2の雌雄面ファスナ23~25同士で腰部に装着固定し、補助ベルト3を引っ張って面ファスナ雄部材37、38を本体ベルト2の面ファスナ雌部材23,24に付着させることにより、本体ベルト2の締め付け具合を調整する。