(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064483
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】三次元造形装置、および、三次元造形物の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 64/295 20170101AFI20240507BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20240507BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240507BHJP
B29C 64/209 20170101ALI20240507BHJP
B29C 64/106 20170101ALI20240507BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20240507BHJP
B29C 64/393 20170101ALI20240507BHJP
B29C 64/245 20170101ALI20240507BHJP
【FI】
B29C64/295
B33Y30/00
B33Y10/00
B29C64/209
B29C64/106
B33Y50/02
B29C64/393
B29C64/245
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173094
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】合津 昌幸
(72)【発明者】
【氏名】橋本 大毅
(72)【発明者】
【氏名】中村 和英
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AP06
4F213AR07
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL73
4F213WL74
4F213WL85
(57)【要約】
【課題】簡易な制御によって、造形領域に先に積層された既設層を加熱し、既設層上に後続の層を積層可能な技術を提供する。
【解決手段】三次元造形装置は、材料を可塑化して可塑化材料を生成する可塑化部と、可塑化材料を吐出するノズルと、可塑化材料が積層される造形面を有するステージと、ノズルとステージとの相対的な位置を変化させる移動部と、ステージ上の可塑化材料を加熱するヒーターを有し、貫通孔が形成されたプレート形状の第1加熱部と、ノズルとともにステージとの相対位置が変化するように構成され、第1加熱部を支持することでステージと対向する位置に配置する第1支持部とを備える。造形時において、ノズルの少なくとも一部は、貫通孔内に位置し、第1支持部は、第1加熱部の姿勢の変更を許容可能に構成された姿勢変更部を有し、姿勢変更部は、加熱面と造形面とが平行に接触した状態で姿勢を固定可能に構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料を可塑化して可塑化材料を生成する可塑化部と、
前記可塑化材料を吐出するノズルと、
前記可塑化材料が積層される造形面を有するステージと、
前記ノズルと前記ステージとの相対的な位置を変化させる移動部と、
前記ステージに積層された前記可塑化材料を加熱するヒーターを有し、貫通孔が形成されたプレート形状の第1加熱部と、
前記ノズルとともに前記ステージとの相対位置が変化するように構成され、前記第1加熱部を支持することによって、前記第1加熱部を前記ステージと対向する位置に配置する第1支持部と、を備え、
三次元造形物の造形時において、前記ノズルの少なくとも一部は、前記貫通孔内に位置し、
前記第1支持部は、前記第1加熱部の姿勢の変更を許容する姿勢変更部を有し、
前記姿勢変更部は、前記第1加熱部の前記造形面に近い面である加熱面と前記造形面とが平行に接触した状態で、前記姿勢を固定可能に構成されている、三次元造形装置。
【請求項2】
請求項1に記載の三次元造形装置であって、
前記第1支持部は、
前記ノズルとともに前記ステージとの相対位置が変化するように固定された支持部材と、
前記支持部材から前記第1加熱部を吊り下げて支持し、前記姿勢変更部として機能する吊り下げ部と、を有し、
前記吊り下げ部は、
前記支持部材に対して吊り下げ方向に沿って移動することで、前記第1加熱部の前記吊り下げ方向における位置を変更する可動部材と、
前記可動部材の移動を許容および規制する規制部材と、を有し、
前記規制部材は、前記可動部材の移動を許容することによって前記姿勢の変更を許容し、前記可動部材の移動を規制することによって前記姿勢を固定する、三次元造形装置。
【請求項3】
請求項1に記載の三次元造形装置であって、
前記移動部と、前記姿勢変更部と、を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記加熱面の傾きを調整する傾き調整処理を実行し、
前記制御部は、前記傾き調整処理において、
前記移動部を制御することによって前記加熱面と前記造形面とを近付ける処理と、前記姿勢変更部を制御することによって前記姿勢の変更を許容する処理と、を実行することによって、前記加熱面を前記造形面と平行に接触させ、
前記加熱面と前記造形面とが平行に接触した状態で、前記姿勢変更部を制御することによって前記姿勢を固定する、
三次元造形装置。
【請求項4】
請求項3に記載の三次元造形装置であって、
前記制御部は、前記ステージと、前記第1加熱部とを、それぞれ、予め定められた温度に昇温させた後に、前記傾き調整処理を実行する、三次元造形装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の三次元造形装置であって、
前記ステージは、
平面度が調整された基準面の上に載置され、前記造形面を有する造形ステージと、
前記造形ステージの下方に配置され、前記造形ステージを加熱する第2加熱部と、
前記基準面を有し、前記造形面と垂直な方向に沿って見たときに、前記第2加熱部の外側に配置された載置部と、
前記第2加熱部を前記造形ステージに押し付ける押し付け部と、
前記造形ステージを前記基準面に相対的に押さえる押さえ部と、を有する、
三次元造形装置。
【請求項6】
請求項5に記載の三次元造形装置であって、
前記ステージは、前記載置部を支持する第2支持部を有し、
前記造形ステージは、前記造形面に垂直な方向に沿って見たときに、複数の角部を有し、
前記載置部の前記基準面を有する部分は、前記第2支持部よりも熱膨張率が低い部材によって形成され、かつ、前記造形ステージの各角部に対応する位置に設けられている、三次元造形装置。
【請求項7】
請求項5に記載の三次元造形装置であって、
前記ステージは、前記押し付け部を、前記造形ステージから離れる後退方向、および、前記ステージに近づく前進方向に移動させるように構成された押し付け移動部を有する、三次元造形装置。
【請求項8】
請求項7に記載の三次元造形装置であって、
前記ステージは、前記押し付け部の、前記後退方向および前記前進方向に沿った方向における位置を検出する検出部を有する、三次元造形装置。
【請求項9】
請求項7に記載の三次元造形装置であって、
前記押し付け部は、
前記第2加熱部を載置し、角部を有する載置板と、
前記載置板の中央部に連結された中央柱と、
前記載置板の角部および前記載置板の中央部に対応して設けられ、前記載置板を前記造形ステージに向けて付勢する複数の付勢部材と、を有し、
前記押し付け移動部は、前記中央柱を前記後退方向および前記前進方向に移動させることによって、前記押し付け部を移動させる、三次元造形装置。
【請求項10】
プレート形状を有し、ノズルとともにステージとの相対位置が変化するように構成され、前記ステージと対向する位置に配置された第1加熱部に形成された貫通孔内に、前記ノズルの少なくとも一部を位置させる配置工程と、
前記配置工程が完了した後に、前記ノズルと前記ステージとの相対的な位置を変化させながら、材料を可塑化して生成された可塑化材料を前記ノズルから前記ステージに吐出することによって、前記ステージの造形面に前記可塑化材料を積層させる積層工程と、
前記ステージに積層された前記可塑化材料を、前記第1加熱部によって加熱する加熱工程と、を備え、
前記配置工程、前記積層工程および前記加熱工程に先立って、
前記第1加熱部の姿勢の変更を許容する姿勢変更部によって前記姿勢の変更を許容した状態で、前記第1加熱部の前記造形面に近い面である加熱面と、前記造形面と、を平行に接触させる接触工程と、
前記加熱面と前記造形面とが平行に接触した状態で、前記姿勢を固定する固定工程と、を実行する、三次元造形物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、三次元造形装置、および、三次元造形物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
三次元造形装置に関し、例えば、特許文献1に記載された装置では、ヘッドに腕部を介して接続されたエネルギー源で、既設層を加熱し、加熱した既設層の上に後続層を積層することで、既設層と後続層との間の密着性を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載した装置では、加熱した既設層の上に後続層を積層するために、ノズルよりも前方の位置を加熱することを要する。そのため、ノズルの移動方向を変化させるたびに、ノズル前方を加熱できる位置にエネルギー源を移動させることを要する場合があり、制御が複雑化する場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1の形態によれば、三次元造形装置が提供される。この三次元造形装置は、前記可塑化材料を吐出するノズルと、前記可塑化材料が積層される造形面を有するステージと、前記ノズルと前記ステージとの相対的な位置を変化させる移動部と、前記ステージに積層された前記可塑化材料を加熱するヒーターを有し、貫通孔が形成されたプレート形状の第1加熱部と、前記ノズルとともに前記ステージとの相対位置が変化するように構成され、前記第1加熱部を支持することによって、前記第1加熱部を前記ステージと対向する位置に配置する第1支持部と、を備える。三次元造形物の造形時において、前記ノズルの少なくとも一部は、前記貫通孔内に位置し、前記第1支持部は、前記第1加熱部の姿勢の変更を許容する姿勢変更部を有し、前記姿勢変更部は、前記第1加熱部の前記造形面に近い面である加熱面と前記造形面とが平行に接触した状態で、前記姿勢を固定可能に構成されている。
【0006】
本開示の第2の形態によれば、三次元造形物の製造方法が提供される。この三次元造形物の製造方法は、プレート形状を有し、ノズルとともにステージとの相対位置が変化するように構成され、前記ステージと対向する位置に配置された第1加熱部に形成された貫通孔内に、前記ノズルの少なくとも一部を位置させる配置工程と、前記配置工程が完了した後に、前記ノズルと前記ステージとの相対的な位置を変化させながら、材料を可塑化して生成された可塑化材料を前記ノズルから前記ステージに吐出することによって、前記ステージの造形面に前記可塑化材料を積層させる積層工程と、前記ステージに積層された前記可塑化材料を、前記第1加熱部によって加熱する加熱工程と、を備える。前記配置工程、前記積層工程および前記加熱工程に先立って、前記第1加熱部の姿勢の変更を許容する姿勢変更部によって前記姿勢の変更を許容した状態で、前記第1加熱部の前記造形面に近い面である加熱面と、前記造形面と、を平行に接触させる接触工程と、前記加熱面と前記造形面とが平行に接触した状態で、前記姿勢を固定する固定工程と、を実行する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】三次元造形装置の概略構成を示す第1の図である。
【
図2】三次元造形装置の概略構成を示す第2の図である。
【
図3】スクリューの下面側の概略構成を示す斜視図である。
【
図10】第2押さえ部およびその近傍を示す図である。
【
図11】第1加熱部および支持部の概略構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
図1は、第1実施形態における三次元造形装置100の概略構成を示す第1の図である。
図2は、第1実施形態における三次元造形装置100の概略構成を示す第2の図である。
図1及び
図2には、互いに直交するX,Y,Z方向に沿った矢印が表されている。X,Y,Z方向は、互いに直交する3つの空間軸であるX軸、Y軸、Z軸に沿った方向であり、それぞれ、X軸、Y軸、Z軸に沿う一方側の方向と、その反対方向とを、両方含む。X軸及びY軸は、水平面に沿った軸であり、Z軸は、鉛直線に沿った軸である。-Z方向は、鉛直方向であり、+Z方向は、鉛直方向とは逆向きの方向である。-Z方向のことを「下」ともいい、+Z方向のことを「上」ともいう。他の図においても、X,Y,Z方向に沿った矢印が、適宜、表されている。
図1及び
図2におけるX,Y,Z方向と、他の図におけるX,Y,Z方向とは、同じ方向を表している。
【0009】
三次元造形装置100は、造形部200と、ステージ300と、移動部400と、制御部500と、第1加熱部600と、姿勢変更部800を有する第1支持部700とを備える。
【0010】
制御部500は、三次元造形装置100全体の動作を制御する制御装置である。制御部500は、1つ、または、複数のプロセッサーと、メモリーと、外部との信号の入出力を行う入出力インターフェイスとを備えるコンピューターによって構成される。制御部500は、主記憶装置上に読み込んだプログラムや命令をプロセッサーが実行することによって、三次元造形物を造形するための造形処理を実行する機能や、後述するキャリブレーション処理を実行する処理等、種々の機能を発揮する。なお、制御部500は、コンピューターによって構成される代わりに、各機能の少なくとも一部を実現するための複数の回路を組み合わせた構成により実現されてもよい。
【0011】
造形部200は、制御部500の制御下において、固体状態の材料を溶融させてペースト状にした可塑化材料を、三次元造形物の基台となる造形用のステージ300上に吐出する。造形部200は、可塑化材料に転化される前の材料の供給源である材料供給部20と、材料を可塑化して可塑化材料を生成する可塑化部30と、生成された可塑化材料を吐出するノズル61とを備える。造形部200のことをヘッドとも呼ぶ。
【0012】
本実施形態の三次元造形装置100は、造形部200として、第1造形部200aと、第2造形部200bとを備える。第1造形部200aは、材料供給部20として第1材料供給部20aを備え、可塑化部30として第1可塑化部30aを備え、ノズル61として第1ノズル61aを備えている。第2造形部200bは、材料供給部20として第2材料供給部20bを備え、可塑化部30として第2可塑化部30bを備え、ノズル61として第2ノズル61bを備えている。第1造形部200aと第2造形部200bとは、第1ノズル61aのY方向における位置と第2ノズル61bのY方向における位置とが一致するように、X方向に並んで配置されている。本実施形態では、第2造形部200bは、第1造形部200aの+X方向の位置に配置されている。第1造形部200aの構成と第2造形部200bの構成とは同様であるため、以下では、両者を特に区別しない場合、両者を単に造形部200と呼ぶこともある。また、両者の構成部材を区別する場合、第1造形部200aの構成部材には、符号「a」を付し、第2造形部200bの構成部材には、符号「b」を付して表記する。
【0013】
材料供給部20には、ペレットや粉末等の状態の材料が収容されている。本実施形態では、ペレット状に形成されたABS樹脂が材料として用いられる。本実施形態における材料供給部20は、ホッパーによって構成されている。
図2に示すように、材料供給部20の下方には、材料供給部20と可塑化部30との間を接続する供給路22が設けられている。材料供給部20は、供給路22を介して、可塑化部30に材料を供給する。
【0014】
図2に示すように、可塑化部30は、スクリューケース31と、駆動モーター32と、スクリュー40と、バレル50とを備えている。可塑化部30は、材料供給部20から供給された材料の少なくとも一部を可塑化し、流動性を有するペースト状の可塑化材料を生成して、ノズル61に供給する。「可塑化」とは、溶融を含む概念であり、固体から流動性を有する状態に変化させることである。具体的には、ガラス転移が起こる材料の場合、可塑化とは、材料の温度をガラス転移点以上にすることである。ガラス転移が起こらない材料の場合、可塑化とは、材料の温度を融点以上にすることである。
【0015】
図3は、スクリュー40のスクリュー下面42側の概略構成を示す斜視図である。
図4は、バレル50のバレル上面52側を示す概略平面図である。スクリュー40は、その中心軸RXに沿った方向である軸線方向における長さが軸線方向に直交する方向における長さよりも小さい略円柱状を有する。スクリュー40は、その回転中心となる中心軸RXがZ方向に平行になるように配置される。スクリュー40は、フラットスクリューや、ローター、スクロールとも呼ばれる。
【0016】
図2に示すように、スクリュー40は、スクリューケース31内に収納されている。スクリュー40のスクリュー上面41側は駆動モーター32に連結されており、スクリュー40は、駆動モーター32が発生させる回転駆動力によって、スクリューケース31内で回転する。駆動モーター32は、制御部500の制御下において駆動する。なお、スクリュー40は、減速機を介して駆動モーター32によって駆動されてもよい。
【0017】
図3に示すように、スクリュー下面42には、渦状の溝部45が形成されている。上述した材料供給部20の供給路22は、スクリュー40の側面から、溝部45に連通する。溝部45は、スクリュー40の側面に形成された材料導入口44まで連続している。この材料導入口44は、材料供給部20の供給路22を介して供給された材料を受け入れる部分である。
図3に示すように、本実施形態では、溝部45は、凸条部46によって隔てられて3本分形成されている。なお、溝部45の数は、3本に限られず、1本でもよいし、2本以上であってもよい。溝部45は、渦状に限らず、螺旋状あるいはインボリュート曲線状であってもよいし、中央部47から外周に向かって弧を描くように延びる形状であってもよい。
【0018】
図2に示すように、バレル50は、スクリュー40の下方に配置されている。バレル上面52は、スクリュー下面42に面しており、スクリュー下面42の溝部45と、バレル上面52との間には空間が形成される。バレル50には、スクリュー40の中心軸RX上に、後述するノズル61のノズル流路65に連通する連通孔56が設けられている。バレル50には、スクリュー40の溝部45に対向する位置に可塑化ヒーター58が内蔵されている。可塑化ヒーター58の温度は、制御部500によって制御される。
【0019】
図4に示すように、バレル上面52における連通孔56の周りには、複数の案内溝54が形成されている。それぞれの案内溝54は、その一端が連通孔56に接続され、連通孔56からバレル上面52の外周に向かって渦状に延びている。それぞれの案内溝54は、可塑化材料を連通孔56に導く機能を有している。なお、案内溝54の一端が連通孔56に接続されていなくてもよい。また、バレル50には案内溝54が形成されていなくてもよい。
【0020】
スクリュー40の溝部45内に供給された材料は、溝部45内において溶融されながら、スクリュー40の回転によって溝部45に沿って流動し、可塑化材料としてスクリュー40の中央部47へと導かれる。中央部47に流入した流動性を発現しているペースト状の可塑化材料は、連通孔56を介してノズル61に供給される。なお、可塑化材料を構成する全ての種類の物質が溶融していなくてもよく、可塑化材料を構成する物質のうちの少なくとも一部の種類の物質が溶融することによって、可塑化材料が全体として流動性を有する状態に転化されていればよい。
【0021】
図2に示すように、ノズル61は、ノズル流路65と、ノズル開口62が設けられた先端面63とを備えている。ノズル流路65は、ノズル61内に形成された可塑化材料の流路であり、上述したバレル50の連通孔56に接続されている。先端面63は、ノズル61の、ステージ300に向かって-Z方向に突出した先端部分を構成する面である。ノズル開口62は、ノズル流路65の大気に連通する側の端部に設けられた、ノズル流路65の流路断面が縮小された部分である。第1ノズル61aの第1先端面63aには第1ノズル開口62aが形成され、第2ノズル61bの第2先端面63bには第2ノズル開口62bが形成されている。可塑化部30によって生成された可塑化材料は、連通孔56を介してノズル61へ供給され、ノズル流路65を介してノズル開口62から吐出される。
【0022】
ステージ300は、ノズル開口62に対向する位置に配置されている。三次元造形装置100は、ノズル開口62からステージ300の造形面321に向かって可塑化材料を吐出させ、造形面321に可塑化材料の層を積層することによって三次元造形物を造形する。造形面321に積層される可塑化材料の層のことを造形層とも呼ぶ。ステージ300の詳細については後述する。
【0023】
移動部400は、ノズル61とステージ300との相対的な位置を変化させる。本実施形態では、移動部400は、造形部200を積層方向であるZ方向に沿って移動させ、ステージ300を積層方向と交差する方向に移動させることによって、ノズル61とステージ300との相対的な位置を変化させる。より具体的には、本実施形態の移動部400は、造形部200をZ方向に沿って移動させることによって、Z方向におけるノズル61とステージ300との相対的な位置を変化させ、ステージ300をZ方向と直交するX方向およびY方向に移動させることによって、X方向およびY方向におけるノズル61とステージ300との相対的な位置を変化させる。
図1に示すように、移動部400は、ステージ300をX方向に沿って移動させる第1電動アクチュエーター410と、ステージ300と第1電動アクチュエーター410とをY方向に沿って移動させる第2電動アクチュエーター420と、造形部200をZ方向に沿って移動させる第3電動アクチュエーター430とによって構成されている。より詳細には、第3電動アクチュエーター430は、第1造形部200aおよび第2造形部200bが固定された可動部431をZ方向に沿って移動させることによって、第1造形部200aおよび第2造形部200bをZ方向に沿って移動させる。なお、
図2では、第3電動アクチュエーター430および可動部431は省略されている。
【0024】
図1に示すように、可動部431には、更に、第1支持部700が固定されている。第1支持部700は、第1加熱部600を支持することによって、第1加熱部600をステージ300と対向する位置に配置する。従って、本実施形態における第3電動アクチュエーター430は、造形部200と第1支持部700との位置関係を維持した状態で、造形部200とともに第1支持部700をZ方向に沿って移動させる。つまり、第1支持部700は、ノズル61とともにステージ300との相対的な位置が変化するように構成されているとも言える。また、同様に、第1支持部700によって支持される第1加熱部600は、ノズル61とともにステージ300との相対的な位置が変化するように構成されているとも言える。なお、
図2では、第1支持部700は省略されている。
【0025】
上述した第1電動アクチュエーター410から第3電動アクチュエーター430は、制御部500の制御下で駆動される。他の実施形態では、移動部400は、例えば、ステージ300をZ方向に移動させ、造形部200をX方向およびY方向に沿って移動させてもよいし、造形部200を移動させずにステージ300をX方向、Y方向およびZ方向に移動させてもよいし、ステージ300を移動させずに造形部200をX方向、Y方向およびZ方向に移動させてもよい。なお、以下では、ステージ300に対するノズル61の相対的な位置の変化を、単に、ノズル61の移動と呼ぶこともある。本実施形態では、例えば、ノズル61に対してステージ300を+X方向に移動させたことを、ノズル61を-X方向に移動させたと言い換えることもできる。また、同様に、ステージ300に対する造形部200や第1加熱部600や第1支持部700の相対的な位置の変化を、単に、造形部200や第1加熱部600や第1支持部700の移動と呼ぶこともある。
【0026】
図5は、本実施形態におけるステージ300の概略構成を示す斜視図である。
図6は、ステージ300の上面図である。
図5および
図6に示すように、ステージ300は、載置部310と、造形ステージ320と、第2加熱部330と、押し付け部340と、押さえ部350と、付勢部360と、第2支持部370と、押し付け移動部380とを備える。
【0027】
造形ステージ320は、後述するように載置部310に載置される。本実施形態では、造形ステージ320は、ステージ300において載置部310に着脱可能に構成されている。本実施形態における造形ステージ320は、載置部310上に載置され、押さえ部350および付勢部360によって固定されることで、ステージ300に装着される。ユーザーは、例えば、造形ステージ320をX方向に挟むように造形ステージ320に固定されたハンドル327を把持して、造形ステージ320の着脱を行う。
【0028】
図5に示すように、造形ステージ320は、上述した造形面321を有している。本実施形態における造形ステージ320は、造形面321に垂直なZ方向に沿って見たときに、複数の角部Cn1を有している。より詳細には、造形ステージ320は、略矩形板状を有しており、4つの角部Cn1を有している。
【0029】
本実施形態では、造形面321は、全体として、X方向およびY方向に平行となるように配置されている。本明細書において、「面」とは、平面だけで構成された面だけではなく一定の領域を占める面として把握可能なものを含み、例えば、その表面に凹凸が形成されていてもよい。例えば、本実施形態における造形面321には、予め定められた間隔を空けて複数の溝324が形成されている。溝324は、Y方向に沿って延びるように形成されている。他の実施形態では、造形ステージ320に溝324が形成されていなくてもよい。
【0030】
図6に示すように、載置部310は、Z方向に沿って見たときに、第2加熱部330の外側に配置されている。本実施形態における載置部310は、4つの載置部材311によって構成されている。各載置部材311は、造形ステージ320の各角部Cn1に対応して配置されている。より詳細には、本実施形態では、各載置部材311は、Z方向に沿って見たときに、略L字型状を有しており、各載置部材311のL字状に屈曲する部分の内側の壁によって、略矩形状の領域R1の各角部を区画するように配置されている。これによって、各載置部材311は、Z方向に沿って見たときに、領域R1の内側に配置された第2加熱部330を囲むように、第2加熱部330の外側に配置されている。
【0031】
図7は、載置部材311の付近を示す斜視図である。
図7は、
図5のうち、最も-X方向側および-Y方向側に配置された載置部材311の付近を拡大して示している。
図7では、載置部材311のうち、造形ステージ320と重なる部分が破線によって示されている。
図6および
図7に示すように、載置部材311は、凸部312を有している。凸部312は、載置部材311において、凸部312以外の部分よりも+Z方向に突出した部分である。本実施形態における凸部312の上面は、平面度が調整された基準面313を形成している。つまり、凸部312は、載置部310のうち、基準面313を有する部分である。基準面313の平面度は、例えば、100μm以下であることが好ましい。
図6および
図7では、基準面313にハッチングが付されている。
【0032】
図6に示すように、本実施形態では、凸部312は、造形ステージ320の各角部Cn1に対応する位置に設けられている。
図7に示すように、造形ステージ320は、その下面が、各凸部312の基準面313の一部と接するように、基準面313上に載置されている。
【0033】
載置部310のうち、本実施形態における凸部312のように基準面313を有する部分は、第2支持部370よりも熱膨張率が低い部材によって形成されると好ましい。例えば、第2支持部370が鉄鋼やステンレス鋼によって形成されている場合、凸部312は、インバー等によって形成されると好ましい。本実施形態では、各載置部材311の全体がインバーによって形成されている。第2支持部370は、鉄鋼によって形成されている。
【0034】
第2支持部370は、載置部310および第2加熱部330の下方に設けられている。第2支持部370は、載置部310を支持する。本実施形態では、第2支持部370は、
図5に示した1対の脚部375を介して、上述した第2電動アクチュエーター420に固定されている。各脚部375は、Y方向に長尺な略直方体状を有しており、X方向において互いに向かい合うように、Y方向に沿って配置されている。
【0035】
図8は、
図5のVIII-VIII断面図である。
図8に示すように、第2加熱部330は、造形ステージ320の下方に配置され、Z方向に沿って見たときに造形ステージ320の周縁よりも内側に配置されている。より詳細には、
図6および
図8に示すように、第2加熱部330は、載置部310と接触しないように、Z方向に沿って見たときに、上述した領域R1内に配置されている。第2加熱部330は、造形ステージ320を加熱する。
【0036】
図9は、第2加熱部330の分解斜視図である。なお、
図9には、後述する載置板345も示されている。第2加熱部330は、第2加熱板331と、第2ヒーター332とを備える。本実施形態では、第2ヒーター332は、ラバーヒーターによって形成され、略矩形の板状を有している。第2ヒーター332のX方向およびY方向における中央部には、略矩形状の開口形状を有する開口部Opが形成されている。第2ヒーター332は、図示しない配線を介して制御部500と電気的に接続されている。第2ヒーター332の出力および温度は、制御部500によって制御される。他の実施形態では、第2ヒーター332は、例えば、ハロゲンヒーターや、ニクロム線ヒーター、カーボンヒーター等によって構成されていてもよい。第2加熱板331は、アルミニウムによって形成され、略矩形の板状を有している。第2加熱板331は、第2ヒーター332の上に積層されている。
【0037】
図8に示すように、押し付け部340は、第2加熱部330の下方に設けられている。押し付け部340は、第2加熱部330を、造形ステージ320に下方から押し付ける。本実施形態における押し付け部340は、複数の付勢部材344と、載置板345と、柱347とを備える。
【0038】
載置板345は、板状を有し、第2加熱部330を載置する。本実施形態では、載置板345は、アルミニウムによって形成されている。
図9に示すように、本実施形態における載置板345は、略矩形の板状を有しており、4つの角部Cn2を有している。
図8に示すように、載置板345のX方向およびY方向における中央部と、各角部Cn2に対応する位置とには、Z方向に沿って延びる円柱形状を有する柱347が連結されている。載置板345の中央部に配置された柱347のことを、特に中央柱346とも呼ぶ。付勢部材344は、載置板345を造形ステージ320に向けて付勢する。付勢部材344は、載置板345の中央部および角部Cn2に対応して設けられる。本実施形態では、載置板345の中央部と各角部Cn2とに対応して、5つの付勢部材344が設けられている。より詳細には、本実施形態では、各付勢部材344は、略円筒形状のコイルバネによって形成され、それぞれ、各柱347の外周を囲うように配置されている。
【0039】
各柱347は、載置板345の下方に設けられている。各柱347は、その上面に設けられたネジ穴に位置決めネジ341がねじ込まれることによって、載置板345に固定される。中央柱346は、その一部が第2支持部370に設けられた穴372の内部に位置している。スペーサー343は、中央柱346と第2支持部370の隙間を埋めるように、穴372に設けられている。付勢部材344は、略円筒形状を有するコイルバネとして構成され、中央柱346の外周のうち、載置板345とスペーサー343の間に設けられている。第2加熱部330は、付勢部材344の弾性力によって上方向に付勢され、造形ステージ320に下方から押し付けられる。以下では、押し付け部340によって第2加熱部330が造形ステージ320に押し付けられている状態のことを、押し付け状態とも呼ぶ。
【0040】
押し付け移動部380は、押し付け部340を、造形ステージ320から離れる後退方向、および、造形ステージ320に近付く前進方向に移動させるように構成されている。本実施形態では、後退方向は、鉛直下方向である。前進方向は、鉛直上方向である。
【0041】
本実施形態における押し付け移動部380は、第1レバー381と、ロッド382と、第2レバー383と、検出部390とを有している。ロッド382は、その軸方向に沿って長尺な軸状に形成されており、Y方向に沿って配置されている。ロッド382は、第1レバー381と第2レバー383とを接続している。第2レバー383は、X方向に沿って見たときに、略L字型形状を有しており、一端部384および他端部385と、一端部384と他端部385とをつなぐ屈曲部386とを有している。第2レバー383は、第2支持部370のX方向およびY方向における中央部付近の下面に固定された固定部材371に固定されている。より詳細には、第2レバー383は、屈曲部386をX方向に貫通するピン387によって、ピン387を軸中心に、Y方向およびZ方向に沿ったYZ平面内で回動可能に、固定部材371に固定されている。第2レバー383の一端部384には、ロッド382の+Y方向側の端部が接続されている。他端部385には、中央柱346の下端部が接続されている。
【0042】
第1レバー381を-Y方向に引くことにより、ロッド382が-Y方向に移動する。ロッド382が-Y方向に移動することで、第2レバー383の一端部384が-Y方向に移動し、第2レバー383は、ピン387を中心にYZ平面内で回動する。第2レバー383が回動することで、第2レバー383の他端部385が下方向に移動し、中央柱346が下方向へ移動する。中央柱346の下方向への移動により、中央柱346に固定された載置板345が、各付勢部材344を縮ませつつ下降する。このようにして、押し付け移動部380によって、押し付け状態が解除される。逆に、押し付け状態が解除されている状態で、第1レバー381を+Y方向に押すことにより、押し付け移動部380によって押し付け部340を上昇させ、造形ステージ320に第2加熱部330を押し付けることができる。なお、第1レバー381は、例えば、ユーザーの手によって操作されてもよいし、制御部500による制御下で、第1レバー381を動作させるための図示しないアクチュエーターによって動作するように構成されてもよい。
【0043】
検出部390は、押し付け部340の、後退方向および前進方向に沿った位置を検出する。本実施形態では、検出部390は、光学式の測距センサーによって構成されている。検出部390は、第2支持部370の下側に固定されている。本実施形態における検出部390は、ロッド382に固定されたマーカー391に光を照射し、その反射光を受光することによって、検出部390とマーカー391との間のY方向における距離を測定する。マーカー391のY方向における位置は、ロッド382のY方向に沿った移動に伴って変化するので、押し付け部340のZ方向における位置を反映する。そのため、検出部390は、測定した距離に基づいて、押し付け部340のZ方向における位置を検出できる。他の実施形態では、検出部390は、例えば、超音波式や電波式の測距センサーによって構成されてもよいし、接触式センサーによって構成されてもよい。また、検出部390は、例えば、押し付け部340のZ方向における位置を直接、検出してもよいし、第1レバー381やロッド382や第2レバー383の位置や角度等を検出することによって、押し付け部340のZ方向における位置を検出してもよい。また、検出部390は、少なくとも、押し付け状態と、押し付けが解除された状態とを判別できるように、押し付け部340のZ方向における位置を検出すればよい。
【0044】
図5に示した押さえ部350は、造形ステージ320を基準面313に相対的に押さえる。押さえ部350は、第1押さえ部351と、第2押さえ部352と、を備える。第1押さえ部351は、載置部310の-X方向側の端部に設けられている。第2押さえ部352は、載置部310の+Y方向側の端部に設けられている。第1押さえ部351および第2押さえ部352は、偏芯ピン353によって構成されている。
【0045】
図10は、第2押さえ部352およびその近傍を示す図である。造形ステージ320の側面は、下方側の端部が上方側の端部よりも造形面321から水平方向に離れるように傾斜した、第1傾斜面326を有する。より詳細には、本実施形態では、造形ステージ320の-X方向側、+X方向側および+Y方向側の側面が、第1傾斜面326として構成されている。造形面321と第1傾斜面326の成す角度は、造形ステージ320の内部側において95°以上135°以下であることが好ましい。本実施形態では、造形面321と第1傾斜面326との成す角度は、造形ステージ320の内部側において135°に設定されている。押さえ部350は、造形ステージ320の第1傾斜面326に対向する第2傾斜面356を有する。より詳細には、第2傾斜面356は、その下方側の端部が、水平方向において、上方側の端部よりも偏芯ピン353の内側に位置するように傾斜している。第2傾斜面356が第1傾斜面326に接触することで、造形ステージ320が基準面313に相対的に押さえられる。本実施形態のように、造形面321と第1傾斜面326との成す角度が造形ステージ320の内部側において135°である場合、造形面321と第2傾斜面356との成す鋭角の角度は、80°以上90°未満であると好ましい。これによって、造形ステージ320の昇温により、造形ステージ320が膨張した場合であっても、造形ステージ320の反りを抑制しつつ、押さえ部350によって造形ステージ320を効果的に押さえることができる。
【0046】
各偏芯ピン353は、ピン回転軸AXを有する。ピン回転軸AXの軸線方向は、Z軸に沿う方向である。ピン回転軸AXは、偏芯ピン353の中心からずれた位置に設けられている。偏芯ピン353は、ピン回転軸AXを回転軸として回転可能に設けられている。造形面321に沿った方向の造形ステージ320の位置は、ユーザーが偏芯ピン353をピン回転軸AX回りに回転させることによって調整される。ピン回転軸AXは偏芯ピン353の中心からずれた位置に設けられているため、偏芯ピン353がピン回転軸AX回りに回転されることにより、ピン回転軸AXと、第2傾斜面356の第1傾斜面326と接触する部分との距離が変化する。よって、偏芯ピン353がピン回転軸AX回りに回転されることにより、造形面321に沿った方向の造形ステージ320の位置が変化する。造形ステージ320の-X方向側の端部の位置は、ユーザーが第1押さえ部351の偏芯ピン353をピン回転軸AX回りに回転させることによって調整される。造形ステージ320の+Y方向側の端部の位置は、ユーザーが第2押さえ部352の偏芯ピン353をピン回転軸AX回りに回転させることによって調整される。
【0047】
図5に示した付勢部360は、造形ステージ320を押さえ部350に向かって付勢する。付勢部360は、ステージ300の+X方向側の端部に設けられている。付勢部360は、造形ステージ320の+X方向側の第1傾斜面326に対向する図示しない傾斜面を有しており、この傾斜面を第1傾斜面326に接触させることで、造形ステージ320を押さえ部350に向かって付勢する。なお、ステージ300は、付勢部360を備えていなくてもよい。
【0048】
図11は、本実施形態における第1加熱部600および第1支持部700の概略構成を示す斜視図である。
図12は、第1加熱部600の分解斜視図である。
図11および
図12に示すように、第1加熱部600は、第1ヒーター610と、第1ヒーター610の熱を造形面321に積層された可塑化材料に伝える第1加熱板620と、第1加熱板620を支持するフレーム部630と、断熱材によって構成された断熱部650を有している。
図6に示すように、第1加熱板620と、第1ヒーター610と、フレーム部630と、断熱部650とは、下からこの順で積層されている。
【0049】
図2、
図11および
図12に示すように、第1加熱部600には、第1加熱部600をその面方向と直交する方向に貫通する貫通孔601が形成されている。本実施形態では、第1加熱部600には、貫通孔601として、第1貫通孔601aと、第2貫通孔601bとが形成されている。第1貫通孔601aと第2貫通孔601bとは、第1加熱部600のY方向における中央部に形成されている。第2貫通孔601bは、第1貫通孔601aの+X方向側に形成されている。以下では、第1貫通孔601aと第2貫通孔601bとを特に区別しない場合、両者を単に貫通孔601とも呼ぶ。
図12に示すように、本実施形態では、貫通孔601は、第1ヒーター610をZ方向に貫通するように形成された孔HL1と、第1加熱板620をZ方向に貫通するように形成された孔HL2とが、Z方向に連なることによって形成されている。
【0050】
ノズル61の少なくとも一部は、可塑化材料を吐出して三次元造形物を造形しているとき、
図2に示すように、貫通孔601内に位置する。
図2では、Z方向に沿って見たときに、ノズル61の周囲が第1加熱部600によって囲われているとも言える。以下では、「可塑化材料を吐出して三次元造形物を造形しているとき」のことを、単に、「三次元造形物の造形時」や「造形時」とも呼ぶ。本実施形態では、三次元造形物の造形時には、ノズル開口62は、Z方向において、加熱面621と造形面321との間に配置される。なお、この「加熱面621と造形面321との間」は、加熱面621と同じ位置や造形面321と同じ位置を含まない。
【0051】
ノズル61は、造形時以外に貫通孔601内に位置していなくてもよい。例えば、本実施形態では、後述する傾き調整処理が実行されている間、ノズル61は、第1加熱部600の上方に位置し、貫通孔601内に位置しない。より詳細には、本実施形態では、造形部200が、制御部500による制御下で、
図1に示した第4電動アクチュエーター440によって第1加熱部600に対して上方に移動されることにより、ノズル61が第1加熱部600の上方に移動される。このように、第4電動アクチュエーター440は、造形部200をZ方向に沿って移動させることによって、ノズル61が貫通孔601内に位置する状態と、ノズル61が第1加熱部600の上方に位置することによって貫通孔601内に位置しない状態である退避状態とを、切り替える。以下では、ノズル61を第1加熱部600の上方へと移動させることを、「ノズル61を退避させる」や、「造形部200を退避させる」とも言う。なお、他の実施形態では、第4電動アクチュエーター440は、例えば、第1加熱部600を造形部200に対してZ方向に沿って移動させることによって、ノズル61が貫通孔601内に位置する状態と退避状態とを切り替えるように構成されていてもよい。
【0052】
図12に示した第1ヒーター610は、矩形板状を有するラバーヒーターによって構成されている。第1ヒーター610は、図示しない配線を介して制御部500と電気的に接続されている。第1ヒーター610の出力および温度は、制御部500によって制御される。他の実施形態では、第1ヒーター610は、例えば、ハロゲンヒーターや、ニクロム線ヒーター、カーボンヒーター等によって構成されていてもよい。
【0053】
本実施形態では、第1加熱板620は、矩形板状を有している。第1加熱板620の下面は、加熱面621を形成する。加熱面621とは、第1加熱部600の面のうち、造形面321に近い面のことを指す。第1加熱板620の上面には、第1ヒーター610が直接、貼り付けられている。第1加熱板620は、第1ヒーター610から供給される熱を、加熱面621を介して、造形層に供給する。他の実施形態では、第1ヒーター610は、例えば、接着剤を介して第1加熱板620に固定されていてもよいし、ボルト等の締結具によって第1加熱板620に固定されていてもよい。
【0054】
本実施形態では、第1加熱板620は、アルミニウムによって形成されている。これにより、例えば、第1加熱板620が鉄鋼やステンレス鋼によって形成されている場合と比較して、第1加熱板620によって第1ヒーター610の熱をより効率良く可塑化材料に伝えることができ、かつ、第1加熱板620を軽量化できる。他の実施形態では、第1加熱板620は、例えば、鉄鋼やステンレス鋼等によって形成されてもよい。
【0055】
第1支持部700は、第1加熱部600の姿勢の変更を許容可能に構成された姿勢変更部800を有している。より詳細には、本実施形態における第1支持部700は、支持部材710と、姿勢変更部800として機能する吊り下げ部810とを有している。
【0056】
支持部材710は、ノズル61とともにステージ300との相対位置が変更するように固定されている。本実施形態における支持部材710は、固定板711と、一対の腕部730とを有している。固定板711は、X方向に長尺な矩形状の板状を有しており、その板面がX方向およびZ方向に沿い、かつ、その長手方向がX方向に沿うように可動部431に固定されている。腕部730は、固定板711から-Y方向に向かって延び、かつ、X方向において互いに向かい合うように固定板711に固定されている。
【0057】
図11に示すように、本実施形態では、第1支持部700は、3つの吊り下げ部810を有している。本実施形態では、第1吊り下げ部810Aは、第1加熱部600のY方向における端部のX方向における中央部を吊り下げて支持している。より詳細には、第1吊り下げ部810Aは、固定板711のX方向における中央部から第1加熱部600を-Z方向に吊り下げて支持している。第2吊り下げ部810Bおよび第3吊り下げ部810Cは、第1加熱部600のY方向における中央位置よりも-Y方向側を支持している。より詳細には、第2吊り下げ部810Bは、-X方向側に配置された腕部730から第1加熱部600を-Z方向に吊り下げて支持している。第3吊り下げ部810Cは、+X方向側に配置された腕部730から第1加熱部600を-Z方向に吊り下げて支持している。
【0058】
図13は、吊り下げ部810の断面を示す図である。
図13は、3つの吊り下げ部810のうち、810Cの断面を示している。上述したように、吊り下げ部810は、支持部材710から第1加熱部600を吊り下げて支持する。
図13に示すように、吊り下げ部810は、可動部材820と、規制部材830とを有している。可動部材820は、支持部材710に対して吊り下げ方向に沿って移動することで、第1加熱部600の吊り下げ方向における位置を変更する。吊り下げ方向とは、吊り下げ部810が第1加熱部600を吊り下げる方向のことを指す。規制部材830は、可動部材820の吊り下げ方向に沿った移動を許容および規制する。規制部材830は、可動部材820の移動を許容することによって第1加熱部600の姿勢の変更を許容し、可動部材820の移動を規制することによって第1加熱部600の姿勢を固定する。
【0059】
より詳細には、本実施形態では、可動部材820は、その軸方向に沿って長尺な軸状のシャフトとして構成されている。規制部材830は、その軸方向に沿って長尺な略円筒状を有する、外径把持型のコレットチャックとして構成されている。可動部材820は、規制部材830を、規制部材830の軸方向に沿って貫通するように、規制部材830に挿入されている。可動部材820の上側の端部には、鍔部821が設けられている。鍔部821によって、規制部材830から可動部材820が抜け落ちることが抑制されるとともに、規制部材830からの可動部材820の下方向への最大突出量が定まる。
図11に示すように、第1吊り下げ部810Aおよび第2吊り下げ部810Bの可動部材820の下側の端部は、第1固定部材631を介して、第1加熱部600のフレーム部630に固定されている。第1吊り下げ部810Aおよび第2吊り下げ部810Bの規制部材830の上端部は、第2固定部材801を介して、腕部730に固定されている。第3吊り下げ部810Cの可動部材820の下側の端部は、第3固定部材632を介して、フレーム部630に固定されている。第3吊り下げ部810Cの規制部材830の上端部は、第4固定部材802を介して、固定板711に固定されている。
【0060】
規制部材830は、チャック部831を開閉させることで、規制部材830に挿入された可動部材820を把持可能に構成されている。チャック部831が開かれることで、可動部材820の把持が解除され、可動部材820の移動が許容される。チャック部831が閉じられることで、可動部材820が規制部材830によって把持され、可動部材820の移動が規制される。本実施形態では、チャック部831は、例えば、エアーや油圧によって開閉するように構成され、制御部500によって制御される。
【0061】
図14は、本実施形態における三次元造形装置100の製造方法を実現するための三次元造形処理のフローチャートである。三次元造形処理は、例えば、ステージ300の設置が完了した後に、制御部500に対してユーザーによる所定の開始操作が行われた場合に実行される。
【0062】
ステップS105にて、制御部500は、第4電動アクチュエーター440を制御することによって、造形部200を退避させる。より詳細には、制御部500は、ステップS105において、第1造形部200aおよび第2造形部200bを退避させる。なお、造形部200の退避は、後述する接近処理や許容処理において加熱面621と造形面321とが接触するまでに実行されればよい。また、造形部200の退避が実行された後に三次元造形処理が開始されてもよく、この場合、ステップS105が省略されてもよい。
【0063】
ステップS110にて、制御部500は、第1加熱部600を予め定められた第1温度まで昇温させる。第1温度は、例えば、三次元造形物の造形時における第1加熱部600の設定温度として定められる。
【0064】
ステップS115にて、制御部500は、ステージ300を予め定められた第2温度まで昇温させる。本実施形態では、制御部500は、ステップS115において、第2加熱部330を制御して、例えば、図示しない温度センサーによって検出される造形ステージ320の温度を参照しつつ、造形ステージ320を加熱することによって、造形ステージ320を第2温度まで昇温させる。第1温度と第2温度との温度差は、例えば、造形面321と加熱面621とが接触した際の造形面321や加熱面621の変形を抑制できる程度に小さいと好ましい。この場合、この温度差は、20℃以下であると好ましく、10℃以下であるとより好ましく、5℃以下であると更に好ましい。本実施形態では、第1温度と第2温度とは同じ温度である。なお、他の実施形態では、ステップS115は、例えば、ステップS110に先立って実行されてもよい。また、ステップS110とステップS115とが同時に実行されてもよい。
【0065】
ステップS120からステップS130にて、制御部500は、加熱面621の傾きを調整する傾き調整処理を実行する。まず、ステップS120にて、制御部500は、姿勢変更部800を制御することによって、第1加熱部600の姿勢の変更を許容する許容処理を実行する。本実施形態では、制御部500は、ステップS120において、3つの規制部材830のチャック部831を開くことによって、各規制部材830による各可動部材820の把持を解除する。これによって、各可動部材820の吊り下げ方向に沿った移動が許容され、第1加熱部600の姿勢の変更が許容される。
【0066】
ステップS125にて、制御部500は、接近処理を実行する。接近処理とは、移動部400を制御することによって、加熱面621と造形面321とを近付ける処理を指す。本実施形態では、制御部500は、ステップS120において、まず、加熱面621と造形面321との接近に関するリミットスイッチを解除する。このリミットスイッチは、造形中における加熱面621と造形面321との接触を抑制することを目的として、加熱面621と造形面321とが近付きすぎることを抑制するために設定されている。なお、リミットスイッチは、いわゆるソフトリミットであってもよいし、接触式センサーや非接触式センサーによって実現されるリミットスイッチであってもよい。次に、制御部500は、移動部400を制御することによって、加熱面621と造形面321とが平行に接触するまで、加熱面621を下降させる。より詳細には、例えば、ステップS120の開始時点において、加熱面621と造形面321とが平行でない場合、加熱面621の下降により、まず、加熱面621と造形面321とが部分的に接触する。ステップS115で第1加熱部600の姿勢の変更が許容されているので、この状態で、更に加熱面621が下降することで、加熱面621と造形面321とが平行に接触する。なお、本明細書において、「加熱面621と造形面321とが平行」とは、2つの面が完全に平行である場合のみならず、加熱面621と造形面321との間の角度差が5°以下である場合をも含む。
【0067】
以下では、ステップS120およびステップS125のように、第1加熱部600の姿勢の変更が許容された状態で加熱面621と造形面321とを平行に接触させる工程のことを、接触工程とも呼ぶ。つまり、本実施形態における接触工程は、上述した許容処理と接近処理とによって実現される。また、加熱面621と造形面321とが平行に接触した状態を平行接触状態とも呼ぶ。
【0068】
ステップS130にて、制御部500は、ステップS125で実現された平行接触状態を維持したまま、姿勢変更部800を制御することによって、第1加熱部600の姿勢を固定する。本実施形態では、制御部500は、ステップS130において、規制部材830のチャック部831を閉めることによって、可動部材820の移動を規制する。これによって、姿勢変更部800の姿勢の変更が規制され、姿勢変更部800の姿勢が固定される。より詳細には、例えば、ステップS130の後に、移動部400によって加熱面621と造形面321とを離間させても、第1加熱部600の姿勢が、平行接触状態における姿勢と同様の姿勢に維持される。ステップS130のように、平行接触状態で第1加熱部600の姿勢を固定する工程のことを、固定工程とも呼ぶ。また、ステップS105からステップS130のように、後述する配置工程と積層工程と加熱工程とに先立って、第1加熱部600の姿勢を調整する工程のことを、キャリブレーション工程とも呼ぶ。また、キャリブレーション工程を実行する処理のことをキャリブレーション処理とも呼ぶ。
【0069】
ステップS135にて、制御部500は、第4電動アクチュエーター440を制御することによって、貫通孔601内にノズル61の少なくとも一部を位置させる。ステップS135のように、貫通孔601内にノズル61の少なくとも一部を位置させる工程のことを、配置工程とも呼ぶ。
【0070】
ステップS140にて、制御部500は、積層工程と加熱工程とを実行する。積層工程とは、配置工程が完了した後に、ノズル61を移動させながらノズル61から可塑化材料をステージ300に吐出することによって、造形面321に造形層を積層する工程のことを指す。加熱工程とは、積層工程によって積層された可塑化材料を、第1加熱部600によって加熱する工程のことを指す。なお、本実施形態では、制御部500は、ステップS130の完了後、ステップS140を実行するのに先立って、加熱面621と造形面321との接近に関するリミットスイッチをONにする。
【0071】
以上で説明した本実施形態の三次元造形装置100によれば、三次元造形物の造形時において、ノズル61の少なくとも一部は、プレート形状を有する第1加熱部600の貫通孔601内に位置する。これによって、Z方向に沿って見たときに、ノズル61の周囲が第1加熱部600によって囲われるので、ノズル61に対して第1加熱部600を移動させることなく、ノズル61の移動方向の前方に対応する位置に積層された造形材料を加熱できる。そのため、簡易な制御によって、造形領域に積層された可塑化材料の層を加熱し、加熱された可塑化材料の層上に可塑化材料を吐出して三次元造形物を造形できる。また、第1加熱部600の姿勢の変更を許容する姿勢変更部800は、加熱面621と造形面321とが平行に接触した状態で、第1加熱部600の姿勢を固定可能に構成されている。これによって、例えば、造形面321を用いずに第1加熱部600の姿勢を調整する場合と比較して、容易に、加熱面621を造形面321に平行に設定できる。そのため、造形時における造形層と第1加熱部600との接触や、加熱面621と造形面321との間の距離のばらつきに起因する造形層の加熱温度のばらつきを効果的に抑制できる。従って、より精度良く三次元造形物を造形できる可能性が高まる。
【0072】
また、本実施形態では、第1支持部700は、支持部材710から第1加熱部600を吊り下げて支持し、姿勢変更部800として機能する吊り下げ部810を有する。吊り下げ部810は、支持部材710に対して吊り下げ方向に沿って移動することで第1加熱部600の吊り下げ方向における位置を変更する可動部材820と、可動部材820の移動を許容および規制する規制部材830とを有する。規制部材830は、可動部材820の移動を許容することによって第1加熱部600の姿勢の変更を許容し、可動部材820の移動を規制することによって第1加熱部600の姿勢を固定する。そのため、第1加熱部600を吊り下げて支持する形態において、容易に、加熱面621を造形面321に平行に設定できる。
【0073】
特に、本実施形態では、吊り下げ部810の規制部材830がコレットチャックとして構成されているので、規制部材830が、例えば、ロッドエンド等の、可動部材820との螺合によって可動部材820を支持する部材として構成されている場合と比較して、移動が許容された可動部材820を吊り下げ方向に沿ってより容易に移動させることができる。他の実施形態では、規制部材830は、例えば、内径把持型のコレットチャックとして構成されてもよいし、セットカラーによって構成されてもよい。これらの場合であっても、本実施形態と同様に、移動が許容された可動部材820を吊り下げ方向に沿って容易に移動させることができる。なお、他の実施形態では、吊り下げ部810が、例えば、ロッドエンドによって構成されていてもよい。
【0074】
また、本実施形態では、制御部500は、傾き調整処理において、加熱面621と造形面321とを近付ける接近処理と、第1加熱部600の姿勢の変更を許容する処理とを実行することによって、加熱面621を造形面321と平行に接触させる。そして、加熱面621と造形面321とが平行に接触した状態で、制御部500は、姿勢変更部800を制御することによって第1加熱部600の姿勢を固定する。そのため、制御部500に傾き調整処理を実行させることで、加熱面621を造形面321に平行に設定できる。
【0075】
また、本実施形態では、制御部500は、ステージ300と第1加熱部600とを、それぞれ予め定められた温度に昇温させた後に、傾き調整処理を実行する。これによって、例えば、第1加熱部600を三次元造形物の造形時における設定温度に昇温させた後に傾き調整処理を実行することで、傾き調整処理において、造形時の実際の温度環境による影響を加味して、加熱面621の傾きを調整できる。また、ステージ300を昇温させるので、加熱面621と造形面321との接触時に、造形面321の温度が加熱面621の温度に対して低すぎることによって、加熱面621や造形面321が変形することを抑制できる。
【0076】
また、本実施形態では、造形面321を有する造形ステージ320は、平面度が調整された基準面313の上に載置され、押し付け部340によって下方から第2加熱部330が押し付けられ、押さえ部350によって基準面313に相対的に押さえられている。これによって、造形ステージ320を第2加熱部330の上に載置することを要しないため、第2加熱部330の平面度が造形面321の平面度に及ぼす影響を小さくすることができる。そのため、より精度良く三次元造形物を造形できる可能性が高まる。また、平面度が調整された基準面313の上に載置された造形ステージ320を用いて第1加熱部600の姿勢を調整するので、第1加熱部600の加熱面621の平面度をより高めることができる。
【0077】
また、本実施形態では、載置部310のうち、基準面313を有する部分である凸部312は、第2支持部370よりも熱膨張率が低い部材によって形成され、造形ステージ320の各角部Cn1に対応する位置に設けられている。これによって、例えば、凸部312が、第2支持部370を形成する部材の熱膨張率以上の熱膨張率を有する部材によって形成されている場合と比較して、ステージ300が加熱された場合における凸部312の熱膨張を抑制できる。そのため、ステージ300が加熱された場合であっても、基準面313の平面度を高く維持できる。また、凸部312が各角部Cn1に対応する位置に設けられているので、例えば、造形中に造形面321に造形層が積層されることにより、造形ステージ320の重心がX方向およびY方向における中央部から端部にずれた場合であっても、造形ステージ320が傾くことを抑制できる。特に、本実施形態では、凸部312が矩形の造形ステージ320の4つの角部Cn1に対応する位置に設けられているので、例えば、凸部312が3つの角部Cn1に対応する位置にのみ設けられている場合と比較して、造形中における造形ステージ320の傾きをより抑制できる。
【0078】
また、本実施形態では、ステージ300は、押し付け部340を後退方向および前進方向に移動させることが可能に構成された押し付け移動部380を備える。そのため、押し付け移動部380を動作させることによって、押し付け部340による造形ステージ320への第2加熱部330の押し付けを解除できる。これによって、例えば、造形ステージ320を載置部310上に設置する際に、造形ステージ320への第2加熱部330の押し付けを解除すれば、造形ステージ320を設置する間に造形ステージ320が第2加熱部330によって押されることを抑制できる。そのため、造形ステージ320を造形する際に、容易に、造形ステージ320の位置や角度を調整できる。
【0079】
また、本実施形態では、押し付け移動部380は、第1レバー381と第2レバー383とを接続するロッド382を有しているので、第1レバー381の配置位置の自由度を高めることができる。そのため、例えば、ユーザーによって操作しやすい位置に第1レバー381を容易に配置できる。また、本実施形態のように、ロッド382によって第1レバー381と第2レバー383とをY方向に接続することで、例えば、ロッド382によって第1レバー381と第2レバー383とをZ方向に接続する場合と比較して、押し付け移動部380の鉛直方向における設置スペースを小さくできる。
【0080】
また、本実施形態では、ステージ300は、押し付け部340のZ方向における位置を検出する検出部390を備える。これによって、検出部390によって、押し付け部340のZ方向における位置を検出でき、検出された位置に基づいて、押し付け部340によって第2加熱部330が造形ステージ320に押し付けられている状態であるか否かを検知できる。そのため、例えば、制御部500は、検出部390による検出結果に基づいて、図示しない表示部やスピーカー等を介して、押し付け状態であることや、押し付けが解除された状態であることをユーザーに通知できる。また、例えば、制御部500は、検出部390による検出結果に基づいて、押し付けが解除された状態で三次元造形物の造形の開始が指示された場合に、図示しない表示部やスピーカー等を介してユーザーに警告を通知できる。
【0081】
また、押し付け部340は、第2加熱部330を載置する載置板345と、載置板345の中央部に連結された中央柱346と、載置板345の角部Cn2および中央部47に対応して設けられ、載置板345を造形ステージ320に向けて付勢する複数の付勢部材344とを有し、押し付け移動部380は、中央柱346を後退方向および前進方向に移動させることによって、押し付け部340をZ方向に沿って移動させる。これによって、中央柱346をZ方向に沿って移動させることで、簡易な動作により、押し付け部340による造形ステージ320への第2加熱部330の押し付けと、押し付けの解除とを実現できる。
【0082】
B.他の実施形態:
(B-1)上記実施形態では、第1支持部700は、吊り下げ部810を有しているが、吊り下げ部810を有していなくてもよい。例えば、第1支持部700は、第1加熱部600を水平方向に支持する支持部として構成されていてもよい。この場合、第1支持部700は、例えば、第1加熱部600を回動させることにより、第1加熱部600の水平方向における傾きを変化させることが可能に構成されていてもよい。この場合、姿勢変更部800は、例えば、第1加熱部600の回動を許容および規制可能な固定具として構成されてもよい。
【0083】
(B-2)上記実施形態では、制御部500は、傾き調整処理を実行しているが、傾き調整処理を実行しなくてもよい。この場合、例えば、傾き調整処理に含まれる工程の一部や全部が、ユーザーの手作業によって実現されてもよい。例えば、許容工程が、ユーザーの手作業によって規制部材830のチャック部831を開くことで実現されてもよい。
【0084】
(B-3)上記実施形態では、制御部500は、ステージ300と第1加熱部600とをそれぞれ予め定められた温度に昇温させた後に傾き調整処理を実行している。これに対して、制御部500は、傾き調整処理を実行する前にステージ300や第1加熱部600を昇温させなくてもよい。
【0085】
(B-4)上記実施形態では、載置部310の凸部312、つまり、基準面313を有する部分は、第2支持部370よりも熱膨張率が低い部材によって形成されているが、このような部材によって形成されていなくてもよい。例えば、凸部312は、第2支持部370と同じ部材によって形成されていてもよい。また、凸部312は、造形ステージ320の各角部Cn1に対応する位置に設けられいなくてもよい。例えば、凸部312は、角部Cn1のうち一部に対応する位置に設けられていてもよいし、角部Cn1と対応する位置に設けられていなくてもよい。
【0086】
(B-5)上記実施形態では、ステージ300は、検出部390を有しているが、検出部390を有していなくてもよい。
【0087】
(B-6)上記実施形態では、押し付け移動部380は、中央柱346をZ方向に移動させることによって、押し付け部340をZ方向に移動させている。これに対して、押し付け移動部380は、中央柱346をZ方向に移動させるように構成されなくてもよく、例えば、中央柱346を介さずに載置板345をZ方向に移動させるように構成されていてもよいし、中央柱346以外の柱347をZ方向に移動させるように構成されていてもよい。
【0088】
(B-7)上記実施形態では、ステージ300は、押し付け移動部380を有しているが、押し付け移動部380を有していなくてもよい。
【0089】
(B-8)ステージ300は、造形面321を有するステージとして構成されていればよく、上記実施形態で説明した、造形ステージ320や第2加熱部330や載置部310や押し付け部340や押さえ部350を有していなくてもよい。なお、例えば、ステージ300に第2加熱部330が設けられていない形態において、傾き調整処理に先立ってステージ300を昇温させる場合、制御部500は、第1加熱部600によってステージ300を加熱して昇温させてもよい。また、ステージ300を加熱可能な他のヒーターが設けられている場合、そのヒーターによってステージ300が加熱されてもよい。また、制御部500は、例えば、第2加熱部330が設けられている形態においても、第1加熱部600や他のヒーターを用いてステージ300を昇温させてもよい。
【0090】
(B-9)上記実施形態では、キャリブレーション処理において、許容処理が実行された後に接近処理が実行されることで、平行接触状態が実現されている。これに対して、例えば、接近処理が実行された後に許容処理が実行されることによって、平衡接触状態が実現されてもよい。この場合、例えば、制御部500は、接近処理によって、加熱面621と造形面321との一部が接触するまで第1加熱部600とステージ300とを接近させた後に許容処理を実行してもよいし、加熱面621と造形面321とを、可動部材820の移動によって接触させることができる位置まで第1加熱部600とステージ300とを接近させた後に許容処理を実行してもよい。また、制御部500は、例えば、接近処理と許容処理とを繰り返し実行することによって平行接触状態を実現してもよい。
【0091】
(B-10)上記実施形態では、可塑化部30は、フラットスクリューであるスクリュー40と、バレル50とを備えている。これに対して、可塑化部30は、フラットスクリューを備えていなくてもよい。例えば、可塑化部30は、インラインスクリューを備え、インラインスクリューを回転させることによって材料を可塑化して可塑化材料を生成してもよい。この場合、バレルは、インラインスクリューを収容する筒状に形成され、シリンダーと呼ばれることもある。
【0092】
(B-11)上記実施形態では、三次元造形装置100は、2つのノズル61を備えている。これに対して、ノズル61の数は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。また、上記実施形態の三次元造形装置100は、2つの造形部200を備えているが、造形部200の数は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。1つの造形部200が複数のノズル61を備えていてもよい。
【0093】
(B-12)上記実施形態では、造形部200は、ペレット状に形成された材料を可塑化して吐出するヘッドとして構成されている。これに対して、造形部200は、例えば、フィラメント状の材料を可塑化して吐出するヘッドとして構成されていてもよい。
【0094】
C.他の形態:
本開示は、上述した実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実現することができる。例えば、本開示は、以下の形態によっても実現可能である。以下に記載した各形態中の技術的特徴に対応する上記実施形態中の技術的特徴は、本開示の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、本開示の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0095】
(1)本開示の第1の形態によれば、三次元造形装置が提供される。この三次元造形装置は、前記可塑化材料を吐出するノズルと、前記可塑化材料が積層される造形面を有するステージと、前記ノズルと前記ステージとの相対的な位置を変化させる移動部と、前記ステージに積層された前記可塑化材料を加熱するヒーターを有し、貫通孔が形成されたプレート形状の第1加熱部と、前記ノズルとともに前記ステージとの相対位置が変化するように構成され、前記第1加熱部を支持することによって、前記第1加熱部を前記ステージと対向する位置に配置する第1支持部と、を備える。三次元造形物の造形時において、前記ノズルの少なくとも一部は、前記貫通孔内に位置し、前記第1支持部は、前記第1加熱部の姿勢の変更を許容する姿勢変更部を有し、前記姿勢変更部は、前記第1加熱部の前記造形面に近い面である加熱面と前記造形面とが平行に接触した状態で、前記姿勢を固定可能に構成されている。
このような形態によれば、三次元造形物の造形時において、ノズルの少なくとも一部がプレート形状の第1加熱部の貫通孔内に位置するので、ノズルに対して第1加熱部を移動させることなく、ノズルの移動方向の前方に対応する位置に積層された造形材料を加熱できる。そのため、簡易な制御によって、造形領域に積層された可塑化材料の層を加熱し、加熱された可塑化材料の層上に可塑化材料を吐出して三次元造形物を造形できる。また、加熱面と造形面とを平行に接触させた状態で、第1加熱部の姿勢を調整および固定できるので、容易に、加熱面を造形面に平行に設定できる。そのため、造形時における造形層と第1加熱部との接触や、加熱面と造形面との間の距離のばらつきに起因する造形層の加熱温度のばらつきを効果的に抑制できる。従って、より精度良く三次元造形物を造形できる可能性が高まる。
【0096】
(2)上記形態では、前記第1支持部は、前記ノズルとともに前記ステージとの相対位置が変化するように固定された支持部材と、前記支持部材から前記第1加熱部を吊り下げて支持し、前記姿勢変更部として機能する吊り下げ部と、を有し、前記吊り下げ部は、前記支持部材に対して吊り下げ方向に沿って移動することで、前記第1加熱部の前記吊り下げ方向における位置を変更する可動部材と、前記可動部材の移動を許容および規制する規制部材と、を有し、前記規制部材は、前記可動部材の移動を許容することによって前記姿勢の変更を許容し、前記可動部材の移動を規制することによって前記姿勢を固定してもよい。このような形態によれば、第1加熱部を吊り下げて支持する形態において、容易に、加熱面を造形面に平行に設定できる。
【0097】
(3)上記形態では、前記移動部と、前記姿勢変更部と、を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記加熱面の傾きを調整する傾き調整処理を実行し、前記制御部は、前記傾き調整処理において、前記移動部を制御することによって前記加熱面と前記造形面とを近付ける処理と、前記姿勢変更部を制御することによって前記姿勢の変更を許容する処理と、を実行することによって、前記加熱面を前記造形面と平行に接触させ、前記加熱面と前記造形面とが平行に接触した状態で、前記姿勢変更部を制御することによって前記姿勢を固定してもよい。このような形態によれば、制御部に傾き調整処理を実行させることで、加熱面を造形面に平行に設定できる。
【0098】
(4)上記形態では、前記制御部は、前記ステージと、前記第1加熱部とを、それぞれ、予め定められた温度に昇温させた後に、前記傾き調整処理を実行してもよい。このような形態によれば、例えば、第1加熱部を三次元造形物の造形時における設定温度に昇温させた後に傾き調整処理を実行することで、傾き調整処理において、造形時の実際の温度環境による影響を加味して、加熱面の傾きを調整できる。また、ステージを昇温させるので、加熱面と造形面との接触時に、造形面の温度が加熱面の温度に対して低すぎることによって、加熱面や造形面が変形することを抑制できる。
【0099】
(5)上記形態では、前記ステージは、平面度が調整された基準面の上に載置され、前記造形面を有する造形ステージと、前記造形ステージの下方に配置され、前記造形ステージを加熱する第2加熱部と、前記基準面を有し、前記造形面と垂直な方向に沿って見たときに、前記第2加熱部の外側に配置された載置部と、前記第2加熱部を前記造形ステージに押し付ける押し付け部と、前記造形ステージを前記基準面に相対的に押さえる押さえ部と、を有していてもよい。このような形態によれば、造形ステージを第2加熱部の上に載置することを要しないため、第2加熱部の平面度が造形面の平面度に及ぼす影響を小さくすることができる。そのため、より精度良く三次元造形物を造形できる可能性が高まる。
【0100】
(6)上記形態では、前記ステージは、前記載置部を支持する第2支持部を有し、前記造形ステージは、前記造形面に垂直な方向に沿って見たときに、複数の角部を有し、前記載置部の前記基準面を有する部分は、前記第2支持部よりも熱膨張率が低い部材によって形成され、かつ、前記造形ステージの各角部に対応する位置に設けられていてもよい。このような形態によれば、例えば、基準面を有する部分が、第2支持部を形成する部材の熱膨張率以上の熱膨張率を有する部材によって形成されている場合と比較して、ステージが加熱された場合における、基準面を有する部分の熱膨張を抑制できる。そのため、ステージが加熱された場合であっても、基準面の平面度を高く維持できる。また、基準面を有する部分が造形ステージの各角部に対応する位置に設けられているので、三次元造形物の造形中における造形ステージの傾きをより抑制できる。
【0101】
(7)上記形態では、前記ステージは、前記押し付け部を、前記造形ステージから離れる後退方向、および、前記ステージに近づく前進方向に移動させるように構成された押し付け移動部を有していてもよい。このような形態によれば、押し付け移動部を動作させることによって、押し付け部による造形ステージへの第2加熱部の押し付けを解除できる。
【0102】
(8)上記形態において、前記ステージは、前記押し付け部の前記後退方向および前記前進方向に沿った方向における位置を検出する検出部を有していてもよい。このような形態によれば、検出部によって、押し付け部の後退方向および前進方向に沿った方向における位置を検出でき、検出された位置に基づいて、押し付け部によって第2加熱部が造形ステージに押し付けられている状態であるか否かを検知できる。
【0103】
(9)上記形態において、前記押し付け部は、前記第2加熱部を載置し、角部を有する載置板と、前記載置板の中央部に連結された中央柱と、前記載置板の角部および前記載置板の中央部に対応して設けられ、前記載置板を前記造形ステージに向けて付勢する複数の付勢部材と、を有し、前記押し付け移動部は、前記中央柱を前記後退方向および前記前進方向に移動させることによって、前記押し付け部を移動させてもよい。このような形態によれば、中央柱を後退方向および前進方向に沿った方向に移動させることで、簡易な動作により、押し付け部による造形ステージへの第2加熱部の押し付けと、押し付けの解除とを実現できる。
【0104】
(10)本開示の第2の形態によれば、三次元造形物の製造方法が提供される。この三次元造形物の製造方法は、プレート形状を有し、ノズルとともにステージとの相対位置が変化するように構成され、前記ステージと対向する位置に配置された第1加熱部に形成された貫通孔内に、前記ノズルの少なくとも一部を位置させる配置工程と、前記配置工程が完了した後に、前記ノズルと前記ステージとの相対的な位置を変化させながら、材料を可塑化して生成された可塑化材料を前記ノズルから前記ステージに吐出することによって、前記ステージの造形面に前記可塑化材料を積層させる積層工程と、前記ステージに積層された前記可塑化材料を、前記第1加熱部によって加熱する加熱工程と、を備える。前記配置工程、前記積層工程および前記加熱工程に先立って、前記第1加熱部の姿勢の変更を許容する姿勢変更部によって前記姿勢の変更を許容した状態で、前記第1加熱部の前記造形面に近い面である加熱面と、前記造形面と、を平行に接触させる接触工程と、前記加熱面と前記造形面とが平行に接触した状態で、前記姿勢を固定する固定工程と、を実行する。
【符号の説明】
【0105】
20…材料供給部、20a…第1材料供給部、20b…第2材料供給部、22…供給路、30…可塑化部、30a…第1可塑化部、30b…第2可塑化部、31…スクリューケース、32…駆動モーター、40…スクリュー、41…スクリュー上面、42…スクリュー下面、44…材料導入口、45…溝部、46…凸条部、47…中央部、50…バレル、52…バレル上面、54…案内溝、56…連通孔、58…可塑化ヒーター、61…ノズル、61a…第1ノズル、61b…第2ノズル、62…ノズル開口、62a…第1ノズル開口、62b…第2ノズル開口、63…先端面、63a…第1先端面、63b…第2先端面、65…ノズル流路、100…三次元造形装置、200…造形部、200a…第1造形部、200b…第2造形部、300…ステージ、310…載置部、311…載置部材、312…凸部、313…基準面、320…造形ステージ、321…造形面、324…溝、326…第1傾斜面、327…ハンドル、330…第2加熱部、331…第2加熱板、332…第2ヒーター、340…押し付け部、341…ネジ、343…スペーサー、344…付勢部材、345…載置板、346…中央柱、347…柱、350…押さえ部、351…第1押さえ部、352…第2押さえ部、353…偏芯ピン、356…第2傾斜面、360…付勢部、370…第2支持部、371…固定部材、372…穴、375…脚部、380…押し付け移動部、381…第1レバー、382…ロッド、383…第2レバー、384…一端部、385…他端部、386…屈曲部、387…ピン、390…検出部、391…マーカー部、400…移動部、410…第1電動アクチュエーター、420…第2電動アクチュエーター、430…第3電動アクチュエーター、431…可動部、440…第4電動アクチュエーター、500…制御部、600…第1加熱部、601…貫通孔、601a…第1貫通孔、601b…第2貫通孔、610…第1ヒーター、620…第1加熱板、621…加熱面、630…フレーム部、631…第1固定部材、632…第3固定部材、650…断熱部、700…第1支持部、710…支持部材、711…固定板、730…腕部、800…姿勢変更部、801…第2固定部材、802…第4固定部材、810…吊り下げ部、810A…第1吊り下げ部、810B…第2吊り下げ部、810C…第3吊り下げ部、820…可動部材、821…鍔部、830…規制部材、831…チャック部