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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064485
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】電動式作業機械
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20240507BHJP
   G01R 31/392 20190101ALI20240507BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240507BHJP
   E02F 9/00 20060101ALI20240507BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20240507BHJP
   B60L 58/12 20190101ALI20240507BHJP
   B60L 58/16 20190101ALI20240507BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20240507BHJP
   G01R 31/388 20190101ALI20240507BHJP
【FI】
H02J7/00 M
H02J7/00 P
G01R31/392
H01M10/48 P
H01M10/48 301
E02F9/00 C
B60L50/60
B60L58/12
B60L58/16
B60L3/00 S
G01R31/388
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173100
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】上城 貴嗣
(72)【発明者】
【氏名】小松 大輝
(72)【発明者】
【氏名】竹内 健
(72)【発明者】
【氏名】谷垣 絢太
【テーマコード(参考)】
2G216
5G503
5H030
5H125
【Fターム(参考)】
2G216BA01
2G216BA21
5G503BA03
5G503BB01
5G503CB12
5G503DA04
5G503EA05
5G503EA08
5G503FA06
5G503GB06
5H030AA01
5H030AS08
5H030FF22
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
5H125AA12
5H125AC12
5H125AC22
5H125BC01
5H125BC08
5H125BC18
5H125EE22
5H125EE23
5H125EE25
5H125EE27
5H125EE29
5H125EE64
(57)【要約】
【課題】二次電池の残充電時間又は残放電時間の推定精度を高めることができる電動式作業機械を提供する。
【解決手段】電動式ショベルは、二次電池25、電池管理ユニット28、及び車両制御ユニット29を備える。車両制御ユニット29は、電池管理ユニット28で検知された二次電池25の温度及び充電率に基づいて、二次電池25の温度の推移を予測し、予測された二次電池25の温度の推移に基づいて、二次電池25の電流の推移を予測し、予測された二次電池25の電流の推移に基づいて、二次電池25の残充電時間又は残放電時間を推定する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池、および
前記二次電池の電圧又は充電率のうちの少なくとも一方と前記二次電池の温度とを検知する電池管理ユニットを備えた電動式作業機械において、
前記二次電池の充放電を管理する車両制御ユニットを備え、
前記車両制御ユニットは、
前記電池管理ユニットで検知された前記二次電池の温度と電圧又は充電率とに基づいて、前記二次電池の温度の推移を予測し、
予測された前記二次電池の温度の推移に基づいて、前記二次電池の電流の推移を予測し、
予測された前記二次電池の電流の推移に基づいて、前記二次電池の残充電時間又は残放電時間を推定することを特徴とする電動式作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の電動式作業機械において、
前記電池管理ユニットは、前記二次電池の劣化率を検知しており、
前記車両制御ユニットは、前記電池管理ユニットで検知された前記二次電池の劣化率と温度と電圧又は充電率とに基づいて、前記二次電池の温度の推移を予測することを特徴とする電動式作業機械。
【請求項3】
請求項1に記載の電動式作業機械において、
前記電池管理ユニットは、前記二次電池の電流を検知しており、
前記車両制御ユニットは、前記電池管理ユニットで検知された前記二次電池の電流と温度と電圧又は充電率とに基づいて、前記二次電池の温度の推移を予測することを特徴とする電動式作業機械。
【請求項4】
請求項1に記載の電動式作業機械において、
前記車両制御ユニットは、前記二次電池の充電時又は放電時、前記電池管理ユニットで検知された前記二次電池の電圧又は充電率に応じて前記二次電池の電流を変化させており、
前記車両制御ユニットは、
前記電池管理ユニットで検知された前記二次電池の温度と電圧又は充電率とに基づいて、前記二次電池の電圧又は充電率の推移を予測し、
予測された前記二次電池の温度の推移と予測された前記二次電池の電圧又は充電率の推移に基づいて、前記二次電池の電流の推移を予測することを特徴とする電動式作業機械。
【請求項5】
請求項4に記載の電動式作業機械において、
前記電池管理ユニットは、前記二次電池の劣化率を検知しており、
前記車両制御ユニットは、前記電池管理ユニットで検知された前記二次電池の劣化率と温度と電圧又は充電率とに基づいて、前記二次電池の電圧又は充電率の推移を予測することを特徴とする電動式作業機械。
【請求項6】
請求項4に記載の電動式作業機械において、
前記電池管理ユニットは、前記二次電池の電流を検知しており、
前記車両制御ユニットは、前記電池管理ユニットで検知された前記二次電池の電流と温度と電圧又は充電率とに基づいて、前記二次電池の電圧又は充電率の推移を予測することを特徴とする電動式作業機械。
【請求項7】
請求項1に記載の電動式作業機械において、
前記電池管理ユニットは、前記二次電池の電流及び劣化率と外気の温度を検知しており、
前記車両制御ユニットは、前記二次電池の充電時又は放電時、前記電池管理ユニットで検知された前記二次電池の電圧又は充電率に応じて前記二次電池の電流を変化させており、
前記車両制御ユニットは、
熱収支モデルを用い、前記電池管理ユニットで検知された前記二次電池の温度、電圧、及び電流と外気の温度に基づいて、前記二次電池の温度の推移を予測し、
電気回路モデルを用い、前記電池管理ユニットで検知された前記二次電池の温度、充電率、劣化率、及び電流に基づいて、前記二次電池の電圧又は充電率の推移を予測し、
予測された前記二次電池の温度の推移と予測された前記二次電池の電圧又は充電率の推移に基づいて、前記二次電池の電流の推移を予測することを特徴とする電動式作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動式作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
電動式作業機械の一つである電動式ショベルは、例えば、電力を蓄える二次電池(詳細には、リチウムイオン電池又は鉛蓄電池等で構成された蓄電装置)と、インバータを介し二次電池から供給された電力によって駆動される電動モータと、電動モータによって駆動される油圧ポンプと、油圧ポンプからの圧油によって駆動される油圧アクチュエータと、外部の電源から供給された電力を用いて二次電池を充電する充電器とを備える。また、運転者を支援するための構成として、二次電池の充電時における残充電時間又は二次電池の放電時における残放電時間(言い換えれば、電動式ショベルの稼働時における残稼働時間)を演算するコントローラと、コントローラで演算された残充電時間又は残放電時間を表示する表示装置とを設けることが提唱されている。
【0003】
特許文献1は、定電流充電方式(詳細には、複数の定電流充電ステップを順に実行する方式)にて二次電池を充電するための所要時間(残充電時間)を推定する方法を開示する。この推定方法では、現在の二次電池の充電率を取得する。また、現在の二次電池の温度に基づいて、各定電流充電ステップの到達可能充電率を取得する。そして、現在の二次電池の充電率と各定電流充電ステップの到達可能充電率に基づいて、各定電流充電ステップの所要時間を演算し、それらの総和である残充電時間を演算する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-036393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、二次電池の充電時、充電時間の経過に伴い、二次電池の温度が上昇する。特許文献1の充電方式では、各定電流充電ステップにおける二次電池の電流を固定しており、二次電池の温度の変化に応じて二次電池の電流を変化させていない。しかし、二次電池の劣化の抑制と充電時間の短縮を両立する観点から、二次電池の温度の変化に応じて二次電池の電流を変化させるほうが好ましい。このような場合において、特許文献1の推定方法のように、二次電池の温度の変化を考慮せず、現在の二次電池の温度だけから、二次電池の残充電時間を推定すれば、その推定精度が低下する。
【0006】
二次電池の放電時、放電時間の経過に伴い、二次電池の温度が上昇する。そして、二次電池の劣化の抑制と電動モータの動力の増大を両立する観点から、二次電池の温度の変化に応じて二次電池の電流を変化させるほうが好ましい。このような場合において、二次電池の温度の変化を考慮せず、現在の二次電池の温度だけから、二次電池の残放電時間を推定すれば、その推定精度が低下する。
【0007】
本発明は、上記事柄に鑑みてなされたものであり、その目的は、二次電池の残充電時間又は残放電時間の推定精度を高めることができる電動式作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、二次電池、および前記二次電池の電圧又は充電率のうちの少なくとも一方と前記二次電池の温度とを検知する電池管理ユニットを備えた電動式作業機械において、前記二次電池の充放電を管理する車両制御ユニットを備え、前記車両制御ユニットは、前記電池管理ユニットで検知された前記二次電池の温度と電圧又は充電率とに基づいて、前記二次電池の温度の推移を予測し、予測された前記二次電池の温度の推移に基づいて、前記二次電池の電流の推移を予測し、予測された前記二次電池の電流の推移に基づいて、前記二次電池の残充電時間又は残放電時間を推定する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、二次電池の残充電時間又は残放電時間の推定精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施形態における電動式ショベルの構造を表す斜視図である。
図2】本発明の第1の実施形態における電池システムの構成を表すブロック図である。
図3】本発明の第1の実施形態における二次電池の温度と抵抗の関係を表す図である。
図4】本発明の第1の実施形態における充電制御特性を表す図である。
図5】本発明の第1の実施形態における二次電池の残充電時間を推定する処理を表すフローチャートである。
図6】本発明の第1の実施形態における二次電池の温度の推移、二次電池の電圧の推移、及び二次電池の電流の推移を表す図である。
図7】本発明の第1の実施形態の効果を説明するための図である。
図8】本発明の一変形例における二次電池の電流の推移の一部を表す図である。
図9】本発明の第2の実施形態における二次電池の残充電時間を推定する処理を表すフローチャートである。
図10】本発明の第3の実施形態における放電制御特性を表す図である。
図11】本発明の第3の実施形態における二次電池の残放電時間を推定する処理を表すフローチャートである。
図12】本発明の第4の実施形態における二次電池の残放電時間を推定する処理を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の適用対象として電動式ショベルを例にとり、本発明の第1の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0012】
図1は、本実施形態における電動式ショベルの構造を表す斜視図である。
【0013】
本実施形態の電動式ショベルは、走行可能な走行体11と、走行体11の上側に旋回可能に設けられた旋回体12と、旋回体12の前側に連結された作業装置13とを備える。走行体11及び旋回体12は車体を構成する。走行体11は左右の走行モータ14の回転によって走行し、旋回体12は旋回モータ(図示せず)の回転によって旋回する。
【0014】
作業装置13は、掘削作業や積込作業等を行うためのものであり、旋回体12の前部に回動可能に連結されたブーム15と、ブーム15の先端部に回動可能に連結されたアーム16と、アーム16の先端部に回動可能に連結されたバケット17とを備える。ブーム15はブームシリンダ18の伸縮によって回動し、アーム16はアームシリンダ19の伸縮によって回動し、バケット17はバケットシリンダ20の伸縮によって回動する。
【0015】
旋回体12は、運転者が搭乗可能な運転室21と、運転室21以外の部分に形成された機械室22とを備える。旋回体12の運転室21には、運転者が操作可能な複数の操作レバー(図示せず)と、運転者が視認可能な表示装置23(詳細には、ディスプレイ等。後述の図2参照)とが設けられている。
【0016】
旋回体12の機械室22には、電動モータ24(後述の図2参照)と、電動モータ24によって駆動される油圧ポンプ(図示せず)と、複数の操作レバーの操作に応じて作動し、油圧ポンプから複数の油圧アクチュエータ(詳細には、上述した走行モータ14、旋回モータ、ブームシリンダ18、アームシリンダ19、及びバケットシリンダ20)への圧油の流れ(詳細には、方向及び流量)を制御する複数の制御弁(図示せず)とが設けられている。
【0017】
また、旋回体12の機械室22には、電動モータ24に電力を供給し、電動モータ24を制御する電池システムが設けられている。図2は、本実施形態における電池システムの構成を表す図である。
【0018】
本実施形態の電池システムは、電力を蓄える二次電池(蓄電装置)25と、二次電池25に接続されたインバータ26及び充電器27と、電池管理ユニット(BMU:Battery Management Unit)28と、車両制御ユニット(VCU:Vehicle Control Unit)29とを備える。
【0019】
二次電池25は、例えば、直列に接続された複数の電池モジュール30で構成され、各電池モジュール30は、直列に接続された複数の電池セル31(詳細には、リチウムイオン電池又は鉛蓄電池等)で構成されている。
【0020】
電池管理ユニット28は、処理装置及び記憶装置を備えたマイクロコントローラである。処理装置は、プログラムに従って処理を実行するものであって、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、又はDSP(Digital Signal Processor)等である。記憶装置は、プログラムやデータを記憶するものであって、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、若しくはハードディスクドライブ等の不揮発性メモリであるか、又は、RAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリである。
【0021】
電池管理ユニット28は、後述する二次電池25の状態を検知し、その検知履歴を記憶する。電池管理ユニット28は、電流センサ32を用いて、二次電池25を構成する電池セルの電流、すなわち二次電池25の電流を検知する。電池管理ユニット28は、複数の温度センサ(図示せず)を用いて、二次電池25を構成する複数の電池セルの温度を検知し、それらの平均値又は最小値である二次電池25の温度を検知する。電池管理ユニット28は、複数の電圧センサ(図示せず)を用いて、二次電池25を構成する複数の電池セルの電圧を検知し、それらの総和である二次電池25の電圧を検知する。電池管理ユニット28は、温度センサ(図示せず)を用いて、外気の温度を検知する。
【0022】
電池管理ユニット28は、二次電池25の電圧に基づいて、二次電池25の充電率(SOC:State Of Charge)を検知する。詳しく説明すると、例えば、電池管理ユニット28等がOFFからONに切換えられたとき、二次電池25の電圧と二次電池25の充電率との対応関係を示すマップを用い、上述のように検知された二次電池25の電圧から二次電池25の充電率を取得する。その後、上述のように検知された二次電池25の電流を積算し、その積算値に基づいて二次電池25の充電率の変化量を演算し、二次電池25の充電率を更新する。
【0023】
電池管理ユニット28は、二次電池25の容量劣化率(SOHQ:State Of Health Quantity)を検知する。詳しく説明すると、例えば、上述のようにマップを用いて取得された二次電池25の前回の充電率と今回の充電率との差分を演算すると共に、前回と今回の間の期間において検知された二次電池25の電流を積算する。そして、二次電池25の充電率の差分と電流の積算値との比に基づいて、二次電池25の容量の現在値を演算する。そして、二次電池25の容量の現在値と初期値との比を演算して、二次電池25の容量劣化率を取得する。
【0024】
電池管理ユニット28は、二次電池25の抵抗劣化率(SOHR:State Of Health Resistance)を検知する。詳しく説明すると、例えば、所定時間の経過前における二次電池25の電圧及び電流から抵抗を演算し、所定時間の経過後における二次電池25の電圧及び電流から抵抗を演算し、それらの差分である二次電池25の抵抗の変化量の現在値を取得する。そして、二次電池25の抵抗の変化量の現在値と初期値との比を演算して、二次電池25の抵抗劣化率を取得する。
【0025】
車両制御ユニット29は、処理装置及び記憶装置を備えたマイクロコントローラである。処理装置は、プログラムに従って処理を実行するものであって、CPU、MPU、又はDSP等である。記憶装置は、プログラムやデータを記憶するものであって、ROM、フラッシュメモリ、若しくはハードディスクドライブ等の不揮発性メモリであるか、又は、RAM等の揮発性メモリである。
【0026】
車両制御ユニット29は、電動モータ24を駆動させる指令(言い換えれば、二次電池25を放電させる指令)をインバータ26へ出力する。インバータ26は、前述した指令に応じ、二次電池25の直流電力を交流電力に変換して電動モータ24へ供給し、電動モータ24を駆動させる。
【0027】
車両制御ユニット29は、例えば定電流充電方式にて二次電池25を充電させる指令を、充電器27へ出力する。充電器27は、外部の電源(図示せず)から供給された電力を用いて二次電池25を充電する。
【0028】
二次電池25の充電時、充電時間の経過に伴い、二次電池25の温度が上昇する。二次電池25の温度が低いときは、図3で示すように、二次電池25の温度が高いときと比べて二次電池25の抵抗が大きいから、二次電池25の電圧の変化量が大きくなりやすく、劣化が進みやすい。そのため、二次電池25の劣化の抑制を考慮して、二次電池25の電流を小さくすることが好ましい。一方、二次電池25の温度が高いときは、二次電池25の充電時間の短縮を考慮して、二次電池25の電流を大きくすることが好ましい。そのため、車両制御ユニット29は、図4で示すように、電池管理ユニット28で検知された二次電池25の温度に応じて二次電池25の電流を段階的に変化させる指令を充電器27へ出力する。詳細には、二次電池25の温度の上昇に応じて二次電池25の電流を段階的に大きくさせる指令を充電器27へ出力する。
【0029】
車両制御ユニット29は、二次電池25の充放電を管理する。車両制御ユニット29は、電池管理ユニット28で検知された二次電池25の充電率(又は電圧)に応じて二次電池25の電流を段階的に変化させる指令を充電器27へ出力する。詳細には、二次電池25の充電率(又は電圧)の増加に応じて二次電池25の電流を段階的に小さくさせる指令を充電器27へ出力する。
【0030】
本実施形態の特徴として、車両制御ユニット29は、二次電池25の充電時、二次電池25の残充電時間を推定して表示装置23に表示させる。本実施形態における二次電池25の残充電時間を推定する処理を、図5を用いて説明する。図5は、本実施形態における二次電池の残充電時間を推定する処理を表すフローチャートである。
【0031】
ステップS11にて、車両制御ユニット29は、電池管理ユニット28で検知された二次電池25の温度及び充電率に基づいて、二次電池25の温度の推移(図6(a)参照)を予測する。詳しく説明すると、例えば二次電池25の充電開始時における二次電池25の温度及び充電率からなる条件毎に、予め取得された二次電池25の温度の推移のデータを記憶しており、二次電池25の充電開始時に検知された二次電池25の温度及び充電率に対応する二次電池25の温度の推移のデータを抽出する。下記の表1は、二次電池25の充電開始時における二次電池25の温度が0℃、充電率が20%である場合の二次電池25の温度の推移のデータを表す。表1においては、便宜上、時間間隔が10分である場合を例にとって示しているものの、これに限られない。
【0032】
【表1】
【0033】
ステップS12にて、車両制御ユニット29は、電池管理ユニット28で検知された二次電池25の温度及び充電率に基づいて、二次電池25の電圧の推移(図6(b)参照)を予測する。詳しく説明すると、例えば二次電池25の充電開始時における二次電池25の温度及び充電率からなる条件毎に、予め取得された二次電池25の電圧の推移のデータを記憶しており、二次電池25の充電開始時に検知された二次電池25の温度及び充電率に対応する二次電池25の電圧の推移のデータを抽出する。下記の表2は、二次電池25の充電開始時における二次電池25の温度が0℃、充電率が20%である場合の二次電池の電圧の推移のデータを表す。表2においては、便宜上、時間間隔が10分である場合を例にとって示しているものの、これに限られない。
【0034】
【表2】
【0035】
ステップS13に進み、車両制御ユニット29は、ステップS11で予測された二次電池25の温度の推移と、ステップS12で予測された二次電池25の電圧の推移に基づいて、二次電池25の電流の推移(図6(c)の実線参照)を予測する。詳細には、上述の図4を用いて説明した充電制御特性を用いて、二次電池25の電流の推移を予測する。
【0036】
ステップS14に進み、車両制御ユニット29は、ステップS13で予測された二次電池25の電流の推移に基づいて、二次電池25の残充電時間を推定する。詳細には、二次電池25の電流の推移に基づいて、二次電池25の電圧の推移をあらためて演算する。そして、本実施形態では定電流充電方式にて二次電池25を充電するから、例えば二次電池25の電圧が設定値以上となるまでの時間を、残充電時間として演算する。あるいは、二次電池25の電流の推移に基づいて、二次電池25の充電率の推移を演算し、例えば二次電池25の充電率が設定値となるまでの時間を、残充電時間として演算する。
【0037】
以上のように本実施形態においては、二次電池25の温度等の推移を予測し、二次電池25の温度等の推移に基づいて二次電池25の電流の推移を予測し、二次電池25の電流の推移に基づいて二次電池25の残充電時間を推定する。そのため、図7で示すように、二次電池25の温度の変化を考慮せず、現在の二次電池25の温度だけから、二次電池25の残充電時間を推定する場合(比較例)と比べ、二次電池25の残充電時間の推定値の誤差(実測値との差分)を低減することができる。すなわち、二次電池25の残充電時間の推定精度を高めることができる。
【0038】
なお、第1の実施形態において、車両制御ユニット29は、電池管理ユニット28で検知された二次電池25の温度及び充電率に基づいて、二次電池25の温度の推移を予測する場合を例にとって説明したが、これに限られない。車両制御ユニット29は、電池管理ユニット28で検知された二次電池25の温度及び電圧に基づいて、二次電池25の温度の推移を予測してもよい。詳しく説明すると、例えば二次電池25の充電開始時における二次電池25の温度及び電圧からなる条件毎に、予め取得された二次電池25の温度の推移のデータを記憶しており、電池管理ユニット28で検知された二次電池25の充電開始時における二次電池25の温度及び電圧に対応する二次電池25の温度の推移のデータを抽出してもよい。
【0039】
あるいは、車両制御ユニット29は、電池管理ユニット28で検知された二次電池25の温度と充電率又は電圧と劣化率に基づいて、二次電池25の温度の推移を予測してもよい。詳しく説明すると、例えば二次電池25の充電開始時における二次電池25の温度と充電率又は電圧と劣化率(詳細には、容量劣化率又は/及び抵抗劣化率)からなる条件毎に、予め取得された二次電池25の温度の推移のデータを記憶しており、電池管理ユニット28で検知された二次電池25の充電開始時における二次電池25の温度と充電率又は電圧と劣化率(詳細には、容量劣化率又は/及び抵抗劣化率)に対応する二次電池25の温度の推移のデータを抽出してもよい。
【0040】
また、第1の実施形態において、車両制御ユニット29は、電池管理ユニット28で検知された二次電池25の温度及び充電率に基づいて、二次電池25の電圧の推移を予測する場合を例にとって説明したが、これに限られない。車両制御ユニット29は、電池管理ユニット28で検知された二次電池25の温度及び電圧に基づいて、二次電池25の電圧の推移を予測してもよい。詳しく説明すると、例えば二次電池25の充電開始時における二次電池25の温度及び電圧からなる条件毎に、予め取得された二次電池25の電圧の推移のデータを記憶しており、電池管理ユニット28で検知された二次電池25の充電開始時における二次電池25の温度及び電圧に対応する二次電池25の電圧の推移のデータを抽出してもよい。
【0041】
あるいは、車両制御ユニット29は、電池管理ユニット28で検知された二次電池25の温度と充電率(又は電圧)と劣化率に基づいて、二次電池25の電圧の推移を予測してもよい。詳しく説明すると、例えば二次電池25の充電開始時における二次電池25の温度と充電率(又は電圧)と劣化率(詳細には、容量劣化率又は/及び抵抗劣化率)からなる条件毎に、予め取得された二次電池25の電圧の推移のデータを記憶しており、電池管理ユニット28で検知された二次電池25の充電開始時における二次電池25の温度と充電率(又は電圧)と劣化率(詳細には、容量劣化率又は/及び抵抗劣化率)に対応する二次電池25の電圧の推移のデータを抽出してもよい。
【0042】
また、第1の実施形態において、車両制御ユニット29は、二次電池25の温度の推移と電圧の推移を予測し、二次電池25の温度の推移と電圧の推移に基づいて、二次電池25の電流の推移を予測する場合を例にとって説明したが、これに限られない。車両制御ユニット29は、二次電池25の電圧の推移に代えて、二次電池25の充電率の推移を推定し、二次電池25の温度の推移と充電率の推移に基づいて、二次電池25の電流の推移を予測してもよい。
【0043】
また、第1の実施形態において、車両制御ユニット29は、二次電池25の充電時、電池管理ユニット28で検知された二次電池25の充電率(又は電圧)に応じて二次電池25の電流を段階的に変化させる場合を例にとって説明したが、これに限られない。車両制御ユニット29は、二次電池25の充電時、電池管理ユニット28で検知された二次電池25の充電率(又は電圧)に応じて二次電池25の電流を変化させなくてもよい。この変形例では、車両制御ユニット29は、二次電池25の電圧(又は充電率)の推移を予測しなくてよく、二次電池25の温度の推移に基づいて、二次電池25の電流の推移を予測すればよい。
【0044】
また、第1の実施形態においては、定電流充電方式にて二次電池25を充電させる場合を例にとって説明したが、これに限られない。定電流・定電圧充電方式(詳細には、定電流充電ステップを行い、例えば二次電池25の電圧が所定値に達したら、定電圧充電ステップを行う方式)にて、二次電池25を充電させてもよい。この変形例では、定電流充電ステップにおける二次電池25の電流の推移は、上述の図6(c)の実線で示した通りである。定電圧充電ステップにおける二次電池25の電流は、図8で示すように、定電圧充電時間の経過に伴い、減少する。車両制御ユニット29は、例えば、数式モデルを用いて、定電圧充電ステップにおける二次電池25の電流の推移を予測する。あるいは、例えば、予め取得された電流の減少率の推移を用いて、定電圧充電ステップにおける二次電池25の電流の推移を予測する。更に、二次電池25の温度や劣化率に基づいて、定電圧充電ステップにおける二次電池25の電流の推移を補正してもよい。
【0045】
上述した変形例では定電流・定電圧充電方式にて二次電池25を充電するから、上述の図5のステップS14にて、車両制御ユニット29は、例えば、定電流充電ステップにて二次電池25の電圧が所定値となるまでの時間を定電流充電時間として演算し、定電圧充電ステップにて二次電池25の電流が設定値未満となるまでの時間を定電圧充電時間として演算し、それらの総和である総充電時間を演算する。そして、二次電池25の充電開始からの経過時間を、総充電時間から差し引くことにより、残充電時間を演算する。
【0046】
本発明の第2の実施形態を説明する。なお、本実施形態において、第1の実施形態と同等の部分は同一の符号を付し、適宜、説明を省略する。
【0047】
本実施形態の車両制御ユニット29は、二次電池25の充電時、二次電池25の残充電時間を推定して表示装置23に表示させるものの、その推定方法が第1の実施形態とは異なる。本実施形態における二次電池25の残充電時間を推定する処理を、図9を用いて説明する。図9は、本実施形態における二次電池の残充電時間を推定する処理を表すフローチャートである。
【0048】
ステップS21にて、車両制御ユニット29は、演算子k=1に初期化する。ステップS22に進み、X分後の二次電池25の温度を、熱収支モデルを用いて予測する。下記の式(1)で示すように、二次電池25の熱収支は、二次電池25の発生熱Qb、放射熱Qr、表面積S、及び温度Tと、二次電池25を冷却する外気(冷媒)の温度Tmと、熱伝達係数αとを用いて表される。二次電池25の放射熱Qr及び表面積Sは、固定値である。熱伝達係数αは、固定値であるものの、自然冷却又は強制冷却などの冷却方法の変更に応じて変更されてもよい。下記の式(2)で示すように、二次電池の発生熱Qbは、二次電池25の抵抗値(詳細には、電圧Vと開回路電圧OCVとの差分に相当)及び電流Iを用いて求められる。開回路電圧OCVは、固定値である。下記の式(3)で示すように、二次電池25の温度の上昇量ΔTは、二次電池25の熱Qと熱容量Cを用いて求められる。熱容量Cは、固定値である。したがって、車両制御ユニット29は、式(1)~(3)を用い、電池管理ユニット28で検知された現在の二次電池25の温度、電圧、及び電流と外気の温度に基づいて、X分後の二次電池25の温度を予測する。
【0049】
【数1】
【0050】
【数2】
【0051】
【数3】
【0052】
ステップS23にて、車両制御ユニット29は、X分後の二次電池25の電圧を、電気回路モデルを用いて予測する。下記の式(4)で示すように、二次電池25の電圧Vは、二次電池25の開回路電圧OCV、電流I、瞬時抵抗Ro、抵抗劣化率SOHR、及び分極電圧Vpを用いて求められる。瞬時抵抗Roは、充電率SOC及び温度Tを用いて求められる。下記の式(5)で示すように、分極電圧Vpは、電流I、分極抵抗Rp、経過時間t、及び時定数τを用いて求められる。分極抵抗Rpは、充電率SOC及び温度Tを用いて求められる。時定数τは、固定値である。したがって、車両制御ユニット29は、式(4)~(5)を用い、電池管理ユニット28で検知された現在の二次電池25の温度、充電率、抵抗劣化率、及び電流に基づいて、X分後の二次電池25の電圧を予測する。
【0053】
【数4】
【0054】
【数5】
【0055】
ステップS24に進み、車両制御ユニット29は、演算子k=1であるから、ステップS22で予測されたX分後の二次電池25の温度と、ステップS23で予測されたX分後の二次電池25の電圧とに基づいて、X分後の二次電池25の電流を予測する。詳細には、上述の図4を用いて説明した充電制御特性により、X分後の二次電池25の電流を予測する。但し、予測された二次電池25の電流は、電池管理ユニット28で検知された現在の二次電池25の電流以下とする。
【0056】
ステップS25に進み、車両制御ユニット29は、演算子k=1であるから、(X×2)分後の二次電池25の温度を、熱収支モデルを用いて予測する。詳細には、式(1)~(3)を用い、X分後の二次電池25の温度、電圧、及び電流と外気の温度に基づいて、(X×2)分後の二次電池25の温度を予測する。なお、X分後の外気の温度は、現在の外気の温度と同じであるとする。
【0057】
ステップS26にて、車両制御ユニット29は、演算子k=1であるから、(X×2)分後の二次電池25の電圧を、電気回路モデルを用いて予測する。詳細には、式(4)~(5)を用い、X分後の二次電池25の温度、充電率、抵抗劣化率、及び電流に基づいて、(X×2)分後の二次電池25の電圧を予測する。なお、X分後の二次電池25の充電率は、現在の二次電池25の充電率及び電流を用いて求められる。X分後の二次電池25の抵抗劣化率は、現在の二次電池25の抵抗劣化率と同じであるとする。
【0058】
ステップS27に進み、車両制御ユニット29は、(X×2)分後の二次電池25が充電完了するかどうかを判定する。定電流充電方式にて二次電池25を充電する場合は、例えば、二次電池25の電圧が設定値以上であるかどうかにより、二次電池25が充電完了するかどうかを判定する。定電流・定電圧充電方式にて二次電池25を充電する場合は、例えば、定電圧充電ステップにて二次電池25の電流が設定値未満であるかどうかにより、二次電池25が充電完了するかどうかを判定する。(X×2)分後の二次電池25が充電完了していなければ、ステップS28に進む。
【0059】
ステップS28にて、車両制御ユニット29は、演算子k=2に更新する。ステップS24に進み、車両制御ユニット29は、演算子k=2であるから、(X×2)分後の二次電池25の温度と、(X×2)分後の二次電池25の電圧とに基づいて、(X×2)分後の二次電池25の電流を予測する。ステップS25に進み、車両制御ユニット29は、演算子k=2であるから、(X×2)分後の二次電池25の温度、電圧、及び電流と外気の温度に基づいて、(X×3)分後の二次電池25の温度を予測する。ステップS26にて、演算子k=2であるから、(X×2)分後の二次電池25の温度、充電率、抵抗劣化率、及び電流に基づいて、(X×3)分後の二次電池25の電圧を予測する。ステップS27に進み、(X×3)分後の二次電池25が充電完了したかどうかを判定する。
【0060】
ステップS27にて(X×k)分後の二次電池25が充電完了すると判定するまで、ステップS28にて演算子kを更新し、ステップS24、S25、及びS26を繰り返す。(X×k)分後の二次電池25が充電完了すると判定すれば、ステップS29に進む。ステップS29にて、車両制御ユニット29は、二次電池25の残充電時間が(X×k)分であると推定する。
【0061】
上述した本実施形態においても、二次電池25の温度の変化を考慮せず、現在の二次電池25の温度だけから、二次電池25の残充電時間を推定する場合と比べ、二次電池25の残充電時間の推定精度を高めることができる。
【0062】
また、本実施形態においては、熱収支モデルや電気回路モデル(詳細には、上述の式(1)~(5))を用いるので、第1の実施形態のように二次電池25の条件毎に予め取得された二次電池25のデータを用いる場合と比べ、その準備の負荷を低減することができる。また、第1の実施形態と比べ、二次電池25の残充電時間の推定精度を高めることができる。
【0063】
本発明の第3の実施形態を説明する。なお、本実施形態において、第1の実施形態と同等の部分は、同一の符号を付し、適宜、説明を省略する。
【0064】
二次電池25の放電時、放電時間の経過に伴い、二次電池25の温度が上昇する。二次電池25の温度が低いときは、上述の図3で示すように、二次電池25の温度が高いときと比べて二次電池25の抵抗が大きいから、二次電池25の電圧の変化量が大きくなりやすく、劣化が進みやすい。そのため、二次電池25の劣化の抑制を考慮して、二次電池25の電流を小さくすることが好ましい。一方、二次電池25の温度が高いときは、電動モータ24の動力の増大を考慮して、二次電池25の電流を大きくすることが好ましい。そのため、本実施形態の車両制御ユニット29は、図10で示すように、電池管理ユニット28で検知された二次電池25の温度に応じて二次電池25の電流を変化させる指令をインバータ26へ出力する。詳細には、二次電池25の温度の上昇に応じて二次電池25の電流を大きくさせる指令をインバータ26へ出力する。
【0065】
車両制御ユニット29は、電池管理ユニット28で検知された二次電池25の充電率(又は電圧)に応じて二次電池25の電流を変化させる指令をインバータ26へ出力する。詳細には、二次電池25の充電率(又は電圧)の減少に応じて二次電池25の電流を小さくさせる指令をインバータ26へ出力する。
【0066】
本実施形態の特徴として、車両制御ユニット29は、二次電池25の放電時、二次電池25の残放電時間(言い換えれば、電動式ショベルの残稼働時間)を推定して表示装置23に表示させる。本実施形態における二次電池25の残放電時間を推定する処理を、図11を用いて説明する。図11は、本実施形態における二次電池の残放電時間を推定する処理を表すフローチャートである。
【0067】
ステップS31にて、車両制御ユニット29は、電池管理ユニット28で検知された二次電池25の温度及び充電率に基づいて、二次電池25の温度の推移を予測する。詳しく説明すると、例えば二次電池25の放電開始時における二次電池25の温度及び充電率からなる条件毎に、予め取得された二次電池25の温度の推移のデータを記憶しており、二次電池25の放電開始時に検知された二次電池25の温度及び充電率に対応する二次電池25の温度の推移のデータを抽出する。
【0068】
ステップS32にて、車両制御ユニット29は、電池管理ユニット28で検知された二次電池25の温度及び充電率に基づいて、二次電池25の電圧の推移を予測する。詳しく説明すると、例えば二次電池25の放電開始時における二次電池25の温度及び充電率からなる条件毎に、予め取得された二次電池25の電圧の推移のデータを記憶しており、二次電池25の充電開始時に検知された二次電池25の温度及び充電率に対応する二次電池25の電圧の推移のデータを抽出する。
【0069】
ステップS33に進み、車両制御ユニット29は、ステップS31で予測された二次電池25の温度の推移と、ステップS32で予測された二次電池25の電圧の推移に基づいて、二次電池25の電流の推移を予測する。詳細には、上述の図10を用いて説明した放電制御特性を用いて、二次電池25の電流の推移を予測する。
【0070】
ステップS34に進み、車両制御ユニット29は、ステップS33で予測された二次電池25の電流の推移に基づいて、二次電池25の残放電時間を推定する。詳細には、二次電池25の電流の推移に基づいて、二次電池25の電圧の推移をあらためて演算する。そして、例えば二次電池25の電圧が設定値未満となるまでの時間を、残放電時間として演算する。あるいは、二次電池25の電流の推移に基づいて、二次電池25の充電率の推移を演算し、例えば二次電池25の充電率が設定値未満となるまでの時間を、残放電時間として演算する。
【0071】
以上のように本実施形態においては、二次電池25の温度等の推移を予測し、二次電池25の温度等の推移に基づいて二次電池25の電流の推移を予測し、二次電池25の電流の推移に基づいて二次電池25の残放電時間を推定する。そのため、二次電池25の温度の変化を考慮せず、現在の二次電池25の温度だけから、二次電池25の残放電時間を推定する場合と比べ、二次電池25の残放電時間の推定精度を高めることができる。
【0072】
なお、上述した第1の実施形態に対する変形例と同様、第3の実施形態を変形してもよい。更に、電動モータ24の駆動状況に応じて二次電池25の放電状況が変化するため、二次電池25の電流をパラメータとして追加してもよい。すなわち、車両制御ユニット29は、電池管理ユニット28で検知された二次電池25の温度と充電率又は電圧と電流(又は所定時間における平均電流)に基づいて、二次電池25の温度の推移や、二次電池25の電圧又は充電率の推移を予測してもよい。また、車両制御ユニット29は、電池管理ユニット28で検知された二次電池25の温度と充電率又は電圧と劣化率と電流(又は所定時間における平均電流)に基づいて、二次電池25の温度の推移や、二次電池25の電圧又は充電率の推移を予測してもよい。
【0073】
本発明の第4の実施形態を説明する。なお、本実施形態において、第3の実施形態と同等の部分は同一の符号を付し、適宜、説明を省略する。
【0074】
本実施形態の車両制御ユニット29は、二次電池25の放電時、二次電池25の残放電時間を推定して表示装置23に表示させるものの、その推定方法が第3の実施形態とは異なる。本実施形態における二次電池25の残放電時間を推定する処理を、図12を用いて説明する。図12は、本実施形態における二次電池の残放電時間を推定する処理を表すフローチャートである。
【0075】
ステップS41にて、車両制御ユニット29は、演算子k=1に初期化する。ステップS42に進み、X分後の二次電池25の温度を、熱収支モデルを用いて予測する。詳細には、上記の式(1)~(3)を用い、電池管理ユニット28で検知された現在の二次電池25の温度、電圧、及び電流と外気の温度に基づいて、X分後の二次電池25の温度を予測する。
【0076】
ステップS43にて、車両制御ユニット29は、X分後の二次電池25の電圧を、電気回路モデルを用いて予測する。詳細には、上記の式(4)~(5)を用い、電池管理ユニット28で検知された現在の二次電池25の温度、充電率、抵抗劣化率、及び電流に基づいて、X分後の二次電池25の電圧を予測する。
【0077】
ステップS44に進み、車両制御ユニット29は、演算子k=1であるから、ステップS42で予測されたX分後の二次電池25の温度と、ステップS43で予測されたX分後の二次電池25の電圧とに基づいて、X分後の二次電池25の電流を予測する。詳細には、上述の図10を用いて説明した放電制御特性により、X分後の二次電池25の電流を予測する。
【0078】
ステップS45に進み、車両制御ユニット29は、演算子k=1であるから、(X×2)分後の二次電池25の温度を、熱収支モデルを用いて予測する。詳細には、式(1)~(3)を用い、X分後の二次電池25の温度、電圧、及び電流と外気の温度に基づいて、(X×2)分後の二次電池25の温度を予測する。
【0079】
ステップS46にて、車両制御ユニット29は、演算子k=1であるから、(X×2)分後の二次電池25の電圧を、電気回路モデルを用いて予測する。詳細には、式(4)~(5)を用い、X分後の二次電池25の温度、充電率、抵抗劣化率、及び電流に基づいて、(X×2)分後の二次電池25の電圧を予測する。
【0080】
ステップS47に進み、車両制御ユニット29は、(X×2)分後の二次電池25が放電停止するかどうかを判定する。詳細には、例えば二次電池25の電圧が設定値未満であるかどうかにより、二次電池25が放電停止するかどうかを判定する。(X×2)分後の二次電池25が放電停止していなければ、ステップS48に進む。
【0081】
ステップS48にて、車両制御ユニット29は、演算子k=2に更新する。ステップS44に進み、車両制御ユニット29は、演算子k=2であるから、(X×2)分後の二次電池25の温度と、(X×2)分後の二次電池25の電圧とに基づいて、(X×2)分後の二次電池25の電流を予測する。ステップS45に進み、車両制御ユニット29は、演算子k=2であるから、(X×2)分後の二次電池25の温度、電圧、及び電流と外気の温度に基づいて、(X×3)分後の二次電池25の温度を予測する。ステップS46にて、演算子k=2であるから、(X×2)分後の二次電池25の温度、充電率、抵抗劣化率、及び電流に基づいて、(X×3)分後の二次電池25の電圧を予測する。ステップS47に進み、(X×3)分後の二次電池25が放電停止するかどうかを判定する。
【0082】
ステップS47にて(X×k)分後の二次電池25が放電定すると判定するまで、ステップS48にて演算子kを更新し、ステップS44、S45、及びS46を繰り返す。(X×k)分後の二次電池25が放電停止すると判定すれば、ステップS49に進む。ステップS49にて、車両制御ユニット29は、二次電池25の残放電時間が(X×k)分であると推定する。
【0083】
上述した本実施形態においても、二次電池25の温度の変化を考慮せず、現在の二次電池25の温度だけから、二次電池25の残放電時間を推定する場合と比べ、二次電池25の残放電時間の推定精度を高めることができる。
【0084】
また、本実施形態においては、熱収支モデルや電気回路モデル(詳細には、上記の式(1)~(5))を用いるので、第3の実施形態のように二次電池25の条件毎に予め取得された二次電池25のデータを用いる場合と比べ、その準備の負荷を低減することができる。また、第3の実施形態と比べ、二次電池25の残放電時間の推定精度を高めることができる。
【0085】
なお、第1~第4の実施形態において、二次電池25は、直列に接続された複数の電池モジュール30で構成された場合を例にとって説明したが、これに限られない。二次電池25は、例えば並列に接続された複数の電池モジュール30で構成されてもよい。
【0086】
また、第1~第4の実施形態において、車両制御ユニット29は、二次電池25の温度等の推移を予測し、二次電池25の温度等の推移に基づいて二次電池25の電流の推移を予測し、二次電池25の電流の推移に基づいて二次電池25の残充電時間又は残放電時間を推定する場合を例にとって説明したが、これに限られない。車両制御ユニット29は、予測される二次電池25の温度等の推移や予測される二次電池25の電流の推移を反映したマップであって、二次電池25の温度及び電圧又は充電率等からなる条件(詳細には、二次電池25の容量劣化率又は抵抗劣化率を追加してもよいし、外気の温度を追加してもよい)と二次電池25の残充電時間又は残放電時間との対応関係を示すマップを用いて、電池管理ユニット28で検知された二次電池25の温度及び電圧又は充電率等からなる条件から、二次電池25の残充電時間又は残放電時間を取得してもよい。具体例の一つとして、下記の表3で示すように、二次電池25の温度及び充電率からなる条件と二次電池25の残充電時間との対応関係を示すマップを用い、二次電池25の充電開始時における二次電池25の温度が0℃、充電率が20%であれば、残充電時間が100分であると推定する。このような変形例においても、二次電池25の残充電時間又は残放電時間の推定精度を高めることが可能である。
【0087】
【表3】
【0088】
なお、以上においては、電動式ショベルに本発明を適用した場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、例えば電動式ホイールローダ、電動式ダンプトラック、又は電動式道路機械などの他の電動式作業機械に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0089】
25 二次電池
28 電池管理ユニット
29 車両制御ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12