(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064501
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】風船用紙材と、風船用紙材の製造方法と、風船用紙材を用いた紙風船
(51)【国際特許分類】
B32B 27/10 20060101AFI20240507BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20240507BHJP
B32B 27/22 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
B32B27/10
B32B27/30 102
B32B27/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173131
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】390032230
【氏名又は名称】ニッポン高度紙工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 貴士
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AH02B
4F100AH02H
4F100AJ04A
4F100AK21B
4F100AT00A
4F100BA02
4F100BA07
4F100CA04B
4F100DG10A
4F100EC03B
4F100EH41A
4F100EH46B
4F100EJ17B
4F100EJ42B
4F100EJ82B
4F100GB84
4F100JA13A
4F100JB16B
4F100JD02
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】製造工程における小さな裂けの発生が少なく、浮遊用ガスを充填した場合の紙風船の浮遊期間を延ばすことができ、さらに、製造各工程もスムーズに行える風船用紙材を提供する。
【解決手段】天然セルロース繊維紙であって、密度が0.70~1.00g/cm3の紙基材と、この紙基材の一面側に設けられた熱圧着性樹脂よりなる熱圧着層とを備える風船用紙材を構成する。この風船用紙材は、紙基材と熱圧着層に可塑剤を含み、紙基材の一面側は、熱圧着性樹脂による熱圧着面、紙基材の他面側は、非熱圧着面とした、ヘリウムのガス透過量が0.95~2.60ml/cm2・day・MPaである
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然セルロース繊維紙であって、密度が0.70~1.00g/cm3の紙基材と、
前記紙基材の一面側に設けられた熱圧着性樹脂よりなる熱圧着層と、を備え、
前記紙基材と熱圧着層に可塑剤を含み、
前記紙基材の一面側は、前記熱圧着性樹脂による熱圧着面、前記紙基材の他面側は、非熱圧着面とした、
ヘリウムのガス透過量が0.95~2.60ml/cm2・day・MPaである
風船用紙材。
【請求項2】
前記熱圧着層を構成する前記熱圧着性樹脂は、ポリビニルアルコール、またはポリビニルアルコールと他の樹脂との共重合体よりなり、
前記紙基材、および前記熱圧着層に含まれる可塑剤は、グリセリン、ジグリセリン、及びトリメチロールプロパンから選択される少なくとも一種である
ことを特徴とする請求項1に記載の風船用紙材。
【請求項3】
前記熱圧着層を構成する前記熱圧着性樹脂の塗工量が2~7g/m2であり、
前記可塑剤が、前記紙基材に対して3~25質量パーセントである
請求項1に記載の風船用紙材。
【請求項4】
請求項1に記載の風船用紙材の製造方法であって、
紙基材の一面側に、熱圧着性樹脂と可塑剤との混合物を塗布し、
次に、前記熱圧着性樹脂と可塑剤を含む混合物を乾燥させて熱圧着性樹脂層を形成し、 その後、紙基材を巻き取る
風船用紙材の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の風船用紙材の製造方法であって、
まず紙基材に可塑剤を含浸させ、
次に、紙基材の一面側に熱圧着性樹脂を塗布し、
その後、前記熱圧着性樹脂と可塑剤を乾燥させて熱圧着層を形成し、
その後、紙基材を巻き取る
風船用紙材の製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載の風船用紙材を用いた紙風船であって、
前記風船用紙材の熱圧着面同士を接触させた状態で、紙風船外周部を熱圧着封止した熱圧着封止部と、
前記熱圧着封止部内方において、前記風船用紙材によって覆われた気体封入部と、を備えた
紙風船。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風船用紙材と、風船用紙材の製造方法と、風船用紙材を用いた紙風船に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内部に浮遊用ガスを充填した風船を飛ばすことで、各種イベントを盛り上げることが行われているが、飛ばした後に落下した風船が、環境、生態系に影響を与えることが危惧されている。
そこで、天然セルロース繊維紙であって、透気度が10000秒/100cc以上の紙基材を用いて紙風船を作製することが提案されている(特許文献1参照)。
すなわち、天然セルロース繊維紙で紙風船を作製すれば、落下後に、分解し、自然界へと循環するので、環境、生態系に影響を与えるのを抑制することができる。
また、天然繊維の不織布よりなる透湿性基材の表面に、ポリビニルアルコールを主成分とする水溶性フィルム層を設けることが提案されている(特許文献2参照)。
すなわち、天然繊維の不織布よりなる透湿性基材とポリビニルアルコールは、落下後に、分解し、自然界へと循環するので、環境、生態系に影響を与えるのを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5-237267号公報
【特許文献2】特開平8-112458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された紙風船では紙基材の気密度を高めることで、紙基材と封止用フィルムを積層しなくても、内部に封入した浮遊用ガスが、イベント開催中の一定実用期間内において、風船外に漏れ出すのを防止できる。
しかしながら、天然セルロース繊維紙だけで紙風船を作製した場合、浮遊用ガスを充填した場合の浮遊期間には限界が有り、これを延ばしてほしいとの要請もある。
すなわち、作成する紙風船が多い時には、浮遊性ガスの封入時間も長くなり、その場合には、初期にガス封入した紙風船の浮力が低下する虞が有るので、実用的には浮遊時間を延ばしてほしいとの要望になるのである。
また、上記特許文献1に記載された透気度の高い紙基材は硬いので、紙基材の製造時、搬送時、紙風船の製造時、搬送時、ガス充填時などの各所において、紙基材に折れなどが加わると、その部分に小さな裂けが発生し、ガス漏れの原因となるので、取り扱いには注意が必要であった。
【0005】
それに対して、上記特許文献2に記載された紙風船では、天然繊維の不織布よりなる透湿性基材の表面に、ポリビニルアルコールを主成分とする水溶性フィルムのガスバリア層を設けているので、浮遊用ガスを充填した場合の浮遊期間を延ばすこともできるし、また、透湿性基材が水溶性フィルムを保護するので、各所の取り扱いによる裂けも起きにくいものとなる。
しかしながら、透湿性基材の表面に水溶性フィルム層を設ける時には、このフィルムの成分が透湿性基材の反対面側にも滲み出した状態となる虞があり、この水溶性フィルム層の形成後の各工程において、不具合を起こす可能性がある。
例えば、水溶性フィルム層形成後に透湿性基材の水溶性フィルム層形成面の反対面側に乾燥用ローラーを当接させて水溶性フィルム層の乾燥を行う場合、反対面側に滲み出した水溶性フィルム層の成分が、乾燥用ローラーに接着し、乾燥工程がスムーズに行えなくなる場合もある。
また、紙風船の製作時にも水溶性フィルム層同士を合わせ、熱圧着させる工程があるが、この時にも、熱圧着用の熱源に滲み出した水溶性フィルム層の成分が接着し、紙風船製造工程をスムーズに行えなくなる場合もある。
【0006】
そこで、本発明は、各工程における小さな裂けの発生が少なく、浮遊用ガスを充填した場合の紙風船の浮遊期間を延ばすことができ、さらに、製造各工程もスムーズに行える風船用紙材、風船用紙材の製造方法、及び、風船用紙材を用いた紙風船を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために本発明は、天然セルロース繊維紙であって、密度が0.70~1.00g/cm3の紙基材と、この紙基材の一面側に設けられた熱圧着性樹脂よりなる熱圧着層とを備え、紙基材と熱圧着層に可塑剤を含み、紙基材の一面側は、熱圧着性樹脂による熱圧着面、紙基材の他面側は、非熱圧着面とした、ヘリウムのガス透過量が0.95~2.60ml/cm2・day・MPaである風船用紙材を提供するものである。
【0008】
本発明の風船用紙材は、熱圧着層を構成する熱圧着性樹脂が、ポリビニルアルコール(以下、PVA)、またはPVAと他の樹脂の共重合体よりなり、紙基材と熱圧着層に含まれる可塑剤が、グリセリン、ジグリセリン、及び、トリメチロールプロパンから選択される少なくとも一種よりなるものである。
【0009】
本発明の風船用紙材は、熱圧着層を構成する熱圧着性樹脂の塗工量が2~7g/m2であり、可塑剤が、紙基材に対して3~25質量パーセントとしたものである。
【0010】
本発明の風船用紙材の製造方法は、紙基材の一面側に熱圧着性樹脂と可塑剤との混合物を塗布し、次に、熱圧着性樹脂と可塑剤を含む混合物を乾燥させて熱圧着層を形成し、その後、紙基材を巻き取るものである。
【0011】
本発明の風船用紙材のもうひとつの製造方法は、まず紙基材に可塑剤を含浸させ、次に、紙基材の一面側に熱圧着性樹脂を塗布し、その後、熱圧着性樹脂と可塑剤を乾燥させて熱圧着層を形成し、その後、紙基材を巻き取るものである。
【0012】
本発明の紙風船は、風船用紙材の熱圧着面同士を接触させた状態で、紙風船外周部を熱圧着封止した熱圧着封止部と、この熱圧着封止部内方において、風船用紙材によって覆われた気体封入部とを備えた構成としたものである。
【発明の効果】
【0013】
以上のように本発明は、紙基材の密度が高く気密性が高いので分子量の大きい熱圧着性樹脂は紙基材内に深く浸入することができず、紙基材の一面側に塗布した熱圧着性樹脂が他面側へとほとんど染み出すことがない。その結果として、紙基材の他面側は非熱圧着面となり、これにより製造各工程をスムーズに行えるようになる。一方、可塑剤の分子量は小さいので、紙基材内にも浸入し紙基材の柔軟性を上げることができる。また、このように分子量の小さい可塑剤が紙基材に浸入することで、分子量の大きい熱圧着性樹脂の浸入をさらに抑制することができる。
そして、可塑剤が紙基材の密度の高いが故の硬さを解消するので、各工程における裂けによるガス漏れの発生も少なくすることができ、浮遊用ガスを充填した場合の紙風船の浮遊期間を延ばすことができる。
さらに、この風船用紙材は熱圧着性樹脂による熱圧着層を設けており、これがガスバリア層としての効果も発揮するので、浮遊用ガスを充填した場合の紙風船の浮遊期間をさらに延ばすことができる。
従って、各工程における小さな裂けの発生が少なく、浮遊用ガスを充填した場合の紙風船の浮遊期間を延ばすことができ、さらに、製造各工程もスムーズに行える風船用紙材、風船用紙材の製造方法、及び、風船用紙材を用いた紙風船を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を説明する。
風船用紙材は、天然セルロース繊維紙からなる紙基材と、紙基材の一面側に設けられた熱圧着性樹脂よりなる熱圧着層と、紙基材と熱圧着層とに含浸された可塑剤とを備える。
【0015】
風船用紙材の製造方法は、紙基材の一面側に、熱圧着性樹脂と可塑剤との混合物を塗布し、熱圧着性樹脂と可塑剤を含む混合物を乾燥させて熱圧着性樹脂層を形成した後、紙基材を巻き取る。
また、風船用紙材の製造方法は、紙基材に可塑剤を含浸させ、紙基材の一面側に熱圧着性樹脂を塗布し、熱圧着性樹脂と可塑剤を乾燥させて熱圧着層を形成した後、紙基材を巻き取る。
【0016】
紙風船は、上記風船用紙材の熱圧着面同士を接触させた状態で、紙風船外周部を熱圧着封止した熱圧着封止部と、熱圧着封止部内方において、風船用紙材によって覆われた気体封入部とを備える。
【0017】
天然セルロース繊維紙を構成する天然セルロース繊維としては、マニラ麻やサイザル麻、ジュート、ケナフ、コットンリンター、エスパルト、針葉樹、広葉樹などがあるが、これらに限定されるものではない。セルロース繊維は叩解されていてもよいし、精製処理したものや、マーセル化したものであってもよい。
【0018】
天然セルロース繊維紙の密度は、0.70~1.00g/cm3が好ましい。密度が0.70g/cm3より小さくなると熱圧着性樹脂が熱圧着層の反対面側に染み出す虞がある。密度が1.00g/cm3を超える紙は製造に多大なエネルギーやコストがかかり、現実的でない。
【0019】
天然セルロース繊維紙の厚さは、15μm以上が好ましい。厚さが15μmより薄くなると気密性の確保が難しくなる。厚さが80μmより厚くなると紙風船が重くなり、浮遊させるためには紙風船を必要以上に大型化しなければならなくなり、実用性がない。
【0020】
熱圧着性樹脂としては、PVA(ポリビニルアルコール)、またはPVAと他の樹脂の共重合体が好適に使用できる。その他、水溶性で生分解性があり熱圧着可能な樹脂であれば使用することができる。
【0021】
可塑剤としては、グリセリン、ジグリセリン、及び、トリメチロールプロパンから選択される少なくとも一種が好適に使用できる。その他、ソルビトールなどの糖アルコールを使用することもできる。
【0022】
熱圧着性樹脂の塗工量としては、2~7g/m2が好ましい。2g/m2より少ないと熱圧着ができない虞がある。7g/m2より多いと紙風船が重くなり、浮遊させるためには紙風船を必要以上に大型化しなければならなくなり、実用性がない。
【0023】
可塑剤の量としては、紙基材に対して3~25質量パーセントが好ましい。3質量パーセントより少ないと紙基材に柔軟性を与えることができない。25質量パーセントより多いと熱圧着部の強度が不足する。
【実施例0024】
以下、本発明に係る紙風船の具体的な実施例、比較例および従来例について、詳細に説明するが、本願発明はこれらの様態に限定されるものではない。
実施例、比較例のそれぞれにおいて、紙基材、風船用紙材、紙風船の各特性の測定は、以下の条件および方法で行った。
【0025】
[厚さ及び密度]
「JIS P 8118『紙及び板紙-厚さ、密度及び比容積の試験方法』」を準拠し、紙基材の厚さ(μm)及び密度(g/cm3)を測定した。
【0026】
[ヘリウムのガス透過量]
2枚の紙風船紙材を熱圧着性樹脂の塗布面同士が対向するように重ね、内寸40cmの正方形となるように4辺をヒートシールし、その一角を1cmほど切ってヘリウムガスを一定量充填後、ヒートシールで塞ぎ、最後に紐を装着して紙風船を作製した。
この紙風船を23℃、50%RH、大気圧下(0.101325MPa)で重量が既知の物体に取り付けて重量を測定し、その差から初期の浮力B1を算出した。そして、1日(24時間)経過後に同様の方法で浮力B2を算出し、以下の式よりヘリウムのガス透過量Vを測定した。
【0027】
・V=(B1-B2)/(1.28-0.17)×1000/(40×40×2×0.101325)
・ガス透過量V(ml/cm2・day・MPa)
・浮力B1,B2(g)
・空気の比重:1.28g/l、ヘリウムの比重:0.17g/l
【0028】
[浮遊期間]
上記のヘリウムのガス透過量を測定したサンプルを用い、紙風船が降下し始めるまでの日数を測定した。
【0029】
[繊維長]
「JIS P 8226-2『パルプ-光学的自動分析法による繊維長測定方法-第2部:非偏光法』」(ISO16065-2『Pulps-Determination of Fibre length by automated optical analysis-Part2:Unpolarized light method』)に記載された装置、ここではFiber Tester PLUS(Lorentzen&Wettre製)を用いて測定し、長さ荷重平均繊維長を繊維の繊維長とした。
【0030】
〔実施例1〕
繊維長0.57mmに叩解した針葉樹クラフトパルプを、長網抄紙機にて抄紙し、厚さ25μm、密度0.85g/cm3の紙基材を得た。
そして、PVAとジグリセリンを5:2.5の重量割合で溶かした塗工液を調製し、塗工量7.5g/m2となるように紙基材にグラビア塗工し乾燥を行うことで、熱圧着性樹脂としてPVAが5g/m2、可塑剤としてジグリセリンが2.5g/m2(紙基材に対して11.7質量%)塗布された紙風船紙材を得た。
次に、2枚の紙風船紙材を熱圧着性樹脂の塗布面同士が対向するように重ね、内寸40cmの正方形となるように4辺をヒートシールし、その一角を1cmほど切って管を挿入してヘリウムガスを一定量充填後、ヒートシールで塞ぎ、最後に紐を装着して紙風船を作製した。
【0031】
〔実施例2〕
繊維長0.98mmに叩解した針葉樹クラフトパルプを使用し、抄紙条件を変更して、紙基材の密度を0.70g/cm3とした以外は、実施例1と同様の方法で紙風船を作製した。
【0032】
〔実施例3〕
繊維長0.43mmに叩解した針葉樹クラフトパルプを使用し、抄紙条件を変更して、紙基材の密度を1.00g/cm3とした以外は、実施例1と同様の方法で紙風船を作製した。
【0033】
〔比較例1〕
繊維長1.25mmに叩解した針葉樹クラフトパルプを使用し、抄紙条件を変更して、紙基材の密度を0.60g/cm3とし、実施例1と同様の方法で塗工を行ったが、塗工液が裏抜けし、乾燥時に紙基材がロールに張り付いてしまい、塗工ができなかった。
【0034】
〔実施例4〕
PVAとジグリセリンの割合が2:2.5となるように塗工液を調製し、塗工量を4.5g/m2とし、PVAの塗布量を2.0g/m2とした以外は、実施例1と同様の方法で紙風船を作製した。
【0035】
〔実施例5〕
PVAとジグリセリンの割合が7:2.5となるように塗工液を調製し、塗工量を9.5g/m2とし、PVAの塗布量を7.0g/m2とした以外は、実施例1と同様の方法で紙風船を作製した。
【0036】
〔比較例2〕
PVAとジグリセリンの割合が1:2.5となるように塗工液を調製し、塗工量を3.5g/m2とし、PVAの塗布量を1.0g/m2とした以外は、実施例1と同様の方法で紙風船を作製しようとしたが、熱圧着ができず、紙風船を作製できなかった。
【0037】
〔実施例6〕
PVAとジグリセリンの割合が5:0.7となるように塗工液を調製し、塗工量を5.7g/m2とし、ジグリセリンの塗布量を0.7g/m2(紙基材に対して3.3質量%)とした以外は、実施例1と同様の方法で紙風船を作製した。
【0038】
〔実施例7〕
PVAとジグリセリンの割合が5:5.3となるように塗工液を調製し、塗工量を10.3g/m2とし、ジグリセリンの塗布量を5.3g/m2(紙基材に対して24.9質量%)とした以外は、実施例1と同様の方法で紙風船を作製した。
【0039】
〔比較例3〕
PVAとジグリセリンの割合が5:0.4となるように塗工液を調製し、塗工量を5.4g/m2とし、ジグリセリンの塗布量を0.4g/m2(紙基材に対して2.0質量%)とした以外は、実施例1と同様の方法で紙風船を作製した。
【0040】
〔比較例4〕
PVAとジグリセリンの割合が5:6となるように塗工液を調製し、塗工量を11.0g/m2とし、ジグリセリンの塗布量を6.0g/m2(紙基材に対して27.9質量%)とした以外は、実施例1と同様の方法で紙風船を作製しようとしたが、熱圧着部の強度が不足し、ガスを充填する際に破れが生じてしまい、紙風船を作製できなかった。
【0041】
〔実施例8〕
紙基材の厚さを15μm、可塑剤をグリセリンとした以外は、実施例1と同様の方法で紙風船を作製した。
【0042】
〔実施例9〕
紙基材の厚さを15μm、可塑剤をトリメチロールプロパン(表中ではTMPと表記)とした以外は、実施例1と同様の方法で紙風船を作製した。
【0043】
〔実施例10〕
実施例1と同様の方法で紙基材を作製し、ジグリセリンのみを溶かした塗工液AとPVAを溶かした塗工液Bを調製した。
まず、紙基材に塗工液Aをディップ塗工し、ニップロールで余分な塗工液を除去した後に、塗工液Bをグラビア塗工し乾燥を行うことで、熱圧着性樹脂としてPVAが5g/m2、可塑剤としてジグリセリンが2.5g/m2(紙基材に対して11.7質量%)塗布された紙風船紙材を得た。
次に、実施例1と同様の方法で紙風船を作製した。
【0044】
実施例1~10、比較例1~4で作製した紙風船についてヘリウムのガス透過量および浮遊期間を測定した。その結果を表1に示す。
【0045】
【0046】
実施例1~3と比較例1より、紙基材の密度は0.7~1.0g/cm3が好ましいことがわかる。
実施例1,4,5と比較例2より、熱圧着性樹脂の塗工量は2.0~7.0g/cm2が好ましいことがわかる。
実施例1,6,7と比較例3,4より、可塑剤は、紙基材に対して3.0~25.0wt%であることが好ましいことがわかる。可塑剤の量が少ないと、紙基材に折れなどが加わると小さな裂けが発生しやすくなるので、ガス透過量が悪化し、浮遊期間が短くなる。
実施例1,8,9より、可塑剤としてグリセリン、ジグリセリン、トリメチロールプロパンを使用することが好ましいとわかる。
【0047】
実施例1、10より、紙基材に熱圧着性樹脂と可塑剤の液状混合物を塗布、乾燥して風船用紙材を製造しても良いし、紙基材に可塑剤を含浸させた後に熱圧着性樹脂を塗布、乾燥して風船用紙材を製造しても良いことがわかる。実施例10の方が効率的に紙基材へ可塑剤を添加することができる。
このように本発明の風船用紙材を用いれば、製造をスムーズに行うことができ、各工程における小さな裂けの発生を抑制し、浮遊用ガスを充填した場合の浮遊期間の長い紙風船を得ることができる。
【0048】
なお、本発明は上述の実施形態例において説明した構成に限定されるものではなく、その他本発明の構成を逸脱しない範囲において種々の変形、変更が可能である。