(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064507
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】スイッチング制御回路、制御回路、電源回路
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20240507BHJP
【FI】
H02M3/155 W
H02M3/155 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173140
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 隆二
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA18
5H730AS04
5H730BB14
5H730BB82
5H730BB88
5H730CC01
5H730DD04
5H730EE58
5H730EE59
5H730FD01
5H730FD28
5H730FF09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】力率改善回路回路の適切なインタリーブ動作を可能にする。
【解決手段】AC-DCコンバータにおいて、力率改善ICの制御回路50は、駆動信号Vq1に接続される第1トランジスタを、第1インダクタIL1電流が第1所定値となった後オンし、出力電圧に応じた第1期間が経過するとオフする。制御回路51は、第1インダクタ電流が第1所定値となる第1タイミングと第2インダクタ電流IL2が第2所定値となる第2タイミングとの時間差と、第1トランジスタのスイッチング周期とを検出する検出回路80と、検出回路の検出結果に基づく時間差及びスイッチング周期の比率と、所定比率との誤差を出力する誤差出力回路81と、第2インダクタ電流が第2所定値となった後、出力に接続される第2トランジスタをオンし、第1期間及び誤差に応じた第2期間が経過すると、第2トランジスタをオフする駆動信号Vq2を出力する駆動信号出力回路82と、を含む。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電圧に応じた電圧が印加される第1及び第2インダクタと、前記第1インダクタに流れる第1インダクタ電流を制御する第1トランジスタと、前記第2インダクタに流れる第2インダクタ電流を制御する第2トランジスタと、を含み、前記交流電圧から目的レベルの出力電圧を生成する電源回路の前記第2トランジスタのスイッチングを制御するスイッチング制御回路であって、
前記第1トランジスタは、前記第1インダクタ電流が第1所定値となった後、オンし、前記出力電圧に応じた第1期間が経過するとオフし、
前記スイッチング制御回路は、
前記第1インダクタ電流が前記第1所定値となる第1タイミング及び前記第2インダクタ電流が第2所定値となる第2タイミングの時間差と、前記第1トランジスタのスイッチング周期とを検出する検出回路と、
前記検出回路の検出結果に基づく前記時間差及び前記スイッチング周期の比率と、所定比率との誤差を出力する誤差出力回路と、
前記第2インダクタ電流が前記第2所定値となった後、前記第2トランジスタをオンする駆動信号を出力し、前記第1期間及び前記誤差に応じた第2期間が経過すると、前記第2トランジスタをオフする前記駆動信号を出力する駆動信号出力回路と、
を含むスイッチング制御回路。
【請求項2】
請求項1に記載のスイッチング制御回路であって、
前記検出回路は、
前記第1タイミングとなると第1レベルの信号を出力し、前記第2タイミングとなると第2レベルの信号を出力する信号出力回路であり、
前記信号出力回路は、
前記信号が前記第1レベルとなる期間において、前記時間差を検出し、前記信号が前記第1レベルとなる毎に、前記スイッチング周期を検出する、
スイッチング制御回路。
【請求項3】
請求項2に記載のスイッチング制御回路であって、
前記誤差出力回路は、
前記信号のレベルと、前記所定比率を示す基準レベルとの差を出力する減算回路と、
前記差を積分し、前記誤差として出力する積分回路と、
を含むスイッチング制御回路。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載のスイッチング制御回路であって、
前記第1トランジスタがオフする際の前記第1インダクタ電流の第1ピーク値を検出する第1電流検出回路と、
前記第2トランジスタがオフする際の前記第2インダクタ電流の第2ピーク値を検出する第2電流検出回路と、
前記第2ピーク値が前記第1ピーク値より大きい場合、前記第2期間が短くなるよう、前記駆動信号出力回路を制御する補正回路と
を含むスイッチング制御回路。
【請求項5】
請求項4に記載のスイッチング制御回路であって、
前記駆動信号出力回路は、
前記第2インダクタ電流が前記第2所定値になると、前記第2トランジスタをオンする第3タイミングを検出するタイミング検出回路と、
前記第2ピーク値及び前記第1ピーク値の差に応じて、前記第3タイミングを遅延させて出力する遅延回路と、
遅延された前記第3タイミングに基づいて、前記第2トランジスタをオンする前記駆動信号を出力し、前記第2期間より短い第3期間が経過すると、前記第2トランジスタをオフする前記駆動信号を出力する出力回路と、
を含むスイッチング制御回路。
【請求項6】
請求項5に記載のスイッチング制御回路であって、
前記遅延回路は、
前記第2ピーク値及び前記第1ピーク値の前記差と、前記第2インダクタ電流の共振周期とに基づいて、前記第3タイミングを遅延させて出力する、
スイッチング制御回路。
【請求項7】
交流電圧から目的レベルの出力電圧を生成する電源回路であって、
前記交流電圧に応じた電圧が印加される第1及び第2インダクタと、
前記第1インダクタに流れる第1インダクタ電流を制御する第1トランジスタと、
前記第2インダクタに流れる第2インダクタ電流を制御する第2トランジスタと、
前記第2トランジスタのスイッチングを制御するスイッチング制御回路と、
を含み、
前記第1トランジスタは、前記第1インダクタ電流が第1所定値となった後、オンし、前記出力電圧に応じた第1期間が経過するとオフし、
前記スイッチング制御回路は、
前記第1インダクタ電流が前記第1所定値となる第1タイミング及び前記第2インダクタ電流が第2所定値となる第2タイミングの時間差と、前記第1トランジスタのスイッチング周期とを検出する検出回路と、
前記検出回路の検出結果に基づく前記時間差及び前記スイッチング周期の比率と、所定比率との誤差を出力する誤差出力回路と、
前記第2インダクタ電流が前記第2所定値となった後、前記第2トランジスタをオンし、前記第1期間及び前記誤差に応じた第2期間が経過すると、前記第2トランジスタをオフする駆動信号を出力する駆動信号出力回路と、
を含む電源回路。
【請求項8】
交流電圧に応じた電圧が印加される第1及び第2インダクタと、前記第1インダクタに流れる第1インダクタ電流を制御する第1トランジスタと、前記第1トランジスタのスイッチングを制御する第1スイッチング制御回路と、前記第2インダクタに流れる第2インダクタ電流を制御する第2トランジスタと、前記第2トランジスタのスイッチングを制御する第2スイッチング制御回路と、を含み、前記交流電圧から目的レベルの出力電圧を生成する電源回路の前記第1及び第2スイッチング制御回路を制御する制御回路であって、
前記第1スイッチング制御回路は、
前記第1インダクタ電流が第1所定値となった後、前記第1トランジスタをオンし、前記出力電圧に応じた第1期間が経過すると、前記第1トランジスタをオフし、
前記第2スイッチング制御回路は、
前記第2インダクタ電流が第2所定値となった後、前記第2トランジスタをオンし、前記出力電圧に応じた第4期間が経過すると、前記第2トランジスタをオフし、
前記制御回路は、
前記第1トランジスタがオフする際の前記第1インダクタ電流の第1ピーク値を検出する第1電流検出回路と、
前記第2トランジスタがオフする際の前記第2インダクタ電流の第2ピーク値を検出する第2電流検出回路と、
前記第1ピーク値及び前記第2ピーク値の差が小さくなるよう、前記第1または前記第4期間の少なくとも一方を補正する補正回路と、
を含む制御回路。
【請求項9】
請求項8に記載の制御回路であって、
前記補正回路は、
前記第1ピーク値が前記第2ピーク値より大きい場合、前記第1期間が短くなるよう、前記第1期間を補正し、前記第2ピーク値が前記第1ピーク値より大きい場合、前記第4期間が短くなるよう、前記第4期間を補正する、
制御回路。
【請求項10】
請求項9に記載の制御回路であって、
前記第1スイッチング制御回路は、
前記第1インダクタ電流が前記第1所定値になると、前記第1トランジスタをオンする第4タイミングを検出する第1タイミング検出回路と、
前記第4タイミングに基づいて、前記第1トランジスタをオンする第1駆動信号を出力し、前記第1ピーク値が前記第2ピーク値より大きい場合、前記補正回路により補正された前記第1期間が経過すると、前記第1トランジスタをオフする前記第1駆動信号を出力する第1出力回路と、
を含む制御回路。
【請求項11】
請求項10に記載の制御回路であって、
前記第1スイッチング制御回路は、
前記第1ピーク値が前記第2ピーク値より大きい場合、前記第1期間が短くなった期間だけ、前記第4タイミングを遅延させて出力する第1遅延回路を含み、
前記第1出力回路は、
遅延された前記第4タイミングに基づいて、前記第1トランジスタをオンする前記第1駆動信号を出力する、
制御回路。
【請求項12】
請求項11に記載の制御回路であって、
前記第1遅延回路は、
前記第1インダクタ電流の共振周期と、前記第1期間が短くなった期間とに基づいて、前記第4タイミングを遅延させて出力する、
制御回路。
【請求項13】
交流電圧から目的レベルの出力電圧を生成する電源回路であって、
前記交流電圧に応じた電圧が印加される第1及び第2インダクタと、
前記第1インダクタに流れる第1インダクタ電流を制御する第1トランジスタと、
前記第1トランジスタのスイッチングを制御する第1スイッチング制御回路と、
前記第2インダクタに流れる第2インダクタ電流を制御する第2トランジスタと、
前記第2トランジスタのスイッチングを制御する第2スイッチング制御回路と、
前記第1及び第2スイッチング制御回路を制御する制御回路と、
を含み、
前記第1スイッチング制御回路は、
前記第1インダクタ電流が第1所定値となった後、前記第1トランジスタをオンし、前記出力電圧に応じた第1期間が経過すると、前記第1トランジスタをオフし、
前記第2スイッチング制御回路は、
前記第2インダクタ電流が第2所定値となった後、前記第2トランジスタをオンし、前記出力電圧に応じた第4期間が経過すると前記第2トランジスタをオフし、
前記制御回路は、
前記第1トランジスタがオフする際の前記第1インダクタ電流の第1ピーク値を検出する第1電流検出回路と、
前記第2トランジスタがオフする際の前記第2インダクタ電流の第2ピーク値を検出する第2電流検出回路と、
前記第1ピーク値及び前記第2ピーク値の差が小さくなるよう、前記第1または前記第4期間の少なくとも一方を補正する補正回路と、
を含む電源回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング制御回路、制御回路、及び電源回路に関する。
【背景技術】
【0002】
臨界モードで動作する一般的な力率改善回路(以下、PFC(Power Factor Correction)回路と称する。)は、インダクタに流れるインダクタ電流のピーク値の波形を、交流電圧を整流した整流電圧と相似形にして、電源の力率を改善する。この際、例えば、複数(例えば、2系統)PFC回路を1つのPFC回路とし、インタリーブ動作をさせることがある(例えば、特許文献1~7、及び非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-041912号公報
【特許文献2】国際公開第2008/032768号
【特許文献3】特開2010-119285号公報
【特許文献4】国際公開第2011/122172号
【特許文献5】特開2016-086463号公報
【特許文献6】特開2011-229364号公報
【特許文献7】特開2010-016973号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】電子デバイス事業部応用技術部,“MH2501SC/MH2511SC アプリケーションノート Ver.3.0”,新電元株式会社,2020年11月11日、
図8,9,波形2、p.9-10,p.20
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、インタリーブ動作するPFC回路では、例えば、2つのトランジスタを別のタイミングでオンする度に入力電流が流れる。これにより、入力電流のスイッチングリプル成分を小さく、かつリプル周波数を高くすることができるため、例えば、全波整流回路のフィルタコンデンサの容量値を小さくすることができる。
【0006】
しかしながら、臨界モードで動作するPFC回路の場合、PFC回路は、整流電圧の位相角に応じてトランジスタのスイッチング周波数を変化させるよう動作する。したがって、例えば、2つのトランジスタを所定の時間差でオンすると、スイッチング周波数の変化に追従できなくなり、効果的なインタリーブ動作とならないことがある。
【0007】
また、例えば、2つ以上のトランジスタのそれぞれによりインダクタ電流が制御されるインダクタのインダクタンス値が不均衡となる場合、出力電圧に応じた同一のオン幅で2つ以上のトランジスタをオンすると、インダクタ電流のピーク電流が均一にならないことがある。これは、PFC回路がインタリーブ動作をする場合にも当てはまる。このような現象は、トランジスタの発熱のアンバランスを生じさせる。また、発熱により電源回路の出力可能な電力が制限されることになる。
【0008】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みてなされたものであって、PFC回路の適切なインタリーブ動作を可能にするスイッチング制御回路及び制御回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した課題を解決する本発明の第1の態様は、交流電圧に応じた電圧が印加される第1及び第2インダクタと、前記第1インダクタに流れる第1インダクタ電流を制御する第1トランジスタと、前記第2インダクタに流れる第2インダクタ電流を制御する第2トランジスタと、を含み、前記交流電圧から目的レベルの出力電圧を生成する電源回路の前記第2トランジスタのスイッチングを制御するスイッチング制御回路であって、前記第1トランジスタは、前記第1インダクタ電流が第1所定値となった後、オンし、前記出力電圧に応じた第1期間が経過するとオフし、前記スイッチング制御回路は、前記第1インダクタ電流が前記第1所定値となる第1タイミング及び前記第2インダクタ電流が第2所定値となる第2タイミングの時間差と、前記第1トランジスタのスイッチング周期とを検出する検出回路と、前記検出回路の検出結果に基づく前記時間差及び前記スイッチング周期の比率と、所定比率との誤差を出力する誤差出力回路と、前記第2インダクタ電流が前記第2所定値となった後、前記第2トランジスタをオンし、前記第1期間及び前記誤差に応じた第2期間が経過すると、前記第2トランジスタをオフする駆動信号を出力する駆動信号出力回路と、を含む。
【0010】
また、前述した課題を解決する本発明の第2の態様は、交流電圧から目的レベルの出力電圧を生成する電源回路であって、前記交流電圧に応じた電圧が印加される第1及び第2インダクタと、前記第1インダクタに流れる第1インダクタ電流を制御する第1トランジスタと、前記第2インダクタに流れる第2インダクタ電流を制御する第2トランジスタと、前記第2トランジスタのスイッチングを制御するスイッチング制御回路と、を含み、前記第1トランジスタは、前記第1インダクタ電流が第1所定値となった後、オンし、前記出力電圧に応じた第1期間が経過するとオフし、前記スイッチング制御回路は、前記第1インダクタ電流が前記第1所定値となる第1タイミング及び前記第2インダクタ電流が第2所定値となる第2タイミングの時間差と、前記第1トランジスタのスイッチング周期とを検出する検出回路と、前記検出回路の検出結果に基づく前記時間差及び前記スイッチング周期の比率と、所定比率との誤差を出力する誤差出力回路と、前記第2インダクタ電流が前記第2所定値となった後、前記第2トランジスタをオンし、前記第1期間及び前記誤差に応じた第2期間が経過すると、前記第2トランジスタをオフする駆動信号を出力する駆動信号出力回路と、を含む。
【0011】
また、前述した課題を解決する本発明の第3の態様は、交流電圧に応じた電圧が印加される第1及び第2インダクタと、前記第1インダクタに流れる第1インダクタ電流を制御する第1トランジスタと、前記第1トランジスタのスイッチングを制御する第1スイッチング制御回路と、前記第2インダクタに流れる第2インダクタ電流を制御する第2トランジスタと、前記第2トランジスタのスイッチングを制御する第2スイッチング制御回路と、を含み、前記交流電圧から目的レベルの出力電圧を生成する電源回路の前記第1及び第2スイッチング制御回路を制御する制御回路であって、前記第1スイッチング制御回路は、前記第1インダクタ電流が第1所定値となった後、前記第1トランジスタをオンし、前記出力電圧に応じた第1期間が経過すると、前記第1トランジスタをオフし、前記第2スイッチング制御回路は、前記第2インダクタ電流が第2所定値となった後、前記第2トランジスタをオンし、前記出力電圧に応じた第4期間が経過すると、前記第2トランジスタをオフし、前記制御回路は、前記第1トランジスタがオフする際の前記第1インダクタ電流の第1ピーク値を検出する第1電流検出回路と、前記第2トランジスタがオフする際の前記第2インダクタ電流の第2ピーク値を検出する第2電流検出回路と、前記第1ピーク値及び前記第2ピーク値の差が小さくなるよう、前記第1または前記第4期間の少なくとも一方を補正する補正回路と、を含む。
【0012】
また、前述した課題を解決する本発明の第4の態様は、交流電圧から目的レベルの出力電圧を生成する電源回路であって、前記交流電圧に応じた電圧が印加される第1及び第2インダクタと、前記第1インダクタに流れる第1インダクタ電流を制御する第1トランジスタと、前記第1トランジスタのスイッチングを制御する第1スイッチング制御回路と、前記第2インダクタに流れる第2インダクタ電流を制御する第2トランジスタと、前記第2トランジスタのスイッチングを制御する第2スイッチング制御回路と、前記第1及び第2スイッチング制御回路を制御する制御回路と、を含み、前記第1スイッチング制御回路は、前記第1インダクタ電流が第1所定値となった後、前記第1トランジスタをオンし、前記出力電圧に応じた第1期間が経過すると、前記第1トランジスタをオフし、前記第2スイッチング制御回路は、前記第2インダクタ電流が第2所定値となった後、前記第2トランジスタをオンし、前記出力電圧に応じた第4期間が経過すると前記第2トランジスタをオフし、前記制御回路は、前記第1トランジスタがオフする際の前記第1インダクタ電流の第1ピーク値を検出する第1電流検出回路と、前記第2トランジスタがオフする際の前記第2インダクタ電流の第2ピーク値を検出する第2電流検出回路と、前記第1ピーク値及び前記第2ピーク値の差が小さくなるよう、前記第1または前記第4期間の少なくとも一方を補正する補正回路と、を含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、PFC回路の適切なインタリーブ動作を可能にするスイッチング制御回路及び制御回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】AC-DCコンバータ10の一例を示す図である。
【
図3】デジタル回路43及びスイッチング制御回路50の一例を示す図である。
【
図4】スイッチング制御回路50の主要な波形を示す図である。
【
図5】AC-DCコンバータ10の主要な波形を説明するための図である。
【
図6】スイッチング制御回路51の一例を示す図である。
【
図7】力率改善IC25aの主要な波形の一例を示す図である。
【
図8】力率改善IC25aの主要な波形の一例を示す図である。
【
図9】力率改善IC25aの主要な波形の一例を示す図である。
【
図10】力率改善IC25aのシミュレーション結果を示す図である。
【
図11】力率改善IC25aのシミュレーション結果を示す図である。
【
図12】AC-DCコンバータ12の一例を示す図である。
【
図13】力率改善IC25bの一例を示す図である。
【
図16】スイッチング制御回路53の一例を示す図である。
【
図17】スイッチング制御回路54の一例を示す図である。
【
図18】デジタル回路48を含む力率改善IC25bの主要な波形の一例を示す図である。
【
図20】スイッチング制御回路55の一例を示す図である。
【
図21】スイッチング制御回路56の一例を示す図である。
【
図22】デジタル回路49を含む力率改善IC25bの主要な波形の一例を示す図である。
【
図23】デジタル回路49を含む力率改善IC25bのシミュレーション結果を示す図である。
【
図24】力率改善IC25aの変形例の一例を示す図である。
【
図25】AC-DCコンバータ13の一例を示す図である。
【
図26】AC-DCコンバータ14の一例を示す図である。
【
図27】AC-DCコンバータ15の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。なお、以下、本実施形態の「回路」には、アナログ回路、ワイヤ―ドロジック型の論理回路のみならず、DSP(Digital Signal Processor)やマイコン等に含まれ、デジタル演算処理を実行可能な機能ブロック(または、手段)も含むこととする。また、以下では、同一の対象に対して同一の参照符号を付し、同一の参照符号が付された対象については説明を省略する。
【0016】
=====本実施形態=====
<<<AC-DCコンバータ10の概要>>>
図1は、本発明の一実施形態であるAC-DCコンバータ10の構成を示す図である。AC-DCコンバータ10は、商用電源の交流電圧Vacから、目的レベルの出力電圧Voutを生成する昇圧型のPFC回路である。
【0017】
AC-DCコンバータ10は、全波整流回路20、コンデンサ21,22、トランス23a,23b、ダイオード24a,24b、力率改善IC25a、NMOSトランジスタ26a,26b、及び抵抗30,31を含んで構成される。なお、AC-DCコンバータ10は、「電源回路」に相当する。
【0018】
全波整流回路20は、入力される所定の交流電圧Vacを全波整流し、入力電圧Vrecとして、コンデンサ21、トランス23aの主コイルL1a(後述)、トランス23bの主コイルL2a(後述)に出力する。なお、交流電圧Vacは、例えば、実効値が100~240V、周波数が50~60Hzの電圧である。以下、本実施形態では、基本的に電圧は基準点(図中のGND)に対する電位差であるが、交流電圧Vacは、端子間電圧を示す。
【0019】
コンデンサ21は、入力電圧Vrecを平滑化し、コンデンサ22は、2つの昇圧チョッパ―回路の出力電圧が充電される素子である。そして、トランス23aの主コイルL1a、ダイオード24a、及びNMOSトランジスタ26aは、コンデンサ22とともに1つ目の昇圧チョッパー回路を構成する。また、トランス23bの主コイルL2a、ダイオード24b、及びNMOSトランジスタ26bは、コンデンサ22とともに2つ目の昇圧チョッパー回路を構成する。このため、コンデンサ22の充電電圧が直流の出力電圧Voutとなる。
【0020】
トランス23aは、主コイルL1aと、主コイルL1aに磁気的に結合された補助コイルL1bとを含む。なお、本実施形態の補助コイルL1bは、補助コイルL1bに生じる電圧が主コイルL1aに生じる電圧とは極性が逆となるよう、巻かれている。そして、力率改善IC25aの端子ZCD1には、補助コイルL1bで発生する電圧Vzcd1が印加される。また、主コイルL1aに矢印の方向にインダクタ電流IL1が流れる場合、インダクタ電流IL1の流れる方向は正の方向であり、矢印の方向とは逆にインダクタ電流IL1が流れる場合、インダクタ電流IL1の流れる方向は負の方向であるものとする。なお、主コイルL1aは、「第1インダクタ」に相当する。
【0021】
同様に、トランス23bは、主コイルL2aと、主コイルL2aに磁気的に結合された補助コイルL2bとを含む。なお、本実施形態の補助コイルL2bは、補助コイルL2bに生じる電圧が主コイルL2aに生じる電圧とは極性が逆となるよう、巻かれている。そして、力率改善IC25aの端子ZCD2には、補助コイルL2bで発生する電圧Vzcd2が印加される。また、主コイルL2aに矢印の方向にインダクタ電流IL2が流れる場合、インダクタ電流IL2の流れる方向は正の方向であり、矢印の方向とは逆にインダクタ電流IL2が流れる場合、インダクタ電流IL2の流れる方向は負の方向であるものとする。なお、主コイルL2aは、「第2インダクタ」に相当する。
【0022】
力率改善IC25aは、AC-DCコンバータ10の入力力率を改善しつつ、出力電圧Voutのレベルが目的レベル(例えば、400V)となるよう、NMOSトランジスタ26a,26bのスイッチングを制御する集積回路である。具体的には、力率改善IC25aは、主コイルL1aに流れるインダクタ電流IL1、及び出力電圧Voutに基づいて、NMOSトランジスタ26aを駆動する。なお、インダクタ電流IL1は、「第1インダクタ電流」に相当する。
【0023】
また、力率改善IC25aは、主コイルL2aに流れるインダクタ電流IL2、及びNMOSトランジスタ26aのオン幅に基づいて、NMOSトランジスタ26bを駆動する。力率改善IC25aの詳細については後述するが、力率改善IC25aには、端子ZCD1,ZCD2,FB,OUT1,OUT2が設けられている。なお、本実施形態では、力率改善IC25aの端子ZCD1等以外の他の端子(例えば、グランド端子)は便宜上、省略されている。また、インダクタ電流IL2は、「第2インダクタ電流」に相当する。
【0024】
NMOSトランジスタ26a,26bは、AC-DCコンバータ10の負荷11への電力を制御するためのパワートランジスタである。なお、本実施形態では、NMOSトランジスタ26a,26bは、N型のMOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタであることとしたが、これに限られず、例えば、バイポーラトランジスタ等の他のスイッチング素子であっても良い。また、NMOSトランジスタ26aのゲート電極は、端子OUT1に接続され、NMOSトランジスタ26bのゲート電極は、端子OUT2に接続されている。なお、NMOSトランジスタ26aは、「第1トランジスタ」に相当し、NMOSトランジスタ26bは、「第2トランジスタ」に相当する。
【0025】
抵抗30,31は、出力電圧Voutを分圧する分圧回路を構成し、NMOSトランジスタ26aをスイッチングする際に用いられる帰還電圧Vfbを生成する。なお、抵抗30,31が接続されるノードに生成される帰還電圧Vfbは、端子FBに印加される。
【0026】
<<<力率改善IC25aについて>>>
==力率改善IC25aの構成==
図2は、力率改善IC25aの一例を示す図である。力率改善IC25aは、ADコンバータ(ADC:Analog-to-Digital Converter)40~42、デジタル回路43、バッファ回路44,45を含んで構成される。
【0027】
ADコンバータ40は、電圧Vzcd1をデジタル値に変換し、ADコンバータ41は、電圧Vzcd2をデジタル値に変換し、ADコンバータ42は、帰還電圧Vfbを、デジタル値に変換する。
【0028】
デジタル回路43は、帰還電圧Vfbと、インダクタ電流IL1,IL2のそれぞれに応じた電圧Vzcd1,Vzcd2とに基づいて、NMOSトランジスタ26a,26bを駆動するための駆動信号Vq1,Vq2を出力する回路である。デジタル回路43は、各種演算を実行するワイヤ―ドロジック型の論理回路であり、例えば、論理ゲート、フリップフロップ、メモリを含んで構成される。ただし、デジタル回路43は、DSP(Digital Signal Processor)やマイコンであっても良い。なお、デジタル回路43の詳細については後述する。
【0029】
バッファ回路44は、駆動信号Vq1に基づいて、NMOSトランジスタ26aを駆動する駆動回路である。具体的には、バッファ回路44は、駆動信号Vq1がハイレベル(以下、“H”レベル)となると、NMOSトランジスタ26aをオンし、駆動信号Vq1がローレベル(以下、“L”レベル)となると、NMOSトランジスタ26aをオフする。
【0030】
同様に、バッファ回路45は、駆動信号Vq2に基づいて、NMOSトランジスタ26bを駆動する駆動回路である。具体的には、バッファ回路45は、駆動信号Vq2が“H”レベルとなると、NMOSトランジスタ26bをオンし、駆動信号Vq2が“L”レベルとなると、NMOSトランジスタ26bをオフする。
【0031】
==デジタル回路43==
図3は、力率を改善するための基本的な回路を含むデジタル回路43の一例である。本実施形態のデジタル回路43は、NMOSトランジスタ26aのスイッチングを制御するスイッチング制御回路50、NMOSトランジスタ26bのスイッチングを制御するスイッチング制御回路51を含んでいる。ここでは、力率を改善するための基本構成を、
図3のスイッチング制御回路50を用いて説明する。
【0032】
==スイッチング制御回路50の構成==
スイッチング制御回路50は、インダクタ電流IL1に応じた電圧Vzcd1と、帰還電圧Vfbとに基づいて、NMOSトランジスタ26aのスイッチングを制御する駆動信号Vq1を出力する。具体的には、スイッチング制御回路50は、インダクタ電流IL1がほぼゼロとなると、NMOSトランジスタ26aをオンする駆動信号Vq1を出力し、出力電圧Voutに応じた期間T1が経過すると、NMOSトランジスタ26aをオフする駆動信号Vq1を出力する。また、スイッチング制御回路50は、比較回路60,出力回路61を含んで構成される。なお、以下、スイッチング制御回路50には、デジタル値としての電圧Vzcd1と、デジタル値としての帰還電圧Vfbと、が入力されることとして説明する。また、期間T1は、「第1期間」に相当する。
【0033】
比較回路60は、インダクタ電流IL1の電流値がゼロよりやや大きい所定の電流値I0(例えば、数mA、すなわち、ほぼゼロ(以下、適宜「ほぼゼロ」を単に“0”(ゼロ)と称する。))になると、NMOSトランジスタ26aをオンするタイミングを検出する。具体的には、比較回路60は、インダクタ電流IL1の電流値を示す電圧Vzcd1が電流値I0を示す所定電圧より小さく、インダクタ電流IL1がゼロになると、“H”レベルの信号Vc1を出力する。一方、比較回路60は、インダクタ電流IL1の電流値を示す電圧Vzcd1が電流値I0を示す所定電圧より大きい場合、“L”レベルの信号Vc1を出力する。なお、電流値I0は、「第1所定値」に相当する。
【0034】
出力回路61は、信号Vc1及び帰還電圧Vfbに基づいて、NMOSトランジスタ26aのスイッチングを制御する駆動信号Vq1を出力する。具体的には、出力回路61は、比較回路60からのNMOSトランジスタ26aをオンするタイミングを示す信号Vc1に基づいて、NMOSトランジスタ26aをオンする駆動信号Vq1を出力する。その後、出力回路61は、出力電圧に応じた期間T1が経過すると、NMOSトランジスタ26aをオフする駆動信号Vq1を出力する。また、出力回路61は、減算回路70、電圧調整回路(AVR:Automatic Voltage Regulator)71、カウンタ72、比較回路73、及びRSフリップフロップ74を含んで構成される。
【0035】
減算回路70は、目的レベルの出力電圧Vout(例えば、400V)の基準となる基準電圧Vrefから帰還電圧Vfbを減算し、基準電圧Vrefと、帰還電圧Vfbとの誤差E1を算出する。
【0036】
電圧調整回路71は、帰還電圧Vfbのレベルを基準電圧Vrefのレベルに一致させるための指令値V1を、誤差E1に応じて出力する。なお、指令値V1は、期間T1を示す指令値である。また、本実施形態の減算回路70及び電圧調整回路71は、例えば、誤差E1を増幅、積分等する、いわゆる誤差増幅回路に相当する。
【0037】
カウンタ72は、NMOSトランジスタ26aをオフするタイミングを定めるための信号Vcnt1を出力する回路であり、駆動信号Vq1が“H”レベルになると、カウント値をゼロから、図示しないクロック信号に従ってインクリメントする。つまり、カウンタ72は、駆動信号Vq1が“H”レベルになると、信号Vcnt1の値が経過時間に比例して大きくなるランプ波に相当する信号を出力する。
【0038】
比較回路73は、期間T1を示す指令値V1と、信号Vcnt1との大小を比較する。具体的には、比較回路73は、信号Vcnt1が指令値V1より大きい場合、“H”レベルの信号Vc2を出力し、信号Vcnt1が指令値V1より小さい場合、“L”レベルの信号Vc2を出力する。
【0039】
RSフリップフロップ74のS入力には、信号Vc1が入力され、R入力には、信号Vc2が入力される。このため、RSフリップフロップ74のQ出力である信号Vq1は、信号Vc1が“H”レベルになると“H”レベルとなる。一方、信号Vc2が“H”レベルになると、信号Vq1は“L”レベルになる。
【0040】
==スイッチング制御回路50の動作==
図4を参照しつつ、AC-DCコンバータ10が所定の交流電圧Vacから目的レベルの出力電圧Voutを生成し、一定の負荷に電力を供給している際のスイッチング制御回路50の動作を説明する。
【0041】
まず、時刻t0にインダクタ電流IL1が減少し、電流値I0になると、比較回路60は、信号Vc1を“H”レベルに変化させる。そして、信号Vc1が“H”レベルになると、RSフリップフロップ74は、“H”レベルの信号Vq1を出力する。
【0042】
駆動信号Vq1が“H”レベルとなると、NMOSトランジスタ26aはオンするため、インダクタ電流IL1は増加することになる。
【0043】
また、駆動信号Vq1が“H”レベルになると、カウンタ72のカウント値はインクリメントされるため、信号Vcnt1も増加する。そして、時刻t1に、信号Vcnt1のレベルが、指令値V1のレベルより高くなると、比較回路73は、信号Vc2を“H”レベルに変化させる。この結果、RSフリップフロップ74はリセットされ、駆動信号Vq1は“L”レベルとなる。
【0044】
駆動信号Vq1が“L”レベルとなると、NMOSトランジスタ26aはオフする。この結果、インダクタ電流IL1は徐々に減少する。また、時刻t2にインダクタ電流IL1が減少し、ゼロになると、時刻t0の動作が繰り返される。
【0045】
ここで、AC-DCコンバータ10が所定の交流電圧Vacから目的レベルの出力電圧Voutを生成している際、コンデンサ22のキャパシタンスは十分大きく、帰還電圧VfbはVacの1周期程度の期間内ではほぼ一定となる。この結果、電圧調整回路71から出力される指令値V1もほぼ一定になるため、NMOSトランジスタ26aがオンする期間(例えば、時刻t0~t1までの期間)もほぼ一定となる。
【0046】
また、NMOSトランジスタ26aがオンする際に、交流電圧Vacを整流した電圧Vrecのレベルが高くなると、インダクタ電流IL1の電流値も大きくなる。この結果、
図5に示すように、インダクタ電流IL1のピーク値の波形は、電圧Vrecと相似形となる。
【0047】
また、NMOSトランジスタ26aがオフする際のインダクタ電流IL1のピーク値のレベルが高くなると、NMOSトランジスタ26aがオフ時にインダクタ電流IL1がゼロになるまでの時間が長くなる。したがって、電圧Vrecのレベルが低い場合、NMOSトランジスタ26aのスイッチング周波数は高くなり、電圧Vrecのレベルが高い場合、NMOSトランジスタ26aのスイッチング周波数は低くなる。
【0048】
==スイッチング制御回路51の構成==
図6に示すスイッチング制御回路51は、インダクタ電流IL2に応じた電圧Vzcd2、信号Vc1、及び指令値V1に基づいて、NMOSトランジスタ26bのスイッチングを制御する駆動信号Vq2を出力する。また、スイッチング制御回路51は、NMOSトランジスタ26aのスイッチング周波数に追従してインタリーブ動作をするよう、駆動信号Vq2を出力する。具体的には、スイッチング制御回路51は、スイッチング制御回路50からの信号Vc1に基づいて、インタリーブ動作のための位相差Δθ(言い換えれば、位相差Δθに応じた時間差Tθ)及びNMOSトランジスタ26aのスイッチング周期を検出する。そして、スイッチング制御回路51は、スイッチング制御回路50からの指令値V1と、NMOSトランジスタ26aのスイッチング周期Ta及び時間差Tθとに基づいて、NMOSトランジスタ26bのスイッチングを制御する駆動信号Vq2を出力する。
【0049】
スイッチング制御回路51は、検出回路80、誤差出力回路81、駆動信号出力回路82を含んで構成される。なお、以下、スイッチング制御回路51には、デジタル値としての電圧Vzcd2と、信号Vc1と、指令値V1とが入力されることとして説明する。また、スイッチング制御回路51は、インタリーブ動作を維持する「スイッチング制御回路」に相当する。
【0050】
検出回路(DET)80は、インダクタ電流IL1,IL2の時間差Tθと、NMOSトランジスタ26aのスイッチング周期Taとを検出する。具体的には、検出回路80は、NMOSトランジスタ26aのオンタイミングを示し、スイッチング制御回路50が出力する信号Vc1と、NMOSトランジスタ26bのオンタイミングを示し、比較回路100(後述)が出力する信号Vc3とに基づいて、時間差Tθを検出する。また、同時に、検出回路80は、信号Vc1に基づいて、NMOSトランジスタ26aのスイッチング周期Taを検出する。
【0051】
なお、電圧Vzcd1が電流値I0を示す所定電圧となるタイミングは、「第1タイミング」に相当する。検出回路80は、RSフリップフロップ90、レベルシフト回路91を含んで構成される。
【0052】
RSフリップフロップ90は、時間差Tθ及びスイッチング周期Taを検出し、時間差Tθ及びスイッチング周期Taの比率Rを示す信号VRを出力する。具体的には、RSフリップフロップ90は、“H”レベルの信号Vc1が入力されると、“H”レベルの信号VRを出力し、“H”レベルの信号Vc3が入力されると、“L”レベルの信号VRを出力する。これにより、RSフリップフロップ90は、信号VRが“H”レベルとなる期間において、時間差Tθを検出し、信号VRが“H”レベルとなる毎に、スイッチング周期Taを検出する。したがって、RSフリップフロップ90からの信号VRは、スイッチング周期Taに対するインダクタ電流IL1,IL2の時間差Tθのデューティ(つまり、比率)を示す信号となる。なお、RSフリップフロップ90は、「信号出力回路」に相当する。また、“H”レベルは、「第1レベル」に相当し、“L”レベルは、「第2レベル」に相当する。
【0053】
レベルシフト回路91は、詳細は後述するが、本実施形態において回路構成を簡易にするために、RSフリップフロップ90からの信号VRをレベルシフトする。具体的には、レベルシフト回路91は、RSフリップフロップ90からの“L”レベルの信号VRの電圧レベルは、接地レベルにしたまま、RSフリップフロップ90が電源電圧Vddで動作する場合、“H”レベルの信号VRの電圧レベルを2倍のVddの電圧レベルとする。
【0054】
誤差出力回路(ERR)81は、時間差Tθ及びスイッチング周期Taの比率Rと、所定比率との誤差を出力する。具体的には、誤差出力回路81は、レベルシフト回路91からの信号から所定比率を示す値を減算し、積分して指令値Vlpfとして出力する。また、詳細は後述するが、本実施形態の場合、NMOSトランジスタ26a,26bのそれぞれを含む2つの昇圧チョッパ―回路がインタリーブ動作するため、所定比率は50%、所定比率を示す値は、“1.0”となる。また、誤差出力回路81は、減算回路92、ローパスフィルタ93を含んで構成される。
【0055】
減算回路92は、レベルシフト回路91からの信号のレベルから所定比率を示す値を減算し、誤差E2として出力し、時間差Tθ及びスイッチング周期Taの比率Rと、所定比率とが一致する場合に、ローパスフィルタ93にゼロの指令値Vlpfを出力させる。具体的には、減算回路92は、0Vから(2×Vdd)Vまで変化するレベルシフト回路91からの信号から、所定比率を示す値“1.0”に相当する電源電圧Vddを減算し、誤差E2として出力する。
【0056】
これにより、減算回路92は、時間差Tθ及びスイッチング周期Taの比率Rが所定比率と一致し、レベルシフト回路91が1スイッチング周期Taあたりの“H”レベルの信号の比率が50%となる信号を出力する場合、ローパスフィルタ93にゼロの指令値Vlpfを出力させることができる。また、このように、本実施形態において、減算回路92で減算する値を、所定比率を示す値“1.0”とすることにより、時間差Tθ及びスイッチング周期Taの比率Rと、所定比率とが一致する場合に、減算回路92は、ローパスフィルタ93にゼロの指令値Vlpfを簡易に出力させることができる。
【0057】
なお、本実施形態では、2つの昇圧チョッパ―回路をインタリーブ動作させる場合を説明しており、この場合、適切なインタリーブ動作をするための位相差Δθは、1スイッチング周期において360度/2=180度となる。また、1スイッチング周期Taにおける位相差Δθが180度とすると、所定比率は、50%となる。
【0058】
また、所定比率が50%である場合、減算回路92は、レベルシフトされた信号から所定比率(50%)を示す値“1.0”を減算する。これにより、時間差Tθ及びスイッチング周期Taの比率Rと、所定比率とが一致する場合に、減算回路92は、ローパスフィルタ93にゼロの指令値Vlpfを出力させることができる。
【0059】
一方、n個(nは3以上)の昇圧チョッパ―回路がインタリーブ動作をする場合、適切なインタリーブ動作をするための位相差Δθは、1スイッチング周期Taにおいて360度/nとなる。また、1スイッチング周期Taにおける位相差Δθが360度/nとすると、所定比率は、(100/n)%となる。
【0060】
また、所定比率が(100/n)%である場合、減算回路92は、レベルシフトされた信号から所定比率(100/n)%を示す値(2/n)を減算する。これにより、時間差Tθ及びスイッチング周期Taの比率Rと、所定比率とが一致する場合に、減算回路92は、ローパスフィルタ93にゼロの指令値Vlpfを出力させることができる。
【0061】
また、ここまで、レベルシフト回路91がRSフリップフロップ90からの信号VRを(2×Vdd)Vの電圧レベルの信号にレベルシフトする場合を説明した。一方、レベルシフト回路91がRSフリップフロップ90からの信号VRを(m×Vdd)V(mは正の実数)の電圧レベルの信号にレベルシフトし、n個の昇圧チョッパ―回路がインタリーブ動作をする場合、減算回路92は、レベルシフトされた信号から所定比率を示す値(m/n)を減算する。これにより、時間差Tθ及びスイッチング周期Taの比率Rと、所定比率とが一致する場合に、減算回路92は、ローパスフィルタ93にゼロの指令値Vlpfを出力させることができる。
【0062】
また、減算回路92は、「減算回路」に相当し、所定比率を示す“値”は、「基準レベル」に相当し、誤差E2は、「差」に相当する。
【0063】
ローパスフィルタ(LPF)93は、減算回路92からの誤差E2を積分して指令値Vlpfを出力する。なお、ローパスフィルタ93は、「積分回路」に相当し、指令値Vlpfは、「誤差」に相当する。
【0064】
駆動信号出力回路82は、電圧Vzcd2、指令値V1,Vlpfに基づいて、NMOSトランジスタ26bのスイッチングを制御する駆動信号Vq2を出力する。具体的には、駆動信号出力回路82は、インダクタ電流IL2が電流値I1となった後、NMOSトランジスタ26bをオンする駆動信号Vq2を出力し、指令値V1及び指令値Vlpfに応じた期間T2が経過すると、NMOSトランジスタ26bをオフする駆動信号Vq2を出力する。また、駆動信号出力回路82は、比較回路100、出力回路101を含んで構成される。なお、期間T2は、「第2期間」に相当する。
【0065】
比較回路100は、インダクタ電流IL2の電流値がゼロよりやや大きい所定の電流値I1(例えば、数mA、すなわち、ゼロ)になると、NMOSトランジスタ26bをオンするタイミングを検出する。具体的には、比較回路100は、インダクタ電流IL2の電流値が電流値I1より小さく、インダクタ電流IL2がゼロになると、“H”レベルの信号Vc3を出力する。一方、比較回路100は、インダクタ電流IL2の電流値が電流値I1より大きい場合、“L”レベルの信号Vc3を出力する。なお、電流値I1は、「第2所定値」に相当し、電圧Vzcd2が電流値I1を示す所定電圧となるタイミングは、「第2タイミング」に相当する。
【0066】
出力回路101は、信号Vc3及び指令値V1,Vlpfに基づいて、NMOSトランジスタ26bのスイッチングを制御する駆動信号Vq2を出力する。具体的には、出力回路101は、比較回路100からのNMOSトランジスタ26bをオンするタイミングに基づいて、NMOSトランジスタ26bをオンする駆動信号Vq2を出力する。その後、出力回路101は、指令値V1及び指令値Vlpfに応じた期間T2が経過すると、NMOSトランジスタ26bをオフする駆動信号Vq2を出力する。また、出力回路101は、減算回路110、カウンタ111、比較回路112、及びRSフリップフロップ113を含んで構成される。
【0067】
減算回路110は、時間差Tθ及びスイッチング周期Taの比率Rと、所定比率とを一致させるよう、期間T1を示す指令値V1、及び時間差Tθ及びスイッチング周期Taの比率Rに応じた指令値Vlpfに基づいて、期間T2を示す指令値V2を出力する。具体的には、減算回路110は、指令値V1から指令値Vlpfを減算し、指令値V2として出力する。
【0068】
詳細は後述するが、NMOSトランジスタ26aのスイッチング周波数が高くなっても、NMOSトランジスタ26bのスイッチング周波数が低いままであり、時間差Tθが拡大した場合、比率Rが所定比率より大きくなり、指令値Vlpfが正の値となる。この場合、期間T2を示す指令値V2が期間T1を示す指令値V1より小さくなる。
【0069】
そして、NMOSトランジスタ26bのオン幅を示す期間T2は短くなるため、インダクタ電流IL2のピーク値は小さくなり、NMOSトランジスタ26bのスイッチング周期は短くなり、スイッチング周波数は高くなる。また、NMOSトランジスタ26bのスイッチング周期が短くなることにより、次にNMOSトランジスタ26bがオンされるタイミングが早くなり、比率Rは、減少し、所定比率に近づくようになる。
【0070】
一方、NMOSトランジスタ26aのスイッチング周波数が低くなっても、NMOSトランジスタ26bのスイッチング周波数が高いままであり、時間差Tθが縮小した場合、比率Rが所定比率より小さくなり、指令値Vlpfが負の値となる。この場合、期間T2を示す指令値V2が期間T1を示す指令値V1より大きくなる。
【0071】
そして、NMOSトランジスタ26bのオン幅を示す期間T2は長くなるため、インダクタ電流IL2のピーク値は大きくなり、NMOSトランジスタ26bのスイッチング周期は長くなり、スイッチング周波数は低くなる。また、NMOSトランジスタ26bのスイッチング周期が長くなることにより、次にNMOSトランジスタ26bがオンされるタイミングが遅くなり、比率Rは、増加し、所定比率に近づくようになる。
【0072】
このように、減算回路110が、指令値V1及び指令値Vlpfに応じた期間T2を示す指令値V2を出力することにより、スイッチング制御回路51は、NMOSトランジスタ26aのスイッチング周波数の変化に追従しつつ、適切なインタリーブ動作を維持できるようNMOSトランジスタ26bのスイッチングを制御できる。
【0073】
カウンタ111は、NMOSトランジスタ26bをオフするタイミングを定めるための信号Vcnt2を出力する回路であり、駆動信号Vq2が“H”レベルになると、カウント値をゼロから、図示しないクロック信号に従ってインクリメントする。つまり、カウンタ111は、駆動信号Vq2が“H”レベルになると、信号Vcnt2の値が経過時間に比例して大きくなるランプ波に相当する信号を出力する。
【0074】
比較回路112は、指令値V2と、信号Vcnt2との大小を比較する。具体的には、比較回路112は、信号Vcnt2が指令値V2より大きい場合、“H”レベルの信号Vc4を出力し、信号Vcnt2が指令値V2より小さい場合、“L”レベルの信号Vc4を出力する。
【0075】
RSフリップフロップ113のS入力には、信号Vc3が入力され、R入力には、信号Vc4が入力される。このため、RSフリップフロップ113のQ出力である信号Vq2は、信号Vc3が“H”レベルになると“H”レベルとなる。一方、信号Vc4が“H”レベルになると、信号Vq2は“L”レベルになる。
【0076】
以下では、スイッチング制御回路50,51が同時にどのように動作するかを、力率改善IC25aの動作として説明する。
【0077】
==力率改善IC25aの動作==
<<比率Rが所定比率に一致した状態における力率改善IC25aの動作>>
図7は力率改善IC25aの主要な波形を示す図である。
図7は、NMOSトランジスタ26bのスイッチング周期TbがNMOSトランジスタ26aのスイッチング周期Taと同じ場合の力率改善IC25aの動作を示している。なお、この場合、時間差Tθ及びスイッチング周期Taの比率Rが所定比率に一致しているものとする。
【0078】
一点鎖線で示すインダクタ電流IL1がゼロとなる時刻t10において、
図3の比較回路60は、“H”レベルの信号Vc1を出力するため、スイッチング制御回路50は、NMOSトランジスタ26aをオンする“H”レベルの駆動信号Vq1を出力する。そして、比較回路60が“H”レベルの信号Vc1を出力すると、RSフリップフロップ90は、“H”レベルの信号VRを出力する。
【0079】
時刻t10以前にNMOSトランジスタ26bがオンされ、期間T2が経過した時刻t11において、
図6の比較回路112は、“H”レベルの信号Vc4を出力するため、スイッチング制御回路51は、NMOSトランジスタ26bをオフする“L”レベルの駆動信号Vq2を出力する。なお、NMOSトランジスタ26bをオフすると、インダクタ電流IL2は減少する。
【0080】
実線で示すインダクタ電流IL2がゼロとなる時刻t12において、比較回路100は、“H”レベルの信号Vc3を出力するため、スイッチング制御回路51は、NMOSトランジスタ26bをオンする“H”レベルの駆動信号Vq2を出力する。そして、比較回路100が“H”レベルの信号Vc3を出力すると、RSフリップフロップ90は、“L”レベルの信号VRを出力する。
【0081】
時刻t10からNMOSトランジスタ26aがオンする期間T1が経過した時刻t13において、
図3の比較回路73は、“H”レベルの信号Vc2を出力するため、スイッチング制御回路50は、NMOSトランジスタ26aをオフする“L”レベルの駆動信号Vq1を出力する。
【0082】
インダクタ電流IL1がゼロとなる時刻t14において、比較回路60は、“H”レベルの信号Vc1を出力するため、スイッチング制御回路50は、NMOSトランジスタ26aをオンする“H”レベルの駆動信号Vq1を出力する。そして、比較回路60が“H”レベルの信号Vc1を出力すると、RSフリップフロップ90は、“H”レベルの信号VRを出力する。
【0083】
図7において、比率Rが所定比率に一致しているものとしたため、誤差出力回路81が出力する指令値Vlpfは、破線で示されるようにゼロを示す。したがって、この場合、期間T2は、期間T1と同じとなる。
【0084】
<<比率Rが所定比率より大きい状態における力率改善IC25aの動作>>
図8は力率改善IC25aの主要な波形を示す図である。
図8は、NMOSトランジスタ26bのスイッチング周期TbがNMOSトランジスタ26aのスイッチング周期Taより長く、時間差Tθ及びスイッチング周期Taの比率Rが所定比率より大きい状態における力率改善IC25aの動作を示している。時刻t20~t24における動作は、時刻t10~t14における動作と同じであるため、説明を省略する。
【0085】
図8において、比率Rが所定比率より大きいため、誤差出力回路81が出力する指令値Vlpfは、破線で示されるように正の値を示す。この場合、期間T2は短くなる。したがって、指令値Vlpfがゼロである場合、時刻t22から期間T2が経過した時刻t26においてNMOSトランジスタ26bがオフすると仮定すると、期間T2が短くなることにより、NMOSトランジスタ26bがオフする時刻は、時刻t25となる。
【0086】
また、NMOSトランジスタ26bがオフする時刻が早くなることにより、インダクタ電流IL2がゼロとなる時刻t27も、期間T2が短くならない場合にインダクタ電流IL2がゼロとなる時刻t28に比べて早くなる。これにより、NMOSトランジスタ26bのスイッチング周期Tbは短くなり、比率Rは所定比率に近づく。また、力率改善IC25aは、NMOSトランジスタ26bのスイッチング周波数をNMOSトランジスタ26aのスイッチング周波数の変化に追従させることができる。
【0087】
<<比率Rが所定比率より小さい状態における力率改善IC25aの動作>>
図9は力率改善IC25aの主要な波形を示す図である。
図9は、NMOSトランジスタ26bのスイッチング周期がNMOSトランジスタ26aのスイッチング周期より短く、時間差Tθ及びスイッチング周期Taの比率Rが所定比率より小さい状態における力率改善IC25aの動作を示している。時刻t30~t33における動作は、時刻t10~t13における動作と同じであるため、説明を省略する。
【0088】
時刻t32から期間T2が経過した時刻t34において、指令値Vlpfがゼロであると仮定すると、
図6の比較回路112は、“H”レベルの信号Vc4を出力する。
【0089】
インダクタ電流IL1がゼロとなる時刻t35において、
図3の比較回路60は、“H”レベルの信号Vc1を出力するため、スイッチング制御回路50は、NMOSトランジスタ26aをオンする“H”レベルの駆動信号Vq1を出力する。そして、比較回路60が“H”レベルの信号Vc1を出力すると、RSフリップフロップ90は、“H”レベルの信号VRを出力する。
【0090】
図9において、比率Rが所定比率より小さいため、誤差出力回路81が出力する指令値Vlpfは、破線で示されるように負の値を示す。この場合、期間T2は長くなる。したがって、指令値Vlpfがゼロである場合、時刻t32から期間T2が経過した時刻t34においてNMOSトランジスタ26bがオフすると仮定すると、期間T2が長くなることにより、NMOSトランジスタ26bがオフする時刻は、時刻t36となる。
【0091】
また、NMOSトランジスタ26bがオフする時刻が遅くなることにより、インダクタ電流IL2がゼロとなる時刻t38も、指令値Vlpfがゼロであると仮定した場合にインダクタ電流IL2がゼロとなる時刻t37に比べて遅くなる。これにより、NMOSトランジスタ26bのスイッチング周期Tbは長くなり、比率Rは所定比率に近づく。また、力率改善IC25aは、NMOSトランジスタ26bのスイッチング周波数をNMOSトランジスタ26aのスイッチング周波数の変化に追従させることができる。
【0092】
<<<力率改善IC25aのシミュレーション結果>>>
図10は、力率改善IC25aのシミュレーション結果を示す図である。ここで、上段の図は、インダクタ電流IL1,IL2のピーク値及びボトム値の包絡線を示す結果である。なお、下段の図(a)は、整流電圧Vrecの位相角が0度付近におけるインダクタ電流IL1,IL2の波形であり、下段の図(b)は、整流電圧Vrecの位相角が45度付近におけるインダクタ電流IL1,IL2の波形である。さらに、下段の図(c)は、整流電圧Vrecの位相角が90度付近におけるインダクタ電流IL1,IL2の波形である。また、インダクタ電流IL1は、一点鎖線で示され、インダクタ電流IL2は、実線で示されている。
【0093】
まず、上段の図を参照すると、インダクタ電流IL1,IL2のピーク値の包絡線は、交流電圧Vacを全波整流した整流電圧Vrec(例えば、
図5に示す整流電圧Vrec)にほぼ一致しており、力率改善IC25aが力率を改善していることを示している。
【0094】
次に、下段の図(a)を参照すると、整流電圧Vrecの位相角が0度付近であるため、インダクタ電流IL1,IL2のピーク値は小さく、NMOSトランジスタ26a,26bのスイッチング周波数は高い。また、インダクタ電流IL1,IL2のピーク値となる間隔は、ほぼ均等(例えば、間隔が180度)となっており、力率改善IC25aは、インタリーブ動作を維持している。
【0095】
さらに、下段の図(b)を参照すると、整流電圧Vrecの位相角が45度付近であるため、インダクタ電流IL1,IL2のピーク値は、位相角が0度付近の場合より大きくなる。したがって、図(b)におけるNMOSトランジスタ26a,26bのスイッチング周波数は、図(a)の場合よりも低くなる。しかしながら、図(b)においても、インダクタ電流IL1,IL2のピーク値となる間隔は、ほぼ均等となっており、力率改善IC25aは、インタリーブ動作を維持している。
【0096】
最後に、下段の図(c)を参照すると、整流電圧Vrecの位相角が90度付近であるため、インダクタ電流IL1,IL2のピーク値は、位相角が0度及び45度付近の場合より大きくなる。したがって、図(c)におけるNMOSトランジスタ26a,26bのスイッチング周波数は、図(a),(b)の場合よりも低くなる。しかしながら、図(c)においても、インダクタ電流IL1,IL2のピーク値となる間隔は、ほぼ均等となっており、力率改善IC25aは、インタリーブ動作を維持している。
【0097】
<<<インダクタンス値が不均衡である場合のシミュレーション結果>>>
図11は、製造ばらつき等により、主コイルL1a,L1bのインダクタンス値が不均衡である場合の力率改善IC25aのシミュレーション結果を示す図である。ここで、上段の図は、インダクタ電流IL1,IL2のピーク値及びボトム値の包絡線を示す結果である。なお、下段の図(a)は、整流電圧Vrecの位相角が0度付近におけるインダクタ電流IL1,IL2の波形であり、下段の図(b)は、整流電圧Vrecの位相角が45度付近におけるインダクタ電流IL1,IL2の波形である。
【0098】
さらに、下段の図(c)は、整流電圧Vrecの位相角が90度付近におけるインダクタ電流IL1,IL2の波形である。なお、
図11のシミュレーション結果は、主コイルL2aのインダクタンス値が、主コイルL1aのインダクタンス値の80%であることとしてシミュレーションした結果である。また、
図11において、
図10と同様に、2つの昇圧チョッパ―回路がインタリーブ動作をするよう、力率改善IC25aはNMOSトランジスタ26a,26bのスイッチングを制御している。また、インダクタ電流IL1は、一点鎖線で示され、インダクタ電流IL2は、実線で示されている。
【0099】
まず、上段の図を参照すると、インダクタ電流IL1,IL2のピーク値の包絡線は、交流電圧Vacを全波整流した整流電圧Vrec(例えば、
図5に示す整流電圧Vrec)にほぼ一致しており、
図10の場合と同様に、力率改善IC25aが力率を改善していることを示している。
【0100】
次に、下段の図(a)を参照すると、整流電圧Vrecの位相角が0度付近であるため、
図10と同様に、インダクタ電流IL1,IL2のピーク値は小さく、NMOSトランジスタ26a,26bのスイッチング周波数は高い。また、インダクタ電流IL1,IL2のピーク値となる間隔は、ほぼ均等(例えば、間隔が180度)となっており、力率改善IC25aは、インタリーブ動作を維持している。また、整流電圧Vrecの位相角が0度付近であり、整流電圧Vrecの電圧レベルが低いため、図(a)において、インダクタ電流IL1,IL2のピーク値の差は、小さく、ピーク値は、均一であるように見える。
【0101】
さらに、下段の図(b)を参照すると、整流電圧Vrecの位相角が45度付近であるため、
図10と同様に、インダクタ電流IL1,IL2のピーク値は、位相角が0度付近の場合より大きくなる。したがって、図(b)におけるNMOSトランジスタ26a,26bのスイッチング周波数は、図(a)の場合よりも低くなる。しかしながら、図(b)においても、インダクタ電流IL1,IL2のピーク値となる間隔は、ほぼ均等となっており、力率改善IC25aは、インタリーブ動作を維持している。
【0102】
また、主コイルL2aのインダクタンス値が、主コイルL1aのインダクタンス値の80%であるため、NMOSトランジスタ26bがオンの際のインダクタ電流IL2の傾きは、NMOSトランジスタ26aがオンの際のインダクタ電流IL1の傾きより大きくなる。したがって、力率改善IC25aがインタリーブ動作をするよう、NMOSトランジスタ26a,26bが同じオン幅でオンされたとしても、インダクタ電流IL2のピーク値は、インダクタ電流IL1のピーク値より大きくなる。
【0103】
最後に、下段の図(c)を参照すると、整流電圧Vrecの位相角が90度付近であるため、
図10と同様に、インダクタ電流IL1,IL2のピーク値は、位相角が0度及び45度付近の場合より大きくなる。したがって、図(c)におけるNMOSトランジスタ26a,26bのスイッチング周波数は、図(a),(b)の場合よりも低くなる。しかしながら、図(c)においても、インダクタ電流IL1,IL2のピーク値となる間隔は、ほぼ均等になっており、力率改善IC25aは、インタリーブ動作を維持している。また、図(b)の場合と同様に、インダクタ電流IL2のピーク値は、インダクタ電流IL1のピーク値より大きくなる。
【0104】
図11に示す通り、力率改善IC25aは、主コイルL1a,L2aのインダクタンス値が不均衡であったとしても、インタリーブ動作を維持できる。しかしながら、インダクタ電流IL1,IL2のピーク値に差がある場合、トランス23a,23bの発熱にアンバランスが生じる。また、NMOSトランジスタ26a,26bの発熱にもアンバランスが生じる。これらの発熱のアンバランスにより、AC-DCコンバータ10の出力可能な電力が制限されることがある。したがって、インダクタ電流IL1,IL2のピーク値を均一にすることにより、発熱のアンバランスを抑制することがある。
【0105】
=====その他の実施例=====
<<<AC-DCコンバータ12の概要>>>
図12は、AC-DCコンバータ12の一例を示す図である。AC-DCコンバータ12は、AC-DCコンバータ10と同様に、商用電源の交流電圧Vacから、目的レベルの出力電圧Voutを生成する昇圧型のPFC回路である。AC-DCコンバータ12は、力率改善IC25bにより、インダクタ電流IL1,IL2のピーク値を一致させるよう制御されるPFC回路である。
【0106】
AC-DCコンバータ12において、NMOSトランジスタ26aのソース電極と、接地との間に抵抗32aが設けられており、同様に、NMOSトランジスタ26bのソース電極と、接地との間に抵抗32bが設けられている。また、NMOSトランジスタ26aがオンされ、NMOSトランジスタ26aのドレイン・ソース間に電流が流れることにより抵抗32aに生じる電圧Vip1は、力率改善IC25bの端子IP1に印加される。同様に、NMOSトランジスタ26bがオンされ、NMOSトランジスタ26bのドレイン・ソース間に電流が流れることにより抵抗32bに生じる電圧Vip2は、力率改善IC25bの端子IP2に印加される。
【0107】
<<<力率改善IC25bについて>>>
==力率改善IC25bの構成==
図13は、力率改善IC25bの一例を示す図である。力率改善IC25bは、ADコンバータ40~42,46,47、バッファ回路44,45、デジタル回路48を含んで構成される。
【0108】
ADコンバータ46は、電圧Vip1をデジタル値に変換し、ADコンバータ47は、電圧Vip2をデジタル値に変換する。
【0109】
デジタル回路48は、帰還電圧Vfb,インダクタ電流IL1,IL2のそれぞれに応じた電圧Vzcd1,Vzcd2、及び電圧Vip1,Vip2に基づいて、NMOSトランジスタ26a,26bを駆動するための駆動信号Vq1,Vq2を出力する回路である。デジタル回路48は、デジタル回路43と同様に、各種演算を実行するワイヤ―ドロジック型の論理回路であり、例えば、論理ゲート、フリップフロップ、メモリを含んで構成される。ただし、デジタル回路48は、DSP(Digital Signal Processor)やマイコンであっても良い。
【0110】
==デジタル回路48==
図14は、インダクタ電流IL1,IL2のピーク値を均一にする回路を含むデジタル回路48の一例を示す図である。デジタル回路48は、スイッチング制御回路53,54を制御する制御回路52、NMOSトランジスタ26aのスイッチングを制御するスイッチング制御回路53、NMOSトランジスタ26bのスイッチングを制御するスイッチング制御回路54を含んでいる。
【0111】
==制御回路52の構成==
図15は、制御回路52の一例を示す図である。制御回路52は、インダクタ電流IL1,IL2のピーク値を均一にするよう、スイッチング制御回路53,54を制御する。具体的には、制御回路52は、インダクタ電流IL1のピーク値IP1及びインダクタ電流IL2のピーク値IP2を検出し、ピーク値IP1,IP2の差が小さくなるよう、スイッチング制御回路53,54を制御する。なお、以下、制御回路52には、デジタル値としての電圧Vip1,Vip2が入力されていることとして説明する。なお、ピーク値IP1は、「第1ピーク値」に相当し、ピーク値IP2は、「第2ピーク値」に相当する。制御回路52は、サンプル・ホールド回路120,121、補正回路122を含んで構成される。
【0112】
サンプル・ホールド回路(S/H)120は、駆動信号Vq1がNMOSトランジスタ26aをオフする“L”レベルとなると、電圧Vip1をインダクタ電流IL1のピーク値として検出し、信号Ip1として出力する。同様に、サンプル・ホールド回路121は、駆動信号Vq2がNMOSトランジスタ26bがオフする“L”レベルとなると、電圧Vip2をインダクタ電流IL2のピーク値として検出し、信号Ip2として出力する。なお、サンプル・ホールド回路120は、「第1電流検出回路」に相当し、サンプル・ホールド回路121は、「第2電流検出回路」に相当する。
【0113】
補正回路122は、信号Ip1,Ip2の差が小さくなるよう、信号Ip1,Ip2に基づいてNMOSトランジスタ26a,26bのそれぞれがオンする期間T1,T2の少なくとも一方が補正されるようスイッチング制御回路53,54を制御する。具体的には、補正回路122は、信号Ip1が信号Ip2より大きい場合、期間T1が短くなるよう、期間T1を補正し、信号Ip2が信号Ip1より大きい場合、期間T2が短くなるよう、期間T2を補正する。補正回路122は、減算回路130、電流調整回路(ACR:Automatic Current Regulator)131、リミッタ回路132,133を含んで構成される
【0114】
減算回路130は、信号Ip1,Ip2の大小を比較するため、信号Ip1,Ip2の差を検出する。具体的には、減算回路130は、信号Ip1から信号Ip2を減算し、誤差E3として出力する。
【0115】
電流調整回路131は、信号Ip1,Ip2を一致させるための指令値V3を、誤差E3に応じて出力する。なお、この実施形態の減算回路130及び電流調整回路131は、例えば、誤差E3を増幅、積分等する、いわゆる誤差増幅回路に相当する。また、この実施形態では、電流調整回路131を用いているが、誤差E3を指令値V3としてもよい。
【0116】
リミッタ回路132は、信号Ip1が信号Ip2より大きい場合、NMOSトランジスタ26aがオンする期間T1を短くするための指令値V4を出力する。具体的には、リミッタ回路132は、信号Ip1が信号Ip2より大きく、電流調整回路131が誤差E3に応じて正の指令値V3を出力する場合、指令値V3に応じ、期間T1を補正するための指令値V4を出力する。
【0117】
リミッタ回路133は、信号Ip2が信号Ip1より大きい場合、NMOSトランジスタ26bがオンする期間T2を短くするための指令値V5を出力する。具体的には、リミッタ回路133は、信号Ip2が信号Ip1より大きく、電流調整回路131が誤差E3に応じて負の指令値V3を出力する場合、指令値V3の絶対値に応じ、期間T2を補正するための指令値V5を出力する。
【0118】
==スイッチング制御回路53の構成==
図16は、スイッチング制御回路53の一例を示す図である。スイッチング制御回路53は、インダクタ電流IL1に応じた電圧Vzcd1と、帰還電圧Vfbと、指令値V4とに基づいて、NMOSトランジスタ26aのスイッチングを制御する駆動信号Vq1を出力する。具体的には、スイッチング制御回路53は、インダクタ電流IL1がほぼゼロとなると、NMOSトランジスタ26aをオンする駆動信号Vq1を出力する。また、スイッチング制御回路53は、出力電圧Voutに応じた期間T1より短い期間TAが経過すると、NMOSトランジスタ26aをオフする駆動信号Vq1を出力する。なお、期間TAは、指令値V4に応じて期間T1を短くした期間である。なお、スイッチング制御回路53は、「第1スイッチング制御回路」に相当する。
【0119】
スイッチング制御回路53は、比較回路60、出力回路62を含んで構成される。なお、以下、スイッチング制御回路53には、デジタル値としての電圧Vzcd1と、デジタル値としての帰還電圧Vfbと、指令値V4とが入力されることとして説明する。なお、比較回路60は、「第1タイミング検出回路」に相当し、信号Vc1が“H”レベルとなるタイミングは、「第4タイミング」に相当する。
【0120】
出力回路62は、信号Vc1、帰還電圧Vfb、及び指令値V4に基づいて、NMOSトランジスタ26aのスイッチングを制御する駆動信号Vq1を出力する。具体的には、出力回路62は、比較回路60からの信号Vc1に基づいて、NMOSトランジスタ26aをオンする駆動信号Vq1を出力する。その後、出力回路62は、指令値V4に応じて期間T1が短くなった期間TAが経過すると、NMOSトランジスタ26aをオフする駆動信号Vq1を出力する。なお、出力回路62は、「第1出力回路」に相当し、駆動信号Vq1は、「第1駆動信号」に相当する。出力回路62は、減算回路70,75、電圧調整回路(AVR:Automatic Voltage Regulator)71、カウンタ72、比較回路73、及びRSフリップフロップ74を含んで構成される。また、出力回路62は、減算回路75を除いて、出力回路61と同一であるため、同一の構成についての説明を省略する。
【0121】
減算回路75は、期間T1を示す指令値V1と、指令値V4とに応じて期間TAを示す指令値V6を出力する。具体的には、減算回路75は、指令値V1から指令値V4を減算し、指令値V6を出力する。
【0122】
そして、比較回路73は、期間TAを示す指令値V6と、信号Vcnt1との大小を比較し、信号Vcnt1が指令値V6より大きくなると、“H”レベルの信号Vc2を出力する。RSフリップフロップ74は、比較回路73からの“H”レベルの信号Vc2によりリセットされ、NMOSトランジスタ26aをオフする“L”レベルの駆動信号Vq1を出力する。これにより、インダクタ電流IL1のピーク値がインダクタ電流IL2のピーク値より大きい場合、NMOSトランジスタ26aのオン期間が期間T1から期間TAへと短縮し、インダクタ電流IL1のピーク値は低下する。
【0123】
==スイッチング制御回路54の構成==
図17は、スイッチング制御回路54の一例を示す図である。スイッチング制御回路54は、インダクタ電流IL2に応じた電圧Vzcd2、帰還電圧Vfb、及び指令値V5に基づいて、NMOSトランジスタ26bのスイッチングを制御する駆動信号Vq2を出力する。具体的には、スイッチング制御回路54は、インダクタ電流IL2がほぼゼロとなると、NMOSトランジスタ26bをオンする駆動信号Vq2を出力する。また、スイッチング制御回路54は、出力電圧Voutに応じた期間T1より短い期間TBが経過すると、NMOSトランジスタ26bをオフする駆動信号Vq2を出力する。また、期間TBは、指令値V5に応じて期間T1を短くした期間である。なお。スイッチング制御回路54は、「第2スイッチング制御回路」に相当する。
【0124】
スイッチング制御回路54は、減算回路83、電圧調整回路(AVR:Automatic Voltage Regulator)84、駆動信号出力回路85を含んで構成される。なお、以下、スイッチング制御回路54には、デジタル値としての電圧Vzcd2と、デジタル値としての帰還電圧Vfbと、指令値V5とが入力されることとして説明する。
【0125】
減算回路83は、目的レベルの出力電圧Vout(例えば、400V)の基準となる基準電圧Vrefから帰還電圧Vfbを減算し、基準電圧Vrefと、帰還電圧Vfbとの誤差E1を算出する。
【0126】
電圧調整回路84は、帰還電圧Vfbのレベルを基準電圧Vrefのレベルに一致させるための指令値V1を、誤差E1に応じて出力する。なお、指令値V1は、期間T1を示す指令値である。また、本実施形態の減算回路83及び電圧調整回路84は、例えば、誤差E1を増幅、積分等する、いわゆる誤差増幅回路に相当する。また、電圧調整回路84からの指令値V1が示す期間T1は、「第4期間」に対応する。
【0127】
駆動信号出力回路85は、電圧Vzcd2及び指令値V1,V5に基づいて、NMOSトランジスタ26bのスイッチングを制御する駆動信号Vq2を出力する。具体的には、駆動信号出力回路85は、インダクタ電流IL2が電流値I1となると、NMOSトランジスタ26bをオンする駆動信号Vq2を出力する。その後、駆動信号出力回路85は、出力電圧Voutに応じた期間T1より短い期間TBが経過すると、NMOSトランジスタ26bをオフする駆動信号Vq2を出力する。駆動信号出力回路85は、比較回路100、出力回路101を含んで構成される。
【0128】
出力回路102は、信号Vc3及び指令値V1,V5に基づいて、NMOSトランジスタ26bのスイッチングを制御する駆動信号Vq2を出力する。具体的には、出力回路102は、比較回路100からの信号Vc3に基づいて、NMOSトランジスタ26bをオンする駆動信号Vq2を出力する。その後、出力回路102は、指令値V5に応じて期間T1が短くなった期間TBが経過すると、NMOSトランジスタ26bをオフする駆動信号Vq2を出力する。出力回路102は、カウンタ111、比較回路112、RSフリップフロップ113、及び減算回路114を含んで構成される。また、出力回路102は、減算回路114を除いて、出力回路101とほぼ同一であるため、同一の構成についての説明を省略する。
【0129】
減算回路114は、期間T1を示す指令値V1と、指令値V5とに応じて期間TBを示す指令値V7を出力する。具体的には、減算回路114は、指令値V1から指令値V5を減算し、指令値V7を出力する。
【0130】
比較回路112は、指令値V7と、信号Vcnt2との大小を比較し、信号Vcnt2が指令値V7より大きくなると、“H”レベルの信号Vc4を出力する。RSフリップフロップ113は、比較回路112からの“H”レベルの信号Vc4によりリセットされ、NMOSトランジスタ26bをオフする“L”レベルの駆動信号Vq2を出力する。これにより、インダクタ電流IL2のピーク値がインダクタ電流IL1のピーク値より大きい場合、NMOSトランジスタ26bのオン期間が期間T1から期間TBへと短縮し、インダクタ電流IL2のピーク値は低下する。
【0131】
==力率改善IC25bの動作==
図18は、力率改善IC25bの主要な波形の一例を示す図である。
図18は、時刻t40以前において、実線で示すインダクタ電流IL2のピーク値を示す信号Ip2が一点鎖線で示すインダクタ電流IL1のピーク値を示す信号Ip1より大きい場合を示す。信号Ip2が信号Ip1より大きいため、以下では、期間T1の補正を受けるスイッチング制御回路54の動作について説明する。また、NMOSトランジスタ26a,26bは、時刻t40より前にオンされているものとする。また、時刻t40より前において、インダクタ電流IL2のピーク値は、インダクタ電流IL1のピーク値より大きいため、
図15の電流調整回路131は、負の指令値V3を出力し、補正回路122は、スイッチング制御回路54を補正すべく指令値V6を出力している。そのため、時刻t40以後、スイッチング制御回路54は、指令値V6に応じて期間T1が短くなった期間TBをオン幅として、NMOSトランジスタ26bをスイッチングするようになる。
【0132】
また、
図18では、時刻t41以後において、力率改善IC25bの制御回路52が動作した結果として、インダクタ電流IL2がどのようになるかを、破線で示している。また、時刻t41以後、破線で示されるインダクタ電流IL2が生じるようにNMOSトランジスタ26bをスイッチングする駆動信号Vq2を描いている。
【0133】
時刻t40より前にNMOSトランジスタ26bがオンされ、期間T1が経過した時刻t40において、スイッチング制御回路54は、NMOSトランジスタ26bをオフする“L”レベルの駆動信号Vq2を出力する。その後、インダクタ電流IL2は減少し始める。
【0134】
インダクタ電流IL2が減少し電流値I1となる時刻t41において、比較回路100は、“H”レベルの信号Vc3を出力する。そして、出力回路102は、NMOSトランジスタ26bをオンする“H”レベルの駆動信号Vq1を出力する。また、減算回路114は、期間T1を示す指令値V1から指令値V6を減算し、期間TBを示す指令値V7を出力する。
【0135】
時刻t41から期間TB経過した時刻t42において、信号Vcnt2が指令値V7より大きくなり、比較回路112が“H”レベルの信号Vc4を出力するため、出力回路102は、NMOSトランジスタ26bをオフする“L”レベルの駆動信号Vq2を出力する。以降、同様の動作が繰り返される。これにより、インダクタ電流IL2のピーク値を示す信号Ip2はインダクタ電流IL1のピーク値を示す信号Ip1に一致するようになる。
【0136】
==デジタル回路49==
図19は、インダクタ電流IL1,IL2のピーク値を均一にする回路を含むデジタル回路48の変形例であるデジタル回路49の一例を示す図である。この実施形態のデジタル回路49は、制御回路52、スイッチング制御回路55、スイッチング制御回路56を含んでいる。
【0137】
==スイッチング制御回路55の構成==
図20は、スイッチング制御回路55の一例を示す図である。スイッチング制御回路55は、インタリーブ動作を維持しつつ、インダクタ電流IL1,IL2のピーク値を一致させるため、制御回路52からの指令値V4に応じてNMOSトランジスタ26aをオンするタイミングを遅延させる。また、スイッチング制御回路55は、インダクタ電流IL1に応じた電圧Vzcd1と、帰還電圧Vfbと、指令値V4とに基づいて、NMOSトランジスタ26aのスイッチングを制御する駆動信号Vq1を出力する。具体的には、スイッチング制御回路55は、インダクタ電流IL1がほぼゼロとなった後、NMOSトランジスタ26aをオンする駆動信号Vq1を出力する。また、スイッチング制御回路55は、出力電圧Voutに応じた期間T1より短い期間TAが経過すると、NMOSトランジスタ26aをオフする駆動信号Vq1を出力する。なお、期間TAは、指令値V4に応じて期間T1を短くした期間である。
【0138】
スイッチング制御回路55は、比較回路60、遅延回路63、出力回路64を含んで構成される。なお、以下、スイッチング制御回路55には、デジタル値としての電圧Vzcd1と、デジタル値としての帰還電圧Vfbと、指令値V4とが入力されることとして説明する。スイッチング制御回路55は、制御回路52からの指令値V4に応じてNMOSトランジスタ26aをオンするタイミングを遅延させるための遅延回路63が、スイッチング制御回路53に対して追加されている。
【0139】
遅延回路63は、2つのチョッパ―回路のインタリーブ動作を維持しつつ、インダクタ電流IL1,IL2のピーク値を一致させるため、NMOSトランジスタ26aをオンするタイミングを遅延させる。具体的には、遅延回路63は、補正回路122からの指令値V4に基づいて、信号Ip1,Ip2の差(すなわち、指令値V4)に応じて決まる期間TAと、期間T1との差を示す期間だけ、比較回路60からのNMOSトランジスタ26aをオンするタイミングを示す信号Vc1を遅延させて信号Vc5として出力する。なお、遅延回路63は、「第1遅延回路」に相当する。
【0140】
また、遅延回路63は、NMOSトランジスタ26aがオフした後に共振しながら流れるインダクタ電流IL1の共振周期の半周期の奇数倍が経過する時点まで信号Vc1をさらに遅延させて信号Vc5として出力してもよい。
【0141】
また、出力回路64は、遅延回路63からの信号Vc5に基づいて、NMOSトランジスタ26aをオンする駆動信号Vq1を出力する。その後、出力回路64は、期間TAが経過すると、NMOSトランジスタ26aをオフする駆動信号Vq1を出力する。
【0142】
==スイッチング制御回路56の構成==
図21は、スイッチング制御回路56の一例を示す図である。スイッチング制御回路56は、インタリーブ動作を維持するため、制御回路52からの指令値V5に応じてNMOSトランジスタ26bをオンするタイミングを遅延させる。また、スイッチング制御回路56は、インダクタ電流IL2に応じた電圧Vzcd2、帰還電圧Vfb、信号Vc1、及び指令値V5に基づいて、NMOSトランジスタ26bのスイッチングを制御する駆動信号Vq2を出力する。
【0143】
具体的には、スイッチング制御回路56は、インダクタ電流IL2がほぼゼロとなった後、NMOSトランジスタ26bをオンする駆動信号Vq2を出力する。また、スイッチング制御回路56は、スイッチング制御回路55からの指令値V1と、NMOSトランジスタ26aのスイッチング周期Ta及び時間差Tθとに応じた期間T2より短い期間T3が経過すると、NMOSトランジスタ26bをオフする駆動信号Vq2を出力する。また、期間T3は、指令値V5に応じて期間T2を短くした期間である。なお、期間T3は、「第3期間」に相当する。
【0144】
スイッチング制御回路56は、検出回路80、誤差出力回路81、駆動信号出力回路86を含んで構成される。なお、以下、スイッチング制御回路56には、デジタル値としての電圧Vzcd2と、信号Vc1と、指令値V1,V5とが入力されることとして説明する。また、スイッチング制御回路56は、インタリーブ動作を維持しつつ、インダクタ電流IL1,IL2のピーク値を一致させる「スイッチング制御回路」に相当する。
【0145】
駆動信号出力回路86は、電圧Vzcd2及び指令値V1,V5,Vlpfに基づいて、NMOSトランジスタ26bのスイッチングを制御する駆動信号Vq2を出力する。具体的には、駆動信号出力回路86は、インダクタ電流IL2が電流値I1となった後、NMOSトランジスタ26bをオンする駆動信号Vq2を出力する。その後、駆動信号出力回路86は、指令値V1,Vlpfに応じた期間T2より短い期間T3が経過すると、NMOSトランジスタ26bをオフする駆動信号Vq2を出力する。駆動信号出力回路86は、比較回路100、遅延回路103、出力回路104を含んで構成される。なお、駆動信号出力回路86は、制御回路52からの指令値V5に応じてNMOSトランジスタ26bをオンするタイミングを遅延させるための遅延回路103が、駆動信号出力回路85に対して追加されている。
【0146】
遅延回路103は、2つのチョッパ―回路のインタリーブ動作を維持しつつ、インダクタ電流IL1,IL2のピーク値を一致させるため、NMOSトランジスタ26bをオンするタイミングを遅延させる。具体的には、遅延回路103は、補正回路122からの指令値V5に基づいて、信号Ip1,Ip2の差(すなわち、指令値V5)に応じて決まる期間T3と、期間T2との差だけ、比較回路100からのNMOSトランジスタ26bをオンするタイミングを示す信号Vc3を遅延させて信号Vc6として出力する。なお、比較回路100は、「タイミング検出回路」に相当し、信号Vc3が“H”レベルとなるタイミングは、「第3タイミング」に相当する。また、遅延回路103は、「遅延回路」に相当する。
【0147】
また、遅延回路103は、NMOSトランジスタ26bがオフした後に共振しながら流れるインダクタ電流IL2の共振周期の半周期の奇数倍が経過する時点まで信号Vc3をさらに遅延させて信号Vc6として出力してもよい。
【0148】
また、出力回路104は、信号Vc6及び指令値V1,V5,Vlpfに基づいて、NMOSトランジスタ26bのスイッチングを制御する駆動信号Vq2を出力する。具体的には、出力回路104は、遅延回路103からの信号Vc6に基づいて、NMOSトランジスタ26bをオンする駆動信号Vq2を出力する。その後、出力回路104は、期間T3が経過すると、NMOSトランジスタ26bをオフする駆動信号Vq2を出力する。なお、出力回路104は、「出力回路」に相当する。出力回路104は、減算回路110,115、カウンタ111、比較回路112、及びRSフリップフロップ113を含んで構成される。
【0149】
減算回路115は、期間T2と、指令値V5とに応じて期間T3を出力する。具体的には、減算回路115は、期間T2を示す指令値V2から指令値V5を減算し、期間T3を示す指令値V8を出力する。
【0150】
比較回路112は、指令値V8と、信号Vcnt2との大小を比較し、信号Vcnt2が指令値V8より大きくなると、“H”レベルの信号Vc4を出力する。RSフリップフロップ113は、比較回路112からの“H”レベルの信号Vc4によりリセットされ、NMOSトランジスタ26bをオフする“L”レベルの駆動信号Vq2を出力する。これにより、インダクタ電流IL2のピーク値がインダクタ電流IL1のピーク値より大きい場合、NMOSトランジスタ26bのオン期間が期間T2から期間T3へと短縮し、インダクタ電流IL2のピーク値は低下する。同時に、NMOSトランジスタ26bをオンするタイミングを遅延させるため、次にインダクタ電流IL2がゼロとなるタイミングは遅延し、インタリーブ動作が維持されやすくなる。
【0151】
<<2つのチョッパ―回路がインタリーブ動作をする場合の力率改善IC25bの動作>>
図22は、力率改善IC25bの主要な波形の一例を示す図である。
図22は、時刻t50以前において、実線で示すインダクタ電流IL2のピーク値を示す信号Ip2が一点鎖線で示すインダクタ電流IL1のピーク値を示す信号Ip1より大きい場合を示す。また、NMOSトランジスタ26a,26bは、時刻t50より前にオンされているものとする。また、
図22では、遅延回路103は、期間T2を示す指令値V2、指令値V5、及び共振周期に基づいて信号Vc3を遅延させ、信号Vc6として出力しているものとする。この場合、力率改善IC25bは、いわゆるボトムスキップ動作をするよう、NMOSトランジスタ26bのスイッチングを制御する。
【0152】
また、NMOSトランジスタ26a,26bは、時刻t50より前にオンされているものとする。また、時刻t50より前において、インダクタ電流IL2のピーク値は、インダクタ電流IL1のピーク値より大きいため、
図15の電流調整回路131は、負の指令値V3を出力し、補正回路122は、スイッチング制御回路56を補正すべく指令値V6を出力している。そのため、時刻t50以後、スイッチング制御回路56は、指令値V6に応じて期間T2が短くなった期間T3をオン幅として、NMOSトランジスタ26bをスイッチングするようになる。
【0153】
また、
図22では、時刻t51以後において、力率改善IC25bの制御回路52が動作した結果として、インダクタ電流IL2がどのようになるかを、破線で示している。また、時刻t51以後、破線で示されるインダクタ電流IL2が生じるようにNMOSトランジスタ26bをスイッチングする駆動信号Vq2を描いている。
【0154】
時刻t50より前にNMOSトランジスタがオンされ、期間T2が経過した時刻t50において、スイッチング制御回路56は、NMOSトランジスタ26bをオフする“L”レベルの駆動信号Vq2を出力する。その後、インダクタ電流IL2は減少し始める。
【0155】
インダクタ電流IL2が減少し電流値I0となる時刻t51において、比較回路100は、“H”レベルの信号Vc3を出力する。このあと、遅延回路103は、指令値V5に応じて決まる期間T3と、期間T2との差だけ信号Vc3を遅延させる。
【0156】
遅延回路103が、期間T3と、期間T2との差だけ信号Vc3を遅延させた後に、比較回路100が信号Vc3を“L”レベルに変化させる時刻t52において、スイッチング制御回路56は、NMOSトランジスタ26bをオンする“H”レベルの駆動信号Vq2を出力する。なお、時刻t52は、NMOSトランジスタ26bがオフした後に共振しながら流れるインダクタ電流IL2の共振周期の半周期の奇数倍が経過する時点に相当し、インダクタ電流IL2の流れる方向が負の方向から正の方向に変化するタイミングである。また、減算回路115は、期間T2を示す指令値V2から指令値V6を減算し、期間T3を示す指令値V8を出力する。
【0157】
時刻t52から期間T3が経過する時刻t53において、信号Vcnt2が指令値V8より大きくなり、比較回路112が“H”レベルの信号Vc4を出力するため、出力回路104は、NMOSトランジスタ26bをオフする“L”レベルの駆動信号Vq2を出力する。時刻t53以降、同様の動作が繰り返される。これにより、インダクタ電流IL2のピーク値を示す信号Ip2はインダクタ電流IL1のピーク値を示す信号Ip1に一致するようになる。また、インタリーブ動作も維持されている。
【0158】
<<<力率改善IC25bのシミュレーション結果>>>
図23は、製造ばらつき等により、主コイルL1a,L1bのインダクタンス値が不均衡である場合の力率改善IC25bのシミュレーション結果を示す図である。ここで、上段の図は、インダクタ電流IL1,IL2のピーク値及びボトム値の包絡線を示す結果である。なお、下段の図(a)は、整流電圧Vrecの位相角が0度付近におけるインダクタ電流IL1,IL2の波形であり、下段の図(b)は、整流電圧Vrecの位相角が45度付近におけるインダクタ電流IL1,IL2の波形である。さらに、下段の図(c)は、整流電圧Vrecの位相角が90度付近におけるインダクタ電流IL1,IL2の波形である。また、インダクタ電流IL1は、一点鎖線で示され、インダクタ電流IL2は、実線で示されている。
【0159】
まず、上段の図を参照すると、インダクタ電流IL1,IL2のピーク値の包絡線は、交流電圧Vacを全波整流した整流電圧Vrec(例えば、
図5に示す整流電圧Vrec)にほぼ一致しており、力率改善IC25aが力率を改善していることを示している。
【0160】
次に、下段の図(a)を参照すると、整流電圧Vrecの位相角が0度付近であるため、インダクタ電流IL1,IL2のピーク値は小さい。また、インダクタ電流IL1,IL2のピーク値となる間隔は、ほぼ均等(例えば、間隔が180度)となっており、力率改善IC25bは、インタリーブ動作を維持している。図(a)の場合、NMOSトランジスタ26a,26bのオン時間は短く、インダクタ電流IL1,IL2のピーク値は小さいため、主コイルL1a,L2aのインダクタンス値が不均衡であっても、ピーク値間の差は小さくなる。したがって、期間T3と期間T2との差は小さく、遅延回路103の遅延によるNMOSトランジスタ26bのオンタイミングの遅れは目立たない。
【0161】
さらに、整流電圧Vrecの位相角が45度付近の動作を示す下段の図(b)を参照すると、図(b)の場合、NMOSトランジスタ26a,26bのオン時間は、図(a)の場合に比べ長い。そして、インダクタ電流IL1,IL2のピーク値は比較的大きいため、主コイルL1a,L2aのインダクタンス値が不均衡である結果として、ピーク値の差が大きくなるはずである。したがって、期間T3と期間T2との差は大きく、遅延回路103の遅延によるNMOSトランジスタ26bのオンタイミングの遅れが大きくなる。この場合、力率改善IC25bがピーク値を均一にするよう、NMOSトランジスタ26bを含む昇圧チョッパ―回路に不連続動作をさせるため、結果としてインダクタ電流IL1,IL2のピーク値は均一となる。また、力率改善IC25bは、インタリーブ動作を維持している。
【0162】
最後に、整流電圧Vrecの位相角が90度付近の動作を示す下段の図(c)を参照すると、図(c)の場合、図(b)の場合と同様に、NMOSトランジスタ26a,26bのオン時間は長く、インダクタ電流IL1,IL2のピーク値の差は大きい。しかしながら、力率改善IC25bがピーク値を均一にするよう、NMOSトランジスタ26bを含む昇圧チョッパ―回路に不連続動作をさせるため、結果としてインダクタ電流IL1,IL2のピーク値は均一となる。また、力率改善IC25bは、インタリーブ動作を維持している。
【0163】
<<<力率改善IC25aの変形例の一例>>>
図24は、力率改善IC25aの変形例の一例を示す図である。力率改善IC25aにおいては、
図2のADコンバータ40が電圧Vzcd1をデジタル値に変換し、その後、
図3の比較回路60が電圧Vzcd1を電流値I0に応じたデジタル値と比較し信号Vc1を出力していた。同様に、
図2のADコンバータ41が電圧Vzcd2をデジタル値に変換し、その後、
図6の比較回路100が電圧Vzcd2を電流値I1に応じたデジタル値と比較し信号Vc3を出力していた。
【0164】
一方、力率改善IC25aの変形例は、
図2のADコンバータ40,41の代わりに、アナログ回路の比較回路200,201を含み、デジタル回路43は、デジタル回路43aとなる。
【0165】
また、比較回路200は、電圧Vzcd1を電流値I0に応じた基準電圧Vref0と比較し、電圧Vzcd1が基準電圧Vref0を下回ると、“H”レベルの信号Vc1を出力する。また、比較回路200は、電圧Vzcd1が基準電圧Vref0を超える場合、“L”レベルの信号Vc1を出力する。
【0166】
同様に、比較回路201は、電圧Vzcd2を電流値I1に応じた基準電圧Vref1と比較し、電圧Vzcd2が基準電圧Vref1を下回ると、“H”レベルの信号Vc3を出力する。また、比較回路201は、電圧Vzcd2が基準電圧Vref1を超える場合、“L”レベルの信号Vc3を出力する。
【0167】
そして、デジタル回路43aは、比較回路200からの信号Vc1と、比較回路201からの信号Vc3とに基づいて、デジタル回路43と同様の動作をする。上述のように、力率改善IC25aの変形例は、力率改善IC25aのADコンバータ40及び比較回路60を、比較回路200に置き換え、力率改善IC25aのADコンバータ41及び比較回路100を、比較回路201に置き換えたものとなる。
【0168】
なお、力率改善IC25aの場合、ADコンバータ40,41は、最大、数100kHzに達するスイッチング波形の瞬時値をとらえるサンプル間隔を必要とし、そのため、最低でも数MHzのサンプリング周波数が必要となる。しかしながら、力率改善IC25aを上述のように変形することにより、数MHzのサンプリング周波数を必要としなくなり、力率改善IC25aの省面積化、及び集積回路の消費電力の低減を図ることができる。
【0169】
また、
図24は、力率改善IC25aを例として描いたが、同様の変形は、力率改善IC25bにも適用できる。
【0170】
<<<AC-DCコンバータ13の概要>>>
図25は、AC-DCコンバータ13の一例を示す図である。AC-DCコンバータ10,12においては、2つの昇圧チョッパ―回路をそれぞれ1つの力率改善IC25a,25bで制御することとしていたが、
図24に示すように、2つの力率改善IC25c,25dでAC-DCコンバータ13を制御するようにしてもよい。
【0171】
なお、
図25のAC-DCコンバータ13においては、例えば、力率改善IC25cは、ADコンバータ40,42、バッファ回路44、及びスイッチング制御回路50を含む。また、力率改善IC25cは、力率改善IC25aと同様に機能する端子ZCD1,OUT1,FBを有する。また、力率改善IC25dは、ADコンバータ41、バッファ回路45、及びスイッチング制御回路51を含む。また、力率改善ICdは、端子ZCD2,OUT2,VO1を含む。端子ZCD2,OUT2については、力率改善IC25aと同様に機能する。端子VO1には、NMOSトランジスタ26aのスイッチングを制御する電圧Vo1が印加される。
【0172】
また、力率改善IC25dは、図示しない回路によって、電圧Vo1が“H”レベルとなる期間から指令値V1を得、電圧Vo1の変化に基づいて信号Vc1を得ることができる。また、力率改善IC25cが本実施形態で説明したスイッチング制御回路50を含む例に限定されることなく、力率改善IC25cの代わりに、一般的な力率改善回路用の集積回路を用いることもできる。
【0173】
<<<AC-DCコンバータ14の概要>>>
図26は、AC-DCコンバータ14の一例を示す図である。AC-DCコンバータ14は、AC-DCコンバータ13と同様に、2つの力率改善IC25e,25fで制御される。なお、
図26のAC-DCコンバータ14においては、例えば、力率改善IC25eは、ADコンバータ40,42、バッファ回路44、及びスイッチング制御回路53を含む。また、力率改善IC25eは、端子ZCD1,OUT1,FBを有する。また、端子ZCD1,OUT1,FBは、力率改善IC25bと同様に機能する。
【0174】
また、力率改善ICfは、ADコンバータ41,42,46,47、バッファ回路45、制御回路52、及びスイッチング制御回路54を含む。また、力率改善ICfは、端子ZCD2,OUT2,V4,IP1,IP2,FBを含む。端子ZCD2,OUT2,IP1,IP2,FBについては、力率改善IC25bと同様に機能する。また、
図15の補正回路122からの指令値V4は、端子V4から力率改善IC25eへ出力される。
【0175】
また、ADコンバータ46,47、及び制御回路52は、スイッチング制御回路53とともに、力率改善IC25eに含まれることとしてもよく、力率改善IC25e,25fの両方に含まれることとしてもよい。
【0176】
<<<AC-DCコンバータ15の概要>>>
図27は、AC-DCコンバータ15の一例を示す図である。AC-DCコンバータ15は、AC-DCコンバータ13,14と同様に、2つの力率改善IC25g,25hで制御される。なお、
図27のAC-DCコンバータ15においては、例えば、力率改善IC25gは、ADコンバータ40,42、バッファ回路44、及びスイッチング制御回路55を含む。また、力率改善IC25gは、端子ZCD1,OUT1,FB,VC1,V4を有する。また、端子ZCD1,OUT1,FBは、力率改善IC25bと同様に機能する。比較回路60からの信号Vc1は、端子VC1から力率改善IC25hへ出力される。
【0177】
また、力率改善IChは、ADコンバータ41,46,47、バッファ回路45、制御回路52、及びスイッチング制御回路56を含む。また、力率改善IC25fは、端子ZCD2,OUT2,VC1,V4,IP1,IP2を含む。端子ZCD2,OUT2,IP1,IP2については、力率改善IC25bと同様に機能する。また、
図15の補正回路122からの指令値V4は、端子V4から力率改善IC25gへ出力される。
【0178】
また、ADコンバータ46,47、及び制御回路52は、スイッチング制御回路55とともに、力率改善IC25gに含まれることとしてもよく、力率改善IC25g,25hの両方に含まれることとしてもよい。
【0179】
また、
図25~27では、2つの力率改善ICでAC-DCコンバータ13~15を制御する例を示したが、これまで説明したスイッチング制御回路及び制御回路は、上述した実施形態を参考に、適宜個別部品で実装してもよいし、3つ以上の集積回路を用いて実装してもよい。
【0180】
===まとめ===
以上、本実施形態のAC-DCコンバータ10について説明した。スイッチング制御回路51は、いわゆるPLL回路と同様の構成を実現するため、検出回路80及び誤差出力回路81(位相を検出する回路に相当)、駆動信号出力回路82(電圧制御型発振器に相当)を含んで構成される。具体的には、検出回路80は、NMOSトランジスタ26a,26bのそれぞれのオンタイミングを示す信号Vc1,Vc3に基づいて、NMOSトランジスタ26aのスイッチング周期Taと、時間差Tθとを検出する。そして、誤差出力回路81は、検出回路80からの信号VRに基づいて、指令値Vlpfを出力する。減算回路110は、NMOSトランジスタ26aのオン期間である期間T1を示す指令値V1から指令値Vlpfを減算し、NMOSトランジスタ26bのオン幅を示す指令値V2として出力する。そして、出力回路101は、指令値V2に基づいて、NMOSトランジスタ26bをオンする駆動信号Vq2を出力する。このようにして、力率改善IC25aは、いわゆるPLL回路と同様の構成を実現し、スイッチング周期Ta及び時間差Tθの比率Rを所定比率に維持し、NMOSトランジスタ26aのスイッチング周波数の変化に追従しつつ、インタリーブ動作を実現できる。これにより、PFC回路の適切なインタリーブ動作を可能にするスイッチング制御回路及び制御回路を提供することができる。
【0181】
また、検出回路80は、RSフリップフロップ90であり、RSフリップフロップ90は、時間差Tθ、及びNMOSトランジスタ26aのスイッチング周期Taを検出する。これにより、検出回路80は、簡易な回路でスイッチング周期Ta及び時間差Tθの比率Rを示す信号VRを出力することができる。
【0182】
また、誤差出力回路81は、減算回路92,ローパスフィルタ93を含む。減算回路92及びローパスフィルタ93は、誤差E2を増幅して指令値Vlpfとして出力する誤差増幅回路を構成する。これにより、スイッチング制御回路51は、比率Rと所定比率との差(つまり、誤差E2)の時間的な変化に追従して比率Rを所定比率に保ちながら、インタリーブ動作を実現できる。
【0183】
スイッチング制御回路56は、サンプル・ホールド回路120,121、補正回路122を含む。サンプル・ホールド回路120,121は、それぞれインダクタ電流IL1,IL2のピーク値を検出し、信号Ip1,Ip2として出力する。補正回路122は、信号Ip2が信号Ip1より大きい場合、期間T2が短くなるよう、駆動信号出力回路86を制御する。これにより、力率改善IC25bは、インダクタ電流IL1,IL2のピーク値を均一にすることができる。
【0184】
駆動信号出力回路86は、比較回路100、遅延回路103、出力回路104を含む。遅延回路103は、信号Ip1,Ip2の差に応じて、NMOSトランジスタ26bをオンするタイミングを遅延させて出力する。これにより、スイッチング制御回路56は、インタリーブ動作を維持しつつ、インダクタ電流IL1,IL2のピーク値を均一にすることができる。
【0185】
遅延回路103は、信号Ip1,Ip2の差と、インダクタ電流IL2の共振周期とに応じて、NMOSトランジスタ26bをオンするタイミングを遅延させる。これにより、駆動信号出力回路86は、いわゆるボトムスキップ動作をするよう、駆動信号Vq2を出力することができる。
【0186】
制御回路52は、サンプル・ホールド回路120,121、補正回路122を含む。サンプル・ホールド回路120,121は、それぞれインダクタ電流IL1,IL2のピーク値を検出し、信号Ip1,Ip2として出力する。補正回路122は、信号Ip1,Ip2の差が小さくなるよう、期間T1又は期間T2の少なくとも一方を補正する。これにより、制御回路52は、インダクタ電流IL1,IL2のピーク値を均一にすることができる。
【0187】
補正回路122は、信号Ip1が信号Ip2より大きい場合、期間T1が短くなるよう、期間T1を補正し、信号Ip2が信号Ip1より大きい場合、期間T2が短くなるよう、期間T2を補正する。これにより、補正回路122は、信号Ip1,Ip2のうち大きい方を補正して、信号Ip1,Ip2を均一にすることができる。
【0188】
スイッチング制御回路53は、比較回路60、出力回路62を含む。出力回路62は、信号Ip1が信号Ip2より大きい場合、NMOSトランジスタ26aをオンした後、期間TAが経過すると、NMOSトランジスタ26aをオフする駆動信号Vq1を出力する。これにより、スイッチング制御回路53は、インダクタ電流IL1のピーク値をインダクタ電流IL2のピーク値に一致させることができる。
【0189】
スイッチング制御回路53は、遅延回路63含む。出力回路64は、遅延回路63からの信号Vc5に基づいて、NMOSトランジスタ26aをオンする駆動信号Vq1を出力する。これにより、スイッチング制御回路53は、インタリーブ動作を維持しつつ、インダクタ電流IL1,IL2のピーク値を一致させ得る。
【0190】
遅延回路63は、インダクタ電流IL1の共振周期と、期間TAとに基づいて、信号Vc1を遅延させて、信号Vc5として出力する。これにより、出力回路64は、いわゆるボトムスキップ動作をするよう、駆動信号Vq1を出力することができる。
【0191】
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのはいうまでもない。
【符号の説明】
【0192】
10,12,13,14,15 AC-DCコンバータ
11 負荷
20 全波整流回路
21,22 コンデンサ
23a,23b トランス
24a,24b ダイオード
25a,25b,25c,25d,25e,25f,25g,25h 力率改善IC
26a,26b NMOSトランジスタ
30,31,32a,32b 抵抗
40,41,42,46,47 ADコンバータ
43,48,49 デジタル回路
44,45 バッファ回路
50,51,53,54,55,56 スイッチング制御回路
52 制御回路
60,73,100,112 比較回路
61,62,64,101,102,104 出力回路
63,103 遅延回路
70,75,83,92,110,114,115,130 減算回路
71 電圧調整回路
72,111 カウンタ
74,90,113 RSフリップフロップ
80 検出回路
81 誤差出力回路
82,85,86 駆動信号出力回路
84 電圧調整回路
91 レベルシフト回路
93 ローパスフィルタ
120,121 サンプル・ホールド回路
122 補正回路
131 電流調整回路
132,133 リミッタ回路