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特開2024-64512電動車用バッテリケース及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064512
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】電動車用バッテリケース及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/242 20210101AFI20240507BHJP
   H01M 50/249 20210101ALI20240507BHJP
   H01M 50/209 20210101ALI20240507BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20240507BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20240507BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20240507BHJP
   H01M 10/64 20140101ALI20240507BHJP
   H01M 50/291 20210101ALI20240507BHJP
   H01M 10/6568 20140101ALI20240507BHJP
【FI】
H01M50/242
H01M50/249
H01M50/209
H01M50/204 401H
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/64
H01M50/291
H01M10/6568
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173149
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】591176258
【氏名又は名称】株式会社飯塚鉄工所
(74)【代理人】
【識別番号】110002893
【氏名又は名称】弁理士法人KEN知財総合事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 肇
(72)【発明者】
【氏名】神保 義裕
【テーマコード(参考)】
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
5H031AA09
5H031BB03
5H031KK08
5H040AA01
5H040AA03
5H040AA28
5H040AA37
5H040AS07
5H040AT02
5H040AT06
5H040AY05
5H040AY10
5H040JJ02
(57)【要約】
【課題】より軽量化が可能で、形状の変更に柔軟に対応でき、溶接が不要で製造コストを低減できる電動車用バッテリケース、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】衝撃吸収のための中空構造を有する枠状中空構造体10と、前記枠状中空構造体の内側に嵌め込まれて、一又は複数の二次電池モジュール60を配置するための上側が開口した内箱20と、を含む電動車用バッテリケース1であって、前記枠状中空構造体10は、枠状に結合された4本の梁状構造体11からなり、各前記梁状構造体11は、板金を折り曲げて形成した断面形状が長さ方向で一定の梁状部材12-1~12_3を結合して形成され、前記内箱20は、板金を折り曲げて形成されたことを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
衝撃吸収のための中空構造を有する枠状中空構造体と、
前記枠状中空構造体の内側に嵌め込まれて、一又は複数の二次電池モジュールを配置するための上側が開口した内箱と、
を含む電動車用バッテリケースであって、
前記枠状中空構造体は、枠状に結合された4本の梁状構造体からなり、各前記梁状構造体は、板金を折り曲げて形成した断面形状が長さ方向で一定の梁状部材を結合して形成され、
前記内箱は、板金を折り曲げて形成されたことを特徴とする、電動車用バッテリケース。
【請求項2】
前記内箱の下面の全面を下側から覆い、衝撃を吸収するための下側中空構造体をさらに有する、請求項1に記載の電動車用バッテリケース。
【請求項3】
前記内箱の下面と前記下側中空構造体の間に設けられ、前記一又は複数の二次電池モジュールを冷却する冷却モジュールをさらに有する、請求項2に記載の電動車用バッテリケース。
【請求項4】
前記内箱の内部に設けられ、板金を折り曲げて形成された中空の板状を有し、前記複数の二次電池モジュール同士を仕切るとともに、衝撃を吸収するための仕切り板をさらに有する、請求項1に記載の電動車用バッテリケース。
【請求項5】
各前記梁状構造体は、前記梁状部材として、
略L字の両端を内側に直角に曲げた断面形状を有する第1の梁状部材と、
前記第1の梁状部材の底面上に載置され、逆U字の両端を外側に水平に曲げた断面形状を有する第2の梁状部材と、
前記第2の梁状部材の上に載置され、略L字の両端を外側に直角に曲げた断面形状を有して、断面視で前記第1の梁状部材の上側及び右側を覆う第3の梁状部材と、
を結合して構成され、
前記内箱は、上端部から横方向外側に広がった後に下方向に折り曲げられた折り返し部分を有し、当該折り返し部分が各前記梁状構造体に上側から嵌合している、請求項1に記載の電動車用バッテリケース。
【請求項6】
前記下側中空構造体は、板金からなる底板と、板金を折り曲げて形成され、前記底板の上面に一定の高さで立設されて、衝撃を吸収するための、外側リブ及び内部リブを有する、請求項2に記載の電動車用バッテリケース。
【請求項7】
前記冷却モジュールは、一面に蛇行する溝からなる冷媒用流路及び当該冷媒用流路を囲むシール用溝がそれぞれ凹設された平板状の板金からなる本体板と、当該本体板の前記一面を覆うとともに、前記冷媒用流路への冷媒の流通孔が設けられた平板状の板金からなる流路蓋と、前記シール用溝に配置されたシール剤と、を有する、請求項3に記載の電動車用バッテリケース。
【請求項8】
衝撃吸収のための中空構造を有する枠状中空構造体と、前記枠状中空構造体の内側に嵌め込まれて、一又は複数の二次電池モジュールを配置するための上側が開口した内箱と、を含む電動車用バッテリケースの製造方法であって、
板金を所定形状に剪断し折り曲げて、断面形状が長さ方向で一定の梁状部材を形成するステップと、
前記梁状部材を複数結合して、梁状構造体を形成するステップと、
前記梁状構造体を4本枠状に結合して前記枠状中空構造体を形成するステップと、
板金を所定形状に剪断し折り曲げて、前記内箱を形成するステップと、
前記内箱を前記枠状中空構造体の内側に嵌め込むステップと、
を含む、電動車用バッテリケースの製造方法。
【請求項9】
前記梁状部材を複数結合して、梁状構造体を形成するステップにおいて、前記梁状部材同士をリベットで結合する、請求項8に記載の電動車用バッテリケースの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車用バッテリケース及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境保護等の観点から、従来の化石燃料を用いたガソリン車やディーゼル車から、動力源として電気を一部又は全面的に用いたEV(電気自動車),HV(ハイブリッド車),PHV(プラグインハイブリッド車)などの電動車へのシフトが進展している。電動車用の動力源である電気を蓄積する電動車用バッテリとしては、リチウムイオン電池が広く用いられているが、ガソリン車並みの航続距離を得るためには、大きな電池容量が必要なため、車体の下面に大きなバッテリケースを設けて多数のリチウムイオン電池セルを配置するのが一般的である。
【0003】
バッテリケースの下面側や前面、後面、側面は、衝撃からの保護のためや、電池セルの冷却水を流すため、所定の厚みのある中空構造になっている。従来、このようなバッテリケースの各面の中空構造実現のため、アルミ合金製の鋳物や押出し材を溶接等により組み合わせて製作したケースが用いられてきた。
【0004】
例えば、特許文献1では、上面が開口し内部にバッテリ4個収容する鋳造アルミ製のケースを3個横に並べて溶接等により接合し、バッテリを計12個収容するバッテリケースを形成している。形成されたバッテリケースの底板は二重になっていて、その間に冷媒を流してバッテリを冷却するようになっている。このケースの開口した上面を車体の下面に密着するように取付ける。
【0005】
また、特許文献2では、それぞれアルミニウム合金等の押出材で形成され、断面視で全体として略L字状で側面及び底面に中空構造を有する第1サイド部材と第2サイド部材を組み合わせて、車両用電池ケース構造体を形成している。底面の中空構造には冷媒を流して電池モジュールを冷却できるようになっている。
【0006】
特許文献3では、アルミニウム合金の押出材を用いて製作され対向配置した一対の第1メイン流路部と第2メイン流路部と、アルミニウム合金の押出材を用いて製作されこれらの間を連結する複数のサブ流路部からなる車両のバッテリケース用冷却器を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2020-191163号公報
【特許文献2】特開2021-70386号公報
【特許文献3】特開2021-51839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、航続距離向上の観点からバッテリケースの軽量化が求められ、アルミ合金製であっても特許文献1~3で採用する鋳造や押出し材では部材の肉厚が厚くなるため、このような軽量化の要請に十分に応えられないという問題があった。
また、鋳造や押出し材では、形状の変更の際、金型の再設計・再製作が必要で顧客の要望に柔軟に対応できないとの問題もあった。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するもので、より軽量化が可能で、形状の変更に柔軟に対応でき、溶接が不要で製造コストを低減できる電動車用バッテリケース、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を解決するために、本発明の一態様である電動車用バッテリケースは、衝撃吸収のための中空構造を有する枠状中空構造体と、前記枠状中空構造体の内側に嵌め込まれて、一又は複数の二次電池モジュールを配置するための上側が開口した内箱と、を含む電動車用バッテリケースであって、前記枠状中空構造体は、枠状に結合された4本の梁状構造体からなり、各前記梁状構造体は、板金を折り曲げて形成した断面形状が長さ方向で一定の梁状部材を結合して形成され、前記内箱は、板金を折り曲げて形成されたことを特徴とする。
【0011】
上記電動車用バッテリケースは、前記内箱の下面の全面を下側から覆い、衝撃を吸収するための下側中空構造体をさらに有するものであってもよい。
【0012】
上記電動車用バッテリケースは、前記内箱の下面と前記下側中空構造体の間に設けられ、前記一又は複数の二次電池モジュールを冷却する冷却モジュールをさらに有するものであってもよい。
【0013】
上記電動車用バッテリケースは、前記内箱の内部に設けられ、板金を折り曲げて形成された中空の板状を有し、前記複数の二次電池モジュール同士を仕切るとともに、衝撃を吸収するための仕切り板をさらに有するものであってもよい。
【0014】
上記電動車用バッテリケースにおいて、各前記梁状構造体は、前記梁状部材として、略L字の両端を内側に直角に曲げた断面形状を有する第1の梁状部材と、前記第1の梁状部材の底面上に載置され、逆U字の両端を外側に水平に曲げた断面形状を有する第2の梁状部材と、前記第2の梁状部材の上に載置され、略L字の両端を外側に直角に曲げた断面形状を有して、断面視で前記第1の梁状部材の上側及び右側を覆う第3の梁状部材と、を結合して構成され、前記内箱は、上端部から横方向外側に広がった後に下方向に折り曲げられた折り返し部分を有し、当該折り返し部分が各前記梁状構造体に上側から嵌合している、構成が好ましく採用できる。
【0015】
前記下側中空構造体は、板金からなる底板と、板金を折り曲げて形成され、前記底板の上面に一定の高さで立設され、衝撃を吸収するための、外側リブ及び内部リブを有する、構成が好ましく採用できる。
【0016】
前記冷却モジュールは、一面に蛇行する溝からなる冷媒用流路及び当該冷媒用流路を囲むシール用溝がそれぞれ凹設された平板状の板金からなる本体板と、当該本体板の前記一面を覆うとともに、前記冷媒用流路への冷媒の流通孔が設けられた平板状の板金からなる流路蓋と、前記シール用溝に配置されたシール剤と、を有する、構成が好ましく採用できる。
【0017】
本発明の一態様である電動車用バッテリケースの製造方法は、衝撃吸収のための中空構造を有する枠状中空構造体と、前記枠状中空構造体の内側に嵌め込まれて、一又は複数の二次電池モジュールを配置するための上側が開口した内箱と、を含む二次現地用バッテリケースの製造方法であって、板金を所定形状に剪断し折り曲げて、断面形状が長さ方向で一定の梁状部材を形成するステップと、前記梁状部材を複数結合して、梁状構造体を形成するステップと、前記梁状構造体を4本枠状に結合して前記枠状中空構造体を形成するステップと、板金を所定形状に剪断し折り曲げて、前記内箱を形成するステップと、前記内箱を前記枠状中空構造体の内側に嵌め込むステップと、を含む。
【0018】
前記梁状部材を複数結合して、梁状構造体を形成するステップにおいて、前記梁状部材同士をリベットで結合する構成が好ましく採用できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、電動車用バッテリケースの衝撃吸収のための枠状中空構造体を、板金を折り曲げて形成した梁状部材を組み合わせて構成したので、従来の鋳物や押出材を用いた場合に比較して、バッテリケースの軽量化が図れるとともに、梁状部材が汎用のプレス型を用いるプレス装置によって製造可能なので、設計変更に対しても新たに金型を作成する必要が無く、柔軟に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係る電動車用バッテリケースの外観斜視図。
図2】二次電池を搭載した図1の電動車用バッテリケースの外観斜視図。
図3図1の電動車用バッテリケースの分解斜視図。
図4】枠状中空構造体と内箱の分解斜視図。
図5】内箱の外観斜視図。
図6図5のA部拡大図。
図7】枠状中空構造体と内箱の一部を示す断面図。
図8図7において部材同士をリベットで結合した状態を示す断面図。
図9】冷却モジュールの分解斜視図。
図10】冷却モジュールの部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
(電動車用バッテリケース)
図1は、本発明の実施形態に係る電動車用バッテリケース1の外観斜視図で、図2は、二次電池モジュール60を搭載した電動車用バッテリケース1、図3は、電動車用バッテリケース1の分解斜視図である。
本実施形態の電動車用バッテリケース1は、図3に示すように、枠状中空構造体10と、内箱20と、下側中空構造体30と、冷却モジュール40と、仕切り板50を含む。
【0022】
枠状中空構造体10は、衝撃吸収のための中空構造を有する枠状を有する構造体で、枠状に結合された4本の梁状構造体11からなり、各前記梁状構造体11は、板金を折り曲げて形成した断面形状が長さ方向で一定の梁状部材12_1~12_3(図4参照)を結合して形成されている。詳細については後述する。
【0023】
内箱20は、枠状中空構造体10の内側に嵌め込まれて、一又は複数の二次電池モジュール60(図2参照)を配置するための上側が開口した箱形を有する。図5に内箱20の斜視図、図6にそのA部拡大図を示す。内箱20は、板金を折り曲げて形成されたもので、二次電池モジュール60が万一破損しても、電解液が漏出しないように、隣接する側面23同士が当接して形成される4つの稜線部分24には、溶接又は公知の隙間防止処理が施される。板金の材質としては、アルミ圧延板を用いている。本実施形態では、図6に拡大して示すように、上端部から横方向外側に広がった後に下方向に折り曲げられた折り返し部分21を有し、当該折り返し部分21が各梁状構造体11に上側から嵌合している。
【0024】
下側中空構造体30は、内箱20の下面の全面を下側から覆い、衝撃を吸収するためのものである。本実施形態では、図3の分解斜視図に示すように、板金からなる底板31と、当該底板31の上面に一定の高さで立設され、衝撃を吸収するための、外側リブ32及び内部リブ33を有する。本実施形態では、底板31はアルミ圧延板を剪断して形成し、外側リブ32及び内部リブ33もアルミ圧延板を剪断し折り曲げて形成している。外側リブ32及び内部リブ33は、リベットRV(図示省略)により、底板31に固定されている。
【0025】
冷却モジュール40は、内箱20の下面と下側中空構造体30の間に設けられ、一又は複数の二次電池モジュール60を冷却するものである。本実施形態では、図9,10に示すように、一面(上面)に蛇行する溝からなる冷媒用流路44及び当該冷媒用流路44を囲むシール用溝45がそれぞれ凹設された平板状の板金からなる本体板41と、本体板41の前記一面(上面)を覆うとともに、冷媒用流路44へ冷媒を流通させる冷媒流通孔46,46が設けられた平板状の板金からなる流路蓋42と、前記シール用溝に配置されたシール剤43と、を有する。
図9では分かりにくいが、冷媒用流路44の両端部は、本体板41の端部には露出せず、シール用溝45は、冷媒用流路44の両端部を回って囲んでいる。
シール剤43は、例えば、シリコーン樹脂でもよく、Oリングでもよい。また、流路蓋42の冷媒流通孔46,46のそれぞれに接続する冷媒流通管47,47が溶接され、冷媒の供給・回収用ホース(図示省略)が接続できるようになっている。尚、冷媒としては、例えば水が用いられる。
【0026】
仕切り板50は、内箱20の内部に設けられ、複数の二次電池モジュール60同士を仕切るとともに衝撃を吸収するためのものである。本実施形態では、図1,3に示すように、内箱20の内部中央に配置された縦方向仕切り板51とその左右に接続された4対の横方向仕切り板52から形成され、内箱20の内部を8つの区画に区切っている。
縦方向仕切り板51は、アルミ圧延板を剪断し折り曲げて形成された2つの部材51a,51bを組み合わせて形成された中空板状体で、リベットRV(図示省略)により、内箱20の底板部22に固定されている。
各横方向仕切り板52は、アルミ圧延板を剪断し折り曲げて形成された3つの部材52a,52b,52cを組み合わせて形成された中空板状体で、リベットRV(図示省略)により、内箱20の底板部22に固定されている。
【0027】
なお、本発明の電動車用バッテリケースが搭載する二次電池モジュール60は、公知の角形のリチウムイオン電池が一般的だが、ニッケル水素電池、ニッカド電池、鉛蓄電池でもよい。
【0028】
ここで、本発明の電動車用バッテリケース1は、その枠状中空構造体10等を、板金を曲げて形成したことを特徴とする。前記のように、枠状中空構造体10は、枠状に結合された4本の梁状構造体11からなり、各梁状構造体11は、板金を折り曲げて形成した断面形状が長さ方向で一定の梁状部材12_1~12_3を結合して形成されている。
図7は、枠状中空構造体10と内箱20の一部を示す断面図である。本実施形態では、梁状部材12_1~12_3として、略L字の両端を内側に直角に曲げた断面形状を有する第1の梁状部材12_1と、前記第1の梁状部材12_1の底面上に載置され、逆U字の両端を外側に水平に曲げた断面形状を有する第2の梁状部材12_2と、前記第2の梁状部材12_2の上に載置され、略L字の両端を外側に直角に曲げた断面形状を有して、断面視で前記第1の梁状部材12_1の上側及び右側を覆う第3の梁状部材12_3と、を結合して構成されている。
この枠状中空構造体10の断面の上端部を成す第3の梁状部材12_3上端部に、内箱20の折り返し部分21が上側から嵌合し、第1の梁状部材12_1の左側面及び第3の梁状部材12_3の上端部右側面を挟んでいる。
このように、第1の梁状部材12_1の上に第2の梁状部材12_2を載置し、その上に第3の梁状部材12_3を被せ、その上から内箱20の折り返し部分21を被せるように配置することにより、上側からの雨水等の侵入を低減できる。
【0029】
図8は、部材同士をリベットRVで結合した状態を示す断面図である。
部材同士の接合は溶接による方法でも可能だが、溶接時の熱による部材の変形という問題がある。リベットRVを用いる場合、この変形が生じないというメリットがある。尚、リベット用の孔は、部材の剪断工程で事前に開けておく。
これにより、内箱20の一部を含んで、断面視で略L字型を有し、内部に4つの中空部分を有する梁状部材12_1~12_3が形成される。梁状部材12_1~12_3は、断面形状が長さ方向で一定である。この梁状部材12_1~12_3を結合して構成された梁状構造体11を4本枠状に配置し、その隅部をLアングル材13を介して結合し、各梁状部材12_1~12_3の両端に露出している中空構造の開口部を公知の方法で封止することにより、枠状中空構造体10が形成される。
【0030】
尚、本実施形態では、1つの梁状構造体11には、前記冷却モジュール40の冷媒流通管47,47(図1参照)を通すための、2つの貫通孔14,14(図4参照)が設けられている。この貫通孔14,14は、第1の梁状部材12_1の底面部分、第2の梁状部材12_2の上面部分及び第3の梁状部材12_3の下面部分を貫通して形成されている。
【0031】
このように構成された本実施形態の電動車用バッテリケース1によれば、電動車用バッテリケース1の衝撃吸収のための枠状中空構造体10を、板金を折り曲げて形成した梁状部材12_1~12_3を組み合わせて構成したので、従来の鋳物や押出材を用いた場合に比較して、バッテリケースの軽量化が図れるとともに、梁状部材12_1~12_3、内箱20、下側中空構造体30、仕切り板50の各部材等が、汎用のプレス型を用いるプレス装置によって製造可能なので、設計変更に対しても新たに金型を作成する必要が無く、柔軟に対応できる。
【0032】
尚、本発明の電動車用バッテリケース1において、下側中空構造体30と、冷却モジュール40と、仕切り板50は必須ではなく、場合によっては省略したり、他の構成のものを用いたりすることも可能である。但し、本実施形態のものを用いることが好ましい。
【0033】
(電動車用バッテリケースの製造方法)
上記構成を有する本実施形態の電動車用バッテリケース1の製造方法について、主に図3を参照して説明する。
本実施形態の製造方法は、枠状中空構造体10の製造工程と、内箱20の製造工程と、下側中空構造体30の製造工程と、冷却モジュール40の製造工程と、仕切り板50の製造工程と、電動車用バッテリケース1の組立工程と含む。
【0034】
(1)枠状中空構造体10の製造
(1.1)梁状部材12_1~12_3の製造
アルミ圧延板を所定形状に剪断し、リベット用の孔rv、及び冷却モジュール40の2つの冷媒流通管47,47を通す2つの貫通孔14,14を開け、折り曲げて、断面形状が長さ方向で一定の梁状部材12_1~12_3を形成する。梁状部材12_1~12_3の剪断形状は略矩形で、リベット用の孔rvは円形で、折り曲げ線は直線なので、汎用の剪断型、汎用の孔打ち抜き型、及び曲げ型を用いたプレス機が使用できる。これにより、第1の梁状部材12_1と、第2の梁状部材12_2と、第3の梁状部材12_3と、を製造する(図4,7参照)。
(1.2)梁状構造体11の組立
断面視で、第1の梁状部材12_1の上に第2の梁状部材12_2を載置し、その上に第3の梁状部材12_3を被せ、互いにリベットRVで結合して、梁状構造体11を形成する(図8参照)。尚、リベットRVは、例えば、アルミ製のブラインドリベットで、手動のリベッター工具で取付けられる。
(1.3)枠状中空構造体10の組立
梁状構造体11を4本枠状に配置し、その隅部をLアングル材13を介して結合し、枠状中空構造体10を形成する。各梁状構造体11と各Lアングル材13との結合も、リベットRV(図示省略)で行う。各梁状構造体11の両端に露出している中空構造の開口部を公知の方法で封止する(図1,4参照)。
【0035】
(2)内箱20の製造
アルミ圧延板を所定形状に剪断し、リベット用の孔rvを開け、折り曲げて、内箱20を形成する(図5参照)。この内箱20の剪断形状も、折り返し部分21を含めて幅を有する略十字型で、リベットRV用の孔rvは円形で、折り曲げ線は直線なので、汎用の剪断型、汎用の孔打ち抜き型、及び曲げ型を用いたプレス機が使用できる。
隣接する側面23同士が当接して形成される4つの稜線部分24には、溶接又は公知の隙間防止処理が施される。
【0036】
(3)下側中空構造体30の製造
アルミ圧延板を所定形状に剪断し、リベット用の孔rvを開けて、底板31を形成する(図3参照)。
また、アルミ圧延板を剪断し、リベット用の孔rvを開け、折り曲げて外側リブ32及び内部リブ33を形成する(図3参照)。
この底板31、外側リブ32及び内部リブ33の剪断形状も矩形で、リベット用の孔rvは円形で、折り曲げ線は直線なので、汎用の剪断型、汎用の孔打ち抜き型、及び曲げ型を用いたプレス機が使用できる。
次いで、外側リブ32及び内部リブ33をリベットRV(図示省略)により底板31に固定する。
【0037】
(4)冷却モジュール40の製造
アルミ圧延板を所定形状に剪断し、リベット用の孔(図示省略)を開け、さらに所定の金型により冷媒用流路44及びシール用溝45を凹設して、本体板41を形成する(図9,10参照)。
また、アルミ圧延板を剪断し、リベット用の孔(図示省略)、冷媒流通孔46,46を開けて流路蓋42を形成する。この冷媒流通孔46,46に接続する冷媒流通管47,47をそれぞれ溶接する。
シール剤43として、シリコーン樹脂等をシール用溝45に配置し、本体板41の上面(冷媒用流路44及びシール用溝45が凹設された面)に流路蓋42を被せ、接着剤で両者を接着すると共に、リベットRV(図示省略)でも接合する。
【0038】
(5)仕切り板の製造
アルミ圧延板を剪断し、リベット用の孔rvを開け、折り曲げて部材51a,51bを製作し、これらを組み合わせて縦方向仕切り板51を形成する。さらに、アルミ圧延板を剪断し、リベット用の孔rvを開け、折り曲げて部材52a,52b,52cを製作し、これらを組み合わせて各横方向仕切り板52を形成する(図3参照)。
この縦方向仕切り板51と横方向仕切り板52の剪断形状も矩形で、リベット用の孔rvは円形で、折り曲げ線は直線なので、汎用の剪断型、汎用の孔打ち抜き型、及び曲げ型を用いたプレス機が使用できる。
次いで、縦方向仕切り板51と各横方向仕切り板52をリベットRV(図示省略)により内箱20の底板部22に固定する。
【0039】
(6)電動車用バッテリケースの組立
枠状中空構造体10の内側に内箱20を嵌め込んで、折り返し部分21を貫通するリベットRVで接続し(図8参照)、内箱20の下側に冷却モジュール40をリベットRVで(図示省略)接続する。このとき、冷却モジュール40の冷媒流通管47,47を、枠状中空構造体10の1つの梁状構造体11に設けられた2つの貫通孔14,14(図4)を通って上側に露出させる(図1参照)。
さらに、冷却モジュール40の下側に下側中空構造体30をリベットRV(図示省略)で接続することにより、本実施形態の電動車用バッテリケース1が形成される。
【0040】
本実施形態の製造方法によれば、上記のように、梁状部材12_1~12_3、内箱20、下側中空構造体30、仕切り板50の各部材等が、汎用のプレス型を用いるプレス装置によって製造可能なので、設計変更に対しても新たに金型を作成する必要が無く、柔軟に対応できる。また、極力溶接による接合工程を省いてリベットRVによる接合を採用したので、高温に起因する形状変化を低減することができる。
【0041】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。例えば、溶接の熱による部材の形状変化が問題ない場合は、リベットによる接合の代わりに溶接を採用してもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 電動車用バッテリケース
10 枠状中空構造体
11 梁状構造体
12_1 第1の梁状部材
12_2 第2の梁状部材
12_3 第3の梁状部材
13 Lアングル材
14 貫通孔
20 内箱
21 折り返し部分
22 底板部
23 側面
24 稜線部分
30 下側中空構造体
31 底板
32 外側リブ
33 内部リブ
40 冷却モジュール
41 本体板
42 流路蓋
43 シール剤
44 冷媒用流路
45 シール用溝
46 冷媒流通孔
47 冷媒流通管
50 仕切り板
51 縦方向仕切り板
51a,51b 部材
52 横方向仕切り板
52a,52b,52c 部材
60 二次電池モジュール
rv リベット用孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10