(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064521
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】作業ブース
(51)【国際特許分類】
E04H 1/12 20060101AFI20240507BHJP
【FI】
E04H1/12 302Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173165
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000561
【氏名又は名称】株式会社オカムラ
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(72)【発明者】
【氏名】水口 正夫
(72)【発明者】
【氏名】須賀 政晴
(57)【要約】
【課題】設置コストの高騰を抑制しつつ、照度の低い視認環境下であっても作業空間内の環境を作業者の意図に応じて適切に制御することができる作業ブースを提供する。
【解決手段】作業ブースは、ブース本体10と、椅子16と、環境操作機器と、状態検知部と、制御装置22と、を備えている。ブース本体10は、内部に作業空間14が設けられる。椅子16は、ブース本体10の作業空間14に設置され、作業者が着座可能とされている。環境操作機器は、作業空間14の環境を操作可能とされている。状態検知部は、椅子16の状態を検知する。制御装置22は、状態検知部で検知された椅子16の状態情報に基づいて環境操作機器を制御する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に作業空間が設けられるブース本体と、
前記作業空間に設置され、作業者が着座可能な椅子と、
前記作業空間の環境を操作可能な環境操作機器と、
前記椅子の状態を検知する状態検知部と、
前記状態検知部で検知された前記椅子の状態情報に基づいて前記環境操作機器を制御する制御装置と、
を備えていることを特徴とする作業ブース。
【請求項2】
前記制御装置は、前記環境操作機器を作業者が作業に集中し易い環境に制御する集中モードと、前記環境操作機器を作業者がリラックスし易い環境に制御するリラックスモードを持つことを特徴とする請求項1に記載の作業ブース。
【請求項3】
前記環境操作機器は、表示装置、照明装置、音響装置、香り発生装置、空調装置の少なくとも一つであることを特徴とする請求項1または2に記載の作業ブース。
【請求項4】
前記椅子は、作業者の着座する座が鉛直軸線回りに回転可能とされ、
前記状態検知部は、前記座の前記鉛直軸線回りの回転位置を検知する回転検知装置であることを特徴とする請求項1または2に記載の作業ブース。
【請求項5】
前記椅子は、前記座を支持する脚部が前記作業空間内の床面の一定位置に設置されていることを特徴とする請求項4に記載の作業ブース。
【請求項6】
前記椅子は、前後に傾動可能な背凭れを有し、
前記状態検知部は、前記背凭れの傾動位置を検知する傾動検知装置であることを特徴とする請求項1または2に記載の作業ブース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業空間が内部に設けられた作業ブースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
執務や会議、映像視聴等の意識の集中を要する作業の効率を高めるためには、意識を集中させる集中状態と、心身をリラックスさせるリラックス状態の切換えを適切に行うことが重要であることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
意識を集中させる集中状態とリラックス状態とを意図的に切り換える手段として、作業空間内の人の挙動に応じて周囲の環境(例えば、映像環境や音響環境)をリラックスモードと集中モードに適宜切り換えることが考えられる。この場合、作業空間内の人の挙動に応じて映像環境や音響環境等を自動的に切り換えることができれば、煩雑な人による環境の切換え操作を無くすことができる。
【0004】
また、人の意図を把握するための手段として、監視カメラによって人の顔を撮影し、撮影した画像データを基にして人の目の動き等を判断するものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-49145号公報
【特許文献2】特開2018-169481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
作業者が作業を行う作業ブースにおいて、映像環境や音響環境等の作業空間内の環境を作業者の挙動に応じて自動的に切り換えることが検討されている。この場合、特許文献2に記載される技術のように、監視カメラによって作業者の顔を撮影し、その撮影データを基にして作業者の意図(集中状態からリラックス状態に移行する意図や、逆にリラック状態から集中状態に移行する意図)を判断することが有効である。
【0007】
しかし、この場合、作業者を撮影するための監視カメラや、撮影データを画像処理するための装置が必要となり、作業ブースの設置コストが増大してしまう。
また、監視カメラによって作業者の顔を撮影する場合、作業ブース内の照度が充分でないと、作業者の挙動(例えば、目の動き)を明確に判別することが難しい。このため、この点の改善が望まれている。
【0008】
そこで本発明は、設置コストの高騰を抑制しつつ、照度の低い視認環境下であっても作業空間内の環境を作業者の意図に応じて適切に制御することができる作業ブースを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る作業ブースは、上記課題を解決するために、以下の構成を採用した。
即ち、本発明に係る作業ブースは、内部に作業空間が設けられるブース本体と、前記作業空間に設置され、作業者が着座可能な椅子と、前記作業空間の環境を操作可能な環境操作機器と、前記椅子の状態を検知する状態検知部と、前記状態検知部で検知された前記椅子の状態情報に基づいて前記環境操作機器を制御する制御装置と、を備えていることを特徴とする。
【0010】
この場合、作業者による椅子の使用状況が状態検知部によって検出される。例えば、椅子の向きや背凭れの傾動状態等が状態検知部によって検知される。制御装置は、状態検知部から椅子の状態情報を受け、作業者の意思に応じた環境が得られるように環境操作機器を制御する。
【0011】
前記制御装置は、前記環境操作機器を作業者が作業に集中し易い環境に制御する集中モードと、前記環境操作機器を作業者がリラックスし易い環境に制御するリラックスモードを持つことが望ましい。
【0012】
この場合、作業者が集中状態で椅子に着座しているときには、制御装置は環境操作機器を集中モードで制御し、作業者がリラックス状態で椅子に着座しているときには、制御装置は環境操作機器をリラックスモードで制御することができる。
【0013】
前記環境操作機器は、表示装置、照明装置、音響装置、香り発生装置、空調装置の少なくとも一つである。
【0014】
この場合、作業者が使用する椅子の状態(挙動)に応じて、表示装置、照明装置、音響装置、香り発生装置、空調装置の少なくとも一つが制御される。このため、例えば、作業者がリラックス状態で椅子に着座しているときには、上記の少なくとも一つの装置をリラックスモードに切り換え、作業者が集中状態で椅子に着座しているときには、上記の少なくとも一つの装置を集中モードに切り換えることができる。
なお、上記の複数の装置を同時に制御して複合的に作動させる場合には、作業空間内の環境をよりリラックス状態や集中状態にすることができる。
【0015】
前記椅子は、作業者の着座する座が鉛直軸線回りに回転可能とされ、前記状態検知部は、前記座の前記鉛直軸線回りの回転位置を検知する回転検知装置であっても良い。
【0016】
この場合、例えば、椅子に着座した作業者が、デスク装置やプレゼンデータの表示部のある方向(以下、「作業方向」と称する。)を向いている場合には、そのことを制御装置が回転検知装置の検知情報を基にして判断することができる。また、椅子に着座した作業者が座の向きを変え、作業方向と異なる方向を向いてリラックスしている場合には、そのことを制御装置が回転検知装置の検知情報を基にして判断することができる。したがって、本構成を採用した場合には、回転検知装置の検知情報を基にして、作業者のリラック状態への移行や集中状態への移行を制御装置が正確に判断し、その制御装置が作業空間内の環境を適切に制御することができる。
【0017】
前記椅子は、前記座を支持する脚部が前記作業空間内の床面の一定位置に設置されることが望ましい。
【0018】
この場合、椅子の座が作業空間内の床面上の一定位置で回転することになるため、椅子が床面上を自由に動く場合に比較して、椅子に着座した作業者の向きを簡単な構成によって容易に、かつ、正確に検知することができる。
【0019】
前記椅子は、前後に傾動可能な背凭れを有し、前記状態検知部は、前記背凭れの傾動位置を検知する傾動検知装置であっても良い。
【0020】
この場合、例えば、傾動検知装置によって検知される背凭れの傾動状況を基にして、作業者がリラックス状態と集中状態のいずれの状態であるかを制御装置が判断することができる。したがって、本構成を採用した場合には、傾動検知装置の検知情報を基にして、作業者のリラック状態への移行や集中状態への移行を制御装置が正確に判断し、その制御装置が作業空間内の環境を適切に制御することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る作業ブースは、作業空間内の作業者の意図を椅子の状態(挙動)を基にして制御装置が判断するものであるため、照度の低い視認環境下であっても簡単な構成によって作業者の意図を把握することができる。したがって、本発明に係る作業ブースを採用した場合には、設置コストの高騰を抑制しつつ、照度の低い視認環境下であっても作業空間内の環境を作業者の意図に応じて適切に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】実施形態の作業ブースの周壁一部を切除した側面図である。
【
図3】実施形態の作業ブースの周壁の一部を切除して内部を示す斜視図である。
【
図4】実施形態の作業ブースの周壁の一部を切除して内部を示す別の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態の作業ブース1の斜視図である。
作業ブース1は、平面視が略長円形状のブース本体10を備えている。ブース本体10は、底壁11a、天井壁11b、及び、周壁11cを有する主壁部11を備えている。主壁部11の周壁11cの一部には、正面視が略矩形状の出入口12が形成されている。出入口12は、周壁11cのうちの平面視が直線状の平坦な面に形成されている。ブース本体10は、出入口12を開閉する開閉扉13を備えている。開閉扉13は、出入口12を開くときに、周壁11cの壁内(外装壁と内装壁の間)に進入可能とされている。開閉扉13は、例えば、上下方向と直交する方向に屈曲可能な蛇腹状の板状構造体によって構成されている。ただし、開閉扉13の構成はこれに限定されない。開閉扉13は、例えば、ヒンジ構造によって出入口12を開閉できるものであっても良い。
【0024】
以下では説明の便宜上、作業ブース1の外側から出入口12に向かって右側を「前」と称し、出入口12に向かって左側を「後」と称する。各図面の適所には、作業ブース1の鉛直上方を指す矢印UPと、作業ブース1の前方を指す矢印FRが記されている。
図2は、ブース本体10の出入口12(
図1参照)のある側の周壁11cの一部を切除した側面図である。また、
図3,
図4は、ブース本体10の出入口12(
図1参照)のある側の周壁11cの一部を切除した斜視図である。
図3は、ブース本体10の内部の前方領域を後方側から見た斜視図であり、
図4は、ブース本体10の内部の後方領域を前方側から見た斜視図である。
【0025】
ブース本体10の内部は、作業者が執務やオンライン会議等の各種の作業を行うことができる作業空間14とされている。作業空間14の床面15の略中央には、作業者が着座可能な椅子16が設置されている。
図2に示すように、椅子16は、作業者の臀部及び腿部を下方から支持する座17と、座17に着座した作業者の背部を支持する背凭れ18と、座17を下方から支持する脚部19と、を備えている。脚部19は、床面15上に回転可能に配置された平面視が円形状の支持板20上に設置されている。支持板20は、鉛直方向に沿う軸線(以下「鉛直軸線a1」と称する。)回りに回転可能とされている。したがって、支持板20上に設置された椅子16の座17は、鉛直軸線a1回りに回転可能とされている。また、椅子16の脚部19は、作業空間14内の床面15の一定位置に支持板20を介して設置されているものと言える。
【0026】
また、椅子16には、支持板20の回転位置(椅子16の回転位置)をロックする図示しないロック機構と、ロック機構によるロックを解除する図示しない解除レバーが設けられている。作業者が椅子16(支持板20)の回転位置を変更する場合には、解除レバーによってロック機構によるロックを解除し、その状態で椅子16(支持板20)の回転位置を所望の回転位置に変更する。本実施形態では、作業者が椅子16(支持板20)の回転位置を変更する場合には、作業者が自分の力で(手動で)回転調整する構成とされている。しかし、支持板20を回転動作させるモータを設置し、モータの動力によって椅子16(支持板20)の回転位置を調整できるようにしても良い。
【0027】
椅子16の背凭れ18は、座17の後端部に設けられた枢軸23に傾動調整可能に支持されている。背凭れ18は、図示しない傾動調整機構により、座17に対して任意の傾動角度に角度調整可能とされている。背凭れ18は、枢軸23の軸線a2回りに回動可能とされている。本実施形態では、背凭れ18は手動で傾動調整する構造とされているが、背凭れ18はモータの動力によって傾動調整できるようにしても良い。
なお、詳細な図示は省略されているが、椅子16には、座17の高さを調整するための機構や、座17の前後位置を調整するための機構が設けられている。また、椅子16は、図示するように座17の上面が鉛直上方を向く使用時姿勢と、座17が前方を向くように椅子16全体が起立する不使用時姿勢とに切り換えられるようにしても良い。この場合、椅子16を不使用時姿勢にすることにより、作業者が起立姿勢のまま執務等の作業を行い易くなる。
【0028】
支持板20の下方には、
図2に示すように、椅子16の座17(支持板20)の鉛直軸線a1回りの回転位置を検出するための回転検知装置21が設けられている。回転検知装置21としては、例えば、ロータリエンコーダ等を用いることができる。ただし、回転検知装置21はロータリエンコーダに限定されるものではなく、座17の回転位置を検知できるものであれば種々の形態のものを採用することができる。回転検知装置21で検知した座17の回転位置情報は、ブース本体10の適宜の位置に設置された制御装置22に入力される。制御装置22は、後に詳述するように作業空間14内の各種の機器を制御する。
【0029】
また、椅子16の枢軸23の近傍部には、背凭れ18の傾動位置(傾動角度)を検知するための傾動検知装置24が設置されている。傾動検知装置24は、例えば、ポテンショメータ等を用いることができる。ただし、傾動検知装置24はポテンショメータに限定されるものではなく、背凭れ18の傾動位置を検知できるものであれば種々の形態のものを採用することができる。傾動検知装置24で検知した背凭れ18の傾動位置情報は、前述した制御装置22に入力される。
本実施形態では、座17の鉛直軸線a1回りの回転位置を検知する回転検知装置21と、背凭れ18の傾動位置を検知する傾動検知装置24が椅子16の状態を検知する状態検知部を構成している。
【0030】
作業空間14内の椅子16の前方位置には、作業者が事務作業やキーボード操作等を行うためのデスク装置25が設置されている。本実施形態では、デスク装置25は、作業空間14の前方の壁面26fに固定されている。ただし、デスク装置25の天板部は、図示しないアクチュエータを介して床面15上に昇降調整可能に設置しても良い。
【0031】
作業空間14の天井27の略中央部には、略円板状のベースブロック28を介して天井照明29(照明装置)が設置されている。ベースブロック28には、作業空間14内の前後や側方の壁面26f,26r,26sに映像や画像、文字等を投影可能なプロジェクタ30(表示装置)が装備されている。また、作業空間14内の周囲の壁面26s,26f,26rの上辺部と天井27との境界部と、周囲の壁面26s,26f,26rの下辺部と床面15との境界部には、アンビエント照明31U,31L(照明装置)が設置されている。
さらに、作業空間14内の適宜位置には、アンプやスピーカ等から成る音響装置32と、香り発生装置33と、空調装置34が設置されている。
【0032】
本実施形態では、上述の天井照明29(照明装置)、プロジェクタ30(表示装置)、アンビエント照明31U,31L(照明装置)、音響装置32、香り発生装置33,空調装置34が作業空間14の環境を操作可能な環境操作機器を構成している。これらの環境操作機器は制御装置22によって制御される。制御装置22は、作業者による直接的なスイッチ操作も含む各種の入力信号を受けつけて上記の各環境操作機器を制御するが、少なくとも以下の制御を実行可能とされている。
【0033】
即ち、制御装置22は、椅子16の座17の回転位置を検知する回転検知装置21と、背凭れ18の傾動位置を検知する傾動検知装置24から椅子16の状態情報を受け取り、これらの状態情報に基づいて作業者の状態を判断する。具体的には、例えば、椅子16の座17が前方側に向いていない場合(前方側の所定の回動範囲内にない場合)や、背凭れ18の傾動角度が所定角度以上に後方に傾斜している場合には、作業者がリラックス状態にあるものと判断し、その他の状態の場合には、作業者が集中状態であるものと判断する。
【0034】
そして、制御装置22は、作業者が集中状態であるものと判断した場合には、天井照明29(照明装置)、プロジェクタ30(表示装置)、アンビエント照明31U,31L(照明装置)、音響装置32、香り発生装置33,空調装置34の少なくとも一つを作業に適した集中モードに切り換える。また、制御装置22は、作業者がリラックス状態であるものと判断した場合には、天井照明29(照明装置)、プロジェクタ30(表示装置)、アンビエント照明31U,31L(照明装置)、音響装置32、香り発生装置33,空調装置34の少なくとも一つを作業者がリラックスできるリラックスモードに切り換える。
【0035】
天井照明29とアンビエント照明31U,31Lは、集中モードでは、例えば、天井照明29のみを点灯させてアンビエント照明31U,31Lを消灯し、リラックスモードでは、例えば、アンビエント照明31U,31Lのみを点灯させて天井照明29を消灯するようにしても良い。ただし、集中モードとリラックスモードでの天井照明29やアンビエント照明31U,31Lの制御はこれに限定されない。例えば、プロジェクタ30でプレゼン用のデータ等を壁面26f,26sに映しているときには、集中モードであっても天井照明29を消灯するようにしても良い。つまり、集中モードやリラックスモードの内容は、制御装置22によって制御する他の機器との組み合わせや作業内容等によって変更するようにしても良い。また、天井照明29やアンビエント照明31U,31Lは、モードに応じて照度や色温度を変更するようにしても良い。
【0036】
プロジェクタ30(表示装置)は、集中モードでは、
図3に示すように、作業空間14の前方や側方の壁面26f,26sにプレゼン用のデータを映し出し、リラックスモードでは、
図4に示すように、作業空間14の後方や側方の壁面26r,26sに作業者がリラックスできる自然風景等を映し出すようにしても良い。ただし、集中モードとリラックスモードでのプロジェクタ30の制御はこれに限定されない。例えば、集中モードではプロジェクタ30の作動を停止し、リラックスモードでは作業者がリラックスできる映像を全壁面26f,26s,26r、若しくは、任意の壁面に映し出すようにしても良い。
なお、本実施形態では、表示装置の一例としてプロジェクタ30を挙げているが、表示装置はこれに限定されない。表示装置は、デスク装置25上等に載置するディスプレイ装置や、壁面に設置する壁面ディスプレイ等であっても良い。
【0037】
音響装置32は、集中モードでは無音状態にし、リラックスモードでは、作業者がリラックスできる環境音やBGM等を鳴らすようにしても良い。ただし、集中モードとリラックスモードでの音響装置32の制御はこれに限定されない。例えば、集中モードでも音響装置32から環境音やBGM等を、音量を小さくして鳴らすようにしても良い。
【0038】
香り発生装置33は、集中モードでは香りの発生を停止し、リラックスモードでは、作業者の好みに応じた芳香を発するようにしても良い。ただし、集中モードとリラックスモードでの香り発生装置33の制御はこれに限定されない。例えば、集中モードとリラックスモードで異なる芳香を発しても良く、芳香の強さを変えるようにしても良い。また、香り発生装置33は、プロジェクタ30による映像表示や音響装置32の発する環境音やBGMに応じて芳香を変えるようにしても良い。
【0039】
空調装置34は、集中モードでは、通常の温度設定で通常風量で運転を行い、リラックスモードでは、集中モードよりも温度を下げ、かつ、風流を減少させて運転を行うようにしても良い。ただし、集中モードとリラックスモードでの空調装置34の制御はこれに限定されない。例えば、リラックスモードでは室内換気を行うようにしても良い。
【0040】
以上のように、本実施形態の制御装置22は、上記各種の環境操作機器を作業者が作業に集中し易い環境に制御する集中モードと、上記各種の環境操作機器を作業者がリラックスし易い環境に制御するリラックスモードを持つ。
【0041】
<実施形態の効果>
本実施形態の作業ブース1は、椅子16の状態を検知する状態検知部(回転検知装置21、傾動検知装置24)と、状態検知部で検知された椅子16の状態情報に基づいて環境操作機器(プロジェクタ30、天井照明29、アンビエント照明31U,31L、音響装置32、香り発生装置33、空調装置34)を制御する制御装置22と、を備えている。このため、本実施形態の作業ブース1では、作業空間14内の作業者の意図を椅子16の状態(挙動)を基にして制御装置22が判断し、制御装置22がその判断に基づいて環境操作機器(プロジェクタ30、天井照明29、アンビエント照明31U,31L、音響装置32、香り発生装置33、空調装置34)を制御することができる。したがって、照度の低い視認環境下であっても簡単な構成によって作業者の意図を正確に把握することができる。
よって、本実施形態の作業ブース1を採用した場合には、設置コストの高騰を抑制しつつ、照度の低い視認環境下であっても作業空間14内の環境を作業者の意図に応じて適切に制御することができる。
【0042】
また、本実施形態の作業ブース1は、制御装置22が、環境操作機器を作業者が作業に集中し易い環境に制御する集中モードと、環境操作機器を作業者がリラックスし易い環境に制御するリラックスモードを持つ。このため、制御装置22は、作業者が集中状態で椅子16に着座しているときには環境操作機器を集中モードで制御し、作業者がリラックス状態で椅子16に着座しているときには環境操作機器をリラックスモードで制御することができる。
【0043】
また、本実施形態の作業ブース1は、制御装置22によって制御される環境操作機器が、表示装置(プロジェクタ30)、照明装置(天井照明29、及び、アンビエント照明31U,31L)、音響装置32、香り発生装置33、空調装置34の少なくとも一つである。このため、例えば、作業者がリラックス状態で椅子16に着座しているときには、上記の少なくとも一つの装置をリラックスモードに切り換え、作業者が集中状態で椅子16に着座しているときには、上記の少なくとも一つの装置を集中モードに切り換えることができる。
【0044】
特に、本実施形態の作業ブース1では、複数の環境操作機器(プロジェクタ30、天井照明29、アンビエント照明31U,31L、音響装置32、香り発生装置33、空調装置34)を同時に制御して複合的に作動させることができる。このため、作業空間14内の環境をよりリラックス状態や集中状態にすることができる。
【0045】
また、本実施形態の作業ブース1は、椅子16の座17が鉛直軸線a1回りに回転可能とされるとともに、座17の鉛直軸線a1回りの回転位置を検知する回転検知装置21が設けられ、回転検知装置21が椅子16の状態を検知する状態検知部とされている。このため、例えば、椅子16に着座して作業を行う作業者が、デスク装置やプレゼンデータの表示部のある前方を向いている場合には、そのことを制御装置22が回転検知装置21の検知情報を基にして正確に判断することができる。また、椅子16に着座した作業者が、リラックスのために座17の向きを変えて作業方向と異なる方向を向いている場合には、そのことを制御装置22が回転検知装置21の検知情報を基にして正確に判断することができる。
したがって、本実施形態の作業ブース1を採用した場合には、回転検知装置21の検知情報を基にして、作業者のリラック状態への移行や集中状態への移行を制御装置22が正確に判断し、その制御装置22が作業空間14内の環境を適切に制御することができる。
【0046】
さらに、本実施形態の作業ブース1の場合、椅子16の脚部19が作業空間14内の床面15の一定位置に設置されている。このため、椅子16の座17は、常に作業空間14内の一定位置において回転することになる。したがって、本構成を採用した場合、椅子16が床面15上を自由に動く場合に比較して、椅子16に着座した作業者の向きを簡単な構成によって容易に、かつ、正確に検知することができる。
【0047】
また、本実施形態の作業ブース1は、椅子16の背凭れ18が前後に傾動可能とされるとともに、背凭れ18の傾動位置を検知する傾動検知装置24が設けられ、傾動検知装置24が椅子16の状態を検知する状態検知部とされている。このため、傾動検知装置24によって検知される背凭れ18の傾動状況を基にして、作業者がリラックス状態と集中状態のいずれの状態であるかを制御装置22が正確に判断することができる。
したがって、本実施形態の作業ブース1を採用した場合には、傾動検知装置24の検知情報を基にして、作業者のリラック状態への移行や集中状態への移行を制御装置22が正確に判断し、その制御装置22が作業空間14内の環境を適切に制御することができる。
【0048】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
例えば、上記の実施形態では、椅子16の脚部19が支持板20に固定され、その支持板20が床面15上に回転可能に設置されているが、椅子16の座17を回転させるための手段はこれに限定されない。例えば、脚部19を床面15に固定設置し、座17を脚柱に対して回転可能な構成としても良い。
また、脚部19の下端を支持板20や床面15に傾動可能に連結し、脚部19の傾動角度を変更することによって座17(座面)の高さと前後位置を調整できるようにしても良い。この場合、脚部19の傾動角度を検知する検知装置を設け、その検知装置を、椅子16の座面の位置を検知する状態検知部としても良い。
【0049】
また、上記の実施形態では、座17の鉛直軸線a1回りの回転位置を検知する回転検知装置21と、背凭れ18の傾動位置を検知する傾動検知装置24が椅子16の状態を検知する状態検知部を構成している。しかし、状態検知部はこれらに限定されるものではなく、作業者の挙動に連動する椅子16の状態を検知し得るものであれば他の形態のものであっても良い。例えば、椅子16のヘッドレストの傾動状態や前後位置を検知する検知装置を設け、その検知装置を状態検知部としても良い。
【0050】
椅子16の状態を検知する状態検知部としては、上記のものの他に、例えば、以下のようなものも採用することができる。
(a)肘掛けの高さや、肘掛けの前後位置、左右位置、肘載せ荷重等を検知する検知装置。
(b)座17の高さや前後位置、床面に対する座面の傾斜角度等を検知する検知装置。
(c)背凭れ18の前面に配置されるランバーサポートの前後位置や上下位置を検知する検知装置。
(d)背凭れ18の反発強度(反発強度調整用のレバーやダイヤルの調整位置)を検知する検知装置。
【0051】
さらに、上記の実施形態では、プロジェクタ30、天井照明29、アンビエント照明31U,31L、音響装置32、香り発生装置33、及び、空調装置34が環境操作機器を構成しているが、環境操作機器はこれらに限定されない。環境操作機器は、作業ブース1の作業空間14内の環境を操作し得るものであれば、その他の種々のものを採用することができる。
【0052】
また、上記の実施形態では、椅子16の状態情報に基づいて制御装置22が環境操作機器を制御しているが、制御装置22は、椅子16の状態以外の情報に基づいて作業者に休憩(リラックス)や作業の開始(再開)を促す情報を発するようにしても良い。この場合、制御装置22は、作業者に休憩(リラックス)や作業の開始(再開)を促した後に、作業者による確認操作が行われたときに、環境操作機器の運転モードを変更するようにしても良い。
例えば、タイマーによって集中状態やリラックス状態の継続時間を管理し、タイマーによる時間管理情報に基づいて作業者に休憩(リラックス)や作業の開始(再開)を促す情報を発するようにしても良い。
【0053】
具体的には、例えば、集中状態が一定時間を超えたときに、プロジェクタ30によって「リラックスしませんか?」等の表示を壁面に映したり、音響装置32からリラックス状態への移行を促す音声を流したりするようにしても良い。また、リラックス状態の時間が一定時間を超えたときに、プロジェクタ30によって「仕事に戻りませんか?」等の表示を壁面に映したり、音響装置32から集中状態への移行を促す音声を流したりするようにしても良い。
【0054】
この例では、タイマーによる時間管理情報に基づいて制御装置22が作業者に休憩(リラックス)や作業の開始(再開)を促す情報を発するようにしているが、タイマーによる時間管理情報に代えて、作業ブースの利用終了時間までの残り時間や時刻、メールやメッセージ、電話等の受信件数等を用いるようにしても良い。
【0055】
ここで述べた作業ブースは、以下の構成を備えている。
作業ブースは、
内部に作業空間が設けられるブース本体と、
前記作業空間の環境を操作可能な環境操作機器と、
環境切換情報が入力される情報入力部を有し、前記情報入力部に入力された環境切換情報に基づいて、作業者に集中状態とリラックス状態の切り換えを促す情報を発し、かつ作業者による確認の後に前記環境操作機器の運転モードを切り換える制御装置と、を備えている。
【0056】
上記の構成を備えた作業ブースは、タイマーによる時間管理情報や、利用制限時間情報、時刻、メールやメッセージ、電話等の受信件数の情報等に基づいて作業者に集中状態とリラックス状態の切り換えを促す情報を発し、その後に環境操作機器の運転モードを適切に切り換えることができる。このため、作業ブース内で作業を行う作業者の集中とリラックスを適切なタイミングで切り換え、作業の効率をより高めることができる。
【符号の説明】
【0057】
1…作業ブース
10…ブース本体
14…作業空間
15…床面
16…椅子
17…座
18…背凭れ
19…脚部
21…回転検知装置(状態検知部)
22…制御装置
24…傾動検知装置(状態検知部)
29…天井照明(照明装置,環境操作機器)
30…プロジェクタ(表示装置,環境操作機器)
31…アビエント照明(表示装置,環境操作機器)
32…音響装置(環境操作機器)
33…香り発生装置(環境操作機器)
34…空調装置
a1…鉛直軸線