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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064529
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】酸化染毛剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/49 20060101AFI20240507BHJP
   A61Q 5/10 20060101ALI20240507BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20240507BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20240507BHJP
   A61K 8/24 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
A61K8/49
A61Q5/10
A61K8/41
A61K8/19
A61K8/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173179
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000113274
【氏名又は名称】ホーユー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】チャーブッパー アラヤー
(72)【発明者】
【氏名】山田 静香
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB011
4C083AB012
4C083AB032
4C083AB082
4C083AB352
4C083AB412
4C083AC012
4C083AC072
4C083AC152
4C083AC172
4C083AC182
4C083AC472
4C083AC532
4C083AC541
4C083AC542
4C083AC552
4C083AC692
4C083AC851
4C083AC852
4C083AC892
4C083AD042
4C083AD642
4C083CC36
4C083DD06
4C083DD31
4C083EE07
4C083EE26
(57)【要約】
【課題】 6-メトキシ-2-メチルアミノ-3-アミノピリジン又はその塩を酸化染料とし、アルカリ剤としてモノエタノールアミン等を使用する酸化染毛剤における均一な染毛性を確保する。
【解決手段】 下記(A)、(B)成分を含有し、使用時にpH9以下である酸化染毛剤組成物。
(A)6-メトキシ-2-メチルアミノ-3-アミノピリジン又はその塩。
(B)炭素数が1~6の範囲内であるアルカノールアミン。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)、(B)成分を含有し、使用時にpH9以下である酸化染毛剤組成物。
(A)6-メトキシ-2-メチルアミノ-3-アミノピリジン又はその塩。
(B)炭素数が1~6の範囲内であるアルカノールアミン。
【請求項2】
更に下記(C)成分を含有する請求項1に記載の酸化染毛剤組成物。
(C)無機酸から選ばれる1種以上。
【請求項3】
前記(B)成分の含有量が使用時に0.2~6質量%の範囲内である請求項1又は請求項2に記載の酸化染毛剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は酸化染毛剤組成物に関し、より具体的には、6-メトキシ-2-メチルアミノ-3-アミノピリジン又はその塩を酸化染料として用い、染めムラのない良好な染毛性を示す酸化染毛剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
染毛効果の持続性に優れた酸化染料を用いて頭髪等の毛髪を染毛する酸化染毛剤が知られている。酸化染毛剤は、典型的には、クリーム状、ジェル状、溶液状、使用時泡状等の液状剤型の2剤式であって、その第1剤は酸化染料とアルカリ剤を含有し、第2剤は酸化剤を含有する。
【0003】
周知のように、酸化染毛剤の作用機序としては、まずアルカリ剤の作用によって毛髪が膨潤し(毛髪表面のキューティクルが開き)、高分子物質ではない酸化染料が毛髪内部へ浸透する。それとほぼ同時に、酸化剤の作用により酸化染料の重合反応が起こり、毛髪内部へ浸透した状態で、所定の色彩を示す酸化染料重合体が生成される。
【0004】
なお、酸化染毛剤を粉末剤として構成する場合には、酸化染料及びアルカリ剤と酸化剤とを異なる剤とする必要はなく、使用時に水等と混合する1剤式の製剤とすることができる。また、酸化染料を空気中の酸素によって酸化させる空気酸化式の酸化染毛剤とすることもできる。従って本発明の酸化染毛剤組成物では、2剤式等の複数剤式とすることは必須ではなく、酸化剤を含有することも必須ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-158483号公報
【特許文献2】特表2008-521925号公報
【特許文献3】特開2019-55944号公報
【0006】
上記の特許文献1は、2剤式酸化染毛剤等と混合して使用できる、直接染料を主成分とする液状染毛剤組成物を開示する。そして、直接染料として6-メトキシ-2-メチルアミノ-3-アミノピリジンの二塩酸塩であるHC青7を含有できること(0046)、アルカリ剤としてモノエタノールアミン(以下、「MEA」とも言う)を含有できること(0041)、組成物のpHは、染毛性向上のためには7.5以上が好ましく、皮膚刺激抑制のためには12以下が好ましいこと(0050)、そのようなpHの調整のために無機酸、有機酸を使用できること(0051)等を開示する。また、使用可能な酸化染料前駆体としては1, 5-ナフタレンジオール、1-ヒドロキシエチル-4, 5-ジアミノピラゾール、レゾルシノールが包含されることも記載する(0059)。
【0007】
上記の特許文献2は酸化染毛剤である毛髪染色組成物を開示するが、段落0008には「(毛髪の)根元から先端までの均一な色付着・・・均一かつ色むらのない被覆」という記載が見られる。段落0094に示す表1には、酸化染料として、2, 7-ナフタレンジオール、1-ヒドロキシエチル-4, 5-ジアミノピラゾールサルフェート及びレゾルシノールの3種が包含されており、続く表2~4においてはこれら3種の酸化染料の内の1種又は2種を含有する製剤例が示されている。この毛髪染色組成物の好適なpHは約9.5~約7.5である(段落0036)。
【0008】
上記の特許文献3が開示する液状染毛剤組成物は、HC青7等の直接染料やMEA等のアルカリ剤を含有する点、pH調整剤として無機酸、有機酸を使用できる点、好適なpHが7.5~12である点等において前記特許文献1の液状染毛剤組成物と類似した開示内容である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
6-メトキシ-2-メチルアミノ-3-アミノピリジン又はその塩は一般的には直接染料と認識されることが多いが、酸化剤の共存下では酸化重合する酸化染料でもある。そして、その酸化重合体の色あいが好ましいものであることから、本願発明者は6-メトキシ-2-メチルアミノ-3-アミノピリジン又はその塩を酸化染料として用いる好ましい酸化染毛剤の開発を目指した。
【0010】
一方、酸化染毛剤の必須成分であるアルカリ剤としてアンモニアが代表的であるが、アンモニアには不快な刺激臭を伴うという大きな欠点がある。アンモニアに替え、又は一定割合のアンモニアと共に、モノエタノールアミン等のアルカノールアミンを使用すると、アンモニアの刺激臭を有効に回避又は抑制することができる。
【0011】
ところが、6-メトキシ-2-メチルアミノ-3-アミノピリジン又はその塩を酸化染料とし、アンモニア刺激臭の低減又は防止のためにアルカリ剤としてモノエタノールアミン等を使用する酸化染毛剤の開発過程において、このような酸化染毛剤では均一な染毛性が損なわれ染めムラを生じるほか、染めの濃さが劣る、等の予想外の課題に直面した。
【0012】
通常は直接染料と認識される6-メトキシ-2-メチルアミノ-3-アミノピリジン又はその塩を、酸化剤の存在下で酸化染料として使用し得ることは、新規な知見ではない。しかし、これを酸化染料として使用するにあたり、アルカリ剤としてモノエタノールアミン等の特定のアルカノールアミンを併用した試験例が過去に少なく、その場合に顕著な染めムラが発現することは、全く知られていなかった技術的課題である。そこで本発明は、この課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(第1発明の構成)
上記課題を解決するための本願第1発明は、下記(A)、(B)成分を含有し、使用時にpH9以下である、酸化染毛剤組成物である。
(A)6-メトキシ-2-メチルアミノ-3-アミノピリジン又はその塩。
(B)炭素数が1~6の範囲内であるアルカノールアミン。
【0014】
なお、本願明細書において「使用時」とは、2剤式等の複数剤式であって、毛髪への適用時に当該複数剤を混合する酸化染毛剤組成物においては、「当該複数剤の混合時」を意味し、1剤式の粉末剤であって毛髪への適用時に水等の液状媒体と混合する酸化染毛剤組成物においては、「当該液状媒体との混合時」を意味する。酸化染毛剤組成物における各種成分の含有量記載に特にことわりがない場合、使用時の含有量である。
【0015】
また、(B)成分に関して「炭素数が1~6の範囲内であるアルカノールアミン」とは、アルカノール部分が直鎖状であるか分岐鎖状であるかを問わないし、アルカノール部分が単一であるか複数であるかも問わない。
【0016】
(第2発明の構成)
上記課題を解決するための本願第2発明では、前記第1発明に係る酸化染毛剤組成物が更に下記(C)成分を含有する。
(C)無機酸から選ばれる1種以上。
【0017】
(第3発明の構成)
上記課題を解決するための本願第3発明では、前記第1発明又は第2発明に係る酸化染毛剤組成物において、(B)成分の含有量が使用時に0.2~6質量%の範囲内である。
【発明の効果】
【0018】
(第1発明の効果)
第1発明の酸化染毛剤組成物は、酸化染料として(A)6-メトキシ-2-メチルアミノ-3-アミノピリジン又はその塩を配合し、アルカリ剤として(B)炭素数が1~6の範囲内であるアルカノールアミンを用いるにも関わらず、均一な染毛性が保たれ、染めムラのない良好な染毛が可能である。
【0019】
(第2発明の効果)
第2発明においては、酸化染毛剤組成物が更に無機酸から選ばれる1種以上である(C)成分を含有するため、上記した第1発明の効果が特に有効に発揮される。
【0020】
(第3発明の効果)
酸化染毛剤組成物における(B)成分の含有量が、使用時に0.2質量%以上であると、染めムラのない良好な染毛及び染まりの濃さの点でより有利であり、また使用時に6質量%以下であると、染めムラのない良好な染毛及び毛髪のダメージ抑制の点でより有利である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明の実施形態を、その最良の形態を含めて説明する。本発明の技術的範囲は、以下の実施形態によって限定されない。以下において、本発明の酸化染毛剤組成物を単に「酸化染毛剤」という。
【0022】
〔酸化染毛剤〕
本願発明の酸化染毛剤は、少なくとも酸化染料として(A)6-メトキシ-2-メチルアミノ-3-アミノピリジン又はその塩を含有し、またアルカリ剤として(B)炭素数が1~6の範囲内であるアルカノールアミンを含有する。更に使用時にpH9以下であり、好ましくは(C)無機酸を含有する。酸化染毛剤が空気酸化型である場合を除き、酸化剤も含有する必要がある。
【0023】
酸化染毛剤を構成する各剤の剤型は限定されないが、水を基材とする液状の剤型が好ましい。各剤の内の一部の剤を粉末状又は顆粒状とすることもできる。液状の剤型としては、限定はされないが、可溶化物(溶液状)、乳化液状、ゲル状、クリーム状等が例示される。特に乳化液状、クリーム状が好ましい。
【0024】
酸化染毛剤は、通常、酸化染料とアルカリ剤を含有する第1剤、酸化剤を含有する第2剤からなる2剤式とされ、あるいは、これらの剤に任意の組成を持つ付加的な剤を加えた複数剤式に構成される。1剤式の粉末製剤として構成することもできる。酸化染毛剤が上記の2剤式である場合、(A)、(B)の各成分は、通常、第1剤に含有され、(C)成分は第1剤又は第2剤に含有される。
【0025】
酸化染毛剤はエアゾール缶に充填して噴射剤の作用により吐出するエアゾール式として構成してもよい。2剤式の酸化染毛剤であれば、例えば、1対のエアゾール缶から噴射剤の作用により酸化染毛剤の第1剤と第2剤がそれぞれ吐出される2連缶式のエアゾール容器とすることができる。更に、噴射剤を充填した1個のエアゾール缶の内部に第1剤と第2剤とをそれぞれ充填した2個の吐出用ステム付きの内袋を収容し、これらの内袋から第1剤と第2剤が常に同一の吐出圧下に吐出されるようにした分離充填同一加圧型の二重構造エアゾール容器等も用いられる。
【0026】
酸化染毛剤は使用時にpH9以下であるが、より好ましくはpH7.5~9の範囲内、特に好ましくはpH8~9の範囲内である。酸化染毛剤が使用時にpH9を超えると、 ムラ染まりという不具合がある。酸化染毛剤の使用時のpHの下限値は特に限定されないが、良好な染毛という点からはpH7.5以上であることが好ましい。
【0027】
〔酸化染毛剤の主要成分〕
((A)成分)
(A)成分である6-メトキシ-2-メチルアミノ-3-アミノピリジン又はその塩は本願発明の酸化染料であって、その二塩酸塩が「HC青7」とも呼ばれる。本願発明の酸化染毛剤における(A)成分の含有量は特に限定されないが、使用時において例えば0.1~2質量%の範囲内、特に0.1~1.5質量%の範囲内とすることが好ましい。6-メトキシ-2-メチルアミノ-3-アミノピリジンの塩としては、上記の二塩酸塩が例示される。
【0028】
((A)成分以外の酸化染料)
酸化染毛剤においては、(A)成分と共に、(A)成分以外の酸化染料も含有することができる。(A)成分以外の酸化染料としては、染料中間体であるp-フェニレンジアミン、p-トルエンジアミン、p-アミノフェノール、2,2'-[(4-アミノフェニル)イミノ]ビスエタノール及びこれらの塩の他、N-フェニル-p-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルアミン、o-アミノフェノール、p-メチルアミノフェノール、2-ヒドロキシエチル-p-フェニレンジアミン、o-クロル-p-フェニレンジアミン、4-アミノ-m-クレゾール、2-アミノ-4-ヒドロキシエチルアミノアニソール、2,4-ジアミノフェノール及びこれらの塩が例示される。
【0029】
(A)成分以外の酸化染料としては、上記の他に、カプラーである塩酸2,4-ジアミノフェノキシエタノール、α-ナフトール、2,6-ジアミノピリジン、5-アミノ-o-クレゾール、5-(2-ヒドロキシエチルアミノ)-2-メチルフェノール、m-アミノフェノール、カテコール、ピロガロール、フロログルシン、没食子酸、ハイドロキノン、m-フェニレンジアミン、トルエン-3,4-ジアミン、ジフェニルアミン、3,3’-イミノジフェニール、タンニン酸、及びこれらの塩が例示される。
【0030】
更に酸化染毛剤には、上記以外のカプラーとして、2, 7-ナフタレンジオール、1-ヒドロキシエチル-4, 5-ジアミノピラゾール硫酸塩及びレゾルシンから選ばれる1種以上を用いることもできる。
酸化染料として(A)6-メトキシ-2-メチルアミノ-3-アミノピリジン又はその塩を用い、アルカリ剤として(B)炭素数が1~6の範囲内であるアルカノールアミンを用いる酸化染毛剤において、酸化染料としてこれらのカプラーを併用すると、特に顕著な染めムラを生じることが分かった。
【0031】
しかし、上記のようにカプラーとして2, 7-ナフタレンジオール、1-ヒドロキシエチル-4, 5-ジアミノピラゾール硫酸塩及びレゾルシンから選ばれる1種以上を用いた場合でも、酸化染毛剤が使用時にpH9以下であり、更に好ましくは(C)成分を含有していると、染めムラのない良好な均一染毛性が維持される。
【0032】
((B)成分)
(B)成分である炭素数が1~6の範囲内であるアルカノールアミンはアルカリ剤であって、酸化染毛剤における使用時の好適な含有量は「第3発明の構成」の項で前記した通りであるが、より好適には、使用時に0.3~4.5質量%の範囲内である。
【0033】
(B)成分の代表的な例としてモノエタノールアミンを挙げることができるが、他にもモノプロパノールアミン、トリエタノールアミン等を例示することができる。
【0034】
酸化染毛剤においては、(B)成分以外のアルカリ剤も含有することができる。(B)成分以外のアルカリ剤として、アンモニア、(B)成分以外のアルカノールアミン、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸グアニジン、各種の炭酸水素塩、メタケイ酸塩、リン酸塩、塩基性アミノ酸、水酸化物等が例示される。
【0035】
((C)成分)
(C)成分である無機酸としては塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ケイ酸、ホウ酸等が例示されるが、特にリン酸が好ましい。
【0036】
酸化染毛剤における(C)酸の含有量は限定されないが、使用時において酸化染毛剤をpH7.5~9とする量が好ましく、pH8~9とする量が、より好ましい。
【0037】
((D)成分)
(D)成分は、2, 7-ナフタレンジオール、1-ヒドロキシエチル-4, 5-ジアミノピラゾール硫酸塩及びレゾルシンから選ばれる一種以上の酸化染料である。
【0038】
酸化染毛剤が、酸化染料とアルカリ剤を含有する第1剤と、酸化剤を含有する第2剤からなる2剤式である場合、(D)成分は第1剤に配合される。
【0039】
これらの酸化染料の使用は、アルカリ剤として(B)炭素数が1~6の範囲内であるアルカノールアミンを用い、酸化染料として(A)6-メトキシ-2-メチルアミノ-3-アミノピリジン又はその塩を用いる酸化染毛剤において、特に顕著な染めムラを生じさせる。従って、これらの染めムラを抑制するという本願発明の技術的効果が特に好ましく発揮される。
【0040】
(酸化剤)
本願発明の酸化染毛剤は、空気酸化式である場合を除き、酸化剤の含有を必要とする。酸化剤としては、過酸化水素、過酸化尿素、過酸化メラミン、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム、過ホウ酸ナトリウム、過ホウ酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、過酸化マグネシウム、過酸化バリウム、過酸化カルシウム、過酸化ストロンチウム、硫酸塩の過酸化水素付加物、リン酸塩の過酸化水素付加物等が例示される。
【0041】
酸化染毛剤が2剤式である場合には、酸化剤は第2剤(即ち、アルカリ剤や酸化染料が配合されていない方の剤)に配合される。酸化染毛剤における酸化剤の含有量は限定されず、必要に応じて適宜に設定すれば良いが、例えば、使用時に0.5~6質量%、より好ましくは1~4質量%とすることができる。
【0042】
〔酸化染毛剤の任意成分〕
(直接染料)
酸化染毛剤は、酸化染料の他に、(A)成分を除く各種の直接染料を含有することができる。これらの直接染料としては、酸性染料、塩基性染料、天然染料、ニトロ染料、HC染料、分散染料等が挙げられる。
【0043】
酸性染料としては赤色2号、赤色102号、黄色4号、黄色5号、黄色202号の(1)、だいだい色205号、緑色3号、緑色204号、紫色401号、青色1号、青色2号、かっ色201号、黒色401号等が例示され、塩基性染料としてはBasic Blue 3、Basic Blue 6、Basic Brown 4、Basic Green 1、Basic Green 4、Basic Orange 1、Basic Red 1、Basic Red 22、Basic Red 118、Basic Violet 1、Basic Violet 3、Basic Violet 16、Basic Yellow 11、Basic Yellow 87等が例示される。
【0044】
また、天然染料としてはクチナシ色素、ウコン色素、アナトー色素、銅クロロフィリンナトリウム、パプリカ色素、ラック色素、ヘナ等が例示され、ニトロ染料としては4-ニトロ-o-フェニレンジアミン、2-ニトロ-p-フェニレンジアミン、ピクラミン酸、ピクリン酸等が例示され、HC染料としてはHC Blue No.2、HC Blue No.13、HC Orange No.1、HC Red No.1、HC Red No.14、HC Violet No.2、HC Yellow No.2、HC Yellow No.11、HC Yellow No.15等が例示され、分散染料としてはDisperse Black 9、Disperse Blue 1、Disperse Blue 3、Disperse Brown 4、Disperse Orange 3、Disperse Red 11、Disperse Red 17、Disperse Violet 1、Disperse Violet 15等が例示される。
【0045】
(界面活性剤)
酸化染毛剤は各種の界面活性剤を含有することができる。界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤及びカチオン界面活性剤が挙げられる。
【0046】
ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレン(以下、「POE」と略記する)セチルエーテル、POEステアリルエーテル、モノオレイン酸POEソルビタン、POEメチルグルコシド等が挙げられ、アニオン界面活性剤としては、アルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩等が挙げられ、両性界面活性剤としては、ラウラミドプロピルベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン等が挙げられ、カチオン界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム、アルコキシトリメチルアンモニウム、ジアルキルジメチルアンモニウムや、これらの塩が例示される。
【0047】
(油性成分)
酸化染毛剤は各種の油性成分を含有することができる。油性成分としては、高級アルコール、ロウ類、炭化水素、植物油、動物油、エステル油、脂肪酸、シリコーン類等が挙げられる。
【0048】
高級アルコールとしてはラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール(セタノール)、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール等が例示され、ロウ類としては、ミツロウ、ラノリン、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、ホホバ油等が例示され、炭化水素としてはパラフィン、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン、軽質流動イソパラフィン、流動パラフィン等が例示され、植物油としてはアボカド油、オリーブ油、ヒマワリ油、サフラワー油、ツバキ油、大豆油、ナタネ油、コメヌカ油、マカデミアナッツ油、ヒマシ油等が例示され、動物油としてはミンク油、いわし油、たら肝油、羊脂、牛脂、豚脂、卵黄油等が例示される。
【0049】
また、エステル油としては、アジピン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、オクタン酸セチル等が例示され、脂肪酸としてはラウリン酸、ミリスチン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸等が例示され、シリコーン類としてはジメチルポリシロキサン(INCI名:ジメチコン)、ヒドロキシ末端基を有するジメチルポリシロキサン(INCI名:ジメチコノール)、メチルフェニルポリシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、アルキル変性シリコーン等が例示される。
【0050】
(高分子化合物)
酸化染毛剤は、各種の高分子化合物を含有することができる。高分子化合物としては、カチオン化セルロース誘導体、カチオン性澱粉、カチオン化グアーガム誘導体、ジアリル4級アンモニウム塩/アクリルアミド共重合物、4級化ポリビニルピロリドン誘導体等のカチオン性高分子、キサンタンガム、カラギーナン、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、アラビアガム等のアニオン性高分子、グアーガム、寒天、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルデキストラン、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸アミド等の非イオン性高分子が挙げられる。
【0051】
(その他の任意成分)
酸化染毛剤は、上記の各種成分の他、酢酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸などの有機酸、アスコルビン酸、無水亜硫酸ナトリウム等の酸化防止剤、フェノキシエタノール、安息香酸ナトリウム等の防腐剤、エタノール等の有機溶剤、ソルビトール、マルトース等の糖類、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸三ナトリウム二水塩、ヒドロキシエタンジホスホン酸四ナトリウム液等のキレート剤、塩化ナトリウム等の無機塩、育毛成分、植物抽出物、生薬抽出物、アミノ酸・ペプチド、尿素、ビタミン類、香料、紫外線吸収剤等を含有することができる。有機酸のなかでは特に乳酸が好ましい。
【実施例0052】
以下に本発明の実施例を、対応する参考例、比較例と共に説明する。本発明の技術的範囲は、これらの実施例、参考例、比較例によって限定されない。
【0053】
〔酸化染毛剤の調製〕
末尾の表1及び表2に示す組成の参考例1~14、表3及び表4に示す組成の実施例1~14及び表5に示す組成の比較例1~7に係る酸化染毛剤の第1剤を常法に従ってクリーム状に調製した。表1~表5中に示す各成分の含有量の数値は質量%表記である。表1~表5中、「ベース」とは第1剤用のベース液を示し、この第1剤用ベース液の組成を表6に示す。ベースは第1剤中の70質量%を占めるので、表6の各成分の含有量も合計値が「70」となる計算で表記している。
【0054】
一方、酸化染毛剤のクリーム状第2剤の組成を表7に示す。上記酸化染毛剤の第1剤とこの第2剤を1:1の質量比で混合して使用した。従って、表1~表5、表7中に示す各成分については、表に示す含有量の数値の半量が使用時含有量である。表6中に示す各成分については、表に示す含有量の数値の2分の1量が使用時含有量である。更に表中の「28%アンモニア水」、「70%モノエタノールアミン」及び「20% NaOH」も質量%表記であるが、これらの成分の第1剤中の正味の含有量は、表1~5に示す含有量数値のそれぞれ28%、70%及び20%である。
【0055】
各参考例、実施例及び比較例が含有する成分中、本発明の(A)、(B)、(C)、(D)の各成分であるものには、その成分名の左側欄外にそれぞれ「(A)」、「(B)」、「(C)」、「(D)」と表記した。
【0056】
〔酸化染毛剤の評価〕
各参考例、実施例、比較例に係る酸化染毛剤の第1剤を、上記した第2剤と1:1の質量比で混合し、評価用の酸化染毛剤塗布液を調製した。これらの塗布液を、それぞれ評価用の白毛毛束1gに対して刷毛を用いて均一に塗布し、塗布操作後30分間放置して染毛処理を行った。
【0057】
染毛処理した各参考例、実施例、比較例に係る毛束について、水洗およびシャンプー洗浄により染毛剤塗布液を洗い落し、水分をタオルで拭き取り、ドライヤーで乾燥した。この乾燥後の毛束について、訓練を受けた専門のパネリスト10名が「染毛力(濃さ)」及び「染めムラ」を各参考例、実施例、比較例ごとに評価した。
【0058】
〔染毛力(濃さ)の評価基準〕
「染まりが濃い」場合には評価点5、「染まりがやや濃い」場合には評価点4、「染まりが濃くはないが、薄くもない」場合には評価点3、「染まりが幾分薄い」場合には評価点2、「染まりが薄い」場合には評価点1とした。
【0059】
パネリスト10名の評価点の平均値における小数点以下を四捨五入処理により整数値化して、その整数値を表1~5における各参考例、実施例、比較例について「染毛力(濃さ)」の欄に表記した。
【0060】
〔染めムラの評価基準〕
「染めムラが全くない」場合には評価点5、「染めムラが非常に少ない」場合には評価点4、「染めムラが少ない」場合には評価点3、「染めムラが幾分目立つ」場合には評価点2、「染めムラが目立つ」場合には評価点1とした。
【0061】
パネリスト10名の評価点の平均値における小数点以下を四捨五入処理により整数値化して、その整数値を表1~5における各参考例、実施例、比較例について「染めムラ」の欄に表記した。
【0062】
【表1】


【0063】
【表2】
【0064】
【表3】
【0065】
【表4】
【0066】
【表5】
【0067】
【表6】
【0068】
【表7】
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明によれば、6-メトキシ-2-メチルアミノ-3-アミノピリジン又はその塩を酸化染料とし、アルカリ剤として炭素数が1~6の範囲内であるアルカノールアミンを使用する酸化染毛剤において、染めムラのない良好な染毛性を確保できる。