(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006453
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】構内自動運転システム
(51)【国際特許分類】
G05D 1/43 20240101AFI20240110BHJP
【FI】
G05D1/02 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107324
(22)【出願日】2022-07-01
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】598116831
【氏名又は名称】株式会社ボルテックスセイグン
(71)【出願人】
【識別番号】522265121
【氏名又は名称】太田 直哉
(74)【代理人】
【識別番号】100092808
【弁理士】
【氏名又は名称】羽鳥 亘
(74)【代理人】
【識別番号】100140981
【弁理士】
【氏名又は名称】柿原 希望
(72)【発明者】
【氏名】太田 直哉
(72)【発明者】
【氏名】三木 利一
(72)【発明者】
【氏名】今井 俊昭
(72)【発明者】
【氏名】新井 規之
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301AA01
5H301BB07
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301DD06
5H301DD17
5H301EE08
5H301EE18
5H301FF06
5H301FF16
5H301GG08
5H301LL03
5H301LL12
(57)【要約】
【課題】無人で自動運転する貨物自動車を用いて予め限定されたエリア内で荷物の輸送を行う構内自動運転システムを提供する。
【解決手段】この構内自動運転システムは、敷地内での荷物の輸送を無人の自走貨物自動車を用いた自動運転により行う。このため、貨物自動車の運転手が不要となり、作業人員の省人化を図ることができる。また、この構内自動運転システムは、自走貨物自動車に対する目的地の入力操作などを現場の作業者がタブレット端末を用いて自身で行う。このため、自動運転システムの中央制御室が不要となり、これに要する人員、機材、スペースの削減を図ることができる。尚、この構内自動運転システムは予め限定された私有地等にある自動運転車道でのみ自動運転を行い、公道での自動運転は行わない。このため、法律の制限を受けず完全無人の自動運転が可能となる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め限定されたエリア内で一方通行による自動運転が可能に設定された自動運転車道と、
荷物を積載可能で前記自動運転車道を自動運転により走行する自走貨物自動車と、
前記自走貨物自動車の走行ルートを管理する運行プログラムと、
前記自走貨物自動車の前記自動運転車道上の目的地を前記運行プログラムに入力するための操作端末と、を有する構内自動運転システムにおいて、
前記操作端末が携帯型のタブレット端末であることを特徴とする構内自動運転システム。
【請求項2】
タブレット端末が、自動運転車道を地図表示するとともに、前記地図表示上に前記自走貨物自動車の位置と状態とを表示することを特徴とする請求項1記載の構内自動運転システム。
【請求項3】
自走貨物自動車が複数台であり、タブレット端末が全ての自走貨物自動車の位置と状態とを地図表示上に表示することを特徴とする請求項2記載の構内自動運転システム。
【請求項4】
自走貨物自動車が複数台あるとともに、運行プログラムが衝突防止プログラムを備え、
前記衝突防止プログラムは前記自走貨物自動車同士の衝突が生じないよう走行ルートの設定を制限することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の構内自動運転システム。
【請求項5】
自動運転車道上で自走貨物自動車が停車する点を停止点Snと設定し、少なくとも前記停止点Snの前後の自動運転車道上の点と、自動運転車道が分岐する点と、自動運転車道が合流する点に節点Nnを設定するとともに、これら節点Nnの間をそれぞれ有向辺Enとして設定し、
衝突防止プログラムが、自走貨物自動車の位置する有向辺と、前記自走貨物自動車の位置する有向辺の後方に繋がる有向辺と、前記自走貨物自動車の走行ルートを構成する有向辺と、前記走行ルートに合流する有向辺と、を前記自走貨物自動車の占有辺として設定し、前記占有辺は他の自走貨物自動車の走行ルートに設定させないことを特徴とする請求項4記載の構内自動運転システム。
【請求項6】
自動運転車道上に自走貨物自動車の待機場所としての待機点Stnをさらに有し、
運行プログラムは、自走貨物自動車の目的地までの走行ルートが設定できず、且つ、前記走行ルート上に移動可能な待機点Stnが存在する場合、前記待機点Stnを中間目的地として設定し、前記自走貨物自動車を前記中間目的地まで自動運転させることを特徴とする請求項5記載の構内自動運転システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予め限定されたエリア内でトラック等の貨物自動車を自動運転して、エリア内での荷物の移動を行う構内自動運転システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢化対策や人的負担の軽減、道路交通の安全性向上等のため自動車等に対する自動運転システムの研究と開発が各方面で進められている。そして、例えば下記[特許文献1]に示すように、自動運転システムに関する様々な発明が開示されている。また、バス路線等の予め決められたルートを走行する完全無人化の自動運転システムに関する研究開発も進められている。しかしながら、完全無人化した自動運転システムによる公道での走行は、主に安全性の面から実用化には未だ時間を要する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、多数の倉庫を有する輸送拠点や広大な敷地を有する巨大工場、工業プラント等では、トラックを用いて資材や荷物等を敷地内の建屋間で輸送し、フォークリフトを用いて荷物の積み降ろしを行うことも多い。しかしながら、近年、日本の労働者人口は減少傾向にあり、特に輸送業界においては人手不足が問題となっており、輸送業務の効率化と省力化、省人化が求められている。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、無人で自動運転する貨物自動車を用いて予め限定されたエリア内で荷物の輸送を行う構内自動運転システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
(1)予め限定されたエリアA内で一方通行による自動運転が可能に設定された自動運転車道10と、荷物を積載可能で前記自動運転車道10を自動運転により走行する自走貨物自動車30と、前記自走貨物自動車30の走行ルートを管理する運行プログラムと、前記自走貨物自動車30の前記自動運転車道10上の目的地を前記運行プログラムに入力するための操作端末と、を有する構内自動運転システムにおいて、
前記操作端末が携帯型のタブレット端末20であることを特徴とする構内自動運転システム100を提供することにより、上記課題を解決する。
(2)タブレット端末20が、自動運転車道10を地図表示するとともに、前記地図表示上に前記自走貨物自動車30の位置と状態とを表示することを特徴とする上記(1)記載の構内自動運転システム100を提供することにより、上記課題を解決する。
(3)自走貨物自動車30a、30bが複数台であり、タブレット端末20が全ての自走貨物自動車30a、30bの位置と状態とを地図表示上に表示することを特徴とする上記(2)記載の構内自動運転システム100を提供することにより、上記課題を解決する。
(4)自走貨物自動車30a、30bが複数台あるとともに、運行プログラムが衝突防止プログラムを備え、
前記衝突防止プログラムは前記自走貨物自動車30a、30b同士の衝突が生じないよう走行ルートの設定を制限することを特徴とする上記(1)乃至上記(3)のいずれかに記載の構内自動運転システム100を提供することにより、上記課題を解決する。
(5)自動運転車道10上で自走貨物自動車30a、30bが停車する点を停止点Snと設定し、少なくとも前記停止点Snの前後の自動運転車道10上の点と、自動運転車道10が分岐する点と、自動運転車道10が合流する点に節点Nnを設定するとともに、これら節点Nnの間をそれぞれ有向辺Enとして設定し、
衝突防止プログラムが、自走貨物自動車30a(30b)の位置する有向辺Enと、前記自走貨物自動車30a(30b)の位置する有向辺Enの後方に繋がる有向辺Enと、前記自走貨物自動車30a(30b)の走行ルートを構成する有向辺Enと、前記走行ルートに合流する有向辺Enと、を前記自走貨物自動車30a(30b)の占有辺として設定し、前記占有辺は他の自走貨物自動車30b(30a)の走行ルートに設定させないことを特徴とする上記(4)記載の構内自動運転システム100を提供することにより、上記課題を解決する。
(6)自動運転車道10上に自走貨物自動車30a、30bの待機場所としての待機点Stnをさらに有し、
運行プログラムは、自走貨物自動車30a、30bの目的地までの走行ルートが設定できず、且つ、前記走行ルート上に移動可能な待機点Stnが存在する場合、前記待機点Stnを中間目的地として設定し、前記自走貨物自動車30a、30bを前記中間目的地まで自動運転させることを特徴とする上記(5)記載の構内自動運転システム100を提供することにより、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る構内自動運転システムは、敷地内での荷物の輸送を無人の自走貨物自動車を用いた自動運転により行う。このため、貨物自動車の運転手が不要となり、作業人員の省人化を図ることができる。また、本発明に係る構内自動運転システムは、自走貨物自動車に対する目的地の入力操作などを現場の作業者がタブレット端末を用いて自身で行う。このため、自動運転システムの中央制御室が不要となり、これに要する人員、機材、スペースの削減を図ることができる。尚、本発明に係る構内自動運転システムは予め限定された私有地等にある自動運転車道でのみ自動運転を行い、公道での自動運転は行わない。このため、法律の制限を受けず完全無人の自動運転が可能となる。
また、衝突防止プログラムを有する本発明に係る構内自動運転システムは、自走貨物自動車毎に占有辺を設定し、この占有辺を他の自走貨物自動車の走行ルートに設定しないことで、各車の走行ルートの交差を防止し、簡単なアルゴリズムで自走貨物自動車同士の衝突を回避することができる。また、全ての自走貨物自動車が互いの走行ルートによって動けなくなるデッドロックを回避することができる。
またさらに、自動運転車道に待機点Stnを設ける構成では、他の自走貨物自動車によって最終目的地までの走行ルートの設定が許可されない場合に、可能であれば途中にある待機点Stnまで自走貨物自動車を自動運転により移動させる。これにより、自走貨物自動車を可能な限り最終目的地に近づけることができ、構内自動運転システムの効率的な運用と自走貨物自動車の待機時間の短縮とを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】自走貨物自動車が1台の場合の本発明に係る構内自動運転システムを説明する概略構成図である。
【
図2】自走貨物自動車が複数台の場合の本発明に係る構内自動運転システムを説明する概略構成図である。
【
図3】自走貨物自動車が複数台の場合の本発明に係る構内自動運転システムのフローチャートの一例である。
【
図4】1つの建築物に複数台の自走貨物自動車を停車させる場合の自動運転車道を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る構内自動運転システム100の実施の形態について図面に基づいて説明する。尚、本発明に係る構内自動運転システム100の自走貨物自動車30は、自動運転車道10上における自動運転時には運転手のいない完全自動運転により走行する。
【0010】
ここで、
図1、
図2は本発明に係る構内自動運転システム100の概略構成図である。先ず、本発明に係る構内自動運転システム100は、予め限定されたエリアA内で自動運転が可能に設定された自動運転車道10と、荷物を積載可能で自動運転車道10を自動運転により走行する自走貨物自動車30(30a、30b)と、この自走貨物自動車30の走行ルートを管理する運行プログラムと、作業者等がこの自走貨物自動車30の目的地を運行プログラムに入力するための操作端末と、を有している。尚、本発明では操作端末として、従来のように中央制御室に設置された固定型のものではなく、携帯型の特にタブレット端末20を用いることを特徴とする。
【0011】
また、自動運転車道10は基本的に企業等の私有地のエリアA内に設置され、全て一方通行のループ状に構築される。尚、文中における前方もしくは前との記載は自動運転車道10の進行方向の前方を意味し、後方もしくは後ろとの記載は自動運転車道10の進行方向から見て後方を意味するものとする。そして、自走貨物自動車10には、運行プログラム上において自走貨物自動車10が停車する停止点Snが設定される。尚、
図1、
図2ではS1~S5の5地点を停止点として設定している。この停止点Snは基本的に自走貨物自動車30が輸送する荷物の積み降ろしを行う地点であり、倉庫や資材置場、各種工場等の建築物12a~12eの搬入搬出口前などと対応している。また、自動運転車道10には運行プログラム上において、少なくとも自動運転車道10が分岐する点と、自動運転車道10が合流する点に節点Nnを設定する。尚、図中では停止点S1へ向かうルートとメインルートとの分岐点を節点N1とし、停止点S1からの合流点を節点N2とし、停止点S2へ向かうルートとの分岐点を節点N3とし、停止点S2からの合流点を節点N4とし、停止点S3、S4へ向かうルートとの分岐点を節点N5とし、停止点S3、S4からの合流点を節点N8として設定している。尚、
図2に示す自走貨物自動車30が複数台の場合の節点Nnと待機点Stnに関しては後に詳しく説明する。
【0012】
また、自走貨物自動車30がこれらの停止点Sn、節点Nn、待機点Stnを自動運転車道10上で識別する方法としては、例えばマークやビーコン、反射板等の目印を自動運転車道10の路面や近傍に設置して識別したり、GNSS(Global Navigation Satellite System:全地球航法衛星システム)やRTK-GNSSを用いた位置取得、LiDAR(light detection and ranging)等を用いた地図マッチング、もしくはこれらの手法の併用等、周知の技術を用いることが可能である。
【0013】
また、操作端末としてのタブレット端末20は自走貨物自動車30の荷物の積み降ろしを行うフォークリフト32等の運転者が基本的に所持し、積み降ろし作業の進捗状況もしくは作業の完了等に応じて適宜、次の目的地を入力する。尚、タブレット端末20と自走貨物自動車30との間の通信はインターネットやイントラネット、WiFi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)等の周知の無線技術によって直接もしくは間接的に行われる。
【0014】
次に、本発明に係る構内自動運転システム100の動作を自走貨物自動車30が1台の場合について
図1を用いて説明を行う。先ず、手動運転にて自走貨物自動車30を駐車場所等から自動運転車道10上に移動する。そして、自走貨物自動車30を手動運転から自動運転に切り替えて運転者は下車する。これにより、本発明に係る構内自動運転システム100が稼働し、自走貨物自動車30は自身の位置を認識して運行プログラムに送信する。尚、このときの自走貨物自動車30の状態は例えば自動運転稼働中・停車となる。ここで、自走貨物自動車30が節点N8に位置しているとする。
【0015】
次に、例えばフォークリフト32に乗車している作業者がタブレット端末20を用いて、停止点Snのうちから目的の停止点(ここでは、停止点S4とする)を選択して入力する。これにより、運行プログラムは自走貨物自動車30の位置(節点N8)から停止点S4までの走行ルートを検索して設定する。尚、自動運転車道10は前述の通り全て一方通行とされており、運行プログラムは自動運転車道10を逆走する走行ルートを設定することはない。よって、上記の場合、運行プログラムは節点N8→N1→N2→N3→N4→N5→停止点S4の走行ルートを選定する。そして、この走行ルートを自走貨物自動車30の走行ルートとして設定し、自走貨物自動車30に送信する。これにより、自走貨物自動車30の状態は自動運転稼働中・走行となり、運行プログラムによって設定された上記の走行ルートに沿って目的地である停止点S4まで自動運転する。また、作業者はフォークリフト32等に乗車して自走貨物自動車30と並走もしくは独自に走行して停止点S4に向かう。尚、自走貨物自動車30は周知の安全機構を備えており、例えば自動運転車道10上に障害物等が存在し走行に支障をきたす場合や、走行上の危険を検知した場合には緊急停車する。この緊急停車の解除は手動、遠隔操作等、周知の自動運転技術を用いて行うことができる。
【0016】
また、自走貨物自動車30は自動運転中に自身の位置情報を取得し随時運行プログラムに送信する。このとき、タブレット端末20のモニタには、自動運転車道10を地図表示するとともに、この地図表示上に自走貨物自動車30の位置と状態(自動運転稼働中・走行、自動運転稼働中・停車、緊急停車、自動運転非稼働、等)を表示することが好ましい。この構成では、作業者が自走貨物自動車30と並走しなくとも、自走貨物自動車30の位置と状態とをタブレット端末20上で視覚的に把握することができる。
【0017】
次に、自走貨物自動車30が目的地である停止点S4に到着すると、自走貨物自動車30の状態は自動運転稼働中・停車となる。次に、作業者は例えばフォークリフト32を用いて、建築物12dと自走貨物自動車30との間で必要な荷物の積み降ろし作業を行う。そして、この積み降ろし作業が完了すると、作業者はタブレット端末20を用いて次の目的地となる停止点Snを選択して入力する。これにより、運行プログラムは自走貨物自動車30の現在位置(停止点S4)から次の停止点Snまでの走行ルートを検索して設定する。そして、設定された走行ルートを自走貨物自動車30に送信する。これにより、自走貨物自動車30は自動運転稼働中・走行となり、運行プログラムによって設定された走行ルートに沿って自動運転を行い、次の目的地に向かって走行する。そして、これらの作業を繰り返すことで、エリアA内の建築物12a~12eの間での必要な荷物の輸送を行う。
【0018】
次に、自走貨物自動車30が複数台の場合の構内自動運転システム100の動作を説明する。尚、エリアA内を自動運転する自走貨物自動車30の台数には特に限定は無く、何台用いても良い。また、タブレット端末20の台数は1台であっても良いし、複数台であっても構わない。ただし、自走貨物自動車30の台数以下とすることが好ましく、特にフォークリフト32等による積み降ろし作業を行う作業者の人数分とすることが好ましい。この際、タブレット端末20の自動運転車道10の地図表示上には、全ての自走貨物自動車30の位置と状態とを表示することが好ましい。また、それぞれの自走貨物自動車30の目的地を表示することが好ましい。さらに、それぞれの自走貨物自動車30の走行ルートや後述の占有辺を表示するようにしても良い。これらの構成では、作業者は全ての自走貨物自動車30の位置と状態とを視覚的に把握することが可能となり、自走貨物自動車30の空き状況や自動運転車道10の混雑状態を把握して自走貨物自動車30の効率的な運用を行うことができる。尚、タブレット端末20(操作端末)が複数ある場合、基本的に全てのタブレット端末20から全ての自走貨物自動車30に対して目的地の入力を行うことが可能である。ただし、この場合、使用中の自走貨物自動車30に対して他の作業者からの目的地の入力がされないよう、ある程度の制限を組み込むことが好ましい。さらに、タブレット端末20を有する作業者同士が通信によって連絡し合い、自走貨物自動車30のさらなる効率的な運用を行うようにしても良い。尚、自走貨物自動車30が複数台の場合の本発明の運用方法の具体例としては、作業者一人に対して1台のタブレット端末20と2台の自走貨物自動車30を割り当て、一方の自走貨物自動車30に対する積み降ろし作業を行っている間に、他方の自走貨物自動車30を次の目的地まで自動運転にて移動させておくという方法が挙げられる。
【0019】
また、自走貨物自動車30が複数台の場合、構内自動運転システム100の運行プログラムは、自走貨物自動車30同士が衝突しないよう走行ルートの設定を制限する衝突防止プログラムを有する。また、自走貨物自動車30が複数台の場合には、自走貨物自動車30の効率的な運用を行うために、分岐点、合流点以外にも節点Nnの設置が必要となる。さらに、自走貨物自動車30が複数台の場合、運行プログラムは停止点Snに加えて、自動運転車道10上に待機点Stnを設けても良い。尚、待機点Stnは、自走貨物自動車30が一時的に停車していても良い自動運転車道10上の地点に設定することが好ましい。また、衝突防止プログラムは、これらの節点Nnの間をそれぞれ有向辺En(
図2中ではE1~E19)として設定する。
【0020】
ここで、自動運転車道10における節点Nnの設置と停止点Sn、待機点Stnの配置に関して
図2を用いて説明を行う。先ず、本発明に係る衝突防止プログラムは、自走貨物自動車30毎に占有辺を設定し、この占有辺には他の自走貨物自動車30の走行ルートを設定しないことで各車の走行ルートの交差を防ぎ、自走貨物自動車30同士の衝突を回避するものである。そして、自走貨物自動車30が存在する有向辺Enとその後方に繋がる有向辺Enは、常にこの自走貨物自動車30の占有辺とされる。
【0021】
よって、分岐点から分岐する有向辺En(以後、分岐辺とも記載する)に停止点Sn、待機点Stnが存在すると、この停止点Sn、待機点Stnに自走貨物自動車30が停車している間中、他の自走貨物自動車30が分岐点を通過する走行ルートを設定できず、自走貨物自動車30の待機時間が長くなる。また、本発明に係る衝突防止プログラムでは、合流点に合流する有向辺En(以後、合流辺とも記載する。)が占有辺に設定される頻度が高い。このため、合流辺に停止点Sn、待機点Stnを配置すると、他の自走貨物自動車30がこの合流辺の占有を解除するまで、この停止点Sn、待機点Stnへの走行ルートが設定できず、自走貨物自動車30の待機時間が長くなる。
【0022】
従って、これらの待機要因を除くため、
図2に示すように、停止点S1の前後に新たに節点N9、N10を設け、これにより生じる新たな有向辺E10に停止点S1を位置させる。また、停止点S2の前後に新たに節点N11、N12を設け、これにより生じる新たな有向辺E13に停止点S2を位置させる。また、停止点S3、S4に関しては、停止点S3の後方に節点N13を設け、停止点S4の前方に節点N16を新たに設ける。また、節点N5、N8間に位置する待機点St3の前後には新たに節点N6、N7を設け、これにより生じる新たな有向辺E6に待機点St3を位置させる。
【0023】
これにより、停止点S1、停止点S2、停止点S3、待機点St3に自走貨物自動車30が停車中の場合の占有辺は、それぞれ有向辺E10、E9、有向辺E13、E12、有向辺E16、E15、有向辺E6、E5となり、分岐点である節点N1、N3、N5に繋がる有向辺E8、E2、E4が上記の占有辺から外れることとなる。これにより、自走貨物自動車30の走行ルートが設定し易くなり、自走貨物自動車30の待機時間を短縮することができる。また、合流点N2、N4、N8に繋がる合流辺は有向辺E1、E11、有向辺E3、E14、有向辺E7、E19となり、停止点S1、停止点S2、停止点S4、待機点St3の存在する有向辺E10、E13、E18、E6から外れることとなる。これにより、自走貨物自動車30の走行ルートが設定し易くなり、自走貨物自動車30の待機時間を短縮することができる。尚、停止点S5及び、待機点St1、St2が位置する有向辺E8、E2、E4は、分岐辺にも合流辺にも該当しないため、新たな節点Nnの設置は必要ない。
【0024】
また、本発明の衝突防止プログラムでは、前述のように自走貨物自動車30の位置する有向辺Enと、その後方に繋がる有向辺Enとが常にその自走貨物自動車30の占有辺となる。従って、停止点Snもしくは待機点Stnを同一の有向辺Enもしくは隣接する有向辺Enに並べて設けると、前の停止点Sn(待機点Stn)に自走貨物自動車30が停車している間は、後ろの停止点Sn(待機点Stn)に他の自走貨物自動車30が進入できなくなる。このため、例えば停止点S3、S4の間に新たに節点N14、N15を設け、停止点S3の位置する有向辺E16と、停止点S4の位置する有向辺E18との間に新たに有向辺E17を設ける。この構成では、停止点S4に停車中の自走貨物自動車30の占有辺は有向辺E18、E17となり、停止点S3の存在する有向辺E16がこの占有辺から外れることとなる。このため、停止点S4に他の自走貨物自動車30が停車した状態でも、停止点S3に自走貨物自動車30を進入、停車させることが可能となり、構内自動運転システム100の効率的な運用と自走貨物自動車30の待機時間の短縮とを図ることができる。
【0025】
尚、
図2では、停止点S5がメインルート上に設定されているが、自走貨物自動車30が複数台の場合には、停止点Snは止むを得ない場合を除きメインルート上には設定せず、停止点S1、S2のように、ルートを分岐させて適宜節点Nnを設けて配置することが好ましい。この構成では、自走貨物自動車30の占有辺がメインルート上を塞ぐ期間を短縮し、より効率的な運用を行うことができる。
【0026】
次に、自走貨物自動車30が複数台で且つ自動運転車道10が待機点Stnを備えた場合の構内自動運転システム100及び運行プログラム、衝突防止プログラムの動作を
図2及び
図3のフローチャートを用いて説明する。尚、ここでは自走貨物自動車30が第1の自走貨物自動車30aと第2の自走貨物自動車30bの2台の例を用いて説明を行う。
【0027】
先ず、例えば手動運転にて第1の自走貨物自動車30a、第2の自走貨物自動車30bを駐車場所から自動運転車道10上に移動する。そして、第1の自走貨物自動車30a、第2の自走貨物自動車30bを手動運転から自動運転に切り替えて運転者は下車する。これにより、本発明に係る構内自動運転システム100が稼働する(ステップS100)。
【0028】
構内自動運転システム100が稼働すると、第1の自走貨物自動車30a、第2の自走貨物自動車30bは自身の位置をそれぞれ取得し、運行プログラムに送信する(ステップS102)。ここで、第1の自走貨物自動車30aが停止点S5に位置し、第2の自走貨物自動車30bが停止点S1に位置しているとする。尚、この時点では、第1の自走貨物自動車30a、第2の自走貨物自動車30bには目的地が設定されていないため、両車は自動運転稼働中・停車の状態にある。
【0029】
次に、衝突防止プログラムは受信した第1の自走貨物自動車30a、第2の自走貨物自動車30bの位置情報を取得して、自走貨物自動車30a、30bの位置する有向辺Enと、この有向辺Enの後方に繋がる有向辺Enとを、それぞれの自走貨物自動車30a、30bの占有辺とする。具体的には、第2の自走貨物自動車30bが位置する有向辺E10と、この有向辺E10の後方に繋がる有向辺E9とを第2の自走貨物自動車30bの占有辺とする。また、第1の自走貨物自動車30aが位置する有向辺E8と、この有向辺E8の後方に繋がる2つの有向辺E7及びE19とを第1の自走貨物自動車30aの占有辺とする(ステップS104)。尚、これ以外の有向辺Enは空の状態とする。
【0030】
ここで、作業者がタブレット端末20を用い第1の自走貨物自動車30aの目的地として停止点S4を入力する(ステップS106)。これにより、運行プログラムは走行ルートを検索し、節点N1→N2→N3→N4→N5→N13→N14→N15→停止点S4の走行ルートを選定する(ステップS108)。
【0031】
次に、衝突防止プログラムは、選定された走行ルートを構成する有向辺E1、E2、E3、E4、E15、E16、E17、E18を抽出する。また、衝突防止プログラムは、この走行ルートに合流するの合流辺の有向辺Enを抽出する。ここでは、節点N2、N4が合流点であるから、この節点N2、N4に合流する合流辺E11とE14とが抽出される。そして、抽出されたこれらの有向辺E1、E11、E2、E3、E14、E4、E15、E16、E17、E18をこの走行ルートの占有要求辺とする(ステップS110)。
【0032】
次に、衝突防止プログラムは、この占有要求辺(有向辺E1、E11、E2、E3、E14、E4、E15、E16、E17、E18)の全てが空の状態か否かを判定する(ステップS120)。ここで、第2の自走貨物自動車30bの占有辺は、有向辺E10、E9であるから、上記の占有要求辺は全て空の状態の場合にある(ステップS120:Yes)。この場合、衝突防止プログラムは運行プログラムに対しこの走行ルートの設定を許可する。これにより、運行プログラムは上記の走行ルートを第1の自走貨物自動車30aの走行ルートとして設定し送信する(ステップS122)。また、衝突防止プログラムは第1の自走貨物自動車30aの停車時の占有辺E8、E7、E19と上記の占有要求辺とを第1の自走貨物自動車30aの占有辺とする。これにより、第1の自走貨物自動車30aの占有辺は有向辺E8、E7、E19、E1、E11、E2、E3、E14、E4、E15、E16、E17、E18となる(ステップS124)。そして、第1の自走貨物自動車30aの状態は自動運転稼働中・走行となり、設定された走行ルートに沿って目的地である停止点S4まで自動運転する(ステップS126)。
【0033】
尚、自走貨物自動車30a、30bの位置情報は随時更新され、例えば、第1の自走貨物自動車30aが節点N1を通過すると、第1の自走貨物自動車30aの占有辺のうち最後尾にあたる有向辺E7、E19は第1の自走貨物自動車30aの占有辺から除外され、空の状態となる。このようにして、自走貨物自動車30a、30bが走行ルートに沿って自動運転し、節点Nnを通過するごとに、最後尾にあたる有向辺Enは占有辺から除外されて空の状態となり、走行時の自走貨物自動車30a、30bの占有辺は徐々に減少する。
【0034】
そして、第1の自走貨物自動車30aが目的地である停止点S4に到着すると自動運転稼働中・停車となり(ステップS128)、建築物12dとの間での必要な荷物の積み降ろし作業が行われる。そして、タブレット端末20による次の目的地の入力待ちとなる(ステップS140)。また、第1の自走貨物自動車30aを手動運転に切り替えるなどして、第1の自走貨物自動車30aに対する構内自動運転システム100をオフにすると(ステップS140:Yes)、第1の自走貨物自動車30aは自動運転非稼働の状態となり、第1の自走貨物自動車30aに対する自動運転制御は終了する(ステップS142)。
【0035】
また、第1の自走貨物自動車30aが有向辺E8を走行中に、停止点S1で自動運転稼働中・停車状態の第2の自走貨物自動車30bに対し、例えば目的地として停止点S2が入力されたとする(ステップS106)。これにより、運行プログラムは走行ルートを検索し、節点N10→N2→N3→N11→停止点S2の走行ルートを選定する(ステップS108)。
【0036】
次に、衝突防止プログラムは、選定された走行ルートを構成する有向辺E11、E2、E12、E13とこの走行ルートへの合流辺E1を抽出し、これらを占有要求辺とする(ステップS110)。次に、衝突防止プログラムは、上記の占有要求辺(有向辺E11、E1、E2、E12、E13)の全てが空の状態か否かを判定する(ステップS120)。ここで、有向辺E8を走行中の第1の自走貨物自動車30aの占有辺は、有向辺E7、E19、E8、E1、E2、E11、E3、E4、E14、E15、E16、E17、E18であるから、占有要求辺のうち有向辺E11、E2が第1の自走貨物自動車30aの占有辺であり、占有要求辺の全てが空の状態にはない(ステップS120:No)。この場合、衝突防止プログラムは運行プログラムに対しこの走行ルートの設定を許可しない。
【0037】
ここで、本例では走行ルートの設定が許可されない場合に、占有要求辺の全てが空の状態になるまで待機する構成と、途中に移動可能な待機点Stnがある場合にこの待機点Stnまで自走貨物自動車30を自動運転させる構成とを説明するが、この様な構成を設けずに、入力した目的地が他の自走貨物自動車30の走行ルートに重なるとして単純なエラーを発し、この目的地の入力を拒否するようにしても良い。
【0038】
そして、ステップS120において走行ルートの設定が不許可となった場合、運行プログラムは選定した第2の自走貨物自動車30bの走行ルート中に待機点Stnが存在するか否かを確認する(ステップS200)。尚、自動運転車道10上に待機点Stnを設けない構成では、ステップS200から後述のステップS240までを設けず、ステップS120から直接、下記のステップS242に移行して、他の自走貨物自動車30の占有辺に変化が生じるまで待機する。
【0039】
そして、ステップS200において、この走行ルート中に待機点Stnが存在しない場合(ステップS200:No)、ステップS242に移行して他の自走貨物自動車30(第1の自走貨物自動車30a)が移動して占有辺に変化が生じるまで待機する。そして、他の自走貨物自動車30(第1の自走貨物自動車30a)が移動して占有辺に変化が生じた場合(ステップS242:Yes)、ステップS120に移行して、再度、停止点S2までの占有要求辺の全てが空の状態か否かを判定する。そして、全てが空の状態であれば、ステップS122以降の動作を行って、第2の自走貨物自動車30bを目的地である停止点S2まで自動運転させる。
【0040】
また、ステップS200において、選定した走行ルート中に待機点Stnが存在する場合(ステップS200:Yes)、運行プログラムはこの走行ルート中に待機点Stnが複数存在するか否かを判別する(ステップS230)。そして、待機点Stnが一つの場合(ステップS230:No)、その待機点Stn(ここでは、待機点St1)を中間目的地に設定する(ステップS201)。また、待機点Stnが複数存在する場合(ステップS230:Yes)入力された目的地に一番近い待機点Stnを選択し(ステップS232)、その待機点Stnを中間目的地に設定する(ステップS201)。
【0041】
次に、運行プログラムは設定された中間目的地(待機点St1)までの走行ルート(節点N10→N2→待機点St1)を選定する(ステップS202)。次に、衝突防止プログラムは、選定された待機点St1までの走行ルートの占有要求辺を抽出して設定する。尚、ここでの占有要求辺は、有向辺E11、E1、E2となる(ステップS204)。
【0042】
次に、衝突防止プログラムは、この占有要求辺(有向辺E11、E1、E2)の全てが空の状態か否かを判定する(ステップS206)。ここで、有向辺E8を走行中の第1の自走貨物自動車30aの占有辺は、前述のように有向辺E7、E19、E8、E1、E2、E11、E3、E4、E14、E15、E16、E17、E18であるから、上記の占有要求辺のうち有向辺E11、E2が依然、第1の自走貨物自動車30aの占有辺に該当し、全てが空の状態にはない(ステップS206:No)。この場合、衝突防止プログラムは運行プログラムに対しこの待機点St1への走行ルートの設定を許可しない。
【0043】
この場合、運行プログラムは中間目的地に設定されていない他の待機点Stnが有るか否かを確認する(ステップS234)。そして、中間目的地に設定されていない他の待機点Stnが存在する場合(ステップS234:Yes)、この中で次に目的地に近い待機点Stnを選択し(ステップS236)、この待機点Stnを中間目的地として設定する(ステップS201)。そして、ステップS202~ステップS206を行って、設定された中間目的地への走行ルートの設定可否の判断を行う。
【0044】
また、ステップS234において、中間目的地に設定されていない他の待機点Stnが存在しない場合(ステップS234:No)、ステップS240へ移行して、他の自走貨物自動車30の占有辺に変化が生じるまで待機する。
【0045】
そして、ステップS240において、他の自走貨物自動車30の占有辺に変化があった場合(ステップS240:Yes)、ステップS120に移行して、再度、最終目的地である停止点S2までの占有要求辺(有向辺E11、E2、E1、E12、E13)の全てが空の状態か否かを判定する。ここで、例えば第1の自走貨物自動車30aが節点N4を通過して、第1の自走貨物自動車30aの占有辺がE3、E4、E14、E15、E16、E17、E18となった場合、第2の自走貨物自動車30bの停止点S1から停止点S2までの占有要求辺(有向辺E11、E2、E1、E12、E13)の全てが空の状態となる(ステップS120:Yes)。この場合、衝突防止プログラムは運行プログラムに対しこの走行ルートの設定を許可する。
【0046】
これにより、運行プログラムは上記の走行ルートを第2の自走貨物自動車30bの走行ルートとして設定し送信する(ステップS122)。また、衝突防止プログラムは、第2の自走貨物自動車30bの占有辺E9、E10に、上記の停止点S2までの占有要求辺(有向辺E11、E2、E1、E12、E13)を加えて、第2の自走貨物自動車30bの占有辺を有向辺E9、E10、E11、E1、E2、E12、E13とする(ステップS124)。そして、第2の自走貨物自動車30bは自動運転稼働中・走行となり、設定された走行ルートに沿って停止点S2まで自動運転する(ステップS126)。尚、この場合、同時に中間目的地である待機点St1の走行ルートも許可可能となるが、最終目的地である停止点S2が優先され、中間目的地の設定は解除される。
【0047】
そして、第2の自走貨物自動車30bが停止点S2に到着すると自動運転稼働中・停車となり(ステップS128)、建築物12bとの間での必要な荷物の積み降ろし作業が行われる。そして、タブレット端末20による次の目的地の入力待ちとなる(ステップS140)。また、第2の自走貨物自動車30bに対する構内自動運転システム100をオフにすると(ステップS140:Yes)、第2の自走貨物自動車30bに対する自動運転制御は終了する(ステップS142)。
【0048】
また、第1の自走貨物自動車30aが有向辺E4を走行中に、停止点S1で停車状態の第2の自走貨物自動車30bに対し、タブレット端末20を介して停止点S3を目的地とする入力が行われたとする(ステップS106)。これにより、運行プログラムは停止点S1から停止点S3に向かう節点N10→N2→N3→N4→N5→N13→停止点S3の走行ルートを選定する(ステップS108)。次に、衝突防止プログラムは、選定された走行ルートの占有要求辺(有向辺E11、E1、E2、E3、E4、E14、E15、E16)を設定する(ステップS110)。
【0049】
次に、衝突防止プログラムは、これらの占有要求辺(有向辺E11、E1、E2、E3、E4、E14、E15、E16)の全てが空の状態か否かを判定する(ステップS120)。ここで、有向辺E4を走行中の第1の自走貨物自動車30aの占有辺は、有向辺E3、E4、E14、E15、E16、E17、E18であるから、上記の占有要求辺のうち、有向辺E3、E4、E14、E15、E16が第1の自走貨物自動車30aの占有辺に該当し、全てが空の状態にはない(ステップS120:No)。よって、衝突防止プログラムは運行プログラムに対しこの走行ルートの設定を許可せず、ステップS200に移行する。そして、ステップS200において運行プログラムはこの走行ルート中に待機点Stnが存在するか否かを確認する。
【0050】
ここで、この走行ルート中には待機点St1と待機点St2が存在する(ステップS200:Yes)。次に、運行プログラムは走行ルート中に待機点Stnが複数存在するか否かを確認する(ステップS230)。ここでは上記の走行ルート中に複数の待機点St1、St2が存在する(ステップS230:Yes)。よって、運行プログラムは目的地(停止点S3)に一番近い待機点St2を選択し(ステップS232)、これを中間目的地とする(ステップS201)。次に、運行プログラムは中間目的地である待機点St2までの走行ルート(節点N10→N2→N3→N4→待機点St2)を選定する(ステップS202)。次に、衝突防止プログラムは、選定された待機点St2への走行ルートの占有要求辺(有向辺E11、E2、E1、E3、E4、E14)を抽出し設定する(ステップS204)。
【0051】
次に、衝突防止プログラムは、設定された待機点St2への占有要求辺の全てが空の状態か否かを判定する(ステップS206)。ここで、有向辺E4を走行中の第1の自走貨物自動車30aの占有辺は、前述のように有向辺E3、E4、E14、E15、E16、E17、E18であるから、待機点St2への占有要求辺のうち、有向辺E3、E4、E14が第1の自走貨物自動車30aの占有辺に該当し、全てが空の状態にはない(ステップS206:No)。よって、衝突防止プログラムは、この走行ルートの第2の自走貨物自動車30bへの設定を許可しない。
【0052】
次に、運行プログラムは中間目的地に設定されていない他の待機点Stnが有るか否かを確認する(ステップS234)。ここで、最終目的地までの走行ルート中には未だ中間目的地に設定されていない待機点St1が存在する(ステップS234:Yes)。この場合、運行プログラムは待機点St1を選択し(ステップS236)、これを中間目的地とする(ステップS201)。尚、中間目的地に設定されていない他の待機点Stnが複数存在する場合には、最終目的地に近い側の待機点Stnを順に選択する。次に、運行プログラムは中間目的地である待機点St1までの走行ルート(節点N10→N2→待機点St1)を選定する(ステップS202)。
【0053】
次に、衝突防止プログラムは、選定された待機点St1への走行ルートの占有要求辺(有向辺E11、E1、E2)を抽出し設定する(ステップS204)。次に、衝突防止プログラムは、設定された待機点St1への占有要求辺の全てが空の状態か否かを判定する(ステップS206)。ここで、有向辺E4を走行中の第1の自走貨物自動車30aの占有辺は、前述のように有向辺E3、E4、E14、E15、E16、E17、E18であるから、待機点St1への占有要求辺(有向辺E11、E1、E2)の全てが空の状態にあり(ステップS206:Yes)、待機点St1は移動可能な待機点と認められる。よって、衝突防止プログラムは運行プログラムに対しこの走行ルートの設定を許可する。
【0054】
これにより、運行プログラムはこの中間目的地(待機点St1)への走行ルートを第2の自走貨物自動車30bの走行ルートとして設定し送信する(ステップS210)。また、衝突防止プログラムは、第2の自走貨物自動車30bの占有辺E9、E10に占有要求辺(有向辺E11、E1、E2)を加え、第2の自走貨物自動車30bの占有辺を有向辺E9、E10、E11、E1、E2とする(ステップS212)。そして、第2の自走貨物自動車30bの状態は自動運転稼働中・走行となり、設定された走行ルートに沿って中間目的地としての待機点St1まで自動運転する(ステップS214)。そして、第2の自走貨物自動車30bが中間目的地としての待機点St1に到着すると(ステップS218)、第2の自走貨物自動車30bは停車し、自動運転稼働中・停車となる。そして、ステップS108へ移行して、待機点St1から最終目的地である停止点S3までの走行ルート(N3→N4→N5→N13→停止点S3)が選定される。次に、衝突防止プログラムは、選定された走行ルートの占有要求辺(有向辺E3、E4、E14、E15、E16)を設定する(ステップS110)。そして、ステップS120において、この占有要求辺(有向辺E3、E4、E14、E15、E16)の全てが空の状態か否かを判定する。
【0055】
このとき、第1の自走貨物自動車30aが有向辺E18に位置していた場合、第1の自走貨物自動車30aの占有辺は有向辺E17、E18となり、待機点St1から第2の自走貨物自動車30bの最終目的地である停止点S3までの占有要求辺(有向辺E3、E4、E14、E15、E16)が全て空の状態となる(ステップS120:Yes)。よって、衝突防止プログラムは運行プログラムに対し第2の自走貨物自動車30bの最終目的地までの走行ルートの設定を許可する。そして、ステップS122~ステップS126の動作が行われ、第2の自走貨物自動車30bは設定された走行ルートに沿って最終目的地である停止点S3まで自動運転する。そして、停止点S3にて建築物12dとの間での必要な荷物の積み降ろし作業が行われ、次の目的地の入力待ちもしくは自動運転制御の終了待ちとなる(ステップS218、ステップS140、ステップS142)。
【0056】
また、第2の自走貨物自動車30bが中間目的地である待機点St1に到着し、ステップS120に移行した時点で第1の自走貨物自動車30aが有向辺E16を走行していた場合、第1の自走貨物自動車30aの占有辺は有向辺E15、E16、E17、E18であり、第2の自走貨物自動車30bの最終目的地(停止点S3)までの占有要求辺のうち、有向辺E15、E16が空の状態にはない(ステップS120:No)。この場合、衝突防止プログラムはこの待機点St1から停止点S3までの走行ルートの設定を許可しない。
【0057】
この場合、運行プログラムは選定した待機点St1から停止点S3までの走行ルート中に待機点Stnが存在するか否かを確認する(ステップS200)。ここで、待機点St1から停止点S3までの走行ルート中には待機点St2が存在する(ステップS200:Yes)。また、待機点St1から停止点S3までの走行ルート中には待機点Stnは複数存在していない(ステップS230:No)。この場合、運行プログラムはこの待機点St2を中間目的地とする(ステップS201)。次に、運行プログラムは待機点St1から待機点St2への走行ルートを検索し、節点N3→N4→待機点St2の走行ルートを選定する(ステップS202)。次に、衝突防止プログラムは、この待機点St1から待機点St2までの走行ルートの占有要求辺(有向辺E3、E14、E4)を抽出して設定する(ステップS204)。
【0058】
次に、衝突防止プログラムは、これらの占有要求辺(有向辺E3、E14、E4)の全てが空の状態か否かを判定する(ステップS206)。ここで、有向辺E16を走行中の第1の自走貨物自動車30aの占有辺は、前述のように有向辺E15、E16、E17、E18であるから、待機点St1から待機点St2までの占有要求辺の全てが空の状態にあり(ステップS206:Yes)、待機点St2は移動可能な待機点と認められる。よって、衝突防止プログラムは運行プログラムに対しこの走行ルートの設定を許可する。
【0059】
これにより、ステップS210、ステップS212が行われ、第2の自走貨物自動車30bの走行ルートが設定されるとともに、第2の自走貨物自動車30bの占有辺が有向辺E11、E1、E2、E3、E4、E14となる。そして、第2の自走貨物自動車30bは自動運転稼働中・走行となり、設定された走行ルートに沿って中間目的地としての待機点St2まで自動運転する(ステップS214)。
【0060】
そして、第2の自走貨物自動車30bが中間目的地としての待機点St2に到着すると(ステップS218)、第2の自走貨物自動車30bは自動運転稼働中・停車となり、ステップS108へ移行する。そして、待機点St2から最終目的地である停止点S3までの走行ルート(N5→N13→停止点S3)が選定される。次に、衝突防止プログラムは、選定された走行ルートの占有要求辺(有向辺E15、E16)を設定する(ステップS110)。そして、ステップS120において、この占有要求辺(有向辺E15、E16)の全てが空の状態か否かを判定する。
【0061】
そして、占有要求辺(有向辺E15、E16)の全てが空の状態の場合(ステップS120:Yes)、ステップS122~S128が行われて、第2の自走貨物自動車30bは自動運転により最終目的地である停止点S3に到着する。また、上記の占有要求辺(有向辺E15、E16)の全てが空の状態にない場合(ステップS120:No)、ステップS200に移行し走行ルート中の待機点Stnの有無が判定される。このとき、待機点St2から停止点S3の間には待機点Stnは存在しないため(ステップS200:No)、第2の自走貨物自動車30bは他の自走貨物自動車30の占有辺に変化が生じ、待機点St2から最終目的地である停止点S3までの走行ルート(節点N5→N13→停止点S3)の設定が許可されるまで待機する(ステップS242)。
【0062】
そして、ステップS120において停止点S3までの走行ルートが許可されるとステップS122~ステップS126が行われ、第2の自走貨物自動車30bは自動運転により走行して最終目的地である停止点S3に到着する(ステップS128)。そして、建築物12cと第2の自走貨物自動車30bとの間で必要な荷物の積み降ろし作業が行われ、次の目的地の入力待ちもしくは自動運転制御の終了待ちとなる(ステップS140、ステップS142)。
【0063】
上記の待機点Stnを有する構成では、最終目的地までの走行ルートの設定が許可されない場合に、途中にある待機点Stnへの自動運転が可能かを判定し、可能であればその待機点Stnを中間目的地に設定して自走貨物自動車30を移動させる。これにより、自走貨物自動車30を最終目的地に近づけることができ、構内自動運転システム100の効率的な運用と自走貨物自動車30の待機時間の短縮とを図ることができる。
【0064】
次に、1つの建築物12(ここでは建築物12a)に複数台(例えば2台)の自走貨物自動車30を停車させる場合の構成を説明する。この場合、停止点S1は
図4に示すように、停車させる自走貨物自動車30の台数分、ここでは停止点S1a、S1bの2つに分割して設定され、これら停止点S1a、S1bの間には通常の停止点Sn、待機点Stnと同様に節点N9a、N10aが設けられる。これにより、有向辺E10はE10a、E10b、E10cの3つに分割され、節点N9a、N10aの間に有向辺E10bが設けられる。尚、有向辺E10bの長さは、停止点S1a、S1bの双方に自走貨物自動車30が停車しても接触の危険が無い十分な距離とする。これにより、停止点S1a、S1bは、他の停止点S1~S5と同様に機能し、1つの建築物12に対して複数台の自走貨物自動車30の停車が可能となる。尚、タブレット端末20による地図表示上では、停止点S1a、S1bを個別に表示しても良いし、まとめて停止点S1と表示しても良い。この場合、運行プログラムは前方の停止点S1aを目的地として優先的に割り振り、停止点S1aに自走貨物自動車30が停車している場合には自動で後方の停止点S1bに目的地を割り振ることが好ましい。
【0065】
以上のように、本発明に係る構内自動運転システム100は、敷地内での荷物の輸送を無人の自走貨物自動車30を用いた自動運転により行う。このため、貨物自動車の運転手が不要となり、作業人員の省人化を図ることができる。尚、本発明に係る構内自動運転システム100の自走貨物自動車30は予め限定された私有地等にある自動運転車道10でのみ自動運転を行い、公道での自動運転は行わない。このため、法律の制限を受けず完全無人の自動運転が可能となる。
【0066】
また、本発明に係る構内自動運転システム100は、自走貨物自動車30に対する目的地の入力操作などをフォークリフト32の運転者等の現場の作業者がタブレット端末20を用いて自身で行う。このため、自動運転システムの中央制御室が不要となり、これに要する人員、機材、スペースを削減することができる。これにより、従来、最低2人の人員が必要であった敷地内での荷物の輸送作業を1人の作業者で行うことが可能となる。
【0067】
また、本発明に係る構内自動運転システム100は、操作端末として使用するタブレット端末20のモニタに自動運転車道10を地図表示するとともに、この地図表示上に自走貨物自動車30の位置と状態を表示する。これにより、タブレット端末20を有する作業者が自走貨物自動車30の位置と状態とを視覚的に把握することができる。特に、自走貨物自動車30が複数台の場合には、タブレット端末20を有する作業者が全ての自走貨物自動車30の位置と状態とを視覚的に把握することが可能となり、自走貨物自動車30の効率的な運用を行うことができる。
【0068】
また、衝突防止プログラムを有する本発明に係る構内自動運転システム100は、自走貨物自動車30に占有辺を設定し、この占有辺を他の自走貨物自動車30の走行ルートに設定しないことで、各車の走行ルートの交差を防止し、簡単なアルゴリズムで自走貨物自動車30同士の衝突を回避することができる。また、全ての自走貨物自動車30が互いの走行ルートによって動けなくなるデッドロックを回避することができる。さらに、適切な節点Nnを設定することで自走貨物自動車30の待機時間を短縮することができる。
【0069】
またさらに、自走貨物自動車30が複数台で、自動運転車道10に待機点Stnを設ける構成では、他の自走貨物自動車30によって最終目的地までの走行ルートの設定が許可されない場合に、可能であれば途中にある待機点Stnまで自走貨物自動車30を自動運転により移動させる。これにより、自走貨物自動車30を可能な限り最終目的地に近づけることができ、構内自動運転システム100の効率的な運用と自走貨物自動車30の待機時間の短縮とを図ることができる。
【0070】
尚、本例では
図1、
図2に示す比較的簡易な自動運転車道10を用いて本発明に係る構内自動運転システム100の説明を行ったが、本発明の運行プログラム及び衝突防止プログラムは、自動運転車道10が全て一方通行でループ状に構築されていれば、多数の分岐や迂回路、ショートカット等を備えた複雑な自動運転車道10に対しても適用が可能である。
【0071】
また、本例で示した構内自動運転システム100の動作、手順、運用方法等は上記の例に限定されるものではなく、本発明は本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更して実施することが可能である。また、本例で示した構内自動運転システム100の運行プログラム、衝突防止プログラム及び
図3に示すフローチャートは一例であり、各ステップのデータの取得方法、データの処理方法、ステップの順序、判定基準、アルゴリズム等は上記の例に限定されるものではなく、また、必要なステップを適宜挿入可能な他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0072】
10 自動運転車道
20 タブレット端末
30、30a、30b 自走貨物自動車
100 構内自動運転システム
A エリア
E1~E19 有向辺
S1~S5 停止点
St1~St3 待機点
N1~N16 節点