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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064531
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】配管部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 22/02 20060101AFI20240507BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
B21D22/02 A
F01N3/28 301W
B21D22/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173184
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】梅野 泰史
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 誠
(72)【発明者】
【氏名】泉川 大輔
【テーマコード(参考)】
3G091
4E137
【Fターム(参考)】
3G091AA17
3G091AB01
3G091AB13
3G091BA39
3G091HA26
4E137AA10
4E137BA02
4E137BB03
4E137CA02
4E137EA06
4E137GA12
4E137GB20
4E137HA05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】筒体内部に設けられる凹部の形状精度を高められる配管部品の製造方法を提供する。
【解決手段】金属製の筒体30と、筒体の中心軸を含む断面において内周面と連続して設けられた角部321Dを有する凹部321とを備える配管部品の製造方法である。配管部品の製造方法は、筒体の外周面に外側金型101を当てた状態で内周面に第1内側金型102を押し当てることで、筒体を外側金型と第1内側金型とで保持する工程と、筒体が外側金型と第1内側金型とによって保持された状態で、外側金型と共に筒体を挟むように内周面に第2内側金型103を押し当てることで凹部を形成する工程とを備える。凹部を形成する工程では、角部が凹部の他の部位よりも第1内側金型に近接するように凹部を形成する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の筒体と、前記筒体の内周面から径方向外側に凹むと共に、前記筒体の中心軸を含む断面において前記内周面と連続して設けられた角部を有する凹部と、を備える配管部品の製造方法であって、
前記筒体の外周面に外側金型を当てた状態で前記内周面に第1内側金型を押し当てることで、前記筒体を前記外側金型と前記第1内側金型とで保持する工程と、
前記筒体が前記外側金型と前記第1内側金型とによって保持された状態で、前記外側金型と共に前記筒体を挟むように前記内周面に第2内側金型を押し当てることで前記凹部を形成する工程と、
を備え、
前記凹部を形成する工程では、前記角部が前記凹部の他の部位よりも前記筒体の軸方向において前記第1内側金型に近接するように前記凹部を形成する、配管部品の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の配管部品の製造方法であって、
前記配管部品は、内燃機関の排気ガスが導入される排気系部品である、配管部品の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の配管部品の製造方法であって、前記第1内側金型及び前記第2内側金型は、それぞれ、前記筒体の周方向に並んで配置された複数の分割片を有する、配管部品の製造方法。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の配管部品の製造方法であって、
前記外側金型の前記筒体の前記外周面に接触する部位のうち、少なくとも前記筒体の径方向において前記第2内側金型と重なる領域は、平滑面である、配管部品の製造方法。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の配管部品の製造方法であって、
前記凹部は、
前記角部から前記筒体の径方向外側に延伸する壁面と、
前記壁面に近づくに連れて前記筒体の中心軸からの距離が大きくなる底面と、
を有し、
前記壁面と前記筒体の中心軸とが成す角度は、45°以上135°以下である、配管部品の製造方法。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載の配管部品の製造方法であって、
前記保持する工程では、前記筒体に前記筒体の径方向内側から前記第1内側金型の凸部が食い込む、配管部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配管部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属製の筒体の内周面に凹部を形成する加工方法が公知である(特許文献1参照)。この加工方法では、筒体の内周面に金型を押し当てることで、凹部が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-121446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように金型の押し当てにより凹部を形成する工法では、金型の押し当てによる金属の流動によって、凹部の角部にダレ(つまり、エッジ部分への丸み形成)が発生する可能性がある。そのため、凹部の形状精度が低下するおそれがある。
【0005】
本開示の一局面は、筒体内部に設けられる凹部の形状精度を高められる配管部品の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、金属製の筒体と、筒体の内周面から径方向外側に凹むと共に、筒体の中心軸を含む断面において内周面と連続して設けられた角部を有する凹部と、を備える配管部品の製造方法である。
【0007】
配管部品の製造方法は、筒体の外周面に外側金型を当てた状態で内周面に第1内側金型を押し当てることで、筒体を外側金型と第1内側金型とで保持する工程と、筒体が外側金型と第1内側金型とによって保持された状態で、外側金型と共に筒体を挟むように内周面に第2内側金型を押し当てることで凹部を形成する工程と、を備える。凹部を形成する工程では、角部が凹部の他の部位よりも筒体の軸方向において第1内側金型に近接するように凹部を形成する。
【0008】
このような構成によれば、第1内側金型と外側金型とによって筒体が保持された状態において、保持された領域に凹部の角部が近接する向きで、第2内側金型による凹部の形成が行われる。そのため、凹部の角部への金属の流動が抑制され、角部でのダレの発生が抑制される。その結果、凹部の形状精度が高められる。
【0009】
本開示の一態様では、配管部品は、内燃機関の排気ガスが導入される排気系部品であってもよい。このような構成によれば、緩衝部材、吸音材等の取付部材が凹部に配置される排気系部品において、凹部の形状精度の向上に基づいて取付部材の位置ずれを抑制することができる。
【0010】
本開示の一態様では、第1内側金型及び第2内側金型は、それぞれ、筒体の周方向に並んで配置された複数の分割片を有してもよい。このような構成によれば、筒体の周方向において同時に複数の凹部を形成することができる。
【0011】
本開示の一態様では、外側金型の筒体の外周面に接触する部位のうち、少なくとも筒体の径方向において第2内側金型と重なる領域は、平滑面であってもよい。このような構成によれば、筒体の外周面を平滑化できる。そのため、筒体の外周面に対し他の部品を設置しやすくすることができる。
【0012】
本開示の一態様では、凹部は、角部から筒体の径方向外側に延伸する壁面と、壁面に近づくに連れて筒体の中心軸からの距離が大きくなる底面と、を有してもよい。壁面と筒体の中心軸とが成す角度は、45°以上135°以下であってもよい。このような構成によれば、筒体の軸方向に対し傾斜した底面によって凹部への取付部材の取付を容易としつつ、壁面によって取付部材の脱落を抑制できる。
【0013】
本開示の一態様では、保持する工程では、筒体に筒体の径方向内側から第1内側金型の凸部が食い込んでもよい。このような構成によれば、凸部の筒体への食い込みによって金属の流動抑制効果が高められる。そのため、凹部の形状精度の向上効果が促進される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、実施形態の配管部品の模式的な正面図である。
図2図2は、図1のII-II線での模式的な断面図である。
図3図3は、図1の配管部品における触媒ケースの模式的な斜視図である。
図4図4Aは、図3の触媒ケースの中心軸を含む面での模式的な切断部端面図の一部であり、図4Bは、図2の触媒ケース近傍の部分拡大断面図である。
図5図5は、実施形態における配管部品の製造方法のフロー図である。
図6図6A及び図6Bは、図5の配管部品の製造方法における一工程を示す模式図である。
図7図7A図7B図7C図7D及び図7Eは、第1凸部の変形例を示す模式図である。
図8図8A及び図8Bは、図5の配管部品の製造方法における一工程を示す模式図である。
図9図9Aは、図5の配管部品の製造方法における一工程を示す模式図であり、図9Bは、図9Aとは異なる実施形態における一工程を示す模式図である。
図10図10は、図5の配管部品の製造方法における一工程を示す模式図である。
図11図11は、図5の配管部品の製造方法における一工程を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1に示す配管部品1は、内燃機関の排気ガス流路内に設けられる排気ガス浄化装置(つまり排気系部品の一例)である。
【0016】
配管部品1は、排気ガスの浄化を行う。配管部品1が接続される内燃機関としては、例えば、自動車に用いられるガソリンエンジン又はディーゼルエンジンが挙げられる。
配管部品1は、上流コーン2と、触媒コンバータ3と、下流コーン4とを備える。
【0017】
<上流コーン>
上流コーン2は、内燃機関の排気ガスが導入される部材である。上流コーン2は、配管部品1において排気ガスの流れ方向における最も上流側に配置されている。
【0018】
上流コーン2は、上面と下面とがそれぞれ開口し、上流側から下流側に向かって拡径する円錐台状の筒体である。上流コーン2は、排気ガスを上流コーン2の内部に導入する導入口21を有する。導入口21は、上流コーン2の上流側の端部に設けられている。導入口21には、内燃機関に連結された排気マニホールド等が接続される。
【0019】
<触媒コンバータ>
触媒コンバータ3は、上流コーン2の下流側に配置されている。図2に示すように、触媒コンバータ3は、触媒31と、触媒ケース32と、緩衝部材33とを有する。なお、図2では、上流コーン2の図示を省略している。
【0020】
(触媒)
触媒31は、排気ガスGとの接触によって排気ガスG中の環境汚染物質を改質又は捕集し、排気ガスGを浄化する。
【0021】
触媒31は、触媒ケース32に格納されると共に、排気ガスGが触媒ケース32の軸方向に流れる複数の流路を触媒ケース32内に構成している。つまり、触媒31は、上流コーン2から下流コーン4に向かって延伸し、かつ互いに連通しない複数の流路を有している。
【0022】
触媒31は、例えば、排気ガスGの流れ方向と垂直な断面が多角形(例えば四角形、六角形等)の複数のチューブが集合した立体形状を有する。つまり、触媒31は、触媒ケース32の軸方向に延伸する複数の仕切り板が格子状に配置された立体形状(例えばハニカム形状)を有する。
【0023】
触媒31としては、例えばガソリンパティキュレートフィルター(GPF)が使用される。GPFは、コージライトセラミックを主成分とする。GPFを用いることで、粒子状物質(PM)の捕集性能が高められ、近年高まっている排気ガス規制への対応が容易となる。一方で、GPFは、強度が低いため、組み付け時及び使用時における損傷対策が求められる。
【0024】
(触媒ケース)
触媒ケース32は、上流コーン2に連結された金属製の円筒体である。触媒ケース32の上流側の端部は、上流コーン2の下流側の開口に溶接等によって固定されている。触媒ケース32は、例えば、ステンレス鋼で形成される。
【0025】
触媒ケース32内には、上流コーン2から排気ガスGが導入される。触媒ケース32には、触媒31と緩衝部材33とが格納されている。図3に示すように、触媒ケース32は、複数の凹部321を有する。
【0026】
複数の凹部321は、それぞれ、触媒ケース32の内周面から触媒ケース32の径方向外側に凹んだ部位である。本実施形態では、複数の凹部321が触媒ケース32の軸方向及び周方向に沿って一定の間隔で並置されている。
【0027】
凹部321の平面形状(つまり触媒ケース32の径方向から視た形状)は、例えば四角形状である。なお、凹部321は、触媒ケース32の周方向全体にわたって円環状に形成されていてもよい。
【0028】
図4Aに示すように、凹部321は、壁面321Aと、底面321Bと、連結面321Cと、角部321Dとを有する。
【0029】
壁面321Aは、凹部321の他の面よりも排気ガスGの流れ方向の下流側に位置する平坦面である。壁面321Aは、角部321Dから触媒ケース32の径方向外側に延伸している。
【0030】
壁面321Aは、触媒ケース32の上流側の端部を向いた面である。図4Bに示すように、壁面321Aは、排気ガスGの流れ方向の下流側から、緩衝部材33と対向又は接触する。
【0031】
壁面321Aと触媒ケース32の中心軸とが成す第1角度θ1は、45°以上135°以下である。第1角度θ1の下限としては、60°が好ましい。第1角度θ1の上限としては、90°が好ましい。
【0032】
第1角度θ1が45°未満であるか、又は第1角度θ1が135°を超えると、壁面321Aと緩衝部材33との摩擦力のうち、壁面321Aと垂直な方向の成分よりも壁面321Aと平行な方向の成分が大きくなる。その結果、緩衝部材33が壁面321Aに対し滑るおそれがある。また、第1角度θ1を60°以上とすることで、壁面321Aに対する滑りの低減効果が促進される。第1角度θ1を90°以下とすることで、金型を用いた凹部321の成形加工がしやすくなる。
【0033】
底面321Bは、壁面321Aよりも上流側に配置された面である。底面321Bは、壁面321Aに向かって(つまり排気ガスGの流れにおける下流に向かって)拡径するテーパ面を構成している。つまり、底面321Bは、壁面321Aに近づくに連れて触媒ケース32の中心軸からの距離が大きくなっている。
【0034】
底面321Bと触媒ケース32の中心軸とが成す第2角度θ2は、第1角度θ1よりも小さい。また、底面321Bの触媒ケース32の軸方向に沿った長さL1は、壁面321Aの触媒ケース32の軸方向に沿った長さL2よりも大きい。
【0035】
連結面321Cは、触媒ケース32の軸方向に沿って壁面321Aと底面321Bとを連結する面である。連結面321Cは、触媒ケース32の軸方向と平行な平坦面である。ただし、連結面321Cは、触媒ケース32の軸方向と平行でなくてもよい。連結面321Cの触媒ケース32の軸方向に沿った長さL3は、底面321Bの触媒ケース32の軸方向に沿った長さL1よりも小さい。なお、凹部321は、必ずしも連結面321Cを有しなくてもよい。
【0036】
角部321Dは、触媒ケース32の中心軸を含む断面において内周面と連続して設けられている。角部321Dにおいて、触媒ケース32の内周面と壁面321Aとが連結されている。
【0037】
角部321Dは、凹部321のうち、排気ガスGの流れ方向において最も下流に位置する。角部321Dの角度は、180°から第1角度θ1を減じた大きさであり、例えば、45°以上135°以下であり、好ましくは60°以上90°以下である。
【0038】
図3に示すように、触媒ケース32の外周面322のうち、少なくとも凹部321が設けられた領域は、平滑である。本実施形態では、重複領域を含む触媒ケース32の外周面322全体が平滑である。
【0039】
(緩衝部材)
図2に示す緩衝部材33は、触媒31の外面の周方向全体を覆う筒状の部材である。触媒ケース32の軸方向において、緩衝部材33の長さは、触媒31の長さよりも小さくてもよいし、大きくてもよいし、触媒31の長さと同じであってもよい。
【0040】
緩衝部材33は、触媒31の外面と触媒ケース32の内周面との間に圧入されることで、触媒31を保持している。緩衝部材33は、触媒31の外面と触媒ケース32の内周面とに接触している。
【0041】
緩衝部材33は、触媒ケース32の径方向及び軸方向に弾性変形可能である。つまり、緩衝部材33は、触媒ケース32及び触媒31よりも剛性が低く、柔らかい。緩衝部材33は、触媒31と触媒ケース32に挟まれることによって少なくとも径方向に圧縮されている。
【0042】
緩衝部材33は、触媒31の外面に巻回された状態で触媒ケース32に圧入されている。緩衝部材33としては、例えば、アルミナファイバーをマット状に編み込んだものが用いられる。
【0043】
緩衝部材33の外周面は、触媒ケース32の複数の凹部321と対向している。図4Bに示すように、緩衝部材33の径方向外側の一部は、圧入後の膨張によって凹部321の内部に進入している。すなわち、緩衝部材33が触媒31と共に触媒ケース32内に収容された状態で、緩衝部材33の一部が凹部321に引っ掛かる。
【0044】
<下流コーン>
図2に示す下流コーン4は、触媒コンバータ3の触媒ケース32の下流側に連結された部材である。下流コーン4は、上面と下面とがそれぞれ開口し、上流側から下流側に向かって縮径する円錐台状の筒体である。
【0045】
下流コーン4の上流側の開口は、触媒ケース32の下流側の端部に連結されている。下流コーン4の下流側の開口は、配管部品1から排気ガスGが排出される排出口41を構成している。下流コーン4の下流側の開口には、排気管、消音器等が接続される。
【0046】
<製造方法>
図5に示す配管部品の製造方法は、図1の配管部品1を製造するための方法である。本実施形態の配管部品の製造方法は、配置工程S10と、保持工程S20と、凹部形成工程S30と、装着工程S40と、圧入工程S50とを備える。
【0047】
(配置工程)
本工程では、図6Aに示すように、触媒ケース32となる筒体30を筒状の外側金型101に軸方向に沿って挿入する。また、筒体30の内側に第1内側金型102及び第2内側金型103を配置する。なお、図6A以降の製造工程を示す模式図では、筒体30(つまり触媒ケース32)の上下の向きは、図3に対し逆向きとなっている。
【0048】
外側金型101の内径は、筒体30の外径と略一致する。また、外側金型101の筒体30の外周面に接触する部位のうち、筒体30の径方向において第1内側金型102と重なる領域及び第2内側金型103と重なる領域は、平滑面である。外側金型101は、凹部形成工程S30が完了するまで移動しない。
【0049】
第1内側金型102は、プレス機104のカムドライバ104Aの挿入によって、筒体30の径方向外側に開くように構成されている。図6Bに示すように、第1内側金型102は、筒体30の周方向に並んで配置された複数の第1分割片102Aを有する。複数の第1分割片102Aは、それぞれ筒体30の径方向に移動可能に構成されている。
【0050】
図6Aに示すように、複数の第1分割片102Aは、それぞれ、第1凸部102Bを有する。第1凸部102Bは、他の部位よりも筒体30の径方向外側に突出した部位である。第1凸部102Bは、筒体30に食い込む楔の機能を有する。
【0051】
図7Aに示すように、第1凸部102Bは、断面が円弧状に湾曲していてもよい。図7B及び図7Cに示すように、第1凸部102Bは、断面が三角形状であってもよい。図7Dに示すように、第1凸部102Bは、断面が四角形状あってもよい。図7Eに示すように、第1凸部102Bは、断面が四角形と三角形との組み合わせ形状であってもよい。
【0052】
図6Aに示す第2内側金型103は、第1内側金型102と同様に、プレス機104のカムドライバ104Aの挿入によって、筒体30の径方向外側に開くように構成されている。
【0053】
第2内側金型103は、第1内側金型102と同様に、筒体30の周方向に並んで配置された複数の第2分割片103Aを有する。複数の第2分割片103Aは、それぞれ筒体30の径方向に移動可能に構成されている。第2内側金型103の第2分割片103Aは、筒体30の軸方向において、第1内側金型102の第1分割片102Aと重なる位置に配置されている。
【0054】
第2分割片103Aは、それぞれ、第2凸部103Bと、第1平滑部103Cと、第2平滑部103Dとを有する。
【0055】
第2凸部103Bは、他の部位(つまり第1平滑部103C及び第2平滑部103D)よりも筒体30の径方向外側に突出した部位である。第2凸部103Bの形状は、触媒ケース32の凹部321の形状と相似形である。すなわち、第2凸部103Bは、凹部321の壁面321A及び角部321Dを形成する第1形成面103Eと、凹部321の底面321Bを形成する第2形成面103Fとを有する。
【0056】
第1平滑部103Cは、筒体30の軸方向において、第2凸部103Bよりも第1内側金型102に近い領域に設けられている。具体的には、第1平滑部103Cは、第2凸部103Bの第1形成面103Eから、第2分割片103Aの端部まで延伸している。
【0057】
第2平滑部103Dは、筒体30の軸方向において、第2凸部103Bよりも第1内側金型102から離れた領域に設けられている。具体的には、第2平滑部103Dは、第2凸部103Bの第2形成面103Fから、第2分割片103Aの端部まで延伸している。
【0058】
(保持工程)
本工程では、図8Aに示すように、筒体30の外周面に外側金型101を当てた状態で筒体30の内周面に第1内側金型102を押し当てることで、筒体30を外側金型101と第1内側金型102とで保持する。
【0059】
具体的には、第1内側金型102の複数の第1分割片102Aの内側にカムドライバ104Aをプレスによって挿入する。これにより、図8Bに示すように、複数の第1内側金型102が筒体30の内周面に押し当てられる。このとき、図8Aに示すように、筒体30の内周面に筒体30の径方向内側から各第1分割片102Aの第1凸部102Bが食い込む。筒体30に食い込んだ第1凸部102Bは、筒体30の軸方向における金属の流動を止める楔として機能する。
【0060】
(凹部形成工程)
本工程では、図9Aに示すように、筒体30が外側金型101と第1内側金型102とによって保持された状態で、外側金型101と共に筒体30を挟むように筒体30の内周面に第2内側金型103を押し当てることで凹部321を形成する。
【0061】
具体的には、第1内側金型102に挿入されたカムドライバ104Aをさらにプレスし、第2内側金型103の複数の第2分割片103Aの内側に挿入する。これにより、複数の第2分割片103Aが筒体30の内周面に押し当てられる。
【0062】
このとき、筒体30の径方向内側から各第2分割片103Aの第2凸部103Bが筒体30の内周面をプレスし、複数の凹部321を形成する。また、本工程では、凹部321の角部321Dが凹部321の他の部位よりも筒体30の軸方向において第1内側金型102に近接するように凹部321を形成する。つまり、本工程では、第2凸部103Bの第1形成面103Eが第2形成面103Fよりも第1内側金型102に近接する向き(図6A参照)で第2凸部103Bを筒体30に押し当てる。
【0063】
本実施形態では、第1内側金型102と外側金型101とによる筒体30の径方向の押圧によって、凹部321の形成時における角部321Dへの金属の流動量が低減される。そのため、角部321Dに金属が流れ込んで角部321Dにダレが発生することが抑制される。
【0064】
なお、図9Bに示すように、第2内側金型103は、必ずしも第1平滑部103Cを有しなくてもよい。つまり、第2凸部103Bは、第2内側金型103の第1内側金型102に近接する端部に設けられていてもよい。
【0065】
カムドライバ104Aのプレス後、図10に示すように、カムドライバ104Aを第1内側金型102及び第2内側金型103から引き抜き、さらに第1内側金型102及び第2内側金型103を筒体30の内周面から離す。
【0066】
これにより、複数の凹部321が形成された触媒ケース32が得られる。触媒ケース32の内周面には、凹部321に加えて、保持工程S20における第1凸部102Bの食い込みによる補助凹部323が形成されている。
【0067】
第1内側金型102及び第2内側金型103を筒体30の軸方向にずらしつつ加工を繰り返すことで、軸方向に並んだ複数の凹部321を形成することができる。また、軸方向に複数の第1凸部102B及び第2凸部103Bを並べてプレス加工を行うことで、軸方向に並んだ複数の凹部321を同時に形成してもよい。
【0068】
なお、外側金型101の筒体30の外周面に接触する部位が平滑面であるため、保持工程での第1内側金型102と外側金型101とによる筒体30の径方向の押圧、及び凹部形成工程での第2内側金型103と外側金型101とによる筒体30の径方向の押圧によって、筒体30の外周面に平滑面が形成される。
【0069】
(装着工程)
本工程では、触媒31に緩衝部材33を装着する。具体的には、触媒31の外面に緩衝部材33を巻き付ける。なお、本工程は、触媒ケース32を得る工程(つまり、配置工程S10、保持工程S20及び凹部形成工程S30)よりも前、又は触媒ケース32を得る工程と平行して行われてもよい。
【0070】
(圧入工程)
本工程では、凹部321が形成された触媒ケース32に、触媒31に装着された緩衝部材33を圧入する。
【0071】
具体的には、図11に示すように、触媒ケース32における排気ガスGの流れ方向とは逆向きに(つまり下流側から)緩衝部材33を触媒ケース32に圧入する。触媒31の外面の表面粗さは、触媒ケース32の内周面の表面粗さよりも大きい。そのため、触媒ケース32の軸方向において、緩衝部材33の触媒31に対する摩擦力は、緩衝部材33の触媒ケース32に対する摩擦力よりも大きい。したがって、緩衝部材33は、触媒31を保持したまま触媒ケース32に対して摺動する。
【0072】
緩衝部材33の圧入により、触媒コンバータ3が形成される。その後、触媒ケース32に上流コーン2及び下流コーン4を溶接する。これにより、配管部品1が得られる。なお、上流コーン2及び下流コーン4は、触媒ケース32を構成する筒体のスピニング加工によって成型されてもよい。
【0073】
[1-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)第1内側金型102と外側金型101とによって筒体30が保持された状態において、保持された領域に凹部321の角部321Dが近接する向きで、第2内側金型103による凹部321の形成が行われる。そのため、凹部321の角部321Dへの金属の流動が抑制され、角部321Dでのダレの発生が抑制される。その結果、凹部321の形状精度が高められる。
【0074】
(1b)緩衝部材33が凹部321に配置される排気ガス浄化装置において、凹部321の形状精度の向上に基づいて緩衝部材33の位置ずれを抑制することができる。
【0075】
(1c)第1内側金型102及び第2内側金型103がそれぞれ複数の分割片102A,103Aを有することで、筒体30の周方向において同時に複数の凹部321を形成することができる。
【0076】
(1d)外側金型101の筒体30の外周面に接触する部位が平滑面であることで、筒体30の外周面を平滑化できる。そのため、筒体30の外周面に対し他の部品を設置しやすくすることができる。
【0077】
(1e)凹部321が壁面321Aと底面321Bとを有することで、筒体30の軸方向に対し傾斜した底面321Bによって凹部321への取付部材(つまり緩衝部材33)の取付を容易としつつ、壁面321Aによって取付部材の脱落を抑制できる。
【0078】
(1f)第1内側金型102の第1凸部102Bの筒体30への食い込みによって、金属の流動抑制効果が高められる。そのため、凹部321の形状精度の向上効果が促進される。
【0079】
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0080】
(2a)上記実施形態の配管部品は、排気ガス浄化装置以外の排気系部品にも使用可能である。例えば、上記実施形態の配管部品は、内周面に凹部を有する排気管又は消音器として使用できる。また、上記実施形態の配管部品は、排気系部品以外の用途にも使用可能である。
(2b)上記実施形態の配管部品の製造方法において、第1内側金型及び第2内側金型は、必ずしも複数の分割片を有しなくてもよい。
【0081】
(2c)上記実施形態の配管部品の製造方法において、外側金型の筒体の外周面に接触する部位は、必ずしも平滑面でなくてもよい。
(2d)上記実施形態の配管部品の製造方法において、配管部品における凹部の形状は上述のものに限定されない。
【0082】
(2e)上記実施形態の配管部品の製造方法において、第1内側金型は、必ずしも第1凸部を有しなくてもよい。つまり、第1内側金型は、面圧によって外側金型と共に筒体を保持してもよい。
【0083】
(2f)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0084】
1…配管部品、2…上流コーン、3…触媒コンバータ、4…下流コーン、
21…導入口、30…筒体、31…触媒、32…触媒ケース、33…緩衝部材、
41…排出口、101…外側金型、102…第1内側金型、102A…第1分割片、
102B…第1凸部、103…第2内側金型、103A…第2分割片、
103B…第2凸部、103C…第1平滑部、103D…第2平滑部、
103E…第1形成面、103F…第2形成面、104…プレス機、
104A…カムドライバ、321…凹部、321A…壁面、321B…底面、
321C…連結面、321D…角部、322…外周面、323…補助凹部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11