IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人 筑波大学の特許一覧

<>
  • 特開-仮想空間制御装置およびプログラム 図1
  • 特開-仮想空間制御装置およびプログラム 図2
  • 特開-仮想空間制御装置およびプログラム 図3
  • 特開-仮想空間制御装置およびプログラム 図4
  • 特開-仮想空間制御装置およびプログラム 図5
  • 特開-仮想空間制御装置およびプログラム 図6
  • 特開-仮想空間制御装置およびプログラム 図7
  • 特開-仮想空間制御装置およびプログラム 図8
  • 特開-仮想空間制御装置およびプログラム 図9
  • 特開-仮想空間制御装置およびプログラム 図10
  • 特開-仮想空間制御装置およびプログラム 図11
  • 特開-仮想空間制御装置およびプログラム 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064532
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】仮想空間制御装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/00 20240101AFI20240507BHJP
   G06F 3/01 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
G06Q50/00 300
G06F3/01 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173185
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】廣川 暢一
(72)【発明者】
【氏名】松井 崇
(72)【発明者】
【氏名】ハサン モダル
(72)【発明者】
【氏名】マックスウェール ウェスト ケナード
(72)【発明者】
【氏名】吉武 誠司
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 史穏
(72)【発明者】
【氏名】松岡 弘樹
【テーマコード(参考)】
5E555
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5E555AA61
5E555AA76
5E555BA02
5E555BA05
5E555BA06
5E555BA20
5E555BA45
5E555BB02
5E555BB05
5E555BB06
5E555BB20
5E555BC01
5E555BD09
5E555CA42
5E555CB67
5E555CB69
5E555DA21
5E555DA24
5E555DA26
5E555DB32
5E555DC84
5E555DD06
5E555EA05
5E555EA14
5E555FA00
5L049CC00
5L050CC00
(57)【要約】
【課題】ネットワークを介したユーザどうしであっても、実空間での対面のやりとりをしている感覚をユーザに与える。
【解決手段】仮想空間制御装置は、仮想空間に参加するユーザに関連する仮想空間内の状況を示す文脈情報を取得する文脈情報取得部と、ユーザの身体の状態を示す身体情報をユーザごとに取得する身体情報取得部と、取得された文脈情報および身体情報に基づいて、仮想空間内でのユーザの心理状態を判定する状態判定部と、判定されたユーザの心理状態に対する修飾の程度を設定する修飾度設定部と、設定された修飾の程度に基づいて、ユーザの心理状態が修飾された表現を示す表現情報を生成する表現生成部と、表現生成部が生成した表現情報を、複数のユーザのうち、身体情報が取得された第1ユーザの相手である第2ユーザが利用する提示装置に出力する出力部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮想空間に参加するユーザに関連する仮想空間内の状況を示す文脈情報を取得する文脈情報取得部と、
前記ユーザの身体の状態を示す身体情報を前記ユーザごとに取得する身体情報取得部と、
取得された前記文脈情報および前記身体情報に基づいて、前記仮想空間内での前記ユーザの心理状態を判定する状態判定部と、
判定された前記ユーザの心理状態に対する修飾の程度を設定する修飾度設定部と、
設定された前記修飾の程度に基づいて、前記ユーザの心理状態が修飾された表現を示す表現情報を生成する表現生成部と、
前記表現生成部が生成した前記表現情報を、複数の前記ユーザのうち、前記身体情報が取得された第1ユーザの相手である第2ユーザが利用する提示装置に出力する出力部と、
を備える仮想空間制御装置。
【請求項2】
前記文脈情報には、仮想空間に参加する前記ユーザどうしの予め定められた関係性を示す第1情報が含まれ、
前記状態判定部は、取得された前記第1情報および前記身体情報に基づいて、前記仮想空間内での前記ユーザの心理状態を判定する
請求項1に記載の仮想空間制御装置。
【請求項3】
前記文脈情報には、前記ユーザどうしの仮想空間内での相互関係に基づいて変化する関係性を示す第2情報が含まれ、
前記状態判定部は、取得された前記第2情報および前記身体情報に基づいて、前記仮想空間内での前記ユーザの心理状態を判定する
請求項1に記載の仮想空間制御装置。
【請求項4】
前記状態判定部は、前記ユーザの前記心理状態の種類を判定し、
前記修飾度設定部は、判定された前記心理状態の種類に基づいて、前記ユーザの前記心理状態に対する前記修飾の程度を設定する
請求項1に記載の仮想空間制御装置。
【請求項5】
前記状態判定部は、複数の前記ユーザのそれぞれの心理状態に基づいて、複数の前記ユーザを含むユーザ集団の心理状態を判定し、
前記表現生成部は、判定された前記ユーザ集団の心理状態の表現を生成する
請求項1に記載の仮想空間制御装置。
【請求項6】
前記ユーザによる前記修飾の程度の設定操作を受け付ける操作受付部
をさらに備え、
前記修飾度設定部は、前記操作受付部が受け付けた前記設定操作に基づいて、前記ユーザの心理状態に対する前記修飾の程度を設定する
請求項1に記載の仮想空間制御装置。
【請求項7】
前記状態判定部は、前記第1ユーザの心理状態と、前記第2ユーザの心理状態とをそれぞれ判定し、
前記修飾度設定部は、判定された前記第2ユーザの心理状態に対する前記修飾の程度を、前記第1ユーザの心理状態に基づいて設定し、
前記表現生成部は、設定された前記修飾の程度に基づいて、前記第2ユーザの心理状態が修飾された第2表現情報を生成し、
前記出力部は、前記表現生成部が生成した前記第2表現情報を、前記第1ユーザが利用する提示装置に出力する
請求項1に記載の仮想空間制御装置。
【請求項8】
コンピュータに、
仮想空間に参加するユーザに関連する仮想空間内の状況を示す文脈情報を取得させ、
前記ユーザの身体の状態を示す身体情報を前記ユーザごとに取得させ、
取得させた前記文脈情報および前記身体情報に基づいて、前記仮想空間内での前記ユーザの心理状態を判定させ、
判定させた前記ユーザの心理状態に対する修飾の程度を設定させ、
設定させた前記修飾の程度に基づいて、前記ユーザの心理状態が修飾された表現を示す表現情報を生成させ、
生成させた前記表現情報を、複数の前記ユーザのうち、前記身体情報が取得された第1ユーザの相手である第2ユーザが利用する提示装置に出力させる
ためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮想空間制御装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ネットワーク上の仮想空間(例えば、サイバー空間)に参加しているユーザどうしのインタラクションにおいて、無意識的かつ非言語的に行われている他者の存在を知覚するための情報(社会的信号)のやり取りを実現するシステムが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-92990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来技術においては、ユーザが社会的信号として受け取る情報に限りがあり、実空間での対面のやりとりをしている感覚をユーザに与えるということまでは実現できていないという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題を解決すべくなされたもので、その目的は、ネットワークを介したユーザどうしであっても、実空間での対面のやりとりをしている感覚をユーザに与えることができる仮想空間制御装置およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、仮想空間に参加するユーザに関連する仮想空間内の状況を示す文脈情報を取得する文脈情報取得部と、前記ユーザの身体の状態を示す身体情報を前記ユーザごとに取得する身体情報取得部と、取得された前記文脈情報および前記身体情報に基づいて、前記仮想空間内での前記ユーザの心理状態を判定する状態判定部と、判定された前記ユーザの心理状態に対する修飾の程度を設定する修飾度設定部と、設定された前記修飾の程度に基づいて、前記ユーザの心理状態が修飾された表現を示す表現情報を生成する表現生成部と、前記表現生成部が生成した前記表現情報を、複数の前記ユーザのうち、前記身体情報が取得された第1ユーザの相手である第2ユーザが利用する提示装置に出力する出力部と、を備える仮想空間制御装置である。
【0007】
また、本発明の一実施形態は、上述の仮想空間制御装置において、前記文脈情報には、仮想空間に参加する前記ユーザどうしの予め定められた関係性を示す第1情報が含まれ、前記状態判定部は、取得された前記第1情報および前記身体情報に基づいて、前記仮想空間内での前記ユーザの心理状態を判定する。
【0008】
また、本発明の一実施形態は、上述の仮想空間制御装置において、前記文脈情報には、前記ユーザどうしの仮想空間内での相互関係に基づいて変化する関係性を示す第2情報が含まれ、前記状態判定部は、取得された前記第2情報および前記身体情報に基づいて、前記仮想空間内での前記ユーザの心理状態を判定する。
【0009】
また、本発明の一実施形態は、上述の仮想空間制御装置において、前記状態判定部は、前記ユーザの前記心理状態の種類を判定し、前記修飾度設定部は、判定された前記心理状態の種類に基づいて、前記ユーザの前記心理状態に対する前記修飾の程度を設定する。
【0010】
また、本発明の一実施形態は、上述の仮想空間制御装置において、前記状態判定部は、複数の前記ユーザのそれぞれの心理状態に基づいて、複数の前記ユーザを含むユーザ集団の心理状態を判定し、前記表現生成部は、判定された前記ユーザ集団の心理状態の表現を生成する。
【0011】
また、本発明の一実施形態は、上述の仮想空間制御装置において、前記ユーザによる前記修飾の程度の設定操作を受け付ける操作受付部をさらに備え、前記修飾度設定部は、前記操作受付部が受け付けた前記設定操作に基づいて、前記ユーザの心理状態に対する前記修飾の程度を設定する。
【0012】
また、本発明の一実施形態は、上述の仮想空間制御装置において、前記状態判定部は、前記第1ユーザの心理状態と、前記第2ユーザの心理状態とをそれぞれ判定し、前記修飾度設定部は、判定された前記第2ユーザの心理状態に対する前記修飾の程度を、前記第1ユーザの心理状態に基づいて設定し、前記表現生成部は、設定された前記修飾の程度に基づいて、前記第2ユーザの心理状態が修飾された第2表現情報を生成し、前記出力部は、前記表現生成部が生成した前記第2表現情報を、前記第1ユーザが利用する提示装置に出力する。
【0013】
本発明の一実施形態は、コンピュータに、仮想空間に参加するユーザに関連する仮想空間内の状況を示す文脈情報を取得させ、前記ユーザの身体の状態を示す身体情報を前記ユーザごとに取得させ、取得させた前記文脈情報および前記身体情報に基づいて、前記仮想空間内での前記ユーザの心理状態を判定させ、判定させた前記ユーザの心理状態に対する修飾の程度を設定させ、設定させた前記修飾の程度に基づいて、前記ユーザの心理状態が修飾された表現を示す表現情報を生成させ、生成させた前記表現情報を、複数の前記ユーザのうち、前記身体情報が取得された第1ユーザの相手である第2ユーザが利用する提示装置に出力させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、ネットワークを介したユーザどうしであっても、実空間での対面のやりとりをしている感覚をユーザに与えることができる仮想空間制御装置およびプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態の仮想空間サービス提供システムのシステム構成の一例を示す図である。
図2】本実施形態の仮想空間サービス提供システムの機能構成の一例を示す図である。
図3】本実施形態の仮想空間サービス提供システムの動作の流れの一例を示す図である。
図4】本実施形態の第1情報の一例を示す図である。
図5】本実施形態の第2情報の一例を示す図である。
図6】ポジティブな心理状態に対する修飾度の一例を示す図である。
図7】ネガティブな心理状態に対する修飾度の一例を示す図である。
図8】本実施形態の表示部に表示される画像の一例を示す図である。
図9】本実施形態の修飾設定テーブルの一例を示す図である。
図10】オキシトシン分泌と社会的存在感の促進との関係の一例を示す図である。
図11】変形例における教師用端末装置の表示部に表示される画像の一例を示す図である。
図12】変形例における生徒用端末装置の表示部に表示される画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
図1は、本実施形態の仮想空間サービス提供システム1のシステム構成の一例を示す図である。仮想空間サービス提供システム1は、ネットワークNを介して、複数の端末装置20(例えば、端末装置20-1~20-n。nは自然数。)が互いに接続されることにより構成される。
端末装置20は、例えば、パーソナルコンピュータやスマートフォン、タブレットなどのコンピュータ装置であり、仮想空間サービスの提供を受けるユーザUが利用する装置である。なお、以下の説明において、仮想空間サービスの提供を受けるユーザUのことを、「仮想空間に参加するユーザU」ともいう。
【0017】
仮想空間サービス提供システム1は、仮想空間制御装置10と、サービス提供装置30とを備える。
【0018】
サービス提供装置30は、仮想空間サービス提供システム1が提供するサービスを管理および制御する。サービス提供装置30は、単一のサーバ装置によって構成されていてもよく、複数のサーバ装置による分散仮想サーバ(例えば、クラウドサーバ)として構成されていてもよい。サービス提供装置30は、ネットワークNを介した端末装置20間の通信によって、ユーザUに対して画像・音・振動・圧力・温度・匂いなどを提示することが可能である。サービス提供装置30は、あるユーザUの心理状態に応じた画像・音・振動・圧力・温度・匂いなどを他のユーザUに対して提示することにより、ユーザU間における社会的信号の伝達を行う。
【0019】
仮想空間制御装置10は、ユーザU間の関係性やサービス提供装置30が提供するサービスの文脈などに応じて、各ユーザUに提示される画像・音・振動・圧力・温度・匂いなどの状態や程度を制御する。
【0020】
本実施形態での一例として、仮想空間サービス提供システム1は、仮想空間内での対戦ゲームサービスを提供する。この仮想空間には、複数のユーザUが参加する。この一例では、ユーザUのうち、第1ユーザU01と第2ユーザU02とが、互いに対戦している。
第1ユーザU01は、端末装置20のうち、第1端末装置20-1を利用する。第2ユーザU02は、端末装置20のうち、端末装置20-2を利用する。
第1ユーザU01が利用する第1端末装置20-1には、第2ユーザU02の様子が提示される。第2ユーザU02が利用する第2端末装置20-2には、第1ユーザU01の様子が提示される。すなわち、端末装置20には、互いに、相手方ユーザUの様子が提示される。
仮想空間制御装置10は、ユーザUどうしの関係性、サービスの文脈(この一例では、対戦ゲームの進行状況)に基づいて、ユーザUの心理状態に修飾を施し、修飾された表現を相手方ユーザUに提示する。
【0021】
以下、仮想空間サービス提供システム1の具体的な機能構成について説明する。
図2は、本実施形態の仮想空間サービス提供システム1の機能構成の一例を示す図である。
【0022】
[端末装置の機能構成]
同図には、端末装置20のうち、第1端末装置20-1および第2端末装置20-2を示す。なお、いずれの端末装置20も同様の構成であるため、以下の説明において区別しない場合には、端末装置20と総称する。
【0023】
端末装置20は、通信部21と、操作取得部22と、撮像部23と、身体情報検出部24と、表示部25と、感覚提示部26とを備える。
通信部21は、無線通信(あるいは有線通信)インタフェイスとネットワークコントローラを備えており、ネットワークN(不図示)を介してサービス提供装置30と双方向の情報通信を行う。
操作取得部22は、例えばキーボード、ゲームパッド、ジョイスティック、マウス、タッチパネルなどを備えており、ユーザUが行う操作を取得する。操作取得部22は、取得した操作を、通信部21を介してサービス提供装置30に出力する。
撮像部23は、例えば動画カメラを備えており、ユーザUの表情、視線、姿勢を撮像する。撮像部23は、撮像した画像を、通信部21を介してサービス提供装置30に出力する。
【0024】
身体情報検出部24は、例えば、体温センサ、呼吸センサ、心拍センサ、皮膚電位センサ、血圧センサなどを備えており、ユーザUの身体情報54を取得する。身体情報検出部24は、取得した身体情報54を、通信部21を介してサービス提供装置30に出力する。
なお、身体情報検出部24は、十分に早いサンプリング周期(例えば、数10ms~数100ms)によって、ユーザUの身体情報54を取得する。仮想空間サービス提供システム1は、十分に早いサンプリング周期で取得されたユーザUの身体情報54を利用することにより、対面でのインタラクションと遜色なく、ユーザU間における社会的信号の伝達を行うことができる。
また、身体情報検出部24は、撮像部23が撮像した画像に含まれるユーザUの表情、視線、姿勢を身体情報54として、サービス提供装置30に出力してもよい。
【0025】
表示部25は、例えば、液晶ディスプレイを備えており、通信部21を介してサービス提供装置30から出力される画像を表示する。
【0026】
感覚提示部26は、例えば、スピーカー、送風機、振動発生装置、ユーザUの身体の一部に圧力を加える加圧装置、温感・冷感提示装置、香気発生装置などを備えており、サービス提供装置30から通信部21を介して提供される指示に基づいて、ユーザUに視覚、触覚、力覚、聴覚、嗅覚、などの感覚を生じさせる情報を提示する。なお、以下の説明において、ユーザUに感覚を生じさせる情報を提示することを、ユーザUに感覚を提示する、ともいう。
【0027】
なお、身体情報検出部24や感覚提示部26は、端末装置20に接続される外付け機器の機能として構成されていてもよいし、端末装置20が内蔵する機能として構成されていてもよい。また、複数の端末装置20のうち、一部の端末装置20については、上述した身体情報検出部24や感覚提示部26を備えていなくてもよい。
【0028】
[サービス提供装置の機能構成]
サービス提供装置30は、仮想空間サービス提供システム1がユーザUに提供するサービスを管理および制御する。本実施形態の一例の場合、サービス提供装置30は、対戦型ゲームにおける参加ユーザUの情報管理、課金管理、対戦相手のマッチング、ゲーム画像の提示、ゲームの進行管理、対戦状況の制御、対戦結果の判定、などを行う。
【0029】
サービス提供装置30は、通信部31と、ユーザ情報管理部32と、文脈判定部33とを、その機能部として備える。
通信部31は、無線通信(あるいは有線通信)インタフェイスとネットワークコントローラを備えており、ネットワークN(不図示)を介して各端末装置20と双方向の情報通信を行う。
ユーザ情報管理部32は、仮想空間サービス提供システム1が提供するサービスに参加するユーザUの情報を管理する。例えば、ユーザ情報管理部32は、仮想空間に参加するユーザUどうしの関係性を取得し、取得した関係性を第1情報51として記憶する。
第1情報51は、ユーザUが仮想空間サービス提供システム1に参加(例えば、システムへのログインや、サービス提供開始)したのち、サービスが提供されている間に、その内容が更新されない情報である。すなわち、第1情報51は、仮想空間に参加するユーザどうしの予め定められた関係性を示す情報である。
ここで、ユーザUどうしの予め定められた関係性には、ユーザUどうしが実社会において互いに友人であること、ユーザUどうしが実社会においては知り合いでなく関係性がないことなどが含まれる。ユーザUどうしの関係性には、友人の他に、上司と部下、先生と生徒、などの様々な社会的関係が含まれる。
なお、第1情報51は、サービスが提供されている間に、その内容が更新されない情報であればよく、サービスの提供開始前、あるいはサービスの提供終了後においては、更新されてもよい。例えば、ユーザUどうしの実社会における関係性が変化した場合には、第1情報51は、変化後の関係性に基づいて更新されてもよい。
また、第1情報51には、特定のユーザUどうしの関係性を示すものだけでなく、一般の人間関係に基づく社会的ルールや、心理的傾向を示す情報が含まれていてもよい。例えば、第1情報51は、上司と部下のように「ユーザU間においてパワーバランスに差がある」といった心理的傾向を示す情報であってもよい。
【0030】
文脈判定部33は、仮想空間サービス提供システム1が提供するサービスにおけるユーザUの相互関係の文脈を判定する。文脈判定部33は、判定した文脈を第2情報52として記憶する。
これら、第1情報51および第2情報52を総称して、文脈情報53ともいう。文脈情報53は、ユーザUに関連する仮想空間内の状況を示す情報である。
【0031】
ここで、サービスにおけるユーザUの文脈とは、仮想空間サービス提供システム1が提供するサービスにおける、背景事情、状況、前後関係、脈絡、などのことである。
文脈情報53は、仮想空間サービス提供システム1が提供するサービスにおける、背景事情、状況、前後関係、脈絡、などのうち、ユーザUどうしの関係性や、ユーザUの心理状態に影響を与えうる状況を示す情報である。
文脈は、ユーザUが仮想空間サービス提供システム1に参加したのち、例えば、システムへのログイン後や、サービスが提供されている間に変化してもよい。第2情報52は、仮想空間内での文脈に基づいて(例えば、リアルタイムに)変化する。
本実施形態の一例において、文脈とは、ゲームの進行によって様々に変化する、それぞれの場面の意味(例えば、冷静を保つべき状況であるか、興奮度を高めるべき状況であるか、互いに協力すべき状況であるのか否か)などをいう。
また、ユーザUの相互関係の文脈とは、複数のユーザUにおける、個々のユーザUの文脈どうしの組み合わせのことである。例えば、第1ユーザU01と、第2ユーザU02とにおけるユーザUの相互関係の文脈とは、複数のユーザUが対戦ゲームの相手どうしである場合に、一方のユーザU(第1ユーザU01)が優勢であり、他方のユーザU(第2ユーザU02)が劣勢である、などの状況をいう。
【0032】
[仮想空間制御装置の機能構成]
仮想空間制御装置10は、制御部11と、記憶部12とを備える。記憶部12は、ハードディスクや半導体メモリを備えており、プログラムやデータを記憶する。制御部11は、例えば、中央演算処理装置(CPU)を備えており、記憶部12に記憶されているプログラムに基づいて各種の処理を行う。
【0033】
制御部11は、文脈情報取得部111と、身体情報取得部112と、状態判定部113と、修飾度設定部114と、操作受付部115と、表現生成部116と、出力部117とを、その機能部として備える。
【0034】
文脈情報取得部111は、サービス提供装置30から文脈情報53を取得する。上述したように、文脈情報53には、仮想空間に参加するユーザUどうしの関係性を示す第1情報51が含まれる。
すなわち、文脈情報取得部111は、仮想空間に参加するユーザUどうしの関係性を示す第1情報51を、文脈情報53として取得する。
【0035】
なお、文脈情報53には、上述した第2情報52が含まれていてもよい。この第2情報52は、仮想空間内での文脈に基づいて変化する情報である。
この場合、文脈情報取得部111は、仮想空間に参加するユーザUどうしの関係性を示す第1情報51と、ユーザUの相互関係の文脈を示す第2情報52とを、文脈情報53として取得する。
【0036】
身体情報取得部112は、サービス提供装置30から身体情報54を取得する。上述したように、身体情報54は、各端末装置20の身体情報検出部24がユーザUから取得した情報である。サービス提供装置30は、各端末装置20から、それぞれのユーザUの身体情報54を取得する。この結果、サービス提供装置30には、ユーザUごとの身体情報54が収集される。本実施形態の一例では、サービス提供装置30には、第1ユーザU01の身体情報54と、第2ユーザU02の身体情報54とが収集される。
すなわち、身体情報取得部112は、ユーザUの身体の状態を示す身体情報54をユーザUごとに取得する。
【0037】
状態判定部113は、取得された文脈情報53および身体情報54に基づいて、仮想空間内でのユーザUの心理状態を判定する。ここで、ユーザUの心理状態とは、一例として、集中しているか否か、冷静であるか否か、興奮しているか否か、興味があるか否か、他のユーザUに対して攻撃的であるか否か、他のユーザUとの連帯感を感じているか否か、などをいう。状態判定部113が心理状態を判定する手法は、既知の手法のいずれであってもよい。
【0038】
修飾度設定部114は、判定されたユーザUの心理状態に対する修飾の程度を設定する。ここで、心理状態に対する修飾の程度とは、例えば、興奮しているユーザUについて、より興奮度を増加させるか、抑制させるかを示す指標である。
本実施形態においては、どのような心理状態に対してどの程度の修飾を行うかを示す設定ルールが、あらかじめ定められている。修飾度設定部114は、あらかじめ定められた設定ルールに基づいて、ユーザUの心理状態に対する修飾の程度を設定する。
なお、以下の説明において、心理状態に対する修飾の程度のことを「修飾度」ともいう。
【0039】
端末装置20の操作取得部22が、ユーザUによる修飾の程度(修飾度)の設定操作を受け付ける機能を有している場合がある。この場合には、操作受付部115は、操作取得部22が取得したユーザUによる修飾度の設定操作を受け付ける。修飾度設定部114は、操作受付部115が受け付けた設定操作に基づいて、ユーザUの心理状態に対する修飾度を設定する。
なお、修飾度設定部114は、あらかじめ定められた設定ルールによる修飾度を、操作受付部115が受け付けた設定操作に基づいて変更を加えることにより、ユーザUの心理状態に対する修飾度を設定するように構成されていてもよい。
また、端末装置20の操作取得部22が、ユーザUによる修飾度の設定操作を受け付ける機能を有していない場合がある。この場合には、修飾度設定部114は、ユーザUによる修飾度の設定操作によらず、あらかじめ定められた設定ルールに基づいて、ユーザUの心理状態に対する修飾度を設定する。
【0040】
表現生成部116は、設定された修飾度に基づいて、ユーザUの心理状態が修飾された表現を示す表現情報を生成する。ここで、表現情報とは、ユーザUの心理状態を示す情報として、当該ユーザUの相手方の端末装置20の表示部25や感覚提示部26に提示される情報である。
例えば、表現情報には、画像・音・振動・圧力・温度・匂いなどによるものが含まれる。
【0041】
出力部117は、表現生成部116が生成した表現情報を、複数のユーザUのうち、身体情報54が取得された第1ユーザU01の相手である第2ユーザU02が利用する端末装置20(すなわち、提示装置)に対して、サービス提供装置30の通信部31を介して出力する。
【0042】
なお、本実施形態では、仮想空間制御装置10、端末装置20およびサービス提供装置30はいずれも互いに独立した装置であるとして説明したが、これに限られない。例えば、サービス提供装置30は、仮想空間制御装置10の機能を包含していてもよい。また、端末装置20が、サービス提供装置30や仮想空間制御装置10の機能の一部(または全部)を備えていてもよい。
【0043】
[仮想空間サービス提供システム1の動作の流れ]
次に、図3を参照して、仮想空間サービス提供システム1の動作の流れについて説明する。
【0044】
図3は、本実施形態の仮想空間サービス提供システム1の動作の流れの一例を示す図である。ここでは、サービス提供装置30がサービスとして提供する対戦ゲームに、第1ユーザU01と第2ユーザU02とが互いの対戦相手として参加している場合を一例にして説明する。
【0045】
サービス提供装置30は、第1ユーザU01が利用する第1端末装置20-1と、第2ユーザU02が利用する第2端末装置20-2とに対して、対戦ゲームのサービスを提供する。
サービス提供装置30のユーザ情報管理部32は、第1ユーザU01および第2ユーザU02のそれぞれのアカウントに紐づけられたユーザUの属性情報などに基づいて、ユーザUどうしの関係性を示す第1情報51を生成する。
【0046】
図4は、本実施形態の第1情報51の一例を示す図である。この一例において、第1ユーザU01と第2ユーザU02とは、実社会での友人であるという関係性を有している。
【0047】
サービス提供装置30の文脈判定部33は、提供している対戦ゲームの文脈を判定し、第2情報52を生成する。
【0048】
図5は、本実施形態の第2情報52の一例を示す図である。この一例において、第1ユーザU01の第2情報52は、第2ユーザU02とゲームで対戦中であり、第2ユーザU02に対して勝っている状況であることを示す。第2ユーザU02の第2情報52は、第1ユーザU01とゲームで対戦中であり、第1ユーザU01に対して負けている状況であることを示す。
なお、文脈判定部33は、文脈の変化(例えば、対戦ゲームの状況の進展)に伴い、第2情報52を随時更新する。
文脈は、例えば、得点を競い合う対戦ゲームにおいては、単に勝ちや負けの状況だけでなく、勝ちや負けの程度の変化によっても変化しうる。例えば、ユーザUが0対2で負けている状況から、ユーザUが1対2で負けている状況に変化した場合に、ユーザUの心理状態が変化するため、文脈が変化するといえる。すなわち、文脈情報53とは、仮想空間に参加するユーザUに関連する仮想空間内の状況を示す情報である。文脈情報53は、仮想空間内における状況のさまざまな変化によって、変化する。
【0049】
(ステップS10)図3に戻り、文脈情報取得部111は、第1情報51と第2情報52とを、文脈情報53として取得する。上述したように、第1情報51は、第1ユーザU01と第2ユーザU02とが、実社会での友人であるという関係性を有していることを示している。第2情報52は、第1ユーザU01が勝っており、第2ユーザU02が負けていることを示している。
なお、文脈情報取得部111は、第1情報51と第2情報52とを、文脈情報53として取得するとして記載するがこれに限られない。例えば、文脈情報取得部111は、第1情報51と第2情報52とうちの一方を、文脈情報53として取得してもよい。
【0050】
(ステップS20)身体情報取得部112は、第1ユーザU01および第2ユーザU02について、ユーザUの身体の状態を示す身体情報54を取得する。この一例では、身体情報54は、第1ユーザU01および第2ユーザU02ともに、平常時よりも発汗量が多いことを示している。
【0051】
(ステップS30)状態判定部113は、取得された文脈情報53および身体情報54に基づいて、仮想空間内でのユーザUの心理状態を判定する。この一例では、状態判定部113は、第1ユーザU01について、ゲームに勝っており、かつ発汗量が多いため、ゲームの相手方よりも優位な状況であり、かつ興奮していると判定する。状態判定部113は、第2ユーザU02について、ゲームに負けており、かつ発汗量が多いため、ゲームの相手方よりも劣位な状況であり、かつ興奮している(例えば、焦っている)と判定する。
【0052】
なお、状態判定部113は、ユーザUの心理状態の種類を判定してもよい。ここで、心理状態の種類とは、例えば、ポジティブな心理状態であるか、ネガティブな心理状態であるかをいう。この一例では、状態判定部113は、ユーザUの心理状態がポジティブであるか、ネガティブであるかを判定する。
【0053】
(ステップS40)修飾度設定部114は、判定されたユーザUの心理状態に対する修飾度を設定する。
なお、状態判定部113がユーザUの心理状態の種類を判定する場合がある、この場合には、修飾度設定部114は、状態判定部113によって判定された心理状態の種類に基づいて、ユーザUの心理状態に対する修飾度を設定する。
ここで、図6および図7を参照して、心理状態に対する修飾度の一例について説明する。
【0054】
図6は、ポジティブな心理状態に対する修飾度の一例を示す図である。ユーザUの心理状態がポジティブである場合、修飾度が高く(図中の+方向に)なれば、ポジティブさが強調された表現となり、修飾度が低く(図中の-方向に)なれば、ポジティブさが抑制された表現となる。ここで、ポジティブな心理状態とは、ユーザU間に共感的あるいは利他的行動を起こさせやすい心理状態をいう。例えば、ポジティブな心理状態とは、嬉しい、楽しい、といった心理状態をいう。
【0055】
図7は、ネガティブな心理状態に対する修飾度の一例を示す図である。ユーザUの心理状態がネガティブである場合、修飾度が高く(図中の+方向に)なれば、ネガティブさが強調された表現となり、修飾度が低く(図中の-方向に)なれば、ネガティブさが抑制された表現となる。ここで、ネガティブな心理状態とは、ユーザU間に共感的あるいは利他的行動を起こさせにくい心理状態をいう。例えば、ネガティブな心理状態とは、悲しい、悔しい、つまらない、といった心理状態をいう。
【0056】
なお、図6および図7に示した修飾度の大きさや方向は一例であって、これに限られない。例えば、ユーザUの心理状態がネガティブである場合、修飾度を低くした場合に、ネガティブさが強調された表現となるようにされていてもよい。このように構成した場合、ユーザUの心理状態がポジティブである場合とネガティブである場合とで、心理状態の程度の方向と、修飾度の方向とを一致させることができる。
【0057】
本実施形態の一例の場合、第1ユーザU01と第2ユーザU02とは、実社会での友人であるため、互いに相手の性格などをよく理解できていると考えられる。したがって、第1ユーザU01と第2ユーザU02との関係性のもとでは、対戦ゲーム中のユーザU間のやりとりや、ゲーム結果(例えば、勝敗)などによって興奮度が増せば、ユーザU間の共感性や利他性がより向上するような効果が期待できる。この場合、修飾度設定部114は、ユーザUの心理状態の修飾度をより高くして(例えば、ユーザUが興奮している場合には、興奮度が増加するように)、修飾度を設定する。
一例として、修飾度設定部114は、ユーザUの心理状態がポジティブである場合にはポジティブさが増すように、ユーザUの心理状態がネガティブである場合にはネガティブさが増すように、修飾度を設定する。
このように修飾度を設定することにより、仮想空間サービス提供システム1は、ユーザUの心理状態を強調した表現にすることができる。このように構成された仮想空間サービス提供システム1によれば、相手方のユーザUに伝達される社会的信号が強調されたものとなり、ユーザU間の共感や利他行動を促進させることができる。
【0058】
一方、ユーザUの組み合わせによっては、実社会での関係性が薄い(例えば、実社会での関係性がない)場合もあり得る。実社会での関係性が薄いユーザUの組み合わせの場合には、対戦ゲームのゲーム中のやりとりや勝敗の結果などによって興奮度が増すことで、かえってユーザU間の共感性や利他性が低下してしまう(例えば、相手への攻撃性が増す)ということもあり得る。この場合、仮想空間制御装置10は、ユーザUの心理状態の修飾度をより低くして(例えば、ユーザUが興奮している場合には、興奮度が抑えられるようにして)、修飾度を設定する。
一例として、修飾度設定部114は、ユーザUの心理状態がポジティブである場合にはポジティブさが減るように、ユーザUの心理状態がネガティブである場合にはネガティブさが減るように、修飾度を設定する。
このように修飾度を設定することにより、仮想空間サービス提供システム1は、ユーザUの心理状態を抑えた表現にすることができる。このように構成された仮想空間サービス提供システム1によれば、相手方のユーザUに伝達される社会的信号が抑制されたものとなり、ユーザU間の共感や利他行動を促進させることができる。
【0059】
なお、修飾度設定部114は、ユーザUの心理状態がポジティブである場合にはポジティブさが増えるように、ユーザUの心理状態がネガティブである場合にはネガティブさが減るように、修飾度を設定してもよい。
このように修飾度を設定することにより、仮想空間サービス提供システム1は、ユーザUの心理状態を、よりポジティブな表現にすることができる。このように構成された仮想空間サービス提供システム1によれば、相手方のユーザUに伝達される社会的信号がよりポジティブなものとなり、ユーザU間の共感や利他行動を促進させることができる。
【0060】
図8は、本実施形態の表示部25に表示される画像の一例を示す図である。同図には、第2ユーザU02が利用する第2端末装置20-2の表示部25に表示される画像の一例を示す。表示部25には、ゲーム画像P1と、ユーザ画像P2と、修飾度設定画像P3とが表示される。
ゲーム画像P1とは、サービス提供装置30が提供する対戦ゲームのゲーム画像である。
ユーザ画像P2とは、第2ユーザU02の対戦相手(この一例の場合、第1ユーザU01)の状態を示す画像である。このユーザ画像P2は、第1ユーザU01が利用する第1端末装置20-1の撮像部23が撮像した画像に対して、仮想空間制御装置10が修飾を施した画像である。
修飾度設定画像P3とは、ユーザUによる修飾度の設定操作を行うための画像である。修飾度設定画像P3には、操作画像P4(例えば、スライダ)が表示されている。ユーザUは、操作画像P4を操作することにより、ユーザ画像P2の修飾度を設定する。
【0061】
なお、修飾度設定画像P3には、第1修飾度設定画像P3-1と、第2修飾度設定画像P3-2とが含まれていてもよい。第1修飾度設定画像P3-1とは、第1操作画像P4-1によって、ポジティブな心理状態についての修飾度の設定操作を行うための画像である。第2修飾度設定画像P3-2とは、第2操作画像P4-2によって、ネガティブな心理状態についての修飾度の設定操作を行うための画像である。
ユーザUは、第1操作画像P4-1および第2操作画像P4-2を個別に操作することにより、心理状態の種類(例えば、ポジティブな心理状態、ネガティブな心理状態)ごとに、修飾度を設定することができる。
【0062】
修飾度設定部114は、上述のようにしてユーザUの心理状態に対する修飾度を設定した結果を、修飾設定テーブル55に記憶させる。
【0063】
図9は、本実施形態の修飾設定テーブル55の一例を示す図である。この一例では、修飾度設定部114は、ユーザUごとに、心理状態の種類と、修飾度と、修飾度調整値と、調整後の修飾度とを、修飾設定テーブル55として記憶させる。この修飾設定テーブル55において、修飾度とは、文脈情報53および身体情報54に基づいて判定されたユーザUの心理状態と、あらかじめ定められた設定ルールとに基づいて設定される修飾度である。修飾度調整値とは、操作受付部115が受け付けた設定操作による、修飾度を調整する値である。調整後の修飾度とは、修飾度に対して、修飾度調整値による演算を施した修飾度である。同図に示す一例の場合、調整後の修飾度は、修飾度(つまり、ユーザUの心理状態と、あらかじめ定められた設定ルールとに基づいて設定された値)に、修飾度調整値(つまり、ユーザUの操作によって設定された値)を加算することによって得られる。
なお、修飾度調整値を0(ゼロ)に固定することで、修飾度と、調整後の修飾度とが一致することになるため、修飾度の調整操作を受け付けない構成にすることができる。
【0064】
(ステップS50)図3に戻り、表現生成部116は、ステップS40において設定された修飾度に基づいて、表現情報(この一例の場合、ユーザ画像P2)を生成する。
【0065】
(ステップS60)出力部117は、ステップS50において生成された表現情報(例えば、ユーザ画像P2)を、サービス提供装置30を介して端末装置20に出力する。端末装置20の表示部25には、図8に示したユーザ画像P2が表示される。
【0066】
以上説明したように、本実施形態の仮想空間サービス提供システム1は、ユーザUの心理状態を、相手方ユーザUに対して画像・音・振動・圧力・温度・匂いなどを提示することによって提示することにより、ユーザU間における社会的信号の伝達を行う。このように構成された仮想空間サービス提供システム1によれば、画像のみで伝達する場合に比べ、より、実空間での対面のやりとりをしている感覚をユーザUに与えることができる。
【0067】
実際のユーザUを対象にした実験の結果、ユーザUの心理状態を、相手方ユーザUに対して画像・音・振動・圧力・温度・匂いなどによって提示することによって、画像のみで伝達する場合に比べて、ユーザUにおいて分泌されるオキシトシンの量が増加することが分かった。
【0068】
図10は、オキシトシン分泌と社会的存在感の促進との関係の一例を示す図である。同図は、仮想空間でのユーザUどうしによるゲームプレイ(例えば、オンライン対戦)前後におけるオキシトシン分泌の変化率を示す。同図横軸のBLはオフライン対戦(BL)を、NFはオンライン対戦(ユーザUの心理状態を相手方に提示しない場合)を、VFはオンライン対戦(ユーザUの心理状態(例えば、ユーザUの表情を示す画像)を相手方に提示した場合)を、VBFはオンライン対戦(ユーザUの心理状態(例えば、ユーザUの表情を示す画像およびユーザUの心拍数を示す画像)を相手方に提示した場合)を、それぞれ示す。本実施形態の仮想空間サービス提供システム1により、ユーザUの心理状態を相手方に提示した場合には、ユーザUの心理状態を相手方に提示しない場合に比べ、オキシトシン分泌が促進されていることが示された。
また、本実施形態の仮想空間サービス提供システム1において、VF(すなわち、ユーザUの表情を示す画像)の場合に比べ、VBF(すなわち、ユーザUの表情を示す画像およびユーザUの心拍数を示す画像)を相手方に提示した場合のほうが、相手方ユーザUにおいて分泌されるオキシトシンの量が多いことが示された。
つまり、ユーザUの心理状態を表現情報として相手のユーザUに提示する際に、ユーザUの心理状態を示す情報の種類が多いほうが、オキシトシン分泌が促進されることが示された。
オキシトシンは、いわゆる絆ホルモンとも称され、その分泌量によってユーザU間で感じられている絆の強さを客観的に表現できる。すなわち、上述のように構成された仮想空間サービス提供システム1によれば、相手への共感や利他行動を促すことができることが客観的に示された。
【0069】
また、本実施形態の仮想空間サービス提供システム1は、ユーザUの心理状態を、ユーザUどうしの関係性や文脈に応じて相手方ユーザUに伝達する。このように構成された仮想空間サービス提供システム1によれば、ネットワークNを介したユーザUどうしであっても、実空間での対面のやりとりをしている感覚をユーザUに与えることができる。
【0070】
また、本実施形態の仮想空間サービス提供システム1は、ユーザUの心理状態に対する修飾の程度を設定する修飾度設定部114を備えている。仮想空間サービス提供システム1は、修飾度設定部114によって設定された修飾の程度に基づいて、ユーザUの心理状態が修飾された表現を示す表現情報(例えば、ユーザ画像P2)を、相手のユーザUに提示する。このように構成された仮想空間サービス提供システム1によれば、相手方ユーザUの心理状態を、ユーザUどうしの関係性や文脈に応じて、より強調したり、より抑制したりして、相手方ユーザUに伝達することができる。
したがって、例えば、ユーザUの関係性や文脈によって、ネットワークN社会で問題となりうる攻撃的な言動やネットいじめなどの兆候がある場合には、ユーザUの心理状態を抑制して相手方ユーザUに伝達することで、問題行動への発展を抑止することができる。
また、例えば、ユーザUの関係性や文脈によって、ユーザUどうしがお互いに楽しいと感じている場合には、ユーザUの心理状態を強調して相手方ユーザUに伝達することで、相手への共感や利他行動を促すことができる。
【0071】
[変形例]
上述した実施形態では、仮想空間サービス提供システム1が対戦ゲームを提供する場合について説明したが、サービスの内容はこれに限られない。仮想空間サービス提供システム1は、例えば、教師と複数の生徒とが参加する仮想教室サービスを提供してもよい。
【0072】
図11は、変形例における教師用端末装置20-4の表示部25に表示される画像の一例を示す図である。
図12は、変形例における生徒用端末装置20-3の表示部25に表示される画像の一例を示す図である。
本変形例の仮想教室サービスでは、生徒が生徒用端末装置20-3を利用し、教師が教師用端末装置20-4を利用して、授業を行う。以下の説明において、生徒のことを第1ユーザU01ともいい、教師のことを第2ユーザU02ともいう。この一例において、第1ユーザU01(つまり、生徒)が複数おり、それぞれの第1ユーザU01が生徒用端末装置20-3を利用する。また、第2ユーザU02(つまり、教師)が1名おり、第2ユーザU02が教師用端末装置20-4を利用する。つまり、本変形例において、端末装置20は、1つの教師用端末装置20-4と、複数の生徒用端末装置20-3とで構成される。
【0073】
図11に示すように、教師用端末装置20-4には、複数の第1ユーザU01(つまり、生徒)の画像(第1ユーザ画像P5)が表示される。それぞれの第1ユーザ画像P5には、第1ユーザU01の心理状態を示すユーザ状態提示画像P6が対応付けられている。ユーザ状態提示画像P6とは、生徒の授業への集中度を、ユーザUの心理状態として示す画像である。例えば、ユーザ状態提示画像P6は、横棒グラフによって授業への集中度を示す。
【0074】
図12に示すように、生徒用端末装置20-3には、第2ユーザU02(つまり、教師)の画像(第2ユーザ画像P7)が表示される。この第2ユーザ画像P7は、表現生成部116によって、表情や態度の表現が生成された画像である。第2ユーザ画像P7は、状態判定部113による、生徒の授業への集中度の判定結果に基づいて、表現の修飾度が設定されている。つまり、本変形例において、第2ユーザ画像P7が示す教師の表情や態度は、生徒の授業への集中度に応じて、その修飾度が変化する。
一例として、状態判定部113が、生徒の授業への集中度が高いと判定した場合、第2ユーザ画像P7は、教師の表情や態度について、ポジティブさが強調された修飾がなされる。
また、状態判定部113が、生徒の授業への集中度が低いと判定した場合、第2ユーザ画像P7は、教師の表情や態度について、ポジティブさが抑制された修飾、あるいはネガティブさが強調された修飾、がなされる。
【0075】
すなわち、状態判定部113は、第1ユーザU01(例えば、生徒)の心理状態と、第2ユーザU02(例えば、教師)の心理状態とをそれぞれ判定する。
修飾度設定部114は、判定された第2ユーザU02の心理状態に対する修飾の程度を、第1ユーザU01の心理状態に基づいて設定する。
表現生成部116は、設定された修飾の程度に基づいて、第2ユーザU02の心理状態が修飾された第2ユーザ画像P7(第2表現情報)を生成する。
出力部117は、表現生成部116が生成した第2ユーザ画像P7(第2表現情報)を、第1ユーザU01が利用する端末装置20(提示装置)に出力する。
【0076】
このように構成された仮想空間サービス提供システム1によれば、ネットワークNを介して参加するユーザUどうしの心理状態を、双方向に伝達することができる。したがって、ネットワークNを介したユーザUどうしであっても、実空間での対面のやりとりをしている感覚をユーザUに与えることができる。
また、このように構成された仮想空間サービス提供システム1によれば、相手方ユーザUの心理状態を、ユーザUどうしの関係性や文脈に応じて、より強調したり、より抑制したりしつつ、双方向に相手方ユーザUに伝達することができる。
【0077】
また、本変形例の仮想空間制御装置10において、状態判定部113は、複数のユーザUのそれぞれの心理状態に基づいて、複数のユーザUを含むユーザ集団の心理状態を判定してもよい。
例えば、複数の生徒の集中度がいずれも高い場合には、ユーザ集団(この例では、1クラス分の生徒の集団)全体の集中度が高いとして、ユーザ集団の心理状態を判定する。
また、複数の生徒の集中度が低い場合や、集中度のばらつきが大きい場合には、ユーザ集団(この例では、1クラス分の生徒の集団)全体の集中度が低いとして、ユーザ集団の心理状態を判定する。
この場合、表現生成部116は、判定されたユーザU集団の心理状態の表現を生成するように構成されてもよい。例えば、状態判定部113が、クラス全体の集中度が高いと判定した場合、第2ユーザ画像P7は、教師の表情や態度について、ポジティブさが強調された修飾がなされる。
【0078】
なお、上述した対戦ゲームや仮想教室は、仮想空間サービス提供システム1が提供可能なサービスの一例であって、これに限られない。例えば、仮想空間サービス提供システム1は、仮想空間を利用した遠隔会議システムや、複数のユーザUが参加するeスポーツなどのサービスを提供するものとして構成することが可能である。
【0079】
以上、本発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。上述した各実施形態に記載の構成を組合せてもよい。
【0080】
なお、上記の実施形態における各装置が備える各部は、専用のハードウェアにより実現されるものであってもよく、また、メモリおよびマイクロプロセッサにより実現させるものであってもよい。
【0081】
なお、各装置が備える各部は、メモリおよびCPU(中央演算装置)により構成され、各装置が備える各部の機能を実現するためのプログラムをメモリにロードして実行することによりその機能を実現させるものであってもよい。
【0082】
また、各装置が備える各部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、制御部が備える各部による処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0083】
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組合せで実現できるものであってもよい。
【符号の説明】
【0084】
1…仮想空間サービス提供システム、10…仮想空間制御装置、20…端末装置、30…サービス提供装置、111…文脈情報取得部、112…身体情報取得部、113…状態判定部、114…修飾度設定部、115…操作受付部、116…表現生成部、117…出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12