(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064535
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】極低温冷凍機、およびコールドヘッドシリンダの補強部品
(51)【国際特許分類】
F25B 9/00 20060101AFI20240507BHJP
【FI】
F25B9/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173189
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】出村 健太
(57)【要約】
【課題】極低温冷凍機のコールドヘッドを補強する。
【解決手段】極低温冷凍機10は、コールドヘッドシリンダ16と、コールドヘッドシリンダ16の外側に配置され、コールドヘッドシリンダ16を補強するシリンダサポート50と、を備える。コールドヘッドシリンダ16は、第1材料で形成される。シリンダサポート50は、フィラーを含有するフィラー含有樹脂材料で形成される。第1材料およびフィラー含有樹脂材料は、基準温度から所定の極低温まで冷却されるときの熱収縮率が実質的に等しい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コールドヘッドシリンダと、
前記コールドヘッドシリンダの外側に配置され、前記コールドヘッドシリンダを補強するシリンダサポートと、を備え、
前記コールドヘッドシリンダは、第1材料で形成され、
前記シリンダサポートは、フィラーを含有するフィラー含有樹脂材料で形成され、
前記第1材料および前記フィラー含有樹脂材料は、基準温度から所定の極低温まで冷却されるときの熱収縮率が実質的に等しいことを特徴とする極低温冷凍機。
【請求項2】
前記シリンダサポートは、前記コールドヘッドシリンダの外周面に接触していることを特徴とする請求項1に記載の極低温冷凍機。
【請求項3】
前記フィラー含有樹脂材料のフィラー含有率は、40質量パーセント以上80質量パーセント以下であることを特徴とする請求項1に記載の極低温冷凍機。
【請求項4】
前記フィラーは、前記熱収縮率が前記第1材料に比べて小さい第2材料で形成されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の極低温冷凍機。
【請求項5】
コールドヘッドシリンダの補強部品であって、前記コールドヘッドシリンダは、第1材料で形成されており、前記補強部品は、
前記コールドヘッドシリンダの外側に配置されるシリンダサポートを備え、
前記シリンダサポートは、フィラーを含有するフィラー含有樹脂材料で形成され、
前記第1材料および前記フィラー含有樹脂材料は、基準温度から所定の極低温まで冷却されるときの熱収縮率が実質的に等しいことを特徴とする補強部品。
【請求項6】
コールドヘッドシリンダと、
前記コールドヘッドシリンダの外周面に接触して配置され、前記コールドヘッドシリンダを補強するシリンダサポートと、を備えることを特徴とする極低温冷凍機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極低温冷凍機、およびコールドヘッドシリンダの補強部品に関する。
【背景技術】
【0002】
極低温冷凍機は、例えば超伝導装置など極低温下で使用される機器を極低温に冷却するためによく利用されている。極低温冷凍機のコールドヘッドが被冷却物(例えば超伝導コイル)を収容した真空容器に設置され、コールドヘッドの低温部が真空容器内で被冷却物と熱的に結合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
極低温冷凍機のコールドヘッドと被冷却物が構造的に剛に接続される場合、極低温冷却による被冷却物の熱収縮に伴う相対変位によって、コールドヘッドに荷重がかかり、それに起因してコールドヘッドが変形することが懸念される。そうした変形は、例えばギフォード・マクマホン(Gifford-McMahon;GM)冷凍機の場合、コールドヘッドシリンダとその内部で往復動するディスプレーサとのクリアランスを局所的に変化させ、それにより極低温冷凍機の冷凍能力が低下することがある。
【0005】
本発明のある態様の例示的な目的のひとつは、極低温冷凍機のコールドヘッドを補強することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によると、極低温冷凍機は、コールドヘッドシリンダと、コールドヘッドシリンダの外側に配置され、コールドヘッドシリンダを補強するシリンダサポートと、を備える。コールドヘッドシリンダは、第1材料で形成される。シリンダサポートは、フィラーを含有するフィラー含有樹脂材料で形成される。第1材料およびフィラー含有樹脂材料は、基準温度から所定の極低温まで冷却されるときの熱収縮率が実質的に等しい。
【0007】
本発明のある態様によると、コールドヘッドシリンダの補強部品が提供される。コールドヘッドシリンダは、第1材料で形成されている。補強部品は、コールドヘッドシリンダの外側に配置されるシリンダサポートを備える。シリンダサポートは、フィラーを含有するフィラー含有樹脂材料で形成される。第1材料およびフィラー含有樹脂材料は、基準温度から所定の極低温まで冷却されるときの熱収縮率が実質的に等しい。
【0008】
本発明のある態様によると、極低温冷凍機は、コールドヘッドシリンダと、コールドヘッドシリンダの外周面に接触して配置され、コールドヘッドシリンダを補強するシリンダサポートと、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、極低温冷凍機のコールドヘッドを補強することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態に係る極低温冷凍機を概略的に示す図である。
【
図2】実施の形態に係る極低温冷凍機を概略的に示す図である。
【
図3】変形例に係るシリンダサポートを概略的に示す図である。
【
図4】
図4(a)および
図4(b)は、変形例に係るシリンダサポートを概略的に示す図である。
【
図5】
図5(a)および
図5(b)は、変形例に係るシリンダサポートを概略的に示す図である。
【
図6】
図6(a)および
図6(b)は、変形例に係るシリンダサポートを概略的に示す図である。
【
図7】変形例に係るシリンダサポートを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。説明および図面において同一または同等の構成要素、部材、処理には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。図示される各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。実施の形態は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0012】
図1および
図2は、実施の形態に係る極低温冷凍機10を概略的に示す図である。
図1には、極低温装置100に搭載された極低温冷凍機10を示し、
図2には、極低温冷凍機10の内部構造を示す。
【0013】
極低温装置100は、極低温冷凍機10とともに、超伝導コイル102と、真空容器104と、輻射シールド106とを備える。極低温装置100は、被冷却物の一例としての超伝導コイル102を室温から極低温に冷却するとともに、超伝導コイル102の使用中、超伝導コイル102を極低温に維持するように構成される。
【0014】
超伝導コイル102は、例えば単結晶引き上げ装置、NMRシステム、MRIシステム、サイクロトロンなどの加速器、核融合システムなどの高エネルギー物理システム、またはその他の高磁場利用機器(図示せず)の磁場源として高磁場利用機器に搭載され、その機器に必要とされる高磁場を発生させることができる。超伝導コイル102は、超伝導転移温度以下の極低温に冷却された状態で外部電源(図示せず)から通電されることにより強力な磁場を発生するように構成される。
【0015】
真空容器104は、超伝導コイル102を超伝導状態とするのに適する極低温真空環境を提供する断熱真空容器であり、クライオスタットとも呼ばれる。真空容器104は、例えば、円柱状の形状、または中心部に中空部を有する円筒状の形状を有してもよい。真空容器104は、周囲圧力(たとえば大気圧)に耐えるように、例えばステンレス鋼などの金属材料またはその他の適する高強度材料で形成される。
【0016】
極低温冷凍機10は、圧縮機12と、コールドヘッド14とを備える。圧縮機12は、極低温冷凍機10の作動ガスをコールドヘッド14から回収し、回収した作動ガスを昇圧して、再び作動ガスをコールドヘッド14に供給するよう構成されている。コールドヘッド14は、膨張機とも呼ばれる。作動ガスは、冷媒ガスとも称され、通例はヘリウムガスであるが、適切な他のガスが用いられてもよい。
【0017】
図1では例として、1台の極低温冷凍機10を示しているが、例えば超伝導コイル102が大型の場合など、必要に応じて、極低温装置100は、一つの同じ被冷却物を冷却する複数台の極低温冷凍機10を備えてもよい。極低温冷凍機10は、一例として、二段式のギフォード・マクマホン(Gifford-McMahon;GM)冷凍機である。よって、極低温冷凍機10によって冷却すべき所望の物体または媒体との熱交換のために、コールドヘッド14は、低温部として第1冷却ステージ33と第2冷却ステージ35を備える。第1冷却ステージ33および第2冷却ステージ35は、例えば、銅などの金属材料またはその他の高い熱伝導率をもつ材料で形成される。
【0018】
コールドヘッド14は、第1シリンダ16aと第2シリンダ16bを有するコールドヘッドシリンダ16と、第1シリンダサポート50aと、第2シリンダサポート50bとを備える。第1シリンダサポート50aは、第1シリンダ16aの外側に配置され、第1シリンダ16aを補強する。第2シリンダサポート50bは、第2シリンダ16bの外側に配置され、第2シリンダ16bを補強する。以下では、第1シリンダサポート50aと第2シリンダサポート50bを、シリンダサポート50と総称することもある。シリンダサポート50の詳細は後述する。
【0019】
第1シリンダ16aと第2シリンダ16bは、一例として、円筒形状を有する部材であり、第2シリンダ16bが第1シリンダ16aよりも小径である。第1シリンダ16aと第2シリンダ16bは同軸に配置され、第1シリンダ16aの下端が第2シリンダ16bの上端に剛に連結されている。コールドヘッドシリンダ16は通例、例えばステンレス鋼など、第1冷却ステージ33および第2冷却ステージ35に比べて熱伝導率の低い金属材料で形成される。
【0020】
また、コールドヘッドシリンダ16は、コールドヘッド14を真空容器104に設置するためのコールドヘッド装着フランジ22を備える。第1シリンダ16aは、コールドヘッド装着フランジ22を第1冷却ステージ33に接続し、第2シリンダ16bは、第1冷却ステージ33を第2冷却ステージ35に接続する。コールドヘッドハウジング20は、第1シリンダ16aとは反対側でコールドヘッド装着フランジ22に取り付けられている。
【0021】
コールドヘッドシリンダ16内に、コールドヘッド14は、第1ディスプレーサ18aと第2ディスプレーサ18bとを有するディスプレーサ組立体18を備える。第1ディスプレーサ18aと第2ディスプレーサ18bは、一例として、円筒形状を有する部材であり、第2ディスプレーサ18bが第1ディスプレーサ18aよりも小径である。第1ディスプレーサ18aと第2ディスプレーサ18bは同軸に配置されている。
【0022】
第1ディスプレーサ18aは、第1シリンダ16aに収容され、第2ディスプレーサ18bは、第2シリンダ16bに収容されている。第1ディスプレーサ18aは、第1シリンダ16aに沿って軸方向に往復移動可能であり、第2ディスプレーサ18bは、第2シリンダ16bに沿って軸方向に往復移動可能である。第1ディスプレーサ18aと第2ディスプレーサ18bは互いに連結され、一体に移動する。
【0023】
本書では、極低温冷凍機10の構成要素間の位置関係を説明するために、便宜上、ディスプレーサの軸方向往復動の上死点に近い側を「上」、下死点に近い側を「下」と表記することとする。上死点は膨張空間の容積が最大となるディスプレーサの位置であり、下死点は膨張空間の容積が最小となるディスプレーサの位置である。極低温冷凍機10の運転時には軸方向上方から下方へと温度が下がる温度勾配が生じるので、上側を高温側、下側を低温側と呼ぶこともできる。
【0024】
第1ディスプレーサ18aは、第1蓄冷器26を収容する。第1蓄冷器26は、第1ディスプレーサ18aの筒状の本体部の中に、例えば銅などの金網またはその他適宜の第1蓄冷材を充填することによって形成されている。第1ディスプレーサ18aの上蓋部および下蓋部は第1ディスプレーサ18aの本体部とは別の部材として提供されてもよく、第1ディスプレーサ18aの上蓋部および下蓋部は、締結、溶接など適宜の手段で本体に固定され、それにより第1蓄冷材が第1ディスプレーサ18aに収容されてもよい。
【0025】
同様に、第2ディスプレーサ18bは、第2蓄冷器28を収容する。第2蓄冷器28は、第2ディスプレーサ18bの筒状の本体部の中に、例えばビスマスなどの非磁性蓄冷材、HoCu2などの磁性蓄冷材、またはその他適宜の第2蓄冷材を充填することによって形成されている。第2蓄冷材は粒状に成形されていてもよい。第2ディスプレーサ18bの上蓋部および下蓋部は第2ディスプレーサ18bの本体部とは別の部材として提供されてもよく、第2ディスプレーサ18bの上蓋部の下蓋部は、締結、溶接など適宜の手段で本体に固定され、それにより第2蓄冷材が第2ディスプレーサ18bに収容されてもよい。
【0026】
ディスプレーサ組立体18は、上部室30、第1膨張室32、第2膨張室34をコールドヘッドシリンダ16の内部に形成する。上部室30は、第1ディスプレーサ18aの上蓋部と第1シリンダ16aの上部との間に形成される。第1膨張室32は、第1ディスプレーサ18aの下蓋部と第1冷却ステージ33との間に形成される。第2膨張室34は、第2ディスプレーサ18bの下蓋部と第2冷却ステージ35との間に形成される。第1冷却ステージ33は、第1膨張室32を取り囲むように第1シリンダ16aの下部に固着され、第2冷却ステージ35は、第2膨張室34を取り囲むように第2シリンダ16bの下部に固着されている。
【0027】
第1蓄冷器26は、第1ディスプレーサ18aの上蓋部に形成された作動ガス流路36aを通じて上部室30に接続され、第1ディスプレーサ18aの下蓋部に形成された作動ガス流路36bを通じて第1膨張室32に接続されている。第2蓄冷器28は、第1ディスプレーサ18aの下蓋部から第2ディスプレーサ18bの上蓋部へと形成された作動ガス流路36cを通じて第1蓄冷器26に接続されている。また、第2蓄冷器28は、第2ディスプレーサ18bの下蓋部に形成された作動ガス流路36dを通じて第2膨張室34に接続されている。
【0028】
第1膨張室32、第2膨張室34と上部室30との間の作動ガス流れが、コールドヘッドシリンダ16とディスプレーサ組立体18との間のクリアランスではなく、第1蓄冷器26、第2蓄冷器28に導かれるようにするために、第1シール38a、第2シール38bが設けられていてもよい。第1シール38aは、第1ディスプレーサ18aと第1シリンダ16aとの間に配置されるように第1ディスプレーサ18aの上蓋部に装着されてもよい。第2シール38bは、第2ディスプレーサ18bと第2シリンダ16bとの間に配置されるように第2ディスプレーサ18bの上蓋部に装着されてもよい。
【0029】
図1に示されるように、コールドヘッド14は、圧力切替バルブ40を収容するコールドヘッドハウジング20を備える。コールドヘッドハウジング20は、コールドヘッド装着フランジ22でコールドヘッドシリンダ16と結合され、それにより、圧力切替バルブ40およびディスプレーサ組立体18を収容する気密容器が構成される。
【0030】
図2に示されるように、圧力切替バルブ40は、高圧バルブ40aと低圧バルブ40bを備え、コールドヘッドシリンダ16内に周期的圧力変動を発生させるように構成されている。圧縮機12の作動ガス吐出口が高圧バルブ40aを介して上部室30に接続され、圧縮機12の作動ガス吸入口が低圧バルブ40bを介して上部室30に接続されている。高圧バルブ40aと低圧バルブ40bは、選択的かつ交互に開閉するように(すなわち、一方が開いているとき他方が閉じるように)構成されている。高圧(例えば2~3MPa)の作動ガスが圧縮機12から高圧バルブ40aを通じてコールドヘッド14に供給され、低圧(例えば0.5~1.5MPa)の作動ガスがコールドヘッド14から低圧バルブ40bを通じて圧縮機12に回収される。理解のために、作動ガスの流れる方向を
図2に矢印で示す。
【0031】
また、コールドヘッド14は、ディスプレーサ組立体18の往復動を駆動する駆動モータ42を備える。駆動モータ42は、コールドヘッドハウジング20に取り付けられている。駆動モータ42は、たとえばスコッチヨーク機構などの運動変換機構43を介してディスプレーサ駆動軸44に連結されている。運動変換機構43は、圧力切替バルブ40と同様に、コールドヘッドハウジング20に収容されている。ディスプレーサ駆動軸44は、運動変換機構43から上部室30の中へと延び、第1ディスプレーサ18aの上蓋部に固定されている。駆動モータ42が駆動されるとき、駆動モータ42の回転出力は運動変換機構43によってディスプレーサ駆動軸44の軸方向往復動に変換され、ディスプレーサ組立体18はコールドヘッドシリンダ16内を軸方向に往復する。また、駆動モータ42は、高圧バルブ40aと低圧バルブ40bを選択的かつ交互に開閉するようにこれらバルブに連結されている。
【0032】
コールドヘッド14は、この例では、真空容器104の天板に設置されている。真空容器104の天板には開口部が設けられ、そこからコールドヘッド14が真空容器104内に挿し込まれている。この開口部でコールドヘッド装着フランジ22が真空容器104に取り付けられ、コールドヘッド14は真空容器104に固定される。コールドヘッド14は、コールドヘッドハウジング20を上方に向け、第1冷却ステージ33および第2冷却ステージ35を下方に向けるようにして、縦向きに真空容器104に設置される。コールドヘッドハウジング20は、真空容器104の周囲環境(例えば室温大気圧環境)に露出されている。
【0033】
図1に示されるように、真空容器104内には、極低温冷凍機10の低温部および超伝導コイル102とともに、輻射シールド106が配置される。輻射シールド106は、第1冷却ステージ33と熱的に結合され第1冷却温度に冷却される。輻射シールド106は、第1冷却ステージ33に直接取り付けられ、第1冷却ステージ33と熱的に結合される。あるいは、輻射シールド106は、可撓性または剛性をもつ伝熱部材を介して第1冷却ステージ33に取り付けられてもよい。輻射シールド106は、例えば銅などの金属材料またはその他の高い熱伝導率をもつ材料で形成される。輻射シールド106は、第2冷却温度に冷却される超伝導コイル102、極低温冷凍機10の第2冷却ステージ35、およびその他の低温部を囲むように配置され、外部からの輻射熱からこれら低温部を熱的に保護することができる。
【0034】
超伝導コイル102は、第2冷却ステージ35に直接取り付けられ、第2冷却ステージ35と熱的に結合される。あるいは、超伝導コイル102は、可撓性または剛性をもつ伝熱部材を介して第2冷却ステージ35に取り付けられてもよい。伝熱部材は、例えば銅などの金属材料またはその他の高い熱伝導率をもつ材料で形成される。
【0035】
極低温冷凍機10は、圧縮機12および駆動モータ42が運転されるとき、第1膨張室32および第2膨張室34において周期的な容積変動とこれに同期した作動ガスの圧力変動を発生させ、それにより冷凍サイクルが構成され、第1冷却ステージ33および第2冷却ステージ35が所望の極低温に冷却される。
【0036】
第1冷却ステージ33は、第1冷却温度、例えば30K~80Kに冷却される。輻射シールド106は、第1冷却ステージ33によって第1冷却温度に冷却される。第2冷却ステージ35は、第1冷却温度よりも低い第2冷却温度、例えば3K~20Kに冷却される。第2冷却温度は、超伝導コイル102の超伝導転移温度より低い温度である。超伝導コイル102は、第2冷却ステージ35によって第2冷却温度に冷却される。図示されない電源から超伝導コイル102に通電することにより、超伝導コイル102は、強力な磁場を発生することができる。このようにして、極低温装置100を運転することができる。
【0037】
本書の冒頭で述べたように、コールドヘッド14と超伝導コイル102が構造的に剛に接続される既存設計では、極低温冷却による超伝導コイル102の熱収縮に伴い、超伝導コイル102がコールドヘッド14に対して変位しようとするため、コールドヘッド14に荷重がかかり、それに起因してコールドヘッド14が変形することが懸念される。その結果、望ましくないことに、極低温冷凍機10の冷凍能力に悪影響が出るかもしれない。例えば、第2シリンダ16bと第2ディスプレーサ18bとの隙間が局所的に拡大するかもしれない。そうすると、本来は第2ディスプレーサ18b内の蓄冷材を通過すべき第2シリンダ16b内の作動ガス流れが、蓄冷材を迂回してこの隙間を通るようになり、コールドヘッド14の二段の冷凍能力を低下させるかもしれない。冷凍能力の低下がもし大きければ、超伝導コイル102の冷却に悪影響が出ることも懸念される。
【0038】
そこで、典型的な設計では、コールドヘッド14と超伝導コイル102は、例えば銅編線、なまし銅板など、変形可能な伝熱要素で熱接続される。極低温冷却による熱変形がこの伝熱要素の変形により吸収され、コールドヘッド14への荷重を低減しまたは防止することができる。しかし、このような変形可能な伝熱要素は、剛性の伝熱部材を用いた熱接続に比べて、熱抵抗が大きくなりがちである。これは、超伝導コイル102の冷却温度を高める要因となりうる。
【0039】
加えて、超伝導コイル102は一般に、真空容器104内で支持体により支持される。真空容器104および支持体は、これらを伝熱経路とする周囲環境から超伝導コイル102への熱流入をなるべく小さくするように断熱設計がなされているが、それでもいくらかの入熱はありうる。これも、超伝導コイル102の冷却温度を高める要因となりうる。
【0040】
このような問題に対処すべく、この実施の形態では、コールドヘッド14には、コールドヘッドシリンダ16の補強部品としてシリンダサポート50が取り付けられている。
【0041】
この例では、第1シリンダサポート50aは、第1シリンダ16aに対応して円筒状の形状を有し、その内径は第1シリンダ16aの外径に等しい。第1シリンダサポート50aは、その内周面が第1シリンダ16aの外周面に接触するようにコールドヘッドシリンダ16に取り付けられている。第1シリンダサポート50aは、コールドヘッド装着フランジ22と第1冷却ステージ33との間でコールドヘッド14の軸方向(図において上下方向)に延在する。
【0042】
取付の一例として、第1シリンダサポート50aは、両端でコールドヘッドシリンダ16に支持されてもよい。例えば、第1シリンダサポート50aの一端(図において上端)がコールドヘッド装着フランジ22に固定されてもよい。第1シリンダサポート50aの上端は、外フランジを有し、コールドヘッド装着フランジ22の下面に例えばボルト等の締結部材により固定されてもよい。あるいは、所望の結合力が得られる限り、例えば接着など他の適宜の固定方法が用いられてもよい。第1シリンダサポート50aの他端(図において下端)は、第1冷却ステージ33の上縁部に突き当てられていてもよい。この場合、第1シリンダサポート50aの下端は第1冷却ステージ33に接触するが固定されてはいない。あるいは、第1シリンダサポート50aの下端も、上端と同様にフランジを設けるなどして、第1冷却ステージ33に固定されてもよい。
【0043】
同様にして、第2シリンダサポート50bは、第2シリンダ16bに対応して円筒状の形状を有し、その内径は第2シリンダ16bの外径に等しい。第2シリンダサポート50bは、その内周面が第2シリンダ16bの外周面に接触するようにコールドヘッドシリンダ16に取り付けられている。第2シリンダサポート50bは、第1冷却ステージ33と第2冷却ステージ35との間でコールドヘッド14の軸方向に延在する。
【0044】
第2シリンダサポート50bは、第1シリンダサポート50aと同様に、両端でコールドヘッドシリンダ16に支持されてもよい。例えば、第2シリンダサポート50bの上端が第1冷却ステージ33に固定されてもよい。第2シリンダサポート50bの上端は、外フランジを有し、第1冷却ステージ33の下面に例えばボルト等の締結部材により固定されてもよい。第2シリンダサポート50bの下端は、第2冷却ステージ35の上縁部に突き当てられていてもよい。この場合、第2シリンダサポート50bの下端は第2冷却ステージ35に接触するが固定されてはいない。あるいは、第2シリンダサポート50bの下端も、上端と同様にフランジを設けるなどして、第2冷却ステージ35に固定されてもよい。
【0045】
シリンダサポート50は、分割構造を有してもよい。例えば、シリンダサポート50は、周方向に分割された複数の円弧状パーツを組み合わせることで円筒状に形成されてもよい。例えば、図示されるように、シリンダサポート50は、2つの同径の半円筒パーツを組み合わせて一つの円筒状サポートを形成するように構成されてもよい。この場合、個々のパーツがそれぞれコールドヘッドシリンダ16に取り付けられる。例えば、第1シリンダサポート50aであれば、これを形成する複数のパーツがそれぞれコールドヘッド装着フランジ22に取り付けられることで円筒状に組み合わされてもよい。
【0046】
シリンダサポート50は、コールドヘッドシリンダ16と熱収縮率(より正確には、基準温度から所定の極低温まで冷却されるときの熱収縮率)が実質的に等しい材料で形成されることが好ましい。よって、第1シリンダサポート50aは、第1シリンダ16aと熱収縮率が実質的に等しい材料で形成され、第2シリンダサポート50bは、第2シリンダ16bと熱収縮率が実質的に等しい材料で形成されてもよい。
【0047】
シリンダサポート50の熱収縮率がコールドヘッドシリンダ16のそれと異なる場合、極低温冷却によりシリンダサポート50およびコールドヘッドシリンダ16のうち一方が他方よりも大きく収縮しようとするため熱応力が発生し、これはコールドヘッドシリンダ16に歪みをもたらしうる。その結果、上述のように、極低温冷凍機10の冷凍能力に悪影響が出るかもしれない。
【0048】
作用しうる熱応力およびこれに起因するコールドヘッドシリンダ16の歪みを実用上十分に小さくするうえで、シリンダサポート50を形成する材料の熱収縮率は、コールドヘッドシリンダ16を形成する材料の熱収縮率の例えば90%以上、またはより好ましくは95%以上であってもよい。同様の理由から、シリンダサポート50を形成する材料の熱収縮率は、コールドヘッドシリンダ16を形成する材料の熱収縮率の例えば110%以下、またはより好ましくは105%以下であってもよい。シリンダサポート50を形成する材料の熱収縮率がコールドヘッドシリンダ16を形成する材料の熱収縮率と比較してこのような範囲にある場合には、両者は実質的に等しいとみなすことができる。
【0049】
ある材料について基準温度Thから所定の極低温Tlまで冷却されるときの熱収縮率Aは、A=(LTh-LTl)/LThと定義しうる。LThは、その材料のサンプルの基準温度Thでの長さであり、LTlは、その材料の同じサンプルの所定の極低温Thでの長さである。サンプルの長さは、第1シリンダサポート50a(または第2シリンダサポート50b)の軸方向長さであってもよい。基準温度Thと所定の極低温Tlをそれぞれ、300K、0Kとするとき、熱収縮率Aは、A=(L300-L0)/L300と定義しうる。室温から液体窒素温度に冷却されるときの熱収縮の大きさは、たいてい、室温から約0Kに冷却されるときの熱収縮の大きさのおよそ9割に達するので、0Kでの基準長さL0に代えて、熱収縮率Aは、液体窒素温度(77K)でのサンプル長さL77を用いて、A=(L300-L77)/L300と定義してもよい。すなわち、材料サンプルは300Kで基準長さL300を有し、この基準長さが77Kに冷却されたとき長さL77に縮小する。よって、熱収縮率は、材料サンプルの長さを室温と極低温(例えば液体窒素温度)で測定することにより、取得することができる。
【0050】
この実施の形態では、シリンダサポート50は、合成樹脂材料で形成されてもよい。好ましくは、シリンダサポート50とコールドヘッドシリンダ16の熱収縮率を同程度とするために、シリンダサポート50は、フィラー含有樹脂材料で形成されてもよい。コールドヘッドシリンダ16の材料を第1材料(例えばSUS304などのステンレス鋼)と呼ぶとき、シリンダサポート50を形成するフィラー含有樹脂材料は、基準温度から所定の極低温まで冷却されるときの熱収縮率が第1材料に比べて小さい第2材料で形成されたフィラーをベース樹脂材料に含有したものであってもよい。シリンダサポート50を形成する材料は、こうしたフィラーとベース樹脂材料の混合物であってもよい。
【0051】
ベース樹脂材料は、例えばエポキシ樹脂など適宜の合成樹脂材料であってもよい。一般的に合成樹脂材料の熱収縮率は金属材料に比べて大きいのと同様に、ベース樹脂材料の熱収縮率は、上述の第1材料の熱収縮率に比べて大きくてもよい。
【0052】
フィラーは、例えばガラスフィラーであってもよい。ガラスフィラーは、例えば、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)のフィラーであってもよい。あるいは、フィラーは、シリカフィラーであってもよい。フィラーの形状または性状は、例えばパウダー、チョップドストランド、ローピングなど任意である。
【0053】
フィラー含有樹脂材料のフィラー含有率は、例えば40質量パーセント以上であってもよい。また、フィラー含有樹脂材料のフィラー含有率は、例えば80質量パーセント以下であってもよい。フィラー含有率が40質量パーセント未満の場合にはフィラー含有樹脂材料の熱収縮率が第1材料の熱収縮率を顕著に上回る一方、フィラー含有率が80質量パーセントを超える場合にはフィラー含有樹脂材料の熱収縮率が第1材料の熱収縮率を顕著に下回るものと想定されるからである。
【0054】
このように、熱収縮率の比較的大きいベース樹脂材料と熱収縮率の比較的小さいフィラーを混合することにより、フィラー含有樹脂材料と第1材料の熱収縮率を実質的に等しくすることができる。例えば、フィラー含有樹脂材料の熱収縮率を第1材料の熱収縮率の90%以上110%以下とすることができる。または、好ましくは、フィラー含有樹脂材料の熱収縮率を第1材料の熱収縮率の95%以上105%以下とすることができる。このようにして、シリンダサポート50とコールドヘッドシリンダ16で熱収縮率を実質的に等しくすることができる。
【0055】
ここで、第1シリンダサポート50aの材料の熱収縮率Ajと第1シリンダ16aの材料の熱収縮率As(ただし、Aj≠Asとする)が力学的に満たすべき条件を考える。極低温冷却による第1シリンダサポート50aの熱収縮に伴い第1シリンダ16aに生じる応力は、
(dL/L)Ej
と表される。Lは、極低温冷却される前の第1シリンダサポート50aおよび第1シリンダ16a(第1シリンダサポート50aで囲まれた第1シリンダ16aの部分)の軸方向長さである。dL=Lj-Lsであり、LjとLsはそれぞれ、極低温冷却された後の第1シリンダサポート50aおよび第1シリンダ16a(第1シリンダサポート50aで囲まれた第1シリンダ16aの部分)の(収縮した)軸方向長さである。Ejは、第1シリンダサポート50aの材料のヤング率である。
【0056】
第1シリンダ16aに許容される応力をσjmと表すとき、
(dL/L)Ej<σjm
が満たされるべきである。よって、dL=(L-AjL)-(L-AsL)=(Aj-As)Lを考慮すると、第1シリンダサポート50aの材料の熱収縮率Ajは、
Aj<σjm/Ej+As
を満たすべきである。
【0057】
実施の形態によると、シリンダサポート50によりコールドヘッドシリンダ16が補強される。シリンダサポート50が両端でコールドヘッドシリンダ16に固定される場合、軸方向の引張荷重および圧縮荷重、さらには軸方向に垂直な横方向の荷重など、さまざまな方向についてコールドヘッドシリンダ16の耐荷重性を向上することができる。
【0058】
シリンダサポート50はコールドヘッドシリンダ16の外周面に接触しているため、少なくとも横方向の荷重(曲げ荷重)に対する補強の役割を果たすことができる。この場合、シリンダサポート50がコールドヘッドシリンダ16に両端で固定されることは必須ではない。シリンダサポート50は、一方の端部のみでコールドヘッドシリンダ16に固定され、コールドヘッドシリンダ16に支持されてもよい。あるいは、シリンダサポート50は両端ともコールドヘッドシリンダ16に固定されず、コールドヘッドシリンダ16に摺動可能な状態で装着されていてもよい。
【0059】
このようにして、シリンダサポート50がコールドヘッドシリンダ16に取り付けられることで、コールドヘッド14の強度が高まり、外部荷重に対して変形しにくくなる。したがって、コールドヘッド14と超伝導コイル102を構造的に剛に接続したとしても、上述のようなコールドヘッド14の変形に起因する極低温冷凍機10の冷凍能力の低下を緩和または防止することができる。銅編線のような変形可能な伝熱要素で接続する場合に比べて、コールドヘッド14と超伝導コイル102との間の熱抵抗を小さくすることができ、極低温冷凍機10は効率的に超伝導コイル102を冷却することができる。効率的な冷却は、極低温装置100の長寿命化にもつながり、有利である。
【0060】
さらに、コールドヘッド14と超伝導コイル102を構造的に剛に接続することで(例えば、図示されるように、コールドヘッド14に超伝導コイル102を吊り下げて支持することで)、超伝導コイル102と真空容器104との熱接触は最小限となるか、または不要となる。従来のような支持体を介した周囲環境から超伝導コイル102への入熱も低減または防止することができる。
【0061】
シリンダサポート50は、さまざまな製法により製造可能である。例えば、上述のフィラー含有樹脂材料のブロックを準備し、このブロックを切削など機械加工することにより、シリンダサポート50が製造されてもよい。
【0062】
あるいは、シリンダサポート50の型を準備し、この型にフィラー含有樹脂材料の原材料(例えば、液状のベース樹脂材料とフィラーとを混合した液状の原材料)を流し込み、硬化させ、型から取り出すことにより、シリンダサポート50が製造されてもよい。この場合、シリンダサポート50の型は、コールドヘッドシリンダ16のまわりに取り付けられてもよく、この型内(つまり型とコールドヘッドシリンダ16との間の空間)にフィラー含有樹脂材料の原材料を流し込み、硬化させ、型を取り外すことにより、シリンダサポート50が製造されてもよい。コールドヘッドシリンダ16に密着されたシリンダサポート50を得ることができる。
【0063】
実施の形態に係るシリンダサポート50は、上述の特定の構造および配置には限られず、さまざまな他の形態をとることもできる。いくつかの例を後述する。
【0064】
例えば、
図3に示されるように、コールドヘッドシリンダ16は、薄肉部52を有し、この薄肉部52がシリンダサポート50により補強されてもよい。薄肉部52は、コールドヘッドシリンダ16(例えば第1シリンダ16a)の軸方向中間部に設けられてもよい。薄肉部52は、コールドヘッドシリンダ16のうち他の部位(例えば、第1シリンダ16aのうち、薄肉部52をコールドヘッド装着フランジ22に接続するシリンダ部分)に比べてシリンダ厚さが小さい部分である。逆の見方をすると、コールドヘッドシリンダ16のうちシリンダサポート50を装着した部分を薄肉化することができる、とも言える。薄肉化によりコールドヘッドシリンダ16の断面積が小さくなり、コールドヘッドシリンダ16を通じた伝導損失(例えば、第1シリンダ16aを伝熱経路とするコールドヘッド装着フランジ22から第1冷却ステージ33への入熱)を減らすことができる。同様にして、第2シリンダ16bの薄肉部に第2シリンダサポート50bが装着されてもよい。
【0065】
また、
図3に例示されるように、シリンダサポート50を取り付けるための追加フランジ54がコールドヘッドシリンダ16に設けられてもよい。追加フランジ54をコールドヘッドシリンダ16の任意の位置に設けることにより、シリンダサポート50をコールドヘッドシリンダ16の任意の位置に取り付けることができる。
【0066】
シリンダサポート50の軸方向に垂直な断面が円形であることは必須ではなく、他の形状であってもよい。例えば、作用する荷重の方向が既知である場合、シリンダサポート50は、その荷重方向に適合した断面形状を有してもよい。そうした例を
図4(a)および
図4(b)に示す。
図4(a)には、半円筒状の断面をもつシリンダサポート50が示され、
図4(b)には、シリンダサポート50から径方向外向きに突出し軸方向に延在するリブ56を有する円筒状のシリンダサポート50が示されている。
【0067】
上述の実施の形態では、シリンダサポート50は軸方向に全長にわたりコールドヘッドシリンダ16の外周面に接触しているが、これに限られない。シリンダサポート50はコールドヘッドシリンダ16の外周面から空間をあけてコールドヘッドシリンダ16の外側に配置されてもよい。そうした例を
図5(a)および
図5(b)に示す。
図5(a)には、コーン状の形状をもつシリンダサポート50が示され、
図5(b)には、パイプ状のシリンダサポート50が示されている。
【0068】
図6(a)に示されるように、シリンダサポート50は、コールドヘッドシリンダ16の外周面から空間をあけてコールドヘッドシリンダ16の外側に配置されてもよい。第1シリンダサポート50aは、コールドヘッド装着フランジ22と第1冷却ステージ33とを接続し、第1シリンダサポート50aと第1シリンダ16aとの間には空間が形成されている。第2シリンダサポート50bは、第1冷却ステージ33と第2冷却ステージ35とを接続し、第2シリンダサポート50bと第2シリンダ16bとの間には空間が形成されている。このようにしても、シリンダサポート50は、コールドヘッドシリンダ16を補強することができる。
【0069】
また、
図6(b)に示されるように、第1シリンダサポート50aは、第1冷却ステージ33に固定される第1追加フランジ58aとコールドヘッド装着フランジ22とを接続し、第1シリンダサポート50aと第1シリンダ16aとの間には空間が形成されてもよい。輻射シールド106は、第1追加フランジ58aに固定されてもよい。あるいは、第1シリンダサポート50aは、第1追加フランジ58aと真空容器104とを接続してもよい。第2シリンダサポート50bは、第2冷却ステージ35に固定される第2追加フランジ58bと第1追加フランジ58aとを接続し、第2シリンダサポート50bと第2シリンダ16bとの間には空間が形成されてもよい。超伝導コイル102は、第2追加フランジ58bに固定されてもよい。
【0070】
上述の実施の形態では、シリンダサポート50は、合成樹脂材料で形成されているが、本発明はこれに限られない。シリンダサポート50は、例えば金属材料など他の材料で形成されてもよい。例えば、
図7に示されるように、シリンダサポート50は、コールドヘッドシリンダ16と同じ材料、例えばステンレス鋼で形成されたサポート本体60を備えてもよい。このようにすれば、シリンダサポート50とコールドヘッドシリンダ16で熱収縮率を実質的に等しくすることができる。
【0071】
この場合、シリンダサポート50を通じたコールドヘッドシリンダ16の高温部から低温部への熱伝導を低減するために、シリンダサポート50は、サポート本体60の内周面に断熱層62を備えてもよい。シリンダサポート50は、断熱層62を介してコールドヘッドシリンダ16の外周面に接触してもよい。断熱層62は、例えばフッ素樹脂層であってもよい。
【0072】
なお、上述のように、シリンダサポート50が一方の端部のみでコールドヘッドシリンダ16に固定されているか、またはシリンダサポート50が両端ともコールドヘッドシリンダ16に固定されずにコールドヘッドシリンダ16に摺動可能な状態で装着されている場合には、シリンダサポート50とコールドヘッドシリンダ16の熱収縮率は異なっていてもよい。この場合、シリンダサポート50は、例えば、フィラー含有樹脂材料ではなく、フィラーを含有しない汎用の合成樹脂材料で形成されてもよい。シリンダサポート50がコールドヘッドシリンダ16の外周面に接触していれば、少なくとも横方向の荷重(曲げ荷重)に対する補強の役割を果たしうる。
【0073】
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上記実施形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。ある実施の形態に関連して説明した種々の特徴は、他の実施の形態にも適用可能である。組合せによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態それぞれの効果をあわせもつ。
【0074】
上述の実施の形態では、極低温冷凍機10が多段式のGM冷凍機である場合を例として説明しているが、本発明はこれに限られない。極低温冷凍機10は、単段式のGM冷凍機であってもよい。極低温冷凍機10は、パルス管冷凍機、スターリング冷凍機、またはそのほかのタイプの単段式または多段式の極低温冷凍機であってもよい。また、極低温冷凍機10によって冷却される被冷却物は、超伝導コイル102に限られず、例えば極低温液体冷媒を貯留する液体槽など他の被冷却物であってもよい。
【0075】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用の一側面を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0076】
10 極低温冷凍機、 14 コールドヘッド、 16 コールドヘッドシリンダ、 16a 第1シリンダ、 16b 第2シリンダ、 50 シリンダサポート、 50a 第1シリンダサポート、 50b 第2シリンダサポート。