(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064538
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】電源装置及び電源装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20240507BHJP
【FI】
H02M3/28 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173195
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鎌倉 輝男
(72)【発明者】
【氏名】小林 貴之
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA14
5H730AS01
5H730AS08
5H730AS17
5H730BB27
5H730BB57
5H730DD03
5H730DD04
5H730DD16
5H730EE13
5H730FD01
5H730FD11
5H730FG05
(57)【要約】
【課題】変換効率を向上する。
【解決手段】第1電圧が入力される第1ブリッジ回路と、第1ブリッジ回路から出力される交流電圧が第1巻線に入力され、誘起された交流電圧を第2巻線から出力する、変圧器と、第2巻線から出力される交流電圧を第2電圧に変換して出力する、第2ブリッジ回路と、第1電圧と第1巻線の巻数との積と、第2電圧と第2巻線の巻数との積と、の比である入出力電圧比に基づいて、第1ブリッジ回路と第2ブリッジ回路との間の第1位相差を一定にする、制御部と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電圧が入力される第1ブリッジ回路と、
前記第1ブリッジ回路から出力される交流電圧が第1巻線に入力され、誘起された交流電圧を第2巻線から出力する、変圧器と、
前記第2巻線から出力される交流電圧を第2電圧に変換して出力する、第2ブリッジ回路と、
前記第1電圧と前記第1巻線の巻数との積と、前記第2電圧と前記第2巻線の巻数との積と、の比である入出力電圧比に基づいて、前記第1ブリッジ回路と前記第2ブリッジ回路との間の第1位相差を一定にする、制御部と、
を含む、
ことを特徴とする、電源装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記入出力電圧比が1:1を含む一定範囲内の場合には、前記第1位相差を予め定められた値で一定にし、
前記入出力電圧比が前記一定の範囲外の場合には、前記第1位相差を、入力電流を循環電流で除した値である入力電流循環電流比率が最大となる値で一定にする、
ことを特徴とする、請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記制御部は、
出力指令値が第1閾値未満の場合には、前記第1ブリッジ回路及び前記第2ブリッジ回路のスイッチング周波数を一定にし、
出力指令値が前記第1閾値以上の場合には、前記第1ブリッジ回路及び前記第2ブリッジ回路のスイッチング周波数を単調減少させ、
出力指令値が第2閾値未満の場合には、前記第1ブリッジ回路の中のアーム間の第2位相差及び前記第2ブリッジ回路の中のアーム間の第3位相差を単調減少させ、
出力指令値が前記第2閾値以上の場合には、前記第2位相差及び前記第3位相差を一定にする、
ことを特徴とする、請求項1に記載の電源装置。
【請求項4】
前記制御部は、
出力指令値が第1閾値未満の場合には、前記第1ブリッジ回路及び前記第2ブリッジ回路のスイッチング周波数を一定にし、
出力指令値が前記第1閾値以上の場合には、前記第1ブリッジ回路及び前記第2ブリッジ回路のスイッチング周波数を単調減少させ、
出力指令値が第2閾値未満の場合には、前記第1ブリッジ回路及び前記第2ブリッジ回路の各アームのハイサイド及びローサイドのスイッチング素子の内のデューティ比が小さい方のデューティ比を単調増加させ、各アームのハイサイド及びローサイドのスイッチング素子の内の他方のデューティ比を単調減少させ、
出力指令値が前記第2閾値以上の場合には、前記第1ブリッジ回路及び前記第2ブリッジ回路の各アームのハイサイド及びローサイドのスイッチング素子のデューティ比を0.5で一定にする、
ことを特徴とする、請求項1に記載の電源装置。
【請求項5】
前記第1閾値は、前記第2閾値以下である、
ことを特徴とする、請求項3又は4に記載の電源装置。
【請求項6】
第1電圧が入力される第1ブリッジ回路と、前記第1ブリッジ回路から出力される交流電圧が第1巻線に入力され、誘起された交流電圧を第2巻線から出力する、変圧器と、前記第2巻線から出力される交流電圧を第2電圧に変換して出力する、第2ブリッジ回路と、を含む電源装置の制御方法であって、
前記第1電圧と前記第1巻線の巻数との積と、前記第2電圧と前記第2巻線の巻数との積と、の比である入出力電圧比に基づいて、前記第1ブリッジ回路と前記第2ブリッジ回路との間の第1位相差を一定にする、
ことを特徴とする、電源装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電源装置及び電源装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、絶縁型DAB(Dual Active Bridge)双方向コンバータが記載されている。DABコンバータは、デューティ比を0.5で一定にし且つスイッチング周波数を一定にし、1次側ブリッジ回路と2次側ブリッジ回路との間の位相差を制御することにより、出力電圧、出力電流又は出力電力を制御できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5027264号明細書
【特許文献2】特開2020-5331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
DABコンバータは、出力電圧、出力電流又は出力電力に依って、即ち、1次側ブリッジ回路と2次側ブリッジ回路との間の位相差に依って、回路内部を循環する電流(循環電流)成分が増大し、無効電流成分が大きくなり、変換効率が低下する。
【0005】
特許文献2には、ZVS(Zero Volt Switching)を行う、DAB方式のDC-DCコンバータが記載されている。特許文献2記載のDC-DCコンバータは、目標電力に応じて、出力角変調モードまたは位相制御モードを実行する。但し、特許文献2には、変換効率を向上することは、記載されていない。また、特許文献2には、第1フルブリッジ回路と第2フルブリッジ回路との間の位相差を固定することは、記載されていない。
【0006】
本開示は、変換効率を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様の電源装置は、
第1電圧が入力される第1ブリッジ回路と、
前記第1ブリッジ回路から出力される交流電圧が第1巻線に入力され、誘起された交流電圧を第2巻線から出力する、変圧器と、
前記第2巻線から出力される交流電圧を第2電圧に変換して出力する、第2ブリッジ回路と、
前記第1電圧と前記第1巻線の巻数との積と、前記第2電圧と前記第2巻線の巻数との積と、の比である入出力電圧比に基づいて、前記第1ブリッジ回路と前記第2ブリッジ回路との間の第1位相差を一定にする、制御部と、
を含む、
ことを特徴とする。
【0008】
前記電源装置において、
前記制御部は、
前記入出力電圧比が1:1を含む一定範囲内の場合には、前記第1位相差を予め定められた値で一定にし、
前記入出力電圧比が前記一定の範囲外の場合には、前記第1位相差を、入力電流を循環電流で除した値である入力電流循環電流比率が最大となる値で一定にする、
ことを特徴とする。
【0009】
前記電源装置において、
前記制御部は、
出力指令値が第1閾値未満の場合には、前記第1ブリッジ回路及び前記第2ブリッジ回路のスイッチング周波数を一定にし、
出力指令値が前記第1閾値以上の場合には、前記第1ブリッジ回路及び前記第2ブリッジ回路のスイッチング周波数を単調減少させ、
出力指令値が第2閾値未満の場合には、前記第1ブリッジ回路の中のアーム間の第2位相差及び前記第2ブリッジ回路の中のアーム間の第3位相差を単調減少させ、
出力指令値が前記第2閾値以上の場合には、前記第2位相差及び前記第3位相差を一定にする、
ことを特徴とする。
【0010】
前記電源装置において、
前記制御部は、
出力指令値が第1閾値未満の場合には、前記第1ブリッジ回路及び前記第2ブリッジ回路のスイッチング周波数を一定にし、
出力指令値が前記第1閾値以上の場合には、前記第1ブリッジ回路及び前記第2ブリッジ回路のスイッチング周波数を単調減少させ、
出力指令値が第2閾値未満の場合には、前記第1ブリッジ回路及び前記第2ブリッジ回路の各アームのハイサイド及びローサイドのスイッチング素子の内のデューティ比が小さい方のデューティ比を単調増加させ、各アームのハイサイド及びローサイドのスイッチング素子の内の他方のデューティ比を単調減少させ、
出力指令値が前記第2閾値以上の場合には、前記第1ブリッジ回路及び前記第2ブリッジ回路の各アームのハイサイド及びローサイドのスイッチング素子のデューティ比を0.5で一定にする、
ことを特徴とする。
【0011】
前記電源装置において、
前記第1閾値は、前記第2閾値以下である、
ことを特徴とする。
【0012】
本開示の一態様の電源装置の制御方法は、
第1電圧が入力される第1ブリッジ回路と、前記第1ブリッジ回路から出力される交流電圧が第1巻線に入力され、誘起された交流電圧を第2巻線から出力する、変圧器と、前記第2巻線から出力される交流電圧を第2電圧に変換して出力する、第2ブリッジ回路と、を含む電源装置の制御方法であって、
前記第1電圧と前記第1巻線の巻数との積と、前記第2電圧と前記第2巻線の巻数との積と、の比である入出力電圧比に基づいて、前記第1ブリッジ回路と前記第2ブリッジ回路との間の第1位相差を一定にする、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、変換効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、第1の実施形態の電源装置の構成を示す図である。
【
図2】
図2は、DABのブリッジ回路間の第1位相差φ
p-sと変換電力との関係を示す図である。
【
図3】
図3は、DABのブリッジ回路間の第1位相差φ
p-sと入力電流循環電流比率との関係を示す図である。
【
図4】
図4は、DABのブリッジ回路間の第1位相差φ
p-sと入力電流循環電流比率との関係を示す図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態の電源装置の制御例を説明する図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態の電源装置の回路シミュレーション結果を示す図である。
【
図7】
図7は、第1の実施形態の電源装置の制御部の構成例を示す図である。
【
図8】
図8は、第2の実施形態の電源装置の制御例を説明する図である。
【
図9】
図9は、第2の実施の形態の電源装置の回路シミュレーション結果を示す図である。
【
図10】
図10は、第3の実施形態の電源装置の制御例を説明する図である。
【
図11】
図11は、第3の実施形態の電源装置の回路シミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本開示に係る実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではなく、また、以下の実施形態において、同一の部位には同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0016】
<第1の実施形態>
(構成)
図1は、第1の実施形態の電源装置の構成を示す図である。電源装置1は、DAB(Dual Active Bridge)方式であり、双方向のDC-DCコンバータである。実施形態では、電源装置1は、電源2から出力されコンデンサ3で平滑化後の直流の電圧Vinの供給を受けて、直流の電圧Voutを負荷4に出力するものとする。
【0017】
電源装置1は、1次側の第1ブリッジ回路12と、リアクトル13と、トランス14と、2次側の第2ブリッジ回路15と、コンデンサ16と、制御部18と、を含む。
【0018】
第1ブリッジ回路12は、第1アーム21及び第2アーム22を含む単相フルブリッジ回路である。第1アーム21は、トランジスタTr1及びトランジスタTr2を含む。第2アーム22は、トランジスタTr3及びトランジスタTr4を含む。
【0019】
実施形態では、各トランジスタがMOSFETであることとしたが、本開示はこれに限定されない。各トランジスタは、シリコンパワーデバイス、GaNパワーデバイス、SiCパワーデバイス(例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor))などでも良い。
【0020】
各トランジスタは、積極的に電流を流すことができる寄生ダイオード(ボディダイオード)を有する、又は、逆並列にダイオードが接続されている。寄生ダイオードとは、MOSFETのバックゲートとソース及びドレインとの間のpn接合である。
【0021】
トランジスタTr1のソースは、トランジスタTr2のドレインに電気的に接続されている。トランジスタTr1のドレインは、トランジスタTr3のドレインに電気的に接続されている。トランジスタTr3のソースは、トランジスタTr4のドレインに電気的に接続されている。トランジスタTr2のソースは、トランジスタTr4のソースに電気的に接続されている。
【0022】
トランジスタTr1のドレイン及びトランジスタTr3のドレインは、第1ブリッジ回路12の一方の入力端子12aに電気的に接続されている。トランジスタTr2のソース及びトランジスタTr4のソースは、第1ブリッジ回路12の他方の入力端子12bに電気的に接続されている。
【0023】
入力端子12aは、コンデンサ3の一端(高電位側端)に電気的に接続されている。入力端子12bは、コンデンサ3の他端(低電位側端)に電気的に接続されている。
【0024】
入力端子12aと入力端子12bとの間には、電圧Vinが供給される。
【0025】
トランジスタTr1のソース及びトランジスタTr2のドレインは、第1ブリッジ回路12の一方の出力端子12cに電気的に接続されている。トランジスタTr3のソース及びトランジスタTr4のドレインは、第1ブリッジ回路12の他方の出力端子12dに電気的に接続されている。
【0026】
リアクトル13の一端は、出力端子12cに電気的に接続されている。なお、実施形態では、リアクトル13を1次側に配置したが、本開示はこれに限定されない。リアクトル13は、2次側に配置しても良いし、1次側及び2次側の両方に配置しても良い。
【0027】
トランス14は、第1巻線14aと、第2巻線14bと、コア14cと、を含む。第1巻線14a及び第2巻線14bは、コア14cに巻回されている。
【0028】
トランス14が、本開示の「変圧器」の一例に相当する。
【0029】
第1巻線14aと第2巻線14bとの巻数比は、1:1とするが、本開示はこれに限定されない。
【0030】
第1巻線14aの一端は、リアクトル13の他端に電気的に接続されている。第1巻線14aの他端は、出力端子12dに電気的に接続されている。
【0031】
第1ブリッジ回路12は、電圧Vin、電圧-Vin、又は、0Vを、出力端子12cと出力端子12dとの間に出力する。
【0032】
例えば、第1ブリッジ回路12は、トランジスタTr1及びトランジスタTr4がオン状態、且つ、トランジスタTr2及びトランジスタTr3がオフ状態に制御されている場合、電圧Vinを、出力端子12cと出力端子12dとの間に出力する。
【0033】
また例えば、第1ブリッジ回路12は、トランジスタTr1及びトランジスタTr4がオフ状態、且つ、トランジスタTr2及びトランジスタTr3がオン状態に制御されている場合、電圧-Vinを、出力端子12cと出力端子12dとの間に出力する。
【0034】
また例えば、第1ブリッジ回路12は、トランジスタTr1及びトランジスタTr3がオン状態、且つ、トランジスタTr2及びトランジスタTr4がオフ状態に制御されている場合、0Vを、出力端子12cと出力端子12dとの間に出力する。
【0035】
また例えば、第1ブリッジ回路12は、トランジスタTr1及びトランジスタTr3がオフ状態、且つ、トランジスタTr2及びトランジスタTr4がオン状態に制御されている場合、0Vを、出力端子12cと出力端子12dとの間に出力する。
【0036】
第2ブリッジ回路15は、第3アーム31及び第4アーム32を含む単相フルブリッジ回路である。第3アーム31は、トランジスタTr5及びトランジスタTr6を含む。第4アーム32は、トランジスタTr7及びトランジスタTr8を含む。
【0037】
トランジスタTr5のソースは、トランジスタTr6のドレインに電気的に接続されている。トランジスタTr5のドレインは、トランジスタTr7のドレインに電気的に接続されている。トランジスタTr7のソースは、トランジスタTr8のドレインに電気的に接続されている。トランジスタTr6のソースは、トランジスタTr8のソースに電気的に接続されている。
【0038】
トランジスタTr5のソース及びトランジスタTr6のドレインは、第2ブリッジ回路15の一方の入力端子15aに電気的に接続されている。トランジスタTr7のソース及びトランジスタTr8のドレインは、第2ブリッジ回路15の他方の入力端子15bに電気的に接続されている。
【0039】
トランジスタTr5のドレイン及びトランジスタTr7のドレインは、第2ブリッジ回路15の一方の出力端子15cに電気的に接続されている。トランジスタTr6のソース及びトランジスタTr8のソースは、第2ブリッジ回路15の他方の出力端子15dに電気的に接続されている。
【0040】
入力端子15aは、第2巻線14bの一端に電気的に接続されている。入力端子15bは、第2巻線14bの他端に電気的に接続されている。
【0041】
出力端子15cは、コンデンサ16の一端(高電位側端)に電気的に接続されている。出力端子15dは、コンデンサ16の他端(低電位側端)に電気的に接続されている。
【0042】
コンデンサ16の電圧が、電圧Voutである。コンデンサ16の一端(高電位側端)は、負荷4の一端(高電位側端)に電気的に接続されている。コンデンサ16の他端(低電位側端)は、負荷4の他端(低電位側端)に電気的に接続されている。
【0043】
制御部18は、複数の第1駆動パルスP1を第1アーム21に出力し、複数の第2駆動パルスP2を第2アーム22に出力し、複数の第3駆動パルスP3を第3アーム31に出力し、複数の第4駆動パルスP4を第4アーム32に出力することにより、第1アーム21から第4アーム32までを制御する。
【0044】
本開示では、電圧Vinとトランス14の第1巻線14aの巻数との積と、電圧Voutとトランス14の第2巻線14bの巻数との積と、の比を、入出力電圧比nと称する。また、入力電流を循環電流で除した値を、入力電流循環電流比率と称する。
【0045】
(比較例の制御)
比較例では、入出力電圧比n=1.0:0.5の場合について説明する。
【0046】
制御部18は、デューティ比を0.5で一定にし且つスイッチング周波数を一定にし、1次側ブリッジ回路と2次側ブリッジ回路との間の第1位相差φp-sを制御することにより、出力電圧、出力電流又は出力電力を制御する。
【0047】
制御部18は、第1駆動パルスP1及び第2駆動パルスP2と、第3駆動パルスP3及び第4駆動パルスP4と、の間の第1位相差φp-sを制御することにより、第1ブリッジ回路12と第2ブリッジ回路15との間の第1位相差φp-sを制御する。
【0048】
図2は、DABのブリッジ回路間の第1位相差φ
p-sと変換電力との関係を示す図である。
図2において、横軸は、第1位相差φ
p-s(deg)を表し、縦軸は、正規化した変換電力を表す。線201は、第1位相差φ
p-s(deg)と、正規化した変換電力と、の関係を示す。
【0049】
線201で示すように、電源装置1は、第1位相差φp-sを制御することにより、双方向の電力変換が可能である。
【0050】
図3は、DABのブリッジ回路間の第1位相差φ
p-sと入力電流循環電流比率との関係を示す図である。
図3において、横軸は、第1位相差φ
p-s(deg)を表し、縦軸は、入力電流循環電流比率を表す。線202は、第1位相差φ
p-s(deg)と、入力電流循環電流比率と、の関係を示す。
【0051】
点202aで示すように、入力電流循環電流比率は、第1位相差φp-sがおよそ50degの場合にピーク(変換効率最大)となり、およそ50degより大きい場合及び小さい場合のいずれも低下(変換効率低下)する。
【0052】
つまり、
図2に示すように、変換電力の絶対値は、±90degまで上昇傾向を示す。しかし、
図3に示すように、入力(出力も同じ)電流を得るために必要な循環電流の割合は、特定の位相差(本例では、およそ50deg)で最小値まで低下し、その他では増大して行く。これにより、多くの領域で回路内部の電流導通損失割合が多く、変換効率の低下、各種回路構成素子の負担が増大しやすい。
【0053】
(第1の実施形態の制御)
図4は、DABのブリッジ回路間の第1位相差φ
p-sと入力電流循環電流比率との関係を示す図である。
図4において、横軸は、第1位相差φ
p-s(deg)を表し、縦軸は、入力電流循環電流比率を表す。
【0054】
線211は、入出力電圧比n=1.0:0.5の場合の、第1位相差φp-s(deg)と、入力電流循環電流比率と、の関係を示す。点211aで示すように、入力電流循環電流比率は、第1位相差φp-sがおよそ50degの場合にピーク(変換効率最大)となり、およそ50degより大きい場合及び小さい場合のいずれも低下(変換効率低下)する。
【0055】
線212は、入出力電圧比n=1.0:0.75の場合の、第1位相差φp-s(deg)と、入力電流循環電流比率と、の関係を示す。点212aで示すように、入力電流循環電流比率は、第1位相差φp-sがおよそ30degの場合にピーク(変換効率最大)となり、およそ30degより大きい場合及び小さい場合のいずれも低下(変換効率低下)する。
【0056】
線213は、入出力電圧比n=1.0:0.9の場合の、第1位相差φp-s(deg)と、入力電流循環電流比率と、の関係を示す。点213aで示すように、入力電流循環電流比率は、第1位相差φp-sがおよそ20degの場合にピーク(変換効率最大)となり、およそ20degより大きい場合及び小さい場合のいずれも低下(変換効率低下)する。
【0057】
線214は、入出力電圧比n=1.0:0.99の場合の、第1位相差φp-s(deg)と、入力電流循環電流比率と、の関係を示す。点214aで示すように、入力電流循環電流比率は、第1位相差φp-sがおよそ10degの場合にピーク(変換効率最大)となり、およそ10degより大きい場合及び小さい場合のいずれも低下(変換効率低下)する。
【0058】
図4では、降圧の場合を示したが、昇圧の場合も同様に、入力電流循環電流比率にピークが存在する。
【0059】
図4に示されるDABの性質に鑑み、第1の実施形態の制御部18は、入出力電圧比nに基づいて、第1位相差φ
p-sを、入力電流循環電流比率が最大となる値で一定にする(固定する)。例えば、制御部18は、入出力電圧比n=1.0:0.5である場合、第1位相差φ
p-sを、およそ50degで一定にする。
【0060】
これにより、電源装置1は、変換効率を向上でき、各種回路構成素子の負担を軽減できる。
【0061】
なお、入出力電圧比n=1.0:1.0では、第1位相差φp-sが0degになってしまい、出力電力がゼロになってしまう。そこで、制御部18は、入出力電圧比nがn=1.0:1.0を含む一定範囲内(例えば、n=0.99:1.0からn=1.0:0.99までの範囲内)の場合には、第1位相差φp-sを予め定められた値(例えば、10deg)で一定にすると良い。
【0062】
また、制御部18は、第1駆動パルスP1、第2駆動パルスP2、第3駆動パルスP3及び第4駆動パルスP4のスイッチング周波数fを可変することにより、出力電流(出力電力)を制御できる。
【0063】
制御部18は、スイッチング周波数fを低くすると、出力電流を多くすることができる。制御部18は、スイッチング周波数fを高くすると、出力電流を少なくすることができる。
【0064】
なお、理論上は、スイッチング周波数fを高くすればするほど、出力電流を少なくすることができる。しかし、実際には、回路内の各素子は、動作速度に限界がある。つまり、スイッチング周波数fには限界があり、出力電流の抑制には限界がある。
【0065】
そこで、制御部18は、出力指令値(電流指令値)が相対的に大きい領域では、スイッチング周波数fを可変して出力電流を可変し、第1アーム21と第2アーム22との間の第2位相差φp-p、及び、第3アーム31と第4アーム32との間の第3位相差φs-sを一定にする。一方、制御部18は、出力指令値が相対的に小さい領域では、スイッチング周波数fを一定にし、第2位相差φp-p及び第3位相差φs-sを可変して、出力電流を可変する。
【0066】
制御部18は、第2位相差φp-p及び第3位相差φs-sを小さくすると、出力電流を多くすることができる。制御部18は、第2位相差φp-p及び第3位相差φs-sを大きくすると、出力電流を少なくすることができる。
【0067】
これにより、電源装置1は、広い領域にわたって、出力電流を可変することができる。
【0068】
なお、実施形態では、第2位相差φp-pと第3位相差φs-sとを同じとするが、本開示はこれに限定されない。第2位相差φp-pと第3位相差φs-sとは、異なっても良い。
【0069】
図5は、第1の実施形態の電源装置の制御例を説明する図である。
図5は、入出力電圧比n=1.0:0.5である場合の制御例を示す。
図5の上段において、横軸は、出力指令値を表し、縦軸は、正規化されたスイッチング周波数fを表す。
図5の下段において、横軸は、出力指令値を表し、縦軸は、位相差φ(deg)を表す。
【0070】
線221は、出力指令値と、スイッチング周波数fと、の関係を示す。線222は、出力指令値と、第1位相差φp-sと、の関係を示す。線223は、出力指令値と、第2位相差φp-p及び第3位相差φs-sと、の関係を示す。
【0071】
制御部18は、入出力電圧比n=1.0:0.5であるので、線222で示すように、第1位相差φp-sをおよそ50degで一定にする。
【0072】
制御部18は、出力指令値が第1閾値Th1(例えば、50)未満の領域(矢印225参照)では、線221で示すように、スイッチング周波数fを一定にする。
【0073】
制御部18は、出力指令値が第1閾値Th1(例えば、50)以上の領域(矢印224参照)では、線221で示すように、出力指令値が大きくなるほど、スイッチング周波数fを単調減少(
図5の例では直線状に減少)させる。
【0074】
以下、スイッチング周波数fを変更する出力指令値の領域(矢印224参照)を、「周波数変調領域」と称する場合がある。
【0075】
制御部18は、出力指令値が第2閾値Th2(例えば、50)未満の領域(矢印225参照)では、線223で示すように、出力指令値が大きくなるほど、第2位相差φ
p-p及び第3位相差φ
s-sを単調減少(
図5の例では直線状に減少)させる。
【0076】
以下、第2位相差φp-p及び第3位相差φs-sを変更する出力指令値の領域(矢印225参照)を、「位相変調領域」と称する場合がある。
【0077】
制御部18は、出力指令値が第2閾値Th2(例えば、50)以上の領域(矢印224参照)では、線223で示すように、第2位相差φp-p及び第3位相差φs-sを0degで一定にする。
【0078】
(回路シミュレーション結果)
図6は、第1の実施形態の電源装置の回路シミュレーション結果を示す図である。
図6において、横軸は、正規化された入力電流を表し、縦軸は、入力電流循環電流比率を表す。
【0079】
線231は、第1の実施形態の電源装置の入力電流と入力電流循環電流比率との関係を示す。線232は、比較例の電源装置の入力電流と入力電流循環電流比率との関係を示す。矢印233は、周波数変調領域と位相変調領域との境目(変調制御の切替点)を表す。矢印234は、周波数変調領域を表す。矢印235は、位相変調領域を表す。
【0080】
線231で示すように、第1の実施形態の電源装置1は、比較例の電源装置と比較して、全範囲にわたって、入力電流循環電流比率、つまり、変換効率を向上させることができる。
【0081】
(制御部の構成例)
図7は、第1の実施形態の電源装置の制御部の構成例を示す図である。
図7は、定電流制御の場合の制御部18の構成例を示す図である。
【0082】
制御部18は、第1算出部51と、減算器52と、第2算出部53と、合成器54と、駆動パルス生成部55と、1次側パルス駆動部56と、2次側パルス駆動部57と、を含む。
【0083】
第1算出部51は、入出力電圧比nに基づいて、第1位相差φ
p-sを算出(
図4の点211a、212a、213a、214a参照)し、合成器54に出力する。なお、第1算出部51は、数式、マップデータ等を用いて、第1位相差φ
p-sを算出することとしても良い。
【0084】
減算器52は、電流指令値から出力電流検出値を減算した電流偏差(出力指令値)を第2算出部53に出力する。
【0085】
第2算出部53は、電流偏差に基づいて、第2位相差φ
p-p及び第3位相差φ
s-s(
図5の線223参照)、並びに、スイッチング周波数f(
図5の線221参照)を算出し、合成器54に出力する。なお、第2算出部53は、数式、マップデータ等を用いて、第2位相差φ
p-p及び第3位相差φ
s-s、並びに、スイッチング周波数fを算出することとしても良い。
【0086】
合成器54は、第1位相差φp-s、第2位相差φp-p及び第3位相差φs-s、並びに、スイッチング周波数fを合成した信号Sを、駆動パルス生成部55に出力する。
【0087】
駆動パルス生成部55は、信号Sに基づいて、第1駆動パルスP1、第2駆動パルスP2、第3駆動パルスP3及び第4駆動パルスP4を生成する。駆動パルス生成部55は、第1駆動パルスP1及び第2駆動パルスP2を1次側パルス駆動部56に出力する。駆動パルス生成部55は、第3駆動パルスP3及び第4駆動パルスP4を2次側パルス駆動部57に出力する。
【0088】
1次側パルス駆動部56は、第1駆動パルスP1及び第2駆動パルスP2の電圧レベルを変換し、第1アーム21及び第2アーム22に出力する。
【0089】
2次側パルス駆動部57は、第3駆動パルスP3及び第4駆動パルスP4の電圧レベルを変換し、第3アーム31及び第4アーム32に出力する。
【0090】
(まとめ)
以上説明したように、制御部18は、入出力電圧比nに基づいて、第1位相差φp-sを、入力電流循環電流比率が最大となる値で一定にする。
【0091】
これにより、電源装置1は、変換効率を向上でき、各種回路構成素子の負担を軽減できる。
【0092】
また、制御部18は、スイッチング周波数fを可変することにより、出力電流(出力電力)を制御できる。
【0093】
また、制御部18は、出力指令値が第1閾値Th1(第2閾値Th2)以上の場合は、スイッチング周波数fを可変して出力電流を可変し、第2位相差φp-p及び第3位相差φs-sを一定にする。一方、制御部18は、出力指令値が第2閾値Th2(第1閾値Th1)未満の場合は、スイッチング周波数fを一定にし、第2位相差φp-p及び第3位相差φs-sを可変して、出力電流を可変する。
【0094】
これにより、電源装置1は、広い領域にわたって、出力電流を可変することができる。
【0095】
<第2の実施形態>
(第2の実施形態の制御)
第1の実施形態では、制御部18は、第1閾値Th1と第2閾値Th2とを同じにした。つまり、制御部18は、周波数変調領域(
図5の矢印224参照)と、位相変調領域(
図5の矢印225参照)と、がオーバーラップしないようにした。一方、第2の実施形態では、制御部18は、第1閾値Th1<第2閾値Th2とする。つまり、制御部18は、周波数変調領域と、位相変調領域と、がオーバーラップするようにする。
【0096】
図8は、第2の実施形態の電源装置の制御例を説明する図である。
図8は、入出力電圧比n=1.0:0.5である場合の制御例を示す。
図8の上段において、横軸は、出力指令値を表し、縦軸は、正規化されたスイッチング周波数fを表す。
図8の下段において、横軸は、出力指令値を表し、縦軸は、位相差φ(deg)を表す。
【0097】
線241は、出力指令値と、スイッチング周波数fと、の関係を示す。線242は、出力指令値と、第1位相差φp-sと、の関係を示す。線243は、出力指令値と、第2位相差φp-p及び第3位相差φs-sと、の関係を示す。
【0098】
制御部18は、入出力電圧比n=1.0:0.5であるので、線242で示すように、第1位相差φp-sをおよそ50degで一定にする。
【0099】
制御部18は、出力指令値が第1閾値Th1(例えば、35)未満の領域では、線241で示すように、スイッチング周波数fを一定にする。
【0100】
制御部18は、出力指令値が第1閾値Th1(例えば、35)以上の領域(矢印244参照)では、線241で示すように、出力指令値が大きくなるほど、スイッチング周波数fを単調減少(
図8の例では直線状に減少)させる。
【0101】
制御部18は、出力指令値が第2閾値Th2(例えば、65)未満の領域(矢印245参照)では、線243で示すように、出力指令値が大きくなるほど、第2位相差φ
p-p及び第3位相差φ
s-sを単調減少(
図8の例では直線状に減少)させる。
【0102】
制御部18は、出力指令値が第2閾値Th2(例えば、65)以上の領域では、線243で示すように、第2位相差φp-p及び第3位相差φs-sを一定にする。
【0103】
ここで、第1閾値Th1<第2閾値Th2である。これにより、制御部18は、周波数変調領域(
図8の矢印244参照)と、位相変調領域(
図8の矢印245参照)と、がオーバーラップするようにできる。
【0104】
(回路シミュレーション結果)
図9は、第2の実施の形態の電源装置の回路シミュレーション結果を示す図である。
図9において、横軸は、出力指令値を表し、縦軸は、正規化された出力電力を表す。
【0105】
線251は、第2の実施形態(オーバーラップ有り)の出力指令値と出力電力との関係を表す。線252は、第1の実施形態(オーバーラップ無し)の出力指令値と出力電力との関係を表す。
【0106】
第1の実施形態(オーバーラップ無し)では、出力指令値50を境に、周波数変調と位相変調とが切り替わる。そのため、第1の実施形態では、出力指令値が0から50までの領域と、出力指令値が50から100までの領域と、では、線252の傾きが大きく異なっており、出力指令値50近辺で出力特性が急峻に変化する。
【0107】
一方、第2の実施形態(オーバーラップ有り)では、出力指令値が35から65の領域で周波数変調及び位相変調の両方を行う。そのため、第2の実施形態では、出力指令値の全範囲にわたって、傾きが大きく異なることはなく、出力指令値50近辺で出力特性が急峻に変化することもない。つまり、出力特性がよりリニアに近くなる。
【0108】
(まとめ)
第2の実施形態の制御部18は、出力指令値が第1閾値Th1以上の領域では、周波数変調制御を行う。また、制御部18は、出力指令値が第2閾値Th2未満の領域では、位相差変調制御を行う。ここで、第1閾値Th1<第2閾値Th2である。
【0109】
これにより、第2の実施形態の電源装置は、第1の実施形態と比較して、出力特性の急峻な変化を抑制することができる。
【0110】
<第3の実施形態>
(第3の実施形態の制御)
第1の実施形態及び第2の実施形態では、制御部18は、出力指令値が第2閾値Th2未満の領域では、第2位相差φp-p及び第3位相差φs-sを制御することとした。一方、第3の実施形態では、制御部18は、出力指令値が第2閾値Th2未満の領域では、第2位相差φp-p及び第3位相差φs-sを制御することに代えて、第1駆動パルスP1、第2駆動パルスP2、第3駆動パルスP3及び第4駆動パルスP4のデューティ比を制御する。
【0111】
制御部18は、第1ブリッジ回路12及び第2ブリッジ回路15の各アームのハイサイド及びローサイドのスイッチング素子の内のデューティ比が小さい方のデューティ比を大きくし、各アームのハイサイド及びローサイドのスイッチング素子の内の他方のデューティ比を小さくすると、出力電流を多くすることができる。
【0112】
なお、第3の実施形態では、第1駆動パルスP1及び第2駆動パルスP2のデューティ比と、第3駆動パルスP3及び第4駆動パルスP4のデューティ比と、とを同じとするが、本開示はこれに限定されない。第1駆動パルスP1及び第2駆動パルスP2のデューティ比と、第3駆動パルスP3及び第4駆動パルスP4のデューティ比とは、異なっても良い。
【0113】
図10は、第3の実施形態の電源装置の制御例を説明する図である。
図10は、入出力電圧比n=1.0:0.5である場合の制御例を示す。
図10の上段において、横軸は、出力指令値を表し、縦軸は、スイッチング周波数f(kHz)を表す。
図10の下段において、横軸は、出力指令値を表し、縦軸は、第1位相差φ
p-s(deg)及びデューティ比を表す。
【0114】
線261は、出力指令値と、スイッチング周波数fと、の関係を示す。線262は、出力指令値と、第1位相差φp-sと、の関係を示す。線263は、出力指令値と、デューティ比と、の関係を示す。
【0115】
制御部18は、入出力電圧比n=1.0:0.5であるので、線262で示すように、第1位相差φp-sをおよそ50degで一定にする。
【0116】
制御部18は、出力指令値が第1閾値Th1(例えば、50)未満の領域(矢印265参照)では、線261で示すように、スイッチング周波数fを一定にする。
【0117】
制御部18は、出力指令値が第1閾値Th1(例えば、50)以上の領域(矢印264参照)では、線261で示すように、出力指令値が大きくなるほど、スイッチング周波数fを単調減少(
図10の例では直線状に減少)させる。
【0118】
制御部18は、出力指令値が第2閾値Th2(例えば、50)未満の領域(矢印265参照)では、線263で示すように、出力指令値が大きくなるほど、第1ブリッジ回路12及び第2ブリッジ回路15の各アームのハイサイド及びローサイドのスイッチング素子の内のデューティ比が小さい方のデューティ比を単調増加(
図10の例では直線状に増加)させ、各アームのハイサイド及びローサイドのスイッチング素子の内の他方のデューティ比を単調減少させる。制御部18は、出力指令値が第2閾値Th2以上の領域(矢印264参照)では、線263で示すように、各アームのハイサイド及びローサイドのスイッチング素子のデューティ比を0.5で一定にする。
【0119】
以下、デューティ比を変更する出力指令値の領域(矢印265参照)を、「デューティ比変調領域」と称する場合がある。
【0120】
制御部18は、出力指令値が第2閾値Th2(例えば、50)以上の領域(矢印264参照)では、線263で示すように、デューティ比を一定(例えば、0.5)にする。
【0121】
(回路シミュレーション結果)
図11は、第3の実施形態の電源装置の回路シミュレーション結果を示す図である。
図11において、横軸は、正規化された入力電流を表し、縦軸は、入力電流循環電流比率を表す。
【0122】
先に説明した線231は、第1の実施形態の電源装置の入力電流と入力電流循環電流比率との関係を示す。線271は、第3の実施形態の電源装置の入力電流と入力電流循環電流比率との関係を示す。
【0123】
線271で示すように、第3の実施形態の電源装置1は、第1の実施形態の電源装置とほぼ同様の入力電流循環電流比率、つまり、ほぼ同様の変換効率を達成することができる。
【0124】
(まとめ)
第3の実施形態の制御部18は、出力指令値が第1閾値Th1以上の領域では、周波数変調制御を行う。また、制御部18は、出力指令値が第2閾値Th2以下の領域では、デューティ比変調制御を行う。
【0125】
これにより、第3の実施形態の電源装置は、第1の実施形態と同様に、変換効率を向上でき、各種回路構成素子の負担を軽減できる。また、第3の実施形態の電源装置は、デューティ比を可変することにより、出力電流(出力電力)を制御できる。
【0126】
なお、第1の実施形態及び第2の実施形態は、第2位相差φp-p及び第3位相差φs-sを可変するので、3相DABには適用できない。
【0127】
一方、第3の実施形態の電源装置は、第2位相差φp-p及び第3位相差φs-sを可変しないので、3相DABにも適用可能である。
【0128】
(変形例)
第3の実施形態において、第2の実施形態と同様に、第1閾値Th1<第2閾値Th2としても良い。つまり、制御部18は、周波数変調領域と、デューティ比変調領域と、がオーバーラップするようにしても良い。
【0129】
これにより、第3の実施形態の電源装置は、第2の実施形態と同様に、出力特性の急峻な変化を抑制することができる。
【0130】
以上、本開示の実施形態を説明したが、これら実施形態の内容により本開示が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0131】
1 電源装置
2 電源
3、16 コンデンサ
4 負荷
12 第1ブリッジ回路
13 リアクトル
14 トランス
15 第2ブリッジ回路
18 制御部
21 第1アーム
22 第2アーム
31 第3アーム
32 第4アーム
51 第1算出部
52 減算器
53 第2算出部
54 合成器
55 駆動パルス生成部
56 1次側パルス駆動部
57 2次側パルス駆動部
Tr1、Tr2、Tr3、Tr4、Tr5、Tr6、Tr7、Tr8 トランジスタ