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  • 特開-電気工事練習用ケーブル 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064548
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】電気工事練習用ケーブル
(51)【国際特許分類】
   G09B 9/00 20060101AFI20240507BHJP
   G09B 23/18 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
G09B9/00 Z
G09B23/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173211
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】520434905
【氏名又は名称】有限会社オオコウ電設
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大鴻 浩文
【テーマコード(参考)】
2C032
【Fターム(参考)】
2C032BD00
(57)【要約】
【課題】安価で実際の電気ケーブルと同様の扱い易さであり、電気工事の練習に適した電気工事練習用ケーブルを提供する。
【解決手段】導体1と、該導体1の外周を被覆する絶縁体2と、を備え、導体1は、ビッカーズ硬さHV0.1が77~84の範囲にある鉄線又はアルミ線であることを特徴とする電気工事練習用ケーブル。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体と、該導体の外周を被覆する絶縁体と、を備え、
前記導体は、ビッカーズ硬さHV0.1が77~84の範囲にある鉄線又はアルミ線であることを特徴とする電気工事練習用ケーブル。
【請求項2】
前記導体は、炭素を含むことを特徴とする請求項1に記載の電気工事練習用ケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気工事練習用ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
電気配線の施工や電気設備の設置など電気に関わる様々な作業に従事するには、電気工事士の資格を有していなければならない。電気工事士の試験には、技能試験が含まれる。技能試験において、受験者は配線図で与えられた問題を支給される材料で時間内に完成させなければならないため、様々な電気工事の練習をして試験に備える必要がある。
【0003】
従来、電気工事の練習には、実際に用いられる電気部品が用いられているが、実際に用いられる電気部品は、練習に用いるには高価であるため、電気工事士を志す人にとって負担となることが問題であった。
【0004】
このような問題に対し、例えば特許文献1には、電気部品を模擬した材料により構成される試験対策のための練習用キットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3224580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電気工事の練習において、最も多く用いられるのはケーブルであり、ケーブルは一度切断したり、曲げたりしたものを再利用することが難しいため、練習用にケーブルを購入する費用が嵩むことが特に問題である。実際の電気工事において、一般的に、ケーブルには電気伝導率の高い銅線が用いられるが、特許文献1においても、ケーブルを構成する心線は硬銅線により形成されると記載されており、練習用のケーブルとして価格を低下させるという課題は解決できていない。
【0007】
また、実際の電気工事に用いられるケーブルとは異なる材質のケーブルを練習用に用いた場合、その材質が実際のケーブルよりも硬すぎたり、柔らかすぎたりすると、電線の切断や接続の作業感覚が実際とは異なってしまい、練習にならないという問題もある。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、安価で実際の電気ケーブルと同様の扱い易さであり、電気工事の練習に適した電気工事練習用ケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、第1の発明は、
導体と、該導体の外周を被覆する絶縁体と、を備え、
前記導体は、ビッカーズ硬さHV0.1が77~84の範囲にある鉄線又はアルミ線であることを特徴とする。
【0010】
上記の構成によると、銅線を用いたケーブルよりも安価な電気工事練習用ケーブルとして提供可能である。また、単に安価な材料を導体として用いるだけでなく、実際に電気工事に用いられる銅線と同等のビッカーズ硬さである導体を使用にすることにより、実際の電気ケーブルと同等の扱い易さを再現することに成功した。電気工事の練習をする際に、本番とほぼ同じ作業感覚で切断や接続等の練習を行うことが可能となるため、電気工事練習用ケーブルとして最適である。
【0011】
第2の発明では、第1の発明において、前記導体は、炭素を含むことを特徴とする。
【0012】
上記の構成によると、炭素を含有させた鉄線又はアルミ線を用いることで、実際に用いられる銅線のビッカーズ硬さに容易に近付けることが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
安価で実際の電気ケーブルと同様の扱い易さであり、電気工事の練習に適した電気工事練習用ケーブルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態に係るIVケーブルの斜視図である。
図2】第1実施形態に係るIVケーブルの断面図である。
図3】銅線のビッカーズ硬さ試験の試験結果である。
図4】第2実施形態に係るVVFケーブルの斜視図である。
図5】第2実施形態に係るVVFケーブルの断面図である。
図6】第3実施形態に係るVVRケーブルの斜視図である。
図7】第3実施形態に係るVVRケーブルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0016】
本実施形態の電気工事練習用ケーブルは、電気工事の練習用に用いられるものであって、実際の電気工事に用いることは推奨されない。
【0017】
(第1実施形態)
図1及び図2に示すように、第1実施形態の電気工事練習用ケーブル10は、IVケーブル型の電気工事練習用ケーブルである。IVケーブル型の電気工事練習用ケーブル10は、例えば、接地用電線や、電気機器用配線、建築物内配線、制御盤内配線、スイッチ、コンセント類の渡り線として電気工事の練習に使用することができる。
【0018】
電気工事練習用ケーブル10は、導体1と、導体1の外周を被覆する絶縁体2と、を備える。なお以下の説明において、導体1と絶縁体2とからなる電気工事練習用ケーブル10を電線と呼ぶこともある。
【0019】
導体1は、単線であることが好ましいが、複数本が撚り合わされていてもよい。導体1の断面形状は、本実施形態では、円形状であるが角を丸くした矩形状でもよい。
【0020】
図3に、線径が1.6mmの銅線のビッカーズ硬さ試験の試験結果を示す。線径が1.6mmの銅線は、電気工事に一般的に用いられている銅線である。ビッカーズ硬さ試験は、FM-ARS7000型(フューチュアテック社製)を用い、JIS Z 2244に準拠し、5つの銅線サンプルについて測定を行った。試験力は0.9807N(HV0.1)であった。また、線径1.6mmの銅線の引張試験を、JIS Z 2241に準拠して、試験速度10mm/minにて行ったところ、引張強さは257MPaであった。さらに、線径が1.6mmの銅線の曲げ試験を、JIS Z2248に準拠して、曲げ方法:ローラ曲げ法、内側半径1.5mm、曲げ角度:180℃にて行ったところ、最大荷重は78.4Nであった。なお、引張試験及び曲げ試験は、低荷重精密万能試験機AGS-10kNX(島津製作所製)を用いた。
【0021】
上記試験結果により、導体1として、ビッカーズ硬さHV0.1が77~84の範囲にある金属線を電気工事練習用ケーブルに使用することで、電気工事に用いられる銅線と同等の作業感覚で取り扱い可能な電気工事練習用ケーブルを提供可能であることが判明した。また、コスト低下の観点から、導体は、鉄線又はアルミ線が最適である。ビッカーズ硬さHV0.1が77~84の範囲の鉄線又はアルミ線を得るために、導体に炭素を含有させてもよい。
【0022】
一般的に、電気工事の練習には、電線の切断、電線の被覆剥き、ケーブルの被覆剥き、電線の圧着接続、電線の差し込みコネクタによる接続、スイッチ又はコンセントへの電線の差し込み等がある。実際の電気工事に用いられるケーブルとは異なる材質のケーブルを練習用に用いた場合、その材質が実際のケーブルよりも硬すぎたり、柔らかすぎたりすると、電線の切断や接続の作業感覚が実際とは異なってしまい、練習にならないため、電気工事練習用ケーブルにおいて、導体1を、ビッカーズ硬さHV0.1が77~84の範囲とすることが重要である。
【0023】
絶縁体2は、どのような材質であってもよいが、実際の電気工事に用いられるケーブルの絶縁体と同じ又は同等の硬さや弾性を有するものが好ましく、例えば、ポリ塩化ビニル、フッ素樹脂、架橋ポリエチレン、天然ゴム及び合成ゴムが挙げられる。
【0024】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態の電気工事練習用ケーブル20について説明する。第1実施形態と同じ部材については同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0025】
図4及び図5に示すように、第2実施形態の電気工事練習用ケーブル20は、導体1と、導体1の外周を被覆する絶縁体2からなる2本の電線がシース3によって束ねられたVVFケーブル型の電気工事練習用ケーブルである。VVFケーブル型の電気工事練習用ケーブル20は、シース3によって断面長円形に形成されることにより、ケーブルが転動するのを抑制する。
【0026】
VVFケーブル型の電気工事練習用ケーブル20は、低圧屋内配線として多くの用途があり、例えば、照明やコンセント回路への電源供給用ケーブルや、空調機や換気ファンなど機械設備機器への電源供給用のケーブルとして電気工事の練習に使用することができる。
【0027】
シース3によって束ねられる電線は、2本に限らず、3本以上であってもよい。シース3は、どのような材質であってもよいが、実際の電気工事に用いられるケーブルのシースと同じ又は同等の硬さや弾性を有するものが好ましく、例えば、クロロプレンゴム、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、鉛、アルミニウムが挙げられる。
【0028】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態の電気工事練習用ケーブル30について説明する。上記実施形態と同じ部材については同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0029】
図6及び図7に示すように、第3実施形態の電気工事練習用ケーブル30は、導体1と、導体の外周を被覆する絶縁体2からなる3本の電線を束ねるように外周に介在物4を含み、介在物4の外周を被覆するシース3を有するVVRケーブル型の電気工事練習用ケーブルである。VVRケーブル型の電気工事練習用ケーブル30は、介在物4及びシース3によって断面円形に形成される。介在物4及びシース3によって束ねられる電線は、3本に限らず、4本以上であってもよい。
【0030】
VVRケーブル型の電気工事練習用ケーブル30は、VVFケーブル型の電気工事練習用ケーブル20と同様の用途として電気工事の練習に使用することができるが、VVFケーブル型と異なり、電線とシース3との間に介在物4が存在するため、ケーブルの被覆を剥く場合に介在物4の処理が必要となる。
【0031】
介在物4は、どのような材質であってもよいが、実際の電気工事に用いられるケーブルの介在物と同じ又は同等のものが好ましく、例えば、綿糸・紙ひも、ジュート、合成繊維が挙げられる。
【0032】
上記構成の電気工事練習用ケーブルは、銅線を用いたケーブルよりも安価に提供可能である。また、単に安価な材料を導体として用いるだけでなく、実際に電気工事に用いられる銅線と同等のビッカーズ硬さである導体を使用にすることにより、実際の電気工事に用いられるケーブルと同等の扱い易さを再現することができる。電気工事の練習をする際に、本番とほぼ同じ作業感覚で切断や接続等の練習を行うことが可能となるため、電気工事練習用ケーブルとして最適である。
【0033】
上記実施形態に限定されることはなく、他の様々な種類のケーブルを模して電気工事練習用ケーブルを提供することが可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 導体
2 絶縁体
3 シース
4 介在物
10 IVケーブル型の電気工事練習用ケーブル
20 VVFケーブル型の電気工事練習用ケーブル
30 VVRケーブル型の電気工事練習用ケーブル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7