(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064549
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】基板処理方法および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240507BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
H01L21/304 648G
H01L21/304 648A
H01L21/304 651B
H01L21/68 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173213
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】中井 仁司
【テーマコード(参考)】
5F131
5F157
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131BA37
5F131CA12
5F131CA16
5F131DA33
5F131DA42
5F131EA06
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5F131EA24
5F131EB31
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5F157AA15
5F157AB02
5F157AB14
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5F157AB90
5F157AC04
5F157AC26
5F157BB23
5F157BB45
5F157DB02
5F157DB37
5F157DC90
(57)【要約】
【課題】基板における上方を向く主面に供給された薬液が下方を向く主面へ回り込むことを抑制できる技術の提供。
【解決手段】基板処理方法であって、パターンが形成された第1主面91が下方を向く姿勢の基板9が、基板9を下方から支持する複数の支持ピン61から離間して第1チャック部710で保持された状態を形成する、第1保持状態形成工程と、複数の支持ピン61から離間して第1チャック部710に保持された基板9を、上下に延びる中心軸J1の周りで回転させつつ、基板9の下方の空間へガスを供給するとともに、基板9における上方を向く第2主面92に薬液を供給する、薬液処理工程と、を備える。第1チャック部710は、基板9の周縁部下面に当接せずに基板9の周縁部端面に当接する第1チャックピン71を複数備え、複数の第1チャックピン71で基板9を保持する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターンが形成された第1主面が下方を向く姿勢の基板が、前記基板を下方から支持する複数の支持ピンから離間して第1チャック部で保持された状態を形成する、第1保持状態形成工程と、
前記複数の支持ピンから離間して前記第1チャック部に保持された前記基板を、上下に延びる中心軸の周りで回転させつつ、前記基板の下方の空間へガスを供給するとともに、前記基板における上方を向く第2主面に薬液を供給する、薬液処理工程と、
を備え、
前記第1チャック部が、前記基板の周縁部下面に当接せずに前記基板の周縁部端面に当接する第1チャックピンを複数備え、前記複数の第1チャックピンで前記基板を保持する、
基板処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理方法であって、
前記薬液の供給を停止し、前記第2主面へのリンス液の供給を開始するリンス液供給開始工程と、
前記リンス液の供給が開始された後に、前記基板を第2チャック部で保持する第2保持状態形成工程と、
を備え、
前記第2チャック部が、前記基板の周縁部上面および前記周縁部下面に当接する第2チャックピンを複数備え、前記複数の第2チャックピンで前記基板を保持する、
基板処理方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の基板処理方法であって、
少なくとも第2チャック部が前記基板を保持する状態で、前記基板の回転数を所定の乾燥回転数まで上昇させる、回転数上昇工程、
を備え、
前記第2チャック部が、前記基板の周縁部上面および前記周縁部下面に当接する第2チャックピンを複数備え、前記複数の第2チャックピンで前記基板を保持する、
基板処理方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の基板処理方法であって、
前記第1保持状態形成工程が、
前記複数の支持ピンに支持されている前記基板を第2チャック部で保持して前記複数の支持ピンから離間させる、予備保持工程と、
前記予備保持工程の後に、前記第2チャック部で保持される前記基板を、前記第1チャック部でさらに保持してから、前記第2チャック部による前記基板の保持を解除する、チャック部変更工程と、
を備え、
前記第2チャック部が、前記基板の周縁部上面および前記周縁部下面に当接する第2チャックピンを複数備え、前記複数の第2チャックピンで前記基板を保持する、
基板処理方法。
【請求項5】
請求項1または2に記載の基板処理方法であって、
前記第1チャックピンが、
前記周縁部端面に当接する端面当接面と、前記基板の周縁部上面に当接する上側当接面と、を備える、
基板処理方法。
【請求項6】
請求項1または2に記載の基板処理方法であって、
前記第1チャックピンが、
前記周縁部端面に当接する端面当接面を備え、前記基板の周縁部上面に当接する上側当接面を備えない、
基板処理方法。
【請求項7】
請求項1または2に記載の基板処理方法であって、
前記第2主面に前記薬液が供給されたときに生じる、前記第1チャックピンが当接する位置での前記周縁部下面への前記薬液の回り込み量が、前記基板の周縁部上面および前記周縁部下面に当接する第2チャックピンが当接する位置での前記周縁部下面への前記薬液の回り込み量よりも小さく、かつ、前記第1チャックピンおよび前記第2チャックピンのどちらも当接しない位置での前記周縁部下面への前記薬液の回り込み量よりも大きい、
基板処理方法。
【請求項8】
請求項1に記載の基板処理方法であって、
前記第1チャックピンが、
前記周縁部端面に当接する端面当接面と、前記基板の周縁部上面に当接する上側当接面と、を備え、
前記第1保持状態形成工程が、
前記基板の下方の空間へガスを供給して前記基板を浮上させることによって前記基板を前記複数の支持ピンから離間させる浮上工程と、
浮上している前記基板を前記第1チャック部で保持する浮上基板保持工程と、
を備える、
基板処理方法。
【請求項9】
基板を保持する基板保持部と、
前記基板保持部に保持される前記基板を、上下に延びる中心軸の周りで回転させる基板回転機構と、
前記基板保持部に保持される前記基板における上方を向く主面に、処理液を供給する処理液供給部と、
前記基板保持部に保持される前記基板の下方の空間へ、ガスを供給するガス供給部と、
前記基板保持部、前記基板回転機構、前記処理液供給部、および、前記ガス供給部を制御する制御部と、
を備え、
前記基板保持部が、
前記基板の下方から前記基板に当接して前記基板を支持する複数の支持ピンと、
前記基板の周縁部下面に当接せずに前記基板の周縁部端面に当接する第1チャックピンを複数備え、前記複数の第1チャックピンで前記基板を保持する第1チャック部と、
を備え、
前記制御部が、
パターンが形成された第1主面が下方を向く姿勢の基板が、前記複数の支持ピンから離間して前記第1チャック部で保持された状態で、前記基板回転機構に前記基板を回転させつつ、前記ガス供給部に前記基板の下方の空間へ前記ガスを供給させるとともに、前記処理液供給部に第1処理液としての薬液を前記基板における上方を向く第2主面に供給させる、
基板処理装置。
【請求項10】
請求項9に記載の基板処理装置であって、
前記基板保持部が、
前記基板の周縁部上面および前記周縁部下面に当接する第2チャックピンを複数備え、前記複数の第2チャックピンで前記基板を保持する第2チャック部、
を備え、
前記制御部が、
前記処理液供給部に、前記薬液の供給を停止させ、第2処理液としてのリンス液の供給を開始させ、
前記リンス液の供給が開始された後に、前記基板を前記第2チャック部に保持させる、
基板処理装置。
【請求項11】
請求項9または10に記載の基板処理装置であって、
前記基板保持部が、
前記基板の周縁部上面および前記周縁部下面に当接する第2チャックピンを複数備え、前記複数の第2チャックピンで前記基板を保持する第2チャック部、
を備え、
前記制御部が、
少なくとも前記第2チャック部に前記基板を保持させた状態で、前記基板回転機構による前記基板の回転数を所定の乾燥回転数まで上昇させる、
基板処理装置。
【請求項12】
請求項9または10に記載の基板処理装置であって、
前記基板保持部が、
前記基板の周縁部上面および前記周縁部下面に当接する第2チャックピンを複数備え、前記複数の第2チャックピンで前記基板を保持する第2チャック部、
を備え、
前記制御部が、
前記基板が前記複数の支持ピンから離間して前記第1チャック部で保持された状態を形成するにあたって、
前記複数の支持ピンに支持されている前記基板を前記第2チャック部に保持させて、前記基板を前記複数の支持ピンから離間させた後、前記第2チャック部で保持される前記基板を、前記第1チャック部でさらに保持させてから、前記第2チャック部による前記基板の保持を解除させる、
基板処理装置。
【請求項13】
請求項9または10に記載の基板処理装置であって、
前記第1チャックピンが、
前記周縁部端面に当接する端面当接面と、前記基板の周縁部上面に当接する上側当接面と、を備える、
基板処理装置。
【請求項14】
請求項9または10に記載の基板処理装置であって、
前記第1チャックピンが、
前記周縁部端面に当接する端面当接面を備え、前記基板の周縁部上面に当接する上側当接面を備えない、
基板処理装置。
【請求項15】
請求項9または10に記載の基板処理装置であって、
前記基板保持部が、
前記基板の周縁部上面および前記周縁部下面に当接する第2チャックピンを複数備え、前記複数の第2チャックピンで前記基板を保持する第2チャック部、
を備え、
前記第2主面に前記薬液が供給されたときに生じる、前記第1チャックピンが当接する位置での前記周縁部下面への前記薬液の回り込み量が、前記第2チャックピンが当接する位置での前記周縁部下面への前記薬液の回り込み量よりも小さく、かつ、前記第1チャックピンおよび前記第2チャックピンのどちらも当接しない位置での前記周縁部下面への前記薬液の回り込み量よりも大きい、
基板処理装置。
【請求項16】
請求項9に記載の基板処理装置であって、
前記第1チャックピンが、
前記周縁部端面に当接する端面当接面と、前記基板の周縁部上面に当接する上側当接面と、を備え、
前記制御部が、
前記基板が前記複数の支持ピンから離間して前記第1チャック部で保持された状態を形成するにあたって、
前記ガス供給部に前記基板の下方の空間へ前記ガスを供給させて前記基板を浮上させることによって前記基板を前記複数の支持ピンから離間させ、浮上している前記基板を前記第1チャック部に保持させる、
基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、基板処理方法および基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスなどを製造するにあたっては、基板に対して様々な処理が行われる。例えば、基板を、その厚み方向が上下方向に沿うような姿勢で保持しつつ、該基板の主面に処理液などを供給して、該主面に対する処理を行う基板処理装置が知られている(例えば、特許文献1~4)。このような基板処理装置の中には、一方の主面にデバイス(製造途上のデバイス)のパターンが形成された基板を、該主面が下方を向くような姿勢で保持して、このときに上方を向いている主面(すなわち、デバイスのパターンが形成されていない主面)に処理液などを供給して、該主面に対する処理を行うものもある(例えば、特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-49598号公報
【特許文献2】特開2006-228778号公報
【特許文献3】特開2021-48361号公報
【特許文献4】特開2020-198339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、基板における上方を向いている主面に処理液としての薬液を供給して該主面を処理する際に、上方を向いている主面に供給された薬液が、下方を向いている主面に回り込んでしまう可能性がある。下方を向いている主面にデバイスのパターンが形成されている場合、このような薬液の回り込みが生じてしまうと、回り込んだ薬液によって、例えばエッチングが進行してしまい、デバイス不良などが引き起こされるおそれがある。このような事態を回避するために、薬液の回り込みを低減することが求められている。特に、近年においては、1枚の基板からできるだけ多数個のデバイスを得るため、基板の外周縁の近傍までデバイスのパターンが形成されるようになってきており、薬液の回り込みを低減できる技術の必要性が高まっている。
【0005】
本願は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、基板における上方を向く主面に供給された薬液が下方を向く主面へ回り込むことを抑制できる技術の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様は、基板処理方法であって、パターンが形成された第1主面が下方を向く姿勢の基板が、前記基板を下方から支持する複数の支持ピンから離間して第1チャック部で保持された状態を形成する、第1保持状態形成工程と、前記複数の支持ピンから離間して前記第1チャック部に保持された前記基板を、上下に延びる中心軸の周りで回転させつつ、前記基板の下方の空間へガスを供給するとともに、前記基板における上方を向く第2主面に薬液を供給する、薬液処理工程と、を備え、前記第1チャック部が、前記基板の周縁部下面に当接せずに前記基板の周縁部端面に当接する第1チャックピンを複数備え、前記複数の第1チャックピンで前記基板を保持する。
【0007】
第2の態様は、第1の態様に係る基板処理方法であって、前記薬液の供給を停止し、前記第2主面へのリンス液の供給を開始するリンス液供給開始工程と、前記リンス液の供給が開始された後に、前記基板を第2チャック部で保持する第2保持状態形成工程と、を備え、前記第2チャック部が、前記基板の周縁部上面および前記周縁部下面に当接する第2チャックピンを複数備え、前記複数の第2チャックピンで前記基板を保持する。
【0008】
第3の態様は、第1または第2の態様に係る基板処理方法であって、少なくとも第2チャック部が前記基板を保持する状態で、前記基板の回転数を所定の乾燥回転数まで上昇させる、回転数上昇工程、を備え、前記第2チャック部が、前記基板の周縁部上面および前記周縁部下面に当接する第2チャックピンを複数備え、前記複数の第2チャックピンで前記基板を保持する。
【0009】
第4の態様は、第1から第3のいずれかの態様に係る基板処理方法であって、前記第1保持状態形成工程が、前記複数の支持ピンに支持されている前記基板を第2チャック部で保持して前記複数の支持ピンから離間させる、予備保持工程と、前記予備保持工程の後に、前記第2チャック部で保持される前記基板を、前記第1チャック部でさらに保持してから、前記第2チャック部による前記基板の保持を解除する、チャック部変更工程と、を備え、前記第2チャック部が、前記基板の周縁部上面および前記周縁部下面に当接する第2チャックピンを複数備え、前記複数の第2チャックピンで前記基板を保持する。
【0010】
第5の態様は、第1から第4のいずれかの態様に係る基板処理方法であって、前記第1チャックピンが、前記周縁部端面に当接する端面当接面と、前記基板の周縁部上面に当接する上側当接面と、を備える。
【0011】
第6の態様は、第1から第4のいずれかの態様に係る基板処理方法であって、前記第1チャックピンが、前記周縁部端面に当接する端面当接面を備え、前記基板の周縁部上面に当接する上側当接面を備えない。
【0012】
第7の態様は、第1から第6のいずれかの態様に係る基板処理方法であって、前記第2主面に前記薬液が供給されたときに生じる、前記第1チャックピンが当接する位置での前記周縁部下面への前記薬液の回り込み量が、前記基板の周縁部上面および前記周縁部下面に当接する第2チャックピンが当接する位置での前記周縁部下面への前記薬液の回り込み量よりも小さく、かつ、前記第1チャックピンおよび前記第2チャックピンのどちらも当接しない位置での前記周縁部下面への前記薬液の回り込み量よりも大きい。
【0013】
第8の態様は、第1の態様に係る基板処理方法であって、前記第1チャックピンが、前記周縁部端面に当接する端面当接面と、前記基板の周縁部上面に当接する上側当接面と、を備え、前記第1保持状態形成工程が、前記基板の下方の空間へガスを供給して前記基板を浮上させることによって前記基板を前記複数の支持ピンから離間させる浮上工程と、浮上している前記基板を前記第1チャック部で保持する浮上基板保持工程と、を備える。
【0014】
第9の態様は、基板処理装置であって、基板を保持する基板保持部と、前記基板保持部に保持される前記基板を、上下に延びる中心軸の周りで回転させる基板回転機構と、前記基板保持部に保持される前記基板における上方を向く主面に、処理液を供給する処理液供給部と、前記基板保持部に保持される前記基板の下方の空間へ、ガスを供給するガス供給部と、前記基板保持部、前記基板回転機構、前記処理液供給部、および、前記ガス供給部を制御する制御部と、を備え、前記基板保持部が、前記基板の下方から前記基板に当接して前記基板を支持する複数の支持ピンと、前記基板の周縁部下面に当接せずに前記基板の周縁部端面に当接する第1チャックピンを複数備え、前記複数の第1チャックピンで前記基板を保持する第1チャック部と、を備え、前記制御部が、パターンが形成された第1主面が下方を向く姿勢の基板が、前記複数の支持ピンから離間して前記第1チャック部で保持された状態で、前記基板回転機構に前記基板を回転させつつ、前記ガス供給部に前記基板の下方の空間へ前記ガスを供給させるとともに、前記処理液供給部に第1処理液としての薬液を前記基板における上方を向く第2主面に供給させる。
【0015】
第10の態様は、第9の態様に係る基板処理装置であって、前記基板保持部が、前記基板の周縁部上面および前記周縁部下面に当接する第2チャックピンを複数備え、前記複数の第2チャックピンで前記基板を保持する第2チャック部、を備え、前記制御部が、前記処理液供給部に、前記薬液の供給を停止させ、第2処理液としてのリンス液の供給を開始させ、前記リンス液の供給が開始された後に、前記基板を前記第2チャック部に保持させる。
【0016】
第11の態様は、第9または第10の態様に係る基板処理装置であって、前記基板保持部が、前記基板の周縁部上面および前記周縁部下面に当接する第2チャックピンを複数備え、前記複数の第2チャックピンで前記基板を保持する第2チャック部、を備え、前記制御部が、少なくとも前記第2チャック部に前記基板を保持させた状態で、前記基板回転機構による前記基板の回転数を所定の乾燥回転数まで上昇させる。
【0017】
第12の態様は、第9から第11のいずれかの態様に係る基板処理装置であって、前記基板保持部が、前記基板の周縁部上面および前記周縁部下面に当接する第2チャックピンを複数備え、前記複数の第2チャックピンで前記基板を保持する第2チャック部、を備え、前記制御部が、前記基板が前記複数の支持ピンから離間して前記第1チャック部で保持された状態を形成するにあたって、前記複数の支持ピンに支持されている前記基板を前記第2チャック部に保持させて、前記基板を前記複数の支持ピンから離間させた後、前記第2チャック部で保持される前記基板を、前記第1チャック部でさらに保持させてから、前記第2チャック部による前記基板の保持を解除させる。
【0018】
第13の態様は、第9から第12のいずれかの態様に係る基板処理装置であって、前記第1チャックピンが、前記周縁部端面に当接する端面当接面と、前記基板の周縁部上面に当接する上側当接面と、を備える。
【0019】
第14の態様は、第9から第12のいずれかの態様に係る基板処理装置であって、前記第1チャックピンが、前記周縁部端面に当接する端面当接面を備え、前記基板の周縁部上面に当接する上側当接面を備えない。
【0020】
第15の態様は、第9から第14のいずれかの態様に係る基板処理装置であって、前記基板保持部が、前記基板の周縁部上面および前記周縁部下面に当接する第2チャックピンを複数備え、前記複数の第2チャックピンで前記基板を保持する第2チャック部、を備え、前記第2主面に前記薬液が供給されたときに生じる、前記第1チャックピンが当接する位置での前記周縁部下面への前記薬液の回り込み量が、前記第2チャックピンが当接する位置での前記周縁部下面への前記薬液の回り込み量よりも小さく、かつ、前記第1チャックピンおよび前記第2チャックピンのどちらも当接しない位置での前記周縁部下面への前記薬液の回り込み量よりも大きい。
【0021】
第16の態様は、第9の態様に係る基板処理装置であって、前記第1チャックピンが、前記周縁部端面に当接する端面当接面と、前記基板の周縁部上面に当接する上側当接面と、を備え、前記制御部が、前記基板が前記複数の支持ピンから離間して前記第1チャック部で保持された状態を形成するにあたって、前記ガス供給部に前記基板の下方の空間へ前記ガスを供給させて前記基板を浮上させることによって前記基板を前記複数の支持ピンから離間させ、浮上している前記基板を前記第1チャック部に保持させる。
【発明の効果】
【0022】
第1の態様に係る基板処理方法、および、第9の態様に係る基板処理装置の各々によると、パターンが形成された第1主面が下方を向く姿勢とされている基板における、上方を向く第2主面に、薬液が供給される。薬液が供給される際に、基板の周縁部下面にチャックピンが当接している場合、第2主面に供給された薬液が、毛細管現象によって、周縁部下面とチャックピンとの当接部分における微小な隙間を伝って、周縁部下面に回り込んでしまう可能性がある。ここでは、薬液が供給される際に基板を保持している第1チャック部が備える第1チャックピンは、基板の周縁部下面に当接しないので、毛細管現象に起因する周縁部下面への薬液の回り込みが生じない。したがって、基板における上方を向く主面(第2主面)に供給された薬液が下方を向く主面(第1主面)へ回り込むことを抑制できる。
【0023】
第2の態様に係る基板処理方法、および、第10の態様に係る基板処理装置の各々によると、第2主面への薬液の供給が停止され、リンス液の供給が開始された後、つまりは、第1主面への薬液の回り込みが生じにくい状態となった後に、第2チャック部が基板を保持するので、基板を安定して保持することができる。
【0024】
第3の態様に係る基板処理方法、および、第11の態様に係る基板処理装置の各々によると、基板が第2チャック部で保持されている状態で、基板の回転数を所定の乾燥回転数まで上昇させるので、回転数を上昇させる際に基板が高さ方向に位置ずれを生じることがない。
【0025】
第4の態様に係る基板処理方法、および、第12の態様に係る基板処理装置の各々によると、基板が複数の支持ピンから離間して第1チャック部で保持された状態を形成するにあたって、複数の支持ピンに支持されている基板をそのまま第1チャック部で保持するのではなく、まずは第2チャック部で基板を保持する。第2チャック部が備える第2チャックピンは、基板の周縁部上面および周縁部下面に当接するので、第2チャック部で保持された基板は、所定の高さに位置決めされる。したがって、第2チャック部で保持することによって基板を所定の高さに位置決めした後に、該基板を第1チャック部で保持することによって、第1チャック部で保持される基板が該所定の高さに位置決めされるように担保することができる。
【0026】
第5の態様に係る基板処理方法、および、第13の態様に係る基板処理装置の各々によると、例えば、第1チャック部で保持されている基板が、その下方の空間へ供給されるガスの圧力によって上方に付勢されても、該基板が上側に位置ずれすることがない。
【0027】
第6の態様に係る基板処理方法、および、第14の態様に係る基板処理装置の各々によると、第1チャック部が備える第1チャックピンが、基板の周縁部上面に当接する上側当接面を備えないので、基板と第1チャックピンとの間の当接領域を十分に小さな領域とすることができる。
【0028】
第7の態様に係る基板処理方法、および、第15の態様に係る基板処理装置の各々によると、第1チャックピンが当接している状態で基板の第2主面に薬液を供給することによって、第2主面に供給された薬液が第1主面へ回り込むことを抑制できる。
【0029】
第8の態様に係る基板処理方法、および、第16の態様に係る基板処理装置の各々によると、基板がガスの圧力によって上方に付勢されつつ、第1チャック部に保持されるので、基板の周縁部上面に第1チャックピンの上側当接面が当接し、これによって、第1チャック部で保持される基板が所定の高さに位置決めされる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】第1実施形態に係る基板処理装置の構成を概略的に示す側断面図である。
【
図2】対向板部の対向面を概略的に示す平面図である。
【
図5】第1チャックピンが備える突出部の側面図である。
【
図7】第2チャックピンが備える突出部の側面図である。
【
図9】対向板部の下面を示す図であって、第1開放磁石および第2開放磁石が離間位置に配置された状態を示す図である。
【
図10】対向板部の下面を示す図であって、第1開放磁石および第2開放磁石が近接位置に配置された状態を示す図である。
【
図11】対向板部の下面を示す図であって、第1開放磁石が近接位置に配置され、第2開放磁石が離間位置に配置された状態を示す図である。
【
図12】対向板部の下面を示す図であって、第1開放磁石が離間位置に配置され、第2開放磁石が近接位置に配置された状態を示す図である。
【
図14】基板処理装置で行われる処理の流れを示す図である。
【
図16】第2実施形態に係る基板処理装置の構成を概略的に示す側断面図である。
【
図17】対向板部の対向面を概略的に示す平面図である。
【
図18】基板処理装置で行われる処理の流れを示す図である。
【
図19】基板を保持する態様を説明するための図である。
【
図20】別の形状に係る第1チャックピンが備える突出部の側面図である。
【
図21】別の形状に係る第1チャックピンが備える突出部の側面図である。
【
図22】毛細管現象に起因する回り込みの発生を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付の図面を参照しながら、実施形態について説明する。なお、この実施形態に記載されている構成要素はあくまでも例示であり、本開示の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。また、図面においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法または数が誇張または簡略化して図示されている場合がある。
【0032】
相対的または絶対的な位置関係を示す表現(例えば、「一方向に」、「一方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」、「同軸」、など)は、特に断らない限り、その位置関係を厳密に表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる範囲で相対的に角度または距離に関して変位された状態も表すものとする。また、等しい状態であることを示す表現(例えば、「同一」、「等しい」、「均質」、など)は、特に断らない限り、定量的に厳密に等しい状態を表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる差が存在する状態も表すものとする。また、形状を示す表現(例えば、「円形状」、「四角形状」、「円筒形状」、など)は、特に断らない限り、幾何学的に厳密にその形状を表すのみならず、同程度の効果が得られる範囲の形状を表すものとし、例えば凹凸または面取りなどを有していてもよい。また、構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、「有する」、といった各表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的表現ではない。また、「A、BおよびCのうちの少なくとも一つ」という表現には、「Aのみ」、「Bのみ」、「Cのみ」、「A、BおよびCのうち任意の2つ」、「A、BおよびCの全て」が含まれる。
【0033】
<1.第1実施形態>
<1-1.基板処理装置の構成>
第1実施形態に係る基板処理装置100の構成について、
図1を参照しながら説明する。
図1は、基板処理装置100の構成を概略的に示す側断面図である。
【0034】
基板処理装置100は、処理対象である基板9を1枚ずつ処理する、いわゆる枚葉式の処理装置であり、ここで行われる処理は、例えば、基板9の主面に付着した汚染物質、パーティクル、酸化膜、などを除去する処理(洗浄処理)である。基板処理装置100で処理対象とされる基板9は、例えば円板状であり、一方の主面に、デバイス(製造途上のデバイス)のパターンDP(
図5参照)が形成される。ただし、基板処理装置100で処理対象とされるのは、基板9における、デバイスのパターンDPが形成されていない方の主面である。以下において、基板9における、デバイスのパターンDPが形成されている主面(すなわち、デバイス形成面)を、「第1主面91」と呼び、デバイスのパターンDPが形成されていない他方の主面(すなわち、デバイス非形成面)を「第2主面92」と呼ぶ。
【0035】
基板処理装置100は、基板保持部1と、基板回転機構2と、処理液供給部3と、ガス供給部4と、制御部5と、を備える。基板保持部1、基板回転機構2、処理液供給部3の処理液ノズル31(後述する)、ガス供給部4のガスノズル41(後述する)、などは、およそ密閉された空間を内部に形成するチャンバ(図示省略)に収容される。
【0036】
(基板保持部1)
基板保持部1は、基板9を水平姿勢で保持する。ここでいう水平姿勢とは、基板9の厚み方向が上下方向に沿うような姿勢をいう。基板9は、デバイス形成面である第1主面91を下方に向け、デバイス非形成面である第2主面92を上方に向けるような姿勢で、基板保持部1に保持される。基板保持部1は、円板状の部材である対向板部11を備え、基板9は、第1主面91を、対向板部11における上方を向く主面(対向面)111に対向させるような姿勢で、対向板部11の上方に、保持される。基板保持部1の具体的な構成については、後に説明する。
【0037】
(基板回転機構2)
基板回転機構2は、基板保持部1に保持される基板9を、上下に延びる中心軸J1の周りで回転させる。基板回転機構2は、具体的には例えば、上端において対向板部11の下面112の中央部と連結されたシャフト部21と、シャフト部21を駆動するモータ22と、を備える。ここでは、例えば、対向板部11の中心(つまりは、対向板部11の上方に保持される基板9の主面91,92の中心)を通って上下に延びる軸が、中心軸J1として規定されており、シャフト部21は、この中心軸J1と同軸に設けられる。モータ22の駆動を受けてシャフト部21が回転されることによって、対向板部11、ひいては、ここに設けられているチャック部710,720(後述する)によって保持されている基板9が、中心軸J1の周りで回転する。モータ22は、制御部5からの指示に応じて駆動されるものであり、対向板部11(ひいては、基板9)の回転数、対向板部11が回転を停止する際の回転方向の位置(角度)、などが、制御部5によって制御される。
【0038】
(処理液供給部3)
処理液供給部3は、基板保持部1に保持される基板9における上方を向く第2主面92に、処理液を供給する。処理液供給部3は、具体的には例えば、処理液ノズル31と、処理液供給源32と、を備える。
【0039】
処理液ノズル31は、処理液を吐出するノズルであり、ノズルアーム311によって支持される。ノズルアーム311にはノズル移動機構(図示省略)が接続されており、ノズルアーム311がノズル移動機構に駆動されることによって、処理液ノズル31が吐出位置と待機位置との間で移動される。ここで「吐出位置」とは、処理液ノズル31が、基板保持部1に保持される基板9の第2主面92(すなわち、上方を向く主面である第2主面92)の中央部に対向するような位置である。また、「待機位置」とは、処理液ノズル31が、上方から見て、基板保持部1に保持される基板9と重ならずにこれから離間するような位置である。
【0040】
処理液供給源32は、処理液ノズル31に処理液を供給する供給源である。処理液供給源32は、具体的には例えば、第1処理液としての薬液を処理液ノズル31に供給する薬液供給源32aと、第2処理液としてのリンス液を処理液ノズル31に供給するリンス液供給源32bと、を備える。
【0041】
薬液供給源32aは、薬液バルブ(弁)321aおよび流量調整部322aが介挿された配管323aによって、処理液ノズル31に接続される。したがって、制御部5からの指示に応じて薬液バルブ321aが開放されると、薬液供給源32aから供給される薬液が、流量調整部322bによって調整される流量で、処理液ノズル31から吐出される。処理液ノズル31が吐出位置に配置されている状態において、薬液バルブ321aが開放されると、基板保持部1に保持される基板9の第2主面92の中央部に向けて、薬液が吐出されることになる。薬液として、フッ酸(HF)、オゾン含有フッ酸溶液、希フッ酸(DHF)、バッファードフッ酸(BHF)、SC1(NH4OHおよびH2O2を含む液)、などが例示される。
【0042】
リンス液供給源32bは、リンス液バルブ321bおよび流量調整部322bが介挿された配管323bによって、処理液ノズル31に接続される。したがって、制御部5からの指示に応じてリンス液バルブ321bが開放されると、リンス液供給源32bから供給されるリンス液が、流量調整部322bによって調整される流量で、処理液ノズル31から吐出される。処理液ノズル31が吐出位置に配置されている状態において、リンス液バルブ321bが開放されると、基板保持部1に保持される基板9の第2主面92の中央部に向けて、リンス液が吐出されることになる。リンス液として、脱イオン水(DIW)、イソプロピルアルコール(IPA)、などが例示される。
【0043】
(ガス供給部4)
ガス供給部4は、基板保持部1に保持される基板9の下方の空間へガスを供給する。ガス供給部4は、具体的には例えば、ガスノズル41と、ガス供給源42と、を備える。
【0044】
ガスノズル41は、ガスを吐出するノズルである。ガスノズル41は、具体的には例えば、シャフト部21に設けられた中空部に配設される。ガスノズル41の上端側の部分は、対向板部11の中央部に設けられた貫通孔内に配置されており、ガスノズル41の上端に設けられているガス吐出口が、対向板部11の対向面111の中央部の近傍に配置される。つまり、ガスノズル41は、基板保持部1に保持される基板9の第1主面91の中央部に対向するように、設けられる。
【0045】
ガス供給源42は、ガスノズル41に所定のガス(ここでは、不活性ガス)を供給する供給源である。ガス供給源42は、具体的には例えば、ガスバルブ421および流量調整部422が介挿された配管423によって、ガスノズル41に接続される。したがって、制御部5からの指示に応じてガスバルブ421が開放されると、ガス供給源42から供給される不活性ガスが、流量調整部422によって調整される流量で、ガスノズル41から吐出される。すなわち、基板保持部1に保持される基板9の下方の空間(具体的には、対向面111と第1主面91との間の空間)に、不活性ガスが供給される。不活性ガスは、典型的には、窒素ガスであるが、アルゴンガス、ヘリウムガス、低湿度の清浄空気、などであってもよい。
【0046】
なお、対向板部11の対向面111には、その上方に保持される基板9の周縁よりも内側(中心軸J1の側)において、中心軸J1を中心とする円の円周に沿って延在する環状の段差部113が設けられて、中心軸J1の側が相対的に低いものとされてもよい。このような段差部113が設けられる場合、対向面111と第1主面91との間の離間距離は、段差部113の内側において相対的に大きくなり、段差部113の外側において相対的に小さくなる。したがって、基板保持部1に保持される基板9の下方の空間に不活性ガスが供給された際に、段差部113の内側における対向面111と第1主面91との間の空間が十分な陽圧となる。また、基板9の周縁と対向面111との間の隙間を通じて流出する不活性ガスの速度が十分に高まる。これにより、基板9の第1主面91が保護されるとともに、処理液を用いた処理が行われる際に、基板9の第2主面92に供給された処理液、および、該処理液の雰囲気が、第1主面91の側に回り込むことが抑制される。なお、段差部113は、上方から見て、中心軸J1を中心とする円の円周に沿うような環状とすることができるが、完全な円環状である必要はない。例えば、該円周上に各種の部材(例えば、支持ピン61、チャックピン71,72、など)が設けられている場合は、段差部113は、その部材を避けて該部材よりも中心軸J1の側に迂回するように設ければよい(
図2参照)。
【0047】
(制御部5)
制御部5は、基板処理装置100が備える各部(基板保持部1、基板回転機構2、処理液供給部3、および、ガス供給部4)を制御する。制御部5は、具体的には例えば、電気回路を有する一般的なコンピュータによって構成される。制御部5は、具体的には例えば、
図13に示されるように、データ処理を担う中央演算装置としてのCPU(Central Processor Unit)51、基本プログラムなどが格納されるROM(Read Only Memory)52、CPU51が所定の処理(データ処理)を行う際の作業領域として用いられるRAM(Random Access Memory)53、フラッシュメモリ、ハードディスク装置、などの不揮発性記憶装置によって構成される記憶装置54、これらを相互に接続するバスライン55、などを含んで構成される。記憶装置54には、制御部5が実行する処理を規定するプログラムPが格納されており、CPU51がこのプログラムPを実行することにより、制御部5がプログラムPによって規定された処理を実行することができる。もっとも、制御部5が実行する処理の一部または全部が、専用の論理回路などのハードウェアによって実行されてもよい。また、プログラムPは、記録媒体に記憶されていてもよく、この記録媒体を用いて、制御部5にプログラムPをインストールするものであってもよい。
【0048】
<1-2.基板保持部>
次に、基板保持部1の構成について、
図1に加え、
図2を参照しながら説明する。
図2は、対向板部11の対向面111を概略的に示す平面図である。
【0049】
基板保持部1は、上記のとおり、対向板部11を備える。さらに、基板保持部1は、対向板部11の上方に基板9を支持する支持部6と、対向板部11の上方に基板9を保持するチャック部7と、を備える。
【0050】
<1-2-1.支持部>
支持部6は、基板9の下方から基板9に当接して、基板9を対向板部11の上方において水平姿勢で支持する複数の支持ピン61と、各支持ピン61を昇降させるピン昇降機構62と、を備える。
【0051】
(i)支持ピン61
複数(図の例では6個)の支持ピン61は、対向板部11に設けられる。いま、対向板部11の中心軸J1を中心とする仮想的な円(基準円)C1を規定したとき、複数の支持ピン61は、基準円C1の円周上に、その円周方向に沿って等間隔で、配列される。支持ピン61が例えば6個設けられる場合、隣り合う支持ピン61は、中心軸J1から見て60度の間隔を設けつつ配列されることになる。
【0052】
ここで、各支持ピン61について、
図1、
図2に加え、
図3、
図4を参照しながら具体的に説明する。
図3は、支持ピン61の側面図である。
図4は、支持ピン61の平面図である。
【0053】
支持ピン61は、略円柱状の基体部61aと、基体部61aの上端面から上方に突出して設けられる突出部61bと、を備える。
【0054】
基体部61aは、対向面111に設けられた円柱状の穴部114内に配置される。つまり、対向面111には、基準円C1の円周上に、該円周方向に沿って等間隔で配列された、複数の穴部114が設けられており、各支持ピン61の基体部61aが、各穴部114内に配置される。ただし、基体部61aは、穴部114内において昇降可能に支持される。
【0055】
複数の支持ピン61の基体部61aは、対向板部11の内部に設けられた環状部材(図示省略)を介して、互いに連結される。具体的には例えば、対向板部11の内部には、中心軸J1を中心とする環状の中空空間が設けられており、ここに配置された環状部材によって、複数の支持ピン61の基体部61aが互いに連結される。いうまでもなく、環状部材は、完全な円環状である必要はなく、対向板部11に設けられる他の部材(例えば、チャックピン71,72、など)と干渉しないように、他の部材を避けるような形状とされてよい。
【0056】
突出部61bは、基体部61aの上端面から上方に突出して設けられる。突出部61bは、具体的には例えば、リフト支持面611と、リフト案内面612と、リフト補助案内面613と、を備える。
【0057】
リフト支持面611は、およそ上方を向く面であり、中心軸J1に近づくにつれて下方に(対向面111に近づくように)傾斜する。いま、突出部61bの中心を通り、中心軸J1を含むとともに、中心軸J1を中心とする円の径方向に沿う面(基準面)F1を規定したとき、リフト支持面611は、基準面F1に関して対称形状であり、基準面F1を挟んでその両側に2個の面611aを有する。2個の面611aの各々は、中心軸J1に近づくにつれて下方に傾斜するとともに、基準面F1から離れるにつれて(つまり、基準円C1の円周方向について基準面F1から離れるにつれて)下方に傾斜しており、2個の面611aは、基準面F1上で鈍角をなして連なる。つまり、リフト支持面611は、2個の面611aが交差する角部611bを備えており、この角部611bは、中心軸J1に近づくにつれて下方に傾斜する。複数の支持ピン61が基板9を支持する際には、典型的には、各リフト支持面611の角部611bが、基板9の周縁部93とほぼ点接触する。
【0058】
また、リフト支持面611には、排液溝611cが形成される。排液溝611cは、具体的には例えば、リフト支持面611の2個の面611aの各々に形成される。つまり、排液溝611cは、角部611bを挟んでその両側に設けられる。各排液溝611cは、角部611bの近傍から面611aの縁まで、基準円C1の円周方向に連続する溝であり、各排液溝611cの底面は、角部611bから離れるにつれて下方に傾斜する。このような排液溝611cが設けられることによって、処理液を用いた処理が行われる際に、基板9とリフト支持面611との間に入り込んだ処理液が、排液溝611cを通じて適切に排出される。
【0059】
リフト案内面612は、リフト支持面611に対して中心軸J1とは反対側に連なる面である。リフト案内面612は、およそ中心軸J1を向く面であり、中心軸J1に近づくにつれて下方に傾斜する。リフト案内面612も、リフト支持面611と同様、基準面F1に関して対称形状であり、基準面F1を挟んでその両側に2個の面612aを有する。2個の面612aは、基準面F1上で鈍角をなして連なる。つまり、リフト案内面612は、2個の面612aが交差する角部612bを備えており、この角部612bは、中心軸J1に近づくにつれて下方に傾斜する。基準面F1上において、リフト案内面612(具体的には、角部612b)の対向面111に対する傾斜角は、リフト支持面611(具体的には、角部611b)の対向面111に対する傾斜角よりも大きい。すなわち、リフト案内面612の勾配は、リフト支持面611の勾配よりも大きい。また、基準面F1上において、リフト案内面612の下端と中心軸J1との間の距離は、基板9の半径よりも僅かに大きい。
【0060】
リフト補助案内面613は、リフト案内面612に対して中心軸J1とは反対側に連なる面である。リフト補助案内面613は、中心軸J1を向き、かつ、上方を向く面であり、中心軸J1に近づくにつれて下方に傾斜する。リフト補助案内面613も、リフト支持面611などと同様、基準面F1に関して対称形状であり、基準面F1を挟んでその両側に2個の面613aを有する。2個の面613aは、基準面F1上で鈍角をなして連なる。つまり、リフト補助案内面613は、2個の面613aが交差する角部613bを備えており、この角部613bは、中心軸J1に近づくにつれて下方に傾斜する。基準面F1上において、リフト補助案内面613(具体的には、角部613b)の対向面111に対する傾斜角は、リフト案内面612(具体的には、角部612b)の対向面111に対する傾斜角よりも小さく、リフト支持面611(具体的には、角部611b)の対向面111に対する傾斜角よりも大きい。すなわち、リフト補助案内面613の勾配は、リフト案内面612の勾配よりも小さく、リフト支持面611の勾配よりも大きい。
【0061】
(ii)ピン昇降機構62
ピン昇降機構62は、複数の支持ピン61を昇降(上下方向に移動)させるための機構であり、対向板部11の下方に配置される(
図1)。ピン昇降機構62が各支持ピン61を昇降させることによって、支持ピン61によって支持された基板9が昇降される。つまり、ここでは、支持ピン61が、基板9を支持する支持部として機能するだけでなく、基板9を昇降させるリフトピンとしても機能する。ピン昇降機構62は、具体的には例えば、ピストンロッド621と、これを進退させるエアシリンダ622と、を備える。ピストンロッド621は、対向板部11の下方であって、対向板部11が所定の回転停止位置で回転を停止した状態において、支持ピン61が設けられる穴部114に対向するような位置に、配置される。
【0062】
このような構成において、エアシリンダ622の駆動を受けて、ピストンロッド621が上昇すると、これと対向する穴部114内に設けられている支持ピン61が突き上げられて、上位置(
図3の二点鎖線)に配置される。該支持ピン61が上位置に配置されると、環状部材を介して連結された他の全ての支持ピン61も、上位置に配置される。つまり、複数の支持ピン61の全てが上位置に配置される。
【0063】
一方、エアシリンダ622の駆動を受けて、ピストンロッド621が下降すると、複数の支持ピン61が、上位置よりも下方の下位置(
図3の実線)に配置される。ピストンロッド621が上昇していない状態において支持ピン61が確実に下位置に配置されるように、支持ピン61にはこれを下方に付勢するバネなどの付勢部材が設けられてもよい。なお、支持ピン61が下位置に配置された状態においても、支持ピン61の基体部61aの上面(平面視における支持ピン61の全領域)は、対向面111と同じ高さ、または、対向面111よりも僅かに上方に配置されることが好ましい。この構成によると、処理液を用いた処理が行われる際に、支持ピン61上に処理液が溜まることがない。
【0064】
<1-2-2.チャック部>
チャック部7は、第1チャック部710と、第2チャック部720と、を備える。第1チャック部710は、複数の第1チャックピン71を備え、複数の第1チャックピン71で基板9を保持する。一方、第2チャック部720は、複数の第2チャックピン72を備え、複数の第2チャックピン72で基板9を保持する。また、チャック部7は、各チャック部710,720による基板9の保持と解除とを切り替えるチャック切替機構73をさらに備える。
【0065】
複数の第1チャックピン71、および、複数の第2チャックピン72は、いずれも、複数の支持ピン61とともに、基準円C1の円周上に配列されて、対向板部11に設けられる。つまり、基準円C1の円周上には、複数の支持ピン61、複数の第1チャックピン71、および、複数の第2チャックピン72が、配列される。
【0066】
複数の第1チャックピン71は、基準円C1の円周上に、その円周方向に沿って等間隔で、配列される。第1チャックピン71が例えば3個設けられる場合、隣り合う第1チャックピン71は、中心軸J1から見て120度の間隔を設けつつ配列されることになる。同様に、複数の第2チャックピン72も、基準円C1の円周上に、その円周方向に沿って等間隔で、配列される。第2チャックピン72が例えば3個設けられる場合、隣り合う第2チャックピン72は、中心軸J1から見て120度の間隔を設けつつ配列されることになる。
【0067】
また、第1チャックピン71および第2チャックピン72は、支持ピン61を間に挟みつつ、円周方向に沿って、交互に、等間隔で、配置される。つまり、第1チャックピン71、支持ピン61、第2チャックピン72、支持ピン61、第1チャックピン71、支持ピン61、第2チャックピン72、・・・といった順序で配列される。また、例えば、支持ピン61が6個設けられ、第1チャックピン71および第2チャックピン72がそれぞれ3個設けられる場合、隣り合う支持ピン61と第1チャックピン71あるいは第2チャックピン72とは、中心軸J1から見て30度の間隔を設けつつ配列される。また、支持ピン61を挟んで隣り合う第1チャックピン71と第2チャックピン72は、中心軸J1から見て60度の間隔を設けつつ配列される。
【0068】
(i)第1チャックピン71
第1チャックピン71について、
図1、
図2に加え、
図5、
図6を参照しながら具体的に説明する。
図5は、第1チャックピン71が備える突出部71bの側面図である。
図6は、第1チャックピン71の平面図である。
【0069】
第1チャックピン71は、略円柱状の基体部71aと、基体部71aの上端面から上方に突出して設けられる2個の突出部71bと、を備える。
【0070】
基体部71aは、対向面111に設けられた円柱状の穴部115内に配置される。すなわち、対向面111には、基準円C1の円周上に複数の穴部115が設けられており、第1チャックピン71の基体部71aが、各穴部115内に配置される。ただし、穴部115にはベアリング116(
図1)が設けられており、第1チャックピン71は、基体部71aの中心を通って上下に延びる軸(チャック回動軸)J2の周りで回動可能に支持される。穴部115には、第1チャックピン71の回動範囲を所定の角度範囲(ただし、少なくとも後述する保持位置と開放位置とを含む角度範囲)に制限するための係止部材(図示省略)が設けられてもよい。
【0071】
第1チャックピン71の基体部71aの上面(平面視における第1チャックピン71の全領域)は、対向面111と同じ高さ、または、対向面111よりも僅かに上方に配置されることが好ましい。この構成によると、処理液を用いた処理が行われる際に、第1チャックピン71上に処理液が溜まることがない。
【0072】
各突出部71bは、チャック回動軸J2からずれた位置(偏心した位置)に配置される。具体的には、各突出部71bは、中心軸J1を中心とする基準円C1の円周方向について、チャック回動軸J2から離間した位置に配置される。また、2個の突出部71b同士も、基準円C1の円周方向について、互いに離間した位置に配置される。2個の突出部71bの間に隙間が設けられることにより、処理液を用いた処理が行われる際に、基板9の第2主面92に供給された処理液が、該隙間を介して第2主面92から排出される。
【0073】
2個の突出部71bの各々は、基準円C1の円周方向に沿って見て、同じ外形を有する。いま、各突出部71bの中心を通り、対向面111の中心軸J1を含むとともに、中心軸J1を中心とする円の径方向に沿う面(基準面)F2を規定したとき、第1チャックピン71が保持位置(
図6の実線)に配置された状態において、突出部71bにおける中心軸J1の側を向く側面(チャック当接面)7101は、例えば、基準面F2と直交する。
【0074】
チャック当接面7101は、具体的には例えば、第1チャックピン71が保持位置に配置された状態において、基板9の周縁部端面930に当接する端面当接面711と、該状態において、基板9の周縁部上面932に当接する上側当接面712と、を備える。
【0075】
ただし、ここでは、基板9の主面91,92の周囲を取り囲む平面視にて環状の部分であって、平坦に延在する面である各主面91,92と非平行である部分を、基板9の「周縁部93」という。また、基板9の周縁部93のうち、基板9の径方向の外方を向く面(典型的には、主面91,92と直交する面)を、「周縁部端面930」と呼ぶ。さらに、基板9の周縁部93のうち、周縁部端面930の下側に連なる部分を、「周縁部下面931」と呼び、周縁部端面930の上側に連なる部分を、「周縁部上面932」と呼ぶ。つまり、基板9が、第1主面91を下方に向け、第2主面92を上方に向ける姿勢となっている場合、周縁部下面931は、周縁部端面930と第1主面91との間に存在する部分であり、周縁部上面932は、周縁部端面930と第2主面92との間に存在する部分である。一例として、基板9の直径が300mmである場合、周縁部93は、周縁部端面930から約0.5mmの環状領域である。なお、周縁部93は、図示されるように円弧状に湾曲した形状であってもよいが、このような形状に限られるものではない。
【0076】
端面当接面711は、第1チャックピン71が保持位置に配置された状態において、基板9の周縁部端面930に当接する面である。端面当接面711は、具体的には例えば、上下方向(鉛直方向)に沿って延在する面(つまり、対向面111となす角度がほぼ90度であるような面)であり、側方から見て、対向面111上に水平姿勢で保持された基板9の周縁部端面930とほぼ平行に延在する。端面当接面711は、例えば、上方から見て直線状に延在する面であってもよい。つまり、端面当接面711は、平面であってもよい。
【0077】
上側当接面712は、第1チャックピン71が保持位置に配置された状態において、基板9の周縁部上面932に当接する面であり、端面当接面711の上方に連なる。上側当接面712は、具体的には例えば、下方を向く平面である。すなわち、上側当接面712は、中心軸J1に近づくにつれて上方に傾斜して、上端において突出部71bの上面に連なる。上側当接面712の下端(すなわち、端面当接面711と連なる部分)は、基準面F2上における形状が、基板9の周縁部上面932の形状に一致するように湾曲した湾曲当接面7121とされてもよい。
【0078】
後に明らかになるように、各第1チャックピン71は、チャック回動軸J2の周りで回動されることによって、開放位置(
図6の二点鎖線)と、保持位置(
図6の実線)との間で移動される。上記のとおり、第1チャックピン71の各突出部71bは、チャック回動軸J2からずれた位置に配置されており、第1チャックピン71が開放位置と保持位置との間で移動されると、各突出部71bのチャック当接面7101が、基板9の周縁部93に対して近接離間する方向に移動する。
【0079】
第1チャックピン71が保持位置に配置された状態において、各突出部71bの端面当接面711と中心軸J1との離間距離は、基板9の半径にほぼ一致する。したがって、第1チャックピン71が保持位置に配置されると、各突出部71bの端面当接面711が、周縁部端面930に当接する(
図5(b))。このとき、各突出部71bの上側当接面712が、周縁部上面932に当接する。ただし、各突出部71bは、基板9の周縁部下面931に当接する面(後述する下側当接面721に相当する面)を備えない。したがって、第1チャックピン71が保持位置に配置された状態において、各突出部71bは、周縁部下面931に当接しない。
【0080】
一方、第1チャックピン71が保持位置から開放位置に移動されると、各突出部71bのチャック当接面7101と中心軸J1との離間距離が大きくなる。すなわち、各突出部71bの端面当接面711と中心軸J1との離間距離が、基板9の半径よりも大きくなる。したがって、第1チャックピン71が開放位置に配置されると、各突出部71bの端面当接面711が周縁部端面930から離間するとともに、各突出部72bの上側当接面712が周縁部上面932から離間する(
図5(a))。
【0081】
このように、複数の第1チャックピン71の各々が保持位置に配置されると、基板9の周縁部93の互いに異なる各位置で、第1チャックピン71が、周縁部下面931に当接することなく、端面当接面711において周縁部端面930に当接するとともに、上側当接面712において周縁部上面932に当接した状態となり、これによって基板9が保持される。すなわち、第1チャック部710で基板9が保持される。一方、複数の第1チャックピン71の各々が開放位置に配置されると、各第1チャックピン71が基板9から離間した状態となり、これによって基板9の保持が解除される。すなわち、第1チャック部710による基板9の保持が解除される。
【0082】
第1チャック部710が基板9を保持する状態においては、各第1チャックピン71が、周縁部下面931に当接しないため、処理液を用いた処理が行われる際に、毛細管現象に起因する周縁部下面931への処理液の回り込みが生じない。
【0083】
(ii)第2チャックピン72
第2チャックピン72について、
図1、
図2に加え、
図7、
図8を参照しながら具体的に説明する。
図7は、第2チャックピン72が備える突出部72bの側面図である。
図8は、第2チャックピン72の平面図である。
【0084】
第2チャックピン72は、略円柱状の基体部72aと、基体部72aの上端面から上方に突出して設けられる2個の突出部72bと、を備える。
【0085】
基体部72aは、第1チャックピン71の基体部71aと同様、対向面111に設けられた円柱状の穴部115内に配置される。すなわち、対向面111には、基準円C1の円周上に複数の穴部115が設けられており、第2チャックピン72の基体部72aが、各穴部115内に配置される。ただし、穴部115にはベアリング116(
図1)が設けられており、第2チャックピン72は、基体部72aの中心を通って上下に延びる軸(チャック回動軸)J2の周りで回動可能に支持される。穴部115には、第2チャックピン72の回動範囲を所定の角度範囲(ただし、少なくとも後述する保持位置と開放位置とを含む角度範囲)に制限するための係止部材(図示省略)が設けられてもよい。
【0086】
第2チャックピン72の基体部72aの上面(平面視における第2チャックピン72の全領域)は、対向面111と同じ高さ、または、対向面111よりも僅かに上方に配置されることが好ましい。この構成によると、処理液を用いた処理が行われる際に、第2チャックピン72上に処理液が溜まることがない。
【0087】
各突出部72bは、チャック回動軸J2からずれた位置(偏心した位置)に配置される。具体的には、各突出部72bは、中心軸J1を中心とする基準円C1の円周方向について、チャック回動軸J2から離間した位置に配置される。また、2個の突出部72b同士も、基準円C1の円周方向について、互いに離間した位置に配置される。2個の突出部72bの間に隙間が設けられることにより、処理液を用いた処理が行われる際に、基板9の第2主面92に供給された処理液が、該隙間を介して第2主面92から排出される。
【0088】
2個の突出部72bの各々は、基準円C1の円周方向に沿って見て、同じ外形を有する。いま、各突出部72bの中心を通り、対向面111の中心軸J1を含むとともに、中心軸J1を中心とする円の径方向に沿う面(基準面)F3を規定したとき、第2チャックピン72が保持位置(
図8の実線)に配置された状態において、突出部72bにおける中心軸J1の側を向く側面(チャック当接面)7201は、例えば、基準面F3と直交する。
【0089】
チャック当接面7201は、具体的には例えば、第2チャックピン72が保持位置に配置された状態において、基板9の周縁部下面931に当接する下側当接面721と、該状態において、基板9の周縁部上面932に当接する上側当接面722と、該状態において、基板9の周縁部端面930に当接する湾曲当接面723と、を備える。
【0090】
下側当接面721は、第2チャックピン72が保持位置に配置された状態において、基板9の周縁部下面931に当接する面である。下側当接面721は、具体的には例えば、上方を向く平面である。すなわち、下側当接面721は、中心軸J1に近づくにつれて下方に傾斜して、下端において基体部72aの上面に連なる。
【0091】
上側当接面722は、第2チャックピン72が保持位置に配置された状態において、基板9の周縁部上面932に当接する面である。上側当接面722は、具体的には例えば、下方を向く平面である。すなわち、上側当接面722は、中心軸J1に近づくにつれて上方に傾斜して、上端において突出部72bの上面に連なる。
【0092】
基準面F3上において、下側当接面721の対向面111に対する上向きの傾斜角は、上側当接面722の対向面111に対する下向きの傾斜角とほぼ同じである。また、これらの傾斜角は、支持ピン61が備えるリフト支持面611の対向面111に対する上向きの傾斜角よりも大きい。すなわち、下側当接面721の勾配と上側当接面722の勾配とはほぼ同じであって、これらは、リフト支持面611の勾配よりも大きい。また、上側当接面722の対向面111に対する下向きの傾斜角は、第1チャックピン71が備える上側当接面712の対向面111に対する下向きの傾斜角とほぼ同じである。さらに、上側当接面722が配設される高さは、第1チャックピン71が備える上側当接面712が配設される高さとほぼ同じである。
【0093】
湾曲当接面723は、第2チャックピン72が保持位置に配置された状態において、基板9の周縁部端面930に当接する面であり、下側当接面721と上側当接面722との間に配置される。すなわち、湾曲当接面723は、下端において下側当接面721の上端と連なり、上端において上側当接面722の下端と連なる。湾曲当接面723は、具体的には例えば、基準面F3上における形状が、基板9の周縁部93の形状に一致するように湾曲した曲面である。
【0094】
後に明らかになるように、各第2チャックピン72は、チャック回動軸J2の周りで回動されることによって、開放位置(
図8の二点鎖線)と、保持位置(
図8の実線)との間で移動される。上記のとおり、第2チャックピン72の各突出部72bは、チャック回動軸J2からずれた位置に配置されており、第2チャックピン72が開放位置と保持位置との間で移動されると、各突出部72bのチャック当接面7201が、基板9の周縁部93に対して近接離間する方向に移動する。
【0095】
第2チャックピン72が保持位置に配置された状態において、各突出部72bの湾曲当接面723の中央(上下方向の中央)と中心軸J1との離間距離は、基板9の半径にほぼ一致する。したがって、第2チャックピン72が保持位置に配置されると、各突出部72bの湾曲当接面723が、周縁部端面930に当接する(
図7(b))。このとき、各突出部72bの下側当接面721が周縁部下面931に当接し、各突出部72bの上側当接面722が周縁部上面932に当接する。
【0096】
一方、第2チャックピン72が保持位置から開放位置に移動されると、各突出部72bのチャック当接面7201と中心軸J1との離間距離が大きくなる。すなわち、各突出部72bの湾曲当接面723の中央と中心軸J1との離間距離が、基板9の半径よりも大きくなる。したがって、第2チャックピン72が開放位置に配置されると、各突出部72bの湾曲当接面723が周縁部端面930から離間するとともに、各突出部72bの下側当接面721および上側当接面722のそれぞれが、周縁部下面931および周縁部上面932のそれぞれから離間する(
図7(a))。
【0097】
このように、複数の第2チャックピン72の各々が保持位置に配置されると、基板9の周縁部93の互いに異なる各位置で、第2チャックピン72が、湾曲当接面723において周縁部端面930に当接し、下側当接面721において周縁部下面931に当接し、さらに、上側当接面722において周縁部上面932に当接した状態となり、これによって基板9が保持される。すなわち、第2チャック部720で基板9が保持される。一方、複数の第2チャックピン72の各々が開放位置に配置されると、各第2チャックピン72が基板9から離間した状態となり、これによって基板9の保持が解除される。すなわち、第2チャック部720による基板9の保持が解除される。
【0098】
第2チャック部720が基板9を保持する状態においては、各第2チャックピン72が、周縁部端面930だけでなく、周縁部下面931および周縁部上面932にも当接するため、第2チャック部720で保持された基板9は、所定の高さに位置決めされて、該所定の高さに保持される。ただし、第2チャック部720によって保持された基板9が位置決めされる「所定の高さ」は、下位置に配置された複数の支持ピン61で支持される基板9が配置される高さよりも高く、上位置に配置された複数の支持ピン61で支持される基板9が配置される高さよりも低い。また、第2チャック部720が基板9を保持する状態においては、各第2チャックピン72が、周縁部端面930だけでなく、周縁部下面931および周縁部上面932にも当接するため、第2チャック部720は基板9を強固に安定して保持することができる。
【0099】
(iii)チャック切替機構73
次に、チャック切替機構73の構成について、
図1、
図2に加え、
図9~
図12を参照しながら具体的に説明する。
図9~
図12は、いずれも、対向板部11の下面112を模式的に示す図である。
図9には、第1開放磁石733aおよび第2開放磁石733bが離間位置に配置された状態が示されている。
図10には、第1開放磁石733aおよび第2開放磁石733bが近接位置に配置された状態が示されている。
図11には、第1開放磁石733aが近接位置に配置され、第2開放磁石733bが離間位置に配置された状態が示されている。
図12には、第1開放磁石733aが離間位置に配置され、第2開放磁石733bが近接位置に配置された状態が示されている。なお、
図9~
図12では、磁石のN極側の部位にハッチングが付されている。
【0100】
チャック切替機構73は、各チャック部710,720による基板9の保持と解除(保持の解除)とを切り替える。具体的には、チャック切替機構73は、複数の第1チャックピン71を保持位置と開放位置との間で移動させることによって、第1チャック部710による基板9の保持と解除とを切り替える。また、チャック切替機構73は、複数の第2チャックピン72を保持位置と開放位置との間で移動させることによって、第2チャック部720による基板9の保持と解除とを切り替える。
【0101】
チャック切替機構73は、複数の第1回動磁石731aと、複数の第2回動磁石731bと、を備える。また、チャック切替機構73は、複数の第1閉塞磁石732aと、複数の第2閉塞磁石732bと、を備える。また、チャック切替機構73は、複数の第1開放磁石733aと、複数の第2開放磁石733bと、を備える。さらに、チャック切替機構73は、複数の第1開放磁石733aを昇降させる第1磁石昇降機構734aと、複数の第2開放磁石733bを昇降させる第2磁石昇降機構734bと、を備える。各回動磁石731a,731b、各閉塞磁石732a,732b、および、各開放磁石733a,733bは、いずれも永久磁石である。また、各回動磁石731a,731b、各閉塞磁石732a,732b、および、各開放磁石733a,733bは、いずれも、実際は専用の保持部材に収容されるが、保持部材の図示は省略されている。
【0102】
(回動磁石731a,731b)
複数の第1回動磁石731aの各々は、対向板部11の下面112の側において、第1チャックピン71に取り付けられる。すなわち、各第1チャックピン71の下端部は、対向板部11の下面112よりも下方に突出しており、該下端部に第1回動磁石731aが取り付けられる。各第1回動磁石731aの磁極の向き(磁化方向)は、例えば、中心軸J1およびチャック回動軸J2に垂直な方向とされる。
【0103】
複数の第2回動磁石731bの各々は、対向板部11の下面112の側において、第2チャックピン72に取り付けられる。すなわち、各第2チャックピン72の下端部は、対向板部11の下面112よりも下方に突出しており、該下端部に第2回動磁石731bが取り付けられる。各第2回動磁石731bの磁極の向きは、例えば、中心軸J1およびチャック回動軸J2に垂直な方向とされる。
【0104】
(閉塞磁石732a,732b)
複数の第1閉塞磁石732aの各々は、対向板部11の下面112において、第1回動磁石731aの近傍に固定される。各第1閉塞磁石732aの磁極の向きは、例えば、中心軸J1およびチャック回動軸J2に垂直な方向であって、中心軸J1を中心とする円の径方向に対して傾いている。
【0105】
複数の第2閉塞磁石732bの各々は、対向板部11の下面112において、第2回動磁石731bの近傍に固定される。各第2閉塞磁石732bの磁極の向きは、例えば、中心軸J1およびチャック回動軸J2に垂直な方向であって、中心軸J1を中心とする円の径方向に対して傾いている。
【0106】
ただし、第1閉塞磁石732aの磁極の向きと、第2閉塞磁石732bの磁極の向きは、中心軸J1を中心とする円の径方向について、互いに逆向きとされる。例えば、第1閉塞磁石732aが、S極が中心軸J1の側に配置されるような磁極の向きである場合、第2閉塞磁石732bは、N極が中心軸J1の側に配置されるような磁極の向きとされる。
【0107】
(開放磁石733a,733b)
各第1開放磁石733aおよび各第2開放磁石733bは、いずれも、対向板部11の下方において、対向板部11とは独立して設けられる(
図1)。各第1開放磁石733a、および、各第2開放磁石733bは、いずれも、平面視にて弧状であり、対向板部11の下方において、中心軸J1を中心とする円(基準円C1よりも小径の円)の円周上に配列される。ただし、第1開放磁石733aと第2開放磁石733bとは、円周方向に沿って、一定の隙間を設けつつ、交互に配列される。対向板部11が所定の回転停止位置で回転を停止した状態において、各第1開放磁石733aは、平面視にて、第1回動磁石731aの近傍(中心軸J1の側の近傍)に配置され、各第2開放磁石733bは、平面視にて、第2回動磁石731bの近傍(中心軸J1の側の近傍)に配置される。
【0108】
各第1開放磁石733aおよび各第2開放磁石733bの磁極の向きは、中心軸J1を中心とする円の径方向に沿う方向とされる。ただし、第1開放磁石733aの磁極の向きと、第2開放磁石733bの磁極の向きとは、互いに逆向きとされる。また、中心軸J1を中心とする円の径方向について、第1開放磁石733aの磁極の向きは、第1閉塞磁石732aの磁極の向きと逆向きとされ、第2開放磁石733bの磁極の向きは、第2閉塞磁石732bの磁極の向きと逆向きとされる。例えば、第1閉塞磁石732aのS極が中心軸J1の側に配置され、第2閉塞磁石732bのN極が中心軸J1の側に配置されている場合、第1開放磁石733aは、N極が中心軸J1の側に配置されるような磁極の向きとされ、第2開放磁石733bは、S極が中心軸J1の側に配置されるような磁極の向きとされる。
【0109】
(磁石昇降機構734a,734b)
第1磁石昇降機構734aは、複数の第1開放磁石733aを昇降(上下方向に移動)させるための機構であり、対向板部11の下方に配置される(
図1)。第1磁石昇降機構734aは、具体的には例えば、ピストンロッド7341aと、これを進退させるエアシリンダ7342aと、を備える。ピストンロッド7341aの先端には、いずれかの第1開放磁石733aが取り付けられる。ただし、複数の第1開放磁石733aは、環状部材(図示省略)により互いに連結されている。
【0110】
エアシリンダ7342aの駆動を受けて、ピストンロッド7341aが下降すると、複数の第1開放磁石733aが、対向板部11の下面112から十分に離れた位置(離間位置)に配置される(
図1の実線)。このとき、第1開放磁石733aは、第1回動磁石731aに対して磁気的な影響を与えない。一方、エアシリンダ7342aの駆動を受けて、ピストンロッド7341aが上昇すると、複数の第1開放磁石733aが、対向板部11の下面112に近接した位置(近接位置)に配置される(
図1の二点鎖線)。このとき、第1開放磁石733aは、第1回動磁石731aに対して磁気的な影響を与える。
【0111】
第2磁石昇降機構734bは、複数の第2開放磁石733bを昇降させるための機構であり、対向板部11の下方に配置される(
図1)。第2磁石昇降機構734bは、具体的には例えば、ピストンロッド7341bと、これを進退させるエアシリンダ7342bと、を備える。ピストンロッド7341bの先端には、いずれかの第2開放磁石733bが取り付けられる。ただし、複数の第2開放磁石733bは、環状部材(図示省略)により互いに連結されている。
【0112】
エアシリンダ7342bの駆動を受けて、ピストンロッド7341bが下降すると、複数の第2開放磁石733bが、対向板部11の下面112から十分に離れた位置(離間位置)に配置される(
図1の二点鎖線)。このとき、第2開放磁石733bは、第2回動磁石731bに対して磁気的な影響を与えない。一方、エアシリンダ7342bの駆動を受けて、ピストンロッド7341bが上昇すると、複数の第2開放磁石733bが、対向板部11の下面112に近接した位置(近接位置)に配置される(
図1の実線)。このとき、第2開放磁石733bは、第2回動磁石731bに対して磁気的な影響を与える。
【0113】
(iv)各チャック部710,720の切り替え
次に、チャック切替機構73が、第1チャック部710および第2チャック部720の各々による基板9の保持と解除とを切り替える態様について、引き続き
図9~
図12を参照しながら説明する。
【0114】
(第1チャック部710の切り替え)
上記のとおり、第1磁石昇降機構734aの駆動を受けて、複数の第1開放磁石733aが近接位置に配置されると、各第1開放磁石733aが第1回動磁石731aの近傍に配置される(
図10、
図11)。このとき、第1回動磁石731aと第1開放磁石733aとの間の磁気的吸引力が、第1回動磁石731aと第1閉塞磁石732aとの間の磁気的吸引力よりも大きくなる。このため、第1回動磁石731aは、これと第1開放磁石733aとの間の磁気的吸引力によって、第1の姿勢(例えば、S極が中心軸J1とは反対側に配置され、N極が中心軸J1の側に配置される姿勢)となる(図の例では、このときの第1回動磁石731aの磁極の向きは、中心軸J1を中心とする円の径方向に対して傾いている)。
【0115】
第1回動磁石731aが第1の姿勢となった状態における、第1チャックピン71(すなわち、第1回動磁石731aに取り付けられている第1チャックピン71)の位置(チャック回動軸J2を中心とする角度位置)が、開放位置となる。つまり、第1磁石昇降機構734aの駆動を受けて、複数の第1開放磁石733aが近接位置に配置されることによって、複数の第1チャックピン71の各々が、開放位置に配置される。上記のとおり、複数の第1チャックピン71の各々が開放位置に配置されることによって、第1チャック部710による基板9の保持が解除される。
【0116】
なお、基板回転機構2の駆動を受けて対向板部11が中心軸J1の周りで回転されると、第1回動磁石731aおよび第1閉塞磁石732aは対向板部11とともに回転し、第1開放磁石733aは回転しない。複数の第1開放磁石733aが近接位置に配置された状態において、対向板部11が、ある程度以上(例えば、後述する液処理回転数以上)の回転数で回転される状況においては、近接位置に配置されている各第1開放磁石733aは、各第1回動磁石731aの位置(角度位置)に依存することなく、各第1回動磁石731aに対して磁気的吸引力を実質的に作用させる。したがって、各第1チャックピン71は開放位置に維持される。すなわち、第1チャック部710による基板9の保持が解除された状態が、維持される。
【0117】
一方、第1磁石昇降機構734aの駆動を受けて、複数の第1開放磁石733aが離間位置に配置されると、各第1開放磁石733aは第1回動磁石731aから十分に離れた位置に配置される(
図9、
図12)。このとき、第1回動磁石731aと第1閉塞磁石732aとの間の磁気的吸引力が、第1回動磁石731aと第1開放磁石733aとの間の磁気的吸引力よりも大きくなる。このため、第1回動磁石731aは、これと第1閉塞磁石732aとの間の磁気的吸引力によって、第1の姿勢とは異なる第2の姿勢(例えば、N極が中心軸J1とは反対側に配置され、S極が中心軸J1の側に配置される姿勢)となる(図の例では、このときの第1回動磁石731aの磁極の向きは、中心軸J1を中心とする円の径方向に対して傾いている)。
【0118】
第1回動磁石731aが第2の姿勢となった状態における、第1チャックピン71(すなわち、第1回動磁石731aに取り付けられている第1チャックピン71)の位置(チャック回動軸J2を中心とする角度位置)が、保持位置となる。つまり、第1磁石昇降機構734aの駆動を受けて、複数の第1開放磁石733aが離間位置に配置されることによって、複数の第1チャックピン71の各々が、保持位置に配置される。上記のとおり、複数の第1チャックピン71の各々が保持位置に配置されることによって、第1チャック部710によって基板9が保持される。
【0119】
以上のとおり、チャック切替機構73が複数の第1開放磁石733aを近接位置から離間位置に移動させることで、第1チャック部710が、基板9を保持しない(保持を解除している)状態から、基板9を保持する状態に切り替わる。逆に、チャック切替機構73が複数の第1開放磁石733aを離間位置から近接位置に移動させることで、第1チャック部710が、基板9を保持する状態から、基板9を保持しない状態に切り替わる。
【0120】
(第2チャック部720の切り替え)
上記のとおり、第2磁石昇降機構734bの駆動を受けて、複数の第2開放磁石733bが近接位置に配置されると、各第2開放磁石733bが第2回動磁石731bの近傍に配置される(
図10、
図12)。このとき、第2回動磁石731bと第2開放磁石733bとの間の磁気的吸引力が、第2回動磁石731bと第2閉塞磁石732bとの間の磁気的吸引力よりも大きくなる。このため、第2回動磁石731bは、これと第2開放磁石733bとの間の磁気的吸引力によって、第1の姿勢(例えば、N極が中心軸J1とは反対側に配置され、S極が中心軸J1の側に配置される姿勢)となる(図の例では、このときの第2回動磁石731bの磁極の向きは、中心軸J1を中心とする円の径方向に対して傾いている)。
【0121】
第2回動磁石731bが第1の姿勢となった状態における、第2チャックピン72(すなわち、第2回動磁石731bに取り付けられている第2チャックピン72)の位置(チャック回動軸J2を中心とする角度位置)が、開放位置となる。つまり、第2磁石昇降機構734bの駆動を受けて、複数の第2開放磁石733bが近接位置に配置されることによって、複数の第2チャックピン72の各々が、開放位置に配置される。上記のとおり、複数の第2チャックピン72の各々が開放位置に配置されることによって、第2チャック部720による基板9の保持が解除される。
【0122】
なお、基板回転機構2の駆動を受けて対向板部11が中心軸J1の周りで回転されると、第2回動磁石731bおよび第2閉塞磁石732bは対向板部11とともに回転し、第2開放磁石733bは回転しない。複数の第2開放磁石733bが近接位置に配置された状態において、対向板部11が、ある程度以上(例えば、後述する液処理回転数以上)の回転数で回転される状況においては、近接位置に配置されている各第2開放磁石733bは、各第2回動磁石731bの位置(角度位置)に依存することなく、各第2回動磁石731bに対して磁気的吸引力を実質的に作用させる。したがって、各第2チャックピン72は開放位置に維持される。すなわち、第2チャック部720による基板9の保持が解除された状態が、維持される。
【0123】
一方、第2磁石昇降機構734bの駆動を受けて、複数の第2開放磁石733bが離間位置に配置されると、各第2開放磁石733bは第2回動磁石731bから十分に離れた位置に配置される(
図9、
図11)。このとき、第2回動磁石731bと第2閉塞磁石732bとの間の磁気的吸引力が、第2回動磁石731bと第2開放磁石733bとの間の磁気的吸引力よりも大きくなる。このため、第2回動磁石731bは、これと第2閉塞磁石732bとの間の磁気的吸引力によって、第1の姿勢とは異なる第2の姿勢(例えば、S極が中心軸J1とは反対側に配置され、N極が中心軸J1の側に配置される姿勢)となる(図の例では、このときの第2回動磁石731bの磁極の向きは、中心軸J1を中心とする円の径方向に対して傾いている)。
【0124】
第2回動磁石731bが第2の姿勢となった状態における、第2チャックピン72(すなわち、第2回動磁石731bに取り付けられている第2チャックピン72)の位置(チャック回動軸J2を中心とする角度位置)が、保持位置となる。つまり、第2磁石昇降機構734bの駆動を受けて、複数の第2開放磁石733bが離間位置に配置されることによって、複数の第2チャックピン72の各々が、保持位置に配置される。上記のとおり、複数の第2チャックピン72の各々が保持位置に配置されることによって、第2チャック部720によって基板9が保持される。
【0125】
以上のとおり、チャック切替機構73が複数の第2開放磁石733bを近接位置から離間位置に移動させることで、第2チャック部720が、基板9を保持しない状態から、基板9を保持する状態に切り替わる。逆に、チャック切替機構73が複数の第2開放磁石733bを離間位置から近接位置に移動させることで、第2チャック部720が、基板9を保持する状態から、基板9を保持しない状態に切り替わる。
【0126】
(各チャック部710,720の状態の組み合わせ)
チャック切替機構73は、複数の第1開放磁石733aと複数の第2開放磁石733bとを、独立して移動させることができる。
【0127】
例えば、複数の第1開放磁石733aおよび複数の第2開放磁石733bの両方が離間位置に配置された場合(
図9)、複数の第1チャックピン71および複数の第2チャックピン72が、いずれも保持位置に配置される。つまり、第1チャック部710と第2チャック部720の両方が基板9を保持する状態となる。
【0128】
また例えば、複数の第1開放磁石733aおよび複数の第2開放磁石733bの両方が近接位置に配置された場合(
図10)、複数の第1チャックピン71および複数の第2チャックピン72が、いずれも開放位置に配置される。つまり、第1チャック部710と第2チャック部720の両方が基板9を保持しない状態となる。
【0129】
また例えば、複数の第1開放磁石733aが近接位置に配置され、かつ、複数の第2開放磁石733bが離間位置に配置された場合(
図11)、複数の第1チャックピン71が開放位置に配置され、複数の第2チャックピン72が保持位置に配置される。つまり、第1チャック部710が基板9を保持せず、第2チャック部720が基板9を保持する状態となる。
【0130】
また例えば、複数の第1開放磁石733aが離間位置に配置され、かつ、複数の第2開放磁石733bが近接位置に配置された場合(
図12)、複数の第1チャックピン71が保持位置に配置され、複数の第2チャックピン72が開放位置に配置される。つまり、第1チャック部710が基板9を保持し、第2チャック部720が基板9を保持しない状態となる。
【0131】
<1-3.処理の流れ>
次に、基板処理装置100で行われる処理の流れについて、
図1~
図13に加え、
図14を参照しながら説明する。
図14は、該処理の流れを示す図である。以下に説明する一連の処理は、制御部5が、基板処理装置100が備える各部(具体的には、基板保持部1が備えるピン昇降機構62およびチャック切替機構73、基板回転機構2が備えるモータ22、処理液供給部3が備える薬液バルブ321aおよびリンス液バルブ321b、ガス供給部4が備えるガスバルブ421および流量調整部422、など)を制御することによって行われる。また、以下に説明する一連の処理は、通常は、反復して行われる。すなわち、1枚の基板9に対する一連の処理が終了すると、続いて別の新たな基板9に対して該一連の処理が行われる。
【0132】
ステップS101:基板搬入工程
まず、処理対象となる基板9が、基板処理装置100に搬入される。具体的には、複数の支持ピン61が上位置(
図3の二点鎖線)に配置されるとともに、複数の第1チャックピン71および複数の第2チャックピン72がいずれも開放位置に配置された状態において、外部の搬送機構が、基板9を保持したハンド部を基板処理装置100のチャンバ内に挿入して、ハンド部を対向板部11の上方に配置する。ただし、搬送機構は、基板9を、パターンDPが形成された第1主面91が下方を向くとともに、パターンDPが形成されない第2主面92が上方を向くような姿勢で、ハンド部上に保持している。続いて、搬送機構は、基板9を保持したハンド部を下降させる。すると、基板9の周縁部93が、複数の支持ピン61(具体的には、各支持ピン61のリフト支持面611の角部611b)によって、下方から支持された状態となる。これによって、基板9がハンド部上から複数の支持ピン61上に受け渡される。その後、搬送機構は、ハンド部を、対向板部11の上方から退避させて、基板処理装置100のチャンバ内から退出させる。
【0133】
なお、基板9がハンド部上から複数の支持ピン61上に受け渡される際に、基板9の中心が中心軸J1からずれている場合、基板9の周縁部93の少なくとも一部がリフト案内面612(具体的には例えば、その角部612b)と当接してこれにガイドされることによって、基板9の中心が、中心軸J1に近づけられる。すなわち、基板9のずれ(偏心)が補正される。
【0134】
ステップS102:リフトピン下降工程
続いて、ピン昇降機構62が、複数の支持ピン61を下降させて、複数の支持ピン61を下位置(
図3の実線)に配置する。
【0135】
ステップS103:予備保持工程
続いて、複数の支持ピン61に支持されている基板9(すなわち、第1主面91が下方を向く姿勢で、下方から複数の支持ピン61に支持されている基板9)を、第2チャック部720で保持して、複数の支持ピン61から離間させる。具体的には、チャック切替機構73が、複数の第1開放磁石733aを近接位置に配置したまま、複数の第2開放磁石733bを近接位置から離間位置に移動させる。すると、複数の第1チャックピン71は開放位置に配置されたまま、複数の第2チャックピン72が開放位置から保持位置に移動(回動)する。各第2チャックピン72が開放位置から保持位置に向かって移動開始すると、まず、複数のリフト支持面611に支持されている基板9の周縁部下面931に、下側当接面721が当接する。その後、各第2チャックピン72の移動が進むにつれて、基板9が、下側当接面721に案内されて上方に移動して(持ち上げられて)、各支持ピン61から離間する。そして、各第2チャックピン72が保持位置に配置されると、周縁部端面930に湾曲当接面723が当接し、周縁部下面931に下側当接面721が当接し、かつ、周縁部上面932に上側当接面722が当接した状態となる。すなわち、基板9が、複数の支持ピン61から離間して第2チャック部720で保持された状態となる。この状態において、第1チャック部710は基板9を保持していない。
【0136】
ステップS104:チャック部変更工程(1)
続いて、第2チャック部720で保持される基板9を、第1チャック部710でさらに保持する。具体的には、チャック切替機構73が、複数の第2開放磁石733bを離間位置に配置したまま、複数の第1開放磁石733aを近接位置から離間位置に移動させる。すると、複数の第2チャックピン72は保持位置に配置されたまま、複数の第1チャックピン71が開放位置から保持位置に移動する。上記のとおり、第1チャックピン71の上側当接面712が配設される高さは、第2チャックピン72の上側当接面722が配設される高さとほぼ同じである。したがって、各第1チャックピン71が保持位置に配置されると、基板9(すなわち、複数の支持ピン61から離間して、複数の第2チャックピン72によって保持されている基板9)の周縁部端面930に端面当接面711が当接し、該基板9の周縁部上面932に上側当接面712が当接した状態となる。すなわち、基板9が、第1チャック部710と第2チャック部720との両方で保持された状態となる。
【0137】
ステップS105:ガス供給開始工程
続いて、ガス供給部4が、不活性ガスの供給を開始する。具体的には、ガスバルブ421が開放される。これにより、ガス供給源42から供給される不活性ガスが、流量調整部422によって調整される所定の流量で、ガスノズル41から吐出開始され、基板9の下方の空間(具体的には、対向面111と第1主面91との間の空間)に、不活性ガスが供給開始される。このときの不活性ガスの供給量は、例えば、250リットル/分以上である。ガス供給部4は、後述するガス供給停止工程(ステップS115)が行われるまでの間、不活性ガスの供給を継続する。
【0138】
ステップS106:回転開始工程
続いて、基板回転機構2が、基板9の回転を開始させる。具体的には、モータ22が、シャフト部21の回転を開始させ、これによって、対向板部11(ひいては、ここに設けられているチャックピン71,72によって保持されている基板9)が、中心軸J1の周りで回転し始める。基板回転機構2は、基板9の回転数(回転速度)を、所定の液処理回転数まで上昇させる。液処理回転速度は、例えば300~1500rpmである。
【0139】
ここでは、少なくとも第2チャック部720が基板9を保持する状態で、基板9の回転数を上昇させる。基板9の回転数を上昇あるいは下降させる際(すなわち、基板9を加速あるいは減速する際)には、基板9が位置ずれ(滑り)を生じやすいところ、上記のとおり、第2チャック部720で保持された基板9は、所定の高さに位置決めされて、該所定の高さに保持されるので、回転数を上昇させる際に、基板9が高さ方向に位置ずれを生じることがない。
【0140】
さらに、ここでは、第1チャック部710と第2チャック部720との両方が基板9を保持する状態で、基板9の回転数を上昇させる。第1チャック部710と第2チャック部720との両方が基板9を保持する状態においては、これらのどちらか一方が基板9を保持する状態に比べて、基板9に当接するチャックピン71,72の個数が多くなる。したがって、基板9におけるチャックピン71,72から摩擦力を受ける箇所が多くなり、高さ方向および水平方向について基板9が位置ずれを起こしにくくなる。また、基板9に当接するチャックピン71,72の個数が多くなるほど、基板9を保持するために必要なチャック力(チャックピン71,72を基板9に付勢する力)を小さくすることができる。チャック力が小さいほど、チャックピン71,72の当接箇所において基板9が受ける負荷が小さくなり、基板9にダメージや変形が生じにくくなる。つまり、第1チャック部710と第2チャック部720との両方が基板9を保持する状態で基板9の回転数を上昇させることによって、基板9に与える負荷を小さく抑えつつ、基板9が位置ずれを起こすことを十分に抑制できる。
【0141】
ステップS107:チャック部変更工程(2)
基板回転機構2は、基板9の回転数が液処理回転数に到達すると、基板9の回転数を液処理回転数に維持する。この状態になると、第2チャック部720による基板9の保持が解除される。具体的には、チャック切替機構73が、複数の第1開放磁石733aを離間位置に配置したまま、複数の第2開放磁石733bを離間位置から近接位置に移動させる。すると、複数の第1チャックピン71は保持位置に配置されたまま、複数の第2チャックピン72が保持位置から開放位置に移動する。これによって、第2チャック部720による基板9の保持が解除される。すなわち、基板9が、第1チャック部710で保持され、第2チャック部720で保持されない状態となる。
【0142】
このように、この実施形態では、ステップS103、ステップS104、および、ステップS107の各工程が行われることによって、基板9(すなわち、パターンDPが形成された第1主面91が下方を向く姿勢の基板9)が、複数の支持ピン61から離間して第1チャック部710で保持された状態が形成される(第1保持状態形成工程)。すなわち、この実施形態では、基板9が複数の支持ピン61から離間して第1チャック部710で保持された状態を形成するにあたって、まずは、複数の支持ピン61に支持されている基板9を第2チャック部720に保持させて複数の支持ピン61から離間させる(ステップS103:予備保持工程)。その後、第2チャック部720で保持される基板9を、第1チャック部710でさらに保持させた後(ステップS104:チャック部変更工程(1))、第2チャック部720による基板9の保持を解除させる(ステップS107:チャック部変更工程(2))。上記のとおり、第2チャック部720で保持された基板9は、所定の高さに位置決めされて、該所定の高さに保持される。したがって、第2チャック部720で保持することによって基板9を所定の高さに位置決めした後に、該基板9を第1チャック部710で保持することによって、第1チャック部710で保持される基板9が該所定の高さに位置決めされるように担保される。
【0143】
ステップS108:薬液供給開始工程
続いて、処理液供給部3が、第1処理液としての薬液の供給を開始する。具体的には、処理液ノズル31が吐出位置に配置された上で、薬液バルブ321aが開放される。すると、薬液供給源32aから供給される薬液が処理液ノズル31から吐出開始されて、基板9の第2主面92に薬液が供給開始される。第2主面92に供給された薬液は、基板9の回転による遠心力によって第2主面92の周縁に向かって広がり、第2主面92の全体に薬液が供給される。
【0144】
これにより、基板9(すなわち、パターンDPが形成された第1主面91が下方を向く姿勢の基板9)が、複数の支持ピン61から離間して第1チャック部710で保持された状態で、基板9が中心軸J1の周りで回転されつつ、基板9の下方の空間へ不活性ガスが供給されるとともに、基板9における上方を向く第2主面92に薬液が供給されることになり、第2主面92が薬液によって洗浄される。すなわち、第2主面92に対する薬液処理が行われる(薬液処理工程)。
【0145】
ここでは、薬液処理が行われる間、第2チャック部720は基板9を保持せず、第1チャック部710が基板9を保持する。第1チャック部710が備える第1チャックピン71は、第2チャック部720が備える第2チャックピン72と異なり、基板9の周縁部下面931に当接する当接面を備えない。薬液処理が行われる際(すなわち、第2主面92に薬液が供給される際)に、基板9の周縁部下面931にチャックピンが当接している場合、第2主面92に供給された薬液が、毛細管現象によって、周縁部下面931とチャックピンとの当接部分における微小な隙間を伝って、周縁部下面931に回り込んでしまう可能性がある(
図22)。ここでは、第2主面92に薬液が供給される際に基板9を保持している第1チャック部710が備える第1チャックピン71は、基板9の周縁部下面931に当接しないので、毛細管現象に起因する周縁部下面931への薬液の回り込みが生じない。したがって、薬液処理において第2主面92に供給された薬液が第1主面91へ回り込むことが抑制される。
【0146】
また、ここでは、薬液処理が行われる間、基板9の下方の空間への不活性ガスの供給が継続されることによって、第1主面91が保護されるとともに、第2主面92に供給された薬液、および、薬液の雰囲気が、第1主面91の側に回り込むことが抑制される。特に、ここでは、第1チャック部710で保持される基板9が所定の高さに位置決めされるように担保されている(すなわち、薬液処理が行われる間、第1主面91と対向面111との離間距離が所定の値となるように担保されている)ので、該離間距離に応じて規定される適切な供給量で基板9の下方に空間に不活性ガスを供給することによって、第2主面92に供給された薬液、および、薬液の雰囲気が、第1主面91の側に回り込むことを効果的に抑制できる。
【0147】
なお、上記のとおり、第1チャックピン71は、基板9の周縁部下面931に当接する当接面を備えないので、第2チャック部720で保持されず、第1チャック部710だけで保持されている基板9が、下方に位置ずれすることがあり得そうに見える。しかしながら、実際は、このような位置ずれが生じる可能性は十分に低い。その理由は、第1に、基板9の下方の空間に不活性ガスが供給されることで、該供給された不活性ガスの圧力によって、基板9が上方に付勢されているからである。第2に、基板9がある程度以上の回転数(例えば、100rpm以上の回転数)で回転される状況では、基板9に十分な遠心力が発生しているためである。第3に、第1チャックピン71が基板9の周縁部端面930に当接することによって、第1チャックピン71と基板9との間に摩擦力が生じているためである。
【0148】
ステップS109:リンス液供給開始工程
第1処理液としての薬液の供給が開始されてから所定時間が経過すると、処理液供給部3が、薬液の供給を停止し、第2処理液としてのリンス液の供給を開始する。具体的には、処理液ノズル31が吐出位置に配置された状態で、薬液バルブ321aが閉鎖されるとともに、リンス液バルブ321bが開放される。すると、薬液供給源32aから供給される薬液に換えて、リンス液供給源32bから供給されるリンス液が、処理液ノズル31から吐出開始されて、基板9の第2主面92にリンス液が供給開始される。第2主面92に供給されたリンス液は、基板9の回転による遠心力によって第2主面92の周縁に向かって広がる。これにより、第2主面92に供給されていた薬液がリンス液に置換され、第2主面92上の薬液がリンス液によって洗い流される。すなわち、第2主面92に対するリンス処理が行われる(リンス処理工程)。
【0149】
ステップS110:第2保持状態形成工程
第2処理液としてのリンス液の供給が開始された後(具体的には例えば、リンス液の供給が開始された後、第2主面92に供給されていた薬液が概ねリンス液に置換されて、第2主面92上の薬液の濃度が十分に低下した時点で)、基板9を、第2チャック部720で保持する。具体的には、チャック切替機構73が、複数の第1開放磁石733aを離間位置に配置したまま、複数の第2開放磁石733bを近接位置から離間位置に移動させる。すると、複数の第1チャックピン71は保持位置に配置されたまま、複数の第2チャックピン72が開放位置から保持位置に移動する。各第2チャックピン72が保持位置に配置されると、基板9(すなわち、複数の第1チャックピン71によって保持されている基板9)の周縁部端面930に湾曲当接面723が当接し、周縁部下面931に下側当接面721が当接し、かつ、周縁部上面932に上側当接面722が当接した状態となる。すなわち、基板9が、第1チャック部710と第2チャック部720との両方で保持された状態となる。
【0150】
ステップS111:リンス液供給停止工程
第2処理液としてのリンス液の供給が開始されてから所定時間が経過すると、処理液供給部3が、リンス液の供給を停止する。具体的には、リンス液バルブ321bが閉鎖される。すると、処理液ノズル31からのリンス液の吐出が停止される。
【0151】
ステップS112:回転数上昇工程
続いて、基板回転機構2が、基板9の回転数を、液処理回転数から、これよりも大きな所定の乾燥回転数まで上昇させる。乾燥回転速度は、例えば1000~2000rpmである。基板9の回転数が乾燥回転数に到達すると、基板回転機構2は、基板9の回転数を乾燥回転数に維持する。基板9が乾燥回転数で回転されることによって、基板9に付着している液体に大きな遠心力が作用して、該液体が基板9の周囲に振り切られていく。これによって、基板9が乾燥されていく。すなわち、基板9に対する乾燥回転処理(スピンドライ処理)が行われる(乾燥処理工程)。
【0152】
ここでも、少なくとも第2チャック部720が基板9を保持する状態で基板9の回転数を上昇させるので、回転数を上昇させる際に、基板9が高さ方向に位置ずれを生じることがない。さらに、第1チャック部710と第2チャック部720との両方が基板9を保持する状態で基板9の回転数を上昇させるので、回転数を上昇させる際に、基板9に与える負荷を小さく抑えつつ、基板9が位置ずれを起こすことを十分に抑制できる。
【0153】
ステップS113:持ち替え工程
基板9の回転数が乾燥回転数に維持された状態になると、第1チャック部710と第2チャック部720との間での基板9の持ち替えが行われる。
【0154】
基板9の持ち替えにあたっては、例えば、まず、第2チャック部720による基板9の保持が解除される(ステップS113a)。具体的には、チャック切替機構73が、複数の第1開放磁石733aを離間位置に配置したまま、複数の第2開放磁石733bを離間位置から近接位置に移動させる。すると、複数の第1チャックピン71は保持位置に配置されたまま、複数の第2チャックピン72が保持位置から開放位置に移動する。これによって、第2チャック部720による基板9の保持が解除される。すなわち、基板9が、第1チャック部710で保持され、第2チャック部720で保持されない状態となる。この状態において、各第2チャックピン72が当接していた部分に付着していた液体が振り切られていく。
【0155】
その後、再び、第2チャック部720で基板9を保持する(ステップS113b)。具体的には、チャック切替機構73が、複数の第1開放磁石733aを離間位置に配置したまま、複数の第2開放磁石733bを近接位置から離間位置に移動させる。すると、複数の第1チャックピン71は保持位置に配置されたまま、複数の第2チャックピン72が開放位置から保持位置に移動する。これによって、再び、基板9が、第1チャック部710と第2チャック部720との両方で保持された状態となる。
【0156】
続いて、第1チャック部710による基板9の保持が解除される(ステップS113c)。具体的には、チャック切替機構73が、複数の第2開放磁石733bを離間位置に配置したまま、複数の第1開放磁石733aを離間位置から近接位置に移動させる。すると、複数の第2チャックピン72は保持位置に配置されたまま、複数の第1チャックピン71が保持位置から開放位置に移動する。これによって、第1チャック部710による基板9の保持が解除される。すなわち、基板9が、第2チャック部720で保持され、第1チャック部710で保持されない状態となる。この状態において、各第1チャックピン71が当接していた部分に付着していた液体が振り切られていく。
【0157】
その後、再び、第1チャック部710で基板9を保持する(ステップS113d)。具体的には、チャック切替機構73が、複数の第2開放磁石733bを離間位置に配置したまま、複数の第1開放磁石733aを近接位置から離間位置に移動させる。すると、複数の第2チャックピン72は保持位置に配置されたまま、複数の第1チャックピン71が開放位置から保持位置に移動する。これによって、再び、基板9が、第1チャック部710と第2チャック部720との両方で保持された状態となる。
【0158】
ステップS114:回転停止工程
基板9が乾燥回転数で所定時間だけ回転されると、基板回転機構2が、基板9の回転を停止させる。
【0159】
ここでも、少なくとも第2チャック部720が基板9を保持する状態で基板9の回転数を下降させるので、回転数を下降させる際に、基板9が高さ方向に位置ずれを生じることがない。さらに、第1チャック部710と第2チャック部720との両方が基板9を保持する状態で基板9の回転数を下降させるので、回転数を下降させる際に、基板9に与える負荷を小さく抑えつつ、基板9が位置ずれを起こすことを十分に抑制できる。
【0160】
ステップS115:ガス供給停止工程
続いて、ガス供給部4が、不活性ガスの供給を停止する。具体的には、ガスバルブ421が閉鎖される。
【0161】
ステップS116:受け渡し工程
続いて、第1チャック部710および第2チャック部720による基板9の保持を解除して、第1チャック部710および第2チャック部720によって保持されていた基板9を、複数の支持ピン61上に受け渡す。具体的には、チャック切替機構73が、複数の第1開放磁石733aを離間位置から近接位置に移動させるとともに、複数の第2開放磁石733bを離間位置から近接位置に移動させる。すると、複数の第2チャックピン72と、複数の第1チャックピン71とが、ともに、保持位置から開放位置に移動する。各第2チャックピン72の移動が進むにつれて、基板9が、下側当接面721に案内されて下方に移動し、各第2チャックピン72が開放位置に配置されると、基板9の周縁部93が、複数の支持ピン61によって、下方から支持された状態となる。これによって、基板9が、複数の支持ピン61上に受け渡される。
【0162】
ステップS117:リフトピン上昇工程
続いて、ピン昇降機構62が、複数の支持ピン61を上昇させて、複数の支持ピン61を上位置(
図3の二点鎖線)に配置する。
【0163】
ステップS118:基板搬出工程
その後、基板9が、基板処理装置100から搬出される。具体的には、外部の搬送機構が、ハンド部を基板処理装置100のチャンバ内に挿入して、ハンド部を複数の支持ピン61に支持されている基板9の第1主面91と対向板部11との間に進入させ、さらに、ハンド部を上昇させる。これによって、基板9が複数の支持ピン61上からハンド部上に受け渡される。その後、搬送機構は、基板9を保持したハンド部を、基板処理装置100のチャンバ内から退出させる。これによって、基板9が基板処理装置100から搬出される。
【0164】
<1-4.回り込み量>
次に、基板9の第2主面92に処理液が供給されたときに、基板9の周方向の各位置で生じる、周縁部下面931への処理液の回り込み量について、
図15を参照しながら説明する。
図15(a)および
図15(b)はいずれも、周縁部下面931への処理液(例えば、第1処理液としての薬液)の回り込み量の測定結果を示す図であり、横軸は、基板9の周方向の各位置を示し、縦軸は、該位置における処理液の回り込み量(すなわち、基板9の径方向について、周縁部端面930から何ミリメートルの領域に処理液が回り込んだかを示す値)を示している。
図15(a)は、基板9が第1チャック部710で保持されている場合の測定結果であり、
図15(b)は、基板9が第2チャック部720で保持されている場合の測定結果である。
【0165】
基板9が第1チャック部710で保持されている場合(
図15(a))、2つのピークP1,P1が対になって現れる。各ピークP1の位置は、第1チャックピン71の各突出部71bが当接する位置と合致する。つまり、各第1チャックピン71の2個の突出部71bの各々が当接する位置に、回り込み量のピークP1が現れる。第1チャックピン71の突出部71bに由来するピークP1の高さは、1.0mmより小さく、より具体的には、約0.7mm以下であり、一例として約0.5mm程度である。つまり、第1チャック部710が基板9を保持する状態で第2主面92に薬液が供給されたときに、基板9の外周における第1チャックピン71が当接する位置での、周縁部下面931への薬液の回り込み量d1は、1.0mmより小さく抑えることが可能であり、条件によっては約0.7mm以下に抑えることが可能であり、一例として約0.5mm程度に抑えることが可能である。
【0166】
基板9が第2チャック部720で保持されている場合(
図15(b))においても、2つのピークP2,P2が対になって現れる。各ピークP2の位置は、第2チャックピン72の各突出部72bが当接する位置と合致する(
図15(a)および
図15(b)では、比較の便宜上、各々に現れるピークP1,P2をほぼ同じ位置で示している)。つまり、各第2チャックピン72の2個の突出部72bの各々が当接する位置に、回り込み量のピークP2が現れる。第2チャックピン72の突出部72bに由来するピークP2の高さは、約1.0~約1.2mm程度である。つまり、第2チャック部720が基板9を保持する状態で第2主面92に薬液が供給されたときに、基板9の外周における第2チャックピン72が当接する位置での、周縁部下面931への薬液の回り込み量d2は、約1.0~約1.2mm程度である。
【0167】
一方、第1チャックピン71および第2チャックピン72のどちらも当接しない位置(すなわち、突出部71b,72bが当接する各位置を除く全域)における回り込み量は、0.5mmよりも小さく、例えば0.3mm程度である。つまり、第1チャック部710および第2チャック部720の少なくとも一方が基板9を保持する状態で第2主面92に薬液が供給されたときに、基板9の外周における第1チャックピン71および第2チャックピン72のどちらも当接しない位置での、周縁部下面931への薬液の回り込み量d3は、0.5mmよりも小さく、例えば0.3mm程度である。
【0168】
このように、基板9の第2主面92に薬液が供給されたときに生じる、第1チャックピン71あるいは第2チャックピン72が当接する位置での周縁部下面931への処理液の回り込み量d1,d2は、第1チャックピン71および第2チャックピン72がいずれも当接しない位置での周縁部下面931への薬液の回り込み量d3よりも大きい。その理由は、各チャックピン71,72は、少なくとも基板9の周縁部端面930に当接するため、該当接部分を通じた薬液の回り込みが生じ得るためと考えられる。
【0169】
また、基板9の第2主面92に薬液が供給されたときに生じる、第1チャックピン71が当接する位置での回り込み量d1は、第2チャックピン72が当接する位置での回り込み量d2よりも小さい。その理由は、第1チャックピン71が基板9の周縁部下面931に当接せず、第2チャックピン72が基板9の周縁部下面931に当接するためと考えられる。すなわち、第2チャックピン72のように周縁部下面931に当接するチャックピンの場合、第2主面92に供給された薬液が、毛細管現象によって、周縁部下面931と下側当接面721との当接部分における微小な隙間を伝って、周縁部下面931に回り込んでしまう可能性があるのに対し(
図22)、第1チャックピン71のように周縁部下面931に当接しないチャックピンの場合、毛細管現象に起因する周縁部下面931への薬液の回り込みが生じない。このため、第1チャックピン71が当接する位置での回り込み量d1が、第2チャックピン72が当接する位置での回り込み量d2よりも小さくなると考えられる。
【0170】
<1-5.効果>
上記の実施形態に係る基板処理装置100は、基板9を保持する基板保持部1と、基板保持部1に保持される基板9を、上下に延びる中心軸J1の周りで回転させる基板回転機構2と、基板保持部1に保持される基板9における上方を向く主面に、処理液を供給する処理液供給部3と、基板保持部1に保持される基板9の下方の空間へ、ガスを供給するガス供給部4と、基板保持部1、基板回転機構2、処理液供給部3、および、ガス供給部4を制御する制御部5と、を備える。また、基板保持部1が、基板9の下方から基板9に当接して基板9を支持する複数の支持ピン61と、基板9の周縁部下面931に当接せずに基板9の周縁部端面930に当接する第1チャックピン71を複数備え、複数の第1チャックピン71で基板9を保持する第1チャック部710と、を備える。そして、制御部5が、パターンDPが形成された第1主面91が下方を向く姿勢の基板9が、複数の支持ピン61から離間して第1チャック部710で保持された状態で、基板回転機構2に基板9を回転させつつ、ガス供給部4に基板9の下方の空間へガスを供給させるとともに、処理液供給部3に第1処理液としての薬液を基板9における上方を向く第2主面92に供給させる。
【0171】
別の見方をすると、上記の実施形態に係る基板処理方法は、パターンDPが形成された第1主面91が下方を向く姿勢の基板9が、基板9を下方から支持する複数の支持ピン61から離間して第1チャック部710で保持された状態を形成する、第1保持状態形成工程と、複数の支持ピン61から離間して第1チャック部710に保持された基板9を、上下に延びる中心軸J1の周りで回転させつつ、基板9の下方の空間へガスを供給するとともに、基板9における上方を向く第2主面92に薬液を供給する、薬液処理工程と、を備える。
【0172】
これらの構成によると、パターンDPが形成された第1主面91が下方を向く姿勢とされている基板9における、上方を向く第2主面92に、薬液が供給される。薬液が供給される際に、基板9の周縁部下面931にチャックピンが当接している場合、第2主面92に供給された薬液が、毛細管現象によって、周縁部下面931とチャックピンとの当接部分における微小な隙間を伝って、周縁部下面931に回り込んでしまう可能性がある(
図22)。ここでは、薬液が供給される際に基板9を保持している第1チャック部710が備える第1チャックピン71は、基板9の周縁部下面931に当接しないので、毛細管現象に起因する周縁部下面931への薬液の回り込みが生じない。したがって、基板9における上方を向く主面(第2主面92)に供給された薬液が下方を向く主面(第1主面91)へ回り込むことを抑制できる。
【0173】
また、上記の実施形態に係る基板処理装置100は、基板保持部1が、基板9の周縁部上面932および周縁部下面931に当接する第2チャックピン72を複数備え、複数の第2チャックピン72で基板9を保持する第2チャック部720、を備える。そして、制御部5が、処理液供給部3に、薬液の供給を停止させ、第2処理液としてのリンス液の供給を開始させ、リンス液の供給が開始された後に、基板9を第2チャック部720に保持させる。
【0174】
別の見方をすると、上記の実施形態に係る基板処理方法は、薬液の供給を停止し、第2主面92へのリンス液の供給を開始するリンス液供給開始工程(ステップS109)と、リンス液の供給が開始された後に、基板9を第2チャック部720で保持する第2保持状態形成工程(ステップS110)と、を備える。
【0175】
これらの構成によると、第2主面92への薬液の供給が停止され、リンス液の供給が開始された後、つまりは、第1主面91への薬液の回り込みが生じにくい状態となった後に、第2チャック部720が基板9を保持するので、基板9を安定して保持することができる。
【0176】
また、上記の実施形態に係る基板処理装置100は、制御部5が、少なくとも第2チャック部720に基板9を保持させた状態で、基板回転機構2による基板9の回転数を所定の乾燥回転数まで上昇させる。
【0177】
別の見方をすると、上記の実施形態に係る基板処理方法は、少なくとも第2チャック部720が基板9を保持する状態で、基板9の回転数を所定の乾燥回転数まで上昇させる、回転数上昇工程(ステップS112)、を備える。
【0178】
これらの構成によると、基板9が第2チャック部720で保持されている状態で、基板9の回転数を所定の乾燥回転数まで上昇させるので、回転数を上昇させる際に基板9が高さ方向に位置ずれを生じることがない。
【0179】
また、上記の実施形態に係る基板処理装置100は、制御部5が、基板9が複数の支持ピン61から離間して第1チャック部710で保持された状態を形成するにあたって、複数の支持ピン61に支持されている基板9を第2チャック部720に保持させて、基板9を複数の支持ピン61から離間させた後、第2チャック部720で保持される基板9を、第1チャック部710でさらに保持させてから、第2チャック部720による基板9の保持を解除させる。
【0180】
別の見方をすると、上記の実施形態に係る基板処理方法は、第1保持状態形成工程が、複数の支持ピン61に支持されている基板9を第2チャック部720で保持して複数の支持ピン61から離間させる、予備保持工程(ステップS103)と、予備保持工程の後に、第2チャック部720で保持される基板9を、第1チャック部710でさらに保持してから、第2チャック部720による基板9の保持を解除する、チャック部変更工程(ステップS104およびステップS107)と、を備える。
【0181】
これらの構成によると、基板9が複数の支持ピン61から離間して第1チャック部710で保持された状態を形成するにあたって、複数の支持ピン61に支持されている基板9をそのまま第1チャック部710で保持するのではなく、まずは第2チャック部720で基板9を保持する。第2チャック部720が備える第2チャックピン72は、基板9の周縁部上面932および周縁部下面931に当接するので、第2チャック部720で保持された基板9は、所定の高さに位置決めされる。したがって、第2チャック部720で保持することによって基板9を所定の高さに位置決めした後に、該基板9を第1チャック部710で保持することによって、第1チャック部710で保持される基板9が該所定の高さに位置決めされるように担保することができる。
【0182】
また、上記の実施形態に係る基板処理装置100は、第1チャックピン71が、周縁部端面930に当接する端面当接面711と、周縁部上面932に当接する上側当接面712と、を備える。
【0183】
この構成によると、例えば、第1チャック部710で保持されている基板9が、その下方の空間へ供給されるガスの圧力によって上方に付勢されても、該基板9が上側に位置ずれすることがない。
【0184】
また、上記の実施形態では、第2主面92に薬液が供給されたときに生じる、第1チャックピン71が当接する位置での周縁部下面931への薬液の回り込み量d1が、第2チャックピン72が当接する位置での周縁部下面931への薬液の回り込み量d2よりも小さく、かつ、第1チャックピン71および第2チャックピン72のどちらも当接しない位置での周縁部下面931への薬液の回り込み量d3よりも大きい。
【0185】
この構成によると、第1チャックピン71が当接している状態で基板9の第2主面92に薬液を供給することによって、第2主面92に供給された薬液が第1主面91へ回り込むことを抑制できる。
【0186】
<2.第2実施形態>
<2-1.基板処理装置の構成>
第2実施形態に係る基板処理装置100tの構成について、
図16、
図17を参照しながら説明する。
図16は、基板処理装置100tの構成を概略的に示す側断面図である。
図17は、基板処理装置100tの対向板部11の対向面111を概略的に示す平面図である。以下においては、第1実施形態と相違する点を説明し、第1実施形態と相違しない要素については、同じ符号を付すとともにその説明を省略する。
【0187】
基板処理装置100tは、チャック部7tの構成において、第1実施形態に係る基板処理装置100と相違する。以下において、基板処理装置100tが備えるチャック部7tの構成について説明する。
【0188】
チャック部7tは、第1チャック部710Aと、第2チャック部710Bと、を備える。第1チャック部710Aは、複数の第1チャックピン71Aを備え、複数の第1チャックピン71Aで基板9を保持する。一方、第2チャック部710Bは、複数の第2チャックピン71Bを備え、複数の第2チャックピン71Bで基板9を保持する。また、チャック部7tは、各チャック部710A,710Bによる基板9の保持と解除とを切り替えるチャック切替機構73をさらに備える。チャック切替機構73の構成は、第1実施形態において説明したとおりである。
【0189】
複数の第1チャックピン71A、および、複数の第2チャックピン71Bの配設態様は、第1実施形態に係る複数の第1チャックピン71、および、複数の第2チャックピン72の配設態様と同様である。すなわち、複数の第1チャックピン71A、および、複数の第2チャックピン71Bは、いずれも、複数の支持ピン61とともに、基準円C1の円周上に配列されて、対向板部11に設けられる。複数の第1チャックピン71Aは、基準円C1の円周上に、その円周方向に沿って等間隔で、配列される。同様に、複数の第2チャックピン71Bも、基準円C1の円周上に、その円周方向に沿って等間隔で、配列される。また、第1チャックピン71Aおよび第2チャックピン71Bは、支持ピン61を間に挟みつつ、円周方向に沿って、交互に、等間隔で、配置される。
【0190】
第1チャックピン71A、および、第2チャックピン71Bは、いずれも、第1実施形態に係る第1チャックピン71と同じ形状である(
図5、
図6)。つまり、この実施形態では、第1チャックピン71A、および、第2チャックピン71Bは、いずれも、略円柱状の基体部71aと、基体部71aの上端面から上方に突出して設けられる2個の突出部71bと、を備える。そして、各突出部71bのチャック当接面7101は、該チャックピン71A,71Bが保持位置に配置された状態において、基板9の周縁部端面930に当接する端面当接面711と、該状態において、基板9の周縁部上面932に当接する上側当接面712と、を備える。また、各突出部71bは、基板9の周縁部下面931に当接する面(下側当接面721に相当する面)を備えない。したがって、各チャックピン71A,71Bが保持位置に配置された状態において、各突出部71bは、周縁部下面931に当接しない。
【0191】
したがって、複数の第1チャックピン71Aの各々が保持位置に配置されると、基板9の周縁部93の互いに異なる各位置で、第1チャックピン71Aが、周縁部下面931に当接することなく、端面当接面711において周縁部端面930に当接するとともに、上側当接面712において周縁部上面932に当接した状態となり、これによって基板9が保持される。すなわち、第1チャック部710Aで基板9が保持される。一方、複数の第1チャックピン71Aの各々が開放位置に配置されると、各第1チャックピン71Aが基板9から離間した状態となり、これによって基板9の保持が解除される。すなわち、第1チャック部710Aによる基板9の保持が解除される。
【0192】
同様に、複数の第2チャックピン71Bの各々が保持位置に配置されると、基板9の周縁部93の互いに異なる各位置で、第2チャックピン71Bが、周縁部下面931に当接することなく、端面当接面711において周縁部端面930に当接するとともに、上側当接面712において周縁部上面932に当接した状態となり、これによって基板9が保持される。すなわち、第2チャック部710Bで基板9が保持される。一方、複数の第2チャックピン71Bの各々が開放位置に配置されると、各第2チャックピン71Bが基板9から離間した状態となり、これによって基板9の保持が解除される。すなわち、第2チャック部710Bによる基板9の保持が解除される。
【0193】
<2-2.処理の流れ>
次に、基板処理装置100tで行われる処理の流れについて、
図16、
図17に加え、
図18、
図19を参照しながら説明する。
図18は、該処理の流れを示す図である。
図19は、基板9を保持する態様を説明するための図である。以下に説明する一連の処理は、制御部5が、基板処理装置100tが備える各部を制御することによって行われる。また、以下に説明する一連の処理は、通常は、反復して行われる。すなわち、1枚の基板9に対する一連の処理が終了すると、続いて別の新たな基板9に対して該一連の処理が行われる。
【0194】
ステップS201:基板搬入工程
まず、処理対象となる基板9が、基板処理装置100tに搬入される。具体的には、複数の支持ピン61が上位置に配置されるとともに、複数の第1チャックピン71Aおよび複数の第2チャックピン71Bがいずれも開放位置に配置された状態において、外部の搬送機構が、基板9を保持したハンド部を基板処理装置100のチャンバ内に挿入して、ハンド部を対向板部11の上方に配置する。ただし、搬送機構は、基板9を、第1主面91が下方を向くとともに第2主面92が上方を向くような姿勢で、ハンド部上に保持している。続いて、搬送機構は、基板9を保持したハンド部を下降させる。すると、基板9の周縁部93が、複数の支持ピン61によって、下方から支持された状態となる。これによって、基板9がハンド部上から複数の支持ピン61上に受け渡される。その後、搬送機構は、ハンド部を、対向板部11の上方から退避させて、基板処理装置100のチャンバ内から退出させる。
【0195】
ステップS202:リフトピン下降工程
続いて、ピン昇降機構62が、複数の支持ピン61を下降させて、複数の支持ピン61を下位置に配置する。
【0196】
ステップS203:浮上工程
続いて、ガス供給部4が、不活性ガスの供給を開始する。具体的には、ガスバルブ421が開放される。これにより、ガス供給源42から供給される不活性ガスが、流量調整部422によって調整される所定の流量で、ガスノズル41から吐出開始され、基板9の下方の空間(具体的には、対向面111と第1主面91との間の空間)に、不活性ガスが供給開始される。このときの不活性ガスの供給量は、基板9を所定の高さに浮上させることができるような所定の浮上供給量とされる。基板9を浮上させる「所定の高さ」は、具体的には例えば、開放位置に配置されている各チャックピン71A,71Bの上側当接面712の側方に相当する高さ(すなわち、第1主面91が各チャックピン71A,71Bの上側当接面712の下端よりも高く、かつ、第2主面92が各チャックピン71A,71Bの上側当接面712の上端よりも低くなるような高さ)であり、例えば対向面111と第1主面91との離間距離が0.5mm程度となるような高さである。このような高さに基板9を浮上させるための浮上供給量は、例えば、250リットル/分以上である。ガス供給部4は、後述するガス供給停止工程(ステップS214)が行われるまでの間、不活性ガスの供給量を浮上供給量に維持したままで、不活性ガスの供給を継続する。
【0197】
基板9の下方の空間に浮上供給量で不活性ガスが供給されると、基板9、すなわち、第1主面91が下方を向く姿勢で複数の支持ピン61に支持されている基板9(
図19(a))が、不活性ガスの圧力を下方から受けることによって浮上し、各支持ピン61から離間して、各チャックピン71,71Bの上側当接面712の側方に相当する高さに配置された状態(ホバリング状態)となる(
図19(b))。このように、ここでは、ガス供給部4が、基板9の下方の空間へガスを供給して基板9を浮上(ホバリング)させることによって、基板9を複数の支持ピン61から離間させる。
【0198】
なお、不活性ガスの供給を開始するタイミングは、支持ピン61が下降される以前であってもよい。すなわち、不活性ガスの供給が開始された以後に、支持ピン61が下降されてもよい。この場合は、支持ピン61が上位置から下位置まで移動される途中(すなわち、複数の支持ピン61に支持されている基板9が、各チャックピン71,71Bの上側当接面712の側方に相当する高さに配置された段階)で、基板9が各支持ピン61から離間してホバリング状態となる。
【0199】
ステップS204:浮上基板保持工程
続いて、複数の支持ピン61の上方に浮上している基板9を、第1チャック部710Aおよび第2チャック部710Bで保持する。具体的には、チャック切替機構73が、複数の第1開放磁石733aを近接位置から離間位置に移動させるとともに、複数の第2開放磁石733bを近接位置から離間位置に移動させる。すると、複数の第1チャックピン71Aと、複数の第2チャックピン71Bとが、ともに、開放位置から保持位置に移動する。各チャックピン71A,71Bが開放位置から保持位置に向かって移動開始すると、まず、複数の支持ピン61の上方であって、各チャックピン71A,71Bの上側当接面712の側方に相当する高さに浮上している基板9の周縁部上面932に、上側当接面712が当接する。その後、各チャックピン71A,71Bの移動が進むにつれて、基板9が、上側当接面712に案内されて下方に移動する。そして、各チャックピン71A,71Bが保持位置に配置されると、周縁部上面932に上側当接面712が当接し、周縁部端面930に端面当接面711が当接した状態となる(
図19(c))。すなわち、基板9が、第1チャック部710Aと第2チャック部710Bとの両方で保持された状態となる。
【0200】
このように、この実施形態では、ステップS203、および、ステップS204の各工程が行われることによって、基板9(すなわち、パターンDPが形成された第1主面91が下方を向く姿勢の基板9)が、複数の支持ピン61から離間して第1チャック部710Aおよび第2チャック部710Bで保持された状態が形成される(第1保持状態形成工程)。すなわち、この実施形態では、基板9が複数の支持ピン61から離間して第1チャック部710Aおよび第2チャック部710Bで保持された状態を形成するにあたって、基板9の下方の空間へ不活性ガスを供給して基板9を浮上させることによって基板9を複数の支持ピン61から離間させ(ステップS203:浮上工程)、浮上している基板9を第1チャック部710Aおよび第2チャック部710Bに保持させる(ステップS204:浮上基板保持工程)。この構成によると、基板9が不活性ガスの圧力によって上方に付勢されつつ、第1チャック部710Aおよび第2チャック部710Bに保持されるので、基板9の周縁部上面932に各チャックピン71A,71Bの上側当接面712が当接し、これによって、第1チャック部710Aおよび第2チャック部710Bで保持される基板9が所定の高さに位置決めされる。
【0201】
ステップS205:回転開始工程
続いて、基板回転機構2が、基板9の回転を開始させる。具体的には、モータ22が、シャフト部21の回転を開始させ、これによって、対向板部11(ひいては、ここに設けられているチャックピン71A,71Bによって保持されている基板9)が、中心軸J1の周りで回転し始める。基板回転機構2は、基板9の回転数(回転速度)を、所定の液処理回転数まで上昇させる。
【0202】
ここでは、第1チャック部710Aと第2チャック部710Bとの両方が基板9を保持する状態で、基板9の回転数を上昇させるので、回転数を上昇させる際に、基板9に与える負荷を小さく抑えつつ、基板9が位置ずれを起こすことを十分に抑制できる。
【0203】
ステップS206:薬液供給開始工程
基板回転機構2は、基板9の回転数が液処理回転数に到達すると、基板9の回転数を液処理回転数に維持する。この状態になると、処理液供給部3が、第1処理液としての薬液の供給を開始する。具体的には、処理液ノズル31が吐出位置に配置された上で、薬液バルブ321aが開放される。すると、薬液供給源32aから供給される薬液が処理液ノズル31から吐出開始されて、基板9の第2主面92に薬液が供給開始される。第2主面92に供給された薬液は、基板9の回転による遠心力によって第2主面92の周縁に向かって広がり、第2主面92の全体に薬液が供給される。
【0204】
これにより、基板9(すなわち、パターンDPが形成された第1主面91が下方を向く姿勢の基板9)が、複数の支持ピン61から離間して第1チャック部710Aおよび第2チャック部710Bで保持された状態で、基板9が中心軸J1の周りで回転されつつ、基板9の下方の空間へ不活性ガスが供給されるとともに、基板9における上方を向く第2主面92に薬液が供給されることになり、第2主面92が薬液によって洗浄される。すなわち、第2主面92に対する薬液処理が行われる(薬液処理工程)。
【0205】
ここでは、薬液処理が行われる間、第1チャック部710Aおよび第2チャック部710Bが基板9を保持する。第1チャック部710Aが備える第1チャックピン71A、および、第2チャック部710Bが備える第2チャックピン71Bは、いずれも、基板9の周縁部下面931に当接しない。したがって、毛細管現象に起因する周縁部下面931への薬液の回り込みが生じず、薬液処理において第2主面92に供給された薬液が第1主面91へ回り込むことが抑制される。
【0206】
また、ここでは、薬液処理が行われる間、基板9の下方の空間への不活性ガスの供給が継続されることによって、第1主面91が保護されるとともに、第2主面92に供給された薬液、および、薬液の雰囲気が、第1主面91の側に回り込むことが抑制される。また、基板9の下方の空間への不活性ガスの供給が継続されることによって、基板9が所定の高さに位置決めされる状態(すなわち、基板9が不活性ガスの圧力によって上方に付勢されることによって、基板9の周縁部上面932に各チャックピン71A,71Bの上側当接面712が当接して、基板9が所定の高さに位置決めされる状態)が維持されるので、該位置決めされた状態における第1主面91と対向面111との離間距離に応じて規定される適切な供給量で基板9の下方に空間に不活性ガスを供給することによって、第2主面92に供給された薬液、および、薬液の雰囲気が、第1主面91の側に回り込むことを効果的に抑制できる。
【0207】
さらに、ここでは、第1チャック部710Aと第2チャック部710Bとの両方が基板9を保持する状態で薬液処理が行われるので、薬液処理が行われる際に、基板9に与える負荷を小さく抑えつつ、基板9が位置ずれを起こすことを十分に抑制できる。
【0208】
ステップS207:リンス液供給開始工程
第1処理液としての薬液の供給が開始されてから所定時間が経過すると、処理液供給部3が、薬液の供給を停止し、第2処理液としてのリンス液の供給を開始する。具体的には、処理液ノズル31が吐出位置に配置された状態で、薬液バルブ321aが閉鎖されるとともに、リンス液バルブ321bが開放される。すると、薬液供給源32aから供給される薬液に換えて、リンス液供給源32bから供給されるリンス液が、処理液ノズル31から吐出開始されて、基板9の第2主面92にリンス液が供給開始される。第2主面92に供給されたリンス液は、基板9の回転による遠心力によって第2主面92の周縁に向かって広がる。これにより、第2主面92に供給されていた薬液がリンス液に置換され、第2主面92上の薬液がリンス液によって洗い流される。すなわち、第2主面92に対するリンス処理が行われる(リンス処理工程)。
【0209】
ステップS208:リンス液供給停止工程
第2処理液としてのリンス液の供給が開始されてから所定時間が経過すると、処理液供給部3が、リンス液の供給を停止する。具体的には、リンス液バルブ321bが閉鎖される。すると、処理液ノズル31からのリンス液の吐出が停止される。
【0210】
ステップS209:回転数上昇工程
続いて、基板回転機構2が、基板9の回転数を、液処理回転数から、これよりも大きな所定の乾燥回転数まで上昇させる。基板9の回転数が乾燥回転数に到達すると、基板回転機構2は、基板9の回転数を乾燥回転数に維持する。基板9が乾燥回転数で回転されることによって、基板9に付着している液体に大きな遠心力が作用して、該液体が基板9の周囲に振り切られていく。これによって、基板9が乾燥されていく。すなわち、基板9に対する乾燥回転処理(スピンドライ処理)が行われる(乾燥処理工程)。
【0211】
ここでも、第1チャック部710Aと第2チャック部710Bとの両方が基板9を保持する状態で基板9の回転数を上昇させるので、回転数を上昇させる際に、基板9に与える負荷を小さく抑えつつ、基板9が位置ずれを起こすことを十分に抑制できる。
【0212】
ステップS210:持ち替え工程
基板9の回転数が乾燥回転数に維持された状態になると、第1チャック部710Aと第2チャック部710Bとの間での基板9の持ち替えが行われる。
【0213】
基板9の持ち替えにあたっては、例えば、まず、第2チャック部710Bによる基板9の保持が解除される(ステップS210a)。具体的には、チャック切替機構73が、複数の第1開放磁石733aを離間位置に配置したまま、複数の第2開放磁石733bを離間位置から近接位置に移動させる。すると、複数の第1チャックピン71Aは保持位置に配置されたまま、複数の第2チャックピン71Bが保持位置から開放位置に移動する。これによって、第2チャック部710Bによる基板9の保持が解除される。すなわち、基板9が、第1チャック部710Aで保持され、第2チャック部710Bで保持されない状態となる。この状態において、各第2チャックピン71Bが当接していた部分に付着していた液体が振り切られていく。
【0214】
その後、再び、第2チャック部710Bで基板9を保持する(ステップS210b)。具体的には、チャック切替機構73が、複数の第1開放磁石733aを離間位置に配置したまま、複数の第2開放磁石733bを近接位置から離間位置に移動させる。すると、複数の第1チャックピン71Aは保持位置に配置されたまま、複数の第2チャックピン71Bが開放位置から保持位置に移動する。これによって、再び、基板9が、第1チャック部710Aと第2チャック部710Bとの両方で保持された状態となる。
【0215】
続いて、第1チャック部710Aによる基板9の保持が解除される(ステップS210c)。具体的には、チャック切替機構73が、複数の第2開放磁石733bを離間位置に配置したまま、複数の第1開放磁石733aを離間位置から近接位置に移動させる。すると、複数の第2チャックピン71Bは保持位置に配置されたまま、複数の第1チャックピン71Aが保持位置から開放位置に移動する。これによって、第1チャック部710Aによる基板9の保持が解除される。すなわち、基板9が、第2チャック部710Bで保持され、第1チャック部710Aで保持されない状態となる。この状態において、各第1チャックピン71Aが当接していた部分に付着していた液体が振り切られていく。
【0216】
その後、再び、第1チャック部710Aで基板9を保持する(ステップS210d)。具体的には、チャック切替機構73が、複数の第2開放磁石733bを離間位置に配置したまま、複数の第1開放磁石733aを近接位置から離間位置に移動させる。すると、複数の第2チャックピン71Bは保持位置に配置されたまま、複数の第1チャックピン71Aが開放位置から保持位置に移動する。これによって、再び、基板9が、第1チャック部710Aと第2チャック部710Bとの両方で保持された状態となる。
【0217】
ステップS211:回転停止工程
基板9が乾燥回転数で所定時間だけ回転されると、基板回転機構2が、基板9の回転を停止させる。
【0218】
ここでも、第1チャック部710Aと第2チャック部710Bとの両方が基板9を保持する状態で基板9の回転数を下降させるので、回転数を下降させる際に、基板9に与える負荷を小さく抑えつつ、基板9が位置ずれを起こすことを十分に抑制できる。
【0219】
ステップS212:解除工程
続いて、第1チャック部710Aおよび第2チャック部710Bによる基板9の保持を解除する。具体的には、チャック切替機構73が、複数の第1開放磁石733aを離間位置から近接位置に移動させるとともに、複数の第2開放磁石733bを離間位置から近接位置に移動させる。すると、複数の第1チャックピン71Aと、複数の第2チャックピン71Bとが、ともに、保持位置から開放位置に移動する。ただし、この段階においても、基板9の下方の空間への不活性ガスの供給が継続されており、基板9は、不活性ガスの圧力によって上方に付勢されている。したがって、各第1チャックピン71Aおよび各第2チャックピン71Bが保持位置から開放位置に向かって移動するにつれて、基板9が、上側当接面712に案内されて上方に移動する。そして、各第1チャックピン71Aおよび各第2チャックピン71Bが開放位置に配置されると、基板9は、各チャックピン71A,71Bから離間して、各チャックピン71A,71Bの上側当接面712の側方に相当する高さに浮上した状態となる(
図19(b))。
【0220】
ステップS213:リフトピン上昇工程
続いて、ピン昇降機構62が、複数の支持ピン61を上昇させて、複数の支持ピン61を上位置(
図3の二点鎖線)に配置する。複数の支持ピン61が下位置から上位置に移動する途中で、各チャックピン71A,71Bの上側当接面712の側方に相当する高さに浮上している基板9の周縁部93が、複数の支持ピン61によって、下方から支持された状態となる。
【0221】
ステップS214:ガス供給停止工程
続いて、ガス供給部4が、不活性ガスの供給を停止する。具体的には、ガスバルブ421が閉鎖される。
【0222】
ステップS215:基板搬出工程
その後、基板9が、基板処理装置100tから搬出される。具体的には、外部の搬送機構が、ハンド部を基板処理装置100tのチャンバ内に挿入して、ハンド部を複数の支持ピン61に支持されている基板9の第1主面91と対向板部11との間に進入させ、さらに、ハンド部を上昇させる。これによって、基板9が複数の支持ピン61上からハンド部上に受け渡される。その後、搬送機構は、基板9を保持したハンド部を、基板処理装置100tのチャンバ内から退出させる。これによって、基板9が基板処理装置100tから搬出される。
【0223】
<2-3.効果>
上記の実施形態に係る基板処理装置100tは、第1実施形態に係る基板処理装置100と同様、基板保持部1と、基板回転機構2と、処理液供給部3と、ガス供給部4と、制御部5と、を備える。また、基板保持部1が、支持ピン61を備える。さらに、基板保持部1が、基板9の周縁部下面931に当接せずに基板9の周縁部端面930に当接するチャックピン71Aを複数備え、複数のチャックピン71Aで基板9を保持する第1チャック部710Aと、基板9の周縁部下面931に当接せずに基板9の周縁部端面930に当接するチャックピン71Bを複数備え、複数のチャックピン71Bで基板9を保持する第2チャック部710Bと、を備える。そして、制御部5が、パターンDPが形成された第1主面91が下方を向く姿勢の基板9が、複数の支持ピン61から離間して第1および第2チャック部710A,710Bで保持された状態で、基板回転機構2に基板9を回転させつつ、ガス供給部4に基板9の下方の空間へガスを供給させるとともに、処理液供給部3に第1処理液としての薬液を基板9における上方を向く第2主面92に供給させる。
【0224】
別の見方をすると、上記の実施形態に係る基板処理方法は、パターンDPが形成された第1主面91が下方を向く姿勢の基板9が、基板9を下方から支持する複数の支持ピン61から離間して第1および第2チャック部710A,710Bで保持された状態を形成する、第1保持状態形成工程と、複数の支持ピン61から離間して第1および第2チャック部710A,710Bに保持された基板9を、上下に延びる中心軸J1の周りで回転させつつ、基板9の下方の空間へガスを供給するとともに、基板9における上方を向く第2主面92に薬液を供給する、薬液処理工程と、を備える。
【0225】
これらの構成によると、第1実施形態と同様、基板9における上方を向く主面(第2主面92)に供給された薬液が下方を向く主面(第1主面91)へ回り込むことを抑制できる。
【0226】
また、上記の実施形態に係る基板処理装置100tは、各チャックピン71A,71Bが、周縁部端面930に当接する端面当接面711と、基板9の周縁部上面932に当接する上側当接面712と、を備える。そして、制御部5が、基板9が複数の支持ピン61から離間して第1および第2チャック部710A,710Bで保持された状態を形成するにあたって、ガス供給部4に基板9の下方の空間へガスを供給させて基板9を浮上させることによって基板9を複数の支持ピン61から離間させ、浮上している基板9を第1および第2チャック部710A,710Bに保持させる。
【0227】
別の見方をすると、上記の実施形態に係る基板処理方法は、第1保持状態形成工程が、基板9の下方の空間へガスを供給して基板9を浮上させることによって基板9を複数の支持ピン61から離間させる浮上工程(ステップS203)と、浮上している基板9を第1および第2チャック部710A,710Bで保持する浮上基板保持工程(ステップS204)と、を備える。
【0228】
この構成によると、基板9がガスの圧力によって上方に付勢されつつ、第1および第2チャック部710A,710Bに保持されるので、基板9の周縁部上面932に各チャックピン71A,71Bの上側当接面712が当接し、これによって、第1および第2チャック部710A,710Bで保持される基板9が所定の高さに位置決めされる。
【0229】
<3.他の実施形態>
各実施形態に係るチャックピン71,71A,71B,72の形状は例示に過ぎず、適宜に変更されてもよい。
【0230】
例えば、第1実施形態に係る第1チャックピン71において、上側当接面712は必須ではない。すなわち、第1チャック部710で基板9を保持するにあたっては、第1チャックピン71が、少なくとも端面当接面711において周縁部端面930に当接すればよく、周縁部上面932に当接する上側当接面712は必須ではない。
【0231】
具体的には例えば、
図20に示されるように、第1チャックピン71sは、これが備える各突出部71bのチャック当接面7101sが、第1チャックピン71sが保持位置に配置された状態において、基板9の周縁部端面930に当接する端面当接面711sを備え、周縁部上面932に当接する面(上側当接面712に相当する面)を備えないものであってもよい。この場合も、端面当接面711sは、具体的には例えば、上下方向に沿って延在する面(つまり、対向面111となす角度がほぼ90度であるような面)であり、側方から見て、対向面111上に水平姿勢で保持された基板9の周縁部端面930とほぼ平行に延在する。
【0232】
端面当接面711sは、例えば、上方から見て円弧状に湾曲する面であってもよい。つまり、端面当接面711sは、曲面であってもよい。具体的には例えば、突出部71bは、円柱形状(ロッド状)であってもよい。あるいは、端面当接面711sは、例えば、上方から見て直線状に延在する面であってもよい。つまり、端面当接面711sは、平面であってもよい。具体的には例えば、突出部71bは、角柱形状であってもよい。
【0233】
第1チャックピン71sが、基板9の周縁部端面930に当接する端面当接面711sを備え、基板9の周縁部上面932に当接する上側当接面712を備えないものであれば、基板9と第1チャックピン71sとの間の当接領域を十分に小さな領域とすることができる。
【0234】
また例えば、第1実施形態に係る第1チャックピン71は、基板9の周縁部下面931に当接しない限りにおいて、突出部71bあるいは基体部71aに各種の形状部分が設けられていてもよい。例えば、
図21に示されるように、第1チャックピン71sが備える突出部71bの基端部に、凸状の形状部分719sが設けられてもよい。第2実施形態に係る各チャックピン71A,71Bにおいても同様である。
【0235】
また例えば、第1実施形態に係る第1チャックピン71において、端面当接面711は上方から見て直線状に延在する面であってもよいし、上方から見て例えば円弧状に湾曲する面であってもよい。つまり、端面当接面711は、平面であってもよいし、曲面であってもよい。同様に、上側当接面712も、上方から見て直線状に延在する面であってもよいし、上方から見て例えば円弧状に湾曲する面であってもよい。つまり、上側当接面712は、平面であってもよいし、曲面であってもよい。第2実施形態に係る各チャックピン71A,71Bにおいても同様である。
【0236】
同様に、第1実施形態に係る第2チャックピン72において、下側当接面721、上側当接面722、および、湾曲当接面723、の各々は、上方から見て直線状に延在する面であってもよいし、上方から見て例えば円弧状に湾曲する面であってもよい。
【0237】
各実施形態に係るチャック部710,710A,710B,720の構成は例示に過ぎず、適宜に変更されてもよい。
【0238】
例えば、第1実施形態に係る第1チャック部710が備える第1チャックピン71の個数は、必ずしも3個でなくともよく、3個以上であれば何個であってもよい。第2チャック部720においても同様である。また、第2実施形態に係る各チャック部710A,710Bにおいても同様である。
【0239】
また、第1実施形態に係る第1チャック部710が備える複数の第1チャックピン71の形状は、互いに同じである必要はない。例えば、複数の第1チャックピン71のうちの一部の第1チャックピン71が、端面当接面711および上側当接面712を備える形状(
図5)であり、残りの第1チャックピン71が、端面当接面711を備え、上側当接面712を備えない形状(
図20)であってもよい。第2実施形態に係る各チャック部710A,710Bにおいても同様である。
【0240】
また、第1実施形態に係る第1チャック部710で基板9を保持する際に(すなわち、第1チャックピン71が保持位置に配置された状態において)、第1チャックピン71の各突出部71bの端面当接面711が、周縁部端面930を中心軸J1に向けて付勢する力(チャック力)は、適宜に規定することができる。第2実施形態に係る各チャック部710A,710Bにおいても同様である。
【0241】
同様に、第1実施形態に係る第2チャック部720で基板9を保持する際に(すなわち、第2チャックピン72が保持位置に配置された状態において)、第2チャックピン72の各突出部72bの湾曲当接面723が、周縁部端面930を中心軸J1に向けて付勢する力、下側当接面721が、周縁部下面931を上方に向けて付勢する力、および、上側当接面722が、周縁部上面932を下方に向けて付勢する力の各々も、適宜に規定することができる。
【0242】
基板処理装置100,100tにおいて行われる処理の流れも例示に過ぎず、適宜に変更されてもよい。
【0243】
例えば、第1実施形態に係る基板処理装置100において、リンス処理が行われる間に、第1チャック部710と第2チャック部720との間での基板9の持ち替えが行われてもよい。同様に、第2実施形態に係る基板処理装置100tにおいて、薬液処理または(および)リンス処理が行われる間に、第1チャック部710Aと第2チャック部710Bとの間での基板9の持ち替えが行われてもよい。
【0244】
また例えば、第1実施形態に係る基板処理装置100においては、基板9の回転数を上昇あるいは下降させる際には、第1チャック部710と第2チャック部720との両方で基板9を保持していたが、例えば、第1チャック部710が基板9を保持せず、第2チャック部720が基板9を保持する状態で、基板9の回転数を上昇あるいは下降させてもよい。また例えば、第2チャック部720が基板9を保持せず、第1チャック部710が基板9を保持する状態で、基板9の回転数を上昇あるいは下降させてもよい。
【0245】
また例えば、第1実施形態に係る基板処理装置100においては、リンス処理が終了するよりも先に(すなわち、リンス液の供給を停止する工程(ステップS111:リンス液供給停止工程)の前に)、第1チャック部710で保持されている基板9を第2チャック部720でさらに保持する工程(ステップS110:第2保持状態形成工程)を行っていたが、この工程は、リンス処理が終了した後に行われてもよい。すなわち、リンス処理は、基板9が、第2チャック部720で保持されずに、第1チャック部710で保持されている状態で行われてもよい。
【0246】
もっとも、リンス処理が終了するよりも先に、第2チャック部720で基板9を保持する構成とすれば、リンス処理において、基板9が第2チャック部720で保持される状態となるので、基板9が安定して保持され、リンス処理を安定して行うことができる。また、リンス処理において、基板9が第1チャック部710と第2チャック部720との両方で基板9を保持される状態となるので、リンス処理において基板9に与える負荷を小さく抑えつつ基板9が位置ずれを起こすことを十分に抑制できる。
【0247】
基板処理装置100,100tが備えるその他の構成も例示に過ぎず、適宜に変更されてもよい。
【0248】
例えば、支持ピン61の個数は、必ずしも6個でなくともよく、3個以上であれば何個であってもよい。もっとも、基板9がハンド部上から複数の支持ピン61上に受け渡される際に、支持ピン61のリフト案内面612でガイドすることによって、基板9のずれを十分に補正するためには、支持ピン61は、4個以上設けられることが好ましい。また、第1および第2実施形態において、支持ピン61の形状は例示に過ぎず、適宜に変更されてもよい。
【0249】
また、チャック切替機構73の構成は、適宜に変更されてもよい。例えば、チャック切替機構73は、回動磁石731a,731bと閉塞磁石732a,732bとの間の磁気的反発力によってチャックピン71,72,71Bを保持位置に配置するものであってもよい。また例えば、回動磁石731a,731bと開放磁石733a,733bとの間の磁気的反発力によってチャックピン71,72,71Bを開放位置に配置するものであってもよい。また、チャック切替機構73は、必ずしも、磁石の位置関係を変更することによって各チャックピン71,72,71Bの位置を切り替えるものでなくてよい。例えば、チャック切替機構73は、モータの駆動力を、ボールねじ機構、ラックアンドピニオン機構、リンク機構、などを通じて各チャックピン71,72(71A,71B)に伝達することによって、各チャックピン71,72(71A,71B)の位置を切り替えるものであってもよい。
【0250】
また、上記の各実施形態においては、ピン昇降機構62、第1磁石昇降機構734a、および、第2磁石昇降機構734bは、エアシリンダを用いるものであったが、これらは、例えば、モータなどを用いるものであってもよい。
【0251】
また、上記の各実施形態においては、第1処理液としての薬液と、第2処理液としてのリンス液とが、同じ処理液ノズル31から吐出されるものとしたが、薬液を吐出する薬液ノズルと、リンス液を吐出するリンス液ノズルとが別個に設けられてもよい。また、基板9の第2主面92に処理液が供給される際に、ブラシなどを用いた洗浄が行われてもよい。
【0252】
また、上記の各実施形態において、基板処理装置100,100tにおいて処理対象とされる基板9は、必ずしも半導体基板でなくともよい。例えば、処理対象とされる基板9は、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、などであってもよい。また、処理対象とされる基板9の形状も、上記に例示したものに限られるものではない。例えば、処理対象とされる基板9の形状は、矩形状であってもよい。
【0253】
以上のように、基板処理装置および基板処理方法は詳細に説明されたが、上記の説明は、全ての局面において例示であって、基板処理装置および基板処理方法がこれ限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この開示の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。上記の各実施形態、および、上記の各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせたり、省略したりすることができる。
【符号の説明】
【0254】
100,100t 基板処理装置
1 基板保持部
2 基板回転機構
3 処理液供給部
4 ガス供給部
5 制御部
6 支持部
61 支持ピン
62 ピン昇降機構
7,7t チャック部
710 第1チャック部
71 第1チャックピン
711 端面当接面
712 上側当接面
720 第2チャック部
72 第2チャックピン
721 下側当接面
722 上側当接面
723 湾曲当接面
710A 第1チャック部
71A 第1チャックピン
710B 第2チャック部
71B 第2チャックピン
9 基板
91 第1主面
92 第2主面
93 周縁部
930 周縁部端面
931 周縁部下面
932 周縁部上面