(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064552
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】点群計測方法および点群計測装置
(51)【国際特許分類】
G01S 17/89 20200101AFI20240507BHJP
G01S 7/487 20060101ALI20240507BHJP
G01S 7/292 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
G01S17/89
G01S7/487
G01S7/292
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173221
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】松井 祐二
(72)【発明者】
【氏名】小林 亮介
【テーマコード(参考)】
5J070
5J084
【Fターム(参考)】
5J070AC02
5J070AE07
5J070AE11
5J070AF01
5J070AK19
5J070BD01
5J084AA13
5J084AB16
5J084AB17
5J084AC08
5J084AD01
5J084EA11
(57)【要約】
【課題】霧環境中でも構造物の形状を正確に算出することが可能な点群計測方法および点群計測装置を提供する。
【解決手段】構造物11~13の形状を計測する点群計測方法において、点群センサ2およびミリ波レーダ1の各計測点を取得する第1ステップと、点群センサ2の計測点の集合である点群を、1つのグループの任意の計測点と他のグループの任意の計測点との距離が所定の閾値以上となるようにグループ化する第2ステップと、グループ化した各点群の範囲内にミリ波レーダ1の計測点が存在するか否かを判定する第3ステップと、ミリ波レーダ1の計測点が存在すると判定されたグループ21~23の各点群を基に構造物11~13の形状を算出する第4ステップとを有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の形状を計測する点群計測方法において、
点群センサおよびミリ波レーダの各計測点を取得する第1ステップと、
前記点群センサの計測点の集合である点群を、1つのグループの任意の計測点と他のグループの任意の計測点との距離が所定の閾値以上となるようにグループ化する第2ステップと、
グループ化した各点群の範囲内に前記ミリ波レーダの計測点が存在するか否かを判定する第3ステップと、
前記ミリ波レーダの計測点が存在すると判定されたグループの各点群を基に前記構造物の形状を算出する第4ステップとを有する
ことを特徴とする点群計測方法。
【請求項2】
請求項1に記載の点群計測方法において、
前記第4ステップで算出された前記構造物の形状のうち2つの隣接する形状の間隔を前記構造物の間隙幅として算出する第5ステップを有する
ことを特徴とする点群計測方法。
【請求項3】
請求項1に記載の点群計測方法において、
前記第3ステップで、グループ化した各点群の範囲内のいずれにも前記ミリ波レーダの計測点が存在しないと判定された場合に、前記点群センサの感度を切り替えた後、前記第1ステップから前記第3ステップを再び実行する
ことを特徴とする点群計測方法。
【請求項4】
請求項1に記載の点群計測方法において、
前記第4ステップは、
グループ化した各点群が半円柱状に位置しているか否かを判定するステップと、
前記半円柱状に点群が位置していると判定されたグループの点群を外挿することにより前記構造物の形状を算出するステップとを有する
ことを特徴とする点群計測方法。
【請求項5】
請求項1に記載の点群計測方法において、
前記第1ステップは、
複数の計測位置または計測方向で前記点群センサおよび前記ミリ波レーダの各計測点を取得するステップと、
前記複数の計測位置または計測方向で計測された前記点群センサおよび前記ミリ波レーダの各計測点を環境に固定された座標系でそれぞれ足し合わせるステップとを有する
ことを特徴とする点群計測方法。
【請求項6】
構造物の形状を計測する点群計測装置において、
点群センサと、
ミリ波レーダと、
演算装置とを備え、
前記演算装置は、
前記点群センサおよび前記ミリ波レーダの各計測点を取得し、
前記点群センサの計測点の集合である点群を、1つのグループの任意の計測点と他のグループの任意の計測点との距離が所定の閾値以上となるようにグループ化し、
グループ化した各点群の範囲内に前記ミリ波レーダの計測点が存在するか否かを判定し、
前記ミリ波レーダの計測点が存在すると判定されたグループの点群を基に前記構造物の形状を算出する
ことを特徴とする点群計測装置。
【請求項7】
請求項6に記載の点群計測装置において、
前記演算装置は、前記構造物の各形状のうち2つの隣接する形状の間隔を前記構造物の間隙幅として算出する
ことを特徴とする点群計測装置。
【請求項8】
請求項6に記載の点群計測装置において、
前記点群センサおよび前記ミリ波レーダが搭載され、前記点群センサおよび前記ミリ波レーダの計測位置または計測方向を変更可能な走行装置を備え、
前記演算装置は、複数の計測位置または計測方向で前記点群センサおよび前記ミリ波レーダの各計測点を取得し、前記複数の計測位置または計測方向で計測された前記点群センサおよび前記ミリ波レーダの各計測点を環境に固定した座標系でそれぞれ足し合わせる
ことを特徴とする点群計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の点群計測方法または点群計測装置に関わる。
【背景技術】
【0002】
センサから可視光や近赤外光を送信方向走査をしながら送信し、構造物表面で反射した光をセンサで受信し、反射光がセンサに戻るまでの伝播時間を計測することによって、構造物表面の形状を計測する点群計測技術がある。霧が発生している環境で、このような点群計測を行うと、霧の粒子による光の遮蔽で計測感度が低下したり、霧の粒子による光の散乱で誤計測が生じたりするという問題がある。このため、霧が発生している環境においても、霧の影響を低減し、本来計測すべき構造物の形状を確実に計測する方法が提案されている。霧環境中で構造物の点群を確実に計測する技術としては、例えば、特許文献1があげられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記技術は、実体のある構造物表面では光は反射するが透過はしない、不規則形状の霧では光は反射もするし透過もする、という違いを利用して計測した反射点群の識別をしている。複数の反射点を反射点群にグループ化し、第1グループを通る走査線上に第2反射点が存在し、第2反射点と第1反射点の比率が所定以上の場合に、第1グループは霧と判定する。
【0005】
この方法では、光の走査線上に1つのグループしか存在しない場合、第2反射点と第1反射点の比較ができないので誤判定の怖れがある。また、霧が1グループしか発生していない場合には、構造物の反射点群と霧の反射点群を識別できるが、霧が2グループ以上発生している場合にも誤判定の怖れがある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、霧環境中でも構造物の形状を正確に算出することが可能な点群計測方法および点群計測装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、構造物の形状を計測する点群計測方法において、点群センサおよびミリ波レーダの各計測点を取得する第1ステップと、前記点群センサの計測点の集合である点群を、1つのグループの任意の計測点と他のグループの任意の計測点との距離が所定の閾値以上となるようにグループ化する第2ステップと、グループ化した各点群の範囲内に前記ミリ波レーダの計測点が存在するか否かを判定する第3ステップと、前記ミリ波レーダの計測点が存在すると判定されたグループの各点群を基に前記構造物の形状を算出する第4ステップとを有するものとする。
【0008】
また、本発明は、構造物の形状を計測する点群計測装置において、点群センサと、ミリ波レーダと、演算装置とを備え、前記演算装置は、前記点群センサおよび前記ミリ波レーダの各計測点を取得し、前記点群センサの計測点の集合である点群を、1つのグループの任意の計測点と他のグループの任意の計測点との距離が所定の閾値以上となるようにグループ化し、グループ化した各点群の範囲内に前記ミリ波レーダの計測点が存在するか否かを判定し、前記ミリ波レーダの計測点が存在すると判定されたグループの点群を基に前記構造物の形状を算出するものとする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ミリ波レーダの計測点を基に構造物の点群と霧の点群とを判別することにより、霧環境中でも構造物の形状を正確に算出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1の実施例における計測対象構造物と計測センサの配置を示す説明図である。
【
図2】本発明の第1の実施例における計測機器の構成を示す構成図である。
【
図3】本発明の第1の実施例における作業手順を示すフローチャートである。
【
図4】本発明の第1の実施例において点群センサの感度が不適切な場合の計測結果を示す説明図である。
【
図5】本発明の第1の実施例において点群センサの感度が適切な場合の計測結果を示す説明図である。
【
図6】本発明の第1の実施例において計測点群のグループ化を説明する説明図である。
【
図7】本発明の第1の実施例において構造物外径の算出を説明する説明図である。
【
図8】本発明の第1の実施例において構造物の距離の算出を説明する説明図である。
【
図9】本発明の第2の実施例における計測対象構造物と計測センサの配置を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、各図中、同等の要素には同一の符号を付し、重複した説明は適宜省略する。
【実施例0012】
本発明の第1の実施例を、1~
図8を参照しながら説明する。
【0013】
第1の実施例では、屋内設備に据え付けられた設備の一部である2本の配管と1つの矩形構造物を計測対象としている。地震により図示していない建屋の外壁が崩れ、設備の一部も変形している怖れがある。また、外壁が崩れているため、建屋内においても霧が発生する環境となっている。設備の一部は、
図1に示すように、配管11、配管12、矩形構造物13から構成されている。建屋奥には、図示していない複数の構造物が存在するが、地震で一部の経路が通過不能となっているため、建屋奥に行きつくには配管11と配管12の間、または、配管12と矩形構造物13の間を通過しなければならない。建屋や建屋内の構造物が更に崩壊する怖れがあるため、遠隔装置で建屋奥を調査や復旧作業をしたいが、調査装置や作業装置を選定する際には、配管11と配管12の間隔、および、配管12と矩形構造物13の間隔を知っておく必要がある。
【0014】
構造物を計測するためのミリ波レーダ1とアクティブステレオ方式の点群センサ2を台3の上に配置した(
図1)。なお、ミリ波レーダ1のデータをミリ波データ収録部4で収録し、点群センサ2のデータを点群データ収録部5で収録する。ミリ波データと点群データは、PC6で演算、解析できる装置構成としている(
図2)。
【0015】
以下、
図3のフローチャートの手順に従い作業を進めていく。まず、ミリ波レーダ1と点群センサ2で構造物を計測する(ステップF1,F2)。計測結果の平面断面図を、
図4に示す。ミリ波レーダ1が計測した計測点を菱形印で、点群センサ2が計測した計測点を丸印で表示している。なお、計測の時点では、霧14と霧15が発生していた。ミリ波レーダ1は、霧の影響は受けずに正対面からの反射波を受信するので、配管11,配管12、矩形構造物13で1点ずつ反射点を計測していて、霧14と霧15の位置には反射点を計測していない。ミリ波レーダ1の各計測点の近傍に点群センサ2で計測した点群があるかを調べ(ステップF3)、点群が計測されていないので、点群センサ2の感度が不適切と判断する。点群センサ2の感度を高感度側に切り替え(ステップF4)、ミリ波レーダ1と点群センサ2で再計測を行う(ステップF1,F2)。再計測結果の平面断面図を
図5に示す。点群センサ2の感度を適正化できたので、配管11,配管12、矩形構造物13のセンサ側を向いている面で点群が計測できたが、霧14と霧15の位置でも点群が計測されている。
【0016】
点群センサ2の計測点の集合である点群を、1つのグループの任意の計測点と他のグループの任意の計測点との距離が所定の閾値以上となるようにグループ化する(ステップF5)。点群をグループ化した結果を、
図6に示す。なお、霧と構造物が近い場合であっても、霧の濃さが一定の場合には、霧前面での信号強度が大きく、センサからの距離が大きくなると信号強度が徐々に低下するので、センサ、霧、構造物の順に並んでいると、霧前面は点群として計測されやすく、背面側は点群として計測されにくいため、霧の点群と構造物の点群が同じグループと認識されることはないと考えられる。また、霧は空中に浮遊できる軽量小径な水滴であり、各水滴は空中でランダムな動きをしていて、水滴が動いた時に構造物と接触すると、その水滴は構造物に付着し、霧ではなくなる。このため構造物表面から水滴のランダムな動きの平均値に相当する距離まで、構造物と霧の間に隙間空間ができる。霧と構造物が近いように見えても、この隙間空間が存在するため、霧のグループと構造物のグループを分けることができる。
【0017】
各グループ21~25の範囲内にミリ波レーダ1の計測点があるかを調べると(ステップF6)、グループ21~23の範囲内にはミリ波レーダの計測点があり、グループ24,25の範囲内にはミリ波レーダの計測点が無いことが判る。グループ24,25は霧のグループであると判定して非表示とし(ステップF7)、グループ21~23は構造物11~13のグループであると判定し、グループ21~23を基に構造物11~13の形状を算出して表示する(ステップF8)。グループ24,25を非表示とし、配管11の形状31、配管12の形状33、矩形構造物13の形状33、を表示した平面断面図を
図7に示す。また、グループ21,22については、点群が半円柱状に位置していることから円柱状の構造物であると判断できるので、形状33,34の外挿形状36,37も算出して表示している。算出した、形状31または外挿形状36と形状32または外挿形状37との最短距離を算出することにより(ステップF9)、配管11と配管12の間隔38を算出することが可能となる。また、形状32または外挿形状37と形状33との最短距離を算出することにより、配管12と矩形構造物13の間隔39を算出することが可能となる。その結果を
図8に示す。
【0018】
以上のように、ミリ波レーダ1の計測点と点群センサ2で計測した点群を演算処理すると、霧が発生している環境でも、霧の影響を受けることなく構造物11~13の外形を算出し、構造物11~13の間隔38,39を算出することが可能となる。
【0019】
(まとめ)
本実施例では、構造物11~13の形状を計測する点群計測方法において、点群センサ2およびミリ波レーダ1の各計測点を取得する第1ステップと、点群センサ2の計測点の集合である点群を、1つのグループの任意の計測点と他のグループの任意の計測点との距離が所定の閾値以上となるようにグループ化する第2ステップと、グループ化した各点群の範囲内にミリ波レーダ1の計測点が存在するか否かを判定する第3ステップと、ミリ波レーダ1の計測点が存在すると判定されたグループ21~23の各点群を基に構造物11~13の形状を算出する第4ステップとを有する。または、本実施例では、構造物11~13の形状を計測する点群計測装置10において、点群センサ2と、ミリ波レーダ1と、PC6(演算装置)とを備え、PC6(演算装置)は、点群センサ2およびミリ波レーダ1の各計測点を取得し、点群センサ2の計測点の集合である点群を、1つのグループの任意の計測点と他のグループの任意の計測点との距離が所定の閾値以上となるようにグループ化し、グループ化した各点群の範囲内にミリ波レーダ1の計測点が存在するか否かを判定し、ミリ波レーダ1の計測点が存在すると判定されたグループ21~23の点群を基に構造物11~13の形状を算出する。
【0020】
以上のように構成した本実施例によれば、ミリ波レーダ1の計測点を基に構造物11~13の点群と霧14,15の点群とを判別することにより、霧環境中でも構造物11~13の形状を正確に算出することが可能となる。
【0021】
また、本実施例における点群計測方法は、前記第4ステップで算出された構造物11~13の形状のうち2つの隣接する形状の間隔38,39を構造物11~13の間隙幅として算出する第5ステップを有する。または、本実施例におけるPC6(演算装置)は、構造物11~13の各形状のうち2つの隣接する形状の間隔38,39を構造物11~13の間隙幅として算出する。これにより、構造物11~13の間隙幅(間隔38,39)を正確に算出することが可能となる。
【0022】
また、本実施例における点群計測方法では、前記第3ステップで、グループ化した各点群の範囲内のいずれにもミリ波レーダ1の計測点が存在しないと判定された場合に、点群センサ2の感度を切り替えた後、前記第1ステップから前記第3ステップを再び実行する。これにより、構造物11~13の点群を確実に取得することが可能となる。
【0023】
また、本実施例における第4ステップは、グループ化した各点群が半円柱状に位置しているか否かを判定するステップと、前記半円柱状に点群が位置していると判定されたグループ21,22の点群を外挿することにより構造物11,12の形状を算出するステップとを有する。これにより、円柱状の構造物11,12の一部の点群しか計測できない場合でも構造物11,12の全体の形状を算出することが可能となる。
第2の実施例では、化学薬品を貯留するタンク内で意図しない化学反応が発生し、タンクが破損して内容物の一部がタンク外に漏えいした時に、開口部からタンク内に投入する調査装置の制約寸法を調べるものである。
構造物を計測するためのミリ波レーダ51と点群センサ52を走行装置53の上に配置した。なお、ミリ波レーダ51のデータをミリ波データ収録部54で収録し、点群センサ52のデータを点群データ収録部55で収録する。ミリ波データと点群データは、PC56で演算、解析する。また、走行装置53は走行指示部57からの指示で走行することができ、走行装置53に取付けられた距離計、磁気センサ(図示せず)等のセンサ信号に基づいて走行後の装置位置や角度(向き)を装置位置・角度検出部58で算出できる構成としている。
以上のように構成した本実施例によれば、複数の計測位置または計測方向で構造物61を点群センサ52およびミリ波レーダ51で計測することにより、構造物61の形状および構造物61の間隙幅(開口部62の幅)をより正確に算出することが可能となる。
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は、上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、本発明は必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成の一部を加えることも可能であり、ある実施例の構成の一部を削除し、あるいは、他の実施例の一部と置き換えることも可能である。