(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064556
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】ブレイダ
(51)【国際特許分類】
D04C 3/48 20060101AFI20240507BHJP
D04C 3/02 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
D04C3/48
D04C3/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173229
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000152675
【氏名又は名称】コマツNTC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】金平 裕次
【テーマコード(参考)】
4L046
【Fターム(参考)】
4L046AB01
4L046AB05
4L046AD01
4L046BA00
4L046BB00
(57)【要約】
【課題】組成を簡便に開始可能なブレイダを提供する。
【解決手段】ブレイダ1は、第1及び第2糸条供給ユニット50,60それぞれの糸条a3が係止された複数のフック90と、第1及び第2糸条供給ユニット50,60が第1及び第2環状軌道11,12に供給されたとき、各フック90を保持するフック保持部80を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンドレルに糸条を組み上げることによって組成体を形成するためのブレイダであって、
環状軌道が形成された面盤と、
前記環状軌道に沿って移動するキャリアと、前記キャリアに回転可能に支持されるボビンと、前記ボビンに巻き回された前記糸条とを有する複数の糸条供給ユニットと、
前記複数の糸条供給ユニットそれぞれの前記糸条が係止される複数のフックと、
前記複数の糸条供給ユニットが前記環状軌道に供給されたとき、前記複数のフックを保持するフック保持部と、
を備えるブレイダ。
【請求項2】
前記マンドレルに組み上げられた前記糸条を前記複数のフックそれぞれから分離させるための分離機構を備える、
請求項1に記載のブレイダ。
【請求項3】
前記分離機構は、前記複数のフックそれぞれに組み込まれている、
請求項2に記載のブレイダ。
【請求項4】
前記フック保持部は、前記複数のフックを移動可能に支持するフック保持レールを有する、
請求項1に記載のブレイダ。
【請求項5】
前記環状軌道に連なり、前記複数の糸条供給ユニットを移動可能に支持するユニット用レールを備え、
前記フック保持部は、前記フック保持レールの一端に連なり、前記複数のフックを移動可能に支持するフック供給用レールを有する、
請求項4に記載のブレイダ。
【請求項6】
前記フック保持部は、前記フック保持レールの他端に連なり、前記複数のフックを移動可能に支持するフック排出用レールを有する、
請求項5に記載のブレイダ。
【請求項7】
前記面盤の平面視において、前記フック保持レールは、C字状に形成されている、
請求項6に記載のブレイダ。
【請求項8】
前記フック保持部は、前記複数のフックを前記フック保持レールに沿って移動させる駆動部を有する、
請求項1に記載のブレイダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ブレイダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ブレイダ(編組機)を用いて、マンドレルの外周に複数の糸条を組み上げることによって組成体を形成するブレイディング方法が知られている。マンドレルとは、組成体による被覆対象であるワーク(例えば、円筒状のライナなど)、又は、組成体を先導するための棒状冶具である。
【0003】
従来のブレイディング方法では、組成を開始する際、作業者が、多数のボビンそれぞれから引き出した糸条を束ねた糸条群をマンドレルに取り付ける必要があり煩雑であった。
【0004】
そこで、特許文献1では、糸条の引き出し作業の効率向上を目的として、糸条群を一時的に保持するための補助装置を用いる手法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の手法においても、糸条群の取り付け作業を人手で行わなければならないため作業効率を向上するにも限界がある。
【0007】
本開示は、組成を簡便に開始可能なブレイダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の第1側面に係るブレイダは、面盤と、複数の糸条供給ユニットと、複数のフックと、フック保持部とを備える。面盤には、環状軌道が形成される。複数の糸条供給ユニットは、環状軌道に沿って移動するキャリアと、キャリアに回転可能に支持されるボビンと、ボビンに巻き回された糸条とを有する。複数のフックは、複数の糸条供給ユニットそれぞれの糸条が係止される。フック保持部は、複数の糸条供給ユニットが環状軌道に供給されたとき、複数のフックを保持する。
【0009】
本開示の第2側面に係るブレイダは、上記第1側面に係り、マンドレルに組み上げられた糸条を複数のフックそれぞれから分離させるための分離機構を備える。
【0010】
本開示の第3側面に係るブレイダは、上記第2側面に係り、分離機構は、複数のフックそれぞれに組み込まれている。
【0011】
本開示の第4側面に係るブレイダは、上記第1乃至第3側面のいずれかに係り、フック保持部は、複数のフックを移動可能に支持するフック保持レールを有する。
【0012】
本開示の第5側面に係るブレイダは、上記第4側面に係り、環状軌道に連なり、複数の糸条供給ユニットを移動可能に支持するユニット用レールを備える。フック保持部は、フック保持レールの一端に連なり、複数のフックを移動可能に支持するフック供給用レールを有する。
【0013】
本開示の第6側面に係るブレイダは、上記第5側面に係り、フック保持部は、フック保持レールの他端に連なり、複数のフックを移動可能に支持するフック排出用レールを有する。
【0014】
本開示の第7側面に係るブレイダは、上記第6側面に係り、面盤の平面視において、フック保持レールは、C字状に形成されている。
【0015】
本開示の第8側面に係るブレイダは、上記第1乃至第7側面のいずれかに係り、フック保持部は、複数のフックをフック保持レールに沿って移動させる駆動部を有する。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、組成を簡便に開始可能なブレイダを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】実施形態に係る搬送ギアを省略したブレイダの平面図
【
図5】実施形態に係る糸条係止部の内部構成を示す透視図
【
図6】実施形態に係るブレイディング方法を説明するための模式図
【
図7】実施形態に係るブレイディング方法を説明するための模式図
【
図8】実施形態に係るブレイディング方法を説明するための模式図
【
図9】実施形態に係るブレイディング方法を説明するための模式図
【
図10】実施形態に係るブレイディング方法を説明するための模式図
【発明を実施するための形態】
【0018】
(ブレイダ1)
図1は、ブレイダ1の平面図である。
図2は、搬送ギア20を省略したブレイダ1の平面図である。
図3は、ブレイダ1の側面図である。
【0019】
ブレイダ1は、水素タンク70に糸条を組み上げることによって組成体を形成するための装置である。
【0020】
ブレイダ1は、ブレイダ本体2及び自動巻付け装置3を備える。
【0021】
(ブレイダ本体2)
図1に示すように、ブレイダ本体2は、面盤10、複数の搬送ギア20、第1ユニット用レール30、第2ユニット用レール40、複数の第1糸条供給ユニット50、複数の第2糸条供給ユニット60及び水素タンク70を備える。
【0022】
第1及び第2ユニット用レール30,40は、本開示に係る「ユニット用レール」の一例である。第1及び第2糸条供給ユニット50,60は、本開示に係る「糸条供給ユニット」の一例である。水素タンク70は、本開示に係る「マンドレル」の一例である。マンドレルとは、組成体による被覆対象であるワーク、又は、組成体を先導するための冶具であり、水素タンク70は前者に相当する。
【0023】
[面盤10]
面盤10は、環状の板部材である。面盤10は、図示しない基台によって支持される。面盤10は、軌道面10a及び挿通孔10bを有する。
【0024】
軌道面10aは、面盤10の主面である。軌道面10aには、第1環状軌道11及び第2環状軌道12が設けられる。
【0025】
第1及び第2環状軌道11,12それぞれは、軌道面10aの平面視において環状に形成される。第1及び第2環状軌道11,12は、軸心AX周りの周方向に沿って蛇行しながら、互いに交差するように形成されている。具体的には、第1及び第2環状軌道11,12は、軸心AXを中心とする径方向における外側及び内側を交互に通り、かつ、一方の軌道が外側に向かって凸状に湾曲するとき他方の軌道は内側に向かって凸状に湾曲するように形成されている。
【0026】
挿通孔10bは、軌道面10aの中央に形成される。挿通孔10bは、軸心AXに沿って水素タンク70を挿通可能な形状及びサイズを有する。
【0027】
[搬送ギア20]
複数の搬送ギア20は、周方向において互いに近接して配置される。各搬送ギア20は、面盤10に回転可能に支持される。各搬送ギア20は、図示しない駆動機構によって、軸心AXに平行な中心軸を中心として回転駆動される。或る搬送ギア20は、当該搬送ギア20の両側に配置された搬送ギア20と逆方向に回転する。
【0028】
各搬送ギア20には、後述する第1及び第2糸条供給ユニット50,60それぞれのキャリアa1を係合するための複数の搬送溝20aが形成されている。キャリアa1は、隣接する各搬送ギア20の搬送溝20aに順次受け継がれながら、第1及び第2環状軌道11,12に沿って移動する。
【0029】
[第1及び第2ユニット用レール30,40]
第1ユニット用レール30は、面盤10の第1環状軌道11に連なる。第1ユニット用レール30は、各第1糸条供給ユニット50を移動可能に支持する。第1ユニット用レール30は、各第1糸条供給ユニット50の給排に用いられる。
【0030】
第2ユニット用レール40は、面盤10の第2環状軌道12に連なる。第2ユニット用レール40は、各第2糸条供給ユニット60を移動可能に支持する。第2ユニット用レール40は、各第2糸条供給ユニット60の給排に用いられる。
【0031】
第1及び第2ユニット用レール30,40それぞれは、2本の棒状部材によって構成することができる。或いは、第1及び第2ユニット用レール30,40それぞれは、板状部材に溝を形成することによって構成することもできる。
【0032】
[第1及び第2糸条供給ユニット50,60]
複数の第1糸条供給ユニット50は、第1ユニット用レール30に配列される。各第1糸条供給ユニット50は、第1ユニット用レール30に沿って面盤10側に移動し、第1供給ギア31を介して第1環状軌道11に供給される。第1環状軌道11に供給された第1糸条供給ユニット50は、各搬送ギア20の搬送溝20aに順次受け継がれることによって、水素タンク70の周囲を第1環状軌道11に沿って蛇行しながら時計回りに移動する。
【0033】
複数の第2糸条供給ユニット60は、第2ユニット用レール40に配列される。各第2糸条供給ユニット60は、第2ユニット用レール40に沿って面盤10側に移動し、第2供給ギア32を介して第2環状軌道12に供給される。第2環状軌道12に供給された第2糸条供給ユニット60は、各搬送ギア20の搬送溝20aに順次受け継がれることによって、水素タンク70の周囲を第2環状軌道12に沿って蛇行しながら反時計回りに移動する。
【0034】
なお、
図1及び
図2では、第1及び第2糸条供給ユニット50,60が第1及び第2環状軌道11,12に供給される前の状態が図示されている。
【0035】
ここで、第1及び第2糸条供給ユニット50,60は、互いに同様の構成を有する。
図3に示すように、第1及び第2糸条供給ユニット50,60それぞれは、キャリアa1、ボビンa2及び糸条a3を有する。キャリアa1は、ボビンa2を回転可能に支持する。第1糸条供給ユニット50のキャリアa1は、第1ユニット用レール30及び第1環状軌道11に係止可能に構成される。第2糸条供給ユニット60のキャリアa1は、第2ユニット用レール40及び第2環状軌道12に係止可能に構成される。ボビンa2には、糸条a3が巻き回されている。糸条a3の先端は、後述するフック90に係止されている。
【0036】
第1環状軌道11に供給された第1糸条供給ユニット50が水素タンク70の周囲を時計回りに移動し、かつ、第2環状軌道12に供給され第2糸条供給ユニット60が水素タンク70の周囲を時計回りに移動すると、各糸条a3が水素タンク70に自動的に巻き付けられる。この際、各糸条a3は、フック90に係止されたままである。その後、水素タンク70を軸心AXに沿って移動させると、各糸条a3が互いに交差するように組み上げられることによって組成体が形成される。水素タンク70を軸心AXに沿って更に移動させると、各糸条a3は、フック90から分離される。ブレイディング方法の詳細については後述する。
【0037】
なお、第1及び第2糸条供給ユニット50,60それぞれの数は特に制限されず、搬送ギア20の数を考慮して適宜設定することができる。
【0038】
[水素タンク70]
水素タンク70は、中空円柱状に形成される。水素タンク70の中心は、面盤10の軸心AXと一致していることが好ましい。水素タンク70は、図示しない移動機構によって、軸心AXに沿って移動可能である。
【0039】
組成を開始する際、すなわち、第1及び第2糸条供給ユニット50,60が供給される際、水素タンク70の先端部は、面盤10の挿通孔10bの内側に配置される。第1及び第2糸条供給ユニット50,60が供給された後に水素タンク70を軸心AXに沿って移動させると、糸条a3が組み上げられた組成体によって水素タンク70の外周が被覆される。このように、水素タンク70を組成体で被覆することによって、水素タンク70を強化することができる。
【0040】
(自動巻付け装置3)
図1及び
図2に示すように、自動巻付け装置3は、フック保持部80及び複数のフック90を備える。
【0041】
[フック保持部80]
フック保持部80は、第1及び第2糸条供給ユニット50,60が第1及び第2環状軌道11,12に供給されたとき、複数のフック90を保持する。フック保持部80は、細長い矩形板の先端に円環板が連結された構成を有する。
【0042】
フック保持部80は、フック供給用レール81、フック排出用レール82、フック保持レール83及び駆動ギア84を有する。駆動ギア84は、本開示に係る「駆動部」の一例である。
【0043】
フック供給用レール81は、面盤10の平面視において、軸心AXに垂直な方向に延びる。フック供給用レール81は、フック保持レール83の一端部に連なる。フック供給用レール81は、複数のフック90を移動可能に支持する。フック供給用レール81は、各フック90をフック保持レール83に供給する。
【0044】
フック排出用レール82は、面盤10の平面視において、軸心AXに垂直な方向に延びる。フック排出用レール82は、フック保持レール83の他端部に連なる。フック排出用レール82は、複数のフック90を移動可能に支持する。フック排出用レール82には、フック保持レール83から各フック90が排出される。
【0045】
本実施形態において、フック排出用レール82は、フック保持レール83を基準として、フック供給用レール81と同じ側に配置される。フック排出用レール82は、フック供給用レール81と略平行に隣接して配置されている。
【0046】
フック保持レール83は、面盤10と対向する。フック保持レール83の一端は、フック供給用レール81に連なり、フック保持レール83の他端は、フック排出用レール82に連なる。フック保持レール83は、第1及び第2糸条供給ユニット50,60が第1及び第2環状軌道11,12に供給されたとき、複数のフック90を保持する。フック保持レール83は、各フック90を移動可能に支持する。
【0047】
本実施形態において、フック保持レール83は、面盤10の平面視において、C字状に形成されている。フック保持レール83は、面盤10の平面視において、面盤10の挿通孔10bを取り囲むように配置されている。
【0048】
駆動ギア84は、軸心AXを中心とする径方向において、フック保持レール83の内側に配置される。駆動ギア84は、面盤10の平面視において、円環状に形成されている。駆動ギア84は、面盤10の平面視において、面盤10の挿通孔10bを取り囲むように配置されている。駆動ギア84の外周には、各フック90を係止するための複数の係止歯(不図示)が形成されている。
【0049】
駆動ギア84は、図示しない駆動機構によって、軸心AXを中心として駆動される。本実施形態において、駆動ギア84は、面盤10の平面視において、時計回りに回転する。駆動ギア84は、フック供給用レール81からフック保持レール83に各フック90が供給されると、各フック90をフック保持レール83に沿って周方向に移動させる。各フック90は、駆動ギア84の係止歯に係止された状態で、フック保持レール83と駆動ギア84の隙間を移動する。
【0050】
駆動ギア84は、各フック90が所定位置まで移動すると停止する。これによって、各フック90がフック保持レール83上の所定位置に保持される。各フック90から糸条a3が分離されると、駆動ギア84は、再び回転して、各フック90をフック保持レール83からフック排出用レール82に排出させる。
【0051】
[フック90]
図1及び
図2に示すように、第1及び第2糸条供給ユニット50,60が第1及び第2環状軌道11,12に供給される前、複数のフック90は、フック供給用レール81に配列されている。各フック90には、第1及び第2糸条供給ユニット50,60いずれかの糸条a3の先端が係止されている。本実施形態では、第1糸条供給ユニット50の糸条a3が係止されたフック90と、第2糸条供給ユニット60の糸条a3が係止されたフック90とが交互に配列されているが、フック90の配列順は適宜変更可能である。
【0052】
第1及び第2ユニット用レール30,40から第1及び第2環状軌道11,12に向かって第1及び第2糸条供給ユニット50,60が移動すると、各フック90は、糸条a3に引っ張られてフック供給用レール81からフック保持レール83に移動する。そして、各フック90は、駆動ギア84に係止された状態でフック保持レール83に沿って所定位置まで移動すると、その位置に保持される。
【0053】
そして、ブレイディングが始まり、水素タンク70が軸心AXに沿って移動すると、水素タンク70に巻き付けられた各糸条a3は、水素タンク70に引っ張られて、各フック90から分離される。
【0054】
その後、駆動ギア84が再び回転して、各フック90はフック保持レール83からフック排出用レール82に排出される。
【0055】
ここで、
図4は、フック90の斜視図であり、
図5は、糸条係止部93の内部構成を示す透視図である。
【0056】
図4に示すように、フック90は、レール係止部91、連結部92及び糸条係止部93を有する。レール係止部91には、環状の係止溝91aが形成されている。係止溝91aは、フック90の移動に応じて、フック供給用レール81、フック保持レール83及びフック排出用レール82に順次係止される。連結部92は、レール係止部91と糸条係止部93を連結する。レール係止部91が各レール81~83に係止されたとき、糸条係止部93は、各レール81~83の面盤10側に配置される。糸条係止部93は、糸条a3を係止可能であり、かつ、糸条a3に所定の引張力がかかったときに糸条a3を分離可能である。
【0057】
図4及び
図5に示すように、糸条係止部93は、係止板b1、分離板b2、押付け板b3及びプランジャb4を有する。糸条係止部93のうち、係止板b1は糸条a3を係止するための係止機構であり、分離板b2、押付け板b3及びプランジャb4は糸条a3を分離するための分離機構を構成する。このように、本実施形態では、糸条a3を分離するための分離機構がフック90に組み込まれている。
【0058】
係止板b1は、回転軸c1によって回転可能に支持される。係止板b1には、輪っか状に結われた糸条a3の先端が回しかけられる。係止板b1の回転は、分離板b2によって規制されている。分離板b2は、回転軸c2によって回転可能に支持される。分離板b2は、プランジャb4の付勢力によって、押付け板b3に押し付けられている。プランジャb4は、例えばバネなどを内蔵しており、分離板b2を押付け板b3に付勢する。糸条a3が引っ張られると、係止板b1は回転軸c1を中心として回転して分離板b2に当たる。このとき、糸条a3の引張力がプランジャb4の付勢力よりも小さければ、分離板b2は押付け板b3から外れないため、係止板b1は回転しない。一方、糸条a3の引張力がプランジャb4の付勢力よりも大きければ、分離板b2は押付け板b3から外れ、係止板b1が回転する。このとき、係止板b1に係止されていた糸条a3は、係止板b1から抜けて分離される。
【0059】
(ブレイディング方法)
次に、本実施形態に係るブレイディング方法について、図面を参照しながら説明する。
図6~
図10は、ブレイディング方法を説明するための模式図である。
図6~
図10では、ブレイダ本体2のうち第1及び第2環状軌道11,12以外の構成は省略されている。各図(a)は平面図であり、各図(b)は側面図である。
【0060】
まず、
図6に示すように、第1及び第2ユニット用レール30,40から第1及び第2環状軌道11,12へ第1及び第2糸条供給ユニット50,60を移動させる。これに伴い、各フック90は、糸条a3に引っ張られてフック供給用レール81からフック保持レール83に移動し、駆動ギア84の係止歯に係止された状態で、フック保持レール83と駆動ギア84の隙間を移動する。このとき、糸条a3の引張力は比較的小さいため、糸条a3はフック90から分離されない。
【0061】
次に、
図7に示すように、全ての第1及び第2糸条供給ユニット50,60が第1及び第2環状軌道11,12に配置されると、駆動ギア84の回転が停止して、各フック90がフック保持レール83上の所定位置に保持される。このときも、糸条a3の引張力は比較的小さいため、糸条a3はフック90から分離されない。
【0062】
次に、
図8に示すように、第1及び第2糸条供給ユニット50,60の周回を重ねることによって、各糸条a3を水素タンク70に巻き付け固定する。このときも、糸条a3の引張力は比較的小さいため、糸条a3はフック90から分離されず、第1及び第2糸条供給ユニット50,60が周回を重ねることによって各糸条a3が水素タンク70に自動的に巻き付けられる。
【0063】
次に、
図9に示すように、第1及び第2糸条供給ユニット50,60の周回を更に重ねながら、軸心AXに沿って水素タンク70を移動させることによって、各糸条a3どうしを互いに交差するように組み上げる。これによって、
図9に示すように、水素タンク70の外周を被覆する組成体100が徐々に形成される。このとき、糸条a3が水素タンク70に引っ張られることによって、糸条a3の引張力は徐々に大きくなっていく。
【0064】
そして、
図10に示すように、第1及び第2糸条供給ユニット50,60の周回を重ねながら、軸心AXに沿って水素タンク70を更に移動させると、糸条a3の引張力が更に大きくなって、糸条a3はフック90から分離される。フック90から分離した糸条a3は、組成体100の先端から吊り下がった状態となる。
【0065】
(特徴)
【0066】
(1)本実施形態に係るブレイダ1は、第1及び第2糸条供給ユニット50,60それぞれの糸条a3が係止された複数のフック90と、第1及び第2糸条供給ユニット50,60が第1及び第2環状軌道11,12に供給されたとき、各フック90を保持するフック保持部80を備える。従って、第1及び第2糸条供給ユニット50,60の周回を重ねることによって各糸条a3を水素タンク70に自動的に巻き付けることができる。よって、各糸条a3を水素タンク70に取り付ける作業を人手で行う必要がないため、組成を簡便に開始することができる。
【0067】
(2)フック90には、水素タンク70に組み上げられた糸条a3をフック90から分離させるための分離機構が組み込まれている。従って、糸条a3をハサミなどで切断する作業を人手で行う必要がない。また、分離機構がフック90に組み込まれているため、ブレイダ1をコンパクト化できる。
【0068】
(3)フック保持部80は、各フック90を移動可能に支持するフック保持レール83を有する。従って、第1及び第2糸条供給ユニット50,60の供給順に各フック90を配列しておくことができるため、糸条a3が絡まることを抑制できる。
【0069】
(4)ブレイダ本体2は、第1及び第2環状軌道11,12に連なる第1及び第2ユニット用レール30,40を有し、フック保持部80は、フック保持レール83の一端に連なるフック供給用レール81を有する。従って、第1及び第2ユニット用レール30,40から第1及び第2環状軌道11,12に第1及び第2糸条供給ユニット50,60を移動させることによって、糸条a3に引っ張られた各フック90をフック供給用レール81からフック保持レール83に自動的に移動させることができる。
【0070】
(5)フック保持部80は、フック保持レール83の他端に連なるフック排出用レール82を有する。従って、使用後の各フック90をフック供給用レール81からフック排出用レール82に効率的に排出することができる。
【0071】
(6)フック保持レール83は、面盤10の平面視においてC字状に形成されている。従って、フック保持レール83を基準として、フック供給用レール81とフック排出用レール82を同じ側に配置することができるため、フック保持部80をコンパクト化できる。
【0072】
(7)フック保持部80は、各フック90をフック保持レール83に沿って移動させる駆動ギア84を有する。従って、各フック90を自動的に所定位置まで移動させ、その位置で保持しておくことができる。
【0073】
(実施形態の変形例)
本発明は以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形又は修正が可能である。
【0074】
[変形例1]
上記実施形態では、マンドレルの一例として水素タンク70を用いる場合について説明したが、マンドレルは水素タンク70に限られない。マンドレルとしては、水素タンク70以外のワーク(例えば、各種容器、各種棒状部材)または、組成体100を先導するための冶具(例えば、棒状治具など)を用いることができる。組成体100を先導するための冶具は、糸条a3の組成開始点を形成するためだけに用いられ、組成体100は被覆体としてではなく単独のチューブ体として形成される。
【0075】
[変形例2]
上記実施形態において、フック保持レール83は、面盤10の平面視において、C字状に形成されており、フック保持レール83を基準としてフック供給用レール81とフック排出用レール82を同じ側に配置することとしたが、これに限られない。例えば、フック保持レール83を直線状に形成して、フック保持レール83の両側にフック供給用レール81とフック排出用レール82を連ねてもよい。或いは、フック保持レール83は、U字状またはL字状に形成されていてもよい。
【0076】
[変形例3]
上記実施形態において、フック保持部80は、「駆動部」の一例として駆動ギア84を有することとしたが、駆動部は駆動ギア84に限られない。例えば、フック保持部80は、駆動ギア84の代わりに、駆動部として駆動チェーンを有していてもよい。
【0077】
[変形例4]
上記実施形態において、フック保持部80は、各フック90を保持するためのフック保持レール83を有することとしたが、これに限られない。フック保持部80は、各フック90を保持可能に構成されていればよい。
【0078】
[変形例5]
上記実施形態では、フック90には糸条a3を分離するための分離機構が組み込まれることとしたが、これに限られない。フック90は、糸条a3を係止可能であればよく、分離機構はフック90の外部に配置されていてもよい。この場合、糸条a3を裁断可能な裁断機を分離機構として用いることができる。
また、ブレイダ4は、糸条a3をフック90から分離するための分離機構を備えていなくてもよい。この場合には、糸条a3を人手で裁断してもよい。
【0079】
[変形例6]
上記実施形態では、第1及び第2糸条供給ユニット50,60の周回を重ねることによって、巻き付けられた各糸条a3を水素タンク70に固定することとしたが、固定方法はこれに限られない。例えば、水素タンク70の組成開始点付近に接着剤を配置しておき、接着剤によって各糸条a3を水素タンク70に固定してもよい。この場合には、第1及び第2糸条供給ユニット50,60の周回を重ねる必要がないため、迅速に組成を開始することができる。
【0080】
[変形例6]
上記実施形態では、
図1~
図3を参照してブレイダ本体2の構成を説明したが、ブレイダ本体2としては、環状軌道が形成された面盤を有する周知のブレイダを利用することができる。
【符号の説明】
【0081】
1…ブレイダ、2…本体部、3…自動巻付け装置、10…面盤、20…搬送ギア、30…第1ユニット用レール、40…第2ユニット用レール、50…第1糸条供給ユニット、60…第2糸条供給ユニット、70…水素タンク、80…フック保持部、81…フック供給用レール、82…フック排出用レール、83…フック保持レール、84…駆動ギア、90…フック