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特開2024-64567トンネル掘削機用グアーガム含有組成物及びシールド工法
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  • 特開-トンネル掘削機用グアーガム含有組成物及びシールド工法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064567
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】トンネル掘削機用グアーガム含有組成物及びシールド工法
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/06 20060101AFI20240507BHJP
   E21D 9/093 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
E21D9/06 301M
E21D9/093 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173253
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】390002185
【氏名又は名称】大成ロテック株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】平川 一成
(72)【発明者】
【氏名】岡島 穂高
(72)【発明者】
【氏名】山崎 康弘
(72)【発明者】
【氏名】内田 泰彦
【テーマコード(参考)】
2D054
【Fターム(参考)】
2D054AC04
2D054CA03
2D054DA03
2D054FA03
2D054GA63
2D054GA93
(57)【要約】
【課題】本発明は、酸性の水中にあってもグアーガムのゲルを良好に維持することができるトンネル掘削機用グアーガム含有組成物を提供する。
【解決手段】本発明のトンネル掘削機用グアーガム含有組成物は、グアーガムと、炭酸ジルコニウムアンモニウム又はチタニウムジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)と、を含むことを特徴とする。このグアーガム含有組成物は、凍結工法に使用する緩衝材、気泡シールド工法に使用する起泡材、泥土圧シールド工法に使用する加泥材、推進工法に使用する滑材などを構成する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グアーガムと、炭酸ジルコニウムアンモニウム又はチタニウムジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)と、を含むことを特徴とするトンネル掘削機用グアーガム含有組成物。
【請求項2】
凍結工法に使用する緩衝材である請求項1に記載のトンネル掘削機用グアーガム含有組成物。
【請求項3】
気泡シールド工法に使用する起泡材である請求項1に記載のトンネル掘削機用グアーガム含有組成物。
【請求項4】
泥土圧シールド工法に使用する加泥材である請求項1に記載のトンネル掘削機用グアーガム含有組成物。
【請求項5】
推進工法に使用する滑材である請求項1に記載のトンネル掘削機用グアーガム含有組成物。
【請求項6】
シールドマシンのチャンバ内で少なくともグアーガムを掘削土砂に混合して得られる泥土をチャンバから搬出する工程と、
搬出した前記泥土に炭酸ジルコニウムアンモニウム又はチタニウムジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)を混合して排土を生成する工程と、
を有することを特徴とするシールド工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル掘削機用グアーガム含有組成物及びシールド工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、グアーガム(増粘剤)とホウ砂(ゲル化剤)とをシールドマシン(トンネル掘削機)の前方の切羽に供給しながら掘進するシールド工法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
このようなシールド工法によれば、ホウ砂がグアーガムを架橋しゲル化することによって、掘削土砂の塑性流動性が高められる。これにより切羽の良好な安定性が維持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-303571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の工法(例えば、特許文献1参照)においては、ホウ砂にてゲル化したグアーガムの水中での維持が困難であり、掘削土砂に含まれるグアーガムが経時的に解ゲル化する問題があった。そして、この傾向は酸性下において特に顕著となる。
【0005】
本発明の課題は、酸性の水中にあってもグアーガムのゲルを良好に維持することができるトンネル掘削機用グアーガム含有組成物及びシールド工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決した本発明のトンネル掘削機用グアーガム含有組成物は、グアーガムと、炭酸ジルコニウムアンモニウム又はチタニウムジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)と、を含むことを特徴とする。
また、本発明のシールド工法は、シールドマシンのチャンバ内で少なくともグアーガムを掘削土砂に混合して得られる泥土をチャンバから搬出する工程と、搬出した前記泥土に炭酸ジルコニウムアンモニウム又はチタニウムジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)を混合して排土を生成する工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、酸性の水中にあってもグアーガムのゲルを良好に維持することができるトンネル掘削機用グアーガム含有組成物及びシールド工法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係るグアーガム含有組成物を使用するトンネル掘削機の構成説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明を実施する形態(本実施形態)のトンネル掘削機用グアーガム含有組成物(以下、単にグアーガム含有組成物と称することがある)及びこれを使用したシールド工法について適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
以下では、まず凍結工法、泥土圧シールド工法、気泡シールド工法、推進工法などに使用されるトンネル掘削機としてのシールドマシン及びこれに使用するグアーガム含有組成物について説明する。
【0010】
≪シールドマシン≫
図1は、本実施形態での使用を想定したシールドマシン1の構成説明図である。なお、本実施形態でのシールドマシン1は、推進・シールド併用システムに使用されるものを想定しているがこれに限定されずに推進工法又はシールド工法のいずれかに使用されるものであってもよい。
図1に示すように、シールドマシン1は、スキンプレート2と、隔壁3と、カッタヘッド4と、カッタモータ5と、スクリュコンベア7と、土圧センサ8を備えている。
【0011】
スキンプレート2は、シールドマシン1の外殻部となる鋼製の筒状部材である。
隔壁3は、スキンプレート2に設けられており、スキンプレート2の前側部分にチャンバ9を区画している。
【0012】
カッタヘッド4は、回転によって地中を掘削する部分であり、スキンプレート2よりも前方に配設されている。
カッタヘッド4には、複数のカッタビット6が固定されている。
カッタモータ5は、カッタヘッド4を回転させるための駆動源であり、隔壁3の後側に設けられている。
カッタモータ5の駆動力は、支持アーム10を介してカッタヘッド4に伝達される。
【0013】
スクリュコンベア7は、チャンバ9に流入した掘削土(泥土)を後側に排出する装置である。
土圧センサ8は、チャンバ9に流入した掘削土の圧力を測定する。この土圧センサ8で測定された掘削土の圧力に応じて、シールドマシン1の推進力やスクリュコンベア7による掘削土の排出量が調整される。
なお、図1中、符号11は、シールドジャッキであり、符号12は、トンネル覆工部材としてのセグメントである。
【0014】
<凍結工法>
シールドマシン1を使用したトンネル工事では、例えば摩耗したカッタビット9の交換時にシールドマシン1による掘進を一時的に中断する。そして、作業者が入ることとなるチャンバ9内は減圧される。この際、チャンバ9の周辺地盤は、止水を目的に、切羽Cfから隔壁3までの区間に配置された凍結管(図示を省略)によって凍結される。次いで、凍結された地盤は、所定のはつりによって作業空間が形成される。このような本実施形態での凍結工法においては、地盤の凍結工程に先立って、所定の供給管(図示を省略)を介して作業空間を形成する領域となる周辺地盤に、後記のグアーガム含有組成物が凍結工法用緩衝材として供給される。
【0015】
<泥土圧シールド工法>
泥土圧シールド工法は、シールドジャッキ11の推力によりチャンバ9内の泥土に泥土圧を発生させて切羽Cfの土圧と地下水圧とに対抗し、シールドマシン1の掘進量と排土量のバランスを図りながら掘進する工法である。
本実施形態での泥土圧シールド工法においては、シールドマシン1による掘進を行う際に、所定の供給管(図示を省略)を介してチャンバ9内に後記のグアーガム含有組成物が加泥材として供給される。
この加泥材は、掘削土砂を不透水性と塑性流動性とを有する泥土に変換する。この泥土は、切羽Cfの良好な安定性を維持する。そして、チャンバ9内の泥土は、スクリュコンベア7によって排土として後方に搬送される。
【0016】
<気泡シールド工法>
気泡シールド工法は、シェービングクリーム状の微細気泡を切羽Cfに供給しつつ掘進する工法である。
カッタヘッド4にて掘削された掘削土砂は、カッタヘッド4の回転によって微細気泡と混合されることで流動性が高められ、チャンバ9内に流入する。また、微細気泡は、切羽Cfの土粒子同士の間に入り込んで止水性を向上させる。そして、チャンバ9では、微細気泡の存在によって壁面への掘削土砂の付着が抑制される。
このような気泡シールド工法に使用する本実施形態での微細気泡は、起泡材としての後記のグアーガム含有組成物が複数のガイシを有する発泡筒などの気泡発生手段に圧縮空気とともに供給されて生成され、切羽Cfに供給される。
【0017】
<推進工法>
シールドマシン1や図示しない推進機を使用した推進工法においては、掘削孔とスキンプレート2又は推進管(図示を省略)との間に滑材が供給される。推進工法は、これにより掘削孔の内壁面との間に生じる摩擦力を低減する。
このような推進工法に使用する本実施形態での滑材は、後記のグアーガム含有組成物が使用される。
【0018】
≪グアーガム含有組成物≫
次に、本実施形態のグアーガム含有組成物について説明する。
グアーガム含有組成物は、グアーガムと、炭酸ジルコニウムアンモニウム[(NHZrO(CO]又はチタニウムジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)[Ti(O-i-C(C14N)]と、を含んで構成されている。
グアーガムは、増粘剤であり、マンノース2分子に1分子のガラクトースの側鎖をもつ多糖類からなる。
炭酸ジルコニウムアンモニウム及びチタニウムジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)は、グアーガムのゲル化剤である。
【0019】
<凍結工法用緩衝材>
凍結工法用緩衝材としてのグアーガム含有組成物は、グアーガムを含む第1液と、炭酸ジルコニウムアンモニウム又はチタニウムジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)を含む第2液とがミキシングノズルに供給されることで生成される。そして、凍結工法用緩衝材は、ミキシングノズルを介して前記の作業空間を形成することとなる周辺地盤に供給される。
凍結工法用緩衝材としてのグアーガム含有組成物は、グアーガム0.05~2.5質量%及び炭酸ジルコニウムアンモニウム0.001~5質量%を含むもの、並びにグアーガム0.05~2.5質量%及びチタニウムジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)0.002~3質量%を含むものが好ましい。
また、凍結工法用緩衝材は、希釈媒体となる水のほか、必要に応じて、凝固点降下剤、防腐剤、pH調整剤などを含めることができる。
なお、凝固点降下剤、防腐剤、pH調整剤などの添加剤は、グアーガムを含む第1液に配合することが望ましい。ちなみに、凝固点降下剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、塩化カルシウムなどが挙げられる。なかでも塩化カルシウムは、危険物第4類第3石油類に分類されるエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどと比べて使用時における安全性が高い点で好ましい。なお、凍結工法用緩衝材における塩化カルシウムの配合量は、5~40質量%が好ましい。
【0020】
<加泥材>
加泥材としてのグアーガム含有組成物は、グアーガムを含む第1液と、炭酸ジルコニウムアンモニウム又はチタニウムジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)を含む第2液とがミキシングノズルに供給されることで生成される。そして、加泥材は、ミキシングノズルを介して前記のチャンバ9内に供給される。
加泥材としてのグアーガム含有組成物は、グアーガム0.05~2.5質量%及び炭酸ジルコニウムアンモニウム0.001~5質量%を含むもの、並びにグアーガム0.05~2.5質量%及びチタニウムジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)0.002~3質量%を含むものが好ましい。
また、加泥材は、希釈媒体となる水のほか、必要に応じて、防腐剤、pH調整剤などを含めることができる。
なお、防腐剤、pH調整剤などの添加剤は、グアーガムを含む第1液に配合することが望ましい。
このような加泥剤は、前記のミキシングノズルを使用せずに、グアーガムを含む第1液と、炭酸ジルコニウムアンモニウム又はチタニウムジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)を含む第2液とを異なるタイミングで配合して生成することもできる。
【0021】
<起泡材>
起泡材としてのグアーガム含有組成物は、グアーガムを含む第1液と、炭酸ジルコニウムアンモニウム又はチタニウムジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)を含む第2液とを、それぞれポンプ等で気泡発生手段に圧縮空気とともに供給することで生成される。そして、この起泡材から得られる発泡物は、前記の切羽Cfに供給される。
起泡材としてのグアーガム含有組成物は、グアーガム0.05~2.5質量%、炭酸ジルコニウムアンモニウム0.001~5質量%及び気泡剤0.5~20質量%を含むもの、並びにグアーガム0.05~2.5質量%、チタニウムジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)0.002~3質量%及び気泡剤0.5~20質量%を含むものが好ましい。
なお、起泡材に含める気泡剤は、グアーガム含有組成物の気泡化に寄与する成分であり、例えばアニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤などが挙げられる。
また、起泡材は、希釈媒体となる水のほか、必要に応じて、防腐剤、pH調整剤などを含めることができる。
なお、気泡剤、防腐剤、pH調整剤などの添加剤は、グアーガムを含む第1液に配合することが望ましい。
【0022】
<滑材>
滑材としてのグアーガム含有組成物は、グアーガムを含む第1液と、炭酸ジルコニウムアンモニウム又はチタニウムジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)を含む第2液とがミキシングノズルに供給されることで生成される。そして、滑材は、ミキシングノズルを介して前記の掘削孔とスキンプレート2又は推進管(図示を省略)との間に供給される。
滑材としてのグアーガム含有組成物は、グアーガム0.05~2.5質量%及び炭酸ジルコニウムアンモニウム0.001~5質量%を含むもの、並びにグアーガム0.05~2.5質量%及びチタニウムジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)0.002~3質量%を含むものが好ましい。
また、滑材は、希釈媒体となる水のほか、必要に応じて、凝固点降下剤、防腐剤、pH調整剤などを含めることができる。
なお、凝固点降下剤、防腐剤、pH調整剤などの添加剤は、グアーガムを含む第1液に配合することが望ましい。ちなみに、凝固点降下剤としては、塩化カルシウムが好ましく、滑材には、5~40質量%の配合量にて含めることができる。
【0023】
以上のような凍結工法用緩衝材、加泥材、起泡材及び滑材のそれぞれは、前記のように、凍結工法、泥土圧シールド工法、気泡シールド工法、及び推進工法に応じて切羽Cf、チャンバ9、周辺地盤、掘削孔の内壁面とシールドマシン1との間などに供給される。
このような本実施形態のグアーガム含有組成物によれば、後に詳しく説明する実施例にて検証されたように、酸性の水中にあってもグアーガムのゲルを良好に維持することができる。
【0024】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、種々の形態で実施することができる。
前記実施形態でのシールド工法は、グアーガム含有組成物をシールドマシン1による掘進時に切羽Cf、チャンバ9、周辺地盤などに供給するものについて説明した。
しかしながら、本発明のシールド工法は、チャンバ9から排出したグアーガムを含む掘削土砂(泥土)に、ゲル化剤である炭酸ジルコニウムアンモニウム又はチタニウムジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)を投入する構成とすることもできる。
【0025】
すなわち、このシールド工法は、シールドマシン1のチャンバ9内で少なくともグアーガムを掘削土砂に混合して得られる泥土をチャンバ9から搬出する工程と、搬出した前記泥土に炭酸ジルコニウムアンモニウム又はチタニウムジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)を混合して排土を生成する工程と、を有することを特徴とする。
【0026】
このシールド工法は、炭酸ジルコニウムアンモニウム又はチタニウムジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)をスクリュコンベア7の後端部に供給するものを想定しているが、スクリュコンベア7よりも後方に、別途に泥土と炭酸ジルコニウムアンモニウム又はチタニウムジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)とを混合する混合槽を有する構成とすることもできる。
また、このようなシールド工法においては、チャンバ9に、グアーガムに加えて炭酸ジルコニウムアンモニウム又はチタニウムジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)を投入するとともに、チャンバ9から排出された泥土にさらに炭酸ジルコニウムアンモニウム又はチタニウムジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)を加える構成とすることもできる。
【0027】
以上のようなシールド工法によれば、排土にゲル化したグアーガムを安定的に含むこととなって、車両による排土の平台搬送が可能となる。これにより砂礫などからなる排土の二次使用の範囲が広がる。
【実施例0028】
次に、本実施形態に係るグアーガム含有組成物の奏する作用効果について検証した本発明の実施例及び比較例について説明する。
[実施例1~5]
実施例1~5においては、グアーガム0.6質量%、及び防腐剤0.1質量%を含むグアーガム水溶液(粘度450mPa・s)200ccに対して、所定量の2.1質量%炭酸ジルコニウムアンモニウム水溶液を添加して得られたグアーガム含有組成物の粘度[mPa・s]を測定した。その結果を表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
[実施例6~16]
実施例6~16においては、グアーガム0.5質量%、及び防腐剤0.1質量%を含むグアーガム水溶液200ccに対して、所定量の4.0質量%チタニウムジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)水溶液を添加して得られたグアーガム含有組成物の粘度[mPa・s]を測定した。その結果を表2に示す。
【0031】
【表2】
【0032】
(実施例1~16の評価結果)
表1及び表2に示すように、実施例1~16では、グアーガムに炭酸ジルコニウムアンモニウム又はチタニウムジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)を添加することでグアーガムがゲル化して粘度が高められることが検証された。
【0033】
[実施例17]
実施例17では、グアーガム0.6質量%、及び硫酸バンド0.1質量%を含むグアーガム水溶液(pH4.02、粘度600mPa・s)190ccに対して、10ccの2.1質量%炭酸ジルコニウムアンモニウム水溶液(pH9.10)を添加することによってグアーガム含有組成物を得た。このグアーガム含有組成物の粘度は、1000mPa・sであった。
【0034】
[実施例18]
実施例18では、グアーガム0.6質量%、及び硫酸バンド0.1質量%を含むグアーガム水溶液(pH4.02、粘度600mPa・s)190ccに対して、10ccの4.0質量%チタニウムジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)水溶液(pH9.05)を添加することによってグアーガム含有組成物を得た。このグアーガム含有組成物の粘度は、4000mPa・sであった。
【0035】
[実施例19]
実施例19では、まず、0.6質量%グアーガム水溶液500ccに対して、75質量%硫酸0.1ccを添加したpH3.96の酸性グアーガム水溶液(粘度650mPa・s)を調製した。
次いで、この酸性グアーガム水溶液200ccに対して、pH9.10の2.1質量%炭酸ジルコニウムアンモニウム水溶液1cc添加することで第1のグアーガム含有組成物(粘度650mPa・s)を調製した。
次いで、この第1のグアーガム含有組成物に対して、さらにpH9.10の2.1質量%炭酸ジルコニウムアンモニウム水溶液1cc添加することで第2のグアーガム含有組成物(pH6.41、粘度900mPa・s)を得た。
次いで、この第2のグアーガム含有組成物に対して、さらにpH9.10の2.1質量%炭酸ジルコニウムアンモニウム水溶液1cc添加することで第3のグアーガム含有組成物(pH6.67、粘度1000mPa・s)を得た。
【0036】
[実施例20]
実施例20では、実施例19と同様にしてpH3.96の酸性グアーガム水溶液(粘度650mPa・s)を調製した。
次いで、この酸性グアーガム水溶液200ccに対して、pH9.05の4.0質量%チタニウムジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート水溶液5cc添加することでグアーガム含有組成物(pH7.78、粘度2500mPa・s)を得た。
【0037】
[実施例21]
実施例21では、まず、0.6質量%グアーガム水溶液650ccに対して、75質量%硫酸0.13ccを添加したpH3.30の酸性グアーガム水溶液(粘度650mPa・s)を調製した。
次いで、この酸性グアーガム水溶液200ccに対して、pH9.10の2.1質量%炭酸ジルコニウムアンモニウム水溶液1cc添加することで第1のグアーガム含有組成物(pH6.29、粘度800mPa・s)を得た。
次いで、この第1のグアーガム含有組成物に対して、2質量%炭酸ナトリウム水溶液2ccを添加することで、第2のグアーガム含有組成物(pH7.70、粘度800mPa・s)を得た。
【0038】
[実施例22]
実施例22では、実施例21と同様にしてpH3.30の酸性グアーガム水溶液(粘度650mPa・s)を調製した。
次いで、この酸性グアーガム水溶液200ccに対して、pH9.10の2.1質量%炭酸ジルコニウムアンモニウム水溶液2ccと、2質量%炭酸ナトリウム水溶液5ccを添加することで、グアーガム含有組成物(pH9.30、粘度16000mPa・s以上(測定不能))を得た。
【0039】
[比較例1]
比較例1では、グアーガム0.6質量%、及び硫酸バンド0.1質量%を含むグアーガム水溶液(pH4.02、粘度600mPa・s)182ccに対して、18ccの0.6質量%ホウ砂水溶液を添加することによってグアーガム含有組成物を得た。このグアーガム含有組成物の粘度は、ホウ砂水溶液の添加前のグアーガム水溶液と同じ600mPa・sであった。
【0040】
(実施例17~22及び比較例1の評価結果)
従来の工法(例えば、特許文献1参照)で使用されるグアーガム(増粘剤)とホウ砂(ゲル化剤)とを含むグアーガム含有組成物は、比較例1に示すように、酸性下では、グアーガムがゲル化しないことが確認された。
これに対して、本実施形態のグアーガム含有組成物は、実施例17~22に示すように、酸性下においてもグアーガムがゲル化することが検証された。
【0041】
[実施例23]
実施例23では、1.0質量%グアーガム水溶液(粘度2000mPa・s)190ccに対して2.1質量%炭酸ジルコニウムアンモニウム水溶液10ccを混合してゲルとなったグアーガム含有組成物(粘度30000mPa・s)を得た。
次いで、このグアーガム含有組成物200ccを10000ccの水(pH7.23)に投入して経時的なゲルの状態変化を目視にて観察した。その結果、水への投入後30日を経過しても水中にゲル状態のグアーガム含有組成物が確認された。
【0042】
[実施例24]
実施例24では、1.0質量%グアーガム水溶液(粘度2000mPa・s)190ccに対して4.0質量%チタニウムジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)水溶液10ccを混合してゲルとなったグアーガム含有組成物(粘度25000mPa・s)を得た。
次いで、このグアーガム含有組成物200ccを10000ccの水(pH7.23)に投入して経時的なゲルの状態変化を目視にて観察した。その結果、水への投入後30日を経過しても水中にゲル状態のグアーガム含有組成物が確認された。
【0043】
[比較例2]
比較例2では、1.6質量%グアーガム水溶液200gを調製した。このグアーガム水溶液は、粘度7000mPa・sの粘調物であった。
次いで、このグアーガム水溶液200gを10000ccの水(pH7.23)に投入した。グアーガム水溶液は、水への投入後24時間で水中に溶解した。
【0044】
[比較例3]
比較例3では、1.0質量%グアーガム水溶液(粘度2000mPa・s)182ccに対して、18ccの1.0質量%ホウ砂水溶液を混合してゲルとなったグアーガム含有組成物(粘度30000mPa・s)を得た。
次いで、このグアーガム含有組成物200ccを10000ccの水(pH7.23)に投入して経時的なゲルの状態変化を目視にて観察した。その結果、このグアーガム含有組成物は、この水への投入後に解ゲル化を開始して、ゲルは48時間経過後に消滅した。
【0045】
(実施例23~24及び比較例2~3の評価結果)
比較例2~3に示すように、グアーガム水溶液及びホウ砂によるグアーガムのゲル化物は、長くとも48時間で水中に溶解して消滅することが確認された。
これに対して本実施形態のグアーガム含有組成物は、実施例23~24に示すように、30日経過後も水中でゲル状態を維持できることが検証された。
【0046】
[実施例25]
実施例25では、グアーガム0.6質量%、及び防腐剤0.1質量%を含むグアーガム水溶液(粘度500mPa・s)190ccに対して、2.1質量%炭酸ジルコニウムアンモニウム水溶液10ccを混合してゲルとなったグアーガム含有組成物(粘度16,000mPa・s以上)を得た。
次いで、このグアーガム含有組成物200ccを10000ccの酸性の水(pH2.81)に投入して経時的なゲルの状態変化を目視にて観察した。その結果、水への投入後7日を経過しても水中にゲル状態のグアーガム含有組成物が確認された。
【0047】
[実施例26]
実施例26では、実施例25と同様にして炭酸ジルコニウムアンモニウムにてゲルとなったグアーガム含有組成物(粘度16,000mPa・s以上)を得た。
次いで、このグアーガム含有組成物200ccを10000ccのアルカリ性の水(pH10.56)に投入して経時的なゲルの状態変化を目視にて観察した。その結果、水への投入後5日を経過しても水中にゲル状態のグアーガム含有組成物が確認された。
【0048】
[比較例4]
比較例4では、実施例25と同様にして調製したグアーガム水溶液(粘度500mPa・s)185ccに対して、15ccの0.6質量%ホウ砂水溶液を混合してゲルとなったグアーガム含有組成物(粘度16,000mPa・s以上)を得た。
次いで、このグアーガム含有組成物200ccを10000ccの酸性の水(pH2.81)に投入して経時的なゲルの状態変化を目視にて観察した。その結果、このグアーガム含有組成物は、この水への投入後に解ゲル化を開始して、ゲルは24時間経過後に消滅した。
【0049】
[比較例5]
比較例5では、比較例4と同様にしてホウ砂にてゲルとなったグアーガム含有組成物(粘度16,000mPa・s以上)を得た。
次いで、このグアーガム含有組成物200ccを10000ccのアルカリ性の水(pH10.56)に投入して経時的なゲルの状態変化を目視にて観察した。その結果、このグアーガム含有組成物は、この水への投入後に解ゲル化を開始して、ゲルは24時間経過後に消滅した。
【0050】
(実施例25~26及び比較例4~5の評価結果)
本実施形態のグアーガム含有組成物は、実施例25~26に示すように、酸性又はアルカリ性の水中においてもゲル状態を維持できることが検証された。
なお、ホウ砂によるグアーガムのゲル化物は、比較例4~5及び前記の比較例3に示すように、pHの範囲に関わりなく水中で解ゲル化して消滅することが確認された。
【0051】
[実施例27]
実施例27では、まず、グアーガム0.6質量%、気泡剤0.8質量%、及び防腐剤0.1質量%を含むグアーガム水溶液が調製された。なお、気泡剤には、アニオン系界面活性剤(京浜ソイル社製 環境8号)が使用された。
次いで、このグアーガム水溶液50ccと、2.1質量%炭酸ジルコニウムアンモニウム水溶液1.5ccとを混合してゲルとなったグアーガム含有組成物を発泡倍率6倍で発泡させた。
そして、この発泡物の24時間経過後における発泡状態を目視にて観察するとともに、発泡物の分離水量比(分離水量[g]/全体量[g])を測定した。その結果、本実施例の発泡物は、24時間経過後も良好な発泡状態を示していた。また、分離水量比は、0/46であった。
【0052】
[実施例28]
実施例28では、実施例27と同様にして得られたグアーガム水溶液50ccと、4.0質量%チタニウムジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)水溶液1.5ccとを混合してゲルとなったグアーガム含有組成物を発泡倍率6倍で発泡させた。
そして、この発泡物の24時間経過後における発泡状態を目視にて観察するとともに、発泡物の分離水量比(分離水量[g]/全体量[g])を測定した。その結果、本実施例の発泡物は、24時間経過後も良好な発泡状態を示していた。また、分離水量比は、0.6/46であった。
【0053】
[比較例6]
比較例6では、実施例27と同様にして得られたグアーガム水溶液50ccと、0.6質量%ホウ砂水溶液9ccとを混合してゲルとなったグアーガム含有組成物を発泡倍率6倍で発泡させた。
そして、この発泡物の24時間経過後における発泡状態を目視にて観察するとともに、発泡物の分離水量比(分離水量[g]/全体量[g])を測定した。その結果、本比較例の発泡物は、発泡物積が3分の1程度にまで減少していた。また、分離水量比は、29/46であった。
【0054】
(実施例27~28及び比較例6の評価結果)
比較例6に示すように、ホウ砂によるグアーガムのゲル化物の発泡物は、長時間に渡る発泡状態の維持が困難であった。これに対して実施例27~28の発泡物は、長時間に渡って良好な発泡状態を維持できることが検証された。
【0055】
[実施例29]
実施例29では、実施例27と同様にして得られたグアーガム水溶液50ccと、2.1質量%炭酸ジルコニウムアンモニウム水溶液1.5ccとを混合してゲルとなったグアーガム含有組成物を発泡倍率6倍で発泡させた。
次いで、この発泡物300ccを10000ccの水(pH7.23)に投入して経時的な発泡状態変化を目視にて観察した。その結果、水への投入後7日を経過しても水中に発泡状態のグアーガム含有組成物が確認された。
【0056】
[実施例30]
実施例30では、実施例27と同様にして得られたグアーガム水溶液50ccと、4.0質量%チタニウムジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)水溶液1.5ccとを混合してゲルとなったグアーガム含有組成物を発泡倍率6倍で発泡させた。
次いで、この発泡物300ccを10000ccの水(pH7.23)に投入して経時的な発泡状態変化を目視にて観察した。その結果、水への投入後7日を経過しても水中に発泡状態のグアーガム含有組成物が確認された。
【0057】
[比較例7]
比較例7では、実施例27と同様にして得られたグアーガム水溶液50ccと、0.6質量%ホウ砂水溶液9ccとを混合してゲルとなったグアーガム含有組成物を発泡倍率6倍で発泡させた。
次いで、この発泡物300ccを10000ccの水(pH7.23)に投入して経時的な発泡状態変化を目視にて観察した。その結果、水への投入後24時間で水中の発泡物は消滅した。
【0058】
(実施例29~30及び比較例7の評価結果)
比較例7に示すように、ホウ砂によるグアーガムのゲル化物の発泡物は、水中における長時間に渡る発泡状態の維持が困難であった。これに対して実施例29~30の発泡物は、水中で長時間に渡って良好な発泡状態を維持できることが検証された。
【0059】
[実施例31]
実施例31では、実施例29と同様にして得られた炭酸ジルコニウムアンモニウム含有の発泡物300ccを、10000ccの酸性の水(pH2.81)に投入して経時的な発泡状態変化を目視にて観察した。その結果、水への投入後7日を経過しても水中に発泡状態のグアーガム含有組成物が確認された。
【0060】
[実施例32]
実施例32では、実施例30と同様にして得られたチタニウムジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)含有の発泡物300ccを、10000ccの酸性の水(pH2.81)に投入して経時的な発泡状態変化を目視にて観察した。その結果、水への投入後7日を経過しても水中に発泡状態のグアーガム含有組成物が確認された。
【0061】
[実施例33]
実施例33では、実施例29と同様にして得られた炭酸ジルコニウムアンモニウム含有の発泡物300ccを、10000ccのアルカリ性の水(pH10.56)に投入して経時的な発泡状態変化を目視にて観察した。その結果、水への投入後7日を経過しても水中に発泡状態のグアーガム含有組成物が確認された。
【0062】
[実施例34]
実施例34では、実施例30と同様にして得られたチタニウムジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)含有の発泡物300ccを、10000ccのアルカリ性の水(pH10.56)に投入して経時的な発泡状態変化を目視にて観察した。その結果、水への投入後7日を経過しても水中に発泡状態のグアーガム含有組成物が確認された。
【0063】
(実施例31~34の評価結果)
本実施形態のグアーガム含有組成物の発泡物は、実施例31~34に示したように、酸性及びアルカリ性の水中においても良好な発泡状態が維持できることが検証された。
【0064】
[実施例35]
実施例35では、まず、グアーガム1.0質量%、塩化カルシウム20質量%、及び防腐剤0.1質量%を含むグアーガム水溶液を調製した。
次いで、このグアーガム水溶液500ccと、2.1質量%炭酸ジルコニウムアンモニウム水溶液25ccとを混合してゲルとなったグアーガム含有組成物を得た。
このグアーガム含有組成物の凝固点は、-8.9℃であった。
【0065】
[実施例36]
実施例36では、実施例35と同様にして調製したグアーガム水溶液500と、4.0質量%チタニウムジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)水溶液25ccとを混合してゲルとなったグアーガム含有組成物を得た。
このグアーガム含有組成物の凝固点は、-9.2℃であった。
【0066】
(実施例35~36の評価結果)
本実施形態のグアーガム含有組成物は、実施例35~36に示したように、凍結工法用緩衝材として好適な凝固点を示すことが検証された。
【符号の説明】
【0067】
1 シールドマシン
2 スキンプレート
3 隔壁
4 カッタヘッド
5 カッタモータ
6 カッタビット
7 スクリュコンベア
8 土圧センサ
9 チャンバ
10 支持アーム
11 シールドジャッキ
12 セグメント
Cf 切羽
図1