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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064568
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】空気回路及び工作機械
(51)【国際特許分類】
   G05D 16/06 20060101AFI20240507BHJP
   B23Q 1/38 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
G05D16/06 L
B23Q1/38 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173254
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】391003668
【氏名又は名称】トーヨーエイテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 省二
(72)【発明者】
【氏名】宮島 貴彦
(72)【発明者】
【氏名】森分 勇磨
(72)【発明者】
【氏名】谷川 恵太
(72)【発明者】
【氏名】木邑 達男
【テーマコード(参考)】
3C048
5H316
【Fターム(参考)】
3C048EE00
5H316AA20
5H316BB02
5H316CC04
5H316DD02
5H316EE02
5H316JJ06
5H316KK01
5H316LL01
(57)【要約】
【課題】1次側を流れているエアに、変化を生じさせることなく、空圧レギュレータからリリーフするエアを1次側に戻すことを可能にする。
【解決手段】空圧源Pから空圧シリンダ10に高圧エアを送り込むメイン配管20中に設けられた、空圧レギュレータ30からリリーフされるエアを戻し配管21を介して空圧レギュレータ30の1次側31に戻す空気回路50の、戻し配管21とメイン配管20との交わる部分において、メイン配管20中の1次側31から2次側32へ流れるエアの流れに逆らう流れを生じさせ、空圧レギュレータ30に高圧のエアが流れ込むのを防止する、逆流発生部51を設ける。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空圧源から空圧シリンダに高圧エアを送り込むメイン配管中に設けられた、空圧レギュレータからリリーフされるエアを、逆止弁を有する戻し配管を介して前記空圧レギュレータの1次側に戻す空気回路であって、
前記戻し配管と前記メイン配管との交わる部分において、前記メイン配管中の1次側から2次側へ流れるエアの流れに逆らう流れを生じさせ、前記空圧レギュレータに高圧のエアが流れ込むのを防止する、逆流発生部が設けられている
ことを特徴とする空気回路。
【請求項2】
前記逆流発生部が、
前記戻し配管と前記メイン配管との交わる部分に設けた蓋部材と、
前記戻し配管と前記メイン配管との交わる部分の1次側内面に設けた面取りと、
前記蓋部材と前記面取りとの間の隙間とを有する
ことを特徴とする請求項1に記載の空気回路。
【請求項3】
前記蓋部材が、複数の貫通孔を有し、
前記複数の貫通孔は、前記面取り側の内径が、前記面取りと反対側の内径よりも小さい
ことを特徴とする請求項2に記載の空気回路。
【請求項4】
前記メイン配管が、上下作動軸の中立を保つ前記空圧シリンダの上昇側にエアを送り込む配管である
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の空気回路。
【請求項5】
前記戻し配管には、エアを貯留できる複数個のサブタンクが、所定の設定圧力で開く複数の開閉逆止弁を介して並べられており、
前記複数の開閉逆止弁が、前記逆流発生部に向かって徐々に設定圧力が高くなるように並べられている
ことを特徴とする請求項4に記載の空気回路。
【請求項6】
請求項1に記載の逆流発生部と、
メイン配管と、
前記メイン配管に接続される空圧レギュレータと、
前記空圧レギュレータから前記メイン配管にエアを戻す戻し配管と、
上下作動軸とを備え、
前記メイン配管が、前記上下作動軸の中立を保つ空圧シリンダに接続されている
ことを特徴とする工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空圧レギュレータを有する空気回路及び工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工作機械における主軸などの、上下を移動する上下作動軸は、その重さが動作に影響を及ぼすため、上下移動時に同等の力になるように中立の力を得た上で、作動させるようにしている。この力を得る手段に空圧シリンダを用い、バランスさせる空圧回路が知られている。このような空圧回路において、圧力を調整可能な空圧レギュレータが用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
例えば、図4に示すような空圧レギュレータ30により必要な圧力(上下動するユニットの重さ)を空圧シリンダ片側に供給し、上下動ユニットの上下作動時に、空圧シリンダが動作に追従していくことで、工作機械のモータ負荷をバランスさせた動作を行っている。
【0004】
そして、上下作動軸が動作する度に下記(1)、(2)のエア供給と排気が行われる。
【0005】
(1)空圧シリンダの供給側に上下作動軸が動作する場合、レギュレータ30の1次側31から2次側32へのエアの流れが起こる。
【0006】
(2)空圧シリンダの排出側に上下作動軸が動作する場合、レギュレータ30の2次側32からエアが戻り、2次側32の圧力が高まるため、レギュレータ30内部のダイヤフラム34を作動させ、ダイヤフラム34を通し、空圧シリンダから戻ってきたエアをリリーフポート33から大気へ逃がしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平5-35887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
(1)の動作時は、レギュレータ30の1次側31から2次側32、空圧シリンダ内にエアが充満し、圧力変動がなければ、動作への影響は少ない。しかし、1次側31で圧力変動が起こると、レギュレータ30の応答により、2次側32に圧力変動が起こる。
【0009】
(2)の動作時は、レギュレータ30の弁体37とダイヤフラム34の開度に変化を生じることで、
・加減速時レギュレータ30のダイヤフラム34を押す力が変化し、ダイヤフラム34の変動が影響し、軸とエア圧に応差(ヒステリシス)が発生する。これにより、軸動作に影響する。
・ダイヤフラム34から大気開放するため、圧力降下が大きくなる。ダイヤフラム34への力が変動し、エア圧が変化し、振動変動する。これにより、軸動作に影響する。
・ダイヤフラム34から開放に入るため、異音を伴う。管路がラッパ状であることが多く、このために音が増幅されやすい。
・圧縮エアが消滅する。
というような問題が発生し、このような問題を解決するために、ダイヤフラム34からのエアを1次側へ戻すことが考えられる。
【0010】
しかしながら、1次側31にエアを戻すことで、
・1次側31から逆流する。
・レギュレータ30の1次側31の圧力が高まると、レギュレータ30は、2つのばね力の差でリリーフ量を定めていることから、小さな変動(例えば、0.01MPa程度)であれば、2次圧には変化はないが、大きめの変動(例えば、0.02MPaを超える変動)が起きた場合は、1次圧の高まりにより、比例ほどではないが、2次圧も高まってしまう。さらに、2次側32がリリーフ中にある場合、流量が、重み、変動が加算され、さらに大きな変動を起こす。
・動作速度が速くなると配管だけでは対処できない。
というような新たな問題が発生する。
【0011】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、1次側を流れているエアに、変化を生じさせることなく、空圧レギュレータからリリーフするエアを1次側に戻すことを可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、この発明では、空圧レギュレータから1次側に戻す配管構造に工夫を加えた。
【0013】
具体的には、第1の発明では、空圧源から空圧シリンダに高圧エアを送り込むメイン配管中に設けられた、空圧レギュレータからリリーフされるエアを、逆止弁を有する戻し配管を介して前記空圧レギュレータの1次側に戻す空気回路を対象とし、
前記空気回路は、
前記戻し配管と前記メイン配管との交わる部分において、前記メイン配管中の1次側から2次側へ流れるエアの流れに逆らう流れを生じさせ、前記空圧レギュレータに高圧のエアが流れ込むのを防止する、逆流発生部が設けられている。
【0014】
上記の構成によると、空圧レギュラーを介してエアを送り込む場合、空圧レギュレータからリリーフされるエアを空圧レギュレータの1次側に戻すことで、空圧シリンダの動作を安定させることができる。このリリーフされるエアを1次側へ戻した点で、レギュレータ側へ続く配管内の圧力変動を防ぐことが必要となる。逆流発生部により、戻し配管とメイン配管との交わる部分において、メイン配管中の1次側から2次側へ流れるエアの流れに逆らう流れを生じさせ、空圧レギュレータに高圧のエアが流れ込むのを防止する。これにより、空圧シリンダの動作が安定する。
【0015】
第2の発明では、第1の発明において、
前記逆流発生部は、
前記戻し配管と前記メイン配管との交わる部分に設けた蓋部材と、
前記戻し配管と前記メイン配管との交わる部分の1次側内面に設けた面取りと、
前記蓋部材と前記面取りとの間の隙間とを有する。
【0016】
上記の構成によると、蓋部材と1次側内面の面取りとの間にできた隙間を用いてメイン配管の端部に向け1次側へ流れの方向をつくる作用と、メイン配管の側面への押さえるような流れを形成させることで、配管側面にある管抵抗からできた渦流を積極的に利用することで、1次側への流れ(逆向きの流れ)を促進させる。これにより、空圧レギュレータに高圧のエアが流れ込むのを防止することができる。
【0017】
第3の発明では、第2の発明において、
前記蓋部材は、複数の貫通孔を有し、
前記複数の貫通孔は、前記面取り側の内径が、前記面取りと反対側の内径よりも小さい。
【0018】
上記の構成によると、面取り側の貫通孔の内径が、面取りと反対側の貫通内径よりも小さいので、エアの流速が増す。この面取り側の貫通孔から出たエアの吹き出された先には、負圧が発生しているので、積極的に空圧源側に流れる機能を有する。一方、面取りと反対側の貫通内径をより大きくすることで、流速を低下させる。これにより、空圧源側へ発生した流れを妨げることなく、隣接で発生している流れに載せることを可能とし、空圧源側へ流れる形態が成立する。この構造は、軸移動の加速、減速による速度変化に応じ、排気する位置を変えることができ、空圧レギュレータの機能向上を果たす。
【0019】
第4の発明では、第1から第3のいずれか1つの発明において、
前記メイン配管は、上下作動軸の中立を保つ前記空圧シリンダの上昇側にエアを送り込む配管である。
【0020】
上記の構成によると、空圧レギュレータに向かうメイン配管内に圧力変動を生じさせないので、空圧レギュレータの1次側が変動せず、安定した圧力供給を続けることができるため、空圧シリンダの動作が安定する。
【0021】
第5の発明では、第1から第4のいずれか1つの発明において、
前記戻し配管には、エアを貯留できる複数個のサブタンクが、所定の設定圧力で開く複数の開閉逆止弁を介して並べられており、
前記複数の開閉逆止弁は、前記逆流発生部に向かって徐々に設定圧力が高くなるように並べられている。
【0022】
上記の構成によると、サブタンクにエアが一気に流入することが防ぎながら戻し配管のみで処理しきれない量のエアの処理が可能となる。
【0023】
第6の発明の工作機械は、
第1から第5のいずれか1つの発明の逆流発生部と、
メイン配管と、
前記メイン配管に接続される空圧レギュレータと、
前記空圧レギュレータから前記メイン配管にエアを戻す戻し配管と、
上下作動軸とを備え、
前記メイン配管は、前記上下作動軸の中立を保つ空圧シリンダに接続されている。
【0024】
上記の構成によると、空圧シリンダの動作が安定するので、上下作動軸の中立を安定して達成でき、機械加工を安定して高精度で行える。例えば、空圧シリンダの加減速時のエアの速度が低速となると、排出圧力も下がる。これにより、空圧レギュレータの位置に近い側へ排気する流れ(位置)を変えることが可能となる。このことは、空圧シリンダの反転時に起こる、排気から供給形態の変化に伴い起こる、空圧レギュレータから空圧シリンダへの供給動作に対し、空圧レギュレータに、より高い圧力でのエア供給を可能としており、動作に対する空圧シリンダの応答性が向上する。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、本発明によれば、1次側を流れているエアに、変化を生じさせることなく、空圧レギュレータからリリーフするエアを1次側に戻すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施形態に係る空気回路を有する工作機械の概略を示す斜視図である。
図2】工作機械の上下作動軸及びその周辺を拡大して示す側面図である。
図3】本発明の実施形態に係る空気回路図である。
図4】空圧レギュレータを拡大して示す断面図である。
図5】逆流発生部を示し、(a)が正面図であり、(b)が断面図である。
図6図5(b)のVI方向から見た拡大矢視図である。
図7】メイン配管内における圧力分布の概要を示す断面図である。
図8】逆流発生部におけるエアの流れを説明する断面図である。
図9】上下作動軸の円運動の状況を示す図であり、(a)が単に1次側にエアを戻す比較例に係るものであり、(b)が本実施形態に係る空圧回路によるものである。
図10】圧力開閉逆止弁を示し、(a)が断面図で、(b)が側面図である。
図11】サブタンクの構成を示す概略図であり、(a)が2つの容器の間に圧力開閉逆止弁が配置されるもので、(b)が容器の上流側に圧力開閉逆止弁が配置されるもので、(c)が容器の上流側及び下流側に圧力開閉逆止弁がそれぞれ配置されるものである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0028】
図1に本発明の実施形態に係る、NC工作機械よりなる工作機械1を示す。例えば、この工作機械1は、ベッド2と、コラム3と、テーブル4と、ワークWを掴むチャック5と、主軸モータ6と、これらを制御する制御部7とを備えている。そして図2にも示すように、本実施形態のチャック5の回転軸である上下作動軸8は、上下(Y軸方向)に移動可能にコラム3に設けられており、ワークWの位置を上下に微調整可能となっている。そして、コラム3には、上下作動軸8の中立を保つ空圧シリンダ10が、例えば4本並べられている。なお、工作機械1の構成はこれに限定されず、ワーク形状、工具種類など特に限定されない。
【0029】
そして、図3に示すように、これらの空圧シリンダ10には、元圧(空圧源P)からのメイン配管20が接続されている。メイン配管20は、例えば、内径10mmの配管が使用されているが、内径などの構成は、それに限定されない。
【0030】
本実施形態の工作機械1では、コラム3のチャック5に掴んだワークWを回転させながら、上下にワークWの位置を微調整すると共に、テーブル4上の主軸モータ6の位置を微調整して工具(図示せず)の位置を移動させながら機械加工が行えるようになっている。なお、上下作動軸8は、工具が設けられる軸でもよい。
【0031】
そして、本実施形態の空気回路50は、コンプレッサなどの元圧である空圧源Pからメイン配管20が延びており、このメイン配管20は、工作機械1の他系統にも分岐している。そのうちの1つの分岐が、空圧レギュレータ30を介して空圧シリンダ10の上下作動軸8を上昇させる空圧シリンダ10の上昇側圧力室11に接続されている。
【0032】
図4に拡大して示すように、詳しい説明は省略するが、空圧レギュレータ30には、1次側31のポートと、2次側32のポートと、リリーフポート33とを有し、内部にダイヤフラム34と、調圧バネ35と、調圧ハンドル36と、弁体37と、弁バネ38とが設けられている。
【0033】
そして、本実施形態では、図3に示すように、リリーフポート33からの戻し配管21が逆止弁22を介してメイン配管20における空圧レギュレータ30の1次側31に接続されている。逆止弁22は、この1次側31からの逆流を防ぐ役割を果たす。
【0034】
このようにして、空圧源Pから空圧シリンダ10に高圧エアを送り込むメイン配管20中に設けられた、空圧レギュレータ30からリリーフされるエアを、逆止弁22を有する戻し配管21を介して空圧レギュレータ30の1次側31に戻す空気回路50が得られる。
【0035】
そして、本実施形態の特徴として、図5(a)に示すように、戻し配管21とメイン配管20との交わる部分において、メイン配管20中の1次側31から2次側32へ流れるエアの流れに逆らう流れを生じさせ、空圧レギュレータ30に高圧のエアが流れ込むのを防止する、逆流発生部51が設けられている。
【0036】
別の観点で言うと、図3に示すように、1次側のメイン配管20には、他で消費される他系統の分岐があること、管内圧力損失、空圧レギュレータにおける圧力損失等があることで、絶えず軽微な流れが起きている。この軽微な流れを最大限に生かし、空圧源P側へ排出エアを誘導することを目的とし、逆流発生部51が設けられている。
【0037】
具体的には、図5(b)及び図6に拡大して示すように、逆流発生部51は、戻し配管21とメイン配管20との交わる部分に設けた蓋部材40と、戻し配管21とメイン配管20との交わる部分の1次側31の内面に設けた面取り23と、蓋部材40と面取り23との間の隙間41とを有する。
【0038】
そして、蓋部材40は、例えば、複数の貫通孔42,43,44を有し、これらの貫通孔42,43,44の内径は、面取り23と反対側の大径貫通孔42から、中径貫通孔43、小径貫通孔44と、面取り23側に向かって徐々に小さくなるように配列されている。これら複数の貫通孔42,43,44とその間の遮蔽部とでエアの流れに影響を与えることができる。
【0039】
図7に示すように、メイン配管20の管内に流れがある場合、中央を凸とした高流速部分20aのある圧力形態が生じる。これは、メイン配管20の端部で圧力損失があるためである。さらに、メイン配管20の内周面近傍では、接触抵抗があるため、渦流20bを形成している。
【0040】
図8に示すように、逆流発生部51では、面取り23によりできた隙間41による流路と、蓋部材40による遮蔽部とにより、負圧を伴う負圧発生部24が発生する。
【0041】
そして、面取り23側の負圧発生部24のすぐ隣にある小径貫通孔44は、他の大径貫通孔42及び中径貫通孔43に比べて小径となっているので、リリーフポート33から流れてくる流れの流速が増す。この小径貫通孔44から吹き出したエアの先には、負圧発生部24があることで、積極的に空圧源P側へ発生した流れを妨げることなく、隣接で発生している流れに載せることを可能とし、空圧源P側に流れる形態を成立させている。
【0042】
このような構成により、上下作動軸8の移動の加減速による速度変化に応じ、排気する位置を変えることができ、空圧レギュレータ30の機能向上を果たす。
【0043】
例えば、加減速時、エアの速度が低くなれば、排出圧力も下がる。これにより、空圧レギュレータ30の位置に近い側へ排気する流れを変えることを可能としている。このことは、空圧シリンダ10の反転時に起こる、排気から供給形態の変化に伴って起こる、空圧レギュレータ30から空圧シリンダ10への供給動作に対し、空圧レギュレータ30に、より高い圧力での供給を可能としており、動作に対する空圧シリンダ10の応答性向上を果たしている。
【0044】
リリーフポート33から出たエアに、空圧源P側への流れをつけることで、メイン配管20内にある渦流20bを利用し、空圧源P側の深くまで進入させることが可能となる。リリーフポート33から出たエアは、管内圧力損失と、空圧源P側で他へ使われるための分岐による圧力損失により飽和される。そのため、空圧レギュレータ30側へ、高い圧のエアを送り込むことはなく、空圧レギュレータ30へ影響を与えることはない。
【0045】
図8に拡大して示すように、逆流発生部51に面取り23を設けることで、空圧源P側へ向けた流れをつくる。この流れは、傾斜形状とメイン配管20内部の圧力差により、空圧源P側へ流れる。さらに、メイン配管20の管内面にある渦流により、管端部を空圧源P側へ流れていくこととなる。この現象により、隙間41と小径貫通孔44の遮蔽部付近には、負圧が発生(隙間41から出たエアが、付近のエアを誘引)することから、小径貫通孔44から出たエアは、負圧に誘導され、空圧源P側への流れを管端部だけで形成することが可能となる。
【0046】
順次この繰り返しにより、空圧源P側への流れを、メイン配管20の半分程度で実現する。この形態により、空圧レギュレータ30側の圧変化に影響を与えることがなくなる。
【0047】
戻し配管21を介してメイン配管20にエアを戻す場合、メイン配管20の1次側で、空圧レギュレータ30側へ影響を及ぼさない圧力と量に調整後、メイン配管20の1次側へエアを戻す。適する圧力値は、例えば、メイン配管20の内径が10mmの場合、1次側圧力+5%程度である。
【0048】
適する流量は、メイン配管20の内径が10mmの場合、処理が可能となる流量は、≦0.0001m/secである。
【0049】
また、空圧レギュレータ30のリリーフポート33から出たエアを1次側31に戻すとき、1次側31の配管内流体の形態を利用し、管壁側に圧力源空圧源Pへ向く流れをつくる。これにより、1次側31のメイン配管20中央にある流速が高い高流速部分20aの変化を抑え込み、空圧レギュレータ30側へつながる1次側31の圧力変化を防いでいる。
【0050】
本実施形態では、戻し込むエアの圧力を高め、単に圧力差を利用する戻し方ではなく、1次側31が本来持っている形態を損なうことなく、繊細な戻し方を実現した画期的な戻し方を確立している。
【0051】
例えば、図9に、XY円運動を評価した結果を示す。送り速度は、数百mm/minで、上下作動軸8に半径25mmの円運動をさせた。X軸が上下作動軸8の左右動作を示し、Y軸が上下作動軸8の上下動作を示す。図9(a)に逆流発生部51を設けずに空圧レギュレータ30の1次側31にエアを戻した、比較例の円運動の状況を示す。上昇時は、空圧レギュレータ30からエアが供給され続けるため影響が出ないが、下降時は、空圧レギュレータ30のリリーフポート33からエアが排出されるため、単にそのまま戻しただけでは、軸が真円に沿って綺麗に動いていないことが分かる。このような排出のムラによるハンチング現象の発生、空圧シリンダ10の排出不良による動作の停滞などの問題が発生する。
【0052】
一方、図9(b)に示すように、本実施形態の逆流発生部51を設けた場合には、上下作動軸8は、左右動作及び上下動作共に問題なく作動していることが分かる。
【0053】
さらに、処理流量が多く、メイン配管20内だけで処理できない場合は、サブタンク60~63数個により、段階的な圧力上昇を行う。各サブタンク60~63で、細かな段階圧力をつくり、変化と変動を抑え込むことから、サブタンク60~63の移行をスムーズに行う処置を実施する。これにより、静的に安定したエアを作り込み、1次側31のメイン配管20内へ戻すときの安定性を向上させている。細かく、段階的に増圧させていくことは、流量の変動、圧力の変動を抑え込むのに優れ、安定したエア供給を行うことに優れている。
【0054】
内径10mmの戻し配管21だけで処理できる流量は、およそ0.0001m/secであることから、これを超える場合、いったん貯蓄できるサブタンク60~63を設けるとよい。
【0055】
例えば、4本の内径80mm(0.08m)の空圧シリンダ10で、かつ50mm(0.05m)のストロークを要することから、0.04×0.04×π×0.05=0.000251mだけ蓄える必要がある。
【0056】
この量を全て蓄えるためには、0.1m×0.1m×0.1mの容積を設けておけば、問題なく対応できる。但し、一気にエアが流入することを防ぐために、段階的な圧力毎でのサブタンク60~63とし、最終吐出時には、メイン配管20の処理能力を超えない処置を行う必要がある。
【0057】
例えば、図10及び図11に示すように、0.063m×0.063m×0.063mの容器60~63が直列にメイン配管20に接続される。第1容器60と第2容器61との間に、第1圧力開閉逆止弁65が配置される。1次側供給が0.4MPaの場合、第1圧力開閉逆止弁65は、例えば、0.11MPaに設定される。第2容器61と第3容器62との間に、第2圧力開閉逆止弁66が配置される。第2圧力開閉逆止弁66は、例えば、0.21MPaに設定される。第3容器62と第4容器63との間に、第3圧力開閉逆止弁67が配置される。第3圧力開閉逆止弁67は、例えば、0.31MPaに設定される。第4容器63の1次側に第4圧力開閉逆止弁68が配置される。第4圧力開閉逆止弁68は、例えば、0.41MPaに設定される。
【0058】
第1~第4圧力開閉逆止弁65~68は、図10に示すように、球状ポペット69、押圧部70、押圧バネ71を備え、それぞれ異なる設定圧力を超えると、エアが通過するようになっている。
【0059】
このように構成することで、一気にエアが1つのサブタンク60~63へ流入するのではなく、段階的に複数のサブタンク60~63に流入するように構成されている。流入することができる。
【0060】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0061】
例えば、上記実施形態では、サブタンク60~63を設けたが、これは必須のものではなく、なくてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 工作機械
2 ベッド
3 コラム
4 テーブル
5 チェック
6 軸モータ
7 制御部
8 作動軸
10 空圧シリンダ
11 上昇側圧力室
20 メイン配管
20a 高速流部分
21 戻し配管
22 逆止弁
23 面取り
30 空圧レギュレータ
31 1次側
31 次圧側
32 2次側
33 リリーフポート
34 ダイヤフラム
35 調圧バネ
36 調圧ハンドル
37 弁体
38 弁バネ
40 蓋部材
41 隙間
42 大径貫通孔
43 中径貫通孔
44 小径貫通孔
50 空気回路
51 逆流発生部
60 第1容器
61 第2容器
62 第3容器
63 第4容器
65 第1圧力開閉逆止弁
66 第2圧力開閉逆止弁
67 第3圧力開閉逆止弁
68 第4圧力開閉逆止弁
68 第4圧力開閉逆止弁
69 球状ポペット
70 押圧部
71 押圧バネ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11