(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064569
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】磁気ギア、および、磁気ギアード電気機械
(51)【国際特許分類】
F16H 49/00 20060101AFI20240507BHJP
【FI】
F16H49/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173257
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】508317402
【氏名又は名称】マグノマティックス リミテッド
【氏名又は名称原語表記】MAGNOMATICS LIMITED
【住所又は居所原語表記】Park House, Bernard Road, Sheffield, South Yorkshire S2 5BQ Great Britain
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】内藤 あゆみ
(72)【発明者】
【氏名】池見 健
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 幹人
(72)【発明者】
【氏名】清水 隆之
(72)【発明者】
【氏名】カルバリー、 スチュアート
(72)【発明者】
【氏名】クック、 グリン
(72)【発明者】
【氏名】ドラガン、 ラドゥ-ステファン
(57)【要約】
【課題】磁極片ユニットにおける渦電流損失を抑制した磁気ギア、および、磁気ギアード電気機械を提供することである。
【解決手段】磁気ギアの磁極片ユニットは、複数の磁極片の各々の端部に連結される連結部と、連結部から径方向の内側に向かって延在する径方向延在部とを有する磁極片支持体を含む。第1継鉄ユニットは、第1本体部における軸方向の端面に配置されるエンドプレートであって、径方向延在部と軸方向において所定の隙間を有して対向するエンドプレートを含む。エンドプレートは、磁性材料によって形成される磁性材部と、非磁性材料によって形成される非磁性材部であって、磁性材部よりも径方向における外側に配置される非磁性材部とを有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線に対して周方向に並ぶ複数の第1磁石と前記複数の第1磁石を支持する第1継鉄とを有する第1本体部を含む第1継鉄ユニットと、
前記第1継鉄ユニットの外周側において前記周方向に並ぶ複数の第2磁石を含む第2継鉄ユニットと、
前記第1継鉄ユニットと前記第2継鉄ユニットとの間において前記周方向に並ぶ複数の磁極片を含む磁極片ユニットと、
を備える磁気ギアであって、
前記磁極片ユニットは、前記複数の磁極片の各々の端部に連結される連結部と、前記連結部から径方向の内側に向かって延在する径方向延在部とを有する磁極片支持体をさらに含み、
前記第1継鉄ユニットは、前記第1本体部における軸方向の端面に配置されるエンドプレートであって、前記径方向延在部と前記軸方向において所定の隙間をあけて対向するエンドプレートをさらに含み、
前記エンドプレートは、
磁性材料によって形成される磁性材部と、
非磁性材料によって形成される非磁性材部であって、前記磁性材部よりも前記径方向における外側に配置される非磁性材部と、
を有する、
磁気ギア。
【請求項2】
前記磁性材部と前記非磁性材部との境界は、各々の前記第1磁石の内周面よりも前記径方向において外側に位置する、
請求項1に記載の磁気ギア。
【請求項3】
前記径方向における前記非磁性材部の寸法をL、前記磁極片と前記第1継鉄ユニットとの間の前記径方向における距離をRとした場合に、R≦L≦6×Rの関係を満たす、
請求項1または2に記載の磁気ギア。
【請求項4】
前記磁性材部の前記軸方向における寸法をD、前記径方向延在部と前記第1本体部との間の前記軸方向における距離をSとした場合に、D≧0.15×Sの関係を満たす、
請求項1または2に記載の磁気ギア。
【請求項5】
前記径方向延在部は、非磁性材料によって形成される、
請求項1または2に記載の磁気ギア。
【請求項6】
前記径方向延在部は、非導電性材料によって形成される、
請求項5に記載の磁気ギア。
【請求項7】
前記非磁性材部は、前記径方向における内側の端部である非磁性内端部を有し、
前記磁性材部は、前記径方向における外側の端部である磁性外端部であって、前記非磁性内端部に対して前記第1本体部とは反対側に位置する共に、前記非磁性内端部に接触する磁性外端部を有する、
請求項1または2に記載の磁気ギア。
【請求項8】
前記第1継鉄は、前記軸方向に積層される複数の鋼板を含み、
各々の前記鋼板は、
前記複数の第1磁石がそれぞれ内側に配置される複数の開口縁部と、
前記複数の開口縁部の各々よりも前記径方向の外側に位置する被覆部と、
を有し、
前記非磁性材部は、最も前記エンドプレート側に位置する前記鋼板の前記被覆部に接触する接触部を有する、
請求項1に記載の磁気ギア。
【請求項9】
前記径方向において、前記接触部の外端は、前記被覆部の外端と同じ位置、または、前記被覆部の前記外端よりも内側となる位置に配置される、
請求項8に記載の磁気ギア。
【請求項10】
前記非磁性材部の前記接触部は、前記被覆部に接触する接触面であって、前記磁性材部よりも前記軸方向において前記第1本体部の前記端面側に位置する接触面を有する、
請求項8または9に記載の磁気ギア。
【請求項11】
前記非磁性材部を形成する前記非磁性材料は、非導電性を有する、
請求項1または2に記載の磁気ギア。
【請求項12】
請求項1または2に記載の磁気ギアと、
前記第2磁石を支持する第2継鉄に設けられたコイルと、
外部回転機器と前記磁気ギアとの間でトルクを伝達するための回転軸と、
を備える磁気ギアード電気機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、磁気ギア、および、磁気ギアード電気機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気的なトルクを伝達するように構成された磁気ギアが知られている。例えば、特許文献1は磁気ギアが組み込まれた磁気ギアード電気機械を開示する。この磁気ギアード電気機械は、径方向内側から順に、複数の永久磁石を支持する内部回転子、複数の磁極片を含む磁極片ユニット、および、固定子を備える。固定子には、複数の巻線と複数の固定子磁石とが設けられる。同文献で例示される磁極片ユニットは、内部回転子の外周側において回転する外部回転子として機能する。巻線で流れる三相交流に応じて生じる回転磁界によって内部回転子が回転すると、磁極片は内部回転子と固定子との間の磁束を変調する。変調された磁場と固定子磁石の磁場とによって、磁極片ユニットは回転する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
磁気ギアの作動時、軸方向に流れる磁束が漏れ磁束として磁極片を通過すると、磁極片では渦電流が流れ、渦電流損失が発生する。漏れ磁束は、磁極片ユニットを構成する別の部材にも流れ得る。例えば磁極片ユニットに、内部回転子と軸方向に対向する対向部材が設けられる構成において、漏れ磁束が対向部材を通過すると、同部材においても渦電流損失が発生し得る。特に、対向部材がベアリングを介して磁気ギアの回転軸に連結される構成においては、渦電流の発生に伴って対向部材が昇温すると、ベアリングの温度が許容温度を超えることも懸念される。従って、磁極片ユニットにおける渦電流損失を抑制することが求められる。
【0005】
本開示の目的は、磁極片ユニットにおける渦電流損失を抑制した磁気ギア、および、磁気ギアード電気機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の少なくとも一実施形態に係る磁気ギアは、
軸線に対して周方向に並ぶ複数の第1磁石と前記複数の第1磁石を支持する第1継鉄とを有する第1本体部を含む第1継鉄ユニットと、
前記第1継鉄ユニットの外周側において前記周方向に並ぶ複数の第2磁石を含む第2継鉄ユニットと、
前記第1継鉄ユニットと前記第2継鉄ユニットとの間において前記周方向に並ぶ複数の磁極片を含む磁極片ユニットと、
を備える磁気ギアであって、
前記磁極片ユニットは、前記複数の磁極片の各々の端部に連結される連結部と、前記連結部から径方向の内側に向かって延在する径方向延在部とを有する磁極片支持体をさらに含み、
前記第1継鉄ユニットは、前記第1本体部における軸方向の端面に配置されるエンドプレートであって、前記径方向延在部と前記軸方向において所定の隙間を有して対向するエンドプレートをさらに含み、
前記エンドプレートは、
磁性材料によって形成される磁性材部と、
非磁性材料によって形成される非磁性材部であって、前記磁性材部よりも前記径方向における外側に配置される非磁性材部と、
を有する。
【0007】
本開示の少なくとも一実施形態に係る磁気ギアード電気機械は、
上記磁気ギアと、
前記第2磁石を支持する第2継鉄に設けられたコイルと、
外部回転機器と前記磁気ギアとの間でトルクを伝達するための回転軸と、
を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、磁極片ユニットにおける渦電流損失を抑制した磁気ギア、および、磁気ギアード電気機械を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2A】磁気ギアの概略的な内部構造の一例を示す概略図。
【
図2B】磁気ギアの概略的な内部構造の他の例を示す概略図。
【
図3】一実施形態に係る磁気ギアの内部構造の詳細を示す概略図。
【
図4】シミュレーションによって求められた渦電流損失を示す概略的なグラフ。
【
図6】寸法Lおよび距離Rと損失割合との関係を示す概略的なグラフ。
【
図7】寸法Dおよび距離Sと損失割合との関係を示す概略的なグラフ。
【
図8】一実施形態に係る第1継鉄ユニットの軸方向における一端部を示す概略図。
【
図9】軸方向視における一実施形態の鋼板を示す概略図。
【
図10A】一実施形態に係る磁気ギアード電気機械(磁気ギアード発電機)の概略図。
【
図10B】他の実施形態に係る磁気ギアード電気機械(磁気ギアード発電機)の概略図。
【
図10C】一実施形態に係る磁気ギアード電気機械(磁気ギアードモータ)の概略図。
【
図10D】他の実施形態に係る磁気ギアード電気機械(磁気ギアードモータ)の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0011】
<1.磁気ギア5の概要>
図1A、
図1Bは、本開示の幾つかの実施形態に係る磁気ギア5の概略図である。以下の説明においては、「軸方向」は磁気ギア5の軸線Qに平行な方向であり、「径方向」は磁気ギア5の軸線Qと直交する方向であり、「周方向」は磁気ギア5の軸線Qを基準とした周方向である。磁気ギア5は後述の外部回転機器との間で動力を伝達するための回転軸Aを備え、この回転軸Aの軸線は上記の軸線Qと一致する。
【0012】
図1A、
図1Bで例示される磁気ギア5は、第1継鉄ユニット10、磁極片ユニット30、および、第2継鉄ユニット20を備える。これら3つのユニットはいずれも軸方向に延在する。
【0013】
第1継鉄ユニット10の構成要素である第1本体部11は、軸線Qに対して周方向に複数の第1磁石19と、複数の第1磁石19を支持する第1継鉄15とを有する。第2継鉄ユニット20の構成要素である第2本体部21は、周方向に並ぶ複数の第2磁石29と、複数の第2磁石29を支持する第2継鉄25とを有する。磁極片ユニット30は、複数の磁極片50と、一対の磁極片支持体37とを含む。複数の磁極片50は第1継鉄ユニット10と第2継鉄ユニット20との間において周方向に並ぶ。一対の磁極片支持体37は、複数の磁極片50の各々の軸方向における両端にそれぞれ連結される。複数の磁極片50の各々は一例として、軸方向に積層された複数の電磁鋼板150を有する(
図3参照)。本例の磁極片ユニット30は、複数の磁極片50をそれぞれ周方向において挟む複数のホルダ(図示外)をさらに備える。そして、複数のホルダの軸方向における両端も、それぞれ一対の磁極片支持体37に連結される。なお、複数のホルダは円環部材を構成してもよい。さらに幾つかの実施形態では、第2磁石29の個数は磁極片50の個数よりも多く、磁極片50の個数は第1磁石19の個数よりも多い。また、第1磁石19の周方向長さは第2磁石29の周方向長さよりも長い。
【0014】
本開示の磁気ギア5では、第1継鉄ユニット10、第2継鉄ユニット20、または、磁極片ユニット30のいずれか1つは固定子として機能し、残る2つは回転子として機能する。以下、第2継鉄ユニット20が固定子として機能する磁気ギア5A(5)と、磁極片ユニット30が固定子として機能する磁気ギア5B(5)を順に説明する。
【0015】
<1-1.一実施形態に係る磁気ギア5A(5)>
図1Aで例示される磁気ギア5A(5)は、ベース101に設置されてもよいハウジング98を備える。同図の例では、第2継鉄ユニット20が固定子として機能し、回転軸Aは、互いに同軸な第1回転軸A1と第2回転軸A2とを含む。ハウジング98は、入力軸として機能してもよい第1回転軸A1を回転可能に支持する。一対の磁極片支持体37のうち一方は第1回転軸A1を介して連結されており、他方は第2回転軸A2にベアリングB1を介して連結される。従って、同図で例示される磁極片ユニット30は、第1回転軸A1と共に回転する回転子として機能する。出力軸として機能してもよい第2回転軸A2は、一対の磁極片支持体37の間に配置される第1継鉄ユニット10を支持する。従って、同図で例示される第1継鉄ユニット10は、第2回転軸A2と共に回転する回転子として機能する。第2回転軸A2は、ベアリングを介してハウジング98によって回転可能に支持される。第2回転軸A2の一端部はベアリングを介して第1回転軸A1に連結されてもよいし、第1回転軸A1とは非連結であってもよい。
【0016】
磁気ギア5Aは例えば以下のように作動する。入力軸としての第1回転軸A1が磁極片ユニット30と共に回転すると、複数の磁極片50と、複数の第1磁石19および複数の第2磁石29との相対的な位置関係が変化する。これにより、第1継鉄ユニット10と第2継鉄ユニット20の間の磁束が変調され、変調された磁場から第1磁石19が磁力を受けて第1継鉄ユニット10が回転する。結果、出力軸としての第2回転軸A2は回転する。
【0017】
上記の磁気ギア5Aにおいては、第2回転軸A2が入力軸として機能し、第1回転軸A1が出力軸として機能してもよい。この場合であっても、第1継鉄ユニット10が第2回転軸A2と共に回転すると、複数の磁極片50と複数の第1磁石19との相対的な位置関係が変化する。これにより、第1継鉄ユニット10と第2継鉄ユニット20の間の磁束が変調され、変調された磁場から磁極片50が磁力を受けて磁極片ユニット30が回転する。結果、出力軸としての第1回転軸A1は回転する。
【0018】
上記の磁気ギア5Aでは、磁極片ユニット30の磁極片50の磁極数をNL、第1継鉄ユニット10の第1磁石19における磁極の対の数(極対数)をNH、第2継鉄ユニット20の第2磁石29における磁極の対の数(極対数)をNSとした場合、NL=NH+NSが成立する。この関係式が成立する場合、磁極片ユニット30に対する第1継鉄ユニット10の回転数の比は、NL/NHで表される。本例では、NL/NHが1よりも大きく、第1継鉄ユニット10は高速ロータとして機能し、磁極片ユニット30は低速ロータとして機能する。なお、磁極片50の磁極数NLは、第2磁石29の極対数NSよりも少ない。
【0019】
<1-2.他の実施形態に係る磁気ギア5B(5)>
図1Bで例示される他の実施形態に係る磁気ギア5B(5)では、磁極片ユニット30が固定子として機能し、第1継鉄ユニット10と第2継鉄ユニット20が回転子として機能する。回転軸Aは、互いに同軸な第1回転軸A1と第2回転軸A2とを含む。磁気ギア5Bは、ベース101に設置されてもよいハウジング96を備え、ハウジング96によって磁極片ユニット30は支持される。一対の磁極片支持体37はこのハウジング96と一体的に構成されてもよい。本例の一対の磁極片支持体37の一方は、出力軸として機能してもよい第2回転軸A2を、ベアリングB1を介して回転可能に支持する。
【0020】
入力軸として機能してもよい第1回転軸A1は、図示外の支持ユニットによって回転可能に支持されると共に、連結部材95を介して第2継鉄ユニット20に連結される。第2継鉄ユニット20は磁極片ユニット30にベアリングを介して連結されてもよい。なお、第2回転軸A2は第1回転軸A1にベアリングを介して連結されてもよいし、第1回転軸A1とは非連結であってもよい。
【0021】
磁気ギア5Bは、例えば以下のように作動する。入力軸としての第1回転軸A1が第2継鉄ユニット20と共に回転すると、複数の磁極片50と複数の第2磁石29との相対的な位置関係が変化する。これにより、第1継鉄ユニット10と第2継鉄ユニット20の間の磁束が変調され、変調された磁場から第1磁石19が磁力を受けて第1継鉄ユニット10が回転する。結果、出力軸としての第2回転軸A2は回転する。
【0022】
上記の磁気ギア5Bにおいては、第2回転軸A2が入力軸として機能し、第1回転軸A1が出力軸として機能してもよい。この場合であっても、第1継鉄ユニット10が第2回転軸A2と共に回転すると、複数の磁極片50と複数の第1磁石19との相対的な位置関係が変化する。これにより、第1継鉄ユニット10と第2継鉄ユニット20の間の磁束が変調され、変調された磁場から第2磁石29が磁力を受けて第2継鉄ユニット20が回転する。結果、出力軸としての第1回転軸A1は回転する。
【0023】
<1-3.磁気ギア5の補足>
図1A、
図1Bで例示される磁気ギア5は、後述の磁気ギアード電気機械1(より詳細には磁気ギアード発電機2または磁気ギアードモータ3)に組み込まれてもよい(
図10A~
図10D参照)。磁気ギア5が磁気ギアード発電機2に組み込まれる場合、回転軸Aは、出力軸として機能する第1回転軸A1または第2回転軸A2のいずれかを含まなくてもよい。また、磁気ギア5が磁気ギアードモータ3に組み込まれる場合、回転軸Aは、入力軸として機能する第1回転軸A1または第2回転軸A2のいずれかを含まなくてもよい。さらに、磁気ギア5が磁気ギアード発電機2または磁気ギアードモータ3のいずれに組み込まれる場合であっても、回転軸Aは単一の軸部材によって構成されてもよい。詳細な図示は省略するが当該実施形態では、1本の回転軸Aがハウジング98(
図1A参照)により回転可能に支持されると共に、第1継鉄ユニット10に回転可能に連結されてもよく、回転軸Aの外周部には一対の磁極片支持体37がそれぞれ固定されてもよい。この場合、第1継鉄ユニット10と磁極片ユニット30が回転子として機能し、第2継鉄ユニット20が固定子として機能する。
【0024】
<2.磁気ギア5の内部構造の概要>
図2A、
図2Bは、本開示の幾つかの実施形態に係る磁気ギア5の内部構造を示す概略図である。概略図としての
図2A、
図2Bでは、周方向を直線的に図示している。磁気ギア5の内部構造においては、軸方向に延在する各磁極片50は、第1隙間G1をあけて第1継鉄ユニット10と対向し、第2隙間G2をあけて第2継鉄ユニット20と対向する。本開示の幾つかの実施形態では、磁極片50の外周側表面または内周側表面の少なくとも一方が磁極片カバー(図示外)によって覆われてもよい。磁極片カバーを形成する材料は非磁性材料であることが好ましく、非磁性材料かつ非導電性材料であることがさらに好ましい。磁極片カバーが、磁極片50の外周側表面を覆う外磁極片カバーと、磁極片50の内周側表面を覆う内磁極片カバーとを含む実施形態においては、各磁極片50は、第1隙間G1および内磁極片カバーをあけて第1継鉄ユニット10と対向し、且つ、第2隙間G2および外磁極片カバーをあけて第2継鉄ユニット20と対向する。なお、磁極片カバーは、磁極片50を覆うだけでなく、上述のホルダの外周側表面または内周側表面の少なくとも一方を覆ってもよい。
【0025】
<2-1.磁気ギア5の概略的な内部構造の一例>
図2Aで示される第1継鉄ユニット10A(10)の第1本体部11A(11)は、複数の第1磁石19、および、複数の第1磁石19を支持する第1継鉄15A(15)を有する。第1本体部11A(11)は、複数の第1磁石19が第1継鉄15の表面に設けられる表面磁石型(SPM;Surface Permanent Magnet)の構造を有する。従って、複数の第1磁石19が第1隙間G1をあけて(または第1隙間G1および内磁極片カバーをあけて)、複数の磁極片50と対向する。
【0026】
同図で示される第2継鉄ユニット20の第2本体部21は、複数の第2磁石29、および、複数の第2磁石29を支持する第2継鉄25を有する。第2継鉄25は、周方向に延在するステータコア27と、ステータコア27から径方向内側に突出する複数の歯28とを有する。複数の歯28は周方向に間隔をあけて並び、複数の歯28の先端側に複数の第2磁石29が配置される。なお、詳細な図示は省略するが、第2継鉄25は複数の歯28を有さなくてもよい。この場合、複数の第2磁石29は、ステータコア27の内周面に取り付けられてもよい。
【0027】
<2-2.磁気ギア5の概略的な内部構造の他の例>
図2Bで示される第1継鉄ユニット10B(10)の第1本体部11B(11)は、複数の第1磁石19、および、複数の第1磁石19を支持する第1継鉄15B(15)を有する。第1本体部11B(11)は、複数の第1磁石19が第1継鉄15の内側に配置される埋込磁石型(IPM;Interior Permanent Magnet)の構造を有する。従って、第1継鉄15が、第1隙間G1をあけて(または第1隙間G1および上述の内磁極片カバーをあけて)、複数の磁極片50と対向する。
図2Bで示される第2継鉄ユニット20は、
図2Aで示される第2継鉄ユニット20と同じである。
図2Bで示される第2継鉄ユニット20は、複数の歯28を有さなくてもよい。
【0028】
<3.磁気ギア5の内部構造の詳細>
図3~
図9を参照し、本開示の幾つかの実施形態に係る磁気ギア5の内部構造の詳細を例示する。
図3は、一実施形態に係る磁気ギア5の内部構造の詳細を示す概略図であり、埋込磁石型の構成を有する第1継鉄15が例示される。以下では、磁気ギア5の構成のうちで、軸方向の一方側における構成を主として説明する。
【0029】
図3で例示されるように、磁極片ユニット30の磁極片支持体37は、複数の磁極片50の各々の端部に連結される連結部35と、連結部35から径方向の内側に向かって延在する径方向延在部36とを有する。連結部35と径方向延在部36は、同一の材料によって形成されてもよいし、別々の材料によって形成されてもよい。同図の例では径方向延在部36の径方向における内側の端部は、第1回転軸A1に連結される。なお、径方向延在部36の内側の端部は、第2回転軸A2にベアリングB1を介して連結されてもよい(
図1A参照)。
【0030】
第1継鉄ユニット10はエンドプレート17を含む。エンドプレート17は、軸方向における第1本体部11の端面11Sに配置されている。より詳細には、エンドプレート17の少なくとも一部は、第1本体部11の端面11Sに対向して接触している。また、エンドプレート17は、軸方向において所定の隙間G3をあけて径方向延在部36と対向する。エンドプレート17は、磁性材料によって形成される磁性材部18と、非磁性材料によって形成される非磁性材部16とを有する。磁性材料は例えば鋼板などである。非磁性材料の金属としては、ステンレス鋼およびアルミニウムなどが挙げられる。非磁性材料は金属であることに限定されず、例えば、炭素繊維強化プラスチックまたはガラス繊維強化プラスチックなどのプラスチックであってもよい。炭素繊維強化プラスチック、および、ガラス繊維強化プラスチックは、非磁性材料であると共に非導電性材料でもある。即ち、非磁性材部16を形成する非磁性材料は非導電性を有してもよい。非磁性材部16は、磁性材部18よりも径方向における外側に配置されており、径方向におけるエンドプレート17の外側の端部を構成する。なお、
図3のエンドプレート17には、図面を見やすくする都合、ハッチングが施されていない(
図4も同様)。
【0031】
上記構成が採用されることによる利点は以下の通りである。磁気ギア5の作動時、第1継鉄ユニット10と第2継鉄ユニット20の間において、漏れ磁束が発生する。漏れ磁束は、例えば、複数の磁極片50の各々の一端部を軸方向に流れる磁束である(漏れ磁束は、矢印C1で例示される向きを流れるが、同矢印の向きに限定されることはない)。本開示の磁気ギア5では、漏れ磁束の少なくとも一部がエンドプレート17の磁性材部18に誘導される(例えば矢C2)。これにより、漏れ磁束が磁極片支持体37に流れるのを抑制でき、磁極片支持体37における渦電流損失を低減できる。
さらに、磁性材部18よりも径方向外側には非磁性材部16が配置され、該非磁性材部16が磁極片50の軸方向における一端部に近接する。磁束は非磁性材部16を避けるようにして流れる傾向を有するので、磁極片50を軸方向に通過する漏れ磁束の発生自体を低減することができる。
以上より、漏れ磁束の発生による磁極片ユニット30での渦電流損失を抑制した磁気ギア5が実現される。また、径方向延在部36の内側の端部がベアリングB1に連結される実施形態においては(
図1A、
図1B参照)、磁極片ユニット30における渦電流損失の低減により、径方向延在部36の温度上昇を抑制できる結果、ベアリングB1の温度が許容温度を超えるのを抑制できる。
【0032】
なお、第1継鉄ユニット10が表面磁石型の構成を有する実施形態においても、同様の理由によって、上記利点は得られる。また、径方向延在部36がベアリングB1に連結されない実施形態においても、磁極片ユニット30における渦電流損失を抑制することが可能となる。
【0033】
磁性材部18と、磁性材部18よりも径方向外側に配置される非磁性材部16とが配置される構成によって上記利点が得られるのは、シミュレーションによっても確認できる。
図4は、一実施形態に係る磁気ギア5、第1サンプル、および、第2サンプルのそれぞれにおける渦電流損失を示す。第1サンプルは、磁気ギア5のエンドプレート17が、非磁性材部16の材料によってのみ構成される第1エンドプレートに置き換わった磁気ギアである。第2サンプルは、磁気ギア5のエンドプレート17が、軸方向に並ぶ磁性材部と非磁性材部を含む第2エンドプレートに置き換わった磁気ギアである。第2エンドプレートにおいて、磁性材部は非磁性材部よりも磁極片支持体37側に位置する。なお、第1エンドプレートと第2エンドプレートは、エンドプレート17と同サイズである。
【0034】
図4では、総計としての渦電流損失が示されると共に、総渦電流損失に占める、磁極片ユニット30における渦電流損失がハッチングによって示されている。同図で示される通り、本実施形態の磁気ギア5は、第1サンプルに比べて磁極片ユニット30における渦電流損失を低減できると共に、全体の渦電流損失を低減することができる。また、本実施形態の磁気ギア5は、第2サンプルに比べて磁極片ユニット30における渦電流損失を増大させてしまうが、全体の渦電流損失を低減することができる。従って、シミュレーション結果によれば、磁気ギア5は、全体の渦電流損失と、磁極片ユニット30の渦電流損失との双方をバランスよく低減させることができることが了解される。
【0035】
なお、上述したように、非磁性材部16を形成する非磁性材料は、非導電性を有してもよい。非磁性材部16が非磁性材であったとしても漏れ磁束は非磁性材部16を鎖交する。この点、上記構成によれば、非磁性材部16を形成する非磁性材料を非導電性とすることで非磁性材部16の渦電流損失を抑制できる。従って、磁気ギア5は全体の渦電流損失を抑制できる。
【0036】
図5は、本開示の一実施形態に係るエンドプレート17の概略図である。同図のエンドプレート17は、磁性材部18と非磁性材部16が互いに直接的に接触する構成を有する。磁性材部18と非磁性材部16との境界33は、一例として軸方向と平行である。境界33は、複数の第1磁石19の各々の内周面19Aよりも径方向において外側に位置する。上記構成によれば、磁性材部18の径方向における外側の端部である磁性外端部181が、磁極片50に近接する。これにより、磁極片50において発生する漏れ磁束が磁性材部18に誘導され易くなり、磁極片ユニット30での渦電流損失をさらに抑制できる。
【0037】
なお、他の実施形態では、境界33は軸方向と平行である代わりに、例えば、ジグザグ状または階段状であってもよい。この場合、境界33全体が、内周面19Aよりも径方向において外側に位置すればよい。また、磁性材部18と非磁性材部16の間には別の部材が介在してもよい。この場合、該別の部材が境界33に該当する。さらに、第1継鉄ユニット10は表面磁石型の構成を有していてもよい。いずれの実施形態においても、上記利点は得られる。
【0038】
本開示の幾つかの実施形態では、径方向における非磁性材部16の寸法をL、磁極片50と第1継鉄ユニット10との間の径方向における距離(最短距離)をRとした場合、磁気ギア5はR≦L≦6×Rの関係を満たす。磁気ギア5は、2×R≦L≦4×Rの関係を満たすことがさらに好ましい。なお、第1継鉄15が埋込磁石型の構造を有する
図5の実施形態における距離Rは、磁極片50と第1継鉄15との間の径方向における最短距離である。第1継鉄15が表面磁石型の構造を有する
図2Aの実施形態における距離Rは、磁極片50と第1磁石19との間の径方向における最短距離である。
上記構成によれば、L≦6×Rの関係(好ましくはL≦4×Rの関係)が満たされることで、磁性材部18が磁極片50から離れすぎることが回避され、磁極片50と磁性材部18との間における磁束の短絡を抑制できる。また、L≧Rの関係(好ましくはL≧2×Rの関係)が満たされることで、非磁性材部16の最低限の大きさを確保することができ、磁極片50における漏れ磁束の発生自体を抑制することができる。
【0039】
R≦L≦6×Rの関係が満たされることによる渦電流損失の低減効果は、シミュレーションによっても確認できる。
図6は、寸法Lおよび距離Rと損失割合との関係を示す概略的なグラフである。同グラフの横軸は、距離Rに対する非磁性材部16の寸法Lの比(即ち、L/R)を示す。また、同グラフの縦軸は磁気ギア5(より具体的には後述の磁気ギアードモータ3)における全体の損失の割合を示す。この全体の損失には、磁気ギア5における全体の渦電流損失など、磁気ギア5における全体の鉄損が含まれる。また、同グラフでは、非磁性材部16が設けられない構成(即ちL=0となる構成)における全体の損失が100%である。なお本シミュレーションでは、L=0は、エンドプレート17が磁性材部18のみによって構成される実施形態を意味する。グラフでは、シミュレーションによって算出された4つの点に基づいて予測されるL/Rと損失割合との関係が、太い実線によって示されている。
【0040】
同グラフによれば、1≦L/R≦6の範囲では、全体の損失は約5%以上低減する。よって、磁気ギア5はR≦L≦6×Rの関係を満たせば、全体の損失が低減することが了解される。今回のシミュレーションによれば、全体の損失の低減は、磁極片支持体37における渦電流損失の低減によってもたらされており、磁気ギア5がR≦L≦6×Rの関係を満たせば、磁極片ユニット30における渦電流損失が低減することが了解される。また、2≦L/R≦4の範囲では、全体の損失は約8%以上低減する。よって、磁気ギア5が2×R≦L≦4×Rの関係を満たせば、磁極片ユニット30における渦電流損失がさらに低減することが了解される。なお、同グラフにおいて、L/Rが6を超えるほど全体の損失の低減効果がなくなるのは、非磁性材部16が径方向に長くなり過ぎる結果、磁極片50と磁性材部18とが互いに離れ過ぎてしまい、磁極片50と磁性材部18との間における磁束が短絡して磁極片ユニット30における渦電流損失が増加するためである。
【0041】
図5に戻り本開示の幾つかの実施形態では、磁性材部18の軸方向における寸法をD、径方向延在部36と第1本体部11の軸方向における距離(最短距離)をSとした場合、磁気ギア5はD≧0.15×Sの関係を満たす。より具体的な一例として、磁気ギア5は、0.15×S≦D<Sの関係を満たす。D<Sの関係が満たされることで、エンドプレート17と磁極片支持体37との接触は回避される。上記構成によれば、D≧0.15×Sの関係が満たされることで、磁性材部18が軸方向において短くなりすぎることが回避され、磁極片50と磁性材部18との間において磁束が短絡するのを抑制できる。
【0042】
D≧0.15×Sの関係が満たされることによる渦電流損失の低減効果は、シミュレーションによっても確認できる。
図7は、寸法Dおよび距離Sと損失割合との関係を示す概略的なグラフである。同グラフの横軸は、距離Sに対する磁性材部18の寸法Dの比(即ち、D/S)を示す。また、同グラフの縦軸は、
図6の縦軸と同様であり、磁気ギア5(より具体的には後述の磁気ギアードモータ3)における全体の損失の割合を示す。また、磁性材部18が設けられない構成(即ちD=0となる構成)における全体の損失が100%である。なお本シミュレーションにおいて、D=0は、エンドプレート17が設けられない実施形態を意味する。グラフでは、シミュレーションによって算出された4つの点を繋ぐ太い実線が便宜的に図示されている。同グラフによれば、D/Sが0.15以上であれば、全体の損失が10%以上低減する。今回のシミュレーションによれば、全体の損失の10%以上の低減は、磁極片支持体37における渦電流損失の低減によってもたらされており、磁気ギア5がD≧0.15×Sの関係を満たせば、磁極片ユニット30における渦電流損失がさらに低減することが了解される。
【0043】
図4に戻り、本開示の幾つかの実施形態では、磁極片ユニット30の径方向延在部36は非磁性材料によって形成される。非磁性材料としての具体的な材料は既述の通りである。上記構成によれば、径方向延在部36が非磁性材料であることで、磁極片50から径方向延在部36に漏れ磁束が流れるのをさらに抑制でき、磁極片ユニット30の渦電流損失を抑制できる。本例の径方向延在部36は、非磁性材料かつ非導電性材料によって形成される。非磁性材料かつ非導電性材料としての具体的な材料は既述の通りである。上記構成によれば、径方向延在部36が非磁性材料かつ非導電性材料であることで、磁極片50から径方向延在部36に漏れ磁束が流れるのをさらに抑制でき、磁極片ユニット30の渦電流損失を抑制できる。
【0044】
図8は、本開示の一実施形態に係る第1継鉄ユニット10の軸方向における一端部を示す概略図である。非磁性材部16は、基端部193と、基端部193から径方向の内側に突出する非磁性内端部191とを有する。非磁性内端部191は、非磁性材部16のうちで径方向における内側の端部である。非磁性内端部191の軸方向長さは基端部193の軸方向長さよりも短い。磁性材部18は、基端部183と、基端部183から径方向の外側に突出する磁性外端部181とを有する。基端部183は、隙間G4をあけて第1本体部11と軸方向に対向する。同図においては、エンドプレート17と第1本体部11との間にある隙間G4の径方向外側部は、非磁性材部16によって閉鎖されている。磁性外端部181は、磁性材部18のうちで径方向における外側の端部である。磁性外端部181の軸方向長さは基端部183の軸方向長さよりも短い。磁性外端部181と非磁性内端部191は軸方向に並ぶように配置される。より具体的には、磁性外端部181は、非磁性内端部191に対して第1本体部11とは反対側に位置すると共に、非磁性内端部191に接触する。これにより、非磁性内端部191は第1本体部11の端面11Sに対向して接触する。上記構成によれば、非磁性内端部191が第1本体部11に対向することができるので、第1本体部11(特に第1本体部11の径方向外側端部)が磁極片支持体37側に変形することを抑制できる。
なお、非磁性内端部191は、端面11Sに接触する代わりに、隙間G4をあけて対向してもよい。この場合、隙間G4の径方向外側部は開放されており、且つ、非磁性内端部191と端面11Sとの間の距離は、磁性材部18と端面11Sとの間の距離よりも短い。この場合でも、第1本体部11が磁極片支持体37側に変形を開始した直後に、非磁性内端部191と第1本体部11が接触するため、第1本体部11の変形を抑制する利点は得られる。
【0045】
第1継鉄15は、軸方向に積層される複数の鋼板151を含む。
図9は、軸方向視における一実施形態に係る鋼板151を示す概略図である。各々の鋼板151は、複数の第1磁石19がそれぞれ内側に配置される複数の開口縁部153と、複数の開口縁部153よりも径方向の外側に位置する被覆部155とを有する。被覆部155は周方向に延在し、複数の開口縁部153の各々に連接する。
図9では、複数の開口縁部153の1つのみを図示している。
図8に戻り、非磁性材部16は接触部196を有し、接触部196は、最もエンドプレート17側に位置する鋼板151の被覆部155に接触する。
【0046】
開口縁部153の内側には複数の第1磁石19の各々が配置される空間が形成されるため、開口縁部153よりも径方向外側に位置する被覆部155は、軸方向において剛性が低い。従って、複数の鋼板151のうち最もエンドプレート17側に位置する被覆部155は、軸方向においてエンドプレート17側に変形しやすい。この点、上記構成によれば、非磁性材部16の接触部196が被覆部155に接触するため、被覆部155の変形を抑制することができる。
【0047】
本開示の幾つかの実施形態では、接触部196は径方向における外端196Aを有する。外端196Aは、径方向において、被覆部155の外端155Aと同じ位置、または、被覆部155の外端155Aよりも内側となる位置に配置される。上記構成によれば、接触部196の外端196Aが、第1本体部11よりも径方向の外側に位置しないので、接触部196が磁極片ユニット30(より具体的には磁極片50または連結部35)に接触するのを抑制できる。これにより、磁気ギア5の作動時、エンドプレート17または磁極片ユニット30が破損するのを抑制できる。
【0048】
本開示の幾つかの実施形態では、非磁性材部16の接触部196は、被覆部155に接触する接触面199を有する。接触面199は、軸方向において非磁性材部16よりも第1本体部11の端面11S側に位置する。上記構成によれば、接触面199が第1本体部11の端面11S(より具体的には被覆部155を構成する端面11S)に積極的に接触することができる。これにより、被覆部155の変形をより効果的に抑制することができる。
【0049】
<4.磁気ギア5が組み込まれる磁気ギアード電気機械1>
図10A~
図10Dを参照して、磁気ギア5が組み込まれる磁気ギアード電気機械1を例示する。
図10A、
図10Bで例示される磁気ギアード電気機械1A、1B(1)は、外部回転機器の一例である原動機9からの入力によって駆動されて発電するように構成された磁気ギアード発電機2A、2B(2)である。磁気ギアード発電機2は、発電により生成された電力Pを例えば電力系統であってもよい電力供給先4に向けて供給するように構成される。
図10C、
図10Dで例示される磁気ギアード電気機械1C、1D(1)は、例えば電力系統であってもよい電力供給源6からの電力Pの供給を受けて、外部回転機器の一例である回転機械8を駆動するように構成される磁気ギアードモータ3A、3B(3)である。回転機械8は、例えば磁気ギアードモータ3の駆動によって走行する電動車両であってもよい。この場合、磁気ギアードモータ3の回転軸Aは、回転機械8の構成要素となる、電動車両のドライブシャフトに連結されてもよい。
図10A、
図10Cで例示される磁気ギアード電気機械1A、1Cには磁気ギア5A(
図1A参照)が組み込まれ、
図10B、
図10Dで例示される磁気ギアード電気機械1B、1Dには磁気ギア5B(
図1B参照)が組み込まれている。
【0050】
<4-1.磁気ギアード発電機2A、2B(2)>
磁気ギアード発電機2A、2B(2)は、磁気ギア5と、固定子巻線(電機子巻線)としてのコイル99とを備える。磁気ギアード発電機2Aのコイル99は、第2継鉄ユニット20に設けられる歯28に巻かれる。コイル99は電力供給先4と導通可能である。
【0051】
図10Aで例示される磁気ギアード発電機2Aは、例えば以下のように作動する。同図で入力軸として機能する第1回転軸A1に連結される原動機9が駆動すると、既述の原理により、第1継鉄ユニット10が回転する。結果、磁極片ユニット30と第1継鉄ユニット10の回転に伴って起こる電磁誘導によってコイル99に電流が発生する。これにより、磁気ギアード発電機2Aは発電することができる。
【0052】
図10Bで例示される磁気ギアード発電機2Bの作動原理は、磁気ギアード発電機2Aと類似する。同図で入力軸として機能する第2回転軸A2に連結される原動機9が駆動すると、第1継鉄ユニット10が回転し、既述の原理により、第2継鉄ユニット20が回転する。結果、第1継鉄ユニット10と第2継鉄ユニット20の回転に伴って起こる電磁誘導によってコイル99に電流が発生する。これにより、磁気ギアード発電機2Bは発電することができる。
【0053】
<4-2.磁気ギアードモータ3A、3B(3)>
磁気ギアードモータ3A、3B(3)は、磁気ギア5と、固定子巻線(電機子巻線)としてのコイル99とを備える。磁気ギアードモータ3A、3B(3)のコイル99は、第2継鉄ユニット20に設けられる歯28に巻かれる。コイル99は電力供給源6と導通可能である。
【0054】
図10Cで例示される磁気ギアードモータ3Aは、例えば以下のように作動する。コイル99の通電によって発生する回転磁界によって、第1継鉄ユニット10は付勢される。第1継鉄ユニット10が第2回転軸A2と共に回転すると、既述の原理により、磁極片ユニット30が回転する。同図の例において出力軸として機能する第1回転軸A1が回転機械8を駆動する。
【0055】
図10Dで例示される磁気ギアードモータ3Bの作動原理は、磁気ギアードモータ3Aと類似する。コイル99の通電によって発生する回転磁界によって、第2継鉄ユニット20は付勢される。第2継鉄ユニット20が第1回転軸A1と共に回転すると、既述の原理により、第1継鉄ユニット10が回転する。同図の例において出力軸として機能する第2回転軸A2が回転機械8を駆動する。
【0056】
なお、既述した通り、磁気ギアード発電機2は、出力軸として機能する第1回転軸A1または第2回転軸A2を備えなくてもよく、磁気ギアードモータ3は、入力軸として機能する第1回転軸A1または第2回転軸A2を備えなくてもよい。
【0057】
<5.まとめ>
上述した幾つかの実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握されるものである。
【0058】
1)本開示の少なくとも一実施形態に係る磁気ギア(5)は、
軸線(Q)に対して周方向に並ぶ複数の第1磁石(19)と前記複数の第1磁石を支持する第1継鉄(15)とを有する第1本体部(11)を含む第1継鉄ユニット(10)と、
前記第1継鉄ユニットの外周側において前記周方向に並ぶ複数の第2磁石(29)を含む第2継鉄ユニット(20)と、
前記第1継鉄ユニットと前記第2継鉄ユニットとの間において前記周方向に並ぶ複数の磁極片(50)を含む磁極片ユニット(30)と、
を備える磁気ギアであって、
前記磁極片ユニットは、前記複数の磁極片の各々の端部に連結される連結部(35)と、前記連結部から径方向の内側に向かって延在する径方向延在部(36)とを有する磁極片支持体(37)をさらに含み、
前記第1継鉄ユニットは、前記第1本体部における軸方向の端面に配置されるエンドプレートであって、前記径方向延在部と前記軸方向において所定の隙間(G3)をあけて対向するエンドプレート(17)をさらに含み、
前記エンドプレートは、
磁性材料によって形成される磁性材部(18)と、
非磁性材料によって形成される非磁性材部であって、前記磁性材部よりも前記径方向における外側に配置される非磁性材部(19)と、
を有する。
【0059】
上記1)の構成によれば、第1継鉄ユニットと第2継鉄ユニットの間において発生する漏れ磁束の少なくとも一部は、エンドプレートの磁性材部に誘導される。これにより、漏れ磁束が磁極片支持体を流れるのを抑制でき、磁極片支持体における渦電流損失を低減できる。さらに、磁性材部よりも径方向外側には非磁性材部が配置され、この非磁性材部が磁極片の軸方向における一端部に近接する。磁束は非磁性材部を避けるように流れる傾向を有するので、磁極片を軸方向に通過する漏れ磁束の発生自体を低減できる。以上より、漏れ磁束の発生による磁極片ユニットでの渦電流損失を抑制した磁気ギアが実現される。
【0060】
2)幾つかの実施形態では、上記1)に記載の磁気ギアであって、
前記磁性材部と前記非磁性材部との境界(33)は、各々の前記第1磁石の内周面(19A)よりも前記径方向において外側に位置する。
【0061】
上記2)の構成によれば、磁性材部が磁極片に近接する。これにより、磁極片において発生する漏れ磁束が磁性材部に誘導され易くなり、磁極片ユニットでの渦電流損失をさらに抑制できる。
【0062】
3)幾つかの実施形態では、上記1)または2)に記載の磁気ギアであって、
前記径方向における前記非磁性材部の寸法をL、前記磁極片と前記第1継鉄ユニットとの間の前記径方向における距離をRとした場合に、R≦L≦6×Rの関係を満たす。
【0063】
上記3)の構成によれば、L≦6×Rの関係が満たされることで、磁性材部から磁極片から離れすぎることが回避され、磁極片と磁性材部との間における磁束の短絡を抑制できる。また、R≦Lの関係が満たされることで、非磁性材部の最低限の大きさを確保することができ、磁極片における漏れ磁束の発生自体を抑制することができる。
【0064】
4)幾つかの実施形態では、上記1)から3)のいずれかに記載の磁気ギアであって、
前記磁性材部の前記軸方向における寸法をD、前記径方向延在部と前記第1本体部との間の前記軸方向における距離をSとした場合に、D≧0.15×Sの関係を満たす。
【0065】
上記4)の構成によれば、D≧0.15×Sの関係が満たされることで、磁性材部が軸方向において短くなりすぎることが回避され、磁極片と磁性材部との間において磁束が短絡するのを抑制できる。
【0066】
5)幾つかの実施形態では、上記1)から4)のいずれかに記載の磁気ギアであって、
前記径方向延在部は、非磁性材料によって形成される。
【0067】
上記5)の構成によれば、径方向延在部が非磁性材料であることで、磁極片から径方向延在部に漏れ磁束が流れるのをさらに抑制でき、磁極片ユニットの渦電流損失を抑制できる。
【0068】
6)幾つかの実施形態では、上記5)に記載の磁気ギアであって、
前記径方向延在部は、非導電性材料によって形成される。
【0069】
上記6)の構成によれば、径方向延在部が非導電性材料であることで、磁極片から径方向延在部に漏れ磁束が流れるのをさらに抑制でき、磁極片ユニットの渦電流損失を抑制できる。
【0070】
7)幾つかの実施形態では、上記1)から6)のいずれかに記載の磁気ギアであって、
前記非磁性材部は、前記径方向における内側の端部である非磁性内端部(191)を有し、
前記磁性材部は、前記径方向における外側の端部である磁性外端部(181)であって、前記非磁性内端部に対して前記第1本体部とは反対側に位置する共に、前記非磁性内端部に接触する磁性外端部(181)を有する。
【0071】
上記7)の構成によれば、非磁性内端部が第1本体部に対向することができるので、第1本体部が磁極片支持体側に変形することを抑制できる。
【0072】
8)幾つかの実施形態では、上記1)から7)のいずれかに記載の磁気ギアであって、
前記第1継鉄は、前記軸方向に積層される複数の鋼板(151)を含み、
各々の前記鋼板は、
前記複数の第1磁石がそれぞれ内側に配置される複数の開口縁部(153)と、
前記複数の開口縁部の各々よりも前記径方向の外側に位置する被覆部(155)と、
を有し、
前記非磁性材部は、最も前記エンドプレート側に位置する前記鋼板の前記被覆部に接触する接触部(196)を有する。
【0073】
開口縁部の内側は第1磁石が配置される空間が形成されるため、開口縁部よりも径方向外側に位置する被覆部は軸方向において剛性が低い。従って、複数の鋼板のうち最もエンドプレート側に位置する被覆部は、軸方向に変形しやすい。この点、上記8)の構成によれば、非磁性材部の接触部が被覆部に接触するため、被覆部の変形を抑制できる。
【0074】
9)幾つかの実施形態では、上記8)に記載の磁気ギアであって、
前記径方向において、前記接触部の外端(196A)は、前記被覆部の外端と同じ位置、または、前記被覆部の前記外端よりも内側となる位置に配置される。
【0075】
上記9)の構成によれば、接触部の外端が、第1本体部よりも径方向の外側に位置しないので、接触部が磁極片ユニットに接触するのを抑制できる。これにより、磁気ギアの作動時、エンドプレートまたは磁極片ユニットが破損するのを抑制できる。
【0076】
10)幾つかの実施形態では、上記8)または9)に記載の磁気ギアであって、
前記非磁性材部の前記接触部は、前記被覆部に接触する接触面(199)であって、前記磁性材部よりも前記軸方向において前記第1本体部の前記端面側に位置する接触面を有する。
【0077】
上記10)の構成によれば、接触面が第1本体部に積極的に接触することができる。これにより、被覆部の変形をより効果的に抑制できる。
【0078】
11)幾つかの実施形態では、上記1)から10)のいずれかに記載の磁気ギアであって、
前記非磁性材部を形成する前記非磁性材料は、非導電性を有する。
【0079】
上記11)の構成によれば、非磁性材によって形成される非磁性材部を漏れ磁束が鎖交する場合であっても、非磁性材部の渦電流損失を抑制できる。
【0080】
12)本開示の少なくとも一実施形態に係る磁気ギアード電気機械(1)は、
上記1)~11)のいずれかの磁気ギア(5)と、
前記第2磁石を支持する第2継鉄(25)に設けられたコイル(99)と、
外部回転機器(回転機械8、原動機9)と前記磁気ギアとの間でトルクを伝達するための回転軸(A)と、
を備える。
【0081】
上記12)の構成によれば、上記1)と同様の理由により、磁極片ユニットにおける渦電流損失を抑制した磁気ギアード電気機械が実現される。
【0082】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0083】
本明細書において、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
また、本明細書において、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
また、本明細書において、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【符号の説明】
【0084】
1 :磁気ギアード電気機械
5 :磁気ギア
10 :第1継鉄ユニット
11 :第1本体部
11S :端面
15 :第1継鉄
16 :非磁性材部
17 :エンドプレート
18 :磁性材部
19 :第1磁石
19A :内周面
20 :第2継鉄ユニット
25 :第2継鉄
29 :第2磁石
30 :磁極片ユニット
33 :境界
35 :連結部
36 :径方向延在部
37 :磁極片支持体
50 :磁極片
99 :コイル
151 :鋼板
153 :開口縁部
155 :被覆部
155A :外端
181 :磁性外端部
191 :非磁性内端部
196 :接触部
196A :外端
199 :接触面
D :寸法
G1 :第1隙間
L :寸法
Q :軸線
R :距離
S :距離