(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064573
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】電源システム
(51)【国際特許分類】
H02M 3/00 20060101AFI20240507BHJP
【FI】
H02M3/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173264
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(74)【代理人】
【識別番号】100171583
【弁理士】
【氏名又は名称】梅景 篤
(72)【発明者】
【氏名】秋田 義文
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA01
5H730AA15
5H730BB81
5H730BB88
5H730EE60
5H730FG12
(57)【要約】
【課題】大型化を抑制可能な電源システムを提供すること。
【解決手段】電源システム1は、外部電源から直流電力が供給される配線L1と、配線L1に接続されるバッテリ2と、配線L1に供給される直流電力を異なる電圧値に変換して負荷群50に出力するDC/DC変換器5,6と、第1カットオフ周波数を有し、配線L1及びDC/DC変換器5と接続されるフィルタ部7と、第1カットオフ周波数よりも高い第2カットオフ周波数を有し、配線L1及びDC/DC変換器6と接続されるフィルタ部8と、DC/DC変換器5,6を制御する制御部10とを備え、制御部10は、外部電源から直流電力が配線L1に供給され、かつ、負荷群50に直流電力を供給する必要がある場合、DC/DC変換器5を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される電源システムであって、
外部電源から直流電力が供給される配線と、
前記配線に接続される直流電源と、
前記配線に供給される直流電力を異なる電圧値に変換して少なくとも1つの負荷を含む負荷群に出力する第1DC/DC変換器と、
第1カットオフ周波数を有し、前記配線及び前記第1DC/DC変換器と接続される第1フィルタ部と、
前記配線に供給される直流電力を異なる電圧値に変換して前記負荷群に出力する第2DC/DC変換器と、
前記第1カットオフ周波数よりも高い第2カットオフ周波数を有し、前記配線及び前記第2DC/DC変換器と接続される第2フィルタ部と、
前記第1DC/DC変換器及び前記第2DC/DC変換器を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記外部電源から直流電力が前記配線に供給される場合であって、かつ、前記負荷群に直流電力を供給する必要がある場合、前記第1DC/DC変換器を制御する、電源システム。
【請求項2】
前記第1カットオフ周波数及び前記第2カットオフ周波数は、前記第1DC/DC変換器の出力端子における電圧値の変動幅及び前記第2DC/DC変換器の出力端子における電圧値の変動幅が、前記負荷群の入力電圧の許容範囲内に収まるように設定されている、請求項1に記載の電源システム。
【請求項3】
前記第1DC/DC変換器から前記配線に向かって前記第1フィルタ部を信号が通過する場合の前記第1フィルタ部の共振周波数と、前記配線から前記第2DC/DC変換器に向かって前記第2フィルタ部を信号が通過する場合の前記第2フィルタ部の共振周波数とが、一致せず、かつ、前記配線から前記第1DC/DC変換器に向かって前記第1フィルタ部を信号が通過する場合の前記第1フィルタ部の共振周波数と、前記第2DC/DC変換器から前記配線に向かって前記第2フィルタ部を信号が通過する場合の前記第2フィルタ部の共振周波数とが、一致しないように、前記第1カットオフ周波数と前記第2カットオフ周波数とが設定されている、請求項2に記載の電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
外部電源から供給される電力を車載バッテリに充電可能な充電装置を搭載した車両が知られている。特許文献1には、高圧バッテリと、低圧バッテリと、高圧バッテリと低圧バッテリとの間に設けられたDC/DCコンバータとを備える電動車両が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両の動作モードに応じて、要求されるノイズレベルが異なっている。これらの要求を満たすために、DC/DCコンバータにはノイズフィルタが搭載される。しかしながら、DC/DCコンバータの大電流化に伴い、ノイズフィルタが大型化している。
【0005】
本開示は、大型化を抑制可能な電源システムを説明する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る電源システムは、車両に搭載される電源システムであって、外部電源から直流電力が供給される配線と、配線に接続される直流電源と、配線に供給される直流電力を異なる電圧値に変換して少なくとも1つの負荷を含む負荷群に出力する第1DC/DC変換器と、第1カットオフ周波数を有し、配線及び第1DC/DC変換器と接続される第1フィルタ部と、配線に供給される直流電力を異なる電圧値に変換して負荷群に出力する第2DC/DC変換器と、第1カットオフ周波数よりも高い第2カットオフ周波数を有し、配線及び第2DC/DC変換器と接続される第2フィルタ部と、第1DC/DC変換器及び第2DC/DC変換器を制御する制御部と、を備える。制御部は、外部電源から直流電力が配線に供給される場合であって、かつ、負荷群に直流電力を供給する必要がある場合、第1DC/DC変換器を制御する。
【0007】
この電源システムでは、外部電源から直流電力が供給される配線と、当該配線に供給される直流電力を異なる電圧値に変換する第1DC/DC変換器と、が第1カットオフ周波数を有する第1フィルタ部を介して電気的に接続され、上記配線と、当該配線に供給される直流電力を異なる電圧値に変換する第2DC/DC変換器と、が第1カットオフ周波数よりも高い第2カットオフ周波数を有する第2フィルタ部を介して電気的に接続される。外部電源から直流電力が配線に供給される場合であって、かつ、負荷群に直流電力を供給する必要がある場合、第1DC/DC変換器が制御される。これにより、第2フィルタ部よりも低周波数帯域のノイズを低減することができる第1フィルタ部を介して、配線と第1DC/DC変換器とが電気的に接続されるので、外部電源に低周波数帯域のノイズが伝送されることを抑制することができる。一方、車両が走行している場合には、第1DC/DC変換器及び第2DC/DC変換器が、外部電源と電気的に接続されることがないので、第1フィルタ部で抑制できるが第2フィルタ部で抑制できない低周波数帯域のノイズを抑制する必要がなく、第2DC/DC変換器を駆動させることが可能となる。これにより、負荷群で多くの直流電力を要する場合に、第1DC/DC変換器及び第2DC/DC変換器を駆動させることで、負荷群に多くの直流電力を供給することが可能となる。また、第2フィルタ部は、第1フィルタ部よりも高い周波数帯域のノイズしか抑制することができないが、第1フィルタ部よりも回路規模が小さい。よって、負荷群に大きな電力を供給でき、かつ、外部電源に低周波数帯域のノイズが伝送されることを抑制できる電源システムを安価に提供することができ、電源システムの大型化を抑制することが可能となる。
【0008】
いくつかの実施形態において、第1カットオフ周波数及び第2カットオフ周波数は、第1DC/DC変換器の出力端子における電圧値の変動幅及び第2DC/DC変換器の出力端子における電圧値の変動幅が、負荷群の入力電圧の許容範囲内に収まるように設定されていてもよい。第1DC/DC変換器及び第2DC/DC変換器を同時に動作させると、一方のDC/DC変換器に他方のDC/DC変換器で発生したノイズが入力され、当該ノイズによって出力端子の電圧値が変動し得る。上記構成によれば、第1DC/DC変換器の出力端子における電圧値の変動幅及び第2DC/DC変換器の出力端子における電圧値の変動幅が、負荷群の入力電圧の許容範囲内に収まるので、負荷群に安定した電力を供給することができる。
【0009】
いくつかの実施形態において、第1DC/DC変換器から配線に向かって第1フィルタ部を信号が通過する場合の第1フィルタ部の共振周波数と、配線から第2DC/DC変換器に向かって第2フィルタ部を信号が通過する場合の第2フィルタ部の共振周波数とが、一致せず、かつ、配線から第1DC/DC変換器に向かって第1フィルタ部を信号が通過する場合の第1フィルタ部の共振周波数と、第2DC/DC変換器から配線に向かって第2フィルタ部を信号が通過する場合の第2フィルタ部の共振周波数とが、一致しないように、第1カットオフ周波数と第2カットオフ周波数とが設定されてもよい。
【0010】
第1DC/DC変換器において発生したノイズが、第1フィルタ部、配線、第2フィルタ部、及び第2DC/DC変換器を順に通る経路で伝送されることがある。この場合、第1DC/DC変換器から配線に向かって第1フィルタ部を信号が通過する場合の第1フィルタ部の共振周波数と、配線から第2DC/DC変換器に向かって第2フィルタ部を信号が通過する場合の第2フィルタ部の共振周波数とが、一致している場合には、共振により第2DC/DC変換器の出力端子における電圧値の変動幅が、負荷群の入力電圧の許容範囲を超えてしまうおそれがある。同様に、第2DC/DC変換器において発生したノイズが、第2フィルタ部、配線、第1フィルタ部、及び第1DC/DC変換器を順に通る経路で伝送されることがある。この場合、配線から第1DC/DC変換器に向かって第1フィルタ部を信号が通過する場合の第1フィルタ部の共振周波数と、第2DC/DC変換器から配線に向かって第2フィルタ部を信号が通過する場合の第2フィルタ部の共振周波数とが一致している場合には、共振により第1DC/DC変換器の出力端子における電圧値の変動幅が、負荷群の入力電圧の許容範囲を超えてしまうおそれがある。上記構成によれば、各経路における第1フィルタ部の共振周波数と第2フィルタ部の共振周波数とが一致していないので、第1DC/DC変換器の出力端子における電圧値の変動幅及び第2DC/DC変換器の出力端子における電圧値の変動幅が、負荷群の入力電圧の許容範囲を超えてしまうことを抑制することができる。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、電源システムの大型化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る電源システムの概略構成図である。
【
図2】
図2の(a)は、DC/DC変換器5から配線L1に向かって信号がフィルタ回路71を通過する場合のフィルタ回路71のゲイン特性を示す図である。
図2の(b)は、配線L1からDC/DC変換器5に向かって信号がフィルタ回路71を通過する場合のフィルタ回路71のゲイン特性を示す図である。
【
図3】
図3の(a)は、DC/DC変換器6から配線L1に向かって信号がフィルタ回路81を通過する場合のフィルタ回路81のゲイン特性を示す図である。
図3の(b)は、配線L1からDC/DC変換器6に向かって信号がフィルタ回路81を通過する場合のフィルタ回路81のゲイン特性を示す図である。
【
図4】
図4は、
図1に示される制御部が行う切替制御の一例を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、電源システムの動作の一例を説明するための図である。
【
図6】
図6は、電源システムの動作の別の例を説明するための図である。
【
図7】
図7は、電源システムの動作の更に別の例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら一実施形態に係る電源システムを詳細に説明する。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号が用いられ、重複する説明は省略される。
【0014】
図1を参照しながら、一実施形態に係る電源システムの概略構成を説明する。
図1は、一実施形態に係る電源システムの概略構成図である。
図1に示される電源システム1は、車両Vに搭載されており、車両Vに搭載されている負荷群50に直流電力を供給する。車両Vの例としては、フォークリフト、ハイブリッド自動車、及び電気自動車が挙げられる。負荷群50は、少なくとも1つの負荷51を含む。負荷51の例としては、ナビゲーションシステム及び車載ラジオが挙げられる。
【0015】
電源システム1は、バッテリ2(直流電源)と、車載充電器3と、スイッチ4と、DC/DC変換器5(第1DC/DC変換器)と、DC/DC変換器6(第2DC/DC変換器)と、フィルタ部7(第1フィルタ部)と、フィルタ部8(第2フィルタ部)と、制御部10と、コネクタCN1と、コネクタCN2と、配線L1と、配線L2と、を含む。
【0016】
コネクタCN1は、直流電力を出力する直流充電器(外部電源)を接続するためのコネクタである。直流充電器は、コネクタCN1を介して配線L1に直流電力を供給する。コネクタCN2は、交流電力を出力する交流充電器(外部電源)を接続するためのコネクタであり、車載充電器3と接続される。配線L1には、直流充電器から出力された直流電力が供給される。また、配線L1には、車載充電器3から出力された直流電力が供給される。車載充電器3は、交流充電器からコネクタCN2を介して供給された交流電力を直流電力に変換して配線L1に出力するものであり、配線L1には、交流充電器からコネクタCN2及び車載充電器3を介して直流電力が供給されるといえる。配線L2は、負荷群50に直流電力を供給するための配線である。配線L2には、DC/DC変換器5及びDC/DC変換器6の一方又は両方から直流電力が供給される。配線L2に供給される直流電力の電圧値は、配線L1に供給される直流電力の電圧値とは異なっている。配線L2に供給される直流電力の電圧値は、例えば、12Vである。
【0017】
バッテリ2は、充放電可能な二次電池である。バッテリ2の例としては、リチウムイオン電池、鉛蓄電池、及びニッケル水素電池が挙げられる。バッテリ2は、複数の電池セルを含む電池モジュールであってもよい。バッテリ2は、配線L1に接続されており、直流充電器又は車載充電器3によって配線L1に供給された直流電力によって充電される。
【0018】
車載充電器3は、AC/DC変換器を含み、前述したとおり、交流充電器からコネクタCN2を介して供給された交流電力を直流電力に変換して配線L1に出力する。
【0019】
スイッチ4は、その両端の電気的な接続状態を導通状態(オン状態)と非導通状態(オフ状態)との間で切り替え可能な回路要素である。スイッチ4は、例えば、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET:Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)及び絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)などの半導体で構成されてもよく、リレーで構成されてもよい。スイッチ4は、車載充電器3と配線L1との間に設けられている。スイッチ4が導通状態に設定されることによって、車載充電器3が配線L1に電気的に接続される。スイッチ4が非導通状態に設定されることによって、車載充電器3が配線L1から電気的に切り離される。
【0020】
DC/DC変換器5及びDC/DC変換器6のそれぞれは、配線L1に供給される直流電力の電圧値を異なる電圧値に変換して、配線L2を介して負荷群50に直流電力を供給する回路である。DC/DC変換器5は、入力端子5aと、出力端子5bと、を含む。入力端子5aは、フィルタ部7を介して配線L1に接続されている。出力端子5bは、配線L2に接続されている。DC/DC変換器6は、入力端子6aと、出力端子6bと、を含む。入力端子6aは、フィルタ部8を介して配線L1に接続されている。出力端子6bは、配線L2に接続されている。
【0021】
DC/DC変換器5及びDC/DC変換器6は、制御部10によって駆動される。DC/DC変換器5及びDC/DC変換器6のスイッチング周波数は、例えば、170kHz程度である。車両Vが充電モードである場合には、DC/DC変換器5のみが用いられる。充電モードは、バッテリ2を充電する動作モードである。車両Vが走行モードである場合には、DC/DC変換器5及びDC/DC変換器6のいずれが用いられてもよく、両方が用いられてもよい。走行モードは、車両Vが走行する動作モードである。
【0022】
フィルタ部7は、配線L1とDC/DC変換器5とを電気的に接続するための部分であり、配線L1及びDC/DC変換器5と接続されている。フィルタ部7は、フィルタ回路71(第1フィルタ回路)と、スイッチ72(第1スイッチ)と、を含む。
【0023】
フィルタ回路71は、ローパスフィルタであり、カットオフ周波数fc1(第1カットオフ周波数)を有する。DC/DC変換器5は車両Vが充電モードである場合に用いられるので、カットオフ周波数fc1は、低周波数帯域のノイズを除去可能な周波数に設定されている。フィルタ回路71は、端子71aと端子71bとを含む。端子71aは、スイッチ72を介して配線L1に接続され、端子71bはDC/DC変換器5の入力端子5aに接続されている。フィルタ回路71のゲイン特性については後述する。
【0024】
スイッチ72は、その両端の電気的な接続状態を導通状態(オン状態)と非導通状態(オフ状態)との間で切り替え可能な回路要素である。スイッチ72は、例えば、MOSFET及びIGBTなどの半導体で構成されてもよく、リレーで構成されてもよい。スイッチ72の一端は配線L1におけるスイッチ4とバッテリ2との間に接続され、スイッチ72の他端はフィルタ回路71の端子71aに接続されている。フィルタ部7は、スイッチ72が導通状態に設定されることによって、フィルタ回路71を介して配線L1とDC/DC変換器5とを電気的に接続する。フィルタ部7は、スイッチ72が非導通状態に設定されることによって、DC/DC変換器5を配線L1から電気的に切り離す。
【0025】
フィルタ部8は、配線L1とDC/DC変換器6とを電気的に接続するための部分であり、配線L1及びDC/DC変換器6と接続されている。フィルタ部8は、フィルタ回路81(第2フィルタ回路)と、スイッチ82(第2スイッチ)と、を含む。
【0026】
フィルタ回路81は、ローパスフィルタであり、カットオフ周波数fc2(第2カットオフ周波数)を有する。カットオフ周波数fc2は、カットオフ周波数fc1よりも高い。DC/DC変換器6は車両Vが走行モードである場合に用いられるので、カットオフ周波数fc2は、例えば、FM帯域以上のノイズを除去可能な周波数に設定されている。フィルタ回路81は、端子81aと端子81bとを含む。端子81aは、スイッチ82を介して配線L1に接続され、端子81bはDC/DC変換器6の入力端子6aに接続されている。フィルタ回路81のゲイン特性については後述する。
【0027】
スイッチ82は、その両端の電気的な接続状態を導通状態(オン状態)と非導通状態(オフ状態)との間で切り替え可能な回路要素である。スイッチ82は、例えば、MOSFET及びIGBTなどの半導体で構成されてもよく、リレーで構成されてもよい。スイッチ82の一端は配線L1におけるスイッチ4とバッテリ2との間に接続され、スイッチ82の他端はフィルタ回路81の端子81aに接続されている。フィルタ部8は、スイッチ82が導通状態に設定されることによって、フィルタ回路81を介して配線L1とDC/DC変換器6とを電気的に接続する。フィルタ部8は、スイッチ82が非導通状態に設定されることによって、DC/DC変換器6を配線L1から電気的に切り離す。
【0028】
制御部10は、電源システム1を統括制御する装置(コントローラ)である。制御部10は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)及び入出力インターフェース等によって構成されている。制御部10は、例えば、車載充電器3、スイッチ4、DC/DC変換器5、DC/DC変換器6、スイッチ72、及びスイッチ82を制御する。制御部10は、車両Vの動作モードに応じて、スイッチ4、スイッチ72、及びスイッチ82の接続状態を切り替える。制御部10が行う切替制御については後述する。
【0029】
次に、
図2の(a)、
図2の(b)、
図3の(a)、及び
図3の(b)を参照しながら、フィルタ回路71及びフィルタ回路81のゲイン特性を説明する。
図2の(a)は、DC/DC変換器5から配線L1に向かって信号がフィルタ回路71を通過する場合のフィルタ回路71のゲイン特性を示す図である。
図2の(b)は、配線L1からDC/DC変換器5に向かって信号がフィルタ回路71を通過する場合のフィルタ回路71のゲイン特性を示す図である。
図3の(a)は、DC/DC変換器6から配線L1に向かって信号がフィルタ回路81を通過する場合のフィルタ回路81のゲイン特性を示す図である。
図3の(b)は、配線L1からDC/DC変換器6に向かって信号がフィルタ回路81を通過する場合のフィルタ回路81のゲイン特性を示す図である。各図において、横軸は周波数(単位:Hz)を示し、縦軸はゲイン(単位:dB)を示す。
【0030】
図2の(a)及び
図2の(b)に示されるように、フィルタ回路71は、フィルタ回路71を信号が通過する方向に応じて異なるゲイン特性を有している。DC/DC変換器5から配線L1に向かって信号がフィルタ回路71を通過する場合(端子71bから端子71aに向かってフィルタ回路71を信号が通過する場合)のフィルタ回路71のゲイン特性G11においては、7MHz付近に共振周波数fr11が生じている。配線L1からDC/DC変換器5に向かって信号がフィルタ回路71を通過する場合(端子71aから端子71bに向かってフィルタ回路71を信号が通過する場合)のフィルタ回路71のゲイン特性G12においては、2.5MHz付近に共振周波数fr12が生じている。
【0031】
図3の(a)及び
図3の(b)に示されるように、フィルタ回路81は、フィルタ回路81を信号が通過する方向に応じて異なるゲイン特性を有している。DC/DC変換器6から配線L1に向かって信号がフィルタ回路81を通過する場合(端子81bから端子81aに向かってフィルタ回路81を信号が通過する場合)のフィルタ回路81のゲイン特性G21においては、900kHz及び13MHz付近に共振周波数fr21が生じている。配線L1からDC/DC変換器6に向かって信号がフィルタ回路81を通過する場合(端子81aから端子81bに向かってフィルタ回路81を信号が通過する場合)のフィルタ回路81のゲイン特性G22においては、2.2MHz及び13MHz付近に共振周波数fr22が生じている。
【0032】
後述するように、共振周波数fr11と共振周波数fr22とが一致せず、かつ、共振周波数fr12と共振周波数fr21とが一致しないように、カットオフ周波数fc1及びカットオフ周波数fc2が設定される。
【0033】
次に、
図4~
図7を参照しながら、電源システム1の動作を説明する。
図4は、
図1に示される制御部が行う切替制御の一例を示すフローチャートである。
図5~
図7は、電源システムの動作の一例を説明するための図である。
図4に示される処理は、例えば、所定の時間間隔で繰り返し行われる。
【0034】
図4に示されるように、制御部10は、まず、車両Vが充電モードであるか否かを判定する(ステップS1)。ステップS1では、制御部10は、コネクタCN1に直流充電器が接続されていることを検出した場合、又は、コネクタCN2に交流充電器が接続されていることを検出した場合に、車両Vが充電モードであると判定する。なお、制御部10は、コネクタCN2に交流充電器が接続されたことを検出すると、スイッチ4を導通状態に設定するとともに、車載充電器3を動作させる。これにより、コネクタCN2に交流充電器が接続されている場合には、交流充電器から供給された交流電力が直流電力に変換されて配線L1に供給され、バッテリ2が充電される。コネクタCN1に直流充電器が接続されている場合には、直流充電器から配線L1に直流電力が供給され、バッテリ2が充電される。
【0035】
ステップS1において車両Vが充電モードであると判定された場合(ステップS1:YES)、制御部10は、負荷群50に直流電力を供給する必要があるか否かを判定する(ステップS2)。例えば、制御部10は、いずれかの負荷51が動作していることを検出すると、負荷群50に直流電力を供給する必要があると判定する。ここで、DC/DC変換器5及びDC/DC変換器6が動作していない場合でも、各負荷51には、負荷51が起動するのに必要な直流電力が不図示の補機用バッテリから供給されている。
【0036】
ステップS2において負荷群50に直流電力を供給する必要があると判定された場合(ステップS2:YES)、
図5に示されるように、制御部10は、スイッチ72を導通状態に設定し、スイッチ82を非導通状態に設定するとともに、DC/DC変換器5を動作させる(ステップS3)。このとき、DC/DC変換器6は動作していない。これにより、配線L1に供給されている直流電力がDC/DC変換器5によって異なる電圧値に変換されて配線L2に供給される。以上により、
図4に示される一連の処理が終了する。
【0037】
一方、ステップS2において負荷群50に直流電力を供給する必要が無いと判定された場合(ステップS2:NO)、制御部10は、スイッチ72及びスイッチ82を非導通状態に設定する(ステップS4)。このとき、DC/DC変換器5及びDC/DC変換器6は動作していない。以上により、
図4に示される一連の処理が終了する。
【0038】
ステップS1において車両Vが充電モードではないと判定された場合(ステップS1:NO)、制御部10は、ステップS2と同様に、負荷群50に直流電力を供給する必要があるか否かを判定する(ステップS5)。ステップS5において負荷群50に直流電力を供給する必要があると判定された場合(ステップS5:YES)、制御部10は、負荷群50に供給される直流電力が不足するか否かを判定する(ステップS6)。例えば、制御部10は、動作している負荷51の消費電力の合計とDC/DC変換器6によって供給可能な最大電力とを比較し、消費電力の合計が供給可能な最大電力を上回る場合に、負荷群50に供給される直流電力が不足すると判定する。
【0039】
ステップS6において負荷群50に供給される直流電力が不足しないと判定された場合(ステップS6:NO)、
図6に示されるように、制御部10は、スイッチ4及びスイッチ72を非導通状態に設定し、スイッチ82を導通状態に設定するとともに、DC/DC変換器6を動作させる(ステップS7)。このとき、DC/DC変換器5は動作していない。これにより、バッテリ2から配線L1に供給されている直流電力がDC/DC変換器6によって異なる電圧値に変換されて配線L2に供給される。以上により、
図4に示される一連の処理が終了する。
【0040】
ステップS6において負荷群50に供給される直流電力が不足すると判定された場合(ステップS6:YES)、
図7に示されるように、制御部10は、スイッチ4を非導通状態に設定し、スイッチ72及びスイッチ82を導通状態に設定する(ステップS8)。そして、制御部10は、DC/DC変換器6に加えてDC/DC変換器5を動作させる。これにより、バッテリ2から配線L1に供給されている直流電力がDC/DC変換器5及びDC/DC変換器6によって異なる電圧値に変換されて配線L2に供給される。以上により、
図4に示される一連の処理が終了する。
【0041】
ステップS5において負荷群50に直流電力を供給する必要がないと判定された場合(ステップS5:NO)、制御部10は、スイッチ4、スイッチ72及びスイッチ82を非導通状態に設定する(ステップS9)。このとき、DC/DC変換器5及びDC/DC変換器6は動作していない。以上により、
図4に示される一連の処理が終了する。
【0042】
以上説明した電源システム1では、スイッチ72が導通状態に設定されることによって、配線L1とDC/DC変換器5とがフィルタ回路71を介して電気的に接続され、スイッチ82が導通状態に設定されることによって、配線L1とDC/DC変換器6とがフィルタ回路81を介して電気的に接続される。車載充電器3又は直流充電器から出力された直流電力が配線L1に供給される場合(つまり、車両Vが充電モードである場合)であり、かつ、負荷群50に直流電力を供給する必要があると判定された場合、スイッチ4及びスイッチ72が導通状態に設定され、スイッチ82が非導通状態に設定され、DC/DC変換器5が制御される。これにより、フィルタ回路81よりも低周波数帯域のノイズを低減することができるフィルタ回路71を介して、配線L1とDC/DC変換器5とが電気的に接続されるので、交流充電器又は直流充電器に低周波数帯域のノイズが伝送されることを抑制することができる。
【0043】
一方、車両Vが走行している場合(車両Vが走行モードである場合)には、DC/DC変換器5及びDC/DC変換器6が、外部電源と電気的に接続されることがないので、フィルタ回路71で抑制できるがフィルタ回路81で抑制できない低周波数帯域のノイズを抑制する必要がなく、DC/DC変換器6を駆動させることが可能となる。これにより、負荷群50で多くの直流電力を要する場合に、DC/DC変換器5及びDC/DC変換器6を駆動させることで、負荷群50に多くの直流電力を供給することが可能となる。また、フィルタ回路81は、フィルタ回路71よりも高い周波数帯域のノイズしか抑制することができないが、フィルタ回路71よりも回路規模が小さく、安価である。よって、負荷群に大きな電力を供給でき、かつ、外部電源に低周波数帯域のノイズが伝送されることを抑制できる電源システム1を安価に提供することができ、電源システム1の大型化を抑制することが可能となる。
【0044】
図7に示されるように、スイッチ72及びスイッチ82が導通状態に設定されている場合には、DC/DC変換器5及びDC/DC変換器6が同時に動作するので、一方のDC/DC変換器に他方のDC/DC変換器で発生したノイズが入力され、当該ノイズによって出力端子の電圧値が変動し得る。具体的には、DC/DC変換器5のスイッチング動作によって生じたノイズが、フィルタ回路71、スイッチ72、配線L1、スイッチ82、フィルタ回路81、及びDC/DC変換器6を順に通る経路P1で伝送されることがある。この場合、フィルタ回路71の共振周波数fr11(DC/DC変換器5から配線L1に向かってフィルタ回路71を信号が通過する場合のフィルタ回路71の共振周波数)とフィルタ回路81の共振周波数fr22(配線L1からDC/DC変換器6に向かってフィルタ回路81を信号が通過する場合のフィルタ回路81の共振周波数)とが一致している場合には、共振によりノイズが十分に低減されず、DC/DC変換器6の出力端子6bにおける電圧値の変動幅が、負荷群50の入力電圧の許容範囲を超えてしまうおそれがある。
【0045】
同様に、DC/DC変換器6のスイッチング動作によって生じたノイズが、フィルタ回路81、スイッチ82、配線L1、スイッチ72、フィルタ回路71、及びDC/DC変換器5を順に通る経路P2で伝送されることがある。この場合、フィルタ回路71の共振周波数fr12(配線L1からDC/DC変換器5に向かってフィルタ回路71を信号が通過する場合のフィルタ回路71の共振周波数)とフィルタ回路81の共振周波数fr21(DC/DC変換器6から配線L1に向かってフィルタ回路81を信号が通過する場合のフィルタ回路81の共振周波数)とが一致している場合には、共振によりノイズが十分に低減されず、DC/DC変換器5の出力端子5bにおける電圧値の変動幅が、負荷群50の入力電圧の許容範囲を超えてしまうおそれがある。
【0046】
これに対して、電源システム1では、フィルタ回路71の共振周波数fr11とフィルタ回路81の共振周波数fr22とが一致せず、かつ、フィルタ回路71の共振周波数fr12とフィルタ回路81の共振周波数fr21とが一致しないように、カットオフ周波数fc1とカットオフ周波数fc2とが設定されている。この構成によれば、各経路におけるフィルタ回路71の共振周波数とフィルタ回路81の共振周波数とが一致していないので、DC/DC変換器5の出力端子5bにおける電圧値の変動幅及びDC/DC変換器6の出力端子6bにおける電圧値の変動幅が、負荷群50の入力電圧の許容範囲を超えてしまうことを抑制することができる。したがって、負荷群50に安定して電力を供給することができる。
【0047】
電源システム1では、走行モードにおいて負荷群50に直流電力を供給する必要がある場合にはDC/DC変換器6から先に使用される。この制御によれば、走行モードにおいてDC/DC変換器5から先に使用される構成と比較して、DC/DC変換器5が使用される頻度を低減することができるので、DC/DC変換器5が故障する可能性を低減することができる。
【0048】
以上、本開示の一実施形態について詳細に説明されたが、本開示に係る電源システムは上記実施形態に限定されない。
【0049】
上記実施形態では、ステップS7において、制御部10は、スイッチ72を非導通状態に設定し、スイッチ82を導通状態に設定するとともに、DC/DC変換器6を駆動している。これに代えて、制御部10は、スイッチ72を導通状態に設定し、スイッチ82を非導通状態に設定するとともに、DC/DC変換器5を駆動してもよい。つまり、走行モードにおいて、DC/DC変換器5が先に使用され、DC/DC変換器5だけでは十分な電力を供給できない場合に、DC/DC変換器6が使用されてもよい。
【0050】
走行モードにおいて負荷群50に直流電力を供給する必要があると判定された場合(ステップS5:YES)、電力が不足するか否かに関わらず、制御部10は、スイッチ72及びスイッチ82を導通状態に設定するとともに、DC/DC変換器5及びDC/DC変換器6を駆動してもよい。
【0051】
フィルタ回路71及びフィルタ回路81は、固定フィルタに限られず、可変フィルタであってもよい。
【0052】
フィルタ回路71の共振周波数fr11とフィルタ回路81の共振周波数fr22とが一致している場合でも、当該周波数におけるノイズレベルによっては、DC/DC変換器6の出力端子6bにおける電圧値の変動幅が、負荷群50の入力電圧の許容範囲内に収まることがある。同様に、フィルタ回路71の共振周波数fr12とフィルタ回路81の共振周波数fr21とが一致している場合でも、当該周波数におけるノイズレベルによっては、DC/DC変換器5の出力端子5bにおける電圧値の変動幅が、負荷群50の入力電圧の許容範囲内に収まることがある。
【0053】
したがって、カットオフ周波数fc1及びカットオフ周波数fc2は、スイッチ72及びスイッチ82が導通状態に設定されている場合のDC/DC変換器5の出力端子5bにおける電圧値の変動幅及びDC/DC変換器6の出力端子6bにおける電圧値の変動幅が、負荷群50の入力電圧の許容範囲内に収まるように設定されていればよい。この構成によれば、DC/DC変換器5の出力端子5bにおける電圧値の変動幅及びDC/DC変換器6の出力端子6bにおける電圧値の変動幅が、負荷群50の入力電圧の許容範囲内に収まるので、負荷群50に安定した直流電力を供給することができる。
【0054】
フィルタ部7は、スイッチ72を含んでいなくてもよく、フィルタ部8は、スイッチ82を含んでいなくてもよい。さらに、電源システム1は、スイッチ4を含んでいなくてもよい。言い換えると、スイッチ4、スイッチ72及びスイッチ82の少なくとも1つは設けられていなくてもよい。
【0055】
スイッチ4が設けられる位置は、車載充電器3と配線L1との間に限られない。例えば、スイッチ4は、配線L1上の車載充電器3が接続されている接続点よりもバッテリ2に近く、かつ、配線L1上のフィルタ部7が接続されている接続点及び配線L1上のフィルタ部8が接続されている接続点のいずれよりも車載充電器3が接続されている接続点に近い位置に設けられてもよい。この構成においても、フィルタ部7はスイッチ72を含んでいなくてもよく、フィルタ部8はスイッチ82を含んでいなくてもよい。
【0056】
スイッチ4は、配線L1上のフィルタ部7が接続されている接続点及び配線L1上のフィルタ部8が接続されている接続点と、配線L1上のバッテリ2が接続されている接続点との間に設けられてもよい。この構成においても、フィルタ部7はスイッチ72を含んでいなくてもよく、フィルタ部8はスイッチ82を含んでいなくてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1…電源システム、2…バッテリ(直流電源)、3…車載充電器、5…DC/DC変換器(第1DC/DC変換器)、5b…出力端子、6…DC/DC変換器(第2DC/DC変換器)、6b…出力端子、7…フィルタ部(第1フィルタ部)、8…フィルタ部(第2フィルタ部)、10…制御部、50…負荷群、51…負荷、71…フィルタ回路、72…スイッチ、81…フィルタ回路、82…スイッチ、L1…配線、L2…配線、V…車両。