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特開2024-64577農園芸用施設内を処理する方法および該方法に用いる容器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064577
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】農園芸用施設内を処理する方法および該方法に用いる容器
(51)【国際特許分類】
   A01M 17/00 20060101AFI20240507BHJP
【FI】
A01M17/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173269
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】521443645
【氏名又は名称】ZMクロッププロテクション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】府賀 伸彦
(72)【発明者】
【氏名】野仲 信行
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121AA11
2B121AA19
2B121CA02
2B121CA15
2B121CA44
2B121CA58
2B121CC02
2B121CC05
2B121CC27
2B121EA12
(57)【要約】
【課題】
本発明の課題は、従来必要とされていた高価で複雑な装置を必要とせず、より簡便で安価な、メチルイソチオシアネート(MTIC)で農園芸用施設内を燻蒸処理するための方法および該方法に用いる容器を提供することにある。
【解決手段】
本発明は、メチルイソチオシアネート(MITC)を用いて農園芸用施設内の地上部を燻蒸する方法であって、農園芸用施設内で、MITCプロドラッグ剤を含浸させた粒状物が入れられた通気部を備えた容器に向けて送風することを含み、前記MITCプロドラッグ剤が、CHNHCS (式中、Xは、Na、K、またはNHである)で表されるカーバム剤、または、ダゾメット剤である、前記方法、および、該方法に用いる容器などに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メチルイソチオシアネート(MITC)を用いて農園芸用施設内の地上部を燻蒸する方法であって、
農園芸用施設内で、MITCプロドラッグ剤を含浸させた粒状物が入れられた通気部を備えた容器に向けて送風することを含み、
前記MITCプロドラッグ剤が、
CHNHCS (式中、Xは、Na、K、またはNHである)
で表されるカーバム剤、または、ダゾメット剤である、前記方法。
【請求項2】
粒状物が、培土である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
通気部を備えた容器が、農園芸用平底樹脂容器である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法に用いるための、通気部を備えた容器であって、
該容器内に、メチルイソチオシアネート(MITC)プロドラッグ剤を含浸させた粒状物を含み、
前記MITCプロドラッグ剤が、
CHNHCS (式中、Xは、Na、K、またはNHである)
で表されるカーバム剤、または、ダゾメット剤である、前記容器。
【請求項5】
粒状物が、培土である、請求項4に記載の容器。
【請求項6】
通気部を備えた容器が、農園芸用平底樹脂容器である、請求項4または5に記載の容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農園芸用施設内を処理する方法および該方法に用いる容器に関する。
【背景技術】
【0002】
キルパー(登録商標)などとして販売されているカーバムナトリウム塩は、土壌に処理(散布・注入・かん水処理などの各種方法)すると土壌表面(粒子)との接触により速やかに有効成分であるMITC(メチルイソチオシアネート)に分解する。生成したMITCは、ガスまたは水溶液として、土壌病害虫や雑草に有効であり、土壌消毒剤としてよく知られている。
【0003】
一方、MITCガスを、ハウスなど農園芸施設内の地上部病害虫の燻蒸目的とする報告例は未だ限定的であり、ハウス内燻蒸を目的とする方法は開発途上であるといえる。
MITCガスによる効果を主目的とする農薬は、MITCを有機溶剤に溶かしたトラペックサイド油剤(デトラペックス製剤)や、MITC/CO製剤であるエコヒュームが知られている。また、MITCのプロドラッグ剤として、カーバム剤(カーバムナトリウム塩(キルパー(登録商標)剤)およびカーバムNH塩(NCS剤)並びにダゾメット(ガスタード・バスアミド)が知られている。
【0004】
特許文献1には、モノメチルジチオカルバミン酸ナトリウムやモノメチルジチオカルバミン酸アンモニウムなどの生物活性のある化合物の溶液をミスト化し、加熱し、活性成分をガス化させ、ガス状活性成分を有害生物と接触させる有害生物除去方法が記載されている(請求項1および3など)。具体的に、小型ビニールハウスにおいて処理試験を行い(実施例3および4)、きゅうり、雑草(スズメノカタビラ)、コガネムシ幼虫、アブラムシ(鉢植えきゅうりに寄生)に対する有効性などについて検討されている。
【0005】
特許文献2には、内部容積150mの半円筒形状のプラスチックハウス内に、液化二酸化炭素に溶解したメチルイソチオシアネート(MTIC)を供給し、MTICと空気を含む混合ガスを注入することで、短時間で薬剤の空間内濃度を均一にすることが示されている(実施例1)。
【0006】
上記特許文献1および2などに示されるように、ビニールハウスやプラスチックハウスの中をMITCガスで処理するためには、溶液をミスト化するためのミスト発生装置や、液化二酸化炭素などの高圧ガスを保存する高圧ガスボンベや高圧に耐えうる散布装置が必要とされ、装置が複雑になり高価なる傾向にあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8-217602号公報
【特許文献2】特開2021-134188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、従来必要とされていた高価で複雑な装置を必要とせず、より簡便で安価な、メチルイソチオシアネート(MTIC)で農園芸用施設内を燻蒸処理するための方法および該方法に用いる容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、かかる課題を解決するために鋭意研究を重ねる中で、通気部を備えた容器に、培土などの粒状物を入れ、該粒状物にメチルイソチオシアネート(MITC)プロドラッグ剤を含浸させた後に、前記容器に向けて送風することによって、MITCガスを発生させて、農園芸用施設内を十分に燻蒸できることを見出し、さらに研究を進めた結果、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、以下に関する。
【0010】
[1]メチルイソチオシアネート(MITC)を用いて農園芸用施設内の地上部を燻蒸する方法であって、
農園芸用施設内で、MITCプロドラッグ剤を含浸させた粒状物が入れられた通気部を備えた容器に向けて送風することを含み、
前記MITCプロドラッグ剤が、
CHNHCS (式中、Xは、Na、K、またはNHである)
で表されるカーバム剤、または、ダゾメット剤である、前記方法。
[2]粒状物が、培土である、前記[1]に記載の方法。
[3]通気部を備えた容器が、農園芸用平底樹脂容器である、前記[1]または[2]に記載の方法。
【0011】
[4]前記[1]~[3]のいずれか一項に記載の方法に用いるための、通気部を備えた容器であって、
該容器内に、メチルイソチオシアネート(MITC)プロドラッグ剤を含浸させた粒状物を含み、
前記MITCプロドラッグ剤が、
CHNHCS (式中、Xは、Na、K、またはNHである)
で表されるカーバム剤、または、ダゾメット剤である、前記容器。
[5]粒状物が、培土である、前記[4]に記載の容器。
[6]通気部を備えた容器が、農園芸用平底樹脂容器である、前記[4]または[5]に記載の容器。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複雑な装置を必要とせず、簡便な方法で安定したメチルイソチオシアネート(MITC)ガス濃度を得ることができ、とくに、ハウスなどの農園芸用施設内の地上部の殺菌、殺虫および殺草を目的にした燻蒸方法を提供することができる。また従来よりも、少量の薬液で必要な量のMITCガスを発生させることができ、安価で安全性の高い燻蒸方法を提供することができる。
【0013】
従来のMITCの施用は、キルパー(登録商標)などの薬液を施設内の圃場(土壌)に対して散布しており、大量の土壌に対して、大量の薬液を多量の水で希釈して散布する必要があった。これに対して、本発明の方法によれば、容器に入れた培土などの粒状物に対して薬液を含浸させて、これに対して送風することによって効率的なガス化が実現できることによって、少量の粒状物に対して少量の薬液で十分な効果が得られる。
【0014】
本発明によれば、容器を用いることによって、施設内圃場の状態に依存せず、どんな条件でも安定したMITCガス濃度を得ることができる。また、送風からガス発生までタイムラグがあるので、発生したガスに暴露するリスクが小さく、作業者の安全性を高められる。
【0015】
さらに発生したガスは施設内の圃場への移行性が少ないので、次作定植後に薬害を生じる懸念が少ない。とくに、特許文献1のような従来技術では、MITCガス化しなかったMITCプロドラッグ剤を含むミストがハウス内の圃場に落下してしまい、事実上の土壌処理が行われたことになるため、新たに投下薬量を測定することや、残留性試験が必要となるため、農園芸用施設内の地上部を燻蒸する方法としては実用性に乏しいものであったが、本発明では、ガス化したMITCのみが空中に放出され、MITCガス化しなかったMITCプロドラッグ剤が容器内に止まるため、MITCプロドラッグ剤の金属キレート形成などによる施設内の金属器材の腐食の虞がなく、施設を劣化させることなく燻蒸処理を行うことができる。
また持ち運び可能な容器を用いることによって、燻蒸処理後に容器を施設外に出すことができ、燻蒸処理から2日後程度で施設内での作業が可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、一態様において、メチルイソチオシアネート(MITC)を用いて農園芸用施設内を燻蒸する方法に関する。
本発明に係る方法では、農園芸用施設内で、MITCプロドラッグ剤を含浸させた粒状物が入れられた通気部を備えた容器に向けて送風することを含む。
本発明に係る方法を用い得る農園芸用施設は、燻蒸する際にMITCを用い得る農園芸用施設であれば、とくに限定されない。典型的には、ガラスハウス、プラスチックハウス、ビニールハウス、屋根型ハウス、丸型ハウスなどの各種の農園芸用ハウスなどが挙げられる。
【0017】
農園芸用施設の大きさは、とくに限定されない。本発明に係る方法は、一般的な、棟高2.2m程度のパイプハウスや、棟高3.3m程度のガラスハウスにおいても用いることができる。農園芸用施設の大きさは、床面積(S)が、1~200m程度、とくに10~150m程度であってもよく、体積(V)が、0.5~500m程度、とくに20~400m程度であってもよい。
また、農園芸用施設の床面積(S(m))と体積(V(m))との比は、典型的には、1:0.5以上であり、1:2~1:4程度であってもよい。
【0018】
本発明に用いられるMITCプロドラッグ剤は、
CHNHCS (式中、Xは、Na、K、またはNHである)
で表されるカーバム剤、または、ダゾメット剤である。
カーバム剤のうち、カーバムナトリウム塩は、キルパー(登録商標)の商品名で市販されており、カーバムアンモニウム塩は、NCS剤として市販されている。
ダゾメット剤(C10)は、ガスタード(登録商標)やバスアミド(登録商標)の商品名で市販されている。
【0019】
本発明に用いられる粒状物は、とくに限定されないが、培土を用いることが好ましい。ここで培土とは、栽培用土壌のことをいい、黒土、赤玉土、培養土などの土壌類や、バーミキュライト、ピートモス、パーライト、腐葉土などの基材類などが挙げられる。本発明に係る方法には、とくに限定されないが、前記の土壌類や基材類を単独で、または、適宜、混合したものが培土として用いられ得る。
本発明の容器に入れられた培土などの粒状物には、作付けはされていない。処理に用いられた培土などの粒状物は、処理後も耕作用途に使うことはなく、本発明の方法に再利用されるか、ハウス外の非耕作地などに廃棄される。
【0020】
本発明に係る方法では、一例として、通気部を備えた容器に、培土などの粒状物を入れ、該粒状物にMITCプロドラッグ剤を含浸させた後に、前記容器に向けて送風することによって、MITCガスを発生させる。
【0021】
ここで通気部を備えた容器は、開放容器であればとくに限定されない。任意の材質および任意の形状の開放容器を用いることができる。典型的には、六面体状の容器の上面の蓋がなく、かかる上面が通気部となっていてもよいし、さらに任意の面に複数の小さな穴が開いていて、かかる穴が通気部となっていてもよい。本発明に係る方法に用い得る通気部を備えた容器は、好ましくは、一般的に農作業などで使用するパレットやバットなどの農園芸用平底樹脂容器である。農園芸用平底樹脂容器は、典型的には、上面がなく、側面および底面がメッシュ状になっており、上面およびメッシュ面が通気部となっている。容器は、持ち運び可能であることが好ましい。
【0022】
本発明は、一態様において、メチルイソチオシアネート(MITC)を用いて農園芸用施設内を燻蒸する方法に用いるための、通気部を備えた容器に関する。
本発明に係る通気部を備えた容器は、該容器内に、メチルイソチオシアネート(MITC)プロドラッグ剤を含浸させた粒状物を含む。
【0023】
本発明に係る方法では、カーバム剤(CHNHCS (式中、Xは、Na、K、またはNHである)、または、ダゾメット剤の薬液を、通気部を備えた容器に入れた少量の培土などの粒状物に含浸させて、該粒状物へ容器の通気部を介して送風することによって、容易に、かつ、確実に、農園芸用施設の地上部の殺菌、殺虫、殺草などの目的に必要な量のMITCガスを発生させることができる。
【0024】
薬液の粒状物への含浸は、任意の方法で行うことができ、含浸の程度も任意に調節できる。例えば、粒状物に薬液を注いでもよいし、粒状物の表面に薬液を散布することによって、または、粒状物の表面への薬液の散布後に軽く混ぜることによって行うことができる。
【0025】
地上部の燻蒸目的では、MITCガスの濃度は、60ppm以上であればよく、燻蒸後に速やかに作業を行うためには、好ましくは、100ppm~300ppm、さらに好ましくは、150ppm~300ppm程度である。
【0026】
本発明に係る方法において用いる薬液と粒状物の量は、燻蒸処理する施設の大きさなどを考慮して、夫々、適宜調整することができる。例えば、薬量を5~20mL/m(施設の体積当たり)の範囲の量を選択し、粒状物(培土など)の量を薬量の2~10倍程度の量、好ましくは3~6倍程度の量とすることができる。
【0027】
本発明に係る方法において、送風手段は、とくに限定されない。送風手段としては、例えば、携帯型扇風機、電源扇風機、ブロワーなどを用いることができる。また、施設内の暖房ダクト送風機などの既存設備を利用することも可能である。
【0028】
容器への送風は、通気部を介して粒状物に向けられる。かかる送風によって、燻蒸に十分な量のMITCガスの発生を促進することができる。ここで送風は、土壌などの粒状物の層の厚さに応じて、適宜、強さを調整できる。送風の強さは、土壌表面に向けて、例えば、0.1m/s~3.0m/s程度、好ましくは、0.5m/s~2.5m/s程度の比較的弱い送風が好ましい。過剰な送風は、施設内飛散物(微粒ごみ)を生じるとの観点から、好ましくない場合もある。
【0029】
また送風時間は、発生したMICTガスが施設内に行き渡れば、とくに限定されないが、例えば、0.5~24時間程度、好ましくは4~24時間程度、さらに好ましくは6~24時間程度である。比較的弱い送風を比較的長い時間をかけて送ることが望ましい。
【0030】
送風は、温度調整する必要はなく、施設内の温度で送風することができる。低温時では、温風送風としてもよい。例えば、施設内の温度が、20~25℃以下の場合、25~30℃程度の温風を送風することが好ましい。
施設内の温度は、15℃~45℃程度であれば、送風によるMITCガスの発生が十分に行うことができる。施設内の温度は、25℃以上であることが好ましい。
【0031】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は下記の実施例のみに限定されるものではない。
【実施例0032】
実施例1 培土への送風効果
ミニハウス(床面積S=1.2m、体積V=1.8m)に対して、薬剤(キルパー40(登録商標))を8.3mL/m(5.5mL/m)の薬量で、培土を薬量の5.4倍量用いて試験を行った。
培土は、黒土とバーミキュライトとを1:1で混合したものを用いた。
【0033】
培土は、園芸用4号鉢皿(外径10cm、樹脂製)、土壌層3cmとなるように入れ、培土表面に薬液を散布して含浸させた。
施設内の温度は、25~28℃であった。
送風は、送風なし、携帯扇風機を用いて、0.5、1.0、2.0m/sで培土表面に向けて行った。
ガス化したMITCの濃度(単位:ppm(容量L/容量L))を、測定器:MITC検知管 245UM(光明理化学工業製)を用いて、施設の妻面で1.2~1.5m高さで100mL空気を吸引し測定した。
【0034】
【表1】
【0035】
上記の結果に示すとおり、送風量を0.5~2.0m/s程度にすることによって、MITCプロドラッグ剤から十分な量のMITCガスが発生した。送風量を大きくすることによって、多くのMITCガスが得られるが、送風量は、最大でも3.0m/s程度あれば十分であった。
【0036】
実施例2 各種培土を用いたメチルイソチオシアネート(MITC)のガス化
トンネル型農園芸用施設(床面積S=1.2m、体積V=0.75m)に対して、薬剤(キルパー40(登録商標))を3.3mL/m(5.28mL/m)の薬量で、培土を薬量の5倍量用いて、調製した各種培土について試験を行った。
培土は、市販の園芸培土(ピートモス・バーミキュライト等混合の苗床培土。pH=6)および黒土を用い、園芸培土のみ、園芸培土と黒土を2:1で混合したもの、園芸培土と黒土を1:1で混合したものを調製した。
【0037】
培土は、園芸用4号鉢皿(外径10cm、樹脂製)、土壌層約1cmとなるように入れ、培土表面に薬液を散布して含浸させた。
施設内の温度は、約30℃であった。
送風は、携帯扇風機を用いて、0.5m/sで、培土表面に向けて行った。
ガス化したMITCの濃度(単位:ppm(容量L/容量L))を、測定器:MITC検知管 245UM(光明理化学工業製)を用いて、施設の妻面で1.2~1.5m高さで100mL空気を吸引し測定した。
結果を表2に示す。
【0038】
【表2】
【0039】
上記の結果に示すとおり、培土の種類に関係なく、施設内の燻蒸に必要量のMITCガスが得られた。バーミキュライト、パーライト、ピートモス等の基材類と黒土等の混合体に薬剤を混ぜることで安定したガス化が得られた。なお、培土の混合作業に関し、薬剤とバーミキュライト等を混ぜた後に黒土等を混ぜるなど、混合の順序を変えてもMITCガスの発生に問題は生じなかった。
【0040】
実施例3 ダゾメットをプロドラッグ剤として用いたメチルイソチオシアネート(MITC)のガス化
トンネル型農園芸用施設(床面積S=1.2m、体積V=0.75m)に対して、薬剤(ダゾメット)を6mL/m(9.6mL/m)の薬量で、培土を薬量の6倍量用いて、調製した培土について試験を行った。
培土は、市販の園芸培土(ピートモス・バーミキュライト等混合の苗床培土および黒土を2:1で混合したものを調製した。
培土は鉢皿容器(半径4cm)に混合培土を入れ培土に薬剤を散布し混合した。
但し培土は事前に水を添加し培土水分を30%程度に調整した。
試験内温度は38℃であった。送風は、携帯扇風機を用いて、0.5m/sで、培土表面に向けて行った。
ガス化したMITCの濃度(単位:ppm(容量L/容量L))を、測定器:MITC検知管 245UM(光明理化学工業製)を用いて、施設の妻面で1.2~1.5m高さで100mL空気を吸引し測定した。
結果を表3に示す。
【0041】
【表3】
【0042】
上記の結果に示すとおり、MITCプロドラッグ剤としてダゾメット剤を用いた場合であってもMITCガス化が効率よく行われた。
【0043】
実施例4 実場面における実施例
培土を用いるガス化方法を令和3年12月20日に現場施設で実証した。
ガラス園芸用施設(床面積S=105m、体積V=388m)に対して、薬剤(キルパー(登録商標))を55.4L/m(15mL/m)の薬量で、培土を薬量の約5倍量用いて、調製した培土について試験を行った。
培土は、市販の園芸培土バーミキュライトと黒土とを処理前に1:1で混合したものを調製した。
【0044】
培土は、蓋のないプラスチック容器(縦82cm×横200cm×高さ5cm)2個に充填した。
施設内の温度は、平均20℃であった。
送風は、携帯充電式小型扇風機を各容器2個設置し、風速約1~1.5m/sで、培土表面に向けて約6時間以上行った。
ガス化したMITCの濃度(単位:ppm(容量L/容量L))を、測定器:MITC検知管 245UM(光明理化学工業製)を用いて、施設の妻面で1.2~1.5m高さで100mL空気を吸引し測定した。
結果を表4に示す。
【0045】
【表4】
【0046】
上記の結果に示すとおり、実場面においてもMITCガス化が効率よく行われ、燻蒸に必要な濃度が確保された。