(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006459
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】導電性フィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/18 20060101AFI20240110BHJP
H01B 1/24 20060101ALI20240110BHJP
B32B 7/025 20190101ALI20240110BHJP
B32B 7/022 20190101ALI20240110BHJP
C08K 3/017 20180101ALI20240110BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20240110BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20240110BHJP
C08L 23/00 20060101ALI20240110BHJP
C08L 77/00 20060101ALI20240110BHJP
C08L 67/00 20060101ALI20240110BHJP
C08L 25/06 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B32B27/18 J
H01B1/24 B
B32B7/025
B32B7/022
C08K3/017
C08K3/04
C08L101/00
C08L23/00
C08L77/00
C08L67/00
C08L25/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107332
(22)【出願日】2022-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100150072
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 賢司
(74)【代理人】
【識別番号】100185719
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 悠樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 一喜
(72)【発明者】
【氏名】城下 知輝
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 治
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
5G301
【Fターム(参考)】
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5G301DD08
(57)【要約】
【課題】導電性フィラーを含む導電性フィルムであって、引張破断伸度及び引裂強さの両方の観点で十分な特性を有する導電性フィルムを提供する。
【解決手段】導電性フィルムは、第1層と、第2層と、中間層とを備える。中間層は、第1層と第2層との間に形成されている。第1層及び第2層の各々は、第1樹脂と導電性フィラーとを含む。中間層は、第2樹脂と導電性フィラーとを含む。第1層のヤング率を中間層のヤング率で除した結果は1よりも大きい。第2層のヤング率を中間層のヤング率で除した結果は1よりも大きい。導電性フィルムの厚みに対する中間層の厚みの比率は、0.2よりも大きく、0.7よりも小さい。導電性フィルムの体積抵抗率は40Ω・cm以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性フィルムであって、
第1層と、
第2層と、
前記第1層と前記第2層との間に形成された中間層とを備え、
前記第1層及び前記第2層の各々は、第1樹脂と導電性フィラーとを含み、
前記中間層は、第2樹脂と前記導電性フィラーとを含み、
前記第1層のヤング率を前記中間層のヤング率で除した結果は1よりも大きく、
前記第2層のヤング率を前記中間層のヤング率で除した結果は1よりも大きく、
前記導電性フィルムの厚みに対する前記中間層の厚みの比率は、0.2よりも大きく、0.7よりも小さく、
前記導電性フィルムの体積抵抗率は40Ω・cm以下である、導電性フィルム。
【請求項2】
前記導電性フィラーは、導電性炭素フィラーを含む、請求項1に記載の導電性フィルム。
【請求項3】
前記第1樹脂及び前記第2樹脂は、オレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂又はそれらのエラストマーから選ばれる少なくとも1つを含む、請求項1又は請求項2に記載の導電性フィルム。
【請求項4】
前記第2樹脂は、LDPE(Low Density Polyethylene)、LLDPE(Linear Low Density Polyethylene)又はエラストマーである、請求項1又は請求項2に記載の導電性フィルム。
【請求項5】
前記中間層における前記導電性フィラーの濃度は、前記第1層及び前記第2層の各々における前記導電性フィラーの濃度よりも低い、請求項1又は請求項2に記載の導電性フィルム。
【請求項6】
前記中間層において、前記中間層を構成する組成物全体に占める前記第2樹脂の含有量の割合は、5wt%以上である、請求項1又は請求項2に記載の導電性フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2019-179732号公報(特許文献1)は、導電性フィルムを開示する。この導電性フィルムは、結晶性オレフィン系樹脂と、熱可塑性エラストマーと、導電性フィラーとを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示されるような導電性フィルムにおいて、導電性フィラーの添加量が増加すると、導電性は高まる。しかしながら、導電性フィラーの添加量が増加すると、導電性フィルムが脆くなる。例えば、導電性フィルムの引張破断伸度及び引裂強さの少なくとも一方が低下する。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであって、その目的は、導電性フィラーを含む導電性フィルムであって、引張破断伸度及び引裂強さの両方の観点で十分な特性を有する導電性フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に従う導電性フィルムは、第1層と、第2層と、中間層とを備える。中間層は、第1層と第2層との間に形成されている。第1層及び第2層の各々は、第1樹脂と導電性フィラーとを含む。中間層は、第2樹脂と導電性フィラーとを含む。第1層のヤング率を中間層のヤング率で除した結果は1よりも大きい。第2層のヤング率を中間層のヤング率で除した結果は1よりも大きい。導電性フィルムの厚みに対する中間層の厚みの比率は、0.2よりも大きく、0.7よりも小さい。導電性フィルムの体積抵抗率は40Ω・cm以下である。
【0007】
この導電性フィルムにおいては、第1層のヤング率を中間層のヤング率で除した結果が1よりも大きく、第2層のヤング率を中間層のヤング率で除した結果が1よりも大きいため、第1層及び第2層によって十分な引裂強さが確保されており、中間層によって十分な引張破断伸度が確保されている。特に、導電性フィルム全体の厚みに対する中間層の厚みの比率が、0.2よりも大きく、0.7よりも小さいため、導電性フィルムにおいては、引張破断伸度及び引裂強さの両方の観点で、十分な特性が確保されている。また、導電性フィルムの体積抵抗率が40Ω・cm以下であるため、十分な導電性が確保されている。すなわち、この導電性フィルムによれば、十分な導電性を確保しつつ、引張破断伸度及び引裂き強さの両方を確保することができる。
【0008】
上記導電性フィルムにおいて、導電性フィラーは、導電性炭素フィラーを含んでいてもよい。
【0009】
上記導電性フィルムにおいて、第1樹脂及び第2樹脂は、オレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂又はそれらのエラストマーから選ばれる少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0010】
上記導電性フィルムにおいて、第2樹脂は、LDPE(Low Density Polyethylene)、LLDPE(Linear Low Density Polyethylene)又はエラストマーであってもよい。
【0011】
上記導電性フィルムにおいて、中間層における導電性フィラーの濃度は、第1層及び第2層の各々における導電性フィラーの濃度よりも低くてもよい。
【0012】
上記導電性フィルムの中間層において、中間層を構成する組成物全体に占める上記樹脂の含有量の割合は、5wt%以上であってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、導電性フィラーを含む導電性フィルムであって、引張破断伸度及び引裂強さの両方の観点で十分な特性を有する導電性フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施の形態1に従う導電性フィルムの断面を模式的に示す図である。
【
図2】導電性フィルムの製造装置を模式的に示す図である。
【
図3】実施の形態2に従う導電性フィルムの断面を模式的に示す図である。
【
図4】実施の形態3に従う導電性フィルムの断面を模式的に示す図である。
【
図5】実施の形態3に従う導電性フィルムの製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一側面に係る実施の形態(以下、「本実施の形態」とも称する。)について、図面を用いて詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、各図面は、理解の容易のために、適宜対象を省略又は誇張して模式的に描かれている。
【0016】
[1.実施の形態1]
<1-1.導電性フィルムの構成>
図1は、本実施の形態1に従う導電性フィルム10の断面を模式的に示す図である。
図1に示されるように、導電性フィルム10は、第1層100と、第2層110と、第1層100及び第2層110の間に形成された中間層120とを含んでいる。
【0017】
第1層100及び第2層110の一方は導電性フィルム10の表面を含む表層であり、第1層100及び第2層110の他方は導電性フィルム10の裏面を含む裏層である。第1層100及び第2層110の各々は、例えば、ポリプロピレン130と導電性炭素フィラー132とを含んでいる。第1層100及び第2層110の各々においては、分散剤、酸化防止剤、アンチブロッキング剤及び紫外線防止剤等の添加剤の一部又は全部がさらに含まれていてもよい。
【0018】
ポリプロピレン130の一例としては、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン及び酸変性ポリプロピレンが挙げられる。
【0019】
また、導電性炭素フィラー132の一例としては、例えば、黒鉛(グラファイト)、カーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルランプブラック等)、カーボンナノチューブ及びこれらの混合物が挙げられる。
【0020】
中間層120は、第1層100及び第2層110によって挟まれている。中間層120は、例えば、LDPE(Low Density Polyethylene)134と導電性炭素フィラー132とを含んでいる。中間層120においては、分散剤、酸化防止剤、アンチブロッキング剤及び紫外線防止剤等の添加剤の一部又は全部、並びに、他の樹脂の少なくとも一方がさらに含まれていてもよい。LDPE134は、ポリプロピレン130よりも高い柔軟性を有する。例えば、LDPE134は、ポリプロピレン130と比較して、高い引張破断強度、及び、高い引張破断伸度の少なくとも一方を有する。中間層120において、中間層120を構成する組成物全体に占めるLDPE134の含有量の割合は、5wt%以上であってもよく、好ましくは10wt%以上であってもよい。
【0021】
導電性フィルム10において、導電性フィルム10の厚みに対する中間層120の厚みの比率は、0.2よりも大きく、0.7よりも小さいことが好ましい。また、導電性フィルム10の厚みに対する中間層120の厚みの比率は、0.25以上、0.45以下であることがさらに好ましく、0.25以上、0.4以下であることがより好ましい。また、導電性フィルム10の体積抵抗率は、40Ω・cm以下である。
【0022】
また、第1層100のヤング率を中間層120のヤング率で除した結果は1よりも大きく、第2層110のヤング率を中間層120のヤング率で除した結果は1よりも大きい。この導電性フィルム10においては、第1層100のヤング率を中間層120のヤング率で除した結果が1よりも大きく、第2層110のヤング率を中間層120のヤング率で除した結果が1よりも大きいため、第1層100及び第2層110によって十分な引裂強さが確保され、中間層120によって十分な引張破断伸度が確保される。
【0023】
また、中間層120の引張破断伸度を第1層100の引張破断伸度で除した結果は1よりも大きく、中間層120の引張破断伸度を第2層110の引張破断伸度で除した結果は1よりも大きくてもよい。この導電性フィルム10においては、中間層120の引張破断伸度を第1層100の引張破断伸度で除した結果が1よりも大きく、中間層120の引張破断伸度を第2層110の引張破断伸度で除した結果が1よりも大きいため、中間層120によって十分な引張破断伸度が確保され、第1層100及び第2層110によって十分な引裂強さが確保される。
【0024】
このように、導電性フィルム10においては、第1層100及び第2層110の間に中間層120が設けられている。このような構成は、引張破断伸度及び引裂強さの両方の観点で十分な特性を確保するために採用されている。
【0025】
導電性フィルム10においては、第1層100及び第2層110にポリプロピレン130が含まれている。ポリプロピレン130が高い引裂強さを有し、第1層100及び第2層110にポリプロピレン130が含まれているため、導電性フィルム10においては、十分な引裂強さが確保されている。また、導電性フィルム10においては、中間層120にLDPE134が含まれている。LDPE134が高い引張破断伸度を有し、中間層120にLDPE134が含まれているため、導電性フィルム10においては、十分な引張破断伸度が確保されている。
【0026】
また、導電性フィルム10において、導電性フィルム10の厚みに対する中間層120の厚みの比率は、例えば、0.2よりも大きく、0.7よりも小さい。導電性フィルム10の厚みに対する中間層120の厚みの比率が適切な範囲に収まっているため、導電性フィルム10においては、引張破断伸度及び引裂強さの両方の観点で、十分な特性が確保されている。また、導電性フィルム10においては、導電性フィルム10の体積抵抗率が40Ω・cm以下であるため、十分な導電性が確保されている。すなわち、本実施の形態1に従う導電性フィルム10によれば、十分な導電性を確保しつつ、引張破断伸度及び引裂き強さの両方を確保することができる。
【0027】
<1-2.導電性フィルムの製造方法>
図2は、導電性フィルム10の製造装置200を模式的に示す図である。
図2に示されるように、製造装置200は、Tダイ210と、原料投入部220,230,240とを含んでいる。
【0028】
原料投入部220には、第1層100を形成するための原料が投入される。原料投入部220には、例えば、ポリプロピレン130と導電性炭素フィラー132とが投入される。原料投入部240には、第2層110を形成するための原料が投入される。原料投入部240には、例えば、ポリプロピレン130と導電性炭素フィラー132とが投入される。原料投入部230には、中間層120を形成するための原料が投入される。原料投入部230には、例えば、LDPE134と導電性炭素フィラー132とが投入される。
【0029】
Tダイ210は、原料投入部220,230,240を介して投入された原料を共押出しすることによって、各原料投入部に投入された原料の溶融物同士を融着させて1枚の一体化したフィルムとするように構成されている。すなわち、Tダイ210は、原料投入部220,230,240を介して投入された原料に基づいて導電性フィルム10を生成するように構成されている。このように、導電性フィルム10は、例えば、製造装置200によって、第1層100、中間層120及び第2層110が積層されることによって製造される。
【0030】
<1-3.特徴>
以上のように、本実施の形態1に従う導電性フィルム10においては、第1層100のヤング率を中間層120のヤング率で除した結果が1よりも大きく、第2層110のヤング率を中間層120のヤング率で除した結果が1よりも大きいため、第1層100及び第2層110によって十分な引裂強さが確保されており、中間層120によって十分な引張破断伸度が確保されている。特に、導電性フィルム10全体の厚みに対する中間層120の厚みの比率が、0.2よりも大きく、0.7よりも小さいため、導電性フィルム10においては、引張破断伸度及び引裂強さの両方の観点で、十分な特性が確保されている。また、導電性フィルム10の体積抵抗率が40Ω・cm以下であるため、十分な導電性が確保されている。すなわち、この導電性フィルム10によれば、十分な導電性を確保しつつ、引張破断伸度及び引裂き強さの両方を確保することができる。
【0031】
また、本実施の形態1に従う導電性フィルム10においては、中間層120の引張破断伸度を第1層100の引張破断伸度で除した結果が1よりも大きく、中間層120の引張破断伸度を第2層110の引張破断伸度で除した結果が1よりも大きくてもよい。この場合には、中間層120によって十分な引張破断伸度が確保され、第1層100及び第2層110によって十分な引裂強さが確保される。特に、導電性フィルム10全体の厚みに対する中間層120の厚みの比率が、0.2よりも大きく、0.7よりも小さいため、導電性フィルム10においては、引張破断伸度及び引裂強さの両方の観点で、十分な特性が確保される。また、導電性フィルム10の体積抵抗率が40Ω・cm以下であるため、十分な導電性が確保される。すなわち、導電性フィルム10によれば、十分な導電性を確保しつつ、引張破断伸度及び引裂き強さの両方を確保することができる。
【0032】
また、本実施の形態1に従う導電性フィルム10においては、第1層100及び第2層110にポリプロピレン130(第1樹脂の一例)が含まれているため十分な引裂強さが確保されており、中間層120にポリプロピレン130よりも高い柔軟性を有するLDPE134(第2樹脂の一例)が含まれているため十分な引張破断伸度が確保されている。特に、導電性フィルム10全体の厚みに対する中間層120の厚みの比率が、0.2よりも大きく、0.7よりも小さいため、引裂強さが十分に確保されている。また、導電性フィルム10の体積抵抗率が40Ω・cm以下であるため、十分な導電性が確保されている。すなわち、本実施の形態1に従う導電性フィルム10によれば、十分な導電性を確保しつつ、引張破断伸度及び引裂き強さの両方を確保することができる。
【0033】
[2.実施の形態2]
上記実施の形態1に従う導電性フィルム10において、中間層120は、LDPE134と導電性炭素フィラー132とによって構成されていた。しかしながら、中間層120の構成はこれに限定されない。本実施の形態2に従う導電性フィルム10Aにおいて、中間層120Aは、上記実施の形態1に従う導電性フィルム10における中間層120と異なる構成を有する。以下、本実施の形態2に従う導電性フィルム10Aについて説明する。なお、以下では、主に上記実施の形態1と異なる点について説明し、上記実施の形態1と共通する部分については説明を繰り返さない。
【0034】
<2-1.導電性フィルムの構成>
図3は、本実施の形態2に従う導電性フィルム10Aの断面を模式的に示す図である。
図2に示されるように、導電性フィルム10Aは、第1層100と、第2層110と、第1層100及び第2層110の間に形成された中間層120Aとを含んでいる。なお、第1層100及び第2層110の各々の構成は、上記実施の形態1と同様である。
【0035】
中間層120Aは、第1層100及び第2層110によって挟まれている。中間層120Aは、例えば、ポリプロピレン130と、LDPE134と、導電性炭素フィラー132とを含んでいる。中間層120Aにおいては、分散剤、酸化防止剤、アンチブロッキング剤及び紫外線防止剤等の添加剤の一部又は全部、並びに、他の樹脂の少なくとも一方がさらに含まれていてもよい。中間層120Aにおいて、中間層120Aを構成する組成物全体に占めるLDPE134の含有量の割合は、5wt%以上であってもよく、好ましくは10wt%以上であってもよい。
【0036】
導電性フィルム10Aにおいて、導電性フィルム10Aの厚みに対する中間層120Aの厚みの比率は、0.2よりも大きく、0.7よりも小さいことが好ましい。また、導電性フィルム10Aの厚みに対する中間層120Aの厚みの比率は、0.25以上、0.45以下であることがさらに好ましく、0.25以上、0.4以下であることがより好ましい。また、導電性フィルム10Aの体積抵抗率は、40Ω・cm以下である。
【0037】
また、第1層100のヤング率を中間層120Aのヤング率で除した結果は1よりも大きく、第2層110のヤング率を中間層120Aのヤング率で除した結果は1よりも大きい。この導電性フィルム10Aにおいては、第1層100のヤング率を中間層120Aのヤング率で除した結果が1よりも大きく、第2層110のヤング率を中間層120Aのヤング率で除した結果が1よりも大きいため、第1層100及び第2層110によって十分な引裂強さが確保され、中間層120Aによって十分な引張破断伸度が確保される。
【0038】
また、中間層120Aの引張破断伸度を第1層100の引張破断伸度で除した結果は1よりも大きく、中間層120Aの引張破断伸度を第2層110の引張破断伸度で除した結果は1よりも大きくてもよい。この導電性フィルム10Aにおいては、中間層120Aの引張破断伸度を第1層100の引張破断伸度で除した結果が1よりも大きく、中間層120Aの引張破断伸度を第2層110の引張破断伸度で除した結果が1よりも大きいため、中間層120Aによって十分な引張破断伸度が確保され、第1層100及び第2層110によって十分な引裂強さが確保される。
【0039】
導電性フィルム10Aにおいては、第1層100及び第2層110にポリプロピレン130が含まれているため十分な引裂強さが確保されており、中間層120Aにポリプロピレン130よりも高い柔軟性を有するLDPE134が含まれているため十分な引張破断伸度が確保されている。特に、導電性フィルム10A全体の厚みに対する中間層120Aの厚みの比率が、0.2よりも大きく、0.7よりも小さいため、導電性フィルム10Aにおいては、引張破断伸度及び引裂強さの両方の観点で、十分な特性が確保されている。また、導電性フィルム10Aの体積抵抗率が40Ω・cm以下であるため、十分な導電性が確保されている。すなわち、本実施の形態2に従う導電性フィルム10Aによれば、十分な導電性を確保しつつ、引張破断伸度及び引裂き強さの両方を確保することができる。
【0040】
<2-2.導電性フィルムの製造方法>
導電性フィルム10Aは、例えば、
図2に示される製造装置200によって製造される。再び
図2を参照して、原料投入部220には、第1層100を形成するための原料が投入される。原料投入部220には、例えば、ポリプロピレン130と導電性炭素フィラー132とが投入される。原料投入部240には、第2層110を形成するための原料が投入される。原料投入部240には、例えば、ポリプロピレン130と導電性炭素フィラー132とが投入される。原料投入部230には、中間層120を形成するための原料が投入される。原料投入部230には、例えば、ポリプロピレン130と、LDPE134と、導電性炭素フィラー132とが投入される。
【0041】
Tダイ210は、原料投入部220,230,240を介して投入された原料を共押出しすることによって、各原料投入部に投入された原料の溶融物同士を融着させて1枚の一体化したフィルムとするように構成されている。すなわち、Tダイ210は、原料投入部220,230,240を介して投入された原料に基づいて導電性フィルム10Aを生成するように構成されている。このように、導電性フィルム10Aは、例えば、製造装置200によって、第1層100、中間層120A及び第2層110が積層されることによって製造される。
【0042】
<2-3.特徴>
以上のように、本実施の形態2に従う導電性フィルム10Aにおいては、第1層100のヤング率を中間層120Aのヤング率で除した結果が1よりも大きく、第2層110のヤング率を中間層120Aのヤング率で除した結果が1よりも大きいため、第1層100及び第2層110によって十分な引裂強さが確保されており、中間層120Aによって十分な引張破断伸度が確保されている。特に、導電性フィルム10A全体の厚みに対する中間層120Aの厚みの比率が、0.2よりも大きく、0.7よりも小さいため、導電性フィルム10Aにおいては、引張破断伸度及び引裂強さの両方の観点で、十分な特性が確保されている。また、導電性フィルム10Aの体積抵抗率が40Ω・cm以下であるため、十分な導電性が確保されている。すなわち、この導電性フィルム10Aによれば、十分な導電性を確保しつつ、引張破断伸度及び引裂き強さの両方を確保することができる。
【0043】
また、本実施の形態2に従う導電性フィルム10Aにおいては、中間層120Aの引張破断伸度を第1層100の引張破断伸度で除した結果が1よりも大きく、中間層120Aの引張破断伸度を第2層110の引張破断伸度で除した結果が1よりも大きくてもよい。この場合には、中間層120Aによって十分な引張破断伸度が確保され、第1層100及び第2層110によって十分な引裂強さが確保される。特に、導電性フィルム10A全体の厚みに対する中間層120Aの厚みの比率が、0.2よりも大きく、0.7よりも小さいため、導電性フィルム10Aにおいては、引張破断伸度及び引裂強さの両方の観点で、十分な特性が確保される。また、導電性フィルム10Aの体積抵抗率が40Ω・cm以下であるため、十分な導電性が確保される。すなわち、導電性フィルム10Aによれば、十分な導電性を確保しつつ、引張破断伸度及び引裂き強さの両方を確保することができる。
【0044】
また、本実施の形態2に従う導電性フィルム10Aにおいては、第1層100及び第2層110にポリプロピレン130が含まれているため十分な引裂強さが確保されており、中間層120Aにポリプロピレン130よりも高い柔軟性を有するLDPE134が含まれているため十分な引張破断伸度が確保されている。特に、導電性フィルム10A全体の厚みに対する中間層120Aの厚みの比率が、0.2よりも大きく、0.7よりも小さいため、導電性フィルム10Aにおいては、引張破断伸度及び引裂強さの両方の観点で、十分な特性が確保されている。また、導電性フィルム10Aの体積抵抗率が40Ω・cm以下であるため、十分な導電性が確保されている。すなわち、本実施の形態2に従う導電性フィルム10Aによれば、十分な導電性を確保しつつ、引張破断伸度及び引裂き強さの両方を確保することができる。
【0045】
[3.実施の形態3]
上記実施の形態2に従う導電性フィルム10Aの中間層120Aにおいては、ポリプロピレン130、LDPE134及び導電性炭素フィラー132が一体的に混ざり合っていた。しかしながら、中間層の構成はこれに限定されない。本実施の形態3に従う導電性フィルム10Bにおいて、中間層120Bは、上記実施の形態2に従う導電性フィルム10Aにおける中間層120Aと異なる構成を有する。以下、本実施の形態3に従う導電性フィルム10Bについて説明する。なお、以下では、主に上記実施の形態2と異なる点について説明し、上記実施の形態2と共通する部分については説明を繰り返さない。
【0046】
<3-1.導電性フィルムの構成>
図4は、本実施の形態3に従う導電性フィルム10Bの断面を模式的に示す図である。
図4を参照して、導電性フィルム10Bにおける中間層120Bは、いわゆる海島構造を有している。海島構造における海部分(以下、単に「海部分」とも称する。)は、主にポリプロピレン130と導電性炭素フィラー132とによって構成されている。海島構造における島部分(以下、単に「島部分」とも称する。)は、主にLDPE134によって構成されている。中間層120Bにおいては、ポリプロピレン130の含有量がLDPE134の含有量よりも多く、また、中間層120Bが後述の「2段製法」によって製造されるため、中間層120Bはこのような海島構造を有する。
【0047】
中間層120Bにおいては、島部分に導電性炭素フィラー132が殆ど含まれず、海部分の導電性炭素フィラー132の濃度が高く維持されるため、中間層120Bの導電性は比較的高い。例えば、中間層120Bの体積抵抗率は、10の6乗以下である。また、島部分に導電性炭素フィラー132が殆ど含まれず、島部分の引張破断伸度が大きい状態で維持されるため、中間層120Bの引張破断伸度も高く維持される。
【0048】
また、第1層100のヤング率を中間層120Bのヤング率で除した結果は1よりも大きくてもよく、第2層110のヤング率を中間層120Bのヤング率で除した結果は1よりも大きくてもよい。この導電性フィルム10Bにおいては、第1層100のヤング率を中間層120Bのヤング率で除した結果が1よりも大きく、第2層110のヤング率を中間層120Bのヤング率で除した結果が1よりも大きいため、第1層100及び第2層110によって十分な引裂強さが確保され、中間層120Bによって十分な引張破断伸度が確保される。
【0049】
また、中間層120Bの引張破断伸度を第1層100の引張破断伸度で除した結果は1よりも大きく、中間層120Bの引張破断伸度を第2層110の引張破断伸度で除した結果は1よりも大きくてもよい。この導電性フィルム10Bにおいては、中間層120Bの引張破断伸度を第1層100の引張破断伸度で除した結果が1よりも大きく、中間層120Bの引張破断伸度を第2層110の引張破断伸度で除した結果が1よりも大きいため、中間層120Bによって十分な引張破断伸度が確保され、第1層100及び第2層110によって十分な引裂強さが確保される。
【0050】
導電性フィルム10Bにおいては、第1層100及び第2層110にポリプロピレン130が含まれているため十分な引裂強さが確保されており、中間層120Bの島部分がLDPE134によって構成されているため十分な引張破断伸度が確保されている。特に、導電性フィルム10B全体の厚みに対する中間層120Bの厚みの比率が、0.2よりも大きく、0.7よりも小さいため、導電性フィルム10Bにおいては、引張破断伸度及び引裂強さの両方の観点で、十分な特性が確保されている。また、導電性フィルム10Bの体積抵抗率が40Ω・cm以下であるため、十分な導電性が確保されている。すなわち、本実施の形態3に従う導電性フィルム10Bによれば、十分な導電性を確保しつつ、引張破断伸度及び引裂き強さの両方を確保することができる。
【0051】
<3-2.導電性フィルムの製造方法>
図5は、導電性フィルム10Bの製造方法を説明するための図である。
図5を参照して、原料投入部220には、第1層100を形成するための原料が投入される。原料投入部220には、例えば、ポリプロピレン130と導電性炭素フィラー132(例えば、カーボンブラック(CB))とが投入される。原料投入部240には、第2層110を形成するための原料が投入される。原料投入部240には、例えば、ポリプロピレン130と導電性炭素フィラー132とが投入される。
【0052】
原料投入部230には、中間層120を形成するための原料が投入される。原料投入部230には、例えば、マスターバッチと、LDPE134とが投入される。マスターバッチは、例えば、粉砕されたポリプロピレン130と導電性炭素フィラー132とを溶融混練することによって予め製造されている。例えば、ポリプロピレン130と導電性炭素フィラー132とが二軸押出機に投入され、二軸押出機において溶融混練が行なわれ、マスターバッチが製造される。
【0053】
Tダイ210は、原料投入部220,230,240を介して投入された原料を共押出しすることによって、各原料投入部に投入された原料の溶融物同士を融着させて1枚の一体化したフィルムとするように構成されている。すなわち、Tダイ210は、原料投入部220,230,240を介して投入された原料に基づいて導電性フィルム10Bを生成するように構成されている。このように、導電性フィルム10Bは、例えば、製造装置200によって、第1層100、中間層120B及び第2層110が積層されることによって製造される。
【0054】
このように製造された導電性フィルム10Bにおいて、中間層120Bは、上述のように海島構造を有する。中間層120Bは、ポリプロピレン130と導電性炭素フィラー132とによってマスターバッチを製造する第1工程と、LDPE134とマスターバッチとを混合する第2工程を経て製造される。このように、中間層120Bは、2段階の工程を経て製造される。このような2段階の工程を経て中間層を製造することを、以下では、「2段製法」とも称する。一方、例えば、原料投入部230にポリプロピレン130、LDPE134及び導電性炭素フィラー132を一度に投入して中間層を製造することを、以下では、「1段製法」とも称する。
【0055】
<3-3.特徴>
以上のように、本実施の形態3に従う導電性フィルム10Bにおいては、第1層100のヤング率を中間層120Bのヤング率で除した結果が1よりも大きく、第2層110のヤング率を中間層120Bのヤング率で除した結果が1よりも大きいため、第1層100及び第2層110によって十分な引裂強さが確保されており、中間層120Bによって十分な引張破断伸度が確保されている。特に、導電性フィルム10B全体の厚みに対する中間層120Bの厚みの比率が、0.2よりも大きく、0.7よりも小さいため、導電性フィルム10Bにおいては、引張破断伸度及び引裂強さの両方の観点で、十分な特性が確保されている。また、導電性フィルム10Bの体積抵抗率が40Ω・cm以下であるため、十分な導電性が確保されている。すなわち、この導電性フィルム10Bによれば、十分な導電性を確保しつつ、引張破断伸度及び引裂き強さの両方を確保することができる。
【0056】
また、本実施の形態3に従う導電性フィルム10Bにおいては、中間層120Bの引張破断伸度を第1層100の引張破断伸度で除した結果が1よりも大きく、中間層120Bの引張破断伸度を第2層110の引張破断伸度で除した結果が1よりも大きくてもよい。この場合には、中間層120Bによって十分な引張破断伸度が確保され、第1層100及び第2層110によって十分な引裂強さが確保される。特に、導電性フィルム10B全体の厚みに対する中間層120Bの厚みの比率が、0.2よりも大きく、0.7よりも小さいため、導電性フィルム10Bにおいては、引張破断伸度及び引裂強さの両方の観点で、十分な特性が確保される。また、導電性フィルム10Bの体積抵抗率が40Ω・cm以下であるため、十分な導電性が確保される。すなわち、導電性フィルム10Bによれば、十分な導電性を確保しつつ、引張破断伸度及び引裂き強さの両方を確保することができる。
【0057】
また、本実施の形態3に従う導電性フィルム10Bにおいては、第1層100及び第2層110にポリプロピレン130が含まれているため十分な引裂強さが確保されており、中間層120Bの島部分がLDPE134によって構成されているため十分な引張破断伸度が確保されている。特に、導電性フィルム10B全体の厚みに対する中間層120Bの厚みの比率が、0.2よりも大きく、0.7よりも小さいため、導電性フィルム10Bにおいては、引張破断伸度及び引裂強さの両方の観点で、十分な特性が確保されている。また、導電性フィルム10Bの体積抵抗率が40Ω・cm以下であるため、十分な導電性が確保されている。すなわち、本実施の形態3に従う導電性フィルム10Bによれば、十分な導電性を確保しつつ、引張破断伸度及び引裂き強さの両方を確保することができる。
【0058】
[4.他の実施の形態]
上記実施の形態の思想は、以上で説明された実施の形態に限定されない。以下、上記実施の形態の思想を適用できる他の実施の形態の一例について説明する。
【0059】
<4-1>
上記実施の形態1-3の各々においては、中間層にLDPE134が含まれていた。しかしながら、中間層に含まれる樹脂は、必ずしもLDPE134でなくてもよい。例えば、中間層には、LDPE134の代わりに、エラストマー、LLDPE(Linear Low Density Polyethylene)又はHDPE(High Density Polyethylene)が含まれてもよい。要するに、中間層に含まれる樹脂は、ポリプロピレンよりも高い柔軟性を有する樹脂であればよい。
【0060】
<4-2>
また、上記実施の形態1-3の各々においては、第1層100及び第2層110の各々にポリプロピレン130が含まれていた。しかしながら、第1層100及び第2層110の各々に含まれる樹脂は、ポリプロピレン130に限定されない。各層には、例えば、オレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂又はそれらのエラストマーから選ばれる少なくとも1つが含まれていてもよい。オレフィン樹脂としては、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン又は環状ポリオレフィンが含まれることが好ましく、ポリアミド樹脂としては、ポリアミド6、ポリアミド66又はポリメタキシリレンアジパミドが含まれることが好ましく、ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレートが含まれることが好ましい。また、各層に含まれる樹脂は、エラストマーでないことが好ましい。
【0061】
ここで、環状ポリオレフィン(環状オレフィン系樹脂)は、環状オレフィン成分を共重合成分として含むものであり、環状オレフィン成分を主鎖に含むポリオレフィン系樹脂であれば、特に限定されない。環状ポリオレフィンの一例としては、環状オレフィンの付加重合体又はその水素添加物、環状オレフィンとα-オレフィンの付加共重合体又はその水素添加物等を挙げることができる。また、環状ポリオレフィンとしては、上記重合体に、さらに親水基を有する不飽和化合物をグラフト及び/又は共重合したものを含む。
【0062】
極性基としては、例えば、カルボキシル基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、アミド基、エステル基、ヒドロキシル基、スルホ基、ホスホノ基、ホスフィノ基等をあげることができ、極性基を有する不飽和化合物としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキル(炭素数1~10)エステル、マレイン酸アルキル(炭素数1~10)エステル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル等を挙げることができ、好ましくは、カルボキシル基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、アミド基、エステル基、ヒドロキシル基、スルホ基、ホスホノ基、ホスフィノ基が挙げられる。環状オレフィン系樹脂としては、環状オレフィンとα-オレフィンの付加共重合体又はその水素添加物が好ましい。
【0063】
<4-3>
また、上記実施の形態1-3の各々においては、第1層100、第2層110及び中間層の各々に導電性炭素フィラー132が含まれていた。しかしながら、各層には、必ずしも導電性炭素フィラー132が含まれている必要はない。各層には、導電性フィラーが含まれていればよい。また、各層に含まれる導電性フィラーの種類は必ずしも互いに同一である必要はない。導電性フィラーの一例としては、金属系の導電性フィラー、炭素系の導電性フィラー、金属酸化物系の導電性フィラー及び金属メッキによって構成される導電性フィラーが挙げられる。
【0064】
金属系の導電性フィラーの形状の一例としては、粉末、繊維及び箔片が挙げられる。粉末状の金属系導電性フィラーの一例としては、銀、銅、ニッケル、錫及び銀メッキ銅粉が挙げられる。繊維状の金属系導電性フィラーの一例としては、銅、ステンレス銅、アルミニウム、黄銅及び鉄繊維が挙げられる。箔片状の金属系導電性フィラーの一例としては、アルミニウム及び亜鉛箔片が挙げられる。
【0065】
炭素系の導電性フィラーの形状の一例としては、粉末及び繊維が挙げられる。粉末状の炭素系導電性フィラーの一例としては、カーボンブラック及び黒鉛が挙げられる。また、繊維状の炭素系導電性フィラーの一例としては、ナノチューブ及び炭素繊維が挙げられる。
【0066】
金属酸化物系の導電性フィラーの形状の一例としては、粉末が挙げられる。粉末状の金属酸化物系導電性フィラーの一例としては、酸化錫、酸化インジウム及び酸化亜鉛粉が挙げられる。金属メッキによって構成される導電性フィラーの形状の一例としては、粉末及び繊維が挙げられる。金属メッキによって構成される粉末状の導電性フィラーの一例としては、ガラスビーズがメッキされたもの、及び、マイカ粉がメッキされたものが挙げられる。金属メッキによって構成される繊維状の導電性フィラーの一例としては、ガラスファイバーがメッキされたもの、及び、炭素繊維がメッキされたものが挙げられる。
【0067】
以上、本発明の実施の形態について例示的に説明した。すなわち、例示的な説明のために、詳細な説明及び添付の図面が開示された。よって、詳細な説明及び添付の図面に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須でない構成要素が含まれることがある。したがって、それらの必須でない構成要素が詳細な説明及び添付の図面に記載されているからといって、それらの必須でない構成要素が必須であると直ちに認定されるべきではない。
【0068】
また、上記実施の形態は、あらゆる点において本発明の例示にすぎない。上記実施の形態は、本発明の範囲内において、種々の改良や変更が可能である。すなわち、本発明の実施にあたっては、実施の形態に応じて具体的構成を適宜採用することができる。
【0069】
[5.実施例]
<5-1.実施例及び比較例>
共押出しによって実施例1-3の各導電性フィルムを製造した。ポリプロピレン及びカーボンブラックによって、実施例1-3の各導電性フィルムの第1層及び第2層の各々を形成した。LDPE及びカーボンブラックによって、実施例1-3の各導電性フィルムの中間層を形成した。実施例1-3の各導電性フィルムは、互いに中間層の厚みが異なっていた。実施例1-3の各導電性フィルムの中間層の厚みについては後程示す。
【0070】
共押出しによって実施例4-6の各導電性フィルムを製造した。ポリプロピレン及びカーボンブラックによって、実施例4-6の各導電性フィルムの第1層及び第2層の各々を形成した。ポリプロピレン、LDPE及びカーボンブラックによって、実施例4-6の各導電性フィルムの中間層を形成した。実施例4-6の各導電性フィルムにおいて、中間層は、上述の1段製法によって形成された。実施例4-6の各導電性フィルムは、互いに中間層の厚みが異なっていた。実施例4-6の各導電性フィルムの中間層の厚みについては後程示す。
【0071】
共押出しによって実施例7の導電性フィルムを製造した。ポリプロピレン及びカーボンブラックによって、実施例7の導電性フィルムの第1層及び第2層の各々を形成した。ポリプロピレン、LDPE及びカーボンブラックによって、実施例7の導電性フィルムの中間層を形成した。中間層は、上述の2段製法によって形成された。すなわち、ポリプロピレン及びカーボンブラックによって一旦マスターバッチが製造され、その後、マスターバッチとLDPEとを混合することによって中間層が形成された。
【0072】
実施例1-7の各導電性フィルムにおける、各材料の重量パーセント濃度(wt%)、導電性フィルムの総厚み(μm)、中間層の厚み(μm)及び総厚みに対する中間層の厚みの比率の各々は、以下の表1に示す通りであった。なお、実施例4-7の各導電性フィルムにおいては、中間層におけるカーボンブラックの濃度が、第1層及び第2層の各々におけるカーボンブラックの濃度よりも低かった。
【0073】
【0074】
押出成形によって比較例1の導電性フィルムを製造した。比較例1の導電性フィルムは単層フィルムであった。ポリプロピレン及びカーボンブラックによって比較例1の導電性フィルムを形成した。
【0075】
押出成形によって比較例2の導電性フィルムを製造した。比較例2の導電性フィルムは単層フィルムであった。LDPE及びカーボンブラックによって比較例2の導電性フィルムを形成した。
【0076】
押出成形によって比較例3の導電性フィルムを製造した。比較例3の導電性フィルムは単層フィルムであった。ポリプロピレン、LDPE及びカーボンブラックによって比較例3の導電性フィルムを形成した。
【0077】
共押出しによって比較例4,5の各導電性フィルムを製造した。ポリプロピレン及びカーボンブラックによって、比較例4,5の各導電性フィルムの第1層及び第2層の各々を形成した。ポリプロピレン、LDPE及びカーボンブラックによって、比較例4,5の各導電性フィルムの中間層を形成した。比較例4,5の各導電性フィルムにおいて、中間層は、上述の1段製法によって形成された。
【0078】
押出成形によって比較例6の導電性フィルムを製造した。比較例6の導電性フィルムは単層フィルムであった。ポリプロピレン、PPエラストマー及びカーボンブラックによって比較例6の導電性フィルムを形成した。
【0079】
比較例1-6の各導電性フィルムにおける、各材料の重量パーセント濃度(wt%)、導電性フィルムの総厚み(μm)、中間層の厚み(μm)及び総厚みに対する中間層の厚みの比率の各々は、以下の表2に示す通りであった。
【0080】
【0081】
<5-2.各種測定>
実施例1-7及び比較例1-6の各導電性フィルムに関し、各層のヤング率(GPa)、各層のMD(Machine Direction)における引張破断伸度(%)、体積抵抗率(Ω・cm)、MDにおける引張破断強度(MPa)、MDにおける引張破断伸度(%)及びMDにおける直角引裂強さ(N/mm)の各々を測定した。
【0082】
各層のヤング率は、JIS K 7127に準拠した方法で測定された。具体的には、各層用に配合された原料を用いて、各層に対応する50μmの単層フィルムを成膜し、各単層フィルムのヤング率をJIS K 7127に準拠した方法で測定することによって、各層のヤング率を測定した。なお、各層のヤング率の測定は、例えば、導電性フィルムから各層を物理的又は化学的手段で分離し、分離された各層を再溶融し、各層に対応する単層フィルムを成膜し、各単層フィルムのヤング率をJIS K 7127に準拠した方法で測定することによって行なわれてもよい。
【0083】
各層のMDにおける引張破断伸度は、JIS K 7127に準拠した方法で測定された。具体的には、各層用に配合された原料を用いて、各層に対応する50μmの単層フィルムを成膜し、各単層フィルムのMDにおける引張破断伸度をJIS K 7127に準拠した方法で測定することによって、各層のMDにおける引張破断伸度を測定した。なお、各層のMDにおける引張破断伸度の測定は、例えば、導電性フィルムから各層を物理的又は化学的手段で分離し、分離された各層を再溶融し、各層に対応する単層フィルムを成膜し、各単層フィルムのMDにおける引張破断伸度をJIS K 7127に準拠した方法で測定することによって行なわれてもよい。
【0084】
体積抵抗率は、JIS K 7194に準拠した方法で測定された。引張破断強度は、JIS K 7127に準拠した方法で測定された。引張破断伸度は、JIS K 7127に準拠した方法で測定された。直角引裂強さは、JIS-K 7128-3に準拠した方法で測定された。
【0085】
<5-3.結果>
実施例1-7の各導電性フィルムに関する測定結果は、以下の表3に示す通りであった。
【0086】
【0087】
比較例1-6の各導電性フィルムに関する測定結果は、以下の表4に示す通りであった。
【0088】
【0089】
表3,4に示されるように、実施例1-7の各導電性フィルムにおいては、各測定項目について十分な値が得られた。一方、比較例1-6の各導電性フィルムにおいては、少なくとも何れかの測定項目について十分な結果が出なかった。例えば、表4において、強調表示されている項目に関して十分な結果が出なかった。
【符号の説明】
【0090】
10,10A,10B 導電性フィルム、100 第1層、110 第2層、120,120A,120B 中間層、130 ポリプロピレン、132 導電性炭素フィラー、134 LDPE、200 製造装置、210 Tダイ、220,230,240 原料投入部。