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特開2024-64598アンモニア除害システム、浮体、及びアンモニア除害方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064598
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】アンモニア除害システム、浮体、及びアンモニア除害方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/14 20060101AFI20240507BHJP
   B63J 4/00 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
B01D53/14 200
B63J4/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173295
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】高松 皆光
(72)【発明者】
【氏名】山田 大祐
(72)【発明者】
【氏名】吉田 篤史
【テーマコード(参考)】
4D020
【Fターム(参考)】
4D020AA10
4D020BA23
4D020CB01
4D020CB25
4D020CB31
4D020CC01
4D020DA01
4D020DA02
4D020DB20
(57)【要約】
【課題】パージの際における、アンモニアの吸収性を確保する。
【解決手段】アンモニア除害システムは、アンモニアを吸収可能な吸収液を貯留する第一タンクと、前記第一タンクにアンモニア及び不活性ガスを含むパージガスを導入可能な第一導入ラインと、前記第一タンクでの前記吸収液によるアンモニアの吸収を促進させる第一吸収促進部と、前記第一タンクの液相から液体を排出可能な第一液体排出ラインと、前記第一タンクの気相から気体を排出可能な第一気体排出ラインと、前記第一タンクとは独立して設けられた第二タンクと、前記第一タンクの上部の気相と前記第二タンクの上部とを接続する上部接続ラインと、前記接続ラインに設けられて、前記第一タンクの気相の圧力に応じて開閉可能な圧力調整弁と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニアを吸収可能な吸収液を貯留する第一タンクと、
前記第一タンクにアンモニア及び不活性ガスを含むパージガスを導入可能な第一導入ラインと、
前記第一タンクでの前記吸収液によるアンモニアの吸収を促進させる第一吸収促進部と、
前記第一タンクの液相から液体を排出可能な第一液体排出ラインと、
前記第一タンクの気相から気体を排出可能な第一気体排出ラインと、
前記第一タンクとは独立して設けられた第二タンクと、
前記第一タンクの上部の気相と前記第二タンクの上部とを接続する上部接続ラインと、
前記上部接続ラインに設けられて、前記第一タンクの気相の圧力に応じて開閉可能な圧力調整弁と、
を備えるアンモニア除害システム。
【請求項2】
前記圧力調整弁は、
前記第一タンクの気相の圧力が、予め設定された基準圧力以上となった場合に開き、前記第一タンクの気相を前記第二タンクの上部と連通させる
請求項1に記載のアンモニア除害システム。
【請求項3】
前記第一タンクの下部の液相と前記第二タンクの下部とを接続する下部接続ラインと、
前記下部接続ラインに設けられて、前記第一タンクの気相の圧力に応じて開閉可能な液位調整弁と、
を更に備える
請求項1又は2に記載のアンモニア除害システム。
【請求項4】
前記液位調整弁は、
前記第一タンクの気相の圧力が、予め設定された基準圧力以上となった場合に開き、前記第一タンクの液相を前記第二タンクの下部と連通させる
請求項3に記載のアンモニア除害システム。
【請求項5】
前記液位調整弁は、
前記第一タンクの気相の圧力が、予め設定された下限圧力未満となった場合に開き、前記第二タンクの液相の液体を前記第一タンクの下部に戻す
請求項4に記載のアンモニア除害システム。
【請求項6】
前記第二タンクは、アンモニアを吸収可能な吸収液を貯留し、
前記第二タンクにアンモニア及び不活性ガスを含むパージガスを導入可能な第二導入ラインと、
前記第二タンクでの前記吸収液によるアンモニアの吸収を促進させる第二吸収促進部と、を備える
請求項1又は2に記載のアンモニア除害システム。
【請求項7】
前記第一気体排出ラインを通して前記第一タンクから排出される前記気相の気体の流量を調整する流量調整弁を更に備える
請求項1又は2に記載のアンモニア除害システム。
【請求項8】
第一吸収促進部は、
前記第一タンク内に吸収液を散水するスプレー、前記パージガスを前記第一タンク内の前記吸収液中に散気するノズル、及び前記第一タンク内に送り込む吸収液の流れに前記第一タンク内の気相の気体を吸い込ませるエジェクター、の少なくとも一つを備える
請求項1又は2に記載のアンモニア除害システム。
【請求項9】
前記第一タンク内の液相の液体を、前記第一吸収促進部に循環させる第一循環ラインを更に備える
請求項1又は2に記載のアンモニア除害システム。
【請求項10】
アンモニアを吸収可能な吸収液を貯留する第一タンクと、
前記第一タンクにアンモニア及び不活性ガスを含むパージガスを導入可能な第一導入ラインと、
前記第一タンクでの前記吸収液によるアンモニアの吸収を促進させる第一吸収促進部と、
前記第一タンクの液相から液体を排出可能な第一液体排出ラインと、
前記第一タンクの気相から気体を排出可能な第一気体排出ラインと、
第一タンクとは独立して設けられた第二タンクと、
前記第一タンクの下部の液相と前記第二タンクの下部とを接続する下部接続ラインと、
前記下部接続ラインに設けられて、前記第一タンクの気相の圧力に応じて開閉可能な液位調整弁と、
を備えるアンモニア除害システム。
【請求項11】
浮体本体と、
請求項1又は2に記載のアンモニア除害システムと、を備える
浮体。
【請求項12】
請求項1又は2に記載のアンモニア除害システムにおけるアンモニア除害方法であって、
第一タンクにアンモニアを吸収可能な吸収液を貯留する工程と、
前記第一タンクにアンモニア及び不活性ガスを含むパージガスを導入する工程と、
前記第一タンクに導入する前記パージガスに含まれるアンモニアを、前記吸収液により吸収させる工程と、
前記第一タンクの気相が、予め設定された基準圧力以上となった場合に、前記第一タンクの上部の気相の気体を前記第二タンクに移送する工程と、を含む
アンモニア除害方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アンモニア除害システム、浮体、及びアンモニア除害方法に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶等の浮体では、主機等の燃料としてアンモニアを用いる場合に、重油等の他の燃料とアンモニアとを切り替えて用いることが想定される。このような燃料切り替えを行う場合や、主機に何らかのトラブルが生じた場合等には、燃料系統の配管内を、窒素等の不活性ガスによってパージすることで、配管内のアンモニアを排出する必要がある。
しかしながら、アンモニアは、周囲環境へ影響を及ぼす可能性が有る。そのため、上記パージを行う際に、配管内から排出されるアンモニアを、浮体が浮かぶ周囲の水中や大気中にそのまま放出することは好ましくない。
【0003】
特許文献1には、冷凍機ユニットから漏洩したアンモニアガスを、大気中に放出する前に無害化処理する、アンモニアガスの除害システムが開示されている。この除害システムでは、アンモニアを含む気体を、スクラバやクーリングタワー等の閉鎖空間に導き、水に充分接触させることで、アンモニア成分を水に吸着させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-26555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のようにパージを行う際には、配管内からアンモニアとともに、パージのために送り込んだ窒素等の不活性ガスが排出される。この不活性ガスが例えば窒素である場合、窒素は水に吸収されにくい。そのため、特許文献1に記載されているような除害システムでは、配管内から排出された不活性ガスは、スクラバやクーリングタワー等の閉鎖空間内で、アンモニア成分を吸収する水にほとんど吸収されず、そのまま外部に放出されることになる。そして、このようなパージの際の不活性ガスの流量は大きいため、この大量に流れ込む不活性ガスにより、閉鎖空間内におけるアンモニア成分の吸収性が低下する可能性がある。
また、大量に流れ込む不活性ガスにより、閉鎖空間内に供給される水が上方に逆流する、いわゆるフラッディングといった現象が生じる可能性もある。
【0006】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、パージの際における、アンモニアの吸収性を確保することができるアンモニア除害システム、浮体、及びアンモニア除害方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係るアンモニア除害システムは、第一タンクと、第一導入ラインと、第一吸収促進部と、第一液体排出ラインと、第二気体排出ラインと、第二タンクと、上部接続ラインと、圧力調整弁と、を備える。前記第一タンクは、アンモニアを吸収可能な吸収液を貯留する。前記第一導入ラインは、前記第一タンクにアンモニア及び不活性ガスを含むパージガスを導入可能である。前記第一吸収促進部は、前記第一タンクでの前記吸収液によるアンモニアの吸収を促進させる。前記第一液体排出ラインは、前記第一タンクの液相から液体を排出可能である。前記第一気体排出ラインは、前記第一タンクの気相から気体を排出可能である。前記第二タンクは、前記第一タンクとは独立して設けられている。前記上部接続ラインは、前記第一タンクの上部の気相と前記第二タンクの上部とを接続する。前記圧力調整弁は、前記上部接続ラインに設けられている。前記圧力調整弁は、前記第一タンクの気相の圧力に応じて開閉可能である。
【0008】
本開示に係るアンモニア除害システムは、第一タンクと、第一導入ラインと、第一吸収促進部と、第一液体排出ラインと、第二気体排出ラインと、第二タンクと、下部接続ラインと、液位調整弁と、を備える。前記第一タンクは、アンモニアを吸収可能な吸収液を貯留する。前記第一導入ラインは、前記第一タンクにアンモニア及び不活性ガスを含むパージガスを導入可能である。前記第一吸収促進部は、前記第一タンクでの前記吸収液によるアンモニアの吸収を促進させる。前記第一液体排出ラインは、前記第一タンクの液相から液体を排出可能である。前記第一気体排出ラインは、前記第一タンクの気相から気体を排出可能である。前記第二タンクは、前記第一タンクとは独立して設けられている。前記下部接続ラインは、前記第一タンクの下部の液相と前記第二タンクの下部とを接続する。前記液位調整弁は、前記下部接続ラインに設けられている。前記液位調整弁は、前記第一タンクの気相の圧力に応じて開閉可能である。
【0009】
本開示に係る浮体は、浮体本体と、上記したようなアンモニア除害システムと、を備える。
【0010】
本開示に係るアンモニア除害方法は、上記したようなアンモニア除害システムにおけるアンモニア除害方法であって、吸収液を貯留する工程と、パージガスを導入する工程と、アンモニアを吸収させる工程と、気相の気体を移送する工程と、を含む。前記吸収液を貯留する工程は、第一タンクにアンモニアを吸収可能な吸収液を貯留する。前記パージガスを導入する工程は、前記第一タンクにアンモニア及び不活性ガスを含むパージガスを導入する。前記アンモニアを吸収させる工程は、前記第一タンクに導入する前記パージガスに含まれるアンモニアを、前記吸収液により吸収させる。前記気相の気体を移送する工程は、前記第一タンクの気相が、予め設定された基準圧力以上となった場合に、前記第一タンクの上部の気相を前記第二タンクに移送する。
【発明の効果】
【0011】
本開示のアンモニア除害システム、浮体、及びアンモニア除害方法によれば、パージの際における、アンモニアの吸収性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の実施形態に係るアンモニア除害システムを備えた浮体の側面図である。
図2】本開示の第一実施形態に係るアンモニア除害システムの構成を示す図である。
図3】本開示の第一実施形態におけるアンモニア除害方法のフローチャートである。
図4】本開示の第一実施形態における、吸収液を貯留する工程を示す図である。
図5】本開示の第一実施形態における、パージガスを導入する工程、及びアンモニアを吸収させる工程を示す図である。
図6】本開示の第一実施形態における、気相を移送する工程を示す図である。
図7】本開示の第一実施形態における、パージガスの導入を終了する工程を示す図である。
図8】本開示の第一実施形態における、気相を排出する工程を示す図である。
図9】本開示の第一実施形態における、気相を排出する工程において、図8に続く状態を示す図である。
図10】本開示の第一実施形態における、液相を排出する工程において、第二廃水タンクに液相を排出する場合を示す図である。
図11】本開示の第一実施形態における、液相を排出する工程において、液相を陸揚げする場合を示す図である。
図12】本開示の第一実施形態における、液相を排出する工程において、液相をアンモニア成除去部で処理する場合を示す図である。
図13】本開示の第二実施形態に係るアンモニア除害システムの構成を示す図である。
図14】本開示の第二実施形態におけるアンモニア除害方法のフローチャートである。
図15】本開示の第二実施形態における、吸収液を貯留する工程を示す図である。
図16】本開示の第二実施形態における、パージガスを導入する工程、及びアンモニアを吸収させる工程を示す図である。
図17】本開示の第二実施形態における、気相を移送する工程を示す図である。
図18】本開示の第二実施形態における、パージガスの導入を終了する工程を示す図である。
図19】本開示の第二実施形態における、気相を排出する工程を示す図である。
図20】本開示の第二実施形態における、気相を排出する工程において、図19に続く状態を示す図である。
図21】本開示の第二実施形態における、液相を排出する工程において、第二廃水タンクに液相を排出する場合を示す図である。
図22】本開示の第二実施形態における、液相を排出する工程において、液相を陸揚げする場合を示す図である。
図23】本開示の第一実施形態における、液相を排出する工程において、液相をアンモニア成分除去部で処理する場合を示す図である。
図24】本開示の第一、及び第二実施形態の変形例に係るアンモニア除害システムの構成を示す図である。
図25】本開示の第一、及び第二実施形態の他の変形例に係るアンモニア除害システムの構成を示す図である。
図26】本開示の第一、及び第二実施形態のさらに他の変形例に係るアンモニア除害システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施形態に係るアンモニア除害システム、浮体、アンモニア除害方法について、図1図26を参照して説明する。
<第一実施形態>
(浮体の全体構成)
図1に示すように、本開示の第一実施形態の浮体1は、浮体本体2と、上部構造4と、燃焼装置8と、アンモニア除害システム100Aと、を備えている。なお、この第一実施形態の浮体1は、主機等により航行可能な船舶を一例として説明する。浮体1の船種は、特定の船種に限られない。浮体1の船種としては、液化ガス運搬船、フェリー、RORO船、自動車運搬船、客船等を例示できる。この第一実施形態では浮体1が船舶である場合について説明するが、浮体1は船舶に限られず、主機等による航行が不能なFSU(Floating Storage Unit)、FSRU(Floating Storage and Regasification Unit)等であってもよい。
【0014】
浮体本体2は、海水に浮かぶように形成されている。浮体本体2は、その外殻をなす一対の舷側5A,5Bと船底6とを有している。舷側5A,5Bは、左右舷側をそれぞれ形成する一対の舷側外板を備える。船底6は、これら舷側5A,5Bを接続する船底外板を備える。これら一対の舷側5A,5B及び船底6により、浮体本体2の外殻は、船首尾方向FAと垂直な断面においてU字状を成している。
【0015】
浮体本体2は、最も上層に配置される全通甲板である上甲板7を更に備えている。上部構造4は、この上甲板7上に形成されている。上部構造4内には、居住区等が設けられている。この第一実施形態の浮体1では、例えば、上部構造4よりも船首尾方向FAの船首2a側に、貨物を搭載するカーゴスペース(図示無し)が設けられている。
【0016】
燃焼装置8は、燃料を燃焼させることで熱エネルギーを発生させる装置であり、上記の浮体本体2内に設けられている。燃焼装置8としては、浮体1を推進させるための主機に用いられる内燃機関、船内に電気を供給する発電設備に用いられる内燃機関、作動流体としての蒸気を発生させるボイラー等を例示できる。この実施形態の浮体1で主機として用いられる燃焼装置8は、燃料としてアンモニアと、アンモニアとは異なる重油などの他の燃料と、を切り替えて用いることが可能となっている。燃焼装置8には、燃料を供給する燃料系統(図示せず)が接続されている。燃料系統は、アンモニアと、他の燃料とが流通する。
【0017】
燃焼装置8の燃料をアンモニアから他の燃料に切り替える際やメンテナンスを行う際、燃焼装置8の燃料系統を含む配管系統に残存したアンモニアを、窒素等の不活性ガス(パージガス)に置き換える、いわゆるパージが行われる。ここで、配管系統にする残存するアンモニアは、液化アンモニアであってもよいし、アンモニアガスであってもよい。パージを行うため、配管系統には、不活性ガス供給装置(図示せず)が接続されている。不活性ガス供給装置は、配管系統に、不活性ガスを供給可能とされている。なお、不活性ガスは、アンモニアに接触した際に化学反応しない気体であればよく、例えば、窒素を例示できる。不活性ガス供給装置において、不活性ガス供給源(図示せず)から配管系統に不活性ガスを供給すると、配管系統内のアンモニアが不活性ガスにより押し出される。これにより、配管系統からは、アンモニア(液化アンモニア、アンモニアガス)、及び不活性ガスを含むパージガスが排出される。
【0018】
(アンモニア除害システムの構成)
図2は、本開示の第一実施形態に係るアンモニア除害システムの構成を示す図である。
図2に示すように、アンモニア除害システム100Aは、パージガス導入部10と、第一タンク20Aと、第二タンク30Aと、排気部40と、排水部50と、第一廃水タンク60と、第二廃水タンク70と、アンモニア成分除去部80と、圧力調整部110と、を少なくとも備えている。アンモニア除害システム100Aは、配管系統内のアンモニアがパージされた際、配管系統から排出されるパージガスに含まれるアンモニアを除害する。
【0019】
パージガス導入部10は、パージの際に燃焼装置8の配管系統から排出されるパージガスをアンモニア除害システム100Aへと導く。パージガス導入部10は、ノックアウトドラム(図示せず)で気液分離されたパージガスのガス成分を、アンモニア除害システム100Aへと導く。このパージガス導入部10に流れるパージガスは、パージの初期、中期、終期で、アンモニア、及び不活性ガスの濃度が変化する。例えば、パージ初期においては、パージガス導入部10には、主にアンモニアガスが流れる。パージ中期においては、パージガス導入部10には、アンモニアガスと不活性ガスとの混合ガスが流れる。パージ終期においては、パージガス導入部10には、実質的に不活性ガスのみが流れる。
【0020】
パージガス導入部10は、主導入ライン11と、タンク導入ライン12と、バイパスライン13と、を備えている。
主導入ライン11は、燃焼装置8の配管系統に接続されている。主導入ライン11には、燃焼装置8の配管系統からパージの際に排出されるパージガスが導入される。
タンク導入ライン12、及びバイパスライン13は、主導入ライン11から二系統に分岐して設けられている。
【0021】
タンク導入ライン12は、第一タンク20A、第二タンク30Aに、パージガスを送り込む。タンク導入ライン12は、主配管14と、第一導入ライン15と、第二導入ライン16と、を備えている。主配管14は、主導入ライン11に接続されている。主配管14は、開閉弁14Vを備えている。開閉弁14Vは、主配管14内の流路を開閉可能とされている。
【0022】
第一導入ライン15、及び第二導入ライン16は、主配管14から二系統に分岐して設けられている。第一導入ライン15の下流端は、第一タンク20Aの頂部に接続されている。第二導入ライン16の下流端は、第二タンク30Aの頂部に接続されている。第一導入ライン15の途中には、開閉弁15Vが設けられている。開閉弁15Vは、第一導入ライン15内の流路を開閉可能とされている。第二導入ライン16の途中には、開閉弁16Vが設けられている。開閉弁16Vは、第二導入ライン16内の流路を開閉可能とされている。
【0023】
バイパスライン13は、主導入ライン11から導入されるパージガスを、第一タンク20A、第二タンク30Aに送り込まず、そのまま大気中に放出する。バイパスライン13は、主導入ライン11から、第一タンク20A、第二タンク30Aをバイパスし、後述する大気開放ライン43に接続されている。バイパスライン13の途中には、バイパスライン13内の流路を開閉可能とする開閉弁13Vが設けられている。
【0024】
第一タンク20Aは、タンク本体21と、第一吸収促進部22Aと、を備えている。
タンク本体21は、中空構造で、その内部に、アンモニアを吸収可能な吸収液Lを貯留する。このタンク本体21には、吸収液Lとして、外部から清水、又は海水を取り込む取水管27が接続されている。これにより、タンク本体21内の下部には、吸収液Lを含む液相をなす液体が貯留される。タンク本体21内の液相の上方には、気相をなす気体が貯留される。タンク本体21内には、主導入ライン11、主配管14、第一導入ライン15を通して、パージガスが導入される。タンク本体21内に導入されたパージガスに含まれるアンモニア成分は、吸収液Lに吸収される。これにより、タンク本体21内の液相の液体は、吸収液Lと、アンモニア成分とを含んだものとなる。
【0025】
第一タンク20Aのタンク本体21内には、液位計28と、圧力計29と、が設けられている。液位計28は、タンク本体21内における液相の液位を検出する。圧力計29は、タンク本体21内における気相の圧力を検出する。液位計28、圧力計29は、それぞれの検出データを、後述する制御装置(図示せず)に出力する。
【0026】
第一吸収促進部22Aは、第一タンク20Aでの吸収液Lによるアンモニアの吸収を促進させる。この実施形態における第一吸収促進部22Aは、第一循環ライン23と、スプレー24と、循環ポンプ25と、熱交換器26と、を備えている。第一循環ライン23の一端部は、第一タンク20A内の下部に連通している。第一循環ライン23の他端部は、第一タンク20A内の上部の気相中に配置されている。スプレー24は、第一タンク20A内の第一循環ライン23の他端部に設けられている。循環ポンプ25、及び熱交換器26は、第一循環ライン23の途中に設けられている。循環ポンプ25は、第一タンク20A内の液相を第一循環ライン23に吸い込み、第一タンク20A内の上部の気相に循環させる。熱交換器26は、第一循環ライン23に吸い込まれた液相を冷却し、アンモニアが吸収液Lに溶解した際に生じる反応熱を取り除く。第一循環ライン23に吸い込まれた液相は、スプレー24を通して、第一タンク20A内の上部の気相中に散液される。これにより、液相に含まれる吸収液Lが、第一タンク20A内の気相中のアンモニアと接触し、アンモニアの吸収が促進される。
【0027】
第二タンク30Aは、第一タンク20Aとは独立して設けられている。第二タンク30Aは、タンク本体31と、第二吸収促進部32Aと、を備えている。
タンク本体31は、中空構造で、その内部に、アンモニアを吸収可能な吸収液Lを貯留する。このため、タンク本体31には、吸収液Lとして、外部から清水、又は海水を取り込む取水管37が接続されている。これにより、タンク本体31内の下部には、吸収液Lを含む液相が貯留される。タンク本体31内において、液相の上方には、気相が貯留される。タンク本体31内には、主導入ライン11、主配管14、第二導入ライン16を通して、パージガスが導入される。タンク本体31内に導入されたパージガスに含まれるアンモニア成分は、吸収液Lに吸収される。これにより、タンク本体31内の液相は、吸収液Lと、アンモニア成分とを含んだものとなる。
【0028】
第二吸収促進部32Aは、第二タンク30Aでの吸収液Lによるアンモニアの吸収を促進させる。この実施形態における第二吸収促進部32Aは、第二循環ライン33と、スプレー34と、循環ポンプ35と、熱交換器36と、を備えている。第二循環ライン33の一端部は、第二タンク30A内の下部に連通している。第二循環ライン33の他端部は、第二タンク30A内の上部の気相中に配置されている。スプレー34は、第二タンク30A内の第二循環ライン33の他端部に設けられている。循環ポンプ35、及び熱交換器36は、第二循環ライン33の途中に設けられている。循環ポンプ35は、第二タンク30A内の液相を第二循環ライン33に吸い込み、第二タンク30A内の上部の気相に循環させる。熱交換器36は、第二循環ライン33に吸い込まれた液相を冷却し、アンモニアが吸収液Lに溶解した際に生じる反応熱を取り除く。第二循環ライン33に吸い込まれた液相は、スプレー34を通して、第二タンク30A内の上部の気相中に散液される。これにより、液相に含まれる吸収液Lが、第二タンク30A内の気相中のアンモニアと接触し、アンモニアの吸収が促進される。
【0029】
第二タンク30Aのタンク本体31内には、液位計38と、圧力計39と、が設けられている。液位計38は、タンク本体31内における液相の液位を検出する。圧力計39は、タンク本体31内における気相の圧力を検出する。液位計38、圧力計39は、それぞれの検出データを、後述する制御装置(図示せず)に出力する。
【0030】
排気部40は、第一気体排出ライン41と、第二気体排出ライン42と、大気開放ライン43と、を備えている。
第一気体排出ライン41は、第一タンク20Aの気相から気体を排出可能である。第一気体排出ライン41の一端は、第一タンク20Aのタンク本体21内の上部に連通している。第一気体排出ライン41の他端は、大気開放ライン43に接続されている。第一気体排出ライン41の途中には、流量調整弁41Vが設けられている。流量調整弁41Vは、第一気体排出ライン41を通して排出する、第一タンク20A内の気相の流量を調整可能である。
【0031】
第二気体排出ライン42は、第二タンク30Aの気相から気体を排出可能である。第二気体排出ライン42の一端は、第二タンク30Aのタンク本体31内の上部に連通している。第二気体排出ライン42の他端は、大気開放ライン43に接続されている。第二気体排出ライン42の途中には、流量調整弁42Vが設けられている。流量調整弁42Vは、第二気体排出ライン42を通して排出する、第二タンク30A内の気相の流量を調整可能である。
【0032】
大気開放ライン43は、第一気体排出ライン41,第二気体排出ライン42から排出される気相の気体と、バイパスライン13を通して排出されるパージガスと、を大気放出する。大気開放ライン43としては、例えば、浮体本体2の上甲板7上などに設けられたベントポスト、ファンネル9(図1参照)等を用いることができる。
【0033】
大気開放ライン43には、希釈ライン44が接続されている。希釈ライン44は、大気開放ライン43中に、大気開放ライン43を通して排出される気相のアンモニア濃度を低下させるための、希釈気体を導入可能となっている。希釈気体としては、希釈ライン44を通して外部から取り込む外気(空気)を例示できる。希釈ライン44には、大気開放ライン43に送り込む希釈気体の流量を調整可能な希釈ファン45が設けられている。
【0034】
排水部50は、第一液体排出ライン51と、第二液体排出ライン52と、排水ライン55と、第三液体排出ライン53と、を備えている。
【0035】
第一液体排出ライン51は、第一タンク20Aの液相から液体を排出可能である。第一液体排出ライン51は、第一循環ライン23の一部と共用されている。具体的には、第一液体排出ライン51は、第一循環ライン23がタンク本体21の下部に接続された部分23aから、循環ポンプ25の下流側で排水ライン55の一端が接続される部分23jまでの部分を、第一循環ライン23と共用している。
【0036】
第二液体排出ライン52は、第二タンク30Aの液相から液体を排出可能である。第二液体排出ライン52は、第二タンク30Aのタンク本体31内の下部と、第一液体排出ライン51において循環ポンプ25、及び熱交換器26よりも上流側の部分とを接続するように設けられている。第二液体排出ライン52の途中には、開閉弁52Vが設けられている。開閉弁52Vは、第二液体排出ライン52内の流路を開閉可能とされている。
【0037】
第三液体排出ライン53は、第一タンク20Aのタンク本体21内の下部と、第二循環ライン33における循環ポンプ35、及び熱交換器36よりも上流側の部分とを接続するように設けられている。第三液体排出ライン53の途中には、開閉弁53Vが設けられている。開閉弁53Vは、第三液体排出ライン53内の流路を開閉可能とされている。
【0038】
排水ライン55は、部分23jで、第一液体排出ライン51に接続されている。排水ライン55の他端は、分岐配管56,57に接続されている。分岐配管56は、第一廃水タンク60に接続されている。分岐配管57は、第二廃水タンク70に接続されている。分岐配管56の途中には、開閉弁56Vが設けられている。開閉弁56Vは、分岐配管56内の流路を開閉可能とされている。分岐配管57の途中には、開閉弁57Vが設けられている。開閉弁57Vは、分岐配管57内の流路を開閉可能とされている。
【0039】
第一廃水タンク60、第二廃水タンク70は、それぞれ、第一タンク20A、第二タンク30Aから排水部50を通して排出される液体を貯留可能とされている。
第一廃水タンク60は、排水ライン61を介して、アンモニア成分除去部80に接続されている。排水ライン61の途中には、ポンプ62が設けられている。第一廃水タンク60に一時的に貯留された液体は、ポンプ62を作動させることで、排水ライン61を通して、アンモニア成分除去部80に移送される。
【0040】
アンモニア成分除去部80は、吸収液Lに含まれるアンモニア成分を除去する。第一タンク20A、第二タンク30Aに、吸収液Lとして海水、又は清水が導入された場合、第一タンク20A、第二タンク30Aから第一廃水タンク60を経て、アンモニア成分除去部80に、アンモニアを吸収した吸収液Lが移送される。
【0041】
アンモニア成分除去部80は、例えば、次亜塩素酸ソーダを用いた脱窒素反応により、吸収液Lに含まれるアンモニア成分を除去する。アンモニア成分除去部80は、例えば、電気分解部81と、脱窒素反応部83と、を備えている。電気分解部81は、船外から取水した海水に電気分解を施すことで、次亜塩素酸ソーダを含む海水電解液を生成する。具体的には、電気分解部81は、導入した海水中に正極と負極(図示せず)とを配置して、これら正極と負極との間に電圧印加することで、海水を電気分解する。この電気分解により、海水から次亜塩素酸ソーダが生成される。
【0042】
脱窒素反応部83は、アンモニアを吸収した吸収液Lと電気分解部81で生成された海水電解液との混合液を反応させる。脱窒素反応部83は、電気分解により生成された海水電解液と、第一タンク20A、第二タンク30Aから導入された吸収液Lとを混合して反応させる。より具体的には、脱窒素反応部83は、(1)式に示すように、アンモニアを吸収した吸収液Lに含まれるアンモニア(2NH)と、海水電解液の次亜塩素酸ソーダ(3NaClO)とを、酸性の環境下で反応させて、窒素(N)と塩化ナトリウム(3NaCl)と水(3HO)とに分解する。
2NH+3NaClO⇒N+3NaCl+3HO・・・(1)
【0043】
脱窒素反応部83における脱窒素反応により生成された窒素は、例えば、上甲板7から延びるファンネル9等を介して大気中に放出される。その一方で、脱窒素反応により生成された塩化ナトリウムと水とは、処理水として、アンモニア成分除去部80に接続された放流部89から、浮体本体2の浮かぶ周囲の海水の中に放流される。
【0044】
また、排水ライン61には、陸揚げライン68が分岐して設けられている。陸揚げライン68は、ポンプ62とアンモニア成分除去部80との間で、排水ライン61に接続されている。陸揚げライン68は、第一廃水タンク60に貯留された液相を陸揚げ可能に構成されている。陸揚げライン68を通して港などで陸揚げされた液相は、浮体本体2内で再生せずに、陸上設備で廃棄処理することとなる。
【0045】
第二廃水タンク70は、排水部50を通して、第一タンク20A、第二タンク30Aから排出された液体を一時的に貯留する。第二廃水タンク70に貯留された液体は、この第一実施形態では、脱硝装置(図示せず)で用いる脱硝用アンモニア液として用いるようにしてもよい。脱硝装置は、燃焼装置8から排出された排ガスに脱硝処理を施すものである。この脱硝装置は、燃焼装置8から排ガスが排出される排気管(図示せず)の途中に設けられる。脱硝装置は、選択触媒還元脱硝装置(SCR)であって、触媒により、排ガスに含まれる窒素酸化物を窒素と水とに転換する。この場合、脱硝用アンモニア液としては、脱硝装置の還元剤として用いるのに必要な所定のアンモニア濃度(例えば、25%程度)に調整されているのが好ましい。排水部50を通して、第一タンク20A、第二タンク30Aから排出された液体は、アンモニアを吸収することで、アンモニア濃度が高められている。このようなアンモニア濃度が高められた液体は、脱硝用アンモニア液として好適に用いることができる。
【0046】
(圧力調整部の構成)
圧力調整部110は、上部接続ライン111と、圧力調整弁112と、を備えている。
上部接続ライン111は、第一タンク20Aの上部の気相と、第二タンク30Aの上部とを接続している。
【0047】
圧力調整弁112は、上部接続ライン111の途中に設けられている。圧力調整弁112は、上部接続ライン111内の流路を第一タンク20Aの気相の圧力に応じて開閉可能とされている。圧力調整弁112は、圧力計29によって検出される第一タンク20Aの気相の圧力に応じて、開閉動作される。圧力調整弁112は、制御装置(図示せず)により、その動作が自動的に制御される。
【0048】
圧力調整弁112は、第一タンク20Aの気相の圧力が、第二タンク30Aの気相の圧力よりも高い状態で、前記第一タンク20Aの気相の圧力が、予め設定された基準圧力以上となった場合に開くよう、制御される。第一タンク20Aの気相の圧力が、第二タンク30Aの気相の圧力よりも高い状態で、圧力調整弁112が開くと、前記第一タンク20Aの気相が前記第二タンク30Aの上部と連通される。これにより、第一タンク20Aの気相の圧力が低下する。
【0049】
(アンモニア除害方法)
次に、本開示の第一実施形態における浮体のアンモニア除害方法について図面を参照しながら説明する。
図3は、本開示の第一実施形態におけるアンモニア除害方法のフローチャートである。
図3に示すように、第一実施形態のアンモニア除害方法S10は、吸収液Lを貯留する工程S11と、パージガスを導入する工程S12と、アンモニアを吸収させる工程S13と、気相の圧力を確認する工程S14と、気相の気体を移送する工程S15と、パージの終了を確認する工程S16と、パージガスの導入を終了する工程S17と、アンモニアを気液平衡状態とする工程S17Aと、気相の気体を排出する工程S18と、液相の液体を排出する工程S19と、を含む。
【0050】
図4は、本開示の第一実施形態における、吸収液を貯留する工程を示す図である。
吸収液Lを貯留する工程S11では、燃焼装置8の燃料系統を含む配管系統に不活性ガスを送り込んでパージを行うに先立ち、図4に示すように、第一タンク20A内に、吸収液Lを貯留しておく。吸収液Lは、取水管27を通して、第一タンク20Aの外部から、清水、又は海水を取り込む。吸収液Lは、液位計28で検出される液位が、予め設定した設定液位に到達するまで貯留する。また、工程S11では、第二タンク30A内にも、吸収液Lを貯留してもよい。
また、開閉弁13V、14V、15V、圧力調整弁112、流量調整弁41V、42V、開閉弁52V、53V、56V、57Vは、全て閉じておく。
【0051】
図5は、本開示の第一実施形態における、パージガスを導入する工程、及びアンモニアを吸収させる工程を示す図である。
パージガスを導入する工程S12では、配管系統に不活性ガスを送り込んでパージを行った際に、第一タンク20Aにアンモニア及び不活性ガスを含むパージガスを導入する。これには、図5に示すように、タンク導入ライン12の開閉弁14V、15Vのみを開く。すると、主導入ライン11から、タンク導入ライン12の主配管14、及び第一導入ライン15を通して、パージガスが第一タンク20A内に導入される。
【0052】
アンモニアを吸収させる工程S13では、第一タンク20A内に導入したパージガスに含まれるアンモニア分を、吸収液Lに吸収させる。このとき、第一吸収促進部22Aにおいて、循環ポンプ25を作動させ、第一タンク20A内の液相の液体を第一循環ライン23に吸い込み、スプレー24から第一タンク20A内の上部の気相中に散液する。これにより、液相の液体に含まれる吸収液Lが、第一タンク20A内の気相中のアンモニアと接触し、アンモニアの吸収が促進される。なお、この工程S13は、パージガスを導入する工程S12と並行して実施してもよい。
【0053】
ところで、配管系統のパージを行う際には、不活性ガスが大量に送り込まれる。このため、第一タンク20Aには、パージガスが順次送り込まれる。第一タンク20A内に送り込まれてくるパージガスに含まれるアンモニアは、吸収液Lによって吸収されていく。これにともなって、第一タンク20Aの気相においては、吸収液Lに吸収されにくい不活性ガスの濃度が高まっていくこととなる。このとき、第一タンク20A内は閉鎖空間となり、気相の圧力は、順次上昇していく。
【0054】
気相の圧力を確認する工程S14では、工程S12、及び工程S13の継続中、予め設定した時間間隔毎に、第一タンク20A内の気相の圧力を、圧力計29で検出する。圧力計29で検出された気相の圧力のデータは、制御装置(図示せず)に出力される。
制御装置では、圧力計29で検出された気相の圧力のデータを取得した場合、検出された圧力が、予め設定された基準圧力以上であるか否かを判定する。
その結果、検出された第一タンク20A内の気相の圧力が、基準圧力未満であった場合(工程S14で「No」)は、そのまま、工程S12、及び工程S13を継続する。
一方、検出された第一タンク20A内の気相の圧力が、基準圧力以上であった場合(工程S14で「Yes」)、工程S15に移行する。
【0055】
図6は、本開示の第一実施形態における、気相を移送する工程を示す図である。
気相を移送する工程S15では、制御装置の制御により、図6に示すように、圧力調整弁112を開く。この工程S15は、圧力計29で検出される第一タンク20Aの気相の圧力が、圧力計39で検出される第二タンク30Aの気相の圧力よりも高い状態で実施される。すると、第一タンク20A内の気相の気体が、上部接続ライン111を通して、第二タンク30A内に移送される。これにより、第一タンク20A内の気相の圧力が低下する。その結果、順次送り込まれてくるパージガスの全量を、第一タンク20Aで受け入れることが可能となる。
工程S15と並行して、工程S13を継続することにより、第一タンク20A内に送り込まれてくるパージガスに含まれるアンモニアは、吸収液Lによって吸収されていく。これにともなって、第一タンク20Aの気相においては、不活性ガスの濃度が高まっていくこととなる。また、工程S15において、第二タンク30A内に吸収液Lが貯留されている場合、第一タンク20A内から第二タンク30A内に移送された気体に含まれるアンモニアが、吸収液Lに吸収される。一方、工程S15において、第二タンク30A内に吸収液Lが貯留されていなければ、第二タンク30A内の気相を大気圧程度まで下げることができ、第一タンク20A内から、より多くの気体を受け入れることができる。
【0056】
パージの終了を確認する工程S16では、制御装置により、配管系統のパージのために行っていた不活性ガスの供給が終了したか否かを確認する。
その結果、不活性ガスの供給が終了しておらず、パージが終了していることを確認できなければ(工程S16で「No」)、工程S14に戻る。
一方、不活性ガスの供給が終了しており、パージが終了していることを確認できれば(工程S16で「Yes」)、工程S17に移行する。
【0057】
図7は、本開示の第一実施形態における、パージガスの導入を終了する工程を示す図である。
パージガスの導入を終了する工程S17では、図7に示すように、配管系統への不活性ガスの供給が終了したことが確認された後に、開閉弁14V、15Vを閉じ、バイパスライン13の開閉弁13Vを開く。配管系統のパージの終期においては、パージガスは、実質的に不活性ガスであり、アンモニアの含有率が低い。そこで、開閉弁13Vを開き、バイパスライン13を経て大気開放ライン43からパージガスを大気放出する。これにより、配管系統内の圧力が低下する。配管系統内の圧力が十分に低下した後、開閉弁13Vを閉じる。
【0058】
また、この工程S17では、圧力調整弁112が開いている場合には、圧力調整弁112を閉じる。さらに、第一吸収促進部22Aにおいて、第一タンク20A内の液相の液体をスプレー24に循環し続け、第一タンク20A内の上部の気相中への散液を継続する。
アンモニアを気液平衡状態とする工程S17Aでは、第一タンク20A内の気相と液相とで、アンモニアを気液平衡状態とする。第一タンク20A内の上部の気相中への散液を継続していると、第一タンク20A内の液相に含まれる吸収液Lが、第一タンク20A内の気相中のアンモニアと接触し、アンモニア濃度が漸次低下していく。第一タンク20A内の気相と吸収液(液相)とは、気液平衡状態になろうとする。つまり、吸収液のアンモニア溶解度が高まるにつれて、気相のアンモニア濃度も徐々に高まる。その一方で、気相のアンモニア濃度が低下すると、分圧差によって液相のアンモニアが放散されて順次気相へ供給されるため、液相のアンモニア溶解度が低下することとなる。第一タンク20A内の気相と液相とでアンモニア濃度が平衡となり、第一タンク20A内でアンモニアが気液平衡状態となった場合、工程S18に移行する。なお、アンモニアの気液平衡状態は、例えば、第一タンク20A内の圧力と温度、あるいは第一タンク20A内におけるアンモニア濃度を直接計測することで、判断するようにしてもよい。
【0059】
図8は、本開示の第一実施形態における、気相を排出する工程を示す図である。
気相を排出する工程S18では、図8に示すように、循環ポンプ25を停止させ、第一タンク20A内における吸収液L(液相)の循環、スプレー24からの散液を停止させる。さらに、流量調整弁41Vを開き、第一タンク20Aの気相の気体を、第一気体排出ライン41、大気開放ライン43を通して、大気中に放出する。このとき、大気開放ライン43を通して放出される気体におけるアンモニア濃度が高い場合には、流量調整弁41Vで、第一タンク20Aから第一気体排出ライン41に排出されるパージガスの流量を下げる。これにより、大気開放ライン43を通して放出される気体におけるアンモニア濃度が抑えられる。さらに、希釈ファン45を作動させ、大気開放ライン43に送り込む希釈気体の流量を増大させれば、大気開放ライン43を通して放出される気相におけるアンモニア濃度を、更に抑えることができる。第一タンク20Aの気相の気体を排出後、流量調整弁41Vを閉じる。
【0060】
図9は、本開示の第一実施形態における、気相の気体を排出する工程において、図8に続く状態を示す図である。
さらに、気相の気体を排出する工程S18では、図9に示すように、流量調整弁42Vを開き、第二タンク30Aの気相の気体を、第二気体排出ライン42、大気開放ライン43を通して、大気中に放出する。このとき、大気開放ライン43を通して放出される気相におけるアンモニア濃度が高い場合には、流量調整弁42Vで、第二タンク30Aから第二気体排出ライン42に排出されるパージガスの流量を下げる。これにより、大気開放ライン43を通して放出される気体におけるアンモニア濃度が抑えられる。さらに、希釈ファン45を作動させ、大気開放ライン43に送り込む希釈気体の流量を増大させれば、大気開放ライン43を通して放出される気体におけるアンモニア濃度を、更に抑えることができる。第二タンク30Aの気相の気体の排出後、流量調整弁42Vを閉じる。
【0061】
図10は、本開示の第一実施形態における、液相の液体を排出する工程において、第二廃水タンクに液相の液体を排出する場合を示す図である。図11は、本開示の第一実施形態における、液相の液体を排出する工程において、液相の液体を陸揚げする場合を示す図である。図12は、本開示の第一実施形態における、液相の液体を排出する工程において、液相の液体をアンモニア成分除去部で処理する場合を示す図である。
液相の液体を排出する工程S19では、第一タンク20A内に残存する液相の液体におけるアンモニア濃度が、予め設定された基準濃度を超えた場合、排水部50により液相を排出する。なお、この工程S19は、気相の液体を排出する工程S18よりも先に行ってもよいし、工程S18と並行して行ってもよい。
工程S19では、循環ポンプ25を作動させる。これにより、図10図12に示すように、第一タンク20A内の液相の液体が、第一液体排出ライン51、排水ライン55を通して排水される。また、第二タンク30A内に液相の液体が残存している場合、開閉弁52Vを開くことで、第二タンク30A内の液相の液体が、第二液体排出ライン52、第一液体排出ライン51、排水ライン55を通して排水される。
【0062】
このとき、第一タンク20A、第二タンク30Aに、清水を導入している場合、図10に示すように、開閉弁56Vを閉じ、開閉弁57Vを開く。これにより、第一タンク20A、第二タンク30A内に残存する液相の液体は、第二廃水タンク70に排水され、脱硝装置における還元剤として用いることができる。
また、第一タンク20A、第二タンク30Aに、海水、又は清水を導入している場合、浮体1ではそれ以上の処理を行わず、図11に示すように、開閉弁56Vを開き、開閉弁57Vを閉じることで、液相の液体を、第一廃水タンク60に貯留しておき、陸揚げライン68から陸揚げするようにしてもよい。
また、第一タンク20A、第二タンク30Aに、海水、又は清水を導入している場合、開閉弁56Vを開き、開閉弁57Vを閉じる。これにより、図12に示すように、第一タンク20A、第二タンク30A内に残存する、海水を含む液相の液体は、第一廃水タンク60を経てアンモニア成分除去部80に送られる。液相の液体は、アンモニア成分除去部80で、アンモニア成分の除去処理が行われた後、放流部89から海洋放出(船外排出)される。
【0063】
なお、上記の気相の気体を排出する工程S18を行うに先立ち、液相の液体を排出する工程S19を行った後に、工程S11と同様にして、第一タンク20A、第二タンク30A内に、吸収液Lを貯留し直してもよい。これにより、第一タンク20A、第二タンク30A内に残存する気相の気体におけるアンモニアの吸収効率を高めることができる。
【0064】
(作用効果)
上記実施形態のアンモニア除害システム100A、浮体1、アンモニア除害方法S10では、第一タンク20Aと、第一タンク20Aとは独立して設けられた第二タンク30Aとが、上部接続ライン111により接続されている。第一タンク20Aの気相の圧力に応じ、上部接続ライン111に設けられた圧力調整弁112を開くと、第一タンク20Aの上部の気相の気体が、第二タンク30Aの上部へと移送される。これにより、第一タンク20Aの気相の圧力が低減される。したがって、その後に流れ込むパージガスを、第一タンク20Aでさらに受け入れることが可能となる。その結果、パージの際に大量に流れ込むパージガスを第一タンク20Aで受け入れて、より多くのアンモニアを吸収させることができる。
さらに、第一タンク20Aでは、吸収液Lによってパージガスに含まれるアンモニアが吸収され、気相におけるアンモニア濃度が低下した後に、気相の気体を排出している。このように、第一タンク20Aでは、導入されるパージガスに含まれるアンモニアを吸収しながら、アンモニアが吸収されたガスを連続的に排出する、いわゆる連続処理を行うのではなく、バッチ処理を行っている。このため、第一タンク20Aの後流側に、吸収塔等を設ける必要が無く、アンモニアの吸収を十分に行いつつ、パージガスを効率良く処理することができる。したがって、不活性ガスの流れにより、吸収塔等の閉鎖空間内に供給される水が上方に逆流するフラッディングといった現象を生じることも抑えられる。
【0065】
また、上記実施形態では、第一タンク20Aの気相の圧力が、予め設定された基準圧力以上となった場合に、圧力調整弁112が開くことで、第一タンク20Aの気相の気体を第二タンク30Aの上部へと送り込む。したがって、第一タンク20Aに順次導入される不活性ガスにより、第一タンク20Aの気相の圧力が基準圧力以上に過度に高まることが抑えられる。これにより、第一タンク20A内の吸収液Lによるアンモニアの吸収性が低下することが抑えられる。
【0066】
また、上記実施形態では、前記第二タンク30Aは、第二導入ライン16と、第二吸収促進部32Aと、を備える。
これにより、第二タンク30Aにおいても、第一タンク20Aと同様、パージバスに含まれるアンモニアを吸収することができる。したがって、何らかの理由により、第一タンク20Aでアンモニアの吸収ができなくなった場合等には、第一タンク20Aに代えて、第二タンク30Aでアンモニアの吸収を行うことができる。したがって、アンモニア除害システム100Aにおける冗長性を高めることができる。
【0067】
また、上記実施形態では、アンモニア除害システム100Aは、流量調整弁41Vを備える。
これにより、第一気体排出ライン41を通して排出される、第一タンク20Aの気相の気体におけるアンモニア濃度が高い場合には、流量調整弁41Vにより気相の流量を低下させることができる。したがって、第一気体排出ライン41から排出されるガスにおけるアンモニア濃度を下げることができる。
【0068】
また、上記実施形態では、スプレー24を備える第一吸収促進部22Aにより、第一タンク20Aにおける、パージガスに含まれるアンモニアの吸収液Lによる吸収を促進させることができる。
【0069】
また、上記実施形態では、第一循環ライン23により、第一タンク20A内の液相の液体を、第一吸収促進部22Aに循環させることによって、吸収液Lを有効利用しながら、吸収液Lによるアンモニアの吸収を効率良く行うことができる。
【0070】
また、上記実施形態では、熱交換器26により、第一循環ライン23に吸い込まれた液相を冷却することで、アンモニアが吸収液Lに溶解した際に生じる反応熱を取り除くことができる。
【0071】
<第二実施形態>
次に、本開示に係るアンモニア除害システム、アンモニア除害方法の第二実施形態について説明する。以下に説明する第二実施形態においては、第一実施形態とアンモニア除害システムに、圧力調整部110に代えて、液位調整部120を備える構成のみが異なるので、第一実施形態と同一部分に同一符号を付して説明するとともに、重複説明を省略する。
(アンモニア除害システムの構成)
図13は、本開示の第二実施形態に係るアンモニア除害システムの構成を示す図である。
図13に示すように、アンモニア除害システム100Bは、パージガス導入部10と、第一タンク20Aと、第二タンク30Aと、排気部40と、排水部50と、第一廃水タンク60と、第二廃水タンク70と、アンモニア成分除去部80と、液位調整部120と、を主に備えている。アンモニア除害システム100Bは、配管系統内のアンモニアがパージされた際、配管系統から排出される、パージガスに含まれるアンモニアを除害する。
【0072】
パージガス導入部10は、パージの際に燃焼装置8の配管系統から排出されるパージガスを、アンモニア除害システム100Bへと導く。パージガス導入部10は、ノックアウトドラム(図示せず)で気液分離されたパージガスのガス成分を、アンモニア除害システム100Bへと導く。このパージガス導入部10に流れるパージガスは、パージの初期、中期、終期で、アンモニア、及び不活性ガスの濃度が変化する。例えば、パージ初期においては、パージガス導入部10には、主にアンモニアガスが流れる。パージ中期においては、パージガス導入部10には、アンモニアガスと不活性ガスとの混合ガスが流れる。パージ終期においては、パージガス導入部10には、実質的に不活性ガスのみが流れる。
【0073】
パージガス導入部10は、主導入ライン11と、タンク導入ライン12と、バイパスライン13と、を備えている。
主導入ライン11は、燃焼装置8の配管系統に接続されている。主導入ライン11には、燃焼装置8の配管系統からパージの際に排出される、パージガスが導入される。
タンク導入ライン12、及びバイパスライン13は、主導入ライン11から二系統に分岐して設けられている。
【0074】
タンク導入ライン12は、第一タンク20A、第二タンク30Aに、パージガスを送り込む。タンク導入ライン12は、主配管14と、第一導入ライン15と、第二導入ライン16と、を備えている。主配管14は、主導入ライン11に接続されている。主配管14は、開閉弁14Vを備えている。開閉弁14Vは、主配管14内の流路を開閉可能とされている。
【0075】
第一導入ライン15、及び第二導入ライン16は、主配管14から二系統に分岐して設けられている。第一導入ライン15の下流端は、第一タンク20Aの頂部に接続されている。第二導入ライン16の下流端は、第二タンク30Aの頂部に接続されている。第一導入ライン15の途中には、開閉弁15Vが設けられている。開閉弁15Vは、第一導入ライン15内の流路を開閉可能とされている。第二導入ライン16の途中には、開閉弁16Vが設けられている。開閉弁16Vは、第二導入ライン16内の流路を開閉可能とされている。
【0076】
バイパスライン13は、主導入ライン11から導入されるパージガスを、第一タンク20A、第二タンク30Aに送り込まず、そのまま大気中に放出する。バイパスライン13は、主導入ライン11から、第一タンク20A、第二タンク30Aをバイパスし、後述する大気開放ライン43に接続されている。バイパスライン13の途中には、バイパスライン13内の流路を開閉可能とする開閉弁13Vが設けられている。
【0077】
第一タンク20Aは、タンク本体21と、第一吸収促進部22Aと、を備えている。
タンク本体21は、中空構造で、その内部に、アンモニアを吸収可能な吸収液Lを貯留する。このため、タンク本体21には、吸収液Lとして、外部から清水、又は海水を取り込む取水管27が接続されている。これにより、タンク本体21内の下部には、吸収液Lを含む液相が貯留される。タンク本体21内において、液相の上方には、気相が貯留される。タンク本体21内には、主導入ライン11、主配管14、第一導入ライン15を通して、パージガスが導入される。タンク本体21内に導入されたパージガスに含まれるアンモニア成分は、吸収液Lに吸収される。これにより、タンク本体21内の液相は、吸収液Lと、アンモニア成分とを含んだものとなる。
【0078】
第一タンク20Aのタンク本体21内には、液位計28と、圧力計29と、が設けられている。液位計28は、タンク本体21内における液相の液位を検出する。圧力計29は、タンク本体21内における気相の圧力を検出する。液位計28、圧力計29は、それぞれの検出データを、後述する制御装置(図示せず)に出力する。
【0079】
第一吸収促進部22Aは、第一タンク20Aでの吸収液Lによるアンモニアの吸収を促進させる。この実施形態における第一吸収促進部22Aは、第一循環ライン23と、スプレー24と、循環ポンプ25と、熱交換器26と、を備えている。第一循環ライン23の一端部は、第一タンク20A内の下部に連通している。第一循環ライン23の他端部は、第一タンク20A内の上部の気相中に配置されている。スプレー24は、第一タンク20A内の第一循環ライン23の他端部に設けられている。循環ポンプ25、及び熱交換器26は、第一循環ライン23の途中に設けられている。循環ポンプ25は、第一タンク20A内の液相の液体を第一循環ライン23に吸い込み、第一タンク20A内の上部の気相に循環させる。熱交換器26は、第一循環ライン23に吸い込まれた液相を冷却し、アンモニアが吸収液Lに溶解した際に生じる反応熱を取り除く。第一循環ライン23に吸い込まれた液相の液体は、スプレー24を通して、第一タンク20A内の上部の気相中に散液される。これにより、液体に含まれる吸収液Lが、第一タンク20A内の気相中のアンモニアと接触し、アンモニアの吸収が促進される。
【0080】
第二タンク30Aは、第一タンク20Aとは独立して設けられている。第二タンク30Aは、タンク本体31と、第二吸収促進部32Aと、を備えている。
タンク本体31は、中空構造で、その内部に、アンモニアを吸収可能な吸収液Lを貯留する。このため、タンク本体31には、吸収液Lとして、外部から清水、又は海水を取り込む取水管37が接続されている。これにより、タンク本体31内の下部には、吸収液Lを含む液相をなす液体が貯留される。タンク本体31内において、液相の上方には、気相をなす気体が貯留される。タンク本体31内には、主導入ライン11、主配管14、第二導入ライン16を通して、パージガスが導入される。タンク本体31内に導入されたパージガスに含まれるアンモニア成分は、吸収液Lに吸収される。これにより、タンク本体31内の液相は、吸収液Lと、アンモニア成分とを含んだものとなる。
【0081】
第二吸収促進部32Aは、第二タンク30Aでの吸収液Lによるアンモニアの吸収を促進させる。この実施形態における第二吸収促進部32Aは、第二循環ライン33と、スプレー34と、循環ポンプ35と、熱交換器36と、を備えている。第二循環ライン33の一端部は、第二タンク30A内の下部に連通している。第二循環ライン33の他端部は、第二タンク30A内の上部の気相中に配置されている。スプレー34は、第二タンク30A内の第二循環ライン33の他端部に設けられている。循環ポンプ35、及び熱交換器36は、第二循環ライン33の途中に設けられている。循環ポンプ35は、第二タンク30A内の液相の液体を第二循環ライン33に吸い込み、第二タンク30A内の上部の気相に循環させる。熱交換器36は、第二循環ライン33に吸い込まれた液体を冷却し、アンモニアが吸収液Lに溶解した際に生じる反応熱を取り除く。第二循環ライン33に吸い込まれた液相は、スプレー34を通して、第二タンク30A内の上部の気相中に散液される。これにより、液体に含まれる吸収液Lが、第二タンク30A内の気相中のアンモニアと接触し、アンモニアの吸収が促進される。
【0082】
第二タンク30Aのタンク本体31内には、液位計38と、圧力計39と、が設けられている。液位計38は、タンク本体31内における液相の液位を検出する。圧力計39は、タンク本体31内における気相の圧力を検出する。液位計38、圧力計39は、それぞれの検出データを、後述する制御装置(図示せず)に出力する。
【0083】
排気部40は、第一気体排出ライン41と、第二気体排出ライン42と、大気開放ライン43と、を備えている。
第一気体排出ライン41は、第一タンク20Aの気相から気体を排出可能である。第一気体排出ライン41の一端は、第一タンク20Aのタンク本体21内の上部に連通している。第一気体排出ライン41の他端は、大気開放ライン43に接続されている。第一気体排出ライン41の途中には、流量調整弁41Vが設けられている。流量調整弁41Vは、第一気体排出ライン41を通して排出する、第一タンク20A内の気相の流量を調整可能である。
【0084】
第二気体排出ライン42は、第二タンク30Aの気相から気体を排出可能である。第二気体排出ライン42の一端は、第二タンク30Aのタンク本体31内の上部に連通している。第二気体排出ライン42の他端は、大気開放ライン43に接続されている。第二気体排出ライン42の途中には、流量調整弁42Vが設けられている。流量調整弁42Vは、第二気体排出ライン42を通して排出する、第二タンク30A内の気体の流量を調整可能である。
【0085】
大気開放ライン43は、第一気体排出ライン41、第二気体排出ライン42から排出される気相の気体と、バイパスライン13を通して排出されるパージガスと、を大気放出する。大気開放ライン43としては、例えば、浮体本体2の上甲板7上などに設けられたベントポスト、ファンネル9(図1参照)等を用いることができる。
【0086】
大気開放ライン43には、希釈ライン44が接続されている。希釈ライン44は、大気開放ライン43中に、大気開放ライン43を通して排出される気体のアンモニア濃度を低下させるための、希釈気体を導入可能となっている。希釈気体としては、希釈ライン44を通して外部から取り込む外気(空気)を例示できる。希釈ライン44には、大気開放ライン43に送り込む希釈気体の流量を調整可能な希釈ファン45が設けられている。
【0087】
排水部50は、第一液体排出ライン51と、第二液体排出ライン52と、排水ライン55と、第三液体排出ライン53と、を備えている。
【0088】
第一液体排出ライン51は、第一タンク20Aの液相から液体を排出可能である。第一液体排出ライン51は、第一循環ライン23の一部と共用されている。具体的には、第一液体排出ライン51は、第一循環ライン23がタンク本体21の下部に接続された部分23aから、循環ポンプ25の下流側で排水ライン55の一端が接続される部分23jまでの部分を、第一循環ライン23と共用している。
【0089】
第二液体排出ライン52は、第二タンク30Aの液相から液体を排出可能である。第二液体排出ライン52は、第二タンク30Aのタンク本体31内の下部と、第一液体排出ライン51において循環ポンプ25、及び熱交換器26よりも上流側の部分とを接続するように設けられている。第二液体排出ライン52の途中には、開閉弁52Vが設けられている。開閉弁52Vは、第二液体排出ライン52内の流路を開閉可能とされている。
【0090】
第三液体排出ライン53は、第一タンク20Aのタンク本体21内の下部と、第二循環ライン33における循環ポンプ35、及び熱交換器36よりも上流側の部分とを接続するように設けられている。第三液体排出ライン53の途中には、開閉弁53Vが設けられている。開閉弁53Vは、第三液体排出ライン53内の流路を開閉可能とされている。
【0091】
排水ライン55は、部分23jで、第一液体排出ライン51に接続されている。排水ライン55の他端は、分岐配管56、57に接続されている。分岐配管56は、第一廃水タンク60に接続されている。分岐配管57は、第二廃水タンク70に接続されている。分岐配管56の途中には、開閉弁56Vが設けられている。開閉弁56Vは、分岐配管56内の流路を開閉可能とされている。分岐配管57の途中には、開閉弁57Vが設けられている。開閉弁57Vは、分岐配管57内の流路を開閉可能とされている。
【0092】
第一廃水タンク60、第二廃水タンク70は、それぞれ、第一タンク20A、第二タンク30Aから排水部50を通して排出される液体を貯留可能とされている。
第一廃水タンク60は、排水ライン61を介して、アンモニア成分除去部80に接続されている。排水ライン61の途中には、ポンプ62が設けられている。第一廃水タンク60に一時的に貯留された液体は、ポンプ62を作動させることで、排水ライン61を通して、アンモニア成分除去部80に移送される。
【0093】
アンモニア成分除去部80は、第一タンク20A、第二タンク30Aに、吸収液Lとして海水が導入された場合に用いられる。第一タンク20A、第二タンク30Aに、吸収液Lとして海水が導入された場合、第一タンク20A、第二タンク30Aから第一廃水タンク60を経て、アンモニア成分除去部80に、アンモニアを吸収した吸収液L(海水)が移送される。アンモニア成分除去部80は、移送されてきた海水に電気分解を施すことで得た次亜塩素酸ソーダを用い、吸収液Lに含まれるアンモニア成分を除去する。
【0094】
アンモニア成分除去部80は、電気分解部81と、脱窒素反応部83と、を備えている。電気分解部81は、海水に電気分解を施すことで、次亜塩素酸ソーダを含む海水電解液を生成する。具体的には、電気分解部81は、導入した海水中に正極と負極(図示せず)とを配置して、これら正極と負極との間に電圧印加することで、海水を電気分解する。この電気分解により、海水から次亜塩素酸ソーダが生成される。
【0095】
脱窒素反応部83は、アンモニアを吸収した吸収液Lと電気分解部81で生成された海水電解液との混合液を反応させる。脱窒素反応部83は、電気分解により生成された海水電解液と、第一タンク20A、第二タンク30Aから導入された吸収液Lとを混合して反応させる。より具体的には、脱窒素反応部83は、(1)式に示すように、アンモニアを吸収した吸収液Lに含まれるアンモニア(2NH)と、海水電解液の次亜塩素酸ソーダ(3NaClO)とを、酸性の環境下で反応させて、窒素(N)と塩化ナトリウム(3NaCl)と水(3HO)とに分解する。
2NH+3NaClO⇒N+3NaCl+3HO・・・(1)
【0096】
脱窒素反応部83における脱窒素反応により生成された窒素は、例えば、上甲板7から延びるファンネル9等を介して大気中に放出される。その一方で、脱窒素反応により生成された塩化ナトリウムと水とは、処理水として、アンモニア成分除去部80に接続された放流部89から、浮体本体2の浮かぶ周囲の海水の中に放流される。
【0097】
また、排水ライン61には、陸揚げライン68が分岐して設けられている。陸揚げライン68は、ポンプ62とアンモニア成分除去部80との間で、排水ライン61に接続されている。陸揚げライン68は、第一廃水タンク60に貯留された液相を陸揚げ可能に構成されている。陸揚げライン68を通して港などで陸揚げされた液相は、浮体本体2内で再生せずに、陸上設備で廃棄処理することとなる。
【0098】
第二廃水タンク70は、排水部50を通して、第一タンク20A、第二タンク30Aから排出された液体を一時的に貯留する。第二廃水タンク70に貯留された液体は、この実施形態では、脱硝装置(図示せず)で用いる脱硝用アンモニア液として用いるようにしてもよい。脱硝装置は、燃焼装置8から排出された排ガスに脱硝処理を施すものである。この脱硝装置は、燃焼装置8から排ガスが排出される排気管(図示せず)の途中に設けられる。脱硝装置は、選択触媒還元脱硝装置(SCR)であって、触媒により、排ガスに含まれる窒素酸化物を窒素と水とに転換する。この場合、脱硝用アンモニア液としては、脱硝装置の還元剤として用いるのに必要な所定のアンモニア濃度(例えば、25%程度)に調整されているのが好ましい。排水部50を通して、第一タンク20A、第二タンク30Aから排出された液相の液体は、アンモニアを吸収することで、アンモニア濃度が高められている。このようなアンモニア濃度が高められた液体は、脱硝用アンモニア液として好適に用いることができる。
【0099】
(液位調整部の構成)
液位調整部120は、下部接続ライン121と、液位調整弁122と、を備えている。
下部接続ライン121は、第一タンク20Aの下部の液相と、第二タンク30Aの下部とを接続している。
【0100】
液位調整弁122は、下部接続ライン121の途中に設けられている。液位調整弁122は、下部接続ライン121内の流路を第一タンク20Aの気相の圧力に応じて開閉可能とされている。液位調整弁122は、圧力計29によって検出される第一タンク20Aの気相の圧力に応じて、開閉動作される。液位調整弁122は、制御装置(図示せず)により、その動作が自動的に制御される。
【0101】
液位調整弁122は、第一タンク20Aの液相の液位が、第二タンク30Aの液相の液位よりも高い状態で、前記第一タンク20Aの気相の圧力が、予め設定された基準圧力以上となった場合に開くよう、制御される。第一タンク20Aの液相の液位が、第二タンク30Aの液相の液位よりも高い状態で、液位調整弁122が開くと、第一タンク20Aの液相が第二タンク30Aの下部と連通される。これにより、第一タンク20Aの液相の液位が低下し、第一タンク20A内の気相の圧力が低減される。
【0102】
また、液位調整弁122は、第一タンク20Aの液相の液位が、第二タンク30Aの液相の液位よりも低い状態で、前記第一タンク20Aの気相の圧力が、予め設定された下限圧力未満となった場合に開くよう、制御される。第一タンク20Aの液相の液位が、第二タンク30Aの液相の液位よりも低い状態で、第一タンク20Aの気相の圧力が、予め設定された下限圧力未満となった場合に、液位調整弁122を開くと、第二タンク30Aの液相が、下部接続ライン121を通して第一タンク20Aの下部に戻される。これにより、第一タンク20Aの液相の液位が上昇する。
【0103】
(アンモニア除害方法)
次に、第二実施形態における浮体のアンモニア除害方法について図面を参照しながら説明する。
図14は、本開示の第二実施形態におけるアンモニア除害方法のフローチャートである。
図14に示すように、第二実施形態のアンモニア除害方法S20は、吸収液Lを貯留する工程S21と、パージガスを導入する工程S22と、アンモニアを吸収させる工程S23と、気相の圧力を確認する工程S24と、液相を移送する工程S25と、パージの終了を確認する工程S26と、パージガスの導入を終了する工程S27と、アンモニアを気液平衡状態とする工程S27Aと、気相を排出する工程S28と、液相の液体を排出する工程S29と、を含む。
【0104】
図15は、本開示の第二実施形態における、吸収液を貯留する工程を示す図である。
吸収液Lを貯留する工程S21では、燃焼装置8の燃料系統を含む配管系統に不活性ガスを送り込んでパージを行うに先立ち、図15に示すように、第一タンク20A内に、吸収液Lを貯留しておく。吸収液Lは、取水管27を通して、第一タンク20Aの外部から、清水、又は海水を取り込む。吸収液Lは、液位計28で検出される液位が、予め設定した設定液位に到達するまで貯留する。また、工程S21では、第二タンク30A内にも、吸収液Lを貯留してもよい。但しその場合、液位計38で検出される第二タンク30A内の吸収液Lの液位が、第一タンク20A内における吸収液Lの液位よりも低くなるようにする。
また、開閉弁13V、14V、15V、液位調整弁122、流量調整弁41V、42V、開閉弁52V、53V、56V、57Vは、全て閉じておく。
【0105】
図16は、本開示の第二実施形態における、パージガスを導入する工程、及びアンモニアを吸収させる工程を示す図である。
パージガスを導入する工程S22では、配管系統に不活性ガスを送り込んでパージを行った際に、第一タンク20Aにアンモニア及び不活性ガスを含むパージガスを導入する。これには、図16に示すように、タンク導入ライン12の開閉弁14V、15Vのみを開く。すると、主導入ライン11から、タンク導入ライン12の主配管14、及び第一導入ライン15を通して、パージガスが第一タンク20A内に導入される。
【0106】
アンモニアを吸収させる工程S23では、第一タンク20A内に導入したパージガスに含まれるアンモニア分を、吸収液Lに吸収させる。このとき、第一吸収促進部22Aにおいて、循環ポンプ25を作動させ、第一タンク20A内の液相の液体を第一循環ライン23に吸い込み、スプレー24から第一タンク20A内の上部の気相中に散液する。これにより、液相の液体に含まれる吸収液Lが、第一タンク20A内の気相中のアンモニアと接触し、アンモニアの吸収が促進される。なお、この工程S23は、パージガスを導入する工程S22と並行して実施してもよい。
【0107】
ところで、配管系統のパージを行う際には、不活性ガスが大量に送り込まれる。このため、第一タンク20Aには、パージガスが順次送り込まれていく。第一タンク20A内に送り込まれてくるパージガスに含まれるアンモニアは、吸収液Lによって吸収されていく。これにともなって、第一タンク20Aの気相においては、吸収液Lに吸収されにくい不活性ガスの濃度が高まっていくこととなる。このとき、第一タンク20A内は閉鎖空間となり、気相の圧力は、順次上昇していく。
【0108】
気相の圧力を確認する工程S24では、工程S22、及び工程S23の継続中、予め設定した時間間隔毎に、第一タンク20A内の気相の圧力を、圧力計29で検出する。圧力計29で検出された気相の圧力のデータは、制御装置(図示せず)に出力される。
制御装置では、圧力計29で検出された気相の圧力のデータを取得した場合、検出された圧力が、予め設定された基準圧力以上であるか否かを判定する。
その結果、検出された第一タンク20A内の気相の圧力が、基準圧力未満であった場合(工程S24で「No」)は、そのまま、工程S22、及び工程S23を継続する。
一方、検出された第一タンク20A内の気相の圧力が、基準圧力以上であった場合(工程S24で「Yes」)、工程S25に移行する。
【0109】
図17は、本開示の第二実施形態における、液相の液体を移送する工程を示す図である。
液相の液体を移送する工程S25では、制御装置の制御により、図17に示すように、液位調整弁122を開く。この工程S25は、圧力計29で検出される第一タンク20Aの気相の圧力が、圧力計39で検出される第二タンク30Aの気相の圧力よりも高く、かつ液位計28で検出される第一タンク20Aの液相の液位が液位計38で検出される第二タンク30Aの液相の液位よりも高い状態で実施される。すると、第一タンク20A内の液相の液体が、下部接続ライン121を通して、第二タンク30A内に移送される。これにより、第一タンク20A内の気相の圧力が低下する。その結果、順次送り込まれてくるパージガスの全量を、第一タンク20Aで受け入れることが可能となる。
工程S25と並行して、工程S23を継続することにより、第一タンク20A内に送り込まれてくるパージガスに含まれるアンモニアは、吸収液Lによって吸収されていく。これにともなって、第一タンク20Aの気相においては、不活性ガスの濃度が高まっていくこととなる。
【0110】
パージの終了を確認する工程S26では、制御装置により、配管系統のパージのために行っていた不活性ガスの供給が終了したか否かを確認する。
その結果、不活性ガスの供給が終了しておらず、パージが終了していることを確認できなければ(工程S26で「No」)、工程S24に戻る。
一方、不活性ガスの供給が終了しており、パージが終了していることを確認できれば(工程S26で「Yes」)、工程S27に移行する。
【0111】
図18は、本開示の第二実施形態における、パージガスの導入を終了する工程を示す図である。
パージガスの導入を終了する工程S27では、図18に示すように、配管系統への不活性ガスの供給が終了したことが確認された後に、開閉弁14V、15Vを閉じ、バイパスライン13の開閉弁13Vを開く。配管系統のパージの終期においては、パージガスは、実質的に不活性ガスであり、アンモニアの含有率が低い。そこで、開閉弁13Vを開き、バイパスライン13を経て大気開放ライン43からパージガスを大気放出する。これにより、配管系統内の圧力が低下する。配管系統内の圧力が十分に低下した後、開閉弁13Vを閉じる。
【0112】
また、この工程S27では、液位調整弁122が開いている場合には、液位調整弁122を閉じる。さらに、第一吸収促進部22Aにおいて、第一タンク20A内の液相の液体をスプレー24に循環し続け、第一タンク20A内の上部の気相中への散液を継続する。
アンモニアを気液平衡状態とする工程S27Aでは、第一タンク20A内の気相と液相とで、アンモニアを気液平衡状態とする。第一タンク20A内の上部の気相中への散液を継続していると、第一タンク20A内の液相の液体に含まれる吸収液Lが、第一タンク20A内の気相中のアンモニアと接触し、アンモニア濃度が漸次低下していく。第一タンク20A内の気相と吸収液(液相)とは、気液平衡状態になろうとする。つまり、吸収液のアンモニア溶解度が高まるにつれて、気相のアンモニア濃度も徐々に高まる。その一方で、気相のアンモニア濃度が低下すると、分圧差によって液相のアンモニアが放散されて順次気相へ供給されるため、液相のアンモニア溶解度が低下することとなる。第一タンク20A内の気相と液相とでアンモニア濃度が平衡となり、第一タンク20A内で、アンモニアが気液平衡状態となった場合、工程S28に移行する。なお、アンモニアの気液平衡状態は、例えば、第一タンク20A内の圧力と温度、あるいは第一タンク20A内におけるアンモニア濃度を直接計測することで、判断するようにしてもよい。
【0113】
図19は、本開示の第二実施形態における、気相の気体を排出する工程を示す図である。
気相を排出する工程S28では、図19に示すように、循環ポンプ25を停止させ、第一タンク20A内における吸収液L(液相)の循環、スプレー24からの散液を停止させる。さらに、流量調整弁41Vを開き、第一タンク20Aの気相の気体を、第一気体排出ライン41、大気開放ライン43を通して、大気中に放出する。このとき、大気開放ライン43を通して放出される気体におけるアンモニア濃度が高い場合には、流量調整弁41Vで、第一タンク20Aから第一気体排出ライン41に排出されるパージガスの流量を下げる。これにより、大気開放ライン43を通して放出される気体におけるアンモニア濃度が抑えられる。さらに、希釈ファン45を作動させ、大気開放ライン43に送り込む希釈気体の流量を増大させれば、大気開放ライン43を通して放出される気体におけるアンモニア濃度を、更に抑えることができる。第一タンク20Aの気相の排出後、流量調整弁41Vを閉じる。
【0114】
図20は、本開示の第二実施形態における、気相の気体を排出する工程において、図19に続く状態を示す図である。
さらに、気相の気体を排出する工程S28において、図20に示すように、第一タンク20A内の気相を大気開放していくと、第一タンク20A内の気相の圧力が低下してくる。圧力計29で検出される第一タンク20Aの気相の圧力が、圧力計39で検出される第二タンク30Aの気相の圧力よりも低く、予め設定された下限圧力未満となった場合、液位調整弁122を開く。すると、第二タンク30A内の液相の液体が、下部接続ライン121を通して、第一タンク20A内の下部へと戻される。第二タンク30Aの液相の液体を第一タンク20Aの下部に戻すことで、第一タンク20Aの液相の液位が上昇する。これにより、第一タンク20Aの気相の液体を、第一気体排出ライン41に押し出すことができる。
【0115】
図21は、本開示の第二実施形態における、液相の液体を排出する工程において、第二廃水タンクに液相の液体を排出する場合を示す図である。図22は、本開示の第二実施形態における、液相の液体を排出する工程において、液相の液体を陸揚げする場合を示す図である。図23は、本開示の第二実施形態における、液相の液体を排出する工程において、液相の液体をアンモニア成分除去部で処理する場合を示す図である。
液相を排出する工程S29では、第一タンク20A内に残存する液相の液体におけるアンモニア濃度が、予め設定された基準濃度を超えた場合、排水部50により液相の液体を排出する。なお、この工程S29は、気相を排出する工程S28よりも先に行ってもよいし、工程S28と並行して行ってもよい。
工程S29では、循環ポンプ25を作動させる。これにより、図21図23に示すように、第一タンク20A内の液相の液体が、第一液体排出ライン51、排水ライン55を通して排水される。また、第二タンク30A内に液体が残存している場合、開閉弁52Vを開くことで、第二タンク30A内の液相の液体が、第二液体排出ライン52、第一液体排出ライン51、排水ライン55を通して排水される。
【0116】
このとき、第一タンク20A、第二タンク30Aに、清水を導入している場合、図21に示すように、開閉弁56Vを閉じ、開閉弁57Vを開く。これにより、第一タンク20A、第二タンク30A内に残存する液体は、第二廃水タンク70に排水され、脱硝装置における還元剤として用いることができる。また、第一タンク20A、第二タンク30Aに、清水を導入している場合、浮体1ではそれ以上の処理を行わず、図22に示すように、開閉弁56Vを開き、開閉弁57Vを閉じることで、液体を、第一廃水タンク60に貯留しておき、陸揚げライン68から陸揚げするようにしてもよい。
また、第一タンク20A、第二タンク30Aに、海水を導入している場合、開閉弁56Vを開き、開閉弁57Vを閉じる。これにより、図23に示すように、第一タンク20A、第二タンク30A内に残存する、海水を含む液体は、第一廃水タンク60を経てアンモニア成分除去部80に送られる。液体は、アンモニア成分除去部80で、アンモニア成分の除去処理が行われた後、放流部89から海洋放出される。また、第一タンク20A、第二タンク30Aに、海水を導入している場合も、図22に示すように、浮体1ではそれ以上の処理を行わず、液体を、第一廃水タンク60に貯留しておき、陸揚げライン68を通して陸揚げするようにしてもよい。
【0117】
なお、上記の気相の気体を排出する工程S28を行うに先立ち、液相を排出する工程S29を行った後に、工程S21と同様にして、第一タンク20A、第二タンク30A内に、吸収液Lを貯留し直してもよい。これにより、第一タンク20A、第二タンク30A内に残存する気体におけるアンモニアの吸収効率を高めることができる。
【0118】
(作用効果)
上述したような構成によれば、第一タンク20Aと、第一タンク20Aとは独立して設けられた第二タンク30Aとは、下部接続ライン121により接続されている。第一タンク20Aの気相の圧力に応じ、液位調整弁122が開くと、第一タンク20Aの下部の液相の液体が、第二タンク30Aの下部へと移送される。これにより、第一タンク20Aの気相の容積が増え、気相の圧力が低減される。したがって、その後に流れ込むパージガスを、第一タンク20Aでさらに受け入れることが可能となる。その結果、パージの際に大量に流れ込むパージガスを第一タンク20Aで受け入れて、より多くのアンモニアを吸収させることができる。
さらに、第一タンク20Aでは、吸収液Lによってパージガスに含まれるアンモニアが吸収され、気相におけるアンモニア濃度が低下した後に、気相の気体を排出している。このように、第一タンク20Aでは、導入されるパージガスに含まれるアンモニアを吸収しながら、アンモニアが吸収されたガスを連続的に排出する、いわゆる連続処理を行うのではなく、バッチ処理を行っている。このため、第一タンク20Aの後流側に、吸収塔等を設ける必要が無く、アンモニアの吸収を十分に行いつつ、パージガスを効率良く処理することができる。したがって、不活性ガスの流れにより、吸収塔等の閉鎖空間内に供給される水が上方に逆流するフラッディングといった現象を生じることも抑えられる。
【0119】
また、上記実施形態では、第一タンク20Aの気相の圧力が、予め設定された基準圧力以上となった場合に、液位調整弁122を開くことで、第一タンク20Aの液相の液体を第二タンク30Aの下部へと送り込む。したがって、第一タンク20Aに順次導入される不活性ガスにより、第一タンク20Aの気相の圧力が過度に高まることが抑えられる。その結果、第一タンク20A内の吸収液Lによるアンモニアの吸収性が低下することが抑えられる。
【0120】
また、上記実施形態では、第一タンク20Aの気相の圧力が、予め設定された下限圧力未満となった場合に、液位調整弁122を開くことで、第二タンク30Aの液相の液体を第一タンク20Aの下部に戻すことができる。したがって、第一タンク20A内の気相の圧力が過度に低くなることが抑えられる。また、第二タンク30Aの液相の液体を第一タンク20Aの下部に戻すことで、第一タンク20Aの液相の液位が上昇する。これにより、第一タンク20Aの気相の液体を、第一気体排出ライン41を通して排出する際、第一タンク20Aの気相の気体を効率良く押し出して排出することができる。
【0121】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
なお、上記第一実施形態のアンモニア除害システム100Aでは、圧力調整部110を備え、上記第二実施形態のアンモニア除害システム100Bでは、液位調整部120を備えるようにした。これに対し、図24に示されるアンモニア除害システム100Cのように、圧力調整部110と、液位調整部120との双方を備えるようにしてもよい。この場合、図3に示した、アンモニア除害方法S10と、図14に示したアンモニア除害方法S20とを、適宜組み合わせるようにしてもよい。
【0122】
また、上記第一、第二実施形態、及びその変形例では、第一吸収促進部22Aとしてスプレー24を備え、第二吸収促進部32Aとしてスプレー34を備えるようにしたが、これに限られない。
図25は、本開示の第一、及び第二実施形態の他の変形例に係るアンモニア除害システムの構成を示す図である。
図25に示すように、アンモニア除害システム100Dは、第一吸収促進部22Bとしてのノズル128、第二吸収促進部32Bとしてノズル138を備えるようにしてもよい。
ノズル128は、第一タンク20Bの液相中に浸漬されている。ノズル128は、第一導入ライン15から導入されるパージガスを、第一タンク20Bの液相中に気泡状に散気する。
ノズル138は、第二タンク30Bの液相中に浸漬されている。ノズル138は、第二導入ライン16から導入されるパージガスを、第二タンク30Bの液相中に気泡状に散気する。このようなノズル128、138からパージガスを液相中に散気することで、液相に含まれる吸収液Lに、パージガスに含まれるアンモニアが吸収されやすくなる。
【0123】
図26は、本開示の第一、及び第二実施形態の他の変形例に係るアンモニア除害システムの構成を示す図である。
図26に示すように、アンモニア除害システム100Eは、第一吸収促進部22Cとしてのエジェクター129、第二吸収促進部32Cとしてエジェクター139を備えるようにしてもよい。
エジェクター129は、第一タンク20C内の気相の気体を吸い出し、第一導入ライン15から導入されるパージガスと混合して、第一タンク20Cに戻す。
エジェクター139は、第二タンク30C内の気相の気体を吸い出し、第二導入ライン16から導入されるパージガスと混合して、第二タンク30Cに戻す。このようなエジェクター129、139からパージガスを液相中に散気することで、液相に含まれる吸収液Lに、パージガスに含まれるアンモニアが吸収されやすくなる。
【0124】
また、上記第一、及び第二実施形態、及びその各変形例においては、それぞれ、第二液体排出ライン52と、第三液体排出ライン53と、が設けられている。第二液体排出ライン52は、例えば、液位調整部120の液位調整弁122が故障した場合等に、循環ポンプ25を動作させることで、第二タンク30Aの液相の液体を、第一タンク20Aに移送することができる。同様に、第三液体排出ライン53は、例えば、液位調整部120の液位調整弁122が故障した場合等に、循環ポンプ35を動作させることで、第一タンク20Aの液相の液体を、第二タンク30Aに移送することができる。
【0125】
また、上記第一、及び第二実施形態、及びその各変形例においては、第二タンク30A~30Cが、第二吸収促進部32A~32C等を備えることで、第一タンク20A~20Cが何らかの原因で利用できない場合に、第一タンク20A~20Cに代えて利用できるようにしたが、これに限られない。第二タンク30A~30Cが、第二吸収促進部32A~32C等を備えない構成としてもよい。
【0126】
また、上記第二実施形態においては、第一タンク20A内の気相の圧力が上昇した場合に、第一タンク20A内の液相の液体を、第二タンク30Aに移送するようにしたが、これに限られない。例えば、第一タンク20A内の気相の圧力が上昇した場合に、第一タンク20A内の液相の液体を、第一廃水タンク60、第二廃水タンク70に排水することで、第一タンク20A内の気相の圧力を低下させるようにしてもよい。
【0127】
また、上記第一、及び第二実施形態、及びその各変形例においては、アンモニア成分除去部80の構成について例示したが、アンモニア成分除去部80は、アンモニア水に含まれるアンモニア成分を除去することができるのであれば、脱窒素反応部83を有するものに限らず、適宜他の方式のものを用いてもよい。
【0128】
また、上記第一、及び第二実施形態、及びその各変形例においては、脱窒素反応部83における脱窒素反応により生成された水を、放流部89から周囲の海水の中に放流するようにしたが、これに限られない。例えば、脱窒素反応により生成された水は、船内で利用するようにしてもよい。
【0129】
また、上記第一、及び第二実施形態、及びその各変形例においては、第二廃水タンク70に貯留された処理水の処理について例示したが、上記に例示した以外の処理を行うようにしてもよい。
例えば、第一タンク20A、第二タンク30Aに、清水を導入している場合、第二廃水タンク70に貯留された液体(アンモニア水)は、焼却炉、エンジン、ボイラー等の燃焼装置に投入して燃焼させるようにしてもよい。
また、第一タンク20A、第二タンク30Aに、清水を導入している場合、第二廃水タンク70に貯留された液体中に蒸気や空気を吹き込むことで、アンモニアガスと水とを分離するストリッピング法等の処理を行ってもよい。
【0130】
また、上記第一、及び第二実施形態、及びその各変形例においては、第一タンク20Aの気相の気体を、大気開放ライン43を通して大気中に放出する際、希釈ファン45によって、排出される気体のアンモニア濃度を低下させるようにしたが、これに限られない。例えば、第一タンク20Aの気相の気体は、例えば、水との接触によるアンモニア濃度低減処理、触媒反応を用いたアンモニア濃度低減処理、ガス燃焼装置(GCU:Gas Combustion Unit)を用いた燃焼によるアンモニア除害処理等を行った後、大気中に放出するようにしてもよい。
【0131】
<付記>
各実施形態に記載のアンモニア除害システム100A~100E、浮体1、アンモニア除害方法S10は、例えば以下のように把握される。
【0132】
(1)第1の態様に係るアンモニア除害システム100A、100C~100Eは、アンモニアを吸収可能な吸収液Lを貯留する第一タンク20A~20Cと、前記第一タンク20A~20Cにアンモニア及び不活性ガスを含むパージガスを導入可能な第一導入ライン15と、前記第一タンク20A~20Cでの前記吸収液Lによるアンモニアの吸収を促進させる第一吸収促進部22A~22Cと、前記第一タンク20A~20Cの液相から液体を排出可能な第一液体排出ライン51と、前記第一タンク20A~20Cの気相から気体を排出可能な第一気体排出ライン41と、前記第一タンク20A~20Cとは独立して設けられた第二タンク30A~30Cと、前記第一タンク20A~20Cの上部の気相と前記第二タンク30A~30Cの上部とを接続する上部接続ライン111と、前記上部接続ライン111に設けられて、前記第一タンク20A~20Cの気相の圧力に応じて開閉可能な圧力調整弁112と、を備える。
【0133】
このアンモニア除害システム100A、100C~100Eでは、アンモニアが流通する配管等を不活性ガスによりパージする場合、不活性ガスを配管等に送り込むと、アンモニア及び不活性ガスを含むパージガスが、第一導入ライン15から第一タンク20A~20Cに導入される。導入されたパージガスに含まれるアンモニアは、第一タンク20A~20Cに貯留された吸収液Lに吸収される。このとき、第一吸収促進部22A~22Cにより、第一タンク20A~20Cでの吸収液Lによるアンモニアの吸収が促進される。第一タンク20A~20C内でアンモニアを吸収した吸収液L、すなわち第一タンク20A~20C内の液相の液体は、第一液体排出ライン51を通して第一タンク20A~20Cから排出される。第一タンク20A~20C内で吸収液Lによってアンモニアが吸収されることで、アンモニア濃度が低減された第一タンク20A~20C内の気相の気体は、第一気体排出ライン41を通して第一タンク20A~20Cから排出される。
パージガスに含まれる不活性ガスが、第一タンク20A~20C内の吸収液Lによって吸収されにくいものである場合、第一タンク20A~20Cの気相には、吸収液Lに吸収されずに残った不活性ガスが溜まる。パージが進行するにしたがって、第一タンク20A~20Cに導入されるパージガスにおける、不活性ガスの割合(流量)が増えていく。このようにして、第一タンク20A~20Cに順次導入される不活性ガスにより、第一タンク20A~20Cの気相の圧力が高まっていく。第一タンク20A~20Cと、第二タンク30A~30Cとは、上部接続ライン111により接続されている。第一タンク20A~20Cの気相の圧力に応じ、圧力調整弁112が開くと、第一タンク20A~20Cの上部の気相の気体が、第二タンク30A~30Cの上部へと移送される。これにより、第一タンク20A~20Cの気相の圧力が低減される。したがって、その後に流れ込むパージガスを、第一タンク20A~20Cでさらに受け入れることが可能となる。その結果、パージの際に大量に流れ込むパージガスを第一タンク20A~20Cで受け入れて、より多くのアンモニアを吸収させることができる。また、不活性ガスを、第一タンク20A~20C内から第一気体排出ライン41を通して排出する場合、不活性ガスの圧力が低減されているので、第一気体排出ライン41の下流側に閉鎖空間が設けられている場合であっても、不活性ガスの流れにより、閉鎖空間内に供給される水が上方に逆流するフラッディングといった現象を生じることが抑えられる。
したがって、パージの際における、アンモニアの吸収性を確保することができる。
【0134】
(2)第2の態様に係るアンモニア除害システム100A、100C~100Eは、(1)のアンモニア除害システム100A、100C~100Eであって、前記圧力調整弁112は、前記第一タンク20A~20Cの気相の圧力が、予め設定された基準圧力以上となった場合に開き、前記第一タンク20A~20Cの気相を前記第二タンク30A~30Cの上部と連通させる。
【0135】
これにより、第一タンク20A~20Cの気相の圧力が、予め設定された基準圧力以上となった場合に、圧力調整弁112が開くことで、第一タンク20A~20Cの気相を第二タンク30A~30Cの上部と連通させる。したがって、第一タンク20A~20Cに順次導入される不活性ガスにより、第一タンク20A~20Cの気相の圧力が過度に高まることが抑えられる。
【0136】
(3)第3の態様に係るアンモニア除害システム100C~100Eは、(1)又は(2)の何れか一つのアンモニア除害システム100C~100Eであって、前記第一タンク20A~20Cの下部の液相と前記第二タンク30A~30Cの下部とを接続する下部接続ライン121と、前記下部接続ライン121に設けられて、前記第一タンク20A~20Cの気相の圧力に応じて開閉可能な液位調整弁122と、を更に備える。
【0137】
これにより、第一タンク20A~20Cと、第二タンク30A~30Cとは、下部接続ライン121により接続されている。第一タンク20A~20Cの気相の圧力に応じ、液位調整弁122が開くと、第一タンク20A~20Cの下部の液相が、第二タンク30A~30Cの下部へと移送される。これにより、第一タンク20A~20Cの気相の容積が増え、気相の圧力が低減される。したがって、その後に流れ込むパージガスを、第一タンク20A~20Cでさらに受け入れることが可能となる。その結果、パージの際に大量に流れ込むパージガスを第一タンク20A~20Cで受け入れて、より多くのアンモニアを吸収させることができる。
【0138】
(4)第4の態様に係るアンモニア除害システム100C~100Eは、(3)のアンモニア除害システム100C~100Eであって、前記液位調整弁122は、前記第一タンク20A~20Cの気相の圧力が、予め設定された基準圧力以上となった場合に開き、前記第一タンク20A~20Cの液相を前記第二タンク30A~30Cの下部と連通させる。
【0139】
これにより、第一タンク20A~20Cの気相の圧力が、予め設定された基準圧力以上となった場合に、液位調整弁122を開くことで、第一タンク20A~20Cの液相を第二タンク30A~30Cの下部へと送り込む。したがって、第一タンク20A~20Cに順次導入される不活性ガスにより、第一タンク20A~20Cの気相の圧力が過度に高まることが抑えられる。
【0140】
(5)第5の態様に係るアンモニア除害システム100C~100Eは、(4)のアンモニア除害システム100C~100Eであって、前記液位調整弁122は、前記第一タンク20A~20Cの気相の圧力が、予め設定された下限圧力未満となった場合に開き、前記第二タンク30A~30Cの液相の液体を前記第一タンク20A~20Cの下部に戻す。
【0141】
これにより、第一タンク20A~20Cの気相の圧力が、予め設定された下限圧力未満となった場合に、液位調整弁122を開くことで、第二タンク30A~30Cの液相の液体を第一タンク20A~20Cの下部に戻すことができる。したがって、第一タンク20A~20C内の気相の圧力が過度に低くなることが抑えられる。また、第二タンク30A~30Cの液相の液体を第一タンク20A~20Cの下部に戻すことで、第一タンク20A~20Cの液相の液位が上昇する。これにより、第一タンク20A~20Cの気相の気体を、第一気体排出ライン41を通して効率良く押し出して排出することができる。
【0142】
(6)第6の態様に係るアンモニア除害システム100A、100C~100Eは、(1)から(5)の何れか一つのアンモニア除害システム100A、100C~100Eであって、前記第二タンク30A~30Cは、アンモニアを吸収可能な吸収液Lを貯留し、前記第二タンク30A~30Cにアンモニア及び不活性ガスを含むパージガスを導入可能な第二導入ライン16と、前記第二タンク30A~30Cでの前記吸収液Lによるアンモニアの吸収を促進させる第二吸収促進部32Aと、を備える。
【0143】
これにより、アンモニア及び不活性ガスを含むパージガスが、第二導入ライン16から第二タンク30A~30Cに導入されると、パージガスに含まれるアンモニアが、第二タンク30A~30Cに貯留された吸収液Lに吸収される。このとき、第二吸収促進部32Aにより、第二タンク30A~30Cでの吸収液Lによるアンモニアの吸収が促進される。このようにして、第二タンク30A~30Cにおいても、第一タンク20A~20Cと同様、パージバスに含まれるアンモニアを吸収することができる。したがって、何らかの理由により、第一タンク20A~20Cでアンモニアの吸収ができなくなった場合等には、第一タンク20A~20Cに代えて、第二タンク30A~30Cでアンモニアの吸収を行うことができる。したがって、アンモニア除害システム100A~100Eにおける冗長性を高めることができる。
【0144】
(7)第7の態様に係るアンモニア除害システム100A、100C~100Eは、(1)から(6)の何れか一つのアンモニア除害システム100A、100C~100Eであって、前記第一気体排出ライン41を通して前記第一タンク20A~20Cから排出される前記気相の気体の流量を調整する流量調整弁41Vを更に備える。
【0145】
これにより、第一気体排出ライン41を通して排出される、第一タンク20A~20Cの気相の気体の流量を低下させることによって、第一気体排出ライン41から排出される気相におけるアンモニア濃度を下げることができる。
【0146】
(8)第8の態様に係るアンモニア除害システム100A、100C~100Eは、(1)から(7)の何れか一つのアンモニア除害システム100A、100C~100Eであって、第一吸収促進部22A~22Cは、前記第一タンク20A~20C内に吸収液Lを散水するスプレー24、前記パージガスを前記第一タンク20A~20C内の前記吸収液L中に散気するノズル128、及び前記第一タンク20A~20C内に送り込む吸収液Lの流れに前記第一タンク20A~20C内の気相の気体を吸い込ませるエジェクター129、の少なくとも一つを備える。
【0147】
これにより、スプレー24、ノズル128、エジェクター129の少なくとも一つを備える第一吸収促進部22A~22Cにより、第一タンク20A~20Cにおける、パージガスに含まれるアンモニアの吸収液Lによる吸収を促進させることができる。
【0148】
(9)第9の態様に係るアンモニア除害システム100A、100C~100Eは、(1)から(8)の何れか一つのアンモニア除害システム100A、100C~100Eであって、前記第一タンク20A~20C内の液相の液体を、前記第一吸収促進部22A~22Cに循環させる第一循環ライン23を更に備える。
【0149】
これにより、第一循環ライン23により、第一タンク20A~20C内の液相を、第一吸収促進部22A~22Cに循環させることによって、吸収液Lを有効利用しながら、吸収液Lによるアンモニアの吸収を効率良く行うことができる。
【0150】
(10)第10の態様に係るアンモニア除害システム100B~100Eは、アンモニアを吸収可能な吸収液Lを貯留する第一タンク20A~20Cと、前記第一タンク20A~20Cにアンモニア及び不活性ガスを含むパージガスを導入可能な第一導入ライン15と、前記第一タンク20A~20Cでの前記吸収液Lによるアンモニアの吸収を促進させる第一吸収促進部22A~22Cと、前記第一タンク20A~20Cの液相から液体を排出可能な第一液体排出ライン51と、前記第一タンク20A~20Cの気相から気体を排出可能な第一気体排出ライン41と、第一タンク20A~20Cとは独立して設けられた第二タンク30A~30Cと、前記第一タンク20A~20Cの下部の液相と前記第二タンク30A~30Cの下部とを接続する下部接続ライン121と、前記下部接続ライン121に設けられて、前記第一タンク20A~20Cの気相の圧力に応じて開閉可能な液位調整弁122と、を備える。
【0151】
このアンモニア除害システム100B~100Eは、アンモニアが流通する配管等を不活性ガスによりパージする場合、不活性ガスを配管等に送り込むと、アンモニア及び不活性ガスを含むパージガスが、第一導入ライン15から第一タンク20A~20Cに導入される。導入されたパージガスに含まれるアンモニアは、第一タンク20A~20Cに貯留された吸収液Lに吸収される。このとき、第一吸収促進部22A~22Cにより、第一タンク20A~20Cでの吸収液Lによるアンモニアの吸収が促進される。パージガスに含まれる不活性ガスが、第一タンク20A~20C内の吸収液Lによって吸収されにくいものである場合、第一タンク20A~20Cの気相には、吸収液Lに吸収されずに残った不活性ガスが溜まる。パージが進行するにしたがって、第一タンク20A~20Cに導入されるパージガスにおける、不活性ガスの割合(流量)が増えていく。このようにして、第一タンク20A~20Cに順次導入される不活性ガスにより、第一タンク20A~20Cの気相の圧力が高まっていく。第一タンク20A~20Cと、第二タンク30A~30Cとは、下部接続ライン121により接続されている。第一タンク20A~20Cの気相の圧力に応じ、液位調整弁122が開くと、第一タンク20A~20Cの下部の液相が、第二タンク30A~30Cの下部へと移送される。これにより、第一タンク20A~20Cの気相の容積が増え、気相の圧力が低減される。したがって、その後に流れ込むパージガスを、第一タンク20A~20Cでさらに受け入れることが可能となる。その結果、パージの際に大量に流れ込むパージガスを第一タンク20A~20Cで受け入れて、より多くのアンモニアを吸収させることができる。また、不活性ガスを、第一タンク20A~20C内から第一気体排出ライン41を通して排出する場合であっても、不活性ガスの圧力が低減されている。これにより、第一気体排出ライン41の下流側に閉鎖空間が設けられている場合であっても、不活性ガスの流れにより、閉鎖空間内に供給される水が上方に逆流するフラッディングといった現象を生じることが抑えられる。
したがって、パージの際における、アンモニアの吸収性を確保することができる。
【0152】
(11)第11の態様に係る浮体1は、浮体本体2と、(1)から(10)の何れか一つのアンモニア除害システム100A~100Eと、を備える。
【0153】
このような構成により、パージの際における、アンモニアの吸収性を確保することができるアンモニア除害システム100A~100Eを備えた浮体1を提供することができる。
【0154】
(12)第12の態様に係るアンモニア除害方法S10は、(1)から(10)の何れか一つのアンモニア除害システム100A~100Eにおけるアンモニア除害方法S10であって、第一タンク20A~20Cにアンモニアを吸収可能な吸収液Lを貯留する工程S11と、前記第一タンク20A~20Cにアンモニア及び不活性ガスを含むパージガスを導入する工程S12と、前記第一タンク20A~20Cに導入する前記パージガスに含まれるアンモニアを、前記吸収液Lにより吸収させる工程S13と、前記第一タンク20A~20Cの気相が、予め設定された基準圧力以上となった場合に、前記第一タンク20A~20Cの上部の気相の気体を前記第二タンク30A~30Cに移送する工程S15と、を含む。
【0155】
このアンモニア除害方法S10は、パージガスが第一タンク20A~20Cに導入されると、パージガスに含まれるアンモニアが、第一タンク20A~20Cに貯留された吸収液Lに吸収される。第一タンク20A~20Cに順次導入される不活性ガスにより、第一タンク20A~20Cの気相の圧力が高まり、基準圧力以上となった場合に、第一タンク20A~20Cの上部の気相の気体を、第二タンク30A~30Cの上部に移送することで、第一タンク20A~20Cの気相の圧力が低減される。したがって、その後に流れ込むパージガスを、第一タンク20A~20Cでさらに受け入れることが可能となる。その結果、パージの際に大量に流れ込むパージガスを第一タンク20A~20Cで受け入れて、より多くのアンモニアを吸収させることができる。また、不活性ガスを、第一タンク20A~20C内から第一気体排出ライン41を通して排出する場合であっても、不活性ガスの圧力が低減されているので、第一気体排出ライン41の下流側に閉鎖空間が設けられている場合であっても、不活性ガスの流れにより、閉鎖空間内に供給される水が上方に逆流するフラッディングといった現象を生じることが抑えられる。
したがって、パージの際における、アンモニアの吸収性を確保することができる。
【符号の説明】
【0156】
1…浮体 2…浮体本体 2a…船首 4…上部構造 5A 5B…舷側 6…船底 7…上甲板 8…燃焼装置 9…ファンネル 10…パージガス導入部 11…主導入ライン 12…タンク導入ライン 13…バイパスライン 13V…開閉弁 14…主配管 14V…開閉弁 15…第一導入ライン 15V…開閉弁 16…第二導入ライン 16V…開閉弁 20A~20C…第一タンク 21…タンク本体 22A~22C…第一吸収促進部 23…第一循環ライン 23a…部分 23j…部分 24…スプレー 25…循環ポンプ 26…熱交換器 27…取水管 28…液位計 29…圧力計 30A~30C…第二タンク 31…タンク本体 32A~32C…第二吸収促進部 33…第二循環ライン 34…スプレー 35…循環ポンプ 36…熱交換器 37…取水管 38…液位計 39…圧力計 40…排気部 41…第一気体排出ライン 41V…流量調整弁 42…第二気体排出ライン 42V…流量調整弁 43…大気開放ライン 44…希釈ライン 45…希釈ファン 50…排水部 51…第一液体排出ライン 52…第二液体排出ライン 52V…開閉弁 53…第三液体排出ライン 53V…開閉弁 55…排水ライン 56 57…分岐配管 56V 57V…開閉弁 60…第一廃水タンク 61…排水ライン 62…ポンプ 68…陸揚げライン 70…第二廃水タンク 80…アンモニア成分除去部 81…電気分解部 83…脱窒素反応部 89…放流部 100A~100E…アンモニア除害システム 110…圧力調整部 111…上部接続ライン 112…圧力調整弁 120…液位調整部 121…下部接続ライン 122…液位調整弁 128…ノズル 129…エジェクター 138…ノズル 139…エジェクター FA…船首尾方向 L…吸収液 S10 S20…アンモニア除害方法 S11 S21…吸収液を貯留工程 S12 S22…パージガスを導入する工程 S13 S23…アンモニアを吸収させる工程 S14 S24…気相の圧力を確認する工程 S15…気相の気体を移送する工程 S16 S26…パージの終了を確認する工程 S17 S27…パージの導入を終了する工程 S17A S27A…アンモニアを気液平衡状態とする工程 S18 S28…気相を排出する工程 S19 S29…液相を排出する工程 S25…液相の液体を移送する工程
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