(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064606
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】ろ過システム
(51)【国際特許分類】
B01D 37/04 20060101AFI20240507BHJP
G06N 20/10 20190101ALI20240507BHJP
【FI】
B01D37/04
G06N20/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173319
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000176752
【氏名又は名称】三菱化工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(74)【代理人】
【識別番号】100224719
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 隆治
(72)【発明者】
【氏名】高橋 信行
(72)【発明者】
【氏名】杉内 卓矢
【テーマコード(参考)】
4D116
【Fターム(参考)】
4D116KK04
4D116KK06
4D116QA13C
4D116QA13D
4D116QA13E
4D116QA22A
4D116QA22F
4D116QA23A
4D116QA23F
4D116QA60
4D116QC20A
4D116QC20B
4D116QC20D
4D116QC22A
4D116QC22B
4D116QC23A
4D116QC23D
4D116QC24
4D116QC26
4D116QC29
4D116QC32A
4D116QC32D
4D116QC34A
4D116QC34B
4D116QC50
4D116SS01
4D116SS04
4D116VV11
(57)【要約】
【課題】
スラリー液をろ過するための処理系を人工知能(AI)により自動制御可能なろ過システムを提供する。
【解決手段】
ろ過系内の流体の経路上に配置され、流体の画像データを取得する撮像部と、画像データに基づいて処理系の状態を判定する判定部と、処理系の状態の判定結果に基づき、処理系に対する制御信号を出力する出力部と、を備えると共に、処理系の状態は、ろ過系の処理状態、ろ材の劣化状態、または、ろ材の異常状態を含み、前記判定部は、画像データを入力データとし、ろ過系の処理状態、ろ材の劣化状態、または、ろ材の異常状態を出力データとして機械学習された判定モデルを用いてろ過系の処理状態、ろ材の劣化状態、または、ろ材の異常状態を判定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラリー液をろ過するための処理系を自動制御可能なろ過システムであって、
前記処理系は、ろ過系を含み、
前記ろ過系内の流体の経路上に配置され、前記流体の画像データを取得する撮像部と、
前記画像データに基づいて前記処理系の状態を判定する判定部と、
前記処理系の状態の判定結果に基づき、前記処理系に対する制御信号を出力する出力部と、を備えると共に、
前記処理系の状態は、ろ過系の処理状態、ろ材の劣化状態、または、ろ材の異常状態を含み、
前記判定部は、前記画像データを入力データとし、ろ過系の処理状態、ろ材の劣化状態、または、ろ材の異常状態を出力データとして機械学習された判定モデルを用いて前記ろ過系の処理状態、前記ろ材の劣化状態、または、前記ろ材の異常状態を判定する、ろ過システム。
【請求項2】
スラリー液をろ過するための処理系を自動制御可能なろ過システムであって、
前記処理系は、洗浄系を含み、
前記洗浄系内の流体の経路上に配置され、前記流体の画像データを取得する撮像部と、
前記画像データに基づいて前記処理系の状態を判定する判定部と、
前記処理系の状態の判定結果に基づき、前記処理系に対する制御信号を出力する出力部と、を備えると共に、
前記処理系の状態は、洗浄系の処理状態、ろ材の劣化状態、または、ろ材の異常状態を含み、
前記判定部は、前記画像データを入力データとし、洗浄系の処理状態、ろ材の劣化状態、または、ろ材の異常状態を出力データとして機械学習された判定モデルを用いて前記洗浄系の処理状態、前記ろ材の劣化状態、または、前記ろ材の異常状態を判定する、ろ過システム。
【請求項3】
前記処理系は、ろ過系を含み、
前記流体は、ろ液であって、
前記判定部は、前記ろ過系の処理状態を判定し、
前記出力部は、前記ろ過系の処理状態の判定結果に基づき、前記ろ過系に対する制御信号を出力する、請求項1に記載のろ過システム。
【請求項4】
前記ろ過系に対する制御信号は、ろ過系の稼動に関する制御信号、スラリー液の供給量に関する制御信号、脱液処理に関する制御信号、ろ過助剤液の供給量に関する制御信号の少なくとも何れか1つ以上を含む、請求項3に記載のろ過システム。
【請求項5】
前記ろ過系に対する制御信号は、供給経路側および排出経路側の少なくとも何れか一方のろ室内圧を加圧または減圧させる制御信号である、請求項3に記載のろ過システム。
【請求項6】
前記ろ過系に対する制御信号は、スラリー液またはろ過助剤液の供給弁の開閉時間を変化させる制御信号である、請求項3に記載のろ過システム。
【請求項7】
前記処理系は、洗浄系を含み、
前記流体は、洗浄排液であって、
前記判定部は、前記洗浄系の処理状態を判定し、
前記出力部は、前記洗浄系の処理状態の判定結果に基づき、前記洗浄系に対する制御信号を出力する、請求項2に記載のろ過システム。
【請求項8】
前記処理系は、ろ過系または洗浄系または交換系または警告通知系を含み、
前記流体は、ろ液であって、
前記判定部は、前記ろ材の劣化状態を判定し、
前記出力部は、前記ろ材の劣化状態の判定結果に基づき、前記洗浄系に対する制御信号、前記交換系に対する制御信号、前記警告通知系に対する警告信号の少なくとも何れか1つ以上を出力する、請求項1に記載のろ過システム。
【請求項9】
前記処理系は、洗浄系または交換系または警告通知系を含み、
前記流体は、洗浄排液であって、
前記判定部は、前記ろ材の劣化状態を判定し、
前記出力部は、前記ろ材の劣化状態の判定結果に基づき、前記洗浄系に対する制御信号、前記交換系に対する制御信号、前記警告通知系に対する警告信号の少なくとも何れか1つ以上を出力する、請求項2に記載のろ過システム。
【請求項10】
前記処理系は、ろ過系または洗浄系または警告通知系を含み、
前記流体は、ろ液または洗浄排液であって、
前記判定部は、前記ろ材の異常状態を判定し、
前記出力部は、前記ろ材の異常状態の判定結果に基づき、前記ろ過系に対し稼働に関する制御信号を出力するか、または、警告通知系に対してろ材の異常状態に関する警告信号を出力する、請求項1または請求項2に記載のろ過システム。
【請求項11】
前記処理系は、ろ過系を含み、
前記流体は、前記スラリー液であって、
前記撮像部は、スラリー液の供給経路上に配置され、前記スラリー液の画像データを取得し、
前記出力部は、前記ろ過系の処理状態の判定結果に基づき、前記ろ過系に対してろ過助剤液の供給量に関する制御信号を出力する、請求項1に記載のろ過システム。
【請求項12】
前記撮像部は、前記流体の経路上に、地平面に対して略水平となる画角で配置される、請求項1または請求項2に記載のろ過システム。
【請求項13】
さらに、制御対象の処理系を切り替えるための制御モード切替部を備え、
前記処理系は、ろ過系、洗浄系、および、交換系を含み、
前記判定部は、ろ過系の処理状態、洗浄系の処理状態、および、ろ材の劣化状態を含む処理系の状態を判定し、
前記出力部は、前記処理系の状態の判定結果に基づき、前記ろ過系、前記洗浄系、および、前記交換系に対する制御信号を出力し、
前記制御モード切替部は、前記処理系の状態の判定結果、又は前記制御信号の出力に基づいて、制御モードを切り替える、請求項1または請求項2に記載のろ過システム。
【請求項14】
前記処理系は、警告通知系を含み、
前記判定部は、ろ材の異常状態を含む処理系の状態を更に判定し、
前記出力部は、前記ろ材の劣化状態または前記ろ材の異常状態の判定結果に基づき、前記警告通知系に対して、前記制御モードに対応する警告信号を出力する、請求項13に記載のろ過システム。
【請求項15】
前記ろ過系のろ液排出経路は、前記洗浄系の洗浄排液排出経路を兼ねており、
前記撮像部は、前記ろ液排出経路に配置される、請求項13に記載のろ過システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラリー液をろ過するための処理系を自動制御可能なろ過システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ろ過装置を継続的に稼働させるうえで、ろ過膜、フィルタ、ろ紙、ろ布などのろ材の状態を精度よく把握することが重要である。
【0003】
ろ材のろ過性能は、繰り返しのろ過による分離対象物質のろ材表面やろ材内部への付着により、低下する。また、ろ材の劣化により破損などが生じた場合、ろ液やケーキなどの製品の品質低下に繋がる。従来、ろ材の状態は、作業員による目視での確認や、時間設定などにより管理されていた。そこで、ろ材の状態を管理するための技術が提供されてきた。
【0004】
特許文献1では、各種の機械または設備で使用された油の寿命予測を適切に行うために、油の状態を精度よく監視可能な、油状態監視方法および油状態監視装置を開示する。特許文献1では、油をろ過し、油分を除去したフィルタに光を投射し、透過光の色成分を検出することで、油の劣化状態を監視することが開示されている。
【0005】
特許文献2では、ろ過膜のファウリングの発生要因となる重要因子を精度よく予測する重要因子算出装置を開示する。特許文献2では、ろ過膜のろ過性能を示すパラメータとろ過膜が用いられる排水処理系の水質を示すパラメータを含む複数のパラメータの時系列データから、単位タイムステップ後のろ過膜のろ過性能を予測する予測器を学習し、予測期から単位タイムステップ後のろ過性能の予測に寄与するパラメータを出力することが開示される。
【0006】
特許文献3では、オペレータの判断に依存することなく遠心分離システムの好適な動作制御を実現するための技術が開示される。特許文献3では、分離液を所定画角から撮像した画像データを含む入力データと、入力データに対応付けられた、被処理液PL1に添加される添加物の供給量、ボウル2の遠心力及び差速発生装置5により制御される差速のうちの少なくとも1つを含む制御パラメータを含む出力データとを含む学習用データセットを複数組記憶する学習用データセット記憶ユニット22と;学習用データセットを複数組入力することで、入力データと出力データとの相関関係を推論する学習モデルを学習する学習ユニット23と;学習された学習済モデルを記憶する学習済モデル記憶ユニット24と;を含むことが開示される。
【0007】
特許文献3によれば、遠心分離装置における制御を自動化し、操業負荷の解消や生産性の向上などに効果があるものと把握される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許5190660号公報
【特許文献2】国際公開第2022/085802号
【特許文献3】特開2022-021243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本願発明は、スラリー液をろ過するための処理系を人工知能(AI)により自動制御可能なろ過システムを提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述したような課題を解決するために、本発明は、スラリー液をろ過するための処理系を自動制御可能なろ過システムであって、前記処理系は、ろ過系を含み、前記ろ過系内の流体の経路上に配置され、前記流体の画像データを取得する撮像部と、前記画像データに基づいて前記処理系の状態を判定する判定部と、前記処理系の状態の判定結果に基づき、前記処理系に対する制御信号を出力する出力部と、を備えると共に、前記処理系の状態は、ろ過系の処理状態、ろ材の劣化状態、または、ろ材の異常状態を含み、前記判定部は、前記画像データを入力データとし、ろ過系の処理状態、ろ材の劣化状態、または、ろ材の異常状態を出力データとして機械学習された判定モデルを用いて前記ろ過系の処理状態、前記ろ材の劣化状態、または、前記ろ材の異常状態を判定する。
【0011】
このように、ろ過装置において機械学習済モデルを用いることで、流体の画像データから、ろ過系の処理状態、ろ材の劣化状態、ろ材の異常状態を判定し、それらの状態に応じて処理系を自動制御することができる。ろ過装置は、人工知能(AI)を搭載することで、作業員が経験により判断していた処理系の状態に関する判定基準を自動判定できるようになるため、作業員による操業を必要とせずに、状態に応じた適切な処理系の自動制御を実現することができる。
【0012】
また、本発明は、スラリー液をろ過するための処理系を自動制御可能なろ過システムであって、前記処理系は、洗浄系を含み、前記洗浄系内の流体の経路上に配置され、前記流体の画像データを取得する撮像部と、前記画像データに基づいて前記処理系の状態を判定する判定部と、前記処理系の状態の判定結果に基づき、前記処理系に対する制御信号を出力する出力部と、を備えると共に、前記処理系の状態は、洗浄系の処理状態、ろ材の劣化状態、または、ろ材の異常状態を含み、前記判定部は、前記画像データを入力データとし、洗浄系の処理状態、ろ材の劣化状態、または、ろ材の異常状態を出力データとして機械学習された判定モデルを用いて、前記洗浄系の処理状態、ろ材の劣化状態、または、ろ材の異常状態を判定する。
【0013】
このように、ろ過装置において機械学習済モデルを用いることで、流体の画像データから、洗浄系の処理状態、ろ材の劣化状態、ろ材の異常状態を判定し、それらの状態に応じて処理系を自動制御することができる。ろ過装置は、人工知能(AI)を搭載することで、作業員が経験により判断していた処理系の状態に関する判定基準を自動判定できるようになるため、作業員による操業を必要とせずに、状態に応じた適切な処理系の自動制御を実現することができる。
【0014】
本発明の好ましい形態では、前記処理系は、ろ過系を含み、前記流体は、ろ液であって、前記判定部は、前記ろ過系の処理状態を判定し、前記出力部は、前記ろ過系の処理状態の判定結果に基づき、前記ろ過系に対する制御信号を出力する。
本発明の好ましい形態では、前記ろ過系に対する制御信号は、ろ過系の稼動に関する制御信号、スラリー液の供給量に関する制御信号、脱液処理に関する制御信号、ろ過助剤液の供給量に関する制御信号の少なくとも何れか1つ以上を含む。
本発明の好ましい形態では、前記ろ過系に対する制御信号は、供給経路側および排出経路側の少なくとも何れか一方のろ室内圧を加圧または減圧させる制御信号である。
本発明の好ましい形態では、前記ろ過系に対する制御信号は、スラリー液またはろ過助剤液の供給弁の開閉時間を変化させる制御信号である。
このような構成とすることで、ろ過系の処理状態を判定し、それぞれの状態に応じた好適な自動制御を実現することができる。
【0015】
本発明の好ましい形態では、前記処理系は、洗浄系を含み、前記流体は、洗浄排液であって、前記判定部は、前記洗浄系の処理状態を判定し、前記出力部は、前記洗浄系の処理状態の判定結果に基づき、前記洗浄系に対する制御信号を出力する。
このような構成とすることで、洗浄系の処理状態を判定し、その状態に応じた好適な自動制御を実現することができる。
【0016】
本発明の好ましい形態では、前記処理系は、ろ過系または洗浄系または交換系または警告通知系を含み、前記流体は、ろ液であって、前記判定部は、前記ろ材の劣化状態を判定し、前記出力部は、前記ろ材の劣化状態の判定結果に基づき、前記洗浄系に対する制御信号、前記交換系に対する制御信号、前記警告通知系に対する警告信号の少なくとも何れか1つ以上を出力する。
本発明の好ましい形態では、前記処理系は、洗浄系または交換系または警告通知系を含み、前記流体は、洗浄排液であって、前記判定部は、前記ろ材の劣化状態を判定し、前記出力部は、前記ろ材の劣化状態の判定結果に基づき、前記洗浄系に対する制御信号、前記交換系に対する制御信号、前記警告通知系に対する警告信号の少なくとも何れか1つ以上を出力する。
このような構成とすることで、ろ材の劣化状態を判定し、その状態に応じた好適な自動制御を実現することができる。
【0017】
本発明の好ましい形態では、前記処理系は、ろ過系または洗浄系または警告通知系を含み、前記流体は、ろ液または洗浄排液であって、前記判定部は、前記ろ材の異常状態を判定し、前記出力部は、前記ろ材の異常状態の判定結果に基づき、前記ろ過系に対し稼働に関する制御信号を出力するか、または、警告通知系に対してろ材の異常状態に関する警告信号を出力する。
このような構成とすることで、ろ材の異常状態を判定し、迅速に異常状態に対応することができる。
【0018】
本発明の好ましい形態では、前記処理系は、ろ過系を含み、前記流体は、前記スラリー液であって、前記撮像部は、スラリー液の供給経路上に配置され、前記スラリー液の画像データを取得し、前記出力部は、前記ろ過系の処理状態の判定結果に基づき、前記ろ過系に対してろ過助剤液の供給量に関する制御信号を出力する。
このような構成とすることで、スラリー液の状態に応じた好適なろ過助剤液の供給量の制御を行うことができる。
【0019】
本発明の好ましい形態では、前記撮像部は、前記流体の経路上に、地平面に対して略水平となる画角で配置される。
このような構成とすることで、流体の液面や液量などを好適な画角で撮像し、判定の精度を向上させることができる。
【0020】
本発明の好ましい形態では、さらに、制御対象の処理系を切り替えるための制御モード切替部を備え、前記処理系は、ろ過系、洗浄系、および、交換系を含み、前記判定部は、ろ過系の処理状態、洗浄系の処理状態、および、ろ材の劣化状態を含む処理系の状態を判定し、前記出力部は、前記処理系の状態の判定結果に基づき、前記ろ過系、前記洗浄系、および、前記交換系に対する制御信号を出力し、前記制御モード切替部は、前記処理系の状態の判定結果、又は前記制御信号の出力に基づいて、制御モードを切り替える。
本発明の好ましい形態では、前記処理系は、警告通知系を含み、前記判定部は、ろ材の異常状態を含む処理系の状態を更に判定し、前記出力部は、前記ろ材の劣化状態または前記ろ材の異常状態の判定結果に基づき、前記警告通知系に対して、前記制御モードに対応する警告信号を出力する。
このような構成とすることで、ろ過系、洗浄系、交換系を含むろ過装置における一連の動作を自動制御することができる。
【0021】
本発明の好ましい形態では、前記ろ過系のろ液排出経路は、前記洗浄系の洗浄排液排出経路を兼ねており、前記撮像部は、前記ろ液排出経路に配置される。
このような構成とすることで、1つの撮像部の配置により、ろ過系および洗浄系を含むろ過装置の動作を自動制御することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、スラリー液をろ過するための処理系を人工知能(AI)により自動制御可能なろ過システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本実施形態にかかるろ過システムのブロック図を示す。
【
図2】本実施形態にかかるろ過システムの概要図を示す。
【
図3】本実施形態にかかるろ過システムの概要図を示す。
【
図6】本実施形態にかかる撮像部により取得される画像データの例を示す。
【
図7】本実施形態にかかるモデル生成装置のブロック図を示す。
【
図8】本実施形態にかかる判定モデルの構成例を示す。
【
図9】本実施形態にかかるデータセットの構成例を示す。
【
図10】本実施形態にかかる機械学習処理のフローチャートを示す。
【
図11】本実施形態にかかる制御信号テーブルの構成例を示す。
【
図12】本実施形態にかかるろ過システムにおける各工程を示す。
【
図13】実施形態2にかかるろ過システムのブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を用いて、本発明のろ過システムについて説明する。なお、以下に示す実施形態は本発明の一例であり、本発明を以下の実施形態に限定するものではなく、様々な構成を採用することもできる。
【0025】
ろ過装置は、ろ過対象とする固液混合液であるスラリー液を、ろ過膜やフィルタ、ろ紙やろ布などのろ材を通過させることで、固体形成物であるケーキおよび、ろ液に分離する。
【0026】
図14は、従来のろ過装置を用いたそれぞれの処理の工程を示す。
【0027】
ろ過工程は、スラリー液をろ過し、ケーキおよびろ液に分離する工程である。ろ過工程において、作業員は、ろ過装置に対して、ろ過開始の操作、スラリー液の供給量の設定や調整、ろ室圧力の設定や調整、ろ過終了の操作などを行う。なお、ろ過工程は、ケーキの脱液処理をする脱液工程を含んでもよい。脱液工程において、作業員は、ろ過装置に対して、脱液開始の操作、ろ室圧力の設定や調整、脱液終了の操作などを行う。
【0028】
ケーキ洗浄工程は、ろ過終了後、洗浄液をろ室に供給し、ケーキを洗浄する工程である。ケーキ洗浄工程において、作業員は、ろ過装置に対して、ケーキ洗浄開始の操作、洗浄液の供給量の設定や調整、ろ室圧力の設定や調整、洗浄終了の操作などを行う。
【0029】
ろ材交換工程は、ろ材に劣化(例えばファウリングなど)が生じた場合や、ろ材に異常(例えばろ材破損、ろ過漏れなど)が生じた場合などに、ろ材を洗浄または交換する工程である。ろ材交換工程において、作業員は、ろ材洗浄またはろ材交換開始の操作、ろ材交換終了の操作などを行う。ろ材交換工程が自動式のろ過装置でない場合、ろ室開枠、ろ材設置、ろ室閉枠などは、手動で行われる。なお、ろ材交換工程において、ろ材に堆積されたケーキが排出されるものとする。
【0030】
ろ材交換工程にてろ材交換が完了すると、ろ過工程に戻り、繰り返し処理を実行する。
【0031】
上記の処理工程では、ろ液の状態や洗浄排液の状態を作業員が目視で確認し、ろ過や洗浄を終了するか判断していた。或いは、作業員は、ろ過時間や洗浄時間をタイマーで設定することで、各工程を管理していた。また、ろ過助剤液の投入量や投入時期についても、作業員の目視による判断やタイマー設定による管理が行われていた。
【0032】
本発明のろ過システムは、上記のろ過工程、ケーキ洗浄工程、ろ材交換工程を自動制御することを目的とする。
【0033】
<実施形態1>
図1は、本実施形態におけるろ過システム1のブロック図を示す。ろ過システム1は、制御部11と、撮像部12と、判定部13と、出力部14と、第1制御モード切替部15と、データベースとしての記憶部DBと、コントロールパネル60と、を備え、各構成部は制御部11に接続され制御される。出力部14は、処理系10に接続され、制御信号を出力することで、処理系10の動作を制御する。処理系10は、ろ過工程を制御するろ過系20と、洗浄工程を制御する洗浄系30と、ろ材交換工程を制御する交換系40と、ろ材の劣化状態(例えばファウリングなど)またはろ材の異常状態(例えばろ材破損、ろ過漏れなど)の通知を制御する警告通知系50と、を備える。本実施形態において、ろ過システム1は、ろ過装置として構成される。
【0034】
ろ材の劣化状態は、ろ材劣化なし、ろ材劣化ありを少なくとも含む。なお、ろ材の劣化状態は、更に段階的な劣化状態の程度(劣化小、劣化大など)を含んでもよい。
【0035】
ろ材の異常状態は、異常なし、異常ありを少なくとも含む。ろ材の異常状態は、異常の種別として、ろ材破損、ろ過漏れ、などを含んでもよい。
【0036】
処理系10は、ろ過システム1(1A~1D)におけるろ過、ケーキ洗浄、装置洗浄、ろ材交換、警告通知を含む処理を実行する装置構成を示す。処理系10は、制御信号の入力に基づき構成部を動作させ、各種処理を実現する。
【0037】
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)などによる演算装置により構成される。制御部11は、処理系10に接続され、制御信号に基づく機構の制御を行ってもよい。制御部11は、コントロールパネル60に接続され、コントロールパネル60を介した操作入力を受け付けることができる。制御部11は、コントロールパネル60における表示処理を行ってもよい。
【0038】
撮像部12は、ろ過装置内の流体の経路上に配置され、流体の画像データを取得する。
【0039】
判定部13は、撮像部12により取得された画像データに基づいて処理系10の状態を判定する。
【0040】
出力部14は、判定部13による処理系10の状態の判定結果に基づき、処理系10に対する制御信号を出力する。処理系10は、出力部14により出力された制御信号に基づいて制御される。
【0041】
第1制御モード切替部15は、判定部13による処理系10の状態の判定結果、または、出力部14による制御信号の出力に基づいて制御モードを切り替える。制御モードは、制御対象の処理系10が、ろ過系20、洗浄系30、交換系40の何れであるかを示す。
【0042】
記憶部DBは、判定部13による画像データの判定処理に用いる判定モデルを格納する。記憶部DBは、出力部14により出力する制御信号の決定に用いる制御信号テーブルを格納する。また、記憶部DBは、画像データなどの各種データや、制御部11により実行される各種命令を含むプログラムを格納している。このプログラムは、CD-ROMやフラッシュメモリ、SSDメモリなどのコンピュータに読取可能な非一過性の記録媒体に格納され、インストールされてもよい。
【0043】
図2(a)、(b)、(c)はスラリーろ過システム1A~1Cのろ過工程を制御するための装置構成を示す図である。
【0044】
ろ過系20は、
図2(a)に示すように、スラリー液F1をろ室Rでろ過するスラリーろ過システム1Aのろ過工程を制御するための装置構成からなる。ろ過系20は、スラリー液F1を供給する第1供給タンクUT1と、第1供給タンクUT1からスラリー液F1をろ室Rに供給する供給経路101と、ろ室Rでろ過されたろ液F2を排出する排出経路102と、ろ液F2を貯留する第1排出タンクDT1と、第1供給タンクUT1とろ室Rとの間の供給経路101に介装され、スラリー液F1の画像データを取得する第1撮像部12Aと、ろ室Rと第1排出タンクDT1との間の排出経路102に介装され、ろ液F2の画像データを取得する第2撮像部12Bとを備える。なお、スラリーろ過システム1Aには、ろ室圧力制御部(不図示)を備える。
【0045】
また、第1供給タンクUT1は、供給弁(不図示)を備え、その開閉時間によりスラリー液F1の供給量が制御される。ろ室Rは、供給経路101側と排出経路102側との間にろ材(不図示)を備え、供給経路101側と排出経路102側との差圧によりスラリー液F1をろ過処理する。
【0046】
ろ室圧力制御部(不図示)は、供給経路101側および排出経路102側との少なくとも何れか一方のろ室R内圧を制御する圧力ポンプ(不図示)や圧力弁(不図示)により構成される。また、ろ室圧力制御部(不図示)は、例えばろ室Rを回転させることで遠心分離する機構を採用する場合には、その回転数または回転速度を制御するアクチュエータ(不図示)などにより構成される。また、ろ室圧力制御部(不図示)は、例えばプレスなどの圧搾によりスラリー液F1を分離する機構を採用する場合には、そのプレス圧およびプレス時間を制御するアクチュエータ(不図示)などにより構成される。
【0047】
ろ過系20は、
図2(b)に示すように、スラリーろ過システム1Bでは、スラリー液F1をろ室Rでろ過する際にろ過助剤液F3を供給するようにしてもよい。ろ過助剤液F3は、ろ過助剤液F3を供給する第2供給タンクUT2から供給経路101に接続するろ過助剤液F3を供給するろ過助剤液供給経路103を設けている。第2供給タンクUT2は、供給弁(不図示)を備え、その開閉時間によりろ過助剤液F3の供給量が制御される。なお、ろ過助剤液F3の第2供給タンクUT2からろ室Rまでのろ過助剤液供給経路103は、スラリー液F1の第1供給タンクUT1からろ室Rまでの供給経路101と接続せずに、ろ室Rに供給するように、別途設けられてよい。
【0048】
第1撮像部12Aは、供給経路101を通過するスラリー液F1の画像データを取得する。また、第2撮像部12Bは、排出経路102を通過するろ液F2またはろ過助剤液F3を含むろ液F4の画像データを取得する。
【0049】
さらに、ろ過系20は、
図2(c)に示すように、スラリーろ過システム1Cでは、第1撮像部12Aは、スラリー液F1とろ過助剤液F3との混合液F5の供給経路101aに配置され、混合液F5の画像データを取得する構成としてもよい。
【0050】
図3は、スラリーろ過システム1Dの洗浄工程を制御するための装置構成を示す図である。
【0051】
洗浄系30は、
図3に示すように、スラリーろ過システム1Dでは、洗浄液F6を供給する第3供給タンクUT3と、ろ室Rと、排出経路102に設置される第3撮像部12Cと、使用済みの洗浄排液F7を貯留する第2排出タンクDT2と、を備える。
【0052】
洗浄系30は、さらにろ室圧力制御部(不図示)を備える。第3供給タンクUT3は、供給弁(不図示)を備え、その開閉時間により洗浄液の供給量が制御される。ろ室R、ろ室圧力制御部(不図示)、供給経路101の一部と排出経路102の一部は、ろ過系20と共通の構成を採用することができる。
【0053】
また、本実施形態において、洗浄工程は、ケーキ洗浄を行うケーキ洗浄工程と、ろ過装置の内部洗浄を行う装置洗浄工程と、を有する。洗浄液F6は、ケーキ(不図示)またはろ室Rを洗浄し、洗浄排液F7として排出経路102を通過し、第2排出タンクDT2へと排出される。
【0054】
交換系40は、ろ過システム1のろ材交換工程を制御するための装置構成を示す。交換系40は、交換用ろ材と、交換用ろ材を収容する交換用ろ材ラックと、交換用ろ材ラックより交換用ろ材をろ室に供給するろ材供給機構と、使用済ろ材をろ室から排出するろ材排出機構と、ろ材を洗浄するためのろ材洗浄機構と、を備える。
【0055】
警告通知系50は、ろ過システム1におけるろ材の劣化状態と、ろ材の異常状態に関する警告通知を制御するための構成を示す。警告通知系50は、コントロールパネル60に接続され、警告通知をディスプレイに表示させる。また、警告通知系50は、警報器やランプを備え、警告通知を音声や警報音、ランプの点灯、点滅として出力する構成であってもよい。
【0056】
本実施形態において、ろ過システム1は、ろ過系20、洗浄系30、交換系40、警告通知系50から選択される少なくとも1つの系が自動化される構成であってもよい。ろ過システム1は、例えば、ろ過系20と洗浄系30を含む処理系を備え、交換系40を備えない構成を採用してもよい。
【0057】
コントロールパネル60は、表示部および入力部として機能するタッチパネルなどとして構成される。なお、コントロールパネル60は、ろ過システム1の状態などを表示する表示部としてのディスプレイおよび、ろ過システム1を操作する入力部としての操作盤により構成されてもよい。コントロールパネル60は、ろ過システム1に外部接続されるコンピュータ端末として構成されてもよい。コントロールパネル60の入力部は、操作情報の入力を受け付け、操作情報を制御部11に対して送信し、制御部11は、受信した操作情報に基づいて各構成部を制御する。
【0058】
ここで、第2撮像部12Bと第3撮像部12Cは、ろ液排出経路と洗浄排液排出経路のそれぞれに配置される。なお、ろ過系20のろ液排出経路が、洗浄系30の洗浄液排出経路を兼ねている場合は、第2撮像部12Bと第3撮像部12Cは、ろ液排出経路に少なくとも何れか1つ配置される構成としてもよい。すなわち、第2撮像部12B(第3撮像部12C)は、ろ液および洗浄排液の2つの流体を監視し、それらの画像データを取得する。
【0059】
図4は、撮像部12の概要図を示す。
図4(a)は、撮像部12の正面図を示す。
図4(b)は、撮像部12の上面図を示す。
【0060】
撮像部12は、
図4(a)に示すように、カメラなどによる撮像装置121と、サイトグラス122と、サイトグラス122に設けられる窓123と、を備える。撮像装置121は、窓123の方向(点線矢印)に向けて配置され、経路内部を流れる流体Fの画像データを取得する。なお、撮像装置121は、制御部11に接続されるものとする。
図4(a)において、流体Fは、サイトグラス122の左右に設けられた配管内を左方向から右方向へと通過する水平配管の例を示したが、サイトグラス122に設けられる配管の位置および方向は、これに限定されない。
【0061】
撮像部12は、例えば、地平面に対して略水平となる画角で配置される。略水平とは、地平面に対して-20度から+20度の画角であり、好ましくは-10度から+10度の画角であり、より好ましくは-5度から+5度の画角の範囲である。本実施形態において、流体Fは、液体であり、液面、流量などの特徴量を含む画像データを取得できる撮像部12の配置とすることが好ましい。
【0062】
また、撮像部12は、好ましくは参照用の光源Lを更に備える。光源Lは、撮像部12の周辺環境における光量を一定に保つ目的で設けられる。周辺環境の光量は、撮像装置121により撮像する流体の色の見え方に影響するため、撮像時の光量を一定に保つことで、色に基づく判定の精度を向上させることができる。撮像部12は、撮像装置121およびサイトグラス122に対する外部光を遮断するための覆いなどを設けてもよい。光源Lの配置例として、サイトグラス122は、
図4(b)に示すように、背面に窓123Bを備え、当該窓123Bを覆うように参照用の光源Lをバックライトとして設けることができる。なお、光源Lは、前面の窓123Aに対して所定の角度で照射するよう設けられてもよい。
【0063】
図5は、垂直配管とした場合の撮像部12の概要図を示す。
図5において、流体Fは、サイトグラス122の上下に設けられた配管内を上方向から下方向へと通過する。特に、ろ室R(不図示)からの排出経路に配置される撮像部12B、12Cは、垂直配管とすることで流体Fの液量の増加または減少の傾向を示す画像データを取得することができる。例えば、流体Fの液量は、
図5(a)に示すように、ろ室Rからの流体Fの排出の初期段階において、ろ室内圧が低いため相対的に増加傾向となる。
【0064】
一方、流体Fの液量は、
図5(b)に示すように、排出が進むにつれてろ室内圧が高くなるため相対的に減少傾向となる。撮像部12B、12Cは、ろ室Rから10mの範囲内に設けられることが好ましく、ろ室Rから5mの範囲に設けられることがより好ましい。また、撮像部12B、12Cは、ろ室Rの直下に設けられることが好ましい。
【0065】
図6は、撮像部12により取得される流体Fの画像データの例を示す。
図6(a)~(c)は、透明な流体Fの画像データを示す。
図6(d)、(e)は、有色の流体Fの画像データを示す。判定部13は、画像データに含まれる特徴量を抽出し、処理系10の状態を判定することができる。
【0066】
図6(a)~(c)の画像データは、透明な流体Fの量が異なる状態を示す。
図6(d)、(e)の画像データは、有色の流体Fの量が異なる状態を示す。判定部13は、これら流体Fの異なる状態の特徴量から処理系10の状態を判定することができる。
【0067】
図6(a)~(e)の画像データ(画像A~画像Eとする)を判定モデルに入力した判定の試験結果は、「画像A:透明空」「画像B:透明中」「画像C:透明供給」「画像D:色空」「画像E:色供給」となった。これらの結果から、判定モデルを用いた判定部13は、流体Fの量と色の特徴量を抽出できると把握される。なお、判定モデルは、流体Fの量を更に段階的に判定すること、流体Fの色に関連する明度、輝度、濃度、色値を更に段階的に判定することも可能である。
【0068】
なお、画像データは、
図6において流体Fが水平配管を通過する画像データの例を示したが、
図5に示すように、流体Fが垂直配管を通過する画像データであってもよい。本実施形態において、画像データは、少なくとも流体Fの量と色を含む特徴量を抽出できるものであれば、配管の位置および方向は制限されない。
【0069】
判定部13は、上述したような流体Fの画像データの特徴量に基づき、ろ過システム1の処理系10の状態を判定することができる。
【0070】
本実施形態において、処理系10の状態は、ろ過系20の処理状態、洗浄系30の処理状態、ろ材の劣化状態、および、ろ材の異常状態を含む。
【0071】
ろ過系20の処理状態は、ろ過の処理状態と、脱液の処理状態と、を含む。ろ過の処理状態は、ろ過前、ろ過中、ろ過完了、スラリー液不足、スラリー液過剰、ろ過助剤液不足、ろ過助剤液過剰、等を含む。なお、ろ過の処理状態は、スラリー液やろ過助剤液の不足量や過剰量を含んでもよい。脱液の処理状態は、脱液前、脱液中、脱液完了などを含む。
【0072】
また、洗浄系30の処理状態は、洗浄対象に応じて、ケーキ洗浄の処理状態と、装置洗浄の処理状態と、ろ材洗浄の処理状態と、脱液の処理状態と、を含み、洗浄対象別に処理状態が判定される。洗浄系30の処理状態は、洗浄前、洗浄中、洗浄完了、洗浄液不足、洗浄液過剰、などを含む。洗浄系30の処理状態は、洗浄液の不足量や過剰量を含んでもよい。
【0073】
脱液の処理状態は、ろ過系20の処理状態において、ケーキ中のろ液の脱液状態を示し、洗浄系30の処理状態において、ケーキ中の洗浄液の脱液状態を示す。
【0074】
具体例として、判定部13は、画像データ中の流体Fがろ液の画像データである場合、ろ過状態が安定しているときには安定的なろ液の流れが観測され、ろ過ケーキの堆積によりろ液の減少が観測されることから、ろ過の進捗にかかる処理状態を判定できる。また、判定部13は、ろ材の劣化(ファウリングなど)に応じてろ液量が減少することから、ろ材の劣化状態を判定できる。また、判定部13は、画像データ中の流体Fが洗浄排液の画像データである場合、洗浄が進むにつれて洗浄排液の色の透明度が上がることから、洗浄の進捗にかかる処理状態を判定できる。
【0075】
本実施形態において、判定部13は、記憶部DBに格納される判定モデルを用いて処理系10の状態を判定する。判定モデルは、データセットにより機械学習された学習済モデルを示す。判定モデルは、外部のモデル生成装置7により生成され、記憶部DBに格納される。
【0076】
図7は、判定モデルの生成処理を行うモデル生成装置7のブロック図を示す。モデル生成装置7は、データセット取得部71と、モデル生成部72と、データセット記憶部73と、モデル記憶部74と、を備える。データセット取得部71は、
図3に例示する撮像部12により取得された画像データをデータセットとして取得する構成とすることが好ましい。
【0077】
モデル生成装置7は、汎用コンピュータを用いることができる。モデル生成装置7は、ハードウェア構成要素として、CPUなどによる演算装置と、RAMなどによる主記憶装置と、補助記憶装置と、通信装置と、入出力装置と、などを備える。
【0078】
ろ過システム1と、モデル生成装置7は、有線または無線によるデータ通信可能に構成される。また、ろ過システム1とモデル生成装置7を含むろ過システムとして構成されてもよい。また、ろ過システム1は、モデル生成装置7の機能構成要素(71-74)を備える構成としてもよい。
【0079】
本実施形態において、機械学習のアルゴリズムは、ニューラルネットワークを採用することができる。ニューラルネットワークNは、
図8に示すように、入力層N1と、中間層N2と、出力層N3と、を有する。それぞれの層は、活性化関数を有する複数のニューロンにより構成される。入力層N1は、データセットの入力データの入力を受け付ける。入力層N1は、入力データに応じた複数のニューロンにより構成され、入力データに対する計算結果を中間層N2に対して出力する。中間層N2は、1以上の層により構成され、それぞれの層において複数のニューロンを有する。中間層N2は、入力層N1からの計算結果の入力を受け、その入力に対する計算結果を、中間層N2内の隣接する層または出力層N3に対して更に出力する。出力層N3は、中間層N2からの入力に応じて、推定値を出力する。出力層N3の推定値と、データセットの出力データの誤差が小さくなるように、各ニューロンの係数を調整することにより、入力データに対する出力データの判定精度を向上させることができる。
【0080】
なお、機械学習のアルゴリズムは、ニューラルネットワークに限定されず、回帰分析モデル、サポートベクターマシン、k近傍法、決定木モデルなどが採用されてもよい。
【0081】
図9は、判定モデルの機械学習に用いられるデータセットの構成例を示す。
【0082】
本実施形態において、データセットは、
図9(a)に示すように、画像データを入力データとし、処理系10の状態を出力データとして構成される。
【0083】
また、データセットは、
図9(b)に示すように、画像データを入力データとし、流体の状態を出力データとして構成されてもよい。流体の状態は、流体Fの量や色などの状態を含む。
【0084】
また、データセットは、
図9(c)に示すように、画像データを入力データとし、処理系に対する制御信号を出力データとして構成されてもよい。制御信号は、出力部14が処理系10に対して出力する信号であって、ろ過系20、洗浄系30、交換系40および、警告通知系50のそれぞれの制御に対応する信号を示す。
【0085】
本実施形態において、データセットは、時系列に沿った複数の画像データの組合せを入力データとし、処理系10の状態、流体の状態、処理系に対する制御信号より選択される少なくとも1つを出力データとして構成されてもよい。時系列に沿った画像データの組合せを入力データとして機械学習された判定モデルは、当該組合せの順序に沿って画像データの入力を受け付けることで、画像データの変化に応じた出力データを出力することができる。
【0086】
また、このとき出力データは、複数の画像データの時系列(時間差)に対応し、所定時間経過後の処理系10の状態、流体の状態、処理系に対する制御信号より選択される少なくとも1つのデータとして構成されてもよい。データセットは、例えば、5秒間毎の画像データを入力データとする場合、更にその5秒後の処理系10の状態を出力データとすることで、判定モデルは、処理系10の状態の予測値を判定結果として出力することができる。判定部13は、上述のような判定モデルを用いることで、画像データの取得から処理系10の制御までにタイムラグが生じるような場合であっても、タイムラグを修正のうえ処理系10を制御することができる。
【0087】
図10は、モデル生成装置7における判定モデルの生成処理に関するフローチャートを示す。
【0088】
工程S11:データセット取得部71は、データセットを取得し、データセット記憶部73に格納する。データセット取得部71は、撮像部12により取得された画像データをデータセットの入力データとして設定することが好ましい。データセット取得部71は、入力データとして設定された画像データに対応する出力データについて、作業員により入力を受け付ける。データセット記憶部73は、データセットの出力データとして選択可能な処理系10の状態、流体の状態、制御信号の一覧データを予め格納し、データセット取得部71は、当該一覧データの中から画像データに対応する出力データの選択を受け付けることで、データセットとして決定する構成であってもよい。
【0089】
工程S12:モデル生成部72は、データセット記憶部73に格納されたデータセットを用いて、モデルの機械学習処理を実行する。機械学習処理に用いられるデータセットの数は、特に限定されない。
【0090】
工程S13:モデル生成部72は、工程S12による機械学習処理を完了することで、判定モデルを生成し、モデル記憶部74に格納し、処理を終了する。
【0091】
モデル記憶部74に格納された判定モデルは、ろ過システム1の記憶部DBに格納されることで、判定部13は、判定モデルを用いて画像データに基づく処理系10の状態を判定することができる。
【0092】
判定モデルは、ろ過システム1において用いるスラリー液やろ過助剤液、洗浄液などの流体の種類や、ろ過装置の種類に応じて、複数生成されてよい。コントロールパネル60は、流体やろ過装置の種類に関する指示入力を受け付けることで、記憶部DBに格納される複数の判定モデルの中から、判定部13が用いる判定モデルを決定することができる。
【0093】
出力部14は、判定部13による処理系10の状態の判定結果に基づき、処理系10に対する制御信号を出力する。出力部14は、処理系10の状態の判定結果と、処理系10に対する制御信号と、の対応関係を示す制御信号テーブルに基づき、制御信号を出力する。
【0094】
図11(a)は、制御信号テーブルのデータ構成例を示す。制御信号テーブルは、制御モードと、判定結果と、制御信号と、を有する。
図11(a)に示す制御信号テーブルは、
図9(a)のデータセットにより機械学習された判定モデルによる判定結果と、それに対応する制御信号を示す。制御信号テーブルは、
図9(b)のデータセットにより機械学習された判定モデルによる流体の状態に関する判定結果と、それに対応する制御信号を示すものであってもよい。なお、制御信号テーブルは、
図9(c)のデータセットにより機械学習された判定モデルを用いる場合、省略可能であり、出力部14は、判定部13による判定結果である制御信号を、処理系10に対して出力する。
【0095】
制御モードは、ろ過システム1が、ろ過系20、洗浄系30、交換系40の何れの処理を行っているかを示す。制御モードは、ろ過系20の制御に関するろ過モードと、洗浄系30におけるケーキ洗浄の制御に関するケーキ洗浄モードと、交換系40の制御に関する交換モードと、洗浄系30における装置洗浄の制御に関する装置洗浄モードと、を有する。
【0096】
ろ過モードは、ろ過モードと、ろ液脱液モードと、に更に分類されてもよい。ケーキ洗浄モードは、ケーキ洗浄モードと、洗浄液脱液モードと、に更に分類されてもよい。交換モードは、ろ材交換モードと、ろ材洗浄モードと、に更に分類されてもよい。
【0097】
制御信号は、制御モードに対応する処理系10を制御するための信号を示す。制御信号は、1つの判定結果に対して、複数設定されてもよい。例えば、ろ過完了の判定結果に対応するろ過系20の稼動に関する制御信号は、ろ室圧力制御部によるろ室内圧を制御する制御信号および、スラリー液やろ過助剤液の供給弁の開閉時間を制御する制御信号を含むことができる。
【0098】
ろ過モードの制御信号は、ろ過系20の処理状態の判定結果に対応し、ろ過系20の稼動/停止、スラリー液供給量増加/減少、ろ過助剤液供給量増加/減少、ケーキ脱液処理の稼動/停止などに関する制御信号を有する。ろ過系20は、出力部14より出力された制御信号を取得すると、ろ室圧力制御部、スラリー液供給タンクやろ過助剤液供給タンクの供給弁などを制御する。
【0099】
具体的には、ろ室圧力制御部は、供給経路側および排出経路側の少なくとも何れか一方のろ室内圧を加圧または減圧することで、ろ過系20の稼動/停止、ケーキ脱液処理の稼動/停止を制御する。また、スラリー液供給タンクまたはろ過助剤液供給タンクの供給弁は、供給弁の開閉時間を変化させることで、スラリー液またはろ過助剤液の供給量を制御する。
【0100】
ケーキ洗浄モードの制御信号は、洗浄系30の処理状態に対応し、洗浄系30の稼動、停止、洗浄液供給量増加/減少、ケーキ脱液処理の稼動/停止などを制御する信号を有する。洗浄系30は、出力部14より出力された制御信号を取得すると、ろ室圧力制御部や洗浄液供給タンクの供給弁などを制御する。
【0101】
具体的には、ろ室圧力制御部は、供給経路側および排出経路側の少なくとも何れか一方のろ室内圧を加圧または減圧することで、洗浄系30の稼動/停止、ケーキ脱液処理の稼動/停止を制御する。また、洗浄液供給タンクの供給弁は、供給弁の開閉時間を変化させることで、洗浄液の供給量を制御する。
【0102】
交換モードの制御信号は、ろ材の劣化状態に対応し、交換系40の稼動、停止を制御する信号を有する。交換系40は、出力部14より出力された制御信号を取得すると、ろ材洗浄機構またはろ材供給機構やろ材排出機構を制御する。交換モードの制御信号は、ろ材の劣化状態の程度に応じて異なる機構の制御信号として設定できる。なお、ろ材の劣化状態は、ろ過モードまたはケーキ洗浄モードにおいて判定され、その判定結果に応じて交換モードに切り替えられてもよい。
【0103】
装置洗浄モードの制御信号は、洗浄系30の処理状態に対応し、洗浄系30の稼動継続、停止、洗浄液供給量増加/減少などを制御する信号を有する。装置洗浄モードの洗浄系30における装置洗浄を開始する制御信号は、コントロールパネル60より装置洗浄指示操作を受け付けることで出力部14より出力される。洗浄系30は、出力部14より出力された制御信号を取得すると、ろ室圧力制御部や洗浄液供給タンクの供給弁などを制御する。装置洗浄指示操作は、ろ過システム1によりろ過するスラリー液などの対象物を交換する際などに作業者により実行される。
【0104】
出力部14は、判定部13による処理系10の状態の判定結果に基づき、警告通知系50に対する警告信号を出力する。
図11(b)は、警告信号テーブルのデータ構成例を示す。警告信号テーブルは、制御モードと、判定結果と、警告信号と、を有する。警告信号テーブルの制御モードは、ろ過モード、ケーキ洗浄モードの何れかであり、それぞれの制御モードに対応する警告信号が設定される。
【0105】
警告信号は、ろ材の劣化状態またはろ材の異常状態に対応し、警告通知系50の警告通知を制御する信号を有する。警告通知系50は、出力部14より出力された警告信号を取得すると、コントロールパネル60の表示や、警報器の音声または警報音、ランプの点灯などを制御する。
【0106】
具体的には、コントロールパネル60は、ろ材異常ありの警告信号を取得すると、その異常に関する通知を表示する。また、コントロールパネル60は、ろ材劣化ありの警告信号を取得すると、その劣化に関する通知を表示する。警報器やランプは、警告信号に応じた音声や点灯パターンにより異常や劣化に関する警告を行ってもよい。
【0107】
出力部14は、ろ材の異常状態の判定結果に対応し、ろ過系20または洗浄系30を停止させる制御信号を出力してもよい。これによりろ材の破損などの異常に対する緊急停止動作を自動化することができる。
【0108】
第1制御モード切替部15は、ろ過システム1における制御対象の処理系10に示す制御モードを切り替える。第1制御モード切替部15は、判定部13における処理系10の状態の判定結果、または、出力部14における制御信号の出力に基づいて、ろ過モード、ケーキ洗浄モード、交換モードを何れの制御モードに切り替えるか決定する。第1制御モード切替部15は、通常、ろ過モード、ケーキ洗浄モード、交換モードを順に切り替えるが、例えば、ろ過中にろ材の劣化状態や異常状態の判定結果が得られた場合、ろ過モードから交換モードに切り替えることも可能である。
【0109】
第1制御モード切替部15は、ろ過完了、洗浄完了、ろ材交換完了の状態の判定結果に基づいて、次の制御モードに切り替える。また、第1制御モード切替部15は、ろ過系20の稼動停止、洗浄系30の稼働停止、交換系40の稼働停止などの所定の制御信号の出力に基づいて、次の制御モードに切り替える。
【0110】
第1制御モード切替部15は、ろ材の異常状態の判定結果に基づき、制御モードを警告通知モードに切り替えてもよい。第1制御モード切替部15は、異常状態が解消されることで、警告通知モードを、元の制御モードに切り替える。
【0111】
第1制御モード切替部15は、コントロールパネル60より装置洗浄指示操作を受け付けることで、制御モードを装置洗浄モードに切り替える。第1制御モード切替部15は、洗浄完了の判定結果、または、稼働停止の制御信号の出力に基づいて、元の制御モードに切り替える。
【0112】
図12は、ろ過システム1による一連の制御に関するフローチャートを示す。ろ過システム1は、コントロールパネル60を介してろ過対象とするスラリー液の種類、総量または稼働時間、使用するろ材の種類などの基本設定の入力を受け付け、処理を開始する。
【0113】
<ろ過工程>
工程S21:ろ過系20は、ろ室圧力制御部、スラリー液供給弁、ろ過助剤液供給弁を制御することで、ろ過処理を実行する。このとき、制御モードはろ過モードに設定される。
【0114】
工程S22:撮像部12は、スラリー液とろ液の画像データをそれぞれ取得する。判定部13は、画像データを判定モデルに入力し、ろ過系20の処理状態と、ろ材の劣化状態と、ろ材の異常状態と、を含む処理系10の状態を判定する。出力部14は、スラリー液とろ液の供給量に関する判定結果に基づき、それらの供給量を制御する制御信号をろ過系20に出力し、ろ過処理を継続させる。
【0115】
工程S23:判定部13が、ろ過の処理状態として、ろ過完了と判定した場合(S23でYES)、出力部14は、ろ過処理に関する稼動を停止する制御信号をろ過系20に対して出力する。第1制御モード切替部15は、制御モードをろ液脱液モードに切り替える。判定部13は、ろ過の処理状態として、ろ過中と判定した場合(S23でNO)、ろ過完了として判定されるまで工程S22の第1判定処理を繰り返し実行する。
【0116】
工程S24:判定部13が、脱液の処理状態として、脱液完了と判定した場合(S24でYES)、出力部14は、脱液処理に関する稼動を停止する制御信号をろ過系20に対して出力する。第1制御モード切替部15は、制御モードをケーキ洗浄モードに切り替える。判定部13は、脱液の処理状態として、脱液中を判定した場合(S24でNO)、脱液完了として判定されるまで工程S22の第1判定処理を繰り返し実行する。
【0117】
<ケーキ洗浄工程>
工程S25:洗浄系30は、ろ室圧力制御部、洗浄液供給弁を制御することで、ケーキの洗浄処理を実行する。
【0118】
工程S26:撮像部12は、洗浄排液の画像データを取得する。判定部13は、画像データを判定モデルに入力し、洗浄系30の処理状態と、ろ材の劣化状態と、ろ材の異常状態と、を含む処理系10の状態を判定する。出力部14は、洗浄液の供給量に関する判定結果に基づき、その供給量を制御する制御信号を洗浄系30に出力し、洗浄処理を継続させる。
【0119】
工程S27:判定部13が、洗浄系30の処理状態として、洗浄完了と判定した場合(S27でYES)、出力部14は、洗浄処理に関する稼動を停止する制御信号を洗浄系30に対して出力する。第1制御モード切替部15は、制御モードを洗浄液脱液モードに切り替える。判定部13は、洗浄系30の処理状態として、洗浄中と判定した場合(S27でNO)、洗浄完了として判定されるまで工程S26の第2判定処理を繰り返し実行する。
【0120】
工程S28:判定部13が、脱液の処理状態として、脱液完了と判定した場合(S28でYES)、出力部14は、脱液処理に関する稼動を停止する制御信号を洗浄系30に対して出力する。第1制御モード切替部15は、制御モードを交換モードに切り替える。判定部13は、脱液の処理状態として、脱液中を判定した場合(S28でNO)、脱液完了として判定されるまで工程S26の第2判定処理を繰り返し実行する。
【0121】
<ろ材交換工程>
工程S29:判定部13は、ろ過工程またはケーキ洗浄工程において、ろ材の劣化状態として、ろ材劣化ありか否かを判定する。判定部13は、ろ材劣化なしと判定する場合(S29でNO)、ろ材交換不要としてろ材交換工程を完了とする。
【0122】
工程S30:判定部13が、ろ材劣化ありと判定する場合(S29でYES)、出力部14は、交換系40の稼動に関する制御信号を交換系40に対して出力し、ろ材を交換するか、ろ材を洗浄する。ろ材交換とするかろ材洗浄とするかは、ろ材の劣化状態の程度によって、決定される。第1制御モード切替部15は、制御モードをろ過モードに切り替えて、処理を完了する。なお、判定部13は、ろ過工程またはケーキ洗浄工程において、ろ材の劣化ありと判定した場合、直ちに工程S30を実行する構成としてもよい。
【0123】
工程S31:ろ過システム1は、ろ材交換工程の後、ろ材に堆積したケーキを排出するケーキ排出工程を実行する。なお、ケーキ排出工程は、ろ材交換工程において、ろ材の排出とともにケーキを排出する構成とする場合、省略されてもよい。
【0124】
工程S32:ケーキ排出処理が完了すると、第1制御モード切替部15は、制御モードをろ過モードに切り替え、再び工程S21に戻り、ろ過工程から処理を繰り返し実行することができる(S32でYES)。ろ過システム1は、ろ過完了の指示入力を受け付けるか、または、所定のろ過処理を完了すると、処理を完了する(S32でNO)。
【0125】
以上に示したように、本開示によりろ過装置によるスラリー液をろ過するための一連の処理を自動制御することができる。
【0126】
ろ過システム1は、一連の処理を自動制御することで、操業負荷を軽減することができる。また、化学薬品の扱う際の洗浄不良の防止による安全面での危険を軽減することができる。また、脱液不良の防止、ろ液清涼度の維持、ケーキ洗浄不良の防止により製品品質を向上させることができる。また、過剰脱液運転の防止によるエネルギロスを削減することができる。また、過剰ケーキ洗浄の防止、過剰装置洗浄の防止により使用資源を削減することができる。
【0127】
<実施形態2>
以下、ろ過システム1の異なる実施形態2について説明する。なお、実施形態1と同様の構成については、同様の符号を付して説明を省略する。
【0128】
図13は、実施形態2におけるろ過システム1のブロック図を示す。実施形態2において、ろ過システム1は、判定装置100と、ろ過装置200と、を備える。
【0129】
判定装置100は、第1制御部110と、撮像部12と、判定部13と、出力部14と、データベースとしての記憶部DBと、を備え、各構成部は、第1制御部110に接続され制御される。本実施形態において、出力部14は、ろ過装置200に接続され、制御信号を出力することで、ろ過装置200における動作を制御する。
【0130】
撮像部12は、ろ過装置200内の流体の経路上に配置され、流体の画像データを取得する。
【0131】
判定部13は、撮像部12により取得された画像データに基づいてろ過装置200における処理系10の状態を判定する。
【0132】
実施形態2において、出力部14は、判定部13による処理系10の状態の判定結果に基づき、ろ過装置200に対する制御信号を出力する。処理系10は、出力部14により出力された制御信号に基づいて制御される。
【0133】
判定装置100は、汎用コンピュータを用いることができる。判定装置100は、ハードウェア構成要素として、CPUなどによる演算装置と、RAMなどによる主記憶装置と、補助記憶装置と、通信装置と、入出力装置と、などを備える。
【0134】
ろ過装置200は、コントロールパネル60と、処理系10と、を備える。実施形態2において、ろ過装置200は、既存のろ過装置を用いることができる。また、コントロールパネル60は、PLC(Programmable Logic Controller)などを用いることができる。
【0135】
コントロールパネル60は、信号入力部61と、第2制御部62と、信号出力部63と、を備える。信号入力部61は、判定装置100の出力部14より出力される制御信号の入力を受け付ける。第2制御部62は、信号処理部64と、第2制御モード切替部65と、を機能構成として備え、信号入力部61により入力を受け付けた制御信号に基づく処理を実行する。信号出力部63は、処理系10に接続され、第2制御部62による処理結果として制御信号を取得し、処理系10に出力することで、処理系10の動作を制御する。
【0136】
信号処理部64は、出力部14の制御信号を取得し、信号処理する。信号処理は、制御信号を処理系10に出力する信号に変換する処理や、出力先を決定する処理を含む。
【0137】
第2制御モード切替部65は、ろ過装置200における制御対象の処理系10に示す制御モードを切り替える。第2制御モード切替部65は、判定部13による処理系10の状態の判定結果、または、信号出力部63による制御信号の出力に基づいて制御モードを切り替える。第2制御モード切替部65は、切り替えた制御モードを判定装置100に出力してもよい。
【0138】
処理系10は、実施形態1と同様に、ろ過工程を制御するろ過系20と、洗浄工程を制御する洗浄系30と、ろ材交換工程を制御する交換系40と、ろ材の劣化状態またはろ材の異常状態の通知を制御する警告通知系50と、を備える。ろ過系20、洗浄系30、交換系40および、警告通知系50は、信号出力部63より出力された制御信号に基づいて動作を制御される。
【0139】
ろ過システム1は、全体として同様の作用効果を実現できれば、上述した実施形態に限定されず、様々な構成を採用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0140】
本発明は、加圧ろ過装置、真空ろ過装置、遠心ろ過装置、重力ろ過装置などの各種ろ過装置において利用することができる。
【符号の説明】
【0141】
1 ろ過システム
7 モデル生成装置
11 制御部
12 撮像部
13 判定部
14 出力部
15 第1制御モード切替部
20 ろ過系
30 洗浄系
40 交換系
50 警告通知系
60 コントロールパネル
DB 記憶部
100 判定装置
110 第1制御部
200 ろ過装置
61 信号入力部
62 第2制御部
63 信号出力部
64 信号処理部
65 第2制御モード切替部
F 流体
F1 スラリー液
F2 ろ液
F3 ろ過助剤液
F4 ろ過助剤液を含むろ液
F5 混合液
F6 洗浄液
F7 洗浄排液