(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064613
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】船舶推進機
(51)【国際特許分類】
F02M 35/12 20060101AFI20240507BHJP
F01N 1/02 20060101ALI20240507BHJP
B63H 20/32 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
F02M35/12 D
F01N1/02 E
B63H20/32 553
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173339
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原 和宏
(72)【発明者】
【氏名】高橋 徹
(72)【発明者】
【氏名】田畑 則仁
(72)【発明者】
【氏名】佐野 一樹
(72)【発明者】
【氏名】相田 真作
【テーマコード(参考)】
3G004
【Fターム(参考)】
3G004AA05
3G004BA01
3G004CA03
(57)【要約】
【課題】騒音を低減でき、小型化および設計変更が容易な船舶推進機を提供する。
【解決手段】本実施形態の船外機100は、エンジン本体122と、エンジン本体122に空気を供給する吸気装置200と、を備え、吸気装置200が、第1の吸気管220Aと、第1の吸気管220Aの下流端に接続され、第1の吸気管220Aの軸線Ai方向に対して角度をなして延びる第2の吸気管230と、を備えてエンジン本体122に供給される空気が流通するメイン吸気管240と、第1の吸気管220Aと第2の吸気管230との接続位置から延び、内部に共鳴室R1を備える延長管220Bと、を備え、延長管220Bが、共鳴室R1においてメイン吸気管240と隣接する部位を除く全体を外部空間から隔てる延長周壁221Bおよび端壁222を備えている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、
前記内燃機関に空気を供給する吸気装置と、を備える船舶推進機であって、
前記吸気装置が、
第1の吸気管と、前記第1の吸気管の下流端に接続され、前記第1の吸気管の軸方向に対して角度をなして延びる第2の吸気管と、を備えて前記内燃機関に供給される空気が流通するメイン吸気管と、
前記第1の吸気管と前記第2の吸気管との接続位置から延び、内部に共鳴室を備える延長管と、を備え、
前記延長管が、前記共鳴室において前記メイン吸気管と隣接する部位を除く全体を外部空間から隔てる隔壁を備えている、船舶推進機。
【請求項2】
前記延長管において、前記第1の吸気管に隣接する基端部が、前記第1の吸気管の軸方向に沿って延びている、請求項1に記載の船舶推進機。
【請求項3】
前記第2の吸気管が前記第1の吸気管の軸方向に対して垂直に延びている、請求項1に記載の船舶推進機。
【請求項4】
前記延長管が屈曲または湾曲された形状を有している、請求項1に記載の船舶推進機。
【請求項5】
前記接続位置において、前記メイン吸気管の内周面が、前記第1の吸気管から前記第2の吸気管に向かって弧状に湾曲された湾曲面となっている、請求項1に記載の船舶推進機。
【請求項6】
内燃機関と、
前記内燃機関に空気を供給する吸気装置と、を備える船舶推進機であって、
前記吸気装置が、
第1の吸気管と、前記第1の吸気管の下流端に接続され、前記第1の吸気管の軸方向に対して角度をなして延びる第2の吸気管と、を備えて前記内燃機関に供給される空気が流通するメイン吸気管と、
前記第1の吸気管と前記第2の吸気管との接続位置から延びる延長管と、を備える、船舶推進機。
【請求項7】
内燃機関と、
前記内燃機関から排出される排気ガスを外部に排出する排気装置と、を備える船舶推進機であって、
前記排気装置が、
第1の排気管と、前記第1の排気管の下流端に接続され、前記第1の排気管の軸方向に対して角度をなして延びる第2の排気管と、を備えて前記内燃機関から排出される排気ガスが流通するメイン排気管と、
前記第1の排気管と前記第2の排気管との接続位置から延び、内部に共鳴室を備える延長管と、を備え、
前記延長管が、前記共鳴室において前記メイン排気管と隣接する部位を除く全体を外部空間から隔てる隔壁を備えている、船舶推進機。
【請求項8】
前記延長管において前記第1の排気管に隣接する基端部が、前記第1の排気管の軸方向に沿って延びている、請求項7に記載の船舶推進機。
【請求項9】
前記第2の排気管が前記第1の排気管の軸方向に対して垂直に延びている、請求項7に記載の船舶推進機。
【請求項10】
前記延長管が屈曲または湾曲された形状を有している、請求項7に記載の船舶推進機。
【請求項11】
前記接続位置において、前記メイン排気管の内周面が、前記第1の排気管から前記第2の排気管に向かって弧状に湾曲された湾曲面となっている、請求項7に記載の船舶推進機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、船舶推進機に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶推進機の内燃機関に空気を供給する吸気装置には、吸気ダクトで発生する吸気騒音を低減するためのレゾネータが設けられることがある。レゾネータとしては、ヘルムホルツ型の共鳴器が使用されることが一般的である。ヘルムホルツ型の共鳴器は、吸気ダクトから分岐するネック部と、ネック部に接続された共鳴室とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、船舶推進機では、低音域(低周波数)の騒音を低減することが求められている。ヘルムホルツ型の共鳴器が有する共鳴周波数は、ネック部の開口面積に比例し、ネック部の長さおよび共鳴室の容積に反比例するから、共鳴周波数を低周波数側にシフトするためには、共鳴室の容積を大きくする必要がある。しかし、このような構成では、吸気装置が大型化する。なお、このような課題は、吸気装置に限らず、排気装置にレゾネータが設けられる場合にも同様である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本明細書によって開示される船舶推進機は、内燃機関と、前記内燃機関に空気を供給する吸気装置と、を備え、前記吸気装置が、第1の吸気管と、前記第1の吸気管の下流端に接続され、前記第1の吸気管の軸方向に対して角度をなして延びる第2の吸気管と、を備えて前記内燃機関に供給される空気が流通するメイン吸気管と、前記第1の吸気管と前記第2の吸気管との接続位置から延び、内部に共鳴室を備える延長管と、を備え、前記延長管が、前記共鳴室において前記メイン吸気管と隣接する部位を除く全体を外部空間から隔てる隔壁を備えている。
【0006】
(2)本明細書によって開示される他の船舶推進機は、内燃機関と、前記内燃機関に空気を供給する吸気装置と、を備える船舶推進機であって、前記吸気装置が、第1の吸気管と、前記第1の吸気管の下流端に接続され、前記第1の吸気管の軸方向に対して角度をなして延びる第2の吸気管と、を備えて前記内燃機関に供給される空気が流通するメイン吸気管と、前記第1の吸気管と前記第2の吸気管との接続位置から延びる延長管と、を備える。
【0007】
(3)本明細書によって開示される他の船舶推進機は、内燃機関と、前記内燃機関から排出される排気ガスを外部に排出する排気装置と、を備え、前記排気装置が、第1の排気管と、前記第1の排気管の下流端に接続され、前記第1の排気管の軸方向に対して角度をなして延びる第2の排気管と、を備えて前記内燃機関から排出される排気ガスが流通するメイン排気管と、前記第1の排気管と前記第2の排気管との接続位置から延び、内部に共鳴室を備える延長管と、を備え、前記延長管が、前記共鳴室において前記メイン排気管と隣接する部位を除く全体を外部空間から隔てる隔壁を備えている。
【発明の効果】
【0008】
本明細書によって開示される技術によれば、吸気装置または排気装置を小型化できる。また、吸気装置または排気装置の設計変更が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態1の船舶の構成を概略的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態1の船外機の構成を概略的に示す側面図である。
【
図3】
図3は、実施形態1のエンジンアセンブリの主要部を示す部分拡大斜視図である。
【
図4】
図4は、実施形態1の導気部材の斜視図である。
【
図5】
図5は、実施形態1の導気部材の平面図である。
【
図6】
図6は、実施形態1の導気部材の側面図である。
【
図7】
図7は、実施形態1の導気部材の底面図である。
【
図11】
図11は、実施形態3の排気部材における上部排気管の主要部の構成を概略的に示す部分拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書によって開示される技術の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0011】
<実施形態1>
(船舶1の構成)
実施形態1を、
図1から
図9を参照しつつ説明する。実施形態1の船舶1は、
図1に示すように、船体10と、船外機100(船舶推進機の一例)とを備える。
図1および後述する他の図面には、船舶1の位置を基準とした各方向を表す矢印を示している。より具体的には、各図には、前方(FRONT)、後方(REAR)、左方(LEFT)、右方(RIGHT)、上方(UPPER)および下方(LOWER)のそれぞれを表す矢印を示している。前後方向、左右方向および上下方向(鉛直方向)は、それぞれ互いに直交する方向である。
【0012】
(船体10の構成)
船体10は、船舶1において乗員が搭乗する部分である。船体10は、
図1に示すように、居住空間11を有する船体本体部12と、居住空間11に設置された操縦席16と、操縦席16付近に設置された操縦装置17とを有する。操縦装置17は、操船のための装置であり、例えば、ステアリングホイール、シフト・スロットルレバー、ジョイスティック、モニタ、入力装置を有する。また、船体10は、居住空間11の後端を区画する仕切壁13と、船体10の後端に位置するトランサム14とを有する。前後方向において、トランサム14と仕切壁13との間には空間15が存在している。
【0013】
(船外機100の構成)
以下では、特に断りがない限り、基準姿勢の船外機100について説明する。基準姿勢は、後述するクランク軸124の回転軸線Acが上下方向に延伸し、かつ、プロペラシャフト111の回転軸線Apが前後方向に延伸する姿勢である。前後方向、左右方向および上下方向のそれぞれは、基準姿勢の船外機100に基づいて定められる。
【0014】
船外機100は、船舶1を推進させる推力を発生する装置である。船外機100は、
図1に示すように、船体10の後部のトランサム14に取り付けられている。船外機100は、船外機本体110と、懸架装置150とを有する。
【0015】
(船外機本体110の構成)
船外機本体110は、
図2に示すように、エンジンアセンブリ120と、プロペラ112と、動力伝達機構130と、カウル114と、ケーシング116とを備える。
【0016】
(カウル114)
カウル114は、
図2に示すように、船外機本体110の上部に配置された収容体である。カウル114は、カウル114の上部を構成する上部カウル114aと、カウル114の下部を構成する下部カウル114bと、を備える。上部カウル114aは、下部カウル114bに対して、取り外し可能に取り付けられている。上部カウル114aは、通気孔Hを有している。通気孔Hは、カウル114の外部空間から内部へ空気を取り入れるための開口である。
【0017】
(ケーシング116)
ケーシング116は、
図2に示すように、カウル114の下方に位置し、船外機本体110の下部に配置された収容体である。ケーシング116は、ケーシング116の上部を構成する上部ケーシング116aと、ケーシング116の下部を構成する下部ケーシング116bと、を有する。
【0018】
(エンジンアセンブリ120)
エンジンアセンブリ120は、エンジン本体122(内燃機関の一例)を中心とした複数の部品の集合体である。エンジンアセンブリ120は、
図2に示すように、エンジン本体122に加えて、吸気装置200と、電装部品128(例えば、ヒューズボックス、ECU、ステアリングCU等)と、排気装置300と、を含む。エンジン本体122と、吸気装置200と、電装部品128とは、カウル114内に収容されており、排気装置500は、カウル114およびケーシング116内に収容されている。
【0019】
(エンジン本体122)
エンジン本体122は、動力を発生する原動機である。エンジン本体122は、燃料と空気とを含む混合気の燃焼に伴って往復するピストンが内部に収容されたシリンダと、ピストンの往復に伴って回転するクランク軸124と、を含む。シリンダは、ピストンを収容するシリンダボディと、混合気が燃焼する燃焼室をピストンおよびシリンダボディと共に形成するシリンダヘッドと、を備える。シリンダヘッドは、吸気バルブによって開閉される複数の吸気ポートと、排気バルブによって開閉される複数の排気ポートと、を備える。クランク軸124は、
図2に示すように、その回転軸線Acが上下方向に延伸する姿勢で配置されている。
【0020】
(吸気装置200)
吸気装置200は、吸気ポートに接続され、通気孔Hからカウル114の内部に取り入れられた空気をエンジン本体122へ供給するための装置である。吸気装置200は、
図3に示すように、導気部材210と、スロットルボディ250と、サージタンク260と、インテークマニホールド270と、を備える。導気部材210と、スロットルボディ250と、サージタンク260と、インテークマニホールド270とは、上流側からこの順に接続され、インテークマニホールド270がエンジン本体122に接続されている。
【0021】
導気部材210は、
図4に示すように、本体220と、第2の吸気管230と、を備えている。本体220は、
図4および
図6に示すように、軸線Ai方向(
図5の左右方向)に延びる管状の周壁221と、周壁221の一端を塞ぐように配置される端壁222と、を備えており、端壁222とは反対側に、内部に空気を取り込むための吸気口223を有している。周壁221の一部は、
図8および
図9に示すように、平坦な板状の平板部211Fとなっており、平板部211Fは貫通孔224を有している。貫通孔224は平板部211Fを貫通する孔である。
【0022】
第2の吸気管230は、
図4に示すように、管状をなしており、
図8および
図9に示すように、貫通孔224の孔縁から平板部211Fに対して垂直に、本体220の外側に延びている、第2の吸気管230の末端は、スロットルボディ250に接続されている。
【0023】
本体220の内部には、
図8および
図9に示すように、エンジン本体122へ供給される空気から埃などの異物を取り除くためのフィルタFが、貫通孔224を覆うように取り付けられている。
【0024】
本体220のうち、吸気口223から貫通孔224までの部位(
図6の鎖線よりも左側の部分)が第1の吸気管220Aであり、貫通孔224よりも端壁222に近い部位(
図6の鎖線よりも右側の部位)が延長管220Bである。つまり、第2の吸気管230は、第1の吸気管220Aの下流端に接続され、第1の吸気管220Aの軸線Ai方向に対して角度をなして延びている。本実施形態では、第2の吸気管230は、第1の吸気管220Aの軸線Ai方向に対して垂直に延びている。延長管220Bは、第1の吸気管220Aと第2の吸気管230との接続位置(
図6の鎖線の位置)から、第1の吸気管220Aの軸線Ai方向に沿って延びている。
【0025】
第1の吸気管220Aと第2の吸気管230とが、吸気口223から導入されて内燃機関に供給される空気が流通するメイン吸気管240となっている。端壁222と、周壁221のうち延長管220Bを構成する延長周壁221Bとが、延長管220Bの内部空間(共鳴室R1)においてメイン吸気管240と隣接する部位(
図8の鎖線に隣接する位置)を除く全体を外部空間から隔てる隔壁に相当する。
【0026】
メイン吸気管240において、第1の吸気管220Aに対する第2の吸気管230の接続位置(貫通孔224の孔縁に隣接する位置)の内周面は、
図8および
図9に示すように、第1の吸気管220Aから第2の吸気管230に向かって弧状に湾曲された湾曲面225となっている。
【0027】
サージタンク260は、内部に空気室を有しており、エンジン本体122の複数の気筒への空気の供給量を均等化する。インテークマニホールド270は、
図3に示すように、サージタンク260の空気室と連通する内部空間を有するマニホールド本体271と、マニホールド本体271から延び、エンジン本体122の複数の吸気ポートにそれぞれ接続される複数の分岐管272と、を備えている。
【0028】
スロットルボディ250は、
図3に示すように、第2の吸気管230とサージタンク260との間に介在している。スロットルボディ250は、内部にスロットルバルブを備え、第2の吸気管230からサージタンク260への空気の流入を制御する。
【0029】
(排気装置300)
排気装置300は、排気ポートに接続され、エンジン本体122からの排気を船外機100の外部に排出するための装置であって、
図2および
図3に示すように、排気ポートに接続されたエキゾーストマニホールド310と、エキゾーストマニホールド310の下流側に接続された排気管320と、を備えている。
【0030】
排気管320は、
図2に示すように、上部排気管330と、下部排気管340とを備えている。上部排気管330は、カウル114および上部ケーシング116aの内部に配されている。上部排気管330は、船舶1が水上にあるときに喫水線より上方に位置する上部排気口331を有している。下部排気管340は、上部排気管330から分岐し、下部カウル114bの内部に配されている。下部排気管340は、船舶1が水上にあるときに喫水線より下方となる位置に配された下部排気口341を有している。
【0031】
エンジン本体122の回転数が比較的低い状態では、排気は上部排気管330を通って上部排気口331から空中に排出される。一方、エンジン本体122の回転数が比較的高い状態では、排気は、上部排気管330を通って上部排気口331から空中に排出されると共に、上部排気管330から下部排気管340へと流れ、下部排気口341から水中に排出される。
【0032】
上部排気管330には、流路を開閉する切替弁332が設けられている。切替弁332が開状態のときには、エンジン本体122からの排気は、上部排気管330における切替弁332の位置を通過して、下部排気管340にも進行可能となる。一方、切替弁332が閉状態のときには、エンジン本体122からの排気は、上部排気管330における切替弁332の位置で止められ、下部排気管340への排気の流れが制限される。
【0033】
(プロペラ112)
プロペラ112は、複数枚の羽を有する回転体である。プロペラ112は、船外機100における比較的下方の位置に配置されている。プロペラ112は、回転することによって推力を発生する。
【0034】
(動力伝達機構130)
動力伝達機構130は、エンジンアセンブリ120において発生した動力をプロペラ112に伝達する機構である。動力伝達機構130の少なくとも一部は、ケーシング116内に収容されている。動力伝達機構130は、ドライブ軸132と、シフト機構134と、プロペラ軸136と、を有する。
【0035】
ドライブ軸132は、棒状の部材であり、エンジン本体122のクランク軸124の下方に、上下方向に延伸する姿勢で配置されている。ドライブ軸132は、クランク軸124の回転に伴い回転する。ドライブ軸132の少なくとも一部は、ケーシング116の内部に収容されている。
【0036】
プロペラ軸136は、棒状の部材であり、船外機100における比較的下方の位置に、前後方向に延伸する姿勢で配置されている。プロペラ軸136の少なくとも一部は、下部ケーシング116b内に収容されている。プロペラ軸136の後端部は、下部ケーシング116bの外部に突出している。プロペラ軸136の後端部にプロペラ112が取り付けられている。回転軸線Apまわりのプロペラ軸136の回転に伴い、プロペラ112も回転する。
【0037】
シフト機構134は、ドライブ軸132の下端部に連結されると共に、プロペラ軸136の前端部に連結されている。シフト機構134は、例えば、複数のギヤと、ギヤの噛み合いを切り換えるクラッチとを含み、ドライブ軸132の回転を、回転方向を切り替え可能にプロペラ軸136に伝達する。シフト機構134がドライブ軸132の回転を正転方向の回転としてプロペラ軸136に伝達すると、プロペラ軸136と共に正転方向に回転するプロペラ112が前進方向の推力を発生する。反対に、シフト機構134がドライブ軸132の回転を逆転方向の回転としてプロペラ軸136に伝達すると、プロペラ軸136と共に逆転方向に回転するプロペラ112が後進方向の推力を発生する。
【0038】
(懸架装置150)
懸架装置150は、船外機本体110を船体10に懸架する装置である。懸架装置150は、左右一対のクランプブラケット152と、チルト軸160と、接続ブラケット156とを含む。
【0039】
左右一対のクランプブラケット152は、船体10の後方に、互いに左右方向に離隔した状態で配置されており、例えばボルトによって船体10のトランサム14に固定されている。各クランプブラケット152は、左右方向に延伸する貫通孔が形成された筒状の支持部152aを有する。
【0040】
チルト軸160は、棒状の部材である。チルト軸160は、クランプブラケット152の支持部152aの貫通孔内に回転可能に支持されている。チルト軸160の中心線であるチルト軸線Atは、船外機100のチルト動作における水平方向(左右方向)の軸線を構成する。
【0041】
接続ブラケット156は、一対のクランプブラケット152に挟まれるように配置されており、チルト軸線Atまわりに回転可能に、チルト軸160を介してクランプブラケット152の支持部152aに支持されている。接続ブラケット156は、船外機本体110に固定されている。接続ブラケット156は、例えば油圧シリンダ等のアクチュエータを含むチルト装置(不図示)により、クランプブラケット152に対してチルト軸線Atまわりに回転駆動される。
【0042】
接続ブラケット156がクランプブラケット152に対してチルト軸線Atまわりに回転すると、接続ブラケット156に固定された船外機本体110もチルト軸線Atまわりに回転する。これにより、船体10に対して船外機本体110を上下方向に回転させるチルト動作が実現される。船外機100のチルト動作により、プロペラ112が水中に位置するチルトダウン状態(船外機100が基準姿勢にある状態:
図1に示す状態)からプロペラ112が水面より上側に位置するチルトアップ状態までの範囲で、船外機本体110のチルト軸線Atまわりの角度を変更することができる。なお、船外機本体110のチルト軸線Atまわりの角度を調整して船舶1の走行時の姿勢を調整するトリム動作も実行することができる。
【0043】
(効果)
以上説明したように、本実施形態の船外機100は、エンジン本体122と、エンジン本体122に空気を供給する吸気装置200と、を備え、吸気装置200が、第1の吸気管220Aと、第1の吸気管220Aの下流端に接続され、第1の吸気管220Aの軸線Ai方向に対して角度をなして延びる第2の吸気管230と、を備えてエンジン本体122に供給される空気が流通するメイン吸気管240と、第1の吸気管220Aと第2の吸気管230との接続位置から延び、内部に共鳴室R1を備える延長管220Bと、を備え、延長管220Bが、共鳴室R1においてメイン吸気管240と隣接する部位を除く全体を外部空間から隔てる延長周壁221Bおよび端壁222を備えている。
【0044】
上記の構成によれば、第1の吸気管220Aと延長管220Bとで生じる気柱共鳴の効果によって、エンジン本体122側から第2の吸気管230を通って伝達される騒音が消音される。延長管220Bのみならず第1の吸気管220Aをも共鳴器として利用できるため、従来のヘルムホルツ型の共鳴器を有する吸気装置と比較して、小型化が可能となる。また、第2の吸気管230の延長管220Bの末端(端壁222)からの距離を調整することによって、共鳴周波数を調整することが可能であるため、設計変更が容易となる。
【0045】
<実施形態2>
次に、実施形態2を、
図10を参照しつつ説明する。本実施形態の導気部材400は、実施形態1と同様に、船外機の吸気装置に備えられる部材であって、延長管410の形状が実施形態1と異なる。本実施形態では、実施形態1と同じ部位には、同一の符号を用い、構造、作用及び効果について重複する説明は省略する。
【0046】
導気部材400は、
図10に示すように、メイン吸気管240と、延長管410と、を備える。延長管410は、第1の吸気管220Aから延びる管状の周壁411と、周壁411の末端を塞ぐように配置される端壁412と、を備えている。
【0047】
延長管410は、全体としてL字型に屈曲した形状を有している。延長管410において、第1の吸気管220Aに隣接する部位は基端部410Bであり、基端部410Bよりも先端の部位(端壁412に近い部位)は先端部410Eである。基端部410Bは、第1の吸気管220Aの軸線Ai方向(
図10の左右方向)に沿って延びている。先端部410Eは、基端部410Bに対して垂直に延びている。
【0048】
<実施形態3>
次に、実施形態3を、
図11を参照しつつ説明する。本実施形態の排気装置500は、実施形態1と同様に、船外機に備えられ、エンジン本体122から排出される排気ガスを外部に排出する装置であって、エキゾーストマニホールド310の下流端に接続された上部排気管510を備えている。本実施形態では、実施形態1と同じ部位には、同一の符号を用い、構造、作用及び効果について重複する説明は省略する。
【0049】
上部排気管510は、船舶1が水上にあるときに喫水線より上方に位置する上部排気口331を有している。
【0050】
上部排気管510は、上部排気口331に連なる管状の第1の排気管521と、第1の排気管521から延びる管状の第2の排気管522と、同じく第1の排気管521から延びる管状の延長管523と、を備えている。
【0051】
第2の排気管522は、第1の排気管521の軸線Ae方向に対して角度をなして延びている。本実施形態では、第2の排気管522は、第1の排気管521の軸線Ae方向に対して垂直に延びている。第2の排気管522の末端は、エキゾーストマニホールド310の下流端に接続されている。第1の排気管521と第2の排気管522とが、エンジン本体122から排出された空気が流通するメイン排気管520となっている。
【0052】
延長管523は、第1の排気管521と第2の排気管522との接続位置から延びる管状の周壁524と、周壁524において第1の排気管521とは反対側の末端を塞ぐように配された端壁525と、を備えている。周壁524と端壁525とが、延長管523の内部空間(共鳴室R2)においてメイン排気管520と隣接する部位(
図11における延長管523の右端)を除く全体を外部空間から隔てる隔壁となっている。
【0053】
延長管523は、全体としてL字型に屈曲した形状を有している。延長管523において、第1の排気管521に隣接する部位は基端部523Bであり、基端部523Bよりも先端の部位(端壁525に近い部位)は先端部523Eである。基端部523Bは、第1の排気管521の軸線Ae方向(
図11の上下方向)に沿って延びている。先端部523Eは、基端部523Bに対して垂直に延びている。
【0054】
メイン排気管520において、第1の排気管521に対する第2の排気管522の接続位置の内周面は、第1の排気管521から第2の排気管522に向かって弧状に湾曲された湾曲面526となっている。
【0055】
上記の構成によれば、第1の排気管521と延長管523とで生じる気柱共鳴の効果によって、エンジン本体122側から第2の排気管522を通って伝達される騒音が消音される。延長管523のみならず第1の排気管521をも共鳴器として利用できるため、従来のヘルムホルツ型の共鳴器を有する吸気装置と比較して、小型化が可能となる。また、第2の排気管522の延長管523の末端(端壁525)からの距離を調整することによって、共鳴周波数を調整することが可能であるため、設計変更が容易となる。
【0056】
<他の実施形態>
(1)上記実施形態では、船舶推進機は、船外機100であったが、船舶推進機は、船内機であってもよく、船内外機であってもよく、ジェット推進機であっても構わない。
(2)上記実施形態では、本体220(第1の吸気管220Aおよび延長管220B)が、平板部211Fを有する管状であったが、第1の吸気管および延長管は管状であれば、その形状は任意である。また、第1の吸気管と延長管とが異なる形状を有する管であっても構わない。排気装置における第1の排気管および延長管についても、同様である。
(3)上記実施形態では、第2の吸気管230が、第1の吸気管220Aの軸線Ai方向に対して垂直に延びていたが、第2の吸気管は、第1の吸気管に対して角度をなしていればよく、その角度は任意である。排気装置における第1の排気管および第2の排気管についても、同様である。
(4)上記実施形態では、延長管220Bが、第1の吸気管220Aの軸線Ai方向に沿って延びていたが、延長管は、第1の吸気管の軸方向に対して角度をなして延びていても構わない。また、延長管の基端部が第1の吸気管の軸方向に対して角度をなして延び、さらに、先端部が屈曲または湾曲されていても構わない。排気装置における第1の排気管および延長管についても、同様である。
(5)実施形態2では、延長管がL字状に屈曲されていたが、延長管は湾曲されていても構わない。また、延長管の屈曲角度または湾曲角度は任意である。また、延長管は複数の屈曲部または湾曲部を有していても構わない。排気装置の延長管についても、同様である。
(6)上記実施形態では、メイン吸気管240の内周面が湾曲面225を有していたが、メイン吸気管の内周面が湾曲面を有していなくても構わない。排気装置におけるメイン排気管についても、同様である。
【符号の説明】
【0057】
100:船外機(船舶推進機) 122:エンジン本体(内燃機関) 200:吸気装置 220A:第1の吸気管 230:第2の吸気管 240:メイン吸気管 220B:延長管 221B:延長周壁(隔壁) 222:端壁(隔壁) 225:湾曲面 410B:基端部 500:排気装置 521:第1の排気管 522:第2の排気管 520:メイン排気管 523:延長管 524:周壁(隔壁) 525:端壁(隔壁) 523B:基端部 526:湾曲面 R1、R2:共鳴室