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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064619
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】過流式放流装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/00 20230101AFI20240507BHJP
   E03F 1/00 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
C02F1/00 W
E03F1/00 Z
C02F1/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173352
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000229128
【氏名又は名称】ベルテクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】有田 淳一
【テーマコード(参考)】
2D063
【Fターム(参考)】
2D063AA01
(57)【要約】
【課題】所望の放流特性を実現できる過流式放流装置を提供する。
【解決手段】過流式放流装置1は、円錐台形状の過流室20が形成された本体部2と、過流室20の円錐周板21に連設されて過流室20に水Wを流入させる二つの流入部3,4と、過流室20の小径端縁23に連設されて過流室20から水Wを流出させる一つの流出部5とを有し、過流室20が倒位姿勢となるように設置されている。そして、第一流入部3は、前方側Fから視た正面視にて、中心軸2Cよりも下方側Dに配置された流入孔30を有し、第二流入部4は、後方側Bから視た背面視にて、中心軸2Cよりも上方側Uに配置された流入孔40を有している。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円錐台形状の過流室が形成された本体部と、
前記過流室の円錐周部に連設されて当該過流室に流体を流入させる流入部と、
前記過流室の小径端部に連設されて当該過流室から前記流体を流出させる流出部とを有し、
前記過流室が倒位姿勢となるように設置される過流式放流装置において、
前記流入部が二つ設けられ、
一方の前記流入部は、上下方向及び前記過流室の中心軸に対して垂直となる一方側から視た正面視にて、前記中心軸よりも下方側に配置された流入孔を有し、
他方の前記流入部は、上下方向及び前記過流室の中心軸に対して垂直となる他方側から視た背面視にて、前記中心軸よりも上方側に配置された流入孔を有している
過流式放流装置。
【請求項2】
少なくとも一方の前記流入孔は、前記中心軸に対して平行方向の開口幅が垂直方向の開口幅以上である
請求項1に記載の過流式放流装置。
【請求項3】
少なくとも一方の前記流入孔は、前記正面視又は前記背面視にて、前記過流室の円錐周部と大径端部とに沿って形成され、かつ前記過流室の大径側から小径側に向かうにつれて徐々に前記垂直方向の開口幅が狭くなる
請求項2に記載の過流式放流装置。
【請求項4】
少なくとも一方の前記流入孔は、前記過流室の大径側から小径側に向かうにつれて内径が小さくなる当該過流室の縮径率に応じて徐々に前記垂直方向の開口幅が狭くなる
請求項3に記載の過流式放流装置。
【請求項5】
前記流入部は、前記過流室に流入する前記流体を案内するための流入案内筒を有する
請求項1に記載の過流式放流装置。
【請求項6】
前記流入案内筒は、前記上下方向及び前記中心軸に対して垂直となる方向に沿って延設されている
請求項5に記載の過流式放流装置。
【請求項7】
前記流入部は、前記流入孔の一部を閉塞するための閉塞部材を装着自在とした
請求項1又は請求項5に記載の過流式放流装置。
【請求項8】
前記流出部は、前記過流室から流出した前記流体を案内するための流出案内筒を有する
請求項1に記載の過流式放流装置。
【請求項9】
前記流出案内筒は、前記中心軸に対して少なくとも鈍角に交差する方向に沿って延設されている
請求項8に記載の過流式放流装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、雨水貯留施設に用いられる過流式放流装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、雨水貯留施設に用いられる放流装置は、放流量が少ないことに起因して満水状態になることを防ぐとともに、放流量が多いことに起因して下流側で越水被害が生じないよう、適切な流量制御が求められる。このような放流装置の一態様として過流式放流装置が存在している(特許文献1参照)。
【0003】
ところで、過流式放流装置は、水が勢いよく旋回したときに生じる空気柱を利用して通路の有効面積を変化させる。そのため、かかる過流式放流装置は、水位に応じて放流量が変化するという特徴を有している。すなわち、水位が低い状態においては、大口径のオリフィスと同様の放流特性が得られ、水位が高い状態においては、小口径のオリフィスと同様の放流特性が得られるという特徴を有している。
【0004】
しかしながら、雨水貯留施設は、それぞれ許容水位や許容放流量が異なるため、これらの値に応じて過流式放流装置の仕様を変える必要があり、所望の放流特性を実現することが難しいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-80241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明は、所望の放流特性を実現できる過流式放流装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明は、円錐台形状の過流室が形成された本体部と、前記過流室の円錐周部に連設されて当該過流室に流体を流入させる流入部と、前記過流室の小径端部に連設されて当該過流室から前記流体を流出させる流出部とを有し、前記過流室が倒位姿勢となるように設置される過流式放流装置において、前記流入部が二つ設けられ、一方の前記流入部は、上下方向及び前記過流室の中心軸に対して垂直となる一方側から視た正面視にて、前記中心軸よりも下方側に配置された流入孔を有し、他方の前記流入部は、上下方向及び前記過流室の中心軸に対して垂直となる他方側から視た背面視にて、前記中心軸よりも上方側に配置された流入孔を有していることを特徴としている。
なお、本発明における倒位姿勢とは、過流室の中心軸が水平面に対して斜め上方向45度から斜め下方向45度の間に収まる姿勢を意味している。
【0008】
この発明により、所望の放流特性を実現することができる。
詳述すると、本願発明に係る過流式放流装置は、流入部が二つ設けられ、一方の流入部が過流室の前方側の周面における過流室の中心軸よりも下方側に配置され、他方の流入部が過流室の後方側の周面における過流室の中心軸よりも上方側に配置されている。そのため、過流室には、各流入部から水位に応じた圧力(水圧)で流体が流れ込むとともに、過流室の中心軸を挟んで下方側に流れ込んだ流体と上方側に流れ込んだ流体とが衝突することなく、円錐周部に沿って所定方向に旋回する。このように、流体の旋回方向に向かって各流入孔から流体が流れ込むので、一つの流入孔が設けられた場合に比べ、低い水位でも強く安定した旋回流を形成することが可能となる。したがって、本願発明に係る過流式放流装置は、流体が水位に応じた圧力(水圧)で過流室に流れ込み、その勢いに応じた旋回流を形成して空気柱を生じさせるので、所定の水位を超えると、水位と空気柱の発生及び成長の関係性が安定的となる。ひいては所望の放流特性を実現することができる。
【0009】
この発明の態様として、少なくとも一方の前記流入孔は、前記中心軸に対して平行方向の開口幅が垂直方向の開口幅以上であってもよい。
【0010】
この発明により、開口孔を通過する流体は、過流室の中心軸に対して平行方向に広がり、円錐周部に沿うようにして流れる。こうして、流入孔から流入した流体が円滑に流れ、螺旋状に旋回しつつ流出部に向かうこととなる。したがって、水位と空気柱の発生及び成長の関係性がより安定的となる。ひいては所望の放流特性を実現することができる。
【0011】
またこの発明の態様として、少なくとも一方の前記流入孔は、前記正面視又は前記背面視にて、前記過流室の円錐周部と大径端部とに沿って形成され、かつ前記過流室の大径側から小径側に向かうにつれて徐々に前記垂直方向の開口幅が狭くなってもよい。
【0012】
この発明により、過流室の形状(円錐台形状)に合わせて流入孔の垂直方向の開口幅が狭くなっているため、かかる流入孔における小径側からの流体の流入量を抑えることができ、小径側から流入した流体が大径側から流入して流出部に向かう流体の流れを乱したり停滞させたりすることを抑制できる。こうして、流入孔から流入した流体が円滑に流れ、螺旋状に旋回しつつ流出部に向かうこととなる。したがって、水位と空気柱の発生及び成長の関係性がより安定的となる。ひいては所望の放流特性を実現することができる。
【0013】
またこの発明の態様として、少なくとも一方の前記流入孔は、前記過流室の大径側から小径側に向かうにつれて内径が小さくなる当該過流室の縮径率に応じて徐々に前記垂直方向の開口幅が狭くなってもよい。
【0014】
この発明により、過流室の形状(円錐台形状)の縮径率に応じて流入孔の垂直方向の開口幅が狭くなっているため、かかる流入孔における小径側からの流体の流入量を適宜に抑えることができ、小径側から流入した流体が大径側から流入して流出部に向かう流体の流れを乱したり停滞させたりすることを確実に抑制できる。したがって、水位と空気柱の発生及び成長の関係性がより安定的となる。ひいては所望の放流特性を実現することができる。
【0015】
またこの発明の態様として、前記流入部は、前記過流室に流入する前記流体を案内するための流入案内筒を有してもよい。
この発明により、流体の流れを安定させた上で、かかる流体を過流室に流入させることができる。そのため、過流室に流入する前の乱れ等が過流室内に形成された旋回流に影響を及ぼすことを抑制できる。したがって、水位と空気柱の発生及び成長の関係性がより安定的となる。ひいては所望の放流特性を実現することができる。
【0016】
またこの発明の態様として、前記流入案内筒は、前記上下方向及び前記中心軸に対して垂直となる方向に沿って延設されてもよい。
この発明により、円錐台形状である過流室の接線方向に沿って流入案内筒が配置されるため、かかる接線方向から過流室内に流体を流入させることができる。そのため、過流室に流入した流体が円錐周部に沿って円滑に旋回を始めることとなる。したがって、水位と空気柱の発生及び成長の関係性がより安定的となる。ひいては所望の放流特性を実現することができる。
【0017】
またこの発明の態様として、前記流入部は、前記流入孔の一部を閉塞するための脱着自在の閉塞部材を有してもよい。
この発明により、放流特性に及ぼす影響が大きい流入部の開口面積を調整したり位置を移動させたりすることができる。そのため、過流室に流入する流体の流速や流量の最適化を図ることができる。したがって、水位と空気柱の発生及び成長の関係性がより安定的となる。ひいては所望の放流特性を実現することが可能となる。
【0018】
またこの発明の態様として、前記流出部は、前記過流室から流出した前記流体を案内するための流出案内筒を有してもよい。
この発明により、過流室から流出した流体が流れる流出案内筒の内側においても旋回流を維持することができる。そのため、流出案内筒から過流室へ延びる空気柱が途切れたりふらついたりすることを抑制できる。したがって、水位と空気柱の発生及び成長の関係性がより安定的となる。ひいては所望の放流特性を実現することができる。
【0019】
またこの発明の態様として、前記流出案内筒は、前記中心軸に対して少なくとも鈍角に交差する方向に沿って延設されてもよい。
この発明により、過流室にて形成された旋回流の勢いを保ちつつ流体を流出させることができる。そのため、流出案内筒から過流室へ延びる空気柱が途切れたりふらついたりすることを確実に抑制できる。したがって、水位と空気柱の発生及び成長の関係性がより安定的となる。ひいては所望の放流特性を実現することができる。
【発明の効果】
【0020】
本願発明によれば、所望の放流特性を実現できる過流式放流装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】雨水貯留施設を示す概略図。
図2】過流式放流装置を示す斜視図。
図3】過流式放流装置を前方側から視た正面図。
図4】過流式放流装置を後方側から視た背面図。
図5】過流式放流装置を右方側から視た右側面図。
図6】過流式放流装置を上方側から視た平面図。
図7図6におけるA-A矢視断面図。
図8図6におけるB-B矢視断面図。
図9】本体部に設けられた第一流入部の拡大図。
図10】本体部に設けられた第二流入部の拡大図。
図11】本体部に設けられた流出部の拡大図。
図12】水位が低い状態と高い状態の流動態様を示す斜視図。
図13】水位に応じて放流量が変化する放流特性を示すグラフ図。
図14】流入孔の一部を閉塞する構造を示す分解斜視図。
図15】他の実施形態に係る過流式放流装置において流入孔の一部を閉塞する構造を示す分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は雨水貯留施設100を示す概略図である。図2は過流式放流装置1を示す斜視図である。図3は過流式放流装置1を前方側Fから視た正面図であり、図4は過流式放流装置1を後方側Bから視た背面図であり、図5は過流式放流装置1を右方側Rから視た右側面図であり、図6は過流式放流装置1を上方側Uから視た平面図である。そして、図7図6におけるA-A矢視断面図であり、図8図6におけるB-B矢視断面図である。図3から図5においては、貯留槽101の底面10Bを二点鎖線で表している。図7においては、貯留槽101の底面10Bならびに第一流入部3の位置及び形状を二点鎖線で表している。図8においては、貯留槽101の底面10Bならびに第二流入部4の位置及び形状を二点鎖線で表している。
【0023】
また、図9は本体部2に設けられた第一流入部3の拡大図である。図10は本体部2に設けられた第二流入部4の拡大図である。図11は本体部2に設けられた流出部5の拡大図である。図12は水位Hが低い状態と高い状態の流動態様を示す斜視図であり、図13は水位Hに応じて放流量Qが変化する放流特性を示すグラフ図である。図12においては、水Wの流動態様が見えるように本体部2等を透過状態で表している。図13においては、過流式放流装置1の代わりに大口径のオリフィスを用いた場合と小口径のオリフィスを用いた場合の放流特性をそれぞれ破線にて表している。そして、図14及び図15は流入孔30の一部を閉塞する構造を示す分解斜視図である。
【0024】
なお、本願においては、図1から図12で過流式放流装置1の方向を示している。詳しくは、矢印Fが前方側を示し、矢印Bが後方側を示し、矢印Lが左方側を示し、矢印Rが右方側を示している。そして、矢印Uが上方側を示し、矢印Dが下方側を示している。加えて、本願においては、前後方向をX、左右方向をY、上下方向をZとして説明する。
【0025】
図1に示すように、過流式放流装置1は、雨水貯留施設100の放流装置として用いられている。雨水貯留施設100は、水Wを一時的に貯めることにより、直接的に河川等に流れ込む水量を調整するものである。以下に、過流式放流装置1について詳しく説明する。
【0026】
図1に示すように、過流式放流装置1は、雨水貯留施設100における貯留槽101の底面10B上に設置される。過流式放流装置1は、本体部2と、本体部2の内部に水Wを流入させる二つの流入部3,4と、本体部2の内部から水Wを流出させる一つの流出部5とを有している。本体部2と流入部3,4は、貯留された水Wに沈んでいるものの、流出部5は、越流堰10Wを貫通して放流室102に突出している。以下においては、流入部3を第一流入部3とし、流入部4を第二流入部4として説明する。
【0027】
図2から図8に示すように、本体部2は、円錐周板21と大径端板22の組み合せによって先端部分を欠いた円錐形状(以降では円錐台形状とする)に形成されている。そのため、本体部2の内側には、円錐台形状の内部空間が形成されている(図7及び図8参照)。かかる内部空間は、水Wの通路であり、流入部3から流入して流出部5から流出する水Wを螺旋状に旋回させるため、過流室20ということができる。
【0028】
円錐周板21は、大径側と小径側が開放された円錐台形状に形成されている。円錐周板21は、その中心軸2Cに対して15度の角度で傾いている。また、大径端板22は、円錐周板21の大径側の開放端を塞ぐために略円板形状に形成されている。大径端板22は、円錐周板21の中心軸2Cに対して垂直に交わっている。そのため、過流室20は、円錐周板21と大径端板22に囲まれ、円錐周板21の中心軸2Cを中心とする円錐台形状とされている。
【0029】
なお、本体部2は、円錐周板21における一部周面21dが貯留槽101の底面10Bに対向しており、かかる一部周面21dが左右方向Yに対して平行となる倒位姿勢とされている。そのため、過流室20の中心軸2Cは、左右方向Yに対して15度の角度で傾いている。また、円錐周板21と大径端板22のなす角度は、75度とされている。但し、円錐周板21が中心軸2Cに対して15度の角度で傾いている点や円錐周板21と大径端板22のなす角度が75度である点について限定するものではない。
【0030】
図2から図9に示すように、第一流入部3は、各案内板31~34の組み合せによって角筒状に形成された流入案内筒35である。流入案内筒35は、過流室20の円錐周板21に連設されている。流入案内筒35の内側には、流入孔30が形成されており、かかる流入孔30を介して過流室20に水Wを流入させることができる。
【0031】
下方側案内板31は、円錐周板21における下方側Dの一部周面21dから接線方向である前方側Fに延設されている。また、大径側案内板32は、大径端板22における一部周面から前方側Fに延設されている。そのため、下方側案内板31と大径側案内板32のなす角度は、75度とされている。さらに、小径側案内板33は、大径側案内板32に対して平行に配置され、上方側案内板34は、大径側案内板32と小径側案内板33の上端縁をつなぐように配置されている。
【0032】
なお、第一流入部3は、前方側Fから視た正面視、すなわち、上下方向Z及び過流室20の中心軸2Cに対して垂直となる前方側Fから視た正面視にて、過流室20の中心軸2Cよりも下方側Dに配置されている(図7から図9参照)。また、流入孔30は、同じく前方側Fから視た正面視にて、過流室20の中心軸2Cに対して平行方向Daの開口幅Wa1が垂直方向Dbの開口幅Wb1と同等あるいは大きくなるように形成されている。以下に、流入孔30の形状について詳しく説明する。
【0033】
図9に示すように、流入孔30は、前方側Fから視た正面視、すなわち、上下方向Z及び過流室20の中心軸2Cに対して垂直となる前方側Fから視た正面視にて、円錐周板21と大径端板22とに沿って形成されている。そして、流入孔30は、過流室20の中心軸2Cよりも下方側Dに配置されている。
【0034】
下方側案内板31は、円錐周板21における下方側Dの一部周面21dに沿って配置されている。大径側案内板32と小径側案内板33は、過流室20の中心軸2Cに対して垂直方向Dbに配置されている。また、大径側案内板32よりも小径側案内板33が短いため、上方側案内板34は、過流室20の大径側から小径側に向かうにつれて徐々に下方側案内板31に近づくように傾斜して配置されている。そして、過流室20の中心軸2Cに対して平行方向Daの開口幅Wa1が垂直方向Dbの開口幅Wb1と同等あるいは大きくなるように形成されている。
【0035】
この点について詳しく説明すると、過流室20の中心軸2Cに対して平行方向Daの大径側案内板32から小径側案内板33までの距離を開口幅Wa1とし、中心軸2Cに対して垂直方向Dbの下方側案内板31から上方側案内板34までの距離を開口幅Wb1とした場合、流入孔30は、開口幅Wa1≧開口幅Wb1の関係を満たすように設定されている。これは、過流室20の大径側における開口幅Wb1が最も大きいところ、かかる開口幅Wb1においても成立する。
【0036】
また、前述したように、下方側案内板31は、円錐周板21における下方側Dの一部周面21dに沿って配置されているのに対し、上方側案内板34は、過流室20の大径側から小径側に向かうにつれて徐々に下方側案内板31に近づくように傾斜して配置されている。そのため、流入孔30は、過流室20の大径側における開口幅Wb1が最も大きく、大径側から小径側に向かうにつれて徐々に開口幅Wb1が狭くなっていく。
【0037】
この点について詳しく説明すると、過流室20の中心軸2C上の任意の点P(図7参照)における過流室20の内径をWcとし、かかる点Pにおける中心軸2Cに対して垂直方向Dbの下方側案内板31から上方側案内板34までの距離を開口幅Wb1とした場合、流入孔30は、開口幅Wb1/内径Wc=0.33の関係を満たすように設定されている。これは、中心軸2C上の任意の点Pの位置に関わらず、常に成立する。このようにして、流入孔30は、過流室20の縮径率に応じて徐々に垂直方向Dbの開口幅Wb1が狭くなるように形成されている。
【0038】
図2から図8ならびに図10に示すように、第二流入部4は、各案内板41~44の組み合せによって角筒状に形成された流入案内筒45である。流入案内筒45は、過流室20の円錐周板21に連設されている。流入案内筒45の内側には、流入孔40が形成されており、かかる流入孔40を介して過流室20に水Wを流入させることができる。
【0039】
上方側案内板41は、円錐周板21における上方側Uの一部周面21uから接線方向である後方側Bに延設されている。また、大径側案内板42は、大径端板22における一部周面から後方側Bに延設されている。そのため、上方側案内板41と大径側案内板42のなす角度は、75度とされている。さらに、小径側案内板43は、大径側案内板42に対して平行に配置され、下方側案内板44は、大径側案内板42と小径側案内板43の下端縁をつなぐように配置されている。
【0040】
なお、第二流入部4は、後方側Bから視た背面視、すなわち、上下方向Z及び過流室20の中心軸2Cに対して垂直となる後方側Bから視た背面視にて、過流室20の中心軸2Cよりも上方側Uに配置されている(図7から図10参照)。また、流入孔40は、同じく後方側Bから視た背面視にて、過流室20の中心軸2Cに対して平行方向Daの開口幅Wa2が垂直方向Dbの開口幅Wb2と同等あるいは大きくなるように形成されている。以下に、流入孔40の形状について詳しく説明する。
【0041】
図10に示すように、流入孔40は、後方側Bから視た背面視、すなわち、上下方向Z及び過流室20の中心軸2Cに対して垂直となる後方側Bから視た背面視にて、円錐周板21と大径端板22とに沿って形成されている。そして、流入孔40は、過流室20の中心軸2Cよりも上方側Uに配置されている。
【0042】
上方側案内板41は、円錐周板21における上方側Uの一部周面21uに沿って配置されている。大径側案内板42と小径側案内板43は、過流室20の中心軸2Cに対して垂直方向Dbに配置されている。また、大径側案内板42よりも小径側案内板43が短いため、下方側案内板44は、過流室20の大径側から小径側に向かうにつれて徐々に上方側案内板41に近づくように傾斜して配置されている。そして、過流室20の中心軸2Cに対して平行方向Daの開口幅Wa2が垂直方向Dbの開口幅Wb2と同等あるいは大きくなるように形成されている。
【0043】
この点について詳しく説明すると、過流室20の中心軸2Cに対して平行方向Daの大径側案内板42から小径側案内板43までの距離を開口幅Wa2とし、中心軸2Cに対して垂直方向Dbの上方側案内板41から下方側案内板44までの距離を開口幅Wb2とした場合、流入孔40は、開口幅Wa2≧開口幅Wb2の関係を満たすように設定されている。これは、過流室20の大径側における開口幅Wb2が最も大きいところ、かかる開口幅Wb2においても成立する。
【0044】
また、前述したように、上方側案内板41は、円錐周板21における上方側Uの一部周面21uに沿って配置されているのに対し、下方側案内板44は、過流室20の大径側から小径側に向かうにつれて徐々に上方側案内板41に近づくように傾斜して配置されている。そのため、流入孔40は、過流室20の大径側における開口幅Wb2が最も大きく、大径側から小径側に向かうにつれて徐々に開口幅Wb2が狭くなっていく。
【0045】
この点について詳しく説明すると、過流室20の中心軸2C上の任意の点P(図8参照)における過流室20の内径をWcとし、かかる点Pにおける中心軸2Cに対して垂直方向Dbの上方側案内板41から下方側案内板44までの距離を開口幅Wb2とした場合、流入孔40は、開口幅Wb2/内径Wc=0.33の関係を満たすように設定されている。これは、中心軸2C上の任意の点Pの位置に関わらず、常に成立する。このようにして、流入孔40は、過流室20の縮径率に応じて徐々に垂直方向Dbの開口幅Wb2が狭くなるように形成されている。
【0046】
図2から図8ならびに図11に示すように、流出部5は、一本の円管51によって円筒状に形成された流出案内筒55である。流出案内筒55は、過流室20の小径端縁23(図7及び図8参照)に連設されている。流出案内筒55の内側には、流出孔50が形成されており、かかる流出孔50を介して過流室20から水Wを流出させることができる。
【0047】
円管51は、内径及び外径が一定の円筒状とされている。円管51は、円錐周板21における下方側Dの一部周面21dから後方側Bに向かって段差なく左右方向Yに対して平行となるように配置されている。また、円管51は、過流室20から流出し、かかる円管51内を流れる水Wについて強い旋回流を維持することが目的であるため、後方側Bから視た内部形状が円形状であることが好ましい。但し、強い旋回流を維持することができるのであれば、楕円形状や多角形状、その他の形状であってもよいものとする。
【0048】
なお、流出部5は、前方側Fから視た正面視又は後方側Bから視た背面視、すなわち、上下方向Z及び過流室20の中心軸2Cに対して垂直となる前方側Fから視た正面視又は後方側Bから視た背面視にて、その中心軸5Cが過流室20の中心軸2Cに対して鈍角である165度の角度で交差するように配置されている(図7及び図8参照)。但し、165度の角度で交差している点についても限定するものではない。また、流出孔50は、その開口面積が流入孔30ならびに流入孔40の開口面積よりも小さくなるように設定されている。本過流式放流装置1においては、これら流入孔30,40の開口面積の91%よりも小さくなるように設定されている。
【0049】
次に、図12を用いて、水位Hが低い状態と高い状態の流動態様を説明する。また、図13を用いて、水位Hに応じて放流量が変化する放流特性について説明する。ここでは、許容水位をHmaxとし、許容放流量をQmaxとし、水位Hが徐々に高くなっていく状況を想定して説明する。
【0050】
図12(a)に示すように、水位Hが低い状態においては、第一流入部3における水位Hに応じた圧力(水圧)が低く、第二流入部4に水位Hが到達していないあるいは到達して僅かな圧力(水圧)がかかる状況であるため、過流室20に流れ込む水Wの勢いが弱くなる。すると、過流室20の円錐周板21に沿って螺旋状に旋回しつつ流出部5に向かう旋回流も弱くなる。そのため、かかる旋回流の中心付近に空気柱Sが発生することはない。したがって、流出部5を構成する流出案内筒55(円管51)の有効面積は、円管51の開口面積に等しくなる。
【0051】
他方で、図12(b)に示すように、水位Hが高い状態においては、流入部3における水位Hに応じた圧力(水圧)が高く、第二流入部4にも水位Hに応じた圧力(水圧)がかかる状況であるため、過流室20に流れ込む水Wの勢いが強くなる。すると、過流室20の円錐周板21に沿って螺旋状に旋回しつつ流出部5に向かう旋回流も強くなる。そのため、かかる旋回流の中心付近に空気柱Sが発生することとなる。したがって、流出部5を構成する流出案内筒55(円管51)の有効面積は、円管51の開口面積から空気柱Sの断面積を除いた値となる(図11参照)。
【0052】
これらに基づいて放流特性を説明すると、図13に示すように、点P0から点P1においては、水位Hが低い状態であるため、過流室20にて弱い旋回流が形成される。そのため、旋回流の中心付近に空気柱Sが発生することはない。したがって、流出案内筒55(円管51)の有効面積は、円管51の開口面積に等しくなる。このような状態における放流特性は、大口径のオリフィスを用いた場合と同様となる(破線Lo1参照)。
【0053】
また、図13に示すように、点P1から点P2においては、先程よりも水位Hが上昇しているので、過流室20にてやや強い旋回流が形成される。そのため、旋回流の中心付近に空気柱Sが発生したり消滅したりすることとなる。したがって、空気柱Sの発生と消滅により、水Wの流れが不安定となるので、流出部5から間欠的に水Wが流出することとなる。このような状態における放流特性は、水位Hの上昇に応じて放流量Qが減少したり少なくとも停滞したりする。
【0054】
さらに、図13に示すように、点P2から点P3においては、先程よりも水位Hが上昇しているので、過流室20にて強い旋回流が形成される。そのため、旋回流の中心付近に発生した空気柱Sを維持し、かつ安定的に成長させることができる。このとき、空気柱Sは、流出案内筒55(円管51)から過流室20へ延びることとなる。したがって、流出案内筒55(円管51)の有効面積は、円管51の開口面積から空気柱Sの断面積を除いた値となる。このような状態における放流特性は、小口径のオリフィスを用いた場合と同様となる(破線Lo2参照)。
【0055】
なお、キックバック開始点である点P1及びキックバック終了点である点P2における水位Hは、過流室20に第一流入部3のみが設けられた場合に比べ、低いことが確認されている。これは、第一流入部3及び第二流入部4から水位Hに応じた圧力(水圧)で水Wが流れ込むとともに、過流室20の中心軸2Cを挟んで下方側Dに流れ込んだ水Wと上方側Uに流れ込んだ水Wとが衝突することなく、円錐周板21に沿って所定方向に旋回することに起因する。
【0056】
次に、第一流入部3の流入孔30と第二流入部4の流入孔40の形状に関する留意点について説明する。
【0057】
本過流式放流装置1においては、過流室20の中心軸2Cを中心として流入孔30と流入孔40が対称形状とされている。そのため、流入孔30の開口幅Wa1と流入孔40の開口幅Wa2ならびに流入孔30の開口幅Wb1と流入孔40の開口幅Wb2は互いに等しくなっている。但し、流入孔30と流入孔40が対称形状であることに限定するものではない。例えば、流入孔30と流入孔40が相似形状であり、いずれかの開口面積が小さくなるように設定されていてもよい。
【0058】
加えて、本過流式放流装置1においては、前述したように、開口幅Wb1/内径Wc=0.33を満たしている。この点、過流室20の中心軸2Cに対して垂直方向Dbの開口幅Wb1を大きくした場合の実験結果より、少なくとも開口幅Wb1/内径Wc<0.50を満たすことが求められる。同様に、本過流式放流装置1においては、前述したように、開口幅Wb2/内径Wc=0.33を満たしている。この点、過流室20の中心軸2Cに対して垂直方向Dbの開口幅Wb2を大きくした場合の実験結果より、少なくとも開口幅Wb2/内径Wc<0.50を満たすことが求められる。このようにするのは、0.50よりも大きな値になると、水位Hと空気柱Sの発生及び成長の関係性が不安定になるからである。
【0059】
以上のように、本実施形態に係る過流式放流装置1は、円錐台形状の過流室20が形成された本体部2と、過流室20の円錐周板21に連設されて過流室20に水Wを流入させる第一流入部3及び第二流入部4と、過流室20の小径端縁23に連設されて過流室20から水Wを流出させる流出部5とを有し、過流室20が倒位姿勢となるように設置されている。そして、第一流入部3は、上下方向Z及び過流室20の中心軸2Cに対して垂直となる前方側Fから視た正面視にて、中心軸2Cよりも下方側Dに配置された流入孔30を有し、第二流入部4は、上下方向Z及び過流室20の中心軸2Cに対して垂直となる後方側Bから視た背面視にて、中心軸2Cよりも上方側Uに配置された流入孔40を有している。
【0060】
このような過流式放流装置1によれば、所望の放流特性を実現することができる。
詳述すると、本願発明に係る過流式放流装置1は、第一流入部3が過流室20の前方側Fの周面における過流室20の中心軸2Cよりも下方側Dに配置され、第二流入部4が過流室20の後方側Bの周面における過流室20の中心軸2Cよりも上方側Uに配置されている。そのため、過流室20には、各流入部3,4から水位Hに応じた圧力(水圧)で水Wが流れ込むとともに、過流室20の中心軸2Cを挟んで下方側Dに流れ込んだ水Wと上方側Uに流れ込んだ水Wとが衝突することなく、円錐周板21に沿って所定方向に旋回する。このように、水Wの旋回方向に向かって各流入孔30,40から水Wが流れ込むので、一つの流入孔30が設けられた場合に比べ、低い水位Hでも強く安定した旋回流を形成することが可能となる。したがって、本願発明に係る過流式放流装置1は、水Wが水位Hに応じた圧力(水圧)で過流室20に流れ込み、その勢いに応じた旋回流を形成して空気柱Sを生じさせるので、所定の水位Hを超えると、水位Hと空気柱Sの発生及び成長の関係性が安定的となる。ひいては所望の放流特性を実現することができる。
【0061】
また、本実施形態に係る過流式放流装置1において、両方の流入孔30,40は、過流室20の中心軸2Cに対して平行方向Daの開口幅Wa1,Wa2が垂直方向Dbの開口幅Wb1,Wb2以上である。
【0062】
このような過流式放流装置1によれば、流入孔30,40を通過する水Wは、過流室20の中心軸2Cに対して平行方向Daに広がり、円錐周板21に沿うようにして流れる。こうして、流入孔30,40から流入した水Wが円滑に流れ、螺旋状に旋回しつつ流出部5に向かうこととなる。したがって、水位Hと空気柱Sの発生及び成長の関係性がより安定的となる。ひいては所望の放流特性を実現することができる。
【0063】
また、本実施形態に係る過流式放流装置1において、両方の流入孔30,40は、正面視又は背面視(前方側Fから視た正面視又は後方側Bから視た背面視)にて、過流室20の円錐周板21と大径端板22とに沿って形成され、かつ過流室20の大径側から小径側に向かうにつれて徐々に垂直方向Dbの開口幅Wb1,Wb2が狭くなっている。
【0064】
このような過流式放流装置1によれば、過流室20の形状(円錐台形状)に合わせて流入孔30,40の垂直方向Dbの開口幅Wb1,Wb2が狭くなっているため、かかる流入孔30,40における小径側からの水Wの流入量を抑えることができ、小径側から流入した水Wが大径側から流入して流出部5に向かう水Wの流れを乱したり停滞させたりすることを抑制できる。こうして、流入孔30,40から流入した水Wが円滑に流れ、螺旋状に旋回しつつ流出部5に向かうこととなる。したがって、水位Hと空気柱Sの発生及び成長の関係性がより安定的となる。ひいては所望の放流特性を実現することができる。
【0065】
また、本実施形態に係る過流式放流装置1において、両方の流入孔30,40は、過流室20の大径側から小径側に向かうにつれて内径が小さくなる過流室20の縮径率に応じて徐々に垂直方向Dbの開口幅Wb1,Wb2が狭くなっている。
【0066】
このような過流式放流装置1によれば、過流室20の形状(円錐台形状)の縮径率に応じて流入孔30,40の垂直方向Dbの開口幅Wb1,Wb2が狭くなっているため、かかる流入孔30,40における小径側からの水Wの流入量を適宜に抑えることができ、小径側から流入した水Wが大径側から流入して流出部5に向かう水Wの流れを乱したり停滞させたりすることを確実に抑制できる。したがって、水位Hと空気柱Sの発生及び成長の関係性がより安定的となる。ひいては所望の放流特性を実現することができる。
【0067】
また、本実施形態に係る過流式放流装置1において、第一流入部3及び第二流入部4は、過流室20に流入する水Wを案内するための流入案内筒35,45を有している。
このような過流式放流装置1によれば、水Wの流れを安定させた上で、かかる水Wを過流室20に流入させることができる。そのため、過流室20に流入する前の乱れ等が過流室20内に形成された旋回流に影響を及ぼすことを抑制できる。したがって、水位Hと空気柱Sの発生及び成長の関係性がより安定的となる。ひいては所望の放流特性を実現することができる。
【0068】
また、本実施形態に係る過流式放流装置1において、流入案内筒35,45は、上下方向Z及び中心軸2Cに対して垂直となる方向(前方側Fに向かう方向及び後方側Bに向かう方向)に沿って延設されている。
このような過流式放流装置1によれば、円錐台形状である過流室20の接線方向(前方側Fに向かう方向及び後方側Bに向かう方向)に沿って流入案内筒35,45が配置されるため、かかる接線方向から過流室20内に水Wを流入させることができる。そのため、過流室20に流入した水Wが円錐周板21に沿って円滑に旋回を始めることとなる。したがって、水位Hと空気柱Sの発生及び成長の関係性がより安定的となる。ひいては所望の放流特性を実現することができる。
【0069】
また、本実施形態に係る過流式放流装置1において、流出部5は、過流室20から流出した水Wを案内するための流出案内筒55を有している。
このような過流式放流装置1によれば、過流室20から流出した水Wが流れる流出案内筒55の内側においても旋回流を維持させることができる。そのため、流出案内筒55から過流室20へ延びる空気柱Sが途切れたりふらついたりすることを抑制できる。したがって、水位Hと空気柱Sの発生及び成長の関係性がより安定的となる。ひいては所望の放流特性を実現することができる。
【0070】
また、本実施形態に係る過流式放流装置1において、流出案内筒55は、中心軸2Cに対して少なくとも鈍角である165度に交差する方向(左右方向Y)に沿って延設されている。
このような過流式放流装置1によれば、過流室20にて形成された旋回流の勢いを保ちつつ水Wを流出させることができる。そのため、流出案内筒55から過流室20へ延びる空気柱Sが途切れたりふらついたりすることを確実に抑制できる。したがって、水位Hと空気柱Sの発生及び成長の関係性がより安定的となる。ひいては所望の放流特性を実現することができる。
【0071】
この発明の構成と前述した実施形態との対応において、
過流式放流装置は過流式放流装置1に対応し、
本体部は本体部2に対応し、
一方の流入部は第一流入部3に対応し、
他方の流入部は第二流入部4に対応し、
流出部は流出部5に対応し、
過流室は過流室20に対応し、
円錐周部は円錐周板21に対応し、
大径端部は大径端板22に対応し、
小径端部は小径端縁23に対応し、
流入孔は流入孔30に対応し、
流入案内筒は流入案内筒35に対応し、
流入孔は流入孔40に対応し、
流入案内筒は流入案内筒45に対応し、
流出孔は流出孔50に対応し、
流出案内筒は流出案内筒55に対応し、
過流室の中心軸は中心軸2Cに対応し、
平行方向は平行方向Daに対応し、
垂直方向は垂直方向Dbに対応し、
平行方向の開口幅は開口幅Wa1,Wa2に対応し、
垂直方向の開口幅は開口幅Wb1,Wb2に対応し、
流体は水Wに対応し、
上下方向は上下方向Zに対応するも、
この発明は、前述した実施形態の構成に限定されるものではなく、多くの実施形態を得ることができる。
【0072】
例えば、本実施形態に係る過流式放流装置1は、予め流入孔30における過流室20の中心軸2Cに対して平行方向Daの開口幅Wa1を大きく形成しておくことにより、かかる流入孔30の一部を閉塞することによって開口面積を調整可能としてもよい。
【0073】
つまり、図14に示すように、流入案内筒35の内側に閉塞部材36を嵌め合わせることで、開口面積を調整可能としてもよい。この場合、閉塞部材36を流入孔30における小径側に嵌め合わせることで、小径側からの水Wの流入を防ぎ、大径側からの水Wの流入を図ることができる。あるいは、流入孔30における大径側に嵌め合わせることで、大径側からの水Wの流入を防ぎ、小径側からの水Wの流入を図ることができる。
【0074】
このような構成とすれば、閉塞部材36を嵌め合わせることで、流入孔30の開口面積を調整できるだけでなく、流入孔30の位置を移動させることが可能となる。例えば、流入孔30の開口面積を小さくできるとともに、流入孔30の位置を小径側へ移動させることができ、過流室20の中心軸2Cに沿う全長が短い、あたかも小型の過流式放流装置1を実現することができる。反対に、閉塞部材36を取り外すことで、流入孔30の開口面積を大きくできるとともに、流入孔30の位置を大径側まで広げることができ、過流室20の中心軸2Cに沿う全長が長い、あたかも大型の過流式放流装置1を実現することができる。
【0075】
なお、閉塞部材36は、その内周面36sが円弧状に湾曲しており、かかる内周面36sが円錐周板21の内周面に段差なく連続することが好ましい。このように、流入案内筒35の内側に閉塞部材36を嵌め合わせ、これを流入案内筒35に固定すれば、流入孔30を閉塞した部分においても過流室20の内周面を形成することができる。
【0076】
これは、流入案内筒45の内側に閉塞部材(図示せず)を嵌め合わせることについて同様である。すなわち、閉塞部材を嵌め合わせることで、流入孔40の開口面積を小さくできるとともに、流入孔40の位置を小径側へ移動させることができ、過流室20の中心軸2Cに沿う全長が短い、あたかも小型の過流式放流装置1を実現することができる。反対に、閉塞部材を取り外すことで、流入孔40の開口面積を大きくできるとともに、流入孔40の位置を大径側まで広げることができ、過流室20の中心軸2Cに沿う全長が長い、あたかも大型の過流式放流装置1を実現することができる。もちろん、閉塞部材の内周面が円錐周板21の内周面に段差なく連続することが好ましい。
【0077】
また、前述した過流式放流装置1においては、流入案内筒35の内側に閉塞部材36を嵌め合わせ、これを流入案内筒35に固定する構成としていたが、以下の構成とすることも可能である。
【0078】
つまり、図15に示すように、他の実施形態に係る過流式放流装置1においては、円錐周板21の外周面から前後方向Xおよび上下方向Zに向かって突出する補強リブ21rを有している。そして、前方側Fに向かって突出する補強リブ21rと下方側Dに向かって突出する補強リブ21rとの間に流入孔30が形成され、後方側Bに向かって突出する補強リブ21rと上方側Uに向かって突出する補強リブ21rとの間に流入孔40が形成されている。その上で、これら補強リブ21rに対して閉塞部材37等を脱着自在としてもよい。
【0079】
加えて、かかる過流式放流装置1は、複数の流入案内筒35を有し、これら流入案内筒35のそれぞれが補強リブ21rに対して脱着自在としてもよい。それぞれの流入案内筒35は、互いに隣接して装着されることにより、全体として一の流入案内筒35として機能する。また、このような構成であれば、それぞれの流入案内筒35における縦板(大径側案内板32及び小径側案内板33)が整流板として機能することとなる。
【0080】
以上のように、流入部3,4は、流入孔30,40の一部を閉塞するための脱着自在の閉塞部材36,37等を有することで、放流特性に及ぼす影響が大きい流入部3の開口面積を調整したり位置を移動させたりすることができる。そのため、過流室20に流入する水Wの流速や流量の最適化を図ることができる。したがって、水位Hと空気柱Sの発生及び成長の関係性がより安定的となる。ひいては所望の放流特性を実現することが可能となる。
【符号の説明】
【0081】
1…過流式放流装置
2…本体部
3…第一流入部
4…第二流入部
5…流出部
20…過流室
21…円錐周板
22…大径端板
23…小径端縁
30…流入孔
35…流入案内筒
36…閉塞部材
37…閉塞部材
40…流入孔
45…流入案内筒
50…流出孔
55…流出案内筒
2C…過流室の中心軸
Da…平行方向
Db…垂直方向
Wa1,Wa2…平行方向の開口幅
Wb1,Wb2…垂直方向の開口幅
W…水
Z…上下方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15