(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064623
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】乗用作業機の保護フレーム機構
(51)【国際特許分類】
B60R 21/13 20060101AFI20240507BHJP
A01M 7/00 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
B60R21/13 A
A01M7/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173358
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】509264132
【氏名又は名称】株式会社やまびこ
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯田 智也
(72)【発明者】
【氏名】井手 健一
(72)【発明者】
【氏名】三樹 延行
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121CB04
2B121CB24
2B121CB33
2B121CB42
2B121CB45
2B121CB47
2B121CB61
2B121CB69
2B121CC31
2B121EA26
2B121FA15
(57)【要約】
【課題】保護フレームが折り畳み姿勢であることをオペレータに強く意識付けすることで、高速走行を行う前に、確実に保護フレームを起立姿勢にすることを促すことができる。
【解決手段】乗用作業機の保護フレーム機構は、乗用作業機の操縦席周りに装備され、操縦席に着座したオペレータを保護するものであって、起立姿勢と折り畳み姿勢が切り替え可能な保護フレームと、保護フレームの起立姿勢をロックするロック部材とロック部材をロック解除状態にするロック解除レバーを備えるロック機構と、保護フレームの折り畳み姿勢では、乗用作業機における変速レバーの高速位置への切り替えを制限する変速制限機構を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗用作業機の操縦席周りに装備され、操縦席に着座したオペレータを保護する保護フレーム機構であって、
起立姿勢と折り畳み姿勢が切り替え可能な保護フレームと、
前記保護フレームの起立姿勢をロックするロック部材と前記ロック部材をロック解除状態にするロック解除レバーを備えるロック機構と、
前記保護フレームの折り畳み姿勢では、前記乗用作業機における変速レバーの高速位置への切り替えを制限する変速制限機構とを備えることを特徴とする乗用作業機の保護フレーム機構。
【請求項2】
前記変速制限機構は、前記保護フレームの起立姿勢で、前記変速レバーの高速位置への切り替えを許容することを特徴とする請求項1に記載された乗用作業機の保護フレーム機構。
【請求項3】
前記変速制限機構は、前記変速レバーの高速位置では、前記保護フレームの折り畳み姿勢への切り替えを制限することを特徴とする請求項1に記載された乗用作業機の保護フレーム機構。
【請求項4】
前記ロック解除レバーは、前記保護フレームの左右フレームに架け渡されるように配備され、前記左右フレームにそれぞれ設けられる前記ロック部材に連結されていることを特徴とする請求項1に記載された乗用作業機の保護フレーム機構。
【請求項5】
前記ロック解除レバーは、前記保護フレームを構成する下部フレームと上部フレームの連結部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載された乗用作業機の保護フレーム機構。
【請求項6】
前記ロック解除レバーは、前記保護フレームに対して、前記操縦席の逆側に配備されていることを特徴とする請求項1に記載された乗用作業機の保護フレーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用作業機の保護フレーム機構に関する。
【背景技術】
【0002】
スピードスプレーヤ等の乗用作業機は、乗用作業機を操縦するオペレータが着座する操縦席を有している。また、キャビンを持たない乗用作業機は、操縦席の周囲に、横転時にオペレータを保護する保護フレームを備えている。
【0003】
従来、前述した保護フレームは、起立姿勢と折り畳み姿勢を切り替え可能にして、収納時におけるスペース確保のため、或いは、高さ制限のある作業場で作業を行う場合などに、保護フレームを折り畳み姿勢にできるようにしたものが知られている。
【0004】
また、保護フレームが折り畳み姿勢の状態で作業が行われた場合の安全性を確保するために、エンジンの制御装置において、保護フレームに設けたセンサが折り畳み姿勢を検出している場合に、所定角度以上の操舵角が検出されると、エンジンの回転数を所定回転数以下に制御することなども行われている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した従来技術によると、所定角以上の操舵角が検出されないとエンジンの回転数制限が行われないので、保護フレームを折り畳み姿勢にして作業を行う場合、操舵角が小さい直線走行においては高速走行が可能になる。このため、凹凸の多い作業場等において、保護フレームを折り畳み姿勢にして高速走行が行われることがあり、十分な安全性が確保できない問題があった。
【0007】
また、従来技術のように、保護フレームの折り畳み状態を検出して、走行速度の規制を行う場合には、保護フレームを折り畳んだ状態での高速走行を避けることは可能になるが、保護フレームが折り畳まれている状態をオペレータに強く意識させることができない。このため、保護フレームの折り折り畳み姿勢でオペレータに安全走行の意識付けを行うことができない問題があった。
【0008】
スピードスプレーヤにおいては、高さ制限のある散布作業は、保護フレームを折り畳み姿勢にして低速走行で行い、散布材補充のための移動走行時には、保護フレームを起立姿勢にしてから、高速で移動走行を行うことが求められている。この際、保護フレームを折り畳み姿勢にしていることをオペレータに強く意識付けして、高速での移動走行を行う前に、確実に保護フレームを起立姿勢にすることを促す安全な機構が求められている。
【0009】
本発明は、このような問題に対処するために提案されたものである。すなわち、保護フレームが折り畳み姿勢であることをオペレータに強く意識付けすることで、高速走行を行う前に、確実に保護フレームを起立姿勢にすることを促すことができる、乗用作業機の保護フレーム機構を提供すること、などを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような課題を解決するために、本発明は、以下の構成を具備するものである。
乗用作業機の操縦席周りに装備され、操縦席に着座したオペレータを保護する保護フレーム機構であって、起立姿勢と折り畳み姿勢が切り替え可能な保護フレームと、前記保護フレームの起立姿勢をロックするロック部材と前記ロック部材をロック解除状態にするロック解除レバーを備えるロック機構と、前記保護フレームの折り畳み姿勢では、前記乗用作業機における変速レバーの高速位置への切り替えを制限する変速制限機構とを備えることを特徴とする乗用作業機の保護フレーム機構。
【発明の効果】
【0011】
このような特徴を有する本発明は、保護フレームが折り畳み姿勢であることをオペレータに強く意識付けすることで、高速走行を行う前に、確実に保護フレームを起立姿勢にすることを促すことができるので、安全性の高い保護フレームの運用が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】保護フレーム機構(保護フレーム起立姿勢)を備えた乗用作業機(スピードスプレーヤ)を示した説明図。
【
図2】保護フレーム機構(保護フレーム折り畳み姿勢)を備えた乗用作業機(スピードスプレーヤ)を示した説明図。
【
図3】保護フレーム機構の全体構成を示した説明図。
【
図4】折り畳み機構、ロック機構、変速制限機構を説明する説明図。
【
図5】折り畳み機構、ロック機構、変速制限機構を説明する説明図。
【
図6】折り畳み機構、ロック機構、変速制限機構を説明する説明図。
【
図7】折り畳み機構、ロック機構、変速制限機構を説明する説明図。
【
図8】折り畳み機構、ロック機構、変速制限機構を説明する説明図。
【
図9】折り畳み機構、ロック機構、変速制限機構を説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明で、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0014】
図1及び
図2は、保護フレーム機構1を備えた乗用作業機100を示している。
図1が、保護フレーム機構1における保護フレーム10を起立させた状態(起立姿勢)を示し、
図2が、保護フレーム機構1における保護フレーム10を折り畳んだ状態(折り畳み姿勢)を示している。
【0015】
なお、ここでは、乗用作業機100としてスピードスプレーヤを例にして説明するが、本発明の実施形態は、特にこれに限定されるものでは無い。但し、スピードスプレーヤは、保護フレーム10を折り畳み姿勢にして高さ制限のある作業場での散布作業を行い、高さ制限のない状況では、保護フレーム10を起立姿勢にして散布材の補充等のための移動走行を行うものであり、頻繁に保護フレーム10を折り畳み姿勢と起立姿勢に切り替えることから、本発明の実施形態が特に有用に適用される。
【0016】
乗用作業機(スピードスプレーヤ)100は、前輪101Aと後輪101Bを有する走行機体101を有し、走行機体101に、散布材を収容するタンク102と散布装置103が搭載されている。そして、走行機体101の前方位置(タンク102の前側)に、操縦席110と操縦ハンドル111や各種の操作レバー112を備える操縦空間(コックピット)が設けられている。操縦空間は、開放型であり、操縦席110に着座するオペレータMは、乗用作業機100の本体高さより高い位置に頭を露出させ状態で乗用作業機100の操縦を行う。
【0017】
このような乗用作業機100において、前述した操縦空間における操縦席110の周りに、操縦席110に着座したオペレータMを保護する保護フレーム機構1が装備されている。保護フレーム機構1は、保護フレーム10を備える。保護フレーム10は、
図1に示す起立姿勢では、上端部がオペレータMの頭部より高い位置になって、乗用作業機100の横転時等にオペレータMを保護し、
図2に示す折り畳み姿勢では、上端側が操縦席110の後方(タンク102の上)に折り畳まれた状態になり、高さ制限のある状況下での走行及び作業を可能にしている。
【0018】
図1~
図3に示すように、保護フレーム機構1は、前述した保護フレーム10が、下部フレーム11と上部フレーム12によって構成されている。下部フレーム11は、操縦席110の左右外側に一対立設され、下端が走行機体101の本体フレーム101Fに固定されている。上部フレーム12は、逆U字状をなし、一対の下端に設けられる連結部12Aが下部フレーム11の上端に固定された連結枠11Aにヒンジ部13にて回転自在に連結されている。
【0019】
なお、
図3(
図4~
図6も同様に)では、連結枠11Aの内部を示すために、連結枠11Aの片側の側枠を図示省略している。連結枠11Aは、連結部12Aを挟む一対の側枠が設けられ、その側枠を貫通するようにヒンジ部13が設けられている。
【0020】
保護フレーム10には、下部フレーム11と上部フレーム12が直線状になる起立姿勢と下部フレーム11に対して上部フレーム12が屈折状態になる折り畳み姿勢を切り替える折り畳み機構20が設けられている。折り畳み機構20は、前述した連結枠11Aに対して上部フレーム12の下端を回転自在に連結するヒンジ部13に加えて、上部フレーム12に一端側の連結端21Aが連結され、連結枠11Aに他端側の連結端21Bが連結される動作アシスト部材21を備える。
【0021】
動作アシスト部材21は、例えば、ガススプリングによって構成することができる。動作アシスト部材21を用いると、保護フレーム10の起立姿勢を折り畳み姿勢にする動作及び折り畳み姿勢を起立姿勢にする動作をアシストすることができる。これによると、保護フレーム10を折り畳み姿勢から起立姿勢にする際には、起こし始めの動作負荷を軽減し、途中まで起こすとその後はアシスト力で徐々に起立姿勢になる。また、保護フレーム10を起立姿勢から折り畳み姿勢にする際には、倒し始めの動作負荷を軽減し、その後は上部フレーム12の自重で徐々に倒れていく。
【0022】
図3~
図6に示すように、連結枠11Aには、ロック機構22が設けられている。ロック機構22は、一対の連結枠11Aの内部に、保護フレーム10の起立姿勢をロックするロック部材22Aがそれぞれ配備されており、一対の連結枠11Aの外側には、一対のロック部材22Aを一操作でロック解除状態にするロック解除レバー22Bが設けられている。
【0023】
ロック部材22Aは、連結枠11A内において、上部フレーム12の下端に設けられる連結部12Aのロック面(テーパ面)12Bに楔状に挿入されることで、ヒンジ部13に対しての上部フレーム12の折り畳み方向への回転を制限する。ロック部材22Aがロック面12Bに挿入されると、保護フレーム10は、起立姿勢がロックされる。ロック部材22Aは、連結枠11A内で、連結軸22Cの一端側に取り付けられており、連結軸22Cと同軸に配置されるバネ22Dによって、ロック面12Bに向けて付勢されている。
【0024】
連結軸22Cの他端側は、連結枠11Aの外側に引き出されて、ロック解除レバー22Bに連結されている。ロック解除レバー22Bは、保護フレーム10の左右フレームに設けられる一対の連結枠11Aに架け渡されるように配備され、左右フレームにそれぞれ設けられる一対のロック部材22Aに連結されている。また、ロック解除レバー22Bは、保護フレーム10を構成する下部フレーム11と上部フレーム12の連結部(連結枠11A,連結部12A)に設けられ、保護フレーム10に対して、操縦席110の逆側に配備されている。
【0025】
このようなロック解除レバー22Bは、
図4の一点鎖線で示すように、バネ22Dに抵抗しながら連結軸22Cを他端側に向けて引くことで、一対のロック部材22Aをロック面12Bから同時に引き離し、保護フレーム10の起立姿勢をロック解除状態にする。
【0026】
図9は、ロック解除レバー22Bの変形例を示している。この例では、ロック解除レバー22Bは、連結枠11Aに固定されたブラケットに回転軸22を介して軸支され、バネ22Dによって、常時、ロック方向(矢印bの方向)に付勢されている。オペレータは着座側(
図9における左側)からロック解除レバー22Bを矢印a方向に引くことで、ロック部材22Aが解除位置に移動する。ロック解除レバー22Bを解放すると、バネ22Dによってロック解除レバーが矢印b方向に付勢され、ロック部材22Aがロック位置に移動する。
【0027】
このロック機構22によると、下部フレーム11に対して上部フレーム12を起こして起立姿勢にすると、前述したバネ22Dのバネ力によってロック部材22Aが自動でロック面12B下に入り込み、保護フレーム10の起立姿勢をロック状態にする。これに対して、保護フレーム10を起立姿勢から折り畳み姿勢に切り替えるには、先ず、オペレータがロック解除レバー22Bの操作を行う必要があり、ロック解除レバー22Bを操作することで、ロック部材22Aがロック面12Bから引き離されてロック解除状態になり、その状態を維持しながら、下部フレーム11に対して上部フレーム12を折り畳み姿勢にする操作が行われる。
【0028】
この際、ロック解除レバー22Bは、保護フレーム10の左右フレームに架け渡されるように配備され、左右フレームにそれぞれ設けられるロック部材22Aに連結されているので、一操作でロック又はロック解除の操作が可能になり、また、左右のロック部材22Aを一体的に移動させるので、安定的且つ円滑にロック又はロック解除の操作を行うことができる。
【0029】
そして、ロック解除レバー22Bは、保護フレーム10を構成する下部フレーム11と上部フレーム12の連結部に設けられているので、オペレータは、着座姿勢で、一方の手でロック解除レバー22Bを解除操作し、他方の手で保護フレーム10を折り畳み姿勢にする操作を行うことができる。また、ロック解除レバー22Bが、保護フレーム10に対して、操縦席110の逆側に配備されているので、操縦席110に対しての寄りかかり等で意図せずロック解除レバー22Bが解除操作されてしまうことを抑止することができる。
【0030】
また、保護フレーム機構1は、
図3~
図8に示すように、乗用作業機100の変速レバー112Aの切り替え動作を制限する変速制限機構30を備えている。変速制限機構30は、前述した操作レバー112のうちの変速レバー112Aの動きを前述した折り畳み機構20に関与させることで、保護フレーム10の折り畳み姿勢において、変速レバー112Aの高速位置への切り替えを制限する。
【0031】
変速制限機構30の具体的な一例を説明する。
図3~
図6に示すように、前述した連結枠11Aには、上下にスライド自在に配備される制限部材31が設けられている。この制限部材31は、
図4及び
図5に示す下端位置にあるときに、
図5に示すように保護フレーム10が折り畳み姿勢になると、上部フレーム12の下端の連結部12Aに設けられる干渉カム12Cが制限部材31に干渉して、制限部材31の上方へのスライドができなくなる。これに対して、
図6に示すように、保護フレーム10が起立姿勢になると、上部フレーム12の下端の連結部12Aに設けられる干渉カム12Cは、制限部材31には干渉しなくなり、制限部材31は上下にスライド自在に動けるようになる。
【0032】
この制限部材31は、直動リンク32とシーソーリンク33を介して操作ワイヤ34に連結されており、操作ワイヤ34を下方に引くことで、シーソーリンク33が軸回りに回転して、直動リンク32を上方に押し上げ、制限部材31を上方にスライドさせる。また、直動リンク32は、戻しバネ35で下方に向けて付勢されており、操作ワイヤ34の引きが無い場合には、直動リンク32を介して制限部材31は、下方に向けてバネ付勢されている。
【0033】
そして、操作ワイヤ34は、
図7及び
図8に示すように、変速レバー112Aの切り替え操作に一部連動する連動部材36に連結されている。連動部材36は、
図7に示すように、変速レバー112Aの中立位置(N)から低速位置(L)に至る切り替え操作に関しては、何ら連動されず、中立位置に止まっている。このため、変速レバー112Aが中立位置(N)から低速位置(L)に切り替えられる際には、操作ワイヤ34が引かれることは無い。
【0034】
これに対して、変速レバー112Aの中立位置(N)から高速位置(H)に至る切り替え操作に関しては、
図8に示すように、連動部材36が連動する。すなわち、変速レバー112Aを中立位置(N)から高速位置(H)に切り替えようとすると、連動部材36を介して操作ワイヤ36に引っ張りが加えられる。
【0035】
このような変速制限機構30によると、変速レバー112Aを中立位置(N)と低速位置(L)の間で切り替える際には、何ら変速制限機構30は機能せず、自由な変速切り替えが可能になる。
【0036】
これに対して、変速レバー112Aを中立位置(N)から高速位置(H)に切り替える場合、制限部材31が干渉カム12Cに干渉していない状態であれば、連動部材36を変速レバー112Aに連動させて操作ワイヤ34を引き、シーソーリンク33と直動リンク32を介して制限部材31を上方にスライドさせて、切り替え操作を行うことができるが、制限部材31が干渉カム12Cに干渉していると、制限部材31をスライドさせることができないため、操作ワイヤ34の引っ張りが連動部材36を介して変速レバー112Aの動きを制限することになり、変速レバー112Aは切り替え操作を行うことができなくなる。
【0037】
そして、制限部材31が干渉カム12Cに干渉していない状態、すなわち、
図6に示すように、保護フレーム10が起立姿勢になっている状態では、変速レバー112Aは、中立位置(N)から高速位置(H)への切り替えを含めて、自由な切り替えが可能になる。これに対して、制限部材31が干渉カム12Cに干渉している状態、すなわち、
図5に示すように、保護フレーム10が折り畳み姿勢になっている状態になると、変速レバー112Aは中立位置(N)から高速位置(H)に切り替えることができなくなる。
【0038】
また、
図6に示すように、保護フレーム10が起立姿勢になっている状態で、変速レバー112Aが高速位置(H)に切り替えられることで、制限部材31が上方にスライドすると、保護フレーム10の上部フレーム12を折り畳む動作で干渉カム12Cが制限部材31に干渉することになるので、変速レバー112Aが高速位置に切り替えられている状態では、保護フレーム10を折り畳み姿勢にすることができない。
【0039】
これによると、保護フレーム10を起立姿勢から折り畳み姿勢に切り替える際には、ロック解除レバー22Bをロック解除状態にするだけでなく、変速レバー112Aが高速位置(H)にある場合には、それを中立位置(N)又は低速位置(L)に切り替えてからでなければ、保護フレーム10を折り畳み姿勢にすることができない。つまり、保護フレーム10の姿勢に応じて変速制限の有無が決まることに加え、変速レバー112Aの位置に応じて保護フレーム10の姿勢の選択に制限が加えられる。このように、保護フレーム10の姿勢と変速レバー112Aの位置とが相互に監視的に働くことで、安全性が一層向上する。
【0040】
以上説明したように、本発明の実施形態に係る乗用作業機100の保護フレーム機構1は、起立姿勢と折り畳み姿勢が切り替え可能な保護フレーム10と、保護フレーム10の起立姿勢をロックするロック部材22Aとロック部材22Aをロック解除状態にするロック解除レバー22Bを備えるロック機構22と、保護フレーム10の折り畳み姿勢では、乗用作業機100における変速レバー112Aの高速位置への切り替えを制限する変速制限機構30とを備える。
【0041】
また、変速制限機構30は、これに加えて、保護フレーム10の起立姿勢で、変速レバー112Aの高速位置への切り替えを許容し、変速レバー112Aの高速位置では、保護フレーム10の折り畳み姿勢への切り替えを制限する。
【0042】
このような保護フレーム機構1を備える乗用作業機100によると、オペレータは、保護フレーム10を起立姿勢から折り畳み姿勢に切り替える際には、先ず、ロック解除レバー22Bを操作して、起立姿勢のロックを解除することが必要になる。また、乗用作業機100の変速レバー112Aが高速位置になっている場合には、これを中立位置又は低速位置に切り替えることが必要になる。これによると、保護フレーム10を折り畳み姿勢にする際に、もし変速レバー112Aが高速位置になっていれば、変速レバー112Aの位置を低速側に変更するように、オペレータに注意喚起することができるので、保護フレーム10を折り畳み姿勢にした状態での走行をより慎重且つ安全に行うことを促すことができる。
【0043】
また、このような保護フレーム機構1を備える乗用作業機100によると、高さ制限のある状況での作業を保護フレーム10の折り畳み姿勢で行い、引き続き、高さ制限のない状況で乗用作業機100を走行させる場合に、乗用作業機100を高速走行させようとしても、変速レバー112Aを高速位置に切り替えることができない。このため、保護フレーム10を起立姿勢に切り替えてから高速走行を行うことが、オペレータに徹底されることになり、保護フレーム機構1を活用した安全な作業走行の実現可能になる。
【0044】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0045】
1:保護フレーム機構,10:保護フレーム,
11:下部フレーム,11A:連結枠,
12:上部フレーム,12A:連結部,12B:ロック面,12C:干渉カム,
13:ヒンジ部,
20:折り畳み機構,
21:動作アシスト部材(ガスダンパ),21A,21B:連結端,
22:ロック機構,22A:ロック部材,22B:ロック解除レバー,
22C:連結軸,22D:バネ,22E:回転軸,
30:変速制限機構,31:制限部材,32:直動リンク,
33:シーソーリンク,34:操作ワイヤ,35:戻しバネ,36:連動部材,
100:乗用作業機(スピードスプレーヤ),
101:走行機体,101A:前輪,101B:後輪,
101F:本体フレーム,102:タンク,103:散布装置,
110:操縦席,111:操縦ハンドル,112:操作レバー,
112A:変速レバー,M:オペレータ