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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064627
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】仮設防護柵
(51)【国際特許分類】
   E01F 15/10 20060101AFI20240507BHJP
【FI】
E01F15/10
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173365
(22)【出願日】2022-10-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】508001431
【氏名又は名称】西日本高速道路メンテナンス九州株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】中石 隆博
(72)【発明者】
【氏名】谷内 和也
(72)【発明者】
【氏名】中里 晃基
【テーマコード(参考)】
2D101
【Fターム(参考)】
2D101CA07
2D101EA05
2D101FA02
2D101FA25
2D101FB15
2D101FB21
2D101GA05
2D101GA11
(57)【要約】
【課題】車両の突破を防止するとともに、設置および撤去を素早く簡単に行うことが可能な仮設防護柵の提供。
【解決手段】それぞれ質量1000kg以上の一対のアンカーブロック2と、一対のアンカーブロック2間に互いに間隔を設けて平行に張られる複数のロープ4と、一対のアンカーブロック2間に間隔を設けて配置される質量30kg以下の緩衝ブロック3であり、複数のロープ4がそれぞれ貫通する貫通孔3Aを有する緩衝ブロック3とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ質量1000kg以上の一対のアンカーブロックと、
前記一対のアンカーブロック間に互いに間隔を設けて平行に張られる複数のロープと、
前記一対のアンカーブロック間に間隔を設けて配置される質量30kg以下の緩衝ブロックであり、前記複数のロープがそれぞれ貫通する貫通孔を有する緩衝ブロックと
を有する仮設防護柵。
【請求項2】
前記ロープは、破断荷重150kN以上の高強度繊維ロープである請求項1記載の仮設防護柵。
【請求項3】
前記アンカーブロックは、コンクリートブロックの下面に滑り止め用の凸部が設けられたものである請求項1記載の仮設防護柵。
【請求項4】
前記緩衝ブロックは、発泡スチロールの表面がポリウレアによりコーティングされたものである請求項1から3のいずれか1項に記載の仮設防護柵。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速道路等に設置される仮設防護柵に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、改修工事や追加設置工事等の工事のため、一時的に高速道路等を交通規制する場合においては、ラバーコーンを用いて規制区間を確保している。しかしながら、ラバーコーンによる規制では、漫然運転や居眠り運転等により一般車が規制内へ進入する危険がある。そこで、車両が進入したときであっても突破されないような十分な強度を有する仮設防護柵が望まれている。
【0003】
例えば、特許文献1には、鋳鉄からなる水平方向に長く上面の幅が下面の幅より狭く下面の幅が350mm以下の所定の幅となったブロック状の下部ブロックと、この下部ブロックの上に接続されたコンクリート製の水平方向に長く上面の幅が下部ブロックの上面の幅以下となった断面台形状の上部ブロックとを備える仮設防護柵が開示されている。また、この仮設防護柵では、フォークリフトのフォークを差し込んで揚重するための一対のフォーク掛止凹部が形成されており、仮設防護柵の揚重および移動を極めて容易に行うことが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6804681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、仮設防護柵は車両が進入したときであっても突破されないような十分な強度を有することが望まれているが、一方で、仮設防護柵は一時的に設置するものであるため、設置および撤去が素早く簡単に行えることも望まれている。しかしながら、上記特許文献1のような仮設防護柵では、フォークリフトを用いて1つずつ揚重する必要があり、設置および撤去するだけで丸1日要することもある。
【0006】
そこで、本発明においては、車両の突破を防止するとともに、設置および撤去を素早く簡単に行うことが可能な仮設防護柵を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の仮設防護柵は、それぞれ質量1000kg以上、好ましくは質量1200kg以上、より好ましくは質量1500kg以上、さらに好ましくは質量1800kg以上の一対のアンカーブロックと、一対のアンカーブロック間に互いに間隔を設けて平行に張られる複数のロープと、一対のアンカーブロック間に間隔を設けて配置される質量30kg以下、好ましくは質量20kg以下、より好ましくは質量16kg以下の緩衝ブロックであり、複数のロープがそれぞれ貫通する貫通孔を有する緩衝ブロックとを有するものである。
【0008】
本発明の仮設防護柵によれば、それぞれ質量1000kg以上の一対のアンカーブロックのみをフォークリフトやクレーン等の荷役機械を用いて設置し、この一対のアンカーブロック間に間隔を設けて質量30kg以下の緩衝ブロックを人力により配置し、この緩衝ブロックの貫通孔にロープを通して一対のアンカーブロック間に張ることにより、設置を素早く簡単に行うことができる。一方、撤去の際もそれぞれ質量1000kg以上の一対のアンカーブロックのみをフォークリフトやクレーン等の荷役機械を用いて撤去し、質量30kg以下の緩衝ブロック等は人力により容易に撤去することができる。
【0009】
また、本発明の仮設防護柵では、車両が緩衝ブロックやロープに衝突した際に、緩衝ブロックがロープに沿って移動するとともに、一対のアンカーブロック間に互いに間隔を設けて平行に張られているロープが撓み、一対のアンカーブロックを引き摺ることにより衝撃を吸収する。
【0010】
ロープは、破断荷重150kN以上の高強度繊維ロープであることが望ましい。高強度繊維ロープは同径のワイヤーと比較して強度が高いため、ワイヤーよりも小径の高強度繊維ロープを使用することができ、持ち運びや収納が容易で扱いやすい。
【0011】
アンカーブロックは、コンクリートブロックの下面に滑り止め用の凸部が設けられたものであることが望ましい。これにより、車両が緩衝ブロックやロープに衝突してロープが引っ張られた場合等にアンカーブロックが滑りにくくなる。
【0012】
緩衝ブロックは、発泡スチロールの表面がポリウレアによりコーティングされたものであることが望ましい。これにより、軽量かつ防水性、耐薬品性、耐摩耗性、耐熱性、防食性に優れた緩衝ブロック
【発明の効果】
【0013】
(1)本発明の仮設防護柵によれば、車両が緩衝ブロックやロープに衝突した際に、緩衝ブロックがロープに沿って移動するとともに、一対のアンカーブロック間に互いに間隔を設けて平行に張られているロープが撓み、一対のアンカーブロックを引き摺ることにより衝撃を吸収するので、車両の突破を防止することが可能となる。また、設置および撤去の際は、それぞれ質量1000kg以上の一対のアンカーブロックのみをフォークリフトやクレーン等の荷役機械を用いて設置および撤去すれば良いため、設置および撤去を素早く簡単に行うことが可能となる。
【0014】
(2)ロープが、破断荷重150kN以上の高強度繊維ロープであることにより、持ち運びや収納が容易で扱いやすい。
【0015】
(3)アンカーブロックがコンクリートブロックの下面に滑り止め用の凸部が設けられたものであることにより、車両が緩衝ブロックやロープに衝突してロープが引っ張られた場合等にアンカーブロックが滑りにくくなり、車両の突破をより防止することができる。
【0016】
(4)発泡スチロールの表面がポリウレアによりコーティングされ、軽量かつ防水性、耐薬品性、耐摩耗性、耐熱性、防食性に優れた緩衝ブロックを使用することで、取り扱いが容易で作業性に優れた仮設防護柵を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態における仮設防護柵の正面図である。
図2図1のアンカーブロックの正面図である。
図3図1のアンカーブロックの側面図である。
図4図1のアンカーブロックの底面図である。
図5図1の緩衝ブロックの正面図である。
図6図1の緩衝ブロックの側面図である。
図7】衝突試験の様子を示す説明図である。
図8】衝突試験において車両停止状態における車両正面からみた写真を示す図である。
図9】衝突試験において車両衝突から車両停止までの様子を示す写真を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は本発明の実施の形態における仮設防護柵の正面図、図2図1のアンカーブロックの正面図、図3図1のアンカーブロックの側面図、図4図1のアンカーブロックの底面図、図5図1の緩衝ブロックの正面図、図6図1の緩衝ブロックの側面図である。
【0019】
図1に示すように、本発明の実施の形態における仮設防護柵1は、一対のアンカーブロック2と、一対のアンカーブロック間に所定の間隔を設けて配置される緩衝ブロック3と、一対のアンカーブロック2間に互いに所定の間隔を設けて平行に張られる複数のロープ4とを有する。なお、以下の説明においては、図1に示すロープ4の張り方向をX方向、高さ方向をY方向、奥行き方向をZ方向(図3参照。)とする。
【0020】
アンカーブロック2は、質量1900kgのコンクリート製ブロックである。アンカーブロック2のX方向の長さLは2500mm、Y方向の高さHは1000mm、Z方向の上面幅W1は150mm、下面幅W2は550mmである。なお、アンカーブロック2の各部寸法は適宜変更可能である。
【0021】
図2および図3に示すように、アンカーブロック2のX方向の両側面には、ロープ固定用インサート5が上下方向に所定間隔(本実施形態においては、110mm間隔。)で一列に複数並べて埋設されている。ロープ固定用インサート5にはアイボルト(図示せず。)を取り付け可能となっている。ロープ4は、ロープ固定用インサート5に取り付けられたアイボルトに固定される。
【0022】
アンカーブロック2の上面には、施工用インサート6が埋設されている。施工用インサート6にはアイボルト(図示せず。)を取り付け可能となっている。アンカーブロック2の設置および撤去の際には、この施工用インサート6に取り付けられたアイボルトを利用して荷役機械により吊り上げる。
【0023】
アンカーブロック2の下面には、滑り止め用の複数の凸部7Aが形成されたステンレス製のプレート7が設けられている。プレート7は、アンカーブロック2の下面全面を覆うように設けられている。凸部7Aは、プレート7を打ち抜き加工することにより、接地面に向かってクレータ状(円環状)に突出させたものである。
【0024】
アンカーブロック2の下面には、据付位置調整用切欠き2Aが設けられている。
【0025】
緩衝ブロック3は、発泡スチロール製のブロック基材の表面をポリウレアによりコーティングしたものである。ポリウレアは、イソシアネートとポリアミンの化学反応によって生成されるウレア結合を基本とした樹脂化合物であり、防水性、耐薬品性、耐摩耗性、耐熱性、防食性に優れ、発泡スチロール製のブロック基材を様々な変状要因から保護する。また、ポリウレアに顔料等を混ぜてブロック基材に吹き付けることにより、緩衝ブロック3を着色することも可能である。
【0026】
緩衝ブロック3は、質量12kgである。図5および図6に示すように、緩衝ブロック3のX方向の長さLは1000mm、Y方向の高さHは1000mm、Z方向の上面幅W1は200mm、下面幅W2は400mmである。なお、緩衝ブロック3の各部寸法についても適宜変更可能である。また、緩衝ブロック3は、橙色(赤色)および白色にそれぞれ着色したものを準備し、交互に設置することも可能である。
【0027】
緩衝ブロック3には、ロープ4が貫通する複数の貫通孔3Aを有する。貫通孔3Aは、上下方向に所定間隔(本実施形態においては、110mm間隔。)で一列に複数(本実施形態においては、5個。)並べて形成されている。各貫通孔3Aが形成されている高さは、アンカーブロック2に埋設されているロープ固定用インサート5の高さに対応する。
【0028】
ロープ4は、破断荷重150kN以上の高強度繊維ロープである。本実施形態においては、ロープ4として径φ12mm、長さ30m、破断荷重162kNの高強度繊維ロープであるダイニーマ(登録商標)スーパーマックス(登録商標)ロープを5本使用している。各ロープ4は、1本ずつ緩衝ブロック3の貫通孔3Aに通し、両端部をそれぞれアンカーブロック2に固定する。なお、各ロープ4の一方向の端部は、ターンバックル8(図1参照。)を介してアンカーブロック2に固定する。
【0029】
上記構成の仮設防護柵1によれば、一対のアンカーブロック2のみを荷役機械を用いて設置し、この一対のアンカーブロック2間に間隔を設けて軽量な緩衝ブロック3を人力により配置し、この緩衝ブロック3の貫通孔3Aにロープ4を通して一対のアンカーブロック2間に張ることにより、設置を素早く簡単に行うことができる。一方、撤去の際には、一対のアンカーブロック2のみを荷役機械を用いて撤去し、軽量な緩衝ブロック3等は人力により容易に撤去することができる。
【0030】
また、この仮設防護柵1では、車両が緩衝ブロック3やロープ4に衝突した際に、緩衝ブロック3がロープ4にガイドされてロープ4に沿って移動するとともに、一対のアンカーブロック2間に互いに間隔を設けて平行に張られているロープ4が撓み、一対のアンカーブロック2を引き摺ることにより衝撃を吸収するので、車両の突破を防止することが可能である。
【実施例0031】
上記構成の仮設防護柵1を設置し、車両Cの衝突試験を行った。仮設防護柵1の設置は、起点のアンカーブロック2をクレーン車(ユニック車)により設置し、緩衝ブロック3については人力のみで設置した。また、終点のアンカーブロック2をクレーン車により設置後、ターンバックル8を締めて設置完了した。なお、設置時間は17分、撤去時間は10分であった。
【0032】
衝突試験は、(1)ブレーキ有りの場合と(2)ブレーキ無しの場合との2回行った。衝突試験は、図7(a)に示すように、車両(普通乗用車)Cを速度50km/hで走らせ、進入角度8°で仮設防護柵1に衝突させ、仮設防護柵1の状況および仮設防護柵1の外側(同図の上側)への影響を確認した。
【0033】
表1は試験結果を示している。図7(b)は1回目の試験において車両Cが仮設防護柵1に衝突後、停止した状態を示している。また、図8は車両停止状態における車両正面からみた写真、図9は車両衝突から車両停止までの様子を示す写真である。
【0034】
【表1】
【0035】
表1から分かるように、ブレーキの有無により結果はほとんど変わらず、停止距離が5m伸びただけであった。また、緩衝ブロック3に車両Cが衝突した際、衝突音が鳴り響き、注意喚起になった。緩衝ブロック3に衝突した車両Cは、緩衝ブロック3とともにロープ4に沿ってスムーズに移動して停車し、停車後は自走可能な状態であった。そのため、車両Cの排除作業も容易に行うことが可能であった。また、仮設防護柵1に破損等は見られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の仮設防護柵は、改修工事や追加設置工事等の工事のため、一時的に高速道路等を交通規制するために高速道路等に設置される仮設防護柵として有用である。
【符号の説明】
【0037】
1 仮設防護柵
2 アンカーブロック
2A 据付位置調整用切欠き
3 緩衝ブロック
3A 貫通孔
4 ロープ
5 ロープ固定用インサート
6 施工用インサート
7 プレート
7A 凸部
8 ターンバックル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9