(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064635
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】操作状態切替装置、作業機械および操作状態切替システム
(51)【国際特許分類】
H04Q 9/00 20060101AFI20240507BHJP
E02F 9/20 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
H04Q9/00 351
H04Q9/00 301A
E02F9/20 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173381
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】松田 優也
(72)【発明者】
【氏名】羽馬 涼太
【テーマコード(参考)】
2D003
5K048
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB07
2D003BA04
2D003BB07
2D003FA02
5K048AA04
5K048BA25
5K048DA01
5K048EB02
5K048HA01
5K048HA02
(57)【要約】
【課題】オペレータの意図に対する作業機械の稼働状況の整合性の向上を図りうる装置等を提供する。
【解決手段】第1電力供給経路L1が有効電力供給経路である状態で、第2電力供給経路L2がON状態(第2切替機構452がON状態)であることを条件として、有効電力供給経路が第1電力供給経路L1から第2電力供給経路L2に切り替えられる。同様に、第2電力供給経路L2が有効電力供給経路である状態で、第1電力供給経路L1がON状態(第1切替機構451がON状態)であることを条件として、有効電力供給経路が第2電力供給経路L2から第1電力供給経路L1に切り替えられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源と、
原動機を含む電気機器と、
実機搭乗操作および遠隔操作装置を通じた遠隔操作のうち一方の操作に応じた前記電気機器の動作制御を可能にするための第1電力供給経路をOFF状態からON状態に切り替える第1切替機構と、
実機搭乗操作および前記遠隔操作装置を通じた遠隔操作のうち他方の操作に応じた前記電気機器の動作制御を可能にするための第2電力供給経路をOFF状態からON状態に切り替える第2切替機構と、
前記電源から前記電気機器に対する有効電力供給経路を、前記第1電力供給経路および前記第2電力供給経路の間で切り替える総合切替機構と、
が搭載されている作業機械を対象として、
前記第2電力供給経路がON状態であることを条件として、前記有効電力供給経路の前記第1電力供給経路から前記第2電力供給経路への切り替え指示を前記総合切替機構に対して出力する
操作状態切替装置。
【請求項2】
請求項1の操作状態切替装置において、
前記作業機械に搭乗したオペレータおよび前記遠隔操作装置のオペレータのうち少なくとも一方により入力インターフェースを通じて入力された、前記第1電力供給経路および前記第2電力供給経路の間での前記有効電力供給経路の切り替え指示を前記総合切替機構に対して出力する
操作状態切替装置。
【請求項3】
請求項1の操作状態切替装置において
前記遠隔操作装置を通じたオペレータのON操作およびOFF操作のそれぞれに応じて、前記第1電力供給経路をON状態およびOFF状態のそれぞれに制御する指示を前記第1切替機構に対して出力し、
前記作業機械に搭乗したオペレータのON操作およびOFF操作のそれぞれに応じて、前記第2電力供給経路をON状態およびOFF状態のそれぞれに制御する指示を前記第2切替機構に対して出力する
操作状態切替装置。
【請求項4】
請求項2の操作状態切替装置において、
前記入力インターフェースを通じて前記作業機械の操作終了指示が入力されたことを条件として、前記第1電力供給経路および前記第2電力供給経路の間で前記有効電力供給経路の切り替え指示を前記総合切替機構に対して出力する
操作状態切替装置。
【請求項5】
請求項3の操作状態切替装置において、
前記第1電力供給経路が前記有効電力供給経路である状態で、前記作業機械と前記遠隔操作装置との通信状態が不良である場合、前記第2電力供給経路がON状態であることを条件として、前記有効電力供給経路の前記第1電力供給経路から前記第2電力供給経路への切り替え指示を前記総合切替機構に対して出力する
操作状態切替装置。
【請求項6】
電源と、
原動機を含む電気機器と、
実機搭乗操作および遠隔操作装置を通じた遠隔操作のうち一方の操作に応じた前記電気機器の動作制御を可能にするための第1電力供給経路をOFF状態からON状態に切り替える第1切替機構と、
実機搭乗操作および前記遠隔操作装置を通じた遠隔操作のうち他方の操作に応じた前記電気機器の動作制御を可能にするための第2電力供給経路をOFF状態からON状態に切り替える第2切替機構と、
前記電源から前記電気機器に対する有効電力供給経路を、前記第1電力供給経路および前記第2電力供給経路の間で切り替える総合切替機構と、
が搭載されている作業機械を対象として、
前記第1電力供給経路が前記有効電力供給経路である状態で、前記作業機械と前記遠隔操作装置との通信状態が不良である場合、前記有効電力供給経路の前記第1電力供給経路から前記第2電力供給経路への切り替えを待機する待機状態を維持する
操作状態切替装置。
【請求項7】
電源と、
原動機を含む電気機器と、
実機搭乗操作および遠隔操作装置を通じた遠隔操作のうち一方の操作に応じた前記電気機器の動作制御を可能にするための第1電力供給経路をOFF状態からON状態に切り替える第1切替機構と、
実機搭乗操作および前記遠隔操作装置を通じた遠隔操作のうち他方の操作に応じた前記電気機器の動作制御を可能にするための第2電力供給経路をOFF状態からON状態に切り替える第2切替機構と、
前記電源から前記電気機器に対する有効電力供給経路を、前記第1電力供給経路および前記第2電力供給経路の間で切り替える総合切替機構と、
請求項1~6のうちいずれか1項に記載の操作状態切替装置と、
を備えている
作業機械。
【請求項8】
請求項7に記載の作業機械と、
前記遠隔操作装置と、
により構成されている
操作状態切替システム。
【請求項9】
請求項1~6のうちいずれか1項に記載の操作状態切替装置と、前記作業機械と、前記遠隔操作装置と、により構成され、
前記操作状態切替装置が、前記作業機械および前記遠隔操作装置のそれぞれとの通信ネットワークを介した通信機能を有する機器により構成されている
操作状態切替システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の作業機械のオペレータによる遠隔操作および実機搭乗操作を切り替えするための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
遠隔操作および実機搭乗操作(または手動操作)を切り替え可能な作業機械が提案されている(例えば、特許文献1参照)。作業機械にて、遠隔/手動切換スイッチが手動側にある場合、制御選択スイッチが手動側に接続され、実機制御ユニットを介した実機搭乗操作によりエンジンおよびコントロールバルブの動作が制御される。遠隔/手動切換スイッチが遠隔側にある場合、制御選択スイッチが遠隔側に接続され、送信ユニットを介した遠隔操作によりエンジンおよびコントロールバルブの動作が制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業機械が実機搭乗操作により始動される場合、当該作業機械に搭乗したオペレータにより手動用エンジン始動スイッチが操作されることにより、作業機械のエンジンが始動され、作業機械が実機搭乗操作可能な状態になる。しかし、実機搭乗操作においては、遠隔操作装置(送信ユニット)からエンジンを始動させる指示(遠隔エンジン始動スイッチのON)が出されていない。このため、当該実機搭乗操作から遠隔操作に切り替えられる(遠隔/手動切換スイッチが遠隔側にされる)と、送信ユニットにてエンジンを始動させる指示がないことから、エンジンが停止されてしまうおそれがある。
【0005】
作業機械が遠隔操作により始動される場合、遠隔操作装置(送信ユニット)になされたエンジンを始動させる指示(遠隔エンジン始動スイッチのON)に基づいて作業機械のエンジンが始動される。しかし、遠隔操作においては、手動用エンジン始動スイッチからエンジンを始動させる指示が出されていない。このため、遠隔操作から実機搭乗操作に切り替えられる(遠隔/手動切換スイッチが手動側にされる)と、手動用エンジン始動スイッチが操作されていないことから、エンジンが停止されてしまうおそれがある。したがって、作業機械の稼働中に遠隔操作と実機搭乗操作とが切り替えられる場合、オペレータの意図に反してエンジン等の機器の稼働が停止されるおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、オペレータの意図に対する作業機械の稼働状況の整合性の向上を図りうる装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様の操作状態切替装置は、
電源と、
原動機を含む電気機器と、
実機搭乗操作および遠隔操作装置を通じた遠隔操作のうち一方の操作に応じた前記電気機器の動作制御を可能にするための第1電力供給経路をOFF状態からON状態に切り替える第1切替機構と、
実機搭乗操作および前記遠隔操作装置を通じた遠隔操作のうち他方の操作に応じた前記電気機器の動作制御を可能にするための第2電力供給経路をOFF状態からON状態に切り替える第2切替機構と、
前記電源から前記電気機器に対する有効電力供給経路を、前記第1電力供給経路および前記第2電力供給経路の間で切り替える総合切替機構と、
が搭載されている作業機械を対象として、
前記第2電力供給経路がON状態であることを条件として、前記有効電力供給経路の前記第1電力供給経路から前記第2電力供給経路への切り替え指示を前記総合切替機構に対して出力する。
【0008】
本発明の第1態様の操作状態切替装置によれば、第1電力供給経路が有効電力供給経路である状態で、第2電力供給経路がON状態であることを条件として、有効電力供給経路が第1電力供給経路から第2電力供給経路に切り替えられる。これにより、第2電力供給経路がOFF状態であって電源から電気機器に対して電力が供給されえない状態で、有効電力供給経路が第1電力供給経路から第2電力供給経路に切り替えられてしまい、電気機器への電力供給が遮断され、オペレータが予期せぬうちに当該電気機器の動作が停止される事態が回避される。よって、当該オペレータが意図する作業機械の操作状態(遠隔操作状態または実機搭乗操作状態)と、作業機械の実際の操作状態(遠隔操作状態または実機搭乗操作状態)との整合性の向上が図られる。
【0009】
本発明の第1態様の操作状態切替装置において、
前記作業機械に搭乗したオペレータおよび前記遠隔操作装置のオペレータのうち少なくとも一方により入力インターフェースを通じて入力された、前記第1電力供給経路および前記第2電力供給経路の間での前記有効電力供給経路の切り替え指示を前記総合切替機構に対して出力する
ことが好ましい。
【0010】
当該構成の操作状態切替装置によれば、オペレータによる入力インターフェースを通じて入力された切り替え指示にしたがって、有効電力供給経路が第1電力供給経路および第2電力供給経路の間で切り替えられる。このため、当該オペレータが意図する作業機械の操作状態(遠隔操作状態または実機搭乗操作状態)と、作業機械の実際の操作状態(遠隔操作状態または実機搭乗操作状態)との整合性の向上が図られる。
【0011】
本発明の第1態様の操作状態切替装置において
前記遠隔操作装置を通じたオペレータのON操作およびOFF操作のそれぞれに応じて、前記第1電力供給経路をON状態およびOFF状態のそれぞれに制御する指示を前記第1切替機構に対して出力し、
前記作業機械に搭乗したオペレータのON操作およびOFF操作のそれぞれに応じて、前記第2電力供給経路をON状態およびOFF状態のそれぞれに制御する指示を前記第2切替機構に対して出力する
ことが好ましい。
【0012】
当該構成の操作状態切替装置によれば、オペレータの操作に応じて第1電力供給経路および第2電力供給経路のそれぞれがON状態およびOFF状態の間で切り替えられる。前記のように、第2電力供給経路がON状態であることを条件として、有効電力供給経路が第1電力供給経路から第2電力供給経路に切り替えられる。これにより、第2電力供給経路がOFF状態であって電源から電気機器に対して電力が供給されえない状態で、有効電力供給経路が第1電力供給経路から第2電力供給経路に切り替えられてしまい、電気機器への電力供給が遮断され、オペレータが予期せずに当該電気機器の動作が停止される事態が回避される。よって、当該オペレータが意図する作業機械の操作状態と、作業機械の実際の操作状態との整合性の向上が図られる。
【0013】
本発明の第1態様の操作状態切替装置において、
前記入力インターフェースを通じて前記作業機械の操作終了指示が入力されたことを条件として、前記第1電力供給経路および前記第2電力供給経路の間で前記有効電力供給経路の切り替え指示を前記総合切替機構に対して出力する
ことが好ましい。
【0014】
当該構成の操作状態切替装置によれば、作業機械が遠隔操作されている状態(例えば、第1電力供給経路が有効電力供給経路に切り替えられている状態)で、オペレータにより入力インターフェースを通じて作業機械の操作終了指示(遠隔操作終了指示)が入力された場合、当該作業機械が実機搭乗操作状態に切り替えられる。同様に、作業機械が実機搭乗操作されている状態(例えば、第2電力供給経路が有効電力供給経路に切り替えられている状態)で、オペレータにより入力インターフェースを通じて作業機械の操作終了指示(実機搭乗操作終了指示)が入力された場合、当該作業機械が遠隔操作状態に切り替えられる。よって、当該オペレータが意図する作業機械の操作状態と、作業機械の実際の操作状態との整合性の向上が図られる。
【0015】
本発明の第1態様の操作状態切替装置において、
前記第1電力供給経路が前記有効電力供給経路である状態で、前記作業機械と前記遠隔操作装置との通信状態が不良である場合、前記第2電力供給経路がON状態であることを条件として、前記有効電力供給経路の前記第1電力供給経路から前記第2電力供給経路への切り替え指示を前記総合切替機構に対して出力する
ことが好ましい。
【0016】
当該構成の操作状態切替装置によれば、第1電力供給経路が有効電力供給経路である状態(作業機械が遠隔操作されている状態)において、作業機械と遠隔操作装置との通信状態が不良であり、当該作業機械の遠隔操作に支障が生じる蓋然性が高い場合、第2電力供給経路がON状態であることを条件として、有効電力供給経路が第1電力供給経路から第2電力供給経路に切り替えられる。これにより、第2電力供給経路がOFF状態であるにもかかわらず、有効電力供給経路が第1電力供給経路から第2電力供給経路に切り替えられることで、電源から電気機器への電力供給が遮断され、オペレータが予期せぬうちに等が電気機器の動作が停止する事態が回避される。
【0017】
本発明の第2態様の操作状態切替装置は、
電源と、
原動機を含む電気機器と、
実機搭乗操作および遠隔操作装置を通じた遠隔操作のうち一方の操作に応じた前記電気機器の動作制御を可能にするための第1電力供給経路をOFF状態からON状態に切り替える第1切替機構と、
実機搭乗操作および前記遠隔操作装置を通じた遠隔操作のうち他方の操作に応じた前記電気機器の動作制御を可能にするための第2電力供給経路をOFF状態からON状態に切り替える第2切替機構と、
前記電源から前記電気機器に対する有効電力供給経路を、前記第1電力供給経路および前記第2電力供給経路の間で切り替える総合切替機構と、
が搭載されている作業機械を対象として、
前記第1電力供給経路が前記有効電力供給経路である状態で、前記作業機械と前記遠隔操作装置との通信状態が不良である場合、前記有効電力供給経路の前記第1電力供給経路から前記第2電力供給経路への切り替えを待機する待機状態を維持する。
【0018】
本発明の第2態様の操作状態切替装置によれば、第1電力供給経路が有効電力供給経路である状態(作業機械が遠隔操作されている状態)において、作業機械と遠隔操作装置との通信状態が不良であり、当該作業機械の遠隔操作に支障が生じる蓋然性が高い場合、有効電力供給経路が第1電力供給経路から第2電力供給経路に切り替えられることが待機される。当該待機状態において、オペレータが作業機械に搭乗した後、有効電力供給経路を第1電力供給経路から第2電力供給経路に切り替えるなど、作業機械を実機搭乗操作するために必要な処理が実行されうる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】操作状態切替システムの構成に関する説明図。
【
図5】操作状態切替装置の機能に関する説明図(続き)。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(操作状態切替装置の構成)
本発明の操作状態切替システムは、本発明の一実施形態としての操作状態切替装置と、相互にネットワーク通信可能に構成されている遠隔操作装置20および/または作業機械40と、により構成されている。本実施形態では、作業機械40を構成する実機制御装置400により「操作状態切替装置」が構成されている。
【0021】
(遠隔操作装置の構成)
図1に示されているように、遠隔操作装置20は、遠隔制御装置200と、遠隔入力インターフェース210と、遠隔出力インターフェース220と、遠隔通信機器224と、を備えている。遠隔制御装置200は、演算処理装置(シングルコアプロセッサまたはマルチコアプロセッサもしくはこれを構成するプロセッサコア)により構成され、メモリなどの記憶装置から必要なデータおよびソフトウェアを読み取り、当該データを対象として当該ソフトウェアにしたがった演算処理を実行する。
【0022】
遠隔入力インターフェース210は、遠隔操作機構211を備えている。遠隔出力インターフェース220は、遠隔画像出力装置221と、手元端末225と、を備えている。
【0023】
遠隔操作機構211には、走行用操作装置と、旋回用操作装置と、ブーム用操作装置と、アーム用操作装置と、バケット用操作装置と、が含まれている。各操作装置は、回動操作を受ける操作レバーを有している。走行用操作装置の操作レバー(走行レバー)は、作業機械40の下部走行体41を動かすために操作される。走行レバーは、走行ペダルを兼ねていてもよい。例えば、走行レバーの基部または下端部に固定されている走行ペダルが設けられていてもよい。旋回用操作装置の操作レバー(旋回レバー)は、作業機械40の旋回機構43を構成する油圧式の旋回モータを動かすために操作される。ブーム用操作装置の操作レバー(ブームレバー)は、作業機械40のブームシリンダ442を動かすために操作される。アーム用操作装置の操作レバー(アームレバー)は作業機械40のアームシリンダ444を動かすために操作される。バケット用操作装置の操作レバー(バケットレバー)は作業機械40のバケットシリンダ446を動かすために操作される。
【0024】
遠隔操作機構211を構成する各操作レバーは、例えば、
図2に示されているように、遠隔操作をする遠隔オペレータが着座するためのシートStの周囲に配置されている。シートStは、アームレスト付きのハイバックチェアのような形態であるが、ヘッドレストがないローバックチェアのような形態、または、背もたれがないチェアのような形態など、遠隔オペレータが着座できる任意の形態の着座部であってもよい。
【0025】
シートStの前方に左右のクローラに応じた左右走行レバー2110が左右横並びに配置されている。一つの操作レバーが複数の操作レバーを兼ねていてもよい。例えば、
図2に示されているシートStの左側フレームの前方に設けられている左側操作レバー2111が、前後方向に操作された場合にアームレバーとして機能し、かつ、左右方向に操作された場合に旋回レバーとして機能してもよい。同様に、
図2に示されているシートStの右側フレームの前方に設けられている右側操作レバー2112が、前後方向に操作された場合にブームレバーとして機能し、かつ、左右方向に操作された場合にバケットレバーとして機能してもよい。レバーパターンは、遠隔オペレータの操作指示によって任意に変更されてもよい。
【0026】
遠隔画像出力装置221は、例えば、
図2に示されているように、シートStの前方、左斜め前方および右斜め前方のそれぞれに配置された略矩形状の画面を有する中央遠隔画像出力装置2210、左側遠隔画像出力装置2211および右側遠隔画像出力装置2212により構成されている。中央遠隔画像出力装置2210、左側遠隔画像出力装置2211および右側遠隔画像出力装置2212のそれぞれの画面(画像表示領域)の形状およびサイズは同じであってもよく相違していてもよい。遠隔画像出力装置221は、単一の湾曲したまたは湾曲可能な画像出力装置、シートStの前方を囲むように配置される2つまたは4つ以上の画像出力装置により構成されていてもよい。
【0027】
図2に示されているように、中央遠隔画像出力装置2210の画面および左側遠隔画像出力装置2211の画面が傾斜角度θ1(例えば、120°≦θ1≦150°)をなすように、左側遠隔画像出力装置2211の右縁が、中央遠隔画像出力装置2210の左縁に隣接している。
図2に示されているように、中央遠隔画像出力装置2210の画面および右側遠隔画像出力装置2212の画面が傾斜角度θ2(例えば、120°≦θ2≦150°)をなすように、右側遠隔画像出力装置2212の左縁が、中央遠隔画像出力装置2210の右縁に隣接している。当該傾斜角度θ1およびθ2は同じであっても相違していてもよい。
【0028】
中央遠隔画像出力装置2210、左側遠隔画像出力装置2211および右側遠隔画像出力装置2212のそれぞれの画面は、鉛直方向に対して平行であってもよく、鉛直方向に対して傾斜していてもよい。中央遠隔画像出力装置2210、左側遠隔画像出力装置2211および右側遠隔画像出力装置2212のうち少なくとも1つの画像出力装置が、複数に分割された画像出力装置により構成されていてもよい。例えば、中央遠隔画像出力装置2210が、略矩形状の画面を有する上下に隣接する画像出力装置により構成されていてもよい。
【0029】
遠隔通信機器224は、遠隔操作装置20のネットワーク通信を可能とする機器であり、ネットワークを介して作業機械40との通信をする。
【0030】
(作業機械の構成)
図1に示されているように、作業機械40は、実機制御装置400と、実機入力インターフェース410と、実機通信機器424と、実機バッテリ450(電源)と、第1切替機構451と、第2切替機構452と、実機総合切替機構454と、遠隔切替機構456と、電源自己保持機構458と、実機電気機器460と、を備えている。前述のように、本実施形態では、実機制御装置400が「操作状態切替装置」を構成する。実機制御装置400は、演算処理装置(シングルコアプロセッサまたはマルチコアプロセッサもしくはこれを構成するプロセッサコア)により構成され、メモリなどの記憶装置から必要なデータおよびソフトウェアを読み取り、当該データを対象として当該ソフトウェアにしたがった演算処理を実行する。
【0031】
作業機械40は、例えばクローラショベル(建設機械)であり、
図3に示されているように、クローラ式の下部走行体41と、下部走行体41に旋回機構43を介して旋回可能に搭載されている上部旋回体42と、を備えている。上部旋回体42の前方左側部にはキャブ42C(運転室)が設けられている。上部旋回体42の前方中央部には作業機構44が設けられている。
【0032】
図3に示されているように、作業機構44は、上部旋回体42に起伏可能に装着されているブーム441と、ブーム441の先端に回動可能に連結されているアーム443と、アーム443の先端に回動可能に連結されているバケット445と、を備えている。作業機構44には、伸縮可能な油圧シリンダにより構成されているブームシリンダ442、アームシリンダ444およびバケットシリンダ446が装着されている。
【0033】
ブームシリンダ442は、作動油の供給を受けることにより伸縮してブーム441を起伏方向に回動させるように当該ブーム441と上部旋回体42との間に介在する。アームシリンダ444は、作動油の供給を受けることにより伸縮してアーム443をブーム441に対して水平軸回りに回動させるように当該アーム443と当該ブーム441との間に介在する。バケットシリンダ446は、作動油の供給を受けることにより伸縮してバケット445をアーム443に対して水平軸回りに回動させるように当該バケット445と当該アーム443との間に介在する。
【0034】
実機入力インターフェース410は、実機操作機構411と、実機撮像装置412と、を備えている。実機操作機構411は、キャブ42Cの内部に配置されたシートの周囲に遠隔操作機構211と同様に配置された複数の操作レバーを備えている。遠隔操作レバーの操作態様に応じた信号を受信し、当該受信信号に基づいて実機操作レバーを動かす駆動機構またはロボットがキャブ42Cに設けられている。実機撮像装置412は、例えばキャブ42Cの内部に設置され、フロントウィンドウおよび左右サイドウィンドウ越しに作業機構44の少なくとも一部を含む環境を撮像する。フロントウィンドウおよびサイドウィンドウのうち一部または全部が省略されていてもよい。
【0035】
手元端末225は、遠隔制御装置200からの信号に基づいて各種画面を表示面に表示する。手元端末225は、オペレータによってタッチ操作されることにより、それを表す信号をコントローラ231に出力する遠隔入力インターフェース210として機能してもよい。
【0036】
実機通信機器424は、作業機械40のネットワーク通信を可能とする機器であり、ネットワークを介して遠隔操作装置20との通信をする。
【0037】
実機バッテリ450は、実機制御装置400、実機電気機器460、実機通信機器424等の作業機械40に搭載している機器に電力を供給する。実機バッテリ450は、例えば繰り返し充電可能な二次電池により構成され、給電口に外部の電源(例えば商用電源)の給電ケーブルを接続することで、実機バッテリ450が充電される。実機バッテリ450に代えて、外部の電源から作業機械40に搭載している機器に電力が供給されるように電源が構成されてもよい。
【0038】
第1切替機構451は、キャブ42Cに搭乗した搭乗オペレータの操作による「実機搭乗操作」および遠隔操作装置20の遠隔オペレータの操作による「遠隔操作」のうち一方の操作(例えば、遠隔操作)に応じた実機電気機器460の動作制御を可能にするための第1電力供給経路L1をOFF状態からON状態に切り替える。第1切替機構451のON/OFF切替動作は、例えば、遠隔操作装置20から送信された切り替え指示に基づいて実機制御装置400により制御される。
【0039】
第2切替機構452は、「実機搭乗操作」および「遠隔操作」のうち他方の操作(例えば、実機搭乗操作)に応じた実機電気機器460の動作制御を可能にするための第2電力供給経路L2をOFF状態からON状態に切り替える。本実施形態において、第2切替機構452は、作業機械40のエンジンを始動するためのキースイッチであり、キャブ42Cに搭乗した搭乗オペレータが当該キースイッチの差込口にキーを差し込んで回転させることにより当該キースイッチのON/OFF切替動作がなされ、これが第2切替機構452におけるON/OFF切替動作として作用する。なお、第2切替機構452のON/OFF切替動作は、キャブ42Cに搭乗した搭乗オペレータの操作による実機入力インターフェース410から送信または入力された切り替え指示に基づいて実機制御装置400により制御されてもよく、例えば、作業機械40のエンジンの始動と終了とを指示できるスイッチが採用されてもよい。
【0040】
実機総合切替機構454は、実機バッテリ450から実機電気機器460に対して電力を供給する有効電力供給経路を、第1電力供給経路L1および第2電力供給経路L2の間で切り替える。総合切替機構実機454のON/OFF切替動作は、例えば、遠隔入力インターフェース210を通じて入力され、遠隔操作装置20から送信された切り替え指示および/または実機入力インターフェース410から送信または入力された切り替え指示に応じて、実機制御装置400により制御される。総合切替機構実機454は、実機制御装置400により制御されていない場合には、第2電力供給経路L2を有効電力供給経路とするように構成されている。
【0041】
遠隔切替機構456は、遠隔操作が許容されるON状態および遠隔操作が禁止されるOFF状態を、キャブ42Cに搭乗した搭乗オペレータの手動操作等により切り替え可能に構成されている。遠隔切替機構456がON状態に切り替えられると実機バッテリ450から第3電力供給回路電力L3を介して実機制御装置400に電力が供給される。また、遠隔切替機構456がOFF状態に切り替えられると実機バッテリ450から第3電力供給回路電力L3を介した実機制御装置400への電力供給がされなくなる。
【0042】
電源自己保持機構458は、遠隔操作のために必要な機能を発揮させるために必要な電力が、実機バッテリ450から実機制御装置400(操作状態切替装置)に対して供給される状態を維持する。具体的には、実機制御装置400が実機バッテリ450から第3電力供給回路電力L3を介して電力が供給されている場合に、実機制御装置400は第4電力供給回路電力L4を介して実機バッテリ450から電力が供給されるように、電源自己保持機構458をOFF状態からON状態に切り替える。また、遠隔操作のために必要な機能を発揮させる必要がなくなった場合には、実機制御装置400は電源自己保持機構458をON状態からOFF状態に切り替える。
【0043】
実機電気機器460には、各アクチュエータに作動油を供給するポンプを駆動する原動機(エンジンや電動モータなど)を制御するコントローラ、当該ポンプから各アクチュエータ供給される作動油の方向及び流量を変化させるコントロールバルブを制御するコントローラ等の電装品が含まれている。
【0044】
(機能)
前記構成の操作状態切替装置(実機制御装置400)の機能について
図4~
図5に示されているフローチャートを用いて説明する。実機制御装置400は、各切替機構等との通信に基づき、当該各切替機構等の状態を検知している。
【0045】
まず、キャブ42Cに搭乗した搭乗オペレータの手動操作等により遠隔切替機構456がON状態に切り替えられ、実機バッテリ450から第3電力供給回路電力L3を介して実機制御装置400に電力が供給される。これにより、実機制御装置400が起動する(
図4/START)。起動後に実機制御装置400は第4電力供給回路電力L4を介して実機バッテリ450から電力が供給されるように、電源自己保持機構458をOFF状態からON状態に切り替える。
【0046】
作業機械40が遠隔操作装置20の遠隔オペレータにより「遠隔操作」される場合には、搭乗オペレータは遠隔切替機構456をON状態に維持しキャブ42Cから降機する。次いで、作業機械40との通信が確立している遠隔操作装置20の遠隔オペレータは作業機械40のコントローラ等の電装品に電力を供給するために、第1切替機構452をOFF状態からON状態に切り替える操作を行う。実機制御装置400は、遠隔切替機構456がON状態にあること、および、第1切替機構452をON状態にする操作があることを条件として、第1切替機構452をON状態に切り替え、実機総合切替機構454の有効電力供給経路を第1電力供給経路L1に切り替える作業をおこなう。これにより、第1電力供給経路L1を介して実機バッテリ450から実機電気機器460に電力が供給されるようになり、作業機械40が「遠隔操作」される状態となる。 一方で、作業機械40がキャブ42Cに搭乗した搭乗オペレータにより「実機搭乗操作」される場合には、搭乗オペレータは遠隔切替機構456をOFF状態に切り替える。実機制御装置400は、遠隔切替機構456がOFF状態にあることを認識し、実機総合切替機構454の有効電力供給経路を第2電力供給経路L2に切り替える。この状態において、搭乗オペレータが作業機械40のコントローラ等の電装品に電力を供給するために、第2切替機構452をOFF状態からON状態に切り替える操作を行うと、第2切替機構452がON状態となり、第2電力供給経路L2を介して実機バッテリ450から実機電気機器460に電力が供給されるようになり、作業機械40が「実機搭乗操作」される状態となる。
【0047】
実機総合切替機構454により有効電力供給経路が第1電力供給経路L1および第2電力供給経路L2のいずれに切り替えられているかが判定される(
図4/STEP102)。
【0048】
実機総合切替機構454により有効電力供給経路が第1電力供給経路L1に切り替えられていると判定された場合(
図4/STEP102‥1)、遠隔切替機構456がOFF状態であるか否かが判定される(
図4/STEP120)。すなわち、作業機械40が「遠隔操作」されており有効電力供給経路が第1電力供給経路L1である状態において、作業機械40が「遠隔操作」される状態が継続されるために遠隔切替機構456のON状態が維持されるのか、又は作業機械40を「実機搭乗操作」される状態に切り替えるために搭乗オペレータにより遠隔切替機構456がON状態からOFF状態に切り替えられたかが判定される。
【0049】
遠隔切替機構456がON状態であると判定された場合(
図4/STEP120‥NO)、有効電力供給経路の判定処理(
図4/STEP102)に戻る。この場合、作業機械40が「遠隔操作」される状態が継続される。
【0050】
一方で、遠隔切替機構456がOFF状態であると判定された場合(
図4/STEP120‥YES)、第2切替機構452がOFF状態であるか否かが判定される(
図4/STEP122)。すなわち、搭乗オペレータにより作業機械40が「実機搭乗操作」される状態に切り替えるために遠隔切替機構456がOFF状態に切り替えられたことが判定された場合に、さらに、搭乗オペレータにより第2切替機構452がOFF状態からON状態に切り替えられたか、又は第2切替機構452がOFF状態に維持されているのかを判定する。
【0051】
第2切替機構452がOFF状態であると判定された場合(
図4/STEP122‥NO)、有効電力供給経路の判定処理(
図4/STEP102)に戻る。この場合、搭乗オペレータにより遠隔切替機構456がOFF状態に切り替えられた(
図4/STEP120‥YES)が、第2切替機構452はOFF状態からON状態には切換えられていない状態である。
【0052】
第2切替機構452がON状態であると判定された場合(
図4/STEP122‥YES)、実機無線通信機器424に通信状態不良が生じているか否かが判定される(
図4/STEP124)。すなわち、搭乗オペレータにより2切替機構452がOFF状態からON状態に切り替えられた場合に、実機無線通信機器424の通信状態不良が生じているか否かを判定するようにしている。実機無線通信機器424に通信状態不良が生じている場合には通信エラーフラグfは「1」が設定され、通信状態不良が生じていない場合には通信エラーフラグfは「1」以外のものとして、例えば「0」が設定される。実機無線通信機器424の通信状態不良は、例えば、作業機械40との通信速度の低下、通信の途絶が生じた場合に通信エラーフラグfが「1」に設定される。
【0053】
通信エラーフラグfが「0」であると判定された場合(
図4/STEP124‥NO)、実機入力インターフェース410を通じて、遠隔オペレータにより操作状態切り替えの認証されたか否かが判定される(
図4/STEP126)。この処理は、作業機械40が「遠隔操作」されている状態から「実機搭乗操作」される状態に切り替えられることについて遠隔オペレータの認証を得るものであり、遠隔オペレータが予期せずに作業機械40の「遠隔操作」を終了することを防止するものである。当該認証がされたと判定された場合(
図4/STEP126‥YES)、実機総合切替機構454により有効電力供給経路が第1電力供給経路L1から第2電力供給経路L2に切り替えられる(
図4/STEP128)。その後、有効電力供給経路の判定処理(
図4/STEP102)に戻る。また、作業機械40が「遠隔操作」されている状態から「実機搭乗操作」される状態に切り替えられる。当該認証がされていないと判定された場合(
図4/STEP126‥NO)、実機総合切替機構454による有効電力供給経路の切り替えは実行されずに有効電力供給経路の判定処理(
図4/STEP102)に戻る。
【0054】
通信エラーフラグfが「1」であると判定された場合(
図4/STEP124‥YES)、実機総合切替機構454により有効電力供給経路が第1電力供給経路L1から第2電力供給経路L2に切り替えられる(
図4/STEP128)。この処理は、実機無線通信機器424に通信状態不良が生じており遠隔オペレータによる作業機械40の「遠隔操作」が実行できない状態であるので、操作状態切り替えの認証(
図4/STEP126)がされたと見做して総合切替機構454による有効電力供給経路の切り替えを実行するものである。例えば、遠隔オペレータによる遠隔操作装置20を用いた作業機械40の「遠隔操作」の途中において通信状態不良が生じた場合に、「遠隔操作」の続行ができなくなる。このような場合に、搭乗オペレータが作業機械40にに搭乗して遠隔切替機構456をOFF状態に切り替え、第2切替機構452をOFF状態からON状態に切り替えることで、速やかに作業機械40が「遠隔操作」されている状態から「実機搭乗操作」される状態に切り替えることができる。
【0055】
実機総合切替機構454により有効電力供給経路が第2電力供給経路L2に切り替えられていると判定された場合(
図4/STEP102‥2)、通信エラーフラグfが「1」である状態が第1指定期間T1にわたり継続したか否かが判定される(
図4/STEP110)。すなわち、作業機械40が「実機搭乗操作」されており有効電力供給経路が第1電力供給経路L2である状態において、実機無線通信機器424の通信状態不良が生じているか否かを判定するようにしている。
【0056】
通信エラーフラグfが「1」である状態が第1指定期間T1にわたり継続したと判定された場合(
図4/STEP110‥YES)、電源自己保持機構458による実機制御装置400に対する、遠隔操作のために必要な電力供給が遮断される(
図5/STEP130)。この処理は、実機無線通信機器424に通信状態不良が生じている場合に、作業機械40の「遠隔操作」を実行するための機能を停止させるものである。作業機械40は「実機搭乗操作」される状態にあるが、「遠隔操作」される状態に切り替える機能を提供するために電源自己保持機構458より実機制御装置400に電力供給がされている。作業機械40は「実機搭乗操作」されているので実機無線通信機器424に短時間の通信状態不良が生じたとしても不都合はないが、通信状態不良が回復せず第1指定期間T1にわたり継続する場合には作業機械40の「遠隔操作」はできない状態にあり、この場合に電源自己保持機構458をON状態からOFF状態に切り替えることで実機制御装置400への電力供給を遮断する。実機制御装置400への電力供給の遮断後においても、実機総合切替機構454により有効電力供給経路とされている第2電力供給経路L2を介して実機電気機器460に電力が供給されるため、作業機械40が「実機搭乗操作」される状態は継続可能である。この場合、搭乗オペレータが作業機械40を「実機搭乗操作」して通信状況の良い場所に移動させるなどの対応をした後に、遠隔切替機構456をON状態とすることで、実機無線通信機器424に通信状態不良を発生させないようにすることが可能である。
【0057】
通信エラーフラグfが「1」である状態が第1指定期間T1にわたり継続していないと判定された場合(
図4/STEP110‥NO)、第2切替機構452がOFF状態であるか否かが判定される(
図5/STEP112)。すなわち、実機無線通信機器424に通信状態不良が生じていない場合に、第2切替機構452がON状態であるかOFF状態であるかが判定される。
【0058】
第2切替機構452がON状態であると判定された場合(
図5/STEP112‥NO)、有効電力供給経路の判定処理(
図4/STEP102)に戻る。この場合、作業機械40が「実機搭乗操作」される状態が継続される。
【0059】
第2切替機構452がOFF状態であると判定された場合(
図5/STEP112‥YES)、遠隔切替機構456がOFF状態であるか否かが判定される(
図5/STEP114)。この場合、第2切替機構452がOFF状態であり、実機電気機器460には電力が供給されずポンプ等が駆動しないことから作業機械40は停止した状態にある。作業機械40が「実機搭乗操作」される状態において停止した状態にある場合には、作業機械40の「実機搭乗操作」による作業は中断乃至終了されており、「遠隔操作」される状態に切り替えられることが想定される。したがって、遠隔切替機構456がOFF状態であるか否かを判定することで、「遠隔操作」される状態に切り替えるべきか否かを判定している。
【0060】
遠隔切替機構456がOFF状態であると判定された場合(
図5/STEP114‥YES)、実機電気機器460の動作がOFFまたは停止され(
図5/STEP115)、電源自己保持機構458による実機制御装置400に対する、遠隔操作のために必要な電力供給が遮断される(
図5/STEP130)。この処理は、遠隔切替機構456がOFF状態にあり作業機械40が暫く「遠隔操作」されないことが見込まれるため、実機制御装置400への電力供給を停止させるものである。作業機械40が「遠隔操作」されることが可能な状態に戻すには、搭乗オペレータが遠隔切替機構456をON状態に切り替えればよい。
【0061】
遠隔切替機構456がON状態であると判定された場合(
図5/STEP114‥NO)、第1切替機構451がOFF状態であるか否かが判定される(
図5/STEP116)。すなわち、遠隔切替機構456がON状態にあり作業機械40が「遠隔操作」される可能性がある場合に、遠隔オペレータにより操作される第1切替機構451がOFF状態であるか否かが判定される。
【0062】
第1切替機構451がOFF状態であると判定された場合(
図5/STEP116‥YES)、遠隔切替機構456がON状態であり、かつ、第1切替機構451がOFF状態である状況が第2指定時間T2にわたり継続したか否かが判定される(
図5/STEP117)。すなわち、遠隔切替機構456がON状態にあり作業機械40が「遠隔操作」される可能性が生じてから、遠隔オペレータにより操作される第1切替機構451がOFF状態である状態が第2指定時間T2にわたり継続したか否かが判定される。当該状況が第2指定時間T2にわたり継続したと判定された場合(
図5/STEP117‥YES)、電源自己保持機構458による実機制御装置400に対する、遠隔操作のために必要な電力供給が遮断される(
図5/STEP130)。この場合、第2指定時間T2が経過しても第1切替機構451がOFF状態である状態が継続しており、遠隔オペレータにより作業機械40が「遠隔操作」される可能性が低いため、実機制御装置400への電力供給を停止させる。当該状況が第2指定時間T2にわたり継続していないと判定された場合(
図5/STEP117‥NO)、有効電力供給経路の判定処理(
図4/STEP102)に戻る。
【0063】
第1切替機構451がON状態であると判定された場合(
図5/STEP116‥NO)、実機総合切替機構454により有効電力供給経路が第2電力供給経路L2から第1電力供給経路L1に切り替えられる(
図5/STEP118)。そして、遠隔オペレータによる遠隔操作装置20を用いた作業機械40の「遠隔操作」が可能となる。その後、有効電力供給経路の判定処理(
図4/STEP102)に戻る。
【0064】
(遠隔操作状態における機能)
遠隔操作装置20において、遠隔制御装置200により、遠隔通信機器224を通じて、作業機械40に対して実機環境確認要求が送信される。作業機械40において、実機通信機器424を通じて実機環境確認要求が受信された場合、実機制御装置400が実機撮像装置412を通じて取得された撮像画像(適当な画像処理が施されていてもよい。)に応じた環境画像データが遠隔操作装置20に対して送信される。遠隔操作装置20において、遠隔通信機器224を通じて環境画像データが受信された場合、遠隔制御装置200により、環境画像データに応じた環境画像が遠隔画像出力装置221に出力される。
【0065】
これにより、例えば、キャブ42Cの前方に広がる地面のほか、作業機構44の一部であるブーム441、アーム443および施工対象領域における(バケット445による作業対象である)瓦礫または土砂の山などが映り込んでいる環境画像が遠隔画像出力装置221に出力される。
【0066】
遠隔操作装置20において、遠隔制御装置200により遠隔操作機構211の操作態様が認識され、かつ、遠隔通信機器224を通じて、当該操作態様に応じた遠隔操作指令が作業機械40に対して送信される。作業機械40において、実機制御装置400により、実機通信機器422を通じて操作指令が受信された場合、作業機構44等の動作が制御される。例えば、バケット445により作業機械40の前方の施工対象領域の土を掘り起こしてすくい、上部旋回体42を旋回させたうえで施工対象領域の外にバケット445から土を落とす作業が実行される。
【0067】
(作用効果)
前記機能を発揮する操作状態切替装置(実機制御装置400)によれば、第1電力供給経路L1が有効電力供給経路である状態で、第2電力供給経路L2がON状態(第2切替機構452がON状態)であることを条件として、有効電力供給経路が第1電力供給経路L1から第2電力供給経路L2に切り替えられる(
図4/STEP102‥1→‥STEP122‥YES→‥→STEP128参照)。同様に、第2電力供給経路L2が有効電力供給経路である状態で、第1電力供給経路L1がON状態(第1切替機構451がON状態)であることを条件として、有効電力供給経路が第2電力供給経路L2から第1電力供給経路L1に切り替えられる(
図4/STEP102‥2→‥
図5/STEP116‥NO→‥→STEP118参照)。
【0068】
これにより、第2電力供給経路L2がOFF状態であって実機バッテリ450(電源)から実機電気機器460に対して電力が供給されえない状態で、有効電力供給経路が第1電力供給経路L1から第2電力供給経路L2に切り替えられてしまう事態が回避される。同様に、第1電力供給経路L1がOFF状態であって実機バッテリ450(電源)から実機電気機器460に対して電力が供給されえない状態で、有効電力供給経路が第2電力供給経路L2から第1電力供給経路L1に切り替えられてしまう事態が回避される。
【0069】
これらの結果、原動機などの実機電気機器460への電力供給が遮断され、オペレータが予期せぬうちに当該実機電気機器460の動作が停止される事態が回避される。よって、当該オペレータが意図する作業機械40の操作状態(遠隔操作状態または実機搭乗操作状態)と、作業機械40の実際の操作状態(遠隔操作状態または実機搭乗操作状態)との整合性の向上が図られる。
【0070】
(本発明の他の実施形態)
前記実施形態では、操作状態切替装置が作業機械40の実機制御装置400により構成されていたが、他の実施形態として、操作状態切替装置10が遠隔操作装置20を構成する遠隔制御装置200、または、遠隔操作装置20および作業機械40と相互通信可能なコンピュータまたは外部機器により構成されていてもよい。
【0071】
遠隔切替機構456のON/OFF判定処理が省略されてもよい(
図4/STEP120および
図5/STEP114参照)。この場合、作業機械40において遠隔切替機構456が省略されてもよい。通信エラーフラグfに関する判定処理が省略されてもよい(
図4/STEP124および
図4/STEP110参照)。実機認証処理が省略されてもよい(
図4/STEP126参照)。遠隔切替機構456がON状態であり、かつ、第1切替機構451がOFF状態である状況が第2指定時間T2にわたり継続したか否かの判定処理が省略されてもよい(
図5/STEP117参照)。
【0072】
遠隔入力インターフェース210および/または遠隔入力インターフェース210を通じて前記作業機械の操作終了指示が入力されたことを条件として、第1電力供給経路L1および第2電力供給経路L2の間で有効電力供給経路の切り替え指示が実機総合切替機構454に対して出力されてもよい。
【0073】
当該構成の操作状態切替装置によれば、遠隔操作装置20により作業機械40が遠隔操作されている状態(例えば、第1電力供給経路L1が有効電力供給経路に切り替えられている状態)で、遠隔オペレータにより実機入力インターフェース410および/または搭乗オペレータにより遠隔入力インターフェース210を通じて作業機械40の操作終了指示(遠隔操作終了指示)が入力された場合、当該作業機械40が「実機搭乗操作」される状態に切り替えられる。同様に、作業機械40が実機搭乗操作されている状態(例えば、第2電力供給経路L2が有効電力供給経路に切り替えられている状態)で、遠隔オペレータにより実機入力インターフェース410および/または搭乗オペレータにより遠隔入力インターフェース210を通じて作業機械40の操作終了指示(実機搭乗操作終了指示)が入力された場合、当該作業機械40が「遠隔操作」される状態に切り替えられる。よって、遠隔オペレータおよび/または搭乗オペレータが意図する作業機械40の操作状態と、作業機械40の実際の操作状態との整合性の向上が図られる。
【0074】
作業機械40が「実機搭乗操作」および「遠隔操作」の内、どちらで操作されるのかを示すものが搭載されてもよい。例えば、キャブ42Cに搭載されている表示装置の表示面に作業機械40の操作状態が「実機搭乗操作」であるか「遠隔操作」であるかを表示させることができる。また、遠隔操作装置20の手元端末225や遠隔画像出力装置221に作業機械40の操作状態が「実機搭乗操作」であるか「遠隔操作」であるかを表示させることができる。遠隔操作装置20においては、作業機械40の操作状態を表す音声を出力する音響装置が搭載されてもよい。
【符号の説明】
【0075】
20‥遠隔操作装置
200‥遠隔制御装置
210‥遠隔入力インターフェース
211‥遠隔操作機構
220‥遠隔出力インターフェース
221‥遠隔画像出力装置
222‥遠隔音響出力装置
224‥遠隔無線通信機器
40‥作業機械
41‥下部走行体
42‥上部旋回体
42C‥キャブ(運転室)
44‥作業機構
445‥バケット
400‥実機制御装置(操作状態切替装置)
410‥実機入力インターフェース
420‥実機出力インターフェース
450‥実機バッテリ(電源)
451‥第1切替機構
452‥第2切替機構
454‥総合切替機構
460‥実機電気機器
L1‥第1電力供給経路
L2‥第2電力供給経路。