(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064637
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】環境価値利用を支援するための装置、方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/06 20230101AFI20240507BHJP
【FI】
G06Q30/06
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173387
(22)【出願日】2022-10-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】516140214
【氏名又は名称】booost technologies株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100218958
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 剛志
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】青井 宏憲
【テーマコード(参考)】
5L030
5L049
【Fターム(参考)】
5L030BB23
5L049BB23
(57)【要約】
【課題】 本発明は、コンテンツ制作、配信等の過程で発生する環境負荷物質に対応した、環境価値利用を支援するための手段を提供することを目的とする。
【解決手段】 環境価値リスト選択装置であって、コンテンツデータを受信する通信部、コンテンツデータから環境負荷物質量を算出する算出部、環境負荷物質量を相殺するオフセット環境価値量を計算する計算部、およびオフセット環境価値量に対応する環境価値リストを選択する選択部を含む、前記装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境価値リスト選択装置であって、
コンテンツデータを受信する通信部、
コンテンツデータから環境負荷物質量を算出する算出部、
環境負荷物質量を相殺するオフセット環境価値量を計算する計算部、および
オフセット環境価値量に対応する環境価値リストを選択する選択部を含む、前記装置。
【請求項2】
選択部が、環境価値リストの決済を行うオフセット支払者の選別を端末から受け付ける、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
環境負荷物質量はGHG排出量であり、コンテンツデータは算定用データを含み、算定用データは活動内容および排出係数を含み、
GHG排出量のデータ種別として一次データまたは二次データを判定する判定部をさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
選択部が、コンテンツデータに含まれる少なくとも1つのコンテンツ項目に基づいて、環境価値リストの選択を行う、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
端末に表示された環境価値リストに対するユーザ選別情報を受信し、
ユーザ選別情報とコンテンツデータとを関連付ける連結部をさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
当初の広告料金にオフセット料金を追加する広告料金計算部さらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
環境への配慮を認証する認証部をさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
コンテンツを配信する配信部をさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
環境価値リスト選択方法であって、
サーバ装置が、
コンテンツデータを受信するステップ、
コンテンツデータから環境負荷物質量を算出するステップ、
環境負荷物質量を相殺するオフセット環境価値量を算出するステップ、および
オフセット環境価値量に対応する環境価値リストを選択するステップを含む処理を実行する、前記方法。
【請求項10】
コンピュータに、
請求項9に記載の方法を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境価値利用を支援するための装置、方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、持続可能な社会のために環境負荷物質の低減が求められている。特に、二酸化炭素などの温室効果ガス(GHG)が大量に排出されることで、気候変動問題が喫緊の課題となっている。この問題を解決するために、GHG排出量の削減や、カーボンオフセット活動等の取り組みを支援するシステムが開発されている。
【0003】
特許文献1には、取引内容に合わせて個別にカーボンオフセットを行うことができるようにする販売システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、コンテンツ制作、配信等の過程で発生する環境負荷物質に対応した、環境価値利用を支援するための手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意研究を進める中で、コンテンツ制作、配信等の過程で発生する環境負荷物質を相殺(オフセット)するオフセット環境価値量を算出し、かかるオフセット環境価値量に対応する環境価値リストを選択する手段により、上記課題を解決できることを初めて見出し、かかる知見に基づいてさらに研究を続けた結果、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち本発明は、以下に関する。
[1]
環境価値リスト選択装置であって、コンテンツデータを受信する通信部、コンテンツデータから環境負荷物質量を算出する算出部、環境負荷物質量を相殺するオフセット環境価値量を計算する計算部、およびオフセット環境価値量に対応する環境価値リストを選択する選択部を含む、前記装置。
[2]
選択部が、環境価値リストの決済を行うオフセット支払者の選別を端末から受け付ける、[1]に記載の装置。
[3]
環境負荷物質量はGHG排出量であり、コンテンツデータは算定用データを含み、算定用データは活動内容および排出係数を含み、GHG排出量のデータ種別として一次データまたは二次データを判定する判定部をさらに含む、[1]または[2]に記載の装置。
【0008】
[4]
選択部が、コンテンツデータに含まれる少なくとも1つのコンテンツ項目に基づいて、環境価値リストの選択を行う、[1]~[3]のいずれか1つに記載の装置。
[5]
端末に表示された環境価値リストに対するユーザ選別情報を受信し、ユーザ選別情報とコンテンツデータとを関連付ける連結部をさらに含む、[1]~[4]のいずれか1つに記載の装置。
[6]
当初の広告料金にオフセット料金を追加する広告料金計算部さらに含む、[1]~[5]のいずれか1つに記載の装置。
[7]
環境への配慮を認証する認証部をさらに含む、[1]~[6]のいずれか1つに記載の装置。
[8]
コンテンツを配信する配信部をさらに含む、[1]~[7]のいずれか1つに記載の装置。
【0009】
[9]
環境価値リスト選択方法であって、サーバ装置が、コンテンツデータを受信するステップ、コンテンツデータから環境負荷物質量を算出するステップ、環境負荷物質量を相殺するオフセット環境価値量を算出するステップ、およびオフセット環境価値量に対応する環境価値リストを選択するステップを含む処理を実行する、前記方法。
[10]
コンピュータに、[9]に記載の方法を実行させるためのプログラム。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、コンテンツ制作、配信等の過程で発生する環境負荷物質に対応した、環境価値利用を支援するための手段を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るシステムの構成をブロック図で示す。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係るデータベースの一例を示す概念図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係るデータベースの一例を示す概念図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係るデータベースの一例を示す概念図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係るデータベースの一例を示す概念図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態に係るシステムの動作を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、第1実施形態に係るシステムの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の好適な実施形態の説明は例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0013】
本発明に係る装置、方法およびプログラムは、本実施形態に係るシステムの一部または全部として実現することができる。
【0014】
本実施形態に係るシステムは、コンテンツ制作、配信等を行う者がコンテンツ利用者に向けた活動に関する環境負荷物質の削減およびオフセットを実現する。
【0015】
ここで「コンテンツ」は広告の内容を表す広告物・広告素材(以下単に「広告」とも記す)、および、広告を伝達する手段として用いられる広告媒体を含む。さらに広告媒体は広告を伝達する直接の手段(以下「広告枠」と記す)、および、当該直接の手段の土台となる媒体そのもの(以下「媒体」と記す)を含む。例えばテレビCMにおいて、広告は放映されるテレビCMであって広告内容を表す映像制作物である。また、広告枠はテレビCMが放映される番組内のCM枠である。さらに、媒体は番組およびCM枠(広告)を放映する土台となるテレビである。
【0016】
また、「コンテンツ制作、配信等を行う者」は広告媒体提供者、広告代理店、広告主、広告制作会社等を含む。広告媒体提供者は広告媒体を提供する者である。例えば広告媒体提供者はテレビ、番組、およびテレビCM枠等を含む広告媒体の制作および提供等を行うテレビ局である。広告代理店は広告主および/または広告媒体提供者の広告に関する業務の代理や仲介等を行う者である。広告主は広告の所有者である。広告制作会社は広告主からの請負等により広告物の制作等を行う者である。さらに、「コンテンツ利用者」は広告対象者を含む。例えば広告対象者はテレビの番組視聴者である。
【0017】
また、「環境負荷物質」はGHGを含み、環境負荷物質量はGHG排出量を含む。なお、以下の本実施形態においてはGHG排出量に対する環境価値によるオフセットを記載するが、環境価値によるオフセットが可能な他の環境負荷物質についても本実施形態が適用されてよい。
【0018】
本実施形態に係るシステムは、広告媒体提供者、広告代理店、広告主、広告制作会社などのユーザによるGHG排出量の削減やオフセットのために用いることができる。本実施形態に係るシステムによれば、環境に配慮された広告および広告媒体を通じた広告対象者に対する広告媒体提供者のイメージ向上、広告対象の商品またはサービスのイメージ向上、および広告対象者の環境に配慮した行動促進などを実現することができる。
【0019】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るシステムの構成を示すブロック図である。
図1に示すように、システムは、サーバ装置1を備える。サーバ装置1は、通信ネットワークNを介して、端末2a、2b、2cと通信可能に構成されている。
【0020】
端末2a、2b、2cは、PC、スマートフォン、タブレット端末、スマートTVなどであり、ユーザによって操作される端末である。本実施形態において端末2aは広告代理店、広告媒体提供者等によって操作される。端末2bはカーボンクレジットプロバイダー、カーボンクレジット関連システム提供者等によって操作される。端末2cは広告主、広告制作会社等によって操作される。なお、図示されていないが、広告対象者、第三者認証提供者等が操作する端末もサーバ装置1と通信可能に構成されてよい。
【0021】
端末2a、2b、2cはそれぞれ、表示部21と、操作部22とを備える。表示部21は、モニタ、タッチスクリーンなどで構成されており、サーバ装置1からの指示に応じて、ユーザに対して画像や動画を表示する。
【0022】
操作部22は、キーボード、マウス、タッチスクリーン、リモートコントローラなどの入力装置で構成されており、ユーザからの操作を受信することができる。また、端末2a、2b、2cには、予めプログラムがインストールされている。端末2a、2b、2cの制御部(不図示)は、プログラムに応じて端末2a、2b、2cを動作させることができる。端末2a、2b、2cは、ユーザからのコンテンツデータやユーザ選別情報をサーバ装置1に送信する。
【0023】
サーバ装置1は、端末2a、2b、2cからのコンテンツデータやユーザ選別情報を受信する。ユーザ選別情報は、ユーザが操作部22を介して入力した操作情報を含むことができる。ユーザ選別情報は、例えば、表示部21に表示されたリストなどの情報をユーザが選別した際のユーザフィードバック情報を含むことができる。リストなどの情報は、サーバ装置1から端末2a、2b、2cに送信することができる。
【0024】
(サーバ装置1の構成について)
図1に示すように、サーバ装置1は、通信部11、記憶部12および制御部13を備える。
【0025】
通信部11は、通信ネットワークNを介して、端末2a、2b、2cからコンテンツデータを含む入力情報を受信するI/O部として機能する。記憶部12は、コンテンツデータを含む入力情報を記憶する。記憶部12は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)およびSSD(Solid State Drive)等によって構成される記憶媒体である。記憶部12は、通信ネットワークNに接続されたクラウドドライブとして構成することもできる。
【0026】
記憶部12には、制御部13によって実行される各種プログラムが記憶されている。制御部13は、記憶部12に記憶されているプログラムに基づいて、端末2を制御することができる。制御部13は、記憶部12に記憶されているプログラムに基づいて、記憶部12に記憶されているコンテンツデータを更新することもできる。
【0027】
記憶部12は、コンテンツデータやその他の情報を格納する各種のデータベースを含む。コンテンツデータは、コンテンツそのもの、コンテンツ制作、配信等に関する活動量(例えば制作費用や配信費用等、制作や配信に用いられる電気使用量等のエネルギー使用量、制作に用いられる素材や機材等の数量など)、コンテンツ制作、配信等に関する排出係数などの影響評価情報、コンテンツ制作、配信等により発生するGHG排出量、オフセットに用いられるカーボンクレジットや各種証書等の環境価値の数量および金額を含む環境価値情報、その他のコンテンツに関連するデータおよびコンテンツの配信に関連する媒体、広告枠、広告枠の詳細、広告効果情報、その他の広告媒体に関連するデータを含む。
【0028】
例えば、コンテンツデータは、テレビ番組の制作費用、テレビ番組に付随するテレビCMの制作費用、テレビ番組およびテレビCMの放映費用、テレビ番組の制作に要する電気使用量や利用機材の数量等を含む活動量、テレビCMの制作に要する電気使用量や利用機材の数量等を含む活動量、テレビ番組およびテレビCMの放映に要する電気使用量や利用機材の数量等を含む活動量、テレビ番組の制作、テレビCMの制作、ならびにテレビ番組およびテレビCMの放映に関する排出係数、テレビ番組の制作、テレビCMの制作、ならびにテレビ番組およびテレビCMの放映により発生するGHG排出量、算出または入力されたGHG排出量のオフセットに用いられる環境価値の種類、数量、金額、提供者、創出プロジェクト地、認証内容、その他の詳細情報、広告関連情報(例えばテレビ番組の放送時間帯・曜日、視聴者の年代・性別等のプロファイル情報、視聴率やアンケート調査結果等の広告効果など)、広告媒体の種類、広告媒体提供者および/または広告代理店による所定の環境価値の種類から成る群から選択される、少なくとも1つのコンテンツ項目を含むことができる。
【0029】
ここで、広告は、TVのCM、ラジオのCM、新聞の広告、雑誌の広告、WEB・インターネットTVの広告、SNS(例えばInstagram(登録商標)、Twitter(登録商標)、facebook(登録商標)、Line(登録商標)、TikTok(登録商標)など)の広告、動画配信サービス(例えばYOUTUBE(登録商標))の広告、WEB・インターネットの広告(例えば検索や内容に連動して表示される広告など)、電子掲示板・電柱広告・看板広告などの屋外広告、電車・バス・タクシー・船・飛行機などの内外または駅・バス停などの付帯施設における交通広告、アドバルーンなどの飛行体やスポーツ選手のユニフォームなど動的な媒体による広告、ダイレクトメール・ポスティング・フリーペーパー・レジ袋・インフルエンサーを介した広告などを含む。
【0030】
また、広告媒体は、TVCM枠、ラジオCM枠、新聞の広告枠、雑誌の広告枠、WEB・インターネットTV広告枠、SNS広告枠、動画配信サービス広告枠など上述の広告を伝達する手段、およびこれらの土台となる媒体(メディア)そのものとしてのTV、ラジオ、新聞、雑誌、Web・インターネットTV、SNS、動画配信サービスなどが挙げられる。広告対象者(消費者など)としては、視聴者、SNSユーザ、YOUTUBE(登録商標)視聴者、WEB記事の閲覧者などを含む。
【0031】
制御部13は、例えば、CPU(Central Processing Unit)および半導体メモリ等を含むマイクロコンピュータで構成される。制御部13は、記憶部12に記憶されたプログラムなどを実行することにより、サーバ装置1の各部および端末2を制御する。制御部13は、少なくとも算出部131、計算部132、および選択部133を含む。制御部13は、連結部134、認証部135および/または配信部136をさらに含むことができる。
【0032】
算出部131は、コンテンツデータに基づいて、GHG排出量を算出する。算出部131は、例えば、GHGプロトコル、ISO等の各種国際標準アルバート炭素計算機などのライフサイクルアセスメント・カーボンフットプリント等に関する算出手法に基づいて、GHG排出量を算出する。算出部131は、例えば、コンテンツデータに含まれるコンテンツの制作、配信等に要した費用と当該費用に関する金額あたりのGHG排出量を定めた排出係数等のコンテンツ項目と、上記の算出手法とに基づいて、GHG排出量を算出することができる。また、コンテンツデータには、GHG排出量の実測値が含まれており、算出部131は当該実測値をGHG排出量として算出してもよい。
【0033】
算出部131は、例えば、コンテンツデータから抽出された金額と、記憶部12のデータベースに予め格納されている排出原単位とを乗算することで、GHG排出量(メトリックトン)を算出することができる。算出部131は、例えば、コンテンツデータから抽出された広告の制作費用と、記憶部12のデータベースに予め格納されている広告の制作に関する排出係数とを乗算することで、算出することができる。
【0034】
計算部132は、GHG排出量に基づいて、GHG排出量を相殺(オフセット)するオフセット環境価値量を計算する。計算部132は、例えば、Jクレジット、JCM、各種団体等が管理するボランタリークレジットなどの枠組みに基づいて、オフセット環境価値量を計算する。また、計算部132は、GHG排出量の排出源が電気の使用である場合、当該GHG排出量の相殺に使用可能な再エネ価値証書、非化石証書、グリーン電力証書などの各種エネルギー証書の枠組みに基づいて相殺量を計算してよい。
【0035】
GHG排出量を相殺するオフセット環境価値量は、例えば、算出部131が算出した100メトリックトン分のGHG排出量を相殺する為のオフセット環境価値量を、1クレジットあたり1メトリックトン分のGHG排出量を相殺するという枠組みに基づいて100クレジットとすることで計算してよい。
【0036】
選択部133は、オフセット環境価値量に対応する環境価値リストを選択する。環境価値リストは、オフセット環境価値量(例えば、100クレジット)に対応する、環境価値の1または複数の組み合わせを含むことができる。選択部133は、オフセット環境価値量以上になるように(オフセットできるように)、環境価値リストを選択することができる。
【0037】
選択部133は、オフセット環境価値量に加えて、環境価値の種類や分類、配信管理システム等の外部システムから取得したコンテンツ情報(例えば配信曜日・時間、配信対象者情報、配信効果等)とコンテンツ利用者の環境価値に対する選好情報などの補助データに基づいて、環境価値リストを限定することもできる。選択部133は、オフセット環境価値量と、補助データとを組み合わせて、環境価値リストをコンテンツ利用者向けにより精緻に限定することもできる。
【0038】
選択部133は、例えば、コンテンツデータに含まれる環境価値の種類に基づいて、環境価値リストを限定することができる。選択部133は、例えば、コンテンツ利用者の属性情報とその属性による環境価値の選好情報に基づいて、環境価値リストを限定する(例えば10~20代女性向けコンテンツは森林保全や植林による環境価値の種類に限定する)ことができる。選択部133は、例えば、媒体ごとの環境価値の選好傾向に基づいて、選別されたコンテンツに応じて環境価値リストを限定する(例えば若い世代が利用するSNSに対しては先進的な炭素回収・貯留技術等による海外のボランタリークレジットに限定する)ことができる。
【0039】
制御部13は、選択部133によって選択(限定)された環境価値リストを端末2に送信(出力)し、端末2は、これをサーバ装置1によるレコメンド情報として表示部21に表示することができる。ユーザは、表示された環境価値リストから、所望のカーボンクレジットを選別し、その選別結果をユーザ選別情報として、サーバ装置1にフィードバックすることができる。
【0040】
連結部134は、ユーザ選別情報とコンテンツデータとを関連付けることができる。すなわち、第1実施形態に係るシステムは、入力されたコンテンツデータをサーバ装置1で情報処理し、限定された環境価値リストをユーザに送信し、ユーザがそれをさらに選別することで、コンテンツデータを更新していくこともできる。
【0041】
認証部135は、コンテンツデータに関する環境への配慮を認証する。例えば、第三者オーディット(例えば、環境保護団体や第三者認証機関など)は、端末2に表示されたコンテンツデータに関する情報から環境への配慮の度合い、GHG排出量の算定および相殺に関する正確性、正当性、透明性等を認定し、認定結果をサーバ装置1にフィードバックする。そして、認証部135は、かかるフィードバックを認証情報としてコンテンツデータに埋め込むことができる。
【0042】
配信部136は、コンテンツデータに含まれる、配信可能なコンテンツ(画像、動画など)を端末2に配信し、端末2は、配信されたコンテンツを表示部21に投影することができる。広告対象者(視聴者など)は、端末2を介してコンテンツを視聴することができる。配信部136は、認証部135によって認証情報が埋め込まれたコンテンツを配信することもできる。
【0043】
以上のように、第1実施形態に係るシステムは、サーバ装置1に対して複数の端末2が接続されたプラットフォームとして機能することができる。広告媒体提供者、広告主、広告制作会社、広告対象者、第三者オーディット、カーボンクレジットプロバイダー、カーボンクレジット関連システム提供者などのユーザは、プラットフォームを利用してコンテンツデータの入力、更新、環境価値リストの選別、コンテンツの配信、視聴などを行う事が出来る。
【0044】
図2~
図5は実施形態に係るデータベースの例をそれぞれ示す。
図2は端末2aを用いた広告代理店または広告媒体提供者(以下は広告代理店を例とする)による広告媒体情報等の入力および算出部131によるGHG排出量の算出の結果の一例を示す。
図3は計算部132および選択部133によるGHG排出量のオフセット金額の計算および環境価値リストの選択ならびに端末2aを用いた広告代理店によるオフセット支払者の選別結果の一例を示す。
【0045】
図4は端末2bを用いたカーボンクレジットプロバイダー、カーボンクレジット関連システム提供者等による環境価値情報の入力および端末2aを用いた広告代理店による環境価値の選別の一例を示す。
図5は端末2cを用いた広告主による広告媒体の選別に用いられる表示用のデータベースの一例を示す。
【0046】
図2は端末2aから広告代理店による広告媒体情報および算定データの入力を受け付け、算出部131がGHG排出量を算出した結果を示す。「ID」は端末2aからの入力に応じて広告枠の登録が行われる際に制御部13が自動で採番する各行固有の識別番号である。
【0047】
「広告媒体情報」は媒体、広告枠、広告の詳細、広告料金、および広告媒体提供者を含む。「媒体」はテレビ、屋外広告など広告媒体の土台となる媒体の種類を示す。「広告枠」は各媒体のうち広告を伝達するために用いられる具体的な手段を示す。「詳細」は媒体および広告枠に関する詳細な情報を示す。「広告料金」は広告枠を利用する際に広告主が支払うべき料金を示す。「広告媒体提供者」は媒体および広告枠を含む広告媒体を提供する者を示す。
【0048】
「算定用データ」は活動内容、活動量、および排出係数を含む。「活動内容」は媒体および広告枠に関してGHGを排出する活動の内容を示す。例えば
図2のID001の行の活動内容は、広告媒体である番組aの制作費用である番組制作費、および、広告費用である広告費である。なお、
図2では活動内容が1つの項目として記載されているが、活動内容は複数の項目で構成されてもよい。例えば活動内容は、ライフサイクル段階、プロセス名、フロー名、および項目名等を含んでよい。
【0049】
「活動量」は各活動内容の数量、金額、その他の量を示す。例えば
図2のID001の行の番組制作費の活動量は50万円、および、広告費の活動量は広告料金に示された金額を利用し100万円である。
【0050】
「排出係数」は各活動内容の単位活動量あたりのGHG排出量を示す。例えば
図2のID001の行の番組制作費の排出係数は0.1tCO2eq/百万円、および、広告費の排出係数は0.2tCO2eq/百万円である。
【0051】
算定用データのうち活動内容および活動量は広告代理店によって端末2aから入力される。また、算定用データのうち排出係数は広告代理店によって端末2aから入力されてもよいし、記憶部12に記憶された排出係数データベース(不図示)から制御部13が予め対応づけられた活動内容を参照することによって入力されてもよい。
【0052】
「GHGデータ」はGHG排出量およびデータ種別を含む。「GHG排出量」は算出部131が算定用データの活動量および排出係数を乗じることによって算出される。なお、GHG排出量は広告代理店によって端末2から直接入力されてもよい。例えば
図2のID001の行のGHG排出量は、番組制作費の活動量50万円に排出係数0.1tCO2eq/百万円を乗じた0.05tCO2eq、および、広告費の活動量100万円に排出係数0.2tCO2eq/百万円を乗じた0.2tCO2eqの合計0.25tCO2eqである。また、ID002の行は活動内容、活動量、および排出係数の一部を省略しているが、番組制作およびCM放映に要する各活動内容からそれぞれのGHG排出量を算出し、その合計として0.18tCO2eqであることを示す。また、ID004の行は広告代理店がGHG排出量を直接入力した結果0.25tCO2eqであることを示す。
【0053】
「データ種別」は一次データおよび二次データを含む。一次データはGHG排出量の算出に用いられたデータが対象に固有のプロセスもしくは活動から得られたデータ、対象のプロセスもしくは活動から直接測定もしくはそれに基づく計算から得られ定量化されたデータ、および対象者に固有のデータのうち少なくとも1つを含むデータである。二次データは一次データ以外のデータであり、特に業界平均データ、財務データ、およびプロキシデータ等である。例えば
図2においてID001の行のデータ種別は二次データである。
【0054】
これは番組aの制作から生じたGHG排出量の算出において、その制作に固有のプロセスもしくは活動から得られた等の一次データではなく当該制作の費用に対し平均的な単位金額あたりのGHG排出量を表す排出係数(二次データ)が用いられることによる。また、CM枠を用いた広告(CM枠における広告物の放映)は広告代理店による入力の際にはまだ実行されていないものの、算出部131は広告費に対し平均的な単位金額あたりのGHG排出量を表す排出係数(二次データ)を乗算することで広告のGHG排出量もあらかじめ算出することができる。一方、ID004の行のデータ種別は一次データである。これは看板bの制作から生じる固有のGHG排出量を広告代理店が端末2aから直接入力したことによる。
【0055】
データ種別の判定は制御部13の判定部(不図示)により、算定用データの活動内容および排出係数ならびに予め定められたルールに基づいて行われてよい。例えば活動内容において金額で表される項目が入力された場合、活動量が金額となる一次データはないから二次データとして判定される。また、例えば活動内容から活動量は一次データであるものの、排出係数が業界平均データ等の二次データから算出される場合、二次データと判定される。
【0056】
また、例えばGHG排出量が直接入力された場合、広告媒体提供者に固有のデータとみなして当該GHG排出量は一次データと判定される。なお、判定部によるデータ種別の判定は広告代理店による端末2aからの入力によって修正されてもよい。例えば上述の直接入力されたGHG排出量が広告媒体提供者に固有のデータではなく二次データを基に算出したものの場合、広告代理店による端末2aからの入力によってデータ種別を一次データから二次データに修正してよい。
【0057】
なお、広告媒体情報、算定用データ、およびGHGデータの入力方法は上述に限られない。例えば広告媒体情報、算定用データ、およびGHGデータは広告代理店が使用する配信管理システム、ERPシステム、会計システム、人事システム、その他のシステムからAPI連携等により取得してもよい。取得方法は広告代理店が端末2aまたは他のシステムに通信可能な端末等を用いて操作により取得してもよいし、所定のタイミングで各システムからサーバ装置1に所定のデータを受信してもよい。また、広告媒体情報、算定用データ、およびGHGデータは記憶部12に記憶された所定のルールに従って、制御部13が互いに関連する情報またはデータを引用、算出する等により自動入力してよい。
【0058】
図3は
図2の広告関連情報、算定用データ、およびGHGデータの入力、算出等が完了した後のオフセットに関する項目を示す。ID、広告枠、およびGHG排出量は
図2と同じ内容が示される。
【0059】
「オフセット金額」はGHG排出量をオフセットするための環境価値の購入等に要する金額を示す。ここで、環境価値については
図4において詳述する。ここでは、計算部132が各行のGHG排出量をオフセットするオフセット環境価値量を最も購入金額が安くなるように計算し、選択部133が当該オフセット環境価値量となる環境価値量リストを選択したものとする。具体的には、計算部132はID001の行のGHG排出量0.25tCO2eqに対し、オフセットに要するオフセット環境価値量を同量の0.25tCO2eqと計算する。そして選択部133は、当該オフセット環境価値量分の購入金額として最も単価が安い環境価値の1または複数を選択する。なお、単価が同額の環境価値が複数ある場合、所定のルール(例えば識別番号が小さい順など)によってその一部が選択されてよい。
【0060】
また、オフセット環境価値量を満たすために金額の異なる複数の環境価値が選択された場合、選択部133は計算部132によって購入金額が最も安くなるように計算された環境価値の組み合わせを選択してよい。例えば1tあたり1,000円で最大のオフセット環境価値量が0.15tCO2eqの環境価値、および、1tあたり1,500円で最大のオフセット環境価値量が0.20tCO2eqの環境価値が選択された場合、計算部132はオフセット環境価値量0.25tCO2eqとして最も購入金額が安くなる1tあたり1,000円の環境価値を0.15tCO2eqおよび1tあたり1,500円の環境価値を0.10tCO2eqの組み合わせでオフセット金額を300円と計算する。選択部133は当該組み合わせの環境価値を選択する。
【0061】
図3のオフセット金額については簡略のために、計算部132が各行のGHG排出量をオフセットするオフセット環境価値量を最も購入金額が安くなるように計算した結果、いずれも単価が1tあたり2,000円となるように選択部133がそれぞれの行について環境価値量リストを選択したものとする。例えばID001の行のオフセット金額は、GHG排出量0.25tCO2eqに対し同量のオフセット環境価値量で購入金額が1tあたり2,000円となる環境価値量リストが選択され、オフセット金額は500円と計算された結果を示す。
【0062】
「オフセット支払者」はオフセット金額の支払いを行う者を示す。オフセット支払者は広告代理店による端末2aからの入力に基づいて選別される。例えばID001および004の行のオフセット支払者は広告代理店であり、002の行のオフセット支払者は広告媒体提供者である。これらの場合、広告主は既にオフセットの支払が完了している広告枠の利用をすることができる。また、ID003の行のオフセット支払者は広告主である。この場合、広告代理店(広告媒体提供者)はオフセット支払を広告主の選別に委ねることができる。
【0063】
本実施形態において計算部132および選択部133は所定のルールに従って各GHG排出量に対しオフセット環境価値量の計算および当該オフセット環境価値量となる環境価値量リストの選択を自動で行った。一方、他の実施形態において計算部132および選択部133はユーザの入力に基づいてオフセット環境価値量の計算および当該オフセット環境価値量となる環境価値量リストの選択を行ってもよい。例えば計算部132は、予めユーザの入力に基づき選択部133が選択した環境価値の種類の中から、ユーザの入力に基づくルール(例えば環境価値創出地がユーザの指定地域から近い順)に基づいてオフセット環境価値量を計算し、選択部133が当該オフセット環境価値量となる環境価値量リストを選択してよい。
【0064】
図4は、オフセットに用いられる環境価値情報を示す。「環境価値情報」は環境価値に関する情報であって、名称、詳細、環境価値の種類、最大オフセット量、単価、および選別量を含む。
図4は端末2bからのカーボンクレジットプロバイダー、カーボンクレジット関連システム提供者等による環境価値情報の入力、および、端末2aからの広告代理店による環境価値の選別の結果を示す。また、環境価値情報の入力は他のシステム(例えばカーボンクレジット管理システム、カーボンクレジット取引システム等)からAPI連携や当該他のシステムにおける操作等によって取得されてよい。
【0065】
ここで、
図3において計算部132は最も購入金額が安くなるようにオフセット環境価値量を計算し、選択部133は該当する環境価値量リストを選択した。これに対し、
図4で示すように環境価値量リストは広告代理店による端末2aからの入力に基づいて選別されてもよい。この場合、選択部133は広告代理店による端末2aからの入力に基づいてGHG排出量のオフセットに用いられる環境価値量リストを選択し、計算部132は選択された環境価値のオフセット環境価値量および単価に基づいてオフセット金額を計算する。なお、環境価値の単位はオフセットするGHG排出量または活動量の単位で表す。
【0066】
図4においてVID、名称、詳細、環境価値の種類、最大オフセット量、および単価は端末2bからカーボンクレジットプロバイダー、カーボンクレジット関連システム提供者等からの入力結果を示す。「VID」は当該入力に応じて環境価値の登録が行われる際に制御部13が自動で採番する各行固有の識別番号である。
【0067】
「名称」は各環境価値を表す名称を示す。「詳細」は各環境価値の詳細な内容を示す。名称および詳細は広告代理店が環境価値の内容を把握できるものであればよく、例えば
図4においてV001の行において名称は実施地域およびプロジェクト概要を示す。一方、詳細は省略されているが、例えばプロジェクト番号、認証申請日、プロジェクト実施者名・法人番号、実施場所(森林、宿泊施設、公共施設、大学、住宅、工場、事業所、店舗、病院、福祉施設等)、プロジェクト種別(森林吸収、排出削減(再エネ)、排出削減(省エネ)等)、再エネ(電力または熱)や省エネの量、売買可能量最小等を示してよい。
【0068】
「環境価値の種類」は環境価値の認定等が行われる制度名や環境価値の種別等を示す。
図4において環境価値の種類は国や民間団体の制度に基づくJクレジット、FIT非化石証書、およびグリーン熱証書を含む。また、
図4において環境価値の種類はカーボンクレジットの種別として通常用いられるボランタリークレジットを含む。ボランタリークレジットは各種団体により認証等が行われるカーボンクレジットであり、例えばGold StandardやVerified Carbon Standardなどが発行主体となる。そのほか、環境価値の種類はベースライン&クレジットまたはキャップ&トレードに基づく各種カーボンクレジット、Clean Development Mechanism、二国間クレジット(JCM等)等を含んでよい。
【0069】
「最大オフセット量」は各行の環境価値がGHG排出量または環境価値が適用される活動量(例えば電気使用量または熱使用量等)のオフセットに用いられる最大の量を示す。例えば
図4においてV001の行の環境価値は最大で500tCO2eqのGHG排出量のオフセットに用いられることを示す。一方、
図4においてV003およびV004は市場取引または相対取引によることからオフセットに用いられる最大の量が示されていない。なお、市場取引または相対取引による環境価値についてもユーザの入力に基づいて任意の最大の量が示されてもよい。
【0070】
「単価」は各行の環境価値の購入等に要する単価を示す。単価はユーザの操作に基づいて入力されてよい。また、単価はカーボンクレジット市場や再エネ取引市場等の市場の価格管理システム等から受信された価格シグナルに基づいて決定されてよい。
【0071】
図4において選別量は端末2aからの広告代理店による環境価値の選別の結果を示す。「選別量」は広告代理店が各環境価値についてGHG排出量のオフセットに用いるものとして選別したオフセット環境価値量を示す。例えば
図4においてVID001の行では最大オフセット量500tCO2eqのうち300tCO2eqが広告代理店にオフセット用いられるオフセット環境価値量として選別されていることを示す。
【0072】
本実施形態において環境価値の種類は制度名等に基づいて示した。一方、他の実施形態において環境価値の種類はさらに分類されてよく、広告代理店は各環境価値の選別の前に当該分類について選別をしてもよい。例えば環境価値の種類がさらに森林保全、植林、再エネ、省エネ、炭素回収・貯留、直接空気回収等に分類されてよい。また、例えば環境価値の種類がさらにカーボンクレジット(NDC(国が決定する貢献)に活用可)、カーボンクレジット(NDCに活用不可)、証書(再エネ由来)、証書(非再エネ由来)等に分類されてよい。そして、広告代理店は各環境価値の選別の前に上記分類のうち1または複数を選別し、対象となる環境価値の候補の数を減少させてよい。これにより、広告代理店は所望の分類の環境価値を容易に選別することができる。
【0073】
また、他の実施形態において環境価値の種類はさらに分類されてよく、選択部133は広告代理店に表示する環境価値の種類の候補を活動内容に応じて一部の分類に限定してよい。例えば環境価値の種類がさらに証書(電気)、証書(熱)、全般、およびその他に分類されてよい。そして、広告代理店が入力した活動内容に電気の使用が含まれない場合、選択部133は分類が証書(電気)である環境価値の種類を除いて表示してよい。これにより、広告代理店は適切な環境価値を容易に選別することができる。
【0074】
なお、選別された環境価値の用途は広告関連の商品またはサービス単位のオフセットに限らず、環境価値を入手したユーザの組織単位のオフセットや各種制度の報告等に用いられてよい。
【0075】
図5は、
図2~
図4に示した広告代理店による入力結果等を用いて広告主が広告媒体を選別するための情報を示す。当該情報は制御部13の表示部(不図示)によって通信部11およびネットワークNを介し各端末(特に広告主等が用いる端末2c)の表示部21に表示されてよい。
図5においてID、広告媒体情報、およびGHGデータは
図2と同様である。なお、
図2の算定用データは
図5において省略されているが、他の実施形態においてはGHGデータの詳細として示されてもよい。
【0076】
図5は「オフセット情報」を含む。オフセット情報はオフセット状況およびオフセット金額を含む。「オフセット状況」は
図3のオフセット支払者が広告主の場合に「必要」、および広告主以外の場合に「済み」を示す。「オフセット金額」は、オフセット状況が「必要」の場合、
図3と同じ金額が示され、「済み」の場合、広告主がオフセットについて支払をする必要がないため金額が示されない。本実施形態においてオフセット済みの広告枠の広告料金が
図2の当初の広告料金と同額であり、オフセット料金が広告料金に上乗せされていない。一方、他の実施形態においては制御部13は広告料金計算部(不図示)を含み、広告料金計算部は当初の広告料金にオフセット料金を追加するとしてもよい。
【0077】
本実施形態によれば、広告代理店または広告媒体提供者は端末2aからサーバ装置1に通信して入力等をすることにより、簡単に広告および広告媒体のGHG排出量(カーボンフットプリント)算出およびオフセットまでを行うことができる。
【0078】
また、本実施形態によれば、広告主は端末2cからサーバ装置1に通信して広告媒体情報等を参照することにより、多用な広告媒体のなかから広告媒体情報のほかGHG排出量の多寡、企業努力によりGHG排出量削減努力が反映される一次データかどうか、およびオフセットが済んでいるかどうかという観点からも広告枠を選別することができる。特に、GHG排出量の多寡や一次データか否かが可視化されることにより、各ユーザが環境価値によるオフセットだけでなく、その後の広告に関するGHG排出量の削減に向けた行動を促進することができる。また、広告主は広告代理店または広告媒体提供者が既にオフセット済みの広告媒体を利用することにより、簡単に環境に配慮された広告を配信することができる。そしてこのような広告への需要が喚起されると、広告代理店または広告媒体提供者が積極的にオフセットするインセンティブが生じることから、本実施形態によれば環境価値利用が促進される。
【0079】
また、本実施形態において広告主は端末2cを用いて
図5に示された各行の広告枠を選別するものとした。一方、他の実施形態においては、リスティング広告や金額のみで番組や時間帯等を指定しないテレビCMなど広告主が広告枠を選別せずに金額等の条件のみを選別してよい。この場合、例えば当該条件に合致する広告枠を広告代理店が端末2aから選別してよく、または他のシステムである配信管理システムから条件に合致するものからランダムに広告枠を選択してよい。
【0080】
また、本実施形態においては広告代理店が端末2aから広告媒体情報等を入力し、その後に広告主が端末2cから当該入力結果を参照するものとした。一方、他の実施形態においては先に広告主が端末2cから広告枠およびオフセット等に関する条件をサーバ装置1に送信してもよい。そして、広告代理店は端末2aから当該条件に合致する広告媒体情報等を入力し、サーバ装置1を介して広告主の端末2cに通知等を送信してもよい。
【0081】
(システムの動作について)
図6および
図7は、第1実施形態に係るシステムの動作を示すフローチャートである。
図6は、システムの基本的な動作例を示し、
図7は、システムの応用的な動作例を示す。図中の各ステップは、制御部13による処理を概念的に示すものである。
【0082】
図6は、システムの基本的な動作例を示す。サーバ装置1の制御部13は、端末2からユーザによって入力されたコンテンツデータを受信する処理を実行する(ステップS1)。受信したコンテンツデータは、記憶部12のデータベースに格納される。動画や音声などのコンテンツ自体は記憶部12のファイルサーバーに格納され、データベース内のコンテンツデータと識別子などを介して関連(リレーション)付けることもできる。
【0083】
算出部131は、記憶部12内のコンテンツデータからGHG排出量を算出する処理を実行する(ステップS2)。算出されたGHG排出量は、コンテンツデータと関連付ける(データベースに追加する)ことで、GHG排出量を含んだコンテンツデータとして更新することができる。制御部13は、更新されたコンテンツデータを端末2に送信することができる。
【0084】
計算部132は、GHG排出量を相殺するオフセット環境価値量を計算する処理を実行する(ステップS3)。計算されたオフセット環境価値量は、コンテンツデータと関連付けることで、オフセット環境価値量を含んだコンテンツデータとして更新することができる。制御部13は、更新されたコンテンツデータを端末2に送信することができる。
【0085】
選択部133は、オフセット環境価値量に対応する環境価値リストを選択する処理を実行する(ステップS4)。選択された環境価値リストは、コンテンツデータと関連付けることで、環境価値リストを含んだコンテンツデータとして更新することができる。制御部13は、更新されたコンテンツデータを端末2に送信することができる。
【0086】
制御部13は、選択された環境価値リストを出力(送信)する処理を実行する(ステップS5)。制御部13は、選択された環境価値リストを端末2に送信することができる。ユーザは、選択された環境価値リストを表示部21で確認し、オフセット活動などに生かすことができる。ユーザは、表示された環境価値リストから、所望の環境価値を選別し、その選別結果をユーザ選別情報として、サーバ装置1にフィードバックすることができる。
【0087】
選択部133における処理は、基本的には、オフセット環境価値量に基づいて行うことができるが、補助データを追加的に利用することで、環境価値リストをより精緻に選択する(限定する)こともできる。補助データはコンテンツデータに予め含まれていてもよいし、端末2を介して適時に追加されてもよい。すなわち、選択部133における各処理をユーザが適時に補助することもできる。
【0088】
上記のように、制御部13は、各処理によって更新されたコンテンツデータを適時に端末2に送信することができ、ユーザは、算出部131、計算部132および選択部133による各処理の妥当性を判断し、それを補助データ(ユーザフィードバック情報)としてフィードバックすることで、制御部13による処理を補助することもできる。
【0089】
以上、第1実施形態に係るシステムの基本的な動作例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0090】
図7は、システムの応用的な動作例を示す。サーバ装置1の制御部13は、ユーザによって入力されたユーザ選別情報を受信する処理を実行する(ステップS6)。ユーザ選別情報は、記憶部12のデータベースに格納される。連結部134は、ユーザ選別情報とコンテンツデータとを関連付ける処理を実行する(ステップS7)。例えば、ユーザ選別情報は、データベース内のコンテンツデータ(コンテンツ)と識別子などを介して関連付けられる。
【0091】
認証部135は、記憶部12内のコンテンツデータに関する環境への配慮やGHG排出量およびそのオフセットを認証する処理を実行する(ステップS9)。具体的には、第三者オーディットが、端末2d(不図示)を使用してコンテンツデータに関する環境への配慮の度合いやGHG排出量およびそのオフセットを認定し、サーバ装置1にフィードバックする。そして、認証部135は、かかるフィードバックを認証情報としてコンテンツデータに埋め込む(コンテンツなどを認定する)、または認証部135は認証結果を証書やロゴの形式で出力する。通信部11はネットワークNを介してオフセット支払者が広告代理店または広告媒体提供者の場合には端末2aに、またはオフセット支払者が広告主の場合には端末2cに認証結果とともに証書やロゴを送信してよい。
【0092】
配信部136は、配信部136は、コンテンツデータに含まれる、配信可能なコンテンツを配信する処理を実行する(ステップS10)。配信部136は、端末2を操作してユーザ選別情報のフィードバックを行ったユーザに対して、ユーザ選別情報に基づいた配信を行うこともできる。配信部136は、認証情報が埋め込まれたコンテンツを配信することもできる。サーバ装置1は、配信システムの一部である配信装置として機能することもできる。
【0093】
以上、第1実施形態に係るシステムの応用的な動作例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。制御部13は、少なくとも算出部131、計算部132および選択部133を含んでいればよく、連結部134、認証部135、配信部136は、任意選択的な機能として追加することができる。制御部13は、ソフトウェアモジュールとして実現し、別のシステムに組み込まれる組み込みモジュールとして機能することもできる。
【0094】
本願発明は以下の項目を含む。
(項目1)
環境価値リスト選択装置であって、
コンテンツデータを受信する通信部、
コンテンツデータからGHG排出量を算出する算出部、
GHG排出量を相殺するオフセット環境価値量を計算する計算部、および
オフセット環境価値量に対応する環境価値リストを選択 する選択部を含む、前記装置。
(項目2)
コンテンツデータが、広告媒体情報、算定用データ、GHGデータ、環境価値情報およびオフセット情報から成る群 から選択される、少なくとも1つのコンテンツ項目を含む、項目1に記載の装置。
(項目3)
選択部が、コンテンツデータに含まれる少なくとも1つのコンテンツ項目に基づいて、環境価値リストの選択を行う、項目2に記載の装置。
【0095】
(項目4)
選択された環境価値リストを1以上の端末に送信する、項目1~3のいずれか一項に記載の装置。
(項目5)
端末に表示された環境価値リストに対するユーザ選別情報を受信する、項目4に記載の装置。
(項目6)
ユーザ選別情報とコンテンツデータとを関連付ける連結部をさらに含む、項目5に記載の装置。
(項目7)
環境への配慮を認証する認証部をさらに含む、項目1に記載の装置。
(項目8)
コンテンツを配信する配信部をさらに含む、項目1に記載の装置。
【0096】
(項目9)
環境価値リスト選択方法であって、
サーバ装置が、
コンテンツデータを受信するステップ、
コンテンツデータからGHG排出量を算出するステップ、
GHG排出量を相殺するオフセット環境価値量を算出するステップ、および
オフセット環境価値量に対応する環境価値リストを選択するステップを含む処理を実行する、前記方法。
(項目10)
コンピュータに、
項目9に記載の方法を実行させるためのプログラム。
【符号の説明】
【0097】
1 サーバ装置
11 通信部
12 記憶部
13 制御部
131 算出部
132 計算部
133 選択部
134 連結部
135 認証部
136 配信部
2a、2b、2c 端末
21 表示部
22 操作部
【手続補正書】
【提出日】2023-04-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境価値リスト選択装置であって、
コンテンツデータを受信する通信部、ならびに、
コンテンツデータから環境負荷物質量を算出する算出部、
環境負荷物質量を相殺するオフセット環境価値量を計算する計算部、および
オフセット環境価値量に対応する環境価値リストを選択する選択部を含む制御部を備え、
環境負荷物質量はGHG排出量であり、コンテンツデータは広告媒体情報および算定用データを含み、
広告媒体情報は媒体および広告枠を含み、
算定用データは媒体および広告枠に関してGHGを排出する活動の内容を示す活動内容、および、各活動内容の単位活動量あたりのGHG排出量を示す排出係数を含み、
選択部は、環境価値リストの決済を行うオフセット支払者の選別を第1の端末から受け付け、
制御部は、選別されたオフセット支払者に応じたオフセット状況を、広告枠を選別するための情報として第2の端末の表示部に表示する、
前記装置。
【請求項2】
GHG排出量のデータ種別として一次データまたは二次データを判定する判定部をさら
に含み、
判定部は、活動内容において金額で表される項目が入力された場合、または排出係数が二次データから算出される場合にGHG排出量のデータ種別を二次データと判定し、および、GHG排出量が直接入力された場合にGHG排出量のデータ種別を一次データと判定し、
制御部は、判定されたデータ種別を第2の端末に送信する処理を実行する、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
選択部は、環境価値の種類または分類、コンテンツ情報、およびコンテンツ利用者の環境価値に対する選好情報のうち少なくとも1つに基づいて環境価値リストを限定する、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
制御部は、環境価値リストに対するユーザの選別結果をユーザ選別情報として受信する処理を実行し、
ユーザ選別情報とコンテンツデータとを関連付けてコンテンツデータを更新する連結部をさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
コンテンツは広告を含み、広告媒体情報は広告料金を含み、
オフセット状況に応じて当該広告に関する当初の広告料金にオフセット料金を追加する広告料金計算部さらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
コンテンツデータに関する環境への配慮またはGHG排出量およびそのオフセットを認証する処理を実行する認証部をさらに含み、
認証部は、コンテンツデータに認証情報を埋め込み、または認証結果を証書またはロゴの形式で出力し、
通信部は、オフセット支払者に応じて第1の端末または第2の端末に証書またはロゴを送信する、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
コンテンツを配信する配信部をさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
環境価値リスト選択方法であって、
サーバ装置が、
コンテンツデータを受信するステップ、
コンテンツデータから環境負荷物質量を算出するステップ、
環境負荷物質量を相殺するオフセット環境価値量を算出するステップ、および
オフセット環境価値量に対応する環境価値リストを選択するステップを含む処理を実行し、
環境負荷物質量はGHG排出量であり、コンテンツデータは広告媒体情報および算定用データを含み、
広告媒体情報は媒体および広告枠を含み、
算定用データは媒体および広告枠に関してGHGを排出する活動の内容を示す活動内容、および、各活動内容の単位活動量あたりのGHG排出量を示す排出係数を含み、
サーバ装置は、環境価値リストの決済を行うオフセット支払者の選別を第1の端末から受け付けるステップ、および
選別されたオフセット支払者に応じたオフセット状況を、広告枠を選別するための情報として第2の端末の表示部に表示するステップを含む処理を実行する、
前記方法。
【請求項9】
コンピュータに、
請求項8に記載の方法を実行させるためのプログラム。