(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064641
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】排ガス浄化用触媒
(51)【国際特許分類】
B01J 35/57 20240101AFI20240507BHJP
B01J 27/053 20060101ALI20240507BHJP
B01J 23/63 20060101ALI20240507BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20240507BHJP
F01N 3/10 20060101ALI20240507BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
B01J35/04 301L
B01J27/053 A ZAB
B01J23/63 A
B01D53/94 222
B01D53/94 280
F01N3/10 A
F01N3/28 301P
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173395
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000104607
【氏名又は名称】株式会社キャタラー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西尾 昂大
(72)【発明者】
【氏名】高木 信之
(72)【発明者】
【氏名】東條 巧
(72)【発明者】
【氏名】白川 翔吾
(72)【発明者】
【氏名】清水 建伍
(72)【発明者】
【氏名】星野 将
(72)【発明者】
【氏名】坂本 俊
(72)【発明者】
【氏名】戸田 陽介
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
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4G169FC08
(57)【要約】
【課題】低温においても触媒性能とOSC性能とが両立された排ガス浄化用触媒を提供する。
【解決手段】本発明は、基材と該基材上にコートされている触媒コート層とを有する排ガス浄化用触媒であって、触媒コート層が、Pd及び/又はPtを含む第1の触媒コート層と、Rhを含む第2の触媒コート層とを有し、第1の触媒コート層が、排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して上流側の端部から形成されており、第2の触媒コート層が、排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して上流側の端部から形成されている上流側コート層及び排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して下流側の端部から形成されている下流側コート層を有し、上流側コート層及び下流側コート層におけるRhが特定の担体粒子に担持されており、さらにRhが粒径制御されている排ガス浄化用触媒に関する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と該基材上にコートされている触媒コート層とを有する排ガス浄化用触媒であって、
触媒コート層が、触媒金属としてのPd及び/又はPtを含む第1の触媒コート層と、触媒金属としてのRhを含む第2の触媒コート層とを有し、
第1の触媒コート層が、排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して上流側の端部から形成されており、
第2の触媒コート層が、排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して上流側の端部から形成されている上流側コート層及び排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して下流側の端部から形成されている下流側コート層を有し、
上流側コート層が、RhをOSC材に担持させた粒子を有し、ここで、RhのOSC材への担持量は、上流側コート層中に存在する全Rhの総重量に対して20重量%以上であり、
下流側コート層が、Rhをジルコニア、アルミナ-ジルコニア系複合酸化物(AZ)及びアルミナ-ジルコニア-チタン系複合酸化物(AZT)から選択されるZrO2含有複合酸化物に担持させた粒子を有し、
Rhの平均粒径が、透過型電子顕微鏡観察により測定されたときに、0.8nm以下の標準偏差σで、1.0nm~2.0nmである
排ガス浄化用触媒。
【請求項2】
上流側コート層と下流側コート層のRhの重量比(上流側コート層のRh量:下流側コート層のRh量)が、1:1~1:4である、請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項3】
上流側コート層及び下流側コート層が、互いに重なり合う領域を有する、請求項1又は2に記載の排ガス浄化用触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化用触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等のための内燃機関、例えば、ガソリンエンジン又はディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排ガス中には、有害成分、例えば、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、及び窒素酸化物(NOx)等が含まれている。
【0003】
このため、一般的には、これらの有害成分を分解除去するための排ガス浄化装置が内燃機関に設けられており、この排ガス浄化装置内に取り付けられた排ガス浄化用触媒によってこれらの有害成分がほとんど無害化されている。このような排ガス浄化用触媒としては、例えば、三元触媒やNOx吸蔵還元触媒が知られている。
【0004】
三元触媒は、ストイキ(理論空燃比)雰囲気でCO及びHCの酸化と、NOxの還元とを同時に行う触媒である。
【0005】
また、NOx吸蔵還元触媒は、排ガス中のNOをリーン雰囲気でNO2に酸化して吸蔵し、これをストイキ雰囲気及びリッチ雰囲気で窒素(N2)に還元する触媒であり、リーン雰囲気、ストイキ雰囲気、及びリッチ雰囲気の排ガス成分の変化を巧妙に利用している。
【0006】
しかしながら、これらの触媒を採用した場合でも、排ガスの浄化は未だに課題であり、種々の検討がなされている。
【0007】
例えば、特許文献1は、排ガスが流通するセル構造の基材と、該基材のセル壁面に形成されている触媒層とからなる触媒コンバーターを開示している。特許文献1では、前記触媒層が、前記基材において排ガスの流れ方向の上流側に配設されたRhを含む上流側触媒層と、排ガスの流れ方向の下流側に配設されたPd若しくはPtを含む下流側触媒層とから構成されており、前記上流側触媒層におけるRhを担持させる担体が、Al2O3-CeO2-ZrO2三元系複合酸化物及び/又はAl2O3-ZrO2二元系複合酸化物により特定されている。
【0008】
特許文献2は、基材と該基材上にコートされている触媒コート層とを有する排ガス浄化用触媒を開示している。特許文献2では、前記触媒コート層が、OSC材料並びにRh及びPdを含有している複合金属微粒子を含む上流側コート層と、Rhを含む下流側コート層とを有し、前記Rh及びPdを含有している複合金属微粒子に含まれるRhの量が特定され、さらに、前記Rh及びPdを含有している複合金属微粒子では、RhとPdの合計に対するPdの原子百分率の平均及びRhとPdの合計に対するPdの原子百分率のばらつきに関する標準偏差が特定されている。
【0009】
特許文献3は、酸化物担体粒子、及び前記酸化物担体粒子上に担持されている貴金属粒子を有する担持触媒粒子を開示している。特許文献3では、前記貴金属粒子の質量が特定されており、前記貴金属粒子の平均粒径及びその標準偏差σが特定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2017-189745号公報
【特許文献2】特開2020-131086号公報
【特許文献3】国際公開第2020/175142号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
排ガス浄化用触媒に用いられる貴金属の量は、資源リスクの観点から低減させることが求められている。貴金属の量を低減させるためには、貴金属の触媒活性が排ガス浄化用触媒の使用によって低下することを防止すればよい。
【0012】
一方で、触媒コート層は、触媒金属の他に、酸素貯蔵能(OSC:Oxygen Storage Capacity)を有する材料(OSC材)を含み得る。OSC材とは、酸素を吸放出することができる材料である。OSC材によって、空燃比が変動するような場合においても、酸素濃度を一定に保ち、排ガス浄化用触媒の浄化性能(触媒性能)を維持することができる。
【0013】
つまり、排ガス浄化用触媒としては、触媒性能とOSC性能とを両立させた排ガス浄化用触媒が望ましい。
【0014】
さらに、最近では、このような触媒性能及びOSC性能の両立が、例えばエンジン始動直後等の低温運転時においても求められている。
【0015】
したがって、本発明は、低温においても触媒性能とOSC性能とが両立された排ガス浄化用触媒を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
排ガス浄化用触媒におけるNOxの浄化は、貴金属の中でも特にロジウム(Rh)によって担われている。したがって、良好なNOx浄化性能のためには、Rhの触媒性能を確保することが重要である。
【0017】
一方で、排ガス浄化用触媒におけるOSC性能は、OSC材によって確保される。さらに、排ガス浄化用触媒における低温でのOSC性能は、OSC材だけでなく、貴金属、例えばRhを介した酸素の出入口の確保によっても発現する。
【0018】
しかしながら、OSC材は、酸素を吸放出するその性質から、貴金属と近接することで、当該貴金属の状態変化の遅延や、触媒性能の低下を引き起こす可能性がある。つまり、RhとOSC材とが近接している場合、Rhの還元性の低下や、Rh粒子の安定な粒径の増大が起こり、その結果、浄化性能が低下してしまう。
【0019】
したがって、Rhの触媒性能の確保のために、Rhをジルコニア(ZrO2)系担体に担持すれば、低温時におけるOSC性能が低下し、一方で、低温時におけるOSC性能の確保のために、RhをOSC材に担保すれば、Rhの触媒性能が低下する。
【0020】
そこで、本発明者らは、前記課題を解決するための手段を種々検討した。その結果、本発明者らは、基材と該基材上にコートされている触媒コート層とを有する排ガス浄化用触媒を、以下の(i)~(ix)の通り調整することによって、低温においても触媒性能とOSC性能とが両立されることを見出し、本発明を完成した。
(i)基材上に、触媒金属として貴金属であるPd及び/又はPtを含む第1の触媒コート層を配置する。
(ii)第1の触媒コート層を、排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して上流側の端部から形成する。
(iii)第1の触媒コート層の上又は下に、触媒金属として貴金属であるRhを含む第2の触媒コート層を配置する。
(iv)第2の触媒コート層は、排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して上流側の端部から形成されている上流側コート層及び排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して下流側の端部から形成されている下流側コート層を有する。
(v)上流側コート層には、RhをOSC材に担持させた粒子を配置する。ここで、RhのOSC材への担持量は、上流側コート層中に存在する全Rhの総重量に対して20重量%以上である。
(vi)下流側コート層には、Rhをジルコニア、アルミナ-ジルコニア系複合酸化物(AZ)及びアルミナ-ジルコニア-チタン系複合酸化物(AZT)から選択されるZrO2含有複合酸化物に担持させた粒子を配置する。
(vii)Rhの平均粒径は、透過型電子顕微鏡観察により測定されたときに、0.8nm以下の標準偏差σで、1.0nm~2.0nmである。
(viii)一実施形態では、上流側コート層と下流側コート層のRhの重量比(上流側コート層のRh量:下流側コート層のRh量)を、1:1~1:4に調整する。
(ix)一実施形態では、上流側コート層及び下流側コート層を、互いに重なり合う領域を有するように調整する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によって、低温においても触媒性能とOSC性能とが両立された排ガス浄化用触媒が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態の一例を模式的に示す図である。
【
図2】比較例1及び2並びに実施例1及び2の低温でのOSC性能及びリッチ雰囲気下でのNOx浄化率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
本明細書では、適宜図面を参照して本発明の特徴を説明する。図面では、明確化のために各部の寸法及び形状を誇張しており、実際の寸法及び形状を正確に描写してはいない。それ故、本発明の技術的範囲は、これら図面に表された各部の寸法及び形状に限定されるものではない。なお、本発明の排ガス浄化用触媒は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
【0024】
(基材)
基材としては、公知のハニカム形状を有する基材を使用することができ、具体的には、ハニカム形状のモノリス基材(ハニカムフィルタ、高密度ハニカム等)等が好適に採用される。また、このような基材の材質は、制限されない。基材の材質としては、コージェライト、炭化ケイ素(SiC)、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、ムライト等のセラミックスからなる基材や、クロム及びアルミニウムを含むステンレススチール等の金属からなる基材が挙げられる。これらの中でも、コストの観点から、コージェライトであることが好ましい。
【0025】
(触媒コート層)
触媒コート層は、触媒金属としてのPd及び/又はPtを含む第1の触媒コート層と、触媒金属としてのRhを含む第2の触媒コート層とを少なくとも有する。
【0026】
第1の触媒コート層は、排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して上流側(排ガスが流入する側)の端部(端面)から形成されている。
【0027】
第1の触媒コート層が前記構成をしていることにより、流入した排ガスにおける排ガス、特にHCを効率よく浄化することができる。
【0028】
第2の触媒コート層は、排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して上流側の端部から形成されている上流側コート層及び排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して下流側(排ガスが流出する側)の端部(端面)から形成されている下流側コート層を有する。
【0029】
第1の触媒コート層の幅は、排ガス浄化用触媒における基材の全長の、通常20%~50%、一実施形態では20%~35%である。
【0030】
第1の触媒コート層の幅が前記範囲であることにより、幅が短すぎることによる触媒金属同士の凝集、例えばPd、Ptの高密度化によるPd、Ptの凝集を抑制しつつ、Pd、Ptと排ガス中の有害成分、例えばHCとの接触頻度を向上させることができ、排ガス浄化性能を向上することができる。
【0031】
上流側コート層の幅は、排ガス浄化用触媒における基材の全長の、通常30%~70%、一実施形態では30%~60%である。
【0032】
下流側コート層の幅は、排ガス浄化用触媒における基材の全長の、通常30%~70%、一実施形態では30%~60%である。
【0033】
上流側コート層及び下流側コート層の幅が前記範囲であることにより、幅が短すぎることによる触媒金属同士の凝集、例えばRhの高密度化によるRhの凝集を抑制しつつ、Rhと排ガス中の有害成分、例えばNOxとの接触頻度を向上させることができ、排ガス浄化性能を向上することができる。
【0034】
第1の触媒コート層は、上流側コート層の上に配置されていてもよい。
【0035】
第1の触媒コート層が、上流側コート層の上に配置されることにより、第1の触媒コート層中に含まれるPd、Ptにより流入した排ガス中の有害成分、特にHCを浄化した後に、上流側コート層中に含まれるRhにより有害成分、特にNOxを浄化することができる。
【0036】
第1の触媒コート層は、上流側コート層の下に配置されていてもよい。
【0037】
第1の触媒コート層が、上流側コート層の下に配置されることにより、例えばエンジン始動直後での、Pd、Ptによるアンモニア(NH3)の亜酸化窒素(N2O)への酸化を防ぎつつ、RhによりNOxを浄化することができる。
【0038】
上流側コート層と下流側コート層とは、基材上の全体において一緒になって単層を形成していてもよい。
【0039】
上流側コート層と下流側コート層とは、重なっていてもよい。上流側コート層と下流側コート層とが重なる場合、当該重なる部分において、上流側コート層は、下流側コート層の上に配置されていてもよい。上流側コート層と下流側コート層とが重なる場合、当該重なる部分において、上流側コート層は、下流側コート層の下に配置されていてもよい。上流側コート層と下流側コート層とが重なる場合、当該重なる部分において、上流側コート層及び下流側コート層の互いに重なり合う領域のラップ幅は、排ガス浄化用触媒における基材の全長の、通常5%~30%である。
【0040】
上流側コート層と下流側コート層とが重なる場合、当該重なる部分において、上流側コート層は、下流側コート層の上に配置されることが好ましい。
【0041】
上流側コート層が下流側コート層の上に配置されることにより、排ガスが上流側コート層による雰囲気緩和の後で下流側コート層に導入されるため、その結果、下流側コート層をより有効に活用することができる。
【0042】
第2の触媒コート層が前記構成をしていることにより、当該排ガス浄化用触媒を、特に、スタートアップ触媒(S/C、スタートアップコンバータ等とも称される)及びアンダーフロア触媒(UF/C、アンダーフロアコンバータ、床下触媒等とも称される)を含む二触媒システムにおいて、S/Cに使用した場合に、エンジン始動直後等の低温において高濃度の排ガスが存在し得る雰囲気でも排ガスを効率よく浄化することができる。
【0043】
【0044】
図1に示す本発明の一実施形態の排ガス浄化用触媒は、基材1と該基材1上にコートされている触媒コート層2~4とを有する。触媒コート層2~4は、基材1上に配置されている排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して上流側の端部から形成されている上流側コート層2及び排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して下流側の端部から形成されている下流側コート層3を有する第2の触媒コート層2及び3、ここで、上流側コート層2及び下流側コート層3は、基材1上の全体において一緒になって単層を形成している、と、第2の触媒コート層2及び3の上流側コート層2上に配置されており、且つ排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して上流側の端部から形成されている第1の触媒コート層4、ここで、第1の触媒コート層4の幅は、上流側コート層2の幅と同じである、とからなる。
【0045】
図1に示す本発明の一実施形態の排ガス浄化用触媒では、上流側コート層2が第1の触媒コート層4に覆われているため、排ガスの上流側コート層2への接触頻度が低下し、上流側コート層2の雰囲気緩和能が低下する。一方で、上流側コート層2及び下流側コート層3のラップ部分が存在しないため、有効なRhの活用が実現できる。したがって、当該排ガス浄化用触媒では、浄化性能とOSC性能との両立が達成できる。
【0046】
触媒コート層が第1の触媒コート層と第2の触媒コート層とを有することで、第1の触媒コート層でのHCの浄化及び第2の触媒コート層でのNOxの浄化を効率よく行うことができる。
【0047】
(第1の触媒コート層)
第1の触媒コート層は、触媒金属としてのPd及び/又はPtを含む。
【0048】
第1の触媒コート層に含まれるPd及び/又はPtの含有量は、限定されないが、基材の第1の触媒コート層が塗布されている部分の容量1Lに対して、触媒金属の金属換算で、通常0.2g~10g、一実施形態では0.5g~7.0gである。なお、排ガス浄化用触媒中に含まれる構成成分の含有量は、排ガス浄化用触媒製造時の材料の添加量(揮発させる成分を除く)に依存し、以下ではその説明を省略する。
【0049】
第1の触媒コート層がPd及び/又はPtを含むこと、すなわち、上流側、つまり排ガス浄化用触媒前部にPd及び/又はPtを含む第1の触媒コート層を配置することで、Pd、Ptの高密度化による着火性向上により、排ガス、特にHCの浄化性能が向上する。また、Pd及び/又はPtは、Rhに対して安価であり、低温酸化反応に効果がある。
【0050】
第1の触媒コート層のコート量は、限定されないが、基材の第1の触媒コート層が塗布されている部分の容量1Lに対して、通常40g~200g、一実施形態では70g~200gである。
【0051】
第1の触媒コート層の厚さは、限定されないが、平均の厚さで、通常5μm~50μm、一実施形態では10μm~30μmである。第1の触媒コート層の厚さは、例えば走査電子顕微鏡(SEM)等で測定することができる。
【0052】
第1の触媒コート層中の各材料の量及び第1の触媒コート層の厚さが前記範囲になることにより、排ガス浄化用触媒における圧力損失と触媒性能と耐久性のバランスを良好に保つことができる。
【0053】
(第2の触媒コート層)
第2の触媒コート層に含まれるRhの含有量は、限定されないが、基材の第2の触媒コート層が塗布されている部分の容量1Lに対して、触媒金属の金属換算で、通常0.10g~2.0g、一実施形態では0.3g~1.6gである。
【0054】
上流側コート層に含まれるRhの含有量は、限定されないが、基材の上流側コート層が塗布されている部分の容量1Lに対して、触媒金属の金属換算で、通常0.05g~1.0g、一実施形態では0.1g~0.8gである。
【0055】
上流側コート層がRhを前記含有量で含むことで、上流側コート層が第1の触媒コート層の下に配置されている場合、第1の触媒コート層でHCが十分に浄化された雰囲気の下、Rhが、HC被毒されることなく、NOx浄化性能を十分に発揮することができる。上流側コート層が第1の触媒コート層の上に配置されている場合、エンジン始動直後での、Pd、Ptによるアンモニア(NH3)の亜酸化窒素(N2O)への酸化の前に、RhによりNOxを浄化することができる。
【0056】
下流側コート層に含まれるRhの含有量は、限定されないが、基材の下流側コート層が塗布されている部分の容量1Lに対して、触媒金属の金属換算で、通常0.05g~1.0g、一実施形態では0.2g~0.8gである。
【0057】
下流側コート層がRhを前記含有量で含むことで、上流側に存在する第1の触媒コート層でHCが十分に浄化された雰囲気の下、Rhが、HC被毒されることなく、NOx浄化性能を十分に発揮することができる。
【0058】
一実施形態では、下流側コート層に含まれるRhの含有量は、上流側コート層に含まれるRhの含有量と比較して高い。
【0059】
上流側コート層と下流側コート層のRhの重量比(上流側コート層のRh量:下流側コート層のRh量)は、通常1:1~1:4である。
【0060】
下流側コート層のRh含有量が上流側コート層のRh含有量よりも高いことにより、上流側コート層と比較して低温になりやすい下流側コート層をより有効活用することができる。
【0061】
上流側コート層に含まれるRhは、その一部又は全部がOSC材に担持されている。
【0062】
したがって、上流側コート層は、OSC材をさらに含む。OSC材としては、OSC性能を有する限り限定されない。OSC材としては、セリア、アルミナ-セリア-ジルコニア系複合酸化物(ACZ)、セリア-ジルコニア系複合酸化物(CZ)、及びそれらの二種以上の組み合わせ等が挙げられる。なお、OSC材における各酸化物の組成(配合量)は、当該技術分野で公知のものを使用することができる。
【0063】
上流側コート層において、RhのOSC材への担持量は、上流側コート層中に存在する全Rhの総重量に対して、20重量%以上である。RhのOSC材への担持量の上限値は、Rh全てがOSC材に担持されていてもよいため、限定されない。なお、OSC材に担持されないRhは、OSC性能を有さない材料、例えば金属酸化物、例えばシリカ、酸化マグネシウム、ジルコニア、アルミナ、チタニア、イットリア、酸化ネオジム、酸化ランタン及びそれらの複合酸化物や固溶体、例えばアルミナ-ジルコニア系複合酸化物(AZ)、並びにそれらの二種以上の組み合わせ等に担持される。
【0064】
下流側コート層に含まれるRhは、その全部がOSC性能を有さない材料である、ジルコニア、アルミナ-ジルコニア系複合酸化物(AZ)及びアルミナ-ジルコニア-チタン系複合酸化物(AZT)から選択されるZrO2含有複合酸化物に担持されている。
【0065】
したがって、下流側コート層は、ジルコニア、アルミナ-ジルコニア系複合酸化物(AZ)及びアルミナ-ジルコニア-チタン系複合酸化物(AZT)から選択されるZrO2含有複合酸化物をさらに含む。
【0066】
上流側コート層及び下流側コート層における担体粒子(OSC材又はZrO2含有複合酸化物)の含有量は、Rhの含有量が、担体粒子の総重量に対して、通常5.0重量%以下、例えば0.2重量%~5.0重量%になるように、調整される。例えば、上流側コート層中のOSC材の含有量は、基材の上流側コート層が塗布されている部分の容量1Lに対して、通常20g~100g、一実施形態では40g~100gである。例えば、下流側コート層中のZrO2含有複合酸化物の含有量は、基材の下流側コート層が塗布されている部分の容量1Lに対して、通常30g~200g、一実施形態では40g~200g、一実施形態では50g~200g、一実施形態では50g~150gである。
【0067】
Rhの平均粒径は、TEM観察により測定されたときに、0.8nm以下、一実施形態では0.2nm~0.7nmの標準偏差σで、1.0nm~2.0nm、一実施形態では1.2nm~1.8nmである。
【0068】
Rh粒子では、特に1.0nm未満の微細粒子の割合が低減されている。粒径1.0nm未満の微細なRh粒子の含有量は、Rhの全重量に対して、通常5重量%以下、一実施形態では1重量%以下である。粒径1.0nm未満の微細粒子の割合が少ないことにより、Rh粒子同士の触媒反応中の凝集が抑制される。したがって、Rh粒子の高活性を長期間維持することができる。
【0069】
Rh粒子の分散体の作製方法及びRh粒子の担体粒子への担持方法は、例えば国際公開第2020/175142号に記載されている。
【0070】
例えば、Rh粒子の分散体は以下の2つの方法により製造することができる。
【0071】
(方法1)反応場のクリアランスが所定の範囲に設定された反応器中で、貴金属化合物の酸性溶液と、塩基性溶液とを反応させることを含む方法。
【0072】
(方法2)貴金属化合物の酸性溶液と、塩基性溶液とを混合して反応させた後、高速ミキサー中で撹拌処理することを含む方法。
【0073】
得られたRh粒子の分散体は、担体粒子と接触され、その後焼成されることで、微細なRh粒子が担持された担体粒子を得ることができる。
【0074】
微細なRh粒子が、担体粒子に担持されていることによって、排ガスとRhとの接触面を大きくしつつ、Rhを介した酸素の出入口の確保、すなわち、低温でのOSC性能を確保することができる。
【0075】
上流側コート層のコート量は、限定されないが、基材の上流側コート層が塗布されている部分の容量1Lに対して、通常30g~250g、一実施形態では50g~250gである。
【0076】
下流側コート層のコート量は、限定されないが、基材の下流側コート層が塗布されている部分の容量1Lに対して、通常50g~250g、一実施形態では100g~250gである。
【0077】
上流側コート層の厚さは、限定されないが、平均の厚さで、通常5μm~50μm、一実施形態では10μm~30μmである。上流側コート層の厚さは、例えばSEM等で測定することができる。
【0078】
下流側コート層の厚さは、限定されないが、平均の厚さで、通常5μm~50μm、一実施形態では10μm~30μmである。下流側コート層の厚さは、例えばSEM等で測定することができる。
【0079】
上流側コート層及び下流側コート層中の各材料の量並びに上流側コート層及び下流側コート層の厚さが前記範囲になることにより、排ガス浄化用触媒における圧力損失と触媒性能と耐久性のバランスを良好に保つことができる。
【0080】
(排ガス浄化用触媒の製造方法)
本発明の排ガス浄化用触媒は、前記で説明した排ガス浄化用触媒の構成成分を使用すること以外は、公知のコーティング技術を使用して製造することができる。
【0081】
例えば、本発明の、基材と該基材上にコートされている第1の触媒コート層及び第2の触媒コート層を含む触媒コート層とを有する排ガス浄化用触媒は、(i)Pd及び/又はPtを含む触媒金属前駆体と溶媒とを含む第1の触媒コート層用スラリーを調製する工程と、(ii)Rhを含むRh分散体と担体粒子と溶媒とを含む第2の触媒コート層用スラリーを調製する工程と、(iii)(i)の工程で調製した第1の触媒コート層用スラリーを排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して上流側の端部から塗布して第1の触媒コート層を形成する工程と、(iv)(ii)の工程で調製した第2の触媒コート層用スラリーを塗布して第2の触媒コート層を形成する工程と、を含む、方法により製造することができる。
【0082】
ここで、各材料は、前記した通りである。
【0083】
本発明では、(ii)の工程は、第2の触媒コート層用スラリーを調製する工程として、(ii-1)排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して下流側の端部から形成されている下流側コート層用スラリーを調製する工程、及び(ii-2)排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して上流側の端部から形成されている上流側コート層用スラリーを調製する工程を含む。さらに、(iv)の工程は、第2の触媒コート層を形成する工程として、(iv-1)(ii-1)の工程で調製した下流側コート層用スラリーを塗布して下流側コート層を形成する工程、及び(iv-2)(ii-2)の工程で調製した上流側コート層用スラリーを塗布して上流側コート層を形成する工程を含む。なお、(i)~(iv)の工程順序は、(i)の工程の後に(iii)の工程が実施され、(ii-1)の工程の後に(iv-1)の工程が実施され、(ii-2)の工程の後に(iv-2)の工程が実施されれば、限定されない。
【0084】
(排ガス浄化用触媒の用途)
本発明の排ガス浄化用触媒は、低温、リッチ雰囲気での排ガス浄化性能において大きく効果を発揮することができ、低温、リッチ雰囲気で余剰のHC等が排ガス浄化用触媒に吸着して、当該排ガス浄化用触媒を被毒し得るような環境下においても使用することができる高いHC被毒抑制効果を発現する排ガス浄化用触媒として使用することができる。
【0085】
例えば、本発明の排ガス浄化用触媒は、S/C及びUF/Cを含む二触媒システムにおいて、S/Cとして使用することができる。
【実施例0086】
以下、本発明に関するいくつかの実施例につき説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0087】
1.使用材料
材料1(Al2O3):La2O3複合化Al2O3(Al2O3:99重量%)(La2O3:1重量%)
材料2(ACZ):Al2O3-CeO2-ZrO2系複合酸化物(ACZ)(Al2O3:30重量%)(CeO2:20重量%)(ZrO2:44重量%)(Nd2O3:2重量%)(La2O3:2重量%)(Y2O3:2重量%)
材料3(AZ):Al2O3-ZrO2系複合酸化物(AZ)(Al2O3:30重量%)(ZrO2:60重量%)(La2O3:5重量%)(Y2O3:5重量%)
材料4(CZ):パイロクロア構造を有するCeO2-ZrO2系複合酸化物(Ce2Zr2O7)(CeO2:51.5重量%)(ZrO2:45.5重量%)(Pr6O11:3重量%)(特開2018-038999号公報に基づいて調製)
材料5(Ba):硫酸バリウム
材料6(Rh):硝酸ロジウム水溶液(Rh濃度:2.75重量%)
材料7(粒径制御Rh):硝酸ロジウム水溶液(Rh濃度:1.00重量%)(国際公開第2020/175142号に基づいて調製)
材料8(Pd):硝酸パラジウム水溶液(Pd濃度:8.40重量%)
基材:875cc(600セル六角 壁厚2mil 全長105mm)のコージェライトハニカム基材
【0088】
2.排ガス浄化用触媒の製造
比較例1
最初に、蒸留水に、撹拌しながら、材料6(Rh)、材料3(AZ)を投入し、得られた懸濁液を120℃及び2時間で乾燥し、さらに500℃及び2時間で焼成することで、Rh担持AZ(Rh/AZ)を調製した。
【0089】
次に、蒸留水に、撹拌しながら、Rh/AZ、材料1(Al2O3)、材料2(ACZ)、材料4(CZ)、及びAl2O3系バインダーを投入し、懸濁したスラリー1を調製した。
【0090】
続いて、調製したスラリー1を基材に流し込み、ブロアーで不要分を吹き払うことで、基材壁面に材料をコーティングし、上流側コート層の前駆体層を調製した。その際に、各コーティング材料について、基材の上流側コート層が塗布される部分の容量1Lに対して、材料6がRhの金属換算で0.25g(0.25g/L-zone)になり、材料1が20g(20g/L-zone)になり、材料2が40g(40g/L-zone)になり、材料3が20g(20g/L-zone)になり、材料4が10g(10g/L-zone)になるようにした。また、上流側コート層の前駆体層のコート長は、排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して上流側の端部から、排ガス浄化用触媒における基材の全長の50%を占めるように調整した。
【0091】
最後に、120℃に保たれた乾燥機で、2時間水分を飛ばした後、500℃に保たれた電気炉で、2時間の焼成を行い、上流側コート層(前部)を調製した。
【0092】
続いて、蒸留水に、撹拌しながら、材料6(Rh)、材料3(AZ)を投入し、得られた懸濁液を120℃及び2時間で乾燥し、さらに500℃及び2時間で焼成することで、Rh担持AZ(Rh/AZ)を調製した。
【0093】
次に、蒸留水に、撹拌しながら、Rh/AZ、材料1(Al2O3)、材料2(ACZ)、材料4(CZ)、及びAl2O3系バインダーを投入し、懸濁したスラリー2を調製した。
【0094】
続いて、調製したスラリー2を、上流側コート層を形成させた基材に、上流側コート層を形成させた端面の逆側の端面から流し込み、ブロアーで不要分を吹き払うことで、基材壁面に材料をコーティングし、下流側コート層の前駆体層を調製した。その際に、各コーティング材料について、基材の下流側コート層が塗布される部分の容量1Lに対して、材料6がRhの金属換算で0.25g(0.25g/L-zone)になり、材料1が40g(40g/L-zone)になり、材料2が70g(70g/L-zone)になり、材料3が40g(40g/L-zone)になり、材料4が30g(30g/L-zone)になるようにした。また、下流側コート層の前駆体層のコート長は、排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して下流側の端部から、排ガス浄化用触媒における基材の全長の50%を占めるように調整した。
【0095】
最後に、120℃に保たれた乾燥機で、2時間水分を飛ばした後、500℃に保たれた電気炉で、2時間の焼成を行い、下流側コート層(後部)を調製した。
【0096】
続いて、前記同様に、蒸留水に、撹拌しながら、材料8(Pd)、材料2(ACZ)を投入し、得られた懸濁液を120℃及び2時間で乾燥し、さらに500℃及び2時間で焼成することで、Pd担持ACZ(Pd/ACZ)を調製した。
【0097】
次に、蒸留水に、撹拌しながら、Pd/ACZ、材料1(Al2O3)、材料4(CZ)、材料5(Ba)、及びAl2O3系バインダーを投入し、懸濁したスラリー3を調製した。
【0098】
次に、調製したスラリー3を、第2の触媒コート層である下流側コート層及び上流側コート層を形成させた基材に、上流側コート層を形成させた端面と同じ端面から流し込み、ブロアーで不要分を吹き払うことで、基材壁面に材料をコーティングし、第1の触媒コート層の前駆体層を調製した。その際に、各コーティング材料について、基材の第1の触媒コート層が塗布される部分の容量1Lに対して、材料8がPdの金属換算で7g(7g/L-zone)になり、材料1が25g(25g/L-zone)になり、材料2が75g(75g/L-zone)になり、材料5が15g(15g/L-zone)になるようにした。また、第1の触媒コート層の前駆体層のコート長は、排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して上流側の端部から、排ガス浄化用触媒における基材の全長の30%を占めるように調整した。
【0099】
最後に、120℃に保たれた乾燥機で、2時間水分を飛ばした後、500℃に保たれた電気炉で、2時間の焼成を行い、第1の触媒コート層(前部)を調製し、最終的に排ガス浄化用触媒を製造した。
【0100】
比較例2
比較例1において、スラリー1における材料3(20g/L)を材料2(20g/L)に変更(Rh/AZ→Rh/ACZ)した以外は、比較例1と同様に、排ガス浄化用触媒を製造した。
【0101】
実施例1
比較例2において、材料6を材料7に変更(Rh→粒径制御Rh)した以外は、比較例2と同様に、排ガス浄化用触媒を製造した。
【0102】
実施例2
実施例1において、スラリー1における材料7の量をRhの金属換算で0.17g(0.17g/L-zone)に変更し、スラリー2における材料7の量をRhの金属換算で0.33g(0.33g/L-zone)に変更した以外は、実施例1と同様に、排ガス浄化用触媒を製造した。
【0103】
比較例3
比較例1において、スラリー2における材料3(40g/L)を材料2(40g/L)に変更(Rh/AZ→Rh/ACZ)し、材料6を材料7に変更(Rh→粒径制御Rh)し、スラリー1における材料7の量をRhの金属換算で0.17g(0.17g/L-zone)に変更し、スラリー2における材料7の量をRhの金属換算で0.33g(0.33g/L-zone)に変更した以外は、比較例1と同様に、排ガス浄化用触媒を製造した。
【0104】
比較例4
比較例1において、スラリー1における材料3(20g/L)を材料2(20g/L)に変更(Rh/AZ→Rh/ACZ)し、スラリー2における材料3(40g/L)を材料2(40g/L)に変更(Rh/AZ→Rh/ACZ)し、材料6を材料7に変更(Rh→粒径制御Rh)し、スラリー1における材料7の量をRhの金属換算で0.17g(0.17g/L-zone)に変更し、スラリー2における材料7の量をRhの金属換算で0.33g(0.33g/L-zone)に変更した以外は、比較例1と同様に、排ガス浄化用触媒を製造した。
【0105】
実施例3
実施例2において、上流側コート層の調製を以下の方法に変更した以外は、実施例2と同様に、排ガス浄化用触媒を製造した。
【0106】
(上流側コート層の調製方法)
最初に、蒸留水に、撹拌しながら、材料7(Rh)、材料3(AZ)を投入し、得られた懸濁液を120℃及び2時間で乾燥し、さらに500℃及び2時間で焼成することで、Rh担持AZ(Rh/AZ)を調製した。
【0107】
次に、蒸留水に、撹拌しながら、材料7(Rh)、材料2(ACZ)を投入し、得られた懸濁液を120℃及び2時間で乾燥し、さらに500℃及び2時間で焼成することで、Rh担持AZ(Rh/ACZ)を調製した。
【0108】
次に、蒸留水に、撹拌しながら、Rh/AZ、Rh/ACZ、材料1(Al2O3)、材料2(ACZ)、材料4(CZ)、及びAl2O3系バインダーを投入し、懸濁したスラリー1を調製した。
【0109】
続いて、調製したスラリー1を基材に流し込み、ブロアーで不要分を吹き払うことで、基材壁面に材料をコーティングし、上流側コート層の前駆体層を調製した。その際に、各コーティング材料について、基材の上流側コート層が塗布される部分の容量1Lに対して、材料7がRhの金属換算で0.17g(0.17g/L-zone)になり、ここで、Rhの20%(0.034g/L-zone)が材料2に担持されており、Rhの80%(0.136g/L-zone)が材料3に担持されており、材料1が20g(20g/L-zone)になり、材料2が44g(44g/L-zone)になり、ここで、Rhが担持された材料2が4g(4g/L-zone)になり、材料3が16g(16g/L-zone)になり、材料4が10g(10g/L-zone)になるようにした。また、上流側コート層の前駆体層のコート長は、排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して上流側の端部から、排ガス浄化用触媒における基材の全長の50%を占めるように調整した。
【0110】
最後に、120℃に保たれた乾燥機で、2時間水分を飛ばした後、500℃に保たれた電気炉で、2時間の焼成を行い、上流側コート層(前部)を調製した。
【0111】
実施例4
実施例3の上流側コート層の調製において、Rhの50%(0.085g/L-zone)を材料2に担持し、Rhの50%(0.085g/L-zone)を材料3に担持し、材料2を50g(50g/L-zone)に変更し、ここで、Rhが担持された材料2を10g(10g/L-zone)に変更し、材料3を10g(10g/L-zone)に変更した以外は、実施例3と同様に、排ガス浄化用触媒を製造した。
【0112】
実施例5
実施例1において、スラリー1における材料7の量をRhの金属換算で0.10g(0.10g/L-zone)に変更し、スラリー2における材料7の量をRhの金属換算で0.40g(0.40g/L-zone)に変更した以外は、実施例1と同様に、排ガス浄化用触媒を製造した。
【0113】
表1に、比較例1~4及び実施例1~5の排ガス浄化用触媒における上流側コート層及び下流側コート層の触媒構成をまとめる。
【0114】
【0115】
3.耐久試験
比較例1~4及び実施例1~5の排ガス浄化用触媒について、実際のエンジンを用いて以下の耐久試験を実施した。
各排ガス浄化用触媒を、V型8気筒エンジンの排気系にそれぞれ装着し、触媒床温950℃で50時間にわたって、ストイキ及びリーンの各雰囲気の排ガスを一定時間(3:1の比率)ずつ繰り返して流すことにより行った。
【0116】
4.性能評価
3.耐久試験を実施した比較例1~4及び実施例1~5の排ガス浄化用触媒について、実際のエンジンを用いて以下の性能評価を実施した。
【0117】
4-1.OSC評価
各排ガス浄化用触媒を、L型4気筒エンジンの排気系にそれぞれ装着し、Ga=10g/s、500℃(低温)の条件下、A/Fが14.4と15.1になるようにA/Fフィードバック制御を行った。ストイキ点とA/Fセンサ出力の差分より、酸素の過不足を以下の式から算出し、Ga=10g/s、500℃(低温)での最大酸素吸蔵量をOSCとして評価した。
OSC(g)=0.23×ΔA/F×噴射燃料量
【0118】
OSCの数値が大きいほど、エンジン出ガスのA/F変動を吸収し、排ガス浄化用触媒内の雰囲気をストイキ近傍に保ち、高浄化性能を維持できることができる。
【0119】
4-2.リッチ雰囲気でのNOx浄化率
各排ガス浄化用触媒を、L型4気筒エンジンの排気系にそれぞれ装着し、空燃比(A/F)が14.4の排ガスを供給し、Ga=30/s、550℃でのNOx浄化率を測定した。3分継続時のNOx浄化率をリッチ雰囲気でのNOx浄化活性として評価した。
【0120】
【0121】
【0122】
比較例1及び2では、上流側コート層のRhの担持位置(担体粒子)を、比較例1ではAZ、比較例2ではACZにしたことだけが異なる。比較例1では、RhをAZに担持しているため、リッチ雰囲気下でのNOx浄化率は高いが、低温OSC性能は低くなる。一方、比較例2では、RhをACZ(OSC材)に担持しているため、低温OSC性能は高いものの、リッチ雰囲気下でのNOx浄化率は低くなる。したがって、比較例1及び2を比較することで、低温OSC性能とリッチ雰囲気下でのNOx浄化率がトレードオフの関係になることがわかった。
【0123】
比較例2及び実施例1では、比較例2の第2の触媒コート層のRhを、実施例1において粒径制御Rhに変更したことだけが異なる。したがって、比較例1及び2並びに実施例1を比較することで、粒径制御RhとACZとの組み合わせ(粒径制御Rh/ACZ)でリッチ雰囲気下でのNOx浄化率を維持しつつ、低温OSC性能を向上できることがわかった。
【0124】
実施例1、2及び5では、上流側コート層と下流側コート層のRhの重量比(上流側コート層のRh量:下流側コート層のRh量)を、実施例1では1:1、実施例2では1:2、実施例5では1:4にしたことだけが異なる。したがって、実施例1、2及び5を比較することで、下流側コート層のRh量を上流側コート層のRh量よりも高くしても、低温OSC性能を維持しつつ、リッチ雰囲気下でのNOx浄化率を向上できることがわかった。
【0125】
また、実施例2及び比較例3では、第2の触媒コート層のRhの担持位置(担体粒子)を、反対にしたことだけが異なる。実施例2及び比較例3を比較することで、下流側コート層におけるRhの担体粒子をACZにすると、低温OSC性能が向上するものの、リッチ雰囲気下でのNOx浄化率が低下してしまうことがわかった。これは、以下のように推察される。比較例3では、上流側コート層において還元剤としても働くCOが消費されるため、下流側コート層まで進むCO量が少なくなる。したがって、下流側コート層に存在するRhは、上流側コート層に存在するRhよりも還元しにくくなる。その結果、Rhとして粒径制御Rhを使用しても、リッチ雰囲気下でのNOx浄化率が低下すると考えられる。
【0126】
さらに、実施例2、3及び4により、上流側コート層におけるRhは、上流側コート層中に存在するRh100%をACZに担持しなくても、上流側コート層中に存在するRh20%をACZに担持させれば、本発明の効果を得られることがわかった。