(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064646
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】貨幣管理方法、及び、貨幣処理装置
(51)【国際特許分類】
G07D 11/225 20190101AFI20240507BHJP
【FI】
G07D11/225
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173400
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001432
【氏名又は名称】グローリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 和晃
【テーマコード(参考)】
3E141
【Fターム(参考)】
3E141AA01
3E141BA03
3E141BA06
3E141DA04
3E141DA06
3E141FA07
3E141FJ07
(57)【要約】
【課題】貨幣処理装置の誤判定に起因するスタッフの負担を軽減する。
【解決手段】貨幣管理方法は、貨幣処理装置20の処理対象の貨幣であって投入部210から繰り出された貨幣についての、識別部220による、第1の識別と、第1の識別の後、第1の識別において特定貨幣であると判定された貨幣についての、識別部による、第2の識別と、第2の識別において特定貨幣であると判定された貨幣の情報の、出力部230による、出力と、を有する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貨幣処理装置の処理対象の貨幣であって投入部から繰り出された貨幣についての、識別部による、第1の識別と、
前記第1の識別の後、前記第1の識別において特定貨幣であると判定された貨幣についての、前記識別部による、第2の識別と、
前記第2の識別において特定貨幣であると判定された貨幣の情報の、出力部による、出力と、を有する、貨幣管理方法。
【請求項2】
前記第1の識別において特定貨幣であると判定された貨幣の情報の、記憶部による、記憶と、
前記第2の識別において特定貨幣でないと判定された貨幣について、記憶している情報の、前記記憶部による、消去と、をさらに有する、
請求項1に記載の貨幣管理方法。
【請求項3】
前記出力部は、設定されたタイミングで、前記記憶部によって記憶されている貨幣の情報を出力する、
請求項2に記載の貨幣管理方法。
【請求項4】
前記識別部はさらに、前記第1の識別及び前記第2の識別において、貨幣の固有情報を読み取り、
前記記憶部は、特定貨幣であると判定された貨幣の固有情報を記憶し、
前記記憶部は、前記第2の識別において読み取った貨幣の固有情報と、記憶している貨幣の固有情報とを照合する、
請求項2又は3に記載の貨幣管理方法。
【請求項5】
前記出力部は、管理装置へ、特定貨幣であると判定された貨幣の情報を送信する、
請求項1~4のいずれか1項に記載の貨幣管理方法。
【請求項6】
前記第1の識別において特定貨幣でないと判定された貨幣の、収納部による、収納と、
前記第1の識別において特定貨幣であると判定された貨幣の、搬送部による、前記収納部とは異なる部位への搬送と、をさらに有する、
請求項1~5のいずれか1項に記載の貨幣管理方法。
【請求項7】
前記第1の識別において特定貨幣であると判定された貨幣は返却され、
前記識別部は、返却された貨幣であって、前記投入部に再投入された貨幣について、前記第2の識別を行う、
請求項6に記載の貨幣管理方法。
【請求項8】
報知部による、返却された貨幣の再投入の報知、をさらに有する、
請求項7に記載の貨幣管理方法。
【請求項9】
前記第2の識別において特定貨幣でないと判定された貨幣の、前記収納部による、収納と、
前記第2の識別において特定貨幣であると判定された貨幣の、前記搬送部による、前記収納部とは異なる部位への搬送と、をさらに有する、
請求項7又は8に記載の貨幣管理方法。
【請求項10】
処理対象の貨幣が投入されると共に、貨幣を繰り出す投入部と、
前記投入部が繰り出した貨幣について識別を行う識別部と、
前記識別部が特定貨幣であると判定した貨幣の情報を出力する出力部と、を備え、
前記識別部は、第1の識別を行った後、当該第1の識別において特定貨幣であると判定した貨幣について第2の識別を行い、
前記出力部は、前記第2の識別において特定貨幣でないと判定された貨幣の情報を出力しない、貨幣処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示する技術は、貨幣管理方法、及び、貨幣処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、紙幣処理システムが記載されている。紙幣処理システムは、紙幣の識別を行う紙幣処理装置と、紙幣処理装置に接続された管理装置とを備えている。紙幣処理装置は、処理を行った紙幣の内、特定の記番号を有する紙幣の情報を、管理装置へ出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、ガソリンスタンド等の店舗には、入金機(又は入出金機)が設置される場合がある。入金機は、売上金の入金処理を実行する。入金機を管理する管理装置は、例えば銀行に設置される。管理装置は、入金機に対して通信可能に接続される。
【0005】
入金機の識別部は、偽造貨幣が入金対象の貨幣から除かれるよう、貨幣を識別する。例えばヨーロッパにおいては、偽造貨幣又は真偽不確定貨幣が検出された場合、店舗に、当該貨幣を銀行へ送付する義務がある。入金機は、偽造貨幣又は真偽不確定貨幣を検出すると、管理装置へ、偽造貨幣又は真偽不確定貨幣を検出したことを通知する。管理装置への通知が行われると、店舗のスタッフは、偽造貨幣である、又は、真偽不確定貨幣であると判定された特定貨幣を目視で確認すると共に、その特定貨幣を、報告書を添付して銀行へ送付する。
【0006】
ところで、貨幣の状態が悪い場合、例えば貨幣の汚れがひどい場合、又は、紙幣の一部に欠損がある場合には、識別部は、当該貨幣を偽造貨幣である、又は、真偽不確定貨幣であると誤判定する恐れがある。また、貨幣の搬送の状態が悪い場合にも、識別部は、当該貨幣を偽造貨幣である、又は、真偽不確定貨幣であると誤判定する恐れがある。
【0007】
識別部が誤判定した場合にも、入金機は、管理装置へ、偽造貨幣、又は、真偽不確定貨幣を検出したことを通知する。そのため、店舗のスタッフは、誤判定された貨幣を、報告書を添付して銀行へ送付しなければならない。従来の装置は、スタッフに大きな負担をかけるという問題がある。
【0008】
ここに開示する技術は、貨幣処理装置の誤判定に起因するスタッフの負担を軽減する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明者は、識別部が、偽造貨幣である、又は、真偽不確定貨幣であると誤判定した場合でも、識別部が当該貨幣を再識別すると誤判定が解消されることがあるということに気付いた。
【0010】
ここに開示する貨幣管理方法では、識別部が、偽造貨幣である、又は、真偽不確定貨幣であると判定した場合に、貨幣処理装置が、当該貨幣の情報の出力を保留する。保留中に、識別部は、当該貨幣を再識別する。再識別において当該紙幣が正常貨幣であると判定されると、貨幣処理装置は、当該貨幣の情報を出力しない。
【0011】
具体的にここに開示する技術は、貨幣管理方法に係る。この貨幣管理方法は、下記のステップを含む。
(1)貨幣処理装置の処理対象の貨幣であって投入部から繰り出された貨幣についての、識別部による、第1の識別、
(2)前記第1の識別の後、前記第1の識別において特定貨幣であると判定された貨幣についての、前記識別部による、第2の識別、及び、
(3)前記第2の識別において特定貨幣であると判定された貨幣の情報の、出力部による、出力。
【0012】
ここで、投入部は、貨幣処理装置の外から受け入れた処理対象の貨幣を、装置の中の識別部へ送り出してもよい。搬送路は、投入部と識別部とを互いに接続し、投入部から識別部へ貨幣を搬送してもよい。識別部は、処理対象の貨幣を識別する。識別部は、貨幣の特徴を取得するセンサを有していてもよい。識別部は、少なくとも貨幣の真偽を識別してもよい。特定貨幣は、偽造貨幣、又は、真偽不確定貨幣であってもよい。
【0013】
識別部は、第1の識別において特定貨幣であると判定された貨幣について、第2の識別を行う。第1の識別が誤判定であった場合でも、第2の識別において正しい判定が行われる。複数回の識別は、誤判定を抑制する。尚、第2の識別は、任意のタイミングで行われてもよい。第2の識別は、第1の識別の直後に行われてもよい。第2の識別は、第1の識別に対して時間を空けて行われてもよい。同じ装置の識別部によって、第1の識別と第2の識別との両方が行われてもよい。第1の識別は、第1の装置の識別部によって行われ、第2の識別は、第2の装置の識別部によって行われてもよい。
【0014】
出力部は、特定貨幣であると判定された貨幣の情報を出力する。しかし、出力部は、第2の識別において特定貨幣でないと判定された貨幣の情報を出力しない。誤判定に基づく情報出力が抑制される。情報出力が行われないと、例えば特定貨幣の送付といったスタッフの作業が生じない。誤判定の抑制は、誤判定に起因するスタッフの負担を軽減させる。
【0015】
出力部は、例えば情報を、通信によって貨幣処理装置の外へ出力してもよい。出力部は、例えば情報を、記憶媒体に記録してもよい。記憶媒体は、例えば不揮発性の半導体記憶装置であってもよい。記憶媒体は、磁気記憶装置であってもよい。記憶媒体は、貨幣処理装置から取り外し可能であってもよい。
【0016】
前記の貨幣管理方法は、以下のステップをさらに有する、としてもよい。
(4)前記第2の識別において特定貨幣でないと判定された貨幣の情報の、前記出力部による、非出力。
【0017】
前記の貨幣管理方法は、以下のステップをさらに有する、としてもよい。
(5)前記第1の識別において特定貨幣であると判定された貨幣の情報の、記憶部による、記憶、及び、
(6)前記第2の識別において特定貨幣でないと判定された貨幣について、記憶している情報の、前記記憶部による、消去。
【0018】
第2の識別において特定貨幣でないと判定された貨幣の情報は、消去される。当該貨幣の情報は出力されない。
【0019】
尚、記憶部は、貨幣処理装置の記憶部に限らない。記憶部は、貨幣処理装置に接続された装置の記憶部であってもよい。貨幣処理装置に接続された装置は、例えばPOSレジスタ又は管理装置であってもよい。
【0020】
前記貨幣管理方法において、前記出力部は、設定されたタイミングで、前記記憶部によって記憶されている貨幣の情報を出力する、としてもよい。
【0021】
出力部は、設定された時刻に、情報を出力してもよいし、設定された時間間隔で定期的に、情報を出力してもよい。また、出力部は、第2の識別を行った後のタイミングで、情報を出力してもよい。
【0022】
前述したように、第2の識別において特定貨幣でないと判定された貨幣の情報は消去されるから、誤判定に基づく情報出力が抑制される。
【0023】
前記貨幣管理方法において、前記識別部はさらに、前記第1の識別及び前記第2の識別において、貨幣の固有情報を読み取り、
前記記憶部は、特定貨幣であると判定された貨幣の固有情報を記憶し、
前記記憶部は、前記第2の識別において読み取った貨幣の固有情報と、記憶している貨幣の固有情報とを照合する、としてもよい。
【0024】
貨幣の固有情報は、例えば紙幣の識別番号(identification number)、より具体的には記番号(serial number)であってもよい。貨幣の固有情報に基づいて、記憶部は、第2の識別において読み取った貨幣の固有情報と、記憶している貨幣の固有情報とを照合できる。固有情報に基づく照合によって、記憶部は、記憶している情報の中から、第2の識別において特定貨幣でないと判定された貨幣と同一の貨幣の情報を抽出できる。記憶部は、第2の識別において特定貨幣でないと判定された貨幣について、記憶している情報を消去できる。
【0025】
前記貨幣管理方法において、前記出力部は、管理装置へ、特定貨幣であると判定された貨幣の情報を送信する、としてもよい。
【0026】
管理装置は、貨幣処理装置を管理する装置であってもよい。貨幣処理装置と管理装置とは、有線及び/又は無線の通信線を介して、直接又は間接に、接続されていてもよい。貨幣処理装置と管理装置とは、同じ場所に設置されていてもよいし、離れた場所に設置されていてもよい。管理装置は、出力部が送信した貨幣の情報を記憶してもよい。管理装置は、特定貨幣の情報を、貨幣処理装置の外部において管理できる。
【0027】
前記貨幣管理方法は、以下のステップをさらに有する、としてもよい。
(7)前記第1の識別において特定貨幣でないと判定された貨幣の、収納部による、収納、及び、
(8)前記第1の識別において特定貨幣であると判定された貨幣の、搬送部による、前記収納部とは異なる部位への搬送。
【0028】
貨幣処理装置は、特定貨幣でないと判定された貨幣と、特定貨幣であると判定された貨幣とを、分けることができる。前記の「部位」は、貨幣処理装置の中の部位であってもよいし、貨幣処理装置の外につながる部位であってもよい。
【0029】
前記貨幣管理方法において、前記第1の識別において特定貨幣であると判定された貨幣は返却され、
前記識別部は、返却された貨幣であって、前記投入部に再投入された貨幣について、前記第2の識別を行う、としてもよい。
【0030】
貨幣処理装置の使用者は、第1の識別後に返却された貨幣を、投入部へ再投入する。識別部は、第1の識別において特定貨幣であると判定された貨幣についてのみ、第2の識別を行う。不必要な第2の識別の実行が回避できる。
【0031】
尚、特定貨幣であると判定された貨幣は、返却部へ返却されてもよい。特定貨幣であると判定された貨幣は、投入部と同じ部位へ返却されてもよい。
【0032】
前記貨幣管理方法は、下記のステップをさらに有する、としてもよい。
(9)報知部による、返却された貨幣の再投入の報知。
【0033】
使用者が、報知に従って貨幣の再投入を行えば、識別部は、第2の識別が必要な貨幣について、第2の識別を行うことができる。第2の識別が行われれば、誤判定される貨幣の数が減る。
【0034】
報知部は、表示を通じて、使用者に報知してもよい。報知部は、音声を通じて使用者に報知してもよい。
【0035】
前記貨幣管理方法は、下記のステップをさらに有する、としてもよい。
(10)前記第2の識別において特定貨幣でないと判定された貨幣の、前記収納部による、収納、及び、
(11)前記第2の識別において特定貨幣であると判定された貨幣の、前記搬送部による、前記収納部とは異なる部位への搬送。
【0036】
第2の識別において正しく判定された貨幣は、正常貨幣として収納部に収納される。第2の識別において特定貨幣であると判定された貨幣は、特定貨幣である、又は、特定貨幣である可能性が高いため、収納部に収納されない。当該貨幣は返却されてもよい。当該貨幣は、貨幣処理装置の処理対象から外れる。
【0037】
尚、第2の識別において特定貨幣であると判定された貨幣は、第1の識別において特定貨幣であると判定された貨幣の場合と同じ部位へ搬送されてもよい。第2の識別において特定貨幣であると判定された貨幣は、第1の識別において特定貨幣であると判定された貨幣の場合とは異なる部位へ搬送されてもよい。
【0038】
ここに開示する技術はまた、貨幣処理装置に係る。この貨幣処理装置は、
処理対象の貨幣が投入されると共に、貨幣を繰り出す投入部と、
前記投入部が繰り出した貨幣について識別を行う識別部と、
前記識別部が特定貨幣であると判定した貨幣の情報を出力する出力部と、を備え、
前記識別部は、第1の識別を行った後、当該第1の識別において特定貨幣であると判定した貨幣について第2の識別を行い、
前記出力部は、前記第2の識別において特定貨幣でないと判定された貨幣の情報を出力しない。
【0039】
識別部が第2の識別を行うことによって、誤判定が抑制される。第2の識別において特定貨幣でないと判定された貨幣の情報が出力されないため、誤判定に基づく情報出力が抑制される。情報が出力されなければスタッフの作業が生じないから、識別部の誤判定に起因するスタッフの負担が軽減する。
【0040】
ここに開示する技術はまた、貨幣処理システムに係る。この貨幣処理システムは、
処理対象の貨幣について識別を行う貨幣処理装置と、
前記貨幣処理装置に対して通信可能に接続された管理装置と、を備え、
前記貨幣処理装置は、第1の識別を行った後、当該第1の識別において特定貨幣であると判定した貨幣について第2の識別を行い、
前記貨幣処理装置は、特定貨幣であると判定した貨幣の情報を、前記管理装置へ送信すると共に、前記第2の識別において特定貨幣でないと判定した貨幣の情報を、前記管理装置へ送信しない、
このシステムは、貨幣処理装置の誤判定に起因するスタッフの負担を軽減する。
【発明の効果】
【0041】
前述した、貨幣管理方法、貨幣処理装置、及び、貨幣処理システムは、貨幣処理装置の誤判定に起因するスタッフの負担を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図4】
図4は、再計数処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、貨幣管理方法、及び、貨幣処理装置の実施形態について、図面を参照しながら説明する。ここで説明する貨幣管理方法、及び、貨幣処理装置は例示である。
【0044】
図5は、貨幣処理システム100を示している。貨幣処理システム100は、貨幣処理装置20と、管理装置30と、を備えている。貨幣処理装置20は、例えば店舗に設置される。貨幣処理装置20は、例えば店舗の売上金の入金処理を行う。貨幣処理装置20は、処理対象の貨幣90について識別を行う。管理装置30は、貨幣処理装置20を管理する。管理装置30は、貨幣処理装置20に対して通信可能に接続されている。管理装置30は、例えば銀行に設置される。
【0045】
貨幣処理装置20は、投入部210を備えている。投入部210には、貨幣処理装置20の処理対象の貨幣90が、貨幣処理装置20の外から投入される。投入部210は、貨幣処理装置20の中の識別部220へ貨幣90を送る。
【0046】
識別部220は、投入部210に接続されている。識別部220は、投入部210から送り出された貨幣90を識別する。識別部220は、少なくとも、貨幣90が特定貨幣であるか、特定貨幣でないか、を判定する。識別部220は、偽造貨幣、又は、真偽不確定貨幣を、特定貨幣であると判定してもよい。
【0047】
貨幣処理装置20は、出力部230を備えている。出力部230は、識別部220が特定貨幣であると判定した貨幣90の情報を、
図5に破線の矢印で示すように、管理装置30へ出力、つまり送信する。管理装置30は、出力部230が送信した情報を、受信する。管理装置30は、受信した貨幣90の情報を記憶する。管理装置30は、特定貨幣の情報を管理する。
【0048】
貨幣処理装置20が特定貨幣の情報を管理装置30へ送信した場合、店舗のスタッフは、特定貨幣と判定された貨幣90を、報告書を添付して、銀行へ送付する。
【0049】
この貨幣処理システム100又は貨幣処理装置20における貨幣管理方法は、次のステップを備えている。
(1)貨幣処理装置20の処理対象の貨幣90であって投入部210から繰り出された貨幣90について、識別部220が第1の識別を行うステップ、
(2)第1の識別の後、第1の識別において特定貨幣であると判定された貨幣90について、識別部220が第2の識別を行うステップ、及び、
(3)第2の識別において特定貨幣であると判定された貨幣90の情報を、出力部230が出力するステップ。
【0050】
入金対象の貨幣90の状態が悪い場合、例えば貨幣90の汚れがひどい場合、又は、紙幣の一部に欠損がある場合には、識別部220は、当該貨幣を偽造貨幣である、又は、真偽不確定貨幣であると誤判定する恐れがある。また、入金対象の貨幣90の搬送の状態が悪い場合にも、識別部220は、当該貨幣90を偽造貨幣である、又は、真偽不確定貨幣であると誤判定する恐れがある。
【0051】
識別部220は、第1の識別において特定貨幣であると判定した貨幣90について、第2の識別を行う。第1の識別が誤判定であった場合でも、当該貨幣90について第2の識別を行うと、誤判定が解消され、正しい判定が行われる場合がある。識別部220が第2の識別を行うことは、誤判定を抑制する。
【0052】
出力部230は、特定貨幣であると判定された貨幣の情報を、管理装置30へ送信する。出力部230は、第1の識別において特定貨幣であると判定した貨幣90について、その情報の送信を保留する。出力部230は、第2の識別において特定貨幣でないと判定された貨幣90の情報を、管理装置30へ送信しない。これにより、誤判定に基づく情報出力が抑制される。
【0053】
情報出力が行われなければ、スタッフは貨幣90を銀行へ送付する必要がない。誤判定に基づく情報出力が抑制されることは、スタッフの負担を軽減させる。
【0054】
図1は貨幣処理装置4を例示している。
図2は貨幣処理システム10を例示している。
図1の貨幣処理装置4は、
図5の貨幣処理装置20の変形例であり、
図2の貨幣処理システム10は、
図5の貨幣処理システム100の変形例である。貨幣処理装置及び貨幣処理システムの変形例におけるそれぞれの構成は、合理的な範囲で、個別に、または他の構成と組み合わせて、
図5の貨幣処理装置20及び貨幣処理システム100に適用できる。また、以下に示す貨幣管理方法は、合理的な範囲で、
図5の貨幣処理装置20及び貨幣処理システム100における貨幣管理方法およびその変形例に適用できる。
【0055】
以下の説明では、
図1の紙面右を前、紙面左を後と呼ぶ。貨幣処理装置4の前は、後述する投入部61及び払出部63が位置する箇所であり、ユーザーは、貨幣処理装置4の前に位置して、貨幣処理装置4を使用する。貨幣処理装置4の後は、貨幣処理装置4の前に対して反対側である。尚、以下における「前」「後」は、貨幣処理装置4の説明にのみ使用され、貨幣処理装置4の構造の特定には使用されない。
【0056】
貨幣処理装置4は、貨幣処理装置20と同様に、例えばガソリンスタンドといった店舗に設置される。貨幣処理装置4は、例えば店舗の売上金の入金処理を行う。貨幣処理装置4は、例えば店舗で使用する釣銭の出金処理を行う。貨幣処理装置4の処理対象は、紙幣9である。
【0057】
貨幣処理装置4は、上部筐体41と下部筐体42とを有している。上部筐体41は、下部筐体42の上に位置している。上部筐体41及び下部筐体42のそれぞれには、紙幣9を一枚一枚搬送する搬送路が配設されている。搬送路は、第1搬送路51と第2搬送路52と第3搬送路53とを含んでいる。第1搬送路51及び第2搬送路52は、上部筐体41の中に位置し、第3搬送路53は、下部筐体42の中に位置している。第1搬送路51、第2搬送路52、及び、第3搬送路53は、相互につながっている。第1搬送路51、第2搬送路52、及び、第3搬送路53はそれぞれ、多数のローラ、複数のベルト、ローラ及びベルトを駆動するモータ、及び、複数のガイドを有している。搬送部5(
図2参照)が、第1搬送路51、第2搬送路52、及び、第3搬送路53による紙幣9の搬送を制御する。
【0058】
貨幣処理装置4は、投入部61を有している。投入部61は、上部筐体41の前側に位置している。投入部61は、上部筐体41の外に開口する投入口611を有している。使用者は、投入口611を通じて、入金対象の紙幣9を投入部61に投入する。投入部61は、投入された紙幣9を保持する。投入部61はまた、保持している紙幣9を、一枚一枚、上部筐体41の中へ繰り出す機構を有している。
【0059】
識別部62は、上部筐体41の中に位置している。識別部62は、第1搬送路51を介して投入部61に接続されている。
図1に実線の矢印で示すように、紙幣9は、第1搬送路51に沿って、貨幣処理装置4の前から後へ搬送される。
【0060】
識別部62は、投入部61が繰り出した紙幣9の一枚一枚について識別を行う。識別部62は、紙幣9の特徴を取得するセンサを有している。センサには、例えば、画像センサ、赤外線センサ、紫外線センサ、及び磁気センサが含まれる。識別部62は、紙幣9の特徴に基づいて、紙幣9の金種、真偽、及び、正損を識別する。識別部62はまた、紙幣9の識別番号を取得する。識別番号は、例えば記号の列なりから構成される。記号は、数字、文字、及び、符号の少なくとも二種類を含む。
【0061】
識別部62を通過した紙幣9は、第1搬送路51から、第2搬送路52又は第3搬送路53へ搬送される。第1搬送路51、第2搬送路52、及び、第3搬送路53の接続箇所には、分岐爪が設けられている。分岐爪は、搬送部5の制御信号を受けて、紙幣9の搬送先を切り替える動作を行う。
【0062】
貨幣処理装置4は、払出部63を有している。払出部63は、上部筐体41の前側において、投入部61の下側に位置している。払出部63は、上部筐体41の外に開口する払出口631を有している。シャッター632が、払出口631を閉じる。シャッター632は、
図1に矢印で示すように、払出口631を開閉する。
【0063】
払出部63は、第2搬送路52に接続されている。第2搬送路52は、後述する収納部71~74から繰り出された出金対象の貨幣9を、払出部63へ向かって搬送する(
図1の破線の矢印参照)。払出部63は、出金対象の紙幣9を保持する。シャッター632が払出口631を開けると、使用者は、開放された払出口631を通じて、出金対象の紙幣9を払出部63から取り出すことができる。
【0064】
払出部63はまた、入金処理時に発生したリジェクト紙幣を、保持する。使用者は、開放された払出口631を通じて、リジェクト紙幣を払出部63から取り出す。さらに、詳細は後述するが、払出部63は、入金処理時に識別部62が判定した偽造紙幣又は真偽不確定紙幣(以下、これらを総称して特定紙幣91と呼ぶ)を保持する。第2搬送路52は、識別部62を通過した後の、リジェクト紙幣、又は、特定紙幣91を、払出部63へ向かって搬送する。
【0065】
尚、第2搬送路52には、第1ボックス64及び第2ボックス65が接続されている。第1ボックス64及び第2ボックス65は、収納部71~74に収納されない紙幣9を収納する。
【0066】
貨幣処理装置4は、収納部を有している。
図1の貨幣処理装置4は、第1~第4収納部71~74を有している。第1~第4収納部71~74は全て、下部筐体42に収容されている。第1~第4収納部71~74は、下部筐体42の後側において、上下に並んでいる。尚、収納部の数、及び、その配置は、図例に限定されない。
【0067】
第1~第4収納部71~74はそれぞれ、紙幣9をドラムに巻き取って収納する、巻き取り式の収納部である。尚、収納部は、スタック式の収納部であってもよい。第1~第4収納部71~74はそれぞれ、入金処理において紙幣9を収納し、出金処理において紙幣9を繰り出す。
【0068】
第1収納部71及び第4収納部74は共に、一つの収納エリアを有している。第1収納部71及び第4収納部74それぞれの収納エリアは、第3搬送路53に接続されている。第3搬送路53は、下部筐体42の中で、上下に並んだ第1~第4収納部71~74の後側において、上下に延びている。
【0069】
第2収納部72は、第1エリア721と第2エリア722との二つの収納エリアを有している。第3収納部73も、第2収納部72と同様に、、第1エリア731と第2エリア732との二つの収納エリアを有している。第2収納部72及び第3収納部73それぞれの、二つの収納エリア721、722、731、732は、第3搬送路53に接続されている。
【0070】
貨幣処理装置4は、回収部75を有している。回収部75は、回収対象の紙幣9を収納する。回収部75は、下部筐体42の前側に位置している。回収部75は、第3搬送路53に接続されている。
【0071】
貨幣処理装置4は、
図2に示すように、記憶部76を有している。記憶部76は、各種の情報を記憶する。記憶部76は、例えば、磁気記憶装置、又は、不揮発性の半導体記憶装置である。
【0072】
貨幣処理装置4は、報知部77を有している。報知部77は、貨幣処理装置4の使用者に対する報知を行う。報知部77は、例えばフラットパネルディスプレイからなる。フラットパネルディスプレイは、表示を通じて使用者に報知する。報知部77は、音声を通じて使用者に報知してもよい。
【0073】
貨幣処理装置4は、通信部78を有している。通信部78は、後述する管理装置3との間で通信を行う。
【0074】
貨幣処理装置4は、制御部79を有している。制御部79は、各部へ制御信号を出力する。制御部79の制御信号に従って各部が動作することによって、貨幣処理装置4は、処理を実行する。
【0075】
貨幣処理システム10は、貨幣処理装置4と管理装置3とを備えている。管理装置3は、貨幣処理装置4を管理する。管理装置3は、例えば銀行に設置される。管理装置3は、貨幣処理装置4に対し、通信回線8を介して、通信可能に接続されている。通信回線8は、例えばVPN(Virtual Private Network)であってもよい。銀行に設置された管理装置3はさらに、中央銀行の装置に接続されていてもよい。
【0076】
貨幣処理装置4は、後述するように、処理対象の紙幣9について、識別部62が特定紙幣91であると判定した紙幣の情報を、管理装置3へ送信する。管理装置3は、受信した特定紙幣91の情報を記憶する。管理装置3は、特定紙幣91の情報を、貨幣処理装置4の外部において管理する。
【0077】
次に、貨幣処理装置4が実行する入金処理を説明する。入金処理は、投入部61に投入された入金対象の紙幣9を、識別部62が計数し、収納部71~74が紙幣9を収納する処理である。前述したように、店舗のスタッフは、貨幣処理装置4を使って、例えば店舗の売上金の入金処理を行う。
【0078】
図3は、貨幣処理装置4が実行する入金処理のフローを示している。貨幣処理装置4の使用者が、入金対象の紙幣を投入部61に投入し、入金処理の実行を貨幣処理装置4に指示すれば、
図3のフローがスタートする。
【0079】
貨幣処理装置4は、ステップS31において、入金処理の実行か否かを判断する。入金処理の実行である場合、貨幣処理装置4の投入部61は、ステップS32において、紙幣9を、一枚一枚、上部筐体41の中へ繰り出す。搬送部5は、紙幣9を識別部62へ搬送する。
【0080】
ステップS33において、識別部62は、紙幣9を識別する。識別部62は、紙幣9の金種、真偽、及び、正損を識別する。識別部62はまた、紙幣9の識別番号を取得する。
【0081】
ステップS34において、制御部79は、識別部62が正常紙幣である、つまり、偽造紙幣又は真偽不確定紙幣でないと判定したか否かを判断する。識別部62が正常紙幣と判定した場合、搬送部5は、ステップS35において、当該紙幣9を、第1~第4収納部71~74のいずれかに搬送する。正常紙幣の搬送先は、当該紙幣9の金種、及び/又は、正損に応じて定まる。第1~第4収納部71~74はそれぞれ、紙幣9を収納する。
【0082】
識別部62が正常紙幣でないと判定した場合、搬送部5は、ステップS36において、当該紙幣を、払出部63へ搬送する。正常紙幣でない紙幣には、前述した特定紙幣91、つまり、偽造紙幣又は真偽不確定紙幣である特定紙幣91が含まれる。貨幣処理装置4は、入金処理において、特定紙幣でないと判定された紙幣と、特定紙幣であると判定された紙幣とを、分けることができる。尚、搬送部5は、例えば搬送異常によって識別部62が正しく識別をすることができなかったリジェクト紙幣も、払出部63へ搬送してもよい。
【0083】
ステップS37において、記憶部76は、払出部63へ搬送された特定紙幣91の情報を記憶する。記憶部76は、特定紙幣91の金種、及び、識別番号を少なくとも記憶する。
【0084】
ステップS38において、制御部79は、投入部61の繰り出しが完了したか否かを判断する。この判断がNoの場合、ステップS32において、投入部61は、紙幣の繰り出しを継続する。
【0085】
投入部61の繰り出しが完了した場合、制御部79は、ステップS39において、払出部63に特定紙幣91が無いか否かを判断する。払出部63に特定紙幣91が無い場合、入金対象の紙幣9は全て、第1~第4収納部71~74のいずれかに収納されている。入金処理が完了する。
【0086】
払出部63に特定紙幣91が有る場合、ステップS310において、払出部63のシャッター632が開く。使用者は、払出口631を通じて、払出部63から特定紙幣91を取り出す。
【0087】
貨幣処理装置4の報知部77は、ステップS311において、特定紙幣91の再計数処理の実行を促す通知を、使用者に対し行う。
【0088】
使用者が、特定紙幣91を投入部61に投入し、再計数処理の実行を貨幣処理装置4に指示すれば、ステップS31の判断がNoとなり、続くステップS312の判断がYesとなる。貨幣処理装置4は、ステップS313において、再計数処理を実行する。入金処理において、正常紙幣と特定紙幣91とが分けられているため、貨幣処理装置4は、入金処理において特定紙幣であると判定された紙幣についてのみ、再計数処理を行う。識別部62は、紙幣に対して、不必要な2回目の識別を行うことが回避できる。
【0089】
図4は、貨幣処理装置4が実行する再計数処理のフローを示している。ステップS41において、投入部61は、投入部61へ再び投入された紙幣9(つまり、特定紙幣91)を、一枚一枚、上部筐体41の中へ繰り出す。搬送部5は、紙幣9を識別部62へ搬送する。
【0090】
ステップS42において、識別部62は、紙幣9を識別する。再計数処理においても、識別部62は、紙幣9の金種、真偽、及び、正損を識別する。識別部62はまた、紙幣9の識別番号を取得する。ステップS43において、制御部79は、識別部62が正常紙幣と判定したか否かを判断する。
【0091】
識別部62が正常紙幣と判定した場合、搬送部5は、ステップS44において、当該紙幣9を、第1~第4収納部71~74のいずれかに搬送する。この場合においても、正常紙幣の搬送先は、当該紙幣9の金種、及び/又は、正損に応じて定まる。第1~第4収納部71~74はそれぞれ、紙幣9を収納する。1回目の識別において偽造紙幣又は真偽不確定紙幣であると判定された特定紙幣91は、1回目の識別が誤判定であれば、2回目の識別において正常紙幣と判定される。
【0092】
ステップS45において、記憶部76は、ステップS42において読み取られた紙幣9の識別番号と、記憶部76が記憶している紙幣9の識別番号とを照合する。ステップS46において、記憶部76は、ステップS43において正常紙幣であると判定された紙幣9について、記憶している紙幣9の情報を消去する。
【0093】
識別部62が正常紙幣でないと判定した場合、搬送部5は、ステップS47において、当該紙幣を、払出部63へ搬送する。当該紙幣は、特定紙幣91である。この場合、記憶部76は、当該紙幣の情報を消去しない。また、再計数処理において、記憶部76は、当該紙幣の情報を記憶しない。記憶部76は、当該紙幣の情報を既に記憶しているためである。
【0094】
また、再計数処理においても、貨幣処理装置4は、正常紙幣と特定紙幣91とを分ける。再計数処理において特定紙幣であると判定された紙幣は、特定紙幣である、又は、特定紙幣である可能性が高い。当該紙幣が払出部63へ搬送されるため、当該紙幣は、貨幣処理装置4の処理対象から外れる。
【0095】
ステップS48において、制御部79は、投入部61の繰り出しが完了したか否かを判断する。この判断がNoの場合、ステップS41おいて、投入部61は、紙幣9の繰り出しを継続する。
【0096】
投入部61の繰り出しが完了した場合、制御部79は、ステップS49において、払出部63に特定紙幣91が無いか否かを判断する。払出部63に特定紙幣91が無い場合、再計数された紙幣9は全て、正常紙幣であると判定されることにより、第1~第4収納部71~74のいずれかに収納されている。再計数処理が完了する。
【0097】
払出部63に特定紙幣91が有る場合、ステップS410において、払出部63のシャッター632が開く。使用者は、払出口631を通じて、払出部63から特定紙幣91を取り出す。後述するように、再計数処理において特定紙幣91と判定された紙幣の情報は、管理装置3へ送信される。店舗のスタッフは、払出部63から取り出された特定紙幣91を、目視で確認すると共に、その特定紙幣91を、報告書を添付して銀行へ送付する。
【0098】
尚、再計数処理において、搬送部5は、特定紙幣91と判定された紙幣を、払出部63以外の部位、例えば第1ボックス64又は第2ボックス65へ搬送してもよい。この場合、店舗のスタッフは、第1ボックス64又は第2ボックス65へ収納された特定紙幣91を、取り出して銀行へ送付する。
【0099】
ここで、貨幣処理装置4の使用者は、再計数処理の実行を、任意のタイミングで指示することができる。使用者は、前記の入金処理が終わったの直後に、再計数処理の実行を指示することができる。使用者はまた、前記の入金処理から時間を空けて、再計数処理の実行を指示することができる。使用者は、入金処理と再計数処理との間に、新たな入金処理の実行を指示してもよい。新たな入金処理の際に、新たな特定紙幣91が生じる場合がある。使用者は、複数の入金処理のそれぞれにおいて発生した特定紙幣91の再計数処理の実行を、個別に指示してもよい。使用者はまた、複数の入金処理のそれぞれにおいて発生した特定紙幣91をまとめた上で、再計数処理の実行を指示してもよい。
【0100】
図3のフローに戻り、制御部79は、ステップS314において、管理装置3へ情報を送信するタイミングであるか否かを判断する。ステップS314の判断がYesの場合、通信部78は、ステップS315において、記憶部76が記憶している特定紙幣91の情報を、管理装置3へ送信する。送信する情報には、例えば(a)特定紙幣91の金種、(b)特定紙幣91が偽造紙幣であるか、真偽不確定紙幣であるかの情報、及び、(c)特定紙幣91の識別番号が含まれる。通信部78は、出力部の一例である。
【0101】
管理装置3は、受信した特定紙幣91の情報を記憶する。前述したように、再計数処理において特定紙幣91であると判定された紙幣の情報は、記憶部76に記憶されているから、管理装置3へ送信される。再計数処理において特定紙幣91でないと判定された紙幣の情報は、記憶部76から消去されているから、管理装置3へ送信されない。
【0102】
尚、通信部78は、設定された時刻に、情報の送信をしてもよい。通信部78は、設定された時間間隔で定期的に、情報の送信をしてもよい。また、通信部78は、再計数処理が完了した後のタイミングで、情報の送信をしてもよい。
【0103】
貨幣処理装置4は、入金処理において特定紙幣であると判定された紙幣について、再計数処理において第2の識別を行う。入金処理における第1の識別が誤判定であった場合でも、第2の識別において正しい判定が行われる場合がある。識別部62が同一の紙幣について複数回の識別を行うことは、誤判定を抑制する。
【0104】
記憶部76は再計数処理において特定紙幣でないと判定された紙幣の情報を消去する。その結果、通信部78は、再計数処理において特定紙幣でないと判定された紙幣の情報を、管理装置3へ送信しない。換言すれば、貨幣処理装置4は、入金処理において特定紙幣であると判定した場合に、特定紙幣の情報を管理装置3へ直ちに送信せずに、情報の送信を保留する。これにより、誤判定に基づく情報の送信が抑制される。
【0105】
管理装置3へ情報が送信されなければ、スタッフは紙幣を銀行へ送付する必要がない。再計数処理において正常紙幣と判定された紙幣9は、第1~第4収納部71~74のいずれかに収納される。誤判定に基づく情報の送信が抑制されることは、スタッフの負担を軽減する。
【0106】
再計数処理において特定紙幣であると判定された紙幣の情報は、貨幣処理装置4から管理装置3へ送信される。貨幣処理システム10は、偽造紙幣または真偽不確定紙幣を、適切に管理することができる。前述したように、店舗のスタッフは、再計数処理において特定紙幣であると判定されかつ、払出部63へ返却された特定紙幣91を、報告書を添付して別途、銀行へ送信する。
【0107】
また、貨幣処理装置4のソフトウエアの変更が、誤判定に基づく情報の送信を抑制する。貨幣処理装置4のハードウエアの変更が不要であるという利点もある。
【0108】
尚、記憶部76は、識別番号に基づいて紙幣の情報を照合する際に、識別番号の完全一致だけでなく、識別番号が一部不一致であっても、再計数処理において取得した識別番号と、記憶している識別番号とが同一であると判断してもよい。識別部62が識別番号の一部を読み取ることができない場合、又は、識別番号の一部の読み取りを誤る場合があるためである。また、紙幣9に付与される識別番号について採番ルールが設定されている場合(例えばユーロ紙幣の記番号のチェックサム)、当該採番ルールを利用しながら、紙幣の情報を照合してもよい。例えば再計数処理において読み取られた識別番号が、誤読み取りによって採番ルールを満足しない場合、再計数処理において読み取られた識別番号と、記憶されている識別番号とは完全一致しない。そこで、再計数処理において誤って読み取られた識別番号を、採番ルールが満足されるよう修正した上で、記憶されている識別番号との照合を行ってもよい。
【0109】
前述したように、使用者は再計数処理の実行を任意のタイミングで指示できる一方で、貨幣処理装置4から管理装置3への情報の送信が、定時に又は定期的に行われる場合、貨幣処理装置4は、再計数処理が行われる前に、管理装置3へ情報を送信する場合がある。報知部773は、ステップS311において再計数処理の実行を促す際に、貨幣処理装置4が次回の送信を行うタイミングを、使用者へ報知してもよい。貨幣処理装置4が情報の送信を行う前に、再計数処理が行われることが期待できる。
【0110】
尚、
図1の貨幣処理装置4の構造は一例である。ここに開示する貨幣管理方法は、様々な構造の貨幣処理装置に適用可能である。例えば投入部と払出部とは一体であってもよい。この構造の貨幣処理装置では、紙幣を投入する部位と、特定紙幣が返却される部位とが同じ部位である。
【0111】
また、
図3及び
図4のフローは、可能な範囲でステップを入れ替えたり、一部のステップを省略したり、別のステップを追加したりできる。
【符号の説明】
【0112】
3 管理装置
4 貨幣処理装置
20 貨幣処理装置
210 投入部
220 識別部
230 出力部
30 管理装置
61 投入部
62 識別部
63 払出部
71 第1収納部
72 第2収納部
73 第3収納部
74 第4収納部
76 記憶部
77 報知部
78 通信部(出力部)
9 紙幣
90貨幣
91 特定紙幣