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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064650
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】除去加工方法及び除去加工装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 17/04 20060101AFI20240507BHJP
   B24B 17/06 20060101ALI20240507BHJP
   B24B 49/12 20060101ALI20240507BHJP
   B23Q 17/00 20060101ALI20240507BHJP
   G05B 19/4063 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
B24B17/04 A
B24B17/06 A
B24B49/12
B23Q17/00 D
G05B19/4063 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173406
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】590006343
【氏名又は名称】株式会社和井田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】清水 智弘
【テーマコード(参考)】
3C029
3C034
3C049
3C269
【Fターム(参考)】
3C029FF00
3C029FF07
3C034AA13
3C034AA19
3C034BB71
3C034BB93
3C034CA13
3C034CA22
3C034CA26
3C034CB01
3C034DD20
3C049AA03
3C049AA11
3C049AA14
3C049AA16
3C049AB04
3C049AC02
3C049BA07
3C049BA14
3C049BB02
3C049BB06
3C049BB08
3C049BC02
3C049BC03
3C049CA03
3C049CB01
3C049CB03
3C269AB07
3C269BB07
3C269JJ09
3C269QE03
3C269QE08
(57)【要約】
【課題】除去工具が、撮像部の焦点位置から外れても、除去工具輪郭により除去加工の位置を可視化できる除去加工方法及び除去加工装置を提供する。
【解決手段】砥石35の砥石実画像TgとワークWのワーク実画像をディスプレイが表示し、作業者が砥石実画像Tgとワーク実画像を見ながら砥石35によりワークWを研削する。この加工方法は、第1段階として、砥石35の輪郭データを作成する。第2段階として、砥石35によりワークWを研削する際に、輪郭データに基づく輪郭A1(A2)を砥石実画像Tgに対して重ねた状態でディスプレイに表示させる。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
除去工具のワークの一部に対する除去を撮像部が取得した前記除去工具の除去工具実画像と前記ワークのワーク実画像をディスプレイが表示し、作業者が前記除去工具実画像と前記ワーク実画像を見ながら前記除去工具により前記ワークの一部を除去する除去加工方法であって、
前記除去工具の除去工具輪郭データを作成する第1段階と、
前記除去工具により前記ワークの一部を除去する際に、前記除去工具輪郭データに基づく除去工具輪郭を前記除去工具実画像に対して重ねた状態で前記ディスプレイに表示させる第2段階を含む除去加工方法。
【請求項2】
前記第2段階では、前記除去工具輪郭は、前記除去工具実画像の色、及び前記ワーク実画像の色のうち、少なくとも一方の色とは異なる色で前記ディスプレイに表示させる請求項1に記載の除去加工方法。
【請求項3】
除去工具と前記除去工具に相対するワークを撮像する撮像部と、前記撮像部が取得した除去工具実画像とワーク実画像を表示するディスプレイを備える除去加工装置において、
除去工具輪郭データを記憶する記憶部と、
前記除去工具輪郭データに基づく除去工具輪郭を前記除去工具実画像に対して重ねた状態で前記ディスプレイに表示させる表示制御部を備える除去加工装置。
【請求項4】
ダミーワークに転写した前記除去工具の除去痕についての除去痕画像、または、前記除去工具の撮像画像に基づいて前記除去工具輪郭データを作成する除去工具輪郭作成部を備え、
前記記憶部は、前記除去工具輪郭作成部が作成した前記除去工具輪郭を記憶する請求項3に記載の除去加工装置。
【請求項5】
前記撮像部は、前記除去痕を焦点位置で撮像することにより、前記除去痕画像を取得する請求項4に記載の除去加工装置。
【請求項6】
前記除去工具をX方向、Y方向及びZ方向に移動する移動機構部と、
前記移動機構部をX方向及びY方向に移動操作する手動操作部と、
前記手動操作部によるX方向及びY方向の移動操作量を検出する操作量検出部と、
前記移動操作量に基づいて、前記移動機構部を制御して前記除去工具をX方向及びY方向へ移動させる制御部を備え、
前記表示制御部は、前記移動操作量に基づいて、前記除去工具輪郭を前記除去工具実画像と重ねた状態で前記ディスプレイに表示させる請求項3乃至請求項5のうちいずれか1項に記載の除去加工装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記手動操作部のX方向及びY方向に移動操作とは無関係に前記除去工具をZ方向において揺動させることにより、前記除去工具にてワークを研削する請求項6に記載の除去加工装置。
【請求項8】
前記表示制御部は、前記除去工具輪郭を、前記除去工具実画像の色、及び前記ワーク実画像の色のうち、少なくとも一方の色とは異なる色で前記ディスプレイに表示させる請求項7に記載の除去加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除去加工方法及び除去加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、NC研削装置による研削加工は、工作物(ワーク)と、砥石との相対運動に関する位置、速度などの数値情報に基づいて、前記研削加工にかかわる一連の動作が予めプログラムされる。そして、このプログラムによる指令によって、NC研削装置は、ワークに対する研削加工が実行される(特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
このようなNC研削装置による精密成形研削加工においては、通常、まず、荒加工を行った後、仕上げ加工が行われる。荒加工では、多くの取り代を短時間で取り除きたいため、手動で行う場合もある。
【0004】
例えば、図11に示すようなかき上げ形状を得るためにワークに対して、手動による研削加工が行われる。図11に示すようにかき上げ形状を有するワークWは、上端から下方に延びる溝Waを有する。溝Waの上部は、ワークWの上端面に開放された開口W1を有する。一方、溝Waの下部はワークWの下端面では開口が形成されておらず、ワークWの側面側から研削されて閉塞端W2が形成される。
【0005】
図10(c)に示すようにNC研削装置は、前記ワークWに対して図示しないワーク保持機構部にて把持する。また、前記NC研削装置はワークWを挟むようにワークWの上方及び下方には、撮像部100と、照明装置110が配置されている。すなわち、照明装置110は、ワークW及び砥石の下方から照明を当てるようにされている。また、撮像部100のカメラの焦点位置(以下では、単に撮像部の焦点位置という)は、ワーク画像が最も明瞭となるワークWの上端面の位置としている。撮像部100は、同軸落射照明により、ワークWの上端面を撮像する。なお、ワークWの上面が平面である場合、同軸落射照明の照明光は、前記平面により撮像部側へ反射する。このため、同軸落射照明は、撮像部100が取得するワーク画像(前記上面の画像)輪郭が明瞭となる利点がある。
【0006】
ワークWの上面が面部と、平面でない非平面部がある場合は、同軸落射照明の照明光は、前記平面部では撮像部側へ反射する。しかし、非平面部では、同軸落射照明の照明光は撮像部側へ反射せず、撮像部を指向しない他方向へ反射する。このため、撮像部100が取得したワーク画像において、前記平面部は、明瞭とはなるが、非平面部は正確な画像が得られない。
【0007】
そして、ワークWの溝Waは、手動操作によって図示しない移動機構部による砥石のX及びY方向の移動、並びに、所定の揺動範囲でのZ方向(上下方向)の揺動により、加工研削される。この加工研削の際、作業者は前記ディスプレイに表示された砥石とワークWの画像を確認しながら行うようにしている。
【0008】
図10(a)では、砥石が、上下方向に揺動されているところが図示されている。同図において、T0は、撮像部100の焦点位置に位置した砥石に付している。T1は、撮像部100の焦点位置よりも上方に位置した砥石に付している。T2は、撮像部100の焦点位置よりも下方に位置した砥石に付している。このように上下方向に揺動する砥石と、固定して保持されたワークWを撮像部100が撮像した画像は、図示しないディスプレイに表示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008-105119号公報
【特許文献2】特開2009-214289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
砥石T0(図10(a)参照)が撮像部100の焦点位置に位置すると、砥石T0の画像は、焦点位置に位置するワークWの上端面画像とともに、その輪郭が明瞭となり、両者の位置関係の把握がし易いものとなる。すなわち、作業者は手動操作による砥石の位置の確認がしやすくなる。このときの画像の例を図10(c)に示す。同図では、ディスプレイに表示された上端面画像Wgと砥石実画像Tgを示している。同図では、説明の便宜上、砥石実画像Tgの輪郭を太線で描くことにより、明瞭であることを誇張している。
【0011】
なお、図10(c)では、上端面画像Wgの周辺(砥石実画像Tgを除く)の点群領域は、照明装置110の照明光がワークWの閉塞端W2側により遮られて薄暗い、或いは暗い領域になるとともに、焦点位置に位置しない領域となるため、ボケた領域である。
【0012】
一方、砥石が撮像部100の焦点位置から上方、或いは下方に位置すると、焦点位置に位置するワークWの上端面画像Wgは、明瞭であるが、砥石T1、T2(図10(a)参照)の画像は、図10(b)に示すようにボケて輪郭も不明瞭となる。
【0013】
さらに、前述した上端面画像Wgの周辺(砥石実画像Tgを除く)の暗くなっている前記点群領域と、輪郭がボケた砥石実画像Tgとが不鮮明となるためその境界も不明となる。このため、従来、作業者が研削装置を使用してXY方向の手動操作による切削加工は、砥石が撮像部の焦点位置からZ方向において外れた場合、ディスプレイ上での砥石の確認がし難い状態で行う必要があった。
【0014】
上記では、かき上げ形状のワークを研削する場合の例について説明した。しかし、砥石が撮像部の焦点位置から外れた場合には、かき上げ形状以外のワークについても、砥石画像がボケることにより同様の問題がある。
【0015】
また、前記従来例では、揺動する砥石を対象としているが、揺動しない砥石であっても、何らかの理由により撮像部の焦点位置から外れた場合には、同様の問題がある。
本発明の目的は、除去工具が、撮像部の焦点位置から外れても、除去工具輪郭により除去工具の位置を可視化できる除去加工方法及び除去加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記問題点を解決するために、本発明の除去加工方法は、除去工具のワークの一部に対する除去を撮像部が取得した前記除去工具の除去工具実画像と前記ワークのワーク実画像をディスプレイが表示し、作業者が前記除去工具実画像と前記ワーク実画像を見ながら前記除去工具により前記ワークの一部を除去する除去加工方法であって、前記除去工具の除去工具輪郭データを作成する第1段階と、前記除去工具により前記ワークの一部を除去する際に、前記除去工具輪郭データに基づく除去工具輪郭を前記除去工具実画像に対して重ねた状態で前記ディスプレイに表示させる第2段階を含むものである(請求項1)。
【0017】
上記構成により、撮像部の焦点位置から除去工具の先端が外れても、除去工具輪郭により除去工具の位置が可視化される。
また、前記方法において、前記第2段階では、前記除去工具輪郭は、前記除去工具実画像の色、及び前記ワーク実画像の色のうち、少なくとも一方の色とは異なる色で前記ディスプレイに表示させてもよい(請求項2)。
【0018】
上記構成により、除去工具輪郭が除去工具実画像の色、及びワーク実画像の色のうち、少なくとも一方の色とは異なる色となって、除去工具輪郭が明瞭となるため、除去工具の位置を明瞭にできる。
【0019】
本発明の除去加工装置は、除去工具と前記除去工具に相対するワークを撮像する撮像部と、前記撮像部が取得した除去工具実画像とワーク実画像を表示するディスプレイを備える除去加工装置において、除去工具輪郭データを記憶する記憶部と、前記除去工具輪郭データに基づく除去工具輪郭を前記除去工具実画像に対して重ねた状態で前記ディスプレイに表示させる表示制御部を備えるものである(請求項3)。
【0020】
上記構成により、撮像部の焦点位置から除去工具の先端が外れても、除去工具輪郭により除去工具の位置が可視化される。
前記除去加工装置は、ダミーワークに転写した前記除去工具の除去痕についての除去痕画像、または、前記除去工具の撮像画像に基づいて前記除去工具輪郭データを作成する除去工具輪郭作成部を備え、前記記憶部は、前記除去工具輪郭作成部が作成した前記除去工具輪郭を記憶するようにしてもよい(請求項4)。
【0021】
上記構成により、除去工具輪郭は、除去工具輪郭作成部によりダミーワークに転写した除去工具の除去痕に基づいて作成される。そして、除去工具の除去痕に基づいて作成された除去工具輪郭が、表示制御部により除去工具の除去工具実画像の動作と連動するように除去工具輪郭を重ねた状態で表示制御されることにより除去工具の位置が可視化される。
【0022】
前記除去加工装置において、前記撮像部は、前記除去痕を焦点位置で撮像することにより、前記除去痕画像を取得することが好ましい(請求項5)。
上記構成により、焦点位置で撮像部が撮像した除去痕画像に基づいて、除去工具輪郭作成部は精確な除去工具輪郭を作成することが可能となる。
【0023】
前記除去加工装置は、前記除去工具をX方向、Y方向及びZ方向に移動する移動機構部と、前記移動機構部をX方向及びY方向に移動操作する手動操作部と、前記手動操作部によるX方向及びY方向の移動操作量を検出する操作量検出部と、前記移動操作量に基づいて、前記移動機構部を制御して前記除去工具をX方向及びY方向へ移動させる制御部を備え、前記表示制御部は、前記移動操作量に基づいて、前記除去工具輪郭を前記除去工具実画像と重ねた状態で前記ディスプレイに表示させることが好ましい(請求項6)。
【0024】
上記構成により、表示制御部は、移動操作量に基づいて、除去工具輪郭を前記除去工具実画像と重ねた状態でディスプレイに表示させる。この結果、除去工具の位置が可視化される。
【0025】
前記除去加工装置において、前記制御部は、前記手動操作部のX方向及びY方向に移動操作とは無関係に前記除去工具をZ方向において揺動させることにより、前記除去工具にてワークを研削してもよい(請求項7)。
【0026】
上記構成により、手動操作部のX方向及びY方向に移動操作とは無関係に除去工具をZ方向において揺動させる。この結果、表示制御部は、移動操作量に基づいて、除去工具輪郭を前記除去工具実画像と重ねた状態でディスプレイに表示するため、除去工具のZ方向における揺動時においても、除去工具の位置が可視化される。
【0027】
前記表示制御部は、前記除去工具輪郭を、前記除去工具実画像の色、及び前記ワーク実画像の色のうち、少なくとも一方の色とは異なる色で前記ディスプレイに表示させることが好ましい(請求項8)。
【0028】
上記構成の除去加工装置により、除去工具輪郭が除去工具実画像の色、及びワーク実画像の色のうち、少なくとも一方の色とは異なる色となって、除去工具輪郭が明瞭となるため、除去工具の位置を明瞭にできる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、除去工具が、撮像部の焦点位置からZ方向において外れても、ディスプレイにおけるXY方向の除去工具の画像の動作と連動する除去工具輪郭により除去工具の位置を可視化できる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】NC研削装置の全体概略図である。
図2】砥石輪郭作成のフローチャートである。
図3】(a)は、ワークに対して砥石を接近させる状態の説明図、(b)は、ワークが砥石に切削加工されている状態の説明図、(c)は、砥石形状転写位置の取得時に操作されるボタンの説明図である。
図4】(a)は、右β度の傾斜角の説明図、(b)は、左β度の傾斜角の説明図、(c)は、両Vβ度の傾斜角の説明図、(d)は旋回角の説明図である。
図5】(a)、(b)は近似円式により砥石輪郭を作成する場合の砥石輪郭の説明図である。
図6】(a)、(b)は多点式により砥石輪郭を作成する場合の砥石輪郭の説明図である。
図7】(a)は、砥石輪郭生成ボタンの説明図。(b)は、砥石実画像に砥石輪郭が重ね合わされた状態の説明図である。
図8】(a)は砥石表示ONボタンの説明図、(b)は、砥石表示ONボタンがオン操作されない場合の砥石実画像の説明図、(c)は砥石表示ONボタンがオン操作された場合の砥石実画像の説明図である。
図9】(a)は、ワーク、砥石、撮像部、及び照明装置の位置関係の説明図、(b)は、撮像部に対して焦点位置よりも近位に砥石が位置した際の砥石実画像の説明図、(c)は、撮像部に対して焦点位置よりも近位に砥石が位置した際の砥石実画像に砥石輪郭を重ね合わせた状態の説明図、(d)は、撮像部の焦点位置に砥石が位置した際の砥石実画像の説明図、(e)は、撮像部の焦点位置に砥石が位置した際の砥石実画像に砥石輪郭を重ね合わせた状態の説明図、(f)は、撮像部に対して焦点位置よりも遠位に砥石が位置した際の砥石実画像の説明図、(g)は、撮像部に対して焦点位置よりも遠位に砥石が位置した際の砥石実画像に砥石輪郭を重ね合わせた状態の説明図である。
図10】(a)は、ワーク、砥石、撮像部、及び照明装置の位置関係の説明図、(b)は、撮像部の焦点位置から砥石が離間した際の砥石実画像とワークの実画像の説明図、(c)は、撮像部の焦点位置に砥石が位置した際の砥石実画像とワークの実画像の説明図である。
図11】かき上げ形状のワークの一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(実施形態)
以下、本発明を具体化した一実施形態の除去加工方法及び除去加工装置を図1図9を参照して説明する。
【0032】
(1.NC研削装置10の概略構成)
図1に示すように除去加工装置としてのNC研削装置10は、制御装置11、ディスプレイ12、コンソール14、マウス16等の入力装置、及び研削部30を備えている。
【0033】
(2.制御装置11)
制御装置11は、コンピュータからなり、CPU(中央処理装置)22、及び、ROM、RAM、ハードディスク等を備える記憶部24等を有している。前記NCプログラムは、前記記憶部24に格納されていて、自動研削加工時に読み込まれて実行される。また、記憶部24には、除去工具輪郭作成プログラムとしての砥石輪郭作成プログラム及び除去工具輪郭表示プログラムとしての砥石輪郭表示プログラムが記憶されている。CPU22が砥石輪郭作成プログラムを実行することにより、CPU22は、画像処理部27及び除去工具輪郭作成部としての砥石輪郭作成部28として機能する。CPU22は、NCプログラムに基づいてNC制御部29として機能する。
【0034】
また、表示制御部25は、砥石輪郭表示プログラムが実行されることにより、撮像部39が撮像した砥石実画像に対して除去工具輪郭としての砥石輪郭を重ね合わせる重ね合わせ表示を実行する。
【0035】
RAMは作業用メモリである。前記ハードディスクには、除去工具輪郭データを書き込み及び読み出し可能に格納されている。砥石実画像は、除去工具実画像に相当する。
前記除去工具輪郭データは、前記砥石輪郭作成部28が作成した砥石の先端部の輪郭線データである。前記砥石の先端部の輪郭線データは、砥石で研削されたダミーワークの研削痕を撮像した砥石輪郭画像に対して、画像処理のエッジ検出等によりその砥石輪郭が抽出され、その後、線化処理されたものである。研削痕は、除去痕に相当する。
【0036】
(3.ディスプレイ12)
ディスプレイ12は、液晶表示装置、有機EL表示装置、或いはCRT等からなり、カラー表示が可能である。ディスプレイ12は、タッチパネルディスプレイである。図1に示すように、ディスプレイ12の画面13は、画像表示領域13a、ボタン表示領域13b等を有する。
【0037】
(4.入力装置)
コンソール14は、CPU22に対する数値、文字等の入力装置である。マウス16は、図1に示す画面13の図示しないマウスポインタの移動操作等を行う入力装置である。X軸操作装置17は、手動ハンドル17a及びエンコーダ17bを備えている。手動ハンドル17aが操作されると、エンコーダ17bはその操作に応じた操作信号を制御装置11のCPU22に出力する。NC制御部29は、前記操作信号に基づいて、後述するX軸用モータ37を駆動制御することにより、砥石35をX方向へ移動する。砥石35は、除去工具に相当する。
【0038】
CPU22の表示制御部25は、前記操作信号に基づいて、図1に示す機械座標系のX軸方向へ、画面13の画像表示領域13aに表示された砥石輪郭を移動する。なお、機械座標系は、NC研削装置10の機械座標系である。
【0039】
Y軸操作装置18は、手動ハンドル18a及びエンコーダ18bを備えている。手動ハンドル18aが操作されると、エンコーダ18bはその操作に応じた操作信号を制御装置11のCPU22に出力する。
【0040】
手動ハンドル18aが操作されると、エンコーダ18bはその操作に応じた操作信号を制御装置11のCPU22に出力する。NC制御部29は、前記操作信号に基づいて、後述するY軸用モータ38を駆動制御することにより、砥石35をY方向へ移動する。
【0041】
また、CPU22の表示制御部25は、前記操作信号に基づいて、図1に示す機械座標系のY軸方向へ、画面13の画像表示領域13aに表示された砥石輪郭を移動する。
X軸操作装置17の手動ハンドル17a及びY軸操作装置18の手動ハンドル18aは、手動操作部に相当する。X軸操作装置17のエンコーダ17b及びY軸操作装置18のエンコーダ18bは、操作量検出部に相当する。
【0042】
(5.研削部30)
図1に示すように、研削部30は、研削機構部31、ワーク保持機構部32、移動機構部33、及び撮像部39を備える。
【0043】
研削機構部31は、円盤状の砥石35を備えていて、ワーク保持機構部32に保持されたワークWの研削加工を行う。研削機構部31は、研削加工時において、砥石35を回転させる。ワーク保持機構部32は、前記ワークWを着脱可能に保持する。ワーク保持機構部32は、ワークWに代えて図示しないダミーワークも着脱自在に保持可能となっている。
【0044】
研削機構部31は、移動機構部33に設けられていて、ワークWに対して砥石35を相対運動させる。移動機構部33は、X軸用モータ37、Y軸用モータ38及びZ軸用モータ36を備えている。NC制御部29によりX軸用モータ37及びY軸用モータ38が回転制御されることにより、移動機構部33により、砥石35はX方向及びY方向への移動が可能である。また、Z軸用モータ36の駆動により、砥石35は、上下方向(Z方向)に所定の範囲で揺動可能となっている。
【0045】
撮像部39は、ワーク保持機構部32に保持されたワークW、或いはダミーワークの上方に配置されている。撮像部39は、CMOSカメラ、或いは、CCDカメラによって構成されていて、ワークWまたはダミーワークの上端面の高さ位置を焦点位置としている。ワークWの下方には、照明装置34が配置されていて、ワークWの下方から、撮像部39に向けて照明光が照射される。撮像部39は、砥石35によるワークWの切削加工中の動画、或いは砥石35で切削されたダミーワークの研削痕の静止画を画像処理部27に送信する。
【0046】
(実施形態の作用)
次に、上記NC研削装置10の作用を説明する。
<1.1.除去工具輪郭データとしての砥石輪郭データの作成>
図2は、砥石輪郭作成のフローチャートであり、ダミーワークを砥石で加工する際に、作業者が、CPU22にて砥石輪郭作成プログラムを起動させることにより、実行される。なお、予め作業者は、砥石輪郭作成プログラムが実行される前に、砥石35の諸元がコンソール14にて入力されることにより、記憶部24に記憶される。図4(a)~図4(d)に示すように、この諸元には、砥石の側面の向きと、その傾斜角β、及び、ワークに対する旋回角γが含まれる。
【0047】
砥石35の側面の向きには、「右傾斜」、「左傾斜」、及び「両V」がある。図4(a)に示す右β度は、砥石35の右側面の向きがワーク側から見たときに、「右傾斜」であるとともに、傾斜角βで傾斜していることを指す。図4(b)に示す左β度は、砥石35の左側面の向きがワーク側から見たときに、「左傾斜」であるとともに、傾斜角βで傾斜していることを指す。図4(c)に示す両V,β度は、砥石35の左右両側面の向きがワーク側から見たときに、「V字状に傾斜」しているとともに、左右両側面がそれぞれ傾斜角βで傾斜していることを指す。図4(d)に示す旋回角γは、ワーク側からみて、砥石35が、どれだけ右または左に旋回角γをもって旋回しているかを示している。
【0048】
(S102)
S102では、図1に示すワーク保持機構部32に保持されたダミーワークWp(図3(a)参照)に対して砥石35にて研削を行う。このダミーワーク加工は、作業者の手動ハンドル17a、18aの操作により行われる。この手動ハンドル17a、18aの移動操作量は、エンコーダ17b及びエンコーダ18bが検出して、CPU22に送信する。NC制御部29は、前記移動操作量に基づいて、X軸用モータ37及及びY軸用モータ38を駆動して、研削機構部31により砥石35がX方向及びY方向に移動される。また、CPU22は、砥石35のX方向及びY方向の前記移動操作量に基づいて、砥石35のXY座標を更新する。
【0049】
一方、図3(b)に示すように、砥石35によるダミーワークWpの研削痕Wcは、撮像部39により、撮像されて、静止画である研削痕画像は画像処理部27に送信される。研削痕画像は除去痕画像に相当する。
【0050】
(S103)
S103では、作業者は、図1に示すボタン表示領域13bに表示された砥石形状転写位置ボタン13c(図3(c)参照)のタッチ操作により、研削痕形成完了時の砥石35のXY座標を取込みする。
【0051】
このXY座標は、すなわち、X座標値及びY座標値は、後に作成される砥石輪郭A1(A2)のXY座標である。
砥石輪郭A1(A2)のXY座標は、手動ハンドル17a、18aの操作に応じて、X方向、及びY方向に移動する毎に更新される砥石35のXY座標と、同値となるように同様に手動ハンドル17a、18aの操作に応じて、更新されるようにされている。
【0052】
(S104)
S104では、画像処理部27は、ダミーワークの砥石35の研削痕の静止画に対する画像処理のエッジ検出等を行う。この処理によりその輪郭が抽出されることにより、砥石輪郭A(図5(a)参照)が取得される。この砥石輪郭Aのエッジは画素毎に座標データを有する。
【0053】
前記画像処理のエッジ検出では、記憶部24に予め記憶されていた砥石35の諸元と一致するエッジが検出される。
このエッジ検出が完了すると、表示制御部25は、ボタン表示領域13bにある砥石輪郭生成ボタン13d(図7(a)参照)を点滅表示させることにより、砥石輪郭生成ボタン13dの操作を促す。
【0054】
(S106)
S106において、作業者が砥石輪郭生成ボタン13d(図7(a)参照)をタッチ操作すると、画像処理部27は、ディスプレイ12の画面13に図示しない選択ボタンを表示させる。前記選択ボタンは、砥石輪郭の作成処理を、近似円式か、或いは多点式で行うかを作業者に選択させるためのものである。
【0055】
作業者が、近似円式を選択すると、S108に移行する。作業者が、多点式を選択すると、S120に移行する。
(S108)
S108では、砥石輪郭作成部28は、前記画像処理で取得された砥石輪郭A(図5(a)参照)に対して下記の砥石輪郭作成処理を行う。
【0056】
<1.2.近似円式の砥石輪郭作成処理>
図5(a)、図5(b)は、近似円式の砥石輪郭作成処理の説明図である。図5(a)に示すように、砥石輪郭作成部28は、砥石輪郭Aの先端形状を、予め設定された分割数nで、等分割して複数の形状にする。
【0057】
なお、ここで先端形状とは、砥石35が、ダミーワークWpに対して研削に寄与する先端の形状である。先端形状の範囲は、予め設定されていて、この範囲において、等分割される。
【0058】
図5(a)は、「n=3」の場合が図示されている。以下では、等分割が「n=3」の場合について説明する。図中、θは、等分割した際の分割角である。Oは、砥石輪郭Aの先端形状が真円の円弧を有するとした場合の中心である。図5(a)において、Aa、Ab、Acは、砥石輪郭Aの先端形状を構成している分割された部位の形状を示す。部位Aa、Ab、Acは、砥石35が、研削加工により摩耗している場合は、円弧となっていない場合があることに注意されたい。E0、E1、E2、E3は、部位Aa、Ab、Acのそれぞれの端点を示す。なお、本例では、中心Oは、真円の中心と一致させたが、これに限定するものではなく、例えば、真円の中心の近傍に位置させてもよい。以下、中心Oを仮想円の中心ということがある。
【0059】
次に、図5(b)に示すように、砥石輪郭作成部28は、等分割された部位Aa、Ab、Ac毎に、各部位が有する座標データを用いて、最小二乗法により近似円弧を作成するとともに、それらの曲率中心及び曲率半径を取得する。
【0060】
具体的には、図5(b)において、Kaは、部位Aaの端点E0、E1間に作成された近似円弧である。近似円弧Kaは、曲率中心Oaを中心として、径方向に延びる一対の区画線d1、d2にて扇形を区画形成することができる。これにより、砥石輪郭作成部28は、近似円弧Kaの曲率中心Oa及び曲率半径raを取得する。
【0061】
図5(b)に示すように、Kbは、部位Abの端点E1、E2間に作成された近似円弧である。近似円弧Kbについても、曲率中心Obを中心として、径方向に延びる一対の区画線e1、e2にて扇形を区画形成することができる。これにより、砥石輪郭作成部28は、曲率中心Ob及び曲率半径rbを取得する。
【0062】
Kcは、部位Acの端点E2、E3間に作成された近似円弧である。
近似円弧Kcについても、曲率中心Ocを中心として、径方向に延びる一対の区画線f1、f2にて扇形を区画形成することができる。これにより、砥石輪郭作成部28は、近似円弧Kaと同様に曲率中心Oc及び曲率半径rcを取得する。
【0063】
このようにして、砥石輪郭作成部28は、端点E0、E1間を近似円弧Kaにし、端点E1、E2間を近似円弧Kbにし、さらに端点E2、E3間を近似円弧Kcにした先端形状を有する砥石輪郭用のデータ(砥石輪郭データ)を取得する。なお、砥石輪郭作成部28は、先端形状と隣接する形状は、直線エッジであるため、直線を描くデータとして砥石輪郭データに含ませる。
【0064】
前記砥石輪郭データには、この砥石輪郭A1と砥石輪郭Aとは、先端形状において、共通点である端点E0、E1、E2、E3を有する。
上記では、「n=3」で砥石輪郭Aの先端形状に対して等分割したが、等分割の数は「n=3」に限定するものではなく、他の数値でもよい。
【0065】
砥石輪郭作成部28は砥石輪郭A1の砥石輪郭データを取得した後、S110に移行して、修正無しの選択ボタン及び修正有りの選択ボタン(ともに図示しない)を、表示制御部25にてディスプレイ12の画像表示領域13aに表示させる。
【0066】
(S110)
S110において、作業者がディスプレイ12の画像表示領域13aに表示された修正無しの選択ボタン(図示しない)をタッチ操作により選択した場合、S114に移行する。作業者がディスプレイ12の画面に表示された修正有りの選択ボタン(図示しない)をタッチ操作により選択した場合、S112に移行する。
【0067】
(S112)
S112では、ディスプレイ12の画面13には手動微調整用の各種ツールボタン等(図示しない)が表示される。作業者は、この各種ツールボタン等にタッチ操作等を行って、砥石輪郭A1の砥石輪郭データを微調整する。この微調整には、例えば、分割角の変更等がある。角度の変更があれば、調整後の新しい分割角で、砥石輪郭A1の砥石輪郭データが作成される。この微調整が終了後は、S114に移行する。
【0068】
(S114)
S114では、作業者はディスプレイ12の画面13に表示された図示しない登録ボタンをタッチ操作する。これにより、砥石輪郭作成部28は、微調整があった場合、微調整後の砥石輪郭A1の砥石輪郭データを、または微調整がない場合は、微調整がない砥石輪郭データを近似円式である旨の属性を付して記憶部24に格納する。
【0069】
なお、砥石輪郭作成部28は、後述する多点式で作成された砥石輪郭については、多点式である旨の属性を付した砥石輪郭を記憶部24に格納する。
(S120)
S120では、砥石輪郭作成部28は、前記画像処理で取得された砥石輪郭A(図6(a)参照)に対して下記の砥石輪郭作成処理を行う。
【0070】
<1.3.多点式の砥石輪郭作成処理>
図6(a)、図6(b)は、多点式の砥石輪郭作成処理の説明図である。図6(a)に示すように、砥石輪郭作成部28は、砥石輪郭Aの先端形状に対して、予め設定された角度αで、等分割する。角度αは、限定するものではないが、小さい角度ほど後述する砥石輪郭Aの先端形状のエッジの交点の数が増えるため、好ましい。
【0071】
図6(a)は、砥石輪郭Aの先端形状が真円(仮想円)の円弧を有するとした場合、仮想円の中心Oから延びる分割線gで、角度α(=10度)毎に分割した際の例が示されている。なお、本例では、中心Oは、真円の中心と一致させたが、これに限定するものではなく、例えば、真円の中心の近傍に位置させてもよい。図6(b)に示すように、砥石輪郭作成部28は、各分割線gと、砥石輪郭Aの先端形状のエッジの交点F0~Fmを求める。すなわち、砥石輪郭作成部28は、砥石輪郭Aの先端形状のエッジの交点F0~Fmの位置座標を取得する。mは正の整数である。
【0072】
この交点F0~Fmにおける座標データを有する砥石輪郭を、以下、砥石輪郭A2とする。この砥石輪郭A2と砥石輪郭Aとは、先端形状において、共通点である交点F0~Fmを有する。
【0073】
このように砥石輪郭作成部28は砥石輪郭A2となる砥石輪郭用のデータを取得した後、S122に移行する。なお、砥石輪郭作成部28は、先端形状と隣接する形状については、直線エッジε(図6(b)参照)であるため、直線を描くデータとして砥石輪郭データに含ませる。
【0074】
S122に移行する前に、修正無しの選択ボタン(図示しない)、及び修正有りの選択ボタン(図示しない)を、表示制御部25を介して、ディスプレイ12に表示させる。
(S122)
S122において、作業者がディスプレイ12の画面に表示された修正無しの選択ボタン(図示しない)をタッチ操作により選択した場合、S114に移行する。作業者がディスプレイ12の画面に表示された修正有りの選択ボタン(図示しない)をタッチ操作により選択した場合、S124に移行する。
【0075】
(S124)
S124では、ディスプレイ12の画面13には手動微調整用の各種ツールボタン等(図示しない)が表示される。作業者は、この各種ツールボタン等にタッチ操作等を行って、砥石輪郭A2の砥石輪郭データを微調整する。この微調整には、例えば、角度αの変更等がある。角度の変更があれば、調整後の新しい分割角で、砥石輪郭A2の砥石輪郭データが作成される。この微調整が終了後は、S114に移行する。
【0076】
なお、砥石輪郭A1(A2)の表示時の色は、予め設定される。砥石輪郭A1(A2)の表示時の色の設定は、砥石実画像Tgの色と異なるように設定されていてもよい。或いは、砥石輪郭A1(A2)の表示時の色の設定は、ワーク実画像の色と異なるよう設定されていてもよい。さらには、砥石輪郭A1(A2)の表示時の色の設定は、砥石実画像Tgの色及びワーク実画像の色の両方とは異なる色で設定されていてもよい。
【0077】
例えば、砥石実画像Tg及びワーク実画像が白黒画像の場合は、砥石輪郭A1(A2)を、黄色、赤色または青色等のように異なる色で表示される。前記砥石輪郭A1(A2)の色は、例示であって、限定するものではない。
【0078】
<2.砥石輪郭の表示及び非表示>
ワークWに対して手動による荒加工を行う場合、作業者が、砥石実画像Tgに対して砥石輪郭を重ね合わせて表示したいとする。
【0079】
この場合、作業者が、図8(a)に示すボタン表示領域13bにある砥石輪郭表示ONボタン13eをタッチ操作する。すると、図1に示す表示制御部25は、記憶部24に記憶されている近似円式、または多点式で作成された砥石輪郭データを読み出す。
【0080】
そして、図7(b)、または、図8(c)に示すように表示制御部25は、このデータに基づく砥石輪郭A1(A2)をディスプレイ12の画像表示領域13aに表示されている砥石実画像Tgの輪郭となる部分に重ね合わせて表示する。この場合、表示制御部25は、砥石輪郭A1(A2)を、動画の1フレーム毎に砥石実画像Tgの輪郭となる部分に重ね合わせる。
【0081】
表示制御部25は、ディスプレイ12の画面上で、砥石実画像Tgを拡大または縮小表示する場合、同じ倍率で、砥石輪郭A1(A2)も拡大または縮小表示する。
説明の便宜上、図7(b)、図8(c)では、砥石輪郭A1は、近似式の砥石輪郭データに基づいて表示されているものとする。
【0082】
また、図7(b)では、砥石実画像Tgは、後述する撮像部39の焦点位置に砥石35が位置している場合の画像としている。ここでは、説明の便宜上、焦点位置に位置していることを明示するために、砥石35の砥石実画像Tgの全体を、太いハッチング線で描く。なお、このハッチング線及び(e)で説明する細いハッチング線は、断面図を意味していない。図8(c)では、焦点位置に位置していない砥石35の砥石実画像Tgにおいて、明確になってない輪郭のボケ領域を点群で示し、輪郭以外の領域を細いハッチング線で描いている。
【0083】
また上記のように砥石輪郭A1(A2)を、砥石実画像Tgに重ね合わせ表示している状態で、重ね合わせ表示を解消する場合、作業者は、砥石輪郭表示ONボタン13eをタッチ操作する。このタッチ操作により、表示制御部25は、図8(b)に示すように砥石輪郭A1(A2)の表示を停止する。図8(b)は、図8(c)の重ね合わせ表示の状態から、砥石輪郭A1(A2)を非表示とした状態の砥石実画像Tgを示している。このように、砥石輪郭表示ONボタン13eの操作により、砥石輪郭A1(A2)の表示及び非表示がワンタッチで行われる。
【0084】
<3.かき上げ形状のワークでの砥石輪郭の表示及び非表示>
図9(a)~図9(g)は、かき上げ形状のワークWに対して荒加工を行う場合の例が示されている。
【0085】
図9(a)に示すように砥石35が、焦点位置に位置しているものをT0とし、撮像部39の焦点位置よりも撮像部39に近位のものをT1で示し、撮像部39の焦点位置よりも遠位のものをT2で示している。
【0086】
すなわち、砥石35(T1)は、Z方向において、撮像部39の焦点位置よりも撮像部39に近位に位置したときである。また、砥石35(T2)は、Z方向において、撮像部39の焦点位置よりも撮像部39に遠位に位置したときである。
【0087】
図9(b)は、溝Wa内で砥石35(T1)の先端部が研削加工を行っているときの砥石実画像Tgと、ワークWの上端面画像Wgを示していて、砥石輪郭A1(A2)が非表示の場合を示している。上端面画像Wgは、ワーク実画像に相当する。
【0088】
図9(c)は、溝Wa内で砥石35(T1)の先端部が研削加工を行っているときの砥石実画像Tgと、ワークWの上端面画像Wgを示していて、砥石輪郭A1(A2)が砥石実画像Tgと重ね合わされて表示されている場合を示している。
【0089】
図9(d)は、溝Wa内で砥石35(T0)の先端部が研削加工を行っているときの砥石実画像Tgと、ワークWの上端面画像Wgを示していて、砥石輪郭A1(A2)が非表示の場合を示している。
【0090】
図9(e)は、溝Wa内で砥石35(T0)の先端部が研削加工を行っているときの砥石実画像Tgと、ワークWの上端面画像Wgを示していて、砥石輪郭A1(A2)が砥石実画像Tgと重ね合わされて表示されている場合を示している。
【0091】
図9(d)と、図9(e)の両図を比較すると、砥石実画像Tgは、砥石35(T0)が焦点位置に位置しているため、焦点位置に位置する部位は、鮮明な画像となる。従って、砥石輪郭A1(A2)を砥石実画像Tgに重ね合わせなくても、充分に作業者は、手動でワークの荒加工を行うことも可能である。そして、図9(e)に示すように砥石実画像Tgに砥石輪郭A1(A2)を重ね合わせた場合、さらに砥石実画像Tgの先端を明瞭とすることができる。
【0092】
図9(f)は、溝Wa内で砥石35(T2)の先端部が研削加工を行っているときの砥石実画像Tgと、ワークWの上端面画像Wgを示していて、砥石輪郭A1(A2)が非表示の場合を示している。
【0093】
図9(g)は、溝Wa内で砥石35(T2)の先端部が研削加工を行っているときの砥石実画像Tgと、ワークWの上端面画像Wgを示していて、砥石輪郭A1が砥石実画像Tgと重ね合わされて表示されている場合を示している。
【0094】
図9(b)、図9(f)と、図9(c)、図9(g)とを比較する。
図9(b)、図9(f)は、砥石35が撮像部100の焦点位置から上方、或いは下方に位置しているため、焦点位置に位置するワークWの上端面画像Wgは、明瞭であるが、砥石T1、T2の画像は、ボケることにより輪郭も不明瞭となる。
【0095】
さらに、上端面画像Wgの周辺(砥石実画像Tgを除く)の点群領域は、照明装置34の照明光がワークWの閉塞端W2(図11参照)側により遮られて暗い領域になるとともに、焦点位置に位置しない領域となるため、ボケた領域である。このため、ディスプレイ12での砥石の確認がし難い状態となっている。
【0096】
図9(c)、図9(g)は、砥石輪郭A1(A2)が砥石実画像Tgと重ね合わされて表示されている状態を示している。
同図に示すように、上端面画像Wgの周辺(砥石実画像Tgを除く)の点群領域は、照明装置34の照明光がワークWの閉塞端W2(図11参照)側により遮られて暗い領域である。この場合であっても、砥石輪郭A1(A2)により、砥石実画像Tgの先端が明瞭となる。
【0097】
また、砥石輪郭A1(A2)の表示時の色は、砥石実画像Tgの色、及びワーク実画像の色のうち、少なくとも一方の色とは異なる色で設定されている。このため、この色表示によっても、砥石実画像の位置が明瞭となる。
【0098】
図9(d)は、砥石輪郭A1(A2)が砥石実画像Tgと重ね合わされて表示されている状態を示している。
本実施形態では、下記の特徴を有する。
【0099】
(1)本実施形態の除去加工方法は、砥石35の砥石実画像TgとワークWのワーク実画像をディスプレイが表示し、作業者が砥石実画像Tgとワーク実画像を見ながら砥石35によりワークWを研削する除去加工方法である。
【0100】
この加工方法は、第1段階として、砥石35の先端形状を含む砥石輪郭データを作成する。第2段階として、砥石35によりワークWを研削する際に、前記砥石輪郭データに基づく砥石輪郭A1(A2)を砥石実画像Tgに対して重ねた状態でディスプレイ12に表示させる。
【0101】
上記構成により、撮像部39の焦点位置から砥石35の先端が外れて、砥石の画像として映らなくても、砥石輪郭により砥石の位置を可視化できる。
また、除去工具と撮像部との間に、何らかの理由により、障害物があって、撮像部が除去工具の画像を得ることができない場合が生じても、砥石輪郭により除去工具の位置を可視化できる。
【0102】
(2)前記方法において、第2段階では、砥石輪郭A1(A2)は、砥石実画像Tgの色、及びワーク実画像の色のうち、少なくとも一方の色とは異なる色で前記ディスプレイに表示させる。
【0103】
上記構成により、砥石輪郭A1(A2)が砥石実画像Tgの色、及びワーク実画像の色のうち、少なくとも一方の色とは異なる色となって、砥石輪郭A1(A2)が明瞭となるため、砥石の位置を明瞭にできる。
【0104】
(3)本発明のNC研削装置(除去加工装置)10は、撮像部39と、撮像部39が取得した砥石35の砥石実画像TgとワークWの上端面画像Wg(ワーク実画像)を表示するディスプレイ12を備える。また、NC研削装置10は、砥石35の砥石輪郭データ(除去工具輪郭データ)を記憶する記憶部24と、砥石輪郭データに基づく砥石輪郭A1(A2)を砥石実画像Tgに対して重ねた状態でディスプレイ12に表示させる表示制御部25を備える。
【0105】
上記構成により、砥石35が、撮像部39の焦点位置から外れた際、砥石実画像Tgは、輪郭がボケる。しかし、表示制御部25はディスプレイ12における砥石35の砥石実画像Tgの動作と連動するように砥石輪郭A1(A2)を重ねた状態で表示制御することにより砥石の位置が可視化できる。
【0106】
このことは、撮像部39の焦点位置から砥石35の先端が外れて、砥石の画像として映らなくても、砥石輪郭により砥石の位置を可視化できることを意味する。また、除去工具と撮像部との間に、何らかの理由により、障害物があって、撮像部が除去工具の画像を得ることができない場合が生じても、砥石輪郭により除去工具の位置を可視化できることを意味する。
【0107】
(4)NC研削装置10は、ダミーワークWpに転写した砥石35の研削痕Wcについての研削痕画像に基づいて前記砥石輪郭データを作成する砥石輪郭作成部28を備える。また、記憶部24は、砥石輪郭作成部28が作成した砥石輪郭A1(A2)を記憶する。
【0108】
上記構成により、砥石輪郭A1(A2)は、砥石輪郭作成部28によりダミーワークWpに転写した砥石35の研削痕Wcに基づいて作成される。そして、砥石35の研削痕Wcに基づいて作成された砥石輪郭A1(A2)が、表示制御部25により砥石35の砥石実画像Tgと砥石輪郭A1(A2)を重ねた状態で表示制御される。このことにより砥石の位置が可視化できる。
【0109】
(5)NC研削装置10の撮像部39は、研削痕Wcを焦点位置で撮像することにより、研削痕画像を取得する。
この結果、焦点位置で撮像部39が撮像した研削痕画像に基づいて、砥石輪郭作成部28は精確な砥石輪郭A1(A2)を作成することが可能となる。
【0110】
(6)NC研削装置10は、砥石をX方向、Y方向及びZ方向に移動する移動機構部33と、移動機構部33をX方向及びY方向に移動操作する手動操作部(手動ハンドル17a、18a)を備える。また、NC研削装置10は、手動操作部(手動ハンドル17a、18a)によるX方向及びY方向の移動操作量を検出する操作量検出部(エンコーダ17b、18b)と、移動操作量に基づいて、移動機構部33を制御するNC制御部29を備える。NC制御部29は、移動機構部33を制御して、砥石輪郭A1をX方向及びY方向へ移動させる。また、表示制御部25は、移動操作量に基づいて、砥石輪郭A1(A2)を砥石実画像と重ねた状態でディスプレイ12に表示させる。
【0111】
この結果、砥石の位置が可視化される。
(7)NC研削装置10のNC制御部29は、手動操作部(手動ハンドル17a、18a)のX方向及びY方向に移動操作とは無関係に砥石輪郭A1(A2)をZ方向において揺動させることにより、砥石35にてワークWを研削する。
【0112】
この結果、表示制御部25は、移動操作量に基づいて、砥石輪郭A1(A2)を砥石実画像Tgと重ねた状態でディスプレイ12に表示するため、砥石35のZ方向における揺動時においても、砥石の位置が可視化できる。
【0113】
(8)表示制御部25は、砥石輪郭A1(A2)を、砥石実画像Tgの色、及びワーク実画像の色のうち、少なくとも一方の色とは異なる色でディスプレイ12に表示させる。
この結果、砥石輪郭A1(A2)が砥石実画像Tgの色、及びワーク実画像の色のうち、少なくとも一方の色とは異なる色となって、砥石輪郭A1(A2)が明瞭となるため、砥石の位置を明瞭にできる。
【0114】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。
本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0115】
・前記実施形態では、図2において砥石輪郭A1の砥石輪郭データ、または、砥石輪郭A2の砥石輪郭データを選択的に作成したが、いずれか一方の砥石輪郭の砥石輪郭データのみを作成してもよい。
【0116】
・前記実施形態では、近似円式、及び多点式の方法で砥石輪郭の作成方法を説明した。しかし、これらは、例示である。砥石輪郭の作成方法は、これらに限定するものではなく、他の方法であってもよい。
【0117】
・S102では、ダミーワークWpの砥石35による研削痕Wcの形成を手動操作で行った。続く、S103では、操作者による砥石形状転写位置ボタン13cの操作により、研削痕形成完了時の砥石35のXY座標を取込みするようにした。前記XY座標は、NC研削装置10の機械座標系である。
【0118】
これに代えて、ダミーワークWpの研削痕Wcの形成をNCプログラムに基づいて自動で行い、S103において、プログラムにより研削痕Wcの形成完了時のXY座標を取込みするようにしてもよい。
【0119】
・前記実施形態では、ワークをかき上げ形状を有するワークとしたが、ワークはかき上げ形状に限定するものではなく、他の形状を有していてもよい。
・前記実施形態では、除去加工装置としてNC研削装置に具体化した。これに代えて、除去加工装置として切削加工装置、或いは研磨加工装置に具体化してもよい。切削加工装置では、除去工具は、切削工具を挙げることができる。また、研磨加工装置では、除去工具は、研磨工具を挙げることができる。
【0120】
・前記実施形態では、除去工具の除去痕についての除去痕画像としての研削痕画像に基づいて、除去工具輪郭作成部としての砥石輪郭作成部28が除去工具輪郭データを作成するようにした。これに代えて、撮像部39が除去工具としての砥石の先端部を撮像した撮像画像に基づいて、砥石輪郭作成部28が除去工具輪郭データを作成するようにしてもよい。これにより、除去工具の刃先形状と機械座標上での位置を把握する。これに基づいて、加工プログラムを作成、または補正することが可能となる。
【0121】
また、除去工具輪郭データの作成は、前記除去痕画像、または除去工具の先端部の撮像画像に基づいて作成する方法に限定するものではない。例えば、撮像部として距離画像センサや、カメラ内蔵レーザ変位センサ等を使用することにより、除去工具の先端と、センサ間の距離を計測し、この計測結果に基づいて除去工具輪郭データを作成するようにしてもよい。例えば、距離画像センサで得られる距離画像には、画素毎の距離情報(除去工具の先端と、センサ間の距離)を含む。前記距離画像は、撮像画像に相当する。
【0122】
従来は、除去加工したワークを測定して、加工プログラムを修正することにより、加工精度を高めるようにしている。これに対して、上記のように除去工具の先端の撮像画像を取得して、除去工具輪郭データを作成した場合、リアルタイムに除去工具の形状の把握することが可能になるため、加工精度を高めることができ、歩留まりを改善することができる。
【0123】
・前記実施形態では、手動操作により、ワークの一部を除去するようにしたが、手動操作ではなく、自動で、ワークの一部を除去するようにしてもよい。この場合においても、撮像部の焦点位置から除去工具の先端が外れて、除去工具の画像として映らなくても、除去工具輪郭により除去工具の位置を可視化できる。
【0124】
すなわち、自動化の場合、通常、作業者は、除去加工の全体を見る必要はないが、作業者か自動化されている除去加工の状態を見たい場合もある。この場合は、除去工具輪郭により除去工具の位置を可視化により確認できる効果がある。
【符号の説明】
【0125】
10…NC研削装置(除去加工装置)
11…制御装置
12…ディスプレイ
13…画面
13a…画像表示領域
13b…ボタン表示領域
14…コンソール
16…マウス
17…X軸操作装置
17a…手動ハンドル(手動操作部)
17b…エンコーダ(操作量検出部)
18…Y軸操作装置
18a…手動ハンドル(手動操作部)
18b…エンコーダ(操作量検出部)
20…制御装置
22…CPU
24…記憶部
25…表示制御部
27…画像処理部
28…砥石輪郭作成部(除去工具輪郭作成部)
29…NC制御部
30…研削部
31…研削機構部
32…ワーク保持機構部
33…移動機構部
34…照明装置
35…砥石(除去工具)
36…Z軸用モータ
37…X軸用モータ
38…Y軸用モータ
39…撮像部
A…砥石輪郭
Aa、Ab、Ac…部位
A1…砥石輪郭
A2…砥石輪郭
E0、E1、E2、E3…端点
F0、F1、F2、Fm…交点
g…分割線
Ka、Kb、Kc…近似円弧
O…中心
Oa、Ob、Oc…曲率中心
ra、rb、rc…曲率半径
Tg…砥石実画像
W…ワーク
Wp…ダミーワーク
Wc…研削痕
Wg…上端面画像(ワーク実画像)
図1
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