IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社クボタの特許一覧

<>
  • 特開-作業車 図1
  • 特開-作業車 図2
  • 特開-作業車 図3
  • 特開-作業車 図4
  • 特開-作業車 図5
  • 特開-作業車 図6
  • 特開-作業車 図7
  • 特開-作業車 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064660
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】作業車
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/24 20060101AFI20240507BHJP
   F21S 41/148 20180101ALI20240507BHJP
   F21S 41/32 20180101ALI20240507BHJP
   B60Q 1/04 20060101ALI20240507BHJP
   B60Q 1/18 20060101ALI20240507BHJP
   F21W 102/10 20180101ALN20240507BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240507BHJP
【FI】
B60Q1/24 C
F21S41/148
F21S41/32
B60Q1/04 Z
B60Q1/18 Z
F21W102:10
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173418
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】岡本 尚也
(72)【発明者】
【氏名】山中 暁
(72)【発明者】
【氏名】大下 雅史
【テーマコード(参考)】
3K339
【Fターム(参考)】
3K339AA02
3K339AA17
3K339BA01
3K339BA08
3K339BA22
3K339BA23
3K339BA28
3K339CA01
3K339DA01
3K339FA04
3K339GB01
3K339HA01
(57)【要約】
【課題】前照灯そのものの配設箇所や照射範囲を工夫して、前輪の直前位置の地面や作物等を照らすことが可能な作業車を提供する。
【解決手段】前走行装置10F及び後走行装置10Rによって支持された機体と、機体の前部に設けられた原動部2と、機体における原動部2の後方箇所に設けられた運転部3と、が備えられ、前走行装置10Fが、運転部3よりも前側、かつ、原動部2の横側部から左右方向に間隔を隔てた横外側箇所に設けられ、前走行装置10Fの接地箇所PGが原動部2の前端よりも後側にあり、原動部2に、機体前方を照らす前照灯5が備えられ、前照灯5による配光領域Zに、接地箇所PGの前端よりも後側領域が含まれている。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前走行装置と、
後走行装置と、
前記前走行装置及び前記後走行装置によって支持された機体と、
前記機体の前部に設けられた原動部と、
前記機体における前記原動部の後方箇所に設けられた運転部と、が備えられ、
前記前走行装置が、前記運転部よりも前側、かつ、前記原動部の横側部から左右方向に間隔を隔てた横外側箇所に設けられ、
前記前走行装置の接地箇所が前記原動部の前端よりも後側にあり、
前記原動部に、機体前方を照らす前照灯が備えられ、
前記前照灯による配光領域に、前記接地箇所の前端よりも後側領域が含まれている作業車。
【請求項2】
前記原動部に、駆動源と、前記駆動源を収容するボンネットと、が備えられ、
前記前照灯は、前記ボンネットの前端縁と、前記ボンネットの横側壁部と、の交点を含む箇所に設けられている請求項1記載の作業車。
【請求項3】
前記前照灯は、光源となるLEDと、そのLEDからの照射光を拡散反射させるリフレクタと、の組み合わせからなる光源ユニットを用いたものである請求項1記載の作業車。
【請求項4】
前記LEDは、前記光源ユニットの上部に設けられ、前記光源ユニットの下部に設けられた前記リフレクタに向けて下方向に光を照射する請求項3記載の作業車。
【請求項5】
前記前照灯は、前後方向で前記前走行装置の前部と重複する箇所に設けられている請求項1記載の作業車。
【請求項6】
前記前走行装置は、操舵輪である請求項1記載の作業車。
【請求項7】
前記接地箇所は、前記前照灯からの照射光が直射される前記配光領域からは外れている請求項1~6のいずれか一項記載の作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体前部の原動部に機体前方を照らす前照灯が設けられた作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の作業車では、夜間での作業中や路上での走行に際して、機体の進行方向の前方を照射するための前照灯を備えている。しかしながら、前照灯のみでは、機体全体の進行方向の前方を照射することはできても、実際に前輪が通過する予定箇所であるところの、前輪の直前位置の地面や作物等を照らすことが困難であった。そこで前照灯とは別に作業灯を装備して、前輪の直前箇所を照射するようにしていた(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-175443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のものでは、前輪の直前位置の地面や作物等を照らすための作業灯を別途設置して、前輪の通過予定箇所を照射できるようにしていたが、これでは、部品点数の増加を避けられず、製造コストの増大を抑制し難い点で改善の余地がある。
【0005】
本発明は、前照灯そのものの配設箇所や照射範囲を工夫して、前輪の直前位置の地面や作物等を照らすことが可能な作業車を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る作業車は、
前走行装置と、
後走行装置と、
前記前走行装置及び前記後走行装置によって支持された機体と、
前記機体の前部に設けられた原動部と、
前記機体における前記原動部の後方箇所に設けられた運転部と、が備えられ、
前記前走行装置が、前記運転部よりも前側、かつ、前記原動部の横側部から左右方向に間隔を隔てた横外側箇所に設けられ、
前記前走行装置の接地箇所が前記原動部の前端よりも後側にあり、
前記原動部に、機体前方を照らす前照灯が備えられ、
前記前照灯による配光領域に、前記接地箇所の前端よりも後側領域が含まれている、という特徴を有している。
【0007】
本発明によれば、機体前方を照らす前照灯による配光領域が、前走行装置における接地箇所の前端よりも後側領域を含むように設定されている。その結果、前走行装置の直前位置の地面や作物等を、前照灯の照射光で視認し易くしながら走行させることが容易となる。
これにより、前照灯とは別に作業灯を設けるなどの、部品点数の増加や製造コスト増を避けながら、前走行装置の進行方向や作物の位置等を確実に把握することができる、という利点がある。
【0008】
本発明の好適な実施形態の1つでは、前記原動部に、駆動源と、前記駆動源を収容するボンネットと、が備えられ、前記前照灯は、前記ボンネットの前端縁と、前記ボンネットの横側壁部と、の交点を含む箇所に設けられている。
【0009】
この手段によると、前照灯からの照射光を機体前方と横側方とに向けて拡散させながら照射し易くなる。
【0010】
本発明の好適な実施形態の1つでは、前記前照灯は、光源となるLEDと、そのLEDからの照射光を拡散反射させるリフレクタと、の組み合わせからなる光源ユニットを用いたものである。
【0011】
この手段によると、光源となるLED自体の個数は少なくても、リフレクタによる拡散方向の工夫により、多方向への光照射が可能となるので、光源の個数を節減して、低コスト、かつ低電力の前照灯を得易い。
【0012】
本発明の好適な実施形態の1つでは、前記LEDは、前記光源ユニットの上部に設けられ、前記光源ユニットの下部に設けられた前記リフレクタに向けて下方向に光を照射する。
【0013】
この手段によると、上部のLEDからの照射光を、下部のリフレクタで反射させて、反射光が所定の領域へ向けて的確に拡散されるように配光することができる。
【0014】
本発明の好適な実施形態の1つでは、前記前照灯は、前後方向で前記前走行装置の前部と重複する箇所に設けられている。
【0015】
この手段によると、前照灯は、前後方向で前走行装置の前部と近い位置にあり、前方を照射するとともに、前走行装置の接地箇所近くの照射をも行い易い。
【0016】
本発明の好適な実施形態の1つでは、前記前走行装置は、操舵輪である。
【0017】
この手段によると、向き変更される操舵輪の接地箇所近くの照射を行うことができる。
【0018】
本発明の好適な実施形態の1つでは、前記接地箇所は、前記前照灯からの照射光が直射される前記配光領域からは外れている。
【0019】
この手段によると、前走行装置の接地箇所自体をリフレクタからの反射光で直射するようにするのではなく、前走行装置の接地箇所は、リフレクタからの反射光が直射される配光領域からは外れた箇所であるように前照灯の配光領域が設定されている。そして、この前照灯による配光領域は、接地箇所の前端よりも後方箇所を含む前方であるようにも設定されているものである。
このように前照灯の配光領域が設定されていると、前走行装置の接地箇所付近は、リフレクタからの反射光が直接的に照射されている訳ではないが、直射される配光領域等からの散乱光によって認識され易くなる。
したがって、前照灯の配光領域を接地箇所が含まれるように大きく拡げる必要がなく、構造の簡素化や小型化を図りやすい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】トラクタの左側面図である。
図2】トラクタの平面図である。
図3】原動部のエンジンルーム内を示す左側面図である。
図4】原動部と前輪との位置関係を示す正面図である。
図5】前照灯を左前方の斜め下方から見た斜視図である。
図6】水平方向で切断した前照灯を左前方の斜め上方から見た状態を示す斜視図である。
図7】左側の前照灯の配光領域を示す模式図である。
図8】左右の前照灯の配光領域を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面の記載に基づいて説明する。
尚、本実施形態での説明における前後方向及び左右方向は、特段の説明がない限り、次のように記載している。つまり、本発明を適用したトラクタ(作業車の一例)の作業走行時における前進側の進行方向(図1,2における矢印F参照)が「前」、後進側への進行方向(図1,2における矢印B参照)が「後」、その前後方向での前向き姿勢を基準としての右側に相当する方向(図2における矢印R参照)が「右」、同様に左側に相当する方向(図2における矢印L参照)が「左」である。上方に相当する方向(図5,6における矢印U参照)が「上」、上方に相当する方向(図5,6における矢印D参照)が「下」である。
【0022】
〔全体構成〕
本実施形態で示す作業車の一例であるトラクタは、次のように構成されている。
図1に示すように、機体フレーム1(機体に相当する)の前部に原動部2が設けられ、機体フレーム1の後部に運転部3が設けられている。機体フレーム1は、原動部2の左右に配置された操舵輪である前輪10F(前走行装置に相当する)と、運転部3の左右に配置された操向不能な後輪10R(後走行装置に相当する)と、を備える走行装置10によって支持されている。走行装置10のうち、前走行装置としての前輪10Fによって機体の前部が支持され、後走行装置としての後輪10Rによって機体の後部が支持されている。前輪10F及び後輪10Rは、それぞれが駆動回転される四輪駆動型に構成されている。
【0023】
前走行装置に相当する前輪10Fは操舵輪であり、運転部3よりも前方に位置し、運転部3の運転座席32に塔座する運転姿勢で運転者が目視可能な位置に設けられている。
左右の前輪10F,10Fは、原動部2の横側部との間に、操向操作される前輪10Fの向き変更を許容するに適切な間隔を隔てて、原動部2の横外側箇所に配置されている。この前輪10Fの接地点PG(接地箇所に相当する)は、図1に示すように、前車軸13aの直下に相当する位置であり、原動部2の前端よりも後方にある。
【0024】
図1及び図2に示すように、機体フレーム1は、駆動源として設けられた水冷式のディーゼルエンジン20(以下、エンジンと略称する)に連結した前フレーム11と、エンジン20の後部に連結したクラッチハウジング(図示せず)と、クラッチハウジングの後部に連結したトランスミッションケース12と、を備えて、これらを一体化したモノコック構造に構成されている。
前輪10Fは前車軸ケース13に支持され、前車軸ケース13は、機体フレーム1の下部に、前後方向に沿う揺動軸心(図示せず)周りでローリング作動可能に支持されている。
【0025】
〔原動部〕
図1~3に示すように、原動部2は、エンジン20などの配置空間を形成する金属製のエンジンボンネット21(ボンネットに相当する)を備えている。
エンジンボンネット21の内部に形成されるエンジンルーム2Rには、エンジン20を冷却するためのラジエータ22を境にして、機体後方側に存在する後部空間2Aと、ラジエータ22よりも機体前方側に位置する前部空間2Bと、が形成されている。
【0026】
ラジエータ22は、機体前後方向での前側に吸気面22aを備え、機体前後方向での後側に冷却ファン22bを備えて、機体前方側から後方側へ冷却風を吸引するように構成されている。
ラジエータ22の外周部とエンジンボンネット21の内面との間には、前部空間2Bと、後部空間2Aと、を仕切る仕切部材14が設けられている。仕切部材14は、前部空間2Bと、後部空間2Aとの間における気体の流通を遮るとともに、輻射熱の伝達も抑制し得るように設けられた合成樹脂製のスポンジ状断熱材等で構成されている。
【0027】
ラジエータ22よりも機体後方側の領域に存在する後部空間2Aには、エンジン20、エンジン20に供給する空気を濾過するエアクリーナ23、及び排気処理装置の一例であるDPF(Diesel particulate filter)24、等が配置されている。エアクリーナ23、及びDPF24は、エンジンルーム2Rにおいて、エンジン20の上方で、そのエンジン20とエンジンボンネット21との間に存在する狭い空間に配置されている。前後方向の位置関係では、エアクリーナ23が前方側でラジエータ22に近い位置にあり、DPF24はエアクリーナ23よりも後方寄りでラジエータ22からは離れた位置に設けられている。
【0028】
エンジンボンネット21の内部ではあるが、エンジン20及びDPF24よりも後方側の空間には、エンジンボンネット21に上部及び横側部を囲われる状態で、燃料タンク25が配置されている。この燃料タンク25と前方のエンジン20及びDPF24の間には遮熱用隔壁26が設けられ、エンジン20やDPF24からの輻射熱が燃料タンク25に直接的には伝わらないようにしてある。
【0029】
ラジエータ22の吸気面22aよりも機体前方側の領域に存在するエンジン関連機器の前部空間2Bには、バッテリ27、オイルクーラ28、リザーブ燃料タンク29、コンデンサ37等のエンジン関連機器が配置されている。
この前部空間2Bの上部の内面には、断熱シート40を貼り付けることによって、エンジンボンネット21自体の熱が前部空間2Bに放熱されることを抑制する遮熱層4を構成してある。
【0030】
エンジンボンネット21は、原動部2の前端部を覆う通気可能な前部グリルfgを有したフロントカバー部21a、原動部2の横側部を覆う左右の横側壁部21b、原動部2の上部を覆う天井壁部21c、及び、前照灯5などが設けられた一体型のものである。このエンジンボンネット21が、機体フレーム1から立設されたタンク支持フレーム15の上部に位置する左右向きの支軸x1を支点にして前端側を上下方向に開閉揺動可能に構成されている。
【0031】
横側壁部21bには、ラジエータ22よりも前方側で、前部空間2Bに外気を取り込むための通気穴が形成された前サイドグリルsg1と、ラジエータ22よりも前方側で、後部空間2Aからエンジンルーム2R内の熱気を外部へ排出するための通気穴が形成された後サイドグリルsg2と、が設けられている。
【0032】
〔運転部〕
原動部2の後方側に設けられる運転部3には、搭乗空間を覆うキャビン30が備えられている。キャビン30内に、前輪10Fを操向操作するステアリングホイール31、及び運転座席32等が設けられている。
キャビン30の前面33、及び後面34は透明ガラスで構成され、運転座席32に搭座した状態で機体前方及び後方を見渡すことができるようになっている。キャビン30の左横側面は透明ガラス製の開閉ドア35によって構成され、開閉ドア35を開閉して、キャビン30内の空間に出入りすることができる。
キャビン30は、右横側面(図外)にも透明ガラス製の窓が設けられており、キャビン30内から屋根部36を除く前後左右のキャビン30の外側周辺を見渡すことができるようになっている。
【0033】
〔前照灯〕
原動部2におけるエンジンボンネット21の前端部には、機体前方を照らす前照灯5が設けられている。
この前照灯5は、エンジンボンネット21の前端縁と左右の横側壁部21bとの交点を含む二箇所に設けられている。
機体の前後方向における前照灯5と前輪10Fとの位置関係では、図1及び図2に示すように、エンジンボンネット21の前端よりも少しだけ後方寄りの位置に前輪10Fの前端が位置し、前輪10Fの接地点PGはさらに後方に位置している。この前輪10Fの接地点PGは、前輪10Fの回動軸心と同一の回転軸心を備える前車軸13aの直下に相当する箇所である。
【0034】
前照灯5は、外装ケース50に、光源となるLED(light-emitting diode)51と、そのLED51からの照射光を拡散反射させるリフレクタ52と、を内装しており、このLED51とリフレクタ52との組み合わせで構成される複数個の光源ユニット5A,5B,5Cを備えている。
光源ユニット5A,5B,5Cは、エンジンボンネット21の右側に設けられる前照灯5、及び左側に設けられる前照灯5のそれぞれに、複数個が用いられている。実施形態では、右側に設けられる前照灯5と左側に設けられる前照灯5とのそれぞれが、三個の光源ユニット5A,5B,5Cを備えている。
【0035】
〔光源ユニットについて〕
各光源ユニット5A,5B,5Cは次のように構成されている。
図3乃至図8に示すように、各光源ユニット5A,5B,5Cのそれぞれは、上下方向ではほぼ同一の高さ位置にあり、平面視では左右方向及び前後方向に位置をずらしながら配設されている。つまり、平面視において機体左右方向での最内側に位置する光源ユニット5A(第一ユニットに相当する)が最も機体前方に位置し、順次、横外側に位置する光源ユニット5B,5Cが機体後方に位置するように配置され、最外側に位置する光源ユニット5C(第二ユニットに相当する)が最も機体後方に位置するように配置されている。
【0036】
すなわち、各光源ユニット5A,5B,5Cにおいて、光源となるLED51、及びリフレクタ52のうち、機体左右方向での最内側に位置する光源ユニット5AのLED51、及びリフレクタ52が、最も機体前方に位置している。
そして、機体左右方向での最外側に位置する光源ユニット5CのLED51、及びリフレクタ52が、最も機体後方に位置するように配置されている。
中間位置の光源ユニット5BのLED51、及びリフレクタ52は、機体左右方向での最内側の光源ユニット5AのLED51、及びリフレクタ52よりも横外側で機体後方寄りに位置し、機体左右方向での最外側の光源ユニット5CのLED51、及びリフレクタ52よりも横内側で機体前方寄りに位置している(図5乃至図7参照)。
【0037】
それぞれの光源ユニット5A,5B,5Cに備えられるリフレクタ52は、前向き反射面53Fと、横向き反射面53Sと、上向き反射面53Uと、下向き反射面53Dと、の反射方向の異なる四面が組み合わされた立体的な反射面53を有している。
下向き反射面53Dには、その下向き反射面53Dよりも上方箇所に設けられたLED51からの下向きの照射光を通過させる開口54が形成され、下向き反射面53Dは開口54の形成箇所を除く範囲に形成されている。
【0038】
前向き反射面53Fは、全体が機体進行方向のほぼ前方に向く前向き姿勢で、上端から下端に至るほど前方に位置するように、かつ前向き反射面53Fの左右方向での中央近くが端部近くよりも後方に位置するように、後方下方に向けて突曲する凹入湾曲面に形成されている。
横向き反射面53Sは、前向き反射面53Fの機体内方側の端部から前方に突出する段部に形成され、機体進行方向のほぼ横外方へ向くように設けられている。
上向き反射面53Uは、前向き反射面53Fの下端に連なる前方位置、及び横向き反射面53Sの下端に連なる横外方位置、に存在するように、ほぼ水平方向に沿った上向きの面に形成されている。
下向き反射面53Dは、前向き反射面53Fの上端に連なる前方位置、及び横向き反射面53Sの上端に連なる横外方位置、に存在するように、ほぼ水平方向に沿った下向きの面に形成されている。
【0039】
前向き反射面53Fは、図5及び図6に示されるように、多数の矩形状の小区画部分53Faが上下左右に敷き詰められた状態に設けられ、その小区画部分53Faの集合体が前述した後方下方に向けて突曲する凹入湾曲面を形成している。
個々の小区画部分53Faは、それぞれが光源となるLED51からの照射光を、各小区画部分53Fa毎に予め設定された所定方向へ向けて拡散反射し得るように設けられている。
【0040】
横向き反射面53Sは、上向き反射面53Uと下向き反射面53Dとの間において、前後方向に沿う波形の反射面を備えている。この反射面を備えることで、照射される光を前方のみならず、上下方向をも含む横外方にも拡散し得るように設けられている。
【0041】
上向き反射面53Uは、前向き反射面53Fの下端に連なる前方位置、及び横向き反射面53Sの下端に連なる横外方位置で、ほぼ水平方向に沿う上向きの平面部分を備えていて、その平面部分に、前後方向に沿う波形の反射面を備えている。この反射面を備えることで、照射される光を前方のみならず、左右方向及び上方にも拡散し得るように設けられている。
【0042】
下向き反射面53Dは、前向き反射面53Fの上端に連なる前方位置、及び横向き反射面53Sの上端に連なる横外方位置、に存在するように、ほぼ水平方向に沿った下向きの平面部分を備えていて、その平面部分に、前後方向に沿う波形の反射面を備えている。この反射面を備えることで、照射される光を前方のみならず、左右方向及び下方にも拡散し得るように設けられている。
【0043】
それぞれの光源ユニット5A,5B,5Cに備えられるLED51は、リフレクタ52の下向き反射面53Dよりも上方箇所で、外装ケース50に、つまり光源ユニット5A,5B,5Cの上部に固定されている。そして、LED51から照射された下向きの照射光は、下向き反射面53Dに形成されている開口54を通して、光源ユニット5A,5B,5Cの下部に固定されている前向き反射面53Fに到達する。図6における符号55は、透明のガラス製又は樹脂製のヘッドランプカバーである。
前向き反射面53Fに照射された光は、前向き反射面53F自体の全体形状、及び各小区画部分53Fa毎に予め設定されている異なる反射方向等を活用して、所定箇所への配光が行われる。
【0044】
〔前照灯の配光特性〕
前照灯5による配光状態を図7及び図8に基づいて説明する。
各光源ユニット5A,5B,5Cにおいて、リフレクタ52の前向き反射面53Fに照射された光は、前向き反射面53F自体の全体形状、横向き反射面53S、上向き反射面53U、下向き反射面53D、の位置及び形状、並びに前向き反射面53Fの各小区画部分53Fa毎に予め設定されている所定の異なる方向へ向けての拡散反射機能、等を有効利用して、所定領域に向けて的確に配光される。
【0045】
原動部2の左右に設けられる前照灯5,5からの配光は、図8に示すように行われている。
この図8では、予め設定した所定の光度レベル毎に、前照灯5,5から照射される光の配光領域Zを、便宜上、第一配光領域Z1、第二配光領域Z2、第三配光領域Z3、第四配光領域Z4、の四段階に区分けしている。
【0046】
第一配光領域Z1が最も光度の高い領域であり、明確に進行方向の路面や作物の認識が行われる領域として設定されている。この第一配光領域Z1は、トラクタの機体の左右方向の横幅よりも十分に広い左右方向幅と、通常の農作業等で前方を見通しながら支承なく作業を行い得る前後方向幅とを有している。
【0047】
第二配光領域Z2、第三配光領域Z3、及び第四配光領域Z4は、漸次、所定の光度レベルが低くなる段階を示しており、第四配光領域Z4で示される領域まで、前照灯5,5からの照射光が直射される領域、つまり、各光源ユニット5A,5B,5Cにおけるリフレクタ52によって拡散された反射光が直接に届く範囲である。
【0048】
第四配光領域Z4よりも外側の領域は、前照灯5,5からの照射光が直接に届く領域ではないが、この第四配光領域Z4の周辺部では多くの散乱光が存在していて、ある程度は目視で地面や前輪10Fの位置などを認識することは可能である。
実際に、図8に示すように、前輪10Fの接地点PGは第四配光領域Z4よりも外側にあるが、散乱光によって認識することが可能である。
【0049】
図8に示した左右の前照灯5,5の配光特性は、図7に示す概念図のような照射形態から生じていると思われる。
図7は、左側の前照灯5における照射形態を模式的に示している。右側の前照灯5は左側の前照灯5と左右対称に設けられているので説明を省略し、左側の前照灯5のみについて説明する。
【0050】
この前照灯5の各光源ユニット5A,5B,5Cのうち、機体左右方向で最内側に位置する光源ユニット5Aのみから照射される光が所定以上の光度レベルで分布しているとみられる領域は、図7の第一仮想領域Zaで示される範囲であると想定される。この第一仮想領域Zaの面積中心Paと、光源ユニット5Aとを第一仮想線分L1で結ぶと、この第一仮想線分L1は、前後方向に向く機体中心線L0に沿う方向となる。
【0051】
同様に、機体左右方向で最外側に位置する光源ユニット5Cのみから照射される光が所定以上の光度レベルで分布しているとみられる領域は、図7の第三仮想領域Zcで示される範囲であると想定される。この第三仮想領域Zcの面積中心Pcと、光源ユニット5Cとを第三仮想線分L3で結ぶと、この第三仮想線分L3は、第一仮想線分L1よりも機体中心線L0よりも横外側へ遠ざかる方向に向けられている。
【0052】
そして、機体左右方向で最内側と最外側との中間に位置する光源ユニット5Bのみから照射される光が所定以上の光度レベルで分布しているとみられる領域は、図7の第二仮想領域Zbで示される範囲であると想定される。この第二仮想領域Zbの面積中心Pbと、光源ユニット5Bとを第二仮想線分L2で結ぶと、この第二仮想線分L2は、第一仮想線分L1と第三仮想線分L3との中間的な位置にある。
【0053】
左右の前照灯5,5における第一仮想領域Zaと第二仮想領域Zbと第三仮想領域Zcとが重ね合わせられ、かつ第一仮想領域Zaと第二仮想領域Zbと第三仮想領域Zcとにおける所定以上の光度レベルに満たない光度レベルの光等も重なり合わさって、図8に示す配光領域が現出された状態になるものと想定される。
【0054】
〔別実施形態〕
以下、別実施形態について説明する。下記の各別実施形態は、矛盾が生じない限り、複数組み合わせて上記実施形態に適用してもよい。なお、本発明の範囲は、これら実施形態の内容に限定されるものではない。
【0055】
(1)上述した実施形態では、運転部3として、キャビン30を備えた構造のものを例示したが、この構造に限定されるものではない。
例えば、キャビン30を備えずに、ステアリングホイール31や運転座席32等を備えた構造のものであってもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0056】
(2)上述した実施形態では、走行装置10として、操向駆動される前輪10Fと操向不能で駆動される後輪10Rとを備えて四輪駆動される構造のトラクタを例示したが、この構造に限られるものではない。
例えば、前輪10Fを操向可能な非駆動の前輪10Fとして二輪駆動のものであったり、前輪10Fが操向不能で後輪10Rが操向可能である構造のものであってもよい。
また、車輪ではなく、前走行装置、もしくは後走行装置の何れか一方を操舵可能とし、他方をクローラ走行装置とするもの、もしくは、前走行装置と後走行装置が一体化された一連のクローラ走行装置を用いたものであってもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0057】
(3)上述した実施形態では、原動部2内に配設される駆動源として、ディーゼルエンジン20を採用した構造のものを例示したが、この構造に限定されるものではない。
例えば、ガソリンエンジンを採用したものの他、ハイブリッドエンジンや、内燃機関ではない電動モータを駆動源としたものであってもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0058】
(4)上述した実施形態では、前照灯5として、LED51とリフレクタ52との組み合わせからなる光源ユニット5A,5B,5Cを用いたものを例示したが、必ずしもこの構造に限定されるものではなく、例えば、ハロゲンランプなどの電球を光源とした構造のものであっても差し支えない。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0059】
(5)上述した実施形態では、前照灯5として、LED51とリフレクタ52との組み合わせで構成される三個の光源ユニット5A,5B,5Cを採用した構造のものを例示したが、必ずしもこの構造に限定されるものではない。
例えば、光源ユニット5A,5B,5Cの個数を、一個、又は二個、あるいは四個以上としてもよい。また、個々の光源ユニットにおけるLED51とリフレクタ52との組み合わせは、一つのリフレクタ52に対して一つのLED51を組み合わせたものに限らず、一つのリフレクタ52に対して複数のLED51を組み合わせたものを用いるなど、適宜の組み合わせを採用することも可能である。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、トラクタの他、フロントローダ、草刈機、田植機、等の農作業用の作業車、及び、ホイールローダ、などの土木作業用の作業車、あるいはフォークリフトや運搬車等に適用することができる。
【符号の説明】
【0061】
2 原動部
3 運転部
4 遮熱層
5 前照灯
5A,5B,5C 光源ユニット
10F 前走行装置
10R 後走行装置
20 駆動源
21 ボンネット
51 LED
52 リフレクタ
PG 接地箇所
Z 配光領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8