(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064661
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】作業車
(51)【国際特許分類】
B60K 11/04 20060101AFI20240507BHJP
F01P 5/06 20060101ALI20240507BHJP
F01P 11/08 20060101ALI20240507BHJP
B62D 25/10 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
B60K11/04 E
F01P5/06 510A
F01P11/08 A
B62D25/10 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173419
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】岡本 尚也
(72)【発明者】
【氏名】正円 茂夫
(72)【発明者】
【氏名】山中 暁
【テーマコード(参考)】
3D004
3D038
【Fターム(参考)】
3D004AA07
3D004BA04
3D004DA04
3D038AA07
3D038AA08
3D038AB06
3D038AC01
3D038AC10
3D038AC11
3D038AC14
(57)【要約】
【課題】外気温が高くなった場合でも、エンジンボンネットの前部空間からラジエータへの導入外気温度の上昇を効果的に抑制できるようにする。
【解決手段】エンジン20とラジエータ22と冷却ファン22bとを収容する金属製のエンジンボンネット21が備えられ、エンジンボンネット21内のラジエータ22よりも前側の箇所に、冷却用の外気を取り込み可能な前部空間2Bが備えられ、エンジンボンネット21の上部のうち、ラジエータ22の存在箇所よりも前側の内面部分に、上部の熱が前部空間2Bに伝わることを抑制する遮熱層4が備えられている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンの前方に設けられた前記エンジン冷却用のラジエータと、
前記エンジンと前記ラジエータとの間に設けられ、前記ラジエータの前方から前記エンジン側へ外気を引き込む冷却ファンと、
前記エンジンと前記ラジエータと前記冷却ファンとを収容する金属製のエンジンボンネットと、が備えられ、
前記エンジンボンネット内の前記ラジエータよりも前側の箇所に、冷却用の外気を取り込み可能な前部空間が備えられ、
前記エンジンボンネットの上部のうち、前記ラジエータの存在箇所よりも前側の内面部分に、前記上部の熱が前記前部空間に伝わることを抑制する遮熱層が備えられている作業車。
【請求項2】
前記ラジエータの外周部と前記エンジンボンネットの内面との間に、前記前部空間と、前記エンジンボンネットの内部のうちの前記エンジンが配設されている後部空間と、を仕切る仕切部材が備えられている請求項1記載の作業車。
【請求項3】
前記遮熱層の後端部は、前記仕切部材の前端部に接している請求項2記載の作業車。
【請求項4】
前記エンジンボンネットは、左右両側に位置して上下方向に沿う壁面を有した横側壁部と、左右の前記横側壁部の上端縁にわたって設けられた天井壁部と、を備えて、前後方向に直交する方向での切断面形状が門形であるように形成され、
前記天井壁部には、左右方向に沿う平面部と、その平面部の左右方向の両端部近くで、前記平面部に沿う方向から前記横側壁部の上下方向に沿う壁面に近づく方向に向けて湾曲した端部湾曲部とが備えられ、
前記遮熱層は、前記平面部と前記端部湾曲部とを含む前記天井壁部の内面のみに備えられている請求項1記載の作業車。
【請求項5】
前記エンジンボンネットの横側壁部には、前記前部空間と連通するサイドグリルが備えられ、
前記遮熱層の前端は、前記内面部分のうち、前記サイドグリルの前端よりも前側部分を覆うように設けられている請求項1記載の作業車。
【請求項6】
前記前部空間にオイルクーラが備えられ、
前記遮熱層は、前記内面部分のうち、前記オイルクーラの上部を覆う箇所に設けられている請求項1記載の作業車。
【請求項7】
前記遮熱層は断熱シートで構成され、前記内面部分に接着されている請求項1~6のいずれか一項記載の作業車
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体前部の原動部に備えたエンジンボンネット内にエンジンが配置され、 エンジンの前方に立設されているラジエータよりも前方側箇所に、冷却用の外気を取り込み可能な前部空間が備えられた作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の作業車では、ラジエータよりも前方の前部空間を経て冷却用の外気を取り込み、ラジエータに冷却用の外気を供給してエンジンの冷却を行うようにしている。この構造のものでは、特に外気温が高い夏期等での作業中に、前部空間からラジエータへ供給される冷却用気体の温度が高くなり過ぎて冷却効率が低下する傾向がある。このような事態に対処するため、冷却用ファンの回転数を上昇させて大量の外気を取り込むようにしたり、作業を一時中断してエンジン負荷を低減させたりする等、動力ロスや時間的ロスを招くおそれがあった(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のものでは、エンジンボンネットの内部をラジエータが存在する前部空間とそれよりも後方の空間とに遮蔽板で区画し、ラジエータを通過した冷却風を、エンジンボンネットの横側壁に形成された排風口から排出させるように導風板を設けている。この構造によれば、ラジエータで熱交換されて暖められた冷却風をエンジンボンネットの後部に到達する前に外部へ排出して、後部の計器類や燃料タンクへの熱影響を軽減ができる点では有用である。
しかしながら、さらに外気温が高くなった場合には、前部空間の室温も上がり、ラジエータへ供給される冷却風の温度が上昇して冷却効率が低減する傾向があるため、結局、冷却用ファンの回転数を上昇させて大量の外気を取り込むようにしたり、作業を一時中断してラジエータに対するエンジン冷却水の循環量を低減させたりする等、が必要となる。このため、外気温が高くなった場合等における、動力ロスの発生や作業能率の低減を抑制し難い点で改善の余地がある。
【0005】
本発明は、外気温が高くなった場合でも、エンジンボンネットの前部空間からラジエータへの導入外気温度の上昇を効果的に抑制できるようにしようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る作業車は、
エンジンと、
前記エンジンの前方に設けられた前記エンジン冷却用のラジエータと、
前記エンジンと前記ラジエータとの間に設けられ、前記ラジエータの前方から前記エンジン側へ外気を引き込む冷却ファンと、
前記エンジンと前記ラジエータと前記冷却ファンとを収容する金属製のエンジンボンネットと、が備えられ、
前記エンジンボンネット内の前記ラジエータよりも前側の箇所に、冷却用の外気を取り込み可能な前部空間が備えられ、
前記エンジンボンネットの上部のうち、前記ラジエータの存在箇所よりも前側の内面部分に、前記上部の熱が前記前部空間に伝わることを抑制する遮熱層が備えられていることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、エンジンボンネットがエンジン自体や関連機器の廃熱、及び外気温の影響を受けてかなり高い温度になったとしても、ラジエータの存在箇所よりも前方の内面部分に遮熱層が設けられているので、エンジンボンネットの熱が前部空間内に取り込まれた冷却風に伝わることを極力抑制することができる。
つまり、エンジンボンネット自体は、外表面の温度が高くなっても、外気との熱交換によるエンジンボンネット外への放熱は行われるが、ラジエータの存在箇所よりも前方の内面部分では、遮熱層が存在することでエンジンボンネット自体の熱が前部空間内に対して放出される現象を抑制することができる。これにより、前部空間内に取り込まれた外気がエンジンボンネットから放出される熱の影響を大きく受けて昇温されることを避けられ、ラジエータによる熱交換性能を低減させるおそれが少なくなる、という点で有利である。
【0008】
本発明の好適な実施形態の1つでは、前記ラジエータの外周部と前記エンジンボンネットの内面との間に、前記前部空間と、前記エンジンボンネットの内部のうちの前記エンジンが配設されている後部空間と、を仕切る仕切部材が備えられている。
【0009】
この手段によると、前部空間と後部空間とが仕切部材で仕切られているので、ラジエータの外周部で前部空間と後部空間との間における機体の流通が遮られる。これによって、前部空間内の気体がラジエータを経ずに後部空間に流れ込んだり、後部空間内の高い温度の気体が前部空間内に取り込まれた冷却風に伝わったりすることを回避でき、より一層、ラジエータによる熱交換性能を低減させるおそれが少なくなる。
【0010】
本発明の好適な実施形態の1つでは、前記遮熱層の後端部は、前記仕切部材の前端部に接している。
【0011】
この手段によると、遮熱層の後端部が仕切部材の前端部に接しているので、エンジンが存在する後部空間の近くで、前部空間のうちで最も放熱温度が高い箇所であるところの仕切部材の近くからの熱を遮蔽できるので、より一層、効果的な遮熱を行い易い。
【0012】
本発明の好適な実施形態の1つでは、
前記エンジンボンネットは、左右両側に位置して上下方向に沿う壁面を有した横側壁部と、左右の前記横側壁部の上端縁にわたって設けられた天井壁部と、を備えて、前後方向に直交する方向での切断面形状が門形であるように形成され、
前記天井壁部には、左右方向に沿う平面部と、その平面部の左右方向の両端部近くで、前記平面部に沿う方向から前記横側壁部の上下方向に沿う壁面に近づく方向に向けて湾曲した端部湾曲部とが備えられ、
前記遮熱層は、前記平面部と前記端部湾曲部とを含む前記天井壁部の内面のみに備えられている。
【0013】
この手段によると、遮熱層を設ける範囲が前部空間内の気体の昇温を避けるのに効果的な箇所にある。これによって、前部空間の内面の全体に遮熱層を設ける場合に比べて、遮熱層を設ける範囲の少ない割に効果的な遮熱を行うことができ、低コスト化を図りやすい。
【0014】
本発明の好適な実施形態の1つでは、前記エンジンボンネットの横側壁部には、前記前部空間と連通するサイドグリルが備えられ、前記遮熱層の前端は、前記内面部分のうち、前記サイドグリルの前端よりも前側部分を覆うように設けられている。
【0015】
この手段によると、サイドグリルの全体から取り込まれる外気に対して、エンジンボンネット側からの熱伝達を抑制し得る。
【0016】
本発明の好適な実施形態の1つでは、前記前部空間にオイルクーラが備えられ、前記遮熱層は、前記内面部分のうち、前記オイルクーラの上部を覆う箇所に設けられている。
【0017】
この手段によると、前部空間に配設されたオイルクーラへのエンジンボンネット側からの熱伝達も抑制し得る。
【0018】
本発明の好適な実施形態の1つでは、前記遮熱層は断熱シートで構成され、前記内面部分に接着されている。
【0019】
この手段によると、遮熱層の形成作業を容易に行い易い。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図3】原動部のエンジンルーム内を示す左側面図である。
【
図4】原動部のエンジンルーム内を示す平面図である。
【
図5】エンジンルーム内におけるラジエータ周辺の仕切箇所を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面の記載に基づいて説明する。
尚、本実施形態での説明における前後方向及び左右方向は、特段の説明がない限り、次のように記載している。つまり、本発明を適用したトラクタ(作業車の一例)の作業走行時における前進側の進行方向(
図1,2における矢印F参照)が「前」、後進側への進行方向(
図1,2における矢印B参照)が「後」、その前後方向での前向き姿勢を基準としての右側に相当する方向(
図2における矢印R参照)が「右」、同様に左側に相当する方向(
図2における矢印L参照)が「左」である。
【0022】
〔全体構成〕
本実施形態で示す作業車の一例であるトラクタは、次のように構成されている。
図1に示すように、機体フレーム1(機体に相当する)の前部に原動部2が設けられ、機体フレーム1の後部に運転部3が設けられている。機体フレーム1は、原動部2の左右に配置された操舵輪である前輪10F(前走行装置に相当する)と、運転部3の左右に配置された操向不能な後輪10R(後走行装置に相当する)と、を備える走行装置10によって支持されている。走行装置10のうち、前走行装置としての前輪10Fによって機体の前部が支持され、後走行装置としての後輪10Rによって機体の後部が支持されている。前輪10F及び後輪10Rは、それぞれが駆動回転される四輪駆動型に構成されている。
【0023】
図1及び
図2に示すように、機体フレーム1は、水冷式のディーゼルエンジン20(以下、エンジンと略称する)に連結した前フレーム11と、エンジン20の後部に連結したクラッチハウジング(図示せず)と、クラッチハウジングの後部に連結したトランスミッションケース12と、を備えて、これらを一体化したモノコック構造に構成されている。
前輪10Fは前車軸ケース13に支持され、前車軸ケース13は、機体フレーム1の下部に、前後方向に沿う揺動軸心(図示せず)周りでローリング作動可能に支持されている。
【0024】
〔原動部〕
図1~3に示すように、原動部2は、エンジン20などの配置空間を形成する金属製のエンジンボンネット21を備えている。
エンジンボンネット21の内部に形成されるエンジンルーム2Rには、エンジン20を冷却するためのラジエータ22を境にして、機体後方側に存在する後部空間2Aと、ラジエータ22よりも機体前方側に位置する前部空間2Bと、が形成されている。
【0025】
ラジエータ22は、機体前後方向での前側に吸気面22aを備え、機体前後方向での後側に冷却ファン22bを備えて、機体前方側から後方側へ冷却風を吸引するように構成されている。
ラジエータ22の外周部とエンジンボンネット21の内面との間には、前部空間2Bと、後部空間2Aと、を仕切る仕切部材14が設けられている。仕切部材14は、前部空間2Bと、後部空間2Aとの間における気体の流通を遮るとともに、輻射熱の伝達も抑制し得るように設けられたスポンジ状断熱材等の合成樹脂材で構成されている。
【0026】
ラジエータ22よりも機体後方側の領域に存在する後部空間2Aには、エンジン20、エンジン20に供給する空気を濾過するエアクリーナ23、及び排気処理装置の一例であるDPF(ディーゼルパティキュレートフィルタ)24、等が配置されている。エアクリーナ23、及びDPF24は、エンジンルーム2Rにおいて、エンジン20の上方で、そのエンジン20とエンジンボンネット21との間に存在する狭い空間に配置されている。前後方向の位置関係では、エアクリーナ23が前方側でラジエータ22に近い位置にあり、DPF24はエアクリーナ23よりも後方寄りでラジエータ22からは離れた位置に設けられている。
【0027】
エンジンボンネット21の内部ではあるが、エンジン20及びDPF24よりも後方側の空間には、エンジンボンネット21に上部及び横側部を囲われる状態で、燃料タンク25が配置されている。この燃料タンク25と前方のエンジン20及びDPF24の間には遮熱用隔壁26が設けられ、エンジン20やDPF24からの輻射熱が燃料タンク25に直接的には伝わらないようにしてある。
【0028】
ラジエータ22の吸気面22aよりも機体前方側の領域に存在するエンジン関連機器の前部空間2Bには、バッテリ27、オイルクーラ28、リザーブ燃料タンク29、コンデンサ37等のエンジン関連機器が配置されている。
【0029】
エンジンボンネット21は、原動部2の前端部を覆う通気可能な前部グリルfgを有したフロントカバー部21a、原動部2の横側部を覆う左右の横側壁部21b、原動部2の上部を覆う天井壁部21c、及び、前照灯21d、などが一体的に連結される一体型のものである。このエンジンボンネット21が、機体フレーム1から立設されたタンク支持フレーム15の上部に位置する左右向きの支軸x1を支点にして前端側が上下方向に開閉揺動可能に構成されている。
【0030】
前記エンジンボンネット21には、
図5に示すように、左右両側に位置して上下方向に沿う壁面を有した横側壁部21bと、左右の横側壁部の上端縁にわたって原動部2の上部を覆うように設けられた天井壁部21cと、が備えられている。この天井壁部21cと左右両側の横側壁部21bとは、前後方向に直交する方向での切断面形状が門形であるように形成されている。
前記天井壁部21cは、左右方向の中央部で水平方向に沿う平面部21caを備えている。そして、その平面部21caの左右方向の両端部近くに、前記平面部21caに沿う方向から横側壁部21bの上下方向に沿う壁面に近づく方向に向けて湾曲した端部湾曲部21cb,21cbが連続するように備えられ、全体として、上方に突曲する湾曲板状に形成されている。
左右両側の横側壁部21bは、ほぼ扁平な板状に形成され、端部湾曲部21cb,21cbの下端部に溶接して接合されている。
【0031】
横側壁部21bには、ラジエータ22よりも前方側で、前部空間2Bに外気を取り込むための通気穴が形成された前サイドグリルsg1と、ラジエータ22よりも前方側で、後部空間2Aからエンジンルーム2R内の熱気を外部へ排出するための通気穴が形成された後サイドグリルsg2と、が形成されている。
【0032】
前記エンジンボンネット21の内部では、エンジン20よりも機体後方側寄りで、ラジエータ22よりも前方側の位置に、エアクリーナ23の吸気口23aが前方へ向けて設けられている。この吸気口23aは、
図4に示すように、前部空間2Bに開口しており、吸気口23aを介してラジエータ22よりも前方からの外気を取り込むように設けられている。
【0033】
〔運転部〕
原動部2の後方側に設けられる運転部3には、搭乗空間を覆うキャビン30が備えられている。キャビン30内に、前輪10Fを操向操作するステアリングホイール31、及び運転座席32等が設けられている。
キャビン30の前面33、及び後面34は透明ガラスで構成され、運転座席32に搭座した状態で機体前方及び後方を見渡すことができるようになっている。キャビン30の左横側面は透明ガラス製の開閉ドア35によって構成され、開閉ドア35を開閉して、キャビン30内の空間に出入りすることができる。
キャビン30は、右横側面(図外)にも透明ガラス製の窓が設けられており、キャビン30内から屋根部36を除く前後左右のキャビン30の外側周辺を見渡すことができるようになっている。
【0034】
〔遮熱層〕
エンジンボンネット21の内面には、遮熱層4が設けられている。
この遮熱層4は、断熱シート40で構成され、エンジンボンネット21の上部に位置するボンネット上部の内面のうち、ラジエータ22の存在箇所よりも前方の内面部分で、前部空間2Bを覆う上方位置に設けられている。
【0035】
エンジンボンネット21の上部の内面のうち、遮熱層4となる断熱シート40が貼り付けられている範囲は、
図3乃至
図5に示すように、前後方向では、ラジエータ22の存在箇所よりも前方であり、かつ前端がほぼエンジンボンネット21の前端に達する位置である。
この前後方向における遮熱層4の存在範囲は、側面視で、ラジエータ22の存在箇所よりも前方において、横側壁部21bに形成されている前サイドグリルsg1の前端よりも前方に達する位置にまで設けられている。
このように遮熱層4の前後方向における存在範囲が定められることにより、前部空間2Bに存在するオイルクーラ28やバッテリ27等の発熱部品もその上方が遮熱層4で覆われることになる。
【0036】
そして、左右方向では、
図4及び
図5に示すように、天井壁部21cの平面部21caと、その両側に連なる端部湾曲部21cb,21cbと、にわたって断熱シート40が貼り付けられている。この断熱シート40は、端部湾曲部21cb,21cbの下端よりも下方の横側壁部21bには設けられていない。
【0037】
断熱シート40は、
図6に示すように、エンジンボンネット21の内面に当接した状態に貼り付けられる断熱材40aと、その断熱材40aを挟んでエンジンボンネット21の内面から所定距離d1だけ離間した状態に位置する遮熱シート40bと、を備えている。
断熱材40aは、耐熱機能を有したウレタンなどのスポンジ状の合成樹脂材で構成され、遮熱シート40bは、アルミシートなどの遮熱機能を有した素材で構成されている。
【0038】
〔別実施形態〕
以下、別実施形態について説明する。下記の各別実施形態は、矛盾が生じない限り、複数組み合わせて上記実施形態に適用してもよい。なお、本発明の範囲は、これら実施形態の内容に限定されるものではない。
【0039】
(1)上述した実施形態では、運転部3として、キャビン30を備えた構造のものを例示したが、この構造に限定されるものではない。
例えば、キャビン30を備えずに、ステアリングホイール31や運転座席32等を備えた構造のものであってもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0040】
(2)上述した実施形態では、走行装置10として、操向駆動される前輪10Fと操向不能で駆動される後輪10Rとを備えて四輪駆動される構造のトラクタを例示したが、この構造に限られるものではない。
例えば、前輪10Fを操向可能な非駆動の前輪10Fとして二輪駆動のものであったり、前輪10Fが操向不能で後輪10Rが操向可能である構造のものであってもよい。
また、車輪ではなく、前走行装置、もしくは後走行装置の何れか一方を操舵可能とし、他方をクローラ走行装置とするもの、もしくは、前走行装置と後走行装置が一体化された一連のクローラ走行装置を用いたものであってもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0041】
(3)上述した実施形態では、遮熱層4として断熱シート40を貼り付ける構造のものを例示したが、この構造に限定されるものではない。
例えば、遮熱層4として、断熱機能を有した塗料を吹き付け塗装して、塗膜により遮熱層4を形成したものなど、適宜の断熱及び遮熱の機能を有したものを採用してもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0042】
(4)上述した実施形態では、遮熱層4を前部空間2Bの天井壁部21cにのみ設けた構造のものを例示したが、必ずしもこの構造に限定されるものではない。
例えば、、遮熱層4を前部空間2Bの天井壁部21cと横側壁部21bとにわたって設けてもよい。
また、前後方向における遮熱層4の範囲も、前部空間2Bにおけるラジエータ22の存在箇所よりも前方に限らず、ラジエータ22の上方を含む範囲に設けても良いことは勿論である。さらに、前後方向において遮熱層4を設ける範囲は、エンジンボンネット21の前端に達する位置に限らず、適度な遮熱効果が発揮できる範囲で適宜に設定すればよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0043】
(5)上述した実施形態では、原動部2内に配設されるエンジン20として、ディーゼルエンジンを採用し、かつDPFを有する排気処理装置を備える構造のものを例示したが、この構造に限定されるものではない。
例えば、DPFを備えていないディーゼルエンジンやガソリンエンジンを採用したものであっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、トラクタの他、フロントローダ、草刈機、田植機、等の農作業用の作業車、及び、ホイールローダ、などの土木作業用の作業車、あるいはフォークリフトや運搬車等に適用することができる。
【符号の説明】
【0045】
2A 後部空間
2B 前部空間
3 運転部
4 遮熱層
14 仕切部材
20 エンジン
21 エンジンボンネット
21b 横側壁部
21c 天井壁部
21ca 平面部
21cb 端部湾曲部
22 ラジエータ
22b 冷却ファン
sg1 サイドグリル
28 オイルクーラ
40 断熱シート