(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006467
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】車両制御装置および車両制御方法
(51)【国際特許分類】
B60L 53/80 20190101AFI20240110BHJP
E05B 49/00 20060101ALI20240110BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20240110BHJP
【FI】
B60L53/80
E05B49/00 J
B60L50/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107346
(22)【出願日】2022-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小山 和哉
【テーマコード(参考)】
2E250
5H125
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250BB08
2E250DD02
2E250FF27
2E250FF36
2E250HH01
2E250JJ03
2E250LL01
5H125AA16
5H125AC13
5H125BC26
5H125CC07
5H125DD05
5H125EE41
5H125EE47
(57)【要約】
【課題】車両が始動できなくなるという事態を回避することを、部品の追加をできる限り抑えて実現すること。
【解決手段】実施形態に係る車両制御装置は、第1の認証処理によって認証された状態で始動スイッチ(「起動スイッチ」の一例に相当)の操作があった場合に、車両を起動する制御部(「コントローラ」の一例に相当)を備える。制御部は、取り外しに第2の認証処理によるロック解除を要する着脱可能な車両バッテリの取り外し状態から取り付け状態への変化があった場合に、上記始動スイッチの操作があると、上記車両を起動する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の認証処理によって認証された状態で起動スイッチの操作があった場合に、車両を起動するコントローラを備える車両制御装置であって、
前記コントローラは、
取り外しに第2の認証処理によるロック解除を要する着脱可能な車両バッテリの取り外し状態から取り付け状態への変化があった場合に、前記起動スイッチの操作があると、前記車両を起動する、
車両制御装置。
【請求項2】
前記第1の認証処理は、携帯端末との通信を行うことで認証が行われる、
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記第2の認証処理は、メカニカルキーによる操作、生体認証、車両に設けられた入力部を操作することによる暗証コード入力、の少なくとも1つで行われる、
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記コントローラは、
前記車両バッテリの取り外し状態から取り付け状態への変化があった後、予め決められた時間内に前記起動スイッチの操作があった場合に、前記車両を起動する、
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記コントローラは、
前記車両バッテリの取り外し状態から取り付け状態への変化があった場合に電源オンし、当該電源オンしてから前記時間が経過した場合に、電源オフする、
請求項4に記載の車両制御装置。
【請求項6】
前記車両は、前記車両バッテリの充電を、当該車両バッテリが前記車両から取り外されているときに行う方式の車両である、
請求項1~5のいずれか一つに記載の車両制御装置。
【請求項7】
第1の認証処理によって認証された状態でドアスイッチの操作があった場合に、車両ドアの解錠と車両ドア開の少なくとも一方のドア制御を行うコントローラを備える車両制御装置であって、
前記コントローラは、
取り外しに第2の認証処理によるロック解除を要する着脱可能な車両バッテリの取り外し状態から取り付け状態への変化があった場合に、前記ドアスイッチの操作があると、前記ドア制御を行う、
車両制御装置。
【請求項8】
第1の認証処理によって認証された状態で起動スイッチの操作があった場合に、車両を起動する車両制御装置が実行する車両制御方法であって、
取り外しに第2の認証処理によるロック解除を要する着脱可能な車両バッテリの取り外し状態から取り付け状態への変化があった場合に、前記起動スイッチの操作があると、前記車両を起動すること、
を含む車両制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、車両制御装置および車両制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の認証方式としては、メカニカルキーによってドアのロックの解除やエンジンの始動といったシステムの起動を行う機械式のタイプのものが多かったが、近年ではスマートエントリー方式といった無線での認証や生体認証等の電子式の電子式認証のニーズも高まっている。
【0003】
なお、無線での認証を採用する場合、ユーザが携帯する電子キーの電池切れといった事態に対する代替手段を講じる必要がある。代替手段は、電子キーと一体または別体のメカニカルキーを用いるものなど様々である。たとえば、複数の認証可能な無線端末を設け、1つの無線端末が電池切れとなっても、予備的な無線端末でユーザを認証可能とするものがある(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
また、無線での認証以外の電子式認証を用いる場合も、車両に設けた認証機能が故障した場合の代替手段を講じる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術には、車両が始動できなくなるという事態を回避することを、部品の追加をできる限り抑えて実現するうえで、さらなる改善の余地がある。
【0007】
たとえば、予備的な無線端末でユーザを認証可能とする場合、予備的な無線端末といった追加部品を、冗長的に追加で設ける必要がある。
【0008】
実施形態の一態様は、上記に鑑みてなされたものであって、車両が始動できなくなるという事態を回避することを、部品の追加をできる限り抑えて実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態の一態様に係る車両制御装置は、第1の認証処理によって認証された状態で起動スイッチの操作があった場合に、車両を起動するコントローラを備える。前記コントローラは、取り外しに第2の認証処理によるロック解除を要する着脱可能な車両バッテリの取り外し状態から取り付け状態への変化があった場合に、前記起動スイッチの操作があると、前記車両を起動する。
【発明の効果】
【0010】
実施形態の一態様によれば、車両が始動できなくなるという事態を回避することを、部品の追加をできる限り抑えて実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施形態に係る車両の概略構成を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る車両制御方法の概要説明図(その1)である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る車両制御方法の概要説明図(その2)である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る車載システムの構成例を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る車載システムが実行する処理手順を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、変形例に係る車載システムの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する車両制御装置および車両制御方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0013】
また、以下では、実施形態に係る車両Vが、電動車椅子や電動カートといった車両、いわゆるパーソナルモビリティであるものとする。パーソナルモビリティは、近年、たとえば運転免許証を返納した高齢者などの移動手段として普及が進みつつある。
【0014】
図1は、実施形態に係る車両Vの概略構成を示す図である。また、
図2および
図3は、実施形態に係る車両制御方法の概要説明図(その1)および(その2)である。なお、
図2および
図3は、実施形態に係る車載システム1のハードウェア構成例を示す図を兼ねている。
【0015】
図1に示すように、実施形態に係る車両Vは、パーソナルモビリティとして知られる1~2人乗り程度の電動車両である。車両Vには、同図に示すような4輪のカート型や車椅子型の他、3輪の車両や2輪の車両等、様々なタイプの車両がある。また、2輪の車両としても、電動バイクや、電動自転車の他、進行方向に対して左右に2つの車輪が設けられる立ち乗り型の車両など様々なタイプのものがある。
【0016】
図1に示すように、車両Vは、車載システム1を備える。車載システム1は、システムの始動/停止やドアのロック/アンロック等を行う際の認証処理を携帯端末との無線通信で行う認証方式、たとえばスマートエントリー方式によって動作するように設けられる。車載システム1は、バッテリユニット2と、車両制御装置10とを有する。バッテリユニット2と車両制御装置10とは通信可能に接続される。
【0017】
バッテリユニット2は、車載システム1へ電力を供給する。バッテリユニット2は、バッテリBを有する。バッテリBは、
図1の矢印a1が示すように車両Vから着脱可能に設けられる。バッテリBは、取り外して家庭用電源や電源ステーション等に接続することで充電可能である。
【0018】
なお、バッテリBは、着脱に際し、ユーザの認証処理を要するように設けられる。バッテリBの着脱に際してのユーザの認証処理は、「第2の認証処理」の一例に相当する。かかる認証処理は、機械式であってもよいし電子式であってもよい。機械式である場合、バッテリBは、取り外しに際したとえばユーザの携帯するバッテリBの着脱専用のメカニカルキーをキー穴に差し込んで操作することによるロック解除を要する。
【0019】
車両制御装置10は、車両Vに搭載されるコンピュータである。車両制御装置10は、たとえばVCU(Vehicle Control Unit)である。
【0020】
図2に示すように、車載システム1はさらに、始動スイッチ3と、リレー4と、インバータ(「INV5」)と、モータ6とを有する。車両制御装置10は、電源IC(Integrated Circuit)11と、DC/DC(Direct Current to Direct Current)コンバータ(「DCDC12」)と、BLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)13Aと、CPU(Central Processing Unit)15Aとを有する。
【0021】
始動スイッチ3は、車載システム1を始動させるスイッチである。車載システム1を始動させるとは、走行可能な状態となるように車両Vを始動させることを指す。始動スイッチ3は、ユーザによりオン操作された場合、CPU15Aに対し車載システム1の始動信号を出力する。なお、「始動」は、「起動」と読み替えてもよい。
【0022】
リレー4は、CPU15Aからのリレー駆動信号に基づいて駆動し、INV5へバッテリBからの電力を供給する。
【0023】
INV5は、たとえば車両Vの駆動輪の数に応じて1以上設けられ、CPU15Aからの回転数等の指示信号に基づいてモータ6の駆動を制御する。モータ6は、INV5に応じて1以上設けられ、INV5の制御に基づいて駆動して車両Vの駆動輪を回転させる。
【0024】
電源IC11は、バッテリBの状態を監視するとともに、監視結果に基づいてDCDC12を制御する。
【0025】
DCDC12は、電源IC11の制御に基づいてバッテリBから印加される直流電圧をBLE13AおよびCPU15Aに応じた直流電圧へ変換し、BLE13AおよびCPU15Aへ電力供給する。なお、DCDC12は、車載システム1の始動前の状態である待機状態においては、BLE13AおよびCPU15Aへ暗電流を供給する。
【0026】
BLE13Aは、携帯端末であるスマートフォン100を携帯するユーザが車両Vへ接近した場合に、暗電流によって動作し、スマートフォン100との間でBLE通信におけるペアリングを実行する。また、BLE13Aは、スマートフォン100とのベアリング結果をCPU15Aへ通知する。
【0027】
CPU15Aは、かかる通知を受けて起動し、スマートフォン100の認証処理を実行する。BLE13Aを介したスマートフォン100(すなわちユーザ)の認証処理は、「第1の認証処理」の一例に相当する。
【0028】
CPU15Aは、BLE13Aとスマートフォン100とのペアリングが正常に成立した場合、かかる結果に応じてスマートフォン100を正規のデバイスであるとして認証する。一方、CPU15Aは、BLE13Aとスマートフォン100とのペアリングが正常に成立しなかった場合、かかる結果に応じてスマートフォン100を認証しない。
【0029】
CPU15Aは、スマートフォン100を認証した場合、始動スイッチ3からの始動信号の受け付けを許可する。そして、CPU15Aは、予め決められた時間(一定時間)内に始動スイッチ3からの始動信号を受け付けた場合に、正規の起動要求があったとして、リレー4に対しリレー駆動信号を出力し、リレー4を駆動させてリレー4にバッテリBの電力をINV5へ供給させる。
【0030】
また、CPU15Aは、同じく正規の起動要求があった場合に、INV5に対する指示信号を出力し、かかる指示信号に基づいてINV5にモータ6を制御させる。
【0031】
なお、認証処理は、スマートフォンや車両Vに対してユーザが何らかの操作した際に行うようにしてもよいし、定期的に行うようにしてもよい。定期的に行う場合、車両Vの起動が完了するまで定期的に行うようにしてもよいし、起動後も定期的に行うようにしてもよい。また、起動後に定期的に行うようにしてもよい。なお、起動後に認証失敗した場合には、車両Vを停車させてシステム停止する等の不正使用に対処する処理を行うようにしてもよい。
【0032】
ところで、このような車載システム1は、スマートエントリー方式を採用していることによって、前述の第1の認証処理が実行不能である場合の代替手段を要する。
【0033】
図3に「×」印として示すように、車載システム1は、たとえばスマートフォン100の電池切れや不携帯、紛失、BLE13Aの故障などが生じてスマートフォン100とBLE13Aとの間の通信が行えない場合、ユーザの認証のための代替手段を要する。
【0034】
ここで、たとえばスマートフォン100以外にユーザが携帯する通信機器により予備的にユーザを認証可能とする場合、そのための認証システムを車両Vに実装する必要がある。しかしこの場合、かかる認証システムを実装するためにコストが嵩むおそれがあるうえ、スマートフォン100に代替する通信機器の電池切れや不携帯、紛失、故障などが生じた場合、かかる代替手段は機能しなくなる。
【0035】
一方で、代替手段として機械的に第1の認証処理を実行可能とするメカニカルキーを用いることも考えられるが、かかるメカニカルキーにより予備的にロックを解除可能およびシステムを始動可能とする機構を車両Vに設ける必要がある。つまり、かかる機構を設けるためにコストが嵩むおそれがある。
【0036】
また、近年、スマートフォン100の普及や無線通信技術の高品質化が目覚ましいことから、その時流に伴い、機械的に第1の認証処理を実行可能とするメカニカルキーを用いた代替手段は廃止される可能性もある。
【0037】
そこで、実施形態に係る車両制御方法では、CPU15Aが、取り外しに第2の認証処理によるロック解除を要する着脱可能なバッテリBの取り外し状態から取り付け状態への変化があった場合に、始動スイッチ3の操作があると、車両Vを起動することとした。
【0038】
図3に示すように、スマートフォン100による認証処理が実行不能であるものとする。かかる場合に、実施形態に係る車両制御方法では、電源IC11がバッテリBの装着状態を検出する。上述したように、バッテリBは着脱可能であり、着脱に際し第2の認証処理を要するように設けられている。第2の認証処理はたとえば、ユーザの携帯する着脱専用のメカニカルキーによって実現される。
【0039】
ここで、ユーザが着脱専用のメカニカルキーを用いて意図的にバッテリBを一旦取り外し、再びバッテリBを取り付けると、
図3に示すように電源IC11はバッテリユニット2からバッテリBの装着信号を検出する。装着信号は、バッテリBの取り外し状態から取り付け状態への変化を示す信号である。装着信号は、単にバッテリBと電源IC11とが導通したことを示す信号であってもよい。
【0040】
そして、電源IC11は、装着信号を検出すると、DCDC12を介してCPU15Aを起動し、装着信号を検出したことをCPU15Aへ通知する。そして、CPU15Aは、ステップS1に示すように、電源IC11が取り外しに第2の認証処理を要するバッテリBの取り外し状態から取り付け状態への変化を検出した場合に、一定時間、始動信号の受け付けを許可する。
【0041】
そのうえで、CPU15Aは、一定時間内に始動スイッチ3からの始動信号を受け付けた場合に、リレー4に対しリレー駆動信号を出力し、リレー4にバッテリBの電力をINV5およびモータ6へ供給させる。
【0042】
また、CPU15Aは、同じく始動スイッチ3からの始動信号を受け付けた場合に、INV5に対する指示信号を出力し、INV5にモータ6を制御させる。一方、CPU15Aは、一定時間内に始動スイッチ3からの始動信号を受け付けなかった場合はシャットダウンする。
【0043】
これにより、第2の認証処理を行うための代替手段を新たに設けることなく、既存のバッテリBの着脱を利用して第2の認証処理を行い、車載システム1を始動させることが可能となる。すなわち、実施形態に係る車両制御方法によれば、車両Vが始動できなくなるという事態を低コストに回避することができる。また、第1の認証処理を機械的に実行可能とするメカニカルキーを用いた代替手段がなくとも、車両Vが始動できなくなるという事態を回避することができる。
【0044】
以下、実施形態に係る車載システム1の構成例について、より具体的に説明する。
図4は、実施形態に係る車載システム1の構成例を示すブロック図である。なお、
図4および後に示す
図6では、本実施形態の特徴を説明するために必要な構成要素のみを表しており、一般的な構成要素についての記載を省略している。
【0045】
換言すれば、
図4および
図6に図示される各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。たとえば、各ブロックの分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することが可能である。
【0046】
また、
図4または
図6を用いた説明では、既に説明済みの構成要素については、説明を簡略するか、説明を省略する場合がある。
【0047】
図4に示すように、車載システム1は、バッテリユニット2と、始動スイッチ3と、リレー4と、INV5と、モータ6と、車両制御装置10とを有する。
【0048】
バッテリユニット2は、着脱機構2aと、ロック機構2bと、バッテリBとを有する。着脱機構2aは、バッテリBを着脱させる機構である。ロック機構2bは、着脱機構2aをロックまたはロック解除する機構である。
図4の例では、ロック機構2bは機械式であり、ユーザの携帯するメカニカルキーK1によって着脱機構2aをロックまたはロック解除する。バッテリBは、着脱機構2aに取り付けられた状態で電源IC11と導通する。
【0049】
始動スイッチ3、リレー4、INV5およびモータ6については説明済みのため、ここでの詳しい説明は省略する。なお、始動スイッチ3は、たとえばスターターボタンとして実現されてもよいし、それ以外の手段によって実現されてもよい。始動スイッチ3は、たとえば図示略のアクセルやブレーキ、ジョイスティック等によって実現されてもよい。
【0050】
車両制御装置10は、電源IC11と、DCDC12と、近距離無線通信部13と、記憶部14と、制御部15とを有する。電源IC11およびDCDC12については説明済みのため、ここでの説明は省略する。
【0051】
近距離無線通信部13は、たとえばネットワークアダプタ等によって実現される。近距離無線通信部13は、スマートフォン100と近距離無線通信方式で接続され、スマートフォン100との間で各種情報の送受信を行う。近距離無線通信方式としては、NFC(Near Field Communication)や、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)、UWB(Ultra Wide Band)等を用いることができる。前述のBLE13Aは、近距離無線通信部13の一例に相当する。
【0052】
また、スマートフォン100は、ユーザが携帯する携帯端末の一例に相当する。携帯端末は、少なくとも車両制御装置10と近距離無線通信方式での通信が可能な通信機能を有する。携帯端末は、スマートフォン100に限らず、モバイル型やタブレット型のコンピュータや、眼鏡型や時計型のコンピュータであるウェアラブルデバイスや、PDA(Personal Digital Assistant)や、電子キー等であってもよい。
【0053】
記憶部14は、たとえば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の記憶デバイス、または、ハードディスク装置等のディスク装置などによって実現される。記憶部14は、車両制御装置10が実行する各種処理に必要な各種情報を記憶する。
【0054】
制御部15は、コントローラ(eController)である。前述のCPU15Aは、制御部15の一例に相当する。制御部15は、たとえば、CPUやMPU(Micro Processing Unit)等によって、記憶部14に記憶されている図示略の各種プログラムがRAMを作業領域として実行されることにより実現される。また、制御部15は、たとえば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現することができる。
【0055】
なお、制御部15は「コントローラ」であるとしたが、「コントローラ」は、車両制御装置10全体の構成や、車両制御装置10にバッテリユニット2を付加した構成を広く含む概念であってもよい。
【0056】
制御部15は、認証部15aと、始動制御部15bと、検出部15cとを有し、以下に説明する情報処理の機能や作用を実現または実行する。
【0057】
認証部15aは、スマートフォン100と近距離無線通信部13との間の通信が確立した場合(たとえば前述のペアリングが成立した場合)に、かかる通信の確立結果に基づいてスマートフォン100を認証する。すなわち、認証部15aは、第1の認証処理を実行する。
【0058】
認証部15aはたとえば、通信の確立結果に含まれるスマートフォン100の特定情報と予め記憶部14に記憶されているユーザの利用する正規のデバイスの特定情報とを照合することによってスマートフォン100を認証する。
【0059】
また、認証部15aは、スマートフォン100が正規のデバイスとして認証された場合に、始動制御部15bに、一定時間内の始動スイッチ3からの始動信号の受け付けを許可する。
【0060】
始動制御部15bは、車両Vにおける車載システム1の始動を制御する。始動制御部15bは、認証部15aまたは検出部15cによって始動スイッチ3からの始動信号の受け付けが許可された場合に、始動信号を受け付ける。
【0061】
また、始動制御部15bは、始動スイッチ3から始動信号を受け付けた場合に、リレー4に対しリレー駆動信号を出力する。また、始動制御部15bは、始動スイッチ3から始動信号を受け付けた場合に、INV5に対しモータ6を制御させる指示信号を出力する。
【0062】
また、始動制御部15bは、始動スイッチ3から始動信号を受け付けなかった場合に、制御部15をシャットダウンさせ、暗電流による待機状態へ移行させる。
【0063】
検出部15cは、電源IC11によってバッテリユニット2からの装着信号が検出されたか否かを検出する。また、検出部15cは装着信号が検出された場合に、始動制御部15bに、一定時間内の始動スイッチ3からの始動信号の受け付けを許可する。
【0064】
次に、実施形態に係る車載システム1が実行する処理手順について
図5を用いて説明する。
図5は、実施形態に係る車載システム1が実行する処理手順を示すフローチャートである。なお、
図5は、バッテリBの取り外し状態から取り付け状態への変化が生じた場合の車載システム1の始動制御に関する処理手順を示している。
【0065】
電源IC11は、バッテリBが装着されたか否か、より詳しくはバッテリBの取り外し状態から取り付け状態への変化が生じたか否かを検出する(ステップS101)。
【0066】
かかる変化を検出した場合(ステップS101,Yes)、電源IC11は制御部15を起動させる(ステップS102)。検出しない場合(ステップS101,No)、電源IC11はステップS101を繰り返す。
【0067】
そして、制御部15は、始動スイッチ3からの始動信号を検出したか否かを判定する(ステップS103)。ここで、始動スイッチ3からの始動信号を検出した場合(ステップS103,Yes)、制御部15は車載システム1を始動させ(ステップS104)、
図5に示す処理を終了する。
【0068】
一方、始動信号を検出しない場合(ステップS103,No)、制御部15は一定時間が経過したか否かを判定する(ステップS105)。経過していない場合(ステップS105,No)、制御部15は、ステップS103からの処理を繰り返す。経過した場合(ステップS105,Yes)、制御部15はシャットダウンし(ステップS106)、待機状態へ移行する。そして、
図5に示す処理を終了する。
【0069】
なお、ステップS102の制御部15の起動は「電源オン」、ステップS106のシャットダウンは「電源オフ」と表現してもよい。また、「電源オン」はスリープ状態からの復帰、「電源オフ」はスリープ状態への移行としてもよい。
【0070】
(変形例)
ところで、これまではバッテリユニット2のロック機構2bがメカニカルキーK1を用いる機械式である場合を例に挙げたが、ロック機構2bは既に述べた通り電子式であってもよい。かかる変形例について
図6を用いて説明する。
図6は、変形例に係る車載システム1Aの構成例を示すブロック図である。
【0071】
なお、
図6は、既に示した
図4に対応している。このため、
図6を用いた説明では、
図4の場合と異なる点について主に説明する。
【0072】
図6に示すように、車載システム1Aのバッテリユニット2Aは、生体認証部2cをさらに備える点で
図4のバッテリユニット2とは異なる。
【0073】
生体認証部2cは、ユーザの生体認証用の認証デバイスである。生体認証部2cは、
図6に示すようにユーザの指F1による指紋認証や、顔認証等によってユーザを認証する。
【0074】
また、
図6の例の場合、ロック機構2bは、生体認証部2cによってユーザが正規のユーザであると認証された場合に着脱機構2aのロックを解除し、バッテリBを取り外し可能な状態にする。すなわち、バッテリユニット2Aは、生体認証部2cによって前述の第2の認証処理を実現する。
【0075】
また、ロック機構2bは、ユーザによってバッテリBが一旦取り外され、再び取り付けられると、たとえば機械的な動作によって、認証処理なしで自動的に着脱機構2aをロックする。バッテリBが取り付けられると、バッテリBと電源IC11とが導通し、車両制御装置10は車載システム1の場合と同様の動作を行うこととなる。
【0076】
(その他の変形例)
また、これまでは、車両Vが1~2人乗り程度としたが、3人以上が乗車可能な車両であってもよい。したがって、車両Vは、パーソナルモビリティに限られない。すなわち、車両Vは、バッテリBを取り外して充電等が可能で、バッテリBの取り外しの際にキーによる解錠を要する車両であれば、パーソナルモビリティに限定されない。
【0077】
また、第1の認証処理としては、スマートフォン100との無線認証以外の電子認証(生体認証等)を用いてもよい。
【0078】
また、バッテリBの取り外し時のロック解除として、メカニカルキーKと生体認証の例を挙げたが、その他の構成として、ダイヤルキーといった車両Vに設けられた図示略の操作・入力手段からの暗証番号等の暗証コード入力や、携帯端末(車両起動の認証用の第1携帯端末とは別に設けられたバッテリBの取り外し認証用の第2携帯端末)との無線認証等、様々な認証手段を用いることが可能である。ただし、無線認証を用いている場合、第1携帯端末および第2携帯端末のバッテリ枯渇が同時に生じる可能性があるので、バッテリBの認証手段については無線認証以外を用いることがより望ましい。
【0079】
また、バッテリBの取り付け時には、取り付け時に自動的に施錠される(ロックがかかる)構成にしているが、バッテリBの取り付け時や取り付け後のバッテリBの施錠時に、認証処理(メカニカルキーKによる施錠等)が必要なように構成してもよい。
【0080】
また、バッテリBの取り付け時に改めて認証処理を不要とする場合でも、取り付けられたバッテリBのID(シリアルナンバー等)を通信等で取得し、取り付けられたバッテリBが異なっている場合には、不正使用であるとしてシステム起動をできないようにしたり、改めて認証処理を行ったりしてもよい。取り付けられたバッテリBが異なっている場合とは、対象車両に予め設定登録されたバッテリBでない場合や、取り外し時に認証処理した際のバッテリB(前回取り付けられていたバッテリB)でない場合等である。
【0081】
また、システム起動後も定期的に携帯端末との認証を行う場合、バッテリBの取り外し/取り付けによってシステム起動した場合には、システム起動後の定期的な携帯端末との認証は行わないようにしてもよい。これにより、携帯端末との通信不能による不正使用としてシステム停止が行われてしまうことを防止することができる。ただし、バッテリBの取り外し/取り付けによってシステム起動した場合にはセキュリティ性の観点から、車両Vの使用に制限(車速や走行距離、走行範囲等に制限)を設けるようにしてもよい。
【0082】
また、上述してきた実施形態は、システム起動の認証だけでなく、車両ドア解錠の認証にも適用できる。この場合、車載システム1,1Aは、始動スイッチ3に代えて、ドアの解錠スイッチ/ドア開スイッチを構成要素として含むこととなる。
【0083】
また、上述してきた実施形態は、携帯端末によるシステム起動用の認証手段とは別に、バッテリBの取り外し用の認証手段を有する構成において、システム起動用の認証ができない場合の代替手段について記載しているが、逆のパターンの構成を含んでもよい。すなわち、バッテリBの取り外し用の認証手段を携帯端末とし、別にシステム起動用の認証手段がある構成で、バッテリBの取り外し用の認証ができない場合の代替手段を含んでよい。
【0084】
(効果)
上述してきたように、実施形態に係る車両制御装置10は、第1の認証処理によって認証された状態で始動スイッチ3(「起動スイッチ」の一例に相当)の操作があった場合に、車両Vを起動する制御部15(「コントローラ」の一例に相当)を備える。制御部15は、取り外しに第2の認証処理によるロック解除を要する着脱可能なバッテリB(「車両バッテリ」の一例に相当)の取り外し状態から取り付け状態への変化があった場合に、始動スイッチ3の操作があると、車両Vを起動する。
【0085】
したがって、実施形態に係る車両制御装置10によれば、車両Vが始動できなくなるという事態を回避することを、部品の追加をできる限り抑えて実現することができる。
【0086】
また、上記第1の認証処理は、スマートフォン100(「携帯端末」の一例に相当)との通信を行うことで認証が行われる。
【0087】
したがって、実施形態に係る車両制御装置10によれば、スマートフォン100を用いたスマートエントリー方式による車両Vの始動が可能となる。
【0088】
また、上記第2の認証処理は、メカニカルキーK1による操作、生体認証、車両Vに設けられた入力部を操作することによる暗証コード入力、の少なくとも1つで行われる。
【0089】
したがって、実施形態に係る車両制御装置10によれば、既存のバッテリBの着脱や、生体認証、暗証コード入力を利用して第2の認証処理を行い、車載システム1を始動させることが可能となる。
【0090】
また、制御部15は、バッテリBの取り外し状態から取り付け状態への変化があった後、予め決められた時間内に始動スイッチ3の操作があった場合に、車両Vを起動する。
【0091】
したがって、実施形態に係る車両制御装置10によれば、第1の認証処理に基づく車両Vの始動が行えない場合に、ユーザはバッテリBを抜き挿しし、上記時間内に始動スイッチ3をオン操作するという簡易な操作で、車両Vを始動させることが可能となる。
【0092】
また、制御部15は、バッテリBの取り外し状態から取り付け状態への変化があった場合に電源オンし、当該電源オンしてから上記時間が経過した場合に、電源オフする。
【0093】
したがって、実施形態に係る車両制御装置10によれば、ユーザが充電したバッテリBを単に取り付けたい場合などには、バッテリBの取り付け後、始動スイッチ3を操作しないことで、車両Vを始動させることなくバッテリBの取り付けのみを行うことができる。
【0094】
また、車両Vは、バッテリBの充電を、当該バッテリBが車両Vから取り外されているときに行う方式の車両である。
【0095】
したがって、実施形態に係る車両制御装置10によれば、車両Vから取り外した状態でバッテリBの充電を行う方式のパーソナルモビリティのような車両Vが始動できなくなるという事態を回避することを、部品の追加をできる限り抑えて実現することができる。
【0096】
また、実施形態に係る車両制御装置10は、第1の認証処理によって認証された状態でドアスイッチの操作があった場合に、車両ドアの解錠と車両ドア開の少なくとも一方のドア制御を行う制御部15を備える。制御部15は、取り外しに第2の認証処理によるロック解除を要する着脱可能なバッテリBの取り外し状態から取り付け状態への変化があった場合に、上記ドアスイッチの操作があると、上記ドア制御を行う。
【0097】
したがって、実施形態に係る車両制御装置10によれば、第1の認証処理によるドア制御が実行不能で車両Vが始動できなくなるという事態を回避することを、部品の追加をできる限り抑えて実現することができる。
【0098】
また、実施形態に係る車両制御方法は、第1の認証処理によって認証された状態で始動スイッチ3の操作があった場合に、車両Vを起動する車両制御装置10が実行する車両制御方法である。当該車両制御方法は、取り外しに第2の認証処理によるロック解除を要する着脱可能なバッテリBの取り外し状態から取り付け状態への変化があった場合に、始動スイッチ3の操作があると、車両Vを起動することを含む。
【0099】
したがって、実施形態に係る車両制御方法によれば、車両Vが始動できなくなるという事態を回避することを、部品の追加をできる限り抑えて実現することができる。
【0100】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0101】
1,1A 車載システム
2,2A バッテリユニット
2a 着脱機構
2b ロック機構
2c 生体認証部
3 始動スイッチ
4 リレー
5 INV(インバータ)
6 モータ
10 車両制御装置
11 電源IC
12 DCDC(DC/DCコンバータ)
13 近距離無線通信部
14 記憶部
15 制御部
15A CPU
15a 認証部
15b 始動制御部
15c 検出部
100 スマートフォン
B バッテリ
V 車両