(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064671
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/056 20100101AFI20240507BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240507BHJP
H01M 50/489 20210101ALI20240507BHJP
H01M 10/058 20100101ALI20240507BHJP
【FI】
H01M10/056
H01M10/052
H01M50/489
H01M10/058
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173430
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】518110774
【氏名又は名称】株式会社ABRI
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丁 冬
(72)【発明者】
【氏名】久保田 昌明
(72)【発明者】
【氏名】金村 聖志
(72)【発明者】
【氏名】阿部 英俊
【テーマコード(参考)】
5H021
5H029
【Fターム(参考)】
5H021AA06
5H021HH01
5H021HH03
5H021HH10
5H029AJ03
5H029AJ05
5H029AK01
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5H029AL01
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5H029AM16
5H029DJ04
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5H029HJ01
5H029HJ05
5H029HJ06
5H029HJ12
(57)【要約】
【課題】安定に充放電することができ、電気化学特性が通常の非水電解液を使うリチウムイオン電池より優れた、電解質に液体ポリマー電解質を使用したリチウムイオン二次電池を提供する。
【解決手段】正極集電体の一方または両方の面に正極活物質を含む正極層を形成した正極と、負極集電体の一方または両方の面に負極活物質を含む負極層を形成した負極と、を備えるリチウムイオン二次電池であって、正極層と負極層の間には多孔性膜が介在され、正極層と多孔性膜の間には、互いに混合分散された液体ポリマー電解質および第1の固体電解質粒子、負極層と多孔性膜の間には、互いに混合分散された液体ポリマー電解質および第2の固体電解質粒子が存在し、第1、第2の固体電解質粒子の累積粒度分布のD
10は、それぞれ多孔性膜の細孔の開口径を超えるリチウムイオン二次電池を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極集電体の一方または両方の面に正極活物質を含む正極層を形成した正極と、負極集電体の一方または両方の面に負極活物質を含む負極層を形成した負極とを備えるリチウムイオン二次電池であって、
前記正極および前記負極の間には、多孔性膜が介在され、
前記正極層と前記多孔性膜の間には、互いに混合分散された液体ポリマー電解質および第1の固体電解質粒子が存在し、
前記負極層と前記多孔性膜の間には、互いに混合分散された前記液体ポリマー電解質および第2の固体電解質粒子が存在し、
前記液体ポリマー電解質は、液体ポリマーおよびリチウム塩を含み、
前記第1、第2の固体電解質粒子の累積粒度分布のD10は、それぞれ前記多孔性膜の細孔の開口径を超えるリチウムイオン二次電池。
【請求項2】
前記液体ポリマーは、主鎖にポリエチレンオキシド骨格を含む請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項3】
前記液体ポリマーは、末端基がメチル基、メトキシ基、メタクリル酸メチル基から選択される1つ以上である、リチウムイオン伝導性ポリマーである請求項2に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項4】
前記第1の固体電解質粒子と前記第2の固体電解質粒子が異なる請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項5】
前記液体ポリマー電解質は、リチウムイオン二次電池の非水電解液に使用される非水溶媒を含まない請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項6】
前記第1、第2の固体電解質粒子は、酸化物系固体電解質粒子である請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項7】
前記第1の固体電解質粒子がLi置換NASICON型の結晶構造を有する請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項8】
前記第2の固体電解質粒子がリチウムランタンジルコニウム酸化物である請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項9】
前記第1の固体電解質粒子は、前記液体ポリマーの総重量に対して2.50重量%以上12.5重量%以下の量で含有され、かつ前記第2の固体電解質粒子は前記液体ポリマーの総重量に対して2.50重量%以上12.5重量%以下の量で含有される請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項10】
前記多孔性膜の細孔の開口径は、100nm以下である請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護のために二酸化炭素排出量の低減が望まれている。自動車業界では、電気自動車(EV)やハイブリット電気自動車(HEV)の導入による二酸化炭素排出量の低減が期待され、これらの実用化の鍵を握るモータ駆動用二次電池の開発が行われている。中でも、高エネルギー密度、高出力密度が達成できる積層型のリチウムイオン二次電池が注目されている。
【0003】
二次電池の中でも特にリチウムポリマー電池は、薄くて軽いだけでなく、円筒型、角型、ラミネート型等、電池形態の変形が自在という長所をもつ。さらにリチウムポリマー電池は、電解質としてポリマー電解質を使用する。なお、非水電解液を使用するリチウムイオン電池は、電池設計や使用方法などを誤った場合、非水電解液による液漏れの可能性や発火の虞があるため、電解質にポリマー電解質を使用するリチウムポリマー電池は安全面でより優れている。
【0004】
ポリマー電解質は、極性を有する有機ポリマーと有機または無機リチウム塩からなる。有機ポリマーは、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリエチレンイミン(PEI)などが知られている。しかし、ポリマー電解質を含むリチウムポリマー電池は、リチウムイオン電池に比べて常温での充放電容量が低いことが挙げられ、さらに複雑な製造工程によりコスト高になる。
【0005】
PEOのようなポリエーテル系ポリマーは、比較的高いリチウムイオン伝導性を有するものの、融点以下で生じるポリマー分子鎖の結晶化に伴い、常温域におけるリチウムイオン伝導性が大きく低下する。
【0006】
リチウムイオン伝導性の改善は、PEOの分岐化やネットワーク化による結晶性の低減、添加する塩の改良、液体可塑剤、無機微粒子の添加などが行われている。
【0007】
リチウムイオン伝導性の改善の一例として、多量の可燃性の非水電解液をPEO、PPOなどのポリマーマトリックスに添加して製造された、ゲル状ポリマー電解質とも呼ばれる電解質も多く用いられている。しかしながら、添加する非水電解液の量が多くなると、ポリマー電解質の機械的強度が低下するとともに、液漏れ又は発熱のリスクが増大する虞がある。この他、ゲル状ポリマー電解質の製造過程で非水電解液が揮発し、非水電解液の含有量を正確に調整することが困難になる。電池内の電解液分布が不均一になったり、または非水電解液含有量を調整できなかったりすると、リチウムポリマー電池の充放電時に電流の不均一性などの問題が生じ、電池性能の劣化を招く可能性がある。
【0008】
特許文献1には、エーテル系ポリマーに無機系固体電解質粒子を添加するコンポジット電解質が開示されている。
【0009】
しかしながら、無機系固体電解質粒子の添加に伴い、ポリマーと無機系固体電解質粒子の間に固体-固体界面の大きな抵抗が生じる。その結果、正極と負極間のリチウムイオンの伝導パスは主にポリマー内だけで行われるため、無機系固体電解質粒子によるイオン輸率の向上に役立たない。すなわち、無機系固体電解質粒子の添加効果を十分に発揮されない。
【0010】
特許文献2には、ポリマーと無機系固体電解質粒子の間に固体-固体界面の抵抗を減らすために、イオン液体等の添加剤を使用することにより、界面抵抗を小さくすることが開示されている。しかしながら、添加剤の選択と添加量の最適化が複雑で適用性が乏しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特表2019-505074号公報
【特許文献2】特許第6757797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、高い放電容量、高い放電容量維持率を有するリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によると、第一の観点として、正極集電体の一方または両方の面に正極活物質を含む正極層を形成した正極と、負極集電体の一方または両方の面に負極活物質を含む負極層を形成した負極と、を備えるリチウムイオン二次電池であって、正極および負極の間には多孔性膜が介在され、正極層と多孔性膜の間には、互いに混合分散された液体ポリマー電解質および第1の固体電解質粒子が存在し、前記液体ポリマー電解質は、液体ポリマーおよびリチウム塩を含み、負極層と多孔性膜の間には、互いに混合分散された液体ポリマー電解質および第2の固体電解質粒子が存在し、第1、第2の固体電解質粒子の累積粒度分布のD10は、それぞれ多孔性膜の細孔の開口径を超えるリチウムイオン二次電池が提供される。
【0014】
第二の観点として、前記第一の観点に加えて、前記液体ポリマーは、主鎖にポリエチレンオキシド骨格を含むリチウムイオン二次電池が提供される。
【0015】
第三の観点として、前記第一の観点または第二の観点に加えて、前記液体ポリマーは、末端基がメチル基、メトキシ基、メタクリル酸メチル基から選択される1つ以上である、リチウムイオン伝導性ポリマーであるリチウムイオン二次電池が提供される。
【0016】
第四の観点として、前記第一の観点から第三の観点のいずれかに加えて、前記第1の固体電解質粒子と前記第2の固体電解質粒子が異なるリチウムイオン二次電池が提供される。
【0017】
第五の観点として、前記第一の観点から第四の観点のいずれかに加えて、前記液体ポリマー電解質は、リチウムイオン二次電池の非水電解液に使用される非水溶媒を含まないリチウムイオン二次電池が提供される。
【0018】
第六の観点として、前記第一の観点から第五の観点のいずれかに加えて、前記第1、第2の固体電解質粒子は、酸化物系固体電解質粒子であるリチウムイオン二次電池が提供される。
【0019】
第七の観点として、前記第一の観点から第六の観点のいずれかに加えて、前記第1の固体電解質粒子がLi置換NASICON型の結晶構造を有するリチウムイオン二次電池が提供される。
【0020】
第八の観点として、前記第一の観点から第七の観点のいずれかに加えて、前記第2の固体電解質粒子がリチウムランタンジルコニウム酸化物であるリチウムイオン二次電池が提供される。
【0021】
第九の観点として、前記第一の観点から第八の観点のいずれかに加えて、前記第1の固体電解質粒子は、前記液体ポリマーの総重量に対して2.50重量%以上12.5重量%以下の量で含有され、かつ前記第2の固体電解質粒子は前記液体ポリマーの総重量に対して2.50重量%以上12.5重量%以下の量で含有されるリチウムイオン二次電池が提供される。
【0022】
第十の観点として、前記第一の観点から第九の観点のいずれかに加えて、前記多孔性膜の細孔の開口径は、100nm以下である請求項1に記載のリチウムイオン二次電池が提供される。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、高い放電容量、高い放電容量維持率を有するリチウムイオン二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】実施形態に係るリチウムイオン二次電池の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、実施形態に係るリチウムイオン二次電池を詳細に説明する。
【0026】
実施形態に係るリチウムイオン二次電池は、集電体に正極活物質を含む正極層を形成した正極と、負極活物質を含む負極層を形成した負極とを備える。正極層および負極層の間には、多孔性膜が介在されている。正極層と多孔性膜の間には、互いに分散された液体ポリマー電解質および第1の固体電解質粒子(正極側複合電解質層)が存在する。負極層と多孔性膜の間には、互いに分散された液体ポリマー電解質および第2の固体電解質粒子(負極側複合電解質層)が存在する。第1、第2の固体電解質粒子の累積粒度分布のD10は、それぞれ多孔性膜の細孔の開口径を超えている。
【0027】
正極を構成する集電体は、例えばアルミニウム、ステンレススチール等を挙げることができる。集電体は、例えば板状体、網状体、多孔質体等を使用することができる。
【0028】
正極の正極層に含まれる活物質は、公知のリチウムイオン二次電池の正極活物質を用いることができ、例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)等の1種類以上の遷移金属を含むリチウム含有遷移金属酸化物、遷移金属硫化物、金属酸化物、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)やピロリン酸鉄リチウム(Li2FeP2O7)などの1種類以上の遷移金属を含むリチウム含有ポリアニオン系化合物、硫黄系化合物(Li2S)等を挙げることができる。
【0029】
正極層は、さらに結着剤を含む。結着剤は、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)等のフッ素系樹脂、或いは、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレンブタジエンラバー(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等を挙げることができる。
【0030】
正極層は、さらに導電剤を含むのが好ましい。導電剤は、例えば炭素材料、金属繊維等の導電性繊維、又は銅、銀、ニッケル、アルミニウム等の金属粉末、或いはポリフェニレン誘導体等の有機導電性材料を使用することができる。炭素材料は、黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、カーボンブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、活性炭、カーボンナノチューブ、カーボンファイバー、グラフェン等を使用することができる。また、芳香環を含む合成樹脂、石油ピッチ等を焼成して得られたメソポーラスカーボンを使用することもできる。
【0031】
正極は、例えば活物質、結着剤、導電剤に溶媒を加えてスラリーを調製し、当該スラリーを集電体の少なくとも一方の面に塗布、乾燥し、プレス成型により加圧することにより作製することができる。
【0032】
負極には集電体を含むことがある。負極を構成する集電体は、例えば銅、ニッケル、アルミニウム、ステンレススチール等を挙げることができる。集電体は、例えば板状体、網状体等を使用することができる。
【0033】
負極を構成する負極層の一つの形態は、活物質であるリチウム金属またはリチウム元素を含む合金の箔が用いられる。これらの箔は、集電体の少なくとも一方の面に貼り合わされることもあるが、単体で用いられることもある。リチウム元素を有する合金は、例えばリチウムアルミニウム合金、リチウムスズ合金、リチウム鉛合金、リチウムケイ素合金等を挙げることができる。
【0034】
負極を構成する負極層の他の形態は、活物質、結着剤、必要に応じて導電剤を含む負極合材層である。活物質は、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵・放出できるものであれば特に限定されず、例えば、天然グラファイト(黒鉛)、配向性グラファイト(Highly Oriented Pyrolytic Graphite;HOPG)、非晶質炭素等の炭素材料、又はチタン酸リチウム(例えばLi4Ti5O12)等のリチウム元素を有する金属酸化物、或いはリチウムコバルト窒化物、リチウム鉄窒化物、リチウムマンガン窒化物等のリチウム元素を含有する金属窒化物を挙げることができる。これら活物質は、単独もしくは2つ以上を混合して用いてもよい。
【0035】
結着剤及び導電剤は、正極で使用したものと同様のものを用いることができる。
【0036】
他の形態の負極は、例えば活物質、結着剤、導電剤に溶媒を加えてスラリーを調製し、当該スラリーを集電体の少なくとも一方の面に塗布、乾燥し、プレス成型により加圧することにより作製することができる。
【0037】
液体ポリマー電解質を構成する液体ポリマーは、融点が30℃以下、もしくは重量平均分子量が100以上1000以下の低分子量であることが好ましい。
【0038】
ここで、液体ポリマー電解質の「液体」とは、液体ポリマー電解質が電池の動作温度の範囲内で液体であることを意味する。低分子量の液体ポリマーは、室温で非結晶性を示すため、高いリチウムイオン伝導性を示す。ポリマーの重量平均分子量を100未満にすると、揮発性または難燃性の低下などを生じる虞がある。ポリマーの重量平均分子量が1000を超えると、粘度の増加に伴って30℃でのリチウムイオンの伝導性を低下する虞がある。なお、融点30℃以上、もしくは重量平均分子量1000以上のポリマーでも、融点以上の環境で使用すれば、ポリマーを液体化できるため、そのような電池も本発明の権利範囲内である。
【0039】
液体ポリマーは、主鎖がポリエチレンオキシド骨格、末端基がメチル基、メトキシ基、メタクリル酸メチル基からなる群から選ばれる少なくとも1つの官能基を有するリチウムイオン伝導性ポリマーであることが好ましい。このようなポリマーは、例えばポリエチレングリコールジメチルエーテル(PEGDME)、ポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA)等を挙げることができる。これらのポリマーは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
なお、従来から使用されているポリエチレンオキシド(PEO)は、ゲル化しているため、液体ポリマーではない。PEOは、末端基に比較的強い電子求引基であるヒドロキシ基が結合されているため、誘起効果を起こし、主鎖であるポリエチレンオキシド骨格の電子を引っ張って、主鎖が不安定になって開裂する虞があるため、不適である。特に、PEOは分子量の低下に伴い、ヒドロキシ基からの誘起効果が顕在化する。また、ヒドロキシ基とリチウム金属の副反応が起きやすいため、充放電を繰り返すと充放電容量が急速に低下する虞がある。
【0041】
前述したようにポリマーのポリエチレンオキシド骨格主鎖の末端基に結合する電子求引基を電子供与基もしくはヒドロキシ基より弱い電子求引基に換えることにより、充放電を繰り返しても主鎖であるポリエチレンオキシド骨格の酸化安定性を向上させることができる。また、電子供与基または電子求引基とリチウム金属が反応し難くなるため、安定的に充放電することができる。電子供与基もしくはヒドロキシ基より弱い電子求引基は、具体的には、メチル基、メトキシ基、メタクリル酸メチル基などが挙げられる。
【0042】
液体ポリマー電解質を構成する電解質は、例えばリチウム塩を用いることができる。リチウム塩は、特に限定されないが、例えばLiClO4、LiBOB,LiBF2(C2O4),LiBF4、LiPF6、LiAlCl4、LiSbF6、LiSCN、LiCF3SO3、LiAsF6、LiB10Cl10、低級脂肪族カルボン酸リチウム、LiCl、LiBr、LiI、クロロボランリチウム、四フェニルホウ酸リチウム、イミド化合物(例えばLi(FSO2)2N、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2)等を挙げることができる。これらのリチウム塩は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
液体ポリマー電解質におけるポリマー中のエーテル結合に由来する酸素のモル濃度[O]とリチウム塩中のリチウムイオンのモル濃度[Li]のモル比([O]:[Li])は、1:1~24:1にすることが好ましい。より好ましいモル比([O]:[Li])は、5:1~16:1である。
【0044】
液体ポリマー電解質は、ポリマー電解質の機械的強度の低下や液漏れ又は発熱の抑制の観点から、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、エチレンカーボネート(EC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、プロピレンカーボネート(PC)、プロピオン酸メチル、酢酸メチル、ギ酸メチル、酪酸メチル、ジオキソラン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、γ―ブチロラクトン、アセトニトリル、ベンゾニトリルのようなリチウムイオン二次電池の非水電解液に使用される非水溶媒を含まないのが好ましい。
【0045】
第1、第2の固体電解質粒子は、累積粒度分布のD10がそれぞれ多孔性膜の表面に露出する細孔の開口径を超える寸法を有する。このように多孔性膜の細孔の開口径との関係で第1、第2の固体電解質粒子の累積粒度分布のD10の寸法を規定することによって、正極側複合電解質層に含まれる第1の固体電解質粒子および負極側複合電解質層に含まれる第2の固体電解質粒子は多孔性膜の細孔の開口を通して内部に進入するのを実質的に阻止できる。すなわち、多孔性膜の表面に露出する細孔は、実質的に第1、第2の固体電解質粒子が存在しない液体ポリマー電解質で充填されて満たされる。また、正極層と多孔性膜の間、および負極層と多孔性膜の間に存在する第1の固体電解質粒子及び第2の固体電解質粒子が多孔性膜の細孔内で互いに混ざり合うのを防止できる。つまり、正極層と多孔性膜の間に存在する第1の固体電解質粒子と負極層と多孔性膜の間に存在する第2の固体電解質粒子は、互いに混ざらずに、独立して存在させることができる。
【0046】
固体電解質粒子は粉砕して、所定の粒径に調整することができる。粉砕の方法は粒径を調整できれば特に限定されないが、例えば湿式でのボールミル処理を使用することができる。
【0047】
なお、固体電解質粒子の累積粒度分布のD10とは、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における小さい方からの積算値10%での粒径を意味する。また、多孔性膜の細孔の開口径は走査型電子顕微鏡(SEM)画像から確認できる開口の長径基準の累積細孔分布曲線において、個数基準で長径の小さいほうから累積して90%を占めるときの細孔の開口径から求めることができる。多孔性膜の細孔の長径基準の累積細孔分布曲線は、多孔性膜のSEM画像から画像処理解析ソフトで算出された長径の値により算出される。
【0048】
正極層と多孔性膜の間、および負極層と多孔性膜の間に液体ポリマー電解質と互いに分散して存在する、リチウムイオン輸率の向上に寄与する第1の固体電解質粒子および第2の固体電解質粒子は、それぞれ酸化物系固体電解質粒子であることが好ましい。リチウムイオン輸率が向上すると、リチウムイオンの供給がスムーズに行えることによって反応が促進され、放電容量が増加すると考えられる。また、酸化物系固体電解質粒子は、硫化物固体電解質粒子に比べて毒性が低く、化学的安定性が高いために有用である。
【0049】
前記酸化物系固体電解質粒子は、例えばNASICON型、LISICON型、ガーネット型、ガラス型、グラスセラミクス型、及びペロブスカイト型の酸化物系固体電解質粒子からなる群から選ばれる少なくとも1つを挙げることができる。これらの酸化物系固体電解質粒子の中で、NASICON型、またLi置換NASICON型の結晶構造を有する固体電解質粒子は酸化され難く、大気中でも安定しているため、好ましい。
【0050】
NASICON型構造を有する固体電解質の例は、一般式Li1+xAlxGe2-x(PO4)3(xは0<x≦2)、一般式Li1+x+yAlxTi2-xSiyP3-yO12(xは0<x≦1、yは0<y≦1)で表される固体電解質、又はLi1.4Al0.4Ti1.6(PO4)3を挙げることができる。
【0051】
Li置換NASICON型の結晶構造を有する固体電解質の例は、一般式Li1+x+yAlxTi2-xSiyP3-yO12(xは0<x≦1、yは0<y≦1)で表される。当該固体電解質は母ガラスがLi2O-Al2O3-TiO2-SiO2-P2O5系の組成であるガラスを熱処理して結晶化させることで得ることができる。この結晶の主結晶相は、Li1+x+yAlxTi2-xSiyP3-yO12(xは0<x≦1、yは0<y≦1)である。他に、LICGC(登録商標)などが使用できる。LICGCを始めLi置換NASICON型の結晶構造を有する固体電解質は酸化され難く、正極側の第1の固体電解質粒子として使用することが好ましい。
【0052】
ガーネット型の固体電解質の例は、リチウムランタンジルコニウム酸化物であるLi7La3Zr2O12(以下、LLZOと略す)等である。LLZOは、様々な元素で置換されうる。LLZOは還元され難く、負極側の第2の固体電解質粒子として使用されることが好ましい。
【0053】
正極側複合電解質層に含まれる第1の固体電解質粒子と負極側複合電解質層に含まれる第2の固体電解質粒子は、互いに同種でも、異種でもよい。第1、第2の固体電解質粒子が互いに異なる場合、第1の固体電解質粒子は酸化に強い固体電解質粒子を、第2の固体電解質粒子は還元に強い固体電解質粒子を選ぶことが好ましい。
【0054】
第1の固体電解質粒子の含有率は、液体ポリマーの総重量に対して2.50重量%以上12.5重量%以下にすることが好ましい。第2の固体電解質粒子の含有率も、液体ポリマーの総重量に対して2.50重量%以上12.5重量%以下にすることが好ましい。液体ポリマーの総重量は、第1の固体電解質粒子が混合された液体ポリマーと、第2の固体電解質粒子が混合された液体ポリマーとを含む重量である。
【0055】
第1、第2の固体電解質粒子の含有率をそれぞれ2.50重量%未満にすると、リチウムイオン輸率および電池性能の改善化を十分に達成することが困難になる。他方、第1、第2の固体電解質粒子の含有率がそれぞれ12.5重量%を超えると、リチウムイオンの伝導性を妨げる虞がある。
【0056】
実施形態において、良好な流動性を持つ液体ポリマー電解質は正負極及び多孔性膜層に浸透し、電解質と正負極および多孔性膜層との界面部の抵抗を下げることができ、リチウムイオン伝導率を向上することができると考えられる。更に、正極と多孔性膜の間及び負極と多孔性膜の間に固体電解質粒子を含むことで、リチウムイオン輸率を向上することができる。
【0057】
多孔性膜は、正極層と負極層とを電気的に分離する機能を有するものであれば特に限定されるものではない。多孔性膜は、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリイミド(PI)、ポリエステル、セルロース、ポリアミド等の樹脂からなる多孔質シートや、不織布、ガラス繊維不織布等を挙げることができ、正極と負極の間に少なくとも1枚設置される。2枚以上を設置する場合は、正極側と負極側で別の多孔性膜を使用してもよい。多孔性膜の表面に露出する細孔の開口径は、第1、第2の固体電解質粒子のそれぞれの累積粒度分布のD10を超えない寸法を有する。このような細孔の開口径を有する多孔性膜は、リチウムイオンの伝導性を確保し、同時に多孔性膜の両側に存在する第1、第2の固体電解質粒子が多孔性膜を通して相互流通することを抑制できる。多孔性膜は、細孔の開口径を100nm以下とすることが好ましい。第1、第2の固体電解質粒子のそれぞれの累積粒度分布のD10が100nmより大きい場合でも、第1、第2の固体電解質粒子のそれぞれの累積粒度分布のD10より小さい粒子は存在しており、そのような粒子のうち、細孔の開口径より大きい寸法の第1、第2の固体電解質粒子についても、相互流通の抑制が可能になるからである。
【0058】
実施形態に係るリチウムイオン二次電池の構造は、例えば円筒型、コイン型、平板型、ラミネートフィルムを有するパウチ型等を挙げることができる。
【0059】
次に、実施形態に係るリチウムイオン二次電池の構造について
図1を参照して説明する。
【0060】
実施形態に係るリチウムイオン二次電池は、図示しない外装材に収納された電池要素1を備えている。電池要素1は、正極2、負極3、多孔性膜4、正極側複合電解質層5および負極側複合電解質層6を備える。正極2は、正極集電体21と、正極集電体21の例えば一方の面に設けられ、正極活物質を含む正極層22を備えている。負極3は、負極集電体31と、負極集電体31の例えば一方の面に設けられ、負極活物質を含む負極層32を備えている。正極2および負極3は、正極層22および負極層32が互いに対向するように所望の間隔をあけて配置されている。正極2と負極3の間の例えば中間には、多孔性膜4が配置されている。正極2の正極層22と多孔性膜4の間には、正極側複合電解質層5が充填されている。正極側複合電解質層5は、液体ポリマー電解質と第1の固体電解質粒子とが互いに混合分散した構造を有する。正極層22が多孔質の場合、正極側複合電解質層5は正極層22の内部にも保持される。負極3の負極層32と多孔性膜4との間に、負極側複合電解質層6が充填されている。負極側複合電解質層6は、液体ポリマー電解質と第2の固体電解質粒子とが互いに混合分散した構造を有する。負極層32が多孔質の場合、負極側複合電解質層6は負極層32の内部にも保持される。このような構成の電池要素1において、第1、第2の固体電解質粒子の累積粒度分布D10はそれぞれ前記多孔性膜の細孔の開口径を超える寸法であるため、多孔性膜の細孔内はそれらの固体電解質粒子がほぼ存在せず、液体ポリマー電解質で充填されて満たされる。
【0061】
実施形態に係るリチウムイオン二次電池は、例えば次のような方法により製造できる。最初に、正極活物質を含む正極層を備える正極及びリチウム金属箔を負極集電体に貼り合せた負極を用意する。また、液体ポリマー電解質、リチウム塩および固体電解質粒子を混合して複合電解質を調製する。正極の正極層及び多孔性膜の両面に複合電解質を付与し、正極及び負極で多孔性膜を挟み、かつ正極層と負極層(リチウム金属箔)が互いに対向するように積層することにより、前述した
図1に示す構造、すなわち正極、多孔性膜、負極を備え、正極と多孔性膜の間に正極側複合電解質層が介在され、多孔性膜と負極の間に負極側複合電解質層が介在された構造のリチウムイオン二次電池を組立てる。
【0062】
以上、説明した実施形態に係るリチウムイオン二次電池は、正極および負極はそれらの正極層および負極層が互いに対向して配置され、正極層と負極層の間には多孔性膜が介在され、正極層と多孔性膜の間には、互いに混合分散された液体ポリマー電解質および第1の固体電解質粒子(正極側複合電解質層)が存在し、負極層と多孔性膜の間には、互いに混合分散された液体ポリマー電解質および第2の固体電解質粒子(負極側複合電解質層)が存在し、第1、第2の固体電解質粒子の累積粒度分布のD10は、それぞれ多孔性膜の細孔の開口径を超え、多孔性膜の細孔内には液体ポリマー電解質が存在するため、高容量、高性能および高い安全性を実現できる。
【0063】
すなわち、正極側複合電解質層の第1の固体電解質粒子及び負極側複合電解質層の第2の固体電解質粒子は、累積粒度分布のD10がそれぞれ多孔性膜の細孔の開口径を超える寸法であるため、各固体電解質粒子が多孔性膜の細孔に進入するのを実質的に阻止され、各複合電解質層の液体ポリマー電解質が多孔性膜の細孔内に侵入する。つまり、多孔性膜の細孔内は液体ポリマー電解質との間で界面抵抗として働く各固体電解質粒子がほぼ存在せず、液体ポリマー電解質で満たされる。
【0064】
実施形態において、多孔性膜の細孔の開口径と固体電解質粒径の両方を規定することにより、正極側と負極側の固体電解質粒子がほぼ混じることなく分別できる。たとえ片側の固体電解質粒子が酸化、もしくは還元されても、お互いに干渉することなく安定的に電気化学性能を発揮できる。
【0065】
また、正極側複合電解質層は液体ポリマー電解質と第1の固体電解質粒子が分散され、負極側複合電解質層も液体ポリマー電解質と第2の固体電解質粒子が分散され、液体ポリマー電解質と各固体電解質粒子は液体-固体接触になるため、それらの界面抵抗を低減できる。つまり、実施形態の各複合電解質層は従来のように固体のポリマー電解質と固体電解質粒子が分散され、固体-固体接触になる複合電解質層に比べて界面抵抗を低減できる。
【0066】
従って、実施形態によれば、多孔性膜の細孔内は液体ポリマー電解質との間で界面抵抗として働く各固体電解質粒子が実質的に存在せず、液体ポリマー電解質で満たされ、さらに正極側及び負極側の複合電解質層は液体ポリマー電解質と各固体電解質粒子が液体-固体接触になり、それらの界面抵抗を低減できるため、二次電池の充放電において、正極、負極間のリチウムイオンの移動を円滑にでき、リチウムイオンの伝導を向上できる。その結果、充放電の繰り返しにおいて、高い放電容量を示し、かつ放電容量維持率を向上できる。
【0067】
また、実施形態によれば正極側及び負極側の複合電解質層は液体ポリマー電解質に比べてリチウムイオン(Li+)との配位結合が弱い固体電解質粒子をそれぞれ含むため、リチウムイオンの輸率を向上することができる。
【0068】
さらに、実施形態によれば電池系にリチウムイオン二次電池の非水電解液に使用される非水溶媒を含まないため、揮発、発熱を防止して高い安全性を有するリチウムイオン二次電池を得ることができる。
【実施例0069】
以下、本発明を、実施例を用いて詳細に説明する。
(実施例1)
重量平均分子量が240であるポリエチレングリコールジメチルエーテル(wako社製、以下PEGDMEと略す。)を2gとLi(FSO2)2N(本明細書中では、LiFSIと記載することもある)を0.53g(キシダ化学株式会社製)混合した。このとき、PEGDME中のエーテル結合に由来する酸素のモル濃度[O]とリチウム塩中のリチウムイオンのモル濃度[Li]とのモル比率[O]:[Li]を16:1とした。更に、LLZO粒子(第一稀元素化学工業製)は、溶媒にエタノールを使用した湿式ビーズミルにより、粒子のD10を0.25μmに調整したものを0.25g加えて混合し、複合電解質を調製した。
【0070】
89.4質量%のLiFePO4を0.5gと0.6質量%の多層カーボンナノチューブ分散液(Cnano製、溶媒はN-メチル-2-ピロリドン(NMP)。)を0.13gと10質量%のポリフッ化ビニリデン(PVDF)を0.5gそれぞれ添加して混合した後、当該混合物に溶剤としてNMPを更に適量添加して正極スラリーを調製した。つづいて、正極集電体である厚さ20μmのアルミニウム箔に正極スラリーを塗布し、80℃で12時間乾燥した。その後、ロールプレスを用いて5MPaでプレスし、さらに直径14mmの円形に打ち抜き、正極を作製した。
【0071】
リチウム金属箔(厚さ600μm)を用いて負極を作製した。
【0072】
細孔の開口径が55nmのPE製の微細孔フィルムからなる多孔性膜(セパレータ)を用意した。なお、細孔の開口径はSEM画像から確認した。多孔性膜の細孔の開口径は走査型電子顕微鏡(SEM)画像から確認できる開口の長径基準の累積細孔分布曲線において、個数基準で長径の小さいほうから累積して90%を占めるときの細孔の開口径から求めた。多孔性膜の細孔の長径基準の累積細孔分布曲線は、多孔性膜のSEM画像から画像処理解析ソフトで算出された長径の値により算出した。
【0073】
正極及びセパレータのそれぞれの表面に、調製した複合電解質50μLをピペットにより直接付与した。なお、付与は露点-50℃以下の雰囲気下で行った。
【0074】
セパレータを介して正極と負極を対向するように積層し、評価セルとしてコイン型のリチウムイオン二次電池(2032型)を組立てた。当該複合電解質のLLZO粒子の量は、PEGDMEの総重量に対して12.5重量%となり、第1の固体電解質粒子量は、PEGDMEの総重量に対して6.25重量%、第2の固体電解質粒子量は、PEGDMEの総重量に対して6.25重量%となった。
【0075】
(実施例2)
PEGDMEを2gと、Li(FSO2)2Nを1.06g混合した。このとき、PEGDME中のエーテル結合に由来する酸素のモル濃度[O]とリチウム塩中のリチウムイオンのモル濃度[Li]とのモル比率[O]:[Li]を8:1とした。さらに当該混合物に粒子のD10を0.25μmに調整したLLZOを0.25g加えて混合し、複合電解質を調製した。このような複合電解質を用いた以外、実施例1と同様な方法により評価セルを組立てた。当該複合電解質のLLZO粒子の量は、PEGDMEの総重量に対して12.5重量%となり、第1の固体電解質粒子量は、PEGDMEの総重量に対して6.25重量%、第2の固体電解質粒子量は、PEGDMEの総重量に対して6.25重量%となった。
【0076】
(実施例3)
PEGDMEを2gと、Li(FSO2)2Nを1.7g混合し作製した。このとき、PEGDME中のエーテル結合に由来する酸素のモル濃度[O]とリチウム塩中のリチウムイオンのモル濃度[Li]とのモル比率[O]:[Li]を5:1とした。さらに当該混合物に粒子のD10を0.25μmに調整したLLZOを0.25g加えて混合し、複合電解質を調製した。このような複合電解質を用いた以外、実施例1と同様な方法により評価セルを組立てた。当該複合電解質のLLZO粒子の量は、PEGDMEの総重量に対して12.5重量%となり、第1の固体電解質粒子量は、PEGDMEの総重量に対して6.25重量%、第2の固体電解質粒子量は、PEGDMEの総重量に対して6.25重量%となった。
【0077】
(実施例4)
PEGDMEを2gと、Li(FSO2)2Nを1.06g混合した。このとき、PEGDME中のエーテル結合に由来する酸素のモル濃度[O]とリチウム塩中のリチウムイオンのモル濃度[Li]とのモル比率[O]:[Li]を8:1とした。さらに当該混合物にLICGCを、溶媒にエタノールを使用した湿式ビーズミルにより、粒子のD10を0.25μmに調整したものを0.25g加えて混合し、複合電解質を調製した。このような複合電解質を用いた以外、実施例1と同様な方法により評価セルを組立てた。当該複合電解質のLICGCの量は、PEGDMEの総重量に対して12.5重量%となり、第1の固体電解質粒子量は、PEGDMEの総重量に対して6.25重量%、第2の固体電解質粒子量は、PEGDMEの総重量に対して6.25重量%となった。
【0078】
(実施例5)
PEGDMEを2gと、Li(FSO2)2Nを0.53g混合した。このとき、PEGDME中のエーテル結合に由来する酸素のモル濃度[O]とリチウム塩中のリチウムイオンのモル濃度[Li]とのモル比率[O]:[Li]を16:1とした。さらに当該混合物に粒子のD10を0.25μmに調整したLICGCを0.1g加えて混合し、複合電解質を調製した。このような複合電解質を用いた以外、実施例1と同様な方法により評価セルを組立てた。当該複合電解質のLICGCの量は、PEGDMEの総重量に対して5.0重量%となり、第1の固体電解質粒子量は、PEGDMEの総重量に対して2.5重量%、第2の固体電解質粒子量は、PEGDMEの総重量に対して2.5重量%となった。
【0079】
(実施例6)
PEGDMEを2gと、Li(FSO2)2Nを1.06g混合した。このとき、PEGDME中のエーテル結合に由来する酸素のモル濃度[O]とリチウム塩中のリチウムイオンのモル濃度[Li]とのモル比率[O]:[Li]を8:1とした。さらに当該混合物に粒子のD10を0.25μmに調整したLICGCを0.1g加えて混合し、複合電解質を調製した。このような複合電解質を用いた以外、実施例1と同様な方法により評価セルを組立てた。当該複合電解質のLICGCの量は、PEGDMEの総重量に対して5.0重量%となり、第1の固体電解質粒子量は、PEGDMEの総重量に対して2.5重量%、第2の固体電解質粒子量は、PEGDMEの総重量に対して2.5重量%となった。
【0080】
(実施例7)
PEGDMEを2gと、Li(FSO2)2Nを0.53g混合した。このとき、PEGDME中のエーテル結合に由来する酸素のモル濃度[O]とリチウム塩中のリチウムイオンのモル濃度[Li]とのモル比率[O]:[Li]を16:1とした。さらに当該混合物に粒子のD10を0.25μmに調整したLICGCを0.25g加えて混合し、正極側の複合電解質を調製した。
【0081】
また、PEGDMEを2gと、Li(FSO2)2Nを0.53g混合した。このとき、PEGDME中のエーテル結合に由来する酸素のモル濃度[O]とリチウム塩中のリチウムイオンのモル濃度[Li]とのモル比率[O]:[Li]を16:1とした。さらに当該混合物に粒子のD10を0.25μmに調整したLLZOを0.25g加えて混合し、負極側の複合電解質を調製した。
【0082】
次いで、露点-50℃以下の雰囲気下で、正極の表面及び正極と対向するセパレータの表面に正極側の複合電解質を付与した。また、同雰囲気下で、負極と対向するセパレータの面に負極側の複合電解質を付与した。このような工程後に実施例1と同様な方法により評価セルを組立てた。
【0083】
第1の固体電解質粒子量であるLICGCは、PEGDMEの総重量に対して6.25重量%、第2の固体電解質粒子であるLLZOは、PEGDMEの総重量に対して6.25重量%となった。
【0084】
(実施例8)
PEGDMEを2gと、Li(FSO2)2Nを1.06g混合した。このとき、PEGDME中のエーテル結合に由来する酸素のモル濃度[O]とリチウム塩中のリチウムイオンのモル濃度[Li]とのモル比率[O]:[Li]を8:1とした。さらに当該混合物に粒子のD10を0.25μmに調整したLICGC(重量比が12.5重量%)を0.25g加えて混合し、正極側の複合電解質を調製した。
【0085】
また、PEGDMEを2gと、Li(FSO2)2Nを1.06g混合した。このとき、PEGDME中のエーテル結合に由来する酸素のモル濃度[O]とリチウム塩中のリチウムイオンのモル濃度[Li]とのモル比率[O]:[Li]を8:1とした。さらに当該混合物に粒子のD10を0.25μmに調整したLLZO(重量比が12.5重量%)を0.25g加えて混合し、負極側の複合電解質を調製した。
【0086】
次いで、露点-50℃以下の雰囲気下で、正極の表面及び正極と対向するセパレータの表面に正極側の複合電解質を付与した。また、同雰囲気下で、負極と対向するセパレータの面に負極側の複合電解質を付与した。このような工程後に実施例1と同様な方法により評価セルを組立てた。
【0087】
第1の固体電解質粒子量であるLICGCは、PEGDMEの総重量に対して6.25重量%、第2の固体電解質粒子であるLLZOは、PEGDMEの総重量に対して6.25重量%となった。
【0088】
(実施例9)
PEGDMEを2gと、Li(FSO2)2Nを0.53g混合した。このとき、PEGDME中のエーテル結合に由来する酸素のモル濃度[O]とリチウム塩中のリチウムイオンのモル濃度[Li]とのモル比率[O]:[Li]を16:1とした。さらに当該混合物に粒子のD10を0.25μmに調整したLICGC(重量比が25重量%)を0.48g加えて混合し、正極側の複合電解質を調製した。
【0089】
また、PEGDMEを2gと、Li(FSO2)2Nを0.53g混合した。このとき、PEGDME中のエーテル結合に由来する酸素のモル濃度[O]とリチウム塩中のリチウムイオンのモル濃度[Li]とのモル比率[O]:[Li]を16:1とした。さらに当該混合物に粒子のD10を0.25μmに調整したLLZO(重量比が25重量%)を0.48g加えて混合し、負極側の複合電解質を調製した。
【0090】
次いで、露点-50℃以下の雰囲気下で、正極の表面及び正極と対向するセパレータの表面に正極側の複合電解質を付与した。また、同雰囲気下で、負極と対向するセパレータの面に負極側の複合電解質を付与した。このような工程後に実施例1と同様な方法により評価セルを組立てた。
【0091】
第1の固体電解質粒子量であるLICGCは、PEGDMEの総重量に対して12.0重量%、第2の固体電解質粒子であるLLZO量は、PEGDMEの総重量に対して12.0重量%となった。
【0092】
(比較例1)
PEGDMEとLi(FSO2)2Nの混合物を実施例1と同様の分量で混合し、モル比率[O]:[Li]を実施例1と同様に調整して、LLZOを含まない液体ポリマー電解質を調製した。このような液体ポリマー電解質を用いて実施1と同様な方法により評価セルを組立てた。
【0093】
(比較例2)
PEGDMEとLi(FSO2)2Nの混合物を実施例2と同様の分量で混合し、モル比率[O]:[Li]を実施例2と同様に調整して、LLZOを含まない液体ポリマー電解質を調製した。このような液体ポリマー電解質を用いて実施1と同様な方法により評価セルを組立てた。
【0094】
(比較例3)
PEGDMEとLi(FSO2)2Nの混合物を実施例3と同様の分量で混合し、モル比率[O]:[Li]を実施例3と同様に調整して、LLZOを含まない液体ポリマー電解質を調製した。このような液体ポリマー電解質を用いて実施1と同様な方法により評価セルを組立てた。
【0095】
(比較例4)
ポリイミド製で細孔の開口径が100nmを超える300nmの寸法のセパレータを用いた以外、実施例1と同様の方法により評価セルを組立てた。なお、セパレータの細孔の開口径はSEM画像から確認した。
【0096】
(比較例5)
ポリイミド製で細孔の開口径が300nmの寸法のセパレータを用いた以外、実施例2と同様の方法により評価セルを組立てた。なお、セパレータの細孔の開口径はSEM画像から確認した。
【0097】
(比較例6)
実施例3のセパレータを、ポリイミド製で細孔の開口径が300nmの寸法のセパレータを用いた以外、実施例3と同様の方法により評価セルを組立てた。なお、セパレータの細孔の開口径はSEM画像から確認した。
【0098】
(比較例7)
実施例7のセパレータを、ポリイミド製で細孔の開口径が300nmの寸法のセパレータを用いた以外、実施例7と同様の方法により評価セルを組立てた。なお、セパレータの細孔の開口径はSEM画像から確認した。
【0099】
(比較例8)
市販の非水電解液(1MのLiPF6,EC:DMC=1:1、体積比)を用いる、正極、負極ともにリチウム金属箔を銅板に貼り合せたものを用い、さらにPE製のセパレータを用いて評価セルとしてコイン型のリチウムイオン二次電池を組立てた。
【0100】
実施例1~9及び比較例1~8の評価セルについてサイクル特性を評価した。すなわち、評価セルを30℃で以下の充放電条件に従って繰り返した。充放電条件は、定電流で4.0Vまで1C充電、2.5Vまで1C放電した。なお、実施例3は充放電を500回繰り返し、それ以外の実施例は充放電を200回繰り返した。また、比較例6は充放電を500回繰り返し、それ以外の比較例は充放電を200回繰り返した。各サイクルにおける放電容量を測定し、初期容量に対する最終サイクル後の容量維持率を算出し、さらに200回のサイクル後の放電容量を求めた。その結果を下記表1に示す。
【0101】
【0102】
前記表1から明らかなように実施例1~9の評価セルは、比較例1~8の評価セルに比べて優れたサイクル特性を示すことがわかる。
【0103】
特に、実施例7及び実施例8の評価セルの結果から、正極側と負極側の固体電解質粒子を使い分けることにより、更に高いサイクル性能が得られることがわかる。
【0104】
これに対し、多孔性膜(セパレータ)以外の条件が同じで、セパレータの細孔の開口径が固体電解質粒子のD10を超える300nmである比較例4~6はそれぞれ放電容量維持率が87%,80%,79%と比較例4~6にそれぞれ対応する実施例1~3(「[O]:[Li]モル比が同じ)に比べて大幅に下回ることがわかる。
【0105】
以上より、本発明によれば、高い放電容量、高い放電容量維持率を有するリチウムイオン二次電池を提供することができる。
1…電池要素、2、正極、21…正極集電体、22…正極層、3…負極、31…負極集電体、32…負極層、4…多孔性膜、5…正極側複合電解質層、6…負極側複合電解質層。