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  • 特開-シールド工法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064674
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】シールド工法
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/06 20060101AFI20240507BHJP
   C02F 11/00 20060101ALI20240507BHJP
   C02F 11/143 20190101ALI20240507BHJP
   C02F 11/147 20190101ALI20240507BHJP
【FI】
E21D9/06 301Z
C02F11/00 C ZAB
C02F11/143
C02F11/147
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173434
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】390002185
【氏名又は名称】大成ロテック株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504162800
【氏名又は名称】京浜ソイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】平川 一成
(72)【発明者】
【氏名】岡島 穂高
(72)【発明者】
【氏名】大小田 洋祐
(72)【発明者】
【氏名】常田 和哉
(72)【発明者】
【氏名】橋本 諭
(72)【発明者】
【氏名】永井 文博
【テーマコード(参考)】
2D054
4D059
【Fターム(参考)】
2D054AC04
2D054DA03
2D054DA33
4D059AA09
4D059BE55
4D059BE56
4D059BF15
4D059BK12
4D059CC04
4D059DA01
4D059DA07
4D059DA09
4D059DA16
4D059DA22
4D059DA23
4D059DA24
4D059DB24
4D059EB04
4D059EB20
(57)【要約】
【課題】本発明は、塑性流動化した掘削土を運搬可能としつつも坑内での作業環境の悪化を確実に防止することができるシールド工法を提供する。
【解決手段】本発明のシールド工法は、シールドマシンのチャンバ内で少なくとも増粘材の水溶液を掘削土に混合して得られる塑性流動化物をチャンバから搬出する工程と、搬出した前記塑性流動化物に含まれる前記増粘材の水溶液の粘度を低減する減粘材の水溶液を前記塑性流動化物に添加して排土を生成する工程と、を有し、前記掘削土は、砂質土又は礫質土からなり、前記増粘材は、高分子凝縮剤からなり、前記減粘材は、無機凝縮剤からなることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールドマシンのチャンバ内で少なくとも加泥材の水溶液を掘削土に混合して得られる塑性流動化物を前記チャンバから搬出する工程と、搬出した前記塑性流動化物に含まれる前記加泥材の水溶液の粘度を低減する減粘材の水溶液を前記塑性流動化物に添加して排土を生成する工程と、を有し、
前記掘削土は、砂質土又は礫質土からなり、前記加泥材は、高分子凝縮剤からなり、前記減粘材は、無機凝縮剤からなることを特徴とするシールド工法。
【請求項2】
前記高分子凝縮剤は、ポリアクリルアミドであることを特徴とする請求項1に記載のシールド工法。
【請求項3】
前記高分子凝縮剤は、アニオン性ポリアクリルアミドであり、
前記無機凝縮剤は、塩化カルシウム、塩化カリウム、塩化第二鉄、塩化第一鉄、塩化マグネシウム、ポリ塩化アルミニウム、ポリ硫酸第二鉄、及びポリシリカ鉄からなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項2に記載のシールド工法。
【請求項4】
前記無機凝縮剤は、塩化第二鉄単独、塩化第一鉄単独、又はポリ塩化アルミニウム単独であることを特徴とする請求項3に記載のシールド工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シールド工法としては、加泥材により土砂を塑性流動化して切削を進め、その後掘削土を坑内のベルトコンベアや地上のダンプトラックで運搬可能とするために、石膏などの固化材を添加するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2019-136676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のシールド工法(例えば、特許文献1参照)においては、固化材のほとんどが粉体であるため、坑内で固化材を取り扱う際に生じる固化材の粉塵によって作業環境が悪化する恐れがあった。
【0005】
本発明の課題は、塑性流動化した掘削土を運搬可能としつつも坑内での作業環境の悪化を確実に防止することができるシールド工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決した本発明のシールド工法は、シールドマシンのチャンバ内で少なくとも加泥材の水溶液を掘削土に混合して得られる塑性流動化物を前記チャンバから搬出する工程と、搬出した前記塑性流動化物に含まれる前記加泥材の水溶液の粘度を低減する減粘材の水溶液を前記塑性流動化物に添加して排土を生成する工程と、を有し、前記掘削土は、砂質土又は礫質土からなり、前記加泥材は、高分子凝縮剤からなり、前記減粘材は、無機凝縮剤からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、塑性流動化した掘削土を運搬可能としつつも坑内での作業環境の悪化を確実に防止することができるシールド工法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係るシールド工法に使用するシールドマシンの構成説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明を実施する形態(本実施形態)のシールド工法について適宜図面を参照しながら詳細に説明する。本実施形態のシールド工法は、掘削土が、砂質土又は礫質土からなることを主な特徴点の一つとしている。
【0010】
本実施形態での砂質土及び礫質土は、日本統一土質分類の定義と同じである。具体的には、砂質土とは、粗粒分(砂礫分とも称する)を、50質量%を超えて含み、かつ砂分が礫分以上のものをいう。また、礫質土とは、粗粒分を、50質量%を超えて含み、かつ礫分が砂分よりも多いものをいう。
【0011】
なお、粗粒分は、JISA1204に準拠した「土の粒度試験方法」又は土質工学会規格「土の標準網フルイ0.074mm通過質量試験方法」を用いて求められた土の粒度成分において、土の粒子径0.074mm~2.0mmの砂分の質量百分率と、土の粒子径2.0mm~75mmの礫分の質量百分率との合計で表される。
【0012】
また、本実施形態での掘削土としては、前記のように、土の粒度分布に基づく砂質土及び礫質土を規定したが、このような砂質土及び礫質土の粒度分布を有するものであれば、土成分については特に制限はない。したがって、掘削土としては、火山灰を含むもの(例えば、シラス土、黒ボク土など)であっても構わない。
以下では、まずシールド工法に使用するシールドマシンについて説明する。
【0013】
≪シールドマシン≫
図1は、本実施形態での使用を想定したシールドマシン1の構成説明図である。
図1に示すように、シールドマシン1は、スキンプレート2と、隔壁3と、カッタヘッド4と、カッタモータ5と、スクリュコンベア7と、土圧センサ8を備えている。
また、シールドマシン1は、減粘材供給機構14と、シールドマシン1のチャンバ9から搬出した塑性流動化物15に、減粘材供給機構14から供給される減粘材水溶液16を混合するバケット13と、を備えている。
【0014】
スキンプレート2は、シールドマシン1の外殻部となる鋼製の筒状部材である。
隔壁3は、スキンプレート2に設けられており、スキンプレート2の前側部分にチャンバ9を区画している。このチャンバ9には、加泥材、気泡材などからなる掘進添加材を含む液媒体が所定流量で供給される。
【0015】
カッタヘッド4は、回転によって地中を掘削する部分であり、スキンプレート2よりも前方に配設されている。
カッタヘッド4には、複数のカッタビット6が固定されている。
カッタモータ5は、カッタヘッド4を回転させるための駆動源であり、隔壁3の後側に設けられている。
カッタモータ5の駆動力は、支持アーム10を介してカッタヘッド4に伝達される。
【0016】
スクリュコンベア7は、チャンバ9に流入した掘削土と掘進添加材とが混合されて構成される塑性流動化物を後側に排出する装置である。
土圧センサ8は、チャンバ9の土圧力を測定する。この土圧センサ8で測定された圧力に応じて、シールドマシン1の推進力やスクリュコンベア7による掘削土の排出量が調整される。
【0017】
本実施形態での減粘材供給機構14は、図示は省略するが、減粘材水溶液16を貯留するタンクと、タンクから減粘材水溶液16の所定量を送出するポンプとを主に有して構成されている。なお、ポンプにて送り出す減粘材水溶液16の容量は、スクリュコンベア7による塑性流動化物15(掘削土)の排出量に応じて調節される。ちなみに、本実施形態でのタンクに貯留される減粘材水溶液16は、坑外にて後記する減粘材と水とを予め混合した所定濃度の減粘材水溶液16が配管(図示を省略)を介して輸送されたものを想定している。
【0018】
バケット13は、上方に開く開放型の貯留槽を想定している。バケット13には、スクリュコンベア7から塑性流動化物15が投入され、減粘材供給機構14から減粘材水溶液16が投入される。
また、バケット13は、塑性流動化物15と減粘材水溶液16とを混合するミキサ13aを備えている。
バケット13内には、塑性流動化物15と減粘材水溶液16とが混合されることで排土17が形成される。
なお、本実施形態での排土17の生成は、このようなバケット13によるバッチ式(回分式)のものを想定しているが、スクリュコンベア7の途中に減粘材水溶液16の供給部を設けた連続式の構成とすることもできる。
なお、図1中、符号11は、シールドジャッキであり、符号12は、トンネル覆工部材としてのセグメントである。
【0019】
≪シールド工法≫
本実施形態でのシールド工法は、土圧シールド工法を想定している。
このシールド工法は、シールドジャッキ11の推力によりチャンバ9内の砂質土又は礫質土からなる掘削土に土圧を発生させて切羽Cfの土圧と地下水圧とに対抗し、シールドマシン1の掘進量と排土量のバランスを図りながら掘進する工法である。
本実施形態でのシールド工法は、掘削土と高分子凝集剤水溶液(加泥材)との混合物からなる塑性流動化物をチャンバ9(図1参照)内で生成する工程と、チャンバ9から搬出した塑性流動化物15に無機凝集剤水溶液(減粘材)を混合して排土を生成する工程と、を有している。
【0020】
<塑性流動化物の生成工程>
本実施形態でのシールド工法においては、シールドマシン1による掘進を行う際に、所定の供給管(図示を省略)を介してチャンバ9内に高分子凝集剤水溶液が加泥材として供給される。
この加泥材は、掘削土を不透水性と塑性流動性とを有する土質に変換する。このような土質の掘削土は、切羽Cfの良好な安定性を維持する。そして、チャンバ9内で生成された掘削土の塑性流動化物は、スクリュコンベア7によって前記のように後方に搬送される。
【0021】
高分子凝集剤としては、アニオン性高分子凝集剤が好ましい。
このアニオン性高分子凝集剤としては、例えば、アクリル酸又はその塩の重合物、アクリル酸又はその塩とアクリルアミドとの共重合物、アクリルアミドと2-アクリルアミド-2メチルプロパンスルホン酸塩の共重合物、アクリル酸又はその塩とアクリルアミドと2-アクリルアミド-2メチルプロパンスルホン酸塩の3元共重合物、ポリアクリルアミドの部分加水分解物などが挙げられるが、中でもアニオン性ポリアクリルアミドがより好ましい。
なお、本実施形態での加泥材としては、高分子凝集剤以外の増粘材やゲル化材などの他の成分を含まないものを想定している。
【0022】
高分子凝集剤水溶液の濃度は、0.05~5質量%が好ましい。
掘削土に対する高分子凝集剤水溶液の使用量としては、高分子凝集剤の種類によって一概に決定できないが、高分子凝集剤がアニオン性ポリアクリルアミドである場合には、掘削土(S)に対するポリアクリルアミド(P)の固形分換算で0.005~0.5質量%(100P/(P+S))が好ましい。
【0023】
<排土の生成工程>
次に、このシールド工法においては、図1に示すように、チャンバ9(図1参照)から搬出した塑性流動化物15に減粘材水溶液16(無機凝集剤水溶液)が混合される。これにより排土を生成される。以下、塑性流動化物15及び減粘材水溶液16(無機凝集剤水溶液)の符号は省略する。
【0024】
無機凝集剤としては、例えば、塩化カルシウム、塩化カリウム、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、ポリ硫酸第二鉄、ポリシリカ鉄、塩化マグネシウム、ポリ塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、塩化マグネシウム、珪酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、アルミニウムミョウバンなどが挙げられる。中でも、塩化カルシウム、塩化カリウム、塩化第二鉄、塩化第一鉄、塩化マグネシウム、ポリ塩化アルミニウム、ポリ硫酸第二鉄、及びポリシリカ鉄からなる群より選ばれる少なくとも一種が好ましく、塩化第二鉄単独、塩化第一鉄単独、又はポリ塩化アルミニウム単独で使用することがより好ましい。
【0025】
無機凝集剤水溶液の濃度は、1~50質量%が好ましい。
塑性流動化物に対する無機凝集剤水溶液の使用量としては、高分子凝集剤の種類及び無機凝集剤の種類によって一概に決定できないが、高分子凝集剤がアニオン性ポリアクリルアミドであり、無機凝集剤がポリ塩化アルミニウムである場合には、ポリアクリルアミド(P)の固形分に対するポリ塩化アルミニウム(M)の質量換算で、0.5~50質量%(100M/(M+P))が好ましい。
【0026】
≪作用効果≫
このような本実施形態のシールド工法によれば、塑性流動化物の生成工程において、高分子凝集剤水溶液は、掘削土が砂質土又は礫質土である場合に、その粘性によって土粒子同士の間でのゲルストレングスを高めて掘削土の塑性流動性を向上させる。塑性流動化した砂質土などの前記掘削土は、これにより切羽Cfの良好な安定性を維持するとともに、スクリュコンベア7などによって流体としての輸送が可能となる。
【0027】
その一方で、塑性流動化した掘削土は、そのダレ性によってダンプトラックや通常のベルトコンベアなどによる坑内から地上への輸送が困難になる。
そこで、従来のシールド工法(例えば、特許文献1参照)では、塑性流動化した掘削土に石膏などの固化材を添加することで塑性流動化した掘削土に形状保持性を付与し、ダンプトラックなどによる坑内から地上への輸送を可能にしている。
【0028】
しかしながら、従来のシールド工法(例えば、特許文献1参照)では、石膏などの粉体からなる固化材が坑内で粉塵化して作業環境が悪化するおそれがある。
これに対して、本実施形態のシールド工法は、後に詳しく説明する実施例にて検証されたように、無機凝集剤水溶液にて土粒子同士間に存在する高分子凝集剤水溶液の粘性を低減する。これにより本実施形態のシールド工法は、凝集した土粒子同士の摩擦力を増大させて掘削土のダレ性を解消する。すなわち、本実施形態のシールド工法によれば、粉体からなる固化材による坑内での作業環境の悪化を確実に防止することができるシールド工法を提供することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、種々の形態で実施することができる。
【実施例0029】
次に、本実施形態のシールド工法の奏する作用効果について検証した本発明の実施例及び比較例について説明する。
[実施例1]
本実施例では、掘削土として、乾燥した鹿児島県産火山灰質砂質土1L(1701g)を用意した。
この砂質土は、JISA1204に準拠した「土の粒度試験方法」で求めた粒度成分として、細粒分であるシルト分(粒子径0.005mm~0.075mm)14.2質量%、及び粘土分(粒子径0.005mm未満)10.7質量%と、粗粒分である礫分(粒子径2mm~75mm)23.3質量%、及び砂分(粒子径0.075mm~2mm)51.8質量%と、を含んでいた。
なお、粒径75.0mm以上の石分は含まれていなかった。土粒子の最大粒径は、26.5mmであった、
【0030】
高分子凝集剤水溶液として、アクリル酸ナトリウムとアクリルアミドとの共重合物であるアニオン性ポリアクリルアミドの0.4質量%水性エマルジョン170mL(固形分0.4質量%)を用意した。このエマルジョンの粘度は、500mPa・Sであった。この粘度測定には、リオン株式会社製ビスコテスタVT-06(ローター:1号)を使用した。
無機凝集剤水溶液としてポリ塩化アルミニウム(品位:塩基度48.0~56%、Alとして10.0~11.0質量%)の1.2M(mol/dm)水溶液0.5mLを用意した。
【0031】
前記の「塑性流動化物の生成工程」に対応するように、鹿児島県産火山灰質礫質土1Lに、アニオン性ポリアクリルアミドの0.4質量%水性エマルジョン170mLを混合することによって、塑性流動化させた掘削土を模擬的に調製した。
この調製した掘削土についてJIS A 1171に準拠したミニスランプ試験を行った。その結果、ミニスランプ値は27mmであった。
また、調製した掘削土について目視手触りにて掘削に十分な流動性を有することが確認された。
【0032】
前記の「排土の生成工程」に対応するように、塑性流動化させた掘削土にポリ塩化アルミニウムの1.2M水溶液0.5mLを混合することによって、排土を模擬的に調製した。
この調製した排土についてJIS A 1171に準拠したミニスランプ試験を行った。その結果、ミニスランプ値は3mmであった。
また、調製した排土について目視手触りにてベルトコンベアなどによる搬送が可能であることが確認された。
【0033】
また、前記のミニスランプ試験に並行して高分子凝集剤水溶液の無機凝集剤水溶液による粘度低下評価試験を行った。この粘度低下評価試験は、アニオン性ポリアクリルアミドの0.4質量%水性エマルジョン170mLに、ポリ塩化アルミニウムの1.2M(mol/dm)水溶液0.5mLを混合した混合液の粘度を前記の測定装置にて測定することにより行った。その結果、この混合液の粘度は、測定範囲の下限である30mPa・S以下であり、400mPa・S以上の粘度低下が確認された。
【0034】
[実施例2]
本実施例では、含水比が30.9の鹿児島県産火山灰質砂質土1Lを掘削土として使用した。この砂質土は、湿潤している以外は実施例1と同様の砂質土を使用した。
また、本実施例では高分子凝集剤水溶液として、実施例1で使用したアニオン性ポリアクリルアミドの0.4質量%水性エマルジョン190mL(固形分0.4質量%、粘度500mPa・S)を用意した。
無機凝集剤水溶液としては、35質量%塩化カルシウム水溶液1gを使用した。
前記の「塑性流動化物の生成工程」に対応するように、砂質土1Lに、アニオン性ポリアクリルアミドの0.4質量%水性エマルジョン190mLを混合することによって、塑性流動化させた掘削土を模擬的に調製した。
この調製した掘削土についてJIS A 1171に準拠したミニスランプ試験を行った。その結果、ミニスランプ値は28mmであった。
また、調製した掘削土について目視手触りにて掘削に十分な流動性を有することが確認された。
【0035】
前記の「排土の生成工程」に対応するように、塑性流動化させた掘削土に、35質量%塩化カルシウム水溶液1gを混合することによって、排土を模擬的に調製した。
この調製した排土についてJIS A 1171に準拠したミニスランプ試験を行った。ミニスランプ値は2.5mmであった。
また、調製した排土について目視手触りにてベルトコンベアなどによる搬送が可能であることが確認された。
【0036】
また、前記のミニスランプ試験に並行して高分子凝集剤水溶液の無機凝集剤水溶液による粘度低下評価試験を行った。この粘度低下評価試験は、アニオン性ポリアクリルアミドの0.4質量%水性エマルジョン190mLに、35質量%塩化カルシウム水溶液1gを混合した混合液の粘度を前記の測定装置にて測定することにより行った。その結果、この混合液の粘度は、測定範囲の下限である30mPa・S以下であった。
【0037】
[実施例3]
本実施形態では、実施例2と同様にして、砂質土1Lに、アニオン性ポリアクリルアミドの0.4質量%水性エマルジョン190mLを混合することによって、塑性流動化させた掘削土を模擬的に調製した。
本実施形態での無機凝集剤水溶液としては、実施例2の35質量%塩化カルシウム水溶液に代えて、32質量%塩化第一鉄水溶液を調製した。
そして、前記の「排土の生成工程」に対応するように、塑性流動化させた掘削土に、32質量%塩化第一鉄水溶液1gを混合することによって、排土を模擬的に調製した。
この調製した排土についてJIS A 1171に準拠したミニスランプ試験を行った。ミニスランプ値は2.5mmであった。
また、調製した排土について目視手触りにてベルトコンベアなどによる搬送が可能であることが確認された。
【0038】
また、前記のミニスランプ試験に並行して高分子凝集剤水溶液の無機凝集剤水溶液による粘度低下評価試験を行った。この粘度低下評価試験は、アニオン性ポリアクリルアミドの0.4質量%水性エマルジョン190mLに、32質量%塩化第一鉄水溶液1gを混合した混合液の粘度を前記の測定装置にて測定することにより行った。その結果、この混合液の粘度は、測定範囲の下限である30mPa・S以下であった。
【0039】
[実施例4]
本実施形態では、実施例2と同様にして、砂質土1Lに、アニオン性ポリアクリルアミドの0.4質量%水性エマルジョン190mLを混合することによって、塑性流動化させた掘削土を模擬的に調製した。
本実施形態での無機凝集剤水溶液としては、実施例2の35質量%塩化カルシウム水溶液に代えて、塩基性硫酸第二鉄として36.0~39.0質量%を含むポリ硫酸第二鉄水溶液を調製した。
そして、前記の「排土の生成工程」に対応するように、塑性流動化させた掘削土に、このポリ硫酸第二鉄水溶液1gを混合することによって、排土を模擬的に調製した。
この調製した排土についてJIS A 1171に準拠したミニスランプ試験を行った。ミニスランプ値は2.0mmであった。
また、調製した排土について目視手触りにてベルトコンベアなどによる搬送が可能であることが確認された。
【0040】
また、前記のミニスランプ試験に並行して高分子凝集剤水溶液の無機凝集剤水溶液による粘度低下評価試験を行った。この粘度低下評価試験は、アニオン性ポリアクリルアミドの0.4質量%水性エマルジョン190mLに、前記のポリ硫酸第二鉄水溶液1gを混合した混合液の粘度を前記の測定装置にて測定することにより行った。その結果、この混合液の粘度は、測定範囲の下限である30mPa・S以下であった。
【0041】
[実施例5]
本実施例では、掘削土として、乾燥した名古屋県産砂質土1Lを用意した。
この砂質土は、JISA1204に準拠した「土の粒度試験方法」で求めた粒度成分として、粒子径0.075mm未満の細粒分が5.6質量%であった。また、この砂質土は、粗粒分としての砂分が、粗砂(0.84mm~2mm)79.5質量%、中砂(0.425mm~0.84mm)5.5質量%、及び細砂(0.075mm~0.425mm)9.4質量%からなっていた。
【0042】
また、本実施例では高分子凝集剤水溶液として、実施例1で使用したアニオン性ポリアクリルアミドの0.88質量%水性エマルジョン170mL(固形分0.88質量%、粘度1500mPa・S)を用意した。
無機凝集剤水溶液としては、ポリ塩化アルミニウム(品位:塩基度20.0~23質量%、Alとして10.0~11.0質量%)の1.2M(mol/dm)水溶液1.0mL(固形分1.2mg)を用意した。
【0043】
前記の「塑性流動化物の生成工程」に対応するように、砂質土1Lに、アニオン性ポリアクリルアミドの水性エマルジョン170mLを混合することによって、塑性流動化させた掘削土を模擬的に調製した。
この調製した掘削土についてJIS A 1171に準拠したミニスランプ試験を行った。その結果、ミニスランプ値は77mmであった。
また、この掘削土についてJIS A 1228に準拠したコーン指数試験を行った。その結果、コーン指数は、0kN/mであった。
これにより掘削土の塑性流動化が確認された。
【0044】
前記の「排土の生成工程」に対応するように、塑性流動化させた掘削土にポリ塩化アルミニウム水溶液1.0mL(固形分1.2mg)を混合することによって、排土を模擬的に調製した。
この調製した排土についてJIS A 1171に準拠したミニスランプ試験を行った。その結果、ミニスランプ値は4mmであった。
また、この排土についてJIS A 1228に準拠したコーン指数試験を行った。その結果、コーン指数は、500kN/mであった。
これにより排土のベルトコンベアなどによる搬送が可能であることが確認された。
【0045】
また、前記のミニスランプ試験に並行して高分子凝集剤水溶液の無機凝集剤水溶液による粘度低下評価試験を行った。その結果、この混合液の粘度は、測定範囲の下限である30mPa・S以下であった。
【符号の説明】
【0046】
1 シールドマシン
2 スキンプレート
3 隔壁
4 カッタヘッド
5 カッタモータ
6 カッタビット
7 スクリュコンベア
8 土圧センサ
9 チャンバ
10 支持アーム
11 シールドジャッキ
12 セグメント
13 バケット
13a ミキサ
14 減粘材供給機構
15 塑性流動化物
16 減粘材水溶液
17 排土
Cf 切羽
図1