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特開2024-6468グラフェン同士を接合したグラフェン接合体を、予め設定した面積の大きさと厚みとからなるグラフェン接合体として製造する方法
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  • 特開-グラフェン同士を接合したグラフェン接合体を、予め設定した面積の大きさと厚みとからなるグラフェン接合体として製造する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006468
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】グラフェン同士を接合したグラフェン接合体を、予め設定した面積の大きさと厚みとからなるグラフェン接合体として製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/194 20170101AFI20240110BHJP
【FI】
C01B32/194
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107350
(22)【出願日】2022-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】512150358
【氏名又は名称】小林 博
(72)【発明者】
【氏名】小林 博
【テーマコード(参考)】
4G146
【Fターム(参考)】
4G146AA01
4G146AB07
4G146BA02
4G146BC16
4G146CB03
4G146CB17
(57)【要約】      (修正有)
【課題】第一に、グラフェンの集まりを、有機化合物中に分散したペーストを製造する。第二に、ペーストを用いて、予め設定した面積の大きさと厚みとからなるグラフェン接合体を、多くの種類のグラフェン接合体として製造する。第三に、グラフェン接合体の集まりを、有機化合物中に分散したペーストを製造する。第四に、ペーストを用いて、多くの種類のグラフェン接合体として製造する。
【解決手段】大きさと深さが異なる円柱の溝に、1-ブタノール中にグラフェン接合体が分散したペーストを注入し、グラフェン接合体の集まりを円柱の突起で圧縮し、大きさと厚みが異なる円板のグラフェン接合体を製造し、該円板のグラフェン接合体の集まりを、1-ブタノール中に分散したペーストを作成する。大きさと深さとが異なる四角柱の溝にペーストを注入し、グラフェン接合体の集まりを四角柱の突起で圧縮し、大きさと厚みが異なる四角形のグラフェン接合体を製造する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め設定した面積の大きさと厚みとからなるグラフェン接合体の集まりを1-ブタノール中に均一に分散したペーストを製造する方法は、
2枚の平行平板電極からなる電極板対の一方の平行平板電極を第一の容器に配置させ、該一方の平行平板電極の表面に、鱗片状黒鉛粒子の集まりないしは塊状黒鉛粒子の集まりを平坦に引き詰め、さらに、前記第一の容器に1-ブタノールを注入し、前記一方の平行平板電極と前記鱗片状黒鉛粒子の集まりないしは前記塊状黒鉛粒子の集まりを、前記1-ブタノール中に浸漬させる、さらに、前記電極板対を構成する他方の平行平板電極板を、前記鱗片状黒鉛粒子の集まりないしは前記塊状黒鉛粒子の集まりを介して、前記一方の平行平板電極の上に重ね合わせ、前記2枚の平行平板電極からなる電極板対を前記1-ブタノール中に浸漬させる、この後、該電極板対の間隙に、前記鱗片状黒鉛粒子ないしは前記塊状黒鉛粒子を形成する黒鉛結晶からなる基底面の層間結合を破壊させることができる大きさからなる直流の電位差を印加する、これによって、該直流の電位差の大きさを前記電極板対の間隙の大きさで割った値に相当する電界が、前記鱗片状黒鉛粒子の集まりないしは前記塊状黒鉛粒子の集まりに印加され、該電界の印加によって、前記鱗片状黒鉛粒子ないしは前記塊状黒鉛粒子を形成する黒鉛結晶からなる基底面の層間結合の全てが同時に破壊され、前記電極板対の間隙に前記基底面からなるグラフェンの集まりが析出する、この後、前記電極板対の間隙を拡大し、さらに、該電極板対を1-ブタノール中で傾斜させ、さらに、前記第一の容器に左右、前後、上下の3方向の0.2-0.3Gからなる振動加速度を、各々の方向の振動加速度として5秒間ずつ加え、前記グラフェンの集まりを、前記電極板対の間隙から前記1-ブタノール中に移動させる、この後、前記第一の容器から前記電極板対を取り出す、1-ブタノールが注入された容器内にグラフェンの集まりを該1-ブタノール中に析出させる第一の工程と、
前記容器内の1-ブタノール中でホモジナイザー装置を稼働させ、前記1-ブタノールを介して前記グラフェンの集まりに衝撃波を1-2分間加え、該グラフェンの集まりを、前記1-ブタノール中で1枚1枚のグラフェンに分離させ、この後、前記容器から前記ホモジナイザー装置を取り出す、1-ブタノール中に1枚1枚のグラフェンが分離して分散した該グラフェンの集まりを作成する第二の工程と、
前記容器内の前記1-ブタノール中に分散された前記グラフェンの集まりを撹拌する、この後、予め設定した同一の形状と、予め設定した同一の深さとからなる複数の溝を第一の板材に形成し、前記1-ブタノール中に分散された前記グラフェンの集まりの予め設定した同じ量を、前記複数の溝の各々に注入し、さらに、前記第一の板材に対し、左右、前後、上下の3方向の0.3-0.5Gからなる振動加速度を、各々の方向の振動加速度を5秒間ずつ3回繰り返して加え、この後、上下方向の振動加速度を5秒間加える、これによって、前記溝に注入した1-ブタノール中に分散されたグラフェンの集まりが、前記1-ブタノール中で平面状に並ぶとともに、該平面状に並んだグラフェンの集まりが前記1-ブタノールを介して重なり合って積層し、該1-ブタノールを介して重なり合って積層したグラフェンの集まりが前記溝内に形成される、同一の形状と同一の深さからなる複数の溝に、1-ブタノール中でグラフェンの集まりが平面状に並ぶとともに、該平面状に並んだグラフェンが重なり合って積層した該グラフェンの集まりを前記溝の内部に形成する第三の工程と、
前記第一の板材を前記1-ブタノールの沸点に昇温し、該第一の板材の前記複数の溝から前記1-ブタノールを気化させ、該複数の溝の底面に、平面状に並んだグラフェンの集まりが重なり合って積層した該グラフェンの集まりを形成させる、この後、前記第一の板材の溝の側面と接触する位置に形成される第一の特徴と、前記第一の板材の溝の深さより長さが長い同一の長さを持つ第二の特徴と、前記第一の板材の前記複数の溝と同じ数からなる第三の特徴とを兼備する複数の突起を第二の板材に形成し、該第二の板材の複数の突起が、前記第一の板材の前記複数の溝に挿入するように、該第二の板材を前記第一の板材の上に重ね合わせ、該第二の板材の前記突起が形成された反対側の表面の全体を均等に圧縮し、前記複数の突起の先端が、前記複数の溝の底面に形成された前記平面状に並んだグラフェンの集まりが重なり合って積層した該グラフェンの集まりを圧縮する、これによって、該平面状に重なり合ったグラフェン同士が、該重なり合った面で摩擦圧接し、該摩擦圧接で接合したグラフェンの集まりからなるグラフェン接合体が前記複数の溝の底面に、該底面の形状として形成される、さらに、前記複数の溝が形成された前記第一の板材の底面に該当する複数の部位に、0.3-0.5Gからなる衝撃加速度を5秒間断続的に加え、前記複数の溝の底面に形成された前記グラフェン接合体を、該複数の溝の底面から引き剥がす、複数の溝の底面に、予め設定した面積の大きさと厚みとからなるグラフェン接合体を形成し、該グラフェン接合体を前記複数の溝の底面から引き剥がす第四の工程と、
前記複数の溝の底面に形成された前記グラフェン接合体の全てを、該複数の溝から取り出し、前記第一の板材に形成された前記複数の溝の体積の総和よりさらに体積が大きい第二の容器に、前記取り出したグラフェン接合体の全てを、予め決めた量からなる1-ブタノールとともに注入し、該グラフェン接合体の集まりを前記1-ブタノール中に浸漬させる、この後、前記第二の容器に対し、左右、前後、上下の3方向の振動加速度を、前記第三の工程で加えた2倍の大きさの振動加速度を、各々の方向の振動加速度として5秒間ずつ加え、前記グラフェン接合体の集まりが、前記1-ブタノール中に均一に分散したペーストを、前記第二の容器内に製造する、グラフェン接合体の集まりが1-ブタノール中に均一に分散したペーストを容器内に製造する第五の工程とからなり、
前記5つの工程における処理を連続して実施することで、予め設定した面積の大きさと厚みとからなるグラフェン接合体の集まりが、1-ブタノール中に均一に分散したペーストが製造される該ペーストの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載したペーストを製造する方法は、
請求項1に記載した第三の工程における処理は、請求項1に記載した第一の板材に設ける複数の溝が、円柱からなる複数の溝であり、該円柱からなる溝は、該溝の断面の大きさが、直径が4.99mmから1mmごとに19.99mmに及ぶ16種類の大きさからなる第一の特徴と、該溝の深さが、前記断面の大きさに比例した深さからなる1-16mmの深さである第二の特徴とを兼備する同一形状からなる複数の溝であり、該複数の溝を、請求項1に記載した第一の板材に形成する第一の処理を行い、また、該複数の溝の各々の溝に、請求項1に記載した方法で製造したペーストを、同一の量として注入する量を、前記溝の断面の大きさに比例させて増やし、前記直径が4.99mmからなる円柱の溝には、10枚のグラフェンの集まりが重なり合って積層する量として注入し、前記直径が19.99mmからなる円柱の溝には、157枚のグラフェンの集まりが重なり合って積層する量として注入する第二の処理を行う、これら2つの処理を、請求項1に記載した第三の工程において実施する、
請求項1に記載した第四の工程における処理は、請求項1に記載した第二の板材に形成する複数の突起が、円柱からなる複数の突起であり、該円柱からなる突起の形状は、該第二の板材を前記第一の板材に重ね合わせた際に、該円柱の突起の側面が、前記円柱の溝の側面と接触する形状からなる第一の特徴と、該円柱の突起の長さが、前記円柱の溝の深さより1mm長い長さを持つ第二の特徴とを兼備する円柱からなる突起であり、該円柱からなる複数の突起を、請求項1に記載した第二の板材に形成する第一の処理を行い、また、該第二の板材を前記第一の板材の上に重ね合わせ、該第二の板材の前記複数の突起が形成された反対側の表面の全体を均等に圧縮し、前記複数の突起の先端が、前記複数の溝の底面に形成された平面状に重なり合って積層したグラフェンの集まりを圧縮する、これによって、該平面状に重なり合ったグラフェン同士が、該重なり合った面で摩擦圧接し、該摩擦圧接で接合したグラフェンの集まりからなるグラフェン接合体が、前記円柱の溝の底面に該底面の形状として形成される第二の処理を行う、これら2つの処理を、請求項1に記載した第四の工程において実施する、
前記第三の工程における2つの処理を、請求項1に記載した第三の工程において実施することを特徴とし、また、前記第四の工程における2つの処理を、請求項1に記載した第四の工程において実施することを特徴とする、請求項1に記載したペーストを製造する方法。
【請求項3】
請求項1に記載した第三の工程における処理と、請求項1に記載した第四の工程における処理とを、請求項2に記載した処理方法によって実施し、請求項1に記載した第一の工程と、第二の工程と、第五の工程とにおける処理を、請求項1に記載した処理方法によって実施し、これら5つ工程における処理によって、請求項1に記載したペーストを製造し、該ペーストを用い、該ペーストを構成するグラフェン接合体より面積が大きく、厚みが厚く、かつ、予め設定した面積の大きさと厚みとからなるグラフェン接合体を製造する方法は、
予め設定した形状からなる第一の特徴と、予め設定した深さからなる第二の特徴と、請求項2に記載した円柱の溝より広い底面積からなる第三の特徴を兼備する溝を第三の板材に形成し、該第三の板材の溝に、請求項2に記載した方法で製造したペーストの予め設定した量を注入し、該第三の板材に対し、左右、前後、上下の3方向の振動加速度を、請求項1に記載した第三の工程で加えた振動加速度より大きな振動加速度として、各々の方向の振動加速度を5秒間ずつ3回繰り返して加え、この後、上下方向の振動加速度を、請求項1に記載した第三の工程で加えた振動加速度より大きな振動加速度として5秒間加える、これによって、前記ペーストを構成するグラフェン接合体が、前記ペーストを構成する1-ブタノール中で平面状に並ぶとともに、該平面状に並んだグラフェン接合体同士が前記1-ブタノールを介して重なり合って積層した該グラフェン接合体の集まりが、前記第三の板材の溝に形成される第一の工程と、
該第三の板材を、前記1-ブタノールの沸点に昇温し、該第三の板材の溝から前記1-ブタノールを気化させる、これによって、該第三の板材の溝の底面に、グラフェン接合体が平面状に並ぶとともに、該平面状に並んだグラフェン接合体の集まりが、重なり合って積層した該グラフェン接合体の集まりが形成される、さらに、該第三の板材の溝の側面と接触する位置に形成される第一の特徴と、前記第三の板材の溝の深さより長さが長い第二の特徴とを兼備する突起を第四の板材に形成し、該第四の板材の突起が、前記第三の板材の溝に挿入されるように、該第四の板材を前記第三の板材の上に重ね合わせ、該第四の板材の前記突起が形成された反対側の表面の全体を均等に圧縮し、前記突起の先端が、前記溝の底面に形成された前記平面状に重なり合って積層したグラフェン接合体の集まりを圧縮する、これによって、該平面状に重なり合ったグラフェン接合体同士が、該重なり合った面で摩擦圧接し、該摩擦圧接で接合したグラフェン接合体の集まりからなるグラフェン接合体が、前記溝の底面に、該底面の形状として形成される、摩擦圧接で接合したグラフェン接合体の集まりからなるグラフェン接合体を、溝の底面に、該底面の形状として形成する第二の工程と、
前記溝が形成された前記第三の板材の底面に該当する部位に、請求項1に記載した第四の工程で加えた衝撃加速度より大きな衝撃加速度を5秒間断続的に加え、前記溝に形成された前記グラフェン接合体を、該溝の底面から引き剥がす、溝の底面からグラフェン接合体を引き剥がす第三の工程とからなり、
前記3つの工程における処理を連続して実施することで、請求項1に記載した第三の工程における処理と、請求項1に記載した第四の工程における処理とを、請求項2に記載した処理方法によって実施し、かつ、請求項1に記載した第一の工程と、第二の工程と、第五の工程とにおける処理を、請求項1に記載した処理方法によって実施し、これら5つの工程における処理によって、請求項1に記載したペーストを製造し、該ペーストを用い、該ペーストを構成するグラフェン接合体より面積が大きく、厚みが厚く、かつ、予め設定した面積の大きさと厚みとからなるグラフェン接合体を製造する方法。
【請求項4】
請求項3に記載したグラフェン接合体を製造する方法は、
請求項3に記載した第三の板材に設ける溝が、四角柱からなる溝であり、該溝の形状は、該溝の断面の四角形の一方の辺と他方の辺との長さを、請求項2に記載した円板形状からなるグラフェン接合体の直径の長さに近い整数値の長さに、1倍から1倍ごとに10倍までの倍数を掛けた10種類の長さとして、前記一方の辺と前記他方の辺の長さに、前記10種類の長さの幅を持たせ、該10種類の長さの幅を持つ2つの辺の互いに異なる辺の組み合わせによって、前記四角形の一方の辺と他方の辺の長さを構成する前記溝の形状とし、また、前記溝の深さを、請求項2に記載した円板からなるグラフェン接合体を形成する際に用いる円柱の溝の深さに、前記四角形からなる溝の底面に、前記円板からなるグラフェン接合体を平面状に並べる際の該円板からなるグラフェン接合体の数を掛け合わせた深さを前記溝の深さとし、前記溝の形状と、前記溝の深さからなる四角形の溝を、請求項3に記載した第三の板材に形成する第一の処理と、
該四角柱の溝に、請求項2に記載した方法で製造したペーストを注入する量を、前記四角柱の溝に注入されたグラフェン接合体同士が重なり合って積層し、該積層したグラフェン接合体の集まりが、最大で20層を形成して積層する量として、前記ペーストを前記四角柱の溝に注入する第二の処理を行う、
これら2つの処理を、請求項3に記載した第一の工程における処理として実施することを特徴とする、請求項3に記載したグラフェン接合体を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第一に、1-ブタノール中で天然黒鉛粒子の集まりにおける黒鉛結晶の層間結合を同時に破壊して、グラフェンの集まりを製造する。第二に、前記グラフェンの集まりを、1-ブタノール中に分散した第一のペーストを製造する。第三に、予め設定した複数種類の大きさからなり、かつ、複数種類の大きさからなる各々の溝を、同一の形状からなる複数の溝として第一の溝を形成する。第四に、前記第一の溝の大きさに応じて前記第一のペーストを注入する量を増やすとともに、同一の大きさからなる前記第一の溝に、予め設定した同一の量からなる前記第一のペーストを注入し、全てのグラフェン同士を摩擦圧接させ、前記第一の溝の大きさに応じた面積を持ち、かつ、前記第一の溝に注入した前記第一のペーストの量に応じた厚みからなる複数種類のグラフェン接合体が、予め設定した面積の大きさと厚みとからなる第一のグラフェン接合体として、前記複数の第一の溝の底面に形成され、該複数の第一のグラフェン接合体を前記複数の第一の溝の底面から引き剥がす。第五に、前記面積と厚みとが異なる複数種類の第一のグラフェン接合体について、同一の大きさと同一の厚みとからなるグラフェン接合体の集まりを、1-ブタノール中に分散させた複数種類の第二のペーストを製造する。第六に、前記第一の溝の大きさより大きく、かつ、予め設定した複数種類の大きさからなり、かつ、複数種類の大きさからなる溝を、同一の形状からなる複数の溝として第二の溝を形成する。第七に、第二の溝の大きさに応じて第二のペーストの注入量を変えるとともに、同一の大きさからなる複数の第二の溝の各々に、予め設定した同一の量からなる前記第二のペーストを全ての溝に注入し、全てのグラフェン接合体同士を摩擦圧接させ、予め設定した面積の大きさと厚みとからなる第二のグラフェン接合体を第二の溝の底面に形成し、該第二のグラフェン接合体を前記第二の溝の底面から引き剥がす。これによって、面積と厚みとが各々異なる第一のグラフェン接合体の集まりが製造される。さらに、前記第一のグラフェン接合体の面積より面積が大きく、厚みが厚い第二のグラフェン接合体が、面積と厚みとが各々異なる第二のグラフェン接合体の集まりとして製造される。この結果、予め設定した面積と、予め設定した厚みとからなるグラフェン接合体が、面積の大きさと厚みとが各々異なる極めて多くの種類からなるグラフェン接合体が製造できる。いっぽう、グラフェン接合体は様々な用途に用いられ、用途に応じてグラフェン接合体の面積と厚みとが異なる。本発明によって製造された面積の大きさと厚みとが各々異なる極めて多くの種類からなるグラフェン接合体は、様々な用途に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
グラフェン同士を接合したグラフェン接合体は、グラフェンの近い性質を持つ。グラフェンは、例えば、銀の熱伝導率の4.5倍に相当する熱伝導性と、銅の比抵抗の23倍に過ぎない電気導電性を兼備する。このため、グラフェン接合体は、例えば、面積が1cm×1cmより小さく、厚みが0.1μmより薄い電極や接点として、また、例えば、面積が0.5cm×10cmで、厚みが0.1μm前後の細長い配線パターンとして用いることができる。いっぽう、グラフェンの導電性によって、グラフェン接合体は、帯電防止被膜や電磁波遮蔽被膜として用いることができる。また、グラフェンの熱伝導性によって、グラフェン接合体は、放熱被膜として用いることができる。さらに、グラフェン接合体の表面は、グラフェンの厚みに相当する0.332nmに過ぎない平坦度を有するため、完全な平面に近く、潤滑性被膜として用いることができる。また、グラフェンが耐食性と耐熱性とに優れているため、グラフェン接合体を、耐食性被膜や耐熱性被膜としても用いることができる。さらに、グラフェンは、せん断弾性率が440GPaで、最も強靭な物質であるため、グラフェン接合体を、耐摩耗性被膜や非破壊性被膜として用いることができる。これらの被膜の面積は、例えば、面積が1m×1m近くに及び、厚みが1μmを超える場合もある。こうした被膜を基材や部品の表面に接合すれば、前記したグラフェン接合体の様々な性質が、基材や部品に付与できる。
このように、グラフェン接合体の用途が広いため、グラフェン接合体は、用途に応じた面積と厚みが必要になる。いっぽう、グラフェンのせん断弾性率が440GPaで、最も強靭な物質であるため、グラフェン接合体を切断することができない。従って、予め設定した面積の大きさと厚みとからなるグラフェン接合体を容易に製造する方法が必要になり、本発明に至った。
【0003】
ここで、本発明に関わりがある本発明者の先行出願特許を説明する。
第一の先行出願特許は、天然黒鉛粒子の集まりにおける黒鉛結晶の層間結合を同時に破壊して、グラフェンの集まりを製造する特許である(特許文献1)。すなわち、黒鉛の単結晶のみで構成され、黒鉛の結晶化が100%進み、さらに、最も安価な炭素材料である、天然の黒鉛結晶の塊を破砕し、該破砕した黒鉛結晶から黒鉛粒子の集まりのみを精製して選別した、鱗片状黒鉛粒子ないしは塊状黒鉛粒子の集まりを、2枚の平行平板電極の間隙に引き詰め、該2枚の平行平板電極に電界を印加し、該電界の印加によって、黒鉛粒子を形成する黒鉛結晶からなる基底面の層間結合の全てを同時に破壊し、基底面、すなわち、グラフェンを大量に製造する方法に関わる特許である。この方法に依れば、鱗片状黒鉛粒子ないしは塊状黒鉛粒子の僅か1gから、1.62×1013個に及ぶグラフェンの集まりが得られる。
第二の先行出願特許は、メタノール中で、天然黒鉛粒子の集まりにおける黒鉛結晶の層間結合を同時に破壊して、グラフェンの集まりを容器内に製造し、該容器に3方向の振動を繰り返し加え、グラフェンの扁平面同士がメタノールを介して重なり合った該グラフェンの集まりを、容器の底面に該底面の形状として形成し、この後、グラフェンの集まりの上方の平面を均等に圧縮し、グラフェン同士を同時に摩擦圧接によってグラフェン接合体を製造する方法に関わる特許である(特許文献2)。
第三の先行出願特許は、有機化合物のメタノール希釈液中にグラフェンの集まりを分散させ、該グラフェンの集まりを新たな容器に移し、この後、該新たな容器に3方向の振動加速度を繰り返し加え、前記グラフェン同士を前記有機化合物のメタノール希釈液を介して重なり合わせ、該グラフェン同士が前記有機化合物のメタノール希釈液を介して重なり合った該グラフェンの集まりからなるペーストを製造する方法に関わる特許である(特許文献3)。
【0004】
本発明では、1-ブタノール中で、天然黒鉛粒子の集まりにおける黒鉛結晶の層間結合を同時に破壊して、グラフェンの集まりを製造する点が、特許文献1と特許文献2と異なる。つまり、1-ブタノール中でグラフェンの集まりを製造することで、殆ど質量を持たないグラフェンが飛散しない。また、1-ブタノールを気化させる際に、黒鉛結晶から黒鉛粒子の集まりを精製する際に、鱗片状黒鉛粒子ないしは塊状黒鉛粒子の表面に付着した水分が1-ブタノールとともに気化する。これによって、グラフェンおよびグラフェン接合体が清浄化され、清浄化されたグラフェン同士を、ないしは、清浄化されたグラフェン接合体同士を重ね合わせ、接合強度が高いグラフェン接合体を製造する。
また、本発明は、予め設定した面積と厚みとからなるグラフェン接合体の集まりを、1-ブタノール中に均一に分散した第一のペーストを製造する方法に関わる。この予め設定した面積と厚みとからなるグラフェン接合体の集まりを1-ブタノール中に均一に分散したペーストを製造する点で、グラフェン接合体を製造する方法に関わる特許文献2と、有機化合物を介してグラフェン同士を重ね合わせたグラフェンの集まりからなるペーストを製造する方法に関わる特許文献3とは異なる。
さらに、本発明は、第一のペーストを用いて、第一のペーストを構成するグラフェン接合体より面積が大きく、厚みが厚く、かつ、予め設定した面積の大きさと厚みとからなる第二のグラフェン接合体を製造する方法に関わる。
つまり、黒鉛粒子における黒鉛結晶を破壊して製造したグラフェンは、黒鉛粒子が微細な粒子であるため、グラフェンの大きさは1-300μmと小さく、かつ、グラフェンの大きさのばらつきが大きい。また、グラフェンの厚みは、0.332nmと極めて薄い。このため、グラフェン同士を重ね合わせ、全てのグラフェン同士を同時に摩擦圧接し、グラフェン接合体を製造する際に、グラフェン接合体の面積が大きくなるほど、ないしは、グラフェン接合体の厚みが厚くなるほど、重なり合ったグラフェンの集まりの面積と厚みとが増えるため、全てのグラフェンを均等に圧縮し、全てのグラフェンを同時に摩擦圧接することが難しくなる。また、グラフェン接合体の集まりを重ね合わせ、全てのグラフェン接合体同士を同時に摩擦圧接し、さらに面積が大きい、さらに厚みが厚いグラフェン接合体を製造する際にも、製造するグラフェン接合体の面積が大きくなるほど、ないしは、製造するグラフェン接合体の厚みが厚くなるほど、重なり合ったグラフェン接合体の集まりの数が多くなり、全てのグラフェン接合体を均等に圧縮し、全てのグラフェン接合体を同時に摩擦圧接することが難しくなる。しかし、グラフェン接合体の面積と厚みとは、グラフェン接合体の用途に応じて大きく変わる。また、グラフェンが最も固い物質であるため、グラフェン接合体を切断することができない。従って、予め設定した面積の大きさと厚みとからなるグラフェン接合体を、面積と厚みとが各々異なる極めて多くの種類のグラフェン接合体を製造する方法を見出すことができれば、用途に応じてグラフェン接合体が選択できる。この理由から本発明に至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6166860号
【特許文献2】特願2019-107537
【特許文献3】特願2020-112197
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
2段落で説明したように、グラフェン接合体の用途が広いため、グラフェン接合体は、用途に応じて面積と厚みとが大きく異なる。また、グラフェンが最も固い物質であるため、グラフェン接合体を切断することができない。従って、面積と厚みとが互いに異なる多くの種類のグラフェン接合体が、予め設定した面積の大きさと厚みとからなるグラフェン接合体として製造できれば、用途に応じた面積と厚みとを有するグラフェン接合体が選択できる。これを実現するには、次の4つの課題がある。本発明が解決しようとする課題は、これら4つの課題である。
第一の課題は、1個1個に分離したグラフェンの集まりを、有機化合物中に分散したペーストを製造することである。これによって、グラフェン同士を接合してグラフェン接合体を製造する際に、グラフェンの集まりからグラフェン接合体を製造する際の原料となるペーストを、容器に注入することができる。
第二の課題は、前記のペーストを用いて、予め設定した面積の大きさと厚みとからなるグラフェン接合体を、面積と厚みとが互いに異なる多くの種類のグラフェン接合体として製造することである。これによって、さらに面積が大きく、さらに厚みが厚いグラフェン接合体の原料となるグラフェン接合体が製造されたことになる。
第三の課題は、第二の課題を解決させる方法で製造したグラフェン接合体の集まりを、有機化合物中に分散したペーストを製造することである。これによって、グラフェン接合体同士を接合し、さらに面積が大きく、さらに厚みが厚いグラフェン接合体を製造する際に、原料となるペーストが製造できる。
第四の課題は、前記のペーストを用いて、予め設定した面積の大きさと厚みとからなるグラフェン接合体を、さらに面積が大きく、厚みが厚く、互いに異なる多くの種類のグラフェン接合体として製造することである。この結果、面積と厚みとが互いに異なる多くの種類のグラフェン接合体から、予め設定した面積の大きさと厚みとからなるグラフェン接合体を選択できる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明における予め設定した面積の大きさと厚みとからなるグラフェン接合体の集まりを1-ブタノール中に均一に分散したペーストを製造する方法は、
2枚の平行平板電極からなる電極板対の一方の平行平板電極を第一の容器に配置させ、該一方の平行平板電極の表面に、鱗片状黒鉛粒子の集まりないしは塊状黒鉛粒子の集まりを平坦に引き詰め、さらに、前記第一の容器に1-ブタノールを注入し、前記一方の平行平板電極と前記鱗片状黒鉛粒子の集まりないしは前記塊状黒鉛粒子の集まりを、前記1-ブタノール中に浸漬させる、さらに、前記電極板対を構成する他方の平行平板電極板を、前記鱗片状黒鉛粒子の集まりないしは前記塊状黒鉛粒子の集まりを介して、前記一方の平行平板電極の上に重ね合わせ、前記2枚の平行平板電極からなる電極板対を前記1-ブタノール中に浸漬させる、この後、該電極板対の間隙に、前記鱗片状黒鉛粒子ないしは前記塊状黒鉛粒子を形成する黒鉛結晶からなる基底面の層間結合を破壊させることができる大きさからなる直流の電位差を印加する、これによって、該直流の電位差の大きさを前記電極板対の間隙の大きさで割った値に相当する電界が、前記鱗片状黒鉛粒子の集まりないしは前記塊状黒鉛粒子の集まりに印加され、該電界の印加によって、前記鱗片状黒鉛粒子ないしは前記塊状黒鉛粒子を形成する黒鉛結晶からなる基底面の層間結合の全てが同時に破壊され、前記電極板対の間隙に前記基底面からなるグラフェンの集まりが析出する、この後、前記電極板対の間隙を拡大し、さらに、該電極板対を1-ブタノール中で傾斜させ、さらに、前記第一の容器に左右、前後、上下の3方向の0.2-0.3Gからなる振動加速度を、各々の方向の振動加速度として5秒間ずつ加え、前記グラフェンの集まりを、前記電極板対の間隙から前記1-ブタノール中に移動させる、この後、前記第一の容器から前記電極板対を取り出す、1-ブタノールが注入された容器内にグラフェンの集まりを該1-ブタノール中に析出させる第一の工程と、
前記容器内の1-ブタノール中でホモジナイザー装置を稼働させ、前記1-ブタノールを介して前記グラフェンの集まりに衝撃波を1-2分間加え、該グラフェンの集まりを、前記1-ブタノール中で1枚1枚のグラフェンに分離させ、この後、前記容器から前記ホモジナイザー装置を取り出す、1-ブタノール中に1枚1枚のグラフェンが分離して分散した該グラフェンの集まりを作成する第二の工程と、
前記容器内の前記1-ブタノール中に分散された前記グラフェンの集まりを撹拌する、この後、予め設定した同一の形状と、予め設定した同一の深さとからなる複数の溝を第一の板材に形成し、前記1-ブタノール中に分散された前記グラフェンの集まりの予め設定した同じ量を、前記複数の溝の各々に注入し、さらに、前記第一の板材に対し、左右、前後、上下の3方向の0.3-0.5Gからなる振動加速度を、各々の方向の振動加速度を5秒間ずつ3回繰り返して加え、この後、上下方向の振動加速度を5秒間加える、これによって、前記溝に注入した1-ブタノール中に分散されたグラフェンの集まりが、前記1-ブタノール中で平面状に並ぶとともに、該平面状に並んだグラフェンの集まりが前記1-ブタノールを介して重なり合って積層し、該1-ブタノールを介して重なり合って積層したグラフェンの集まりが前記溝内に形成される、同一の形状と同一の深さからなる複数の溝に、1-ブタノール中でグラフェンの集まりが平面状に並ぶとともに、該平面状に並んだグラフェンが重なり合って積層した該グラフェンの集まりを前記溝の内部に形成する第三の工程と、
前記第一の板材を前記1-ブタノールの沸点に昇温し、該第一の板材の前記複数の溝から前記1-ブタノールを気化させ、該複数の溝の底面に、平面状に並んだグラフェンの集まりが重なり合って積層した該グラフェンの集まりを形成させる、この後、前記第一の板材の溝の側面と接触する位置に形成される第一の特徴と、前記第一の板材の溝の深さより長さが長い同一の長さを持つ第二の特徴と、前記第一の板材の前記複数の溝と同じ数からなる第三の特徴とを兼備する複数の突起を第二の板材に形成し、該第二の板材の複数の突起が、前記第一の板材の前記複数の溝に挿入するように、該第二の板材を前記第一の板材の上に重ね合わせ、該第二の板材の前記突起が形成された反対側の表面の全体を均等に圧縮し、前記複数の突起の先端が、前記複数の溝の底面に形成された前記平面状に並んだグラフェンの集まりが重なり合って積層した該グラフェンの集まりを圧縮する、これによって、該平面状に重なり合ったグラフェン同士が、該重なり合った面で摩擦圧接し、該摩擦圧接で接合したグラフェンの集まりからなるグラフェン接合体が前記複数の溝の底面に、該底面の形状として形成される、さらに、前記複数の溝が形成された前記第一の板材の底面に該当する複数の部位に、0.3-0.5Gからなる衝撃加速度を5秒間断続的に加え、前記複数の溝の底面に形成された前記グラフェン接合体を、該複数の溝の底面から引き剥がす、複数の溝の底面に、予め設定した面積の大きさと厚みとからなるグラフェン接合体を形成し、該グラフェン接合体を前記複数の溝の底面から引き剥がす第四の工程と、
前記複数の溝の底面に形成された前記グラフェン接合体の全てを、該複数の溝から取り出し、前記第一の板材に形成された前記複数の溝の体積の総和よりさらに体積が大きい第二の容器に、前記取り出したグラフェン接合体の全てを、予め決めた量からなる1-ブタノールとともに注入し、該グラフェン接合体の集まりを前記1-ブタノール中に浸漬させる、この後、前記第二の容器に対し、左右、前後、上下の3方向の振動加速度を、前記第三の工程で加えた2倍の大きさの振動加速度を、各々の方向の振動加速度として5秒間ずつ加え、前記グラフェン接合体の集まりが、前記1-ブタノール中に均一に分散したペーストを、前記第二の容器内に製造する、グラフェン接合体の集まりが1-ブタノール中に均一に分散したペーストを容器内に製造する第五の工程とからなり、
前記5つの工程における処理を連続して実施することで、予め設定した面積の大きさと厚みとからなるグラフェン接合体の集まりが、1-ブタノール中に均一に分散したペーストが製造される該ペーストの製造方法である。
【0008】
つまり、4段落で説明したように、黒鉛粒子が微細な粒子であるため、黒鉛粒子における黒鉛結晶を破壊して製造したグラフェンの大きさは、1-300μmと小さく、また、グラフェンの大きさのばらつきが大きい。さらに、グラフェンの厚みは、0.332nmと極めて薄い。従って、グラフェンのアスペクト比を、厚みに対する長径の比率とすると、アスペクト比は、3×10-9×10と極めて大きい。いっぽう、グラフェンを平面状に並べ、平面状に並んだグラフェンを重ね合わせて積層し、該グラフェンの集まりからなるグラフェン接合体を容器の底面に製造する際に、グラフェンが微細で大きさにばらつきがあり、厚みが極めて薄いため、全てのグラフェンの集まりを均等に圧縮し、重なり合ったグラフェン同士が重なり合った面で摩擦圧接し、これによって、グラフェン接合体を製造するには、グラフェン接合体の面積が大きくなるほど、また、厚みが厚くなるほど、グラフェンの量が多くなるため、全てのグラフェンを接合することが難しくなる。これに対し、面積が相対的に小さく、厚みが相対的に薄いグラフェン接合体を形成することは、グラフェンの量が少ないため、全てのグラフェンを接合することが可能になる。このグラフェン接合体の集まりを、平面状に並ばせるとともに、平面状に並んだグラフェン接合体を重ね合わせて積層し、重なり合ったグラフェン接合体同士を接合すれば、より面積が大きく、より厚みが厚いグラフェン接合体の形成が可能になる。従って、グラフェンの集まりを、平面状に並べるとともに、平面状に並んだグラフェンを重ね合わせて積層し、重なり合ったグラフェン同士を重なり合った面で摩擦圧接し、グラフェン接合体を製造することが可能なグラフェン接合体の面積と厚みを、予め明らかする必要がある。さらに、このグラフェン接合体の集まりを有機化合物に分散したペーストを作成し、このペーストを用い、より面積が大きく、より厚みが厚いグラフェン接合体を、予め設定した面積と厚みとからなるグラフェン接合体として製造できれば、グラフェン接合体の予め設定した面積の幅が広がり、予め設定した厚みの幅が広がる。こうした考えに基づき、本発明のペーストを製造した。
本発明は、予め設定した大きさと厚みとからなるグラフェン接合体の集まりが、1-ブタノール中に分散したペーストを製造する方法に関わる。本発明において、グラフェン接合体の大きさは、第一の板材の溝の底面積の大きさで決まる。また、グラフェン接合体の厚みは、第一の板材の溝に注入する1-ブタノールに分散したグラフェンの量で決まる。このため、ペーストを作成する前に、グラフェンの集まりを、平面状に並べるとともに、平面状に並んだグラフェンを重ね合わせて積層し、重なり合ったグラフェン同士を、重なり合った面で摩擦圧接し、グラフェン接合体が製造できるグラフェン接合体の面積の大きさと、厚みとを、予め実験によって明らかにする。この実験結果に基づき、第一の板材の溝の形状を決め、第一の板材の溝に注入するグラフェンの量を予め求める。
以上に説明したように、溝に注入したグラフェンの集まりを、平面状に並べるとともに、平面状に並んだグラフェンを重ね合わせて積層させ、この後、全てのグラフェンを均等に圧縮し、重なり合ったグラフェン同士が、重なり合った面で摩擦圧接し、摩擦圧接で接合したグラフェンの集まりからなるグラフェン接合体が製造される溝の大きさと、溝に注入するペーストの量を、予め実験によって明らかにする。これによって、予め設定した大きさと厚みとからなるグラフェン接合体が製造できる。
【0009】
本発明は次の5つの工程からなる。
第一の工程は、最初に、1-ブタノール中で黒鉛粒子の集まりからグラフェンの集まりを製造する。すなわち、2枚の平行平板電極対の間隙に引き詰められた鱗片状黒鉛粒子の集まりないしは塊状黒鉛粒子の集まりを、絶縁体である1-ブタノール中に浸漬させ、2枚の平行平板電極対に直流の電位差を印加させる。これによって、電位差を2枚の平行平板電極対の間隙の大きさで割った値に相当する電界が、鱗片状黒鉛粒子の集まりないしは塊状黒鉛粒子の集まりが存在する電極間隙に発生する。この電界は、前記した黒鉛粒子の全てに対し、黒鉛結晶からなる基底面の層間結合を破壊させるのに十分なクーロン力を、基底面の層間結合の担い手である全てのπ電子に同時に与える。これによって、π電子はπ軌道上の拘束から解放され、全てのπ電子がπ軌道から離れて自由電子となる。つまり、π電子に作用するクーロン力が、π軌道の相互作用より大きな力としてπ電子に与えられると、π電子はπ軌道の拘束から解放されて自由電子になる。この結果、基底面の層間結合の担い手である全てのπ電子が、π軌道上に存在しなくなり、黒鉛粒子の全てについて、黒鉛粒子を形成する黒鉛結晶からなる基底面の層間結合の全てが同時に破壊される。この結果、2枚の平行平板電極対の間隙に、黒鉛結晶からなる基底面の集まり、すなわち、グラフェンの集まりが瞬時に製造される。2枚の平行平板電極対が1-ブタノール中に浸漬しているため、2枚の平行平板電極対の間隙に析出したグラフェンの集まりは飛散しない。
なお、1-ブタノールは、導電率が9.12×10-7S/mで、比誘電率が17.5からなる絶縁体である。このため、1-ブタノール中に浸漬した2枚の平行平板電極間に、電位差を印加させると、2枚の平行平板電極の間隙に電界が発生する。
次に、グラフェンの集まりを、2枚の平行平板電極の間隙から1-ブタノール中に移動させる。このため、2枚の平行平板電極の間隙を、1-ブタノール中で拡大させ、さらに、1-ブタノール中で傾斜させ、この後、1-ブタノールが注入された容器に3方向の振動加速度を、各々の方向の振動加速度を5秒間ずつ加える。これによって、グラフェンの集まりが、2枚の平行平板電極の間隙から1-ブタノール中に移動する。この後、2枚の平行平板電極を容器から取り出す。なお、容器に加える振動加速度の大きさは、容器の大きさに応じて、0.2-0.3Gからなる振動加速度を加える。
第二の工程は、容器内の1-ブタノール中でホモジナイザー装置を稼働させ、1-ブタノールを介してグラフェンの集まりに衝撃波を1-2分間加え、該グラフェンの集まりを、1-ブタノール中で1枚1枚のグラフェンに分離させる。この後、容器からホモジナイザー装置を取り出す。つまり、2枚の平行平板電極対の狭い間隙にグラフェンが析出した際に、一部のグラフェンがグラフェン同士で重なり合うため、1-ブタノール中で、1個1個のグラフェンに分離する。このため、ホモジナイザー装置を1-ブタノール中で稼働させ、1-ブタノールを介してグラフェンの集まりに衝撃波を繰り返し加える。いっぽう、グラフェン同士の接合は、単純にグラフェン同士が重なり合っているだけで、グラフェン同士の接合力は極めて小さい。また、グラフェンは殆ど質量を持たない。いっぽう、1-ブタノールに加えられた衝撃波の一部が、1-ブタノールの分子振動に消費されるが、1-ブタノールが低粘度で低密度であるため、1-ブタノールの分子振動に消費される割合は少なく、多くの衝撃波のエネルギーがグラフェンの集まりに加わる。この衝撃波が、グラフェン同士が重なり合った部位に加わり、重なり合ったグラフェン同士が容易に分離し、分離したグラフェンの間隙に1-ブタノールが入り込む。この結果、グラフェンの集まりに衝撃波を繰り返し加えると、1-ブタノール中で1枚1枚のグラフェンに分離され、分離されたグラフェンは1-ブタノールで覆われる。なお、1枚1枚のグラフェンに分離できたか否かは、1-ブタノール中から複数の試料を取り出し、電子顕微鏡で試料を観察し、1枚1枚のグラフェンに分離できたか否かを判断する。この結果から、ホモジナイザー装置の稼働条件と稼働時間とを予め求める。
なお、超音波方式のホモジナイザー装置を用いると、グラフェンよりさらに1桁以上小さい極微細で莫大な数からなる気泡の発生と該気泡の消滅とが、超音波の振動周波数の振動周期に応じて、1-ブタノール中で連続的に繰り返され(この現象をキャビテーションという)、莫大な数からなる気泡がはじける際の衝撃波が、1-ブタノールを介してグラフェンの集まりに連続的に繰り返し加わる。グラフェン同士が重なり合った部位に衝撃波が加わると、重なり合ったグラフェン同士が分離し、分離したグラフェンの間隙に1-ブタノールが入り込み、短時間で1枚1枚のグラフェンに分離される。なお、超音波の振動周波数が低いほど、超音波の振動エネルギーは大きい。このため、20kHzの振動周波数を用いるとよい。
第三の工程は、容器内の1-ブタノール中に分散されたグラフェンの集まりを撹拌する。この後、予め設定した同一の底面の形状と予め設定した同一の深さとからなる複数の溝を有する第一の板材を用意し、該複数の溝の各々に、1-ブタノール中に分散されたグラフェンの集まりの予め設定した量からなる同じ量を注入する。なお、1-ブタノール中に分散されたグラフェンの集まりを溝に注入し、1-ブタノールを気化させた後に、グラフェンの集まりを均等に圧縮し、全てのグラフェンが摩擦圧接されるグラフェン接合体の大きさと厚みを、実験によって予め明らかにする。この実験結果から、グラフェン接合体の大きさに相当する溝を、第一の板材に形成する。また、グラフェン接合体の厚みを形成するのに必要な量からなる、1-ブタノール中に分散されたグラフェンの集まりを、第一の板材の溝に注入する。さらに、第一の板材に対し、左右、前後、上下の3方向の0.3-0.5Gからなる振動加速度を、各々の方向の振動加速度を5秒間ずつ3回繰り返して加え、この後、上下方向の振動加速度を5秒間加える。これによって、溝に注入した1-ブタノール中に分散されたグラフェンの集まりは、1-ブタノール中でグラフェンの集まりが平面状に並ぶとともに、平面状に並んだグラフェンの集まりが1-ブタノールを介して重なり合って積層した該グラフェンの集まりが、第一の板材の全ての溝に形成される。なお、加える振動加速度の大きさは、溝の大きさに応じて、0.3-0.5Gからなる振動加速度を加える。つまり、ホモジナイザー装置に依る処理で、全てのグラフェンは、低粘度で低密度の1-ブタノールで覆われ、1-ブタノール中に分散している。1-ブタノール中に分散しているグラフェンの集まりが注入されている溝に、3方向の振動加速度を5秒間ずつ3回繰り返して加えると、低粘度で低密度の1-ブタノールが、殆ど質量を持たないグラフェンを伴って振動加速度の方向に移動する。いっぽう、グラフェンのアスペクト比を、厚みに対する長径の比率とすると、アスペクト比は、3×10-9×10と極めて大きい。このため、グラフェンは、面を上にして、1-ブタノールと共に、振動加速度の方向に移動する。また、面を上にしてグラフェンが1-ブタノール中で再配列する動きが継続する。これによって、グラフェンの集まりが、1-ブタノール中で平面状に並ぶとともに、平面状に並んだグラフェンが重なり合って積層する現象が、1-ブタノール中で進む。この結果、グラフェンが1-ブタノール中で平面状に並ぶとともに、平面状に並んだグラフェンが重なり合って積層したグラフェンの集まりが、溝に形成される。この後、上下方向の振動加速度を5秒間加え、平面状に並んだグラフェンが重なり合って積層したグラフェンの集まりを、確実に溝に形成する。これによって、グラフェンの集まりが、1-ブタノール中で平面状に並ぶとともに、平面状に並んだグラフェンが1-ブタノールを介して重なり合って積層した該グラフェンの集まりの同じ量が、全ての溝に形成される。なお、第一の板材に加える振動加速度の大きさは、容器の大きさに応じて、0.3-0.5Gからなる振動加速度を加える。
なお、黒鉛粒子における黒鉛結晶を破壊して製造したグラフェンは、黒鉛粒子が微細な粒子であるため、グラフェンの大きさは1-300μmである。また、グラフェンの厚みは、0.332nmと極めて薄い。従って、グラフェンのアスペクト比を、厚みに対する長径の比率とすると、アスペクト比は、前記したように、3×10-9×10と極めて大きい。このため、1-ブタノール中に分散したグラフェンの集まりに3方向の振動を加えると、グラフェンは、面を上にして、1-ブタノールと共に、振動加速度の方向に移動する。また、面を上にしてグラフェンが1-ブタノール中で再配列する動きが継続する。この結果、グラフェンが1-ブタノール中で平面状に並ぶとともに、平面状に並んだグラフェンが重なり合って積層したグラフェンの集まりが、溝に形成される。
第四の工程は、第一の板材を1-ブタノールの沸点に昇温し、第一の板材の全ての溝から1-ブタノールを気化させる。この後、複数の溝の側面に接触する形状を有し、複数の溝の深さより長さが長く、同一の長さを持ち、複数の溝と同数からなる複数の突起を第二の板材に形成する。この第二の板材を、第一の板材の上に重ね合わせる。さらに、第二の板材の表面の全体を均等に圧縮し、複数の突起によって、複数の溝の底面に形成されたグラフェンの集まりを圧縮する。これによって、平面状に並んだグラフェンの集まりが重なり合って積層したグラフェンの集まりが圧縮され、重なり合ったグラフェン同士が該重なり合った面で摩擦圧接し、摩擦圧接で接合したグラフェンの集まりからなるグラフェン接合体が、複数の溝の底面に、該底面の形状として形成される。さらに、複数の溝が形成された第一の板材の複数の底面に該当する部位に、衝撃加速度を5秒間断続的に加え、複数の溝に形成されたグラフェン接合体を、複数の溝の底面から引き剥がす。なお、第一の板材に加える衝撃加速度の大きさは、第一の板材の大きさに応じて、0.3-0.5Gからなる振動加速度を加える。
つまり、2段落で説明したように、グラフェン接合体の用途が広いため、グラフェン接合体は、用途に応じた面積と厚みが必要になる。このため、本発明において、予め設定した大きさと、予め設定した厚みからなるグラフェン接合体を、溝の底面に形成し、このグラフェン接合体の集まりが1-ブタノールに分散したペーストを作成した。つまり、ペーストを構成するグラフェン接合体は、大きさが相対的に小さく、厚みが相対的に薄いため、溝の大きさが相対的に小さく、溝に注入する1-ブタノールに分散したグラフェンの量が相対的に少ない。このため、1-ブタノールを気化させた後に、溝の底面に存在するグラフェンの集まりを、均等に圧縮することができる。従って、大きさが小さく、厚みが薄く、かつ、予め設定した面積の大きさと、予め設定した厚みを有するグラフェン接合体として、グラフェン接合体を形成し、このグラフェン接合体の集まりを分散したペーストを作成し、ペーストの予め設定した量を、予め設定した底面積を持つ容器に注入し、ペーストを構成するグラフェン接合体同士を接合すれば、より面積が広く、より厚みが厚く、かつ、予め設定した面積の大きさと、予め設定した厚みのグラフェン接合体が形成できる。
第五の工程は、複数の溝の底面に形成したグラフェン接合体を、複数の溝から取り出し、第一の板材に形成された複数の溝の体積の総和よりさらに体積が大きい第二の容器に、1-ブタノールとともに注入し、グラフェン接合体の集まりを1-ブタノール中に浸漬させる。この後、第二の容器に対し、左右、前後、上下の3方向の振動加速度を、第三の工程で加えた2倍の大きさの振動加速度として、各々の方向の振動加速度として5秒間ずつ繰り返し加え、1-ブタノールに均一に分散したグラフェン接合体の集まりからなるペーストを、第二の容器内に形成する。
つまり、第四の工程で第一の板材の溝から取り出した面積が小さく、厚みが薄いグラフェン接合体は、グラフェンが殆ど質量を持たないため、グラフェン接合体の質量も極めて僅かである。また、グラフェンのアスペクト比は極めて大きいが、グラフェン接合体のアスペクト比はさらに大きい。こうしたグラフェン接合体の集まりが1-ブタノールに分散した第二の容器に振動加速度を加えると、第三の工程における現象と同様に、1-ブタノールを伴って、グラフェン接合体の集まりが、振動加速度の方向に繰り返し移動する。また、面を上にしてグラフェン接合体が再配列して1-ブタノールを介して重なり合う。この結果、グラフェン接合体の集まりが、1-ブタノール中で平面状に並ぶとともに、平面状に並んだグラフェン接合体が、1-ブタノールを介して重なり合って積層したグラフェン接合体の集まりが、第二の容器内に形成される。この結果、6段落に記載した第一と第二の課題が解決される。
なお、2段落で説明したように、グラフェン接合体の用途が広いため、グラフェン接合体は、用途に応じて面積と厚みとが大きく異なる。従って、第四の工程で作成したグラフェン接合体を、最も面積が小さく、最も厚みが薄いグラフェン接合体として使用できる。
以上に説明した5つの工程における処理は、いずれも簡単な処理である。また、1-ブタノールは、汎用的な工業用の有機溶剤である。さらに、黒鉛粒子も安価な工業用素材である。従って、本方法は、安価な黒鉛粒子と安価な1-ブタノールとを用い、極めて簡単な5つの工程における処理を連続して実施すると、1-ブタノールを介してグラフェン接合体同士が平面状に重なり合って積層したグラフェン接合体の集まりからなる安価なペーストが製造できる。
【0010】
1-ブタノール中でグラフェン接合体を平面状に並べるとともに、平面状に並んだグラフェン接合体が1-ブタノールを介して重なり合って積層した該グラフェン接合体の集まりからなるペーストは、次の作用効果をもたらす。
グラフェンより面積が大きく、厚みが厚いグラフェン接合体が、1-ブタノールに分散したペーストが作成できた。つまり、溝の内部に、グラフェンの集まりを、1-ブタノール中で平面状に並べるとともに、平面状に並んだグラフェンが1-ブタノールを介して重なり合って積層したグラフェンの集まりを形成し、1-ブタノールを気化させた後に、グラフェンの集まりを均等に圧縮すると、重なり合ったグラフェン同士が、該重なり合った面で摩擦圧接し、摩擦圧接したグラフェンの集まりからなるグラフェン接合体が製造できた。このグラフェン接合体の大きさと厚みとを、予め実験によって明らかにし、この結果に基づき、1-ブタノールに分散したグラフェンの集まりを注入する溝の底面積の大きさと、溝に注入する量を設定する。これによって、ペーストに分散させるグラフェン接合体の大きさと厚みとが決まる。このペーストを用いて、グラフェン接合体同士を接合する際にも、ペーストを注入する新たな溝の底面積の大きさと、新たな溝へのペーストの注入量とによって、グラフェン接合体の大きさと厚みが変わる。つまり、ペーストを注入する新たな溝の底面積の大きさを予め設定し、該溝に注入するペーストの量を予め設定することで、さらに面積が大きく、さらに厚みが厚いグラフェン接合体が、予め設定した面積の大きさと厚みとからグラフェン接合体として製造される。
【0011】
7段落に記載したペーストを製造する方法は、
7段落に記載した第三の工程における処理は、7段落に記載した第一の板材に設ける複数の溝が、円柱からなる複数の溝であり、該円柱からなる溝は、該溝の断面の大きさが、直径が4.99mmから1mmごとに19.99mmに及ぶ16種類の大きさからなる第一の特徴と、該溝の深さが、前記断面の大きさに比例した深さからなる1-16mmの深さである第二の特徴とを兼備する同一形状からなる複数の溝を、7段落に記載した第一の板材に形成する第一の処理を行い、また、該複数の溝の各々の溝に、7段落に記載した方法で製造したペーストを、同一の量として注入する量を、前記溝の断面の大きさに比例させて増やし、前記直径が4.99mmからなる円柱の溝には、10枚のグラフェンの集まりが重なり合って積層する量として注入し、前記直径が19.99mmからなる円柱の溝には、157枚のグラフェンの集まりが重なり合って積層する量として注入する第二の処理を行う、これら2つの処理を、7段落に記載した第三の工程において実施する、
7段落に記載した第四の工程における処理は、7段落に記載した第二の板材に形成する複数の突起が、円柱からなる複数の突起であり、該円柱からなる突起の形状は、前記第二の板材を前記第一の板材に重ね合わせた際に、該円柱の突起の側面が、前記円柱の溝の側面と接触する形状からなる第一の特徴と、該円柱の突起の長さが、前記円柱の溝の深さより1mm長い長さを持つ第二の特徴とを兼備する円柱からなる突起であり、該円柱からなる複数の突起を、7段落に記載した第二の板材に形成する第一の処理を行い、また、該第二の板材を前記第一の板材の上に重ね合わせ、該第二の板材の前記複数の突起が形成された反対側の表面の全体を均等に圧縮した際に、前記複数の突起の先端が、前記複数の円柱の溝の底面に形成された、平面状に並んだグラフェンの集まりが重なり合って積層したグラフェンの集まりを圧縮する、これによって、該平面状に重なり合ったグラフェン同士が、該重なり合った面で摩擦圧接し、該摩擦圧接で接合したグラフェンの集まりからなるグラフェン接合体が、前記円柱の溝の底面に該底面の形状として形成される第二の処理を行う、これら2つの処理を、7段落に記載した第四の工程において実施する、
前記第三の工程における2つの処理を、7段落に記載した第三の工程において実施することを特徴とし、また、前記第四の工程における2つの処理を、7段落に記載した第四の工程において実施することを特徴とする、7段落に記載したペーストを製造する方法である。
【0012】
つまり、2段落で説明したように、グラフェン接合体の用途が広いため、グラフェン接合体は、用途に応じた面積と厚みが必要になる。このため、7段落に記載したペーストを構成するグラフェン接合体は、予め設定した大きさと厚みとを持つ。さらに、ペーストを注入する溝の大きさに幅を持たせ、また、溝に注入するペーストの量にも幅を持たせると、面積の大きさと厚みが互いに異なる多くの種類のグラフェン接合体が、溝の底面に形成される。
すなわち、面積が小さく、厚みが薄い第一のグラフェン接合体でペーストを構成する場合は、7段落に記載した第一の板材に形成した溝が、狭い底面積からなり、溝に注入するペーストの量が少ない量である。1-ブタノールを気化した後に、溝の底面に形成されたグラフェンの集まりを摩擦圧接すると、面積が小さく、厚みが薄い第一のグラフェン接合体が溝に形成される。
次に、面積が前記した第一のグラフェン接合体と同じ面積で、厚みが第一のグラフェン接合体より薄い第二のグラフェン接合体でペーストを構成する場合は、溝の底面積が、第一のグラフェン接合体を形成する際の溝の底面積と同じで、溝に注入するペーストの量が、第一のグラフェン接合体を形成する際の量より少なくすれば、第一のグラフェン接合体と同じ面積で、厚みが第一のグラフェン接合体より薄い第二のグラフェン接合体が溝に形成される。
さらに、面積が第二のグラフェン接合体の面積より広く、厚みが第二のグラフェン接合体より厚い第三のグラフェン接合体でペーストを構成する場合は、溝の底面積が、第一のグラフェン接合体を形成する際の底面積より広く、溝に注入するペーストの量が、第二のグラフェン接合体を製造する際のペーストの量より多くすれば、面積が第二のグラフェン接合体より広く、厚みが第二のグラフェン接合体より厚い第三のグラフェン接合体が形成される。
また、面積が第三のグラフェン接合体の同じ面積で、厚みが第三のグラフェン接合体より薄い第四のグラフェン接合体でペーストを構成する場合は、溝の底面積が、第三のグラフェン接合体を形成する際の底面積と同じで、溝に注入するペーストの量を、第三のグラフェン接合体を形成する際の量より少なくすれば、面積が第三のグラフェン接合体と同じ面積で、厚みが第三のグラフェン接合体より薄い第四のグラフェン接合体が形成される。
このように、第一の板材に形成される溝の底面積と、溝に注入するペーストの量によって、第一の板材の溝の底面に形成されるグラフェン接合体の面積と厚みが決まる。従って、ペーストを作成する前に、グラフェン接合体の面積の大きさと、グラフェン接合体の厚みとを予め設定する。さらに、溝の大きさに幅を持たせ、また、溝に注入するペーストの量にも幅を持たせると、面積の大きさと、厚みが異なる多くの種類のグラフェン接合体が、溝の底面に形成される。このため、溝の底面の大きさと、溝に注入するペーストの量と、溝の底面に形成されるグラフェン接合体の大きさと厚みとの関係を、実験を繰り返し、予め明らかにした。
なお、第一の板材に形成する溝を円柱形状にした。この理由は、溝の底面の形状が円になり、円は中心から端部までの距離が同一である。これに対し、四角形は中心から端部までの距離は同一でなく、角部で最も長くなる。従って、底面が円からなる溝に注入したグラフェンの集まりを圧縮すると、グラフェンの集まりが均一に圧縮されやすい。これに対し、底面が四角形からなる溝に注入したグラフェンの集まりは、同一の形状の四角柱の突起で圧縮しても、角部で同一の圧縮応力が加わりにくいため、角部に近い領域では、グラフェン同士が摩擦圧接しない。つまり、黒鉛粒子における黒鉛結晶の基底面同士の層間結合を同時に破壊して製造したグラフェンの大きさが、1-300μmの幅である。このため、微細なグラフェンほど、角部に近い領域に存在するグラフェンが圧縮されにくくなる。このため、第一の板材の溝の底面に、円板形状からなるグラフェン接合体が形成される。
また、円柱の溝の円からなる断面の大きさを、直径が4.99mmから1mmごとに19.99mmまで増やし、16種類の大きさからなる円柱の溝にした。この理由は、溝の大きさに幅を持たせ、さらに、溝に注入するペーストの量にも幅を持たせると、面積の大きさと厚みが互いに異なる多くの種類のグラフェン接合体が、溝の底面に形成されるためである。
さらに、本発明のペーストを用いて、円柱の底面に該底面の形状として形成するグラフェン接合体は、グラフェン接合体の厚みに対する円板の面積の比を、グラフェン接合体のアスペクト比とすると、直径が4.99mmから1mmごとに19.99mmからなるグラフェン接合体のアスペクト比は、(6.0±0.1)×10の極めて大きな値を持つ。こうした極めてアスペクト比が大きい円板形状のグラフェン接合体の集まりを、1-ブタノールに分散した新たなペーストに、3方向の振動加速度を加え、さらに、上下方向の振動加速度を加えると、溝の内部において、グラフェン接合体は、1-ブタノール中で平面状に並び、平面状に並んだグラフェン接合体が重なり合って積層する。この後、1-ブタノールを気化させると、重なり合ったグラフェン接合体の集まりを、溝の底面に該底面の形状として形成する。このグラフェン接合体の集まりを突起で均等に圧縮すると、グラフェン接合体同士が、重なり合った面で摩擦圧接する。これによって、より面積が大きく、厚みが厚いグラフェン接合体が、溝の底面に該底面の形状として形成される。
すなわち、16段落以降で、円板形状からなるグラフェン接合体の集まりが1-ブタノール中に分散された本発明のペーストを四角柱の溝に注入し、ペーストを構成するグラフェン接合体を摩擦圧接し、より面積が大きく、厚みが厚いグラフェン接合体を製造することを説明する。この際に、ペーストを注入する四角柱の溝の断面の四角形の形状は、円板形状からなるグラフェン接合体の直径の長さに近い整数値に、1倍から1倍ごとに10倍までの倍数を掛けた10種類の長さとして、一方の辺と他方の辺の長さに、10種類の長さの幅を持たせ、10種類の長さの幅を持つ2つの辺の互いに異なる辺の組み合わせによって、四角形の一方の辺と他方の辺の長さを構成する溝の形状とする。いっぽう、直径が4.99mmから1mmごとに19.99mmからなる円板形状のグラフェン接合体は、四角形の溝の辺の長さが、円板からなるグラフェン接合体の直径の整数倍に近い。このため、四角形の溝に注入したペーストに、3方向の振動加速度を加え、さらに、上下方向の振動加速度を加えると、溝の内部において、グラフェン接合体は、1-ブタノール中で平面状に並び、平面状に並んだグラフェン接合体が1-ブタノールを介して重なり合って積層することが、実験の結果で分かった。この結果は、円板形状のグラフェン接合体が、四角形の溝の底面に平面状に並ぶことに依る。この平面状に並んだグラフェン接合体が、1-ブタノールを介して重ね合って積層する。さらに、1-ブタノールを気化すると、四角形の溝の底面に、平面状に並んだグラフェン接合体が積層したグラフェンの集まりが形成される。このグラフェン接合体の集まりを均等に圧縮すると、重なり合った面でグラフェン接合体同士が摩擦圧接し、全てのグラフェン接合体が面で摩擦圧接するため、グラフェン接合体同士の接合力が増大することも分かった。
ところで、本発明においては、1-ブタノール中に分散されたグラフェンの集まりからなるペーストを、円柱の溝に注入し、円柱の溝に3方向の振動加速度を加え、さらに、上下方向の振動加速度を加え、1-ブタノールを気化させた後に、グラフェンの集まりを円柱の突起によって均等に圧縮し、円柱の溝の底面にグラフェン接合体を形成する。このグラフェン接合体の面積と厚みと、円柱の溝の大きさと、溝に注入するペーストの量との関係を、実験を繰り返すことで明らかにした。
すなわち、深さが1mmで、断面積の直径が4.99mmからなる円柱の溝にペーストを注入し、円柱の溝に、3方向の振動加速度を加え、さらに、上下方向の振動加速度を加え、1-ブタノールを気化させた後に、円柱の溝の底面に形成されたグラフェンの集まりを、長さが2mmで、断面積の直径が4.99mmからなる円柱の突起で圧縮した。この後、溝からグラフェンの集まりを引き剥がし、グラフェンの集まりを、再度同じ大きさの圧縮応力を加える実験を繰り返した。この結果、取り出したグラフェンの集まりに、再度圧縮応力を加えた際に、摩擦圧接するグラフェンの数が10枚を超えると、グラフェンの集まりが変形する場合があった。この結果から、深さが1mmで、直径が4.99mmからなる円柱の溝に、全てのグラフェンが確実に摩擦圧接するグラフェンの枚数を最大で10枚として、ペーストを注入することにした。従って、摩擦圧接するグラフェンの枚数が10枚より少ないペーストの注入量の場合は、全てのグラフェンが確実に摩擦圧接する。この結果、深さが1mmで、直径が4.99mmからなる円柱の溝に、ペーストを注入する量を変えると、直径が4.99mmからなる円板で、厚みが3.3nm以下の厚みからなるグラフェン接合体が溝に形成される。なお、直径が5mmより小さい円板からなるグラフェン接合体の用途がないため、溝の最小形状を、直径が4.99mmからなる円柱の溝として設定した。
次に、溝の断面積の大きさが、直径が4.99mmから1mmごとに19.99mmまでの幅からなる円柱の溝にペーストを注入する量を、円柱の溝の断面積の大きさに比例させて増やした。このため、円柱の溝の深さを、円柱の断面積の大きさに比例した1-16mmに設定した。これによって、ペーストを溝に注入する量は、円柱の溝の断面積の大きさに比例して増える。また、円柱からなる突起の長さを、円柱の溝の深さより1mm長くし、円柱からなる突起が、円柱からなる溝の底面に存在するグラフェンの集まりを、均等に圧縮させた。
従って、直径が5.99mmからなる円柱の溝を、深さを1.4mmとして加工し、円柱からなる突起の長さを2.4mmとして加工した。直径が6.99mmからなる円柱の溝を、深さを2.0mmとして加工し、円柱からなる突起の長さを3.0mmとして加工した。直径が7.99mmからなる円柱の溝を、深さを2.6mmとして加工し、円柱からなる突起の長さを3.6mmとして加工した。直径が8.99mmからなる円柱の溝を、深さを3.2mmとして加工し、円柱からなる突起の長さを4.2mmとして加工した。直径が9.99mmからなる円柱の溝を、深さを4.0mmとして加工し、円柱からなる突起の長さを5.0mmとして加工した。直径が10.99mmからなる円柱の溝を、深さを4.8mmとして加工し、円柱からなる突起の長さを5.8mmとして加工した。直径が11.99mmからなる円柱の溝を、深さを5.5mmとして加工し、円柱からなる突起の長さを6.5mmとして加工した。直径が12.99mmからなる円柱の溝を、深さを6.8mmとして加工し、円柱からなる突起の長さを7.8mmとして加工した。直径が13.99mmからなる円柱の溝を、深さを7.8mmとして加工し、円柱からなる突起の長さを8.8mmとして加工した。直径が14.99mmからなる円柱の溝を、深さを9.0mmとして加工し、円柱からなる突起の長さを10.0mmとして加工した。直径が15.99mmからなる円柱の溝を、深さを10.2mmとして加工し、円柱からなる突起の長さを11.2mmとして加工した。直径が16.99mmからなる円柱の溝を、深さを11.6mmとして加工し、円柱からなる突起の長さを12.6mmとして加工した。直径が17.99mmからなる円柱の溝を、深さを13.0mmとして加工し、円柱からなる突起の長さを14.0mmとして加工した。直径が18.99mmからなる円柱の溝を、深さを14.4mmとして加工し、円柱からなる突起の長さを15.4mmとして加工した。直径が19.99mmからなる円柱の溝は、深さを16.0mmとして加工し、円柱からなる突起の長さを17.0mmとして加工した。
以上に説明した15種類の大きさからなる円柱の溝に、ペーストを注入し、3方向の振動加速度を円柱の溝に加え、さらに、上下方向の振動加速度を加え、この後、1-ブタノールを気化させた。さらに、円柱の溝の底面に存在するグラフェンの集まりを、円柱の溝と同一形状からなり、長さが円柱の溝の深さより1mm長い円柱の突起によって圧縮した。この後、溝からグラフェンの集まりを引き剥がし、グラフェンの集まりを、再度同じ大きさの圧縮応力を加えた。こうした実験を繰り返し、15種類の大きさからなる円柱の溝に形成できるグラフェン接合体の厚みを特定した。
すなわち、直径が5.99mmの溝の底面には14枚のグラフェンが重なり、直径が6.99mmの溝の底面には19枚のグラフェンが重なり、直径が7.99mmの溝の底面には25枚のグラフェンが重なり、直径が8.99mmの溝の底面には32枚のグラフェンが重なり、直径が9.99mmの溝の底面には39枚のグラフェンが重なり、直径が10.99mmの溝の底面には47枚のグラフェンが重なり、直径が11.99mmの溝の底面には56枚のグラフェンが重なり、直径が12.99mmの溝の底面には66枚のグラフェンが重なり、直径が13.99mmの溝の底面には77枚のグラフェンが重なり、直径が14.99mmの溝の底面には88枚のグラフェンが重なり、直径が15.99mmの溝の底面には100枚のグラフェンが重なり、直径が16.99mmの溝の底面には113枚のグラフェンが重なり、直径が17.99mmの溝の底面には127枚のグラフェンが重なり、直径が18.99mmの溝の底面には142枚のグラフェンが重なり、直径が19.99mmの溝の底面には157枚のグラフェンが重なった。これらの結果は、円板からなるグラフェン接合体の面積に比例して、グラフェンの積層数が増加した。このため、円柱の溝の底面に形成されるグラフェン接合体のアスペクト比が、グラフェン接合体の大きさに関わらず、ほぼ同一の値を持つことになった。
以上の実験結果から、第一の板材の溝の底面に形成されるグラフェン接合体は、様々な面積と厚みを持つことができる。ここで、様々な面積と厚みとからなるグラフェン接合体を製造する際に、直径が4.99mmからなる円板で、厚みが10枚のグラフェンが摩擦圧接したグラフェン接合体を、第一のグラフェン接合体として用い、様々な面積と厚みとからなるグラフェン接合体を製造する例を説明する。面積が第一のグラフェン接合体と同一で、厚みが第一のグラフェン接合体より薄い第二のグラフェン接合体の製造は、第一のグラフェン接合体を形成する際に、直径4.99mmからなる円柱の溝に、1-ブタノール中に分散したグラフェンの集まりを注入する量を減らせば、第二のグラフェン接合体が形成される。また、底面積が第二のグラフェン接合体より広く、厚みが第二のグラフェン接合体より薄い第三のグラフェン接合体の製造は、直径5.99mmからなる溝に、第一のグラフェン接合体を形成する際に、溝に注入した1-ブタノール中に分散したグラフェンの集まりの量を注入すれば、第三のグラフェン接合体が形成される。さらに、面積が第三のグラフェン接合体と同一で、厚みが第三のグラフェン接合体より厚い第四のグラフェン接合体の製造は、直径5.99mmからなる溝に、第一のグラフェン接合体を形成する際に、溝に注入した1-ブタノール中に分散したグラフェンの集まりの量の1.5倍の量を、直径5.99mmからなる溝に注入すれば、第四のグラフェン接合体が形成される。このように、第一の板材に形成する溝の底面積と、溝に注入する1-ブタノールに分散されたグラフェンの量と、第一の板材の溝の底面に形成されるグラフェン接合体の面積と厚みとの関係を、事前に実験で明らかにし、予め設定した面積と厚みとからなるグラフェン接合体を、溝の底面に形成した。
これらの実験結果から、第一の板材に設ける同一の底面形状からなる複数の溝を、最小の底面積の大きさを、直径が4.99mmからなる円とし、最大の底面積の大きさを、直径が19.99mmからなる円とした。また、複数の溝に同一の量からなる1-ブタノール中に分散したグラフェンの集まりを注入する量を、溝の断面積の大きさに比例して増やし、最小の直径が4.99mmの溝には、10枚のグラフェンの集まりが重なり合う量として溝に注入し、最大の直径が19.99mmの溝には、157枚のグラフェンの集まりが重なり合う量として溝に注入する。これによって、第一の板材の溝の底面に形成されるグラフェン接合体の面積と厚みとの双方に幅がもたらされる。
また、第一の板材に設ける溝の数は、例えば、溝の大きさが、直径が4.99mmからなる円である場合は900個を設ける。溝を等間隔に設けると、溝の底面積の大きさが、直径が4.99mmからなる円である場合は、第一の板材の横方向に30個の溝を設け、縦方向に30個の溝を設けることになり、第一の板材の形状は31cm×31cmになる。
第一の板材の溝に形成されたグラフェン接合体を溝から引き剥がし、全てのグラフェン接合体を、予め決めた量からなる1-ブタノールとともに、第一の板材に形成された全ての溝の体積の総和よりさらに体積が大きい第二の容器に注入し、グラフェン接合体の集まりを1-ブタノール中に浸漬させた。この後、第二の容器に振動加速度を加え、第二の容器内に、1-ブタノールを介してグラフェン接合体が平面状に重なり合って積層した該グラフェン接合体の集まりからなるペーストを作成した。
なお、第一の板材の溝が、直径4.99mmからなる円柱で、深さが1mmからなり、900個の溝が第一の板材に設けられた場合は、溝の総体積は70.65cmになる。直径が4.99mmからなる円の900個が、平面状に接触して並べると、706.5cmの面積を占める。前記の70.65cmからなる体積を、706.5cmの面積で割ると、10cmになる。従って、第二の容器の体積は、直径が4.99mmからなる円板の900個のグラフェン接合体を、1-ブタノールに分散させるのに十分の体積になる。
ところで、第一の板材の溝から取り出したグラフェン接合体は、面積が小さく、厚みが薄く、また、グラフェンが殆ど質量を持たないため、グラフェン接合体の質量も極めて僅かである。さらに、グラフェンのアスペクト比を、厚みに対する長径の比率とすると、アスペクト比は、3×10-9×10になる。これに対し、グラフェン接合体のアスペクト比を、厚みに対する円板の面積の比とすると、直径が4.99mmから1mmごとに19.99mmからなる円板のグラフェン接合体のアスペクト比は、(6.0±0.1)×10と極めて大きな値を持つ。こうしたグラフェン接合体の集まりが1-ブタノールに分散した容器に、第三の工程で加えた振動加速度の2倍の振動加速度を加えると、第三の工程における現象と同様に、1-ブタノールを伴って、グラフェン接合体の集まりが、振動加速度の方向に移動する。また、面を上にしてグラフェン接合体が再配列して重なり合う。この結果、グラフェン接合体が1-ブタノールを介して平面状に並び、平面状に並んだグラフェン接合体が重なり合って積層したグラフェン接合体の集まりが、第二の容器に形成される。
【0013】
7段落に記載した第三の工程における処理と、7段落に記載した第四の工程における処理とを、11段落に記載した処理方法によって実施し、かつ、7段落に記載した第一の工程と、第二の工程と、第五の工程とにおける処理を、7段落に記載した処理方法によって実施し、これによって、7段落に記載したペーストを製造し、該ペーストを用い、該ペーストを構成するグラフェン接合体より面積が大きく、厚みが厚く、かつ、予め設定した面積の大きさと厚みとからなるグラフェン接合体を製造する方法は、
予め設定した形状からなる第一の特徴と、予め設定した深さからなる第二の特徴と、11段落に記載した円柱の溝より広い底面積からなる第三の特徴を兼備する溝を第三の板材に形成し、該第三の板材の溝に、11段落に記載した方法で製造したペーストの予め設定した量を注入し、該第三の板材に対し、左右、前後、上下の3方向の振動加速度を、7段落に記載した第三の工程で加えた振動加速度より大きな振動加速度として、各々の方向の振動加速度を5秒間ずつ3回繰り返して加え、さらに、上下方向の振動加速度を、7段落に記載した第三の工程で加えた振動加速度より大きな振動加速度として5秒間加える、これによって、前記ペーストを構成するグラフェン接合体の集まりが、平面状に並ぶとともに、該平面状に並んだ該グラフェンの集まりが重なり合って積層した該グラフェン接合体の集まりが、前記第三の板材の溝の底面に該底面の形状として形成される第一の工程と、
該第三の板材を、前記ペーストを構成する1-ブタノールの沸点に昇温し、該第三の板材の溝から前記1-ブタノールを気化させ、該第三の板材の溝の底面に、平面状に重なり合って積層したグラフェン接合体の集まりを形成する、さらに、該第三の板材の溝の側面と接触する位置に形成される第一の特徴と、前記第三の板材の溝の深さより長さが長い第二の特徴とを兼備する突起を第四の板材に形成し、該第四の板材の突起が、前記第三の板材の溝に挿入されるように、該第四の板材を前記第三の板材の上に重ね合わせ、該第四の板材の前記突起が形成された反対側の表面の全体を均等に圧縮し、前記突起の先端が、前記溝の底面に形成された前記平面状に重なり合って積層したグラフェン接合体の集まりを圧縮する、これによって、該平面状に重なり合ったグラフェン接合体同士が、該重なり合った面で摩擦圧接し、該摩擦圧接で接合したグラフェン接合体の集まりからなるグラフェン接合体が、前記溝の底面に、該底面の形状として形成される、摩擦圧接で接合したグラフェン接合体の集まりからなるグラフェン接合体を、溝の底面に、該底面の形状として形成する第二の工程と、
前記溝が形成された前記第三の板材の底面に該当する部位に、7段落に記載した第四の工程で加えた衝撃加速度より大きな衝撃加速度を5秒間断続的に加え、前記溝に形成された前記グラフェン接合体を、該溝の底面から引き剥がす、溝の底面からグラフェン接合体を引き剥がす第三の工程とからなり、
前記3つの工程における処理を連続して実施することで、7段落に記載した第三の工程における処理と、7段落に記載した第四の工程における処理とを、11段落に記載した処理方法によって実施し、かつ、7段落に記載した第一の工程と、第二の工程と、第五の工程とにおける処理を、7段落に記載した処理方法によって実施し、これによって、7段落に記載したペーストを製造し、該ペーストを用い、該ペーストを構成するグラフェン接合体より面積が大きく、厚みが厚く、かつ、予め設定した面積の大きさと厚みとからなるグラフェン接合体を製造する方法である。
【0014】
つまり、2段落で説明したように、グラフェン接合体の用途が広いため、グラフェン接合体は、用途に応じて面積と厚みとが大きく異なる。従って、予め設定した面積の大きさと厚みとからなるグラフェン接合体を製造することが求められる。このため、7段落に記載した第三の工程における処理と、7段落に記載した第四の工程における処理とを、11段落に記載した方法で実施し、7段落に記載した第一の工程と、第二の工程と、第五の工程とにおける処理を、7段落に記載した方法で実施して製造したペーストを用い、該ペーストを構成するグラフェン接合体より面積が大きく、かつ、厚みが厚く、かつ、予め設定した面積の大きさと厚みとからなるグラフェン接合体を製造することとした。
すなわち、面積が広いグラフェン接合体、ないしは、厚みが厚いグラフェン接合体を製造する際に、平面状に重なり合って積層した全てのグラフェンを均等に圧縮し、グラフェン同士が摩擦圧接したグラフェン接合体を製造することは、グラフェン接合体の面積が大きくなるほど、また、厚みが厚くなるほど、全てのグラフェンを均等に圧縮することが難しくなる。これに対し、本発明で用いるペーストを構成するグラフェン接合体は、グラフェンより面積が大きく、かつ、厚みも厚い。このため、本発明で用いるグラフェン接合体の数は、11段落に記載した方法でグラフェン接合体を製造する際に用いるグラフェンの数より少ない。従って、全てのグラフェン接合体を均等に圧縮することが容易になる。この考えから、7段落に記載した第三の工程における処理と、7段落に記載した第四の工程における処理とを、11段落に記載した方法で実施し、7段落に記載した第一の工程と、第二の工程と、第五の工程とにおける処理を、7段落に記載した方法で実施して製造したペーストを用い、11段落に記載した第一の板材の円柱からなる複数の溝より底面積が広い第三の板材の溝に、予め設定した量からなるペーストを注入し、第三の板材の溝の底面に、ペーストを構成するグラフェン接合体より面積が大きく、かつ、厚みが厚いグラフェン接合体を、製造することとした。なお、グラフェン接合体同士を平面状に重ね合わせて積層し、重なり合ったグラフェン接合体同士を、該重なり合った面で摩擦圧接させ、グラフェン接合体を製造する、グラフェン接合体の面積の大きさと厚みは、12段落に記載した方法と同様に、多くの実験によって予め明らかにする。この実験結果に基づき、第三の板材の溝の底面の大きさを予め決め、溝に注入するペーストの量を予め決める。なお、全てのグラフェン接合体の集まりが同時に摩擦圧接し、より面積が大きく、厚みが厚いグラフェン接合体が製造できたか否かは、第三の板材の溝に形成したグラフェン接合体を溝から剥ぎ取り、平面状に重なり合って積層したグラフェン接合体の集まりに加えた同じ大きさの圧縮応力を、再度、グラフェン接合体に加える。この際に、グラフェン接合体が変形しないことを確認し、全てのグラフェン接合体の集まりが同時に摩擦圧接し、より面積が大きく、厚みが厚いグラフェン接合体が製造できたと判断した。
本発明で製造するグラフェン接合体の面積と厚みは、ペーストを構成するグラフェン接合体の面積と厚みに依存する。このため、全てのグラフェン接合体の集まりが同時に摩擦圧接し、グラフェン接合体が製造できる面積の大きさと、厚みとを、予め実験によって明らかにする。この実験結果に基づき、第三の板材に設ける溝の底面積の大きさと、第三の板材の全ての溝に注入するペーストの量を事前に明らかにする。
【0015】
本発明は次の3つの工程からなる。
第一の工程は、次の2つの処理からなる。同一の形状と、同一の深さとからなり、底面積が11段落に記載した円柱からなる第一の板材の溝の底面積より広い底面積からなる溝を形成した第三の板材を事前に用意する。この溝に、7段落に記載した第三の工程における処理と、7段落に記載した第四の工程における処理とを、11段落に記載した方法で実施し、7段落に記載した第一の工程と、第二の工程と、第五の工程とにおける処理を、7段落に記載した方法で実施して製造したペーストの予め設定した量を注入する。この後、第三の板材に対し、左右、前後、上下の3方向の振動加速度を、7段落に記載した第五の工程で加えた振動加速度より大きな振動加速度として加え、最後に上下方向の振動加速度を、7段落に記載した第五の工程で加えた振動加速度より大きな振動加速度として加える。これによって、第三の板材の溝の底面に、ペーストの集まりが底面の形状として形成される。
第二の工程は、ペーストを構成するグラフェン接合体同士を接合し、より面積が大きく、厚みが厚いグラフェン接合体を第三の板材の溝の底面に、該底面の形状として形成する。このため、第三の板材の溝の側面と接触する位置に形成する第一の特徴と、第三の板材の溝の深さより長さが長い第二の特徴とを兼備する突起が形成された第四の板材を予め用意する。この後、次の3つの処理を行う。第一の処理は、第三の板材を1-ブタノールの沸点に昇温し、第三の板材の溝から1-ブタノールを気化させる。この際、第一のペーストに存在する水分が、1-ブタノールとともに気化し、グラフェン接合体の集まりが清浄化される。第二の処理は、第四の板材の突起が、第三の板材の溝に挿入するように、第四の板材を第三の板材の上に重ね合わせ、第四の板材の突起が形成された反対側の表面の全体を均等に圧縮する。この際、突起の先端が、溝の底面に形成された平面状に重なり合って積層したグラフェン接合体の集まりを圧縮し、これによって、平面状に重なり合ったグラフェン接合体同士が、該重なり合った面で摩擦圧接し、該摩擦圧接で接合したグラフェン接合体の集まりからなるグラフェン接合体が、溝の底面に、底面の形状として形成される。この結果、ペーストを構成するグラフェン接合体より面積が大きく、厚みが厚いグラフェン接合体が、第三の板材の溝の底面に、底面の形状として形成される。
第三の工程は、第三の板材の溝の底面に形成されたグラフェン接合体を、第三の板材の底面から引き剥がす工程である。すなわち、溝が形成された第三の板材の底面に該当する部位に、7段落に記載した第四の工程で加えた衝撃加速度より大きな衝撃加速度を繰り返し加え、溝に形成されたグラフェン接合体を、溝の底面から引き剥がす。
以上に説明した3つの工程は、いずれも簡単な処理からなる。従って、本方法は、7段落に記載した方法で製造したペースト構成するグラフェン接合体より面積が大きく、かつ、厚みが厚いグラフェン接合体を安価に製造できる。
なお、製造したグラフェン接合体に、全体を覆う板材を被せ、該板材に第二の工程の第二の処理で加えた圧縮応力と同じ大きさの圧縮応力を再度加え、製造したグラフェン接合体が変形しないことを確認し、全てのグラフェン接合体が摩擦圧接していると判断した。
この結果、第三の板材の溝の底面積の大きさと、第三の板材の溝に注入するペーストの量に応じた面積と厚みとを有するグラフェン接合体が製造できる。従って、第三の板材の溝の底面の面積が広ければ、より広い面積のグラフェン接合体が製造でき、また、第三の板材の溝に注入するペーストの量が多ければ、より厚みの厚いグラフェン接合体が製造できる。これとは反対に、第三の板材の溝の底面の面積が狭ければ、より面積が小さいグラフェン接合体が製造でき、また、第三の板材の溝に注入するペーストの量が少なければ、より厚みが薄いグラフェン接合体が製造できる。
このため、グラフェン接合体同士を平面状に重ね合わせて積層し、平面状に重なり合ったグラフェン接合体同士を摩擦圧接し、摩擦圧接で接合したグラフェン接合体の集まりからなるグラフェン接合体は、製造できるグラフェン接合体の面積の大きさと厚みとを、12段落に記載した方法と同様な方法で、予め実験によって明らかにする。この実験結果に基づき、第三の板材の溝の底面の大きさを決め、第三の板材の溝に注入するペーストの量を予め求めておく。これらの検討結果に基づき、7段落に記載した第三の工程における処理と、7段落に記載した第四の工程における処理とを、11段落に記載した方法で実施して製造したペーストを用いて、本発明におけるグラフェン接合体を作成する。
従って、本発明におけるグラフェン接合体の製造は、製造するグラフェン接合体の面積の大きさと厚みとを予め設定し、このグラフェン接合体が製造できる第三の板材の溝の底面の大きさと、溝に注入するペーストの量を事前に実験によって明らかにする。これらの結果に基づいて、7段落に記載した第三の工程における処理と、7段落に記載した第四の工程における処理とを、11段落に記載した方法で実施し、7段落に記載した第一の工程と、第二の工程と、第五の工程とにおける処理を、7段落に記載した方法で実施して製造したペーストを用いて、本発明におけるグラフェン接合体を作成する。これによって、6段落に記載した第三と第四の課題が解決される。このため、6段落に記載した4つの課題の全てが解決される。
【0016】
13段落に記載したグラフェン接合体を製造する方法は、
13段落に記載した第三の板材に設ける溝が、四角柱からなる溝であり、該四角柱からなる溝の断面の四角形の一方の辺と他方の辺との長さを、11段落に記載した円板形状からなるグラフェン接合体の直径の長さに近い整数値の長さに、1倍から1倍ごとに10倍までの倍数を掛けた長さとし、前記一方の辺と前記他方の辺の長さに、10種類の長さの幅を持たせ、該10種類の長さの幅を持つ2つの辺の互いに異なる辺の組み合わせによって、前記四角形の一方の辺と他方の辺の長さを構成し、該四角柱の溝の深さを、11段落に記載した円板からなるグラフェン接合体を形成する際の円柱の溝の深さに、前記四角形からなる溝の底面に、前記円板からなるグラフェン接合体を平面状に並べる該グラフェン接合体の数を掛け合わせた深さとし、該四角形の溝を13段落に記載した第三の板材に形成する第一の処理と、
該四角柱の溝に、11段落に記載した方法で製造したペーストを注入する量を、前記四角柱の溝に注入されたグラフェン接合体同士が重なり合って積層し、該積層したグラフェン接合体の集まりが、最大で20層まで積層する量として前記ペーストを注入する第二の処理を行う、
これら2つの処理を、13段落に記載した第一の工程における処理として実施することを特徴とする、13段落に記載したグラフェン接合体を製造する方法である。
【0017】
つまり、2段落で説明したように、グラフェン接合体の用途が広いため、グラフェン接合体は、用途に応じた面積と厚みが必要になる。このため、13段落において、11段落に記載したペーストを用い、該ペーストを構成する円板からなるグラフェン接合体より面積が広く、厚みが厚いグラフェン接合体を製造する際に、11段落に記載した円柱からなる溝より底面積が広い四角柱の同一形状からなる複数の溝に、同一の量のペーストを注入し、1-ブタノールを気化させ、この後、グラフェン接合体同士を摩擦圧接させた。この際に、予め設定した面積と厚みを持つグラフェン接合体を製造するため、実験の結果に基づき、四角柱の溝の断面積の大きさを予め設定し、また、溝に注入するペーストの量を予め設定した。
すなわち、11段落に記載したペーストを構成するグラフェン接合体は、最も小さいグラフェン接合体が、直径が4.99mmからなる円板で、厚みは3.3nm以下である。最も大きいグラフェン接合体が、直径が19.99mmからなる円板で、厚みは52nm以下である。これら16種類のグラフェン接合体のアスペクト比は、12段落に記載したように、(6.0±0.1)×10の極めて大きな値を持つ。また、ペーストを構成する円板形状からなるグラフェン接合体の直径が、4.99mmから1mmごとに19.99mmまでに至る大きさの幅があるが、グラフェン接合体の直径の大きさは、いずれも5mmから1mmごとに20mmに至る整数値に極めて近い値である。このような形状からなるグラフェン接合体の集まりが1-ブタノール中に分散したペーストに、3方向の振動加速度を加え、さらに、上下方向の振動加速度を加えると、四角形の溝の底面に、グラフェン接合体が2次元的に平面状に並ぶとともに、2次元的に平面状に並んだグラフェン接合体の集まりが、3次元的に重なり合って積層する。この重なり合ったグラフェン接合体同士を、重なり合った面で摩擦圧接し、摩擦圧接したグラフェン接合体が、四角形の溝の底面に形成できれば、円板より面積が広く、厚みが厚いグラフェン接合体が、四角柱の溝の底面に形成できる。このため、多くの実験を重ね、四角柱からなる溝の断面の四角形の一方の辺と他方の辺との長さを、円板形状からなるグラフェン接合体の直径の長さに近い整数値の長さに、1倍から1倍ごとに10倍までの倍数を掛けた長さとし、一方の辺と他方の辺の長さに、10種類の長さの幅を持たせ、10種類の長さの幅を持つ2つの辺の互いに異なる辺の組み合わせによって、四角形の一方の辺と他方の辺の長さを構成すると、様々な大きさからなる四角形の底面に、円板からなるグラフェン接合体を、2次元的に平面状に並ばせることができることが、実験の結果で分かった。さらに、2次元的に平面状に並んだグラフェン接合体の集まりを、最大で20層まで3次元的に重ね合わせて積層し、この積層したグラフェン接合体を圧縮すると、全てのグラフェン接合体が面同士で摩擦圧接することも、実験の結果で分かった。この実験結果に基づき、ペーストを注入する四角形からなる溝の大きさを第三の板材に形成した。さらに、四角形の溝に注入するペーストの量を、2次元的に平面状に並んだグラフェン接合体の集まりが、最大で20層まで3次元的に重なり合って積層する量として注入させた。以下に、多くの実験で検討した内容を説明する。
なお、溝の形状を四角柱とした理由は、グラフェン接合体の用途の多くが四角形であることによる。11段落に記載したペーストの製造において、直径が4.99mmから1mmごとに19.99mmにいたる大きさからなる16種類の大きさからなる円板のグラフェン接合体をすでに製造している。さらに、製造したグラフェン接合体のアスペクト比が、(6.0±0.1)×10の極めて大きな値を持つ。従って、グラフェン接合体は一定の面積を持つ極めて扁平な物質である。このため、四角柱の溝の底面に形成したグラフェン接合体の集まりは、互いに面同士で重なり合うとともに、重なり合った面で確実に圧縮される。しかし、四角柱の角部に近い領域には、グラフェン接合体が入り込めない。いっぽう、ペーストを構成するグラフェン接合体はいずれも円板で、グラフェン接合体が溝の底面に2次元的に平面状に並べば、四角柱の角部に近い領域には、グラフェン接合体は入り込まない。従って、四角柱の溝の底面に形成したグラフェン接合体を、四角柱の溝から一旦剥がし、グラフェン接合体の全体を覆う板材を再度被せ、該板材に第二の工程の第二の処理で加えた圧縮応力と同じ大きさの圧縮応力を再度加え、グラフェン接合体が変形しないことを確認し、全てのグラフェン接合体が摩擦圧接していると判断した。
前記したように、円板からなるグラフェン接合体の直径が、4.99mmから1mmごとに19.99mmまでに至る長さで、いずれの長さも、整数値にかなり近い長さである。従って、四角柱の溝の断面の四角形を形成する2辺の長さを、円板からなるグラフェン接合体の直径に近い整数値とすれば、四角形の辺の長さに応じて、直径が4.99mmから1mmごとに19.99mmからなるグラフェン接合体を、四角形の底面に2次元的に平面状に並ばせることができる。さらに、グラフェン接合体のアスペクト比が極めて大きいため、2次元的に平面状に並んだグラフェン接合体の集まりを、3次元的に重なり合って積層したグラフェン接合体の集まりとすることが可能である。このグラフェン接合体の集まりから1-ブタノールを気化させた後に、グラフェン接合体の集まりを均等に圧縮すると、清浄化された全てのグラフェン接合体同士が、重なり合った面で摩擦圧接するため、グラフェン接合体同士の接合力が増大する。
以下に、実験の結果を詳細に説明する。
11段落に記載した円柱の溝の底面に形成した円板からなるグラフェン接合体の直径が、4.99mmから1mmごとに19.99mmからなり、いずれも整数値に極めて近い長さである。従って、四角柱の断面の四角形の辺の長さを、円板からなる全てのグラフェン接合体の直径の長さに近い整数値の長さに、1倍から10倍までの倍数を掛けた長さとし、一方の辺の長さと他方の辺の長さに、10種類の長さの幅を持たせ、該10種類の長さの幅を持つ2つの辺の互いに異なる辺の組み合わせによって、四角形の一方の辺と他方の辺の長さとを構成すると、四角形の底面に、円板からなるグラフェン接合体を、2次元的に平面状に並ばせることができた。
すなわち、直径が4.99mmの円板からなるグラフェン接合体で構成されたペーストを、断面が四角形の溝に注入する際には、4.99mmの2倍が1cmに近いため、四角形の一方の辺の長さと他方の辺の長さとを、2の1倍から10倍までの10種類の長さである、1cmから1cmごとに10cmまでの長さとし、この10種類の長さで2辺を組み合わせると、円板からなるグラフェン接合体の集まりを、2次元的に平面状に並ばせることができた。この際、四角形からなる溝の深さは、11段落に記載した円板からなるグラフェン接合体を形成する際の円柱の溝の深さに、四角形からなる溝の底面に円板からなるグラフェン接合体を2次元的に平面状に並ばせる数を掛けた深さとした。例えば、四角形の形状が1cm×1cmである場合は、四角柱の底面に4個のグラフェン接合体を平面状に並ばせる。いっぽう、直径が4.99mmの円板からなるグラフェン接合体を、円柱の溝の底面に形成した際の溝の深さは1mmであった。従って、四角柱の溝の深さは、1mmの4倍である4mmになる。
なお、溝の深さが4mmになった理由は、ペーストを構成する1-ブタノールの量が、グラフェン接合体の量に比べると、過剰であることによる。つまり、厚みが3.3nmで、直径が4.99mmの円板からなるグラフェン接合体の20枚を、重ね合わせたグラフェン接合体の厚みは僅かに66nmであり、4枚のグラフェン接合体の面積の合計は僅かに0.785cmである。しかし、厚みが3.3nmで、直径が4.99mmの円板からなるグラフェン接合体の4×20からなる80枚を、1-ブタノール中で4個のグラフェン接合体を平面状に並ばせ、平面状に並んだグラフェン接合体を、1-ブタノールを介して20層積層させるには、グラフェン接合体のアスペクト比が極めて大きいため、過剰な1-ブタノールが必要になる。従って、ペーストを注入する四角柱の溝の断面積が大きくなるほど、ペースを構成するグラフェン接合体の数が増える。このため、四角柱の溝の断面積が大きくなるほど、溝の深さが長くなる。例えば、直径が19.99mmの円板からなるグラフェン接合体を、円柱の溝の底面に形成した際の溝の深さは16mmであった。従って、断面積が20cm×20cmの四角柱の溝の場合は、四角柱の底面に10×10の100個のグラフェン接合体を平面状に並ばせる。このため、溝の深さは、16.0mmの100倍である160cmになる。この際、厚みが52nmで、直径が19.99mmの円板からなるグラフェン接合体の100×20からなる2000枚を、1-ブタノールに分散させることになる。このため、過剰な1-ブタノールからペーストを、160cmの深さから溝に注入することになる。
ここで、2辺の組み合わせを説明する。四角形の形状は、一方の辺の長さが1cmである場合は、2辺の組み合わせが、1cm×1cm、1cm×2cm、1cm×3cm、―――、1cm×10cmの10種類になる。一方の辺の長さが2cmである場合は、2辺の組み合わせが、2cm×2cm、2cm×3cm、2cm×4cm、―――、2cm×10cmの9種類になる。一方の辺の長さが3cmである場合は、2辺の組み合わせが、3cm×3cm、3cm×4cm、3cm×5cm、―――、3cm×10cmの8種類になる。一方の辺の長さが4cmである場合は、2辺の組み合わせが、4cm×4cm、4cm×5cm、4cm×6cm、―――、4cm×10cmの7種類になる。一方の辺の長さが5cmである場合は、2辺の組み合わせが、5cm×5cm、5cm×6cm、5cm×7cm、―――、5cm×10cmの6種類になる。一方の辺の長さが6cmである場合は、2辺の組み合わせが、6cm×6cm、6cm×7cm、6cm×8cm、―――、6cm×10cmの5種類になる。一方の辺の長さが7cmである場合は、2辺の組み合わせが、7cm×7cm、7cm×8cm、7cm×9cm、―――、7cm×10cmの4種類になる。一方の辺の長さが8cmである場合は、2辺の組み合わせが、8cm×8cm、8cm×9cm、8cm×10cmの3種類になる。一方の辺の長さが9cmである場合は、2辺の組み合わせが、9cm×9cm、9cm×10cmの2種類になる。一方の辺の長さが10cmである場合は、2辺の組み合わせが、10cm×10cmの1種類になる。この結果、直径が4.99mmの円板からなるグラフェン接合体を、2次元的に平面状に並ばせる四角形の形状の組み合わせが59種類になった。四角形の溝の底面に形成されるグラフェン接合体は、最も面積が小さいグラフェン接合体が、1cm×1cmからなる1cmで、最も面積が大きいグラフェン接合体が、10cm×10cmからなる100cmになる。また、2次元的に平面状に並ばせた直径が4.99mmの円板からなるグラフェン接合体の集まりは、アスペクト比が極めて大きいため、四角形の溝に、20層まで積層させることが可能になった。四角形の溝の底面に形成されるグラフェン接合体は、最も厚みが厚いグラフェン接合体は66nmになる。この結果、四角形の大きさが59種類からなるグラフェン接合体が、最大で20層まで積層したグラフェン接合体が、四角形の溝の底面に形成することができた。
次に、直径が5.99mmの円板からなるグラフェン接合体で構成されたペーストを、断面が四角形の溝に注入する際には、5.99mmに近い整数の長さが、0.6の5倍である3cmになる。従って、四角形の一方の辺の長さと他方の辺の長さとを、3の1倍から10倍までの長さである、3cmから3cmごとに30cmまでの10種類の長さとし、この10種類の長さで2辺を組み合わせると、円板からなるグラフェン接合体の集まりを、2次元的に平面状に並ばせることができた。すなわち、一方の辺の長さが3cmの場合は、他方の辺の長さを、3の1倍から10倍までの、3cmから3cmごとに30cmまでの10種類の長さで、10種類の四角形を形成する。一方の辺の長さが6cmの場合は、3の2倍から10倍までの9種類の長さで、9種類の四角形を形成する。一方の辺の長さが9cmの場合は、3の3倍から10倍までの8種類の長さで、8種類の四角形を形成する。一方の辺の長さが12cmの場合は、3の4倍から10倍までの7種類の長さで、7種類の四角形を形成する。一方の辺の長さが15cmの場合は、3の5倍から10倍までの6種類の長さで、6種類の四角形を形成する。一方の辺の長さが18cmの場合は、3の6倍から10倍までの5種類の長さで、5種類の四角形を形成する。一方の辺の長さが21cmの場合は、3の7倍から10倍までの4種類の長さで、4種類の四角形を形成する。一方の辺の長さが24cmの場合は、3の8倍から10倍までの3種類の長さで、3種類の四角形を形成する。一方の辺の長さが27cmの場合は、3の9倍から10倍までの2種類の長さで、2種類の四角形を形成する。一方の辺の長さが30cmの場合は、30cm×30cmの1種類の四角形を形成する。この結果、直径が5.99mmの円板からなるグラフェン接合体を、2次元的に平面状に並ばせる四角形の形状の組み合わせが59種類になった。四角形の溝の底面に形成されるグラフェン接合体は、最も面積が小さいグラフェン接合体が、3cm×3cmからなる9cmで、最も面積が大きいグラフェン接合体が、30cm×30cmからなる900cmになる。また、2次元的に平面状に並ばせた直径が5.99mmの円板からなるグラフェン接合体の集まりは、アスペクト比が極めて大きいため、四角形の溝に、20層まで積層させることが可能になった。四角形の溝の底面に形成されるグラフェン接合体は、最も厚みが厚いグラフェン接合体は92nmになる。この結果、四角形の大きさが59種類からなるグラフェン接合体が、最大で20層まで積層したグラフェン接合体が、四角形の溝の底面に形成することができた。なお、四角形の形状が3cm×3cmである場合は、四角柱の底面に25個のグラフェン接合体を平面状に並ばせる。いっぽう、直径が5.99mmの円板からなるグラフェン接合体を、円柱の溝の底面に形成した際の溝の深さは1.4mmであった。従って、3cm×3cmの四角柱の溝の深さは、1.4mmの25倍である3.5cmになる。
さらに、直径が6.99mmの円板からなるグラフェン接合体で構成されたペーストを、断面が四角形の溝に注入する際には、6.99mmに近い整数の長さが、0.7の10倍である7cmになる。従って、四角形の一方の辺の長さと他方の辺の長さとを、7の1倍から10倍までの10種類の長さとし、この10種類の長さで2辺を組み合わせると、円板からなるグラフェン接合体の集まりを、2次元的に平面状に並ばせることができた。直径が6.99mmの円板からなるグラフェン接合体を、2次元的に平面状に並ばせる四角形の形状の組み合わせが59種類になった。詳細の説明は省くが、四角形の溝の底面に形成されるグラフェン接合体は、最も面積が小さいグラフェン接合体が、7cm×7cmからなる49cmで、最も面積が大きいグラフェン接合体が、70cm×70cmからなる4900cmになる。最も面積が小さい四角形が49cmで、最も面積が大きい四角形が4900cmになる。また、直径が6.99mmの円板からなるグラフェン接合体を四角形の溝に、20層まで積層させるため、四角形の溝の底面に形成されるグラフェン接合体は、最も厚みが厚いグラフェン接合体は126nmになる。この結果、四角形の大きさが59種類からなるグラフェン接合体が、最大で20層まで積層したグラフェン接合体が、四角形の溝の底面に形成することができた。なお、四角形の形状が7cm×7cmである場合は、四角柱の底面に100個のグラフェン接合体を平面状に並ばせる。いっぽう、直径が6.99mmの円板からなるグラフェン接合体を、円柱の溝の底面に形成した際の溝の深さは2.0mmであった。従って、7cm×7cmの四角柱の溝の深さは、2.0mmの100倍である20cmになる。
また、直径が7.99mmの円板からなるグラフェン接合体で構成されたペーストを、断面が四角形の溝に注入する際には、7.99mmに近い整数の長さが、0.8の10倍である8cmになる。従って、四角形の一方の辺の長さと他方の辺の長さとを、8の1倍から10倍までの10種類の長さとし、この10種類の長さで2辺を組み合わせると、円板からなるグラフェン接合体の集まりを、2次元的に平面状に並ばせることができた。直径が7.99mmの円板からなるグラフェン接合体を、2次元的に平面状に並ばせる四角形の形状の組み合わせが59種類になった。詳細の説明は省くが、四角形の溝の底面に形成されるグラフェン接合体は、最も面積が小さいグラフェン接合体が、8cm×8cmからなる64cmで、最も面積が大きいグラフェン接合体が、80cm×80cmからなる6400cmになる。また、直径が7.99mmの円板からなるグラフェン接合体を四角形の溝に、20層まで積層させるため、四角形の溝の底面に形成されるグラフェン接合体は、最も厚みが厚いグラフェン接合体は166nmになる。この結果、四角形の大きさが59種類からなるグラフェン接合体が、最大で20層まで積層したグラフェン接合体が、四角形の溝の底面に形成することができた。なお、四角形の形状が8cm×8cmである場合は、四角柱の底面に100個のグラフェン接合体を平面状に並ばせる。いっぽう、直径が7.99mmの円板からなるグラフェン接合体を、円柱の溝の底面に形成した際の溝の深さは2.6mmであった。従って、8cm×8cmの四角柱の溝の深さは、2.6mmの100倍である26cmになる。
さらに、直径が8.99mmの円板からなるグラフェン接合体で構成されたペーストを、円柱の溝に注入する際には、8.99mmに近い整数の長さが、0.9の10倍である9cmになる。従って、四角形の一方の辺の長さと他方の辺の長さとを、9の1倍から10倍までの10種類の長さとし、この10種類の長さで2辺を組み合わせると、円板からなるグラフェン接合体の集まりを、2次元的に平面状に並ばせることができた。直径が8.99mmの円板からなるグラフェン接合体を、2次元的に平面状に並ばせる四角形の形状の組み合わせが59種類になった。詳細の説明は省くが、四角形の溝の底面に形成されるグラフェン接合体は、最も面積が小さいグラフェン接合体が、9cm×9cmからなる81cmで、最も面積が大きいグラフェン接合体が、90cm×90cmからなる8100cmになる。また、直径が8.99mmの円板からなるグラフェン接合体を四角形の溝に、20層まで積層させるため、四角形の溝の底面に形成されるグラフェン接合体は、最も厚みが厚いグラフェン接合体は212nmになる。この結果、四角形の大きさが59種類からなるグラフェン接合体が、最大で20層まで積層したグラフェン接合体が、四角形の溝の底面に形成することができた。なお、四角形の形状が9cm×9cmである場合は、四角柱の底面に100個のグラフェン接合体を平面状に並ばせる。いっぽう、直径が8.99mmの円板からなるグラフェン接合体を、円柱の溝の底面に形成した際の溝の深さは3.2mmであった。従って、9cm×9cmの四角柱の溝の深さは、3.2mmの100倍である32cmになる。
また、直径が9.99mmの円板からなるグラフェン接合体で構成されたペーストを、円柱の溝に注入する際には、9.99mmに近い整数の長さが1cmであり、整数倍の長さが、2cmから1cmごとに9cmになる。しかし、一方の辺の長さが1cmから1cmごとに9cmまでの四角形組み合わせは、直径が4.99mmの円板からなるグラフェン接合体で使用したため、ここでは、一方の辺の長さを、1cmの10倍である10cmとする。従って、四角形の一方の辺の長さと他方の辺の長さとを、10の1倍から10倍までの10種類の長さとし、この10種類の長さで2辺を組み合わせると、円板からなるグラフェン接合体の集まりを、2次元的に平面状に並ばせることができた。直径が9.99mmの円板からなるグラフェン接合体を、2次元的に平面状に並ばせる四角形の形状の組み合わせが59種類になった。詳細の説明は省くが、四角形の溝の底面に形成されるグラフェン接合体は、最も面積が小さいグラフェン接合体が、10cm×10cmからなる100cmで、最も面積が大きいグラフェン接合体が、100cm×100cmからなる10000cmになる。また、直径が9.99mmの円板からなるグラフェン接合体を四角形の溝に、20層まで積層させるため、四角形の溝の底面に形成されるグラフェン接合体は、最も厚みが厚いグラフェン接合体は260nmになる。この結果、四角形の大きさが59種類からなるグラフェン接合体が、最大で20層まで積層したグラフェン接合体が、四角形の溝の底面に形成することができた。なお、四角形の形状が10cm×10cmである場合は、四角柱の底面に100個のグラフェン接合体を平面状に並ばせる。いっぽう、直径が9.99mmの円板からなるグラフェン接合体を、円柱の溝の底面に形成した際の溝の深さは4.0mmであった。従って、10cm×10cmの四角柱の溝の深さは、4.0mmの100倍である40cmになる。
さらに、直径が10.99mmの円板からなるグラフェン接合体で構成されたペーストを、円柱の溝に注入する際には、10.99mmに近い整数の長さが、1.1の10倍である11cmになる。従って、四角形の一方の辺の長さと他方の辺の長さとを、11の1倍から10倍までの10種類の長さとし、この10種類の長さで2辺を組み合わせると、円板からなるグラフェン接合体の集まりを、2次元的に平面状に並ばせることができた。直径が10.99mmの円板からなるグラフェン接合体を、2次元的に平面状に並ばせる四角形の形状の組み合わせが59種類になった。詳細の説明は省くが、四角形の溝の底面に形成されるグラフェン接合体は、最も面積が小さいグラフェン接合体が、11cm×11cmからなる121cmで、最も面積が大きいグラフェン接合体が、110cm×110cmからなる12100cmになる。また、直径が10.99mmの円板からなるグラフェン接合体を四角形の溝に、20層まで積層させるため、四角形の溝の底面に形成されるグラフェン接合体は、最も厚みが厚いグラフェン接合体は314nmになる。この結果、四角形の大きさが59種類からなるグラフェン接合体が、最大で20層まで積層したグラフェン接合体が、四角形の溝の底面に形成することができた。なお、四角形の形状が11cm×11cmである場合は、四角柱の底面に100個のグラフェン接合体を平面状に並ばせる。いっぽう、直径が10.99mmの円板からなるグラフェン接合体を、円柱の溝の底面に形成した際の溝の深さは4.8mmであった。従って、11cm×11cmの四角柱の溝の深さは、4.8mmの100倍である48cmになる。
また、直径が11.99mmの円板からなるグラフェン接合体で構成されたペーストを、円柱の溝に注入する際には、11.99mmに近い整数の長さが、1.2の10倍である12cmになる。従って、四角形の一方の辺の長さと他方の辺の長さとを、12の1倍から10倍までの10種類の長さとし、この10種類の長さで2辺を組み合わせると、円板からなるグラフェン接合体の集まりを、2次元的に平面状に並ばせることができた。直径が11.99mmの円板からなるグラフェン接合体を、2次元的に平面状に並ばせる四角形の形状の組み合わせが59種類になった。詳細の説明は省くが、四角形の溝の底面に形成されるグラフェン接合体は、最も面積が小さいグラフェン接合体が、12cm×12cmからなる144cmで、最も面積が大きいグラフェン接合体が、120cm×120cmからなる14400cmになる。また、直径が11.99mmの円板からなるグラフェン接合体を四角形の溝に、20層まで積層させるため、四角形の溝の底面に形成されるグラフェン接合体は、最も厚みが厚いグラフェン接合体は372nmになる。この結果、四角形の大きさが59種類からなるグラフェン接合体が、最大で20層まで積層したグラフェン接合体が、四角形の溝の底面に形成することができた。なお、四角形の形状が12cm×12cmである場合は、四角柱の底面に100個のグラフェン接合体を平面状に並ばせる。いっぽう、直径が11.99mmの円板からなるグラフェン接合体を、円柱の溝の底面に形成した際の溝の深さは5.5mmであった。従って、12cm×12cmの四角柱の溝の深さは、5.5mmの100倍である55cmになる。
さらに、直径が12.99mmの円板からなるグラフェン接合体で構成されたペーストを、円柱の溝に注入する際には、12.99mmに近い整数の長さが、1.3の10倍である13cmになる。従って、四角形の一方の辺の長さと他方の辺の長さとを、13の1倍から10倍までの10種類の長さとし、この10種類の長さで2辺を組み合わせると、円板からなるグラフェン接合体の集まりを、2次元的に平面状に並ばせることができた。直径が12.99mmの円板からなるグラフェン接合体を、2次元的に平面状に並ばせる四角形の形状の組み合わせが59種類になった。詳細の説明は省くが、四角形の溝の底面に形成されるグラフェン接合体は、最も面積が小さいグラフェン接合体が、13cm×13cmからなる169cmで、最も面積が大きいグラフェン接合体が、130cm×130cmからなる16900cmになる。また、直径が12.99mmの円板からなるグラフェン接合体を四角形の溝に、20層まで積層させるため、四角形の溝の底面に形成されるグラフェン接合体は、最も厚みが厚いグラフェン接合体は438nmになる。この結果、四角形の大きさが59種類からなるグラフェン接合体が、最大で20層まで積層したグラフェン接合体が、四角形の溝の底面に形成することができた。なお、四角形の形状が13cm×13cmである場合は、四角柱の底面に100個のグラフェン接合体を平面状に並ばせる。いっぽう、直径が12.99mmの円板からなるグラフェン接合体を、円柱の溝の底面に形成した際の溝の深さは6.8mmであった。従って、13cm×13cmの四角柱の溝の深さは、6.8mmの100倍である68cmになる。
また、直径が13.99mmの円板からなるグラフェン接合体で構成されたペーストを、円柱の溝に注入する際には、13.99mmに近い整数の長さが、1.4の10倍である14cmになる。従って、四角形の一方の辺の長さと他方の辺の長さとを、14の1倍から10倍までの10種類の長さとし、この10種類の長さで2辺を組み合わせると、円板からなるグラフェン接合体の集まりを、2次元的に平面状に並ばせることができた。直径が13.99mmの円板からなるグラフェン接合体を、2次元的に平面状に並ばせる四角形の形状の組み合わせが59種類になった。詳細の説明は省くが、四角形の溝の底面に形成されるグラフェン接合体は、最も面積が小さいグラフェン接合体が、14cm×14cmからなる196cmで、最も面積が大きいグラフェン接合体が、140cm×140cmからなる19600cmになる。また、直径が13.99mmの円板からなるグラフェン接合体を四角形の溝に、20層まで積層させるため、四角形の溝の底面に形成されるグラフェン接合体は、最も厚みが厚いグラフェン接合体は512nmになる。この結果、四角形の大きさが59種類からなるグラフェン接合体が、最大で20層まで積層したグラフェン接合体が、四角形の溝の底面に形成することができた。なお、四角形の形状が14cm×14cmである場合は、四角柱の底面に100個のグラフェン接合体を平面状に並ばせる。いっぽう、直径が13.99mmの円板からなるグラフェン接合体を、円柱の溝の底面に形成した際の溝の深さは7.8mmであった。従って、14cm×14cmの四角柱の溝の深さは、7.8mmの100倍である78cmになる。
さらに、直径が14.99mmの円板からなるグラフェン接合体で構成されたペーストを、円柱の溝に注入する際には、14.99mmに近い整数の長さが、1.5の10倍である15cmになる。従って、四角形の一方の辺の長さと他方の辺の長さとを、15の1倍から10倍までの10種類の長さとし、この10種類の長さで2辺を組み合わせると、円板からなるグラフェン接合体の集まりを、2次元的に平面状に並ばせることができた。直径が14.99mmの円板からなるグラフェン接合体を、2次元的に平面状に並ばせる四角形の形状の組み合わせが59種類になった。詳細の説明は省くが、四角形の溝の底面に形成されるグラフェン接合体は、最も面積が小さいグラフェン接合体が、15cm×15cmからなる225cmで、最も面積が大きいグラフェン接合体が、150cm×150cmからなる22500cmになる。また、直径が14.99mmの円板からなるグラフェン接合体を四角形の溝に、20層まで積層させるため、四角形の溝の底面に形成されるグラフェン接合体は、最も厚みが厚いグラフェン接合体は584nmになる。この結果、四角形の大きさが59種類からなるグラフェン接合体が、最大で20層まで積層したグラフェン接合体が、四角形の溝の底面に形成することができた。なお、四角形の形状が15cm×15cmである場合は、四角柱の底面に100個のグラフェン接合体を平面状に並ばせる。いっぽう、直径が14.99mmの円板からなるグラフェン接合体を、円柱の溝の底面に形成した際の溝の深さは9.0mmであった。従って、15cm×15cmの四角柱の溝の深さは、9.0mmの100倍である90cmになる。
また、直径が15.99mmの円板からなるグラフェン接合体で構成されたペーストを、円柱の溝に注入する際には、15.99mmに近い整数の長さが、1.6の10倍である16cmになる。従って、四角形の一方の辺の長さと他方の辺の長さとを、16の1倍から10倍までの10種類の長さとし、この10種類の長さで2辺を組み合わせると、円板からなるグラフェン接合体の集まりを、2次元的に平面状に並ばせることができた。直径が15.99mmの円板からなるグラフェン接合体を、2次元的に平面状に並ばせる四角形の形状の組み合わせが59種類になった。詳細の説明は省くが、四角形の溝の底面に形成されるグラフェン接合体は、最も面積が小さいグラフェン接合体が、16cm×16cmからなる256cmで、最も面積が大きいグラフェン接合体が、160cm×160cmからなる25600cmになる。また、直径が15.99mmの円板からなるグラフェン接合体を四角形の溝に、20層まで積層させるため、四角形の溝の底面に形成されるグラフェン接合体は、最も厚みが厚いグラフェン接合体は664nmになる。この結果、四角形の大きさが59種類からなるグラフェン接合体が、最大で20層まで積層したグラフェン接合体が、四角形の溝の底面に形成することができた。なお、四角形の形状が16cm×16cmである場合は、四角柱の底面に100個のグラフェン接合体を平面状に並ばせる。いっぽう、直径が15.99mmの円板からなるグラフェン接合体を、円柱の溝の底面に形成した際の溝の深さは10.2mmであった。従って、16cm×16cmの四角柱の溝の深さは、10.2mmの100倍である102cmになる。
さらに、直径が16.99mmの円板からなるグラフェン接合体で構成されたペーストを、円柱の溝に注入する際には、16.99mmに近い整数の長さが、1.7の10倍である17cmになる。従って、四角形の一方の辺の長さと他方の辺の長さとを、17の1倍から10倍までの10種類の長さとし、この10種類の長さで2辺を組み合わせると、円板からなるグラフェン接合体の集まりを、2次元的に平面状に並ばせることができた。直径が16.99mmの円板からなるグラフェン接合体を、2次元的に平面状に並ばせる四角形の形状の組み合わせが59種類になった。詳細の説明は省くが、四角形の溝の底面に形成されるグラフェン接合体は、最も面積が小さいグラフェン接合体が、17cm×17cmからなる289cmで、最も面積が大きいグラフェン接合体が、170cm×170cmからなる28900cmになる。また、直径が16.99mmの円板からなるグラフェン接合体を四角形の溝に、20層まで積層させるため、四角形の溝の底面に形成されるグラフェン接合体は、最も厚みが厚いグラフェン接合体は750nmになる。この結果、四角形の大きさが59種類からなるグラフェン接合体が、最大で20層まで積層したグラフェン接合体が、四角形の溝の底面に形成することができた。なお、四角形の形状が17cm×17cmである場合は、四角柱の底面に100個のグラフェン接合体を平面状に並ばせる。いっぽう、直径が16.99mmの円板からなるグラフェン接合体を、円柱の溝の底面に形成した際の溝の深さは11.6mmであった。従って、17cm×17cmの四角柱の溝の深さは、11.6mmの100倍である116cmになる。
また、直径が17.99mmの円板からなるグラフェン接合体で構成されたペーストを、円柱の溝に注入する際には、17.99mmに近い整数の長さが、1.8の10倍である18cmになる。従って、四角形の一方の辺の長さと他方の辺の長さとを、18の1倍から10倍までの10種類の長さとし、この10種類の長さで2辺を組み合わせると、円板からなるグラフェン接合体の集まりを、2次元的に平面状に並ばせることができた。直径が17.99mmの円板からなるグラフェン接合体を、2次元的に平面状に並ばせる四角形の形状の組み合わせが59種類になった。詳細の説明は省くが、四角形の溝の底面に形成されるグラフェン接合体は、最も面積が小さいグラフェン接合体が、18cm×18cmからなる324cmで、最も面積が大きいグラフェン接合体が、180cm×180cmからなる32400cmになる。また、直径が17.99mmの円板からなるグラフェン接合体を四角形の溝に、20層まで積層させるため、四角形の溝の底面に形成されるグラフェン接合体は、最も厚みが厚いグラフェン接合体は844nmになる。この結果、四角形の大きさが59種類からなるグラフェン接合体が、最大で20層まで積層したグラフェン接合体が、四角形の溝の底面に形成することができた。なお、四角形の形状が18cm×18cmである場合は、四角柱の底面に100個のグラフェン接合体を平面状に並ばせる。いっぽう、直径が17.99mmの円板からなるグラフェン接合体を、円柱の溝の底面に形成した際の溝の深さは13.0mmであった。従って、18cm×18cmの四角柱の溝の深さは、13.0mmの100倍である130cmになる。
さらに、直径が18.99mmの円板からなるグラフェン接合体で構成されたペーストを、円柱の溝に注入する際には、18.99mmに近い整数の長さが、1.9の10倍である19cmになる。従って、四角形の一方の辺の長さと他方の辺の長さとを、19の1倍から10倍までの10種類の長さとし、この10種類の長さで2辺を組み合わせると、円板からなるグラフェン接合体の集まりを、2次元的に平面状に並ばせることができた。直径が18.99mmの円板からなるグラフェン接合体を、2次元的に平面状に並ばせる四角形の形状の組み合わせが59種類になった。詳細の説明は省くが、四角形の溝の底面に形成されるグラフェン接合体は、最も面積が小さいグラフェン接合体が、19cm×19cmからなる361cmで、最も面積が大きいグラフェン接合体が、190cm×190cmからなる36100cmになる。また、直径が18.99mmの円板からなるグラフェン接合体を四角形の溝に、20層まで積層させるため、四角形の溝の底面に形成されるグラフェン接合体は、最も厚みが厚いグラフェン接合体は942nmになる。この結果、四角形の大きさが59種類からなるグラフェン接合体が、最大で20層まで積層したグラフェン接合体が、四角形の溝の底面に形成することができた。なお、四角形の形状が19cm×19cmである場合は、四角柱の底面に100個のグラフェン接合体を平面状に並ばせる。いっぽう、直径が18.99mmの円板からなるグラフェン接合体を、円柱の溝の底面に形成した際の溝の深さは14.4mmであった。従って、19cm×19cmの四角柱の溝の深さは、14.4mmの100倍である144cmになる。
最後に、直径が19.99mmの円板からなるグラフェン接合体で構成されたペーストを、円柱の溝に注入する際には、19.99mmに近い整数の長さが2cmであり、2cmの整数倍である。しかし、一方の辺の長さが2cmの1倍から5倍までの四角形組み合わせは、直径が4.99mmの円板からなるグラフェン接合体ですでに使用している。また、一方の辺の長さが2cmの6倍と、7倍と、8倍と9倍とからなる四角形組み合わせも、すでに使用している。従って、ここでは、2cmの10倍である20cmとする。このため、四角形の一方の辺の長さと他方の辺の長さとを、20の1倍から10倍までの10種類の長さとし、この10種類の長さで2辺を組み合わせると、円板からなるグラフェン接合体の集まりを、2次元的に平面状に並ばせることができた。直径が19.99mmの円板からなるグラフェン接合体を、2次元的に平面状に並ばせる四角形の形状の組み合わせが59種類になった。詳細の説明は省くが、四角形の溝の底面に形成されるグラフェン接合体は、最も面積が小さいグラフェン接合体が、20cm×20cmからなる400cmで、最も面積が大きいグラフェン接合体が、200cm×200cmからなる40000cmになる。また、直径が19.99mmの円板からなるグラフェン接合体を四角形の溝に、20層まで積層させるため、四角形の溝の底面に形成されるグラフェン接合体は、最も厚みが厚いグラフェン接合体は1042nmになる。この結果、四角形の大きさが59種類からなるグラフェン接合体が、最大で20層まで積層したグラフェン接合体が、四角形の溝の底面に形成することができた。なお、四角形の形状が20cm×20cmである場合は、四角柱の底面に100個のグラフェン接合体を平面状に並ばせる。いっぽう、直径が19.99mmの円板からなるグラフェン接合体を、円柱の溝の底面に形成した際の溝の深さは16.0mmであった。従って、20cm×20cmの四角柱の溝の深さは、16.0mmの100倍である160cmになる。
以上の実験の結果をまとめると、944種類の面積からなる四角形のグラフェン接合体が、四角形の溝の底面に形成できた。さらに、グラフェン接合体の積層数が最大で20層まで積層できたため、944種類よりさらに多くの種類の四角形のグラフェン接合体が、四角形の溝の底面に形成できた。これらのグラフェン接合体の中で最も面積が小さいグラフェン接合体の面積が1cmで、最も面積が大きいグラフェン接合体の面積が40000cmである。従って、1cmのグラフェン接合体は、1cm×1cmであり、40000cmのグラフェン接合体は、2m×2mの大きさである。また、最も厚みが薄いグラフェン接合体の厚みが33nmで、最も厚みが厚いグラフェン接合体の厚みが2084nmである。このように、944種類の面積の大きさを持ち、さらに、厚みが異なるグラフェン接合体が実現できたため、用途に応じた面積と厚みを持つグラフェン接合体が選択できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】グラフェンの扁平面同士が重なり合ったグラフェン接合体の側面の一部を拡大し、模式的に表した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
実施例1
本実施例は、7段落に記載した製造方法に従って、2枚の平行平板電極の間隙に黒鉛粒子の集まりを引き詰めるとともに、該平行平板電極を1-ブタノール中に浸漬させ、該平行平板電極の間隙に直流の電位差を加え、黒鉛粒子の基底面の層間結合を同時に破壊し、1-ブタノール中にグラフェンの集まりを析出させ、さらに、析出したグラフェンの集まりに衝撃波を繰り返し加え、グラフェンの集まりを1個1個のグラフェンに分離させ、分離したグラフェンを、1-ブタノール中に分散させる実施例である。
最初に、2リットルの1-ブタノールを、1.2m×1.2mの底面をもち、深さが10cmからなる容器に充填した。
次に、2枚の平行平板電極の間隙に電界が発生する電極の有効面積が、1m×1mである2枚の平行平板電極を用意し、この電極版の間隙に黒鉛粒子を満遍なく引き詰め、2枚の平行平板電極を100μmの間隙で重ね合わせる。なお、黒鉛粒子を粒径が25μmの球と仮定し、黒鉛粒子の厚みの平均値が10μmと仮定した場合、2枚の平行平板電極で作られる100μmの間隙に、黒鉛粒子を満遍なく引き詰めた場合、6.4×10個の黒鉛粒子が存在する。この黒鉛粒子の集まりに、10.6キロボルト以上の直流電圧を印加すると、全ての黒鉛粒子の基底面の層間結合が同時に破壊される。この際、1.9×1013個のグラフェンの集まりが得られ、用いる黒鉛粒子の集まりは、僅かに1.18gである。
電界が発生する電極の有効面積が1m×1mである一方の平行平板電極板の表面に、鱗片状黒鉛粒子(例えば、伊藤黒鉛工業株式会社のXD100)の10gを重ねて引き詰めた。この一方の平行平板電極板を、1-ブタノールが充填された前記容器に浸漬し、さらに、もう一方の平行平板電極板を前記の一方の平行平板電極板の上に重ね合わせ、2枚の平行平板電極板を100μmの間隙で離間させ、12キロボルトの直流電圧を電極間に加えた。次に、2枚の平行平板電極板の間隙を1cmに拡大し、さらに、2枚の平行平板電極板を1-ブタノール中で僅かに傾斜させ、0.2Gからなる3方向の振動加速度を、各々の方向の振動加速度として5秒間ずつ容器に加え、この後、容器から2枚の平行平板電極板を取り出した。さらに、容器内の1-ブタノールに、超音波ホモジナイザー装置(ヤマト科学株式会社の製品LUH300)によって20kHzの超音波振動を2分間加えた。この後、超音波ホモジナイザー装置を、容器から取り出した。この後、容器内にある1-ブタノール中に分散したグラフェンの集まりを撹拌した。
この後、容器内に存在するグラフェンの極少量を取り出し、電子顕微鏡を用いて観察と分析を行なった。電子顕微鏡は、JFEテクノリサーチ株式会社の極低加速電圧SEMを用いた。この装置は、100ボルトからの極低加速電圧による表面観察が可能で、試料に導電性の被膜を形成せずに直接試料の表面が観察できる特徴を持つ。
最初に、試料の表面からの反射電子線の900-1000ボルトの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。試料は、厚みが極めて薄い扁平な物質であることが確認できた。次に、特性エックス線のエネルギーとその強度を画像処理した結果、炭素原子のみが存在した。従って、試料は、グラフェンであることが確認できた。
これによって、2枚の平行平板電極の間隙に、鱗片状黒鉛粒子の集まりを引き詰め、電極間に直流の電位差を与え、この電位差を2枚の平行平板電極対の間隙の大きさで割った値に相当する電界が、鱗片状黒鉛粒子の集まりが存在する電極間隙に発生し、この電界によって、全ての黒鉛粒子に対し、黒鉛結晶からなる基底面の層間結合を破壊させるのに十分なクーロン力を、基底面の層間結合の担い手である全てのπ電子に同時に与えられ、この結果、黒鉛結晶の層間結合の全てが同時に破壊され、黒鉛結晶からなる基底面、すなわち、グラフェンの集まりが製造できることが確認された。
【0020】
実施例2
本実施例は、11段落に記載した円柱の溝を形成した第一の板材と、円柱の溝と同じ形状からなる突起を形成した第二の板材を用意し、円柱形状の溝に、実施例1で作成した1-ブタノール中に分散したグラフェンの集まりを注入し、第一の板材を1-ブタノールの沸点に昇温し、溝から1-ブタノールを気化させた後に、突起が形成された第二の板材を第一の板材に重ね合わせ、第二の板材の表面を均等に圧縮し、突起の先端によって、円柱の溝の底面に重なり合ったグラフェンの集まりを圧縮し、円柱の溝の底面にグラフェン接合体を形成した。
2.5cm×2.5cm×2mm(厚み)の機械構造用炭素鋼材S45Cに、直径の大きさが4.99mmで、深さが1mmからなる4つの円柱の溝を等間隔に加工し、その後、焼き入れし、第一の板材とした。また、2.5cm×2.5cm×2mm(厚み)の機械構造用炭素鋼材S45Cに、直径の大きさが4.99mmで、長さが2mmからなる4つの円柱の突起を、前記の第一の板材に設けた円柱の溝と同じ位置に等間隔に接合し、第二の板材とした。2枚の板材をメタノールで洗浄し、乾燥させた。
4つの円柱の溝の各々の溝に、実施例1で作成した1-ブタノール中に分散したグラフェンの集まりの0.02gを注入し、第一の板材に0.2Gの3方向の振動加速度を、各々の方向の振動加速度を5秒間ずつ3回繰り返して加え、この後、上下方向の振動加速度を5秒間加えた。さらに、第一の板材を1-ブタノールの沸点に昇温し、4つの円柱の溝から1-ブタノールを気化させた。この後、円柱の突起が設けられた第二の板材を重ね合わせ、円柱の突起が形成された部位に該当する反対側の表面に、10kgからなる4個の重りを置いて、円柱の突起の先端で、円柱の溝の底面に存在するグラフェンの集まりを圧縮した。この後、重ね合わせた第二の板材を取り外し、円柱の溝が形成された部位に相当する裏面の4か所に、0.4Gからなる衝撃加速度を3回繰り返し加え、溝の底面に形成された試料を、溝の底面から引き剥がした。溝から剥がした試料の表面に、板材をかぶせ、板材に40kgの重りを置いたが、試料に変化は見られなかったので、一定の接合力で接合されている。
次に、溝の底面から剥がした試料を、実施例1で用いた電子顕微鏡を用いて観察と分析を行なった。最初に、試料の側面からの反射電子線の900-1000ボルトの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。試料の側面は、極めて厚みが薄い物質が積層して2.66nmの厚みを形成しているのが確認できた。次に、特性エックス線のエネルギーとその強度を画像処理した結果、炭素原子のみが存在した。従って、試料は、グラフェンの扁平面同士が8層積層した試料であることが確認できた。
この結果から、円柱の溝に注入した1-ブタノール中に分散したグラフェンの集まりが少なかったため、グラフェンが8枚積層した。いっぽう、11段落に記載したように、直径が4.99mmからなる溝に形成するグラフェン接合体は、10枚のグラフェンが積層して摩擦圧接したグラフェン接合体を作成する。このため、溝に注入する1-ブタノール中に分散したグラフェンの集まりを0.025gに増やして溝に注入し、前記と同様の処理を行い、溝の底面にグラフェン接合体を形成した。前記と同様に、電子顕微鏡で試料の側面を観察した結果、10枚のグラフェンが積層して摩擦圧接したグラフェン接合体であることが確認できた。こうした10枚のグラフェンが積層して摩擦圧接したグラフェン接合体を、80枚製造した。図1に、グラフェンの扁平面同士が重なり合ったグラフェン接合体の側面の一部を拡大し、模式的に表した。1はグラフェンである。
従って、直径が4.99mmからなり、グラフェンが10枚重なり合って接合したグラフェン接合体が、繰り返し形成できる。これによって、予め設定したグラフェン接合体の大きさと厚みからなるグラフェン接合体が製造できることになる。
【0021】
実施例3
実施例2では、S45Cの第一の板材に直径が4.99mmで、深さが1mmの円柱の溝を形成したが、本実施例では、直径が19.99mmで、深さが16.0mmの円柱の溝を4個形成する。従って、第二の板材に接合する突起は、直径が19.99mmで、深さが17.0mmである。
4つの溝の各々に、1-ブタノール中に分散したグラフェンの集まりを、直径が19.99mmで、深さが16.0mmの溝に、直径が4.99mmで、深さが1mmの溝に注入した0.02gの直径の比率の二乗である16倍に相当する0.32gを注入した。実施例2で実施した処理に従って、グラフェン接合体を、直径が19.99mmで、深さが16.0mmの溝に形成した。電子顕微鏡で試料の側面を観察した結果、グラフェン接合体の厚みが52.1nmであった。このため、グラフェンの集まりが157枚積層し、グラフェンの面同士で摩擦圧接したグラフェン接合体を形成した。こうした157枚のグラフェンが積層して摩擦圧接したグラフェン接合体を、1000枚製造した。
従って、直径が19.99mmからなり、グラフェンを157枚重ね合わせて接合したグラフェン接合体が、繰り返し形成できる。また、円柱形状の溝に1-ブタノール中に分散したグラフェンの集まりを注入する量を、円柱の断面積の大きさに比例した量として注入することで、予め設定したグラフェン接合体の大きさと厚みからなるグラフェン接合体が製造できることが確認できた。
【0022】
実施例4
実施例4は、16段落に記載した四角柱の溝を形成した第三の板材と、四角柱の溝と同じ形状からなる突起を形成した第四の板材を用意し、実施例2で製造したグラフェン接合体の集まりを1-ブタノール中に分散したペーストを作成する。次に、四角柱の溝にペーストを注入し、溝から1-ブタノールを気化させた後に、突起が形成された第四の板材を第三の板材に重ね合わせ、第四の板材の表面を均等に圧縮し、突起の先端が四角柱の溝の底面のグラフェン接合体の集まりを圧縮し、四角柱の溝の底面により面積が大きく、より厚みが厚いグラフェン接合体を形成した。
2cm×2cm×5mm(厚み)の機械構造用炭素鋼材S45Cに、断面の形状が1cm×1cmで、深さが4mmからなる四角柱の溝を加工し、その後、焼き入れした。また、2cm×2cm×5mm(厚み)の機械構造用炭素鋼材S45Cに、断面の四角形の形状が1cm×1cmで、長さが5mmからなる四角柱の突起を、前記の板材に設けた四角柱の溝と同じ位置に接合した。2枚の板材をメタノールで洗浄し、乾燥させた。
四角柱の溝に、実施例2で作成したグラフェン接合体の80枚が1-ブタノール中に分散したペーストを注入し、板材に0.3Gの3方向の振動加速度を、各々の方向の振動加速度を5秒間ずつ3回繰り返して加え、この後、上下方向の振動加速度を5秒間加えた。この後、板材を1-ブタノールの沸点に昇温し、四角柱の溝から1-ブタノールを気化させた。さらに、四角柱の突起が設けられた板材を重ね合わせ、四角柱の突起が形成された部位に該当する反対側の表面に、50kgの重りを置いて、四角柱の突起の先端で、四角柱の溝の底面に存在するグラフェン接合体の集まりを圧縮した。この後、重ね合わせた板材を取り外し、四角柱の溝が形成された部位に相当する裏面に、0.5Gからなる衝撃加速度を3回断続的に加え、溝の底面に形成された試料を、溝の底面から引き剥がした。溝から剥がした試料の表面に板材をかぶせ、板材の上に50kgの重りを置いたが、試料に変化は見られなかったので、一定の接合力で接合されている。
次に、溝の底面から剥がした試料を、実施例2と同様に、電子顕微鏡を用いて観察と分析を行なった。最初に、試料の側面からの反射電子線の900-1000ボルトの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。試料の側面に、極めて厚みが薄い物質が、66.4nmの厚みをなして積層していた。次に、特性エックス線のエネルギーとその強度を画像処理した結果、炭素原子のみが存在し、試料は、グラフェン接合体の扁平面同士が積層した物質であることが確認できた。なお、グラフェン接合体の厚みは、実施例2で作成したグラフェン接合体が20層をなして積層した厚みに相当する。
この結果は、1cm×1cm×4mmの四角柱の溝の底面に、実施例2で作成したグラフェン接合体の4枚が平面状に並び、平面状に並んだ4枚のグラフェン接合体が、重なり合って積層して20層を形成し、全てのグラフェン接合体が、互いに接触する面同士で摩擦圧接してグラフェン接合体を形成した結果である。
従って、1cm×1cmの四角形からなる四角柱の溝に、実施例2で作成したグラフェン接合体の80枚が1-ブタノールに分散されたペーストを注入し、1-ブタノールを気化させた後に、溝の底面に形成されたグラフェン接合体の集まりを、突起で圧縮すると、直径が4.99mmからなり、グラフェンが10枚重なり合ったグラフェン接合体の4個を平面状に並ばせ、このグラフェン接合体が20層重なり合って接合したグラフェン接合体が、繰り返し形成できる。このため、予め設定したグラフェン接合体の大きさと厚みからなるグラフェン接合体が製造できることになる。
【0023】
実施例5
実施例5は、実施例3で製造したグラフェン接合体の集まりを1-ブタノール中に分散したペーストを用い、断面形状が20cm×20cmの四角柱の溝にペーストを注入し、溝から1-ブタノールを気化させた後に、突起の先端が四角柱の溝の底面のグラフェンの集まりを圧縮し、四角柱の溝の底面にグラフェン接合体を形成した。
30cm×30cm×165cm(厚み)の機械構造用炭素鋼材S45Cに、断面の形状が20cm×20cmで、深さが160cmからなる四角柱の溝を加工し、その後、焼き入れした。また、30cm×30cm×5cm(厚み)の機械構造用炭素鋼材S45Cに、断面の四角形の形状が20cm×20cmで、長さが165cmからなる四角柱の突起を接合し、その後、焼き入れした。2枚の板材をメタノールで洗浄し、乾燥させた。
四角柱の溝に、実施例3で作成したグラフェン接合体の1000枚が1-ブタノール中に分散したペーストを注入し、板材に0.5Gの3方向の振動加速度を5秒間ずつ3回繰り返して加え、この後、上下方向の振動加速度を5秒間加えた。さらに、板材を1-ブタノールの沸点に昇温し、四角柱の溝から1-ブタノールを気化させた。さらに、四角柱の突起が設けられた板材を重ね合わせ、四角柱の突起が形成された部位に該当する反対側の表面に、100kgからなる重りを置いて、四角柱の突起の先端で、四角柱の溝の底面に存在するグラフェン接合体の集まりを圧縮した。この後、重ね合わせた板材を取り外し、四角柱の溝が形成された部位に相当する裏面に、0.8Gからなる衝撃加速度を3回断続的に加え、溝の底面に形成された試料を、溝の底面から引き剥がした。溝から剥がした物質の表面に板材をかぶせ、板材に100kgの重りを置いたが、試料に変化は見られなかったので、一定の接合力で接合されている。
次に、溝の底面から剥がした試料を、実施例2と同様に、電子顕微鏡を用いて観察と分析を行なった。最初に、試料の側面からの反射電子線の900-1000ボルトの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。試料の側面は、極めて厚みが薄い物質が521nmの厚みで積層しているのが確認できた。次に、特性エックス線のエネルギーとその強度を画像処理した結果、炭素原子のみが存在し、試料は、グラフェンの扁平面同士が積層した物質であることが確認できた。グラフェンの厚みは、実施例3で製造したグラフェン接合体が10層をなして積層した厚みに相当する。
従って、20cm×20cm×160cmの四角柱の溝の底面に、実施例3で作成したグラフェン接合体の1000枚が1-ブタノールに分散されたペーストを注入し、1-ブタノールを気化させた後に、溝の底面に形成されたグラフェン接合体の集まりを、突起で圧縮すると、直径が19.99mmからなり、グラフェンが157枚重なり合ったグラフェン接合体の100個を平面状に並ばせ、このグラフェン接合体が10層重なり合って接合したグラフェン接合体が、繰り返し形成できる。このため、予め設定したグラフェン接合体の大きさと厚みからなるグラフェン接合体が製造できることになる。
【符号の説明】
【0024】
1 グラフェン
図1