(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064694
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】全固体電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0585 20100101AFI20240507BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20240507BHJP
H01M 50/119 20210101ALI20240507BHJP
H01M 50/474 20210101ALI20240507BHJP
H01M 50/486 20210101ALI20240507BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M10/0562
H01M50/119
H01M50/474
H01M50/486
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173463
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 健児
(72)【発明者】
【氏名】福井 英之
【テーマコード(参考)】
5H011
5H021
5H029
【Fターム(参考)】
5H011AA09
5H011CC06
5H011DD11
5H011KK01
5H021AA02
5H021BB01
5H021BB02
5H021BB12
5H021BB17
5H021EE02
5H021HH03
5H021HH10
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AK03
5H029AK05
5H029AL01
5H029AL02
5H029AL04
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AL12
5H029AM12
5H029BJ04
5H029BJ12
5H029CJ02
5H029CJ03
5H029CJ22
5H029CJ28
5H029DJ02
5H029DJ04
5H029EJ01
5H029EJ12
5H029HJ04
5H029HJ12
(57)【要約】
【課題】減圧下でも電池が膨張しにくい全固体電池を容易に製造できる製造方法を提供する。
【解決手段】開示される製造方法は、正極層、負極層、および正極層と負極層との間に配置された固体電解質層を含む少なくとも1つの単位電池を含む全固体電池の製造方法である。当該製造方法は、開口部を有する外装体内に、硬化が完了していない流動性を有する第1の樹脂含有材料を配置する工程(i)と、前記少なくとも1つの単位電池を含む積層体110を外装体120内に挿入した後に前記第1の樹脂含有材料の硬化を完了させ、外装体120と積層体110との間に硬化した第1の樹脂含有材料201bを配置する工程(ii)とを含む。
【選択図】
図2B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極層、負極層、および前記正極層と前記負極層との間に配置された固体電解質層を含む少なくとも1つの単位電池を含む全固体電池の製造方法であって、
開口部を有する外装体内に、硬化が完了していない流動性を有する第1の樹脂含有材料を配置する工程(i)と、
前記少なくとも1つの単位電池を含む積層体を前記外装体内に挿入した後に前記第1の樹脂含有材料の硬化を完了させ、前記外装体と前記積層体との間に硬化した前記第1の樹脂含有材料を配置する工程(ii)とを含む、全固体電池の製造方法。
【請求項2】
前記工程(ii)において、前記外装体を外側に引っ張った状態で前記積層体を前記外装体内に挿入する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記工程(ii)において、前記積層体の表面に第2の樹脂含有材料を塗布した状態で前記積層体を前記外装体内に挿入する、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記第1の樹脂含有材料と前記第2の樹脂含有材料とは同じ樹脂を含有する、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記工程(ii)において、前記外装体を外側から加圧した状態で前記第1の樹脂含有材料を硬化させる、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項6】
前記工程(ii)を経た前記外装体の中央部の厚さが、前記工程(ii)を行う前の前記外装体の前記中央部の厚さよりも小さい、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記工程(i)および前記工程(ii)が減圧下で行われる、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項8】
正極層、負極層、および前記正極層と前記負極層との間に配置された固体電解質層を含む少なくとも1つの単位電池を含む全固体電池の製造方法であって、
前記少なくとも1つの単位電池を含む積層体を開口部を有する外装体内に配置する工程(I)と、
硬化が完了していない流動性を有する樹脂含有材料の供給を前記外装体内の下方側から開始して前記樹脂含有材料を前記外装体内に充填した後に前記樹脂含有材料の硬化を完了させることによって、前記外装体と前記積層体との間に硬化した前記樹脂含有材料を配置する工程(II)とを含む、全固体電池の製造方法。
【請求項9】
前記工程(II)において、
前記外装体を外側に引っ張った状態で流動性を有する前記樹脂含有材料を前記外装体内に充填した後に、前記外装体を外側から加圧した状態で前記樹脂含有材料を硬化させる、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記工程(II)を減圧下で行う、請求項8または9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記外装体が金属製である、請求項1または8に記載の製造方法。
【請求項12】
前記外装体は、前記積層体を積層方向に加圧する外装体である、請求項11に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、全固体電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、安全性およびエネルギー密度が高い全固体電池が注目されている。全固体電池は、正極層、固体電解質層、および負極層を含む積層体を、発電要素として含む。全固体電池の構造や製造方法について、従来から様々な提案がなされている。
【0003】
特許文献1(特開2019-207840号公報)の請求項1には、「電極合材層と固体電解質層とが積層された構造部分を有する積層電極体と、前記積層電極体の少なくとも積層端面を覆う封止部と、を備えた全固体電池であって、前記電極合材層は、活物質とバインダ樹脂とを含み、前記封止部は、封止樹脂と絶縁粒子とを含み、前記電極合材層に含まれる前記バインダ樹脂の溶解度パラメータと、前記封止部に含まれる前記封止樹脂の溶解度パラメータとの差の絶対値が、1.9(cal/cm3)0.5以下である、全固体電池」が記載されている。
【0004】
特許文献2(特許第6673249号)の請求項1には、「負極集電タブを有する負極集電体層、負極活物質層、固体電解質層、正極活物質層、及び正極集電タブを有する正極集電体層がこの順に積層された全固体電池素子を1個以上有する全固体電池積層体を、ラミネートフィルムから成る外装体内に収容すること、前記外装体の外側から、前記外装体内に収納された前記全固体電池積層体を積層方向に加圧すること、前記加圧を維持しながら前記外装体内に充填材を注入すること、並びに前記外装体を封止することを含み、前記全固体電池積層体を積層方向に加圧する工程において印加する圧力が、充填材を注入する工程における充填材注入圧より大きい、ラミネート全固体電池の製造方法」が記載されている。
【0005】
特許文献3(特許第6772855号)の請求項1には、「負極集電体層、負極活物質層、固体電解質層、正極活物質層、及び正極集電体層が、この順で配置された単位電池を、1つ以上有する全固体電池素子と、少なくとも一端に開口部を有し、かつ、前記全固体電池素子が収容されている金属外装体と、前記開口部を封止しており、かつ、前記全固体電池素子の、前記開口部に対向する面に接している樹脂封止体と、前記樹脂封止体から、前記全固体電池素子と反対側に突出している、負極集電体層突出部及び正極集電体層突出部と、を備え、前記樹脂封止体が、前記全固体電池素子の外周と前記金属外装体の内周との間の隙間の少なくとも一部に侵入して、隙間充填体を形成しており、前記樹脂封止体が硬化性樹脂である、全固体電池」が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-207840号公報
【特許文献2】特許第6673249号公報
【特許文献3】特許第6772855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の全固体電池を減圧下で用いた場合、ケース内の圧力が外圧よりも高くなると、電池が膨張して電池の性能が低下する。ケース内を負圧とした場合でも、減圧下で電池が膨張しないようするには、ケース内部を高真空にしたり、ケースに加圧構造を用いたりする必要がある。このような状況において、本開示の目的の1つは、減圧下でも電池が膨張しにくい全固体電池を容易に製造できる製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一局面は、全固体電池の第1の製造方法に関する。当該第1の製造方法は、正極層、負極層、および前記正極層と前記負極層との間に配置された固体電解質層を含む少なくとも1つの単位電池を含む全固体電池の製造方法であって、開口部を有する外装体内に、硬化が完了していない流動性を有する第1の樹脂含有材料を配置する工程(i)と、前記少なくとも1つの単位電池を含む積層体を前記外装体内に挿入した後に前記第1の樹脂含有材料の硬化を完了させ、前記外装体と前記積層体との間に硬化した前記第1の樹脂含有材料を配置する工程(ii)とを含む。
【0009】
本開示の一局面は、全固体電池の第2の製造方法に関する。当該第2の製造方法は、正極層、負極層、および前記正極層と前記負極層との間に配置された固体電解質層を含む少なくとも1つの単位電池を含む全固体電池の製造方法であって、前記少なくとも1つの単位電池を含む積層体を開口部を有する外装体内に配置する工程(I)と、硬化が完了していない流動性を有する樹脂含有材料の供給を前記外装体内の下方側から開始して前記樹脂含有材料を前記外装体内に充填した後に前記樹脂含有材料の硬化を完了させることによって、前記外装体と前記積層体との間に硬化した前記樹脂含有材料を配置する工程(II)とを含む。
【発明の効果】
【0010】
本開示の製造方法によれば、減圧下でも電池が膨張しにくい全固体電池を容易に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】
図1Aは、実施形態1で用いられる積層体の一例を模式的に示す上面図である。
【
図2A】
図2Aは、実施形態1の製造方法の一工程を模式的に示す断面図である。
【
図3A】
図3Aは、実施形態1の製造方法に用いられる外装体の一例を模式的に示す断面図である。
【
図3B】
図3Bは、実施形態1の製造方法に用いられる外装体の他の一例を模式的に示す断面図である。
【
図3C】
図3Cは、実施形態1の製造方法における外装体の変形の一例を模式的に示す断面図である。
【
図4A】
図4Aは、実施形態2の製造方法の一工程を模式的に示す断面図である。
【
図5】
図5は、実施形態2の製造方法の一工程の一例を模式的に示す断面図である。
【
図6】
図6は、実施形態2の製造方法の一工程の他の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、本開示に係る実施形態について例を挙げて説明するが、本開示は以下で説明する例に限定されない。以下の説明では、具体的な数値や材料を例示する場合があるが、本開示に係る発明を実施できる限り、他の数値や他の材料を適用してもよい。この明細書において、「数値A~数値B」という記載は、数値Aおよび数値Bを含み、「数値A以上で数値B以下」と読み替えることが可能である。以下の説明において、特定の物性や条件などに関する数値の下限と上限とを例示した場合、下限が上限以上とならない限り、例示した下限のいずれかと例示した上限のいずれかとを任意に組み合わせることができる。
【0013】
全固体電池の第1の製造方法および第2の製造方法について、以下に説明する。第1の製造方法および第2の製造方法を以下では、「製造方法(M1)」および「製造方法(M2)」と称する場合がある。
【0014】
製造方法(M1)および製造方法(M2)はそれぞれ、正極層、負極層、および正極層と負極層との間に配置された固体電解質層を含む少なくとも1つの単位電池を含む全固体電池の製造方法である。製造方法(M1)および製造方法(M2)では、少なくとも1つの単位電池を含む積層体が用いられる。当該積層体を、以下では、「積層体(S)」と称する場合がある。通常、積層体(S)からは、正極リードタブおよび負極リードタブが突出している。全固体電池の構成の例については後述する。積層体(S)を準備する方法に限定はない。積層体(S)は後述した方法で形成してもよいし、形成された積層体(S)を入手して用いてもよい。
【0015】
(第1の製造方法(製造方法(M1)))
従来の製造方法では、積層体(S)を外装体内に配置してから、封止樹脂を外装体の開口部から注入して積層体(S)の周囲に配置していた。しかし、封止樹脂の粘度はある程度高いため、積層体(S)と外装体との間に空隙が形成されないように封止樹脂を注入することが難しかった。積層体(S)と外装体との間に封止樹脂が配置されていない大きな空隙が形成されると、減圧下において電池が膨張しやすくなる。
【0016】
以下で説明するように、製造方法(M1)では、第1の樹脂含有材料を予め外装体内に配置しておき、その後に積層体(S)を外装体内に挿入する。そのため、製造方法(M1)によれば、積層体(S)と外装体との間に、封止樹脂が配置されていない大きな空隙が形成されることを抑制できる。その結果、減圧下でも膨張しにくい全固体電池が得られる。さらに、製造方法(M1)では、第1の樹脂含有材料を外装体に配置することが容易であるため、全固体電池を容易に製造できる。
【0017】
全固体電池の第1の製造方法(製造方法(M1))は、工程(i)と工程(ii)とをこの順に含む。それらの工程について、以下に説明する。
【0018】
(工程(i))
工程(i)は、開口部を有する外装体内に、硬化が完了していない流動性を有する第1の樹脂含有材料を配置する工程である。開口部を有する外装体には、例えば、有底の角筒状の外装体を用いることができる。角筒状の部分は、2つの主壁(板状部)と、それら2つの主壁を結ぶ2つの側壁を有する。角筒状の部分の一端は底部で封じられており、他端は開口部として開口している。
【0019】
第1の樹脂含有材料は特に限定されず、硬化可能な樹脂を含み、単位電池を含む積層体(S)を封止できる材料であればよい。第1の樹脂含有材料として、電子部品の封止に用いられる公知の封止樹脂を用いてもよい。第1の樹脂含有材料は、少なくとも樹脂を含有する。第1の樹脂含有材料は、樹脂のみで構成されてもよいし、樹脂と樹脂以外の材料とで構成されてもよい。第1の樹脂含有材料に含有される樹脂の例には、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂などが含まれる。エポキシ樹脂を用いることによって、2つの主壁間の結合力が強くなる。その結果、減圧下において外装体が膨らむことを特に抑制できる。シリコーン樹脂は粘弾性が高いため、シリコーン樹脂を用いることによって、積層体(S)への衝撃を和らげることができ、電池の耐衝撃性を高めることができる。
【0020】
第1の樹脂含有材料は、樹脂に分散されたフィラーを含んでもよい。フィラーの例には、アルミナの粒子、シリカの粒子などの無機フィラーが含まれる。
【0021】
第1の樹脂含有材料は、硬化が完了していない流動性を有する状態で、外装体内に配置される。流動性を有する限り、外装体内に配置される際に、第1の樹脂含有材料は硬化を開始していてもよい。第1の樹脂含有材料を外装体に配置する方法に限定はない。例えば、第1の樹脂含有材料を開口部から滴下してもよい。あるいは、外装体内にノズルを差し込み、ノズルから第1の樹脂含有材料を外装体内に充填してもよい。
【0022】
工程(i)において外装体内に配置される第1の樹脂含有材料の粘度は、70Pa・s以下、20Pa・s以下、10Pa・s以下、5.0Pa・s以下、または3.0Pa・s以下であってもよい。当該粘度の下限値は特に限定されないが、0.1Pa・s以上、0.3Pa・s以上、または0.5Pa・s以上であってもよい。当該粘度を20Pa・s以下(例えば、10Pa・s以下や5.0Pa以下)とすることによって、外装体内に第1の樹脂含有材料を配置しやすくなり、また、工程(ii)において積層体(S)を外装体内に挿入しやすくなる。シリコーン樹脂を用いることによって、粘度が低い第1の樹脂含有材料が得られやすくなる。シリコーン樹脂を含む樹脂含有材料の粘度は、ブルックフィールド形回転粘度計を用いて測定できる。
【0023】
工程(i)において外装体内に配置される第1の樹脂含有材料の量は、工程(ii)において積層体(S)を外装体に挿入したときに積層体(S)の表面のある程度の部分が第1の樹脂含有材料で覆われる量である。例えば、当該量は、工程(ii)において積層体(S)を外装体に挿入したときに積層体(S)の表面全体の面積の、30%以上、50%以上、70%以上、または90%以上が第1の樹脂含有材料で覆われる量であることが好ましい。当該量は、工程(ii)において積層体(S)を外装体に挿入したときに積層体(S)の表面全体が覆われる量であってもよい。あるいは、当該量は、積層体(S)の端面であって外装体の開口部側の端面以外の部分が覆われる量であってもよい。
【0024】
(工程(ii))
工程(ii)は、上記少なくとも1つの単位電池を含む積層体(S)を外装体内に挿入した後に第1の樹脂含有材料の硬化を完了させ、外装体と積層体との間に硬化した第1の樹脂含有材料を配置する工程である。
【0025】
積層体(S)は、外装体の開口部から挿入できる。積層体(S)を外装体に挿入した後に、外装体内に第1の樹脂含有材料を補充してもよい。積層体(S)の全体が最終的に第1の樹脂含有材料で覆われることが好ましい。
【0026】
第1の樹脂含有材料の硬化を完了させる方法は限定されず、第1の樹脂含有材料に含まれる樹脂の種類に応じて選択される。例えば、熱で硬化する樹脂を用いた場合、加熱することによって、第1の樹脂含有材料を硬化させてもよい。また、時間経過によって硬化する樹脂を用いた場合、単に放置することによって、第1の樹脂含有材料を硬化させてもよい。
【0027】
このようにして、硬化が完了した第1の樹脂含有材料によって外装体内に固定された積層体(S)と、外装体とを含む全固体電池が得られる。
【0028】
工程(ii)において、外装体を外側に引っ張った状態で積層体(S)を外装体内に挿入してもよい。この構成によれば、積層体(S)を外装体内に挿入しやすくなる。外装体を外側に引っ張る方法は限定されず、真空吸着などによって外装体の主壁を吸着し、当該主壁を外側に引っ張ってもよい。あるいは、外装体の開口部を治具などで広げてもよい。これらの方法については、製造方法(M2)でも利用できる。
【0029】
工程(ii)において、積層体(S)の表面に第2の樹脂含有材料を塗布した状態で積層体(S)を外装体内に挿入してもよい。この構成によれば、積層体(S)を第1の樹脂含有材料内に挿入しやすくなる。積層体(S)は、塗布された第2の樹脂含有材料の硬化が完了していない状態で外装体内に挿入されてもよい。あるいは、積層体(S)は、塗布された第2の樹脂含有材料の硬化が完了した状態で外装体内に挿入されてもよい。
【0030】
第2の樹脂含有材料には、第1の樹脂含有材料について例示した材料を用いることができる。第1の樹脂含有材料と第2の樹脂含有材料とは同じ樹脂を含有してもよい。この構成によれば、積層体(S)を第1の樹脂含有材料内に特に挿入しやすくなる。また、この構成によれば、外装体内の樹脂含有材料と積層体(S)との間の固定を強固にできる。第1の樹脂含有材料と第2の樹脂含有材料とは同じ材料で構成されていてもよい。あるいは、第1の樹脂含有材料と第2の樹脂含有材料とは、同じ樹脂を含むが全体としては異なる材料で構成されていてもよい。あるいは、第1の樹脂含有材料と第2の樹脂含有材料とは、同じ樹脂を含まず異なる材料で構成されていてもよい。
【0031】
工程(ii)において、外装体を外側から加圧した状態で第1の樹脂含有材料を硬化させてもよい。具体的には、外装体の2つの主壁を外装体の内側に向かって加圧した状態で、第1の樹脂含有材料を硬化させてもよい。この構成によれば、積層体(S)がその積層方向に加圧された状態で積層体(S)を封止できる。積層体(S)を積層方向に加圧することによって、電池の性能を充分に発揮させることができる。また、この構成によれば、減圧下において、電池が膨張することを抑制できる。
【0032】
工程(ii)において、外装体を外側から加圧した状態で第1の樹脂含有材料を硬化させる場合、工程(ii)を経た外装体の中央部の厚さが、工程(ii)を行う前の外装体の前記中央部の厚さよりも小さくてもよい。この構成によれば、積層体(S)が、その積層方向に強く加圧された状態で積層体(S)を封止できる。なお、外装体の中央部とは、外装体の1つの主壁を平面視したときの当該主壁の中央部を意味する。
【0033】
工程(i)および工程(ii)は大気圧下で行われてもよい。あるいは、工程(ii)は減圧下で行われてもよい。例えば、工程(i)および工程(ii)の両方が減圧下で行われてもよい。工程(i)を減圧下で行うことによって、第1の樹脂含有材料を外装体内に配置しやすくなる。工程(ii)を減圧下で行うことによって、外装体と積層体(S)との間に空隙ができることを抑制できる。その結果、製造された全固体電池が減圧下におかれたときに電池が膨張することを抑制できる。
【0034】
(第2の製造方法(製造方法(M2)))
以下で説明するように、製造方法(M2)では、積層体(S)を外装体内に配置した状態で、外装体内の下方側から樹脂含有材料の供給を開始する。この構成によれば、外装体内に大きな空隙が形成されることを抑制できる。その結果、減圧下でも膨張しにくい全固体電池が得られる。さらに、製造方法(M2)では、第1の樹脂含有材料を外装体内に充填することが容易であるため、全固体電池を容易に製造できる。
【0035】
全固体電池の第2の製造方法(製造方法(M2))は、工程(I)と工程(II)とをこの順に含む。それらの工程について、以下に説明する。
【0036】
(工程(I))
工程(I)は、少なくとも1つの単位電池を含む積層体(S)を開口部を有する外装体内に配置する工程である。積層体(S)は、外装体の開口部から外装体内に入れることができる。開口部を有する外装体には、製造方法(M1)の説明において例示した外装体を用いることができる。
【0037】
工程(I)において、表面に樹脂含有材料(第2の樹脂含有材料)が塗布された積層体(S)を外装体内に配置してもよい。その場合、工程(II)で用いられる樹脂含有材料(第1の樹脂含有材料)を充填しやすくなる。工程(II)で用いられる樹脂含有材料(第1の樹脂含有材料)には、製造方法(M1)の説明において例示した第1の樹脂含有材料を用いることができる。工程(I)で用いられる樹脂含有材料(第2の樹脂含有材料)には、製造方法(M1)の説明において例示した第2の樹脂含有材料を用いることができる。
【0038】
(工程(II))
工程(II)は、硬化が完了していない流動性を有する樹脂含有材料の供給を外装体内の下方側から開始して樹脂含有材料を外装体内に充填した後に樹脂含有材料の硬化を完了させることによって、外装体と積層体との間に硬化した樹脂含有材料を配置する工程である。樹脂含有材料の硬化を完了させる方法は限定されず、樹脂含有材料に含まれる樹脂の種類に応じて選択される。例えば、熱で硬化する樹脂を用いた場合、加熱することによって、樹脂含有材料を硬化させてもよい。また、時間経過によって硬化する樹脂を用いた場合、単に放置することによって、樹脂含有材料を硬化させてもよい。
【0039】
上述したように、樹脂含有材料には、製造方法(M1)の第1の樹脂含有材料として説明した材料を用いることができる。硬化が完了していない流動性を有する状態については、製造方法(M1)で説明したため、重複する説明を省略する。外装体内に充填される際の樹脂含有材料の粘度は、製造方法(M1)の工程(i)で用いられる第1の樹脂含有材料の粘度について説明した範囲にあってもよい。
【0040】
工程(II)において、外装体内の下方側とは、樹脂含有材料を充填する際の外装体の配置において、外装体の内部空間の上下方向の中央より下方側を意味する。その場合の外装体の内部空間の高さ(鉛直方向における外装体の内部空間の長さ)をHとしたとき、外装体の内部空間の底部からH/3の高さよりも下方側から樹脂含有材料の供給を開始してもよい。あるいは、外装体の内部空間の底部からH/4の高さよりも下方側から樹脂含有材料の供給を開始してもよく、外装体の内部空間の底部からH/5の高さよりも下方側から樹脂含有材料の供給を開始してもよい。
【0041】
外装体内の下方側から樹脂含有材料を供給する方法に特に限定はない。例えば、ノズル(例えばチューブ状のノズル)の先端が外装体内の下方側に到達するように、ノズルを外装体の開口部から外装体内に入れ、ノズルの先端から樹脂含有材料を供給してもよい。ノズルは、樹脂含有材料の硬化を完了させる前に外装体から引き抜かれる。なお、ノズルは、樹脂含有材料が外装体内に充填されるに伴って徐々に開口部側に引き上げてもよい。少なくとも樹脂含有材料の供給を開始する際には、外装体内の下方側から樹脂含有材料が供給される。
【0042】
工程(II)は、通常、底部が下方になり開口部が上方になるように外装体を配置した状態で行われる。ただし、それ以外の方向に外装体を配置した状態で工程(II)が行われてもよい。例えば、外装体の1つの主壁が下方になり、他方の主壁が上方になるように配置した状態で工程(II)を行ってもよい。あるいは、外装体の1つの側壁が下方になり、他方の側壁が上方になるように配置した状態で工程(II)を行ってもよい。これらの場合、開口部の一部または全部に蓋をした状態で樹脂含有材料を外装体内に充填すればよい。
【0043】
工程(II)において、外装体を外側に引っ張った状態で流動性を有する樹脂含有材料を外装体内に充填した後に、外装体を外側から加圧した状態で前記樹脂含有材料を硬化させてもよい。この構成によれば、積層体(S)が、その積層方向に加圧された状態で積層体(S)を封止できる。積層体(S)を積層方向に加圧することによって、電池の性能を充分に発揮させることができる。また、この構成によれば、減圧下において、電池が膨張することを抑制できる。
【0044】
工程(I)および工程(II)は大気圧下で行われてもよい。あるいは、工程(II)は減圧下で行われてもよい。工程(II)を減圧下で行うことによって、樹脂含有材料を外装体内に充填しやすくなる。また、工程(II)を減圧下で行うことによって、外装体と積層体(S)との間に空隙ができることを抑制できる。その結果、作製された全固体電池が減圧下におかれたときに電池が膨張することを抑制できる。
【0045】
製造方法(M1)および(M2)において、外装体は金属製であってもよい。外装体に用いられる金属の例については後述する。
【0046】
製造方法(M1)および(M2)において、外装体は、積層体(S)を積層方向に加圧する外装体であってもよい。そのような外装体の一例は、何も収容していない状態において、2つの主壁が内側に向かって凸となるように湾曲している外装体である。そのような主壁を用いることによって、積層体(S)をその積層方向に加圧できる。そのような主壁を有する外装体を用いる場合、外装体(少なくとも主壁)を外側に引っ張った状態で積層体(S)を外装体内に挿入する。製造方法(M1)および(M2)では、外装体と積層体(S)との間に樹脂が充填される。そのため、外装体による加圧力が、均一に積層体(S)に伝わりやすくなる。
【0047】
内側に向かって凸となるように湾曲している2つの主壁を用いる場合、外装体の形状およびサイズは、積層体および樹脂含有材料を収容したときに、それらを収容する前よりも主壁が平らになるように選択される。この構成によれば、主壁によって、積層体(S)をその積層方向に加圧できる。
【0048】
別の観点では、本開示は、全固体電池の第3の製造方法(製造方法(M3))を提供する。第3の製造方法は、正極層、負極層、および前記正極層と前記負極層との間に配置された固体電解質層を含む少なくとも1つの単位電池を含む全固体電池の製造方法である。第3の製造方法は、前記少なくとも1つの単位電池を含む積層体を開口部を有する外装体内に配置する工程(Ia)と、硬化が完了していない流動性を有する樹脂含有材料の供給を前記外装体内の樹脂充填領域の下方側から開始して前記樹脂含有材料を前記樹脂充填領域内に充填した後に前記樹脂含有材料の硬化を完了させることによって、前記外装体と前記積層体との間に硬化した前記樹脂含有材料を配置する工程(IIa)とを含む。
【0049】
工程(Ia)は、外装体の内部空間を上下に仕切ってもよい点を除いて製造方法(M2)の工程(I)と同じであるため、重複する説明を省略する。工程(Ia)において、外装体として底部を有さない筒状体(例えば角筒状体)を用いる場合には、外装体の内部空間を仕切る仕切りを用いることができる。当該仕切りは、積層体の周囲に形成される。製造方法(M3)では、製造方法(M2)で説明したように、底部を有する角筒状体を外装体として用いてもよい。
【0050】
工程(IIa)は、製造方法(M2)の工程(II)において「硬化が完了していない流動性を有する樹脂含有材料の供給を外装体内の下方側から開始して樹脂含有材料を外装体内に充填した後に樹脂含有材料の硬化を完了させる」という工程を、「硬化が完了していない流動性を有する樹脂含有材料の供給を外装体内の樹脂充填領域の下方側から開始して樹脂含有材料を樹脂充填領域内に充填した後に樹脂含有材料の硬化を完了させる」という工程に置き換えた工程である。上記の置き換えを除いて、工程(II)で説明した事項について説明した事項は、工程(IIa)に適用できる。また、工程(I)と工程(Ia)との相違点、および、工程(II)と工程(IIa)との相違点を除いて、製造方法(M2)について説明した事項は、製造方法(M3)に適用できる。1つの観点では、製造方法(M2)は、製造方法(M3)に含まれると考えることが可能である。
【0051】
工程(IIa)において、樹脂充填領域とは、樹脂含有材料が充填される空間を意味する。工程(IIa)において、樹脂充填領域の下方側とは、樹脂含有材料を充填する際の外装体の配置において、樹脂充填領域の上下方向の中央より下方側を意味する。その場合の樹脂充填領域の高さ(鉛直方向における樹脂充填領域の長さ)をHaとしたとき、樹脂充填領域の底部からHa/3の高さよりも下方側から樹脂含有材料の供給を開始してもよい。あるいは、樹脂充填領域の底部からHa/4の高さよりも下方側から樹脂含有材料の供給を開始してもよく、樹脂充填領域の底部からHa/5の高さよりも下方側から樹脂含有材料の供給を開始してもよい。
【0052】
製造方法(M3)では、積層体の周囲に配置された仕切りによって外装体の内部空間が2つの空間(下側の空間と上側の空間)に分けられていてもよい。例えば、工程(Ia)において、仕切りとなる畝状部が周囲に設けられた積層体を外装体内に配置し、それによって外装体の内部空間を2つの空間に分けてもよい。その場合、外装体内には、2つの樹脂充填領域が形成される。工程(IIa)では、まず、上側の空間(一方の樹脂充填領域)の下方側から流動性を有する樹脂含有材料の供給を開始して樹脂含有材料を当該空間に充填した後に、当該樹脂含有材料を硬化させる。次に、外装体の上下を反転させ、他方の空間(他方の樹脂充填領域)の下方側から流動性を有する樹脂含有材料の供給を開始して樹脂含有材料を当該空間に充填した後に、当該樹脂含有材料を硬化させる。このようにして、硬化した樹脂含有材料を2つの空間(2つの樹脂充填領域)に配置できる。
【0053】
(全固体電池の構成要素)
製造方法(M1)で製造される全固体電池と、製造方法(M2)で製造される全固体電池とは基本的に同様の構成を有する。製造方法(M1)および製造方法(M2)で製造される全固体電池の構成要素の例について、以下に説明する。ただし、以下の構成要素は例示であり、他の構成要素を用いてもよい。なお、以下では、主に全固体リチウムイオン電池の例について主に説明するが、他の全固体電池であってもよい。全固体電池は特に限定されず、公知の全固体電池であってもよい。
【0054】
全固体電池は、積層体(S)を含む。積層体(S)は少なくとも1つの単位電池(発電要素)を含む。積層体(S)は、単位電池を1つだけ含んでもよいし、積層された複数の単位電池を含んでもよい。単位電池は、正極層、負極層、および正極層と負極層との間に配置された固体電解質層を含む。積層体(S)は、必要に応じて、集電体を含む。全固体電池では、積層体(S)がその積層方向に加圧されることが好ましい。積層体(S)が加圧されることによって、高い性能を発揮することが可能になる。
【0055】
(外装体)
上述したように、外装体には、金属製のケースなどを用いることができる。ケースを構成する金属板の例には、ステンレス鋼板、炭素鋼板、アルミニウム合金板などが含まれる。
【0056】
外装体を構成する金属板の厚さは、材質や求められる加圧性や金属板の材質に応じて選択すればよい。外装体を構成する金属板の厚さは、0.10mm以上、または0.15mm以上であってもよく、0.60mm以下、または0.50mm以下であってもよい。
【0057】
(正極層)
正極層は、正極活物質を含み、必要に応じて他の成分を含んでもよい。当該他の成分の例には、全固体電池の正極層に使用される公知の成分(結着剤、導電材など)が含まれる。正極層におけるリチウムイオン伝導性を高める観点から、正極層は、正極活物質とともに、リチウムイオン伝導性を示す固体電解質を含んでもよい。通常、正極活物質は、粒子(粉末)の状態で用いられる。
【0058】
正極活物質には、全固体電池の正極活物質として使用できる材料を用いることができる。全固体リチウムイオン電池の場合、正極活物質の例には、リチウム含有複合酸化物や、酸化物以外の化合物が含まれる。リチウム含有複合酸化物の例には、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、およびその他のリチウム含有複合酸化物(LiNi0.8Co0.15Al0.05O2、など)が含まれる。酸化物以外の化合物の例には、オリビン系化合物(LiMPO4など)、硫黄含有化合物(Li2Sなど)などが含まれる。なお、上記式中、Mは遷移金属を示す。正極活物質は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
(負極層)
負極層は、負極活物質を含み、必要に応じて他の成分を含んでもよい。当該他の成分の例には、全固体電池の負極層に使用される公知の成分(結着剤、導電材など)が含まれる。負極層は、負極活物質と、リチウムイオン伝導性を示す固体電解質とを含んでもよい。通常、負極活物質は、粒子(粉末)の状態で用いられる。
【0060】
負極活物質には、全固体電池の負極活物質として使用できる材料を用いることができる。全固体リチウムイオン電池の場合、負極活物質には、リチウムイオンを可逆的に吸蔵および放出可能な所定の材料(炭素質材料、金属や半金属の単体または合金、あるいは化合物など)を用いることができる。炭素質材料の例には、黒鉛(天然黒鉛、人造黒鉛など)、ハードカーボン、非晶質炭素などが含まれる。金属や半金属の単体、合金の例には、リチウム金属や合金、Si単体などが含まれる。化合物の例には、酸化物(チタン酸化物、ケイ素酸化物など)、硫化物、窒化物、水化物、シリサイド(リチウムシリサイドなど)などが挙げられる。負極活物質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。例えば、ケイ素酸化物と炭素質材料とを併用してもよい。負極活物質として、黒鉛粒子と黒鉛粒子を被覆する非晶質炭素とを含む粒子を用いてもよい。
【0061】
(固体電解質層)
固体電解質層は、正極層と負極層との間に配置される。固体電解質層は、固体電解質を含み、必要に応じて他の成分を含んでもよい。当該他の成分の例には、全固体電池の固体電解質層に使用される公知の成分が含まれる。通常、固体電解質は、粒子(粉末)の状態で用いられる。
【0062】
固体電解質には、全固体電池の固体電解質として使用できる材料を特に制限なく用いることができる。全固体リチウムイオン電池の場合、固体電解質には、リチウムイオン伝導性を有する物質を用いることができる。そのような固体電解質の例には、硫化物(硫化物系固体電解質)、水素化物(水素化物系固体電解質)などの無機固体電解質が含まれる。
【0063】
硫化物の例には、Li2S-SiS2、Li2S-P2S5、Li2S-GeS2、Li2S-B2S3、Li2S-Ga2S3、Li2S-Al2S3、Li2S-GeS2-P2S5、Li2S-Al2S3-P2S5、Li2S-P2S3、Li2S-P2S3-P2S5、LiX-Li2S-P2S5、LiX-Li2S-SiS2、LiX-Li2S-B2S3(X:I、Br、またはCl)などが含まれる。水素化物の例には、LiBH4-LiI系錯体水素化物およびLiBH4-LiNH2系錯体水素化物などが含まれる。
【0064】
(正極集電体)
正極層の外側には、通常、正極集電体が配置される。正極集電体には、金属箔を用いてもよい。正極集電体(例えば金属箔)の材質の例には、アルミニウム、マグネシウム、ステンレス鋼、チタン、鉄、コバルト、亜鉛、スズ、またはこれらの合金などが含まれる。正極集電体および負極集電体には、必要に応じてリードタブが接続される。
【0065】
(負極集電体)
負極層の外側には、通常、負極集電体が配置される。負極集電体には、金属箔を用いてもよい。負極集電体(例えば金属箔)の材質の例には、銅、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、またはこれらの合金などが含まれる。
【0066】
(積層体(S)の形成方法)
積層体(S)を形成する方法に特に限定はなく、公知の形成方法で形成してもよい。積層体(S)は、液状成分を含まない材料を用いて形成することが好ましい。そのような形成方法(乾式の形成方法)によって積層体(S)を形成する方法の一例を以下に説明する。
【0067】
まず、正極層の材料、固体電解質層の材料、および負極層の材料を、所定の順に金属箔(集電体)上に積層した後、さらに集電体(金属箔)を配置する。次に、積層された材料および金属箔をまとめてプレス(本プレス)することによって積層体(S)を形成する。この本プレスによって、金属箔および各層が一体化されて積層体(S)が得られる。本プレスの圧力は、材料や厚さなどに応じて適宜変更すればよく、50MPa以上5000MPa以下(例えば、300MPa以上3000MPa以下)であってもよい。以上のようにして、正極集電体/正極層/固体電解質層/負極層/負極集電体という構造を有する積層体(S)が得られる。なお、積層体(S)は、これらの層以外の層、例えば、薄い導電層などを含んでもよい。
【0068】
正極層の材料を配置した後、固体電解質層の材料を配置した後、負極層の材料を配置した後のいずれかの段階において、配置した材料を予備的にプレスしてもよい。予備的なプレスは通常、上記の本プレスの圧力よりも小さい圧力で行われる。予備的なプレスの圧力に特に限定はなく、1MPa~10MPaの範囲にあってもよい。積層体中の空隙を減らすために、積層体を形成する工程の少なくとも一部は減圧下で行われてもよい。
【0069】
液状成分を含まない材料をプレスする工程を用いて積層体(S)を形成することによって、高圧の加圧なしで高い性能を示す全固体電池を得ることが可能である。液状成分(分散媒)を含まない材料を層状に配置する方法として、静電スプレー法、スキージ成膜法、または、静電塗装法などを用いてもよい。
【0070】
積層体(S)が複数の単位電池を含む場合、1つの単位電池を含む積層体をプレス成形によって形成した後に、それらの積層体を積層して積層体(S)を形成してもよい。あるいは、複数の単位電池が積層されるようにそれらの材料をプレス成形することによって、積層体(S)を形成してもよい。
【0071】
以下では、本開示に係る実施形態の例について、図面を参照して説明する。以下で説明する実施形態は、上述した記載に基づいて変更してもよい。また、以下で説明する事項を、上記の実施形態に適用してもよい。なお、以下の図は模式的な図であり、実際の縮尺とは異なる。以下の図では、図を見やすくするために、部材の一部を省略して図示する場合がある。また、以下の図では、外装体の断面を線で示す場合がある。
【0072】
(実施形態1)
実施形態1では、製造方法(M1)の一例について説明する。実施形態1の製造方法では、積層体110(積層体(S))が用いられる。積層体110の上面図を、
図1Aに示す。
図1Aの線IB-IBにおける断面図を、
図1Bに示す。
【0073】
積層体110は、正極集電体111、単位電池113、および負極集電体112を含む。単位電池113は、正極層113a、固体電解質層113b、および負極層113cを含む。これらの層および集電体は、積層方向SDに積層されている。積層体110は、上述した工程によって形成してもよい。
【0074】
積層体110からは、正極リードタブ121および負極リードタブ122が突出している。正極リードタブ121は、正極集電体111と一体であってもよいし、正極集電体111に接続されたリードタブであってもよい。負極リードタブ122は、負極集電体112と一体であってもよいし、負極集電体112に接続されたリードタブであってもよい。
【0075】
まず、
図2Aに示すように、開口部を有する外装体120内に、硬化が完了していない流動性を有する樹脂含有材料(第1の樹脂含有材料)201aを配置する(工程(i))。
図2Aの線IIIA-IIIAにおける外装体120の断面図を
図3Aに示す。
【0076】
外装体120は、角筒部120aと、角筒部120aの一端を封じる底部120bとを含む。角筒部120aの他端は、開口部120tとして開口している。角筒部120aは、対向する2つの主壁120amと、2つの主壁120amを結ぶ2つの側壁120asとで構成されている。外装体120の他の一例の断面図を、
図3Bに示す。
図3Bに示す外装体120が何も収容していない状態において、2つの主壁120amは、内側に向かって凸となるように湾曲している。換言すれば、主壁120amは、内側に向かって凸の畝状の形状を有する。外装体120を用いることによって、積層体110をその積層方向SDに加圧することが可能である。
【0077】
次に、積層体110を外装体内に挿入し、その後、樹脂含有材料201aの硬化を完了させる(工程(ii))。これによって、
図2Bに示すように、外装体120と積層体110との間に硬化した樹脂含有材料(第1の樹脂含有材料)201bを配置する。このようにして、全固体電池100が得られる。正極リードタブ121および負極リードタブ122は、硬化した樹脂含有材料201bから突出している。
【0078】
上述したように、工程(ii)において、外装体120を外側に引っ張った状態で積層体110を外装体120内に挿入してもよい。外装体120を外側に引っ張った状態における外装体120の断面形状を、
図3Cに模式的に示す。
図3Cに示す状態は、主壁120amの幅方向WDの中央部を外側に引っ張った状態である。
【0079】
上述したように、工程(ii)において、外装体を外側から加圧した状態で樹脂含有材料201aを硬化させてもよい。具体的には、主壁120amを内側に向かって加圧した状態で樹脂含有材料201aを硬化させてもよい。
【0080】
(実施形態2)
実施形態2では、製造方法(M2)の一例について説明する。実施形態2の製造方法では、積層体110(積層体(S))が用いられる。積層体110については実施形態1で説明したため、重複する説明を省略する。
【0081】
まず、
図4Aに示すように、積層体110を開口部120tを有する外装体120内に配置する(工程(I))。外装体120については実施形態1で説明したため、重複する説明を省略する。
【0082】
次に、硬化が完了していない流動性を有する樹脂含有材料の供給を外装体120内の下方側から開始して樹脂含有材料を外装体120内に充填し、その後に樹脂含有材料の硬化を完了させる(工程(II))。これによって、
図4Bに示すように、外装体120と積層体110との間に硬化した樹脂含有材料201bを配置する。このようにして、全固体電池100が得られる。正極リードタブ121および負極リードタブ122は、硬化した樹脂含有材料201bから突出している。
【0083】
樹脂含有材料は、
図5に示すように、ノズル(チューブ)210を用いて外装体120内に充填してもよい。
図5に示す外装体120の配置における外装体120の高さHを、
図5に示す。樹脂含有材料の供給は、外装体120の内部空間の下方側、すなわち、底部120bの内面からH/2の高さよりも低い位置から開始される。そのために、少なくとも樹脂含有材料の供給開始時において、ノズル210は、ノズル210の先端が外装体120の下方側に到達するように配置され、ノズル210の先端から樹脂含有材料が外装体120内に供給される。ノズル210の位置(ノズル210の先端の位置)は樹脂含有材料の充填が完了するまで同じであってもよい。あるいは、ノズル210は、樹脂含有材料の充填に伴って徐々に引き上げてもよい。
【0084】
図4Aおよび
図4Bでは、外装体120の底部120bを下方に配置して工程(I)および工程(II)を行う一例について説明した。しかし、工程(I)および工程(II)は、外装体120の底部120b以外を下方に配置して行ってもよい。
【0085】
図6に、一方の主壁120amを下方に配置した場合の一例を示す。
図6に示す外装体120の配置における外装体120の高さHを、
図6に示す。
図6の配置で工程(II)を行う場合、開口部120tを蓋130で封じた状態で行ってもよい。この場合、工程(II)は、
図6の配置における外装体120の下方側に貫通孔を形成し、その貫通孔から樹脂含有材料を外装体120内に充填することによって行ってもよい。あるいは、蓋130の下方側に隙間または貫通孔を形成し、その隙間または貫通孔から樹脂含有材料を外装体120内に充填してもよい。
【0086】
なお、
図4Aおよび
図4Bでは、底部120bが水平面と平行になるように配置した一例を示したが、底部120bは水平面に対して傾いていてもよい。また、
図6では、主壁120amが水平面と並行になるように配置した一例を示したが、主壁120amは水平面に対して傾いていてもよい。いずれの場合においても、外装体の高さとは、鉛直方向に沿った外装体の長さを意味する。
【0087】
(付記)
上記記載によって以下の発明例が開示される。
(発明例1)
正極層、負極層、および前記正極層と前記負極層との間に配置された固体電解質層を含む少なくとも1つの単位電池を含む全固体電池の製造方法であって、
開口部を有する外装体内に、硬化が完了していない流動性を有する第1の樹脂含有材料を配置する工程(i)と、
前記少なくとも1つの単位電池を含む積層体を前記外装体内に挿入した後に前記第1の樹脂含有材料の硬化を完了させ、前記外装体と前記積層体との間に硬化した前記第1の樹脂含有材料を配置する工程(ii)とを含む、全固体電池の製造方法。
(発明例2)
前記工程(ii)において、前記外装体を外側に引っ張った状態で前記積層体を前記外装体内に挿入する、発明例1に記載の製造方法。
(発明例3)
前記工程(ii)において、前記積層体の表面に第2の樹脂含有材料を塗布した状態で前記積層体を前記外装体内に挿入する、発明例1または2に記載の製造方法。
(発明例4)
前記第1の樹脂含有材料と前記第2の樹脂含有材料とは同じ樹脂を含有する、発明例3に記載の製造方法。
(発明例5)
前記工程(ii)において、前記外装体を外側から加圧した状態で前記第1の樹脂含有材料を硬化させる、発明例1~4のいずれか1つに記載の製造方法。
(発明例6)
前記工程(ii)を経た前記外装体の中央部の厚さが、前記工程(ii)を行う前の前記外装体の前記中央部の厚さよりも小さい、発明例5に記載の製造方法。
(発明例7)
前記工程(i)および前記工程(ii)が減圧下で行われる、発明例1~6のいずれか1つの製造方法。
(発明例8)
正極層、負極層、および前記正極層と前記負極層との間に配置された固体電解質層を含む少なくとも1つの単位電池を含む全固体電池の製造方法であって、
前記少なくとも1つの単位電池を含む積層体を開口部を有する外装体内に配置する工程(I)と、
硬化が完了していない流動性を有する樹脂含有材料の供給を前記外装体内の下方側から開始して前記樹脂含有材料を前記外装体内に充填した後に前記樹脂含有材料の硬化を完了させることによって、前記外装体と前記積層体との間に硬化した前記樹脂含有材料を配置する工程(II)とを含む、全固体電池の製造方法。
(発明例9)
前記工程(II)において、
前記外装体を外側に引っ張った状態で流動性を有する前記樹脂含有材料を前記外装体内に充填した後に、前記外装体を外側から加圧した状態で前記樹脂含有材料を硬化させる、発明例8に記載の製造方法。
(発明例10)
前記工程(II)を減圧下で行う、発明例8または9に記載の製造方法。
(発明例11)
前記外装体が金属製である、発明例1~10のいずれか1つに記載の製造方法。
(発明例12)
前記外装体は、前記積層体を積層方向に加圧する外装体である、発明例11に記載の製造方法。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本開示は、全固体電池の製造方法に利用できる。
【符号の説明】
【0089】
100 :全固体電池
110 :積層体
113 :単位電池
113a :正極層
113b :固体電解質層
113c :負極層
120 :外装体
120a :角筒部
120am :主壁
120as :側壁
120b :底部
120t :開口部
201a :樹脂含有材料(第1の樹脂含有材料、硬化完了前)
201b :樹脂含有材料(第1の樹脂含有材料、硬化完了後)
210 :ノズル